(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】新規IL-10変異体タンパク質及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 14/54 20060101AFI20240603BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240603BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20240603BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240603BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240603BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240603BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20240603BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240603BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240603BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240603BHJP
【FI】
C07K14/54 ZNA
C07K19/00
C12N15/24
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
A61K38/20
A61P37/00
A61P37/06
C07K16/00
C07K14/705
(21)【出願番号】P 2022501238
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(86)【国際出願番号】 KR2020008871
(87)【国際公開番号】W WO2021006605
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0082149
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521498069
【氏名又は名称】プロジェン・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PROGEN CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】516351304
【氏名又は名称】ジェネクシン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GENEXINE, INC.
【住所又は居所原語表記】172 Magokjungang-ro, Gangseo-gu, Seoul 07789 REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】シン,ウンジュ
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ウンジュ
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530983(JP,A)
【文献】特表2012-504425(JP,A)
【文献】特表2000-516089(JP,A)
【文献】国際公開第2012/045334(WO,A1)
【文献】特表2019-505173(JP,A)
【文献】Josephson K, et al.,Design and analysis of an engineered human interleukin-10 monomer,J Biol Chem,vol.275, no.18,2005年05月05日,p.13552-7,doi: 10.1074/jbc.275.18.13552
【文献】Definition: IL10_HUMAN,Database Uniprot [online],2019年07月03日,[検索日 2023.2.14], Internet:<URL: https://rest.uniprot.org/unisave/P22301?format=txt&versions=197>,Accession no. P22301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
A61K 38/20
A61P 37/00
A61P 37/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号46で記載されるか、または配列番号46で87番目のアミノ酸であるイソロイシン(I)がアラニン(A)で置換されているヒトインターロイキン-10(以下、IL-10)タンパク質の成熟型(mature form)において、
少なくとも116番目アミノ酸であるアスパラギンと117番目のアミノ酸であるリシンの間にグリシン(G)およびセリン(S)で構成される9a.a.の長さを有するスペーサーペプチドが挿入
され、配列番号1または配列番号39に記載されているアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有する、単量体性IL-10変異体タンパク質。
【請求項2】
配列番号1または39で記載されるアミノ酸配列で構成される、請求項1に記載の単量体性IL-10変異体タンパク質。
【請求項3】
配列番号46で記載されるヒトインターロイキン-10(以下、IL-10)タンパク質の成熟型(mature form)において、
少なくとも116番目アミノ酸であるアスパラギンと117番目のアミノ酸であるリシンの間にグリシン(G)およびセリン(S)で構成される9a.a.の長さを有するスペーサーペプチドが挿入された単量体性IL-10変異体タンパク質を含む融合タンパク質
であって、前記単量体性IL-10変異体タンパク質は配列番号1または配列番号39に記載されているアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有する融合タンパク質。
【請求項4】
前記単量体性IL-10変異体タンパク質は、配列番号1または39で記載されるアミノ酸配列で構成される、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
他の機能を担当する一つ以上の融合パートナータンパク質(partner protein)を含む、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記融合パートナータンパク質は、標的タンパク質に特異的に結合する抗体、前記抗体の抗原-結合断片、前記標的タンパク質に特異的に結合する抗体ミメティック、抗体のFc領域、抗体Fc領域受容体、前記抗体Fc領域受容体のFc領域結合細胞外ドメイン、二量体化ドメイン、サイトカイン、または免疫調節ペプチドである、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記抗体Fc領域は配列番号6乃至9のうちいずれか一つのアミノ酸配列で構成される、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記抗体Fc領域受容体はIgE Fc受容体のαサブユニットまたはその細胞外ドメインである、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記抗体の抗原-結合断片は、Fab、F(ab’)
2、Fab’、scFv、diabody、triabody、sdAb(single domain antibody)、V
NARまたはV
HHである、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記抗体ミメティックは、affibody、affilin、affimer、affitin、alphabody、anticalin、avimer、DARPin、Fynomer、Kunitz domain peptide、monobody、repebody、VLR、またはnanoCLAMPである、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記抗体のFc領域はIgG、IgA、IgD、及びIgMのFc領域または前記Igサブクラスのうち2つ以上の抗体Fc領域内のドメインが混合されたハイブリッドFcである、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記二量体化ドメインは、抗体のヒンジドメイン、LIM/double zinc-finger motif、RAG1ドメイン、HAT dimerization domain、TRFH dimerization domain、Stat3 dimerization、またはLFB1/HNF1 dimerization domainである、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記サイトカインはIL-4、IL-6、IL-1α、またはTGF-βである、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記免疫調節ペプチドはPD-L1またはCTLA-4(CD152)である、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
請求項1または請求項2に記載の単量体性IL-10変異体タンパク質、または請求項3乃至請求項14のうちいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項17】
請求項1または請求項2に記載の単量体性IL-10変異体タンパク質、または請求項3乃至請求項14のうちいずれか一項に記載の融合タンパク質を有効成分として含む免疫抑制用薬学的組成物。
【請求項18】
請求項1または請求項2に記載の単量体性IL-10変異体タンパク質、または請求項3乃至請求項14のうちいずれか一項に記載の融合タンパク質を有効成分として含む、免疫疾患治療用薬学的組成物。
【請求項19】
