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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】採掘チェーン用鋼およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20240603BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20240603BHJP
   C21D 8/06 20060101ALI20240603BHJP
   C21D 9/52 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C22C38/00 301Y
C22C38/60
C21D8/06 A
C21D9/52 103B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022550659
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 CN2021077430
(87)【国際公開番号】W WO2021169941
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】202010129796.6
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514216801
【氏名又は名称】バオシャン アイアン アンド スティール カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、ジアチアン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、スーシン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジュン
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-247933(JP,A)
【文献】特開昭49-013021(JP,A)
【文献】特開2019-127636(JP,A)
【文献】特開2015-117406(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101397636(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102453841(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102747303(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 7/00- 8/10
C21D 9/00- 9/44
C21D 9/50- 9/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で:C:0.20~0.28%、Si:0.01~0.40%、Mn:0.50~1.50%、P≦0.015%、S≦0.005%、Cr:0.30~2.00%、Ni:0.50~2.00%、Mo:0.10~0.80%、Cu:0.01~0.30%、Al:0.01~0.05%、Nb:0.001~0.10%、V:0.001~0.10%、H≦0.00018%、N≦0.0150%、O≦0.0020%、および残部がFeおよび不可避的不純物である;からなり
該不可避的不純物において、B≦0.0010%、Ti≦0.003%、Ca≦0.005%であり、かつ
1.0~9.9の範囲のマイクロ合金化元素の係数rM/N、ここで
【数1】

を有し、
以下の通りの微量元素:As≦0.05%、Pb≦0.05%、Sn≦0.02%、Sb≦0.01%、Bi≦0.01%を有し、かつ≦500である有害性元素の係数J、ここで
【数2】

を有する、採掘チェーン用鋼。
【請求項2】
Ceq≦0.8を有し、ここで
【数3】

である請求項1の採掘チェーン用鋼。
【請求項3】
≧7.0である耐大気腐食性の指標Iを有し、ここで
【数4】

である請求項1の採掘チェーン用鋼。
【請求項4】
焼き戻しマルテンサイト、ベイナイト、および残留オーステナイトの微細構造を有する請求項1~3のいずれかの採掘チェーン用鋼。
【請求項5】
降伏強度Rp0.2≧1000MPa、引張強度R≧1200MPa、伸び率A≧12%、断面収縮率Z≧50%、シャルピー衝撃エネルギーAkv≧60J、および水素脆化の係数η(Z)≦15%を有する請求項1~3のいずれかの採掘チェーン用鋼。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの採掘チェーン用鋼の製造方法であって、精錬、鋳造、加熱、鍛造または圧延、焼き入れ熱処理、および焼き戻し熱処理過程の工程を含み、ここで
