(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】蓄電池管理装置および電池装置の管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240603BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H01M10/48 P
H01M10/48 301
(21)【出願番号】P 2022577870
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2021002790
(87)【国際公開番号】W WO2022162777
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 健志
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-283922(JP,A)
【文献】特開2013-255320(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108583326(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H01M10/42-10/48
G01R31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラトー領域を含むSOC-OCV特性を有する第1の蓄電池と第2の蓄電池とが直列に接続された組電池を管理するための蓄電池管理装置であって、
前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、
前記組電池に流れる電流を計測する電流計測部と、
前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池との間で電荷を移動させることにより、前記第1の蓄電池の電圧と前記第2の蓄電池の電圧との差を小さくするための定電流制御を実行する電圧均等化回路と、
前記電流計測部が計測した電流と、前記定電流制御中の電流と、を積算することにより、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの容量を算出するクーロンカウンティング処理部と、
前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの内部抵抗を推定する内部抵抗推定部と、
前記電圧計測部が計測した前記第1の蓄電池の電圧と前記第2の蓄電池の電圧との平均電圧と、前記内部抵抗推定部が推定した前記内部抵抗と、に基づいて、前記第1の蓄電池の第1の目標電圧と前記第2の蓄電池の第2の目標電圧とを設定する目標電圧算出部と、
前記電圧均等化回路を制御して前記定電流制御を実行させる電圧均等化制御部と、
を備え、
前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池との少なくとも一方についての前記プラトー領域内にある場合、前記定電流制御中に、前記第1の蓄電池の電圧が前記第1の目標電圧になるか、または、前記第2の蓄電池の電圧が前記第2の目標電圧になった際に、前記クーロンカウンティング処理部により算出された前記第1の蓄電池の容量と前記第2の蓄電池の容量との容量差を特定し、前記容量差が所定の第1の容量差以上であれば、前記定電流制御をさらに実行させ、前記容量差が所定の第2の容量差(ただし、前記第2の容量差の絶対値は前記第1の容量差の絶対値より小さい)になると、前記定電流制御を停止させる、蓄電池管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電池管理装置であって、
前記目標電圧算出部は、前記定電流制御中に前記平均電圧の変化があると、変化後の前記平均電圧に基づいて、前記第1の目標電圧および前記第2の目標電圧を更新する、蓄電池管理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電池管理装置であって、
前記電圧均等化制御部は、前記第1の蓄電池のFCCと前記第2の蓄電池のFCCとの差に基づいて、前記第2の容量差を設定する、蓄電池管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電池管理装置であって、
前記電圧均等化制御部は、前記第1の蓄電池のFCCと前記第2の蓄電池のFCCとの差を符号反転した値を、前記第2の容量差として設定する、蓄電池管理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、さらに、
前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれのSOHを推定するSOH推定部を備え、
前記目標電圧算出部は、前記SOH推定部が推定した前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれのSOHに基づいて、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの内部抵抗の補正を行い、補正された内部抵抗に基づいて、前記第1の目標電圧と前記第2の目標電圧とを設定する、蓄電池管理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、さらに、
前記クーロンカウンティング処理部が取得する充電または放電の電流積算量と、充電または放電の積算時間と、の履歴を記録する履歴部を備え、
前記目標電圧算出部は、前記履歴部に記録された前記履歴に基づいて、充放電サイクル数を算出し、前記充放電サイクル数に基づいて、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの内部抵抗の補正を行い、補正された内部抵抗に基づいて、前記第1の目標電圧と前記第2の目標電圧とを設定する、蓄電池管理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄電池管理装置であって、さらに、
外部との通信を行う通信手段を備え、
前記履歴部に記録された前記履歴は、前記通信手段を介して更新可能である、蓄電池管理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、さらに、
前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池との少なくとも1つの温度を計測する電池温度計測部と、
電池電圧と、電池温度と、電池内部抵抗とが関連付けられているテーブルデータをあらかじめ記録した記録部と、
を備え、
前記内部抵抗推定部は、前記テーブルデータを参照して、前記平均電圧と前記電池温度とに基づいて、前記内部抵抗を推定する、蓄電池管理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、
前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池との少なくとも一方についての前記プラトー領域内にある場合、前記定電流制御中に、前記第1の蓄電池の電圧が前記第1の目標電圧になるか、または、前記第2の蓄電池の電圧が前記第2の目標電圧になった際に、前記クーロンカウンティング処理部により算出された前記第1の蓄電池の容量と前記第2の蓄電池の容量との容量差を特定し、前記容量差が前記第1の容量差未満であれば、前記定電流制御を停止させる、蓄電池管理装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、
前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのいずれの前記プラトー領域内にもない場合、前記定電流制御中に、前記第1の蓄電池の電圧が前記第1の目標電圧になるか、または、前記第2の蓄電池の電圧が前記第2の目標電圧になった際に、前記定電流制御を停止させる、蓄電池管理装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、
前記第1の蓄電池は、複数のセルを含む第1の電池モジュールであり、
前記第2の蓄電池は、複数のセルを含む第2の電池モジュールである、蓄電池管理装置。
【請求項12】
プラトー領域を含むSOC-OCV特性を有する複数の蓄電池が直列に接続された組電池を管理するための蓄電池管理装置であって、
前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、
前記組電池に流れる電流を計測する電流計測部と、
前記複数の蓄電池の間で電荷を移動させることにより、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の差を小さくするための定電流制御を、各前記蓄電池に対して個別に実行可能な電圧均等化回路と、
前記電流計測部が計測した電流と、前記定電流制御中の電流と、を積算することにより、前記複数の蓄電池のそれぞれの容量を算出するクーロンカウンティング処理部と、
前記複数の蓄電池のそれぞれの内部抵抗を推定する内部抵抗推定部と、
前記複数の蓄電池のうち、前記電圧計測部が計測した前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧と前記複数の蓄電池の平均電圧との差が所定値以上である少なくとも1つの前記蓄電池を対象蓄電池として特定し、前記平均電圧と、前記内部抵抗推定部が推定した前記内部抵抗と、に基づいて、各前記対象蓄電池の目標電圧を設定する目標電圧算出部と、
前記電圧均等化回路を制御して、前記対象蓄電池に対して個別に前記定電流制御を実行させる電圧均等化制御部と、
を備え、
前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記プラトー領域内にある場合、前記定電流制御中に、前記目標電圧になった前記対象蓄電池について、前記クーロンカウンティング処理部により算出された前記複数の蓄電池のそれぞれの容量の平均容量との容量差を特定し、前記容量差が所定の第1の容量差以上である前記対象蓄電池に対しては、前記定電流制御をさらに実行させ、前記容量差が所定の第2の容量差(ただし、前記第2の容量差の絶対値は前記第1の容量差の絶対値より小さい)である前記対象蓄電池に対しては、前記定電流制御を停止させる、蓄電池管理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の蓄電池管理装置であって、
前記目標電圧算出部は、前記定電流制御中に前記平均電圧の変化があると、変化後の前記平均電圧に基づいて、各前記対象蓄電池の目標電圧を更新する、蓄電池管理装置。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の蓄電池管理装置であって、
前記電圧均等化制御部は、前記対象蓄電池のFCCと前記複数の蓄電池の平均FCCとの差に基づいて、前記第2の容量差を設定する、蓄電池管理装置。
【請求項15】
請求項14に記載の蓄電池管理装置であって、
前記電圧均等化制御部は、前記対象蓄電池のFCCと前記平均FCCとの差を符号反転した値を、前記第2の容量差として設定する、蓄電池管理装置。
【請求項16】
請求項12から請求項15までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、さらに、
前記複数の蓄電池のそれぞれのSOHを推定するSOH推定部を備え、
前記目標電圧算出部は、前記SOH推定部が推定した前記対象蓄電池のSOHに基づいて、前記対象蓄電池の内部抵抗の補正を行い、補正された内部抵抗に基づいて、前記目標電圧を設定する、蓄電池管理装置。
【請求項17】
請求項12から請求項16までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、さらに、
前記クーロンカウンティング処理部が取得する充電または放電の電流積算量と、充電または放電の積算時間と、の履歴を記録する履歴部を備え、
前記目標電圧算出部は、前記履歴部に記録された前記履歴に基づいて、充放電サイクル数を算出し、前記充放電サイクル数に基づいて、前記対象蓄電池の内部抵抗の補正を行い、補正された内部抵抗に基づいて、前記目標電圧を設定する、蓄電池管理装置。
【請求項18】
請求項17に記載の蓄電池管理装置であって、さらに、
外部との通信を行う通信手段を備え、
前記履歴部に記録された前記履歴は、前記通信手段を介して更新可能である、蓄電池管理装置。
【請求項19】
請求項12から請求項18までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、さらに、
前記複数の蓄電池の少なくとも1つの温度を計測する電池温度計測部と、
電池電圧と、電池温度と、電池内部抵抗とが関連付けられているテーブルデータをあらかじめ記録した記録部と、
を備え、
前記内部抵抗推定部は、前記テーブルデータを参照して、前記平均電圧と前記電池温度とに基づいて、前記内部抵抗を推定する、蓄電池管理装置。
【請求項20】
請求項12から請求項19までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、
前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記対象蓄電池の前記プラトー領域内にある場合、前記定電流制御中に、前記対象蓄電池の電圧が前記目標電圧になった際に、前記クーロンカウンティング処理部により算出された前記対象蓄電池の容量と前記平均容量との容量差を特定し、前記容量差が前記第1の容量差未満であれば、前記定電流制御を停止させる、蓄電池管理装置。
