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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】導光ユニット、内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/07 20060101AFI20240603BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240603BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20240603BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20240603BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A61B1/07 732
A61B1/00 513
G02B23/26 B
G02B5/02 A
G02B5/00 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022507123
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2020010868
(87)【国際公開番号】W WO2021181616
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 良典
(72)【発明者】
【氏名】大原 聡
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-075324(JP,A)
【文献】特開2016-034353(JP,A)
【文献】特開2004-329539(JP,A)
【文献】特開2011-212338(JP,A)
【文献】実開昭59-161119(JP,U)
【文献】特開2019-051022(JP,A)
【文献】特開2004-033669(JP,A)
【文献】特開2009-077843(JP,A)
【文献】特開2001-116933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光部材と、前記導光部材を取り囲む保護部材と、を備える導光ユニットであって、
前記導光部材は、外径を有する光ファイバを含み、
前記保護部材は、線状素線である金属材料を含み、さらに、複数の前記金属材料からなる網状構造を有し、
前記金属材料は、前記線状素線の形状が、径方向に見た横断面形状が扁平形状であり、
前記網状構造に形成された隙間が、前記外径よりも小さい、
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の導光ユニットにおいて、さらに、
前記保護部材を外側から被覆する光拡散部材であって、狭帯域光を拡散する光拡散部材、を更に備える、
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の導光ユニットにおいて、さらに、
前記保護部材を内側から被覆する摩擦緩和部材であって、内部に前記導光部材を収容する摩擦緩和部材を備える
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の導光ユニットにおいて、さらに、
前記光拡散部材を取り囲み、前記光拡散部材で拡散した光を遮る遮光部材を備える
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の導光ユニットにおいて、さらに、
前記光拡散部材と前記遮光部材との間隔を所定範囲内で保持する間隔保持部材を備える
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の導光ユニットにおいて、
前記間隔保持部材は、前記導光ユニットの形状を保持する蛇管を含む
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項7】
請求項1に記載の導光ユニットにおいて、
前記金属材料は、白色光に対してよりも、狭帯域光に対して高い吸収率を有する
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項8】
請求項1に記載の導光ユニットにおいて、
前記網状構造が形成する矩形の隙間の対角長は、前記光ファイバの前記外径よりも小さい
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項9】
請求項2に記載の導光ユニットにおいて、