該加熱過程において、加熱温度が1050~1250℃であり、保持時間が3~24hrであり;
該鍛造または圧延過程において、最終鍛造温度または最終圧延温度が≧800℃であり;
該焼き入れ熱処理において、加熱温度が850~1000℃であり、保持時間が60~240minであり、そして水焼き入れがオーステナイト化後に実施され;
該焼き戻し熱処理において、焼き戻し温度が350~550℃であり、保持時間が60~240minであり、そして空冷または水冷が焼き戻し後に実施される、
製造方法。
【請求項7】
精錬が、電気炉中での精錬または転炉中での精錬、ならびに微細化および真空処理を含み;鋳造がダイカストまたは連続鋳造である請求項6の採掘チェーン用鋼の製造方法。
【請求項8】
鍛造過程において、鋼ビレットが最終製品のサイズに直接鍛造され;圧延過程において、鋼ビレットが最終製品のサイズに直接圧延され;または鋼ビレットが特定の中間ビレットサイズに圧延され、そして次いで加熱されそして最終製品のサイズに圧延され、ここで中間ビレットの加熱温度が1050~1250℃であり、そして保持時間が3~24hrである請求項6の採掘チェーン用鋼の製造方法。
【請求項9】
圧延過程において、鋼ビレットが加熱炉から外に出されると高圧水のスケール除去に供され、そして次いで圧延され、そして圧延後、鋼ビレットが空冷または徐冷される請求項6または8の採掘チェーン用鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、高強度を有する鋼、および特に高強度および高靭性を有する採掘チェーン用鋼、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
高強度および高靭性を有する棒鋼は、通常高い安全性の機械および構造用部品に用いられる。例えば、鉱山用の円形のリンクチェーンは、鉱山機械の重要な摩耗部品である。従って、それらは高強度、高靭性、高耐摩耗性、高耐腐食性および高耐疲労性などを有すべきである。
【0003】
高強度および高靭性を有する鋼に対する多くの国内および外国の研究がある。通常、これらの鋼は、適切な化学組成および制御圧延および冷却過程または焼き入れおよび焼き戻し過程などの製造方法を採用することによって製造される。制御圧延および冷却過程を用いて高強度鋼が製造される場合、圧延および冷却過程は制御するのが困難であるので、鋼の機械特性の全体的な均一性が影響を受ける。焼き入れおよび焼き戻し過程を用いて高強度鋼が製造される場合、鋼の焼入性は、合金元素および炭素の含有量を最適化することによって改善され得、その結果、鋼は冷却過程の間にマルテンサイトを形成し得る。マルテンサイト-ベースの高強度鋼は高転位密度を有し、劣った衝撃靭性を生じる。微小クラックなどの小さな欠陥が延伸過程の間に現れる場合、これらの鋼はすぐに砕け、比較的低い破壊靭性を示す。
【0004】
Mn-Cr-Ni-Mo合金鋼は、それらの良好な強度および靭性のために、建設機械、自動車、橋梁、および船用機器などの分野において広く用いられる。一般に、これらの鋼の安全使用のための強度レベルは、900~1000MPaである。より高い強度を有する鋼の使用は、機器をより軽くし得るだけでなく、資源を節約し得る。従って、高強度を有する合金鋼は、将来の発展の必然的な傾向である。しかし、鋼の強度レベルが増加すると、製造の困難性が増加し、そして水素脆化に対するそれらの感受性は必ず増加する。高強度鋼の水素誘導遅れ破壊に対する感受性は、微細構造の微細化、微細合金化、粒界の強化および合金元素の添加によって大いに下げられ得る。
【0005】
最新の国家規格GB/T 10560-2017(「鉱山用の溶接した円形のリンクチェーン用の鋼」)に開示された低いケイ素含有量を有するMn-Cr-Ni-Mo系において、鉱山用の円形のリンクチェーンのための鋼の最高強度レベルは、1180MPaである。焼き入れおよび焼き戻し(880℃で焼き入れおよび430℃で焼き戻し)後のチェーン鋼の機械特性は以下の通りである:降伏強度ReL≧1060MPa、引張強度R≧1180MPa、伸び率A≧10%、断面収縮率Z≧50%、およびシャルピー衝撃エネルギーAkV≧60J。中国の鉱山機械において用いられる焼き入れおよび焼き戻し(880℃で焼き入れおよび400℃で焼き戻し)後の最高強度グレードを有するチェーン鋼の機械特性は以下の通りである:降伏強度ReL≧980MPa、引張強度R≧1180MPa、伸び率A≧10%、断面収縮率Z≧50%、およびシャルピー衝撃エネルギーAkU≧40J。
【0006】
