(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】アルブミンを高効率に生産する植物細胞株及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240603BHJP
C12N 15/82 20060101ALI20240603BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240603BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240603BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240603BHJP
A61K 38/38 20060101ALI20240603BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20240603BHJP
C07K 14/765 20060101ALN20240603BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/82 Z
C12N5/10
A61P7/00
A61K48/00
A61K38/38
A23K50/40
C07K14/765
(21)【出願番号】P 2022550693
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 KR2022008308
(87)【国際公開番号】W WO2023277392
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0084727
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522331633
【氏名又は名称】ジンセル・バイオテック・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】テ-ホ・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ムン-シク・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジン-ア・キム
(72)【発明者】
【氏名】スク-ミン・コ
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1896239(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110204620(CN,A)
【文献】特表2001-512318(JP,A)
【文献】特開2016-179951(JP,A)
【文献】特表2001-508806(JP,A)
【文献】New Biotechnology,2015年,Vol.32, No.3,p.328-334,DOI:10.1016/j.nbt.2015.03.001
【文献】Plant Cell, Tissue and Organ Culture,2018年,Vol.132,p.383-391,DOI:10.1007/s11240-017-1337-x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/12
C12N 15/82
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルブミンを生産するためのシグナルペプチド(Signal Peptide, SP)をコーディングする核酸配列がアルブミン遺伝子の5’-末端に結合された、組換え核酸であって、前記シグナルペプチドが、大豆貯蔵タンパク質A(VspA)に由来し、
かつ、配列番号12のアミノ酸配列からなり、前記アルブミン遺伝子が、犬または猫に由来する、組換え核酸。
【請求項2】
前記アルブミン遺伝子は、配列番号1または配列番号2の塩基配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組換え核酸。
【請求項3】
請求項1に記載の組換え核酸が作動可能に連結された、発現ベクター。
【請求項4】
前記発現ベクターは5’-UTR、シグナルペプチドをコーディングする塩基配列、及び犬または猫アルブミンの成熟ペプチド(mature peptide)をコーディングする塩基配列を含むことを特徴とする、請求項
3に記載の発現ベクター。
【請求項5】
前記発現ベクターは、配列番号7ないし10のうち、選択されたいずれか1つの塩基配列を含むことを特徴とする、請求項
3に記載の発現ベクター。
【請求項6】
請求項
3に記載の発現ベクターを含む、イネ細胞、タバコ細胞またはジャガイモ細胞から選択される宿主細胞。
【請求項7】
請求項
3に記載の発現ベクターを含む宿主細胞を培養する段階を含む、アルブミンを生産する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の組換え核酸、請求項
3に記載の発現ベクターまたは請求項
6に記載の宿主細胞を有効成分として含む、低アルブミン血症を予防または治療するための獣医学的組成物。
【請求項9】
前記組成物は、犬または猫に投与するためのことでヒトアルブミンの投与時に発生する副作用が減少されたことを特徴とする、請求項
8に記載の低アルブミン血症を予防または治療するための獣医学的組成物。
【請求項10】
前記副作用は、浮腫、蕁麻疹または皮膚病変であることを特徴とする、請求項
9に記載の低アルブミン血症を予防または治療するための獣医学的組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組換え核酸、請求項
3に記載の発現ベクターまたは請求項
6に記載の宿主細胞を有効成分として含む、低アルブミン血症を予防または改善するための飼料添加剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルブミンを高効率に生産する植物細胞株及びそれを生産する方法に係り、さらに具体的には、犬または猫由来の組換えアルブミンを高効率に生産するイネ懸濁細胞、それを生産する方法及び前記イネ懸濁細胞またはこれに由来する組換えアルブミンタンパク質を含む低アルブミン血症を予防、改善または治療するための獣医学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト血清アルブミン(Human Serum Albumin, HSA)は、主に肝臓で合成される血液中に最も多く存在するタンパク質であって、人体内で重要な生理学的役割を担当している。ヒト血清アルブミンは、血液内の脂肪酸のような低分子及びビリルビンを含めた低分子タンパク質を運ぶと共に、コロイド浸透圧による血管内・外の水分バランスを保持させる機能だけではなく、生体内抗酸化機能の大部分を担当していると知られている。このような多様な機能性のために、医療分野においては、血液量減少、低タンパク血症、ショック、火傷、重症出血、肝臓/腎臓疾患などの治療に薬剤学的製剤として広く使用されている。
【0003】
一方、医療現場で使用されているヒト血清アルブミンの大部分は、主にヒトの採血された血液から分離して製造されるものであって、長期間臨床で使用されてきたが、ウイルスなど感染性物質の伝播事例がなかった血液製剤の中でも安全性の高い製剤として認識されてきた。しかし、ヒト血清アルブミン製剤の中でも、DNAウイルスであるパルボウイルス(Parvovirus)B19のDNAが検出された事例があり、精製工程を経たアルブミン製剤であっても、原料をヒトの血漿にのみ依存するしかなく、未知の危険性を完全に排除することができないという認識が新たに展開された(非特許文献001)。
【0004】
そのような点からして、血液から直接製造することから脱して、酵母、植物細胞など多様な生産システムを活用した組換えヒト血清アルブミンの開発について本出願人を始め、多くのグループで研究が進められ、現在商用化まで至るようになった(非特許文献002)。
【0005】
一方、最近、伴侶動物市場が急成長することにより、動物医療現場でも肝機能障害、腎不全、火傷、慢性炎症性腸疾患、腫瘍、リンパ管拡張症など多様な疾病から起因する低アルブミン血症の治療にヒト血清アルブミンが活用されている。通常、血中アルブミン濃度が2.0g/dL以下に落ちたとき、ヒト血清アルブミンを処方している。
【0006】
しかし、最近、犬または猫の血清アルブミン(CSA/FSA; canine/feline serum albumin)のアミノ酸構成は、ヒト血清アルブミンと比較すれば、80%の相同性を示しており、副作用のない安全な処方において20%の差を克服することが重要な問題点となっている。
【0007】
一般に、哺乳類での非保存の(non-conserved)アミノ酸配列がアレルギー反応における活性抗原決定基(epitope)に同定されているが(非特許文献003及び非特許文献004)、犬または猫の血清アルブミンとヒト血清アルブミンとのアミノ酸構成の決定的差を示す部分は、非保存配列であるIBドメイン(アミノ酸残基110-133)であって、アレルギー抗原性に対する活性エピトープとして作用すると知られている(非特許文献005)。これらIBドメインの配列のみを詳細に比較すれば、CSA 54%、FSA 58%の相同性によって抗体生成の主要原因となって安全処方において決定的副作用の要因として作用するということを示す(
図1及び
図2参照)。
【0008】
実際の臨床例として、伴侶動物での低アルブミン血症の主要原因の1つである炎症成長疾患(IBD; Inflammatory Bowel Disease)やタンパク質漏出性胃腸症(PLE; Protein-Losing Enteropathy)を示す犬や猫に通常の処方剤として25%ヒト血清アルブミンを投与した結果、深刻な急性副作用が現われて死亡、または安楽死させた事例が報告されており、また疾患を有していない健康な犬や猫にヒト血清アルブミンを投与した実験でも深刻な浮腫、蕁麻疹、皮膚病変などが現われている(非特許文献006)。このような副作用は、前述したヒト血清アルブミンと犬または猫の血清アルブミンのアミノ酸構成の差による免疫反応の結果として認識されている。
【0009】
今まで報告されたヒト血清アルブミン処方関連の内容をまとめると、ヒト血清アルブミンを投与した犬と猫において30%前後の頻度で激しい浮腫、炎症、血液凝固障害、血管炎による皮膚病変、嘔吐、食慾不振、気力消失、血圧上昇、死亡など多様で深刻な副作用を起こすという結論を下している(非特許文献006及び非特許文献007)。また、異種タンパク質投与による抗体生成は、2次処方後の、投与されたアルブミンの効能を無力化させる要因としても作用する(非特許文献008)。
【0010】
すなわち、一回でもヒト血清アルブミンを処方された動物においては、ヒト血清アルブミンに対する抗体生成によって2次処方及び反復投与では、ヒト血清アルブミン治療効果が見られず、かつ、深刻なアナフィラキシーショック(anaphylactic shock)の危険性が非常に大きい。また、動物医療現場でのヒト血清アルブミン処方において、アメリカ、ヨーロッパなどとは異なって、国内では、動物の疾病治療において人体医薬品使用に係わる制度及び法的根拠が設けられておらず、最近、それに係わる社会的論難も頻繁に発生している。
【0011】
しかし、現在のところ、現実的には、ヒト血清アルブミンを代替するほどの動物専用アルブミン製剤がないために、動物医療現場では、副作用の危険性を甘受してでも、ヒト血清アルブミンを処方している状況である。一部動物病院では、犬や猫血液で製造した血液製剤を購買して使用しているが、採血のための供血犬(血液を提供する犬)の大量飼育問題、汚染された血液問題など、社会的論難と安全性において様々な問題を抱いている。一方、アメリカ、ヨーロッパなどの動物福祉先進国では、伴侶動物の献血によって収集された血液から製造されて公式許可された血漿製剤が動物医療現場で活用されているだけである。
【0012】
但し、最近、伴侶動物医療市場が急成長することにより、血液製剤の需要増加によって献血による血液製剤にのみ依存できず、血漿から製造した犬血清アルブミンは、精製工程によるコスト上昇によって伴侶動物の医療費負担の増加につながっている実情である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】Marano G, Vaglio S, Pupella S, et al. (2015) Human Parvovirus B19 and blood product safety: a tale of twenty years of improvements. Blood Transfus. 13:184-196.
