(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】脳卒中診断治療支援システム、脳卒中状態情報提供装置、及び、脳卒中状態情報提供プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
A61B5/055 382
(21)【出願番号】P 2022547639
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2021033112
(87)【国際公開番号】W WO2022054858
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2020152645
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593030071
【氏名又は名称】大原薬品工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309032739
【氏名又は名称】株式会社PARKINSON Laboratories
(73)【特許権者】
【識別番号】502285457
【氏名又は名称】学校法人順天堂
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 信孝
(72)【発明者】
【氏名】山城 一雄
(72)【発明者】
【氏名】上野 祐司
(72)【発明者】
【氏名】宮元 伸和
(72)【発明者】
【氏名】浅利 美香
(72)【発明者】
【氏名】小野 和人
(72)【発明者】
【氏名】染田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】木虎 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 快彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭一郎
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-226043(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110533668(CN,A)
【文献】特開2019-213784(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054188(WO,A1)
【文献】特表2020-506012(JP,A)
【文献】L HUANG, et, al.,The Application of DWI and ADC Map in Cerebral Infarction,Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 9,2001年,#1446
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 10/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳卒中診断治療支援装置、及び、脳卒中状態情報提供装置を有し、診断対象者の脳卒中に関する所定の画像情報、及び、前記診断対象者の検査所見を示す検査所見情報を用いて、脳卒中の診断、治療を支援する脳卒中診断治療支援情報を提供する脳卒中診断治療支援システムであって、
前記脳卒中診断治療支援装置は、
前記画像情報としてDWI情報、ADCmap情報、及び、MRA画像情報を取得する画像取得部、
前記検査所見情報を取得する検査所見取得部、
所定の前記画像情報、及び、所定の前記検査所見情報を用いて、前記所定の画像情報、及び、前記所定の前記検査所見情報に対応する脳卒中の種類情報を判定するように学習済みの脳卒中種類判定部であって、取得した前記画像情報、及び、前記検査所見情報を用いて、前記脳卒中の種類を判定する脳卒中種類判定部、
判定した前記脳卒中の種類に基づいて、対応する治療方法を、予め脳卒中の種類と関連づけられている治療方法が記述された治療方法情報から取得する治療方法取得部、
判定した前記脳卒中の種類、及び、取得した前記治療方法を脳卒中診断治療支援情報として提供する脳卒中診断治療支援情報提供部、
を有し、
前記脳卒中状態情報提供装置は、
前記画像情報を提供する画像提供部、
前記脳卒中診断治療支援情報を取得する脳卒中診断治療支援情報取得部、
取得した前記脳卒中診断治療支援情報を表示する表示部、
を有すること、
を特徴とする脳卒中診断治療支援システム。
【請求項2】
診断対象者の脳卒中に関する所定の画像情報、及び、前記診断対象者の検査所見を示す検査所見情報を用いて、脳卒中の診断、治療を支援する脳卒中診断治療支援装置であって、
前記画像情報としてDWI情報、
ADCmap情報、及び、MRA画像情報を取得する画像取得部、
前記検査所見情報を取得する検査所見取得部、
所定の前記画像情報、及び、所定の前記検査所見情報を用いて、前記所定の画像情報、及び、前記所定の前記検査所見情報に対応する脳卒中の種類情報を判定するように学習済みの脳卒中種類判定部であって、取得した前記画像情報、及び、前記検査所見情報を用いて、前記脳卒中の種類を判定する脳卒中種類判定部、
判定した前記脳卒中の種類に基づいて、対応する治療方法を、予め脳卒中の種類と関連づけられている治療方法が記述された治療方法情報から取得する治療方法取得部、
判定した前記脳卒中の種類、及び、取得した前記治療方法を脳卒中診断治療支援情報として提供する脳卒中診断治療支援情報提供部、
を有する脳卒中診断治療支援装置。
【請求項3】
請求項2に係る脳卒中診断治療支援装置において、
前記脳卒中種類判定部は、さらに、
前記DWI情報、
前記ADCmap情報、及び、前記MRA画像情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域について、前記梗塞領域の大きさ、前記梗塞領域の数、前記梗塞領域の位置、前記梗塞領域に対する責任血管、前記責任血管の数、を判定した梗塞領域情報、及び、頭蓋内狭窄があるかを判定した閉塞・狭窄情報を用いて、前記脳梗塞の種類を判定し、
前記脳卒中種類判定部は、さらに、
所定の前記梗塞領域情報、及び、所定の前記閉塞・狭窄情報から、前記所定の梗塞領域情報、及び、前記所定の閉塞・狭窄情報に対応する前記脳梗塞の種類を判定するように学習済みであること、
を特徴とする脳卒中診断治療支援装置。
【請求項4】
請求項3に係る脳卒中診断治療支援装置において、
前記脳卒中種類判定部は、さらに、
前記DWI情報
、及び、前記ADCmap情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域を判定する脳梗塞領域判定部、
を有し、
前記脳梗塞判定部は、
所定の前記DWI情報
、及び、所定の前記ADCmap情報から、
前記DWI情報、及び、前記ADCmap情報に対応する前記脳梗塞領域を判定するように学習済みであること、
を特徴とする脳卒中診断治療支援装置。
【請求項5】
請求項4に係る脳卒中診断治療支援装置において、
前記脳卒中種類判定部は、さらに、
判定した前記脳梗塞領域の3次元位置情報から、責任血管を判定する責任血管判定部を有し、
前記責任血管判定部は、
所定の前記脳梗塞領域の前記3次元位置情報から、前記所定の脳梗塞領域の3次元位置情報に対応する責任血管を判定できるように学習済みであること、
を特徴とする脳卒中診断治療支援装置。
【請求項6】
コンピュータを、診断対象者の脳卒中に関する所定の画像情報、及び、前記診断対象者の検査所見を示す検査所見情報を用いて、脳卒中の診断、治療を支援する脳卒中診断治療支援装置であって、
前記画像情報としてDWI情報、
ADCmap情報、及び、MRA画像情報を取得する画像取得部、
前記検査所見情報を取得する検査所見取得部、
所定の前記画像情報、及び、所定の前記検査所見情報を用いて、前記所定の画像情報、及び、前記所定の前記検査所見情報に対応する脳卒中の種類情報を判定するように学習済みの脳卒中種類判定部であって、取得した前記画像情報、及び、前記検査所見情報を用いて、前記脳卒中の種類を判定する脳卒中種類判定部、