【請求項21】
請求項12から請求項20までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、
前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記対象蓄電池の前記プラトー領域内にない場合、前記定電流制御中に、前記対象蓄電池の電圧が前記目標電圧になった際に、前記定電流制御を停止させる、蓄電池管理装置。
【請求項22】
請求項12から請求項21までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、
前記蓄電池は複数のセルを含む電池モジュールである、蓄電池管理装置。
【請求項23】
プラトー領域を含むSOC-OCV特性を有する第1の蓄電池と第2の蓄電池とが直列に接続された組電池と、
前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、
前記組電池に流れる電流を計測する電流計測部と、
前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池との間で電荷を移動させることにより、前記第1の蓄電池の電圧と前記第2の蓄電池の電圧との差を小さくするための定電流制御を実行する電圧均等化回路と、
を備える電池装置の管理方法であって、
前記電流計測部が計測した電流と、前記定電流制御中の電流と、を積算することにより、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの容量を算出する工程と、
前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの内部抵抗を推定する工程と、
前記電圧計測部が計測した前記第1の蓄電池の電圧と前記第2の蓄電池の電圧との平均電圧と、前記内部抵抗を推定する工程において推定された前記内部抵抗と、に基づいて、前記第1の蓄電池の第1の目標電圧と前記第2の蓄電池の第2の目標電圧とを設定する工程と、
前記電圧均等化回路を制御して前記定電流制御を実行させる工程と、
を備え、
前記定電流制御を実行させる工程は、前記平均電圧が前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池との少なくとも一方についての前記プラトー領域内にある場合、前記定電流制御中に、前記第1の蓄電池の電圧が前記第1の目標電圧になるか、または、前記第2の蓄電池の電圧が前記第2の目標電圧になった際に、前記容量を算出する工程において算出された前記第1の蓄電池の容量と前記第2の蓄電池の容量との容量差を特定し、前記容量差が所定の第1の容量差以上であれば、前記定電流制御をさらに実行させ、前記容量差が所定の第2の容量差(ただし、前記第2の容量差の絶対値は前記第1の容量差の絶対値より小さい)になると、前記定電流制御を停止させる工程である、電池装置の管理方法。
【請求項24】
プラトー領域を含むSOC-OCV特性を有する複数の蓄電池が直列に接続された組電池と、
前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、
前記組電池に流れる電流を計測する電流計測部と、
前記複数の蓄電池の間で電荷を移動させることにより、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の差を小さくするための定電流制御を、各前記蓄電池に対して個別に実行可能な電圧均等化回路と、
を備える電池装置の管理方法であって、
前記電流計測部が計測した電流と、前記定電流制御中の電流と、を積算することにより、前記複数の蓄電池のそれぞれの容量を算出する工程と、
前記複数の蓄電池のそれぞれの内部抵抗を推定する工程と、
前記複数の蓄電池のうち、前記電圧計測部が計測した前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧と前記複数の蓄電池の平均電圧との差が所定値以上である少なくとも1つの前記蓄電池を対象蓄電池として特定し、前記平均電圧と、前記内部抵抗を推定する工程において推定された前記内部抵抗と、に基づいて、各前記対象蓄電池の目標電圧を設定する工程と、
前記電圧均等化回路を制御して、前記対象蓄電池に対して個別に前記定電流制御を実行させる工程と、
を備え、
前記定電流制御を実行させる工程は、前記平均電圧が前記プラトー領域内にある場合、前記定電流制御中に、前記目標電圧になった前記対象蓄電池について、前記容量を算出する工程において算出された前記複数の蓄電池のそれぞれの容量の平均容量との容量差を特定し、前記容量差が所定の第1の容量差以上である前記対象蓄電池に対しては、前記定電流制御をさらに実行させ、前記容量差が所定の第2の容量差(ただし、前記第2の容量差の絶対値は前記第1の容量差の絶対値より小さい)である前記対象蓄電池に対しては、前記定電流制御を停止させる工程である、電池装置の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、蓄電池管理装置および電池装置の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の蓄電池が直列に接続された組電池において、例えば各蓄電池の自己放電量のばらつきや劣化の程度のばらつきに起因して各蓄電池の電圧にばらつきが生じると、組電池の放電時に、電圧が最も低い蓄電池が下限電圧に達した時点で組電池の放電が停止されるため、まだ下限電圧まで達していない蓄電池の電気エネルギーを使用することができず、組電池の連続動作時間が短くなる。このような事態を回避するために、各蓄電池の電圧にばらつきが生じた場合に、各蓄電池の電圧のばらつきを小さくする電圧均等化処理(セルバランス処理)が実行される。電圧均等化処理の1つであるアクティブ方式の電圧均等化処理では、電圧の高い蓄電池から電圧の低い蓄電池に向けて電荷(電気エネルギー)を移動させることにより、各蓄電池の電圧を目標電圧に近付けるための定電流制御が実行される。
【0003】
電圧均等化処理において、対象とする複数の蓄電池の電圧の平均値を目標電圧とすると、電圧均等化処理によって各蓄電池が到達する実際の電圧が、各蓄電池の内部抵抗の影響を受けて目標電圧からずれるおそれがある。従来、これを防止するために、複数の蓄電池の電圧の平均値と各蓄電池の内部抵抗とに基づいて、各蓄電池についての目標電圧を設定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電池の中には、例えばリン酸鉄系のリチウムイオン電池のように、プラトー領域を含むSOC(State of Charge、充電率)-OCV(Open Circuit Voltage、開回路電圧)特性を有するものがある。プラトー領域とは、SOC-OCV特性を表す曲線がほぼ平坦となる領域である。プラトー領域を含むSOC-OCV特性を有する複数の蓄電池を備える組電池を対象として、上述した従来の電圧均等化処理を実行すると、複数の蓄電池の平均電圧がプラトー領域にある場合には、平均電圧付近において蓄電池の容量の変化に対する電圧の変化が小さくなるため、各蓄電池の電圧が目標電圧に達しても、その時点では各蓄電池の容量に比較的大きな差が残ることがあり、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができない、という課題がある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される第1の蓄電池管理装置は、プラトー領域を含むSOC-OCV特性を有する第1の蓄電池と第2の蓄電池とが直列に接続された組電池を管理するための装置である。蓄電池管理装置は、電圧計測部と、電流計測部と、電圧均等化回路と、クーロンカウンティング処理部と、内部抵抗推定部と、目標電圧算出部と、電圧均等化制御部とを備える。電圧計測部は、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの電圧を計測する。電流計測部は、前記組電池に流れる電流を計測する。電圧均等化回路は、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池との間で電荷を移動させることにより、前記第1の蓄電池の電圧と前記第2の蓄電池の電圧との差を小さくするための定電流制御を実行する。クーロンカウンティング処理部は、前記電流計測部が計測した電流と、前記定電流制御中の電流と、を積算することにより、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの容量を算出する。内部抵抗推定部は、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの内部抵抗を推定する。目標電圧算出部は、前記電圧計測部が計測した前記第1の蓄電池の電圧と前記第2の蓄電池の電圧との平均電圧と、前記内部抵抗推定部が推定した前記内部抵抗と、に基づいて、前記第1の蓄電池の第1の目標電圧と前記第2の蓄電池の第2の目標電圧とを設定する。電圧均等化制御部は、前記電圧均等化回路を制御して前記定電流制御を実行させる。前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池との少なくとも一方についての前記プラトー領域内にある場合、前記定電流制御中に、前記第1の蓄電池の電圧が前記第1の目標電圧になるか、または、前記第2の蓄電池の電圧が前記第2の目標電圧になった際に、前記クーロンカウンティング処理部により算出された前記第1の蓄電池の容量と前記第2の蓄電池の容量との容量差を特定し、前記容量差が所定の第1の容量差以上であれば、前記定電流制御をさらに実行させ、前記容量差が所定の第2の容量差(ただし、前記第2の容量差の絶対値は前記第1の容量差の絶対値より小さい)になると、前記定電流制御を停止させる。
【0009】
本蓄電池管理装置によれば、プラトー領域を含むSOC-OCV特性を有する2つの蓄電池(第1の蓄電池および第2の蓄電池)が直列に接続された組電池において、2つの蓄電池の平均電圧がプラトー領域内にあり、目標電圧を参照した定電流制御のみでは各蓄電池の残容量を精度良く均等化することができないことがある場合であっても、2つの蓄電池の容量差を参照した定電流制御を行うことによって、各蓄電池の残容量を精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0010】
(2)上記蓄電池管理装置において、前記目標電圧算出部は、前記定電流制御中に前記平均電圧の変化があると、変化後の前記平均電圧に基づいて、前記第1の目標電圧および前記第2の目標電圧を更新する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、電圧均等化のための定電流制御中に2つの蓄電池の平均電圧が変化しても、該変化に応じて目標電圧を更新することができ、その結果、電圧均等化処理において各蓄電池の残容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0011】
(3)上記蓄電池管理装置において、前記電圧均等化制御部は、前記第1の蓄電池のFCCと前記第2の蓄電池のFCCとの差に基づいて、前記第2の容量差を設定する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池のFCCにばらつきがあっても、組電池の放電時に、各蓄電池の残容量がゼロになるタイミングが近くなるように、各蓄電池の容量を均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0012】
(4)上記蓄電池管理装置において、前記電圧均等化制御部は、前記第1の蓄電池のFCCと前記第2の蓄電池のFCCとの差を符号反転した値を、前記第2の容量差として設定する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池のFCCにばらつきがあっても、組電池の放電時に、各蓄電池の残容量がほぼ同時にゼロになるように、各蓄電池の容量を均等化することができ、組電池の連続動作時間を極めて効果的に延長することができる。
【0013】
(5)上記蓄電池管理装置において、さらに、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれのSOHを推定するSOH推定部を備え、前記目標電圧算出部は、前記SOH推定部が推定した前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれのSOHに基づいて、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの内部抵抗の補正を行い、補正された内部抵抗に基づいて、前記第1の目標電圧と前記第2の目標電圧とを設定する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池のSOHに基づいて補正された内部抵抗に基づいて、目標電圧を精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池の容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0014】
