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特許7497460増加された黒の漆黒度と改善された色を有するコーティングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】増加された黒の漆黒度と改善された色を有するコーティングシステム
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20240603BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240603BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240603BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240603BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20240603BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D7/00 K
B05D7/24 303E
B05D7/24 303A
C09D201/00
C09D7/41
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022566137
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2021061684
(87)【国際公開番号】W WO2021224232
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】20172676.7
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】フェリス,ダニエル,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア,ロサルヴァ,カステレジョン
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ドナルド,エイチ.
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-106866(JP,A)
【文献】特開昭61-138676(JP,A)
【文献】特表2014-531484(JP,A)
【文献】特開2004-174469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B32B1/00-43/00
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意にプレコートされた基板上に多層コーティングシステムを調製する方法であって、少なくともステップ(1)及び(3a)、又は少なくともステップ(1)、(2)及び(3b)、すなわち
(1)着色ベースコート組成物を任意にプレコートされた基板に塗布し、前記任意にプレコートされた基板上に第1コーティング膜を形成するステップであって、前記ベースコート組成物が少なくとも1つの黒色有機顔料を含む、ステップと、
(2)任意に、ステップ(1)で塗布された前記ベースコート組成物と異なる第2顔料ベースコート組成物をステップ(1)の後に得られた基板上に存在する前記第1コーティング膜へ塗布し、前記第1コーティング膜に隣接する第2コーティング膜を形成するステップと、
(3a)任意のステップ(2)が実施されない場合、ステップ(1)及び任意のステップ(2)で塗布される前記組成物と異なるコーティング組成物をステップ(1)の後に得られた前記基板上に存在する前記第1コーティング膜に塗布し、前記第1コーティング膜に隣接する第2コーティング膜を形成するステップであって、前記コーティング組成物が着色トップコート組成物であるステップ、あるいは、
(3b)任意のステップ(2)が実施される場合、ステップ(1)及び任意のステップ(2)で塗布された前記組成物と異なるコーティング組成物をステップ(2)の後に得られた前記基板上に存在する前記第2コーティング膜に塗布し、前記第2コーティング膜に隣接する第3コーティング膜を形成するステップであって、前記コーティング組成物はクリアコート組成物であるステップ、
を含み、
ステップ(3a)の後に得られた前記第2コーティング膜又はステップ(3b)の後に得られた前記第3コーティング膜は、形成された多層コーティングシステムの最外膜であり、
任意のステップ(2)で塗布される前記第2ベースコート組成物も、ステップ(3a)又は(3b)で塗布される前記コーティング組成物も、黒色顔料を含まず、及び、ステップ(1)、(2)及び(3b)が実施される場合は、前記第2ベースコート組成物が、又は、ステップ(1)及び(3a)が実施される場合は、トップコート組成物が、各場合においてそれぞれの組成物の総固形分に基づいて、0.01から7.50質量%の範囲の量で、1000nm未満の体積平均粒子径を有する少なくとも1つの非黒色着色顔料としての少なくとも1つの青色顔料を含み、前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、各場合において、顔料ペーストの形態でそれぞれの組成物に組み込まれていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第2ベースコート組成物中又は前記トップコート組成物中のいずれかに存在する少なくとも1つの非黒色着色顔料は有機青色顔料であり、前記有機青色顔料は、好ましくは、前記第2ベースコート組成物又は前記トップコート組成物中に存在する唯一の着色顔料であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2ベースコート組成物又は前記トップコート組成物を調製するために使用される前記少なくとも1つの非黒色着色顔料を含む顔料ペーストは、20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満のヘイズを有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2ベースコート組成物又は前記トップコート組成物のいずれかに存在する前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、10nmから950nm未満、好ましくは25nmから900nm、より好ましくは30nmから850nmの範囲の体積平均粒子径を有していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2ベースコート組成物又は前記トップコート組成物のいずれかに存在する前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、10nmから750nm、好ましくは25nmから500nm、より好ましくは30nmから350nmの範囲のZ平均粒子径を有していることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
硬化後に得られた前記多層コーティングシステムは、少なくとも250、好ましくは少なくとも270の漆黒(Mc)値、及び/又は、黒色(My)値を好ましくは少なくとも1%超える漆黒(Mc)値、を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、各場合においてそれぞれの組成物の総固形分に基づいて、0.01から5.00質量%の範囲の量で、好ましくは各場合においてそれぞれの組成物の総固形分に基づいて、0.01から3.50質量%の範囲の量で、前記第2ベースコート組成物中又は前記トップコート組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、前記第2ベースコート組成物の総固形分に基づいて、0.10から5.00質量%の範囲の量で前記第2ベースコート組成物中に存在し、又は、前記トップコート組成物の総固形分に基づいては0.01から2.50質量%の範囲の量で前記トップコート組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(1)で塗布される前記ベースコート組成物中に存在する前記少なくとも1つの有機黒色顔料は、IR透過性有機黒色顔料、好ましくは少なくとも1つのペリレン及び/又はアゾメチン顔料であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2ベースコート組成物又は前記トップコート組成物の総固形分は、各場合においてそれぞれの総質量に基づいて、いずれの場合も10から65質量%、より好ましくは15から60質量%、さらに好ましくは20から50質量%、特に25から45質量%の範囲にあることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
任意のステップ(2)は、ステップ(1)の後に得られた前記第1コーティング膜を硬化させる前に実施され、ステップ(3a)は、ステップ(1)の後に得られた前記第1コーティング膜を硬化させる前に実施され、ステップ(3b)は、ステップ(2)の後に得られた前記第2コーティング膜を硬化させる前に実施されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、少なくともさらなるステップ(4)、すなわち、
(4)ステップ(1)及び(3a)、又はステップ(1)、(2)及び(3b)で塗布されたすべてのコーティング膜を共同硬化させて、少なくとも第1及び第2コーティング層を含んでいて前記第2コーティング層が形成された多層コーティングシステムの最外層である硬化多層コーティングシステム、又は、少なくとも第1、第2及び第3コーティング層を含んでいて前記第3コーティング層が形成された多層コーティングシステムの最外層である硬化多層コーティングシステム、を得るステップ、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
意にプレコートされた基板上に存在する多層コーティングシステムであって、
(1)少なくとも1つの黒色有機顔料を含む第1着色ベースコート膜、ここで、前記第1着色ベースコート膜は任意にプレコートされた基板上に存在する、
(2)黒色顔料を含まず、前記第1着色ベースコート膜と異なり、前記第1着色ベースコート膜に隣接して存在する、任意の第2顔料ベースコート膜、及び
(3a)黒色顔料を含まず、前記第1着色ベースコート膜に隣接して存在する着色トップコート膜、ここで、前記第2顔料ベースコート膜は存在せず、前記着色トップコート膜は、前記第1着色ベースコート膜及び前記第2顔料ベースコート膜とは異なる、又は、
(3b)黒色顔料を含まず、前記第2顔料ベースコート膜に隣接して存在するクリアコート膜、ここで、前記クリアコート膜は前記第1着色ベースコート膜及び前記第2顔料ベースコート膜とは異なる、
を含み、
前記(3a)における着色トップコート膜又は前記(3b)におけるクリアコート膜は前記多層コーティングシステムの最外膜であり、そして、
前記第2顔料ベースコート膜又は前記着色トップコート膜のいずれかは、1000nm未満の体積平均粒子径を有する少なくとも1つの非黒色着色顔料としての少なくとも1つの青色顔料を含み、
前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、前記第2顔料ベースコート膜の形成用の第2顔料ベースコート組成物において又は前記着色トップコート膜の形成用の着色トップコート組成物において、各場合においてそれぞれの組成物の総固形分に基づいて、0.01から7.50質量%の範囲の量で存在していたものであり、そして、前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、各場合において、顔料ペーストの形態でそれぞれの組成物に組み込まれていたものである、前記多層コーティングシステム
【請求項14】
着色コーティング組成物の使用であって、
前記着色コーティング組成物は、いかなる黒色顔料も含まず、コーティング組成物の全固形分に基づいて、0.01から7.50質量%の範囲の量で、1000nm未満の体積平均粒子径を有する少なくとも1つの非黒色着色顔料としての少なくとも1つの青色顔料を含み、前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、硬化後に得られる多層コーティングシステムの漆黒度(Mc)を、漆黒度(Mc)が硬化した多層コーティングシステムの黒色度(My)を超える程度まで高めるために、前記多層コーティングシステムを調製する方法のステップ(2)で第2ベースコート組成物として、あるいは、ステップ(3a)でトップコート組成物として、請求項1~12のいずれか1項で定義された任意にプレコートされた基板上へのコーティング組成物に、顔料ペーストの形態で組み込まれる、着色コーティング組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの有機黒色顔料を含有するベースコート組成物を基板に塗布し、基板の上に第1コーティング膜を形成し(ステップ(1))、任意で続いて第2ベースコート組成物を塗布し、第1コーティング膜に隣接して第2コーティング膜を形成し(ステップ(2))、任意のステップ(2)が実施されない場合には、着色トップコート組成物を第1コーティング膜に塗布し(ステップ(3a))、又は任意のステップ(2)が実施される場合には、クリアコート組成物を第2コーティング膜に塗布する(ステップ(3b))のステップを含む多層コーティングシステムを基板上に調製する方法であって、第2ベースコート及びトップコート又はクリアコート組成物のいずれも黒色顔料を含まず、第2ベースコート組成物(ステップ(1)、(2)及び(3b)が実施される場合)又は、トップコート組成物(ステップ(1)及び(3a)が実施される場合)は、その総固形分に基づいて、0.01から7.50質量%の範囲の量で、1000nm未満の体積平均粒子径を有する少なくとも1つの非黒色着色顔料を、顔料ペーストの形態でその中に組み込まれている形で含む方法と、多層コーティングシステムと、それから得られるコーティングされた基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特に自動車コーティングの分野では、黒色などの暗色は美観上望ましいとされている。しかし、暗色コーティングは、それらが可視光線に加えて近赤外線(NIR)を吸収するカーボンブラックなどの顔料の使用に依存することが多いため、近赤外線の吸収を受けやすい。近赤外線を吸収すると熱が発生し、その結果、暗色のコーティングはかなりの温度上昇を受けやすい。熱の発生を低減するために、カーボンブラックをペリレン顔料などの有機黒色顔料に置き換える試みがなされている。しかしながら、それに関連付けられた問題は、このようなシステムで達成される黒の漆黒度は、しばしばカーボンブラックによって達成されるものよりも低いということであり、これは望ましくない。