前記光拡散部材は、表面に形成された凹凸で狭帯域光を拡散する
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項10】
請求項2に記載の導光ユニットにおいて、
前記光拡散部材は、前記光拡散部材が含有する光拡散粒子で狭帯域光を拡散する
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項11】
請求項1に記載の導光ユニットにおいて、
前記隙間は、軸方向に沿って周期的に形成されている、
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項12】
請求項1に記載の導光ユニットにおいて、
前記導光部材は、複数の前記光ファイバが束ねられることで形成される、
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項13】
請求項1に記載の導光ユニットにおいて、
前記導光部材は、レーザ光源から出射された所定の波長帯域に属する狭帯域光を導光し、
前記金属材料は、可視光帯域のうち、前記所定の波長帯域に属する光に対して、前記所定の波長帯域以外に属する光よりも、高い吸収率を有する材料である、
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項14】
請求項13に記載の導光ユニットにおいて、
前記導光部材は、レーザ光源から出射された青色帯域に属する狭帯域光を導光し、
前記金属材料は、緑色帯域から赤色帯域の光よりも、青色帯域の光に対して、高い吸収率を有するステンレス鋼である、
ことを特徴とする導光ユニット。
【請求項15】
請求項1に記載の導光ユニットを備える内視鏡システムであって、さらに、
前記導光部材が導光する狭帯域光を出射するレーザ光源を備える
ことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項16】
請求項15に記載の内視鏡システムにおいて、さらに、
内視鏡を備え、
前記内視鏡は、前記導光ユニットと前記レーザ光源と、を含む
ことを特徴とする内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、導光ユニット、内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病変の早期発見、早期治療が可能な内視鏡システムは、医療分野を中心に、ますますその利用が拡大している。また、工業分野においても、わずかな隙間から機器の内部に入り込み、様々な検査を可能とする内視鏡システムは、社会の安心・安全に大きく貢献するものとして、広く利用されている。
【0003】
内視鏡システムの光源としては、これまで、主に、キセノンランプなどのランプ光源、LED光源などが利用されてきたが、近年では、レーザ光源を利用した内視鏡システムも導入され始めている。レーザ光源は、高輝度、低消費電力、コンパクト、起動が速いなどの、多くのメリットを備えており、今後ますますの利用が期待されている。
【0004】
光源にレーザを用いる場合、ビデオスコープには、高出力なレーザ光が保護チューブから外に漏れ出ないような構造が求められる。ビデオスコープの保護チューブから光が漏れ出す状況としては、基本的には、光ファイバが破損していることが想定されるため、保護チューブ内での光ファイバの破損を抑制することで、保護チューブから外に光が漏れ出すことを抑制することが可能である。光ファイバの破損を抑制する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-51022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、光ファイバの破損を完全に防止することは容易ではない。例えば、光ファイバが外力によって破損しないように光ファイバを保護する構造を厚くするにしても、ビデオスコープの挿入部の径には制限があるため、このような対応には限界がある。特に、経口内視鏡、経鼻内視鏡などの細径の内視鏡システムにおいては、光ファイバの破損を完全に防止することは難しい。
