(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ソールおよびこれを備えた靴
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20240603BHJP
A43B 13/18 20060101ALI20240603BHJP
A43B 13/41 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A43B13/14 D
A43B13/18
A43B13/41
(21)【出願番号】P 2023055534
(22)【出願日】2023-03-30
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 善紀
(72)【発明者】
【氏名】相場 俊輝
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-238609(JP,A)
【文献】特開2002-320502(JP,A)
【文献】特開平08-038211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/14
A43B 13/18
A43B 13/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部と、着用者の足の踏まず部を支持する中足部と、着用者の足の踵部を支持する後足部とが、前後方向に沿って連なって設けられたソールであって、
着用者の足の足裏を支持する支持面である前記ソールの上面を規定するミッドソールと、
接地面である前記ソールの下面を規定するアウトソールとを備え、
前記ミッドソールは、フォーム材からなり、
前記後足部は、前記ミッドソールおよび前記アウトソールが上下方向に距離をもって対向配置された対向領域を、前記ソールの下面の法線方向に沿って見た場合における前記ソールの踵中心を含む部分に有し、
前記対向領域には、前記ミッドソールおよび前記アウトソールによって上下方向において挟み込まれた固体状の粘弾性体からなる緩衝材が設けられ、
前記緩衝材は、前記踵中心に重なるようにまたは前記踵中心を取り巻くように位置し、
前記後足部のうちの前記対向領域に対応する部分の内足側端部には、前記緩衝材よりも剛性が高いパネル状の内足側高剛性部材が設けられ、
前記後足部のうちの前記対向領域に対応する部分の外足側端部には、前記緩衝材よりも剛性が高いパネル状の外足側高剛性部材が設けられ、
前記内足側高剛性部材が左右方向において前記緩衝材に対して距離をもって対向配置されるように、前記内足側高剛性部材の上側部分が前記ミッドソールに固定されるとともに、前記内足側高剛性部材の下側部分が前記アウトソールに固定され、かつ、前記外足側高剛性部材が左右方向において前記緩衝材に対して距離をもって対向配置されるように、前記外足側高剛性部材の上側部分が前記ミッドソールに固定されるとともに、前記外足側高剛性部材の下側部分が前記アウトソールに固定されることにより、前記緩衝材を取り囲むポケット状の空間が、前記対向領域に形成されている、ソール。
【請求項2】
前記緩衝材が、前記踵中心を取り巻くように配置された、周方向に切れ目を有する
C字状の環状形状を有し、
前記切れ目が、前記ソールの後方末端側の位置に配置されている、請求項1に記載のソール。
【請求項3】
前記緩衝材の上面の内周縁に、凹形状の環状段差部が設けられている、請求項2に記載のソール。
【請求項4】
前記緩衝材の上面に、当該上面の内周縁から外周縁に達する溝部が設けられている、請求項2に記載のソール。
【請求項5】
前記緩衝材の上面が、前方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面にて構成されている、請求項1に記載のソール。
【請求項6】
前記緩衝材が、下面側から上面側に向かうにつれて外形が小さくなる錐台形状を概ね有している、請求項1に記載のソール。
【請求項7】
前記内足側高剛性部材に左右方向に沿って貫通する貫通孔が設けられ、
前記外足側高剛性部材に左右方向に沿って貫通する貫通孔が設けられている、請求項1に記載のソール。
【請求項8】
前記内足側高剛性部材が、前後方向および左右方向に沿って概ね延在する板形状の第1底壁部と、当該第1底壁部の内足側の縁部から立設されるとともに前後方向および上下方向に沿って概ね延在する板形状の第1側壁部とを含み、
前記第1底壁部の下面が、前記アウトソールの上面に接合され、
前記第1側壁部の外足側の壁面が、前記ミッドソールの内足側側面に接合され、
前記外足側高剛性部材が、前後方向および左右方向に沿って概ね延在する板形状の第2底壁部と、当該第2底壁部の外足側の縁部から立設されるとともに前後方向および上下方向に沿って概ね延在する板形状の第2側壁部とを含み、
前記第2底壁部の下面が、前記アウトソールの上面に接合され、
