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特許7497430光透過性基板と電気泳動媒体とを含む3次元変色物体
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  • 特許-光透過性基板と電気泳動媒体とを含む3次元変色物体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】光透過性基板と電気泳動媒体とを含む3次元変色物体
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/167 20190101AFI20240603BHJP
【FI】
G02F1/167
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022524634
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 US2020058778
(87)【国際公開番号】W WO2021091936
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】62/930,545
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ブル, スティーブン
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-107817(JP,A)
【文献】特開2008-216622(JP,A)
【文献】特開2011-013554(JP,A)
【文献】特開2005-037851(JP,A)
【文献】国際公開第2019/089042(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/232203(WO,A2)
【文献】特表2017-528740(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0164653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変色物体であって、前記変色物体は、本質的に、
外面および内面を有する成形された光透過性非平面基板であって、前記外面は、前記変色物体の視認表面であり、前記成形された光透過性非平面基板は、部分的に光透過性である、成形された光透過性非平面基板と、
前記成形された光透過性非平面基板の前記内面に隣接して配置された光透過性正面導体と、
カプセル化電気泳動媒体の層と、
前記カプセル化電気泳動媒体の層の直接上に形成された伝導性ポリマーを備える背面導体と
からなる、変色物体。
【請求項2】
変色物体であって、前記変色物体は、本質的に、
外面および内面を有する成形された光透過性非平面基板であって、前記外面は、前記変色物体の視認表面であり、前記成形された光透過性非平面基板は、部分的に光透過性である、成形された光透過性非平面基板と、
前記成形された光透過性非平面基板の前記内面に隣接して配置された光透過性正面導体と、
カプセル化電気泳動媒体の層と、
前記カプセル化電気泳動媒体の層の直接上に形成された伝導性ポリマーを備える背面導体と、
前記成形された光透過性非平面基板と前記光透過性正面導体との間、および前記光透過性正面導体と前記カプセル化電気泳動媒体の層との間のうちの少なくとも1つに適用された圧力で硬化された接着剤の層と
からなる、変色物体。
【請求項3】
前記背面導体は、光透過性である、請求項1に記載の変色物体。
【請求項4】
前記成形された光透過性非平面基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリル、または環状オレフィン系共重合体(COC)を備えている、請求項1に記載の変色物体。
【請求項5】
前記光透過性正面導体は、金属フレーク、金属スクリーン、伝導性ポリマー、カーボンナノチューブ、またはそれらの組み合わせを備えている、請求項1に記載の変色物体。
【請求項6】
前記カプセル化電気泳動媒体は、溶媒内に分散させられた荷電顔料粒子を備えている、請求項1に記載の変色物体。
【請求項7】
前記荷電顔料粒子は、反対荷電を伴う2つの組の顔料粒子を含む、請求項6に記載の変色物体。
【請求項8】
前記2つの組の顔料粒子のうちの第1の組の顔料粒子は、黒色であり、前記2つの組の顔料粒子のうちの第2の組の顔料粒子は、白色である、請求項7に記載の変色物体。
【請求項9】
前記荷電顔料粒子は、3つの組の顔料粒子を含む、請求項6に記載の変色物体。
【請求項10】
前記3つの組の顔料粒子のうちの第1の組の顔料粒子は、赤色であり、前記3つの組の顔料粒子のうちの第2の組の顔料粒子は、緑色であり、前記3つの組の顔料粒子のうちの第3の組の顔料粒子は、青色である、請求項9に記載の変色物体。
【請求項11】
前記荷電顔料粒子は、4つの組の顔料粒子を含む、請求項6に記載の変色物体。
【請求項12】
前記4つの組の顔料粒子のうちの第1の組の顔料粒子は、白色であり、前記4つの組の顔料粒子のうちの第2の組の顔料粒子は、シアン色であり、前記4つの組の顔料粒子のうちの第3の組の顔料粒子は、黄色であり、前記4つの組の顔料粒子のうちの第4の組の顔料粒子は、マゼンタ色である、請求項11に記載の変色物体。
【請求項13】
前記4つの組の顔料粒子のうちの第1の組の顔料粒子は、黒色であり、前記4つの組の顔料粒子のうちの第2の組の顔料粒子は、赤色であり、前記4つの組の顔料粒子のうちの第3の組の顔料粒子は、黄色であり、前記4つの組の顔料粒子のうちの第4の組の顔料粒子は、青色である、請求項11に記載の変色物体。
【請求項14】
変色物体を作製する方法であって、前記方法は、本質的に、
外面および内面を有する成形された光透過性非平面基板を提供することであって、前記成形された光透過性非平面基板は、部分的に光透過性である、ことと、
光透過性伝導性材料を前記成形された光透過性非平面基板の前記内面に隣接して配置し、それによって、前記成形された光透過性非平面基板の前記外面を前記変色物体の視認表面にすることであって、前記成形された光透過性非平面基板は、前記光透過性伝導性材料が前記成形された光透過性非平面基板の前記内面に隣接して配置される前に、成形されている、ことと、
カプセル化電気泳動媒体の層を前記光透過性伝導性材料に隣接して配置することと、
背面導体を前記カプセル化電気泳動媒体の層の直接上に配置することと
からなる、方法。
【請求項15】
電圧源を提供することと、
前記光透過性伝導性材料および前記背面導体を前記電圧源に結合することと