【0007】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、光ファイバなどの導光部材の破損への対策が施された導光ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る導光ユニットは、導光部材と、前記導光部材を取り囲む保護部材と、を備える導光ユニットであって、前記導光部材は、外径を有する光ファイバを含み、前記保護部材は、線状素線である金属材料を含み、さらに、複数の前記金属材料からなる網状構造を有し、前記金属材料は、前記線状素線の形状が、径方向に見た横断面形状が扁平形状であり、前記網状構造に形成された隙間が、前記外径よりも小さい。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、光ファイバなどの導光部材の破損への対策が施された導光ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】内視鏡システム1の構成を例示した図である。
図2】内視鏡システム2の構成を例示した図である。
図3】第1の実施形態に係る導光ユニット100の構成を例示した図である。
図4】保護部材102の構成を説明するための図である。
図5図4の線V-Vにおける断面図である。
図6】光拡散部材103の構成を例示した図である。
図7】導光ユニット100の作用について説明するための図である。
図8】光拡散部材113の構成を例示した図である。
図9】第2の実施形態に係る導光ユニット200の構成を例示した図である。
図10】導光ユニット200の作用について説明するための図である。
図11】第3の実施形態に係る導光ユニット300の構成を例示した図である。
図12】導光ユニット300の作用について説明するための図である。
図13】第4の実施形態に係る導光ユニット400の構成を例示した図である。
図14】導光ユニット400の作用について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、内視鏡システム1の構成を例示した図である。以下、図1を参照しながら、各実施形態に共通する内視鏡システム1の構成について説明する。
【0012】
内視鏡システム1は、図1に示すように、撮像素子を有する内視鏡であるビデオスコープ10と、ビデオプロセッサ20と、を備えている。内視鏡システム1は、さらに、光源装置30と、表示装置40を備えてもよい。
【0013】
ビデオスコープ10は、特に限定しないが、例えば、軟性内視鏡である。ビデオスコープ10は、例えば、気管支などの呼吸器系の検査や治療に用いられるビデオスコープであってもよく、消化器系の検査や治療に用いられるビデオスコープであってもよい。さらに、ビデオスコープ10は、医療用のビデオスコープに限らず、工業用のビデオスコープであってもよい。
【0014】
ビデオスコープ10は、図1に示すように、術者が操作する操作部11と、被検物に挿入される挿入部12と、操作部11から延出しビデオプロセッサ20及び光源装置30に接続されたユニバーサルコード13と、ユニバーサルコード13の端部に設けられたコネクタ部14と、を備えている。ビデオスコープ10は、操作部11を被検物の体腔内に挿入した状態で被検物を撮像することで得られた電気信号を、ビデオプロセッサ20へ出力する。
【0015】
ビデオプロセッサ20は、内視鏡システム1の動作を制御する制御装置である。ビデオプロセッサ20は、例えば、ビデオスコープ10からの信号を映像信号に変換して表示装置40に被検物の画像を表示する。また、ビデオプロセッサ20は、例えば、映像信号に基づいて光源装置30を制御してもよく、自動調光制御に関連する処理を行ってもよい。
【0016】
光源装置30は、ビデオスコープ10に狭帯域光を供給する装置であり、具体的には、狭帯域光としてレーザ光を出射するレーザ光源を含んでいる。光源装置30に含まれるレーザ光源は、特に限定しないが、例えば、青色のレーザ光を出射する。この場合、内視鏡システム1は、ビデオスコープ10の先端に青色のレーザ光によって励起されて黄色の光を放射する蛍光体を設けることで、青色と黄色の光が混じった白色光で被検物を照明してもよい。ここでは、青色のレーザ光を例示したが、光源装置30は、他の波長のレーザ光を出射してもよく、また、複数の異なる波長のレーザ光を切り替えて又は同時に出射してもよい。光源装置30から出射するレーザ光の波長は、具体的には、例えば、可視光領域(約380nm~780nm)内の任意の波長であってよい。また、光源装置30から出射するレーザ光の波長は、可視光領域外であってもよく、例えば、紫外領域や赤外領域の波長であってもよい。なお、光源装置30は、さらに、NBI(Narrow Band Imaging)観察のための半導体光源を含んでもよく、内視鏡システム1は、白色光での通常観察と、NBI観察と、を適宜切り替えて行ってもよい。
【0017】
表示装置40は、例えば、液晶ディスプレイであるが、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ、LEDマトリクスパネル、電子ペーパー、プロジェクタなど他の種類の表示装置であってもよい。内視鏡システム1は、さらに、図示しない内視鏡ハンガーを備えてもよく、内視鏡ハンガーにビデオスコープ10を吊り下げて保管してもよい。