【0003】
JP2014-210856Aは、赤外線(IR)放射を反射及び/又は透過させる黒色顔料と、透明な青色顔料との両方を含み、低い明度Lを有する1つの単一組成物に合成(combined)されたコーティング組成物を開示している。このコーティング組成物は、基板上にベースコート膜を塗布するために使用される。次に、クリアコート組成物がその上に塗布される。JP2014-210856Aは、黒色と熱遮蔽特性を有するコーティングを提供することを狙いとしている。
【0004】
同様に、WO2012/170230A1(US2012/0308724A1)は、少なくとも240の漆黒度を有するコーティングを調製するための、1つの単一組成物に合成されて存在する少なくとも2つの可視吸収赤外線透明顔料を含むコーティング組成物に関する。これは、結果として得られるコーティングの漆黒度を高めるために、ベースコート層における非黒色顔料とIR透明黒色顔料のブレンドを含む。WO2012/170230A1は、漆黒色を示しながら、IR放射に対して透明であるコーティングの提供に関する。
【0005】
US2008/0187708A1はまた、IR反射顔料を含有する第1層と、暗色を呈し、IR放射線に対して実質的に透明であり、次いでナノ粒子顔料、特にそのブレンドを含有する色合いを有する第2層を含む、暗色を表示するコーティングシステムに関する。US2008/0187708A1は、暗色を示し、近赤外スペクトルの放射線を最小限で吸収するコーティングを提供することを目的としている。
【0006】
WO2013/037928A1は、特に、NIR透明顔料などの有機顔料及び/又は無機顔料、ならびに700から2500nmの範囲において少なくとも75%の透過率を有する色素を含む、基板上に形成されるコーティングを開示している。WO2013/037928A1は、高い光沢と改善された漆黒度及び彩度特性を有するコーティングを提供することに関する。しかしながら、WO2013/037928A1に開示されるような色素の使用は、しばしば低い耐久性をもたらし、さらに、達成されたいかなる色の改善も、UV光にさらされるとしばしば薄れる。
【0007】
WO2012/170230A1及びUS2008/0187708A1に開示されたような顔料ブレンドをベースコートに使用すると、黒色の漆黒値にプラスの影響を与える可能性があるが、それにもかかわらず、結果として得られるコーティングの漆黒度は、必ずしも十分ではなく、特に、なおも対応するカーボンブラック含有コーティングで達成されるものより劣る。さらに、これらのベースコートコーティングの視覚的外観は必ずしも十分ではなく、特に、視覚的に検査した場合、なおもカーボンブラック含有ベースコートに達しない。特に、先行技術のコーティングは、しばしば望ましくない茶色/赤みがかったアンダートーンを示す。さらに、コーティングの明るさは、依然として高すぎることが多い。
【0008】
したがって、先行技術で知られているコーティング及びコーティングシステムと比較して改善された漆黒度を示すコーティング及びコーティングシステムを提供する必要性がある。同時に、これらのコーティング及びコーティングシステムは、優れた視覚的外観、改善された色を有すべきであり、特に望ましくない茶色/赤みがかったアンダートーンを示すべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の根底にある目的は、従来技術で知られているコーティング及びコーティングシステムと比較して改善された漆黒度を示し、同時に優れた視覚的外観、改善された色を有し、特に望ましくない茶色/赤みがかったアンダートーンを示さない、コーティング及びコーティングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本願の特許請求の範囲の主題によって、ならびに本明細書に開示されるその好ましい実施形態によって、すなわち本明細書に記載された主題によって解決される。
【0011】
本発明の第1の主題は、任意にプレコートされた基板上に多層コーティングシステムを調製する方法であって、少なくともステップ(1)及び(3a)、又は少なくともステップ(1)、(2)及び(3b)、すなわち
(1)着色ベースコート組成物(pigmented basecoat composition)を任意にプレコートされた基板に塗布し、該任意にプレコートされた基板上に第1コーティング膜を形成するステップであって、ベースコート組成物が少なくとも1つの黒色有機顔料を含む、ステップと、
(2)ステップ(1)で塗布されたベースコート組成物と異なる第2顔料ベースコート組成物をステップ(1)の後に得られた基板上に存在する第1コーティング膜に任意に塗布し、第1コーティング膜に隣接する第2コーティング膜を形成するステップと、
(3a)任意のステップ(2)が実施されない場合には、ステップ(1)及び任意のステップ(2)で塗布される組成物と異なるコーティング組成物をステップ(1)の後に得られた基板上に存在する第1コーティング膜に塗布し、第1コーティング膜に隣接する第2コーティング膜を形成するステップであって、コーティング組成物は着色トップコート組成物であるステップ、あるいは、
(3b)任意のステップ(2)が実施される場合には、ステップ(1)及び任意のステップ(2)で塗布された組成物と異なるコーティング組成物をステップ(2)の後に得られた基板上に存在する第2コーティング膜に塗布し、第2コーティング膜に隣接する第3コーティング膜を形成するステップであって、コーティング組成物はクリアコート組成物であるステップ、
を含み、
ステップ(3a)の後に得られた第2コーティング膜又はステップ(3b)の後に得られた第3コーティング膜は、形成された多層コーティングシステムの最外膜であり、
任意のステップ(2)で塗布される第2ベースコート組成物も、ステップ(3a)又は(3b)で塗布されるコーティング組成物も、黒色顔料を含まず、さらに、ステップ(1)、(2)及び(3b)が実施される場合の第2ベースコート組成物、又は、ステップ(1)及び(3a)が実施される場合のトップコート組成物は、各場合においてそれぞれの組成物の総固形分に基づいて、0.01から7.50質量%の範囲の量で、1000nm未満の体積平均粒子径を有する少なくとも1つの非黒色着色顔料を含み、前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、各場合において、顔料ペーストの形態でそれぞれの組成物に組み込まれている、ことを特徴とする方法である。
【0012】
本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって得られ得ることを特徴とする、任意にプレコートされた基板上に存在する多層コーティングシステムである。
【0013】
本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって得られ得るコーティングされた基板である。
【0014】
本発明のさらなる主題は、着色コーティング組成物の使用であって、
該着色コーティング組成物は、いかなる黒色顔料も含まず、コーティング組成物の全バインダー固形分に基づいて、0.01から7.50質量%の範囲の量で、1000nm未満の体積平均粒子径を有する少なくとも1つの非黒色着色顔料を含み、前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、
硬化後に得られる多層コーティングシステムの漆黒度(Mc)を、漆黒度(Mc)が硬化した多層コーティングシステムの黒色度(My)を超える程度まで高めるために、
多層コーティングシステムを調製する方法のステップ(2)で第2ベースコート組成物として、あるいは、ステップ(3a)でトップコート組成物として、本発明方法で定義された任意にプレコートされた基板上へのコーティング組成物に、顔料ペーストの形態で組み込まれる、着色コーティング組成物の使用である。
【0015】
特に、驚くべきことに、本発明の方法及び本発明の多層コーティングシステムによって、黒色の優れた漆黒度(Mc)が達成され得ることが見出された。これは、現在入手可能な顔料としてのIR反射性ブラック(しかし、その使用は望ましくない)及びその結果として得られる従来のコーティングが、標準的なカーボンブラック顔料よりも漆黒度が低い場合に特に有用である。
【0016】
特に驚くべきことに、2C1Bプロセスで使用されるクリアコート組成物を薄く着色してトップコート組成物を形成することにより、又は3C1Bプロセスで黒色顔料を含有しない第2ベースコート組成物を本発明に使用される非黒色着色顔料で薄く着色することにより、さもなければ2C1B及び3C1Bプロセスの両方で使用される(第1)ベースコートに存在する黒色顔料によって反射される(その結果望ましくない色調特性(coloristic properties)となる)光の波長が、吸収される可能性があることが見出された。
【0017】
特に、本発明の多層コーティングの全体的な漆黒度(Mc)が改善されるだけでなく、漆黒(Mc)値が、コーティングの黒色値(My)を超え、アンダートーンの正の値dMが0より大(dM=Mc-My)であるため、赤みがかった/茶色のアンダートーンは得られず、むしろ、使用される少なくとも非黒色着色顔料の種類に応じて、例えば、青色又は青みがかった又は緑色又は緑色がかった又は紫色又は紫がかったアンダートーンなど、異なる色のアンダートーンが達成されるように改善され得る。
【0018】
驚くべきことに、本発明に使用される非黒色着色顔料で薄く着色されたクリアコート及び/又はそれに応じて薄く着色された第2ベースコートの使用は、可視スペクトルの標的波長、特に固体黒色顔料の波長の吸収を増大させることによって、黒色顔料の漆黒度(Mc)を高めるための迅速かつ独特の方法を提供する。この方策によって、より深い黒色を生じ得る可視スペクトルのすべての波長のより高い吸収率が可能となる。これらのより深い黒色は、例えばWO2012/170230A1に開示されているような、2C1Bプロセスでベースコートを薄く着色する現在の最新技術では得ることができない。
【0019】
驚くべきことに、有機黒色顔料含有ベースコート層の上に存在するコーティング膜中に、本発明で使用される非黒色着色顔料を組み込むことにより、黒の黒色度(My)及び漆黒度(Mc)の両方が、カーボンブラックと少なくとも同等又は特に上回るように著しく改善され得ることが見いだされた。同時に、発生する熱の大幅な削減を達成することができ、このことはカーボンブラック含有ベースコートでは不可能である。
【0020】
特に、驚くべきことに、本発明の多層コーティングの明度(L)、特にb色値が改善され得ること、すなわちゼロ又はゼロ未満に向かって最小化/シフトされ得ることがさらに見出された。
【0021】
特に、WO2012/170230A1に開示されているように、漆黒度を改善するために黒色ベースコートに追加の顔料を加えること、すなわち、1つの単一のベースコートに黒色顔料を含む顔料ブレンドを使用することは、許容できる結果につながらないことが見出された。場合によっては漆黒値を高めることができるが、漆黒度の視覚的印象は十分に改善されない。しかしながら、この視覚的印象は、驚くべきことに、クリアコート組成物を薄く着色して黒色ベースコート膜の上に塗布される2C1Bプロセスで使用されるトップコート組成物を形成する場合、及び/又は黒色ベースコート膜の上に塗布される3C1Bプロセスにおいて黒色顔料を含まない第2ベースコート組成物を本発明で使用される非黒色着色顔料で薄く着色することによって、劇的に改善することができた。これは、実験セクションで詳細に実証され、例えば、実験セクションの項目6.に要約されている。
【0022】
特に驚くべきことに、2C1Bプロセスで使用されるクリアコート組成物を薄く着色してトップコート組成物を形成することにより、又は3C1Bプロセスで黒色顔料を含有しない第2ベースコート組成物を本発明に使用する顔料で薄く着色することにより、コーティング全体の漆黒度が高まるだけでなく、また、漆黒値が黒色値を上回る程度になるだけではなく、同時に、色深度の色度が減少し、これは薄く着色されていないクリアコートを含むコーティングシステム、又はミッドコートを含まない(すなわち、第2ベースコートを含まない)第1黒色ベースコートを含むコーティングシステムと比較して望ましく、WO2013/037928A1によって達成することを狙ったものとは対照的である。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明の意味における「含む(comprising)」という用語は、例えば本発明の方法において使用されるコーティング組成物に関連しては、好ましくは「からなる(consisting)」の意味を有する。例えば、第2ベースコート組成物に関して、又はトップコートコーティング組成物に関しては、その中に存在する全ての必須コンポ―ネントに加えて、以下に特定される、そこに任意に含まれるさらなるコンポ―ネントの1つ以上も、そこに含まれることが可能である。全てのコンポ―ネントが、各場合において、以下に特定されるように、それらの好ましい実施形態に存在することができる。
【0024】
各コーティング組成物中に存在する、以下に示される成分のいずれのwt.-%(質量%)単位の割合及び量は、各場合においてそれぞれの組成物の総質量に基づいて合計して100質量%になる。
【0025】
ステップ(1)、(2)、(3a)及び(3b)で使用されるコーティング組成物の各々は(以下により詳細に概説される追加的な成分に加え)、所望の用途に応じて、1つ以上の一般的に使用される添加剤を含有してよい。例えば、コーティング組成物の各々は、互いに独立して、反応性希釈剤、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、可塑剤、フリーラジカル重合開始剤、接着促進剤、流動制御剤、膜形成助剤、垂れ制御剤(SCA)、難燃剤、腐食防止剤、乾燥剤、濃縮剤、殺生物剤、及び平坦化剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでよい。これらは、既知の慣用的な割合で使用されることができる。好ましくは、各コーティング組成物の総質量に基づいて、それらの含有量は、0.01~20.0質量%、より好ましくは0.05~15.0質量%、特に好ましくは0.1~10.0質量%、最も好ましくは0.1~7.5質量%、特に0.1~5.0質量%、及び最も好ましくは0.1~2.5質量%である。
【0026】
発明の方法
本発明の方法は、少なくともステップ(1)及び(3a)、又は少なくともステップ(1)、(2)及び(3b)を含む、任意にプレコートされた基板上に多層コーティングシステムを調製する方法である。
【0027】
好ましくは、これらのステップはすべてスプレー塗布によって実施される。
【0028】