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記成形された光透過性非平面基板は、熱成形、鋳造、射出成形、またはブロー成型される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記光透過性伝導性材料を配置することは、スプレーコーティング、スパッタリング、原子層堆積、蒸着、または浸漬コーティングを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記カプセル化電気泳動媒体の層を配置することは、スプレーコーティング、浸漬コーティング、電着、粉体コーティング、シルクスクリーニング、または刷毛塗り法を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
変色物体を作製する方法であって、前記方法は、本質的に、
外面および内面を有する成形された光透過性非平面基板を提供することであって、前記成形された光透過性非平面基板は、部分的に光透過性である、ことと、
光透過性伝導性材料を前記成形された光透過性非平面基板の前記内面に隣接して配置し、それによって、前記成形された光透過性非平面基板の前記外面を前記変色物体の視認表面にすることであって、前記成形された光透過性非平面基板は、前記光透過性伝導性材料が前記成形された光透過性非平面基板の前記内面に隣接して配置される前に、成形されている、ことと、
カプセル化電気泳動媒体の層を前記光透過性伝導性材料に隣接して配置することと、
背面導体を前記カプセル化電気泳動媒体の層の直接上に配置することと、
前記光透過性伝導性材料の一部をマスキングすることと、
カプセル化電気泳動媒体を配置後、前記マスクを除去することと、
前記光透過性伝導性材料を電圧源に接続することと
からなる、方法。
【請求項20】
前記変色物体は、前記光透過性正面導体および前記背面導体に結合された電圧源をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の変色物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2020年11月4日に出願された米国仮特許出願第62/930,545号の優先権を主張する。本明細書で参照される全ての特許および刊行物は、参照することによってその全体として組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、電気光学ディスプレイおよびそれらの生産に関するプロセスに関する。より具体的に、本発明は、米国特許第6,982,178号(特許文献1)、第7,561,324号、および第7,839,564号に説明されるようなフロントプレーンラミネート、反転フロントプレーンラミネート、および二重剥離フィルムの使用を伴わない電気光学ディスプレイの生産のためのプロセスと、噴霧によってカプセル化電気泳動媒体を堆積させるためのプロセスとに関する。
【0003】
カプセル化電気泳動ディスプレイは、典型的に、従来的な電気泳動デバイスのクラスタ化および沈降故障モードに悩まされることがなく、多種多様な可撓性および剛体基板上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する。(用語「印刷」の使用は、全ての形態の印刷およびコーティングを含むことを意図しており、限定ではないが:パッチダイコーティング、スロットまたは押し出しコーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等の前計量コーティング;ナイフオーバーロールコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティング等のロールコーティング;グラビアコーティング;浸漬コーティング;スプレーコーティング;メニスカスコーティング;スピンコーティング;ブラシコーティング;エアナイフコーティング;シルクスクリーン印刷プロセス;静電気印刷プロセス;熱印刷プロセス;インクジェット印刷プロセス;電気泳動析出(米国特許第7,339,715号(特許文献2)を参照);および、他の類似技術を含む。)したがって、結果として生じるディスプレイは、可撓性であり得る。さらに、ディスプレイ媒体は(種々の方法を使用して)印刷され得るので、ディスプレイ自体は、安価に作製され得る。
【0004】
電気泳動媒体は、典型的に、非極性液体中の電気泳動粒子、電荷制御剤、画像安定剤、および凝集剤を備え、それらは、典型的に、ゼラチン/アカシアコアセルベート等の可撓性有機基質の中にカプセル化されている。市販のディスプレイを生産するために、基板上にカプセルの薄い層(好ましくは、単層、米国特許第6,839,158号参照)をコーティングすることが必要であり、それは、電極を支える正面基板(前述の米国特許第6,982,178号参照)、バックプレーン、または剥離シートであり得る。これまで、基板上のカプセル化電気泳動媒体のコーティングは、典型的に、スロットコーティングによって達成されてきており、スロットコーティングにおいて、キャリア媒体中のカプセルのスラリが、スロットを通して、スロットに対して移動している基板上に押し進められる。スロットコーティングは、コーティングされる材料の粘度および他の物理的特性に制限を課し、典型的に、コーティングが乾燥に先立って流動せず、厚さに不均一性を生じさせないことを確実にするために、コーティングされる材料のレオロジーを制御するためのスロットコーティング添加物の添加を要求する。したがって、スロットコーティングでは、電気泳動カプセルは、典型的に、随意のラテックス結合剤、レオロジー修飾剤、イオンドーパント、および界面活性剤を含む水性スラリの形態で供給される。これらの添加物は、最終的な乾燥した電気泳動媒体の中に残り、その電気光学特性を含むその特性に影響を及ぼし得る。
【0005】
さらに、スロットコーティングは、電気泳動媒体を連続したウェブに適用するために非常に適しているが、不規則形状の物体のコーティングにあまり適していない。すなわち、スロットコーティングは、概して、非平面基板に有用ではなく、それは、カプセル化電気泳動媒体が、変色能力を3次元物体に提供するために非常に適しているので、残念である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,982,178号明細書
【文献】米国特許第7,339,715号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に説明されるように、本発明は、多くの異なる形状の変色物体、例えば、玩具、家電、および電子機器等の一般的に遭遇する物体を作成するために組み立てられるより大きい物体のサブアセンブリを作製する方法を提供する。そのような形状は、概して、本発明の理解の目的のために、「3次元」と称される。本明細書で使用されるような「3次元」は、フロントプレーンラミネート、ディスプレイモジュール、折り畳み式ディスプレイ等の若干曲げられる物体に類似する略平面物体を除外することが意図される。限定するように意図されないが、「3次元」のある定義は、例えば、ボウル形、円筒形、角錐、球体、円錐、渦巻、楕円体、半楕円体等、3つ以上の垂直方向において曲率を有し得る。本書では、「非平面」は、「3次元」と同義的に使用され得る。