【0018】
図1に示す内視鏡システム1では、ビデオスコープ10とビデオプロセッサ20がユニバーサルコード13で接続されているが、本明細書に記載する内視鏡システムは、例えば、図2に示すような、ビデオスコープ50とビデオプロセッサ21が無線で通信可能に接続されるワイヤレス内視鏡システム2であってもよい。この場合、内視鏡システム2に含まれるビデオスコープ50は、術者が操作する操作部51と、被検物に挿入される挿入部52とを備え、さらに、内視鏡ラックに置かれた光源装置30の代わりに、光源装置53を備えてもよい。また、ビデオスコープ50は、商用電源から有線で電力供給を受ける代わりに、ビデオスコープ50内に設けられたバッテリから供給された電力によって動作してもよい。
【0019】
以上のように構成された内視鏡システム1では、光源装置30から出射したレーザ光は光ファイバによってビデオスコープ10のユニバーサルコード13、操作部11、挿入部12へと順番に導光され、ビデオスコープ10の先端から被検物に照射される。即ち、ビデオスコープ10の挿入部12は、レーザ光を被検物に導光する導光ユニットの一例である。
【0020】
ビデオスコープ10では、ユニバーサルコード13と操作部11とは異なり、挿入部12は被検物内に挿入される部分であるため、可能な限り小さな径を有するように設計されるのが通常である。このため、ビデオスコープ10では、概して、ユニバーサルコード13や操作部11にくらべて、光ファイバを取り囲む構造が比較的薄い挿入部12において、光ファイバが折れやすく、また、仮に光ファイバが折れた場合には、光ファイバから出射したレーザ光が比較的薄い周囲の構造を突き破って外に漏れ出しやすい。
【0021】
そこで、以降で説明する各実施形態に係る導光ユニット(ビデオスコープ)は、挿入部の構造を工夫することで、仮に光ファイバが折れたとしても、強いレーザ光が外部に漏れ出ることを防止している。以下、各実施形態について具体的に説明する。
【0022】
[第1の実施形態]
図3は、本実施形態に係る導光ユニット100の構成を例示した図である。図4は、保護部材102の構成を説明するための図である。図5は、図4の線V-Vにおける断面図である。図6は、光拡散部材103の構成を例示した図である。図7は、導光ユニット100の作用について説明するための図である。以下、図3から図7を参照しながら、導光ユニット100の挿入部の構造について説明する。
【0023】
導光ユニット100の挿入部は、図3に示すように、狭帯域光を導光する導光部材である光ファイバ101と、光ファイバ101を取り囲む保護部材102と、保護部材102を外側から被覆する光拡散部材103を含んでいる。なお、狭帯域光は、本実施形態では、レーザ光である。
【0024】
光ファイバ101は、例えば、マルチモード光ファイバであるが、導光部材は、複数の光ファイバが束ねられたバンドル光ファイバであってもよい。光ファイバ101の材料は、例えば、ガラスであるが、ガラスよりも折れにくいプラスティックなどの他の材料であってもよい。光ファイバ101は、柱形状、より望ましくは、円柱形状を有する。以降では、光ファイバ101が外径Dを有する場合を例に説明する。
【0025】
保護部材102とは、保護部材102の外側に配置された部材を、保護部材102の内側に収容した部材から保護する部材のことである。保護部材102は、仮に光ファイバ101が折れて破損した場合であっても、折れた光ファイバ101が挿入部を突き破って外部に飛び出さないように、光ファイバ101を閉じ込める役割を担っている。そのため、保護部材102は、ゴムなどのレーザ光によって容易に溶けてしまう材料ではなく、少なくとも光ファイバ101が導光するレーザ光に対して耐熱性を有する材料で形成されている。具体的には、保護部材102は、例えば、レーザ光が照射されても溶け落ちにくい金属材料であることが望ましい。
【0026】
さらに、保護部材102に用いられる金属材料は、光ファイバ101が導光するレーザ光に対して高い吸収率を有することが望ましく、具体的には、白色光に対してよりも高い吸収率を有することが望ましい。これにより、保護部材102は光ファイバ101を閉じ込める役割と共に、折れた光ファイバ101から出射したレーザ光を弱める役割を担うことができるからである。より具体的には、保護部材102の材料としては、青い光に対する高い吸収率するステンレス鋼(SUS)が望ましい。なお、光ファイバ101が導光するレーザ光は青色に限らない。このため、導光されるレーザ光の波長が青色とは異なる色である場合には、導光ユニットは、その青色とは異なる色の波長に対して高い吸収率を有する材料からなる保護部材を有することが望ましい。