湿った鉱山において、Mn-Cr-Ni-Mo合金鋼チェーンは、大きな負荷および動力学的衝撃に供され、そして応力腐食を受ける傾向にある。いくつかの厳しい場合において、これらのチェーンは非常に脆くなり、そして容易に砕け、このことは、膨大な経済的損失および安全事故でさえも引き起こしかねない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要約
本発明の目的は、採掘チェーン用鋼およびその製造方法を提供することである。チェーン鋼は、良好な衝撃靭性、良好な伸び率および断面収縮率を有する。鋼は、応力腐食割れに抵抗し得、そして良好な耐候性、良好な耐摩耗性および耐疲労性を有し得る。従って、鋼は、建設機械および船舶工学などの高強度および高靭性を有する鋼が要求される状況において用いられ得る。
【0008】
上述目的を達成するため、本発明は以下の技術的解決法を提供する。
【0009】
重量%で:C:0.20~0.28%、Si:0.01~0.40%、Mn:0.50~1.50%、P≦0.015%、S≦0.005%、Cr:0.30~2.00%、Ni:0.50~2.00%、Mo:0.10~0.80%、Cu:0.01~0.30%、Al:0.01~0.05%、Nb:0.001~0.10%、V:0.001~0.10%、H≦0.00018%、N≦0.0150%、O≦0.0020%、および残部がFeおよび不可避的不純物である;を含み、かつ
1.0~9.9の範囲のマイクロ合金化元素の係数rM/N、ここで
【0010】
【数1】
【0011】
を有し、
以下の通りの微量元素:As≦0.05%、Pb≦0.05%、Sn≦0.02%、Sb≦0.01%、Bi≦0.01%を有し、かつ≦500である有害性元素の係数J、ここで
【0012】
【数2】
【0013】
を有する、採掘チェーン用鋼。
【0014】
本発明における式中の[Al]、[Nb]、[V]、[N]などは、鋼中の対応する元素の重量パーセントを表すことに留意すべきである。式中の[Al]、[Nb]、[V]、[N]などは、計算を行う場合、パーセントの記号の前の値で置き換える。例えば、実施例1におけるAlの含有量は0.020%であり、次に式中の[Al]を0.00020の代わりに0.020で置き換える。他の元素の置き換えも同様である。
【0015】
好ましくは、当該不可避的不純物において、B≦0.0010%、Ti≦0.003%、Ca≦0.005%。
【0016】
本発明における採掘チェーン用鋼の微細構造は、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイト、および残留オーステナイトであり、ここでベイナイトの体積パーセントは10%以下である。
【0017】
本発明における採掘チェーン用鋼は、降伏強度Rp0.2≧1000MPa、引張強度R≧1200MPa、伸び率A≧12%、断面収縮率Z≧50%、シャルピー衝撃エネルギーAkv≧60J、および水素脆化の係数η(Z)≦15%を有する。
【0018】
本発明における当該チェーン鋼の組成設計において:
Cは鋼の焼入性を改善し得、その結果、高硬度を有する相変態構造が焼き入れおよび冷却の過程において鋼中に形成され得る。C含有量が増加すると硬質相の割合が増加し、そしてそれ故鋼の硬度は増加するが、靭性の低下につながる。C含有量が低すぎる場合、マルテンサイトおよびベイナイトなどの相変態構造の含有量は低く、そして高い引張強度を有する鋼は得ることができない。本発明において、C含有量は0.20~0.28%に設定される。
【0019】
Siは鋼の強度強化に有益である。適切な量のSiは、焼き戻しの間の粗い炭化物の形成を回避し得る。しかし、高いSi含有量は鋼の衝撃靭性を低下させる。低いSiの組成系が本発明において採用され、そしてSi含有量は0.01~0.40%に設定される。
【0020】
Mnは主として、鋼中に固溶体の形態で存在する。それは、鋼の焼入性を改善し得、そして焼き入れの間に高強度を有する低温相変態構造を形成し得る。従って、良好な耐摩耗性を有する鋼を得ることができる。Mn含有量が高すぎる場合、多量の残留オーステナイトが形成され、鋼の降伏強度の低下につながり、そして鋼中に中心偏析を容易に生じる。本発明において、Mn含有量は0.50~1.50%に設定される。
【0021】
鋼中の粒界でのPの偏析は、粒界結合エネルギーを低下させ、そして鋼の衝撃靭性を劣化させる。本発明において、P含有量は0.015%以下に設定される。Sは鋼中に偏析し、そして多くの硫化物介在物を形成し、耐衝撃性の低下につながる。本発明において、S含有量は0.005%以下に設定される。
【0022】
Crは鋼の焼入性を改善し得る。それはまた、硬質マルテンサイト構造を形成し得、鋼の強度の改善につながる。Cr含有量が高すぎる場合、粗い炭化物が形成され、そして衝撃性能が低下する。本発明において、Cr含有量は0.30~2.00%に設定される。
【0023】