【0008】
第1の側面では、本発明は、光透過性(3次元)非平面基板と、光透過性正面導体と、カプセル化電気泳動媒体の層と、背面導体とを含む変色物体を提供する。いくつかの実施形態において、変色物体は、加えて、物体の構築を促進するために1つ以上の接着剤層を含む。光透過性非平面基板は、概して、透明な材料から構築されることができるが、しかしながら、可能性がより高い選択肢は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリル、または環状オレフィン系共重合体(COC)等の光透過性ポリマーである。光透過性導体は、別個の層であり得るか、または、光透過性非平面基板に統合され得る。光透過性正面導体は、金属フレーク、金属スクリーン、伝導性ポリマー、カーボンナノチューブ、またはそれらの組み合わせで構築され得る。
【0009】
第2の側面では、本発明は、光透過性非平面基板を提供することと、光透過性伝導性材料を光透過性非平面基板の内面に隣接して配置し、それによって、光透過性非平面基板の外面を作製することと、カプセル化電気泳動媒体の層を光透過性伝導性材料に隣接して配置することと、背面導体をカプセル化電気泳動媒体の層に隣接して配置することとを含む変色物体を作製する方法を提供する。さらなる実施形態は、電圧源を提供することと、光透過性伝導性材料および背面導体を電圧源に結合することとを含み得る。光透過性非平面基板は、熱成形、鋳造、射出成形、またはブロー成型される。光透過性伝導性材料を配置するプロセスは、スプレーコーティング、スパッタリング、原子層堆積、蒸着、または浸漬コーティングを含む。カプセル化電気泳動媒体の層を光透過性伝導性材料に隣接して配置するプロセスは、スプレーコーティング、浸漬コーティング、電着、粉体コーティング、シルクスクリーニング、または刷毛塗り法を含み得る。
【0010】
カプセル化電気泳動媒体は、液体中にカプセルの分散を形成することと、第1のオリフィスを通して分散を給送することと、第1のオリフィスを包囲する第2の環状オリフィスを通して、ガスの連続流を給送し、それによって、カプセルの噴霧を形成することとを含み得る。スプレーコーティングプロセスは、スプレーに隣接して配置される複数の成形オリフィスを通して、ガスの連続流を給送することによって、噴霧を成形することを含み得る。典型的な場合のように、カプセル壁が、親水性材料(前述のゼラチン/アカシアコアセルベート等)から形成される場合、カプセルを分散させるために使用される液体は、望ましくは、水性であり、使用される具体的カプセルおよび液体に応じて、液体は、随意に、pH修飾剤、界面活性剤、およびイオンドーパントのうちのいずれか1つ以上のものを備え得る。第2のオリフィスおよび成形オリフィスの両方を通過させられるガスは、典型的に、空気であるが、ある場合、不活性ガス、例えば、窒素を使用することが有用であり得る。
【0011】
スプレーコーティング実施形態において、プロセスは、マスキング材料の除去後、マスキング材料が存在しなかった基板のこれらの部分上のみにカプセルが残るように、基板の一部を覆うマスキング材料の使用を含み得る。そのような技法は、光透過性伝導性材料と背面導体との間の電気接続の作製を促進し得る。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
変色物体であって、前記変色物体は、
光透過性非平面基板と、
光透過性正面導体と、
カプセル化電気泳動媒体の層と、
背面導体と
を備えている、変色物体。
(項目2)
接着剤層をさらに備えている、項目1に記載の変色物体。
(項目3)
前記背面導体は、光透過性である、項目1に記載の変色物体。
(項目4)
背面基板をさらに備えている、項目1に記載の変色物体。
(項目5)
前記光透過性非平面基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリル、または環状オレフィン系共重合体(COC)を備えている、項目1に記載の変色物体。
(項目6)
前記光透過性正面導体は、金属フレーク、金属スクリーン、伝導性ポリマー、カーボンナノチューブ、またはそれらの組み合わせを備えている、項目1に記載の変色物体。
(項目7)
前記光透過性正面電極は、前記光透過性非平面基板に統合されている、項目1に記載の変色物体。
(項目8)
前記電気泳動媒体は、溶媒内に分散させられた荷電顔料粒子を備えている、項目1に記載の変色物体。
(項目9)
前記荷電顔料粒子は、反対荷電を伴う2つの組の顔料粒子を含む、項目8に記載の変色物体。
(項目10)
前記第1の組の荷電顔料粒子は、黒色であり、前記第2の組の荷電顔料粒子は、白色である、項目9に記載の変色物体。
(項目11)
前記荷電顔料粒子は、3つの組の顔料粒子を含む、項目8に記載の変色物体。
(項目12)
前記第1の組の荷電顔料粒子は、赤色であり、前記第2の組の荷電顔料粒子は、緑色であり、前記第3の組の荷電顔料粒子は、青色である、項目11に記載の変色物体。
(項目13)
前記荷電顔料粒子は、4つの組の顔料粒子を含む、項目8に記載の変色物体。
(項目14)
前記第1の組の荷電顔料粒子は、白色であり、前記第2の組の荷電顔料粒子は、シアン色であり、前記第3の組の荷電顔料粒子は、黄色であり、前記第4の組の荷電顔料粒子は、マゼンタ色である、項目13に記載の変色物体。
(項目15)
前記第1の組の荷電顔料粒子は、黒色であり、前記第2の組の荷電顔料粒子は、赤色であり、前記第3の組の荷電顔料粒子は、黄色であり、前記第4の組の荷電顔料粒子は、青色である、項目13に記載の変色物体。
(項目16)
変色物体を作製する方法であって、前記方法は、
光透過性非平面基板を提供することと、
光透過性伝導性材料を前記光透過性非平面基板の内面に隣接して配置し、それによって、光透過性非平面基板の外面を作製することと、
カプセル化電気泳動媒体の層を前記光透過性伝導性材料に隣接して配置することと、
背面導体を前記カプセル化電気泳動媒体の層に隣接して配置することと
を含む、方法。
(項目17)
電圧源を提供することと、
前記光透過性伝導性材料および前記背面導体を電圧源に結合することと
をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
背面基板を前記背面導体に隣接して配置することをさらに含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記光透過性非平面基板は、熱成形、鋳造、射出成形、またはブロー成型される、項目16に記載の方法。
(項目20)
光透過性伝導性材料を配置することは、スプレーコーティング、スパッタリング、原子層堆積、蒸着、または浸漬コーティングを含む、項目16に記載の方法。