【0027】
また、挿入部には、被検物内で被検物の形状に合わせて変形することが求められる。そのため、保護部材102は、金属のような比較的変形しにくい材料で形成されている場合であっても、可撓性を有するように構成される。具体的には、保護部材102は、小さな隙間が分布することによって可撓性を有していて、望ましくは、例えば、図4に示すような金属材料を編み込むことで形成された網状構造を有している。金属材料からなる網状構造を有することで、レーザ光が照射されても溶け落ちないだけではなく、光ファイバ101との接触により大きな力が保護部材102に局所的に加わったとしても、保護部材102が破れてしまうことを回避することが可能となる。なお、保護部材102が軸方向の任意の位置で変形自在に構成されるためには、隙間は光ファイバ101の軸方向に沿って分布することが望ましく、図4に示すように、軸方向に沿って周期的に隙間Gが存在することがより望ましい。
【0028】
また、保護部材102に形成された隙間が大きすぎると、折れた光ファイバ101が隙間をすり抜けてしまう可能性がある。このため、保護部材102には、光ファイバ101の外径よりも小さな隙間が形成されている。具体的には、例えば、図4に示すような網状構造が形成されている場合であれば、網状構造が形成する矩形の隙間Gの対角長は、光ファイバ101の外径Dよりも小さいことが望ましい。また、矩形が有する2つの対角長(対角長D1、対角長D2)が異なる場合には、より長い対角長D2が光ファイバ101の外径Dよりも小さいことが望ましく、少なくとも、より短い対角長D1が光ファイバ101の外径Dよりも小さいことが望まれる。なお、保護部材102を構成する金属材料102bの断面形状は、図5に示すように、扁平な形状であることが望ましい。このような扁平な線状部材である金属材料を、その厚さの薄い方向に曲げることによって編み込むことで、断面形状が円柱状の金属材料を編み込む場合と比較して、小さな隙間と高い可撓性とを両立することが容易になるからである。
【0029】
光拡散部材103とは、光拡散部材103に入射した光を光拡散部材103の内部又は表面で拡散し、拡散した光を光拡散部材103から出射する部材のことである。光拡散部材103は、仮に光ファイバ101が折れて破損した場合であっても、折れた光ファイバ101から出射したレーザ光の単位面積当たりの光強度を確実かつ十分に弱める役割を担っている。確実且つ十分に光強度を弱めるという目的を達成するために、光拡散部材103には、レーザ光を吸収することで遮光する遮光部材ではなく、レーザ光を拡散する光拡散部材が用いられる。これは、光を吸収する遮光部材よりも光を拡散する光拡散部材の方がレーザ光によって破壊されるリスクが少ないからである。
【0030】
具体的には、光拡散部材103は、例えば、図6に示すように、シリカなどの微粒子を光拡散粒子104として含有してもよく、光拡散粒子104でレーザ光を拡散してもよい。なお、光拡散粒子については、特に限定しない。光拡散部材103には、任意の光拡散粒子が採用し得る。これにより、図7に示すように、折れた光ファイバ101から出射したレーザ光L1が光拡散粒子104で拡散し、単位面積当たりの光強度が弱まった拡散光L2が光拡散部材103から出射するため、強いレーザ光が挿入部から漏れ出ることを防止することができる。
【0031】
以上のように構成された導光ユニット100によれば、たとえ光ファイバ101が破損したとしても導光ユニット100から強い光が外部に漏れ出ることを防止することができる。従って、内視鏡システム1のように挿入部の径に対して制約が課せられた場合であっても、内視鏡システムの光源にレーザ光源を採用することが可能となる。
【0032】
図8は、光拡散部材113の構成を例示した図である。導光ユニット100は、光拡散粒子を含有する光拡散部材103の代わりに、図8に示す光拡散部材113を備えてもよい。光拡散部材113は、表面に形成された不規則な凹凸114でレーザ光を拡散する光拡散部材である。光拡散部材103の代わりに光拡散部材113を備える場合であっても、光拡散部材103を備える場合と同様に、強いレーザ光が挿入部から漏れ出ることを防止することができる。
【0033】
このように、光拡散部材が光を拡散する構造は、光拡散部材が含有する光拡散粒子であっても光拡散部材表面に形成された凹凸であってもよく、いずれの場合であっても、光拡散部材は光を透過するために半透明に構成される。この特徴は、導光ユニットの製造過程において外部から照射した紫外線で光拡散部材よりも内側に塗布された接着材を硬化させることが可能であるという点で、製造上のメリットを併せて享受することを可能とする。
