(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】曲管の製造方法、これに使用する型用管部材、及び曲管
(51)【国際特許分類】
B29C 70/30 20060101AFI20240603BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20240603BHJP
F16L 9/128 20060101ALI20240603BHJP
F16L 43/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B29C70/30
B29C70/32
F16L9/128
F16L43/00
(21)【出願番号】P 2023015736
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2017162491の分割
【原出願日】2017-08-25
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2017076110
(32)【優先日】2017-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017143649
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】従野 友裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】梶木 耕平
(72)【発明者】
【氏名】山川 英之
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-9810(JP,U)
【文献】実開昭58-89313(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/30
B29C 70/32
F16L 9/128
F16L 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状に延びる軸周りに形成された円筒状の型用管部材を準備する第1ステップと、
前記型用管部材の周囲に、軸方向に所定の長さに亘って、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の内層を形成することで、初期部材を形成する第2ステップと、
前記型用管部材を、前記初期部材から取り外す第3ステップと、
前記初期部材の軸方向の一方の端部に、円筒状の受け口型を取り付ける、第4ステップと、
外層を形成する第5ステップと、
を備え、
前記第5ステップでは、
前記受け口型の外周面、及び前記初期部材の前記一方の端部から中間部付近まで前記外層を積層させ、
前記外層が形成された当該初期部材から前記受け口型を取り外すとともに、当該受け口型を前記初期部材の他方の端部に取り付け、
取り付けた前記受け口型の外周面、及び前記初期部材の軸方向の他方の端部から中間部付近まで、前記外層を積層させる、曲管の製造方法。
【請求項2】
円弧状に延びる軸周りに形成された円筒状の型用管部材を準備する第1ステップと、
前記型用管部材の周囲に、軸方向に所定の長さに亘って、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の内層を形成することで、初期部材を形成する第2ステップと、
前記型用管部材を、前記初期部材から取り外す第3ステップと、
前記初期部材の外周面に、当該初期部材の軸方向の全長に亘って、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の外層を形成する第4ステップと、
を備える曲管の製造方法に使用する型用管部材であって、
周方向に並ぶ複数の型部材を有し、
前記各型部材を径方向内方に移動させることで、分解可能に構成されている、型用管部材。
【請求項3】
円弧状に延びる軸周りに形成され、複数のパーツに分離可能に構成されている円筒状の型用管部材、及び前記型用管部材の軸方向の一端部に着脱可能に取り付けられた円筒状の受け口型、を準備する第1ステップと、
少なくとも前記型用管部材の周囲に、軸方向に所定の長さに亘って、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の内層を形成することで、初期部材を形成する第2ステップと、
前記初期部材の外周面の少なくとも一部、及び受け口型の外周面に、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の外層を形成し、軸方向の一端部が拡径している中間部材を形成する第3ステップと、
前記中間部材から前記型用管部材及び受け口型を取り外すとともに、前記中間部材の軸方向の他端部に、受け口型を取り付ける第4ステップと、
前記中間部材の外周面の少なくとも一部、及び受け口型の外周面に、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の外層を形成する第5ステップと、