判定した前記脳卒中の種類に基づいて、対応する治療方法を、予め脳卒中の種類と関連づけられている治療方法が記述された治療方法情報から取得する治療方法取得部、
判定した前記脳卒中の種類、及び、取得した前記治療方法を脳卒中診断治療支援情報として提供する脳卒中診断治療支援情報提供部、
として機能させる脳卒中診断治療支援プログラム。
【請求項7】
コンピュータを、
DWI情報、
ADCmap情報、及び、MRA画像情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域について、前記梗塞領域の大きさ、前記梗塞領域の数、前記梗塞領域の位置、前記梗塞領域に対する責任血管、前記責任血管の数、を判定した梗塞領域情報、及び、頭蓋内狭窄があるかを判定した閉塞・狭窄情報を用いて、前記脳梗塞の種類を判定する脳卒中種類判定部、
として機能させる脳梗塞種類判定モデルであって、
前記脳卒中種類判定部は、さらに、
所定の前記梗塞領域情報、及び、所定の前記閉塞・狭窄情報から、前記所定の梗塞領域情報、及び、前記所定の閉塞・狭窄情報に対応する前記脳梗塞の種類を判定するように学習済みであること、
を特徴とする脳梗塞種類判定モデル。
【請求項8】
コンピュータを、
脳のDWI情報、
及び、脳のADCmap情報を取得する画像情報取得部、
前記DWI情報、
及び、前記ADCmap情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域を判定する脳梗塞領域判定部、
として機能させる脳梗塞領域判定モデルであって、
前記脳梗塞判定部は、
所定の
前記DWI情報、及び、所定の前記ADCmap情報から、
前記所定のDWI情報、及び、前記所定のADCmap情報に対応する前記脳梗塞領域を判定するように学習済みであること、
を特徴とする脳梗塞領域判定モデル。
【請求項9】
コンピュータを、
脳のDWI情報、及び、脳のADCmap情報を取得する画像情報取得部、
前記DWI情報、及び、前記ADCmap情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域を判定する脳梗塞領域判定部、
脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域の3次元位置情報から、責任血管を判定する責任血管判定部、
として機能させる責任血管判定モデルであって、
前記責任血管判定部は、
所定の前記脳梗塞領域の前記3次元位置情報から、前記所定の脳梗塞領域の3次元位置情報に対応する責任血管を判定できるように学習済みであること、
を特徴とする責任血管判定モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳卒中診断治療支援システムに関し、特に、適切に脳卒中の種類を判断し、対応する治療方法を実施できるように支援する情報を容易に提供できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の見守りシステムについて、
図23に示す医用画像処理装置P100を用いて説明する。医用画像処理装置P100は、被検者の脳を撮影した医用画像に基づいて算出された被検者の脳組織における局所的な血流量である局所脳組織血流量が入力されるデータ入力部21と、算出した前記局所脳組織血流量に基づいて、被検者の脳組織の時間経過に伴う回復可能性を数値化した脳梗塞インデックスを算出する脳梗塞インデックス算出部32と、を備えたことを特徴とする。
【0003】
このように、脳の各部位における脳梗塞の進行状況を可視化することで、脳梗塞に対してとるべき処置を判断するための情報を提供する(以上、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の医用画像処理装置P100には、以下に示すような改善すべき点がある。医用画像処理装置P100では、被検者の脳組織における局所的な血流量に基づき回復可能性を算出するものであることからも、脳の動脈に発生した血栓を取り除き、虚血に陥っている脳組織の血流を回復させる再開通療法に適用することを前提としたものである。
【0006】
一方、脳卒中の種類には、脳内に出血がない、非心原性・ラクナ梗塞、非心原性・アテローム血栓性脳梗塞、心原性・心原性脳塞栓症が存在し、脳梗塞の種類によって、治療方法も異なる。このため、脳卒中に関して十分な知識を有さない医師等が、適切に脳卒中の種類を判断し、対応する治療方法を実施することは、難しい、という改善点がある。
【0007】
そこで、本発明は、適切に脳卒中の種類を判断し、対応する治療方法を実施できるように支援する情報を容易に提供できる脳卒中診断治療支援システムを提供することを目的とする。
本発明の目的は、以下の発明により達成される。
(1)
脳卒中診断治療支援装置、及び、脳卒中状態情報提供装置を有し、診断対象者の脳卒中に関する所定の画像情報、及び、前記診断対象者の検査所見を示す検査所見情報を用いて、脳卒中の診断、治療を支援する脳卒中診断治療支援情報を提供する脳卒中診断治療支援システムであって、
前記脳卒中診断治療支援装置は、
前記画像情報としてDWI情報、ADCmap情報、及び、MRA画像情報を取得する画像取得部、
前記検査所見情報を取得する検査所見取得部、
所定の前記画像情報、及び、所定の前記検査所見情報を用いて、前記所定の画像情報、及び、前記所定の前記検査所見情報に対応する脳卒中の種類情報を判定するように学習済みの脳卒中種類判定部であって、取得した前記画像情報、及び、前記検査所見情報を用いて、前記脳卒中の種類を判定する脳卒中種類判定部、
判定した前記脳卒中の種類に基づいて、対応する治療方法を、予め脳卒中の種類と関連づけられている治療方法が記述された治療方法情報から取得する治療方法取得部、
判定した前記脳卒中の種類、及び、取得した前記治療方法を脳卒中診断治療支援情報として提供する脳卒中診断治療支援情報提供部、
を有し、
前記脳卒中状態情報提供装置は、
前記画像情報を提供する画像提供部、
前記脳卒中診断治療支援情報を取得する脳卒中診断治療支援情報取得部、
取得した前記脳卒中診断治療支援情報を表示する表示部、
を有すること、
を特徴とする脳卒中診断治療支援システム。
(2)
診断対象者の脳卒中に関する所定の画像情報、及び、前記診断対象者の検査所見を示す検査所見情報を用いて、脳卒中の診断、治療を支援する脳卒中診断治療支援装置であって、
前記画像情報としてDWI情報、ADCmap情報、及び、MRA画像情報を取得する画像取得部、
前記検査所見情報を取得する検査所見取得部、
所定の前記画像情報、及び、所定の前記検査所見情報を用いて、前記所定の画像情報、及び、前記所定の前記検査所見情報に対応する脳卒中の種類情報を判定するように学習済みの脳卒中種類判定部であって、取得した前記画像情報、及び、前記検査所見情報を用いて、前記脳卒中の種類を判定する脳卒中種類判定部、
判定した前記脳卒中の種類に基づいて、対応する治療方法を、予め脳卒中の種類と関連づけられている治療方法が記述された治療方法情報から取得する治療方法取得部、
判定した前記脳卒中の種類、及び、取得した前記治療方法を脳卒中診断治療支援情報として提供する脳卒中診断治療支援情報提供部、
を有する脳卒中診断治療支援装置。
(3)
(2)に係る脳卒中診断治療支援装置において、
前記脳卒中種類判定部は、さらに、
前記DWI情報、前記ADCmap情報、及び、前記MRA画像情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域について、前記梗塞領域の大きさ、前記梗塞領域の数、前記梗塞領域の位置、前記梗塞領域に対する責任血管、前記責任血管の数、を判定した梗塞領域情報、及び、頭蓋内狭窄があるかを判定した閉塞・狭窄情報を用いて、前記脳梗塞の種類を判定し、
前記脳卒中種類判定部は、さらに、
所定の前記梗塞領域情報、及び、所定の前記閉塞・狭窄情報から、前記所定の梗塞領域情報、及び、前記所定の閉塞・狭窄情報に対応する前記脳梗塞の種類を判定するように学習済みであること、
を特徴とする脳卒中診断治療支援装置。
(4)
(3)に係る脳卒中診断治療支援装置において、
前記脳卒中種類判定部は、さらに、