【文献】He Y, Ning T, Xie T, et al. (2011) Large-scale production of functional human serum albumin from transgenic rice seeds. Proc Natl Acad Sci U S A 108(47):19078-19083.
【文献】Majorek KA, Porebski PJ, Dayal A, et al. (2012) Structural and immunologic characterization of bovine, horse, and rabbit serum albumins. Molecular Immunology 52(3-4):174-182.
【文献】Tanabe S, Kobayashi Y, Takahata Y, Morimatsu F, Shibata R, Nishimura T (2002) Some human B and T cell epitopes of bovine serum albumin, the major beef allergen. Biochem Biophys Res Commun. 293(5):1348-1353.
【文献】Pongprayoon P, Japrung D (2021) Revealing the structural dynamics of feline serum albumin. Structural Chemistry 32(1):69-77.
【文献】Cohn LA, Kerl ME, Lenox CE, Livingston RS, Dodam JR. (2007) Response of healthy dogs to infusions of human serum albumin. Am J Vet Res. 68(6):657-663.
【文献】Loyd KA, Cocayne CG, Cridland JM, Hause WR. (2016) Retrospective evaluation of the administration of 25% human albumin to dogs with protein-losing enteropathy: 21 cases (2003-2013). J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 26(4):587-592.
【文献】Martin LG, Luther TY, Alperin DC, Gay JM, Hines SA. (2008) Serum antibodies against human albumin in critically ill and healthy dogs. J Am Vet Med Assoc. 232(7):1004-1009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記のような要求を解決し、従来技術の問題点を克服するためのものであって、アルブミンを高効率に生産するための組換え核酸を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、前記組換え核酸を含むイネ懸濁細胞及びそれを用いるアルブミンを高効率に生産する方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、前記組換え核酸、イネ懸濁細胞またはそれらに由来する組換えアルブミンタンパク質を有効成分として含む低アルブミン血症を治療するための獣医学的組成物を提供することを他の目的とする。
【0017】
本出願の他の目的及び本発明が解決しようとする技術的課題は、前述した目的に制限されず、本明細書に記載の請求範囲及び図面と共に、下記発明の説明によってさらに明確になるであろう。また、本明細書に記載されていない本発明が解決しようとする技術的課題は、本発明の技術分野で通常の知識を有する者(以下、「通常の技術者」と称する)であれば、明確に理解し、類推可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、次の発明を提供する。
【0019】
本発明は、アルブミンを高効率に生産するための信号ペプチド(Signal Peptide, SP)をコーディングする核酸配列がアルブミン遺伝子の5’-末端に結合された組換え核酸を提供する。
【0020】
一具現例として、前記組換え核酸でアルブミン遺伝子は、犬または猫に由来する遺伝子でもある。さらに具体的に、前記アルブミン遺伝子は、配列番号1または配列番号2の塩基配列を含んでもよい。
【0021】
また、一具現例として、前記組換え核酸で信号ペプチドは、イネアミラーゼ3A(RAmy3A)または大豆貯蔵タンパク質A(VspA)に由来する。さらに具体的に、前記信号ペプチドは、配列番号11または配列番号12のアミノ酸配列からもなる。
【0022】
また、本発明は、アルブミンを高効率に生産するための信号ペプチドをコーディングする核酸配列がアルブミン遺伝子の5’-末端に結合された組換え核酸が作動可能に連結された発現ベクターを提供する。
【0023】
一具現例として、前記発現ベクターは、5’-UTR、信号ペプチドをコーディングする塩基配列、及び犬または猫アルブミンの成熟ペプチド(mature peptide)をコーディングする塩基配列を含む。さらに望ましく、発現ベクターは、配列番号7ないし10のうち、選択されたいずれか1つ塩基配列を含んでもよい。前記配列番号7ないし10の塩基配列は、5’-UTR、信号ペプチドをコーディングする塩基配列、及び犬または猫アルブミンの成熟ペプチド(mature peptide)をコーディングする塩基配列に該当する配列であって、配列番号7の塩基配列は5’--UTR、イネアミラーゼ3A(RAmy3A)信号ペプチドをコーディングする塩基配列及び犬アルブミンの成熟ペプチドをコーディングする塩基配列が順次に連結された配列であり、配列番号8の塩基配列は、5’-UTR、大豆貯蔵タンパク質A(VspA)信号ペプチドをコーディングする塩基配列及び犬アルブミンの成熟ペプチドをコーディングする塩基配列が順次に連結された配列であり、配列番号9の塩基配列は、5’-UTR、イネアミラーゼ3A(RAmy3A)信号ペプチドをコーディングする塩基配列及び猫アルブミンの成熟ペプチドをコーディングする塩基配列が順次に連結された配列であり、配列番号10の塩基配列は、5’-UTR、大豆貯蔵タンパク質A(VspA)信号ペプチドをコーディングする塩基配列及び猫アルブミンの成熟ペプチドをコーディングする塩基配列が順次に連結された配列である。
【0024】
また、本発明は、前記発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0025】
本発明の発現ベクターを連続して発現させうる宿主細胞としては、当業者に公知されたいかなる宿主細胞も利用可能であり、例えば、植物細胞、大膓菌、酵母またはバチルス属菌株などでもあるが、これらに制限されない。
【0026】
本発明の一具現例として、前記宿主細胞は、具体的に組換え犬アルブミンまたは組換え猫アルブミンを高効率に生産する植物細胞でもあり、さらに具体的に、前記植物細胞は、イネ懸濁細胞でもあるが、これに制限されない。
【0027】
本発明は、前記発現ベクターを含む宿主細胞を培養する段階を含む、高効率にアルブミンを生産する方法を提供する。ここで、前記宿主細胞は、植物細胞でもあり、さらに具体的には、イネ懸濁細胞でもあるが、これに制限されない。
【0028】
また、本発明は、アルブミンを高効率に生産するための信号ペプチド配列をコーディングする核酸配列がアルブミン遺伝子の5’-末端に結合された組換え核酸;前記組換え核酸が作動可能に連結された発現ベクター;前記発現ベクターに形質転換されて組換え犬アルブミンまたは組換え猫アルブミンを高効率に生産する宿主細胞;またはこれらに由来する組換え犬アルブミンまたは組換え猫アルブミンタンパク質;を有効成分として含む、低アルブミン血症を予防または治療するための獣医学的組成物を提供する。
【0029】