前記免疫疾患は、1型糖尿病、円形脱毛症(alopecia areata)、抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome)、関節リウマチ、乾癬または乾癬性関節炎、多発性硬化症(multiple scelerosis)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、アジソン病(Addison’s disease)、グレーブス病(Graves’ disease)、シェーグレン症候群(Sjoegren’s Syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guillian-Barre syndrome)、ハシモト甲状腺炎(Hashimoto’s thyroiditis)、重症筋無力症(Myasthenia gravis)、炎症性筋疾患(inflammatory myophathy)、自己免疫性血管炎(autoimmune vasculitis)、自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis)、溶血性貧血(hemolytic anemia)、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura)、原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis)、強皮症(scleroderma)、白斑(vitiligo)、悪性貧血(pernicious anemia)、アレルギー性疾患、またはセリアック病(celiac disease)で構成される群より選択される、請求項18に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変異体タンパク質に関し、より詳しくは、生産性と免疫抑制能力が向上された新規IL-10変異体タンパク質及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン10(以下、「IL-10」と称する)は、サイトカイン合成阻害因子(cytokine synthesis inhibitory factor, CSIF)と呼ばれるやく37kDaの非共有結合された同種二量体で発現される抗-炎症性サイトカインである。IL-10は免疫寛容の誘導と維持に重要な役割をし、このような優勢な抗-炎症特性は長期間知られていた。IL-10は、TNFα、IL-1、IL-6、及びIL-12だけでなく、IL-2及びINFγのようなTh1サイトカインのような炎症性サイトカイン(pro-inflammatory cytokine)の分泌を抑制し、マクロファージ、B細胞及びT細胞の分化及び増殖を調節する(Glocker et al.,Ann.NY Acad.Sci.1246:102-107, 2011;Moore et al., Annu.Rev.Immunol.19,683-765(2001);Waal Malefyt et al.,J.Exp.Med.174:915-924,1991),Williams et al.,Immunol.113:281-292,2004)。また、これは抗原提示の強力な抑制剤であって、MHC II発現だけでなく共刺激因子CD80及びCD86の上向き調節を抑制する(Mosser&Yhang,Immunol.Rev.226:205-218,2008)。このような特性のため、IL-10を炎症性腸疾患や乾癬のような免疫疾患などの治療剤として使用しようとする研究が進められてきた。
【0003】
しかし、IL-10は免疫刺激活性という正反対の作用も有するという二重特性を有すると知られている。それに関し、詳しくは、IL-10はB細胞の活性化を刺激し、B細胞の生存を延長し、B細胞のクラススイッチ(class switching)に寄与する。また、NK細胞の増殖とサイトカインの生成を刺激し、CD8+T細胞の特定部分の集団の増殖を促進する成長因子の役割をする(Mosser&Yhang,Immunol.Rev.226:205-218,2009;Cai et al.,Eur.J.Immunol.29:2658-2665,1999;Santin et al.,J.Virol.74:4729-4737,2000;Rowbottom et al.,Immunol.160:3188-3193,1998)。人間において高容量(それぞれ20及び25μg/kg)のIL-10はINFγの生産を増加させると重要に報告されている(Lauw et al.,J.Immunol.,165:2783-2789,2000;Tilg et al.,Gut 50:191-195,2002)。
【0004】
そこで、IL-10タンパク質の87番目アミノ酸であるイソロイシンが免疫活性化に関連しており、それをアラニンに置換すれば免疫活性作用が抑制されるということが報告されている(Ding et al.,J.Exp.Med.191(2):213-223,2000)。しかし、前記変異体IL-10の場合、野生型に比べIL-10R1との親和性が非常に弱いと確認されており、同等な免疫活性のためには高容量の投与が必要という短所がある。
【0005】
一方、IL-10タンパク質は構造的特性のため組換えタンパク質として生産する際に多量の不溶性凝集体が生成されるが、これは生産性において大きな問題点を引き起こす。そこで、IL-10の2次構造上、4番目及び5番目のαらせんの間に6a.a.のリンカーペプチドを導入することで二量体を形成しない単量体性IL-10が開発されたが(Josephson et al.,J.Biol.Chem.275(18):13552-13557,2000)、体内半減期が短くて活性が非常に低いため、それを治療剤として使用するのに障害となっている。このような低い体内安定性を克服するために、IgAのFcドメインに融合タンパク質の形態で発現させる試みが行われたが(Westerhof et al.,PLOS ONE,7(10):e46460,2012)、IL-10活性の回復は制限的であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した問題点を含む様々な問題点を解決するためのものであって、より効率的で体内安定性及び安全性が確保される新たなIL-10変異体タンパク質を提供することを目的とする。しかし、本発明の保護範囲は前記目的に制限されない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、ヒトインターロイキン-10(以下、IL-10)タンパク質の成熟型(mature form)を基準に116番目アミノ酸であるアスパラギンと117番目のアミノ酸であるリシンの間に6乃至12a.a.の長さを有するスペーサーペプチドが挿入された単量体性IL-10変異体タンパク質が提供される。
【0008】
本発明の他の一観点によると、前記ヒトIL-10タンパク質の成熟型を基準に116番目アミノ酸であるアスパラギンと117番目アミノ酸であるリシンの間に6乃至12a.a.の長さを有するスペーサーペプチドが挿入された単量体性IL-10変異体タンパク質を含む融合タンパク質が提供される。
【0009】
本発明のまた他の一観点によると、前記単量体性IL-10変異体タンパク質または前記融合タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドが提供される。
【0010】
本発明の更に他の一観点によると、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターが提供される。
【0011】
本発明の更に他の一観点によると、前記単量体性IL-10変異体タンパク質または前記融合タンパク質を有効成分として含有する免疫抑制剤が提供される。
【0012】
本発明の更に他の一観点によると、前記単量体性IL-10変異体タンパク質または前記融合タンパク質を有効成分として含有する免疫疾患治療剤が提供される。
【0013】
本発明の更に他の一観点によると、治療的に有効な量の前記単量体性IL-10変異体タンパク質または前記融合タンパク質を免疫抑制を必要とする個体に投与するステップを含む前記個体の免疫抑制方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施例による単量体性IL-10変異体タンパク質は、IL-10タンパク質の二重特性のうち一つである免疫活性化作用を抑制するだけでなく、単量体の形態で発現されながらも生産効率が増進され、他の生理活性タンパク質と融合タンパク質の形態で発現されてもその活性がそのまま維持されるなど、従来のIL-10変異体タンパク質に比べ優れた特性を示すため、新たな免疫抑制剤及び/または免疫疾患治療剤として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】IL-10二量体(左側)、前記IL-10二量体の単量体(中央)、及び本発明の一実施例によってスペーサーペプチドが挿入されて安定的な単量体構造を有するIL-10単量体(右側)の3次元構造を示す構造図である。
【0016】
【
図2a】二量体性IL-10変異体タンパク質をFcタンパク質に連結して構築した融合タンパク質の生産過程における非還元及び還元条件でSDS-PAGE結果を示す写真である。
【0017】
【
図2b】最終精製された前記二量体性IL-10変異体融合タンパク質の純度をSEC-HPLC分析で分析した結果を示すクロマトグラムである。
【0018】
【
図2c】本発明の実施例1及び2による単量体性IL-10変異体タンパク質をFcタンパク質に連結した融合タンパク質の精製過程におけるSDS-PAGE分析を行った結果を示す写真である。
【0019】
【
図2d】最終精製された前記実施例1(上端)及び2(下端)の単量体性IL-10変異体融合タンパク質の純度をSEC-HPLC分析で分析した結果を示す一連のクロマトグラムである。
【0020】
【
図2e】本発明の比較例2の単量体性IL-10変異体タンパク質の非還元及び還元条件におけるSDS-PAGE分析結果を示す写真である。
【0021】
【
図2f】最終精製された比較例2の単量体性IL-10変異体融合タンパク質の純度をSEC-HPLC分析で分析した結果を示すクロマトグラムである。
【0022】
【
図3a】本発明の実施例3による融合タンパク質(PG-075-8)を一時的に形質感染された細胞で発現させた後、protein Aを利用して精製する工程中にタンパク質の発現程度を確認するための非還元条件(左側)及び還元条件(右側)におけるSDS-PAGE分析結果を示す写真である。
【0023】
【
図3b】前記融合タンパク質(PG075-8)を一時的に形質感染された細胞で発現させた後、protein Aを利用して精製する工程中に10番目(A10)乃至12番目(A12)の分画に対してSEC-HPLC分析によって純度を確認した結果を示すクロマトグラムである。
【0024】
【
図3c】本発明の比較例3による融合タンパク質(PG075-9)を一時的に形質感染された細胞で発現させた後、protein Aを利用して精製する工程中にタンパク質の発現程度を確認するための非還元条件(右側)及び還元条件(左側)におけるSDS-PAGE分析結果を示す写真である。
【0025】
【
図3d】前記融合タンパク質(PG075-9)を一時的に形質感染された細胞で発現させた後、protein Aを利用して精製する工程中に11番目(A11)乃至12番目(A12)の分画に対してSEC-HPLC分析によって純度を確認した結果を示すクロマトグラムである。
【0026】
【
図3e】本発明の前記実施例3による融合タンパク質(PG075-8)を生産するように製造された安定化細胞株(stable cell line)から前記融合タンパク質の精製工程によるタンパク質の発現程度を確認するための非還元条件(左側)及び還元条件(右側)におけるSDS-PAGE分析結果を示す写真である。
【0027】
【
図3f】前記安定化細胞株で最終精製された融合タンパク質(PG075-8)の純度を確認するためのSEC-HPLC分析結果を示すクロマトグラムである。
【0028】
【
