(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】電動リフトトラックのトルク制御
(51)【国際特許分類】
B60L 9/18 20060101AFI20240603BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20240603BHJP
【FI】
B60L9/18 P
H02P29/00
(21)【出願番号】P 2022519106
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 FI2020050616
(87)【国際公開番号】W WO2021058864
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-07-19
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】521071149
【氏名又は名称】ミツビシ ロジスネクスト ヨーロッパ オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ラークソネン ヤンネ
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-098421(JP,A)
【文献】特開2003-267698(JP,A)
【文献】特開2017-177878(JP,A)
【文献】特開2015-177741(JP,A)
【文献】特開2015-211527(JP,A)
【文献】特開2013-201808(JP,A)
【文献】特開2007-045323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 9/18
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動リフトトラック(100)の少なくとも1つの電気モータ(130)によって生成されたトルクを制御するための方法であって、
前記電動リフトトラック(100)の速度を表す値を監視することによって、前記少なくとも1つの電気モータ(130)のトルクが
、前記少なくとも1つの電気モータ(130)が前記少なくとも1つの電気モータ(130)の公称トルクを生成させるモードに対応する第1のモードにある場合、前記電動リフトトラック(100)の動きを維持するのに前記第1のモードでのトルクが不十分であることを示す少なくとも1つの基準の達成を検出するステップ(210)と、
前記検出するステップ(210)における前記少なくとも1つの基準の達成に応答して、前記少なくとも1つの電気モータ(130)への制御信号を生成して、前記少なくとも1つの電気モータ(130)の前記第1のモードでのトルクよりも大きいトルクを
時間ベースで生成して、前記トルクを前記電動リフトトラック(100)の動きを維持するための増加トルクモードに変更するように前記少なくとも1つの電気モータ(130)の電気駆動装置(140)を、ユーザの操作なしに自動的に、トリガーするステップ(220)と、を含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つの基準に従って、複数の所定の増加トルクモードから増加トルクモードが選択され、検出が前記少なくとも1つの基準に基づいて実行される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記増加トルクモードは、所定の期間にわたって連続的にアクティブに維持される、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの電気モータ(130)と少なくとも1つの電気駆動装置(140)のうちの少なくとも一方の温度が所定の限界を超えるという検出に応答して、前記増加トルクモードは非アクティブ化される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
電動リフトトラック(100)の少なくとも1つの電気モータ(130)によって生成されたトルクを制御するための制御ユニット(150)であって、
少なくとも1つのプロセッサ(410)と、
コンピュータプログラムコード(425)を含む少なくとも1つのメモリ(420)と、を含み、
前記少なくとも1つのメモリ(420)及び前記コンピュータプログラムコード(425)は、前記少なくとも1つのプロセッサ(410)により、前記制御ユニット(150)に、
前記電動リフトトラック(100)の速度を表す値を監視することによって、前記少なくとも1つの電気モータ(130)のトルクが
、前記少なくとも1つの電気モータ(130)が前記少なくとも1つの電気モータ(130)の公称トルクを生成させるモードに対応する第1のモードにある場合、前記電動リフトトラック(100)の動きを維持するのに前記第1のモードでのトルクが不十分であることを示す少なくとも1つの基準の達成を検出するステップ(210)と、