一具現例として、前記組成物は、犬または猫に投与するためのものであって、ヒトアルブミンの投与時に発生する副作用が減少したものでもある。さらに具体的に、前記副作用は、浮腫、蕁麻疹または皮膚病変でもある。
【0030】
また、本発明は、アルブミンを高効率に生産するための信号ペプチド配列をコーディングする核酸配列がアルブミン遺伝子の5’-末端に結合された組換え核酸;前記組換え核酸が作動可能に連結された発現ベクター;前記発現ベクターに形質転換されて組換え犬アルブミンまたは組換え猫アルブミンを高効率に生産する宿主細胞;またはこれらに由来する組換え犬アルブミンまたは組換え猫アルブミンタンパク質;を有効成分として含む、低アルブミン血症を予防または改善するための飼料添加剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によるアルブミンを高効率に生産するための組換え核酸、それを含むベクター及び前記ベクターを含むイネ懸濁細胞は、犬専用組換えCSA(rCSA; recombinant Canine Serum Albumin)及び猫専用組換えFSA(rFSA; recombinant Feline Serum Albumin)を安全かつ効率的に量産するための最適の手段として使用されうる。
【0032】
また、本発明による前記イネ懸濁細胞を培養して犬または猫由来の組換えアルブミンを高効率に生産する方法は、タンパク質精製の容易性、安全性、生産単価などにおいて独歩的な技術を提供する。
【0033】
また、当該技術分野において解決せねばならない課題である動物医療現場におけるヒトアルブミン(HSA)処方による安全性問題、社会的論難などの諸般問題を解決するに当たって、本発明のイネ懸濁細胞またはそれに由来する組換えアルブミンタンパク質を含む低アルブミン血症を予防、改善または治療するための獣医学的組成物が大きく寄与するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】ヒト、ウシ、犬及び猫の血清アルブミンのタンパク質構造及びアミノ酸配列を比較した結果を図示する。
【
図2】
図1の比較結果、アミノ酸配列で決定的差を示す非保存配列であるIBドメインのアミノ酸構成を比較した結果である。
【
図3】本発明で使用された犬アルブミン由来遺伝子の塩基配列である。
【
図4】本発明で使用された猫アルブミン由来遺伝子の塩基配列である。
【
図5】単子葉植物において犬または猫アルブミン遺伝子発現のための植物発現ベクター遺伝子地図を示す。
【
図6】双子葉植物において犬または猫アルブミン遺伝子発現のための植物発現ベクター遺伝子地図を示す。
【
図7】犬アルブミン遺伝子が導入されたイネカルスの犬アルブミン生産程度を示すウェスタンブロット分析(Western blot analysis)結果である。
【
図8】猫アルブミン遺伝子が導入されたイネカルスの猫アルブミン生産程度を示すウェスタンブロット分析結果である。
【
図9】犬アルブミン遺伝子が導入されたタバコ植物体の犬アルブミン生産程度を示すウェスタンブロット分析結果である。
【
図10】猫アルブミン遺伝子が導入されたタバコ植物体の猫アルブミン生産程度を示すウェスタンブロット分析結果である。
【
図11】犬アルブミン遺伝子が導入されたジャガイモ植物体の犬アルブミン生産程度を示すウェスタンブロット分析結果である。
【
図12】猫アルブミン遺伝子が導入されたジャガイモ植物体の猫アルブミン生産程度を示すウェスタンブロット分析結果である。
【
図13】本発明による犬アルブミン生産収率をELISA分析を通じて確認した結果を示す。
【
図14】本発明による猫アルブミン生産収率をELISA分析を通じて確認した結果を示す。
【
図15】犬アルブミン及び猫アルブミンタンパク質のドメイン構造を示す。
【
図16】5’-UTR、イネアミラーゼ3A(RAmy3A)信号ペプチドをコーディングする遺伝子と犬アルブミンの成熟ペプチド(mature peptide)をコーディングする遺伝子とが結合された遺伝子(KC11)の塩基配列を示す。
【
図17】5’-UTR、大豆貯蔵タンパク質A(VspA)をコーディングする遺伝子と犬アルブミンの成熟ペプチドをコーディングする遺伝子とが結合された遺伝子(KC12)の塩基配列を示す。
【
図18】5’-UTR、イネアミラーゼ3A(RAmy3A)信号ペプチドをコーディングする遺伝子と猫アルブミンの成熟ペプチドをコーディングする遺伝子とが結合された遺伝子(KF11)の塩基配列を示す。
【
図19】5’-UTR、大豆貯蔵タンパク質A(VspA)をコーディングする遺伝子と猫アルブミンの成熟ペプチドをコーディングする遺伝子とが結合された遺伝子(KF12)の塩基配列を示す。
【
図20】融合遺伝子KC11、KC12、KF11及びKF12をそれぞれ発現させるための植物発現ベクターpKC11、pKC12、pKF11及びpKF12の遺伝子地図を示す。
【
図21】pKC11に形質転換されたイネ懸濁細胞の組換え犬アルブミン発現程度を確認したウェスタンブロット分析結果である。
【
図22】pKC12に形質転換されたイネ懸濁細胞の組換え犬アルブミン発現程度をウェスタンブロット分析結果である。
【
図23】pKF11に形質転換されたイネ懸濁細胞の猫アルブミン発現程度をウェスタンブロット分析結果である。
【
図24】pKF12に形質転換されたイネ懸濁細胞の猫アルブミン発現程度をウェスタンブロット分析結果である。
【
図25】本発明によるイネ懸濁細胞KC11-5、KC11-16、KC11-20及びKC12-6、KC12-9、KC12-21で犬アルブミン生産収率をELISA分析を通じて確認した結果(a)及びイネ懸濁細胞KF11-7、KF11-10、KF11-19及びKF12-8、KF12-15、KF12-24で猫アルブミン生産収率をELISA分析を通じて確認した結果(b)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、動物医療現場でのヒト血清アルブミン(HSA)処方による安全性問題、社会的論難などの諸般問題を解決しようとする目的を達成するために、アルブミンを高効率に生産するための組換え核酸、それを含むベクター、それを含むイネ懸濁細胞及びそれを含む低アルブミン血症を予防、改善または治療するための獣医学的組成物に基づいて完成された。
【0036】
また、本発明による前記イネ懸濁細胞を培養して犬または猫由来の組換えアルブミンを高効率に生産する方法は、犬専用組換えCSA(rCSA; recombinant Canine Serum Albumin)または猫専用組換えFSA(rFSA; recombinant Feline Serum Albumin)を安全かつ効率的に量産する独歩的な技術を提供する。
【0037】
以下、本発明を実施例を通じてさらに詳細に説明する。下記実施例は、発明の一部具現例を含むものであり、全ての具現例を含むものではないという点に留意せねばならない。本明細書によって開示される発明の内容は、ここで説明される特定の実施例に制限されず、本発明が属した技術分野において通常の技術者が多様に具現可能であるということを含むことは自明である。したがって、本明細書で開示された発明の内容は、ここに記載された特定の実施例に制限されず、これについての変形及び他の具現例も、請求範囲内に含まれるものと理解されねばならない。
【実施例】
【0038】
実施例1.犬または猫アルブミンを高効率に生産する細胞株の開発
1.遺伝子クローニング及び発現ベクターの作製
(1)犬または猫アルブミン遺伝子とそれを含むプラスミドベクター
アルブミン遺伝子は、犬アルブミン(Uniprot P49822)と猫アルブミン(Uniprot P49064)の遺伝子情報に基づいて植物ベクターへの導入のために犬アルブミン遺伝子と猫アルブミン遺伝子の5’-末端には、XbaIサイトを、3’-末端には、KpnIサイトを含め、遺伝子の合成は、Thermo Fisher Scientific社に依頼して合成した。
【0039】
そのように合成した犬アルブミン遺伝子塩基配列(配列番号1)は、
図3に示し、前記犬アルブミン遺伝子を含むプラスミドは、pKCT-1と名付けた。また、本発明で合成した猫アルブミン遺伝子塩基配列(配列番号2)は、
図4に示し、前記猫アルブミン遺伝子を含むプラスミドは、pKFT-1と名付けた。
【0040】