少なくともステップ(1)及び(3a)、又は少なくともステップ(1)、(2)及び(3b)を実施することによって任意にプレコートされた基板上に形成される第1及び第2又は第1、第2及び第3コーティング膜は、この段階では、好ましくは各未硬化コーティング膜である。したがって、これらのステップの各々で塗布されるコーティング組成物は、好ましくはウェットオンウェットで塗布される。
【0029】
本発明の方法は、自動車両本体、又はそれぞれの金属基板、及びポリマー基板のようなプラスチック基板を含むその部品のコーティングに特に適している。したがって、好ましい基板は、自動車両本体又はその部品である。
【0030】
本発明に従って使用される金属基板としての適性は、慣用的に使用され、当業者に知られているすべての基板である。本発明に従って使用される基板は、好ましくは金属基板であり、より好ましくは鋼、好ましくは、裸鋼、冷間圧延鋼(CRS)、熱間圧延鋼、亜鉛めっき鋼、例えば溶融亜鉛めっき鋼(HDG)、合金亜鉛めっき鋼(例えば、Galvalume、Galvannealed又はGalfanなど)及びアルミめっき鋼からなる群から選択される鋼と、アルミニウムと、マグネシウムと、ならびに、Zn/Mg合金及びZn/Ni合金である。特に適切な基板は、生産用の車両本体の部品又は自動車の完全な本体である。
【0031】
好ましくは、プラスチック基板として熱可塑性ポリマーが使用される。好適なポリマーは、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート及びポリ酢酸ビニルを含めたポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリブタジエンなどのポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレンコポリマー(A-EPDM)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステルコポリマー)及びABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、ポリエーテルイミド、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、TPUを含めたポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物である。ポリカーボネート及びポリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0032】
本発明に従って使用される基板は、好ましくは、リン酸亜鉛などの少なくとも1つの金属リン酸塩で前処理された、及び/又は少なくとも1つのシュウ酸塩で前処理された金属基板である。リン酸塩によるこの種の前処理(通常、基板が洗浄された後、基板が電着コーティングされる前に行われる)は、特に自動車産業において慣用的な前処理ステップである。
【0033】
上記で概説されたように、使用される基板は、プレコートされた基板、すなわち、少なくとも1つの硬化コーティング膜を有する基板であり得る。ステップ(1)で使用される基板は、硬化した電着コーティング層でプレコートされ得る。基板は、例えば、追加的に又は代替的に、少なくとも1つの硬化した又は未硬化のプライマーコーティング膜を、少なくとも1つの追加のプレコートとして提供されることができる。「プライマー」という用語は、当業者には既知である。プライマーは、典型的には、基板に硬化した電着コーティング層が提供された後に塗布される。硬化したプライマーコーティング膜も存在する場合、硬化した電着コーティング膜は、硬化したプライマーコーティング膜の下に、好ましくはそれに隣接して存在する。このプライマーの硬化は、40~140℃の範囲の温度で行われてよく、特に、80~100℃の範囲の温度での「低焼成」ステップを含むことができる。上記で概説されたように、未硬化のプライマーコーティング膜を有する基板も使用されることができ、特に、硬化した電着コーティング膜を担持する金属基板などの基板であって、その上に前記未硬化のプライマーコーティング膜が存在する基板を使用することができる。したがって、本発明の方法は、ステップ(1)の前に実施される追加のステップを含むことができ、それによれば、プライマー組成物が、任意にプレコートされた基板に塗布され、任意にプレコートされた基板上にプライマーコーティング膜を形成することができる。本発明の方法ステップ(1)は、次いで、好ましくは、前記プライマーコーティングの硬化が行われる前に、任意に好ましくは1~20分、好ましくは40℃を超えない温度、例えば18~30℃の範囲の温度でのフラッシュオフ期間などのフラッシュオフ期間の後に実施される。
【0034】
ステップ(1)及び任意にステップ(2)で塗布されるベースコート組成物はそれぞれ、好ましくは水性、すなわち水系のコーティング組成物であり、一方、ステップ(3a)又は(3b)で塗布されるコーティング組成物は好ましくは非水性、すなわち溶媒系(有機溶剤ベース)である。しかしながら、以下により詳細に概説されるように、ステップ(1)及び任意にステップ(2)において塗布されるベースコート組成物は、代替的に、溶媒系ベースコート組成物であってよい。同様に、ステップ(3a)又は(3b)で塗布されるコーティング組成物もまた、水性であってよい。好ましくは、ステップ(1)及び任意にステップ(2)で塗布されるベースコート組成物は、1K-(1成分)又は2K-(2成分)組成物であり、より好ましくは1K-組成物である。好ましくは、ステップ(3a)又は(3b)で塗布されるコーティング組成物は、1K-又は2K-組成物であり、より好ましくは2K-組成物である。
【0035】
「溶媒系」又は「非水性」という用語は、好ましくは、本発明の目的のためには、溶媒及び/又は希釈剤としての有機溶媒が、これらが溶媒系である場合にステップ(3a)もしくは(3b)で塗布されるコーティング組成物に、又はこれらの少なくとも1つが溶媒系である場合にベースコート組成物のいずれかに、(及び、好ましくは前記組成物の調製のために使用される顔料ペーストのいずれかに)、好ましくは、コーティング組成物の総質量に基づいて、少なくとも35質量%の量で、全溶媒及び/又はコーティング組成物に存在する希釈剤の主要な成分として、存在することを意味すると理解される。ステップ(3a)又は(3b)で塗布されるコーティング組成物は、好ましくは、各場合においてコーティング組成物の総質量に基づいて、少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも45質量%、非常に好ましくは少なくとも50質量%の有機溶媒画分を含む。当業者に知られている全ての従来の有機溶媒を有機溶媒として使用することができる。「有機溶媒」という用語は、特に1999年3月11日の理事会指令1999/13/ECから、当業者に知られている。このような有機溶媒の例として、ヘテロ環状、脂肪族又は芳香族炭化水素、一価又は多価アルコール、特にメタノール及び/又はエタノール、エーテル、エステル、ケトン、及びアミド、例えば、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、ブタノール、エチルグリコール及びブチルグリコール及びこれらのアセテート、ブチルジグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソホロン、又はこれらの混合物が挙げられる。ステップ(3a)又は(3b)で塗布されるコーティング組成物は、好ましくは、水を含まないか、又は本質的に水を含まない。ステップ(3a)又は(3b)で塗布されるコーティング組成物だけでなく、ステップ(1)及び任意にステップ(2)で塗布されるベースコート組成物の一方又は両方が溶媒系である場合、上記は、これらのベースコート組成物にも適用される。
【0036】
「水系(waterborne)」又は「水性(aqueous)」という用語は、好ましくは、本発明の目的のためには、水が、全溶媒及び/又は希釈剤の主要な成分として、ステップ(1)及び任意にステップ(2)で塗布されるベースコート組成物中に(これらのベースコート組成物の一方又は両方が水性である場合)、また好ましくは、前記組成物を調製するために使用される任意の顔料ペースト中に、好ましくは、コーティング組成物の総質量に基づいて、少なくとも35質量%の量で、存在することを意味すると理解される。この場合の前述のベースコート組成物の各々は、好ましくは、各場合においてコーティング組成物の総質量に基づいて、少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも45質量%、非常に好ましくは少なくとも50質量%の水の画分を含む。有機溶媒の画分は、各場合においてコーティング組成物の総質量に基づいて、好ましくは20質量%未満、より好ましくは0~<20質量%の範囲、非常に好ましくは0.5~20質量%又は17.5質量%~15質量%又は10質量%の範囲である。ステップ(3a)又は(3b)で塗布されるコーティング組成物の一方又は両方が水性である場合も、上記は、これらのコーティング組成物にも適用される。
【0037】
ステップ(1)及び第1ベースコート組成物
ステップ(1)によれば、着色ベースコート組成物が任意にプレコートされた基板に塗布され、任意にプレコートされた基板上の第1コーティング膜が形成され、ベースコート組成物は少なくとも1つの有機黒色顔料を含む。本発明の方法ステップ(1)で使用されるベースコート組成物は、以下で、「第1ベースコート組成物」とも呼ばれる。ステップ(1)で使用されるベースコート組成物は、溶媒系(非水性)であっても水性であってもよい。
【0038】
好ましくは、本発明の方法は、ステップ(1)の後、及び任意のステップ(2)の前に実施されるステップ(1a)をさらに含む。前記ステップ(1a)において、ステップ(1)の後に得られた第1コーティング膜は、任意のステップ(2)において第2ベースコート組成物を塗布する前、又はステップ(3a)においてトップコート組成物を塗布する前に、好ましくは1~20分の間、より好ましくは2~15分の間、特に5~10分の間、フラッシュオフされる。好ましくは、ステップ(1a)は、40℃を超えない温度で、より好ましくは18から30℃の範囲の温度で実施される。
【0039】
本発明の意味での「フラッシュオフ」という用語は、好ましくは乾燥を意味し、溶媒(水及び/又は有機溶媒)の少なくともいくらか及び/又はいくらかの量は、次のコーティング組成物が塗布される前及び/又は硬化が行われる前に、コーティング膜から蒸発される。フラッシュオフによって硬化は行われない。
【0040】
「顔料」という用語は、例えばDIN 55943(日付:2001年10月)から、当業者に知られている。本発明の意味での「顔料」は、好ましくは、例えば本発明で使用されるコーティング組成物の1つなど、それらを取り囲む媒体に実質的に、好ましくは完全に、不溶性である粉末又はフレークの形態のコンポ―ネントを指す。顔料は、好ましくは、着色剤、及び/又は、磁性、電気及び/又は電磁気特性のために顔料として使用されることができる物質である。顔料は、好ましくは、その屈折率(顔料については、1.7以上である)において「フィラー」と異なる。「フィラー」という用語は、例えばDIN 55943(日付:2001年10月)から、当業者に知られている。
【0041】
第1ベースコート組成物中に存在する少なくとも1つの黒色顔料は、有機黒色顔料、より好ましくは少なくとも1つのIR透過性有機黒色顔料、特に少なくとも1つのペリレン及び/又はアゾメチン顔料である。最も好ましいのは、黒色顔料番号31及び32(P.B.31及びP.B.32)、特にP.B.32である。このような顔料は市販されている。一例として、Paliogen(登録商標)Black L 0086が挙げられる。適切な有機黒色顔料の別の例は、Chromofine(登録商標)Azo Black A-1103(Dainichiseika Chemicals)である。
【0042】
好ましくは、本発明の方法ステップ(1)で使用されるベースコート組成物は、少なくとも1つの有機黒色顔料以外に、黒色無機顔料などの他の黒色顔料を含有しない。特に、本発明の方法ステップ(1)で使用されるベースコート組成物は、いかなるカーボンブラック顔料も含有しない。
【0043】
好ましくは、第1ベースコート組成物中に存在する少なくとも1つの有機黒色顔料は、10nmから1000nm未満、好ましくは25nmから800nm、より好ましくは30nmから600nm、特に40nmから500nm超、最も好ましくは50nmから300nmの範囲の体積平均粒子径を有している。
【0044】
好ましくは、第1ベースコート組成物中に存在する少なくとも1つの有機黒色顔料は、10nmから1000nm未満、好ましくは25nmから800nm、より好ましくは30nmから600nm、特に40nmから500nm超、最も好ましくは50nmから300nmの範囲のZ平均粒子径を有している。
【0045】
好ましくは、第1ベースコート組成物中に存在する少なくとも1つの有機黒色顔料は、10nmから700nm、好ましくは25nmから500nm、より好ましくは30nmから350nm、特に50nmから250nmの範囲の数値ベースのメジアン一次粒子径(number-based median primary particle size)(dN、50%)を有している。数値ベースのメジアン粒子径(dN、50%)という用語は、当業者には既知のパラメータである。小文字の「d」で表示された特性変数は、50%百分位数が中央値に対応する累積分布曲線の百分位数(50%)である。表示「N」は、数ベースの分布に関係する。
【0046】
体積平均粒子径、Z平均粒子径、数値ベースのメジアン一次粒子径は、以下の「方法」セクションで説明する方法に従ってDLSによって決定される。
【0047】
少なくとも1つの有機黒色顔料を含む水性又は非水性顔料ペーストは、ステップ(1)で使用されるベースコート組成物が溶媒系(非水性)又は水性かに応じて、第1ベースコート組成物を調製するために使用される。
【0048】
好ましくは、第1ベースコート組成物を調製するために使用される、少なくとも1つの有機黒色顔料を含む顔料ペーストは、15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは7.5%未満のヘイズを有する。
【0049】
「ヘイズ」という用語は、当業者には既知である。ヘイズは、ASTM D 1003に定義されるように、透明度の測定値である。本発明に用いられる(及び比較的に用いられる)顔料ペーストのヘイズを測定する方法は、以下の「方法」セクションに記載されている。
【0050】
体積平均粒子径、Z平均粒子径、数値ベースのメジアン一次粒子径、及びヘイズは、顔料ペーストの形態で存在する有機黒色顔料をミル内で粉砕環境に付すことにより調整/低減されることが可能である。粉砕処理は、本発明に用いられる非黒色着色顔料に関連して以下でより詳細に概説されるが、有機黒色顔料及び当該顔料を含む顔料ペーストにも適用され得る。
【0051】