前記検出するステップ(210)における前記少なくとも1つの基準の達成に応答して、前記少なくとも1つの電気モータ(130)への制御信号を生成して、前記少なくとも1つの電気モータ(130)の前記第1のモードでのトルクよりも大きいトルクを
時間ベースで生成して、前記電動リフトトラック(100)の動きを維持するために前記トルクを増加トルクモードに変更するように前記少なくとも1つの電気モータ(130)の電気駆動装置(140)を、ユーザの操作なしに自動的に、トリガーするステップ(220)と、を実行させるように構成される、制御ユニット(150)。
【請求項6】
少なくとも1つの基準に従って、複数の所定の増加トルクモードから増加トルクモードを選択し、検出が前記少なくとも1つの基準に基づいて実行されるように設定される、請求項
5に記載の制御ユニット(150)。
【請求項7】
前記増加トルクモードを、所定の期間にわたって連続的にアクティブに維持するように指示するように設定される、請求項
5又は6に記載の制御ユニット(150)。
【請求項8】
少なくとも1つの電気モータ(130)と少なくとも1つの電気駆動装置(140)のうちの少なくとも一方の温度が所定の限界を超えるという検出に応答して、前記増加トルクモードを非アクティブ化するように指示するように設定される、請求項
5~
7のいずれか一項に記載の制御ユニット(150)。
【請求項9】
前記電動リフトトラック(100)の少なくとも1つの電気モータ(130)によって生成された
前記トルクを制御するためのコンピュータプログラム製品であって、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記電動リフトトラック(100)の制御ユニット(150)に請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項10】
電気モータ(130)と、
電気駆動装置(140)と、
請求項
5~
8のいずれか一項に記載の制御ユニット(150)と、を含む電動リフトトラック(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電動リフトトラックの技術分野に関する。より具体的には、本発明は、電動リフトトラックの動きを制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
カウンターバランスリフトトラックなどのリフトトラックの電動発電手段は、数十年前から現実のものとなっている。最近では、電気モータや電池の分野の技術開発により、リフトトラックにおける電気モータの利用は更に増えている。更に、気候変動に関する問題のため、すべての車両において、内燃機関から電気モータへの変更が増えている。
【0003】
周知のとおり、リフトトラックはフォークで重量物を運搬するように設計される。リフトトラックはまた、リフトトラックが荷物の有無にかかわらず、平坦領域だけでなく、走行する必要がある傾斜路などの傾斜領域を含む幅広い環境で稼働する。更に、リフトトラックは7日間で24時間稼働することもある(operate 24 hours in 7 days)。
【0004】
説明される稼働条件は、リフトトラックの設計に多くの課題をもたらす。例えば、内燃機関に基づく従来の駆動手段(traditional power generation means)は、熱の形態で多くの損失を伴うが、それは燃焼モータを損傷から守るための代償(compensation)として必要である。熱の代償は、内燃機関を利用するリフトトラックに効率的な液体冷却システムを実装することにより実現される。
【0005】
電気モータに基づくリフトトラックは、内燃機関を搭載したリフトトラックに比べて、エネルギー効率がはるかに優れている。そのため、例えば液体冷却システムを必要としない。ただし、リフトトラックにおいて電気モータを駆動手段として使用する課題は、該リフトトラックが内燃機関に比べて、モータのより高い動作速度(higher operating speeds)では明らかに低いトルク効率を有することである。低いトルク効率は、1/3の動作速度範囲から(operating speed range onwards)見られる。実際には、これは、例えばリフトトラックが傾斜路で上向きに重い荷物を運搬する状況で課題をもたらす。リフトトラックは、速度が著しく遅くなるか、又は停止する場合がある。
【0006】
したがって、リフトトラックに電気モータを適用する際の課題を減らし、かつ説明された課題を少なくとも部分的に解決するための解決手段を開発(develop)する必要がある
【発明の概要】
【0007】
以下は、本発明の様々な実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された概要を提供する。この概要は、本発明の広範な概観ではない。本発明の重要な又は不可欠な要素を特定することも、本発明の範囲を規定することも意図されていない。以下の概要は、本発明のいくつかの概念を、本発明の例示的な実施形態のより詳細な説明の前置きとして簡略化した形態で提供するものに過ぎない。