(2)犬または猫アルブミン遺伝子の単子葉植物への導入のための植物発現ベクター作製
前記で合成した犬アルブミンまたは猫アルブミン遺伝子を単子葉植物であるイネにおいて高発現を誘導するために、(株)NBMで開発した単子葉植物高発現ベクターであるpMYN75に導入した。pMYN75植物発現ベクターは、糖欠乏培地条件でイネの懸濁細胞で特異的に発現する。
【0041】
合成された犬アルブミン遺伝子を含むプラスミドpKCT-1及び合成された猫アルブミン遺伝子を含むプラスミドpKFT-1をKpnIとXbaIとに切った後、pMY75ベクターのKpnIとXbaI位置にそれぞれ導入して犬アルブミン遺伝子発現ベクターpKCN11及び猫アルブミン遺伝子発現ベクターpKFN11を作製した。発現ベクターpKCN11及びpKFN11の詳細な遺伝子地図は、
図5に示した。
【0042】
(3)犬または猫アルブミン遺伝子の双子葉植物への導入のための植物発現ベクター作製
前記で合成した犬アルブミンまたは猫アルブミン遺伝子を、双子葉植物であるタバコとジャガイモで高発現を誘導するために、(株)NBMで開発して使用している双子葉植物高発現ベクターであるpMY27に導入した。
【0043】
合成された犬アルブミン遺伝子を含むプラスミドpKCT-1及び合成された猫アルブミン遺伝子を含むプラスミドpKFT-1をKpnIとXbaIとに切った後、pMY27ベクターのKpnIとXbaI位置にそれぞれ導入して犬アルブミン遺伝子発現ベクターpKCN12及び猫アルブミン遺伝子発現ベクターpKFN12を作製した。発現ベクターpKCN12及びpKFN12の詳細な遺伝子地図は、
図6に示した。
【0044】
2.形質転換及び高生産植物細胞株の選抜
犬または猫由来のアルブミンを高効率に生産する最適の植物と発現システムの選抜のために、ジャガイモ、タバコ、イネにおいて犬または猫のアルブミン生産技術を確立する目的で次の実験を遂行した。
【0045】
(1)植物発現ベクターのアグロバクテリウム(Agrobacterium)形質転換
アグロバクテリウム-媒介植物形質転換を遂行する前に、前記で構築したpKCN11とpKCN12;及びpKFN11とpKFN12;をそれぞれtri-parental mating方法でアグロバクテリウム・ツメファシエンス (Agrobacterium tumefaciens) LBA4404に形質転換した。
【0046】
28℃で2日間暗培養したLBA4404、pKCN11、pKCN12、pKFN11及びpKFN12プラスミドをそれぞれ含む大膓菌、ヘルパープラスミド(helper plasmid)であるpRK2013を含む大膓菌を37℃で16時間培養した後、それぞれ1mlずつ取って遠心分離し、LB培地で3回洗浄してそれぞれに含まれた抗生剤を除去した。
【0047】
抗生剤が除去されたpKCN11、pKCN12、pKFN11及びpKFN12プラスミドそれぞれを含む大膓菌とLBA4404、そしてpRK2013を含む大膓菌を100μlずつ取って新たなチューブに入れ、よく混ぜてLB培地に均一に吸収させた後、28℃で2日間暗培養した。
【0048】
2日後、LB培地の細胞を集めて希釈してリファムピシンとカナマイシンが含まれた固体培地に均一に吸収させた後、28℃で3日間暗培養した。3日後育ったそれぞれのコロニーを取って遺伝子の挿入を確認した。具体的に、犬アルブミンに特異的な正方向プライマー(配列番号3、F1:5’-GCAAGTACCTCTACGAGATC-3’)及び逆方向プライマー(配列番号4、R1:5’-TGCGCTCGGTCTCAGGCTTC-3’)と猫アルブミンに特異的な正方向プライマー(配列番号5、F2:5’-CAGAGCGCAACGAGTGCTTC-3’)及び逆方向プライマー(配列番号6、R2:5’-TCTGTACAGCACTTCGTCAC-3’)を用いて重合酵素連鎖反応(PCR)を遂行し、遺伝子の挿入が確認されたLBA4404菌でイネ、タバコ及びジャガイモを形質転換した。具体的な実験方法は、以下で詳細に説明する。
【0049】
(2)イネ形質転換
犬アルブミン遺伝子発現ベクターpKCN11と猫アルブミン遺伝子発現ベクターpKFN11をそれぞれイネ形質転換するために種皮を除去したイネ種子(品種名:東津)を70%エタノールで表面消毒し、2%ラックスに20分間消毒してカルス誘導培地であるN6CI固体培地リットル当たり30gのsucrose、4.4gのN6 salt、1gのcasamino acid及び2 ppm 2,4-D, 0.8 %の寒天)に約16個ずつ置床し、3週後、直径3-4mmサイズの乳白色カルスのみを分離して新たなN6CI培地に移し、3日後に形質転換に使用した。
【0050】
pKCN11とpKFN11とをそれぞれ含んでいるLBA4404菌をイネカルスに感染させた後、それを100μMアセトシリンゴン(acetosyringone)が含まれたN6CO培地(リットル当たり30gのsucrose、4.4gのN6 salt、1gのcasamino acid、10g glucose及び2 ppm 2,4-D)に3日間、25℃で暗培養した。
【0051】
以後、イネカルスを取ってまず水洗し、500μg/mlセフォタキシム(cefotaxime)が含まれた水でさらに洗浄した後、濾過紙にカルスを載置して余分のLBA4404を除去した。N6S培地(N6CI培地に50μg/mlのHygromycin Bと500μg/mlのcefotaxime追加)に置床して3-4週ほど培養した。ハイグロマイシン抗生剤抵抗性を示し、新たに育ったカルスのみを分離して新たな培地に移してカルスを増殖した。
【0052】
(3)タバコ形質転換
タバコの形質転換は、Horschなどによって既報告のleaf-disc法で遂行した。まず、タバコ(品種名:BY-2)の葉を70%エタノールで1分間、次亜塩素酸ナトリウムで5分間消毒後、滅菌水で洗浄し、1cmサイズに切断した後、pKCN12とpKFN12をそれぞれ含んでいるLBA4404菌を接種した後、MS-NB培地(Murashige-Skoog, 1mg/L 6-BAP, 0.1mg/L NAA)に置床して共培養した。
【0053】
3日後、抗生物質カルベニシリンを含むMS-NB培地に移植して余分のアグロバクテリウム除去と同時に、カルスを誘導した。10日後、カナマイシン(100mg/L)とカルベニシリン(500mg/L)を含むMS-NB培地に置床して形質転換体の選抜を進めた。カルスから形成された不定芽(adventitious bud)を前記抗生物質を含むMS培地に移し、再分化して根付いた植物体を選抜し、それを25℃、12時間の光条件生長チャンバで育成した後、順化過程を経て植木鉢で移して栽培した。
【0054】
(4)ジャガイモ形質転換
ジャガイモの形質転換は、Stiekemaなどによって既報告のtuber-disc法で遂行した。まず、ジャガイモ(品種名:スミ)の塊茎皮をむいて次亜塩素酸ナトリウム(1%塩素濃度)で表面殺菌した後、滅菌水で4回洗浄した。この塊茎を滅菌された直径1cmのコルクボーラーとして採取し、3mm厚さに切断してtuber-discを作った。ジャガイモ塊茎切片をpKCN12とpKFN12とがそれぞれ含まれたLBA4404菌を懸濁したMS液体培地にそれぞれ15分間浸漬して接種した後、MS固体培地に置床して21℃、16時間光条件で3日間共培養した。
【0055】
その後、tuber-discを、カナマイシン(50mg/L)とカルベニシリン(500mg/L)を含むMS液体培地で洗浄し、前記抗生物質と植物生長調節物質(0.1mg/L IAA, 0.1mg/L GA3, 0.1mg/L ABA, 2mg/L Zeatin riboside)を含むMS固体培地で21℃、16時間光条件で培養して余分のアグロバクテリウムの除去と形質転換体選抜を遂行した。Tuber-discは、2週間隔で新たな培地に移し、新草(shoot)が形成された個体は、根形成促進のために新草を切断して植物生長調節物質が添加されていないMS固体培地(カナマイシン50mg/L添加)に移植して形質転換体を育成した後、順化過程を経て植木鉢に移して栽培した。
【0056】
3.アルブミン高生産植物細胞株の選抜
(1)アルブミン高生産イネ細胞株の選抜