好ましくは、少なくとも1つの有機黒色顔料は、本発明の方法のステップ(1)において使用されるベースコート組成物中の唯一の顔料である。しかしながら、ステップ(1)で使用されるベースコート組成物は、代替的に、そこに存在する少なくとも1つの有機黒色顔料とは異なる少なくとも1つのさらなる顔料を含んでよく、好ましくはカーボンブラックなどの無機黒色顔料を除く。前記少なくとも1つのさらなる顔料は、第2ベースコート組成物中又は非水性トップコート組成物中に存在する本発明で使用される特定の少なくとも1つの非黒色着色顔料と異なることができるが、必ずしもそうである必要はない。そのようなさらなる顔料の例は、白色顔料を含む着色顔料及び効果顔料である。
【0052】
好ましくは、本発明の方法のステップ(1)において使用されるベースコート組成物中に存在する少なくとも1つの有機黒色顔料の質量%での量は、各場合において第1ベースコート組成物の総固形分に基づいて、そこに含まれる他の任意のさらなる顔料の質量%での量よりも多い。
【0053】
好ましくは、第1ベースコート組成物中に存在する顔料の総量は、第1ベースコート組成物の総固形分に基づいて、多くても40質量%、より好ましくは多くても35質量%の範囲にある。
【0054】
好ましくは、第1ベースコート組成物中に存在する少なくとも1つの有機黒色顔料は、各場合において第1ベースコート組成物の総固形分に基づいて5から30質量%、より好ましくは6.0から25.0質量%、さらにより好ましくは7.5から20質量%、特に8.0から16質量%の範囲の量でそこに含有される。
【0055】
好ましくは、第1ベースコート組成物の総固形分は、各場合において第1ベースコート組成物の総質量に基づいて、10から65質量%、より好ましくは15から60質量%、さらに好ましくは20から50質量%、特に25から45質量%の範囲にある。
【0056】
第1ベースコート組成物は、好ましくは(少なくとも1つの有機黒色顔料の他に)少なくとも1つのバインダー、より好ましくはバインダーとしての少なくとも1つのポリマー(a1)を含んでいる。
【0057】
本発明の目的のために、「バインダー」という用語は、DIN EN ISO 4618(ドイツ語版、日付:2007年3月)に従って、膜形成に関与するコーティング組成物の不揮発性成分であると理解される。この用語には、架橋剤及び添加剤が、これらが不揮発性成分を表す場合に、含まれる。したがって、含有される顔料及び/又はフィラーは、「バインダー」用語に包含されない。好ましくは、少なくとも1つのポリマー(a1)は、コーティング組成物の主バインダーである。本発明における主バインダーとして、コーティング組成物中に他のバインダー成分が存在しない場合に、コーティング組成物の総質量に基づいて、より高い画分で存在するバインダー成分が好ましくは参照される。
【0058】
「ポリマー」という用語は当業者に知られており、本発明の目的のためには、重付加物及び重合物ならびに重縮合物を包含する。「ポリマー」という用語は、ホモポリマーとコポリマーの両方を含む。
【0059】
成分(a1)として使用される少なくとも1つのポリマーは、自己架橋性又は非自己架橋性であってもよい。使用することができる適切なポリマーは、例えば、EP0228003A1、DE4438504A1、EP0593454B1、DE19948004A1、EP0787159B1、DE4009858A1、DE4437535A1、WO92/15405A1及びWO2005/021168A1から知られている。
【0060】
成分(a1)として使用される少なくとも1つのポリマーは、好ましくは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は前記ポリマーの構造単位のコポリマーからなる群から選択され、特に、ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレート及び/又はポリウレタンポリウレアである。成分(a1)として使用される少なくとも1つのポリマーは、特に好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は前記ポリマーの構造単位のコポリマーからなる群から選択される。本発明の文脈における用語「(メタ)アクリル」又は「(メタ)アクリレート」は、各場合において、「メタクリル」及び/又は「アクリル」又は「メタクリレート」及び/又は「アクリレート」の意味を含む。
【0061】
好ましいポリウレタンは、例えば、ドイツ特許出願DE19948004A1の4頁19行目から11頁29行目(ポリウレタンプレポリマーB1)、欧州特許出願EP0228003A1の3頁24行目から5頁40行目、欧州特許出願EP0634431A1の3頁38行目から8頁9行目、及び国際特許出願WO92/15405の2頁35行目から10頁、32行目に記載されている。
【0062】
好ましいポリエステルは、例えば、DE4009858A1のコラム6、53行目からコラム7、61行目及びコラム10、24行目からコラム13、3行目、又はWO2014/033135A2の2頁24行目から7頁10行目、さらに28頁13行目から29頁13行目に記載されている。同様に好ましいポリエステルは、例えばWO2008/148555A1に記載されているように、樹枝状構造又は星状構造を有するポリエステルである。これらは、クリアコートだけでなく、特に水性ベースコートにも使用することができる。
【0063】
好ましいポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー((メタ)アクリレートポリウレタン)及びそれらの調製は、例えばWO91/15528A1の3頁、21行目から20頁、33行目まで、及びDE4437535A1の2頁27行目から6頁22行目に記載されている。
【0064】
好ましいポリ(メタ)アクリレートは、水及び/又は有機溶媒中でのオレフィン性不飽和モノマーの多段階ラジカル乳化重合によって調製できるものである。例えば、シードコアシェルポリマー(SCSポリマー)が特に好ましい。このようなポリマー、及びこのようなポリマーを含む水性分散体は、例えばWO2016/116299A1から知られている。特に好ましいシードコアシェルポリマーは、好ましくは100から500nmの平均粒子径を有するポリマーであって、これは、水中のオレフィン性不飽和モノマーの3つの好ましくは異なるモノマー混合物(A1)、(B1)、及び(C1)の逐次ラジカル乳化重合によって調製可能であり、混合物(1A)は、25℃での水中の溶解度が0.5g/l未満の少なくとも50質量%のモノマーを含有し、混合物(1A)から調製されたポリマーのガラス転移温度が10から65℃であり、混合物(B1)は、少なくとも1つのポリ不飽和モノマーを含み、混合物(B1)から調製されたポリマーのガラス転移温度が-35から15℃であり、混合物(C1)から調製されたポリマーのガラス転移温度が-50から15であり、ここで、i.まず、混合物(A1)が重合され、ii.次いでi.で形成されたポリマーの存在下で混合物(B1)が重合され、iii.次いでii.で形成されたポリマーの存在下で混合物(C1)が重合される。3つの混合物はすべて、互いに異なることが好ましい。
【0065】
好ましいポリウレタン-ポリウレアコポリマーは、好ましくは、40~2000nmのZ平均粒子径を有するポリウレタン-ポリウレア粒子であり、該ポリウレタン-ポリウレア粒子は、それぞれ反応した形態で、アニオン性基及び/又はアニオン性基に変換可能な基を含む少なくとも1つのイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマー、ならびに2つの第一級アミノ基及び1つ又は2つの第二級アミノ基を含有する少なくとも1つのポリアミンを含む。このようなコポリマーは、好ましくは水性分散体の形態で使用される。このようなポリマーは、原則的に、例えばポリイソシアネートとポリオール及びポリアミンとの従来の重付加によって調製可能である。
【0066】
成分(a1)として使用されるポリマーは、好ましくは、架橋反応を可能にする反応性官能基を有する。当業者に知られている任意の一般的な架橋可能な反応性官能基を存在させることができる。好ましくは、成分(a1)として使用されるポリマーは、第一級アミノ基、第二級アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基及びカルバメート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する。好ましくは、成分(a1)として使用されるポリマーは、ヒドロキシル基を有する。
【0067】
好ましくは、成分(a1)として使用されるポリマーはヒドロキシ官能性であり、より好ましくは、15~400mgKOH/g、より好ましくは20~250mgKOH/gの範囲のOH価を有する。
【0068】
成分(a1)として使用されるポリマーは、特に好ましくは、ヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー、ヒドロキシ官能性ポリエステル及び/又はヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリウレアコポリマーである。
【0069】
さらに、第1ベースコート組成物は、それ自体公知の少なくとも1つの典型的な架橋剤を含んでいてよい。架橋剤は、コーティング組成物の膜形成性不揮発性成分の中に包含されるべきものであり、したがって「バインダー」の一般的な定義に含まれる。したがって、架橋剤は成分(a1)に含まれる。
【0070】
架橋剤が存在する場合、好ましくは少なくとも1つのアミノプラスト樹脂及び/又は少なくとも1つのブロック又は遊離ポリイソシアネートであり、好ましくはアミノプラスト樹脂である。アミノプラスト樹脂の中でも特に好ましいのは、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂などのメラミン樹脂である。
【0071】
任意のステップ(2)及び第2ベースコート組成物
任意のステップ(2)によれば、第1ベースコート組成物とは異なる第2顔料ベースコート組成物が、ステップ(1)の後に得られた基板上に存在する第1コーティング膜に塗布され、第1コーティング膜に隣接する第2コーティング膜が形成される。第2顔料ベースコート組成物は、いかなる黒色顔料も含まない。本発明の任意の方法ステップ(2)で使用されるベースコート組成物は、以下では、「第2ベースコート組成物」とも呼ばれる。任意のステップ(2)で使用されるベースコート組成物は、溶媒系(非水性)であっても水性であってもよい。
【0072】
任意のステップ(2)が(そしてもちろん、前のステップ(1)及び次のステップ(3b)も)実施される場合、第2ベースコート組成物は、第2ベースコート組成物の総固形分に基づいて、0.01から7.50質量%の範囲の量で、1000nm未満の体積平均粒子径を有する少なくとも1つの非黒色着色顔料を含み、ここで前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は顔料ペーストの形態で第2ベースコート組成物に組み込まれる。
【0073】
少なくとも1つの非黒色着色顔料を含む水性又は非水性顔料ペーストは、ステップ(1)で使用されるベースコート組成物が溶媒系(非水性)又は水性かに応じて、第2ベースコート組成物を調製するために使用される。
【0074】
好ましくは、任意のステップ(2)は、ステップ(1)の後に得られた第1コーティング膜を硬化させる前に実施される。
【0075】
好ましくは、本発明の方法は、任意のステップ(2)の後、及びステップ(3b)の前に実施されるステップ(2a)をさらに含む。前記ステップ(2a)において、ステップ(2)の後に得られた第2コーティング膜は、ステップ(3b)においてクリアコート組成物を塗布する前に、好ましくは1~20分の間、より好ましくは2~15分の間、特に5~10分の間、フラッシュオフされる。好ましくは、ステップ(2a)は、40℃を超えない温度で、より好ましくは18から30℃の範囲の温度で実施される。
【0076】
好ましくは、少なくとも1つの非黒色着色顔料は、本発明の方法のステップ(2)において使用されるベースコート組成物中の唯一の顔料である。しかしながら、ステップ(2)で使用されるベースコート組成物は、代替的に、そこに存在する少なくとも1つの非黒色着色顔料とは異なる少なくとも1つのさらなる顔料を含んでよい。そのようなさらなる顔料の例は、白色顔料を含む着色顔料及び効果顔料である。
【0077】
好ましくは、本発明の方法のステップ(2)において使用されるベースコート組成物中に存在する少なくとも1つの非黒色着色顔料の質量%での量は、各場合において第2ベースコート組成物の総固形分に基づいて、そこに含まれる他の任意のさらなる顔料の質量%での量よりも多い。
【0078】
好ましくは、第2ベースコート組成物中に存在する顔料の総量は、第2ベースコート組成物の総固形分に基づいて、多くても20質量%、より好ましくは多くても10質量%の範囲にある。
【0079】
好ましくは、第2ベースコート組成物中に存在する少なくとも1つの非黒色着色顔料は、各場合において第2ベースコート組成物の総固形分に基づいて、0.01から5.00質量%の範囲の量、より好ましくは、0.10から5.00質量%、さらにより好ましくは0.10から3.50質量%、特に0.10から2.50質量%、最も好ましくは0.20から2.00質量%の範囲の量でそこに含有される。
【0080】
好ましくは、第2ベースコート組成物の総固形分は、各場合において第2ベースコート組成物の総質量に基づいて、10から65質量%、より好ましくは15から60質量%、さらに好ましくは20から50質量%、特に25から45質量%の範囲にある。
【0081】
第2ベースコート組成物は、好ましくは、(少なくとも1つの非黒色着色顔料の他に)少なくとも1つのバインダー、より好ましくはバインダーとして少なくとも1つのポリマー(b1)を含んでいる。成分(a1)に関連して上述した架橋剤を含む同じバインダーを、成分(b1)として使用することも可能である。
【0082】
ステップ(3a)及び着色トップコート組成物
任意のステップ(3a)によれば、トップコートコーティング組成物が、ステップ(1)の後に得られた基板上に存在する第1コーティング膜に塗布され、任意のステップ(2)が実施されない場合、第1コーティング膜に隣接する第2コーティング膜が形成され、トップコートコーティング組成物は着色トップコート組成物であり、ステップ(3a)の後に得られた第2コーティング膜は形成された多層コーティングシステムの最外膜である。トップコートコーティング組成物は、いかなる黒色顔料も含まない。ステップ(3a)で使用されるトップコート組成物は、溶媒系(非水性)であっても水性であってもよく、好ましくは溶媒系である。
【0083】
ステップ(3a)が実施される場合、ステップ(2)は実施されない。この場合、着色トップコート組成物は、トップコートコーティング組成物の総固形分に基づいて、0.01から7.50質量%の範囲の量で、1000nm未満の体積平均粒子径を有する少なくとも1つの非黒色着色顔料を含み、ここで前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、顔料ペーストの形態でトップコートコーティング組成物に組み込まれている。