【0034】
[第2の実施形態]
図9は、本実施形態に係る導光ユニット200の構成を例示した図である。図10は、導光ユニット200の作用について説明するための図である。以下、図9及び図10を参照しながら、導光ユニット200の挿入部の構造について説明する。
【0035】
導光ユニット200は、図9及び図10に示すように、保護部材102を内側から被覆する摩擦緩和部材201を備える点が、導光ユニット100とは異なっている。なお、光ファイバ101は、摩擦緩和部材201の内部に収容される。その他の点は、導光ユニット100と同様である。
【0036】
摩擦緩和部材201とは、摩擦力を緩和する目的で部材間に設けられる部材のことであり、具体的には、摩擦緩和部材201が設けられなかった場合に部材間に生じる摩擦力よりも小さな摩擦力を、摩擦緩和部材201とそれぞれの部材との間に生じさせる部材のことである。摩擦緩和部材201は、導光ユニット200の通常使用時において、光ファイバ101の側面が保護部材102に接触することによって大きな摩擦力が発生することを回避し、代わりに、光ファイバ101の側面が保護部材102よりも摩擦係数が低い摩擦緩和部材201に接触することによって、光ファイバ101が保護部材102との摩擦によって傷つくことを防止する役割を担っている。保護部材102は、第1の実施形態において上述したとおり、例えば金属材料からなる網状構造を有している。そのため、光ファイバ101が保護部材102に直接接触すると、光ファイバ101と保護部材102の間に大きな摩擦が生じて、ガラスやプラスティックからなる光ファイバ101の表面(側面)が傷ついてしまう。保護部材102は、保護部材102を内側から被覆することで、このような大きな摩擦が生じることを防止するものである。保護部材102には、摩擦係数が低い材料が用いられることが望ましく、限定しないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Poly Tetra Fluoro Ethylene)などのフッ素樹脂であってもよい。
【0037】
なお、図10に示すように、摩擦緩和部材201と保護部材102と光拡散部材103は隙間なく一体に形成されることが望ましい。以降では、これらをブレードチューブ202と総称する。ブレードチューブ202の具体的な製造方法は特に限定しないが、例えば、摩擦緩和部材201上に金属材料を巻きつけることで網状構造を有する保護部材102を形成し、さらに、その上から光拡散部材103を圧着することで、ブレードチューブ202を形成してもよい。
【0038】
以上のように構成された導光ユニット200によっても、導光ユニット100と同様に、たとえ光ファイバ101が破損したとしても導光ユニット200から強い光が外部に漏れ出ることを防止することができる。また、導光ユニット200によれば、通常使用時における光ファイバ101の損傷を防止することもできるため、導光ユニット200の性能を長期間に渡って維持することが可能となる。また、製造時における光ファイバ101をブレードチューブ202内に挿入する工程において光ファイバ101が損傷することも防止することができるため、歩留まりの改善や、初期不良率の低減も期待できる。
【0039】
[第3の実施形態]
図11は、本実施形態に係る導光ユニット300の構成を例示した図である。図12は、導光ユニット300の作用について説明するための図である。以下、図11及び図12を参照しながら、導光ユニット300の挿入部の構造について説明する。
【0040】
導光ユニット300は、図11及び図12に示すように、光拡散部材103を取り囲み、光拡散部材103で拡散した光を遮る遮光部材301を備える点が、導光ユニット200とは異なっている。その他の点は、導光ユニット200と同様である。
【0041】
遮光部材301とは、遮光部材301に入射した光を吸収することによって遮光部材301を光が通過することを防止する部材のことである。遮光部材301は、光拡散部材103で拡散した、光強度の弱まったレーザ光を吸収することで、挿入部の外部にレーザ光が漏れ出ることを防止する役割を担っている。遮光部材301は、例えば、ゴムなどの弾性部材からなる円筒形状を有し、その中空部分に、光ファイバ101とブレードチューブ202を収容する。遮光部材301の厚さは、挿入部が許容される径に収まる範囲で、かつ、レーザ光を遮光できる程度の厚さに調整すればよい。
【0042】