Niは鋼中に固溶体の形態で存在し、これは鋼の低温衝撃性能を改善し得る。しかし、過度に高いNi含有量は、鋼中の残留オーステナイトの過度に高い含有量につながり、それによって鋼の強度が低下する。本発明において、Ni含有量は0.50~2.00%に設定される。
【0024】
Moは鋼中に固溶体の形態で溶解し得、そして鋼の焼入性および強度を改善するのに役立ち得る。Moは、鋼が高温で焼き戻しされる場合、微細な炭化物を形成し、これは鋼の強度をさらに増加させ得る。貴金属Moのコストを考慮して、本発明において、Mo含有量は0.10~0.80%に設定される。
【0025】
Cuは鋼の強度および耐腐食性を改善し得る。Cu含有量が高すぎる場合、Cuは加熱の間に粒界に堆積し、粒界の弱化および次いで鋼の割れを生じる。本発明において、Cu含有量は0.01~0.30%に設定される。
【0026】
Alは鋼中に微細なAlN粒子を形成し、これはオーステナイト粒子の成長を阻害し得る。Al含有量が高すぎる場合、粗いAl酸化物が形成され、これらの粗くて硬い介在物は、鋼の衝撃靭性および疲労特性の低下を生じる。本発明において、Al含有量は0.01~0.05%に設定される。
【0027】
Nbは鋼に添加され、微細な沈殿物を形成し、これは鋼の再結晶を阻害し得、そして粒子を微細化する。Nb含有量が高すぎる場合、粗いNbC粒子が精錬の間に形成され、これは鋼の衝撃靭性を低下させる。粒子の微細化は、鋼の機械特性、特に強度および靭性の改善に重要な役割を果たす。その一方で、粒子の微細化はまた、鋼の水素脆化感受性を低下させるのに役立つ。本発明において、Nb含有量は0.001~0.10%に設定される。
【0028】
Vは、鋼中でCまたはNと沈殿物を形成して鋼の強度を改善し得る。CおよびVの含有量が高すぎる場合、粗いVC粒子が形成される。本発明において、V含有量は0.001~0.10%に設定される。
【0029】
Tiが鋼に添加される場合、微細な沈殿物が形成され得る。しかしTi含有量が高すぎる場合、縁および角を有する粗いTiN粒子が精錬の間に形成され、それによって鋼の衝撃靭性が低下する。本発明において、Ti含有量は0.003%以下に設定される。
【0030】
B元素は偏析しやすいので、B含有量は0.0010%以下に制限される。
【0031】
鋼へのCa元素の添加は、硫化物介在物のサイズおよび形態を改善し得、そして衝撃靭性の劣化を回避し得る。しかし、Ca元素は、介在物を形成しそして最終製品の疲労性能に影響を与えやすい。Ca含有量は0.005%以下に制御される。
【0032】
Nは、格子間原子のタイプであり、そしてまたMX-型沈殿物を形成するための元素である。鋼中のN元素の濃縮を回避するため、本発明において、N含有量は0.015%以下に設定される。マイクロ合金化元素Al、NbおよびVの含有量のNの含有量に対する比は、制御されなければならず、そしてそれ故マイクロ合金化元素の係数はrM/Nとして定義され、ここでrM/Nは1.0~9.9であり、そして
【0033】
【数3】
【0034】
マイクロ合金化元素の係数は、ナノスケールの沈殿物に関連する。マイクロ合金化元素の高い係数は、鋼中の粗い沈殿物の存在につながり、これは沈殿の強化の効果を達成することができない。さらに、マイクロ合金化元素の高い係数は、介在物と類似の悪影響につながり、疲労強度の低下を生じる。マイクロ合金化元素の低い係数は、少量の沈殿物につながり、これは分散の強化の効果を達成することができない。好ましくは、マイクロ合金化元素の係数rM/Nは1.0~6.0である。
【0035】
Sn、Sb、As、Bi、およびPbなどの微量元素は、焼き戻し温度で粒界に偏析し、粒間結合力の弱化につながる。MnおよびSiは、これらの有害性元素の偏析を促進し得、そしてそれ故鋼の脆化を増加させ得る。さらに、Sn、Sb、As、Bi、およびPbは、環境に対して有害であり、本発明において、これらの元素の含有量は以下の通り設定される:As≦0.05%、Pb≦0.05%、Sn≦0.02%、Sb≦0.01%、およびBi≦0.01%。Pの効果を考慮して、有害性元素の係数Jは≦500であり、そして
【0036】
【数4】
【0037】
Hは鋼中の欠陥で堆積する。1000MPaよりも大きい引張強度を有する鋼において、水素誘導遅れ破壊が起こるかもしれない。本発明において、引張強度は1200MPaを超え、そしてH含有量は0.00018%以下に制御されなければならない。Nは鋼中に窒化物または炭窒化物を形成し、これはオーステナイト粒子の微細化の役割を果たす。しかし高いN含有量は粗い粒子の形成につながり、これは粒子を微細化するのに役立たない。さらに、Nは格子間原子であり、そして粒界に堆積し、衝撃靭性の低下を生じる。本発明において、N含有量は0.0150%以下に制御される。鋼中のOおよびAlは、酸化物および複合酸化物などを形成する。鋼構造の均一性、ならびに鋼の低温衝撃エネルギーおよび疲労性能を確保するため、本発明において、Oの含有量は0.0020%以下に制御される。