(項目21)
カプセル化電気泳動媒体の層を配置することは、スプレーコーティング、浸漬コーティング、電着、粉体コーティング、シルクスクリーニング、または刷毛塗り法を含む、項目16に記載の方法。
(項目22)
前記光透過性伝導性材料の一部をマスキングすることと、
カプセル化電気泳動媒体を配置後、前記マスクを除去することと、
前記光透過性伝導性材料を電圧源に接続することと
をさらに含む、項目16に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、電圧源に結合される光透過性導体を含む光透過性非平面基板を含む本発明の電気泳動ディスプレイの実施形態の断面図を示す。電圧源は、背面導体にも結合される。カプセル化電気泳動媒体の層が、光透過性導体と背面導体との間に配置される。1つ以上の接着剤層も、存在し得る。
【0013】
図2図2は、種々の一般的物体が、光透過性基板を成型し、正面導体、電気泳動媒体の層、および背面導体を追加することによって、変色するようにされ得ることを図示する。
【0014】
図3A図3Aは、本発明の変色非平面ディスプレイを作製するためのプロセスを図示する。
【0015】
図3B図3Bは、本発明の変色非平面ディスプレイを作製するためのプロセスを図示する。
【0016】
図4図4は、カプセル化電気泳動媒体をスプレーコーティングするために好適なノズルの実施形態を図示する。
【0017】
図5図5は、本発明のスプレーコーティング実施形態の動作の好ましい範囲を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、とりわけ、視認表面として機能する光透過性正面基板を含む非平面電気泳動ディスプレイを作製する方法を含む。光透過性伝導性層が、光透過性正面基板の中に組み込まれ、または、それに付着させられ、その後、電気泳動カプセル化媒体の層が、それに取り付けられる。電気泳動媒体が、堆積させられた後、背面電極が、取り付けられ、または堆積させられる。電圧が、光透過性伝導性層と背面電極との間に提供されると、電気泳動媒体の画像状態が、切り替えられ、それによって、変色面を作成する。そのような変色面が、例えば、玩具、家電、電子デバイス、または他の好適な構造の中に組み込まれることができる。
【0019】
いくつかの電気光学材料は、材料が固体外部表面を有するという意味において固体であるが、材料は、多くの場合、内部液体または気体充填空間を有し得る。固体電気光学材料を使用するそのようなディスプレイは、以降では、便宜上、「固体電気光学ディスプレイ」と称され得る。したがって、用語「固体電気光学ディスプレイ」は、回転二色部材ディスプレイ、カプセル化電気泳動ディスプレイ、マイクロセル電気泳動ディスプレイ、およびカプセル化液晶ディスプレイを含む。
【0020】
用語「双安定」および「双安定性」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味で、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えているディスプレイを指すために本明細書で使用され、表示要素は、第1または第2の表示状態のうちのいずれか一方を示すように有限持続時間のアドレスパルスを用いて任意の所与の要素が駆動されてから、アドレスパルスが終了した後、表示要素の状態を変化させるために要求されるアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が続くようなものである。米国特許第7,170,670号では、グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、それらの極端な黒および白状態においてだけではなく、それらの中間グレー状態においても、安定しており、同じことは、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが示されている。このタイプのディスプレイは、適切に、双安定ではなく、「多安定」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定」が、本明細書では、双安定および多安定ディスプレイの両方を網羅するために使用され得る。
【0021】
長年にわたり集中的な研究および開発の関心の対象である、あるタイプの電気光学ディスプレイは、複数の荷電粒子が電場の影響下で流体を通して移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較したときに、良好な輝度およびコントラスト、広視野角、状態双安定性、および低電力消費の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期画質に関する問題は、それらの広範な利用を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向があり、これらのディスプレイの不十分な使用可能寿命をもたらす。
【0022】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された、またはそれらの名義の多数の特許および出願は、カプセル化された電気泳動および他の電気光学媒体に使用される種々の技術を説明している。そのようなカプセル化された媒体は、多数の小型カプセルを含み、それらの各々自体は、電気泳動により移動可能な粒子を流体媒体中に含む内相と、内相を包囲するカプセル壁とを含む。典型的に、カプセルは、2つの電極間に位置付けられたコヒーレント層を形成するために、それら自体がポリマー結合剤内に保持される。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号を参照)
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号を参照)
(c)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,825,829号、第6,982,178号、第7,236,292号、第7,443,571号、第7,513,813号、第7,561,324号、第7,636,191号、第7,649,666号、第7,728,811号、第7,729,039号、第7,791,782号、第7,839,564号、第7,843,621号、第7,843,624号、第8,034,209号、第8,068,272号、第8,077,381号、第8,177,942号、第8,390,301号、第8,482,852号、第8,786,929号、第8,830,553号、第8,854,721号、および第9,075,280号、および米国特許出願公開第2009/0109519号、第2009/0168067号、第2011/0164301号、第2014/0027044号、第2014/0115884号、および第2014/0340738号を参照)