図4a】本発明の比較例1及び2、そして実施例1及び2のIL-10融合タンパク質のCD4
+T細胞の増殖に及ぼす影響をFACS分析で調べた結果を示す一連のヒストグラムである。
【0029】
【
図4b】前記
図4aの結果を定量化したグラフである。
【0030】
【
図4c】本発明の比較例1及び2、そして実施例1及び2のIL-10融合タンパク質のCD8
+T細胞の増殖に及ぼす影響をFACS分析で調べた結果を示す一連のヒストグラムである。
【0031】
【
図4d】前記
図4cの結果を定量化したグラフである。
【0032】
【
図5a】対照群であるrhIL-10、及び本発明の比較例1及び2、そして実施例1及び2のIL-10変異体融合タンパク質の処理濃度による骨髄由来肥満細胞の増殖能に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。
【0033】
【
図5b】対照群であるrhIL-10と本発明の比較例1及び実施例1のIL-10変異体融合タンパク質の処理濃度を上げた後、骨髄由来肥満細胞の増殖能に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。
【0034】
【
図6a】比較例1の二量体性IL-10変異体融合タンパク質の濃度による肥満細胞におけるTNF-αの分泌変化を分析した結果を示すグラフである。
【0035】
【
図6b】本発明の実施例1及び2、そして比較例2の単量体性IL-10変異体融合タンパク質の濃度による肥満細胞におけるTNF-αの分泌変化を分析した結果を示すグラフである。
【0036】
【
図6c】本発明の一実施例による融合タンパク質PG075-8、及び比較例として二量体性IL-10変異体タンパク質(IL-10M-1;Fc-IL-10Vm)の肥満細胞におけるTNF-αの分泌抑制能を分析した結果を示すグラフである。
【0037】
【
図6d】本発明の一実施例による融合タンパク質PG075-8の処理濃度によるマクロファージにおけるTNF-αの分泌抑制能を分析した結果を示すグラフである。
【0038】
【
図7】本発明の比較例1の二量体性IL-10変異体融合タンパク質(左側)、及び実施例1の単量体性IL-10変異体融合タンパク質(右側)の処理濃度によるIL-10R1との親和度をBLI分析で確認した結果を示す一連のセンソグラムである。
【0039】
【
図8a】比較例としてFcεRIα-FcのマウスIgEとの親和性をBLI分析で分析した結果を示すセンソグラムである。
【0040】
【
図8b】本発明の実施例3の融合タンパク質PG075-8(FcεRIα-Fc-IL-10Vm;下端)のマウスIgEとの親和性をBLI分析で分析した結果を示すセンソグラムである。
【0041】
【
図8c】本発明の実施例3の融合タンパク質FcεRIα-Fc-IL-10Vm(PG075-8)のヒトIgEとの親和度をBLI分析で分析した結果を示すセンソグラムである。
【0042】
【
図9】本発明の一実施例による融合タンパク質を実験動物(ラット)に多様な経路(静脈注射、腹腔注射、筋肉注射、及び皮下注射)で投与した後、最大330時間まで血清内に残っている融合タンパク質の量を定量することで薬物動態学分析を行った結果を示すグラフである。
【0043】
【
図10】本発明の一実施例による融合タンパク質PG075-8を実験動物に投書する際、白血球(A)、赤血球(B)、及び血小板(C)の数の変化が現れるのか否かを調べた血液毒性分析結果を示す一連のグラフである。
【0044】
【
図11】本発明の一実施例による融合タンパク質PG075-8が実際動物でアレルギー症状を減少させるのか否かを調べたものであって、OVAで感作されたマウスに対してOVAの経口投与で飲食物アレルギーを誘発させた後、本発明の一実施例によるPG075-8及び比較例としてIgE TRAPを投与した際の下痢症状の変化(A)、実験終了後に犠牲されたマウスから測定された遊離IgEの濃度(B)、総IgEの濃度(C)、及びアレルギー因子として血中肥満細胞内の脱顆粒酵素(MCPT-1,mast cell protease-1)の濃度(D)を測定した結果を示す一連のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の一観点によると、ヒトインターロイキン-10(以下、IL-10)タンパク質の成熟型を基準に116番目アミノ酸であるアスパラギンと117番目のアミノ酸であるリシンの間に6乃至12a.a.の長さを有するスペーサーペプチドが挿入された単量体性IL-10変異体タンパク質が提供される。
【0046】
前記ヒトIL-10タンパク質の成熟型の形態は、UniProtKB P22301に記載の19-178番目のアミノ酸配列(配列番号46)から由来するものである。
【0047】
前記単量体性IL-10変異体タンパク質において、前記スペーサーペプチドは7乃至11a.a.、8乃至10a.a.または9a.a.の長さを有し、6、7、8、9、10、11、または12a.a.の長さを有する。本発明の具体的な様態において、前記スペーサーペプチドはGGSGGSGGS(配列番号4)、(GGGSGG)n(単位体:配列番号5、nは1または2の整数)、(G4S)n(単位体:配列番号12、nは1または2の整数)、(GGS)n(nは2乃至4の整数)、(GS)n(nは3乃至6の整数)、または(GSSGGS)n(単位体:配列番号13、nは1乃至2の整数)のアミノ酸配列を有するスペーサーペプチドであり、前記スペーサーペプチドを構成するアミノ酸は免疫原性を誘発しないのであれば他の種類のアミノ酸に置換されてもよいが、好ましくは9a.a.の長さを有する。
【0048】
本文書で使用される用語である「スペーサーペプチド(spacer peptide)」は、特定タンパク質の内部に挿入されて該当タンパク質の構造及び/または機能を変化させる役割をするペプチドを意味する。このような意味で、他の融合パートナーを連結するリンカーペプチドと区分されるが、通常のリンカーペプチドがするリンカーペプチドとして使用されてもよい。
【0049】
本発明の一実施例による単量体性IL-10変異体タンパク質は配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0050】
前記単量体性IL-10変異体タンパク質は、ヒトIL-10タンパク質の成熟型の形態を基準に87番目アミノ酸であるイソロイシンがアラニンに置換された単量体性IL-10変異体タンパク質であり、詳しくは、配列番号39のアミノ酸配列を有する。
【0051】
前記単量体性IL-10タンパク質は、単量体性IL-10を形成する構造を示すのであれば配列番号1または配列番号39のアミノ酸配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上同じものであってもよく、哺乳動物由来のタンパク質はいずれも含まれる。
【0052】
本発明の他の一観点によると、前記ヒトIL-10タンパク質の成熟型を基準に116番目アミノ酸であるアスパラギンと117番目アミノ酸であるリシンの間に6乃至12a.a.の長さを有するスペーサーペプチドが挿入された単量体性IL-10変異体タンパク質を含む融合タンパク質が提供される。
【0053】
本発明で使用される用語である「融合タンパク質」は、2つ以上のタンパク質またはタンパク質内の特定機能を担当するドメインがそれぞれのタンパク質またはドメインの本然の機能を担当するように連結された組換えタンパク質(recombinant protein)を意味する。前記2つ以上のタンパク質またはドメインの間には通常柔軟な構造を有するリンカーペプチド(linker peptide)が挿入される。前記リンカーペプチドは、AAGSGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号2)、GGSGG(配列番号3)、GGSGGSGGS(配列番号4)、GGGSGG(配列番号5)、(G4S)n(単位体:配列番号12、nは1乃至10の整数)、(GGS)n(nは1乃至10の整数)、(GS)n(nは1乃至10の整数)、(GSSGGS)n(単位体:配列番号13、nは1乃至10の整数)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号14)、EGKSSGSGSESKST(配列番号15)、GSAGSAAGSGEF(配列番号16)、(EAAAK)n(単位体:配列番号17、nは1乃至10の整数)、CRRRRRREAEAC(配列番号18)、A(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4A(配列番号19)、GGGGGGGG(配列番号20)、GGGGGG(配列番号21)、AEAAAKEAAAAKA(配列番号22)、PAPAP(配列番号23)、(Ala-Pro)n(nは1乃至10の整数)、VSQTSKLTRAETVFPDV(配列番号24)、PLGLWA(配列番号25)、TRHRQPRGWE(配列番号26)、AGNRVRRSVG(配列番号27)、RRRRRRRR(配列番号28)、GFLG(配列番号29)、GSSGGSGSSGGSGGGDEADGSRGSQKAGVDE(配列番号30)、GGGGSGGGGSGGGGSEPKSSDKTHTCPPCP(配列番号31)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号34)、GGGGSGGGGSGGGGSEKEKEEQEERTHTCPPCP(配列番号35)、RNTGRGGEEKKGSKEKEEQEERETKTPECP(配列番号36)、GGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCP(配列番号37)、GSGGGSGTLVTVSSESKYGPPCPPCP(配列番号38)、EPKSSDKTHTCPPCP(配列番号40)、EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号41)、THTCPPCP(配列番号42)、GGGGSGGGGSGGGGSAKNTTAPATTRNTTRGGEEKKKEKEKEEQEERTHTCPPCP(配列番号43)、AGSGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号44)、及びGGGSGGSTHTCPPCP(配列番号45)などが含まれる。
【0054】
前記融合タンパク質は他の機能を担当する一つ以上の融合パートナータンパク質(partner protein)を含むが、このような融合パートナータンパク質は、標的タンパク質に特異的に結合する抗体、前記抗体の抗原-結合断片、前記標的タンパク質に特異的に結合する抗体ミメティック、抗体のFc領域、抗体Fc領域受容体、前記抗体Fc領域受容体またはそのFc領域結合細胞外ドメイン、二量体化ドメイン、サイトカイン、または免疫調節ペプチドである。
【0055】