【0084】
少なくとも1つの非黒色着色顔料を含む非水性顔料ペーストは、トップコート組成物が溶媒系である場合、トップコート組成物を調製するために好ましくは使用される。同様に、少なくとも1つの非黒色着色顔料を含む水性顔料ペーストは、トップコート組成物が水性である場合、トップコート組成物を調製するために好ましくは使用される。
【0085】
好ましくは、ステップ(3a)は、ステップ(1)の後に得られた第1コーティング膜を硬化させる前に実施される。
【0086】
好ましくは、少なくとも1つの非黒色着色顔料は、本発明の方法のステップ(3a)で使用されるトップコート組成物中の唯一の顔料である。しかしながら、ステップ(3a)で使用されるベースコート組成物は、代替的に、そこに存在する少なくとも1つの非黒色着色顔料とは異なる少なくとも1つのさらなる顔料を含んでよい。そのようなさらなる顔料の例は、白色顔料を含む他の着色顔料及び/又は効果顔料である。しかしながら、効果顔料は存在しないのが好ましい。
【0087】
好ましくは、本発明の方法のステップ(3a)において使用されるトップコート組成物中に存在する少なくとも1つの非黒色着色顔料の質量%での量は、各場合においてトップコート組成物の総固形分に基づいて、そこに含まれる他の任意のさらなる顔料の質量%での量よりも多い。
【0088】
好ましくは、トップコート組成物中に存在する顔料の総量は、トップコート組成物の総固形分に基づいて、多くても30質量%、より好ましくは多くても20質量%の範囲にある。
【0089】
好ましくは、トップコート組成物中に存在する少なくとも1つの非黒色着色顔料は、各場合においてトップコート組成物の総固形分に基づいて、0.01から5.00質量%の範囲の量、より好ましくは0.01から3.50質量%、さらにより好ましくは0.01から2.50質量%、特に0.02から1.50質量%、最も好ましくは0.03から1.00質量%の範囲の量でそこに含有される。
【0090】
好ましくは、トップコート組成物の総固形分は、各場合においてトップコート組成物の総質量に基づいて、10から65質量%、より好ましくは15から60質量%、さらにより好ましくは20から50質量%、特に25から45質量%の範囲にある。
【0091】
トップコート組成物は、好ましくは(少なくとも1つの非黒色着色顔料の他に)少なくとも1つのバインダー、より好ましくはバインダーとしての少なくとも1つのポリマー(c1)を含んでいる。成分(a1)及び(b1)に関連して上述した架橋剤を含む同じバインダーを、成分(c1)として使用することも可能である。
【0092】
ステップ(3b)及びクリアコート組成物
任意のステップ(3b)によれば、さらなるコーティング組成物が、ステップ(2)の後に得られた基板上に存在する第2コーティング膜に塗布され、任意のステップ(2)が実施される場合には、第2コーティング膜に隣接する第3コーティング膜が形成され、コーティング組成物はクリアコート組成物であり、ステップ(3b)の後に得られる第3コーティング膜は形成された多層コーティングシステムの最外膜である。クリアコートコーティング組成物は、いかなる黒色顔料も含んでいない。ステップ(3b)で使用されるクリアコート組成物は、溶媒系(非水性)であっても水性であってもよく、好ましくは溶媒系である。
【0093】
クリアコート組成物は無着色であってもよく、すなわち、黒色顔料を含有しないだけでなく、顔料を全く含まなくてもよい。しかしながら、クリアコート組成物は、代替的に、着色顔料及び/又は効果顔料(着色顔料の場合、黒色顔料以外の顔料)、好ましくは着色顔料を、硬化後のクリアコートの所望の透明度を妨げないような量で含有していてよい。例えば、クリアコート組成物は、各場合においてクリアコート組成物の総固形分に基づいて、少なくとも1つの着色顔料を最大7.5質量%まで、好ましくは最大5.0質量%まで、より好ましくは最大2.5質量%まで、なおより好ましくは最大1.5質量%まで含有していてよい。
【0094】
好ましくは、ステップ(3b)は、ステップ(2)の後に得られた第2コーティング膜を硬化させる前に実施される。
【0095】
好ましくは、クリアコート組成物の総固形分は、各場合においてクリアコート組成物の総質量に基づいて、10から65質量%、より好ましくは15から60質量%、さらに好ましくは20から50質量%、特に25から45質量%の範囲にある。
【0096】
クリアコート組成物は、好ましくは少なくとも1つのバインダー、より好ましくは少なくとも1つのポリマー(c1)をバインダーとして含む。成分(a1)及び(b1)に関連して上述した架橋剤を含む同じバインダーを、成分(c1)として使用することも可能である。
【0097】
ステップ(3a)又は(3b)で塗布されるクリアコート又はトップコート組成物
クリアコート又はトップコートコーティング組成物は、少なくとも1つのバインダー、より好ましくは少なくとも1つのポリマー(c1)をバインダーとして含むことができる。クリアコート又はトップコートコーティング組成物は好ましくは2K-組成物であるため、それは好ましくは平均2個以上のOH-基及び/又はアミノ基及び/又はカルバメート基、より好ましくはOH-基を有する少なくとも1つのポリマー(c1)と、少なくとも1つのさらなるポリマーとして、架橋剤として遊離NCO基を有する少なくとも1つのポリイソシアネートとを含む。
【0098】
好ましくは、少なくとも1つの好ましいOH官能性ポリマー(c1)は、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された好ましくは800から100000g/molの間、より具体的には1000から75000g/molの間の質量平均分子量Mwを有している。
【0099】
特に好ましい成分(c1)は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。上で概説されたように、これらの用語は、いずれの場合において、ホモポリマー及びコポリマーの両方を包含する。
【0100】
適切なポリエステルは、例えばEP-A-0994117及びEP-A1273640に記載されている。ポリウレタンポリオールは、好ましくはポリエステルポリオールプレポリマーと、適切なジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートとの反応によって調製され、例えばEP-A-1273640に記載されている。好ましくは、少なくとも1つのOH官能性ポリマー(c1)は、少なくとも1つのOH官能性(メタ)アクリルコポリマー及び/又は少なくとも1つのOH官能性ポリエステル、好ましくは少なくとも1つのOH官能性(メタ)アクリルコポリマーである。
【0101】
好ましくは、少なくとも1つのOH官能性ポリマー(c1)は、30~400mgKOH/g、より詳細には100~300mgKOH/gの範囲のOH価を有する。DIN EN ISO 11357-2(2019-03)に従ったDSC測定によって測定されるこのポリマーのガラス転移温度は、好ましくは-150~100℃の間、より好ましくは-120℃~80℃の間である。
【0102】
適切な架橋剤は、平均2個以上のNCO-基を有する有機成分である。架橋剤として使用される少なくとも1つの有機成分は、好ましくは、三量化、二量化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成及び/又はアロファナート形成によって脂環式ポリイソシアネート(cycloaliphatic polyisocyanate)から誘導される脂環式構造(cycloaliphatic structure)及び/又は親構造を有する。代替的又は追加的に、架橋剤として使用される少なくとも1つの有機成分は、好ましくは、三量化、二量化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成及び/又はアロファナート形成によって非環状脂肪族ポリイソシアネート(acyclic aliphatic polyisocyanate)から誘導される非環状脂肪族構造及び/又は親構造を有している。非環状脂肪族ポリイソシアネート(任意に親構造として機能する)は、好ましくはそれ自体公知の置換又は非置換の脂肪族ポリイソシアネートである。例としては、テトラメチレン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサン1,6-ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ドデカン1,12-ジイソシアネート、及び前述のポリイソシアネートの混合物が挙げられる。脂環式ポリイソシアネート(任意に親構造として機能する)は、好ましくはそれ自体公知の置換又は非置換の脂環式ポリイソシアネートである。好ましいポリイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート、シクロブタン1、3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1、3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1、4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2、4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2、6-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1、3-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1、4-ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン2、4’-ジイソシアネート、4、4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えば、Bayer AG製のDesmodur(登録商標)W)、及び前述のポリイソシアネートの混合物が挙げられる。
【0103】
第2ベースコート又はトップコート組成物中に存在する非黒色着色顔料、及び前記顔料を含む顔料ペースト
以下、本発明で使用される非黒色着色有機顔料について、さらに説明する。
【0104】
好ましくは、第2ベースコート組成物中又はトップコート組成物中のいずれかに存在する少なくとも1つの非黒色着色顔料は、青色及び/又は緑色及び/又は紫色及び/又は赤色顔料、より好ましくは青色及び/又は緑色及び/又は紫色顔料、なおより好ましくは青色及び/又は緑色顔料、特に青色顔料である。好ましくは、それは、第2ベースコート又はトップコート組成物中に存在する唯一の着色顔料であり、さらに好ましくは、それは、第2ベースコート又はトップコート組成物中に存在する唯一の顔料である。
【0105】
第2ベースコート組成物又はトップコート組成物のいずれかに存在する少なくとも1つの非黒色着色顔料は、無機又は有機青色顔料などの無機又は有機顔料であってよい。Heucodur(登録商標)Blue 550などの適切な無機青色顔料が市販されている。しかしながら、それは有機顔料、特に有機青色顔料であるのが好ましい。好ましくは、少なくとも1つの本発明に使用される非黒色顔料は、フタロシアニン顔料である。最も好ましいのは、青色顔料番号15:1、15:2、15:3、15:4、及び15:6、特に15:1(P.B.15:1、P.B.P.B.15:2、P.B.15:3、P.B.15:4、及びP.B.15:6)である。適切な有機青色顔料も市販されている。例としては、Palomar(登録商標)Blue 15:1-248-4806及びPalomar(登録商標)Blue 15:1-248-4816が挙げられる。
【0106】
好ましくは、第2ベースコート組成物又はトップコート組成物のいずれかに存在する少なくとも1つの非黒色着色有機顔料は、10nmから950nm未満、好ましくは25nmから900nm、より好ましくは30nmから850nm、特に40nmから800nm超の範囲の体積平均粒子径を有している。
【0107】
好ましくは、第2ベースコート組成物又はトップコート組成物のいずれかに存在する少なくとも1つの非黒色着色有機顔料は、10nmから750nm、好ましくは25nmから500nm、より好ましくは30nmから350nm、特に40nmから300nmの範囲のZ平均粒子径を有している。
【0108】
好ましくは、第2ベースコート組成物又はトップコート組成物のいずれかに存在する少なくとも1つの非黒色着色有機顔料は、10nmから700nm、好ましくは25nmから500nm、より好ましくは30nmから400nm、特に50nmから350nmの範囲の数値ベースのメジアン一次粒子径(dN、50%)を有している。数値ベースのメジアン粒子径(dN、50%)という用語は、当業者には既知のパラメータである。小文字の「d」で表示された特性変数は、50%百分位数が中央値に対応する累積分布曲線の百分位数(50%)である。表示「N」は、数値ベースの分布に関係する。
【0109】
体積平均粒子径、Z平均粒子径、数値ベースのメジアン一次粒子径は、以下の「方法」セクションで説明する方法に従ってDLSによって決定される。
【0110】
少なくとも1つの非黒色着色顔料を含む顔料ペーストは、第2ベースコート組成物又はトップコート組成物を調製するために使用される。これら2つの組成物のそれぞれに使用される顔料ペーストは、第2ベースコート組成物が水性であり、トップコートコーティング組成物が非水性である場合、互いに異なっていてよい。それらはまた、これらの組成物の両方が非水性である場合、同一であってよい。それぞれの場合の顔料ペーストは、好ましくは、顔料を分散/粉砕するための少なくとも1つの分散剤及び/又は粉砕樹脂を含有する。顔料ペースト内に存在する本発明に使用される少なくとも1つの非黒色着色顔料は、好ましくは、その体積平均粒子径を1000nm未満に減少させるためにミルで粉砕される。粉砕は、好ましくは、Z平均粒子径及び数値ベースのメジアン一次粒子径の上述した好ましい範囲を達成するためにも行われる。粉砕は、好ましくは、以下の言及されるヘイズ値を達成するためにも実施される。粉砕は、0.5mm以下、例えば0.4mm及び/又は0.3mmの直径を有する粉砕ビーズを使用して実施されることが好ましい。第1ベースコート組成物に存在する少なくとも1つの黒色顔料の顔料ペーストを調製する場合、第1ベースコート組成物に組み込む前に、前記黒色顔料の体積平均粒子径、Z平均粒子径、及び数値ベースのメジアン一次粒子径、ならびにヘイズの少なくとも1つを低減することが望ましい場合に、同じ粉砕条件を使用することができる。特に適切な粉砕条件は、実施例から明らかである。
【0111】