(6)上記蓄電池管理装置において、さらに、前記クーロンカウンティング処理部が取得する充電または放電の電流積算量と、充電または放電の積算時間と、の履歴を記録する履歴部を備え、前記目標電圧算出部は、前記履歴部に記録された前記履歴に基づいて、充放電サイクル数を算出し、前記充放電サイクル数に基づいて、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのそれぞれの内部抵抗の補正を行い、補正された内部抵抗に基づいて、前記第1の目標電圧と前記第2の目標電圧とを設定する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池の充放電サイクル数に基づいて補正された内部抵抗に基づいて、目標電圧を精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池の容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0015】
(7)上記蓄電池管理装置において、さらに、外部との通信を行う通信手段を備え、前記履歴部に記録された前記履歴は、前記通信手段を介して更新可能である構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、例えば蓄電池を交換した場合であっても、外部から更新された蓄電池の充放電履歴に基づき算出された充放電サイクル数に基づいて内部抵抗を補正し、補正後の内部抵抗に基づいて目標電圧を精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池の容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0016】
(8)上記蓄電池管理装置において、さらに、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池との少なくとも1つの温度を計測する電池温度計測部と、電池電圧と、電池温度と、電池内部抵抗とが関連付けられているテーブルデータをあらかじめ記録した記録部と、を備え、前記内部抵抗推定部は、前記テーブルデータを参照して、前記平均電圧と前記電池温度とに基づいて、前記内部抵抗を推定する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、蓄電池の内部抵抗を精度良く推定することができ、その結果、各蓄電池の目標電圧を精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池の容量を精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0017】
(9)上記蓄電池管理装置において、前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池との少なくとも一方についての前記プラトー領域内にある場合、前記定電流制御中に、前記第1の蓄電池の電圧が前記第1の目標電圧になるか、または、前記第2の蓄電池の電圧が前記第2の目標電圧になった際に、前記クーロンカウンティング処理部により算出された前記第1の蓄電池の容量と前記第2の蓄電池の容量との容量差を特定し、前記容量差が前記第1の容量差未満であれば、前記定電流制御を停止させる構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、目標電圧を参照した定電流制御によって各蓄電池の容量が十分に均等化された場合、速やかに定電流制御を停止することができ、処理時間の短縮を実現することができる。
【0018】
(10)上記蓄電池管理装置において、前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とのいずれの前記プラトー領域内にもない場合、前記定電流制御中に、前記第1の蓄電池の電圧が前記第1の目標電圧になるか、または、前記第2の蓄電池の電圧が前記第2の目標電圧になった際に、前記定電流制御を停止させる構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、2つの蓄電池の平均電圧がプラトー領域外であるために、目標電圧を参照した定電流制御によって各蓄電池の容量を十分に均等化することが可能である場合には、定電流制御中にいずれかの蓄電池が目標電圧に到達した時点で、蓄電池の間の容量差を算出することなく、速やかに定電流制御を停止することができ、処理時間の短縮を効果的に実現することができる。
【0019】
(11)上記蓄電池管理装置において、前記第1の蓄電池は、複数のセルを含む第1の電池モジュールであり、前記第2の蓄電池は、複数のセルを含む第2の電池モジュールである構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、各電池モジュールの残容量を精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0020】
(12)本明細書に開示される第2の蓄電池管理装置は、プラトー領域を含むSOC-OCV特性を有する複数の蓄電池が直列に接続された組電池を管理するための装置である。蓄電池管理装置は、電圧計測部と、電流計測部と、電圧均等化回路と、クーロンカウンティング処理部と、内部抵抗推定部と、目標電圧算出部と、電圧均等化制御部とを備える。電圧計測部は、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧を計測する。電流計測部は、前記組電池に流れる電流を計測する。電圧均等化回路は、前記複数の蓄電池の間で電荷を移動させることにより、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の差を小さくするための定電流制御を、各前記蓄電池に対して個別に実行可能に構成されている。クーロンカウンティング処理部は、前記電流計測部が計測した電流と、前記定電流制御中の電流と、を積算することにより、前記複数の蓄電池のそれぞれの容量を算出する。内部抵抗推定部は、前記複数の蓄電池のそれぞれの内部抵抗を推定する。目標電圧算出部は、前記複数の蓄電池のうち、前記電圧計測部が計測した前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧と前記複数の蓄電池の平均電圧との差が所定値以上である少なくとも1つの前記蓄電池を対象蓄電池として特定し、前記平均電圧と、前記内部抵抗推定部が推定した前記内部抵抗と、に基づいて、各前記対象蓄電池の目標電圧を設定する。電圧均等化制御部は、前記電圧均等化回路を制御して、前記対象蓄電池に対して個別に前記定電流制御を実行させる。前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記プラトー領域内にある場合、前記定電流制御中に、前記目標電圧になった前記対象蓄電池について、前記クーロンカウンティング処理部により算出された前記複数の蓄電池のそれぞれの容量の平均容量との容量差を特定し、前記容量差が所定の第1の容量差以上である前記対象蓄電池に対しては、前記定電流制御をさらに実行させ、前記容量差が所定の第2の容量差(ただし、前記第2の容量差の絶対値は前記第1の容量差の絶対値より小さい)である前記対象蓄電池に対しては、前記定電流制御を停止させる。
【0021】
本蓄電池管理装置によれば、プラトー領域を含むSOC-OCV特性を有する複数の蓄電池が直列に接続された組電池において、各蓄電池の平均電圧がプラトー領域内にあり、目標電圧を参照した定電流制御のみでは各蓄電池の残容量を精度良く均等化することができないことがある場合であっても、各蓄電池の容量差を参照した定電流制御を行うことによって、各蓄電池の残容量を精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0022】
(13)上記蓄電池管理装置において、前記目標電圧算出部は、前記定電流制御中に前記平均電圧の変化があると、変化後の前記平均電圧に基づいて、各前記対象蓄電池の目標電圧を更新する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、電圧均等化のための定電流制御中に蓄電池の平均電圧が変化しても、該変化に応じて目標電圧を更新することができ、その結果、電圧均等化処理において各蓄電池の残容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0023】
(14)上記蓄電池管理装置において、前記電圧均等化制御部は、前記対象蓄電池のFCCと前記複数の蓄電池の平均FCCとの差に基づいて、前記第2の容量差を設定する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池のFCCにばらつきがあっても、組電池の放電時に、各蓄電池の残容量がゼロになるタイミングが近くなるように、各蓄電池の容量を均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0024】
(15)上記蓄電池管理装置において、前記電圧均等化制御部は、前記対象蓄電池のFCCと前記平均FCCとの差を符号反転した値を、前記第2の容量差として設定する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池のFCCにばらつきがあっても、組電池の放電時に、各蓄電池の残容量がほぼ同時にゼロになるように、各蓄電池の容量を均等化することができ、組電池の連続動作時間を極めて効果的に延長することができる。
【0025】
(16)上記蓄電池管理装置において、さらに、前記複数の蓄電池のそれぞれのSOHを推定するSOH推定部を備え、前記目標電圧算出部は、前記SOH推定部が推定した前記対象蓄電池のSOHに基づいて、前記対象蓄電池の内部抵抗の補正を行い、補正された内部抵抗に基づいて、前記目標電圧を設定する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池のSOHに基づいて補正された内部抵抗に基づいて、目標電圧を精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池の容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0026】
(17)上記蓄電池管理装置において、さらに、前記クーロンカウンティング処理部が取得する充電または放電の電流積算量と、充電または放電の積算時間と、の履歴を記録する履歴部を備え、前記目標電圧算出部は、前記履歴部に記録された前記履歴に基づいて、充放電サイクル数を算出し、前記充放電サイクル数に基づいて、前記対象蓄電池の内部抵抗の補正を行い、補正された内部抵抗に基づいて、前記目標電圧を設定する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池の充放電サイクル数に基づいて補正された内部抵抗に基づいて、目標電圧を精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池の容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0027】
(18)上記蓄電池管理装置において、さらに、外部との通信を行う通信手段を備え、前記履歴部に記録された前記履歴は、前記通信手段を介して更新可能である構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、例えば蓄電池を交換した場合であっても、外部から更新された蓄電池の充放電履歴に基づき算出された充放電サイクル数に基づいて内部抵抗を補正し、補正後の内部抵抗に基づいて目標電圧を精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池の容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0028】
(19)上記蓄電池管理装置において、さらに、前記複数の蓄電池の少なくとも1つの温度を計測する電池温度計測部と、電池電圧と、電池温度と、電池内部抵抗とが関連付けられているテーブルデータをあらかじめ記録した記録部と、を備え、前記内部抵抗推定部は、前記テーブルデータを参照して、前記平均電圧と前記電池温度とに基づいて、前記内部抵抗を推定する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、蓄電池の内部抵抗を精度良く推定することができ、その結果、各蓄電池の目標電圧を精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池の容量を精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0029】
(20)上記蓄電池管理装置において、前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記対象蓄電池の前記プラトー領域内にある場合、前記定電流制御中に、前記対象蓄電池の電圧が前記目標電圧になった際に、前記クーロンカウンティング処理部により算出された前記対象蓄電池の容量と前記平均容量との容量差を特定し、前記容量差が前記第1の容量差未満であれば、前記定電流制御を停止させる構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、目標電圧を参照した定電流制御によって各蓄電池の容量が十分に均等化された場合、速やかに定電流制御を停止することができ、処理時間の短縮を実現することができる。