【0008】
本発明の目的は、リフトトラックのトルクを制御するための方法、制御ユニット、コンピュータプログラム製品、及びリフトトラックを提供することである。
【0009】
本発明の目的は、それぞれの独立請求項によって定義された方法、制御ユニット、コンピュータプログラム製品、及びリフトトラックによって達成される。
【0010】
第1の態様によれば、電動リフトトラックの少なくとも1つの電気モータによって生成されたトルクを制御するための方法であって、少なくとも1つの電気モータのトルクが第1のモードにある場合、電動リフトトラックの動きを維持するのに第1のモードでのトルクが不十分であることを示す少なくとも1つの基準の達成を検出するステップと、少なくとも1つの電気モータへの制御信号を生成して、少なくとも1つの電気モータの第1のモードでのトルクよりも大きいトルクを生成して、トルクを電動リフトトラックの動きを維持するための増加トルクモードに変更するように少なくとも1つの電気モータの電気駆動装置をトリガーするステップと、を含む方法が提供される。
【0011】
第1のモードでのトルクが不十分であることを示す少なくとも1つの基準の達成の検出は、リフトトラックのユーザによる操作(interaction)とリフトトラックの動きの変化のうちの少なくとも1つに基づいて実行されてもよい。例えば、リフトトラックのユーザによる操作に基づく検出は、アクセルペダルの位置が所定のトリガー限界を超えて変更されることを検出することにより実行されてもよい。或いは、又は更に、リフトトラックの動きの変化に基づく検出は、電動トラックの速度が第1のモードで所定の限界を超えて目標速度から逸脱することを検出することにより実行されてもよい。更に、リフトトラックの動きの変化に基づく検出は、電動トラックの加速度が第1のモードで所定の限界を超えて変化することを検出することにより実行されてもよい。
【0012】
複数の所定の増加トルクモードから、検出が行われる少なくとも1つの基準に従って、増加トルクモードが選択されるようにしてもよい。
【0013】
例えば、増加トルクモードは、所定の期間にわたって連続的にアクティブに維持されてもよい。
【0014】
少なくとも1つの電気モータと少なくとも1つの電気駆動装置のうちの少なくとも一方の温度が所定の限界を超えるという検出に応答して、増加トルクモードは非アクティブ化されてもよい。
【0015】
第2の態様によれば、電動リフトトラックの少なくとも1つの電気モータによって生成されたトルクを制御するための制御ユニットであって、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を含み、少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより、制御ユニットに、少なくとも1つの電気モータのトルクが第1のモードにある場合、電動リフトトラックの動きを維持するのに第1のモードでのトルクが不十分であることを示す少なくとも1つの基準の達成を検出するステップと、少なくとも1つの電気モータへの制御信号を生成して、少なくとも1つの電気モータの第1のモードでのトルクよりも大きいトルクを生成して、トルクを電動リフトトラックの動きを維持するための増加トルクモードに変更するように少なくとも1つの電気モータの電気駆動装置をトリガーするステップとを実行させるように構成される、制御ユニットが提供される。
【0016】
制御ユニットは、リフトトラックのユーザによる操作とリフトトラックの動きの変化のうちの少なくとも1つに基づいて、第1のモードでのトルクが不十分であることを示す少なくとも1つの基準の達成を検出するように配置されてもよい。例えば、制御ユニットは、アクセルペダルの位置が所定のトリガー限界を超えて変更されることを検出することにより、リフトトラックのユーザによる操作に基づく検出を行うように設定(arrange)されてもよい。或いは、又は更に、制御ユニットは、電動トラックの速度が第1のモードで所定の限界を超えて目標速度から逸脱することを検出することにより、リフトトラックの動きの変化に基づく検出を行うように設定されてもよい。更に、制御ユニットは、電動トラックの加速度が第1のモードで所定の限界を超えて変化することを検出することにより、リフトトラックの動きの変化に基づく検出を行うように設定されてもよい。
【0017】
制御ユニットは、検出が行われる少なくとも1つの基準に基づいて、複数の所定の増加トルクモードから増加トルクモードを選択するように設定されてもよい。
【0018】
制御ユニットは、増加トルクモードを、所定の期間にわたって連続的にアクティブに維持するように指示するように設定されてもよい。
【0019】