【0038】
さらに、採掘チェーン用鋼の溶接要件を満足するため、鋼の炭素当量Ceqは0.80以下に制御されなければならず、ここで
【0039】
【数5】
【0040】
さらに採掘チェーン用鋼の耐候性を確保し、かつ応力腐食割れへの耐性を改善するため、耐大気腐食性の指標Iは7.0以上であり、ここで
【0041】
【数6】
【0042】
本発明における採掘チェーン用鋼の微細構造は、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイト、および残留オーステナイトである。
【0043】
一般に、異なる微細構造の水素脆化に対する感受性は、高い順に:元のマルテンサイト>焼き戻しマルテンサイト(低温で焼き戻し)>元のマルテンサイト配向を有する焼き戻しマルテンサイト>ベイナイト>焼き戻しマルテンサイト(高温で焼き戻し)であると考えられる。チェーン鋼は、先行技術において低温焼き戻しマルテンサイト構造を有する。しかし、本発明によって設計された化学組成の採用ならびに合金元素およびマイクロ合金化元素の相変態および微細構造に対する影響の完全な利用によって、焼き戻しマルテンサイト、少量のベイナイト、および残留オーステナイトの複合微細構造が、焼き入れおよび焼き戻し熱処理後に形成される。その一方で、C、P、S、N、O、およびHの含有量は、鋼の強度、衝撃靭性、伸び率および塑性を確保するよう制御されなければならない。従って、適合した超高強度および超高靭性ならびに高塑性を有する採掘チェーン用鋼を製造することができる。これらのチェーン鋼は、良好な耐候性、良好な耐摩耗性、良好な耐応力腐食性および良好な耐疲労性を有する。
【0044】
精錬、鋳造、加熱、鍛造または圧延、焼き入れ熱処理および焼き戻し熱処理過程の工程を含む、本発明における採掘チェーン用鋼の製造方法;ここで該加熱過程において、加熱温度は1050~1250℃であり、保持時間は3~24hrであり;該鍛造または圧延過程において、最終鍛造温度または最終圧延温度は≧800℃であり;該焼き入れ熱処理において、加熱温度は850~1000℃であり、保持時間は60~240minであり、そして水焼き入れはオーステナイト化後に実施され;該焼き戻し熱処理において、焼き戻し温度は350~550℃であり、保持時間は60~240minであり、そして焼き戻し後、鋼ビレットは空冷または水冷される。
【0045】
好ましくは、該精錬は電気炉中での精錬または転炉中での精錬であり得、そして次いで溶融鋼は微細化および真空処理に供される。
【0046】
好ましくは、該鋳造はダイカストまたは連続鋳造である。
【0047】
好ましくは、該鍛造過程において、鋼ビレットは最終製品のサイズに直接鍛造され;該圧延過程において、鋼ビレットは最終製品のサイズに直接圧延され、または鋼ビレットは特定の中間ビレットサイズに圧延され、そして次いで加熱されそして最終製品のサイズに圧延され、ここで中間ビレットの加熱温度は1050~1250℃であり、そして保持時間は3~24hrである。
【0048】
好ましくは、該圧延過程において、鋼ビレットは、加熱炉の外に出されると高圧水のスケール除去に供され、そして次いで圧延され、そして圧延後、鋼ビレットは空冷または徐冷される。
【0049】
本発明における採掘チェーン用鋼は、降伏強度Rp0.2≧1000MPa、引張強度R≧1200MPa、伸び率A≧12%、断面収縮率Z≧50%、シャルピー衝撃エネルギーAkv≧60J、および水素脆化の係数η(Z)≦15%を有する。この種の鋼は、良好な強度、良好な塑性、良好な靭性、ならびに良好な耐候性および耐応力腐食性を有する。
【0050】
本発明における採掘チェーン用鋼は、高強度棒鋼が要求される状況において用いられ得、ここで棒鋼のサイズおよびゲージ範囲Φは50~170mmである。
【0051】
本発明における高強度および高靭性を有する採掘チェーン用鋼は、1050~1250℃で加熱されて完全にオーステナイト化される。加熱の間、Al、Nb、Vの炭化物、窒化物および炭窒化物ならびにCrおよびMoの炭化物は、オーステナイト中に部分的にまたは完全に溶解され得る。続く圧延/鍛造および冷却過程の間、Al、NbおよびVは微細な沈殿物を形成する。オーステナイト中に溶解したMn、CrおよびMoは、鋼の焼入性を改善し得、それによってマルテンサイトの硬度および強度を増加させる。最終圧延または最終鍛造の温度が≧800℃である場合、微細化マルテンサイト、少量のベイナイト、および残留オーステナイトの複合マトリクス構造が形成され、そしてその上微細で分散した沈殿物が形成される。
【0052】