【0030】
(21)上記蓄電池管理装置において、前記電圧均等化制御部は、前記平均電圧が前記対象蓄電池の前記プラトー領域内にない場合、前記定電流制御中に、前記対象蓄電池の電圧が前記目標電圧になった際に、前記定電流制御を停止させる構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、平均電圧がプラトー領域外であるために、目標電圧を参照した定電流制御によって各蓄電池の容量を十分に均等化することが可能である場合には、定電流制御中に対象蓄電池が目標電圧に到達した時点で、蓄電池の間の容量差を算出することなく、速やかに定電流制御を停止することができ、処理時間の短縮を効果的に実現することができる。
【0031】
(22)上記蓄電池管理装置において、前記蓄電池は複数のセルを含む電池モジュールである構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、各電池モジュールの残容量を精度良く均等化することができ、組電池の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0032】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、蓄電池管理装置、蓄電池管理装置と組電池とを備える電池装置、それらの管理方法、それらの方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1実施形態における電池装置100の構成を概略的に示す説明図
【
図2】蓄電池12のSOC-OCV特性を概略的に示す説明図
【
図3】電圧均等化回路30の内、蓄電池12aと蓄電池12bの組についての電圧均等化を行うための回路を抜き出して示す説明図
【
図4】内部抵抗推定テーブルT1の一例を示す説明図
【
図5】第1実施形態の電池装置100において実行される電圧均等化処理を示すフローチャート
【
図6】第1実施形態における電圧均等化処理時の各蓄電池12a,12bの状態の一例を示す説明図
【
図7】第1実施形態における電圧均等化処理時の各蓄電池12a,12bの状態の一例を示す説明図
【
図8】第1実施形態における電圧均等化処理時の各蓄電池12a,12bの状態の一例を示す説明図
【
図9】第1実施形態の変形例における電圧均等化処理時の各蓄電池12a,12bの状態の一例を示す説明図
【
図10】第1実施形態の変形例における電圧均等化処理時の各蓄電池12a,12bの状態の一例を示す説明図
【
図11】第2実施形態における電池装置100Aの構成を概略的に示す説明図
【
図12】第2実施形態の電池装置100Aにおいて実行される電圧均等化処理を示すフローチャート
【
図13】第3実施形態における電池装置100Bの構成を概略的に示す説明図
【
図14】複数の蓄電池12のうち、1つの蓄電池12aを対象蓄電池12xとした場合の定電流制御の動作を概略的に示す説明図
【
図15】第3実施形態の電池装置100Bにおいて実行される電圧均等化処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0034】
A.第1実施形態:
A-1.電池装置100の構成:
図1は、第1実施形態における電池装置100の構成を概略的に示す説明図である。電池装置100は、組電池10と、蓄電池管理装置20とを備える。
【0035】
組電池10は、複数の蓄電池12が直列に接続された構成を有している。本実施形態では、組電池10は、4つの蓄電池12(12a,12b,12c,12d)から構成されている。組電池10は、プラス端子42およびマイナス端子44を介して、図示しない負荷および外部電源に接続される。
【0036】
組電池10を構成する各蓄電池12は、プラトー領域PRを含むSOC-OCV特性を有する蓄電池である。
図2は、蓄電池12のSOC-OCV特性を概略的に示す説明図である。プラトー領域PRとは、SOC-OCV特性を表す曲線がほぼ平坦となる領域であり、より詳細には、SOCの変化量に対するOCVの変化量の絶対値が2mV/%以下の領域である。プラトー領域PRを含むSOC-OCV特性を有する蓄電池12としては、例えばリン酸鉄系のリチウムイオン電池が挙げられる。
【0037】
蓄電池管理装置20は、組電池10を含む電池装置100を管理するための装置である。蓄電池管理装置20は、電圧計22と、電流計24と、温度計26と、監視部28と、電圧均等化回路30と、ラインスイッチ40と、制御部60と、記録部72と、履歴部74と、インターフェース(I/F)部76とを備えている。
【0038】
電圧計22は、各蓄電池12に対して1つ設けられている。各電圧計22は、各蓄電池12に対して並列に接続され、各蓄電池12の電圧を計測して、電圧計測値を示す信号を監視部28に向けて出力する。電流計24は、組電池10に対して直列に接続されている。電流計24は、組電池10に流れる電流を計測して、電流計測値を示す信号を監視部28に向けて出力する。温度計26は、組電池10の近く(例えば、蓄電池12dの近く)に配置されている。温度計26は、組電池10(各蓄電池12)の温度を計測して、温度計測値を示す信号を監視部28に向けて出力する。監視部28は、電圧計22、電流計24および温度計26から受け取った信号に基づき、各蓄電池12の電圧、組電池10に流れる電流および組電池10(各蓄電池12)の温度を示す信号を制御部60に向けて出力する。電圧計22および監視部28は、電圧計測部の一例であり、電流計24および監視部28は、電流計測部の一例であり、温度計26および監視部28は、電池温度計測部の一例である。
【0039】
電圧均等化回路30は、組電池10を構成する複数の蓄電池12の間で電荷を移動させることにより、複数の蓄電池12の間の電圧の差を小さくするための定電流制御を実行する回路である。すなわち、電圧均等化回路30は、アクティブ方式の電圧均等化を実行するための回路である。電圧均等化回路30は、コイル32と、第1のスイッチ34と、第2のスイッチ36とを有しており、互いに隣り合う2つの蓄電池12の組毎に電圧均等化を実行できるように構成されている。すなわち、本実施形態では、組電池10は4つの蓄電池12を備えているため、電圧均等化回路30は、蓄電池12の3つの組(蓄電池12aと蓄電池12bの組、蓄電池12bと蓄電池12cの組、蓄電池12cと蓄電池12dの組)毎に、電圧均等化を実行することができるように構成されている。第1のスイッチ34および第2のスイッチ36としては、例えば、MOSFETやリレーが用いられる。
【0040】
図3は、電圧均等化回路30の内、蓄電池12aと蓄電池12bの組についての電圧均等化を行うための回路を抜き出して示す説明図である。
図3のA欄およびB欄に示すように、コイル32の一端32iは、一方の蓄電池12aの正極端子と他方の蓄電池12bの負極端子との接続点に接続されている。第1のスイッチ34は、一方の蓄電池12aの負極端子とコイル32の他端32jとの間に接続されている。第2のスイッチ36は、他方の蓄電池12bの正極端子とコイル32の該他端32jとの間に接続されている。制御部60が、所定の変調方法(例えば、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM))によって第1のスイッチ34および第2のスイッチ36のオン・オフを制御して定電流制御を行うことにより、コイル32を介して蓄電池12間で電荷が移動する。
図3のA欄には、蓄電池12bの電圧Vbが蓄電池12aの電圧Vaより大きく、コイル32を介して蓄電池12bから蓄電池12aへ電荷を移動させることによって、電圧均等化を行っている状態が示されている。また、
図3のB欄には、蓄電池12aの電圧Vaが蓄電池12bの電圧Vbより大きく、コイル32を介して蓄電池12aから蓄電池12bへ電荷を移動させることによって、電圧均等化を行っている状態が示されている。
図3には、電圧均等化回路30の内、蓄電池12aと蓄電池12bの組についての電圧均等化を行うための回路を抜き出して示したが、他の組(蓄電池12bと蓄電池12cの組、蓄電池12cと蓄電池12dの組)についての電圧均等化を行うための回路も同様の構成である。
【0041】
ラインスイッチ40(
図1)は、組電池10とマイナス端子44との間に設置されている。ラインスイッチ40は、制御部60によってオン・オフ制御されることにより、組電池10と負荷および外部電源との間の接続を開閉する。
【0042】
制御部60は、例えば、CPU、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(Field Programmable Gate Array(FPGA)、Programmable Logic Device(PLD)等)を用いて構成され、蓄電池管理装置20の動作を制御する。制御部60は、クーロンカウンティング処理部62と、内部抵抗推定部64と、目標電圧算出部66と、SOH推定部68としての機能を有する。これら各部の機能については、後述の電圧均等化処理の説明に合わせて説明する。制御部60は、電圧均等化制御部の一例である。
【0043】
記録部72は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラムやデータを記憶したり、各種の処理を実行する際の作業領域やデータの記憶領域として利用されたりする。例えば、記録部72には、後述する電圧均等化処理を実行するためのコンピュータプログラムが格納されている。該コンピュータプログラムは、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(不図示)に格納された状態で提供され、電池装置100にインストールすることにより記録部72に格納される。
【0044】
また、記録部72には、内部抵抗推定テーブルT1と、内部抵抗補正テーブルT2とが格納されている。内部抵抗推定テーブルT1は、各蓄電池12の内部抵抗の推定に用いられるテーブルである。
図4は、内部抵抗推定テーブルT1の一例を示す説明図である。内部抵抗推定テーブルT1は、電池電圧(より詳細にはOCV)と、電池温度と、電池内部抵抗とを関連付けるテーブルである。内部抵抗推定テーブルT1に規定される関係は、予め実験的に定められる。内部抵抗推定テーブルT1を参照することにより、各蓄電池12の電池電圧および電池温度に基づき、電池内部抵抗を推定することができる。なお、
図4では、電池内部抵抗を、R1,R2,・・・などと表示しているが、内部抵抗推定テーブルT1には、実際には電池内部抵抗の数値が規定されている。
【0045】
また、記録部72に記録された内部抵抗補正テーブルT2(
図1)は、内部抵抗推定テーブルT1により規定された電池内部抵抗の補正に用いられるテーブルである。本実施形態では、内部抵抗補正テーブルT2に、電池のSOH(State of Health、健全度)と内部抵抗の補正量との関係、および、充放電サイクル数と内部抵抗の補正量との関係が規定されている。内部抵抗補正テーブルT2に規定される関係は、予め実験的に定められる。この関係は、電池のSOHが低いほど(劣化の程度が大きいほど)、電池の内部抵抗が高い値に補正されるような関係であり、また、電池の充放電サイクル数が多いほど、電池の内部抵抗が高い値に補正されるような関係である。内部抵抗補正テーブルT2を参照することにより、各蓄電池12のSOHや充放電サイクル数に基づき、電池内部抵抗を補正することができる。
【0046】
履歴部74は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、電池装置100に関する各種履歴を記録する。このような履歴としては、例えば、充電および放電の積算時間が挙げられる。インターフェース部76は、有線または無線により他の装置との通信を行う。例えば、インターフェース部76を介した他の装置との通信により、履歴部74に記録された履歴が更新される。インターフェース部76は、通信手段の一例である。
【0047】
A-2.電圧均等化処理:
次に、第1実施形態の電池装置100において蓄電池管理装置20により実行される電圧均等化処理について説明する。
図5は、第1実施形態の電池装置100において実行される電圧均等化処理を示すフローチャートである。第1実施形態の電圧均等化処理は、組電池10を構成する複数の蓄電池12の間で電荷を移動させることにより、複数の蓄電池12の間の電圧の差を小さくするための定電流制御を実行する処理である。電圧均等化処理は、例えば、組電池10を構成する複数の蓄電池12の間の電圧の差が所定の閾値より大きいことが検知された場合に、自動的に、または、管理者からの指示に応じて開始される。
【0048】
以下では、組電池10を構成する複数の蓄電池12のうち、電圧が比較的高い蓄電池12a(以下、「放電側蓄電池12a」ともいう。)と電圧が比較的低い蓄電池12b(以下、「充電側蓄電池12b」ともいう。)との組を対象として実行される電圧均等化処理について説明する。放電側蓄電池12aは、第1の蓄電池の一例であり、充電側蓄電池12bは、第2の蓄電池の一例である。
【0049】
図6から
図8は、第1実施形態における電圧均等化処理時の各蓄電池12a,12bの状態の一例を示す説明図である。
図6から
図8のそれぞれにおいて、A欄には、電圧均等化処理の開始時における蓄電池12a,12bの電圧Vおよび放電容量Cの状態が示されており、B欄には、電圧均等化処理中における蓄電池12a,12bの電圧Vおよび電流Iの経時的変化が示されており、C欄には、電圧均等化処理の終了時における蓄電池12a,12bの電圧Vおよび放電容量Cの状態が示されている。ただし、