前記融合タンパク質において、前記抗体の抗原結合断片はF(ab’)2、Fab’、scFv、diabody、triabody、sdAb(single domain antibody)、VNARまたはVHHであり、前記抗体ミメティックはaffibody、affilin、affimer、affitin、alphabody、anticalin、avimer、DARPin、Fynomer、Kunitz domain peptide、monobody、repebody、VLR、またはnanoCLAMPである。前記抗体のFcドメインはIgG、IgA、IgD、IgE、またはIgMのFcであり、前記Igサブクラスのうち2つ以上のドメイン(ヒンジ、CH2、及びCH3ドメインなど)が混合されたハイブリッドFc(hyFc)であるが、前記IgGはIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4であり、特に、Fcγ受容体(FcγRc)及び補体(C1q)に対する親和度が低いよう、Fcの効果器(effector)機能である抗体依存性細胞障害作用(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)または補体依存性細胞障害作用(complement-dependent cytotoxicity、CDC)を担当する機能基部分に変異が誘導された変異体Fc及び/または胎児性Fc受容体(neonatal Fc receptor、FcRn)に対する選択的親和度が高くて血中半減期が増加されるように変異された変異体Fcである。このうち、前記ハイブリッドFc(hyFc)は韓国特許第897938号、第1380732号、第1380729号などの記載のものを使用し、前記変異体Fcは国際特許出願PCT/KR2020/006346に記載の変形免疫グロブリンFcタンパク質(NTIG)である。より詳しくは、前記Fc領域は配列番号6乃至9で記載されるアミノ酸配列のうちいずれか一つのアミノ酸配列を含む。前記「NTIG」は、配列番号6及び7かならる群より選択されるハイブリッドFc(hyFc)タンパク質の18番目及び196番目アミノ酸が他のアミノ酸に変異されてADCC及びCDCのような効果器機能がないながらもFcRnに対する選択的親和度が増加し、血中半減期が改善された変形Fcドメインタンパク質を意味する。このような前記NTIGは、配列番号8及び9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0056】
前記二量体化ドメインは、抗体のヒンジドメイン、LIM/double zinc-finger motif、RAG1ドメイン、HAT dimerization domain、TRFH dimerization domain、Stat3 dimerization、またはLFB1/HNF1 dimerization domainであるが、これに限らない。前記サイトカインはIL-4、IL-6、IL-α、またはTGF-βであり、前記免疫調節ペプチドはPD-L1またはCTLA-4(CD152)である。特に、前記Fcドメインが融合パートナータンパク質であれば、ヒンジ部分に存在するシステイン基の間に生成される分子間二硫化結合によって二量体を形成する。前記融合パートナータンパク質は、本発明の一実施例による単量体性IL-10変異体タンパク質のN-末端またはC-末端のいずれにも連結される。併せて、この場合、上述した多様なリンカーペプチドを介して連結される。
【0057】
本文書で使用される用語である「抗体」は、免疫グロブリン(immunoglobulin)分子であって2つの同じ重鎖及び2つの同じ軽鎖が結合して生成される二重四量体タンパク質で前記軽鎖の可変領域(VL)及び前記重鎖の可変領域(VH)によって構成される抗原結合部位(antigen-binding site)によって抗原特異的結合をし、それによって抗原特異的体液性免疫反応(humoral immune response)を誘発する。
【0058】
本文書で使用される用語である「抗体の抗原結合断片(antigen-binding fragment of antibody)」は、抗体から由来する抗原結合能を有する断片であって、抗体をタンパク質切断酵素で切断して生成された断片はもちろん、組換え方式で生成された単一鎖断片をいずれも含むが、これにはFab、F(ab’)2、scFv、diabody、triabody、sdAb、及びVHHが含まれる。
【0059】
本文書で使用される用語である「Fab」は、抗原結合抗体断片(fragment antigen-binding)であり、抗体分子をタンパク質分解酵素であるパパインで切断して生成される断片で、VH-CH1及びVL-CLの2つのペプチドの二量体であって、パパインによって生成された他の断片はFc(fragment crystallizable)と称する。
【0060】
本文書で使用される用語である「F(ab’)2」は、抗体をタンパク質分解酵素であるペプシンで切断して生成される断片のうち抗原結合部位を含む断片であって、前記2つのFabが二硫化結合で連結された四量体状を示す。ペプシンによって生成された他の断片はpFc’と称する。
【0061】
本文書で使用される用語である「Fab」は、前記F(ab’)2を弱い還元条件で分離することで生成されるFabと構造が類似した分子である。
【0062】
本文書で使用される用語である「scFv」は「single chain variable fragment」の略語であって実際の抗体の断片ではないが、抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を約25a.a.サイズのリンカーペプチドで連結して製造した一種の融合タンパク質であり、固有の抗体断片ではないにもかかわらず、抗原結合能を有すると知られている(Glockshuber et al.,Biochem.29(6):1362-1367,1990)。
【0063】
本文書で使用される用語である「diabody」及び「triabody」は、それぞれ2つ及び3つのscFvがリンカーによって連結された形態の抗体断片を意味する。
【0064】
本文書で使用される用語である「sdAb(single domain antibody)」は、ナノボディ(nanobody)とも呼ばれる抗体の単一可変領域断片からなる抗体断片である。主に重鎖から由来するsdAbが使用されるが、軽鎖から由来する単一可変領域断片も抗原に対して特異的結合をすると報告されている。重鎖及び軽鎖からなる通常の抗体とは異なって、単一鎖の二量体のみからなるサメ抗体の可変領域断片からなるVNAR、及びラクダ類抗体の可変領域断片からなるVHHもsdAbに含まれる。
【0065】
本文書で使用される「抗体ミメティック(antibody mimetic)」は、2つの重鎖及び2つの軽鎖が異種四合体の4次構造を形成して機能を発揮する通常の全長抗体とは異なって、monobody、可変性リンパ球受容体(VLR)などのように非抗体由来のタンパク質の骨組から製造される抗体と類似した機能、つまり、抗原結合能を有するタンパク質を含む概念である。このような抗体ミメティックとしては、タンパク質AのZドメイン由来のAffibody(Nygren,P.A.,FEBS J.275(11):2668-2676,2008)、Gamma-B crystallinまたはUbiquitin由来のAffilin(Ebersbach et al.,J.Mol.Biol.372(1):172-185,2007)、Cystatin由来のAffimer(Johnson et al.,Anal.Chem.84(15):6553-6560,2012)、Sac7d由来のAffitin(Krehenbrink et al.,J.Mol.Biol.383 (5):1058-1068,2008)、Triple helix coiled coilタンパク質由来のAlphabody(Desmet et al.,Nat.Commun.5:5237,2014)、lipocalin由来のAnticalin(Skerra et al.,FEBS J.275(11):2677-2683,2008)、多様な膜受容体のドメイン由来のAvimer(Silverman et al.,Nat.Biotechnol.23(12):1556-1561,2005)、Ankyrin repeat motif由来のDARPin(Stumpp et al.,Drug Discov.Today.13(15-16):695-701,2008)、Fynタンパク質のSH3ドメイン由来のFynomer(Grabulovski et al.,J.Biol.Chem.282(5):3196-3204,2007)、多様なタンパク質阻害剤のKunitzドメイン由来のKunitz domain peptide(Nixon and Wood,Curr.Opin.Drug Discov.Dev.9(2):261-268,2006)、フィブロネクチンの10番目の第3型ドメイン由来のmonobody(Koide and Koide,Methods Mol.Biol.352:95-109,2007)、炭水化物結合モジュール32-2由来のnanoCLAMP(Suderman et al.,Protein Exp.Purif.134:114-124,2017)、ヌタウナギ由来の可変性リンパ球受容体(variable lymphocyte receptor,VLR)(Boehm et al.,Ann.Rev.Immunol.30:203-220,2012)、及び前記VLRを基に抗原親和性を向上させるように操作されたrepebody(Lee et al.,Proc.Natl:Acad.Sci.USA,109:3299-3304,2012)などが含まれる。
【0066】
前記融合タンパク質において、前記抗体Fc領域受容体はIgE Fc受容体のαサブユニットの細胞外ドメインである。
【0067】
本発明のまた他の一観点によると、前記単量体性IL-10変異体タンパク質または前記融合タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドが提供される。
【0068】
本発明の更に他の一観点によると、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターが提供される。
【0069】
前記組換えベクターにおいて、前記ポリヌクレオチドは調節配列に作動可能に連結される遺伝子コンストラクトの形態で含まれる。
【0070】
本文書で使用される用語である「作動可能に連結される(operably linked to)」とは、目的とする拡散配列(例えば、試験管内転写/翻訳システムで、または宿主細胞で)がその発現が行われるようにする方式で前記調節配列に連結されていることを意味する。
【0071】