圧延または鍛造後、鋼を850~1000℃に加熱し、そしてしばらくの間保持し、そして次いで焼き入れが実施される。十分なオーステナイト化が保持過程の間に達成される。加熱の間、Al、Nb、V、CrおよびMoなどの炭化物形成元素の沈殿物が部分的に溶解され、そして未溶解の沈殿物は、粒界を固定しそしてオーステナイトの粗大化を阻害し得る(オーステナイトの粒径は≧6グレードである)。焼き入れおよび冷却過程の間、オーステナイト中に溶解した合金元素は、鋼が高強度および良好な靭性を有するようにする。焼き入れした鋼は、350~550℃で焼き戻し熱処理に供される。Al、Nb、V、CrおよびMoは、CおよびNと微細な沈殿物を形成し、これは鋼強度および塑性靭性の整合を改善する。本発明における焼き入れおよび焼き戻しの温度範囲内で、鋼が良好な強度および塑性ならびに良好な靭性を有することが確保され得、これは棒鋼の加工および適用に有益である。例えば、鍛造または溶接により良好な性能を有する採掘チェーンを製造すること。
【0053】
本発明は、以下の通り先行技術と比較される:
US特許US006146583は、合金鋼の組成およびこのような合金鋼で製造されたチェーン製品を開示し、ここで鋼の成分は:C:0.15~0.28%、Cr:0.2~1.0%、Mo:0.1~1.0%、Ni:0.3~1.5%、V:0.05~0.2%、および残部はFeおよび不可避的不純物である。鋼の強度は800MPaグレードに達し得、そして鋼は耐応力腐食性を有する。高強度および高靭性を有するチェーンは、鍛造、溶接、および熱処理によって得ることができる。
【0054】
そのUS特許と比較して、本発明は、組成において異なるCu含有量を採用し、そしてC、Nの含有量、およびMn、Cr、Ni、Moなどの合金元素の含有量、ならびにAl、V、およびNbなどのマイクロ合金化元素の含有量を最適化する。本発明は、C、NiおよびCu元素を含む組成設計を採用し、そしてMn、Cr、およびMoの含有量を最適化し、そしてそれ故焼き戻しマルテンサイト、少量のベイナイト、および残留オーステナイトの複合微細構造を形成することができる。さらに、本発明における鋼の機械特性は、US特許の鋼の機械特性よりも明らかに良好である。
【0055】
中国特許CN103276303Aは、採掘チェーン用高強度鋼およびその製造方法を開示する。チェーン鋼の成分は:C:0.21~0.25%、Mn:0.20~0.25%、Si:0.15~0.35%、Cr:0.40~0.65%、Ni:0.60~0.70%、Cu:0.07~0.15%、Alt:0.02~0.05%、N≦0.012%、S≦0.015%、P≦0.015%、および残部はFeである。製造方法は:電気炉または転炉における精錬過程、炉外微細化過程、ビレット連続鋳造過程、ならびに加熱および圧延過程を含み、20~50mmのゲージΦを有する直棒を得、そして焼鈍後に採掘チェーン用高強度鋼を得ることができる。
【0056】
そのCN特許と比較して、本発明の鋼におけるCr、Mn、NiおよびMoの含有量は、完全に異なる。さらに、本発明は、C、Cu、Al、Nb、およびVの含有量を最適化し、そしてNおよびCaの含有量を制限する。本発明において記載した合金元素の含有量を採用することによって、焼き戻しマルテンサイトおよび残留オーステナイトの微細構造が形成され、そして鋼は高強度および高靭性の機械特性を示す。1000Mpaより大きい引張強度を有する高強度鋼について、それは環境中にHを吸着させ、それによって鋼の遅れ割れを引き起こす。重いゲージを有する高強度棒鋼は、水素に対してより感受性が高い。従って、鋼中のHの含有量は、本発明において制御されるが、中国特許出願においてそのような要件はない。従って、本発明における鋼の耐応力腐食性および耐遅れ割れは、中国特許出願における鋼のそれらよりも良好である。その特許は、Φ20~50mmの直棒を製造するために用いられ、一方、本発明は、Φ50~170mmの棒鋼を製造するために用いられ得、本発明の方法は、より広範な用途を有し、そしてより重いゲージを有する鋼を製造するために用いられ得る。本発明は、組成、組織および過程設計に関して技術経路が上記特許とは完全に異なる。本発明において、鋼は引張強度R≧1200MPa、降伏強度Rp0.2≧1000MPa、および衝撃エネルギーAkv≧60Jを有する。本発明における鋼の強度グレードは、上述の特許における鋼の強度グレードよりも大きい。本発明における鋼は、優れた衝撃靭性および耐応力腐食割れを有する。
【0057】
本発明の利点は以下を含む:
1.本発明は、化学成分の合理的な設計および最適化過程の組み合わせによって高強度および高靭性を有する鋼を開発する。圧延または鍛造後、焼き入れした棒鋼は焼き戻し熱処理に供され、焼き戻しマルテンサイト、少量のベイナイト、および残留オーステナイトの構造を形成する。その上微細で分散した沈殿物が形成される。