を備え、
前記型用管部材は、
軸方向の一方の端面における径方向の最も内側の点と、軸方向の他方の端面における径方向の最も外側の点を通り、且つ、当該型用管部材の側面視の方向に延びる分離面を境界とする、第1型部材及び第2型部材に分離可能に構成され、
前記第2型部材は、前記分離面に沿って、前記第1型部材に対してスライドして着脱するように構成され、
前記型用管部材の前記一方の端面と、前記分離面とのなす角が90度以内である、曲管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲管の製造方法、これに使用する型用管部材、及び曲管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、曲管は種々の方法で作製されていた。例えば、特許文献1には、両端部が斜めに切断された直管同士を連結することで、曲管を形成する方法が開示されている。しかしながら、この方法で製作された曲管は、内周面の継ぎ目が滑らかではないため、流体の流れの抵抗になり、流体がスムーズに流れないという問題がある。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献2には、曲管状の成形型を準備し、その周囲に繊維強化プラスチックを巻き付けることが開示されている。そして、繊維強化プラスチックを硬化させた後、成形型を取り外せば、曲管を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-140867号公報
【文献】特開平6-64055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の方法では、曲管の長さ(角度)によって成形型を準備する必要があり、コストが高くなるという問題があった。そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、低コストで汎用性の高い曲管の製造方法及びこれに用いる型用管部材を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の曲管の製造方法は、円弧状に延びる軸周りに形成された円筒状の型用管部材を準備する第1ステップと、前記型用管部材の周囲に、軸方向に所定の長さに亘って、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の内層を形成することで、初期部材を形成する第2ステップと、前記型用管部材を、前記初期部材から取り外す第3ステップと、前記初期部材の外周面に、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の外層を形成する第4ステップと、を備えている。
【0007】
この構成によれば、型用管部材の外周面に、所望の軸方向長さ(角度)の内層を形成し、その後、この内層に外層を形成するため、曲管の角度ごとに型用管部材を準備する必要がない。したがって、1つの型用管部材で、曲率が一定の種々の角度の曲管を製造することができるため、汎用性が高く、また低コストで曲管を製造することができる。
【0008】
上記第1の曲管の製造方法においては、前記第4ステップに先立って、前記初期部材の軸方向の一方の端部に、円筒状の受け口型を取り付ける、第5ステップを備えることができ、前記第4ステップでは、前記初期部材及び受け口型の外周面に、前記外層を形成することができる。
【0009】
この構成によれば、型用管部材の外周面に、所望の軸方向長さ(角度)の内層を形成し、その後、この内層に受け口型を取り付けてから外層を形成するため、曲管の角度ごとに型用管部材を準備する必要がない。したがって、1つの型用管部材で、曲率が一定の種々の角度の曲管を製造することができるため、汎用性が高く、また低コストで曲管を製造することができる。
【0010】
上記第1の曲管の製造方法において、前記内層の形成方法は特には限定されないが、例えば、前記第2ステップでは、ハンドレイアップ法により、前記内層を形成することができる。
【0011】
上記第1の曲管の製造方法において、前記外層の形成方法は特には限定されないが、例えば、前記第5ステップでは、フィラメントワインディング法により、前記外層を形成することができる。
【0012】
上記第1の曲管の製造方法において、前記型用管部材は、周方向に複数に分割された分割片を組み合わせることで構成することができ、前記第3ステップでは、前記型用管部材を複数の分割片に分解することで、前記型用管部材を前記内層部から取り外すことかできる。
【0013】
上記第1の曲管の製造方法において、前記外層の形成方法は特には限定されないが、例えば、前記第4ステップでは、前記初期部材の前記一方の端部から中間部付近まで前記外層を積層させ、前記第4ステップ後に、前記外層が形成された当該初期部材から前記受け口型を取り外すとともに、受け口型を前記初期部材の他方の端部に取り付ける、第6ステップと、前記受け口部材の外周面、及び前記初期部材の軸方向の他方の端部から中間部付近まで、前記外層を積層させる、第7ステップとをさらに備えることができる。