制御ユニットは、少なくとも1つの電気モータと少なくとも1つの電気駆動装置のうちの少なくとも一方の温度が所定の限界を超えるという検出に応答して、増加トルクモードを非アクティブ化するように指示するように設定されてもよい。
【0020】
第3の態様によれば、電動リフトトラックの少なくとも1つの電気モータによって生成されたトルクを制御するためのコンピュータプログラム製品であって、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、電動リフトトラックの制御ユニットに、第1の態様に係る方法を実行させる、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0021】
第4の態様によれば、電気モータと、電気駆動装置と、上記第2の態様に係る制御ユニットと、を含む電動リフトトラックが提供される。
【0022】
「いくつかの」という表現は、本明細書では、1から始まる任意の正の整数、例えば、1、2、又は3を指す。
【0023】
「複数の」という表現は、本明細書では、2から始まる任意の正の整数、例えば2、3、又は4を指す。
【0024】
構成及び動作方法の両方に関する本発明の様々な例示的かつ非限定的な実施形態は、その追加の目的及び利点と共に、添付図面に関連して読むと、特定の例示的かつ非限定的な実施形態の以下の説明から最もよく理解されるであろう。
【0025】
本書において、「備える」及び「含む」という動詞は、記載されていない特徴の存在を除外も要求もしない開かれた限定として使用される。従属請求項に記載されている特徴は、別段の明示的記載がない限り、相互に自由に組み合わせ可能である。更に、「ひとつ(a)」又は「ひとつ(an)」という単数形の使用は、本文書全体を通して、複数を除外しないことを理解すべきである。
【0026】
本発明の実施形態は、添付図面において限定ではなく一例として例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】例示的な実施形態に係るリフトトラックを概略的に示す。
【
図2】例示的な実施形態に係る方法を概略的に示す。
【
図3】例示的な実施形態に適用可能なトルク曲線を概略的に示す。
【
図4】例示的な実施形態に係る制御ユニットを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の説明に提供される特定の例は、添付の特許請求の範囲及び/又は適用可能性を限定するものとして解釈されるべきではない。以下の説明に提供される例のリストとグループは、特段の明記がない限り、網羅的なものではない。
【0029】
図1は、本発明の例示的な実施形態に係る、カウンターバランストラックなどのリフトトラック100を概略的に示す。リフトトラック100は、リフトトラック100の第1の側、即ちここでは前面に、フォークツール110などの昇降機構を含んでもよい。リフトトラック100は、例えば第1の側に配置され、トルクが1つ以上の電気モータ130によって生成される1つ以上の駆動輪120を更に含んでもよい。少なくとも1つのモータ130は、制御ユニット150から受信した制御に従って電気モータへの制御信号を生成するように配置された電気駆動装置140によって制御されてもよい。電気駆動装置140によって生成された制御信号は、例えば、電気駆動装置140のコンバータ回路で生成されたAC信号などの、少なくとも1つの電気モータ130に対して生成された駆動信号であってもよい。制御ユニット150から電気駆動装置140への制御信号は、例えば、上述のエンティティを通信可能に接続するデータバスを介して伝達されてもよい。制御ユニット150から電気駆動装置140への制御信号の非限定的な例として、リフトトラック100の目標速度が挙げられてもよい。制御ユニット150自体は、リフトトラック100の制御の全責任を負うコントローラであってもよく、以下に説明されるような方法を実行するための専用の制御ユニット150であってもよい。明確に説明するために、制御ユニット150は、概念上、電気駆動装置140内又はその外部に存在し、電気駆動装置140内の対応するスイッチ又はスイッチング回路への制御信号を生成し、例えば、リフトトラック100の電池から受信したDC信号からAC信号を生成するように配置されてもよい。更に、概念上、少なくとも1つの電気モータ130は、電気駆動装置140に属するとみなされてもよい。更に、リフトトラック100は、1つ以上の操舵輪160を含んでもよく、例えば、
図1に概略的に示されるように、操舵輪160がリフトトラック100のシャーシの裏側にある。操舵輪160は、車輪などの操舵装置と、他の要素の中で操舵軸とを含む操舵システムによって制御されてもよい。すでに述べたように、リフトトラック100はまた、少なくとも1つの電気モータ130へのAC電圧などの適用可能な駆動信号を生成できる、エネルギーの貯蔵に適した電池を含む。更に、リフトトラック100は、ボタン、ライトインジケータ、表示装置、及び類似のものなど、トラックの運転者とのユーザインタフェースを実装するための1つ以上の手段を含む。ユーザインタフェースはまた、運転者の手足で制御可能なペダルを含んでもよく、ペダルは、ブレーキシステム及び電気モータのトルクを直接的又は間接的に制御するための機構を提供してもよい。当然、リフトトラック100は、