前記DWI情報、及び、前記ADCmap情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域を判定する脳梗塞領域判定部、
を有し、
前記脳梗塞判定部は、
所定の前記DWI情報、及び、所定の前記ADCmap情報から、前記所定のDWI情報、及び、前記所定のADCmap情報に対応する前記脳梗塞領域を判定するように学習済みであること、
を特徴とする脳卒中診断治療支援装置。
(5)
(4)に係る脳卒中診断治療支援装置において、
前記脳卒中種類判定部は、さらに、
判定した前記脳梗塞領域の3次元位置情報から、責任血管を判定する責任血管判定部を有し、
前記責任血管判定部は、
所定の前記脳梗塞領域の前記3次元位置情報から、前記所定の脳梗塞領域の3次元位置情報に対応する責任血管を判定できるように学習済みであること、
を特徴とする脳卒中診断治療支援装置。
(6)
コンピュータを、診断対象者の脳卒中に関する所定の画像情報、及び、前記診断対象者の検査所見を示す検査所見情報を用いて、脳卒中の診断、治療を支援する脳卒中診断治療支援装置であって、
前記画像情報としてDWI情報、ADCmap情報、及び、MRA画像情報を取得する画像取得部、
前記検査所見情報を取得する検査所見取得部、
所定の前記画像情報、及び、所定の前記検査所見情報を用いて、前記所定の画像情報、及び、前記所定の前記検査所見情報に対応する脳卒中の種類情報を判定するように学習済みの脳卒中種類判定部であって、取得した前記画像情報、及び、前記検査所見情報を用いて、前記脳卒中の種類を判定する脳卒中種類判定部、
判定した前記脳卒中の種類に基づいて、対応する治療方法を、予め脳卒中の種類と関連づけられている治療方法が記述された治療方法情報から取得する治療方法取得部、
判定した前記脳卒中の種類、及び、取得した前記治療方法を脳卒中診断治療支援情報として提供する脳卒中診断治療支援情報提供部、
として機能させる脳卒中診断治療支援プログラム。
(7)
コンピュータを、
前記DWI情報、前記ADCmap情報、及び、前記MRA画像情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域について、前記梗塞領域の大きさ、前記梗塞領域の数、前記梗塞領域の位置、前記梗塞領域に対する責任血管、前記責任血管の数、を判定した梗塞領域情報、及び、頭蓋内狭窄があるかを判定した閉塞・狭窄情報を用いて、前記脳梗塞の種類を判定する脳卒中種類判定部、
として機能させる脳梗塞種類判定モデルであって、
前記脳卒中種類判定部は、さらに、
所定の前記梗塞領域情報、及び、所定の前記閉塞・狭窄情報から、前記所定の梗塞領域情報、及び、前記所定の閉塞・狭窄情報に対応する前記脳梗塞の種類を判定するように学習済みであること、
を特徴とする脳梗塞種類判定モデル。
(8)
コンピュータを、
脳のDWI情報、及び、脳のADCmap情報を取得する画像情報取得部、
前記DWI情報、及び、前記ADCmap情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域を判定する脳梗塞領域判定部、
として機能させる脳梗塞領域判定モデルであって、
前記脳梗塞判定部は、
所定の前記DWI情報、及び、所定の前記ADCmap情報から、前記所定のDWI情報、及び、前記所定のADCmap情報に対応する前記脳梗塞領域を判定するように学習済みであること、
を特徴とする脳梗塞領域判定モデル。
(9)
コンピュータを、
脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域の3次元位置情報から、責任血管を判定する責任血管判定部、
として機能させる責任血管判定モデルであって、
前記責任血管判定部は、
所定の前記脳梗塞領域の前記3次元位置情報から、前記所定の脳梗塞領域の3次元位置情報に対応する責任血管を判定できるように学習済みであること、
を特徴とする責任血管判定モデル。
【発明の効果】
【0008】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0009】
本発明に係る脳卒中診断治療支援システムは、脳卒中診断治療支援装置、及び、脳卒中状態情報提供装置を有し、診断対象者の脳卒中に関する所定の画像情報、及び、前記診断対象者の検査所見を示す検査所見情報を用いて、脳卒中の診断、治療を支援する脳卒中診断治療支援情報を提供する脳卒中診断治療支援システムであって、前記脳卒中診断治療支援装置は、前記画像情報としてDWI情報、ADCmap情報、及び、MRA画像情報を取得する画像取得部、前記検査所見情報を取得する検査所見取得部、所定の前記画像情報、及び、所定の前記検査所見情報を用いて、前記所定の画像情報、及び、前記所定の前記検査所見情報に対応する脳卒中の種類情報を判定するように学習済みの脳卒中種類判定部であって、取得した前記画像情報、及び、前記検査所見情報を用いて、前記脳卒中の種類を判定する脳卒中種類判定部、判定した前記脳卒中の種類に基づいて、対応する治療方法を、予め脳卒中の種類と関連づけられている治療方法が記述された治療方法情報から取得する治療方法取得部、判定した前記脳卒中の種類、及び、取得した前記治療方法を脳卒中診断治療支援情報として提供する脳卒中診断治療支援情報提供部、を有し、前記脳卒中状態情報提供装置は、前記画像情報を提供する画像提供部、前記脳卒中診断治療支援情報を取得する脳卒中診断治療支援情報取得部、取得した前記脳卒中診断治療支援情報を表示する表示部、を有する。
【0010】
これにより、脳卒中に関する治療に十分な知識を有していない者に対して、所定の画像情報、検査所見情報を用いて、治療に必要な情報を容易に提供することができる。
【0011】
本発明に係る脳卒中診断治療支援装置は、診断対象者の脳卒中に関する所定の画像情報、及び、前記診断対象者の検査所見を示す検査所見情報を用いて、脳卒中の診断、治療を支援する脳卒中診断治療支援装置であって、前記画像情報としてDWI情報、ADCmap情報、及び、MRA画像情報を取得する画像取得部、前記検査所見情報を取得する検査所見取得部、所定の前記画像情報、及び、所定の前記検査所見情報を用いて、前記所定の画像情報、及び、前記所定の前記検査所見情報に対応する脳卒中の種類情報を判定するように学習済みの脳卒中種類判定部であって、取得した前記画像情報、及び、前記検査所見情報を用いて、前記脳卒中の病型分類を判定する脳卒中種類判定部、判定した前記脳卒中の種類に基づいて、対応する治療方法を、予め脳卒中の種類と関連づけられている治療方法が記述された治療方法情報から取得する治療方法取得部、判定した前記脳卒中の種類、及び、取得した前記治療方法を脳卒中診断治療支援情報として提供する脳卒中診断治療支援情報提供部、を有する。
【0012】
これにより、画像情報、及び、検査所見情報を提供するだけで、各画像情報から推定できる脳卒中の病型分類を得ることができる。つまり、脳卒中について専門的な知識を有する者でなくても、適切な脳卒中病型分類の診断と治療をできるように支援できる。
【0013】
本発明に係る脳卒中診断治療支援装置では、前記脳卒中種類判定部は、さらに、前記DWI情報、前記ADCmap情報、及び、前記MRA画像情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域について、前記梗塞領域の大きさ、前記梗塞領域の数、前記梗塞領域の位置、前記梗塞領域に対する責任血管、前記責任血管の数、を判定した梗塞領域情報、及び、頭蓋内狭窄があるかを判定した閉塞・狭窄情報を用いて、前記脳梗塞の種類を判定し、前記脳卒中種類判定部は、さらに、所定の前記梗塞領域情報、及び、所定の前記閉塞・狭窄情報から、前記所定の梗塞領域情報、及び、前記所定の閉塞・狭窄情報に対応する前記脳梗塞の種類を判定するように学習済みであること、を特徴とする。
【0014】
これにより、既存の梗塞領域情報、及び、閉塞・狭窄情報を利用して学習済みの脳卒中種類判定部を用いるため、より精度よく、脳卒中の種類を判定できる。
【0015】