【0014】
上記第1の曲管の製造方法において、第4ステップでは、前記外層の形成に先立って、モルタル樹脂を有する中間層を形成することができる。
【0015】
本発明に係る第1の型用管部材は、上記曲管の製造方法において、上述したいずれかの曲管の製造方法に使用されるものである。
【0016】
本発明に係る第2の曲管の製造方法は、円弧状に延びる軸周りに形成された円筒状の型用管部材、及び前記型用管部材の軸方向の一端部に着脱可能に取り付けられた円筒状の受け口型、を準備する第1ステップと、少なくとも前記型用管部材の周囲に、軸方向に所定の長さに亘って、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の内層を形成することで、初期部材を形成する第2ステップと、前記初期部材の外周面の少なくとも一部、及び受け口型の外周面に、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の外層を形成し、軸方向の一端部が拡径している中間部材を形成する第3ステップと、前記中間部材から前記型用管部材及び受け口型を取り外すとともに、前記中間部材の軸方向の他端部に、受け口型を取り付ける第4ステップと、前記中間部材の外周面の少なくとも一部、及び受け口型の外周面に、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の外層を形成する第5ステップと、を備えている。
【0017】
上記第2の曲管の製造方法において、前記型用管部材は、複数のパーツに分離可能に構成することができる。
【0018】
上記第2の曲管の製造方法において、前記型用管部材は、軸方向の一方の端面における径方向の最も内側の点と、軸方向の他方の端面における径方向の最も外側の点を通り、且つ、当該型用管部材の側面視の方向に延びる分離面を境界とする、第1型部材及び第2型部材に分離可能に構成することができ、前記第2型部材は、前記分離面に沿って、前記第1型部材に対してスライドして着脱するように構成することができる。
【0019】
上記第2の曲管の製造方法においては、前記型用管部材の一方の端面と、前記分離面とのなす角を90度以内とすることができる。
【0020】
本発明に係る第2の型用管部材は、上述したいずれかの第2の曲管の製造方法に使用されるものである。
【0021】
本発明に係る第3の曲管の製造方法は、円弧状に延びる軸周りに形成された円筒状の型用管部材、及び前記型用管部材の軸方向の両端部にそれぞれ着脱可能に取り付けられた円筒状の受け口型、を準備する第1ステップと、少なくとも前記型用管部材の周囲に、軸方向に所定の長さに亘って、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の内層を形成することで、初期部材を形成する第2ステップと、前記初期部材の外周面、及び受け口型の外周面に、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の外層を形成し、軸方向の両端部が拡径している曲管を形成する第3ステップと、前記型用管部材及び受け口型を、前記曲管から取り外す第4ステップと、を備えている。
【0022】
本発明に係る第1の曲管は、円弧状に延びる軸周りに形成された円筒状の第1部位と、前記第1部位の軸方向の少なくとも一方の端部に連結され、第1部位よりも径の大きい円筒状の第2部位と、を備え、前記第1部位及び第2部位のうち、少なくとも前記第1部位には、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の内層が含まれ、前記第1部位及び第2部位には、前記内層に積層され、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の外層が含まれている。
【0023】
上記曲管においては、前記円弧状に延びる軸を、一定の曲率半径R0を有する軸とすることができる。
【0024】
上記曲管においては、前記曲率半径R0を、例えば、前記第1部位の外径Dの2~4倍とすることができる。
【0025】
本発明に係る第2の曲管は、一定の曲率半径R0を有する円弧状に延びる軸周りに形成された円筒状の第1部位を備え、前記第1部位は、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の内層と、前記内層に積層され、繊維強化プラスチックを含む少なくとも一層の外層と、を備えており、前記曲率半径が、前記第1部位の内径Dの2~4倍である。
【0026】
上記各曲管では、前記第1部位において、前記軸の曲率中心側の最内縁の曲率半径R1が、R0-0.5Dであり、前記軸の曲率中心とは反対側の最外縁の曲率半径R2が、R0+0.5Dであるものとすることができる。
【0027】