犬アルブミン遺伝子を含む発現ベクターpKCN11が導入された形質転換イネカルスまたは、猫アルブミン遺伝子を含む発現ベクターpKFN11が導入された形質転換イネカルスのアルブミン生産如何は、犬または猫アルブミンに特異的な抗体を用いたウエスタンブロット分析(Western blot analysis)で確認した。
【0057】
犬または猫アルブミン遺伝子が導入された形質転換イネカルス10gを10mlの抽出バッファ(50mM Tris-Cl pH 8.2, 0.5% Triton X-100, 30mM NaCl, 1mM PMSF)と混合した後、すり鉢を用いてひいてタンパク質を抽出した。ウエスタンブロット分析は、Thermo Fisher Scientific社のiBlot(登録商標) 2 Gel Transfer Device を用いて提供された実験方法によって実施した。犬アルブミンに対する1次抗体は、Bethyl Laboratories社の犬特異的抗体(Bethyl A40-113A)を使用し、猫アルブミンに対する1次抗体は、猫特異的抗体(Bethyl A20-109A)を使用した。
【0058】
ウエスタンブロット分析結果、犬アルブミン遺伝子で形質転換されたイネカルス試料のうち、KCN11-R5及びKCN11-R22試料で犬アルブミンと推定される強いバンドが確認されてKCN11-R5及びKCN11-R22カルスを犬アルブミン高生産イネelite lineとして選抜し(
図7)、猫アルブミン遺伝子で形質転換されたイネカルス試料のうち、KFN11-R5、KFN11-R11及びKFN11-R23試料で猫アルブミンと推定される強いバンドを確認してKFN11-R5、KFN11-R11及びKFN11-R23カルスを猫アルブミン高生産イネelite lineとして選抜した(
図8)。
【0059】
(2)アルブミン高生産タバコ細胞株の選抜
犬アルブミン遺伝子を含む発現ベクターpKCN12が導入された形質転換タバコ植物体または猫アルブミン遺伝子を含む発現ベクターpKFN12が導入された形質転換タバコ植物体のアルブミン生産如何は、犬アルブミンに特異的な抗体(Bethyl A40-113A)または猫アルブミンに特異的な抗体(Bethyl A20-109A)を用いたウエスタンブロット分析を用いて確認し、それぞれの形質転換植物体葉10gを試料として前記「アルブミン高生産イネ細胞株の選抜」と同様の方法で遂行した。
【0060】
ウエスタンブロット遂行結果、犬アルブミン遺伝子で形質転換されたタバコ植物体試料のうち、KCN12-T3及びKCN12-T4の試料で犬アルブミンと推定されるバンドを確認してKCN12-T3及びKCN12-T4植物体を犬アルブミン高生産タバコelite lineとして選抜し(
図9)、猫アルブミン遺伝子で形質転換されたタバコ植物体試料のうち、KFN12-T8及びKFN12-T11で猫アルブミンと推定される強いバンドを確認してKFN12-T8及びKFN12-T11植物体を猫アルブミン高生産タバコelite lineとして選抜した(
図10)。
【0061】
(3)アルブミン高生産ジャガイモ細胞株の選抜
犬アルブミン遺伝子を含む発現ベクターpKCN12が導入された形質転換ジャガイモ植物体または猫アルブミン遺伝子を含む発現ベクターpKFN12が導入された形質転換ジャガイモ植物体のアルブミン生産如何は、犬アルブミンに特異的な抗体(Bethyl A40-113A)または猫アルブミンに特異的な抗体(Bethyl A20-109A)を用いたウエスタンブロット分析を用いて確認し、それぞれの形質転換植物体葉10gを試料として前記「アルブミン高生産イネ細胞株の選抜」と同様の方法で遂行した。
【0062】
ウエスタンブロット遂行結果、犬アルブミン遺伝子で形質転換されたジャガイモ植物体試料のうち、KCN12-P1及びKCN12-P9で犬アルブミンと推定されるバンドを確認してKCN12-P1及びKCN12-P9植物体を犬アルブミン高生産ジャガイモelite lineとして選抜し(
図11)、猫アルブミン遺伝子で形質転換されたジャガイモ植物体試料のうち、KFN12-P6及びKFN12-P14で猫アルブミンと推定されるバンドを確認してKFN12-P6及びKFN12-P14植物体を猫アルブミン高生産ジャガイモelite lineとして選抜した(
図12)。
【0063】
実施例2.犬または猫アルブミンを高効率に生産する細胞株の生産収率確認
実施例1を通じて選抜した犬または猫アルブミンを高効率に生産する植物細胞株のアルブミン生産収率をELISA方法を用いて確認し、以下、それを具体的に説明する。
【0064】
1.犬と猫アルブミン高生産植物カルス及び植物体から懸濁細胞誘導
(1)犬と猫アルブミン高生産形質転換イネカルスから懸濁細胞誘導
実施例1において選抜した犬アルブミンを高効率に生産するイネカルスとして選別されたKCN11-R5及びKCN11-R22細胞株(
図7)と猫アルブミンを高効率に生産するイネカルスとして選別されたKFN11-R5、KFN11-R11及びKFN11-R23細胞株(
図8)をN6CI液体培地(リットル当たり30gのsucrose、4.4gのN6 salt、1gのcasamino acid及び2 ppm 2,4-D)に接種した後、25℃、暗培養条件で3週間隔で継代培養しながら懸濁細胞を誘導し、7日ごとに新鮮な培地に培養物1/5を移して継代培養した。
【0065】
(2)犬と猫アルブミン高生産形質転換タバコ植物体の懸濁細胞誘導
実施例1で選抜した犬アルブミンを高効率に生産するタバコ形質転換植物体として選別されたKCN12-T3及びKCN12-T4(
図9)と猫アルブミンを高効率に生産するタバコ形質転換植物体として選別されたKFN12-T8及びKFN12-T11(
図10)の葉を70%エタノールで1分間、次亜塩素酸ナトリウムで5分間消毒後、滅菌水で洗浄し、1cmサイズに切断してMS固体培地(2mg/Lの2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、0.02mg/Lのkinetin、3%のショ糖及び0.8%の寒天)に置床して25℃、3,000luxの条件で3週間隔で継代培養しながらカルスを誘導した。6-8週後、誘導されたカルスを寒天を除去した50ml MS液体培地に接種後、25℃、110rpmの回転培養器で培養した。懸濁細胞は、7日ごとに新鮮な培地に培養物1/5を移して継代培養した。
【0066】
(3)犬と猫アルブミン高生産形質転換ジャガイモ植物体の懸濁細胞誘導
実施例1において選抜した犬アルブミンを高効率に生産するジャガイモ形質転換植物体として選別されたKCN12-P1及びKCN12-P9(
図11)と、猫アルブミンを高効率に生産するジャガイモ形質転換植物体として選別されたKFN12-P6及びKFN12-P14(
図12)の葉を70%エタノールで1分間、次亜塩素酸ナトリウムで5分間消毒後、滅菌水で洗浄し、1cmサイズに切断してMS培地(3mg/LNAA、2mg/LIBA、3%のショ糖、0.8%の寒天)に置床して25℃、暗培養条件で3週間隔で継代培養しながらカルスを誘導した。6-8週後、誘導されたカルスを、寒天を除去した50ml MS液体培地に接種した後、25℃、110rpmの回転培養器で暗培養した。懸濁細胞は、7日ごとに新鮮な培地に培養物1/5を移して継代培養した。
【0067】
2.ELISAを用いたアルブミン生産収率確認
(1)ELISA遂行のための試料作製
液体培養を通じて保持している犬アルブミン高生産イネ懸濁細胞KCN11-R5及びKCN11-R22;タバコ懸濁細胞KCN12-T3及びKCN12-T4;ジャガイモ懸濁細胞KCN12-P1及びKCN12-P9;猫アルブミン高生産イネ懸濁細胞KFN11-R5、KFN11-R11及びKFN11-R23;タバコ懸濁細胞KFN12-T8及びKFN12-T11;ジャガイモ懸濁細胞KFN12-P6及びKFN12-P14;それぞれを滅菌した真空濾過漏斗の紙フィルタ上に適量を載置して真空雰囲気で液体培地を除去して液体培地が除去されたそれぞれの懸濁細胞10gを取ってタバコとジャガイモ懸濁細胞は、懸濁細胞培養に使用した同じ液体培地50mlに置床して培養した。イネ懸濁細胞は、懸濁細胞培養に使用した同じ液体培地成分のうち、ショ糖を除去した液体培地50mlに置床して培養を実施し、それぞれの懸濁細胞は、3回反復培養後、5日目の液体培地を取ってアルブミンの量を定量した。