2.鋼の組成および製造過程は合理的であり、そしてプロセスウィンドウは広い。鋼は、棒鋼または高速ワイヤ製造ライン上で商業的に大量生産され得る。
3.本発明における鋼は、降伏強度Rp0.2≧1000MPa、引張強度R≧1200MPa、伸び率A≧12%、断面収縮率Z≧50%、およびシャルピー衝撃エネルギーAkv≧60Jを有する。
【0058】
工学分野において、環境条件下での伸び率の変化は、通常応力腐食の傾向を反映するために用いられる。本発明において、円形断面試験片が、水素脆化に対する感受性についてDNV(DET NORSKE VERITAS)の要件を参照し、そしてGB/T 2975-2018「鋼および鋼製品-機械試験のためのサンプルおよび試験片の配置および調製」に従って調製され、ここで試験片の直径は10mmである。引張試験は、国家規格GB/T 228.1に従って実施され、ひずみ速度は≦0.0003/sであり、そしてそれ故断面収縮率Zが得られる。水素脆化の係数η(Z)は、鋼の耐応力腐食性を評価するために定義される:
【0059】
【数7】
【0060】
式中、Zは、250℃で2hの焼き付けの脱水素化後の引張試験での丸鋼の断面収縮率であり;
は、引張試験での丸鋼の断面収縮率である。
【0061】
水素脆化の小さい係数η(Z)は、小さい応力腐食傾向を示す。本発明における鋼の水素脆化の係数η(Z)は15%以下であり、鋼が良好な耐応力腐食性を有することを示す。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1は、本発明における実施例2の丸鋼の金属組織微細構造写真である(拡大は500倍である);
図2図2は、本発明における実施例2のリンクチェーンの金属組織微細構造写真である(拡大は500倍である)。
【発明を実施するための形態】
【0063】
実施態様の詳細な説明
本発明は、添付の図面および実施態様を参照して以下にさらに記載される。実施態様は、本発明を説明するためにのみ用いられ、本発明を限定するために用いられない。
【0064】
本発明における実施例および比較例の丸鋼の化学成分は、表1に示される。本発明における実施例1~7の高強度および高靭性を有する鋼の成分の係数および比較例1~3の鋼の成分の係数は、表2に示される。本発明の実施例において、マイクロ合金化元素の係数rM/Nは1.0~9.9の範囲に及び、炭素当量Ceqは0.80以下であり、そして有害性元素の係数Jは500以下であることが分かり得る。ここでrM/Nは、マイクロ合金化元素Al、Nb、およびVの含有量のNの含有量に対する比である。
【0065】
本発明における実施例および比較例の鋼の製造方法は、表3に示される。機械試験のための試験片を調製し、本発明における実施例および比較例における鋼の試験結果は、表4に示される。
【0066】
試験片は、GB/T 2975-2018「鋼および鋼製品-機械試験のためのサンプルおよび試験片の配置および調製」に従って調製される。機械試験は、GB/T 228.1-2010「金属材料-引張試験-第1部:室温での試験の方法」に従って実施される。室温での衝撃靭性は、GB/T 229-2007「金属材料-シャルピー振子式衝撃試験方法」に従って試験される。3つのサンプルが試験され、そして衝撃エネルギーの3つの値が得られた。
【0067】
実施例1
表1に示す化学組成に従って、溶融した鋼を電気炉中で精錬し、そして次いで微細化および真空処理に供する。その後、溶融した鋼を連続鋳造ビレットに鋳造する。次いで、連続鋳造ビレットを1050℃に加熱し、保持時間は4hrである。鋼ビレットを加熱炉から外に出すと高圧水のスケール除去に供し、そして次いで中間ビレットに圧延する。最終圧延温度は850℃であり、そして中間ビレットサイズは200mm×200mmである。次いで中間ビレットを1050℃に加熱し、保持時間は24hrであり、中間ビレットを加熱炉から外に出すと高圧水のスケール除去に供し、そして次いで圧延し、最終圧延温度は800℃であり、そして完成した棒鋼のサイズΦは50mmである。鋼ビレットを圧延後に積み重ねて冷却する。焼き入れ加熱温度は850℃であり、加熱時間は60minであり、焼き戻し温度は390℃であり、そして焼き戻し時間は90minである。鋼ビレットを焼き戻し後に空冷する。
【0068】
実施例2
製造方法を実施例1と同じ方法で実施し、ここで加熱温度は1080℃であり、保持時間は3hrであり、最終圧延温度は880℃であり、そして中間ビレットサイズは220mm×220mmである。中間ビレットを1120℃に加熱し、保持時間は3hであり、最終圧延温度は850℃であり、そして完成した棒鋼のサイズΦは75mmである。鋼ビレットを圧延後に空冷する。焼き入れ加熱温度は870℃であり、加熱時間は100minであり、焼き戻し温度は550℃であり、そして焼き戻し時間は60minである。鋼ビレットを焼き戻し後に水冷する。