図8については、C欄に、電圧均等化処理の実行中(時刻t2)の蓄電池12a,12bの電圧Vおよび放電容量Cの状態が示されており、D欄に、電圧均等化処理の終了時における蓄電池12a,12bの電圧Vおよび放電容量Cの状態が示されている。
【0050】
詳細には後述するが、
図6から
図8には、電圧均等化処理の開始時、処理中および/または終了時における蓄電池12a,12bの電圧Vや放電容量Cが互いに異なる例が示されている。例えば、
図6に示す例では、電圧均等化処理の開始時(
図6のA欄参照)に、放電側蓄電池12aも充電側蓄電池12bも、容量の変化に対する電圧の変化が比較的大きい状態にある。一方、
図7および
図8に示す例では、電圧均等化処理の開始時(
図7および
図8のA欄参照)に、充電側蓄電池12bは、容量の変化に対する電圧の変化が比較的大きい状態にある一方、放電側蓄電池12aは、容量の変化に対する電圧の変化が比較的小さい状態にある。なお、
図6から
図8の例では、各図のA欄およびC欄に示されるように、蓄電池12aおよび蓄電池12bのそれぞれの放電容量Cと電圧Vとの関係を示す曲線Laおよび曲線Lbが、互いに一致していない。すなわち、蓄電池12aおよび蓄電池12bは、放電容量Cと電圧Vとの関係に関する特性が互いに異なる蓄電池である。このような相違は、例えば、初期性能の相違や劣化度の相違に起因する。
【0051】
電圧均等化処理(
図5)が開始されると、蓄電池管理装置20の制御部60(
図1)が、監視部28から入力される信号に基づき、蓄電池12a,12bの電圧を計測する(S110)。なお、蓄電池12a,12bの電圧の計測は、電圧均等化処理中、継続的に実行される。次に、制御部60は、蓄電池12a,12bの電圧の平均値である平均電圧Vaveを算出する(S120)。また、制御部60は、監視部28から入力される信号に基づき、蓄電池12a,12bの温度を計測する(S130)。
【0052】
次に、制御部60の内部抵抗推定部64(
図1)が、蓄電池12a,12bの内部抵抗を推定する(S140)。本実施形態では、内部抵抗推定部64は、電池電圧と電池温度と電池内部抵抗とを関連付ける上述した内部抵抗推定テーブルT1(
図4)を参照することにより、S110およびS130において計測された蓄電池12a,12bの電圧および温度に基づき、蓄電池12a,12bの内部抵抗を推定する。なお、蓄電池12a,12bの内部抵抗の推定方法は、これに限られず、他の公知の推定方法を採用してもよい。
【0053】
次に、制御部60のSOH推定部68(
図1)が、蓄電池12a,12bのSOHを推定する(S150)。本実施形態では、電圧均等化処理が実行されていないとき、および、電圧均等化処理の実行中、制御部60のクーロンカウンティング処理部62(
図1)が、電流計24および監視部28により計測された電流、および、電圧均等化処理における定電流制御中の電流を積算することにより、各蓄電池12の容量を算出している。SOH推定部68は、クーロンカウンティング処理部62により取得される蓄電池12a,12bのそれぞれについての所定SOC間の電荷移動量(電荷移動量計測値)と、予め記録部72に記録された新品の蓄電池12の該所定SOC間の電荷移動量(電荷移動量初期値)とに基づき、蓄電池12a,12bのSOHを推定する。すなわち、SOH推定部68は、電荷移動量初期値に対する電荷移動量計測値の比を、蓄電池12a,12bのSOHとして算出する。なお、蓄電池12a,12bのSOHの推定方法は、これに限られず、他の公知の推定方法を採用してもよい。
【0054】
次に、制御部60の目標電圧算出部66(
図1)が、S150において推定された蓄電池12a,12bのSOHに基づき、S140において推定された蓄電池12a,12bの内部抵抗を補正する(S160)。本実施形態では、目標電圧算出部66は、電池のSOHと内部抵抗の補正量とを関連付ける上述した内部抵抗補正テーブルT2(
図1)を参照することにより、蓄電池12a,12bのSOHに基づき、蓄電池12a,12bの内部抵抗を補正する。この補正では、例えば、電池のSOHが低いほど(劣化の程度が大きいほど)、電池の内部抵抗が高い値に補正される。
【0055】
なお、S160における蓄電池12a,12bの内部抵抗の補正に代えて、あるいは、該補正に加えて、蓄電池12a,12bの充放電サイクル数に基づく内部抵抗の補正が行われてもよい。例えば、履歴部74(
図1)が、クーロンカウンティング処理部62が取得する充電または放電の電流積算量と、充電または放電の積算時間と、の履歴を記録しており、目標電圧算出部66が、履歴部74に記録された該履歴に基づいて、蓄電池12a,12bの充放電サイクル数を算出し、充放電サイクル数と内部抵抗の補正量との関係を規定する上述した内部抵抗補正テーブルT2を参照することによって、該充放電サイクル数に基づき、蓄電池12a,12bの内部抵抗を補正するとしてもよい。この補正では、例えば、電池の充放電サイクル数が多いほど、電池の内部抵抗が高い値に補正される。
【0056】
次に、目標電圧算出部66が、S120において算出された蓄電池12a,12bの平均電圧Vaveと、S140において推定され、S160において補正された蓄電池12a,12bの内部抵抗と、に基づき、蓄電池12a,12bの目標電圧(蓄電池12aの目標電圧VTaおよび蓄電池12bの目標電圧VTb)を設定する(S170)。より具体的には、放電側蓄電池12aについては、平均電圧Vaveから、放電側蓄電池12aの内部抵抗に基づき設定される調整電圧Vth(a)を差し引いた値(=Vave-Vth(a))が、目標電圧VTaとして設定される(例えば、
図6のB欄参照)。また、充電側蓄電池12bについては、平均電圧Vaveに、充電側蓄電池12bの内部抵抗に基づき設定される調整電圧Vth(b)を足した値(=Vave+Vth(b))が、目標電圧VTbとして設定される(例えば、
図6のB欄参照)。なお、蓄電池12の内部抵抗と各調整電圧との関係は予め実験的に定められ、例えば、蓄電池12の内部抵抗が高いほど調整電圧が大きい値に設定される。また、目標電圧VTa,VTbの設定方法は、これに限られず、他の公知の設定方法(例えば、特開2014-75953号公報に記載された方法)を採用してもよい。放電側蓄電池12aの目標電圧VTaは、第1の目標電圧の一例であり、充電側蓄電池12bの目標電圧VTbは、第2の目標電圧の一例である。
【0057】
次に、制御部60は、電圧均等化回路30(
図1)を制御して、電圧均等化のための定電流制御を開始させる(S180)。この定電流制御では、電圧均等化回路30を構成する第1のスイッチ34および第2のスイッチ36のオン・オフが制御されることにより、蓄電池12a,12bの電圧がそれぞれの目標電圧VTa,VTbに近付くように、放電側蓄電池12aから充電側蓄電池12bへのコイル32を介した電荷の移動が実行される。例えば、
図6のB欄に示すように、時刻t1に定電流制御が開始されると、放電側蓄電池12aに流れる電流Iaは負の一定値をとり、充電側蓄電池12bに流れる電流Ibは正の一定値をとり、その結果、放電側蓄電池12aの電圧Vaが目標電圧VTaに近付くように下降すると共に、充電側蓄電池12bの電圧Vbが目標電圧VTbに近付くように上昇する。なお、ここで実行される定電流制御を、後述する容量参照定電流制御P2と区別するために、電圧参照定電流制御P1ということがある。
【0058】
定電流制御の開始後、制御部60は、放電側蓄電池12aの電圧Vaと充電側蓄電池12bの電圧Vbとの少なくとも一方が、それぞれの目標電圧VTa,VTbになったか否かを監視すると共に(S190)、平均電圧Vaveが変化したか否かを監視する(S200)。なお、本実施形態では、平均電圧Vaveが変化したとは、平均電圧Vaveが予め設定された閾値以上変化したことを意味する。平均電圧Vaveが変化した場合(S200:YES)、目標電圧算出部66は、変化後の平均電圧Vaveに基づいて、目標電圧VTa,VTbを更新する(S210)。
【0059】
例えば
図6に示す例では、上述したように、電圧均等化処理の開始時に、放電側蓄電池12aも充電側蓄電池12bも、容量の変化に対する電圧の変化が比較的大きい状態にある(
図6のA欄参照)。そのため、定電流制御が開始され、放電側蓄電池12aから充電側蓄電池12bへの電荷の移動が行われると、放電側蓄電池12aの電圧Vaは比較的大きく下降し、かつ、充電側蓄電池12bの電圧Vbは比較的大きく上昇し、その結果、平均電圧Vaveがほぼ一定に維持される(
図6のB欄参照)。これに対し、
図7および
図8に示す例では、上述したように、電圧均等化処理の開始時に、充電側蓄電池12bは、容量の変化に対する電圧の変化が比較的大きい状態にある一方、放電側蓄電池12aは、容量の変化に対する電圧の変化が比較的小さい状態にある(
図7および
図8のA欄参照)。そのため、定電流制御が開始され、放電側蓄電池12aから充電側蓄電池12bへの電荷の移動が行われると、充電側蓄電池12bの電圧Vbは比較的大きく上昇する一方、放電側蓄電池12aの電圧Vaはほぼ一定に維持され、その結果、平均電圧Vaveが比較的大きく変化する(
図7および
図8のB欄参照)。このような場合には、S210における目標電圧VTa,VTbの更新が実行される。
【0060】
制御部60は、定電流制御(電圧参照定電流制御P1)の実行中に、放電側蓄電池12aの電圧Vaと充電側蓄電池12bの電圧Vbとの少なくとも一方が、それぞれの目標電圧VTa,VTbになった場合(S190:YES)、平均電圧Vaveが、放電側蓄電池12aと充電側蓄電池12bとの少なくとも一方についてのプラトー領域PR内にあるか否かを判断する(S220)。この判断は、以下に説明するように、目標電圧VTa,VTbを参照した定電流制御(電圧参照定電流制御P1)によって、蓄電池12a,12bの残容量を精度良く均等化することができるか否かの判断のために行われる。
【0061】
図6の例では、平均電圧Vaveが蓄電池12a,12bのプラトー領域PR内にはない(
図6のA欄参照)。この場合には、平均電圧Vaveの付近において蓄電池12a,12bの容量の変化に対する電圧の変化が比較的大きいため、目標電圧VTa,VTbを参照した定電流制御(電圧参照定電流制御P1)によって、蓄電池12a,12bの残容量を精度良く均等化することができる。そのため、平均電圧Vaveがプラトー領域PR内にはないと判断された場合には(S220:NO)、制御部60は、定電流制御を停止する(S260)。すなわち、
図6のB欄に示すように、時刻t2において、放電側蓄電池12aの電圧Vaと充電側蓄電池12bの電圧Vbとの少なくとも一方が、それぞれの目標電圧VTa,VTbに達すると、定電流制御が停止され、蓄電池12a,12bに流れる電流Ia,Ibがゼロになる。その後、蓄電池12a,12bの内部抵抗が緩和されて、放電側蓄電池12aの電圧Vaおよび充電側蓄電池12bの電圧Vbが、平均電圧Vaveに収束する。これにより、
図6のC欄に示すように、蓄電池12a,12bの残容量が精度良く均等化される。
【0062】
一方、
図7および
図8の例では、平均電圧Vaveが蓄電池12a,12bのプラトー領域PR内にある(
図7および
図8のA欄参照)。この場合には、平均電圧Vaveの付近において蓄電池12a,12bの容量の変化に対する電圧の変化が比較的小さいため、目標電圧VTa,VTbを参照した定電流制御(電圧参照定電流制御P1)によるだけでは、蓄電池12a,12bの残容量を精度良く均等化することができないことがある。そのため、このような場合には、蓄電池12a,12bの残容量を精度良く均等化するために、以下の処理が行われる。
【0063】
すなわち、平均電圧Vaveがプラトー領域PR内にあると判断された場合には(S220:YES)、制御部60は、クーロンカウンティング処理部62により算出された放電側蓄電池12aの容量Caと充電側蓄電池12bの容量Cbとの容量差ΔC(=Ca-Cb)を特定し、該容量差ΔCが所定の第1の容量差ΔC1以上であるか否かを判定する(S230)。そして、容量差ΔCが第1の容量差ΔC1未満であると判定された場合には(S230:NO)、制御部60は、定電流制御を停止する(S260)。
図7の例では、時刻t2において、放電側蓄電池12aの電圧Vaと充電側蓄電池12bの電圧Vbとの少なくとも一方が、それぞれの目標電圧VTa,VTbに達したとき、
図7のC欄に示すように、容量差ΔCが比較的小さい(第1の容量差ΔC1未満である)。そのため、時刻t2において定電流制御が停止され、蓄電池12a,12bに流れる電流Ia,Ibがゼロになる。その後、蓄電池12a,12bの内部抵抗が緩和されて、放電側蓄電池12aの電圧Vaと充電側蓄電池12bの電圧Vbとが、平均電圧Vaveに収束する。これにより、蓄電池12a,12bの残容量が精度良く均等化される。
【0064】
一方、容量差ΔCが第1の容量差ΔC1以上であると判定された場合には(S230:YES)、制御部60は、定電流制御を継続し(S240)、容量差ΔCが所定の第2の容量差ΔC2になったか否かを監視する(S250)。第2の容量差ΔC2の絶対値は、第1の容量差ΔC1の絶対値より小さい。なお、第2の容量差ΔC2の値は、ゼロであってもよい。また、S240において継続される定電流制御を、電圧参照定電流制御P1と区別するために、容量参照定電流制御P2ということがある。制御部60は、定電流制御(容量参照定電流制御P2)の実行中、容量差ΔCを監視し、容量差ΔCが第2の容量差ΔC2になった時点で(S250:YES)、定電流制御を停止する(S260)。
【0065】