図1に示されていないか、又は上記で言及されていない更なる要素を含む。
【0030】
例示的な実施形態に係る方法を概略的に示す
図2を参照することにより、本発明のいくつかの態様を説明する。リフトトラック100は動いており、即ち、トルクが少なくとも1つの電気モータ130によって駆動輪120に対して生成される。トルクは、例えば、制御ユニット150から受信された、リフトトラック100の目標速度を示す制御信号に従って電気駆動装置140によって決定されてもよい。例えば、制御ユニット150は、ユーザインタフェースに属する少なくとも1つの装置を介してリフトトラック100の運転者から受信された制御操作に従って制御信号を生成するように配置されてもよい。例えば、制御操作は、リフトトラック100のアクセルペダルの制御であってもよい。
【0031】
この方法の例示的な実施形態では、少なくとも1つの電気モータのトルクが第1のモードにある場合、制御ユニット150により、少なくとも1つの基準の達成を検出してもよい(210)。第1のモードは、例えば、電気モータ130を制御して公称トルク(nominal torque)を生成させる状況であってもよい。公称トルクは、電気モータが通常の動作状況で提供するように設計されるトルクとして理解されてもよい。公称トルクは通常、電気モータのタイププレートに記載されている。前述のように、公称トルクは、モータの設計の結果であり、該設計は一般に、IEC-34規格などの電気モータに対して設定された規格に従って行われる。例えば、電気モータの設計は、例えば、設計にIEC-34規格の短時間デューティ(S2)サイクルを適用することにより行われてもよい。設計の他のアプローチは当然に適用されてもよい。したがって、少なくとも1つの基準の達成は、公称トルクが第1のモードで予想されるように電気トラックの動きを維持するのに十分でない状況に対応する。換言すれば、電気モータ130は、第1のモードでの、電動リフトトラックの動きを維持するのに不十分であるトルクを生成する。電動リフトトラックの動きは、リフトトラックの速度を表す値を監視するか、又はモータ制御のトルク曲線を監視することにより監視されてもよい。通常モードで述べたように、制御ユニット150は、電気駆動装置140に目標速度を提供してもよく、電気駆動装置140は、リフトトラック100が目標速度で移動することを達成するために電気モータ130への制御を生成するように構成されてもよい。ここで、ある状況では、リフトトラック100のモータ130が目標速度を維持するトルクを生成することができず、リフトトラック100の速度が低下することが検出されてもよい。これは、例えば、リフトトラック100が、例えば、重い荷物を運搬して傾斜路で上り坂で又は傾斜路で上向きに走行する場合、又は重い荷物を運搬するリフトトラック100が、道路抵抗(road resistance)が高い表面から道路抵抗が低い表面に入る場合に発生する。例えば、制御ユニット150は、好ましくはリアルタイムでリフトトラック100の速度を表す信号を提供するのに適したエンティティからリアルタイムで信号を受信してもよい。そのようなエンティティは、リフトトラック100の速度が決定されるように、例えば、電気モータ130の回転速度を測定するように配置されたホールセンサ、センサベアリング若しくは光学センサなどのセンサ、又は車輪120、160のうちの少なくとも1つなどの他のエンティティであってもよい。より具体的には、電気モータ130の回転速度は、モータ軸に取り付けられたピックアップリングからパルスを読み取るためのホールエンコーダを適用することにより、又はモータ内に取り付けられたセンサベアリングを適用することにより測定されてもよい。当然、別個のセンサに基づく解決手段は、モータ130若しくはギアボックスに接続された外部若しくは組み込み(embedded)インクリメンタルエンコーダ、又は、モータ130若しくはギアボックスに接続された外部若しくは組み込みアブソリュートエンコーダなどにも適用されてもよい。他の任意の測定方法及び/又は装置は、モータ130の回転速度を直接的又は間接的に決定するために使用されてもよい。
【0032】
本発明において、トルクが第1のモードにある場合の少なくとも1つの基準の達成の検出は、電気モータ130によって生成された第1のモードでのトルクがリフトトラック100の動きを維持するのに不十分であることを示す検出を生成する、リフトトラック100の目標速度と実際の速度との間の最大偏差値を設定するように実行されてもよい。例えば、許容偏差を10%に設定してもよい。いくつかの他の例示的な実施形態では、基準及びリフトトラック100の動きの状態の監視は、加速度に基づくことであってもよい。例えば、基準は、減速度などの許容加速度の値が設定され、リフトトラック100の加速度が、例えば、センサ値に基づいて決定されるか、又は速度値から導出されるように設定されてもよい。それに応じて、次に、リフトトラック100が所定の期間内に許容される以上に減速する場合に、検出は実行されてもよい。更に、モータ制御の実際のトルクを監視することにより、増加トルクの必要性を検出することができる。必要なトルクが公称トルク曲線に達すれば、制御システムは、これを検出して増加トルク曲線に比例的に変更するように配置されてもよい。