(d)バックプレーン、接着剤層、および他の補助層、およびディスプレイで使用される方法(例えば、米国特許第D485,294号、第6,124,851号、第6,130,773号、第6,177,921号、第6,232,950号、第6,252,564号、第6,312,304号、第6,312,971号、第6,376,828号、第6,392,786号、第6,413,790号、第6,422,687号、第6,445,374号、第6,480,182号、第6,498,114号、第6,506,438号、第6,518,949号、第6,521,489号、第6,535,197号、第6,545,291号、第6,639,578号、第6,657,772号、第6,664,944号、第6,680,725号、第6,683,333号、第6,724,519号、第6,750,473号、第6,816,147号、第6,819,471号、第6,825,068号、第6,831,769号、第6,842,167号、第6,842,279号、第6,842,657号、第6,865,010号、第6,967,640号、第6,980,196号、第7,012,735号、第7,030,412号、第7,075,703号、第7,106,296号、第7,110,163号、第7,116,318号、第7,148,128号、第7,167,155号、第7,173,752号、第7,176,880号、第7,190,008号、第7,206,119号、第7,223,672号、第7,230,751号、第7,256,766号、第7,259,744号、第7,280,094号、第7,327,511号、第7,349,148号、第7,352,353号、第7,365,394号、第7,365,733号、第7,382,363号、第7,388,572号、第7,442,587号、第7,492,497号、第7,535,624号、第7,551,346号、第7,554,712号、第7,583,427号、第7,598,173号、第7,605,799号、第7,636,191号、第7,649,674号、第7,667,886号、第7,672,040号、第7,688,497号、第7,733,335号、第7,785,988号、第7,843,626号、第7,859,637号、第7,893,435号、第7,898,717号、第7,957,053号、第7,986,450号、第8,009,344号、第8,027,081号、第8,049,947号、第8,077,141号、第8,089,453号、第8,208,193号、第8,373,211号、第8,389,381号、第8,498,042号、第8,610,988号、第8,728,266号、第8,754,859号、第8,830,560号、第8,891,155号、第8,989,886号、第9,152,003号、および第9,152,004号、および米国特許出願公開第2002/0060321号、第2004/0105036号、第2005/0122306号、第2005/0122563号、第2007/0052757号、第2007/0097489号、第2007/0109219号、第2009/0122389号、第2009/0315044号、第2011/0026101号、第2011/0140744号、第2011/0187683号、第2011/0187689号、第2011/0292319号、第2013/0278900号、第2014/0078024号、第2014/0139501号、第2014/0300837号、第2015/0171112号、第2015/0205178号、第2015/0226986号、第2015/0227018号、第2015/0228666号、および第2015/0261057号、および国際出願公開第WO00/38000号、欧州特許第1,099,207B1号および第1,145,072B1号を参照)
(e)色形成および色調節(例えば、米国特許第7,075,502号および第7,839,564号を参照)
(f)ディスプレイを駆動する方法(例えば、米国特許第7,012,600号および第7,453,445号を参照)
(g)ディスプレイの適用(例えば、米国特許第7,312,784号および第8,009,348号を参照)
(h)米国特許第6,241,921号、第6,950,220号、第7,420,549号、第8,319,759号、および第8,994,705号、および米国特許出願公開第2012/0293858号に説明されるような非電気泳動ディスプレイ。
【0023】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化電気泳動媒体内の別々のマイクロカプセルを包囲する壁が、連続相と置換され得、したがって、いわゆる高分子分散電気泳動ディスプレイを生産し、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の別々の液滴と、高分子材料の連続相とを備え、そのような高分子分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の別々の液滴が、別々のカプセル膜が各個々の液滴に関連付けられない場合でも、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認識する。例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのような高分子分散電気泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種と考えられる。
【0024】
電気泳動媒体は、多くの場合、不透明であり(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子がディスプレイを通した可視光の透過を実質的に遮断するので)、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、ある表示状態が、実質的に不透明であり、ある表示状態が、光透過性であるいわゆる「シャッタモード」で動作するようにされることができる。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。電気泳動ディスプレイに類似するが、電場強度の変動に依拠する誘電泳動ディスプレイは、類似モードで動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイも、シャッタモードで動作することが可能であり得る。シャッタモードで動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイのための多層構造において有用であり得、そのような構造では、ディスプレイの視認表面に隣接する少なくとも1つの層は、シャッタモードで動作して、視認表面からより遠くにある第2の層を露出させるか、または隠す。
【0025】