本発明に係る脳卒中診断治療支援装置では、前記脳卒中種類判定部は、さらに、前記DWI情報、及び、前記ADCmap情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域を判定する脳梗塞領域判定部、を有し、前記脳梗塞判定部は、所定の前記DWI情報、及び、所定の前記ADCmap情報から、前記所定のDWI情報、及び、前記所定のADCmap情報に対応する前記脳梗塞領域を判定するように学習済みであること、を特徴とする。
【0016】
これにより、既存のDWI情報、及び、ADCmap情報を利用して学習済みの脳梗塞領域判定部を用いるため、より簡単に、より精度よく、脳梗塞の領域を判定できる。
【0017】
本発明に係る脳卒中診断治療支援装置では、前記脳卒中種類判定部は、さらに、判定した前記脳梗塞領域の3次元位置情報から、責任血管を判定する責任血管判定部を有し、前記責任血管判定部は、所定の前記脳梗塞領域の前記3次元位置情報から、前記所定の脳梗塞領域の3次元位置情報に対応する責任血管を判定できるように学習済みであること、を特徴とする。
【0018】
これにより、既存の脳梗塞領域の3次元位置情報を利用して学習済みの責任血管判定部を用いるため、より簡単に、より精度よく、脳梗塞領域の3次元位置情報に対応する責任血管を判定できる。
【0019】
本発明に係る脳卒中診断治療支援プログラムは、コンピュータを、診断対象者の脳卒中に関する所定の画像情報、及び、前記診断対象者の検査所見を示す検査所見情報を用いて、脳卒中の診断、治療を支援する脳卒中診断治療支援装置であって、前記画像情報としてDWI情報、ADCmap情報、及び、MRA画像情報を取得する画像取得部、前記検査所見情報を取得する検査所見取得部、所定の前記画像情報、及び、所定の前記検査所見情報を用いて、前記所定の画像情報、及び、前記所定の前記検査所見情報に対応する脳卒中の種類情報を判定するように学習済みの脳卒中種類判定部であって、取得した前記画像情報、及び、前記検査所見情報を用いて、前記脳卒中の種類を判定する脳卒中種類判定部、判定した前記脳卒中の種類に基づいて、対応する治療方法を、予め脳卒中の種類と関連づけられている治療方法が記述された治療方法情報から取得する治療方法取得部、判定した前記脳卒中の種類、及び、取得した前記治療方法を脳卒中診断治療支援情報として提供する脳卒中診断治療支援情報提供部、として機能させる。
【0020】
これにより、コンピュータに、所定の画像情報、及び、所定の所見情報を提供するだけで、各画像情報から推定できる脳卒中の状態を得ることができる。つまり、脳卒中について専門的な知識を有する者でなくても、脳卒中の状態を容易に判断できるように支援できる。
【0021】
本発明に係る脳梗塞種類判定モデルは、前記DWI情報、前記ADCmap情報、及び、前記MRA画像情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域について、前記梗塞領域の大きさ、前記梗塞領域の数、前記梗塞領域の位置、前記梗塞領域に対する責任血管、前記責任血管の数、を判定した梗塞領域情報、及び、頭蓋内狭窄があるかを判定した閉塞・狭窄情報を用いて、前記脳梗塞の種類を判定する脳卒中種類判定部、として機能させる脳梗塞種類判定モデルであって、前記脳卒中種類判定部は、さらに、所定の前記梗塞領域情報、及び、所定の前記閉塞・狭窄情報から、前記所定の梗塞領域情報、及び、前記所定の閉塞・狭窄情報に対応する前記脳梗塞の種類を判定するように学習済みであること、を特徴とする。
【0022】
これにより、コンピュータに、既存の梗塞領域情報、及び、閉塞・狭窄情報を利用して学習済みの脳卒中種類判定モデルを構築でき、構築した脳卒中種類判定モデルを用いて、より精度よく、脳卒中の種類を判定できる。
【0023】
本発明に係る脳梗塞領域判定モデルは、コンピュータを、脳のDWI情報、及び、脳のADCmap情報を取得する画像情報取得部、前記DWI情報、及び、前記ADCmap情報を用いて、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域を判定する脳梗塞領域判定部、として機能させる脳梗塞領域判定モデルであって、前記脳梗塞判定部は、所定の前記DWI情報、及び、所定の前記ADCmap情報から、前記所定のDWI情報、及び、前記所定のADCmap情報に対応する前記脳梗塞領域を判定するように学習済みであること、を特徴とする。
【0024】
これにより、コンピュータに、既存のDWI情報、及び、ADCmap情報を利用して学習済みの脳梗塞領域判定モデルを構築でき、構築した脳梗塞領域判定モデルを用いて、より簡単に、より精度よく、脳梗塞の領域を判定できる。
【0025】
本発明に係る責任血管判定モデルは、コンピュータを、脳梗塞が発生している領域である脳梗塞領域の3次元位置情報から、責任血管を判定する責任血管判定部、として機能させる責任血管判定モデルであって、前記責任血管判定部は、所定の前記脳梗塞領域の前記3次元位置情報から、前記所定の脳梗塞領域の3次元位置情報に対応する責任血管を判定できるように学習済みであること、を特徴とする。
【0026】
これにより、コンピュータに、既存の脳梗塞領域の3次元位置情報を利用して学習済みの責任血管判定モデルを構築でき、構築した責任血管判定モデル用いて、より簡単に、より精度よく、脳梗塞領域の3次元位置情報に対応する責任血管を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る脳卒中診断治療支援システムの一実施例である脳卒中診断治療支援システム100を示す図である。
【
図2】脳卒中診断治療支援装置101のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】脳卒中状態情報提供装置103のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】脳卒中状態情報のデータ構造を示す図である。
【
図5】診断対象者状態情報のデータ構造を示す図である。
【
図6】CT画像情報、DWI情報、ADCmap情報、及び、MRA画像情報の一例を示す図であり、AはCT画像情報を、BはDWI情報を、CはADCmap情報を、DはMRA画像情報を、それぞれ示す図である。
【
図9】脳卒中診断治療支援情報のデータ構造を示す図である。
【
図10】判定脳卒中種類情報のデータ構造を示す図である。
【
図11】脳卒中状態情報提供装置103の動作を示すフローチャートである。
【
図12】脳卒中状態情報提供装置103が表示する脳卒中状態情報の送信画面を示す図である。
【
図13】脳卒中診断治療支援装置101の動作を示すフローチャートである。
【
図14】頭蓋内出血判定処理を示すフローチャートである。
【
図15】梗塞領域情報生成処理を示すフローチャートである。
【
図16】梗塞領域抽出処理を示すフローチャートである。
【
図17】閉塞・狭窄判定処理を示すフローチャートである。
【
図18】閉塞判定処理を示すフローチャートである。
【
図19】閉塞判定処理におけるMRA画像情報の分割を示す図である。
【
図20】狭窄判定処理を示すフローチャートである。
【
図21】脳卒中診断治療支援情報生成処理を示すフローチャートである。
【
図22】脳卒中状態情報提供装置103が表示する脳卒中診断治療支援情報の表示画面を示す図である。
【
図23】従来の脳梗塞診断治療支援システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0029】
本発明に係る脳卒中診断治療支援装置について、
図1に示す脳卒中診断治療支援装置100を例に説明する。
【0030】
第1 ハードウェア構成
1.脳卒中診断治療支援システム100
脳卒中診断治療支援システム100は、脳卒中診断治療支援装置101、及び、脳卒中状態情報提供装置103を有している。脳卒中診断治療支援装置101、脳卒中状態情報提供装置103は、所定のネットワークで接続されており、所定のネットワークを介して、互いに、情報を送受信できる。
【0031】
脳卒中診断治療支援装置101は、脳卒中状態情報提供装置103から脳卒中状態を示すCT画像情報(後述)、DWI情報(後述)、MRA画像情報(後述)、患者である診断対象者の状態を示す診断対象者状態情報、及び、各種検査に基づく検査所見情報を取得すると、これまでに脳卒中に関して診断、治療されたデータを蓄積した蓄積脳卒中診断治療情報に基づき、取得したCT画像情報、DWI情報、MRA画像情報、診断対象者状態情報、及び、検査所見情報から、脳卒中の種類を推定し、対応する治療方法を推定する。