以上のように構成された導光ユニット300によれば、たとえ光ファイバ101が破損したとしても導光ユニット300から光が外部に漏れ出ることを防止することができる。また、通常使用時及び製造時における光ファイバ101の損傷を防止することができる点については、導光ユニット200と同様である。
【0043】
[第4の実施形態]
図13は、本実施形態に係る導光ユニット400の構成を例示した図である。図14は、導光ユニット400の作用について説明するための図である。以下、図13及び図14を参照しながら、導光ユニット400の挿入部の構造について説明する。
【0044】
導光ユニット400は、図13及び図14に示すように、光拡散部材103と遮光部材301の間隔を所定範囲内に保持する間隔保持部材401を備える点が、導光ユニット300とは異なっている。その他の点は、導光ユニット300と同様である。
【0045】
間隔保持部材401とは、部材間に設けられることでそれらの部材間の間隔を所定範囲内に保持する部材のことである。光拡散部材103で拡散したレーザ光の強度は、光拡散部材103からの距離に応じて大きく変化し、光拡散部材103から離れるほど減衰する。遮光部材301は、上述したように、光を吸収することで光を遮蔽するゴムなどからなる部材であるため、遮光部材301が光拡散部材103に近づきすぎると、光拡散部材103から出射するレーザ光の強度が強い場合に遮光部材301が溶け落ちてしまう可能性がある。間隔保持部材401は、そのような事態が発生することを回避するため、光拡散部材103と遮光部材301との間隔を所定範囲内に保持することで、挿入部が過度に太くなることを防ぎながら、遮光部材301に入射するレーザ光の強度を遮光部材301が耐え得る範囲に調整する役割を担っている。間隔保持部材401には、必然的に遮光部材301よりも強いレーザ光が照射されることになる。このため、間隔保持部材401は、遮光部材301とは異なり、比較的強いレーザ光が照射されても溶け落ちないような材料であることが望ましく、従って、保護部材102と同様に、例えば、金属などが望ましい。
【0046】
また、間隔保持部材401は、挿入部の全体的な形状を維持する役割も担っている。このため、ある程度の硬さを有する材料からなることが望ましく、その点においても間隔保持部材401が金属であることは望ましい。挿入部が被検物内を被検物の形状に合わせて変形しながら移動するため、挿入部の全体的な形状に決定的な役割を果たす間隔保持部材401には、ある程度の硬さと可撓性を両立することが求められる。このような要求を金属からなる間隔保持部材401で満たすためには、間隔保持部材401は蛇管を含むことが望ましい。間隔保持部材401が蛇管を含むことで、挿入部を、柔らかすぎず且つ硬すぎずに構成することができるため、扱いやすい導光ユニットを実現することができる。
【0047】
以上のように構成された導光ユニット400によれば、遮光部材301がレーザ光によって破壊されるリスクをさらに低減することができるため、たとえ光ファイバ101が破損したとしても導光ユニット400から光が外部に漏れ出ることをより確実に防止することができる。また、間隔保持部材401によって適度な硬さと柔軟性が両立されるため、扱いやすい導光ユニットを得ることができる。なお、通常使用時及び製造時における光ファイバ101の損傷を防止することができる点については、導光ユニット200及び導光ユニット300と同様である。
【0048】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするための具体例を示したものであり、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではない。導光ユニット、内視鏡システムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、導光ユニットが撮像素子を含むビデオスコープである場合を想定したが、導光ユニットは、撮像素子を含まなくてもよい。導光ユニットは、レーザ光を導光する導光部材を含むものであればよく、照明のためにのみ利用されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1、2・・・内視鏡システム
10、50・・・ビデオスコープ
12、52・・・挿入部
30、53・・・光源装置
100、200、300、400・・・導光ユニット
101・・・光ファイバ
102・・・保護部材
103、113・・・光拡散部材
104・・・光拡散粒子
114・・・凹凸
201・・・摩擦緩和部材
202・・・ブレードチューブ
301・・・遮光部材
401・・・間隔保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14