【0068】
ELISA分析のために各懸濁細胞培養液1mlを4℃、200xg、10分の条件で遠心分離して培養上澄み液と細胞ペレットとに分離し、4℃で一晩PBS上で透析し、透析した培養上澄み液を試料として使用した。犬アルブミン生産量確認は、犬アルブミンELIS Akit (ab277078, Abcam, UK)を使用し、猫アルブミン生産量確認は、猫アルブミンELISA Kit (DEIABL383, Creative Diagnostics, USA)を用いて定量分析を遂行し、分析方法は、それぞれのキットに添付されたプロトコルによって3回反復遂行した。
【0069】
犬アルブミン高生産イネ懸濁細胞(KCN11-R5、KCN11-R22)、タバコ懸濁細胞(KCN12-T3, KCN12-T4)、ジャガイモ懸濁細胞(KCN12-P1, KCN12-P9)に対するELISA結果は、
図13に示した。犬アルブミン高生産タバコ懸濁細胞のアルブミン生産収率は、最大約3mg/L、ジャガイモ懸濁細胞のアルブミン生産収率は、最大約5mg/Lであったが、イネ懸濁細胞の犬アルブミン生産収率は、最大約34mg/Lであって、タバコ懸濁細胞の約10倍、ジャガイモ懸濁細胞の約7倍以上高い生産収率を確認した。
【0070】
猫アルブミン高生産イネ懸濁細胞(KFN11-R5, KFN11-R11, KFN11-R23)、タバコ懸濁細胞(KFN12-T8、KFN12-T11)、ジャガイモ懸濁細胞(KFN12-P6、KFN12-P14)に対するELISA結果は、
図14に示した。猫アルブミン高生産タバコ懸濁細胞の猫アルブミン生産収率は、最大約9mg/L、ジャガイモ懸濁細胞の猫アルブミン生産収率は、最大約9mg/Lであったが、イネ懸濁細胞の猫アルブミン生産収率は、最大約58mg/Lであって、タバコとジャガイモ懸濁細胞対比で約6.5倍以上高い生産収率を確認した。
【0071】
前記実施例2.2を通じて植物において犬または猫組換えアルブミンを生産するためには、犬または猫アルブミン遺伝子を含んでいる植物発現ベクターをイネカルスに導入して生産する組合わせが最も望ましいと確認された。
【0072】
3.イネ由来の犬と猫アルブミンのN-末端アミノ酸配列確認
前記イネの懸濁細胞で生産された犬アルブミンまたは猫アルブミンのN-末端アミノ酸配列を確認した。
【0073】
犬アルブミンを生産するイネ懸濁細胞KCN11-R5培養液100mlと猫アルブミンを生産するイネ懸濁細胞KFN11-R11培養液100mlを取って0.45μm空隙(pore)サイズのフィルタを用いて濾過した後、30 kDa中空繊維(hollow fiber)フィルタを使用してcut-offと濃縮液をHiScreen Blue Sepharose FF (Cytiva, 28978243)カラムを使用して製造社で提供するプロトコルによってアルブミンを分離精製した。精製した犬及び猫アルブミンは、(株)ライフサイエンスラボラトリー(韓国)に依頼してエドマン分解法(Edman degradation)を用いてアミノ酸配列を分析した。
【0074】
本発明の実施例1で使用した犬アルブミン(Uniprot P49822)と猫アルブミン(Uniprot P49064)の情報によれば、犬と猫アルブミンは、いずれも信号ペプチド(signal peptide, 1~18)、プロペプチド(propeptide、19~24)、成熟ペプチド(mature peptide、25~608)で構成されていることが分かる。
【0075】
アミノ酸配列分析結果、イネ懸濁細胞で生産された犬アルブミンのN-末端アミノ酸配列は、R-G-L-V-RとL-V-R-R-Eの2種が確認され、R-G-L-V-Rは、
図15の模式図に示されたようにプロペプチドをいずれも含んでおり、L-V-R-R-Eは、プロペプチドの21~24番目アミノ酸を含んでいることが確認された(
図15)。また、イネ懸濁細胞で生産された猫アルブミンのN-末端アミノ酸配列を確認した結果、R-G-V-T-RとV-T-R-R-Eの2種が確認され、R-G-V-T-Rは、
図15に示したようにプロペプチドをいずれも含んでおり、V-T-R-R-Eは、プロペプチドの21~24番目アミノ酸を含んでいることが確認された。
【0076】
前記結果は、本発明のイネ懸濁細胞で生産された犬アルブミンまたは猫アルブミンタンパク質の場合、プロペプチド配列が完全に除去されていない未成熟タンパク質として発現されることを意味する。ここで、本発明では、犬または猫血液に存在する自然状態の成熟タンパク質と同じタンパク質を発現するように追加の実験を進めた。
【0077】
実施例3.イネ懸濁細胞において自然状態の成熟タンパク質と同一の組換え犬または猫アルブミンを生産する方法
実施例2を通じて確認した結果、イネ懸濁細胞で生産された犬アルブミンと猫アルブミンタンパク質のN-末端が犬と猫由来の自然型成熟タンパク質と異なって、N-末端配列が自然型と同一の組換えアルブミンを量産する技術を確立しようとした。
【0078】
信号ペプチド(SP; Signal Peptide)は、タンパク質分子に存在する3-60個アミノ酸からなるペプチド配列として、細胞質内で生合成されたタンパク質の輸送(transport)と局地化(localization)を指示する。核、ゴルジ体、ミトコンドリア、葉緑体など細胞小器官への輸送及び局地化を指示する特定配列が知られている。その中、細胞外に分泌(小胞体への輸送)される小胞体SPは、タンパク質分子のN-末端に存在する5-10個の疎水性(hydrophobic)アミノ酸を含む配列である。これら小胞体SPは、多様な外来タンパク質の効率的な生産(分泌)システムに活用されているが、目的タンパク質の生産効率を高めるのに当たって、最適SPの選択とそれによる正確度(正確な切断)が非常に重要な要素として作用する。
【0079】
発現ベクターに導入したSPは、種類によって目的タンパク質の生産効率に大きな差を示し、生物種間に保存された配列が存在しないので、多様なSPの組合わせを通じて最高の生産効率を示す最適のSP配列を探索する必要がある。
【0080】
1.最適の信号ペプチド選抜
(1)犬と猫組換えアルブミン生産に最適の信号ペプチドの選抜
哺乳類のアルブミンは、3次構造を形成する過程でエンドペプチダーゼであるフリン(furine)によってプロペプチドが切断されて成熟されたアルブミンタンパク質を形成すると知られている。本発明の実施例2で確認したように、犬または猫の組換えアルブミンをイネ懸濁細胞で生産する場合、イネには、哺乳類に存在するエンドペプチダーゼであるフリンが存在せず、プロペプチドの切断がなされず、その結果、生産されたアルブミンのN-末端配列が犬または猫の自然型成熟タンパク質とは異なった。
【0081】
ここで、本発明によるイネ懸濁細胞において犬または猫の自然型成熟タンパク質を発現させる最適の信号ペプチド配列を探索した。植物において組換えタンパク質生産に使用された先行技術を調査し、タンパク質信号ペプチド配列関連データベース(http://proline.bic.nus.edu.sg/spdb)を活用して最終的に13個の信号ペプチド配列を導出した。導出された13種の信号ペプチド配列を犬または猫アルブミンの成熟ペプチドに結合させた後、それをSignalP-5.0サーバ(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)を活用して信号ペプチド配列が正確に切断される能力を確認した。
【0082】
SignalP-5.0プログラムを用いて信号ペプチド配列の切断可能性を確認した結果を表1と表2にそれぞれ提示した。13種の信号ペプチドアミノ酸配列と犬と猫の成熟ペプチド配列とを連結した後、信号ペプチド切断可能性を確認した結果、特に、イネアミラーゼ3A(RAmy3A)信号ペプチド配列(MGKQMAALCGFLLVALLWLTPDVAHA、配列番号11)または大豆貯蔵タンパク質A(VspA)信号ペプチド配列(MKMVVLVFFVATILVAWQCHA、配列番号12)と結合する場合、犬と猫アルブミンの両方において信号ペプチドでの切断可能性が最も高いと確認された。
【0083】
【0084】
【0085】
2.遺伝子合成及び発現ベクターの作製
(1)遺伝子合成及び発現ベクターの作製