用語「光透過性」は、そのように指定される層が、その層を通して見ている観察者が、電気光学媒体の表示状態の変化を観察することを可能にするために十分な光を透過させ、通常、導電性層および隣接する基板(存在する場合)を通して視認されることを意味するために、本特許および本明細書で使用され、電気光学媒体が非可視波長における反射率の変化を示す場合、用語「光透過性」は、当然ながら、関連する非可視波長の透過を指すと解釈されるべきである。基板は、典型的に、ポリマーフィルムであり、通常、約1~約25ミル(25~634μm)、好ましくは、約2~約10ミル(51~254μm)の範囲内の厚さを有するであろう。光透過性伝導性材料は、例えば、(例えば、アルミニウムまたはITOの)薄金属または金属酸化物層であり得るか、または、伝導性ポリマーであり得る。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムは、例えば、E.I. du Pont de Nemours & Company(Wilmington DE)からの「アルミコーティングを施したMylar」(「Mylar」は、登録商標である)として市販されており、そのような市販の材料は、フロントプレーンラミネートにおける良好な結果と共に使用され得る。光透過性伝導性材料は、金属フレーク、金属スクリーン、伝導性ポリマー、カーボンナノチューブ、グラフェン、またはそれらの組み合わせも含み得る。
【0026】
電気泳動ディスプレイでは、多くの場合、層のスタック内に1つ以上の接着剤層がある。例えば、電気泳動層と電極との間に接着剤層があり得、接着剤のこの層は、最終的なディスプレイの中に残る。当然ながら、この接着剤層は、ディスプレイの電気光学特性に大きな影響を及ぼす。必然的に、電極間の電圧降下の一部は、接着剤層内で起こり、したがって、電気泳動層を駆動するために利用可能な電圧を低減させる。接着剤の影響は、より低い温度においてより大きくなる傾向があり、温度による接着剤の影響のこの変動は、ディスプレイの駆動を複雑にする。接着剤内の電圧降下は、低減させられることができ、ディスプレイの低温動作は、例えば、米国特許第7,012,735号および第7,173,752号に説明されるように、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウムまたは他の材料で層をドープすることによって、積層接着剤層の伝導度を増加させることによって、改良されることができる。
【0027】
例示的変色物体100の断面が、図1で見られ得、視認表面は、視認者105に対向する。変色物体100は、光透過性非平面基板120から構築され、次いで、光透過性正面導体130が、別個の層として追加され、または光透過性非平面基板120に統合される。光透過性非平面基板120と光透過性正面導体130とが統合された後、カプセル化電気泳動媒体140の層が、統合された層120および130上に配置される。最後に、背面導体150が、カプセル化電気泳動媒体140の層上に配置され、それによって、変色物体100を完成させる。完成後、光透過性正面導体130および背面導体150は、電気コネクタ170(例えば、ワイヤまたはトレース)で電圧源160に接続される。電圧が、光透過性正面導体130と背面導体150との間に印加されると、カプセル化電気泳動媒体内の電気泳動粒子は、視認者105に向かって(またはそれから離れて)移動し得、それによって、変色物体100において色変化の効果を生産する。電圧源160は、例えば、D.C.電圧源であり得、1、2、3、4、5、6、7、8、または9つの電圧レベルを提供するように構成され得る。いくつかの実施形態において、電圧源160は、電圧対時間プロファイルにおいて方形波のように見え得る時変電圧信号を提供するであろう。時変電圧は、傾斜、鋸歯状、または正弦波であり得る。電圧源160は、電圧信号の独特の印加を可能にする一連の電圧レベルおよび時間依存性を供給し得る。いくつかの実施形態において、複数の電圧源160が、正面導体130と背面導体150の間に結合され得る。
【0028】
カプセル化電気泳動媒体の層は、例えば、上記特許に説明されるように、2つ以上のタイプの荷電顔料粒子を備え得る。故に、変色物体100は、例えば、白色と黒色との間で交互し得る。代替として、カプセル化電気泳動媒体140の層は、第1の組の荷電顔料粒子が赤色であり、第2の組の荷電顔料粒子が緑色であり、第3の組の荷電顔料粒子が青色である3つの粒子を備え得る。代替として、カプセル化電気泳動媒体140の層は、第1の組の荷電顔料粒子が赤色であり、第2の組の荷電顔料粒子が黒色であり、第3の組の荷電顔料粒子が白色である3つの粒子を備え得る。代替として、カプセル化電気泳動媒体140の層は、第1の組の荷電顔料粒子が白色であり、第2の組の荷電顔料粒子がシアン色であり、第3の組の荷電顔料粒子が黄色であり、第4の組の荷電顔料粒子がマゼンタ色である4つの粒子を備え得る。いくつかの組の荷電顔料粒子は、主に、光散乱性(例えば、反射性)であり得る一方、他の組は、減光性(例えば、吸収性)であり得るが、他の組は、光透過性であり得る。代替として、カプセル化電気泳動媒体140の層は、第1の組の荷電顔料粒子が赤色であり、第2の組の荷電顔料粒子が緑色であり、第3の組の荷電顔料粒子が青色であり、第4の組の荷電顔料粒子が黒色である4つの粒子を備え得る。代替として、カプセル化電気泳動媒体140の層は、第1の組の荷電顔料粒子が赤色であり、第2の組の荷電顔料粒子が黄色であり、第3の組の荷電顔料粒子が青色であり、第4の組の荷電顔料粒子が黒色である4つの粒子を備え得る。代替として、カプセル化電気泳動媒体140の層は、第1の組の荷電顔料粒子が赤色であり、第2の組の荷電顔料粒子が黄色であり、第3の組の荷電顔料粒子が青色であり、第4の組の荷電顔料粒子が黒色であり、第5の組の荷電顔料粒子が白色である5つの組の荷電粒子を備え得る。
【0029】
変色物体100は、剛体である必要はなく、曲げがカプセル化電気泳動媒体の層内でカプセルの破裂を引き起こさない程度、または、光透過性正面導体130または背面導体150における接続が衰えることを引き起こさない程度まで可撓性であり得ることを理解されたい。例えば、光透過性非平面基板120は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリル、または環状オレフィン系共重合体(COC)等のクリアポリマーを備え得る。光透過性非平面基板120を部分的にのみ光透過性に、例えば、半透明および/または着色することが適切である。そのような光透過性非平面基板120は、図2に示されるもの等、変色玩具200をもたらし得る。電気泳動媒体が少量の電力のみを要求し、かつ、電気泳動状態が双安定であるので、変色物体100内に隠された小エネルギー源(例えば、廃棄可能バッテリ)を用いてそのような変色特徴を達成することが可能である。
【0030】