【0032】
脳卒中状態情報提供装置103は、脳卒中の状態に陥っていると思われる診断対象者の脳卒中の状態に関するCT画像情報、DWI情報、ADCmap情報、MRA画像情報、診断対象者状態情報、及び、検査所見情報を、ネットワークを介して、脳卒中診断治療支援装置101に提供する。また、脳卒中状態情報提供装置103は、送信したCT画像情報、DWI情報、ADCmap情報、MRA画像情報、診断対象者状態情報、及び、検査所見情報から推定された脳卒中の種類、及び、治療方法を、脳卒中診断治療支援装置101から取得し、表示する。
【0033】
これにより、脳卒中状態情報提供装置103の使用者は、脳卒中に関する治療に十分な知識を有していなくても、脳卒中の治療に必要な情報を容易に得ることができる。
【0034】
2.脳卒中診断治療支援装置101
脳卒中診断治療支援装置101のハードウェア構成について
図2を用いて説明する。脳卒中診断治療支援装置101は、CPU101a、メモリ101b、ハードディスクドライブ101c(以下、HDD101cとする)、キーボード101d、マウス101e、ディスプレイ101f、光学式ドライブ101g、及び、通信回路101hを有する。
【0035】
CPU101aは、HDD101cに記録されているオペレーティング・システム(OS)、脳卒中診断治療支援プログラム等その他のアプリケーションに基づいた処理を行う。メモリ101bは、CPU101aに対して作業領域を提供する。HDD101cは、オペレーティング・システム(OS)、脳卒中診断治療支援プログラム、AI(Artificial Intelligence)プログラム等その他のアプリケーションのプログラム、及び、各種データを記録保持する。AIプログラムについては、既存の各プログラムの特性に従って、適宜に、選択する。
【0036】
キーボード101d、マウス101eは、外部からの命令を受け付ける。ディスプレイ101fは、ユーザーインターフェイス等の画像を表示する。光学式ドライブ101gは、脳卒中診断治療支援プログラムが記録されている光学式メディア101pから脳卒中診断治療支援プログラムを読み取り、また、他の光学式メディアからその他のアプリケーションのプログラムを読み取る等、光学式メディアからのデータの読み取りを行う。通信回路101hは、所定のネットワークに接続し、脳卒中状態情報提供装置103等の外部の通信機器との情報の送受信を行う。
【0037】
3.脳卒中状態情報提供装置103
脳卒中状態情報提供装置103のハードウェア構成について
図3を用いて説明する。脳卒中状態情報提供装置103は、CPU103a、メモリ103b、ディスプレイ103f、及び、通信回路103hを有する。なお、脳卒中状態情報提供装置103としては、スマートフォンを利用することができる。
【0038】
CPU103aは、メモリ103bに記録されているオペレーティング・システム(OS)、脳卒中状態情報提供プログラム等その他のアプリケーションに基づいた処理を行う。メモリ103bは、CPU103aに対して作業領域を提供する。また、メモリ103bは、オペレーティング・システム(OS)、脳卒中状態情報提供プログラム等その他のアプリケーションのプログラム、及び、各種データを記録保持する。
【0039】
ディスプレイ103fは、ユーザーインターフェイス等の画像を表示する。通信回路101hは、所定のネットワークに接続し、脳卒中診断治療支援装置101等の外部の通信機器との情報の送受信を行う。
【0040】
第2 使用情報
見守りシステム100で用いる情報について、
図4~
図11を用いて説明する。
【0041】
1.脳卒中状態情報
脳卒中状態情報とは、診断対象者、つまり、患者の脳卒中の状態を示す情報である。脳卒中状態情報のデータ構造を
図4に示す。脳卒中状態情報は、診断対象者状態記述領域、CT画像記述領域、DWI画像記述領域、ADCmap記述領域、MRA画像記述領域、及び、検査所見記述領域を有している。
【0042】
診断対象者状態記述領域には、診断対象者の状態を示す診断対象者状態情報が記述される。診断対象者状態記述領域は、診断対象者の性別、年齢、体温、発症時間、発症後治療開始までの経過時間等が記述される。
【0043】
CT画像記述領域には、診断対象者のCT画像情報が記述される。DWI画像記述領域には、診断対象者のDWI情報が記述される。ADCmap記述領域には、診断対象者のADCmap情報が記述される。MRA画像記述領域には、診断対象者のMRA画像情報が記述される。
【0044】
検査所見記述領域には、診断対象に対して実施した検査等から判断される所定項目に関する検査所見情報が記述される。以下において、各記述領域に記述される情報について説明する。
【0045】
(1)診断対象者状態情報
診断対象者状態情報とは、脳卒中診断治療支援システム100を用いて、状態を判断しようとする診断対象者に対して行った検査等から判断される診断対象者に関する検査情報である。
【0046】
診断対象者状態情報のデータ構造を
図5に示す。診断対象者情報は、心房細動、一過性心房細動、人工弁使用、左心室内血栓、洞機能不全症候群の各項目について有無を記述する記述領域を有している。
【0047】
(2)CT画像情報
CT画像情報とは、CT(Computer Tomography:コンピュータによる断層撮影法)を用いて取得された診断対象者の脳の画像を示す。CT画像情報は、医師等によって操作されたCT装置によって生成される。CT画像情報の一例を
図6Aに示す。
【0048】
(3)DWI情報
DWI情報とは、核磁気共鳴画像法 のシーケンスの一種で、水分子の拡散運動を画像化したものを示す。DWI(Diffusion Weighted Image:拡散強調画像)は、医師等によって操作されたDWI装置によって生成される。DWI情報の一例を
図6Bに示す。
【0049】
(4)ADCmap情報
ADCmap情報とは、スピンエコー法のパルス系列において、傾斜磁場の強さや印加時間を変えることによりディフェージングの効果を付けて得られた複数のDWIから、見かけ上の拡散係数(Apparent Diffusion Coefficient:ADC)を求めて画像化したものを示す。ADCmap情報は、医師等によって操作されたADCmap装置によって生成される。DWI情報の一例を
図6Cに示す。
【0050】
(5)MRA画像情報
MRA画像情報とは、MRA(Magnetic Resonance Angiography:磁気共鳴血管造影法)を用いて取得された診断対象者の血管像を示す画像を示す。MRA画像情報は、医師等によって操作されたMRA装置によって生成される。MRA画像情報の一例を
図6Dに示す。
【0051】
(6)検査所見情報
検査所見情報とは、脳卒中診断治療支援システム100を用いて、状態を判断しようとする診断対象者、つまり患者、に対して行った検査等から判断される病状に関する所見情報である。
【0052】
検査所見情報のデータ構造を
図7に示す。検査所見情報は、心房細動、一過性心房細動、人工弁使用、左心室内血栓、洞機能不全症候群、及び、頸動脈狭窄の各項目について有無を記述する記述領域を有している。なお、検査所見情報は、診断対象に対する問診、各種の検査、全身所見等から取得する。
【0053】
2.治療方法情報
治療方法情報とは、脳卒中の状態と処置すべき治療方法とが関連付けられたデータベースである。
【0054】
治療方法情報のデータ構造を
図8に示す。治療方法情報は、脳卒中状態と、発症後治療開始までの経過時間に基づき分類されて記述される。例えば、脳卒中状態が「非心原性」であり、発症後24時間以内であれば、治療法として「」を施すことが、横軸「非心原性」、縦軸「24H以内」の欄に記述される。
【0055】
3.脳卒中診断治療支援情報
脳卒中診断治療支援情報とは、診断対象者から取得した脳卒中状態情報から推定した診断対象者の脳卒中の種類、および、それに対応する治療方法を示す情報である。脳卒中診断治療支援情報を提供することによって、脳卒中の診断、治療に不慣れな医師に対して、適切な診断、治療が行えるように支援する。