本発明の前記実施例2で確認したように、イネ懸濁細胞においてアルブミンを生産する場合、犬または猫血液に存在するアルブミンと同一のN-末端に切断されず、犬または猫アルブミンのプロペプチド一部(4~6個アミノ酸)が犬または猫アルブミンの成熟ペプチドN-末端に存在することを確認した。
【0086】
その結果に基づいて、犬または猫アルブミンの成熟ペプチドN-末端に本実施例3において選発されたイネアミラーゼ3A(RAmy3A)信号ペプチドまたは大豆貯蔵タンパク質A(VspA)信号ペプチドを直接連結してタンパク質発現後、犬と猫血液に存在するアルブミンと同一のN-末端に切断されるようにした。
【0087】
犬アルブミン遺伝子と猫アルブミン遺伝子は、Thermo Fisher Scientific社のウェブで提供するGeneArt
TM GeneOptimizer
TMプログラムを用いてイネのコドンに最適化した後、Thermo Fisher Scientific社に依頼して合成した。5’-UTR、イネアミラーゼ3A(RAmy3A)信号ペプチドと犬アルブミンの成熟ペプチドをコーディングする遺伝子が融合された遺伝子(KC11)塩基配列(配列番号7)は、
図16に示し、そのように合成された組換え犬アルブミン遺伝子を含むプラスミドは、pKCT-3と名付けた。5’-UTR、大豆貯蔵タンパク質A(VspA)信号ペプチドと犬アルブミンの成熟ペプチドをコーディングする遺伝子(配列番号8)が融合された遺伝子(KC12)塩基配列は、
図17に示し、そのように合成された前記合成された組換え犬アルブミン遺伝子を含むプラスミドは、pKCT-4と名付けた。
【0088】
同様に5’--UTR、RAmy3A信号ペプチドと猫アルブミンの成熟ペプチドをコーディングする遺伝子が融合された遺伝子(KF11)塩基配列(配列番号9)は、
図18に示し、そのように合成された組換え猫アルブミン遺伝子を含むプラスミドは、pKFT-3と名付け、5’-UTR、VspA信号ペプチドと猫アルブミンの成熟ペプチドをコーディングする遺伝子が融合された遺伝子(KF12)塩基配列(配列番号10)は、
図19に示し、そのように合成された猫アルブミン遺伝子を含むプラスミドは、pKFT-4と名付けた。
【0089】
前記で合成した組換え犬アルブミンと組換え猫アルブミン遺伝子をそれぞれ単子葉植物であるイネにおいて高発現を誘導するために、本発明の実施例1で使用した単子葉植物高発現ベクターであるpMYN75に導入した。植物コドンで最適化した組換え犬アルブミン遺伝子を含んでいるpKCT-3及びpKCT-4をそれぞれKpnIとXbaIに切った後、pMYN75ベクターのKpnIとXbaI位置に導入して組換え犬アルブミン遺伝子発現ベクターpKC11及びpKC12をそれぞれ作製した。その詳細な遺伝子地図は、
図20に示した。
【0090】
また、植物コドンに最適化した組換え猫アルブミン遺伝子を含んでいるpKFT-3及びpKFT-4をそれぞれKpnIとXbaIに切った後、pMYN75ベクターのKpnIとXbaI位置に導入して猫アルブミン遺伝子発現ベクターpKF11及びpKF12をそれぞれ作製した。その詳細な遺伝子地図は、
図20に示した。
【0091】
3.イネ形質転換及び高生産細胞株の選抜
(1)イネ形質転換及び高生産細胞株の選抜
前記pKC11、pKC12、pKF11及びpKF12ベクターは、それぞれ実施例1に記述した方法でアグロバクテリウム菌とイネに導入し、形質転換されたイネカルスでアルブミンの生産性確認を実施例1に記述したウエスタンブロット分析法で遂行した。
【0092】
RAmy3A信号ペプチドと犬アルブミンの成熟ペプチドが融合された遺伝子を含むpKC11を形質転換させて選抜した23系統のカルスを分析した結果、KC11-5、KC11-16及びKC11-20細胞株において強いバンドを確認して組換え犬アルブミン高生産細胞株として選抜した(
図21)。また、VspA信号ペプチドと犬アルブミンの成熟ペプチドが融合された遺伝子を含むpKC12を形質転換させて選抜した23系統のカルスを分析した結果、KC12-6、KC12-9及びKC12-21細胞株において強いバンドを確認して組換え犬アルブミン高生産細胞株として選抜した(
図22)。
【0093】
また、RAmy3A信号ペプチドと猫アルブミンの成熟ペプチドが融合された遺伝子を含むpKF11を形質転換させて選抜した25系統のカルスを分析した結果、KF11-7、KF11-10及びKF11-19細胞株において強いバンドを確認して組換え猫アルブミン高生産細胞株として選抜した(
図23)。VspA信号ペプチドと猫アルブミンの成熟ペプチドが融合された遺伝子を含むpKF12を形質転換させて選抜した24系統のカルスを分析した結果KF12-8、KF12-15及びKF12-24細胞株において強いバンドを確認して組換え猫アルブミン高生産細胞株として選抜した(
図24)。
【0094】
4.アルブミン生産収率確認
(1)ELISAを用いた組換え犬アルブミン生産収率確認
本発明による前記実施例2に記述した同一のELISA方法で前記で選抜した組換え犬アルブミン高生産イネ懸濁細胞KC11-5、KC11-16、KC11-20、KC12-6、KC12-9及びKC12-21の組換え犬アルブミン生産収率を確認し、その結果は、
図25(a)に示した。
【0095】
pKC11が導入された形質転換懸濁細胞株の組換え犬アルブミンの生産収率を確認した結果、KC11-5懸濁細胞株は、約250mg/L、KC11-16懸濁細胞株は、約290mg/L、KC11-20懸濁細胞株は、約270mg/Lの生産収率を示す。また、pKC12が導入された形質転換カルスの組換え犬アルブミンの生産収率を確認した結果、KC12-6懸濁細胞株は、約180mg/L、KC12-9懸濁細胞株は、約170mg/L、KC12-21懸濁細胞株は、約220mg/Lの生産収率を示す。信号ペプチドによる組換え犬アルブミン生産収率は、イネアミラーゼ3A(RAmy3A)信号ペプチドを使用した場合、平均約50mg/Lさらに高い生産収率を示した。
【0096】
これは、本発明の実施例2で確認した犬アルブミンの信号ペプチド配列を使用したとき、組換え犬アルブミン高生産KCN11-R5懸濁細胞株で確認した生産収率約34mg/Lと比較すれば、RAmy3A信号ペプチドを使用する場合、約8~10倍、VspA信号ペプチドを使用した場合、約5~6.5倍生産性が向上した結果である。
【0097】
本発明者は、実施例3で完成した組換え犬アルブミン高生産KC11-16イネ細胞株を韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)に特許寄託(受託番号KCTC14618BP)した。また、本実施例3を通じて植物において組換え犬アルブミンを量産するためには、犬信号ペプチドを使用するよりは、イネアミラーゼ3A(RAmy3A)信号ペプチドまたは大豆貯蔵タンパク質A(VspA)信号ペプチドを使用することが効果的であり、望ましくは、RAmy3A信号ペプチドを使用することがさらに効果的であるということを確認した。
【0098】
(2)ELISAを用いた組換え猫アルブミン生産収率確認
本発明による実施例2に記述した同一のELISA方法で前記で選抜した組換え猫アルブミン高生産イネ懸濁細胞KF11-7、KF11-10、KF11-19、KF12-8、KF12-15及びKF12-24の組換え猫アルブミン生産収率を確認し、その結果は、
図25(b)に示した。
【0099】
pKF11が導入された形質転換懸濁細胞株の組換え猫アルブミンの生産収率を確認した結果、KF11-7懸濁細胞株は、約310mg/L、KF11-10懸濁細胞株は、約280mg/L、KF11-19懸濁細胞株は、約290mg/Lの生産収率を示し、平均約290mg/Lの生産収率を示す。pKF12が導入された形質転換カルスの組換え猫アルブミンの生産収率を確認した結果、KF12-8懸濁細胞株は、約240mg/L、KF12-15懸濁細胞株は、約260mg/L、KF12-24懸濁細胞株は、約230mg/Lの生産収率を示して平均約243mg/Lの生産収率を示す。信号ペプチドによる組換え猫アルブミン生産収率は、イネアミラーゼ3A(RAmy3A)信号ペプチドを使用した場合、平均約47mg/Lさらに高い生産収率を示した。