上記各曲管においては、前記内層と前記外層とを、異なる色に着色することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、低コストで汎用性の高い曲管の製造方法、及び曲管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る曲管の製造方法に用いる型用管部材の側面図である。
【
図3】型用管部材に内層を積層した状態を示す側面図である。
【
図5】型用管部材の取り外しを説明する断面図である。
【
図6】型用管部材の取り外しを説明する断面図である。
【
図8】初期部材の支持部材へ取付を説明する図である。
【
図10】外層が一部積層された中間部材の側面図である。
【
図16】第2実施形態に係る成形型の側面図である。
【
図18】第2実施形態に係る曲管の製造方法を示す側面図である。
【
図19】第2実施形態に係る曲管の製造方法を示す側面図である。
【
図20】第2実施形態に係る曲管の製造方法を示す側面図である。
【
図21】第2実施形態に係る曲管の製造方法を示す側面図である。
【
図22】第2実施形態に係る曲管の製造方法を示す側面図である。
【
図23】第2実施形態に係る曲管の製造方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る曲管の製造方法の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
A.第1実施形態
本実施形態に係る曲管の製造方法は、曲管の内層1を形成した後、これに受け口型2を取り付け、その後、外層3を形成する、という手順で行われる。以下、これらを詳細に説明する。
【0032】
<1.内層の形成>
内層1は、型用管部材5の外周面に形成される。そこで、まず、型用管部材5について説明する。
【0033】
図1は型用管部材の側面図、
図2は
図1のA-A線断面図である。
図1に示すように、この型用管部材5は、一定曲率の円弧状に延びる軸Lに沿って延びる円筒状に形成された曲管である。そして、
図2に示すように、この型用管部材5は、周方向に分割された4つのパーツ(分割片)により構成されている。具体的には、一対の対向配置される第1型部材51と、一対の対向配置される第2型部材52とを有し、これら第1型部材51と第2型部材52とが周方向に交互に並ぶように組み合わせることで、型用管部材5が構成される。各第1型部材51は、軸方向から見ると、中心角が約150度の外周面511と、中心角が約90度の内周面512と、外周面511の端部と内周面512の端部とを結ぶ一対の端面513と、を有している。端面513は、型用管部材5の径方向とは交差するように延びている。より詳細には、この端面513は、型用管部材5の軸心Sにいくにしたがって、径方向から離れるように延びている。したがって、一対の第1型部材51が対向配置されたとき、向き合う端面513同士の距離は、径方向外方にいくにしたがって小さくなっている。そして、この端面513同士の隙間に、次に説明する第2型部材52が径方向内方から嵌め込まれる。
【0034】
各第2型部材52は、軸方向から見ると、中心角が約30度の外周面521と、中心角が約90度の内周面522と、外周面521の端部と内周面522の端部とを結ぶ一対の端面523と、を有している。したがって、各第2型部材52の対向する端面523同士の距離は、径方向外方にいくにしたがって小さくなっており、上記のように、対向する第1型部材51の端面513の間に、楔のように嵌め込まれる。そして、第1型部材51の端面513と、これに接する第2型部材52の端面523とはボルト53によって固定されており、これによって、円筒状の曲管を構成している。
【0035】
次に、上記のように構成された型用管部材5の外周面に、内層1を形成する。内層1は、種々の方法で形成することができるが、例えば、ハンドレイアップ法を採用することができる。具体的には、型用管部材5の外周面に樹脂強化用繊維を巻き付けた後、マトリックス樹脂を含浸させる。その後、マトリックス樹脂を硬化させれば、
図3及び
図4に示すように、繊維強化プラスチックによる内層1が形成される。このとき、内層1は、型用管部材5の軸方向の全体に亘って形成する必要はなく、
図3に示すように、所望の長さに亘って形成する。こうして形成された内層1を初期部材10と称することとする。また、この内層1の軸方向Lの各端部をそれぞれ、第1端部11、第2端部12と称することとする。この点は、後述する中間部材20も同じであり、中間部材20の軸方向の各端部においても同様に、第1端部21、第2端部22と称することとする。
【0036】
なお、内層1の繊維強化プラスチックに用いられる樹脂強化用繊維としては、例えば、ガラス繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維などの無機繊維;PAN (ポリアクリロニトリル) 系炭素繊維およびピッチ系炭素繊維などの炭素繊維;ならびに、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、高強度ポリプロピレンなどの有機繊維;ケナフ、麻などの天然繊維が挙げられる。これらの繊維は、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。樹脂強化用繊維の形態としては、フィラメント、ストランド、ロービング、バルキーロービング、ロービングクロス、チョップ、チョップドストランドマット、クロス、などを挙げることができる。