図8の例では、時刻t2において、放電側蓄電池12aの電圧Vaと充電側蓄電池12bの電圧Vbとの少なくとも一方が、それぞれの目標電圧VTa,VTbに達したとき、
図8のC欄に示すように、容量差ΔCが比較的大きい(第1の容量差ΔC1以上である)。そのため、時刻t2以降も定電流制御(容量参照定電流制御P2)が継続される。その後、時刻t3において、容量差ΔCが第2の容量差ΔC2となると、定電流制御が停止され、蓄電池12a,12bに流れる電流Ia,Ibがゼロになる。なお、
図8の例では、
図8のC欄およびD欄に示すように、時刻t3において、放電側蓄電池12aの容量Caおよび充電側蓄電池12bの容量Cbは、共に、時刻t2における容量Caおよび容量Cbの平均容量Caveに等しい。すなわち、
図8の例では、第2の容量差ΔC2は、ゼロである。その後、蓄電池12a,12bの内部抵抗が緩和されて、放電側蓄電池12aの電圧Vaと充電側蓄電池12bの電圧Vbとが、平均電圧Vaveに収束する。これにより、蓄電池12a,12bの残容量が精度良く均等化される。
【0066】
上述したいずれのケースにおいても、定電流制御が停止されると(S260)、電圧均等化処理が完了する。
【0067】
A-3.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態の蓄電池管理装置20は、プラトー領域PRを含むSOC-OCV特性を有する蓄電池12a(放電側蓄電池12a)と蓄電池12b(充電側蓄電池12b)とが直列に接続された組電池10を管理するための装置である。蓄電池管理装置20は、電圧計22と、電流計24と、監視部28と、電圧均等化回路30と、クーロンカウンティング処理部62と、内部抵抗推定部64と、目標電圧算出部66と、制御部60とを備える。電圧計22および監視部28は、蓄電池12a,12bの電圧を計測する。電流計24および監視部28は、組電池10に流れる電流を計測する。電圧均等化回路30は、放電側蓄電池12aから充電側蓄電池12bに電荷を移動させることにより、放電側蓄電池12aの電圧Vaと充電側蓄電池12bの電圧Vbとの差を小さくするための定電流制御を実行する。クーロンカウンティング処理部62は、電流計24および監視部28が計測した電流と、上記定電流制御中の電流と、を積算することにより、蓄電池12a,12bの容量を算出する。内部抵抗推定部64は、蓄電池12a,12bの内部抵抗を推定する。目標電圧算出部66は、電圧計22および監視部28が計測した放電側蓄電池12aの電圧Vaと充電側蓄電池12bの電圧Vbとの平均電圧Vaveと、内部抵抗推定部64が推定した内部抵抗と、に基づいて、放電側蓄電池12aの目標電圧VTaと充電側蓄電池12bの目標電圧VTbとを設定する。制御部60は、電圧均等化回路30を制御して上記定電流制御を実行させる。
【0068】
また、制御部60は、平均電圧Vaveが放電側蓄電池12aと充電側蓄電池12bとの少なくとも一方についてのプラトー領域PR内にある場合(
図5のS220:YES)、上記定電流制御(電圧参照定電流制御P1)中に、放電側蓄電池12aの電圧Vaが目標電圧VTaになるか、または、充電側蓄電池12bの電圧Vbが目標電圧VTbになった際に、クーロンカウンティング処理部62により算出された放電側蓄電池12aの容量Caと充電側蓄電池12bの容量Cbとの容量差ΔC(=Ca-Cb)を特定し、容量差ΔCが所定の第1の容量差ΔC1以上であれば(S230:YES)、定電流制御(容量参照定電流制御P2)をさらに実行させ(S240)、容量差ΔCが所定の第2の容量差ΔC2(ただし、第2の容量差ΔC2の絶対値は第1の容量差ΔC1の絶対値より小さい)になると(S250:YES)、定電流制御を停止させる(S260)。
【0069】
このように、本実施形態の蓄電池管理装置20によれば、プラトー領域PRを含むSOC-OCV特性を有する複数の蓄電池12が直列に接続された組電池10において、2つの蓄電池12a,12bの平均電圧Vaveがプラトー領域PR内にあり、目標電圧VTa,VTbを参照した定電流制御(電圧参照定電流制御P1)のみでは各蓄電池12a,12bの残容量を精度良く均等化することができないことがある場合であっても、2つの蓄電池12a,12bの容量差ΔCを参照した定電流制御(容量参照定電流制御P2)を行うことによって、各蓄電池12a,12bの残容量を精度良く均等化することができ、組電池10の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0070】
また、本実施形態の蓄電池管理装置20では、目標電圧算出部66は、定電流制御中に平均電圧Vaveの変化があると(
図5のS200:YES)、変化後の平均電圧Vaveに基づいて目標電圧VTa,VTbを更新する(S210)。そのため、本実施形態の蓄電池管理装置20によれば、電圧均等化のための定電流制御中に2つの蓄電池12a,12bの平均電圧Vaveが変化しても、該変化に応じて目標電圧VTa,VTbを更新することができ、その結果、電圧均等化処理において各蓄電池12a,12bの残容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池10の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0071】
また、本実施形態の蓄電池管理装置20は、さらに、蓄電池12a,12bのSOHを推定するSOH推定部68を備える。制御部60は、SOH推定部68が推定した蓄電池12a,12bのSOH(
図5のS150)に基づいて、蓄電池12a,12bの内部抵抗の補正を行い(S160)、補正された内部抵抗に基づいて目標電圧VTa,VTbを設定する(S170)。そのため、本実施形態の蓄電池管理装置20によれば、各蓄電池12a,12bのSOHに基づいて補正された内部抵抗に基づいて、目標電圧VTa,VTbを精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池12a,12bの容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池10の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0072】
なお、本実施形態の蓄電池管理装置20は、さらに、クーロンカウンティング処理部62が取得する充電または放電の電流積算量と、充電または放電の積算時間と、の履歴を記録する履歴部74を備えてもよい。また、目標電圧算出部66は、履歴部74に記録された履歴に基づいて、充放電サイクル数を算出し、充放電サイクル数に基づいて、蓄電池12a,12bの内部抵抗の補正を行い、補正された内部抵抗に基づいて、目標電圧VTa,VTbを設定してもよい。このようにすれば、各蓄電池12a,12bの充放電サイクル数に基づいて補正された内部抵抗に基づいて、目標電圧VTa,VTbを精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池12a,12bの容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池10の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0073】
また、本実施形態の蓄電池管理装置20は、さらに、外部との通信を行うインターフェース部76を備え、履歴部74に記録された履歴は、インターフェース部76を介して更新可能である。そのため、本実施形態の蓄電池管理装置20によれば、例えば蓄電池12を交換した場合であっても、外部から更新された蓄電池12の充放電履歴に基づき算出された充放電サイクル数に基づいて内部抵抗を補正し、補正後の内部抵抗に基づいて目標電圧VTを精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池12の容量をさらに精度良く均等化することができ、組電池10の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0074】
また、本実施形態の蓄電池管理装置20は、さらに、温度計26と、記録部72とを備える。温度計26および監視部28は、蓄電池12a,12bの少なくとも1つの温度を計測する。記録部72は、電池電圧と、電池温度と、電池内部抵抗とが関連付けられている内部抵抗推定テーブルT1をあらかじめ記録する。内部抵抗推定部64は、内部抵抗推定テーブルT1を参照して、平均電圧Vaveと電池温度とに基づいて、内部抵抗を推定する。そのため、本実施形態の蓄電池管理装置20によれば、蓄電池12a,12bの内部抵抗を精度良く推定することができ、その結果、各蓄電池12a,12bの目標電圧VTa,VTbを精度良く設定することができ、電圧均等化処理において各蓄電池12a,12bの容量を精度良く均等化することができ、組電池10の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0075】
また、本実施形態では、制御部60は、平均電圧Vaveが放電側蓄電池12aと充電側蓄電池12bとの少なくとも一方についてのプラトー領域PR内にある場合(
図5のS220:YES)、上記定電流制御(電圧参照定電流制御P1)中に、放電側蓄電池12aの電圧Vaが目標電圧VTaになるか、または、充電側蓄電池12bの電圧Vbが目標電圧VTbになった際に、クーロンカウンティング処理部62により算出された放電側蓄電池12aの容量Caと充電側蓄電池12bの容量Cbとの容量差ΔC(=Ca-Cb)を特定し、容量差ΔCが所定の第1の容量差ΔC1未満であれば(S230:NO)、定電流制御を停止させる(S260)。そのため、本実施形態の蓄電池管理装置20によれば、目標電圧VTa,VTbを参照した定電流制御(電圧参照定電流制御P1)によって各蓄電池12a,12bの容量が十分に均等化された場合、速やかに定電流制御を停止することができ、処理時間の短縮を実現することができる。
【0076】
また、本実施形態では、制御部60は、平均電圧Vaveが放電側蓄電池12aと充電側蓄電池12bとのいずれのプラトー領域PR内にもない場合(
図5のS220:NO)、上記定電流制御(電圧参照定電流制御P1)中に、放電側蓄電池12aの電圧Vaが目標電圧VTaになるか、または、充電側蓄電池12bの電圧Vbが目標電圧VTbになった際に、定電流制御を停止させる(S260)。そのため、本実施形態の蓄電池管理装置20によれば、2つの蓄電池12a,12bの平均電圧Vaveがプラトー領域PR外であるために、目標電圧VTa,VTbを参照した定電流制御(電圧参照定電流制御P1)によって各蓄電池12a,12bの容量を十分に均等化することが可能である場合には、電圧参照定電流制御P1中にいずれかの蓄電池12が目標電圧に到達した時点で、蓄電池12の間の容量差ΔCを算出することなく、速やかに定電流制御を停止することができ、処理時間の短縮を効果的に実現することができる。
【0077】
A-4.第1実施形態の変形例:
図9および
図10は、第1実施形態の変形例における電圧均等化処理時の各蓄電池12a,12bの状態の一例を示す説明図である。
図9のA欄には、電圧均等化処理の開始時における蓄電池12a,12bの電圧Vおよび放電容量Cの状態が示されており、
図9のB欄には、電圧均等化処理中における蓄電池12a,12bの電圧Vおよび電流Iの経時的変化が示されており、
図9のC欄には、電圧均等化処理の実行中(時刻t2)の蓄電池12a,12bの電圧Vおよび放電容量Cの状態が示されており、
図10のD欄には、電圧均等化処理の実行中(時刻t3)の蓄電池12a,12bの電圧Vおよび放電容量Cの状態が示されており、
図10のE欄には、電圧均等化処理の終了時における蓄電池12a,12bの電圧Vおよび放電容量Cの状態が示されている。
図9および
図10に示す変形例では、
図8に示す例と同様に、蓄電池12a,12bの平均電圧Vaveがプラトー領域PR内にあり(
図9のA欄参照)、時刻t2において、放電側蓄電池12aの電圧Vaと充電側蓄電池12bの電圧Vbとの少なくとも一方が、それぞれの目標電圧VTa,VTbに達したとき、
図9のC欄に示すように、放電側蓄電池12aの容量Caと充電側蓄電池12bの容量Cbとの容量差ΔC(=Ca-Cb)が比較的大きい(第1の容量差ΔC1以上である)。そのため、時刻t2以降も定電流制御(容量参照定電流制御P2)が継続される。
【0078】
ここで、
図9および
図10に示す変形例では、容量参照定電流制御P2の停止タイミングを決定するための第2の容量差ΔC2が、放電側蓄電池12aのFCC(Full Charge Capacity、満充電容量)と充電側蓄電池12bのFCCとの差ΔFCC(
図9のA欄参照)に基づいて設定される。より具体的には、放電側蓄電池12aのFCCと充電側蓄電池12bのFCCとの差ΔFCCを符号反転した値(=-ΔFCC)が、第2の容量差ΔC2として設定される。そのため、
図9および
図10に示す変形例では、
図9のB欄および
図10のD欄に示すように、時刻t3においては、容量差ΔCがゼロであるために第2の容量差ΔC2になっていないと判定され(
図5のS250:NO)、さらに定電流制御(容量参照定電流制御P2)が継続される。その後、
図9のB欄および
図10のE欄に示すように、時刻t4になると、容量差ΔCが第2の容量差ΔC2(=-ΔFCC)になって(
図5のS250:YES)、定電流制御が停止される。
【0079】