【0100】
これは、本発明による前記実施例2で確認した猫アルブミンの信号ペプチド配列を使用したとき、組換え猫アルブミン高生産KFN11-R11懸濁細胞株で確認した生産収率約58mg/Lと比較すれば、RAmy3A信号ペプチドを使用する場合、約5倍、VspA信号ペプチドを使用した場合、約4倍生産性が向上した結果である。
【0101】
本発明者は、実施例3で完成した組換え猫アルブミン高生産KF11-7イネ細胞株を韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)に特許寄託(受託番号KCTC14617BP)した。また、本実施例3を通じて植物において組換え猫アルブミンを量産するために、猫信号ペプチドを使用するよりは、RAmy3A信号ペプチドまたはVspA信号ペプチドを使用することが効果的であり、望ましくは、RAmy3A信号ペプチドを使用することがさらに効果的であるということを確認した。
【0102】
5.組換えアルブミンのN-末端アミノ酸配列確認
pKC11が導入された組換え犬アルブミンの高生産KC11-16とpKC12が導入された組換え犬アルブミンの高生産KC12-21細胞株において生産された組換え犬アルブミンのN-末端アミノ酸配列を実施例2に記述した同様の方法で確認した。その結果、KC11-16とKC12-21細胞株において生産された組換え犬アルブミンがいずれもE-A-Y-K-Sと確認され、これは、犬血液に存在する自然状態の成熟した犬アルブミンタンパク質とN-末端配列が同一であることを確認した。
【0103】
また、pKF11が導入された組換え猫アルブミンの高生産KF11-07とpKF12が導入された組換え猫アルブミンのKF12-15を実施例2に記述した同様の方法で確認した。その結果、KF11-07とKF12-15細胞株において生産された組換え猫アルブミンがいずれもE-A-H-Q-Sと確認された。これにより、猫血液に存在する自然状態の成熟した猫アルブミンとN-末端配列が同一であることを確認した。
【0104】
実施例4.組換え犬または猫アルブミンの効能評価
前記実施例3を通じて生産された組換え犬または猫アルブミンの効能を動物実験を通じて評価した。動物実験は、(株)ヒュベットに依頼して実施した。
【0105】
現在、動物病院において低アルブミン血症に対する患畜の治療は、人を対象として作られたアルブミン剤を使用しており、顔面部浮腫などの副作用が報告されている実情である。本発明に使用される組換え犬アルブミンは、植物由来のアルブミンであって、実際に動物病院において患畜に適用するために作製され、この試験において、実際に動物病院の患畜である犬及び猫を用いた。
【0106】
(1)低アルブミン血症モデルにおいて組換え犬アルブミンの効能
体重が10~10.6kgである10ヶ月齢のビーグル犬(Beagle dog)をオリエントバイオから購入し、全ての動物の一般健康状態に係わる獣医学的検疫を実施した後、7日間順化、飼育した。飼育室の温度は、24±2℃、湿度は、40~60%、明暗周期は、12時間と一定に保持し、飼料は、市販中の犬専用飼料と精製水を自由に摂取するようにした。実験は、(株)ヒュベット企業付設研究所の実験動物研究倫理委員会(IACUC)の承認を受けて実施し(承認番号HV2022-002)、試験群は、全血の8%放血後、生理食塩水(0.9% normal saline)を投与した対照群(n=3)と全血の8%放血後、組換え犬アルブミンを投与したアルブミン投与群(n=3)で構成した。
【0107】
順化を経た実験動物をケタミン(Ketamine hydrochloride、50mg/ml、柳韓洋行)とロムプン注射液(Xylazine hydrochloride、23.32mg/ml、バイエルコリア)をそれぞれ0.1ml/kg、0.1ml/kgに混合注射して痲酔した後、橈側皮静脈(cephalic vein)にカテーテルを確保した後、10cc注射器を用いて徐々に放血を誘導する。全血の8%である70mlを放血した。放血後、アルブミン含量の減少が確認された個体を対象にして生理食塩水50mlと組換え犬アルブミン(2g/10ml/vial)を実験動物の体重に合わせて2g/5kgで混合してインフュージョンポンプ(infusion pump)を用いて70ml/hの速度で静脈(intravenous)注入する。放血前、放血後、組換え犬アルブミン投与1日、3日、7日後、採血して血球検査(BC-2800Vet、Mindray)及び血清生化学検査(PT10V、Samsung)数値変化を分析した。
【0108】
【0109】
前記表3は、実験動物の放血前(baseline)、放血後、アルブミン注入1日後、3日後及び7日後の血液数値変化を分析した結果であり、下記表4及び5は、放血前数値を基準として百分率(%)に換算したものである。
【0110】
【0111】
【0112】
対照群と組換え犬アルブミン投与群との間の大きな差が観察される時点は、試験物質注入後、1日時点で確認され、この際、血液内アルブミン増加の比率は、アルブミン投与群において対照群対比で約9.2%高く観察され、少なくとも7日まで血液内で保持されることを確認することができる。また、前記数値以外に血球検査上、試験材料注入後の炎症数値増加のような異常数値変化は、観察されておらず、血清生化学検査上、肝臓と腎臓数値が正常と確認された。また、腹腔穿刺して尿採取後、尿検査時、異常数値が観察されておらず、顔面部浮腫などアルブミン注入による副作用は観察されていない。前記結果からして、組換え犬アルブミン投与が副作用なしにアルブミン数値上昇の一助となったと思料される。
【0113】
(2)低アルブミン血症モデルにおいて組換え猫アルブミンの効能
体重が4.5~5kgである10ヶ月齢の雄猫をオリエントバイオから購入し、全ての動物の一般健康状態に係わる獣医学的検疫を実施した後、7日間順化、飼育した。飼育室の温度は、24±2℃、湿度は、40~60%、明暗周期は、12時間と一定に保持し、飼料は、市販中の猫用飼料と精製水を自由に摂取するようにした。実験は、(株)ヒュベット企業付設研究所の実験動物研究倫理委員会の承認を受けて実施し(承認番号HV2022-002)、試験群は、全血の8%放血後生理食塩水を投与した対照群(n=3)と、全血の8%放血後組換え猫アルブミンを投与したアルブミン投与群(n=3)で構成した。
【0114】
順化を経た実験動物をケタミン(50mg/ml)とロムプン注射液(23.32mg/ml)をそれぞれ0.1ml/kg、0.1ml/kgに混合注射して痲酔した後、橈側皮静脈にカテーテルを確保した後、10cc注射器を用いて徐々に放血を誘導する。全血の8%である35mlを放血した。放血後、アルブミン含量の減少が確認された個体を対象にして生理食塩水25mlと組換え犬アルブミン(2g/10ml/vial)を実験動物の体重に合わせて2g/5kgで混合してインフュージョンポンプを用いて35ml/hの速度で静脈注入する。放血前、放血後、組換え猫アルブミン投与1日、3日、7日後、採血して血球検査及び血清生化学検査数値変化を分析した。
【0115】
【0116】
前記表6は、実験動物の放血前(baseline)、放血後、アルブミン注入1日後、3日後、及び7日後の血液数値変化を分析した結果であり、下記表7及び8は、放血前数値を基準として百分率(%)に換算したのである。
【0117】
【0118】
【0119】
対照群と組換え猫アルブミン投与群との間の大きな差が観察される時点は、試験物質注入後1日時点で確認され、この際、血液内アルブミン増加の比率は、アルブミン投与群において対照群対比で約10.1%高く観察され、少なくとも7日まで血液内で保持されることを確認することができる。また、犬を用いた実験でのように如何なる副作用も観察されていない。前記結果からして、組換え猫アルブミン投与が副作用なしにアルブミン数値上昇の一助となったと思料される。
【0120】
[受託番号]
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC14617BP
受託日付:20210621
[受託証1]
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC14618BP
受託日付:20210621
[受託証2]
【配列表】