【0033】
前述の説明では、基準が達成されるか否かの検出を実行する方法を非限定的な例として提供する。この例では、基準は、リフトトラック100の動きを表す1つ以上のパラメータの監視に関連する。或いは、又は更に、基準は、リフトトラック100のユーザインタフェースを介して、運転者などのユーザの操作に関連してもよい。例えば、例示的な実施形態によれば、アクセルペダルの動作は監視されてもよい。この実施形態では、第1のモードでの不十分なトルクの検出は、アクセルペダルの角度などの位置が、例えば段階的に、所定のトリガー限界を超えて変更されることを検出することにより実行されてもよい。或いは、又は更に、アクセルペダルの位置の検出は、アクセルペダルが極端な位置に押されるという検出に基づくことであってもよい。検出は、例えば、ペダルが極端な位置にあることを検出するように設定された適用可能なスイッチなどのセンサから受信された信号に基づくことであってもよい。少なくとも上記方法での検出は、運転者の操作が第1のモードでのトルクが不十分であることを示し、増加トルクモードを自動的にトリガーさせる運転者主導検出(driver initiated detection)とみなされるべきである。
【0034】
ステップ210での検出に応答して、少なくとも1つの電気モータ130の電気駆動装置140は、少なくとも1つの電気モータ130への制御信号を生成するようにトリガーされてもよい(220)。トリガーは、電気モータ130が少なくとも1つの電気モータ130の第1のモードでのトルクよりも大きいトルクを生成してトルクを電動リフトトラック100の動きを維持するための増加トルクモードに変更するように指示することにより、制御ユニット150によって実行されてもよい。前述の説明で述べたように、第1のモードでのトルクは、電気モータ130の公称動作状態のトルクであってもよく、増加トルクモードは、電気モータ130が、リフトトラック100の動きを維持するために電気モータ130の公称動作状態のトルクを超えるトルクを生成するように制御されるいわゆるブースト状態であってもよい。
【0035】
明確に説明するために、通常の状態、即ち第1のモードに対して増加したトルクを達成するために制御ユニット150によって生成された命令の種類が変化してもよいことに言及する価値がある。第1の例示的な実施形態では、命令は目標速度を含んでもよく、目標速度に到達できないか又は維持できないという検出に応答して、制御ユニット150は、以下に説明するように、適用されたトルク曲線などのトルクの変更に関する命令を生成する。別の例示的な実施形態では、命令は、運転者が、増加トルクモードのトリガーを要求する少なくとも1つの所定の操作を実行したことを示すデータを含んでもよい。増加トルクモードの要求を示す他のデータは、当然含まれてもよい。更に、命令はまた、増加トルクモードが適用される概算時間を示すデータなどの追加のデータを含んでもよい。電気駆動装置140は、様々な例示的な実施形態では、異なる状況のトルク曲線など、異なるトルクモードで定義されたデータを維持してもよい。更に、電気駆動装置140は、連続的にトルク曲線を変化させるための動作論理を含んでもよい。更に、電気駆動装置140は、リフトトラック100の稼働中にトルク曲線を変化させる必要性などのトルクを監視するように配置されてもよい。例えば、電気駆動装置140は、制御ユニット150への、トルクの状態を示すフィードバック信号を生成するように配置されてもよく、そして、制御ユニットは、例えば、上記のように命令を生成してもよい。
【0036】
様々な例示的な実施形態によれば、この方法は、異なるトリガールールに従って適用される複数の増加トルクモードが存在するように実施されてもよい。このような配置を
図3に概略的に示す。
図3は、rpm単位の電気モータの速度に関連するトルクを概略的に示す。最も低い曲線は、いわゆる通常モード、即ち第1のモードでのトルク曲線の例であってもよい。換言すれば、電気モータ130の制御は、モータ130の特定の回転速度で対応するトルクを生成するように、曲線に従って実行されてもよい。通常モードに加えて、電気モータ130は、増加トルクモードのトリガーに従って選択された2つの増加トルクモードに従ってトルクを提供するように配置されてもよい。ユーザ操作によってトリガーされた第1の増加トルクモードは、第1のモードに比べて適度な追加のトルクを提供するようなものであってもよい。次に、第2の増加トルクモードは、説明されているように、速度又は加速度などのリフトトラック100の動きを監視することによりトリガーされてもよく、トリガーされた場合、トルク曲線はユーザ操作によってトリガーされたトルク曲線よりも高い。これらに加えて、電気モータの絶対最大トルクが定義されてもよく、リフトトラック100のエンティティを保護するために、いかなる状況でも該絶対最大トルクを超えることが許されない。述べたように、適用されたトルク曲線間又はプロファイル間の選択は、検出を引き起こすために設定された1つ以上の基準の達成に従って実行されてもよい。