なお、各蓄電池12のFCCは、例えば、SOH推定部68により推定された各蓄電池12のSOHに基づき推定することができる。すなわち、各蓄電池12のFCCは、各蓄電池12の初期FCCに、SOHを乗じた値として算出される。あるいは、各蓄電池12のFCCは、クーロンカウンティング処理部62により計測される所定SOC間の容量値に基づき推定することができる。なお、各蓄電池12のFCCの推定方法は、これらに限られず、他の公知の推定方法を採用してもよい。
【0080】
このように、
図9および
図10に示す第1実施形態の変形例では、制御部60は、放電側蓄電池12aのFCCと充電側蓄電池12bのFCCとの差ΔFCCを符号反転した値を、容量参照定電流制御P2の停止タイミングを決定するための第2の容量差ΔC2として設定する。そのため、本変形例によれば、各蓄電池12a,12bのFCCにばらつきがあっても、組電池10の放電時に、各蓄電池12a,12bの残容量がほぼ同時にゼロになるように、各蓄電池12a,12bの容量を均等化することができ、組電池10の連続動作時間を極めて効果的に延長することができる。
【0081】
B.第2実施形態:
図11は、第2実施形態における電池装置100Aの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第2実施形態の電池装置100Aの構成のうち、上述した第1実施形態の電池装置100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0082】
第2実施形態の電池装置100Aは、組電池10Aが、複数の電池モジュール14から構成されており、電池モジュール14単位での電圧均等化を実行可能である点が、第1実施形態の電池装置100と異なる。具体的には、第2実施形態の電池装置100Aでは、組電池10Aは、互いに直列に接続された6つの蓄電池(セル)12(12a,12b,12c,12d,12e,12f)から構成されており、そのうちの3つの蓄電池12(12a,12b,12c)が1つの電池モジュール14(14a)を構成し、残りの3つの蓄電池12(12d,12e,12f)が他の1つの電池モジュール14(14b)を構成している。すなわち、組電池10Aは、複数の蓄電池12から構成された電池モジュール14aと電池モジュール14bとが互いに直列に接続された構成を有している。また、第2実施形態の電池装置100Aでは、温度計26および履歴部74が、各電池モジュール14について1つ設けられている。
【0083】
また、第2実施形態の電池装置100Aにおいて、電圧均等化回路30Aは、組電池10Aを構成する複数の電池モジュール14の間で電荷を移動させることにより、複数の電池モジュール14のそれぞれの電圧の差を小さくするための定電流制御を実行する回路である。ここで、複数の電池モジュール14のそれぞれの電圧とは、複数の電池モジュール14のそれぞれに含まれる蓄電池12の電圧の平均値であってもよいし、複数の電池モジュール14のそれぞれに含まれる蓄電池12の電圧の合計値であってもよい。以下、複数の電池モジュール14のそれぞれの電圧として、複数の電池モジュール14のそれぞれに含まれる蓄電池12の電圧の平均値を用いる場合について説明する。電圧均等化回路30Aは、コイル32と、第1のスイッチ34と、第2のスイッチ36とを有している。コイル32の一端32iは、電池モジュール14aの正極端子と電池モジュール14bの負極端子との接続点に接続されている。第1のスイッチ34は、電池モジュール14aの負極端子とコイル32の他端32jとの間に接続されている。第2のスイッチ36は、電池モジュール14bの正極端子とコイル32の該他端32jとの間に接続されている。
【0084】
また、第2実施形態の電池装置100Aでは、クーロンカウンティング処理部62は、電流計24および監視部28により計測された電流、および、電圧均等化処理における定電流制御中の電流を積算することにより、各電池モジュール14の容量を算出している。
【0085】
また、第2実施形態の電池装置100Aでは、目標電圧算出部66は、電池モジュール14aの平均電圧VMaと電池モジュール14bの平均電圧VMbとの平均値であるモジュール平均電圧VMaveと、各蓄電池12の内部抵抗と、に基づいて、電池モジュール14aの目標電圧VMTaと電池モジュール14bの目標電圧VMTbとを設定する。より具体的には、平均電圧が比較的高い電池モジュール14a(以下、「放電側電池モジュール14a」ともいう。)については、モジュール平均電圧VMaveから、放電側電池モジュール14aを構成する各蓄電池12の内部抵抗に基づき設定される調整電圧VMth(a)を差し引いた値(=VMave-VMth(a))が、目標電圧VMTaとして設定される。また、平均電圧が比較的低い電池モジュール14b(以下、「充電側電池モジュール14b」ともいう。)については、モジュール平均電圧VMaveに、充電側電池モジュール14bを構成する各蓄電池12の内部抵抗に基づき設定される調整電圧VMth(b)を足した値(=VMave+VMth(b))が、目標電圧VMTbとして設定される。なお、蓄電池12の内部抵抗と各調整電圧との関係は予め実験的に定められ、例えば、蓄電池12の内部抵抗が高いほど調整電圧が大きい値に設定される。また、目標電圧VMTa,VMTbの設定方法は、これに限られず、他の公知の設定方法を採用してもよい。放電側電池モジュール14aの目標電圧VMTaは、第1の目標電圧の一例であり、充電側電池モジュール14bの目標電圧VMTbは、第2の目標電圧の一例である。
【0086】
図12は、第2実施形態の電池装置100Aにおいて実行される電圧均等化処理を示すフローチャートである。以下、第2実施形態の電池装置100Aにおいて実行される電圧均等化処理について、第1実施形態の電圧均等化処理(
図5)と異なる点についてのみ説明する。
【0087】
第2実施形態の電圧均等化処理は、組電池10Aを構成する複数の電池モジュール14の間で電荷を移動させることにより、複数の電池モジュール14のそれぞれに含まれる蓄電池12の電圧の平均値の間の差を小さくするための定電流制御を実行する処理である。電圧均等化処理は、例えば、組電池10Aを構成する複数の電池モジュール14の間の電圧の差が所定の閾値より大きいことが検知された場合に、自動的に、または、管理者からの指示に応じて開始される。
【0088】
以下では、組電池10Aを構成する複数の電池モジュール14のうち、電池モジュール14aを構成する各蓄電池12の平均電圧が比較的高く、電池モジュール14bを構成する各蓄電池12の平均電圧が比較的低い場合に、電池モジュール14a(放電側電池モジュール14a)と電池モジュール14b(充電側電池モジュール14b)との組を対象として実行される電圧均等化処理について説明する。放電側電池モジュール14aは、第1の電池モジュールの一例であり、充電側電池モジュール14bは、第2の電池モジュールの一例である。
【0089】
S120A(
図12)では、放電側電池モジュール14aの平均電圧VMaと充電側電池モジュール14bの平均電圧VMbとの平均値であるモジュール平均電圧VMaveが算出される。また、S130Aでは、電池モジュール14a,14bの温度が計測され、S170Aでは、放電側電池モジュール14aの目標電圧VMTaと充電側電池モジュール14bの目標電圧VMTbとが設定される。放電側電池モジュール14aの目標電圧VMTaは、第1の目標電圧の一例であり、充電側電池モジュール14bの目標電圧VMTbは、第2の目標電圧の一例である。
【0090】
また、S180において定電流制御が開始されると、放電側電池モジュール14aの平均電圧VMaと充電側電池モジュール14bの平均電圧VMbとの少なくとも一方が、それぞれの目標電圧VMTa,VMTbになったか否かが監視されると共に(S190A)、モジュール平均電圧VMaveが変化したか否かが監視され(S200A)、モジュール平均電圧VMaveが変化した場合(S200A:YES)、変化後のモジュール平均電圧VMaveに基づいて目標電圧VMTa,VMTbが更新される(S210A)。
【0091】
また、放電側電池モジュール14aの平均電圧VMaと充電側電池モジュール14bの平均電圧VMbとの少なくとも一方が、それぞれの目標電圧VMTa,VMTbになった場合(S190A:YES)、モジュール平均電圧VMaveが、放電側電池モジュール14aと充電側電池モジュール14bとの少なくとも一方についてのプラトー領域PR内にあるか否かが判断され(S220A)、モジュール平均電圧VMaveがプラトー領域PR内にはないと判断された場合には(S220A:NO)、定電流制御が停止される(S260)。
【0092】
一方、モジュール平均電圧VMaveがプラトー領域PR内にあると判断された場合には(S220A:YES)、クーロンカウンティング処理部62により算出された放電側電池モジュール14aの容量CMaと充電側電池モジュール14bの容量CMbとの容量差ΔCM(=CMa-CMb)を特定し、該容量差ΔCMが所定の第1の容量差ΔCM1以上であるか否かが判定され(S230A)、該容量差ΔCMが第1の容量差ΔCM1未満であると判定された場合には(S230A:NO)、定電流制御が停止される(S260)。
【0093】
一方、容量差ΔCMが第1の容量差ΔCM1以上であると判定された場合には(S230A:YES)、定電流制御(容量参照定電流制御P2)が継続され(S240)、容量差ΔCMが所定の第2の容量差ΔCM2になったか否かが監視され(S250A)、容量差ΔCMが第2の容量差ΔCM2になった時点で定電流制御が停止される(S260)。なお、第2の容量差ΔCM2の絶対値は、第1の容量差ΔCM1の絶対値より小さい。第2の容量差ΔCM2の値は、ゼロであってもよい。
【0094】
以上説明したように、第2実施形態の蓄電池管理装置20は、プラトー領域PRを含むSOC-OCV特性を有する少なくとも1つの蓄電池12から構成された電池モジュール14a(放電側電池モジュール14a)と電池モジュール14b(充電側電池モジュール14b)とが直列に接続された組電池10Aを管理するための装置である。蓄電池管理装置20は、電圧計22と、電流計24と、監視部28と、電圧均等化回路30Aと、クーロンカウンティング処理部62と、内部抵抗推定部64と、目標電圧算出部66と、制御部60とを備える。電圧計22および監視部28は、各蓄電池12の電圧を計測する。電流計24および監視部28は、組電池10に流れる電流を計測する。電圧均等化回路30Aは、放電側電池モジュール14aから充電側電池モジュール14bに電荷を移動させることにより、放電側電池モジュール14aの電圧(平均電圧VMa)と充電側電池モジュール14bの電圧(平均電圧VMb)との差を小さくするための定電流制御を実行する。クーロンカウンティング処理部62は、電流計24および監視部28が計測した電流と、上記定電流制御中の電流と、を積算することにより、電池モジュール14a,14bの容量を算出する。内部抵抗推定部64は、各蓄電池12の内部抵抗を推定する。目標電圧算出部66は、電圧計22および監視部28が計測した放電側電池モジュール14aの電圧(平均電圧VMa)と充電側電池モジュール14bの電圧(平均電圧VMb)との平均値であるモジュール平均電圧VMaveと、内部抵抗推定部64が推定した内部抵抗と、に基づいて、放電側電池モジュール14aの目標電圧VMTaと充電側電池モジュール14bの目標電圧VMTbとを設定する。制御部60は、電圧均等化回路30Aを制御して上記定電流制御を実行させる。
【0095】
また、制御部60は、モジュール平均電圧VMaveが放電側電池モジュール14aと充電側電池モジュール14bとの少なくとも一方についてのプラトー領域PR内にある場合(
図12のS220A:YES)、上記定電流制御(電圧参照定電流制御P1)中に、放電側電池モジュール14aの電圧(平均電圧VMa)が目標電圧VMTaになるか、または、充電側電池モジュール14bの電圧(平均電圧VMb)が目標電圧VMTbになった際に、クーロンカウンティング処理部62により算出された放電側電池モジュール14aの容量CMaと充電側電池モジュール14bの容量CMbとの容量差ΔCM(=CMa-CMb)を特定し、容量差ΔCMが所定の第1の容量差ΔCM1以上であれば(S230A:YES)、定電流制御(容量参照定電流制御P2)をさらに実行させ(S240)、容量差ΔCMが所定の第2の容量差ΔCM2(ただし、第2の容量差ΔCM2の絶対値は第1の容量差ΔCM1の絶対値より小さい)になると(S250A:YES)、定電流制御を停止させる(S260)。
【0096】
このように、第2実施形態の蓄電池管理装置20によれば、それぞれプラトー領域PRを含むSOC-OCV特性を有する少なくとも1つの蓄電池12から構成された複数の電池モジュール14が直列に接続された組電池10Aにおいて、2つの電池モジュール14a,14bのモジュール平均電圧VMaveがプラトー領域PR内にあり、目標電圧VMTa,VMTbを参照した定電流制御(電圧参照定電流制御P1)のみでは各電池モジュール14a,14bの残容量を精度良く均等化することができないことがある場合であっても、2つの電池モジュール14a,14bの容量差ΔCMを参照した定電流制御(容量参照定電流制御P2)を行うことによって、各電池モジュール14a,14bの残容量を精度良く均等化することができ、組電池10Aの連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0097】
C.第3実施形態:
図13は、第3実施形態における電池装置100Bの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第3実施形態の電池装置100Bの構成のうち、上述した第1実施形態の電池装置100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0098】