前記「調節配列」という用語は、プロモータ、エンハンサ、及び他の調節要素(例えば、ポリアデニル化信号)を含む意味である。調節配列には、多くの宿主細胞で目的とする核酸が恒常的に発現されるように指示すること、特定の組織細胞でのみ目的とする核酸が発現されるように指示すること(例えば、組織特異的調節配列)、そして特定信号によって発現が誘導されるように指示すること(例えば、誘導性調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、及び所望のタンパク質発現の水準などのような因子によって異なり得るということは当業者であれば理解できる。本発明の発現ベクターは宿主細胞に導入されて前記融合タンパク質を発現する。前記真核細胞及び原核細胞で発現を可能にする調節配列は当業者によく知られている。上述したように、これらは通常転写開始を担当する調節配列、及び選択的に転写物の転写終結及び安定化を担当するポリ-A信号を含む。更なる調節配列は、転写調節因子以外にも翻訳増進因子及び/または天然組み合わせまたは異種性プロモータ領域を含む。例えば、哺乳類の宿主細胞で発現を可能にする可能な調節配列は、CMV-HSVチミジンキナーゼプロモータ、SV40、RSV-プロモータ(ラウス肉腫ウイルス)、ヒト腎臓要素1α-プロモータ、糖質コルチコイド誘導性MMTV-プロモータ(モロニーマウス腫瘍ウイルス)、メタロチオネイン誘導性またはテトラシクリン誘導性プロモータ、またはCMV増幅剤またはSV-40増幅剤などのような増幅剤を含む。神経細胞内発現のために、神経細糸プロモータ(neurofilament-promoter)、PGDF-プロモータ、NSE-プロモータ、PrP-プロモータ、またはthy-1-プロモータなどが使用されるということが考慮されている。前記プロモータは当分野で知られており、文献(Charron J.Biol.Chem.270:25739-25745,1995)に記述されている。原核細胞内の発現のために、lac-プロモータ、tac-プロモータ、またはtrpプロモータを含む多数のプロモータが開示されている。転写を開始する因子の他、前記調節配列は本発明の一実施例によるポリヌクレオチドの下流(downstream)にSV-40-ポリ-A部位またはTK-ポリ-A部位のような転写終結信号を含む。本文書において、適当な発現ベクターは当分野で知られており、その例としては、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Parmacia)、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogene)、pSPORT1(GIBCO BRL)、pGX-27(特許第1442254号)、pX(Pagano et al.,Science 255:1144-1147,1992)、酵母ツーハイブリッド(two-hybrid)ベクター、例えば、pEG202及びdpJG4-5(Gyuris et al.,Cell 75:791-803,1995)、または原核発現ベクター、例えば、λgt11またはpGEX(Amersham Pharmacia)がある。本発明の核酸分子以外にも、ベクターは分泌信号を暗号化するポリヌクレオチドを更に含んでもよい。前記分泌信号は当業者によく知られている。そして、使用された発現システムによって、融合タンパク質を細胞区画に導くリーダ配列(leader sequence)が本発明の一実施例によるポリヌクレオチドのコード配列に組み合わせられるが、好ましくは解読されたタンパク質またはそのタンパク質を細胞質周辺または細胞外媒質に直接分泌するリーダ配列である。
【0072】
また、本発明のベクターは、例えば、標準組換えDNA技術によって製造されるが、標準組換えDNA技術には、例えば、平滑末端及び接着末端ライゲーション、適切な末端を提供するための制限酵素処理、不適合な結合を防止鵜するためにアルカリホスファターゼ処理によるリン酸基の除去、及びT4 DNAライゲーズによる酵素的連結などが含まれる。化学的合成または遺伝子組換え技術によって得られた信号ペプチドをコードするDNA、本発明の変異体IL-10タンパク質またはそれを含む融合タンパク質を暗号化するDNAを適切な調節配列が含まれているベクターに組み換えることで、本発明のベクターが製造される。前記調節配列が含まれているベクターは商業的に購入または製造することができるが、本発明の一実施例ではpBispecificベクターをバックボーンとして使用している。
【0073】
前記発現ベクターは分泌信号配列を暗号化するポリヌクレオチドを更に含むが、前記分泌信号配列は、細胞内で発現する組換えタンパク質の細胞外への分泌を誘導し、tPA(tissue plasminogen activator)信号配列、HSV gDs(単純ヘルペスウィルス糖タンパク質Ds)信号配列、または成長ホルモン信号配列である。
【0074】
本発明の一実施例による前記発現ベクターは宿主細胞で前記タンパク質を発現するようにする発現ベクターであり、前記発現ベクターはプラスミドベクター、ウィルスベクター、コスミドベクター、ファージミドベクター、ヒト人工染色体など、いかなる形態を示してもよい。
【0075】
本発明の更に他の一観点によると、前記単量体性IL-10変異体タンパク質または前記融合タンパク質を有効成分として含有する免疫抑制用組成物が提供される。
【0076】
併せて、前記免疫抑制用組成物は、公知の免疫抑制剤成分(免疫抑制の効能を有するcytokine、Decoy receptor、免疫細胞の活性化、分化などに関与するligand及びそれに対する抗体、免疫細胞の活性阻害を与える抗体など)を更に含む。このような公知の免疫抑制剤としては、糖質コルチコイド、細胞増殖抑制剤(cytostatic agent)、抗-CD20抗体、抗-CD3抗体、抗-IL-2抗体、イムノフィリン阻害剤(immunophilin inhibitor)、インターフェロンβ、オピオイド(oipoid)、TNFα結合タンパク質、ミコフェノール酸(mycophenolate)、フィンゴリモド(fingolimod)、またはミリオシン(myriocin)である。前記糖質コルチコイドは、プレドニゾン(prednisone)、デキサメタゾン(dexamethasone)、またはヒドロコルチゾン(hydrocortisone)であり、前記細胞増殖抑制剤はナイトロジェンマスタード(nitrogen mustard)、ニトロソウレア(nitrosourea)、白金錯体化合物(platinum coordination complex)、葉酸類似体(folic acid analogue)、アザチオプリン(azathioprine)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、フルオロウラシル(fluorouracil)、メトトレキサート(methotrexate)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、アントラサイクリン(anthracycline)、マイトマイシンC(mitomycin C)、ブレオマイシン(bleomycin)、またはミトラマイシン(mithramycin)である。前記イムノフィリン阻害剤は、シクロスポリン(ciclosporin)、タクロリムス(tacrolimus)、シロリムス(sirolimus)、またはエベロリムス(everolimus)である。
【0077】
本発明の更に他の一観点によると、前記単量体性IL-10変異体タンパク質または前記融合タンパク質を有効成分として含有する免疫疾患治療用薬学的組成物が提供される。
【0078】
前記薬学的組成物において、前記免疫疾患は、1型糖尿病、円形脱毛症(alopecia areata)、抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome)、関節リウマチ、乾癬または乾癬性関節炎、多発性硬化症(multiple scelerosis)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、アジソン病(Addison’s disease)、グレーブス病(Graves’ disease)、シェーグレン症候群(Sjoegren’s Syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guillian-Barre syndrome)、ハシモト甲状腺炎(Hashimoto’s thyroiditis)、重症筋無力症(Myasthenia gravis)、炎症性筋疾患(inflammatory myophathy)、自己免疫性血管炎(autoimmune vasculitis)、自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis)、溶血性貧血(hemolytic anemia)、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura)、原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis)、強皮症(scleroderma)、白斑(vitiligo)、悪性貧血(pernicious anemia)、アレルギー性疾患、またはセリアック病(celiac disease)である。
【0079】
前記組成物は薬学的に許容可能な担体を含むが、前記担体以外にも薬学的に許容可能な補助剤、賦形剤、または希釈剤を更に含んでもよい。
【0080】
本文書で使用される用語である「薬学的に許容可能な」とは、生理学的に許容され、人に投与される際に通常胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似した反応を起こさない組成物をいう。前記担体、賦形剤、及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸’カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油などが挙げられる。また、充填剤、抗凝固剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、及び防腐剤などを更に含んでもよい。
【0081】
また、本発明の一実施例による薬学的組成物は、哺乳動物に投与する際、活性生物の迅速な放出、または持続、または遅延された放出が可能であるように当業者に公知の方法を使用して剤形化される。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質のセラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態を含む。
【0082】
本発明の一実施例による組成物は多様な経路で投与されるが、例えば、経口、非経口、例えば、坐剤、経皮、静脈、腹腔、筋肉内、病変内、鼻腔、脊椎管内投与で投与され、また、徐放型、または連続的または反復的放出のための移植装置を使用して投与される。投与回数は所望の範囲内で一日一回または数回に分けて投与し、投与期間も特に限らない。
【0083】
本発明の一実施例による組成物は、一般に使用される薬学的に許容可能な担体と共に適合の形態で剤形化される。薬学的に許容可能な担体としては、例えば、水、適合のオイル、食塩水、水性グルコース、及びグリコールなどのような非経口投与用担体などがあり、安定化剤及び保存剤を更に含んでもよい。適合の安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸などのような抗酸化剤がある。適合の保存剤としては、ベンズアルコニウムクロリド、メチルまたはプロピルパラベン、及びクロロブタノールがある。また、本発明による組成物は、その投与方法や剤形によって、必要であれば懸濁剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、酸化防止剤などを適切に含んでもよい。前記例示したものをはじめ、本発明に適合の薬学的に許容可能な担体及び製剤は、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences、最新版]に詳細に記載されている。