【0056】
脳卒中診断治療支援情報のデータ構造を
図10に示す。脳卒中診断治療支援情報は、診断対象者状態記述領域、CT画像記述領域、DWI記述領域、ADCmap記述領域、MRA画像記述領域、推定脳卒中種類記述領域、推定脳卒中検査所見記述領域、追加検査記述領域、及び、治療方法記述領域を有している。診断対象者状態記述領域、CT画像記述領域、DWI記述領域、ADCmap記述領域、MRA画像記述領域には、脳卒中状態情報(
図4参照)の診断対象者状態記述領域、CT画像記述領域、DWI記述領域、ADCmap記述領域、MRA画像記述領域に記述されている情報が記述される。
【0057】
推定脳卒中種類記述領域には、脳卒中状態情報(
図4参照)の診断対象者状態記述領域、CT画像記述領域、DWI記述領域、ADCmap記述領域、及び、MRA画像記述領域に記述されている情報に基づき推定した診断対象者の脳卒中の種類を示す判定脳卒中種類情報が記述される。判定脳卒中種類情報については、後述する。
【0058】
治療方法情報には、推定した診断対象者の脳卒中の種類に応じて、治療方法情報(
図8参照)から抽出した治療方法が記述される。
【0059】
(1)判定脳卒中種類情報
判定脳卒中種類情報のデータ構造を
図11に示す。判定脳卒中種類情報は、推定脳卒中種類記述領域、及び、可能性記述領域を有している。推定脳卒中種類記述領域には、診断対象者に対して推定される脳卒中の種類が記述される。推定される脳卒中の種類としては、「脳外科対応」、「非心原性・ラクナ梗塞」、「非心原性・アテローム血栓性脳梗塞」、「心原性・心原性脳塞栓症」、「その他」の項目がある。可能性記述領域には、推定脳卒中種類記述領域の各項目に対して、該当する可能性(%)が記述される。
【0060】
なお、「非心原性・ラクナ梗塞」とは、心臓疾患が原因でなく、動脈内に生じた血栓が原因となり、脳内の細い動脈が詰まることが原因となって起こる梗塞をいう。また、「非心原性・アテローム血栓性脳梗塞(ATI)」は、首から脳に通じる頸動脈や脳内の比較的太い動脈の硬化(アテローム硬化)が原因となって起こる梗塞をいう。さらに、「心原性脳塞栓症(CE)」は、心臓内で生じた血栓が脳内の動脈に流れ込み、脳内の血管が詰まることが原因となって起こる梗塞をいう。
【0061】
第2 脳卒中診断治療支援システム100の動作
脳卒中診断治療支援システム100の動作について、
図11~
図19を用いて説明する。脳卒中診断治療支援システム100を利用する医師等の使用者は、脳卒中状態情報提供装置103を用いて、診断対象者となる患者の性別や年齢、体温、発症時間、発症後治療開始までの経過時間等の状態を診断対象者状態情報として、診断対象のCT画像をCT画像情報として、DWI画像をDWI情報として、MRA画像をMRA画像情報として、また、診断対象に対する問診、各種の検査に基づく所見、全身所見を検査所見情報として、脳卒中診断治療支援装置101に送信する。脳卒中診断治療支援装置101は、取得した各種情報から、患者の脳卒中の状態、及び、対応する治療方法を推定し、医師が脳卒中の状態を判断し、適切な治療を実施するための脳卒中診断治療支援情報を提供する。
【0062】
1.脳卒中状態情報提供装置103の動作(1)
脳卒中状態情報提供装置103の動作について、
図11に示すフローチャートを用いて説明する。脳卒中診断治療支援システム100を利用する前に、医師等は、患者の状態を把握しておく。また、医師は、患者のCT画像、DWI画像、及び、MRA画像を、所定の装置を用いて取得しておく。さらに、医師は、必要な検査を実施し、患者の検査所見を得ておく。
【0063】
脳卒中状態情報提供装置103を使用とする者(以下、使用者)は、脳卒中状態情報提供装置103の脳卒中状態情報提供プログラムを起動する。脳卒中状態情報提供装置103のCPU103aは、脳卒中状態情報提供プログラムが起動したと判断すると(S801)、診断対象者である患者の状態、患者のCT画像、DWI画像、MRA画像、及び、患者の検査所見を入力するための入力画面(
図12参照)を表示する(S803)。患者の状態情報としては、例えば、年齢、性別等がある。端末使用者は、入力画面にしたがい、各項目を入力し、送信ボタンB103を選択する。
【0064】
CPU103aは、送信ボタンB103が選択されたと判断すると(S805)、入力された診断対象者の状態、患者のCT画像、DWI画像、MRA画像、及び、検査所見を脳卒中状態情報(
図4参照)として、脳卒中診断治療支援装置101へ送信する(S807)。
【0065】
2.脳卒中診断治療支援装置101の動作
脳卒中診断治療支援装置101の動作の概要について、
図13に示すフローチャートを用いて説明する。脳卒中診断治療支援装置101のCPU101aは、電源オンの後(S1301)、脳卒中状態情報提供装置103から脳卒中状態情報を取得すると(S1303)、取得した脳卒中状態情報に対応する脳卒中診断治療支援情報(
図9参照)を生成する(S1305)。なお、この段階では、脳卒中診断治療支援情報の各記述領域には何も記述されていない。
【0066】
CPU101aは、脳卒中状態情報から取得したCT画像に基づき頭蓋内出血情報生成処理を実行し、頭蓋内出血情報を生成する(S1306)。また、CPU101aは、脳卒中状態情報から取得したDWI、及び、ADCmapに基づき梗塞領域情報生成処理を実行し、梗塞領域情報を生成する(S1307)。また、CPU101aは、MRAに基づき閉塞・狭窄情報生成処理を実行し、閉塞・狭窄情報を生成する(S1309)。CPU101aは、生成した梗塞領域情報、及び、閉塞・狭窄情報、及び、患者情報に基づき脳梗塞種類判定処理を実行し、脳梗塞種類情報を生成する(S1311)。
【0067】
CPU101aは、脳梗塞種類情報を用いて、脳卒中診断治療支援情報生成処理を実行し、脳卒中診断治療支援情報を生成する(S1313)。CPU101aは、生成した脳卒中診断治療支援情報を、脳卒中状態情報提供装置103へ送信する(S1315)。
【0068】
CPU101aは、電源オフになるまで、ステップS1303~ステップS1315の処理を繰り返す。
【0069】
以下において、頭蓋内出血生成処理、梗塞領域情報生成処理、閉塞・狭窄情報生成処理、脳梗塞種類判定処理、及び、脳卒中診断治療支援情報生成処理について説明する。
【0070】
1.頭蓋内出血情報生成処理
頭蓋内出血情報生成処理について、
図14に示すフローチャートを用いて説明する。CPU101aは、取得した脳卒中状態情報からCT画像情報を取得すると(S1401)、AIプログラムを用いて、取得したCT画像情報における頭蓋内の出血の有無の可能性を判断する(S1403)。AIプログラムには、頭蓋内出血の有無を判断するにあたり、CT画像から、「頭蓋内出血あり」、「頭蓋内出血なし」の可能性を算出するように学習させた頭蓋内出血判定モデルを構築しておく。
【0071】
CPU101aは、ステップS1403において、頭蓋内出血の可能性を算出すると、「頭蓋内出血あり」、「頭蓋内出血なし」とそれぞれの可能性とを対とした、頭蓋内出血情報を生成する(1405)。
【0072】
2.梗塞領域情報生成処理
梗塞領域情報生成処理について、
図15に示すフローチャートを用いて説明する。CPU101aは、取得した要支援情報からDWIを取得する(S1501)。CPU101aは、取得したDWIに対して、画像間のばらつきを補正するための画像前処理を実行する(S1503)。
【0073】
DWIは、メーカやモデル等、DWI取得装置の違い、撮像対象者の血管の太さ等の個人差、撮像対象者の撮影時状態、等によって、ばらつきが生じている。このため、画像前処理では、取得したDWIに対して、輝度補正、回転補正、位置補正等の画像補正を実行し、DWI間のばらつきを減少させる。
【0074】
次に、CPU101aは、画像前処理を実行したDWIに対して、梗塞領域抽出処理を実行する(S1505)。
【0075】
梗塞領域抽出処理について、
図16を用いて説明する。梗塞領域抽出処理は、DWIから、脳梗塞が発生している領域を特定し、抽出する処理である。CPU11aは、画像前処理を実行したDWIから、周囲より高信号である画素を梗塞候補画素として抽出する(S1601)。CPU11aは、ADCmapを取得する(S1603)。CPU101aは、抽出した梗塞候補画素に対する特徴量を算出する(S1605)。