好ましくは、第2ベースコート組成物又はトップコート組成物を調製するために使用される、少なくとも1つの非黒色着色顔料を含む顔料ペーストは、20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、特に7.5%未満、最も好ましいのは5%以下のヘイズを有している。「ヘイズ」という用語は、当業者には既知である。ヘイズは、ASTM D 1003に定義されるように、透明度の測定値である。本発明に用いられる(及び比較的に用いられる)顔料ペーストのヘイズを測定する方法は、以下の「方法」セクションに記載されている。
【0112】
任意のステップ(4)
上で概説されたように、好ましくは、任意のステップ(2)は、ステップ(1)の後に得られた第1コーティング膜を硬化させる前に実施され、ステップ(3a)は、ステップ(1)の後に得られた第1コーティング膜を硬化させる前に実施され、ステップ(3b)は、ステップ(2)の後に得られた第2コーティング膜を硬化させる前に実施される。
【0113】
好ましくは、本発明の方法は、ステップ(3a)又は(3b)の後、及びステップ(4)の前に実施されるステップ(3c)をさらに含む。前記ステップ(3c)においては、ステップ(3a)又は(3b)の後に得られた第3コーティング膜は、任意の硬化ステップ(4)を実施する前に、好ましくは1~20分の間、より好ましくは2~15分の間、特に5~10分の間、フラッシュオフされる。好ましくは、ステップ(3c)は、40℃を超えない温度で、より好ましくは18から30℃の範囲の温度で実施される。
【0114】
本発明の方法は、追加のステップ(4)を任意に含んでよく、好ましくは、追加のステップ(4)を含み、すなわち、
(4)ステップ(1)及び(3a)又はステップ(1)、(2)及び(3b)で塗布されたすべてのコーティング膜を共同硬化、すなわち同時に硬化させて、少なくとも第1及び第2コーティング層を含んでいて第2コーティング層が形成された多層コーティングシステムの最外層である硬化多層コーティングシステム、又は、少なくとも第1、第2及び第3コーティング層を含んでいて第3コーティング層が形成された多層コーティングシステムの最外層である硬化多層コーティングシステム、を得るステップ。
【0115】
得られた各硬化コーティング膜は、コーティング層を呈する。
【0116】
好ましくは、ステップ(4)は、150℃未満、好ましくは130℃未満の温度、特に15から110℃又は15から90℃の範囲の温度で、5から45分の間、好ましくは20から45分の間、特に25から35分の間実施される。
【0117】
本発明の多層コーティングシステム
本発明のさらなる主題は、任意にプレコートされた基板上に存在する多層コーティングシステムであり、これは本発明の方法によって得られ得る。
【0118】
本発明の方法に関連して上述したすべての好ましい実施形態は、前述の本発明のコーティング基板に関しても好ましい実施形態である。
【0119】
好ましくは、本発明の方法によって得られ得る本発明の多層コーティングシステムは、硬化後、少なくとも250、好ましくは少なくとも270の漆黒(Mc)値を有し、及び/又はその黒色(My)値を好ましくは少なくとも1%超える漆黒(Mc)値を有する。黒色度及び漆黒度を測定する方法は、以下の「方法」セクションに記載されている。
【0120】
「黒色度」(My)及び「漆黒度」(Mc)という用語は、当業者に知られており、それによって「黒色」の色品質が定量化され得るパラメータである。黒色度(My)は、反射率に直接関連する黒さの程度の尺度であり、例えばDIN 55979(04-1989)で定義されている。黒色度(My)は、一般式My=100log(Yn/Y)を用いて定量化されることができる。漆黒度(Mc)は、K.Lippok-Lohmer(K.Lippok-Lohmer、Farbe und Lack、92、1024頁、1986)によって開発された色依存の黒色値であり、DIN 53235-1(06-2005)及びDIN 53235-2(06-2005)にも言及されている。漆黒度(Mc)は、一般式Mc=100[log(Xn/X)-log(Zn/Z)+log(Yn/Y)]を用いて定量化されることができる。X、Y、Zは測定される試料のCIE三刺激値である。Xn、Yn、Znは光源の三刺激値である。McとMyの差、すなわちMc-Myがアンダートーン(dM)である。dM<0の場合、アンダートーンは茶色/赤みがかっている(My>Mc)。dMが>0の場合、黒は青みがかったアンダートーンを示す(My<Mc)。
【0121】
本発明のコーティング基板
本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって得られ得る、コーティングされた基板である。
【0122】
本発明の方法及び本発明の多層コーティングシステムに関連して上述した全ての好ましい実施形態は、前述の本発明コーティング基板に関する好ましい実施形態でもある。
【0123】
本発明の使用
本発明のさらなる主題は、着色コーティング組成物の使用であって、
該着色コーティング組成物は、いかなる黒色顔料も含まず、コーティング組成物の総固形分に基づいて、0.01から7.50質量%の範囲の量で、1000nm未満の体積平均粒子径を有する少なくとも1つの非黒色着色顔料を含み、
前記少なくとも1つの非黒色着色顔料は、
硬化後に得られる多層コーティングシステムの漆黒度(Mc)を、漆黒度(Mc)が硬化した多層コーティングシステムの黒色度(My)を超える程度、好ましくは少なくとも1%超える程度まで高めるために、多層コーティングシステムを調製する方法のステップ(2)で第2ベースコート組成物として、あるいは、ステップ(3a)でトップコート組成物として、任意にプレコートされた基板上へのコーティング組成物に、顔料ペーストの形態で組み込まれる、着色コーティング組成物の使用。
【0124】
本発明の方法、本発明の多層コーティングシステム、及び本発明のコーティングされた基板に関連して上述したすべての好ましい実施形態は、前述の本発明の使用に関しても好ましい実施形態である。
方法
【0125】
1.不揮発性画分の決定
総固形分を含む固形分量(不揮発分、固形分率)は、DIN EN ISO 3251:2019-09に基づいて、110℃で60分間で測定される。
【0126】
2.ヘイズ測定
ヘイズ測定の対象となる顔料ペーストは、脱イオン水(水性顔料ペーストの場合)又は酢酸n-ブチル(溶媒系顔料ペーストの場合)で希釈され、その後測定に使用される適切な希釈試料が提供される。測定は、顔料ペーストの粉砕から24時間以内に行われる。ヘイズを測定する装置として、Byk-Gardner社から入手可能なHaze-gard I装置が使用された。装置は、溶液ベースの石英キュベットフローサンプルホルダーで、参照標準として脱イオン水又は酢酸n-ブチルを使用して校正される。測定には500ミクロンの光路長セルが使用される。測定は最大吸光度の波長で17.5%±1.0%の透過率で行われる。希釈後の試料の透過率が低すぎることが判明した場合は、試料は17.5%±1.0%の透過率に達するまでさらに希釈される。
【0127】
3.粒子径特性
粒子径の様々なパラメータが測定される。すべてのパラメータは、DLS粒子径測定(動的光散乱測定)により測定される。DLS測定は、顔料ペーストを粉砕してから24時間以内に行われる。Z平均粒子径、体積平均粒子径(V平均)、ならびにdN、50%、dN、10%とdN、90%パラメータがDLSによって測定される。dN、50%、dN、10%及びdN、90%パラメータは、強度の重み付けを使用して決定される。各ペーストの各パラメータは4回の試行で決定され、与えられた値はこれら4回の試行の平均を表している。粒子径分析を受ける顔料ペーストは、脱イオン水(水性顔料ペーストの場合)又は酢酸n-ブチル(溶媒系顔料ペーストの場合)で希釈され、その後に分析に供される適切な希釈試料が提供される。水性顔料ペーストの場合、各ペーストは、1:100の最初の希釈で脱イオン水に希釈され、次にその溶液は1:50にさらに希釈される。したがって、合計の希釈度は(各場合において元のペーストの)1:5000である。溶媒系顔料ペーストの場合、各ペーストは、1:100の最初の希釈で酢酸n-ブチルに希釈され、次にその溶液は1:50にさらに希釈される。したがって、合計の希釈度は(各場合において元のペーストの)1:5000である。各試料は、セルとしてガラスキュベット(ガラスキュベットPCS1115)に移される。次に、試料をDLS測定システムに投入する。Malvern Zetasizer NanoシリーズがDLS粒子径分析装置として使用され、これはMalvern社から入手可能である(モデルZEN1690が使用された)。各試料は、粒子径分析を開始する前に、2分間チャンバー内で平衡化させる。その後、データが収集される。
【0128】
4.色値(L、a、b)の測定
色空間又はL色モデル(すなわちCIELAB色モデル)は、当業者には既知である。L色モデルは、例えば、DIN EN ISO/CIE 11664-4:2020-03で標準化されている。L色空間における各認識可能な色は、3次元座標系における座標{L、a、b}を有する特定の色位置によって記述される。a軸は色の緑色又は赤色の部分を表し、負の値は緑色、正の値は赤色を表す。b軸は色の青色又は黄色の部分を表し、負の値は青色、正の値は黄色を表す。したがって、数が低いほど青みがかった色であることを示す。L軸はこの平面に垂直な軸で、明るさ(明度)を表す。L軸は端点黒(L=0)と白(L=100)を有している。したがって、値が低いほど暗色を示す。(硬化後の)コーティング基板の色値L、a及びbは、ASTM E 284-81aに従って、硬化を含む調製後に決定される。値は、BYK-mac i(BYK-Gardner)を利用して測定される。硬化した試料の分析は、装置BYK-mac i分光光度計標準操作手順で、色、輝き、粒状性の測定に従って行われる。完全に硬化した分析対象の試料は、マイクロファイバークロスで拭き取られる。次に、BYK-mac i装置を基板表面に置き、D65光源を使用して15°、15°、25°、45°、75°及び110°の角度で測定を行い、CIELab設定を使用して各角度についてデータを記録する。この測定は、少なくとも3つの異なる位置で個々のパネルで行われ、値は試行の平均で報告される。以下実験部で報告される色値L、a、bは、110°の角度に関する。
【0129】
5.漆黒度(Mc)と黒色度(My)の測定
コーティングされた基板の漆黒度と黒色度は、硬化を含む調製後に測定される。黒色度(My)は、反射率に直接関連する黒さの程度の尺度であり、例えばDIN 55979(04-1989)で定義されている。試料の黒色度(My)は、一般式My=100log(Yn/Y)を使用することによって、適切な分光光度計を利用して色データを得ることにより定量化されることができる。漆黒度(Mc)は、K.Lippok-Lohmer(K.Lippok-Lohmer、Farbe und Lack、92、1024頁、1986)によって開発された色依存の黒色値であり、DIN 53235-1(06-2005)及びDIN 53235-2(06-2005)にも言及されている。漆黒度(Mc)は、一般式Mc=100[log(Xn/X)-log(Zn/Z)+log(Yn/Y)]を使用することによって、適切な分光光度計の利用により色データを得ることにより定量化されることができる。X、Y、Zは測定される試料のCIE三刺激値である。Xn、Yn、Znは光源の三刺激値である。測定のための光源はD65光源(シミュレートされた昼光CIE規格)である。標準2°標準オブザーバは相対輝度について正規化され、Yn=100でXn=95.047及びZn=108.883となる。また、Xn=94.8110及びZn=107.304の補足的な10°オブザーバも報告されている。この値は、装置BYK-mac i(BYK-Gardner)を利用することによって測定されている。硬化した試料の分析は、BYK-mac i分光光度計の標準操作手順で、色、輝き、粒状性の測定に従って行われる。完全に硬化した分析対象の試料は、マイクロファイバークロスで拭き取られる。次に、BYK-mac i装置を基板表面に置き、D65光源を使用して15°、15°、25°、45°、75°及び110°の角度で測定を行い、CIELab設定を使用して各角度についてデータを記録する。以下実験部で報告されるMy値及びMc値は、75°の角度での測定に関する。McとMyの差、すなわちMc-Myがアンダートーン(dM)である。dM<0の場合、アンダートーンは茶色/赤みがかっている(My>Mc)。dMが>0の場合、黒色は異なる色のアンダートーンを示し(My<Mc)、アンダートーンの色は使用される非黒色着色顔料に依存する。ニュートラルから青色及び/又は緑色のアンダートーン、特に青色のアンダートーンが特に望ましい。
【0130】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、その範囲を限定するものとして解釈されるものでない。「質量部(Pbw)」は質量部を意味する。他に定義されていない場合、「部」は「質量部」を意味する。
【0131】
1.顔料ペーストの調製
1.1 水性顔料ペーストP1~P7及びP2aの調製
表1に示される顔料ペーストは、表1に記載された成分及びその量から、以下の方法で調製された:
【0132】
顔料ペーストP1
黒色顔料ペーストP1は、分散剤1、プロピレングリコールn-ブチルエーテル及び脱イオン水の撹拌混合物にPaliogen(登録商標)Black L0086を添加することによって製造された。得られた懸濁液は、カウレスブレードを使用して5分間攪拌される。20質量%ジメチルエタノールアミン水溶液を使用して、pHを8.1に調整する(Starter 300 pH Portable pH meter(Ohaus Corporation、Parsippany、New Jersey、USA)で測定)。次に、この懸濁液を混合ジャーに移し、0.9~1.1mmYTZ粉砕媒体(Industries製)を添加する(媒体:懸濁液の質量比2:1)。次に、懸濁液をLAUシェーカー(LAU分散機DAS200-LAU GmbH)を使用して4時間撹拌する。0.9~1.1mmYTZ媒体を重力ろ過を使用して分離した。回収したペーストを別の混合ジャーに移し、ビーズ対ペーストの質量比2:1で0.3~0.4mmYTZ粉砕媒体を注入し、LAUシェーカー(LAU分散機DAS200-LAU GmbH)を使用して9時間撹拌した。得られた最終ペースト製品はろ過され、0.3~0.4mm媒体を除去され、顔料ペーストP1としてそれ以上の変性を加えずに使用される。
【0133】
顔料ペーストP2a
青色顔料ペーストP2aは、分散剤1、プロピレングリコールn-ブチルエーテル及び脱イオン水の撹拌混合物にPalomar(登録商標)Blue 15:1-248-4816(Sun Chemical)を添加することにより製造された。得られた懸濁液は、カウレスブレードを使用して5分間攪拌される。20質量%ジメチルエタノールアミン水溶液を使用して、pHを8.1に調整する(Starter 300 pH Portable pH meter(Ohaus Corporation、Parsippany、New Jersey、USA)で測定)。次に、この懸濁液を混合ジャーに移し、2:1の質量比(媒体:懸濁液)で0.3~0.4mmYTZ粉砕媒体(Industries製)を添加する。懸濁液をLAUシェーカー(LAU分散機DAS200-LAU GmbH)を使用して10時間撹拌する。得られたペーストは、重力ろ過によって0.3~0.4mmYTZ媒体から分離され、顔料ペーストP2aとしてそれ以上の変性を加えずに使用される。