【0084】
前記組成物の患者に対する投与量は、患者の伸長、体表面積、年齢、投与される特定化合物、性別、投与時間及び経路、一般的な健康、及び同時に投与される他の薬物を含む多くの要素によって異なり得る。薬学的に活性のタンパク質は100ng/体重(kg)-10mg/体重(kg)の量で投与されるが、より好ましくは1乃至500μg/kg(体重)で投与され、最も好ましくは5乃至50μg/kg(体重)で投与されるが、前記要素を考慮して投与量が調節される。
【0085】
本発明の更に他の一観点によると、治療的に有効な量の前記単量体性IL-10変異体タンパク質または前記融合タンパク質を免疫抑制を必要とする個体に投与するステップを含む前記個体の免疫抑制方法が提供される。
【0086】
前記方法において、前記免疫抑制を必要とする個体は人または人を除いた哺乳動物であり、臓器移植を受けた患者または免疫疾患にかかった個体であって、免疫抑制が必要な患者である。
【0087】
併せて、本発明の単量体性IL-10タンパク質またはそれを含む融合タンパク質は治療的に有効な量で投与される。
【0088】
本文書で使用される用語である「治療的に有効な量(therapeutically effective amount)」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比率で疾患を治療するに十分な量を意味し、有効容量の水準は個体の種類及び重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野でよく知られている要素によって決定される。本発明の組成物の治療的に有効な量は0.1mg/kg乃至1g/kg、より好ましくは1mg/kg乃至500mg/kgであるが、有効投与量は患者の年齢、性別、及び状態によって適切に調整される。
【0089】
以下、実施例及び実験例を介して本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は以下に開示される実施例及び実験例に限らず、互いに異なる様々な形態に具現されるものであって、以下の実施例及び実験例は本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0090】
実施例:単量体性ヒトIL-10変異体の製造
本発明者らは、多様な単量体性ヒトIL-10変異体を考案した。詳しくは、IL-10タンパク質の構造を分析し、二量体性IL-10タンパク質が形成される際にIL-10のN末端と他のIL-10のC末端がペアをなすことに着目して、一つの分子のIL-10のN末端とC末端がペアを成すようにするための最小限のリンカーの長さを考案した。一つの分子のIL-10タンパク質のN末端部分とC末端部分が結合するためには17.3Åの直線距離が必要であるが、そのためにはN末端部分とC末端部分の間に最小限7aa以上のリンカー長が必要であると予想された。この際、一つの分子の間のN末端部分とC末端部分が結合すべきであるため、過度に長いリンカーは逆に末端間の結合の妨害要素として作用すると予想され、9aaの最適のリンカー長と構成しており、最大12a.a.のリンカー長のスペーサーペプチドまで含まれるようにデザインすることができると予想された。
【0091】
詳しくは、本発明者らは、下記表1のような構成を有するヒトIL-10変異体タンパク質配列を決定し、Type II制限酵素であるBsa IとT4 ligaseを使用してNTIG Fcサブ-ベクター、IL-10Vmサブ-ベクター、及び骨格ベクター(pBispecific Backbone;Genexine,Inc.)を一つのチューブで反応させることで、ベクターコンストラクトを製造した。
【0092】
本発明の一実施例によって製造された融合タンパク質の構造
【表1】
前記表1に記載したように、本発明の一実施例ではIL-10タンパク質のN-末端にFcドメインを連結しており、それによって二量体が形成されて、融合タンパク質の分離精製ステップを容易に行うことができる形態にIL-10変異体タンパク質を考案した。ここで使用されたFcタンパク質は、IgG1のヒンジ部分とIgD及びIgG4のハイブリッドタンパク質であるCH2及びCH3部分で構成されたFc変異体(配列番号8及び9)であって国際特許出願PCT/KR2020/006346に記載のものと同じものを使用しており、本文書では前記Fc変異体を便宜上「NTIG」と命名した。前記PCT出願を本文書に参照として挿入する。前記Fc変異体タンパク質と本発明の一実施例によるIL-10変異体タンパク質の間には、配列番号2または3のアミノ酸配列で構成されるリンカーペプチド(linker 1)を装入するように考案した。比較例1で使用されたIL-10タンパク質は、野生型ヒトIL-10タンパク質の87番目アミノ酸であるイソロイシンをアラニンに置換することで免疫活性増進作用を抑制した変異体タンパク質(配列番号10)であって、実施例
1乃至2も同じく87番目アミノ酸の置換を含んでいる。一方、実施例1及び2
で使用されたIL-10タンパク質(配列番号39)、そして比較例2で使用されたIL-10タンパク質(配列番
号11)は、116番目アミノ酸であるアスパラギン(N)と117番目アミノ酸であるリシン(K)の間にペプチドが挿入されたものであって、前記ペプチドとしては配列番号4または5で構成されるアミノ酸配列を有するスペーサーペプチドを使用しており、特に比較例2の配列番号5で記載されるアミノ酸配列で構成されるリンカーペプチド含むIL-10タンパク質(配列番号11)は、Josephsonなどが考案した単量体性IL-10タンパク質と同じ構造を有する単量体性IL-10を含む(Josephson et al.,J.Biol.Chem.275(18):13552-13557,2000)。前記のように考案されたそれぞれの融合タンパク質の構成要素を暗号化するポリヌクレオチドをPCR増幅及びオリゴヌクレオチド合成によって製造した後、それをBsa I制限酵素とT4 ligaseを利用してNTIG sub-vector、及びIL-10Vm sub-vector及び骨格ベクター(pBispecific vector,Genexine,Inc.)にサブクローニングした後、一つのチューブで反応させて最終ベクターコンストラクトを製造した。前記のように製造されたベクターコンストラクトをThermo Fisher社のExpiCHO kitを利用して一時的発現を行った。詳しくは、ExpiCHO-S cellに前記のように製造されたベクターコンストラクトとキット内に含まれているExpiFectamine試薬を混合した後、8%CO
2及び37℃の条件を備えている培養器で1日間培養してから、温度を32℃まで下げて7日目まで培養を行った。
【0093】
次に、Protein A捕獲精製を行い、非還元及び還元条件におけるSDS-PAGE分析によって候補物質が精製されたのかを確認して、候補物質のpI値を考慮した剤形化緩衝液で剤形化を行った。剤形化が完了された物質をNano dropを利用して定量し、SEC-HPLCを利用して最終純度を確認した。
図2a及び
図2bは、IL-10Mの培養及び精製物のSDS-PAGE及びSEC-HPLCを利用した純度を示している。
図2c及び
図2dは、IL-10M-1、IL-10M-2の精製物に対するSDS-PAGE及びSEC-HPLCを利用した純度を示している。
図2e及び
図2fは、IL-10M-3の培養及び精製物のSDS-PAGE及びSEC-HPLCを利用した純度を示している。
【0094】
本発明の一実施例による融合タンパク質の生産結果
【表2】
その結果、表2及び
図2a乃至
図2fに示したように、非単量体性IL-10を生産する場合(比較例1)はタンパク質の生産量が少なく、最も低い純度を示したが、単量体性IL-10を生産する場合(実施例1及び2及び比較例2)はタンパク質の含量及び純度が大幅に増加すると示された。一方、比較例2の場合はタンパク質の含量が最も高かったが、純度の面では本願発明の実施例1のタンパク質が最も高い82.7%の純度を示した。
【0095】
実施例3:FcεRIα-Fc-IL-10Vmの製造
3-1:一時的発現(transient expression)
本発明者らは、IgEと特異的に結合する受容体であるFcεRIαと、前記実施例1及び比較例2の単量体性IL-10変異体タンパク質(IL-10Vm)がFcタンパク質で連結された融合タンパク質を考案した。
【0096】
詳しくは、本発明者らは、下記表3のような構成を有する融合タンパク質をそれぞれ暗号化するポリヌクレオチドをオリゴヌクレオチド合成及びPCRを利用して製造した後、前記実施例1の方法と同じくFcεRIα sub-vector、NTIG Fc sub-vector、及びIL-10Vm sub-vector及び骨格ベクター(pBispecific vector,Genexine, Inc.)にサブクローニングした後、一つのチューブで反応させて最終ベクターコンストラクトを製造した。
【0097】
【表3】
本発明者らは、前記融合タンパク質である実施例3のFcεRIα-Fc-IL-10Vmを「PG075-8」と命名し、比較例3のFcεRIα-Fc-IL-10Vmを「PG075-9」と命名した。前記のように製造された発現ベクターコンストラクトをThermo Fisher社のExpiCHO kitを利用して一時的発現を行った。詳しくは、ExpiCHO-S cellに前記のように製造されたベクターコンストラクトとキット内に含まれているExpiFectamine試薬を混合した後、8%CO
2及び37℃の条件を備えている培養器で1日間培養してから、温度を32℃まで下げて7日目まで250mL規模の培養を行った。
【0098】
次に、Protein A捕獲精製を行い、非還元及び還元条件におけるSDS-PAGE分析によって候補物質が精製されたのかを確認して、候補物質のpI値を考慮した剤形化緩衝液で剤形化を行った。剤形化が完了された物質をNano dropを利用して定量し、SEC-HPLCを利用して最終純度を確認した。
図3a及び3bは、それぞれ実施例3のFcεRIα-Fc-IL-10Vm(PG075-8)の培養及び精製物のSDS-PAGE及びSEC-HPLCを利用した純度を示している。
図3c及び3dは、それぞれ比較例3ののFcεRIα-Fc-IL-10Vm(PG075-9)の培養及び精製物のSDS-PAGE及びSEC-HPLCを利用した純度を示している。
【0099】
前記
図3a乃至3dに示したように、本発明の一実施例によるIL-10Vmタンパク質は、実施例1の単量体性IL-10変異体をAPI(active pharmaceutical ingredient)であるFcεRIαと連結された形態の融合タンパク質を発現する場合、生産収率及び純度が非常に高く示されると確認されたが、比較例2の従来の単量体性IL-10変異体タンパク質を適用する場合はタンパク質の収率及び純度が著しく落ちることが分かった。そこで、本発明者らは、実際APIとして活性タンパク質がIL-10Vmタンパク質と共に連結された形態の融合タンパク質を生産するための安定的細胞株の確立、及び実験室規模のタンパク質の生産には、本発明の実施例1のIL-10Vmタンパク質を使用した。