第3実施形態の電池装置100Bは、電圧均等化回路30Bの構成が、第1実施形態の電池装置100と異なる。具体的には、第1実施形態の電池装置100が備える電圧均等化回路30は、互いに隣り合う2つの蓄電池12の組毎に電圧均等化を実行できるように構成されているが、第3実施形態の電池装置100Bが備える電圧均等化回路30Bは、互いに隣り合う2つの蓄電池12の組に限らず、任意の蓄電池12の組合せについて電圧均等化を実行できるように構成されている。
【0099】
すなわち、第3実施形態における電圧均等化回路30Bは、各蓄電池12に対して1つ設けられたトランス39を備える。各トランス39は、第1の巻き線39iと、第2の巻き線39jとを有する。各トランス39の第1の巻き線39iは、対応する蓄電池12に対して並列に接続されている。また、各トランス39の第2の巻き線39jは、組電池10に並列に接続されている。また、電圧均等化回路30Bは、各蓄電池12に対して1つ設けられた第1のスイッチ37および第2のスイッチ38を備える。各第1のスイッチ37は、各蓄電池12に対して設けられたトランス39の第1の巻き線39iに直列に接続されており、各第2のスイッチ38は、各蓄電池12に対して設けられたトランス39の第2の巻き線39jに直列に接続されている。各第1のスイッチ37および各第2のスイッチ38は、制御部60によってオン・オフ制御される。
【0100】
このような構成の電圧均等化回路30Bによれば、複数の蓄電池12の間で電荷を移動させることにより、複数の蓄電池12のそれぞれの電圧の差を小さくするための定電流制御を、各蓄電池12に対して個別に実行可能である。すなわち、複数の蓄電池12のうち、電圧計22および監視部28が計測した複数の蓄電池12のそれぞれの電圧と、複数の蓄電池12の平均電圧Vaveと、の差が所定値以上である少なくとも1つの蓄電池12を対象蓄電池12xとして特定し、対象蓄電池12xを対象として、対象蓄電池12xの電圧を平均電圧Vaveに近付けるような定電流制御を実行可能である。
【0101】
図14は、複数の蓄電池12のうち、1つの蓄電池12aを対象蓄電池12xとした場合の定電流制御の動作を概略的に示す説明図である。
図14のA欄には、対象蓄電池12xである蓄電池12aの電圧Vaが各蓄電池12の平均電圧Vaveより高く、対象蓄電池12xから他の蓄電池12に電荷を移動させることによって、電圧均等化を行っている状態が示されている。また、
図14のB欄には、対象蓄電池12xである蓄電池12aの電圧Vaが各蓄電池12の平均電圧Vaveより低く、他の蓄電池12から対象蓄電池12xに電荷を移動させることによって、電圧均等化を行っている状態が示されている。
【0102】
また、第3実施形態の電池装置100Bでは、目標電圧算出部66は、上述した少なくとも1つの対象蓄電池12xを特定し、各蓄電池12の平均電圧Vaveと、内部抵抗推定部64が推定した内部抵抗と、に基づいて、各対象蓄電池12xの目標電圧VTxを設定する。より具体的には、対象蓄電池12xの電圧Vxが平均電圧Vaveより高い場合には、平均電圧Vaveから、対象蓄電池12xの内部抵抗に基づき設定される調整電圧Vth(x)を差し引いた値(=Vave-Vth(x))が、目標電圧VTxとして設定される。また、対象蓄電池12xの電圧Vxが平均電圧Vaveより低い場合には、平均電圧Vaveに、対象蓄電池12xの内部抵抗に基づき設定される調整電圧Vth(x)を足した値(=Vave+Vth(x))が、目標電圧VTxとして設定される。なお、蓄電池12の内部抵抗と調整電圧との関係は予め実験的に定められ、例えば、蓄電池12の内部抵抗が高いほど調整電圧が大きい値に設定される。また、目標電圧VTxの設定方法は、これに限られず、他の公知の設定方法を採用してもよい。
【0103】
図15は、第3実施形態の電池装置100Bにおいて実行される電圧均等化処理を示すフローチャートである。以下、第3実施形態の電池装置100Bにおいて実行される電圧均等化処理について、第1実施形態の電圧均等化処理(
図5)と異なる点についてのみ説明する。
【0104】
第3実施形態の電圧均等化処理は、組電池10を構成する複数の蓄電池12のうち、電圧値が、複数の蓄電池12の平均電圧Vaveから所定値以上離れている対象蓄電池12xを対象として、対象蓄電池12xと他の蓄電池12との間で電荷を移動させることにより、各蓄電池12の電圧の差を小さくするための定電流制御を実行する処理である。電圧均等化処理は、例えば、組電池10を構成する複数の蓄電池12の中に対象蓄電池12xが検知された場合に、自動的に、または、管理者からの指示に応じて開始される。
【0105】
S110B(
図15)では、各蓄電池12の電圧が計測される。なお、各蓄電池12の電圧の計測は、電圧均等化処理中、継続的に実行される。また、S120Bでは、各蓄電池12の電圧の平均値である平均電圧Vaveが算出される。
【0106】
また、S130Bでは、各蓄電池12の温度が計測され、S140Bでは、各蓄電池12の内部抵抗が推定され、S150Bでは、各蓄電池12のSOHが推定され、S160Bでは、各蓄電池12の内部抵抗が補正される。なお、これらの処理は、対象蓄電池12xのみを対象に実行されてもよい。
【0107】
また、S170Bでは、対象蓄電池12xの目標電圧VTxが設定される。また、S180において定電流制御が開始されると、対象蓄電池12xの電圧Vxが目標電圧VTxになったか否かが監視されると共に(S190B)、平均電圧Vaveが変化したか否かが監視され(S200B)、平均電圧Vaveが変化した場合(S200B:YES)、変化後の平均電圧Vaveに基づいて目標電圧VTxが更新される(S210B)。
【0108】
また、対象蓄電池12xの電圧Vxが目標電圧VTxになった場合(S190B:YES)、平均電圧Vaveが少なくとも1つの蓄電池12についてのプラトー領域PR内にあるか否かが判断され(S220B)、平均電圧Vaveがプラトー領域PR内にはないと判断された場合には(S220B:NO)、定電流制御が停止される(S260)。
【0109】
一方、平均電圧Vaveがプラトー領域PR内にあると判断された場合には(S220B:YES)、クーロンカウンティング処理部62により算出された各蓄電池12の容量の平均容量Caveと、対象蓄電池12xの容量Cxと、の容量差ΔC(Cave≧Cxの場合は、ΔC=Cave-Cx、Cave<Cxの場合は、ΔC=Cx-Cave)を特定し、該容量差ΔCが所定の第1の容量差ΔC1以上であるか否かが判定され(S230B)、該容量差ΔCが第1の容量差ΔCM1未満であると判定された場合には(S230B:NO)、定電流制御が停止される(S260)。
【0110】
一方、容量差ΔCが第1の容量差ΔC1以上であると判定された場合には(S230B:YES)、定電流制御(容量参照定電流制御P2)が継続され(S240)、容量差ΔCが所定の第2の容量差ΔC2になったか否かが監視され(S250B)、容量差ΔCが第2の容量差ΔC2になった時点で定電流制御が停止される(S260)。なお、第2の容量差ΔC2の絶対値は、第1の容量差ΔC1の絶対値より小さい。第2の容量差ΔC2の値は、ゼロであってもよい。
【0111】
以上説明したように、第3実施形態の蓄電池管理装置20は、プラトー領域PRを含むSOC-OCV特性を有する複数の蓄電池12が直列に接続された組電池10を管理するための装置である。蓄電池管理装置20は、電圧計22と、電流計24と、監視部28と、電圧均等化回路30Bと、クーロンカウンティング処理部62と、内部抵抗推定部64と、目標電圧算出部66と、制御部60とを備える。電圧計22および監視部28は、各蓄電池12の電圧を計測する。電流計24および監視部28は、組電池10に流れる電流を計測する。電圧均等化回路30Bは、複数の蓄電池12の間で電荷を移動させることにより、各蓄電池12の電圧の差を小さくするための定電流制御を、各蓄電池12に対して個別に実行可能な回路である。クーロンカウンティング処理部62は、電流計24および監視部28が計測した電流と、上記定電流制御中の電流と、を積算することにより、各蓄電池12の容量を算出する。内部抵抗推定部64は、各蓄電池12の内部抵抗を推定する。目標電圧算出部66は、電圧計22および監視部28が計測した各蓄電池12の電圧と各蓄電池12の電圧の平均電圧Vaveとの差が所定値以上である少なくとも1つの蓄電池12を対象蓄電池12xとして特定し、平均電圧Vaveと、内部抵抗推定部が推定した前記内部抵抗と、に基づいて、各対象蓄電池12xの目標電圧VTxを設定する。制御部60は、電圧均等化回路30Bを制御して上記定電流制御を実行させる。
【0112】
また、制御部60は、平均電圧Vaveが少なくとも1つの蓄電池12のプラトー領域PR内にある場合(
図15のS220B:YES)、上記定電流制御(電圧参照定電流制御P1)中に、対象蓄電池12xの電圧Vxが目標電圧VTxになった際に、クーロンカウンティング処理部62により算出された各蓄電池12の容量の平均容量Caveと、対象蓄電池12xの容量Cxと、の容量差ΔCを特定し、容量差ΔCが所定の第1の容量差ΔC1以上であれば(S230B:YES)、定電流制御(容量参照定電流制御P2)をさらに実行させ(S240)、容量差ΔCが所定の第2の容量差ΔC2(ただし、第2の容量差ΔC2の絶対値は第1の容量差ΔC1の絶対値より小さい)になると(S250B:YES)、定電流制御を停止させる(S260)。
【0113】
このように、第3実施形態の蓄電池管理装置20によれば、プラトー領域PRを含むSOC-OCV特性を有する複数の蓄電池12が直列に接続された組電池10において、各蓄電池12の平均電圧Vaveがプラトー領域PR内にあり、目標電圧VTxを参照した定電流制御(電圧参照定電流制御P1)のみでは各蓄電池12の残容量を精度良く均等化することができないことがある場合であっても、各蓄電池12の容量差ΔCを参照した定電流制御(容量参照定電流制御P2)を行うことによって、各蓄電池12の残容量を精度良く均等化することができ、組電池10の連続動作時間を効果的に延長することができる。
【0114】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0115】
上記各実施形態における電池装置100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記各実施形態において、組電池10を構成する蓄電池12の個数は任意に変更可能である。また、上記各実施形態において、温度計26が、各蓄電池12について設けられてもよい。なお、温度計26は省略されてもよい。
【0116】
また、上記各実施形態において、内部抵抗推定テーブルT1や内部抵抗補正テーブルT2の内容は、あくまで一例であり、種々変形可能である。また、必ずしも記録部72に内部抵抗推定テーブルT1および/または内部抵抗補正テーブルT2が記録されている必要はない。また、上記各実施形態において、制御部60が有する各機能部の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0117】
上記各実施形態における電圧均等化処理の内容は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記第1実施形態では、蓄電池12の温度の計測(
図5のS130)が実行されるが、蓄電池12の内部抵抗の推定(同S140)のために蓄電池12の温度計測値が不要である場合には、蓄電池12の温度の計測が省略されてもよい。また、上記第1実施形態では、蓄電池12のSOHの推定(同S150)が実行されるが、蓄電池12の内部抵抗の補正(同S160)のために蓄電池12のSOHの値が不要である場合には、蓄電池12のSOHの推定が省略されてもよい。また、蓄電池12の内部抵抗の補正(同S160)が省略されてもよい。また、上記第1実施形態では、定電流制御中に平均電圧の変化の監視(同S200)および目標電圧の更新(同S210)が行われるが、これらの処理が省略されてもよい。
【0118】
また、上記第1実施形態の変形例では、容量参照定電流制御P2の停止タイミングを決定するための第2の容量差ΔC2が、放電側蓄電池12aのFCCと充電側蓄電池12bのFCCとの差ΔFCCを符号反転した値(=-ΔFCC)と同一値に設定されるが、第2の容量差ΔC2が、該差ΔFCCに基づいて、他の方法(例えば、第2の容量差ΔC2を-ΔFCCに近い値に設定する方法)により設定されてもよい。
【0119】
また、上記第3実施形態において、各蓄電池12を、少なくとも1つの蓄電池12が直列接続された電池モジュールに置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0120】
10:組電池 12:蓄電池 14:電池モジュール 20:蓄電池管理装置 22:電圧計 24:電流計 26:温度計 28:監視部 30:電圧均等化回路 32:コイル 32i:一端 32j:他端 34:第1のスイッチ 36:第2のスイッチ 37:第1のスイッチ 38:第2のスイッチ 39:トランス 39i:第1の巻き線 39j:第2の巻き線 40:ラインスイッチ 42:プラス端子 44:マイナス端子 60:制御部 62:クーロンカウンティング処理部 64:内部抵抗推定部 66:目標電圧算出部 68:SOH推定部 72:記録部 74:履歴部 76:インターフェース部 100:電池装置 PR:プラトー領域 T1:内部抵抗推定テーブル T2:内部抵抗補正テーブル