【0037】
また、マトリックス樹脂としては、一般的に熱硬化性樹脂が好ましく用いられるが、熱可塑性樹脂を特に除外するものではない。例えば、ウレタン、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフイド、およびポリ(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。
【0038】
<2.型用管部材の取り外し>
次に、初期部材10から型用管部材5を取り外す。まず、第1型部材51と第2型部材52とを固定していたボルト53を取り外す。次に、
図5に示すように、両第2型部材52を、型用管部材5の径方向内方に移動させる。すなわち、両第2型部材52が、径方向において互いに近接するように移動させる。このとき、例えば、両第2型部材52の内周面522同士をターンバックルにより連結した後、両第2型部材52を近接させることができる。これにより、第1型部材51と第2型部材52との接触状態が解除される。その後、第2型部材52を軸方向Lに移動し、初期部材10から取り外す。また、両第1型部材51も、第2型部材52が取り外されたことにより、初期部材10から移動可能となるため、
図6に示すように、初期部材10から取り外す。こうして、型用管部材5が初期部材10から取り外される。
【0039】
<3.受け口型の取付>
次に、
図7に示すように、初期部材10の軸方向の第1端部11の開口に、受け口型2を取り付ける。受け口型2は、この曲管を直管に繋ぐための連結部材である。具体的には、この受け口型2は、径の大きい円筒状の大径部21と、径の小さい円筒状の小径部22とが軸方向に連結されることで、構成されている。小径部22の外径は、初期部材10の内径とほぼ同じ大きさであり、大径部21の外径は、初期部材10の外径よりもやや大きく形成されている。そして、この受け口型2の小径部22を、初期部材10の第1端部11の開口に嵌め込む。続いて、初期部材10の第1端部11と受け口型2とを仮固定するため、これらの接合部分に、例えば、ハンドレイアップ法により、繊維強化プラスチックを積層し、硬化する。なお、受け口型は、例えば、表面に硬質メッキ処理層を有するステンレス等の金属、FRP等で形成することができる。
【0040】
<4.外層の形成>
続いて、外層3を形成する。ここでは、フィラメントワインディング法により外層3を形成する。まず、
図8に示すように、受け口型が取り付けられた初期部材(以下、単に初期部材という)10の第1端部21の受け口型2を、支持部材6に固定する。支持部材6は、水平軸X周りに回転可能であり、支持部材6に取り付けられた初期部材10を水平軸X周りに回転させることができる。次に、
図9に示すように、支持部材6とともに初期部材10を回転させつつ、マトリックス樹脂が含浸された樹脂強化用繊維7を、中間部材20の外周面に巻き付けていく。このとき、樹脂強化用繊維7は、初期部材10の第1端部21側から軸方向の中心付近まで巻き付ける。これにより、
図10に示すように、受け口型2の大径部21及び内層1の約半分が樹脂強化用繊維7で覆われる。
【0041】
こうして、樹脂強化用繊維7が初期部材10の軸方向の中心付近まで巻き付けられると、初期部材10を支持部材6から取り外すとともに、受け口型2も初期部材10から取り外す。そして、
図11に示すように、初期部材10の第2端部22に、上記と同様の方法で、取り外した受け口型2を取り付け仮固定する。これに続いて、
図12に示すように、支持部材6に初期部材10の第2端部22の受け口型2を取り付け、支持部材6とともに初期部材10を回転させつつ、マトリックス樹脂が含浸された樹脂強化用繊維7を巻き付けていく。このとき、樹脂強化用繊維7は、初期部材10の第2端部22側から軸方向の中心付近まで巻き付ける。これにより、受け口型2の大径部21及び内層1が樹脂強化用繊維7で覆われる。
【0042】
以上のようにして、受け口型2及び内層1が軸方向の全体に亘って、樹脂強化用繊維7で覆われる。続いて、受け口型2を取り外した後、これを硬化炉に収容し、マトリックス樹脂を硬化させると、
図13に示すように、本実施形態に係る曲管が完成する。すなわち、この曲管は、円弧状に延びる軸周りに形成された円筒状の第1部位801と、この第1部位801の軸方向の両端部に連結され、第1部位よりも径の大きい円筒状の第2部位802と、を備えたものである。なお、上記の説明では、初期部材10の第1端部21から取り外した受け口型2を、第2端部22に取り付けているが、他の受け口型を準備しておき、これを第2端部22に取り付けることもできる。
【0043】