【0100】
3-2:安定的細胞株の構築及び生産
そこで、本発明者らは、前記実施例3-1で構築した融合タンパク質を暗号化する遺伝子コンストラクトをpAD15発現ベクター(WO2015/009052A)に挿入した後、CHO DG44(from Dr.Chasin,Columbia University,USA)細胞にNeon-transfection systemを利用して形質感染させた。1次スクリーニング過程でHT(5-hydroxytrypamine)がない10% dFBS(Gibco,USA,30067-334),MEMα(Gibco,12561,USA,Cat No.12561-049),HT+(Gibco,USA,11067-030)培地を使用してHT選別を行った。次に、DHFR(dihydrofolate reductase)-システムを利用して発現遺伝子を増幅するために、HT選別されたクローンを利用してメトトレキサート(MTX)増幅を行った。高い生産性のクローンを確保するために、プレート上でミニプールの形態にMTX増幅を行っており、増幅が確認された一種に対して選別を行った後、LDC(Limiting Dilution Cloning;96 wells,30 plates)を行って最終細胞株を確保した。
【0101】
最終確保された細胞株をhyCellCHO培地700mlバッチ培養を行い、培養5日目に収得された培養液に対してProtein A精製を行って精製されたタンパク質を確認して、精製されたタンパク質はSDS-PAGE及びSEC-HPLCによって量及び純度を分析した。
【0102】
その結果、
図3e及び3fで確認されるように、確立された安定的細胞株から本発明の一実施例による融合タンパク質が正常に発現されることが分かった。
【0103】
実験例1:混合リンパ球反応の分析
本発明者らは、前記実施例で製造された融合タンパク質の免疫抑制活性を確認するために、多数の供与者から提供された全血を利用して混合リンパ球反応を分析した。
【0104】
そのために、詳しくは、本発明者らは、10人の供与者から提供された全血をFicoll勾配遠心分離して末梢血液単核球を分離した。前記分離した単核球の数を計数した後、それらを混合して、バイアル(1mL)当たり5×106細胞で細胞ストックを製造した。
【0105】
次に、前記供与者から受けた細胞と受容者の細胞を溶かし、細胞数を計数した後、1×106cells/mlの濃度で再懸濁した。受容者細胞を反応細胞及び刺激細胞に分け、受容者の刺激細胞と供与者の細胞に対して3,000radのガンマ線を照射して刺激した。次に、cell trace violet(V450)で受容者の反応細胞を染色し、cell trace red(APC)で受容者の刺激細胞及び供与者細胞を染色した。1×105cellの反応細胞と1×105cellの受容者の反応細胞を10%FBSが補充されたRPMI培地200μlに添加し混合した。前記混合された細胞を37℃及び5%CO2の条件で6日間培養した。この際、比較例1及び2、そして実施例1及び2の融合タンパク質を0.5μMの濃度で処理した。前記培養が終了された後、FACS分析を行った。FACS分析に使用された抗体は、BV650-結合抗-CD3抗体、PE(phycoerythrin)結合抗-PD1抗体、PE-TR-結合抗-CD14抗体、PE-TR-結合抗-CD19抗体、PerCp-結合抗-CD4抗体、Cy5.5-結合抗-CD4抗体、APC(allophycocyanine)-結合抗-CD8抗体、H7-結合抗-CD8抗体を使用した。 ¥
【0106】
前記FACS分析結果、受容者反応細胞と受容者刺激細胞を反応させる場合(autologous、以下、「Auto」と略称する)は受容者CD4
+T細胞とCD8
+T細胞の増殖が示されないが、受容者反応細胞と供与者刺激細胞を反応させる場合(allogenic、以下、「Allo」と略称する)は受容者CD4
+T細胞とCD8
+T細胞の増殖が確認された(
図4a乃至
図4d)。
図4a乃至
図4dに示されたように、大きな差は見つからなかったが、比較例1の二量体性IL-10融合タンパク質の場合はCD4
+増殖抑制能が最も強力に示されたことに対し、比較例2の単量体性IL-10を含む融合タンパク質の場合は陰性対照群との差が見つからなかった。一方、本願発明の実施例1及び2による単量体性IL-10を含む融合タンパク質は、前記比較例2に比べ優れた免疫抑制能を示した。同じく、CD8
+T細胞増殖抑制能も比較例1の二量体性IL-10融合タンパク質が最も高く示されており、本発明の実施例1及び2による単量体性IL-10融合タンパク質は比較例1よりはCD8
+T細胞増殖抑制能が低く示されたが、比較例2よりはCD8
+T細胞増殖抑制能が高いと確認された。
【0107】
実験例2:肥満細胞増殖の分析
本発明者らは、本発明の単量体性IL-10融合タンパク質の免疫刺激活性を調べることにした。
【0108】
詳しくは、10%FBS、1%抗生剤、rmSCF 20ng/ml及びrmIL-3 10ng/mlを含むRPMI培地が入っている96ウェルプレートに骨髄由来肥満細胞(BMMC)を5×103cells/100μl/well)になるように分注し、ヒト型組換えIL-10と比較例1及び2、そして実施例1及び2のIL-10融合タンパク質を濃度に合わせて希釈した後、前記96ウェルプレートに100μlずつ処理し、37℃及び5%CO2条件で4日間培養した。次に、前記肥満細胞の増殖程度を測定するために、96ウェルプレートにMTS試薬を20μlずつ分注し、前記96ウェルプレートを37℃の温度条件でCO2培養器に入れて2時間反応させた後、microplate読取器を利用して595nmで吸光度を測定した。
【0109】
【表4】
その結果、
図5a及び前記表4で確認されるように、陽性対照群であるrhIL-10の肥満細胞増殖能が最も強く、比較例1及び2のIL-10融合タンパク質の場合はrhIL-10よりは低かったが、いずれも肥満細胞増殖能を有することが分かった。一方、本願発明の実施例1及び2のIL-10融合タンパク質は肥満細胞増殖能が殆ど示されなかった。これは本発明のIL-10変異体タンパク質がIL-10の二重活性のうち免疫活性化特性が完全に抑制されたタンパク質であることを示す結果である。しかし、前記実験結果の場合、本発明の実施例1及び2の融合タンパク質がいかなる活性もない形態に発現された結果であると解釈される恐れがあるため、本発明者らはrhIL-10、実施例1及び比較例1の融合タンパク質のみを対象に処理濃度を更に上げて同じ分析を行った。
【0110】
【表5】
その結果、前記表5及び
図5bに示されたように、本願発明の実施例1の融合タンパク質は100nMという非常に高い濃度でのみ制限的な肥満細胞増殖能を示した。しかし、前記濃度は体内投与の際に使用される投与量に比べ著しく高い濃度であるため、体内投与の際に肥満細胞を刺激するなどの免疫機能の刺激効果は殆どないと期待される。
【0111】
実験例3:免疫抑制活性の分析
前記肥満細胞増殖能の分析に続いて、IL-10融合タンパク質の肥満細胞におけるTNF-α分泌能の減少に及ぼす影響、つまり、免疫抑制活性を調べた。
【0112】
3-1:肥満細胞におけるTNF-α分泌抑制能の分析
そのために、詳しくは、10%FBS、1%抗生剤、rmSCF 20ng/ml及びrmIL-3 10ng/mlを含むRPMI培地が入っている96ウェルプレートに骨髄由来肥満細胞(BMMC)を1×104cells/50μl/well)になるように分注し、ヒト型組換えIL-10と比較例1、2、そして実施例1、2のIL-10融合タンパク質を濃度に合わせて希釈し、抗-DNP IgEを3μg/mlに希釈した後、96ウェルプレートに50μlずつ添加し、37℃及び5%CO2条件で24日間培養した。次に、DNP-BSA(Antigen)が400ng/mLになるように希釈し、96ウェルプレートに50μlずつ添加した後、37℃及び5%CO2条件で一晩反応させた。次に、4℃で1,500rpmの速度で5分間遠心分離した後、新しい96ウェルプレートに回収された上澄み液150μlを分注した後、TNF-α ELISAキット(Biolegend,USA)を利用してTNF-αの濃度を測定した。
【0113】
【表6】
【表7】
その結果、前記表6及び表7、そして
図6a乃至6cで確認されるように、比較例1(IL-10M)の場合は濃度依存的なTNF-αの抑制活性を示した。この際、本発明の実施例1のIL-10M-1及び実施例2のIL-10M-2と比較例2のIL-10M-3の場合は比較例1と類似して濃度依存的なTNF-αの分泌減少能を示したが、その濃度が比較例1に比べ5倍程度高い濃度で同等な活性を示した。その上、本発明の一実施例によるPG075-8の場合、より低い濃度でも非常に優れたTNF-αの分泌抑制能を示しており、IgEを効果的に遮断することが分かった。前記結果をまとめると、本願発明の一実施例によるIL-10変異体タンパク質は二量体型IL-10変異体タンパク質に比べ免疫抑制活性は低く示されたが、IL-10の二重特性のうち一つである免疫活性増進作用の抑制においては最も効果的であって、生産量及び純度の側面で最も有利なIL-10変異体タンパク質であることが分かった。
【0114】
特に本発明の一実施例によるIL-10変異体タンパク質は、類似して単量体の形態に発現される比較例2のIL-10変異体タンパク質に比べ濃度依存的なTNF-αの分泌刺激活性を示しており、FcεRIαが融合された融合タンパク質として使用される場合(実施例3)もアレルギー反応の抑制活性に著しい効果があることが分かった。
【0115】
3-2:マクロファージにおけるLPS誘導TNF-α分泌抑制能の分析
本発明者らは、本発明の一実施例によるPG075-8タンパク質の肥満細胞におけるTNF-αの分泌抑制能を確認したことに続けて、TNF-α媒介の炎症反応に密接な関連がある免疫細胞であるマクロファージでも同じくTNF-αの分泌を抑制することができるのかを調べた。
【0116】
そのために、詳しくは、RAW264.7細胞を5×10
5cells/mLの濃度で用意し、96ウェルプレートに100μlずつ分注した後、37℃、5%CO
2培養器で12時間培養した。次に、本発明の一実施例によるPG075-8を順次に希釈した後、前記培養中のRAW264.7細胞に処理した。この際、LPS(400ng/mL)を96ウェルプレートに100μlずつ処理することでTNF-αの発現を誘導した。次に、37℃、5%CO
2培養器で12時間培養し、上澄み液150μLを分離した後、上澄み液に含まれたTNF-αの発現量を実験例3-1と同じ方法によって測定した(表8及び
図6d)。
【0117】
本発明の一実施例による融合タンパク質(PG075-8)のマクロファージにおけるTNF-αの分泌抑制能
【表8】
その結果、表8及び
図6dで確認されるように、本発明の一実施例によるPG075-8融合タンパク質は濃度依存的にマクロファージにおけるTNF-αの発現を抑制した。
【0118】
実験例4:IL-10受容体との親和度分析