【0076】
梗塞候補画素に対する特徴量としては、梗塞候補画素の3次元位置情報や左右対称性の情報、及び、DWIの梗塞候補画素に対応するADCmapの画素(以下、対応ADCmap候補画素とする)の画素値、及び、対応ADCmap候補画素の周辺の画素値を用いている。
【0077】
DWIは、分子のブラウン運動の程度を画像化したものであり、拡散制限が発生している梗塞領域では画素値が高信号になるという特徴がある。一方、DWIは、T2強調画像の一種であるため、T2強調画像で画素値が高信号である領域は、DWIの対応する領域が、拡散制限が発生していなくても、画素値が高信号となってしまうことがある。これを、T2shine-throughと呼ぶ。実際に梗塞が発生している領域とT2shine-throughの領域とを区別するために、医師による読影では、DWIだけでなく、ADCmap画像も、同時に、検討している。梗塞が発生している領域は、DWIでは、画素値が周囲より高信号となる一方、ADCmapでは、画素値が周囲より低信号となる。これに対し、T2shine-throughの領域では、DWIでは、画素値が周囲より高信号であっても、ADCmapでは、画素値が周囲より低信号とはならない。そこで、梗塞が発生している領域とT2shine-throughの領域とを区別するために、DWIだけでなく、ADCmapの画素値も特徴量として用いる。
【0078】
CPU101aは、算出した特徴量を用いて、梗塞領域判定処理を実行する(S1607)。梗塞領域判定処理は、DWIから抽出した梗塞候補画素の領域が梗塞領域であるか否かを判定する処理である。梗塞領域判定処理においては、アルゴリズムとして、勾配ブースティング決定木(Gradient Boosting Decision Tree:以下、GBDTとする)を用いている。
【0079】
なお、梗塞領域判定処理においては、事前に、いくつかの症例に関する医師によるレビュー済みのDWI、ADCmap、及び、特徴量から、梗塞領域を算出するように学習させた梗塞領域判定モデルを構築しておく。
【0080】
図15に戻って、CPU101aは、DWIにおいて梗塞領域と判定した領域(以下、判定梗塞領域とする)から、梗塞領域の大きさ、梗塞領域の数、を判断する(S1507)。
【0081】
また、CPU101aは、判定梗塞領域の3次元位置情報を算出する(S1509)。CPU101aは、算出した判定梗塞領域の3次元位置情報を用いて、責任血管判定処理を実行する(S1511)。
【0082】
責任血管判定処理は、算出した判定梗塞領域の3次元位置情報から、判定梗塞領域が皮質枝に存在するのか、窄通枝にあるのかの判定梗塞領域の位置を判定し、また、責任血管を判定する処理である。責任血管を、脳底動脈(BA)、前下小脳動脈(AICA)、後下小脳動脈(PICA)、中大脳動脈 (MCA)、前大脳動脈(ACA)、後大脳動脈(PCA)の6つに分類している。脳底動脈(BA)以外の血管は、左右対称に2本存在するが、責任血管判定処理においては、左右を区別しない。また、責任血管判定処理においては、アルゴリズムとして、決定木(Decision Tree)を用いている。
【0083】
なお、責任血管判定処理においては、事前に、梗塞領域の3次元位置情報から、判定梗塞領域が皮質枝に存在するのか、窄通枝にあるのか、及び、梗塞領域に対する責任血管を算出するように学習させた責任血管判定モデルを構築しておく。
【0084】
CPU101aは、算出した判定梗塞領域の3次元位置情報のX座標を用いて、責任血管の左右位置を判定する(S1513)。なお、責任血管の左右位置判定は、ステップS1711において脳底動脈(BA)と判定された血管以外について、実行する。
【0085】
CPU101aは、ステップS1511で判定した責任血管、及び、ステップS1513で判定した責任血管の左右位置を用いて、判定梗塞領域が、単一の責任血管に対応して存在するか、又は、複数の責任血管に渡って存在するのかの判定を行なう(S1515)。
【0086】
CPU101aは、ステップS1507で判定した判定梗塞領域の大きさ、判定梗塞領域の数、ステップS1511で判定した判定梗塞領域の位置、責任血管、ステップS1515で判定した責任血管の数を用いて、梗塞領域情報を生成する(S1517)。
【0087】
生成した梗塞領域情報の一例を
図15aに示す。
図15aAに、判定梗塞領域を四角で示してたDWIを示す。また、
図15aBに、
図15aAに示すDWIを対象とした、判定梗塞領域の大きさ、判定梗塞領域の数、判定梗塞領域の位置、責任血管、責任血管の数を示す。
【0088】
3.閉塞・狭窄情報生成処理
(1)概要
血管閉塞が発生している場合、磁気共鳴血管撮影法(Magnetic Resonance Angiography)を用いて撮影した画像(以下、MRA画像)では、血管閉塞が発生している先の血管そのものが、MRA画像上から消失してしまう。そのため、MRA画像から、直接的に、血管閉塞が発生している領域を判定することは難しい、という問題がある。一方、血管狭窄が発生している場合は、MRA画像に、狭窄が発生している血管が存在している。そのため、MRA画像から、直接的に、血管狭窄が発生している領域を判定できる。このように、血管閉塞と血管狭窄とでは、MRA画像における特徴が異なるため、閉塞判定処理、狭窄判定処理により、血管閉塞、血管狭窄、それぞれの発生を判定している。
【0089】
閉塞・狭窄判定処理の概要を
図17のフローチャートに示す。CPU101aは、要支援情報から脳のMRA画像を取得すると(S1701)、閉塞判定処理を実行する(S1703)。また、CPU101aは、狭窄判定処理を実行する(S1705)
その後、CPU101aは、ステップS1703の閉塞判定処理、及び、ステップS1705の狭窄判定処理の結果を用いて、閉塞・狭窄情報を生成する(S1707)。
【0090】
(2)閉塞判定処理
前述のように、MRA画像から、直接的に、血管閉塞が発生している領域を判定することは難しい。そこで、脳における血管の配置構造、具体的には、左右対称構造を利用し、血管閉塞が発生すると脳の左右での血流量に大きな差が生じることに着目して、血管閉塞を検出する。
【0091】
閉塞判定処理を
図18に示すフローチャートを用いて説明する。CPU101aは、ステップS1801で取得したMRA画像において、上下左右の4分割し、血管体積算出の対象となる領域を特定する(S1801)。具体的には、
図19に示すように、脳のMRA画像において、所定領域の上下左右に4分割する。
【0092】
ここで、脳を上下に分割した理由は、下半分では、内頚動脈(ICA)の閉塞を、上半分では、中大脳動脈 (MCA)以降の閉塞を検出するためである。また、脳の下部中央にある脳底動脈は、多少、蛇行することもあるため、中央の一部は体積を測定する領域から除外している。
【0093】
次に、CPU101aは、各領域に含まれる血管の体積を算出する(S1803)。CPU101aは、上側の左右、下側の左右、それぞれの領域内の血管の体積の差の絶対値を算出し、規格化のために、左右の血管の体積の和で割った値を、左右差を示す指標値として算出する(S1805)。この指標値は、0~1までの範囲の値をとり、全く左右差がない場合には「0」、左右どちらかの血管が完全にMRA画像から消失している場合には「1」となる。
【0094】
CPU101aは、指標値が「0.5以上」である場合(S1807)、「閉塞発生」と判断する(S1809)。
【0095】
(3)狭窄判定処理
狭窄判定処理について、
図20に示すフローチャートを用いて説明する。CPU101aは、ステップS1701で取得したMRA画像の信号値を補正した上で(S2001)、3次元画像処理により、血管を抽出した3次元データを生成する(S2003)。MRA画像の信号値は、機種や症例により差があるため、単純な閾値での二値化処理では、血管だけをうまく抽出できない。このため、MRA画像の信号値に対して、画像間で最大値、最小値が同じとなるような補正を実行する。
【0096】