<5.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1) 型用管部材5の外周面に、所望の軸方向長さ(角度)の内層1を形成し、その後、この内層1に受け口型2を取り付けてから外層3を形成するため、曲管の角度ごとに型用管部材5を準備する必要がない。したがって、1つの型用管部材5で、曲率が一定の種々の角度の曲管を製造することができるため、汎用性が高く、また低コストで曲管を製造することができる。
【0044】
(2) 型用管部材を用いて曲管を製造するため、継ぎ目のない滑らかな内壁面の曲管を製造することができる。したがって、流体の流れの損失水頭が少なく、水理性を向上することができる。
【0045】
(3) 型用管部材5は、内層1を形成するときにのみ用いるため、曲管を製造する際の型用管部材5の占有時間が少ない。したがって、型用管部材5を効率的に用いることができ、製造効率を向上することができる。
【0046】
(4) 受け口型2が取り付けられていない内層1を先に作製するため、例えば、従来の方法に比べ、型用管部材5の取り外しが容易である。
<6.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組み合わせ可能である。また、以下の変形例のうち、内層1及び外層3の材料に係る説明は、後述する第2実施形態にも適用することができる。
【0047】
<6-1>
上記実施形態で用いられる受け口型は、一例であり、直管を連結するための構造を有するものであり、且つ内層の両端に接続できるものであれば、その構造は特には限定されない。また、受け口型は、内層の一方の端部にのみ取り付けることもできる。
【0048】
<6-2>
型用管部材の構成は、内層から取り外し可能な構造であれば、特には限定されない。したがって、例えば、型用管部材が縮径するような構造であってもよい。
【0049】
<6-3>
内層1及び外層3は,一層でなくてもよく、複数の層を積層させるものであってもよい。例えば、繊維方向の異なる樹脂強化用繊維を別途積層させることもできる。また、外層3の積層に先立って、例えば、中間層として、樹脂モルタル層を積層させることもできる。
【0050】
<6-4>
内層1及び外層3の形成方法、及び受け口型2を仮止めする方法は、特には限定されず、例えば、フィラメント、マットおよび/またはクロスを積層した後にインフュージョン法等の真空成形またはRTM工法によってマトリックス樹脂を含浸させる方法、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法などを挙げることができる。また、受け口型2を仮止めする方法は、他の方法であってもよく、受け口型2を内層1に固定できるのであれば、特には限定されない。
【0051】
<6-5>
上記実施形態で示した受け口型2は、種々の構成が可能であり、例えば、
図14に示すように、小径部22に対して大径部21を軸方向に移動可能に取り付けることもできる。これにより、例えば、
図15に示すように、受け口型2において、初期部材に嵌め込まれていない小径部(大径部21を挟んで反対側の部分)22aを直管として用いることができるため、曲管の端部に直管を設けることができる。その結果、曲管の有効長を延長することができる。
【0052】
<6-6>
上記実施形態では、曲管の両端に受け口型を取付けて第2部位を形成したが、第1部位のみで曲管を構成することもできる。以下、この曲管について、説明する。
まず、初期部材10から型用管部材5を取り外した後、受け口型2を初期部材10に取り付けることなく、初期部材10の軸方向の一端部を支持部材6に固定する。このとき、支持部材6には、初期部材10の一端部の開口を複数個所で掴むクランプを備えている。次に、クランプを回避して上述したように外層3をフィラメントワインディング法などで形成する。クランプを回避した部分は、その後、切除して挿し口となる一端部となるように仕上げを行う。
【0053】
この後、さらに挿し口にフランジ継手を設けてもよい。フランジ継手は、筒体と筒体の一端から伸びる円形状の鍔とで構成されている。そして、筒体に挿し口を挿入するか、あるいは筒体と突き合わせて、筒体と曲管をハンドレイアップ法により一体化することもできる。こうすることで、両端が受け口の曲管だけでなく、少なくとも一方が挿し口であったり、フランジ継手である曲管を形成することができる。また、曲管の一端に直管をハンドレイアップ法により取り付けて直線部と曲線部とを有する曲管を形成してもよい。
【0054】
B.第2実施形態
次に、本発明に係る曲管の製造方法の第2実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る成形型について説明し、その後、製造方法について説明する。
【0055】
<1.成形型>
図16は、本実施形態に係る成形型の側面図である。