【0134】
顔料ペーストP2b
青色顔料ペーストP2baは青色顔料ペーストP2aのさらなる変性によって製造された。5.7部の分散剤2を攪拌下で14.3部の脱イオン水で希釈する。次いで、この樹脂溶液を、攪拌下で80部の顔料ペーストP2aにゆっくりと添加する。次いで、得られたペーストは、顔料ペーストP2bとして、それ以上の変性を加えずに使用される。
【0135】
顔料ペーストP3
青色顔料ペーストP3は、分散剤3を大型混合容器に加え、当該分散剤を脱イオン水で希釈し、続いて青色顔料Palomar(登録商標)Blue 15:1-248-4806(Sun Chemical)を少量ずつ加えることにより製造された。このスラリーを均質になるまでせん断し、次いで脱イオン水で希釈する。次いで、懸濁液を、0.9-1.1YTZビーズ(Fox industries)を含有するEigerビーズミル(EMI)に移し、275Whr/kgに処理した。次いで、得られたペーストは、ビーズを除去した後、顔料ペーストP3として、それ以上の変性を加えずに使用される。
【0136】
顔料ペーストP4
青色顔料ペーストP4は、分散剤4、プロピレングリコールn-ブチルエーテル及び脱イオン水の攪拌混合物にPalomar(登録商標)Blue 15:1-248-4806(Sun Chemical)を添加することにより製造された。得られた懸濁液は、カウレスブレードを使用して5分間攪拌される。20質量%ジメチルエタノールアミン水溶液を使用して、pHを8.1に調整する(Starter 300 pH Portable pH meter(Ohaus Corporation、Parsippany、New Jersey、USA)で測定)。次に、この懸濁液を混合ジャーに移し、2:1の質量比(媒体:懸濁液)で0.3~0.4mmYTZ粉砕媒体(Industries製)を添加する。懸濁液をLAUシェーカー(LAU分散機DAS200-LAU GmbH)を使用して10時間撹拌する。得られたペーストは、重力ろ過によって0.3~0.4mmYTZ媒体から分離される。5.7部の分散剤2を攪拌下で14.3部の脱イオン水で希釈する。次いで、この樹脂溶液を、80部の上記で特定された得られたペーストに攪拌下でゆっくりと添加する。次いで、得られたペーストは、ビーズを除去した後、顔料ペーストP4として、それ以上の変性を加えずに使用される。
【0137】
顔料ペーストP5
青色顔料ペーストP5は、大型混合容器に分散剤5を加え、当該分散剤を脱イオン水で希釈し、次いで湿潤添加剤、ポリプロピレングリコール及び乳化剤を加えることにより製造された。次に、青色顔料Heucodur(登録商標)Blue 550(Heubach社製)を少量ずつ添加した。このスラリーは、カウレスブレードを使用して均質になるまでせん断された。次いで得られたペーストを脱イオン水でさらに希釈し、よく混合し、0.9~1.1mmYTZビーズ(Fox industries)で処理するためにEigerビーズ(EMI)ミルに移し、2:1の質量比(媒体:ペースト)で300Whr/kgのエネルギーまで粉砕する。次いで、得られたペーストは、ビーズを除去した後、顔料ペーストP5として、それ以上の変性を加えずに使用される。
【0138】
顔料ペーストP6
黄色顔料ペーストP6は、大型混合容器に分散剤3、脱イオン水、プロピレングリコールn-プロピルエーテルを加え、よく混合し、20質量%ジメチルエタノールアミン水溶液を使用して、pHを8.1に調整する(Starter 300 pH Portable pH meter(Ohaus Corporation、Parsippany、New Jersey、USA)で測定)ことによって製造された。この溶液にBayfast(登録商標)Yellow Y-5688(Bayer)を攪拌下で少量ずつ添加し、均質になるまで混合する。次に、この溶液を脱イオン水で希釈し、20質量%ジメチルエタノールアミン水溶液を使用して、pHを8.1に再び調整する(Starter 300 pH Portable pH meter(Ohaus Corporation、Parsippany、New Jersey、USA)で測定)。顔料ペーストを、媒体対ペーストの質量比2:1で0.9~1.0mmYTZビーズ(Fox industries)を含有するEigerビーズミル(EMI)に移し、175Whr/kgのエネルギーまで粉砕する。得られたペーストは、ビーズを除去した後、顔料ペーストP6としてそれ以上の変性を加えずに使用される。
【0139】
顔料ペーストP7
黄色顔料ペーストP7は、大型混合容器に分散剤3、脱イオン水、プロピレングリコールn-プロピルエーテル及びヒュームドシリカを加え、よく混合することによって製造された。この溶液にIrgazin(登録商標)Yellow 3RLTN(BASF SE)を攪拌下で少量ずつ添加し、均質になるまで混合する。次に、混合物を脱イオン水で希釈し、媒体対ペーストの質量比2:1で0.9~1.0mmYTZビーズ(Fox industries)を含有するEigerビーズミル(EMI)に移し、190Whr/kgのエネルギーまで粉砕する。得られたペーストは、ビーズを除去した後、顔料ペーストP7としてそれ以上の変性を加えずに使用される。
【0140】
分散剤1は、42.5質量%の(メタ)アクリル樹脂固形分、31.3質量%のエチレングリコールモノブチルエーテル、26.2質量%の脱イオン水から構成されている。
【0141】
分散剤2は、27.0質量%のウレタン樹脂、6.0質量%のエチレングリコールモノブチルエーテル、67.0質量%の脱イオン水から構成され、少量のジメチルエタノールアミンで調整されている。
【0142】
分散剤3は、35.5質量%の樹脂固形分と64.5質量%の溶媒から構成されている。分散剤の溶媒含有量は以下の通りである:28.40質量%のプロピレングリコールn-プロピルエーテル、6.12質量%のメチルイソアミルケトン(MIAK)、28.45質量%の脱イオン水及び1.53質量%のミネラルスピリット。分散剤中に存在する樹脂は、米国特許第5、270、399号の実施例5に開示されているように調製される。
【0143】
分散剤4は、61質量%の樹脂固形分と39質量%の溶媒から構成されている。樹脂は、PEG変性ポリエステルベースのスターポリマーである。
【0144】
分散剤5は、45.3質量%の(メタ)アクリル樹脂固形分と54.6質量%の脱イオン水から構成され、少量のジメチルエタノールアミンで調整されている。
【0145】
湿潤添加剤は、市販の湿潤添加剤である。乳化剤は、市販の乳化剤である。使用されるポリプロピレングリコールも市販のものである。
【0146】
【表1】
【0147】
上記で概説されたように、顔料ペーストP1中に存在する黒色顔料1は、Paliogen(登録商標)Black L0086である。顔料ペーストP2a及びP2bはそれぞれ青色顔料1を含有し、これはPalomar(登録商標)Blue 15:1-248-4816である。顔料ペーストP3及びP4は、それぞれ青色顔料2を含有し、これはPalomar(登録商標)Blue 15:1-248-4806である。顔料ペーストP5中に存在する青色顔料3は、Heucodur(登録商標)Blue 550である。黄色顔料1はBayfast(登録商標)Yellow Y-5688である。黄色顔料2はIrgazin(登録商標)Yellow 3RLTNである。
【0148】
顔料ペーストP1、P2a、P2b及びP3からP7は、粉砕処理を含むそれらの調製後に、粒径分析によって分析される。さらに、それらのヘイズが測定される。表2に示されるヘイズの測定及び粒子径特性の測定の両方は、「方法」のセクションに開示された方法に従って実施された。測定値を表2に示す。顔料ペーストP2aについては、値が決定されていない。
【0149】
【表2】
【0150】
1.2 溶媒系顔料ペーストP8及びP9の調製
表3に示された顔料ペーストは、表3に記載された成分及びそれらの量から、以下の方法で調製された:
【0151】
顔料ペーストP8
青色顔料ペーストP8は、Solsperse(登録商標)76500(Lubrizol)及びSolsperse 5000S(登録商標)(Lubrizol)を酢酸n-ブチル中で混合し、続いてPalomar(登録商標)Blue 248-4816(Sun Chemical)を均質になるまで完全に撹拌しながらゆっくりと添加することによって調製された。得られた混合物を酢酸n-ブチルでさらに希釈し、0.9~1.1のYTZ媒体(Fox Industries製)を含有するEigerビーズミル(EMI)に移し、500Whr/kg(媒体対混合物の質量比2:1)まで粉砕した。得られたペーストを分離し、0.3~0.4mmYTZ媒体(Fox Industries製)を含有するEigerミル(EMI)を用いて第2粉砕処理を行うために移し、3000Whr/kg(媒体対混合物の質量比2:1)まで処理した。粉砕が完了した後、得られたペーストは、酢酸n-ブチルを用いてさらに還元され、ビーズを除去した後、顔料ペーストP8としてそれ以上の変性を加えずに使用される。
【0152】
顔料ペーストP9
青色顔料ペーストP9は、Ekfa(登録商標)PX 4350とEkfa(登録商標)MI 6745を酢酸n-ブチル中で混合し、続いてHeliogen(登録商標)Blue L6600Fを均質になるまで完全に撹拌しながらゆっくりと添加することによって調製された。得られた混合物を酢酸n-ブチルでさらに希釈し、0.9~1.1YTZ媒体(Fox Industries製)を含有するEigerビーズミル(EMI)に移し、500Whr/kg(媒体対混合物の質量比2:1)まで粉砕した。得られたペーストを分離し、0.3~0.4mmYTZ媒体(Fox Industries製)を含有するEigerミル(EMI)を用いて第2粉砕処理を行うために移し、3500Whr/kg(媒体対混合物の質量比2:1)まで処理した。粉砕が完了した後、得られたペーストは酢酸n-ブチルを用いてさらに還元され、ビーズを除去した後、顔料ペーストP9としてそれ以上の変性を加えずに使用される。
【0153】
顔料ペーストP8、P9の配合を表3に示す。
【0154】
【表3】
【0155】
顔料ペーストP8には青色顔料1が含まれており、これはPalomar(登録商標)Blue 15:1-248-4816である。
【0156】
青色顔料4は、Heliogen(登録商標)Blue L6600F(青色15:6顔料;BASF SE)である。Solsperse(登録商標)76500は市販の分散剤(Lubrizol)、Solsperse(登録商標)5000sは市販の分散添加剤(Lubrizol)である。Ekfa(登録商標)MI 6745は市販の分散剤(BASF SE)、Ekfa(登録商標)PX 4350は市販の分散剤(BASF SE)である。
【0157】
顔料ペーストP8とP9は、粉砕処理を含むそれらの調製後に、粒子径分析によって分析された。さらに、それらのヘイズが測定される。表4に示されるヘイズの測定及び粒子径特性の測定の両方は、「方法」のセクションに開示された方法に従って実施された。測定値を表4に示す。
【0158】
【表4】
【0159】
1.3 追加の水性顔料ペーストP10~P12の調製
市販の黒色顔料を含む3種類の追加の顔料ペーストを調製した。P10とP11は両方とも、市販の有機アゾメチン黒色顔料、すなわちChromofine(登録商標)A-1103(Dainichiseika Chemicals)を含有していた。P12は、市販の無機黒色顔料、すなわちカーボンブラック顔料Monarch(登録商標)1300(Cabot)を含有していた。
【0160】
表4aに示された顔料ペーストは、表4aに記載された成分及びそれらの量から、以下の方法で調製された:
【0161】
顔料ペーストP10
黒色顔料ペーストP10は、分散剤1、プロピレングリコールn-ブチルエーテル及び脱イオン水の撹拌混合物に、Chromofine(登録商標)Azo BlackA-1103(Dainichiseika Chemicals)を添加することによって、製造された。得られた懸濁液は、カウレスブレードを使用して5分間攪拌された。20質量%ジメチルエタノールアミン水溶液を使用して、pHを8.1に調整する(Starter 300 pH Portable pH meter(Ohaus Corporation、Parsippany、New Jersey、USA)で測定)。次に、この懸濁液を混合ジャーに移し、質量比2:1(媒体:懸濁液)で0.9~1.1mmYTZ粉砕媒体(Industries製)を添加し、懸濁液をLAUシェーカー(LAU分散機DAS200-LAU GmbH)を使用して5時間攪拌した。重力ろ過を使用して0.9~1.1mmYTZ媒体を分離した。回収したペーストを別の混合ジャーに移し、ビーズ対ペーストの質量比2:1で0.3~0.4mmYTZ粉砕媒体を注入し、LAUシェーカー(LAU分散機DAS200-LAU GmbH)を使用して12時間撹拌した。得られた最終ペーストはろ過され、0.3~0.4mm媒体を除去され、顔料ペーストP10としてそれ以上の変性を加えずに使用される。
【0162】
顔料ペーストP11
黒色顔料ペーストP11は(0.3~0.4mmYTZ粉砕媒体を添加した後)、粉砕処理を12時間ではなく2時間だけ行った以外は、顔料ペーストP10と同じ方法で調製された。
【0163】
顔料ペーストP12
黒色顔料ペーストP12は、大型混合容器に分散剤3、脱イオン水、プロピレングリコールn-プロピルエーテルを加え、よく混合し、次いで20質量%ジメチルエタノールアミン水溶液を使用して、pHを8.1に調整することによって製造される。この溶液にMonarch(登録商標)1300(Cabot)を撹拌しながら少量ずつ添加し、均質になるまで混合した。次いで、この混合物を脱イオン水で希釈し、上記と同様の方法でpHを8.1に再び調整する。顔料ペーストは、0.9~1.0mmのビーズを含むEigerビーズ ミル(EMI)に移され、180Whr/kgのエネルギーまで粉砕される。
【0164】
【表5】
【0165】
上記で概説されたように、顔料ペーストP10及びP11に存在する黒色顔料2は、Chromofine(登録商標)A-1103(Dainichiseika Chemicals)である。顔料ペーストP12に存在する黒色顔料3は、Monarch(登録商標)1300(Cabot)である。分散剤1及び2は、前で既に説明した通りである。
【0166】
顔料ペーストP10~P12は、粉砕処理を含むそれらの調製後の粒子径分析により分析さた。さらに、それらのヘイズが測定された。表4bに示されるヘイズの測定及び粒子径特性の測定の両方は、「方法」のセクションに開示された方法に従って実施された。測定値を表4bに示す。
【0167】
【表6】
【0168】