CPU101aは、血管のみを抽出した3次元データから血管の幅を算出する(S2005)。具体的には、抽出した血管から、各血管の中心線を推定し、中心線から血管壁までの距離を血管の幅(半径)としている。
【0097】
CPU101aは、算出した血管の幅が、同様に算出した周辺の血管の幅よりも50%以上縮小している血管を、狭窄が発生している血管として抽出する(S2007)。
【0098】
また、CPU101aは、ステップS2003で抽出した血管の3次元データ、及び、血管の幅を用いて、血管名を判定する血管名判定処理を実行する(S2009)。
【0099】
血管名判定処理では、抽出した血管の3次元データと血管の幅から血管名称を判定する。なお、血管名判定処理においては、事前に、いくつかの血管の3次元データと血管の幅を用いて、血管名を算出できるように学習させた血管名判定モデルを構築しておく。
【0100】
CPU101aは、ステップS2003で判定した狭窄が発生している3次元位置情報、ステップS2007で判定した狭窄発生している血管、及び、ステップS1711で判定した責任血管を用いて、梗塞に関係する頭蓋内狭窄があるかどうかを判定する近位判定処理を実行する(S2011)。近位判定処理では、解剖学的な血管の分岐についての情報、例えば、脳底動脈から前下小脳動脈が分岐しているといった情報、を用いて、各責任血管に対し、梗塞が発生している領域から責任血管を心臓方向に辿っていった先に狭窄があるか否かを判定する。
【0101】
CPU101aは、責任血管に対し、梗塞が発生している領域から責任血管を心臓方向に辿っていった先に狭窄があると判定すると、「梗塞に関係する頭蓋内狭窄有り」とする閉塞・狭窄情報を生成する(S2013)。
【0102】
4.脳梗塞種類判定処理
脳梗塞種類判定処理においては、アルゴリズムとして、ベイジアンネットワークを用いる。ベイジアンネットワークには、判定結果が確率値として得られる、入力項目の一部に欠損がある場合でも他の項目から推論できる、特徴量同士の関連性を可視化できる、といった特徴を有している。
【0103】
実際の臨床現場での運用を考えた場合、上記2番目の特徴は、特に重要である。実際の臨床現場では判定を行いたいタイミングで全ての検査データが揃っているとは限らず、一部の項目が欠損していることはより起こりうる。そのため、欠損があっても推論を行えるベイジアンネットワークは、他の手法と比較して、大きな利点となる。
【0104】
CPU101aは、ステップS1517で生成した梗塞領域情報、及び、ステップS2013で生成した閉塞・狭窄情報を用いて、脳梗塞の種類を判定し、脳梗塞種類情報を生成する。
【0105】
脳梗塞種類判定処理では、脳梗塞種類情報として、可能性がある脳梗塞種類名とその可能性(%)とを対として、一般的には、複数、算出する。
【0106】
なお、脳梗塞種類判定処理においては、事前に、いくつかの症例に関する医師によるレビュー済みの梗塞領域情報、閉塞・狭窄情報、及び、検査所見情報を用いて、脳梗塞の種類を判定できるように学習させた脳梗塞種類判定モデルを構築しておく。脳梗塞種類判定モデルの構築過程において、梗塞領域情報、閉塞・狭窄情報、及び、検査所見情報に対して、ベイジアンネットワークで用いる脳梗塞の種類に応じた寄与度が算出される。
【0107】
5.脳卒中診断治療支援情報生成処理
脳卒中診断治療支援情報生成処理について、
図21に示すフローチャートを用いて説明する。CPU101aは、ステップS1405で生成した頭蓋内出血情報、及び、ステップS1311で生成した脳梗塞種類情報を、ステップS1303において生成した脳卒中診断治療支援情報(
図9参照)における判定脳卒中種類情報(
図10参照)の対応する項目に記述する(S2101)。
【0108】
CPU101aは、脳卒中診断治療支援情報(
図9参照)の推定脳卒中種類記述領域に記述される判定脳卒中種類情報(
図10参照)における推定脳卒中種類記述領域の項目「非心原性・ラクナ梗塞」、「非心原性・アテローム血栓性脳梗塞」、「心原性脳塞栓症」について発症後治療開始経過時間情報に対応する治療方法を、治療方法情報(
図8参照)から取得し(S2103)、推定脳卒中種類の項目に対応させて脳卒中診断治療支援情報の治療方法記述領域に記述する(S2101)。
【0109】
3.脳卒中状態情報提供装置103の動作(2)
図11に戻って、脳卒中状態情報提供装置103のCPU103aは、脳卒中診断治療支援情報を取得すると(S811)、ディスプレイ103dに表示する(S813)。脳卒中診断治療支援情報をディスプレイ103dに表示した状態を
図22に示す。
【0110】
脳卒中状態情報提供装置103の使用者は、表示された脳卒中診断治療支援情報に基づき治療できると判断した場合には、必要な治療を施す。
【0111】
[その他の実施形態]
(1)各種画像情報、及び、脳卒中診断治療支援情報の送受:前述の実施例1においては、無線ネットワークを介して、各種画像情報、及び、脳卒中診断治療支援情報を、脳卒中診断治療支援装置101と脳卒中状態情報提供装置103との間で送受信するとしたが、有線回線を用いて、送受信するようにしてもよい。
【0112】
(2)脳卒中診断治療支援情報の送信先:前述の実施例1においては、脳卒中診断治療支援情報を、各画像情報を送信した脳卒中状態情報提供装置103に送信するとしたが、指定した他の通信装置に送信するようにしてもよい。また、画像情報を送信した脳卒中状態情報提供装置103とともに、他の通信装置に送信するようにしてもよい。
【0113】
(3)脳卒中診断治療支援装置101のハードウェア構成:前述の実施例1においては、CPU101a等を用いて脳卒中診断治療支援装置101を形成するとしたが、本発明に係る各種の処理を実行できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、専用のロジック回路を用いて脳卒中診断治療支援装置に各種の処理を実行させるようにしてもよい。
【0114】
(4)脳卒中状態情報提供装置103のハードウェア構成:前述の実施例1においては、脳卒中状態情報提供装置103はスマートフォンを用いるとしたが、他の装置、例えば、専用の装置を用いるようにしてもよい。また、CPU103a等を用いて脳卒中状態情報提供装置103を形成するとしたが、本発明に係る各種の処理を実行できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、専用のロジック回路を用いて脳卒中状態情報提供装置に各種の処理を実行させるようにしてもよい。
【0115】
(5)脳卒中診断治療支援プログラム、脳卒中状態情報提供プログラム:前述の実施例1においては、脳卒中診断治療支援プログラムは、例示のフローチャートに沿った処理を実現するとしたが、同様の処理を実現するものであれば、例示のものに限定されない。脳卒中状態情報提供プログラムについても同様である。また、各モデルで用いるアルゴリズムについても、同様の機能を発揮できるものであれば、例示のものに限定されない。
【0116】
(6)神経学所見:前述の実施例1において、さらに、古典的ラクナ症候群を推定するための純粋運動性不全片麻痺、純粋感覚性発作、運動失調不全片麻痺、構音障害と一側の功緻(こうち)運動障害のいずれかの臨床的証拠の有無や、大脳皮質梗塞の臨床的証拠(失語、失認、失行、半側空間失認等)あるいは小脳梗塞の臨床的証拠(めまい、嘔気)の有無のような神経学所見を神経学所見情報として、脳卒中の種類の推定に用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明に係る脳卒中診断治療支援システムは、例えば、脳卒中に関する専門的な知識を有する者がいない医療機関で用いる医療支援システムに使用できる。
【符号の説明】
【0118】
100 脳卒中診断治療支援システム
101 脳卒中診断治療支援装置
101a CPU
101b メモリ
101c ハードディスクドライブ
101d キーボード
101e マウス
101f ディスプレイ
101g 光学式ドライブ
101h 通信回路
101p 光学式メディア
103 脳卒中状態情報提供装置
103a CPU
103b メモリ
103f ディスプレイ
103h 通信回路