【0037】
上記増加トルクモードは、増加トルクが達成されるように、電気モータ130だけでなく、電気駆動装置140も設計することにより達成されてもよい。例示的な実施形態では、増加トルクモードは、電気駆動装置140が、公称駆動モード、即ち第1のモードに対して20%~30%の増加した電流供給能力を許容するように設計された実施形態を指す場合がある。実際には、電気駆動装置140は、増加トルクモードで増加した電流レベルを許容するように、例えば、電気駆動装置140のスイッチング要素を2倍にするだけでなく、電力回路内のコンポーネントを選択することにより設計されてもよい。更に、電気モータ130は、電気モータ130に増加した電流レベルを提供するのに適した電気駆動装置140と整合するように、電気モータ130のコイル巻線の巻数が減少するように設計されてもよい。電気モータ130及び電気駆動装置140の設計、並びにそれらの相互整合により、増加トルクモードを少なくとも時間ベースで生成することができる。増加トルクモードが一時的に維持されると仮定することによる、説明されているように変更することにより、通常モードでのみ稼働できるリフトトラック100と同じ物理的サイズを有する電気モータ130及び電気駆動装置140を利用することができる。様々な実施形態では、増加トルクモードは、冷却に関する態様で対処されてもよい。特に、これは、電気モータ130に増加した電流を提供する能力に従って、電気駆動装置140のコンポーネントを冷却することであってもよい。冷却は、冷却用空気を電気駆動装置140から少なくとも1つの電気モータ130に更にガイドして、増加トルクモードに関与するエンティティの全体的な減少を実現するように配置されてもよい。例えば、1つ以上のガイド要素をリフトトラック100内に配置して、説明されている方法で上述のエンティティ間の空気をガイドしてもよい。説明されている設計により、電気モータ130は、第1のモードでより高い回転速度範囲で動作してトルクを高く維持するように達成される。
【0038】
制御ユニット150は、いくつかの方法で増加トルクモードを監視するように設定されてもよい。例えば、増加トルクモードが満たすべきいくつかのルールは、定義されてもよい。例示的な実施形態では、増加トルクモードが連続的にアクティブにできる最大持続時間は、定義されてもよい。或いは、又は更に、別のルールは、単一の増加トルクモードセッションの残り時間から増加トルクモードの最大時間までの態様に関連してもよい。更に、ルールは、アクティブ化された増加トルクモード間の最小間隔を定義するように設定されてもよい。更に、少なくとも1つの電気モータ130及び/又は電気駆動装置140の温度が監視されてもよく、1つ以上のルールは、例えば、温度が所定の限界を超えるなど、逸脱する場合に増加トルクモードが非アクティブ化されるように、温度に対して設定されてもよい。これらのルールはすべて、アクセルペダルによるトリガー機能と動作速度によるトリガー機能に個別に設定されてもよい。最も重要な目的は、サービスに適したリフトトラック100を維持すること、即ち、特に、発電手段のコンポーネントが一時的に過負荷であるとみなされる増加トルクモードによるリフトトラック100の破損を防ぐことである。
【0039】
増加トルクモードが非アクティブ化される状況にも注意を払う必要がある。非アクティブ化は、増加トルクモードのスムーズな非アクティブ化に到達するために比例的に実行されてもよく、その結果、リフトトラック100のユーザは、それに気づかず、イライラしたり、怪我(injure)をしたりさえしない。増加トルクモードの比例的非アクティブ化は、制御ユニット150が、電気駆動装置140が少なくとも1つの電気モータ130に比例的に減少した電流を生成するように増加トルクモードを引き起こす制御信号を修正するように配置されるように、設定されてもよい。これにより、通常モードに戻るか、又はユーザが望む場合にリフトトラック100を停止するなど、増加トルクモードの制御された非アクティブ化を引き起こす。当然、本発明のいくつかの例示的な実施形態では、増加トルクモードのアクティブ化は、リフトトラック100のユーザなどによる非アクティブ化に対応する問題を回避するために比例的に実行されるように配置されてもよい。
【0040】
上記のように、リフトトラック100は、本発明の少なくともいくつかの例示的な実施形態に係る方法を実行するための制御ユニット150を含んでもよい。