図16に示すように、本実施形態に係る成形型は、型用管部材100と受け口型200とを着脱自在に組み合わせたものである。型用管部材100は、第1実施形態と同様の外形を有する曲管であるが、2つのパーツに分割できるようになっている。まず、型用管部材100の一方の開口(第1開口)101において、型用管部材100の径方向の最も内側の点Aと、型用管部材100の他方の開口(第2開口)102において、型用管部材100の径方向の最も外側の点Bとを規定する。そして、点A及び点Bを通り、
図16の紙面に垂直(側面視の方向)な仮想面を規定する。この仮想面を分離面Sと称することとする。
【0056】
そして、この分離面Sを境界として、型用管部材100を分断し、2つのパーツを形成する。ここでは、第1開口101を含むパーツを第1型部材110、第2開口102を含むパーツを第2型部材120と称することとする。
図17に示すように、第2型部材120は、分離面Sに沿って第1型部材110に対してスライド可能に構成されており、第2型部材120を点B側にスライドさせることで、第1型部材110から取り外すことができる。そのため、両型部材110、120には、スライドのためのガイドを設けることができる。また、第2型部材120と第1型部材110とは、ボルトなどの第1固定部材103で着脱可能に固定されており、例えば、作業者は、
図16の組立状態において、第2開口102から手を入れて、第1固定部材103を取り外すことができる。その後、第2型部材120をスライドさせて、第1型部材110から取り外す。
【0057】
なお、本実施形態に係る型用管部材100では、第1開口101を含む面(端面)と、分離面Sとがなす角θが、90度以内に規定されている。すなわち、90度以内でなければ、後述するように、中間部材から第2型部材120を型抜きすることが難しい。
【0058】
また、受け口型200は、第1実施形態と同様に、大径部210と小径部220とを備えており、小径部220が第1型部材110の第1開口101に挿入され、ボルトなどの第2固定部材105で着脱可能に固定されている。
【0059】
<2.曲管の製造方法>
次に、曲管の製造方法について説明する。まず、
図18に示すように、上記成形型の外周面のうち、型用管部材100に内層1を形成する。内層1は、第1実施形態と同様の材料で、同様の方法により成形することができる。例えば、ハンドレイアップ法を採用して内層1を成形することができる。このとき、第1実施形態と同様に、型用管部材100の軸方向の全体に亘って形成する必要はなく、
図18に示すように、所望の長さに亘って形成する。こうして、初期部材300が形成される。ここでは、初期部材300において、受け口型200が取付けられた側の開口を第1開口301、反対側の開口を第2開口302と称することとする。なお、内層1は、型用管部材100だけでなく、受け口型220にも形成することができる。
【0060】
次に、第1実施形態と同様に、初期部材300の外周面に外層3を形成する。まず、
図19に示すように、初期部材300に取付けられた受け口型200を支持部材6に固定する。続いて、
図20に示すように、支持部材6とともに初期部材300を回転させつつ、マトリックス樹脂が含浸された樹脂強化用繊維7を、初期部材300の外周面に巻き付けていく。このとき、樹脂強化用繊維7は、初期部材300の軸方向の全体に亘って巻き付ける。こうして、中間部材400が形成される。以下、この中間部材400において、受け口型200が取り付けられた側の開口を第1開口401、その反対側の開口を第2開口402と称することとする。
【0061】
続いて、中間部材400を支持部材6から取り外し、さらに、成形型を取り外す。すなわち、
図21に示すように、第1固定部材103を取り外した後、第2型部材120を第1型部材110からスライドさせて取り外す。また、第2固定部材120を取り外した後、受け口型200を第1型部材110から取り外す。その後、第1型部材110を中間部材400の第1開口401から取り外す。
【0062】
これに続いて、
図22に示すように、中間部材400の第2開口401に、取り外した受け口型200を取付ける。例えば、受け口型200の小径部220を第2開口402に挿入した後、拡径することで、受け口型200を中間部材400に取付ける。あるいは、または、これに加えてハンドレイアップ法により樹脂材料を塗布することで受け口型200と中間部材400とを固定することもできる。なお、取り外した受け口型200を第2開口402に取り付けるのではなく、別途準備した受け口型を取り付けることもできる。
【0063】
そして、
図23に示すように、受け口型200を支持部材6に取付けた後、上記と同様に、フィラメントワインディング法により、さらに外層3を形成する。このとき、樹脂強化用繊維7は、受け口型200の外周面に加え、中間部材400全体に亘って巻き付けることができる。その後、受け口型200を取り外し、これを硬化炉に収容し、マトリックス樹脂を硬化させると、
図13と同様に、軸方向の両端部に、径の大きい第2部位802が形成された曲管が完成する。
【0064】