変色物体を作製する方法100が、図3Aにおけるフローチャートに関して説明される。ステップ310から始まり、光透過性非平面基板が、提供される。上で議論されるように、光透過性非平面基板は、クリアポリマーを備え得る。しかしながら、ガラス等の他の光透過性材料も、好適である。光透過性非平面基板は、熱形成、鋳造、射出成形、ブロー成形、研磨、エッチング、または切断等のプロセスでプロセスが始まる前に形成され得る。光透過性基板が、ステップ310において提供された後、正面(光透過性)導体は、ステップ320において、光透過性基板に結合され、または統合される。いくつかの実施形態において、正面(光透過性)導体は、PETフィルム等の追加の光透過性基板を含み得る。図3Bに示されるように、正面導体材料が、光透過性非平面基板315に統合される事例では、光透過性非平面基板と正面導体との組み合わせが、例えば、熱形成、ブロー成形等で一緒に形成されることが可能である。典型的に、正面(光透過性)導体材料は、金属フレーク、金属スクリーン、伝導性ポリマー、カーボンナノチューブ、グラフェン、またはそれらの組み合わせを備えている。正面(光透過性)導体材料は、そのポリ(スチレンスルホン酸塩)塩(「PEDOT:PSS」)またはポリアニリンの形態で通常使用される伝導性ポリマー、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT」)から形成され得るか、または、導線網、例えば、カーボンナノチューブまたはナノワイヤから形成され得る。正面(光透過性)導体材料が、光透過性非平面基板に統合されない場合、スプレーコーティング、スパッタリング、原子層堆積、蒸着、塗装、または浸漬コーティング等のプロセスを使用して、光透過性非平面基板に別個に追加され得る。
【0031】
光透過性非平面基板と正面導体とが統合されると、結果として生じる構造は、ステップ330において、カプセル化電気泳動媒体の層でコーティングされる。このステップは、スプレーコーティング、浸漬コーティング、電着、粉体コーティング、シルクスクリーニング、または刷毛塗り法等のプロセスを使用して、遂行され得る。カプセル化電気泳動媒体は、カプセルのスラリおよびポリウレタン結合剤として送達され得るか、または、カプセル化電気泳動媒体は、「フリーズドライ」、すなわち、凍結乾燥後に送達され得る。光学状態を作動させるように電気泳動媒体を横断して電圧を提供するために、ステップ340において、背面導体が、次に、カプセル化電気泳動媒体の層上に形成される。背面導体は、光透過性である必要はない。しかしながら、光透過性であり得る。背面導体は、例えば、金属フレーク、金属スクリーン、金属箔、金属塗料、伝導性ポリマー、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、またはそれらの組み合わせを備え得る。最後に、正面および背面導体が、存在すると、それらは、ステップ350において、電圧源に接続され得る。ある場合では、非平面物体をカプセル化された媒体および背面導体でコーティングすることに先立って、例えば、マスキングテープで正面導体の一部をマスクで隠すことが有用である。故に、マスクが除去されると、正面導体へのクリアアクセスが提供され、正面および背面導体の電圧源への容易な結合を可能にする。代替として、マスキング層は、それ自体の物理的特性により、または接着剤コーティングの助けを借りて、バックプレーンに付着する単純ポリマーフィルムから形成され得るが、望ましくは、厚さが約75μmを上回るべきではない。マスキング層として有用であることが見出されているポリマーフィルムは、Kaptonテープ(du Pont de Nemours & Company(Wilmington,DE)から入手可能なポリイミドテープ)およびRP301フィルム(Nitto America,Inc.(Fremont,CA)から入手可能なアクリルフィルム)を含む。固体電気光学層は、典型的に、カプセル化された電気泳動層であるが、高分子分散電気泳動層または回転二色部材またはエレクトロクロミック層でもあり得る。正面電極を形成するために使用される材料および接着剤は、この目的のために従来技術で使用される材料のうちのいずれかであり得る。
【0032】
正面(光透過性)導体および背面導体の両方に関して、導電性層が、カプセル化電気泳動媒体の層の上方および下方の各々に配置される。例えば、前述の米国特許第6,982,178号に議論されるように、インジウムスズ酸化物(ITO)でコーティングされたポリマーフィルムが、市販されており、それらは、正面および背面導体を提供するために好適である。いくつかの実施形態において、接着剤層(図に示されない)が、例えば、光透過性非平面基板と正面(光透過性)導体との間、または正面(光透過性)導体とカプセル化電気泳動媒体の層との間、またはカプセル化電気泳動媒体の層と背面導体との間に適用されることができる。そのような接着剤は、例えば、熱および/または圧力で硬化され得るか、または、接着剤は、紫外線放射線で放射線硬化され得る。
【0033】
正面電極層312は、伝導性ポリマー、例えば、通常、そのポリ(スチレンスルホン)塩(「PEDOT:PSS」)の形態で使用されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT」)、またはポリアニリンから形成され得るか、または、導線網、例えば、カーボンナノチューブまたはナノワイヤから形成され得る。本発明者らは、カプセル化電気泳動層の直接上にPEDOTおよびカーボンナノチューブ正面電極の両方を首尾よくコーティングしている。
【0034】
(スプレーコーティングプロセス)
【0035】
すでに述べられたように、本発明はまた、基板上に電気泳動媒体のカプセルを噴霧することによって構築され得る。このプロセスは、液体中にカプセルの分散を形成することと、第1のオリフィスを通して分散を給送することと、第1のオリフィスを包囲する第2の環状オリフィスを通して、ガスの連続流を給送し、それによって、カプセルの噴霧を形成することとを含む。このスプレーコーティングプロセスは、スプレーコーティングが、通常、噴霧されている液体中でのレオロジー修飾剤の使用を要求せず、それによって、最終的なコーティングがそのようなレオロジー修飾剤を含まず、故に、そのようなレオロジー修飾剤がスロットコーティングされた電気泳動媒体の特性に及ぼし得る影響を含まないというスロットコーティングに勝る利点を有する。典型的に、スプレーコーティングでは、最終製品で実際に必要とされる添加物のみが、噴霧されている液体に添加される必要がある。
【0036】