【0069】
実施例3
製造方法を実施例1と同じ方法で実施し、ここで加熱温度は1120℃であり、保持時間は8hrであり、最終圧延温度は940℃であり、そして中間ビレットサイズは260mm×260mmである。中間ビレットを1200℃に加熱し、保持時間は5hrであり、最終圧延温度は880℃であり、そして完成した棒鋼のサイズΦは100mmである。鋼ビレットを圧延後に空冷する。焼き入れ加熱温度は890℃であり、加熱時間は150minであり、焼き戻し温度は430℃であり、そして焼き戻し時間は100minである。鋼ビレットを焼き戻し後に空冷する。
【0070】
実施例4
製造方法を実施例1と同じ方法で実施し、ここで加熱温度は1250℃であり、保持時間は14hrであり、そして鋼ビレットを熱間連続圧延によって形成する。ここで最終圧延温度は900℃であり、完成した棒鋼のサイズΦは150mmである。鋼ビレットを圧延後に空冷する。焼き入れ加熱温度は990℃であり、加熱時間は210minであり、焼き戻し温度は350℃であり、そして焼き戻し時間は180minである。鋼ビレットを焼き戻し後に水冷する。
【0071】
実施例5
表1に示す化学組成に従って、溶融した鋼を転炉中で精錬し、そして次いで微細化および真空処理に供する。次いで溶融した鋼を鋼塊に鋳造する。加熱温度は1180℃であり、保持時間は3.5hrであり、最終圧延温度は980℃であり、そして中間ビレットサイズは280mm×280mmである。中間ビレットを1250℃に加熱し、保持時間は12hrであり、最終圧延温度は950℃であり、そして完成した棒鋼のサイズΦは160mmである。鋼ビレットを圧延後に徐冷する。焼き入れ加熱温度は900℃であり、加熱時間は210minであり、焼き戻し温度は450℃であり、そして焼き戻し時間は190minである。鋼ビレットを焼き戻し後に水冷する。
【0072】
実施例6
製造方法を実施例5と同じ方法で実施し、ここで加熱温度は1220℃であり;保持時間は24hrである。鋼ビレットを鍛造によって形成し、最終鍛造温度は920℃であり、そして完成した棒鋼のサイズΦは170mmである。鋼ビレットを鍛造後に空冷する。焼き入れ加熱温度は920℃であり、加熱時間は40minであり、焼き戻し温度は420℃であり、そして焼き戻し時間は240minである。鋼ビレットを焼き戻し後に空冷する。
【0073】
実施例7
製造方法を実施例2と同じ方法で実施し、ここで加熱温度は1080℃であり、保持時間は3hrであり、最終圧延温度は880℃であり、そして中間ビレットサイズは220mm×220mmである。次いで中間ビレットを1100℃に加熱し、保持時間は3hrであり、最終圧延温度は850℃であり、完成した棒鋼のサイズΦは65mmである。鋼ビレットを圧延後に空冷する。焼き入れ加熱温度は880℃であり、加熱時間は150minであり、焼き戻し温度は400℃であり、そして焼き戻し時間は100minである。鋼ビレットを焼き戻し後に水冷する。
【0074】
比較例1~3は、異なる製造業者からの市販材料であり、熱処理過程は供給業者の推奨パラメーターを参照する。表3を参照。
【0075】
表4において、比較例1が高いNb含有量および10.1の微細合金化係数を有することが分かり得る。それは、乏しい沈殿強化効果、低い強度、低い衝撃靭性、および短い疲労寿命を示す。比較例2は、高いP含有量、有害性元素の係数678、および耐大気腐食性の指標5.3を有する。それは、乏しい衝撃靭性および耐応力腐食割れ、ならびに水素脆化の高い係数を示す。比較例3は、高いS含有量を有し、乏しい衝撃靭性を生じる。
【0076】
本発明における実施例1-7の高強度鋼は、降伏強度Rp0.2≧1000MPa、引張強度R≧1200MPa、伸び率A≧12%、断面収縮率Z≧50%、シャルピー衝撃エネルギーAkv≧60J、および水素脆化の係数η(Z)≦15%を有する。実施例6の鋼は、1回限りの加熱および圧延過程ならびに大きい棒サイズのせいで比較的乏しい構造濃密性を示す。その強度および衝撃特性は、他の実施例の鋼と比較してわずかに劣化している。実施例7の鋼は、低い耐大気腐食性指標のせいで劣化した衝撃靭性、水素脆化の係数、および耐腐食割れを示し、そして他の実施例の鋼と比較して乏しい性能を有する。
【0077】
実施例2の丸鋼の微細構造および実施例2の鋼を用いて調製した採掘チェーンを研究し、そして光学顕微鏡写真を図1および2に示す。図から、丸鋼の微細構造は焼き戻しマルテンサイト、少量のベイナイト、および残留オーステナイトであり、一方、実施例2の丸鋼を用いてさらに調製した採掘チェーンの微細構造は微細化焼き戻しマルテンサイトおよび少量のベイナイトであることが分かり得る。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
図1
図2