以上のように、本実施形態によれば、型用管部材100が分離可能となっており、初期部材300を成形した後に、ここから型用管部材100及び受け口型200を取態で、内層1及び外層3の成形を行うことができる。したがって、第1実施形態と比べて工程を少なくすることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、型用管部材100を第1型部材110と第2型部材120とに分離できるように構成しているが、上述した角度θが90度以内となるような型用管部材100であれば、第2実施形態に係る製造方法が適用できる。しかし、この角度が90度を超えるような型用管部材は使用しがたいため、これに対応するような呼び径や曲率半径を有する曲管を成形する場合には、第1実施形態を適用することが好ましい。
【0066】
但し、型用管部材100の構成は、特には限定されず、中間部材400から型用管部材100を取り外すことができるのであれば、他の分離方法により複数のパーツに分離してもよい。
【0067】
また、型用管部材の両端部に受け口型をそれぞれ取り付けた成形型を準備し、これを用いて、内層及び外層を成形して曲管を製造することもできる。この場合、受け口型及び型用管部材は、曲管から取り外しできるように適宜構成することができる。
【0068】
また、上記第2実施形態では、
図20において、樹脂強化用繊維7を、初期部材300の軸方向の全体に亘って巻き付けたが、軸方向の半分程度まで巻き付けることもできる。この場合、受け口型200を反対側に付け替えた後、内層1の外周面において、樹脂強化用繊維7が巻き付けられていない箇所に、樹脂強化用繊維7を巻き付けることができる。そして、必要に応じて、さらに内層1の外周面に軸方向の全体に亘って樹脂強化用繊維7を巻き付けることもできる。なお、内層1や外層3を形成する箇所は、軸方向の全長でなくてもよく、適宜変更することができる。
【0069】
C.曲管
従来の製造方法では、曲率半径が一定である滑らかな管中心線を有する曲管を製造することができなかったが、上記実施形態に係る製造方法により、そのような曲管の製造が可能となった。そこで、以下では、
図24を参照しつつ、そのような曲管の特徴について説明する。
【0070】
(1)
図24に示すように、この曲管は、円弧状に延びる軸(管中心軸)周りに形成された円筒状の第1部位801と、この第1部位801の軸方向の両端部に連結され、第1部位801よりも径の大きい円筒状の第2部位802と、を備えたものである。そして、この曲管の管中心軸Lは、一定の曲率半径R
0を有している。したがって、この曲管は、滑らかに曲がっているため、従来の曲管よりも損失係数を大きく低減することができる。そのため、損失係数を低減すべき、種々の導水管路に用いることができ、例えば、小水力発電用の導水管路の曲がり部分に用いることができる。さらに、この曲管は一体的に形成されているので圧縮強度が高く、従来必要であった曲管を覆うコンクリート防護壁が不要となる。但し、曲率半径R
0は厳密に一定でなくてもよく、管中心軸Lに沿って多少のずれがあってもよい。
【0071】
(2)この曲管の第1部位801の内径Dは、曲率半径R0の3倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがさらに好ましい。このように、R0/D≧3を充足すると、損失係数が相当に減少する。但し、スペースが確保できない場合などには、R0/D≧2であってもよい。以上より、2≦R0/D≦4であることが好ましい。
【0072】
(3)また、曲管の形状は適宜変更することができるが、例えば、曲管の第1部位801において、管中心軸Lの曲率中心C側の最内縁805の曲率半径R1が、R0-0.5Dとし、管中心軸Lの曲率中心Cとは反対側の最外縁806の曲率半径R2が、R0+0.5Dとなるように、曲管を設計することができる。
【0073】
(4)また、
図25に示すように、第2部位802を有さず、第1部位801のみで曲管を構成することもできる。この点は、第1実施形態の変形例で示したとおりである。この曲管についても、
図24の曲管と同様に、曲率半径R
0,R
1,R
2、内径Dを規定することができる。
【0074】
(5)内層1と外層3とを異なる色に着色することができる。このようにすると、例えば、内層1が摩耗したときに、色の異なる外層3が露出するため、内層1の摩耗を容易に視認することができる。着色方法については、特には限定されないが、例えば、内層1にカーボンブラックなどの黒色顔料やタールを含有させずに白色とし、外層3には黒色顔料やタールを含有させて黒色とすることができる。あるいは、外層3を黒とし、内層1に、黒以外の色素(顔料、染料など)を含有させて、外層3とは異なる色にすることができる。さらに、外層3が複数の積層構造である場合は、そのうちの一層が内層1と異なる色であればよい。例えば、外層3の最内層に黒色など他の層と異なる色付きの有機繊維不織布を設けてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 内層
2 受け口型
3 外層
801 第1部位
802 第2部位