図4は、リフトトラック100に適用可能な制御ユニット150の例をブロック図として概略的に示す。
図4のブロック図は、制御ユニット150を実装するために使用される装置のいくつかのコンポーネントを示す。装置は、プロセッサ410及びメモリ420を含む。メモリ420は、データ及びコンピュータプログラムコード425を記憶してもよい。装置は、他の装置との有線又は無線通信のための通信手段430を更に含み、他の装置として、例えば、電気駆動装置140と、リフトトラック100のユーザとのユーザインタフェースなどを提供するI/Oコンポーネント、リフトトラック100の速度の測定に関与する任意のセンサデバイスなどのリフトトラック100の他のエンティティとが挙げられる。装置のコンポーネントは、コンポーネント間のデータ及び制御情報の転送を可能にするバス440を介して互いに通信可能に結合されてもよい。
【0041】
メモリ420と、そこに記憶されたコンピュータプログラムコード425の一部とは、プロセッサ410により、装置、即ち制御ユニット150に本明細書に説明されている方法を実行させるように更に配置されてもよい。プロセッサ410は、メモリ420の読み取り及び書き込みを行うように構成されてもよい。プロセッサ410は、それぞれの単一のコンポーネントとして描かれているが、それぞれの1つ以上の別個の処理コンポーネントとして実装されてもよい。同様に、メモリ420は、個別の単一のコンポーネントとして描かれているが、個別の1つ以上の別個のコンポーネントとして実装されてもよく、その一部又はすべては、統合/取り外し可能であり、及び/又は、永続的/半永続的/動的/キャッシュストレージを提供してもよい。
【0042】
コンピュータプログラムコード425は、プロセッサ410にロードされると、説明されている方法のステップに対応する機能を実装するコンピュータ実行可能命令を含んでもよい。一例として、コンピュータプログラムコード425は、1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスからなるコンピュータプログラムを含んでもよい。プロセッサ410は、メモリ420からそこに含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを読み取ることにより、コンピュータプログラムをロードして実行することができる。1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスは、プロセッサ410によって実行されると、装置にその方法を実行させるように構成されてもよい。したがって、装置は、少なくとも1つのプロセッサ410と、1つ以上のプログラム用のコンピュータプログラムコード425を含む少なくとも1つのメモリ420とを含んでもよく、少なくとも1つのメモリ420及びコンピュータプログラムコード425は、少なくとも1つのプロセッサ410により、装置に説明されている方法を実行させるように構成される。
【0043】
コンピュータプログラムコード425は、コンピュータプログラム製品などとして提供されてもよく、該コンピュータプログラム製品は、プロセッサ410によって実行されると、装置にその方法を実行させるコンピュータプログラムコード425が記憶されている少なくとも1つのコンピュータ可読非一時的媒体を含む。コンピュータ可読非一時的媒体は、メモリデバイス、又はCD-ROM、DVD、ブルーレイディスクなどの記録媒体、又はコンピュータプログラムを具体化する別の製造品を含んでもよい。別の例として、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムを確実に転送するように構成された信号として提供されてもよい。
【0044】
更に、コンピュータプログラムコード425は、トルクを制御するためのコンピュータプログラムコードなどの専用のアプリケーションを含んでもよい。専用のアプリケーションは、リフトトラックが少なくとも部分的にリフトトラック100の外部で制御される状況などで、サーバアプリケーションがシステムのサーバ装置で実行されているサービスのクライアントアプリケーションであってもよい。専用のアプリケーションは、例えば、電気モータ130の第1のモードでの1つ以上の基準の達成を検出し、増加トルクモードへの変更をトリガーしてもよい。
【0045】
上述のプログラムされた機能はいずれも、必要なタスクを実行するように適合又はプログラムされたファームウェア又はハードウェアで実行されてもよい。
【0046】
本発明のいくつかの態様は、少なくとも1つの制御ユニット150、電気駆動装置140、及び少なくとも1つの電気モータ130を利用して説明されている方法を説明されているように実施するリフトトラック100に言及してもよい。
【0047】
上記の説明に提供された特定の例は、添付の特許請求の範囲の適用可能性及び/又は解釈を限定するものとして解釈されるべきではない。上記の説明に提供された例のリストとグループは、別段の明記がない限り、網羅的なものではない。