図4は、本発明のスプレーコーティングプロセスで使用され得る単純スプレーコーティングノズル(概して、600と指定される)を通した概略的断面図である。ノズル600は、中心軸方向ボア604を有する実質的に円筒形の本体602を備え、中心軸方向ボア604を通して、液体(図示せず)中に分散させられた電気泳動カプセル(同様に図示せず)が、圧送される。中心ボア604は、環状ボア606によって包囲され、環状ボア606を通して、空気の連続流が、押し進められる。中心ボア604の下端は、オリフィス608の中で終端し、環状ボア606の下端が、オリフィス608を包囲する環状オリフィス610の中で終端する。円筒形バッフル612が、環状オリフィス610を包囲する。バッフル612によって抑制される環状オリフィス610を通した空気流は、オリフィス608を通過するカプセルの分散に噴霧または噴射614を形成させる。
【0037】
ノズル600はまた、数が6または8であり得る成形空気ボア616も提供される。図4に示されるように、それを通してボア616が通過するノズル600の周辺部分は、オリフィス608および610およびバッフル612の下方で下向きに延び、ボア616の下側部分は、直接下向きかつ内向きである。成形空気は、ボア616を通して連続的に押し進められ、それによって、成形空気は、噴射614に衝突し、それによって、噴射を広い噴霧618に広がらせ、それは、ノズル600の下方に配置される基板620に衝突する。
【0038】
カプセルコーティングの品質は、それらの再現性粒度、平均コーティング重量、一様性、および欠陥密度の観点から査定され、欠陥密度は、標準的ディスプレイ構造における単位ディスプレイ面積あたりの非切り替わりカプセルの数によって定量化され、標準的ディスプレイ構造は、この目的のために、バックプレーンとして画定され、バックプレーンは、順に、積層接着剤の25μm層、20μmカプセル層、および25μmポリエチレンテレフタレートフィルム上にITO層を備えている正面基板を支える。好ましくは、カプセル分散出口断面に対する噴霧化空気出口断面の比は、約8.5以下、好ましくは、約5.0~約7.0である。カプセル分散オリフィス直径は、好ましくは、約1.0~1.40mmの範囲内である。カプセル分散は、好ましくは、約38.0~約40.5重量パーセントの重量分率でカプセルを含み得、この分散は、随意に、最大約4.0重量パーセントの濃度における1-ブタノールと、最大約0.04重量パーセントの濃度におけるX-100等の界面活性剤とを含み得る。
【0039】
広範囲のカプセル分散送給率および噴霧化空気送給率が、本発明のスプレーコーティングプロセスで使用されることができる。典型的に、カプセル分散送給率Mは、約30g/分以上かつ約70g/分以下であり、最適条件は、主に、噴霧化ゾーン(すなわち、第1のオリフィスから出現するカプセル分散カラムが流体のシートに分解し、それが、続いて、間膜、最終的に、液滴に分解する領域)内での適切な滞留時間に基づいて決定される。望ましくは、液滴サイズ分布は、液滴あたりの平均カプセル数が約5.0未満であり、標準偏差が液滴あたり約3.0個のカプセルであるようなものである。噴霧化空気給送率は、第2のオリフィスにおいて測定される臨界空気速度vに基づいて設定され、典型的に、約100m/秒である。好ましいプロセスでは、約150~200g/分の合計空気送給率M(噴霧化空気および成形空気を含む)が、成形空気がない場合に採用され、成形空気を用いると最大300g/分である。
【0040】
経験的に、M/M対Mの観点から、HVLP噴霧化のための動作窓は、図5に示される形態を有するが、関与する数値は、使用される特定のノズル設計に伴って変動するであろうことが見出されている。図5のグラフの陰影のない領域は、望ましい動作窓を表す。陰影付き領域は、過剰な流体速度(「噴射」)、極めて不規則かつ一過性の噴霧構造、および粗液滴分布等の望ましくない噴霧パターンをもたらす欠陥領域を表す。
【0041】
本発明のスプレーコーティングプロセスでは、空気送給率およびノズルと基板の距離は、カプセル損傷を回避するように慎重に制御されるべきである。一般に、200~320mmのノズルと基板の距離が、最適であり、この距離は、噴霧化空気速度の2乗にほぼ反比例して調節されるべきである。
【0042】
また、噴霧カプセルコーティングの品質および均一性は、基板の前処理およびカプセル分散に添加される添加物による影響を強く受け得ることも見出されている。有用な前処理および添加物は、限定ではないが、以下を含む。
1)Triton X-100、ブタノール等の界面活性剤を組み込み、基板表面の湿潤を向上させる、カプセル分散
2)Triton X-100、1-ブタノール、および洗剤構造を保有するその他等の界面活性剤、随意に、ポリウレタンラテックスを組み込むサブ層を用いた基板表面の事前コーティング
3)大気プラズマまたはコロナ放電処理で基板を事前処理すること
4)カプセル分散は、ポリマー結合剤、例えば、ポリウレタンラテックスを含み得る
【0043】
すでに述べられたように、本発明のスプレーコーティングプロセスは、マスキング材料の除去後、マスキング材料が存在しなかった基板のそれらの部分上のみにカプセルが残るように、基板の一部を覆うマスキング材料の使用を含み得る。基板の一部を覆うために使用されるマスキング材料は、多孔質であるべきではない、または少なくとも、基板のマスキングされたエリア上へのカプセル堆積が起こらないことを確実にするために十分に低い多孔性を有するべきである。マスキング材料は、カプセルが分散させられる液体(通常は水性である)を大きく吸収するべきではなく、基板のマスキングされていない領域からマスキングされたエリアの中へのマスキング材料の下のカプセルの側方ドリフトが起こらないように、基板の表面に十分に近く設置されるべきである。カプセルが基板上に堆積させられた後、カプセルは、マスキング材料が依然として定位置にある状態で乾燥させられ得る(または、例えば、放射線への暴露によって、コヒーレントな層を形成するように別様に処理される)、またはマスキング材料が、最初に除去され得、次いで、カプセルが、乾燥または別様に処理され得る。いずれの場合も、マスキング材料およびカプセル分散の物理的特性は、マスキング材料の除去中、カプセルが基板の前もってマスキングされたエリアの中に込まれることも、(例えば、カプセルのコヒーレントな乾燥層の不規則な断裂によって)カプセルがマスキングされていないエリアから除去されることもないように、選定されるべきである。
【0044】
マスキングフィルムは、カプセルが堆積させられるべき表面上に事前積層される接着剤と、噴霧にさらされる剥離フィルムとを備え得る。カプセル堆積後、剥離フィルムが、除去され、その後、追加の処理が続く。結果として生じた噴霧印刷フィルムは、透明または不透明のいずれかであり得るバックプレーンに積層され得る。
【0045】
多数の変更および修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記に説明される本発明の具体的実施形態に行なわれ得ることが、当業者に明白となるであろう。故に、前述の説明の全体は、限定的意味ではなく、例証的意味で解釈されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5