2.水性ベースコート組成物の調製
水性顔料ペーストP2a及びP10~P12のうちの1つを利用することによって、多数の水性ベースコート組成物が調製された。表5aに記載された成分は、前記表で与えられた順序で、ディゾルバー中で撹拌されながら混合され、水性ベースコート組成物WBC2c及びWBC10~WBC12が調製された。
【0169】
水性顔料ペーストP1~P7のうちの1つを利用することによって、多数のさらなる水性ベースコート組成物が調製された。以下の表5及び6に記載された成分は、前記表で与えられた順序で、ディゾルバー中で撹拌されながら混合され、水性ベースコート組成物WBC1~WBC7及びMWBC0、MWBC2a~dならびにMWBC4a~cが調製された。表6による組成物のそれぞれを、脱イオン水(約25~75質量部の脱イオン水)により85.0±5.0Pの(スプレー)粘度にまで低下させた。
【0170】
以下で言及される樹脂ブレンド混合物は、以下のように調製された:(i)3.72部のLaponite(登録商標)粉末(BYK Chemie)を90.08部の脱イオン水にゆっくりと添加し、カウレスブレードを使用して45分間高剪断力下で混合した。次いで、3.5部のPluracol(登録商標)P1010 Polyol(BASF社製)を攪拌下で添加した。均質になったら、内容物を混合容器から保管容器に移し、2.7部の脱イオン水ですすぐ。(ii)16.7部の上記(i)の溶液を8.8部の脱イオン水で希釈した後、16.0部のポリウレタン樹脂を添加し、混合した。(iii)その後、(44質量%の樹脂固形分、54.7質量%の脱イオン水、1.33質量%のジメチルエタノールアミンを含有する)9.4部の(メタ)アクリルポリマーの水性分散剤、12.34部の36.0質量%のDaotan(登録商標)VTW 6462/36WA(Allnex)及び64.0質量%の脱イオン水の混合物、7.41部のCymel(登録商標)327(Allnex)を撹拌下にゆっくり添加した。(iv)得られた樹脂ブレンドを3.3部のプロピレングリコールn-ブチルエーテルで還元し、続いて0.94部の市販の添加剤を導入する。(v)42.3質量%の樹脂固形分及び53.7質量%のエチレングリコールモノブチルエーテルを含有する10.7部の分岐ポリエステル分散剤、及びジメチルエタノールアミン(20質量%)を含有する4.0質量部の水溶液を加え、その後、2.3部のプロピレングリコールn-ブチルエーテルを添加した。(vi)得られた混合物のpHをジメチルエタノールアミン(20質量%)を含有する水溶液で8.1に調整し、得られた生成物を樹脂ブレンド混合物として使用する。
【0171】
以下において言及されるポリウレタンは、27.0質量%のポリウレタン樹脂固形分、0.3質量%のn-ブチルアルコール、3.9質量%のメチルプロピルケトン、4.0質量%のn-メチルピロリドン及び64.8質量%脱イオン水を含有する水性混合液である。
【0172】
【表7】
【0173】
【表8】
【0174】
【表9】
【0175】
3.溶媒系トップコート組成物の調製
多数の溶媒系トップコート組成物は、溶媒系顔料ペーストP8及びP9の1つを使用することによって、又はSBCC0及びTC0の場合には顔料ペーストなしで調製されている。組成物は、それぞれ2K-組成物である。顔料ペーストP8又はP9は、まず「A」コンポ―ネント、すなわちE10CG081 Gと攪拌下で混合される。得られた混合物は、遊離NCO-基を有するポリイソシアネートである「B」成分(N52CG081)と混合された。E10CG081 GとN52CG081の両方が(BASF Corporation、Coatings Division、USAからProGloss(登録商標)2K4として)入手可能である。表7から明らかなように、このようにして溶媒系トップコート組成物SBCC0、SBCC8a、SBCC8b、SBCC8c、SBCC8d、SBCC9a、SBCC9b、SBCC9c及びSBCC9dを得た。示された顔料量は、各場合において、成分「A」プラス「B」の総固形分に基づいている。
【0176】
【表10】
【0177】
4.多層コーティングシステムの調製
4.1 2C1Bプロセスで着色溶媒系トップコート組成物を利用することによって得られる多層コーティングシステム
硬化したプライマーコートを有するスチールパネルを基板として使用した。有機黒色顔料を含有する顔料ペーストP1を利用することによって調製された水性ベースコートWBC1、又は有機黒色顔料を含有する顔料ペーストP11を利用することによって調製された水性ベースコートWBC11、又は無機カーボンブラック顔料を含有する顔料ペーストP12を利用することによって調製された水性ベースコートWBC12を、硬化時後の乾燥膜層厚が18~20μmとなる量でプライマーコート上にスプレーで塗布した。室温(23℃)で最大10分間フラッシュオフした後、溶媒系トップコート組成物SBCC0、SBCC8a、SBCC8b、SBCC8c、SBCC8d、SBCC9a、SBCC9b、SBCC9c及びSBCC9dの1つを、未硬化のベースコート膜上にウェットオンウェットで、硬化時後の乾燥膜層厚が45から55μmとなる量でスプレー塗布した。その後、塗布した両コート膜を130℃で30分間共同硬化させた。
【0178】
4.2 着色水性ベースコート組成物をミッドコートとして塗布した3C1Bプロセスによって得られる多層コーティングシステム
硬化したプライマーコートを有するスチールパネルを基板として使用した。有機黒色顔料を含有する顔料ペーストP1を利用することによって調製された水性ベースコートWBC1を、硬化時後の乾燥膜層厚が18~20μmとなる量で第1ベースコートとしてプライマーコート上にスプレーで塗布した。室温(23℃)で最大10分間フラッシュオフした後、水性ベースコート組成物MWBC0、MWBC2a、MWBC2b、MWBC2c、MWBC2d、MWBC4a、MWBC4b及びMWBC4cの1つを、未硬化の第1ベースコート膜上に第2ベースコートとしてウェットオンウェットで、硬化時後の乾燥膜層厚が9から11μmとなる量でスプレー塗布した。追加の対照実験では、そのような第2ベースコートは塗布されず、すなわち、この2C1B-対照実験では、第1ベースコートが唯一のベースコートである。室温(23℃)で最大10分間フラッシュオフした後、溶媒系トップコート組成物SBCC0を、未硬化第2ベースコート膜上又は対照実験の場合には第1ベースコート膜上の各々にクリアコートとしてウェットオンウェットで、硬化時後の乾燥膜層厚が45から55μmとなる量でスプレー塗布した。次に、塗布された3つ(又は2つ)のコーティング膜を全て130℃で30分間共同硬化させた。
【0179】
5.多層コーティングシステムでコーティングされた基板の特性
5.1 項目4.1で概説されたように、水性ベースコートWBC1又はWBC11又はWBC12でコーティングされ、続いて溶媒系トップコート組成物SBCC0、SBCC8a、SBCC8b、SBCC8c、SBCC8d、SBCC9a、SBCC9b、SBCC9c及びSBCC9dの1つでコーティングされた各基板は、その黒色度(My)及び漆黒度(Mc)値ならびに色値L、a及びbについて調査を受けた。これらの値の測定は、「方法」のセクションに開示された方法に従って実施された。測定値を表8a及び8b及び8cに示す。さらに、コーティングされた各基板は、追加的に(人間によって)視覚的に確認され、等級付け(等級1~6)された:
等級5=対照実験と比較して、色位置の改善がない、又は本質的にない(この場合、SBCC0として、WBC1、WBC11又はWBC12上に塗布されたSBCC0は顔料を含有せず、WBC1とWBC11の各々は有機黒色顔料を含有し、WBC12は無機カーボンブラック顔料を含有している)。
等級6=コーティングされた基板は、アンダートーンが強すぎて黒く見えない。
等級1~4=対照実験と比較した場合の色位置の改善、「1」が最も顕著な改善である。
【0180】
【表11】
【0181】
【表12】
【0182】
【表13】
【0183】
5.2 項目4.2で概説されたように、第1ベースコートとして水性ベースコートWBC1でコーティングされ、続いて第2ベースコートとして水性ベースコート組成物MWBC0、MWBC2a、MWBC2b、MWBC2c、MWBC2d、MWBC4a、MWBC4b及びMWBC4cの1つでコーティングされ、続いてクリアコートとして溶媒系トップコート組成物SBCC0でコーティングされた各基板は、その黒色度(My)及び漆黒度(Mc)値ならびに色値L、a及びbについて調査を受けた。これらの値の測定は、「方法」のセクションに開示された方法に従って実施された。測定値を表9a及び9bに示す。さらに、コーティングされた各基板は、追加的に(人間によって)視覚的に確認され、等級付け(等級1~6)された:
等級5=対照実験と比較して、色位置の改善がない、又は本質的にない(この場合、SBCC0又はMWBC0として、WBC1に塗布されるMWBC0に塗布されるSBCC0は顔料を含有せず、WBC1は有機黒色顔料を含有している)。
等級6=コーティングされた基板は、アンダートーンが強すぎて黒く見えない。
等級1~4=対照実験と比較した場合の色位置の改善、「1」が最も顕著な改善である。
【0184】
【表14】
【0185】
【表15】
【0186】
6.比較実験データ
WO2012/170230A1の開示を考慮し、それに沿ってさらなる比較実験を実施した:
黒色顔料及びさらなる追加顔料を含有する水性ベースコート組成物は、ベースコート組成物WBC1(有機黒色顔料を含有する顔料ペーストP1を含有する)又はWBC10及びベースコート組成物WBC2aもしくはWBC2c(顔料ペーストP2b又はP2aを含有する)、WBC3(顔料ペーストP3を含有する)、WBC4(顔料ペーストP4を含有する)、WBC5aとWBC5b(それぞれ顔料ペーストP5を含有する)ならびにWBC6及びWBC7(顔料ペーストP6又はP7を含有する)の1つとのブレンドを作ることによって調製される。言い換えれば、黒色顔料(P1から)とさらなる顔料(P2b、P2a、P3及びP5~P7から)の両方を1つの同じベースコート組成物中に含有するベースコート組成物が調製される。
【0187】
以下の表10~13、13a及び13bに記載した成分は、前記表で与えられた順序で、ディゾルバー中で撹拌されながら混合され、そこに示した水性ベースコート組成物ブレンドを調製した。表10~12は、実験の第1実行を表す。表13、13a及び13bは、実験の第2実行を表す。このようにして、ベースコート組成物ブレンドB1~B56が得られた。
【0188】
水性顔料ペーストP11を単独で又は顔料ペーストP2aと共に利用することによって、多数の追加の水性ベースコート組成物が調製されている。表13cに記載された成分は、前記表で与えられた順序で、ディゾルバー中で撹拌されながら混合され、水性ベースコート組成物RWBC1~RWBC5が調製される。
【0189】
次に、WO2012/170230A1に従って、これらの水性ベースコート組成物ブレンドを用いた2C1Bプロセスによって多層コーティングシステムが得られた:硬化したプライマーコートを有するスチールパネルを基板として使用した。水性ベースコートWBC1もしくはWBC10、又はブレンドB1~B56の1つ、又はRWBC1~RWBC5の1つを、硬化時後の乾燥膜層厚が18~20μmとなる量で、ベースコートとしてプライマーコート上にスプレー塗布した。室温(23℃)で最大10分間フラッシュオフした後、溶媒系トップコート組成物SBCC0又はTC0を、未硬化ベースコート膜の各々にクリアコートとしてウェットオンウェットで、硬化時後の乾燥膜層厚が45から55μmとなる量でスプレー塗布した。次に、塗布された両コーティング膜をそれぞれ130℃で30分間共同硬化させた。
【0190】
次にコーティングされた各基板は、その黒色(My)及び漆黒(Mc)値ならびに色値L、a及びbについて調査を受けた。これらの値の測定は、「方法」のセクションに開示された方法に従って実施された。測定値を表14~18に示す。さらに、コーティングされた各基板は、追加的に(人間によって)視覚的に確認され、等級付け(等級1~6)された:
等級5=対照実験と比較して、色位置の改善がない、又は本質的にない(この場合、SBCC0として、WBC1又はWBC10上に塗布されたSBCC0は顔料を含有せず、WBC1は有機黒色顔料を含有している)。
等級6=コーティングされた基板は、アンダートーンが強すぎて黒く見えない。
等級1~4=対照実験と比較した場合の色位置の改善、「1」が最も顕著な改善である。
【0191】
【表16】
【0192】
【表17】
【0193】
【表18】
【0194】
【表19】
【0195】
【表20】
【0196】
【表21】
【0197】
【表22】
【0198】
【表23】
【0199】
【表24】
【0200】
【表25】
【0201】
【表26】
【0202】
【表27】
【0203】
【表28】
【0204】
【表29】
【0205】
ベースコート組成物ブレンドB1~B14及びB19~、B53~B56、RWBC1~RWBC5に存在する顔料のブレンド及びWO2012/170230A1に開示されているような顔料のブレンドは、原理的に漆黒度(Mc)を高めることができることが分かる;しかしながら、これは、実験の第1実行のB9~B14及びB19~B28及びB31~B36をWBC1と比較すると分かるように、これはすべての場合に一般的に適用されない。漆黒度の増加は、例えば、ブレンドB52を利用することによって調製されたコーティング基板を、実験の第2実行のWBC1を利用することによって調製されたコーティング基板と比較したときに観察された(Mc=288.4対Mc=247.3)。しかし、このコーティングシステムの視覚的外観(色)は、カーボンブラックを含有するベースコート(図示せず)から調製されたシステムと比較して、依然として劣っていた。
【0206】
さらに、ブレンドB52を調製するために、水性ベースコートWBC4が使用され、これは低ヘイズ顔料ペーストP4を含有し、これは青色顔料2を含む。同じペーストP4を使用して、3C1Bプロセスにおいて追加の第2水性ベースコート組成物として使用されるミッドコート(すなわちMWBC4b)を調製する場合、2C1Bプロセスにおいてブレンド、すなわちB52を使用する場合と比較して、わずかに優れた漆黒値が観察された(MWBC4bを利用することによって得られたシステムではMc=292.4対B52ではMc=288.4)。しかし、特にMWBC4bを利用することによって得られたコーティングシステムの外観は、MWBC4bを利用することによって得られたb値がより負であり(等級2対5、b=1.69対b=-0.57)、全体的により青みがかった印象となることから、B52を利用することによって得られたシステムと比較して驚くほどはるかに優れていることが分かる。また、dM(アンダートーン)値も、どちらの場合も黒色(My)値がほぼ同じであることから、MWBC4bシステムの方が優れている。
【0207】
2C1Bプロセスで着色クリアコートを使用することによって、漆黒度及び外観がさらに大きく向上する(項目5.1を参照)。