本発明者らは、前記実験例1乃至3の実験結果を基に、比較例1及び実施例2の融合タンパク質のIL-10受容体(IL-10R1)との親和度をバイオレイヤー干渉法(bio-layer interferometry,BLI)分析によって分析した。この際、対照群としては、FcεRIαが連結されておらず、ハイブリッドFc領域に野生型IL-10の87番目アミノ酸であるイソロイシンがアラニンに置換されて、配列番号10のアミノ酸配列を有する免疫活性化機能が抑制された二量体性IL-10変異体タンパク質(IL-10V)が連結された融合タンパク質(IL-10V)、及び、前記IL-10Vの融合タンパク質でIL-10変異体タンパク質の116番目アミノ酸であるアスパラギン(N)と117番目アミノ酸であるリシン(K)の間にスペーサーペプチド(GGSGGSGGS、配列番号4)が挿入された単量体性IL-10変異体タンパク質(IL-10Vm、配列番号1)が連結された融合タンパク質(Fc-IL-10Vm)が使用された。前記NTIG-IL-10Vmは、FcεRIαが連結されていないことを除いては本発明の一実施例によるPG075-8と同じである。
【0119】
そのために、まず本発明者らは、Dip and ReadTM Amine Reactive 2nd Generation(AR2G) Reagent Kit(forteBio,Cat No.18-5092)を利用し、96ウェルプレートにIL-10R His-tagタンパク質を付着した。詳しくは、96ウェルプレートにD.W.200μlを分注した後、前記キットに含まれているamine biosensorを差し込んで10分間水和させた。次に、D.W.200μlを更に分注した後、必要な試料量の1/20でEDC:NHSを1:1で混合した後、D.W.に希釈して96ウェルプレートに200μlずつ分注した。次に、IL-10R His-tagタンパク質を10mM酢酸pH5.0溶液に10μg/mlになるように希釈した後、前記96ウェルプレートに200μlずつ添加した。次に、1Mエタノールアミンを200μlずつ96ウェルプレートに添加した後、BiosensorプレートとサンプルプレートをOctet-2機器に入れて測定した。測定終了後、サンプルプレートに1x Kinetics緩衝液を200μl添加した後、基底値(baseline)を決めた。次に、前記実施例で製造されたNTIG-IL-10融合タンパク質を多様な濃度(0.62、125、250、500、及び1,000nM)で1x Kinetics緩衝液に希釈した後、サンプルプレートに200μlで分注し、Octet (登録商標)-K2機器でBLI分析を行って結合親和度を測定した。
【0120】
【表9】
その結果、
図7及び表9に示したように、本発明の一実施例による融合タンパク質(NTIG-IL-10Vm)のKD値は29.2nMで、比較例1の単量体性IL-10融合タンパク質(NTIG-IL-10V)のKD値(11.1nM)の約3倍程度に示された。よって、IL-10Rとの親和力は比較例1の単量体性IL-10融合タンパク質に比べ多少落ちると示された。従来の研究結果も、単量体性IL-10の場合は二量体性IL-10タンパク質に比べIL-10Rとの親和性が落ちろと示されているため、十分に予想できることであった。一方、本発明の実施例
3の融合タンパク質(FcεRIα-Fc-IL-10Vm、PG075-8)はKD値が0.001nM未満に示されて、IL-10Rとの親和度がより高いと示された。これはAPIであるFcεRIαと連結されたにもかかわらず、単量体性IL-10変異体がIL-10Rに十分な結合能を有することを示す結果である。
【0121】
実験例5:IgE結合能の分析
本発明者らは、実施例3で製造された融合タンパク質(FcεRIα-Fc-IL-10Vm)のマウスIgE及びヒトIgEとの親和度をバイオレイヤー干渉法(BLI)分析によって分析した。
【0122】
そのために、まず本発明者らは、Dip and ReadTM Amine Reactive 2nd Generation(AR2G) Reagent Kit(forteBio,Cat No.18-5092)を利用し、96プレートに対照群としてIL-10VmがないFcεRIα-Fcタンパク質、及び実施例3で製造された融合タンパク質を付着した。詳しくは、96ウェルプレートにD.W.200μlを分注した後、前記キットに含まれているamine biosensorを差し込んで10分間水和させた。次に、D.W.200μlを更に分注した後、必要な試料量の1/20でEDC:NHSを1:1で混合した後、D.W.に希釈して96ウェルプレートに200μlずつ分注した。次に、FcεRIα-Fcタンパク質及びFcεRIα-Fc-IL-10Vm融合タンパク質を10mM酢酸pH5.0溶液に10μg/mlになるように希釈した後、前記96ウェルプレートに200μlずつ添加した。次に、1Mエタノールアミンを200μlずつ96ウェルプレートに添加した後、BiosensorプレートとサンプルプレートをOctet(登録商標)-K2機器に入れて測定した。測定終了後、サンプルプレートに1x Kinetics緩衝液を200μl添加した後、基底値を決めた。次に、前記実施例において、抗-DNPマウスIgE(Sigma)を多様な濃度(50pM乃至3.125nM)で1x Kinetics緩衝液に希釈した後、サンプルプレートに200μlに分注し、Octet(登録商標)-K2機器でBLI分析を行うことで結合親和度を測定した。
【0123】
【表10】
その結果、表8a及び表10に示されたように、本発明の実施例による融合タンパク質(FcεRIα-Fc-IL-10Vm、PG075-8)のK
D値は0.284nMであって対照群であるFcεRIα-Fcの融合タンパク質より多少低く示されたが、この程度の差は有意な差ではないため、IL-10タンパク質の付加によってIgEとの結合能が落ちないことが分かった。前記結果と共に、本発明で使用したヒトFcεRIαとヒトIgEとの結合度を測定するために、本発明者らは、実施例3の融合タンパク質(PG075-8)とヒトIgEとの結合親和度を上述した方法を利用して分析した。
【0124】
【表11】
その結果、
図8b及び表11に示したように、本発明の一実施例による融合タンパク質は、ヒトIgEとも前記マウスIgEと類似した程度の親和度を示した。
【0125】
実験例6:薬物動態学(pharmacokinetics)の分析
本発明者らは、本発明の融合タンパク質が体内に投与される際にどれぐらいの安定性を有するのかを確認するために、薬物動態学分析を行った。
【0126】
詳しくは、各群当たり3頭のSDアットを対象に本発明の一実施例による融合タンパク質(PG075-8)を1mg/kgの投与量で静脈注射、腹腔注射、筋肉注射、及び皮下注射でそれぞれ1.0mL/kg、1.0mL/kg、0.4mL/kg、及び1.0mL/kgの体積で投与した後、静脈注射の場合は0分、5分、1時間、5時間、10時間、24時間、48時間、72時間、120時間、168時間、240時間、及び336時間、そして他の投与方法(腹腔注射、筋肉注射、及び皮下注射)の場合は5分後の測定を除いては前記静脈注射と同じ時間帯に血清を採集して、ヒトIgG4 Fc ELISAを利用して前記融合タンパク質を定量した。
【0127】
その結果、
図9に示したように、本発明の一実施例による融合タンパク質は投与経路に構わず経時によって緩慢な減少傾向を示したが、これは本発明の一実施例による融合タンパク質が体内で相当期間安定的に維持されることを示す。
【0128】
実験例7:血液毒性の分析
従来の組換えIL-10は投与濃度を上げるか繰り返し投与する際に血液内のヘモグロビン濃度が減少することで貧血症状を起こし、血小板濃度が減少することで血小板減少症(thromocytopenia)を起こす副作用が報告されている(Tilg et al.,J.Immunol.164(4):2204-2209,2002;Fedorak et al.,Gastroendocrinol.119(6):1473-1482,2000)。そこで、本発明者らは、本発明の一実施例による融合タンパク質がそのような副作用を示すのか否かについて調べた。
【0129】
そのために、詳しくは、本発明者らは、雌性ICRマウスを対象に群当たり3頭ずつ構成した後、各群ごとにPG075-8を0、50、150、及び300mg/kgの容量で投与し、薬物投与後11日目に血液を採集して、血球分析器(N-V,SYSMEX,JAPAN)を利用して鑑別白血球数(white blood cell differential count)、総赤血球数(total RBC)、及び血小板数(total platelet)を分析した。その結果、
図10に示したように、PG075-8を投与する際、血球細胞などの数には全く影響を及ぼさなかった。
【0130】
実験例8:飲食物アレルギーに対する効能実験
本発明者らは、本発明の一実施例による融合タンパク質がPG075-8が実際アレルギー疾患に対して効果を示すのか否かを確認するために、アレルギー誘発原である卵白アルブミン(OVA)で感作した実験動物を対象に、OVA経口投与の際に発生するアレルギー症状である下痢症状がどれぐらい改善されるのかを調べた。
【0131】
詳しくは、Balb/cマウス(koatech)に対してOVA(ovalbumin)50μg及びアラム(Alum)1mgを混合した溶液を14日間隔で2回腹腔投与して感作(sensitization)した。次に、28、30、32、34、36日目に計5回にわたって2日間隔でOVA 50mgを経口投与し、腸に飲食物アレルギーを誘発した。その過程で、31日目に各群を構成する薬物を投与した。第1群(対照群)にはリン酸緩衝液(PBS)を、第2群にはIgE
TRAP(5mg/kg)を、第3群には本発明の一実施例によるPG075-8(7.3mg/kg)をそれぞれモル数を合わせて計算し投与した。計5回に分かってOVAを経口投与しながら下痢の発生有無を確認し、37日目にマウスを剖検して、各群に属するマウスに対して小腸内肥満細胞の数、血中IgEの濃度、及び血中肥満細胞の脱顆粒酵素の濃度(MCPT-1,Mast cell protease-1)を分析した。その結果、
図11で確認されるように、本発明の一実施例によるPG075-8を投与した群に属するマウスにおいて、対照群及びIgE
TRAP投与群のマウスに比べ食品アレルギーが緩和されるという効果が確認された。
【0132】
よって、本発明の一実施例によるIL-10Vmと他の融合パートナーとしてFcεRIαを適用した融合タンパク質は、前記免疫細胞の活性化とそれらの機能、特に抗-炎症性サイトカインの分泌、抗原提示能などを抑制することで、過活性化された免疫機能に起因する多様な免疫関連疾患、例えば、アトピー性疾患、飲食品アレルギー、慢性特発性蕁麻疹(chronic spontaneous urticaria)、喘息などのアレルギー疾患の治療に使用される。
【0133】
本発明上述した実施例及び実験例を参考に説明されたがこれは例示に過ぎず、該当技術分野の通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であることを理解できるはずである。よって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付した特許請求の範囲の技術的思想によって決められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の一実施例による単量体性IL-10変異体タンパク質とそれを含む融合タンパク質は、免疫関連疾患の治療剤の開発に非常に有用に使用される。
【配列表】