前記第2側壁部の内足側の壁面が、前記ミッドソールの外足側側面に接合されている、請求項1に記載のソール。
【請求項9】
前記内足側高剛性部材の前端が、前記外足側高剛性部材の前端よりも前方側に位置している、請求項1に記載のソール。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のソールと、
前記ソールの上方に設けられたアッパーとを備えた、靴。
【請求項11】
前記内足側高剛性部材が、前記ミッドソールの内足側側面を越えて前記アッパーの内足側側面の一部を覆うとともに当該アッパーの内足側側面の前記一部に接合され、
前記外足側高剛性部材が、前記ミッドソールの外足側側面を越えて前記アッパーの外足側側面の一部を覆うとともに当該アッパーの外足側側面の前記一部に接合されている、請求項10に記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソールおよびこれを備えた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
着地時の衝撃を緩和する目的でソールに緩衝材が設けられてなる靴が開示された文献としては、たとえば国際公開第2018/070045号(特許文献1)や国際公開第2021/111667号(特許文献2)等がある。
【0003】
特許文献1に開示のソールは、ミッドソール、アウトソールおよび緩衝材を含んでおり、緩衝材は、着用者の足の踵部を支持する後足部において、ミッドソールとアウトソールとによって挟み込まれるように位置している。
【0004】
また、特許文献2の
図43ないし
図46に開示のソールは、ミッドソール、アウトソールおよび緩衝材に加え、難変形部としての比較的硬質な樹脂部材を含んでいる。当該特許文献2に開示のソールにあっては、難変形部としての樹脂部材が、着用者の足の踵部を支持する後足部において、ミッドソールの下面を覆うように位置しており、緩衝材は、この難変形部とアウトソールとによって挟み込まれるように位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/070045号
【文献】国際公開第2021/111667号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および2に開示のソールは、緩衝性、安定性、耐久性および軽量化の面において良好な性能を発揮するものである。その反面、近年の靴に対する高機能化の要請に伴い、これら緩衝性、安定性、耐久性および軽量化に関して、より高次元での実現が求められている。しかしながら、緩衝性、安定性、耐久性および軽量化は、いわばトレードオフの関係にあり、これら性能のいずれをも損なうことなく高次元で実現することは、非常に困難である。
【0007】
たとえば、上記特許文献1に開示のソールは、後足部の周縁に沿って緩衝材が配置されたものであり、後足部の踵中心およびその周辺には、緩衝材が位置しておらず、緩衝性の面において未だ改善の余地があるものである。この点、単に緩衝材を踵中心にまで配置した場合には、軽量化や安定性が阻害されるおそれがある。
【0008】
また、上記特許文献2に開示のソールは、ミッドソールの下面に難変形部が配置されたものであり、緩衝性や軽量化の面において未だ改善の余地があるものである。この点、単に難変形部を取り除いた場合には、安定性が大幅に阻害されるおそれがある。
【0009】
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、緩衝性、安定性、耐久性および軽量化に優れた靴およびこれに具備されるソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に基づくソールは、着用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部と、着用者の足の踏まず部を支持する中足部と、着用者の足の踵部を支持する後足部とが、前後方向に沿って連なって設けられたものであり、着用者の足の足裏を支持する支持面である上記ソールの上面を規定するミッドソールと、接地面である上記ソールの下面を規定するアウトソールとを備えている。上記ミッドソールは、フォーム材からなる。上記後足部は、上記ミッドソールおよび上記アウトソールが上下方向に距離をもって対向配置された対向領域を、上記ソールの下面の法線方向に沿って見た場合における上記ソールの踵中心を含む部分に有している。上記対向領域には、上記ミッドソールおよび上記アウトソールによって上下方向において挟み込まれた固体状の粘弾性体からなる緩衝材が設けられている。上記緩衝材は、上記踵中心に重なるようにまたは上記踵中心を取り巻くように位置している。上記後足部のうちの上記対向領域に対応する部分の内足側端部には、上記緩衝材よりも剛性が高いパネル状の内足側高剛性部材が設けられており、上記後足部のうちの上記対向領域に対応する部分の外足側端部には、上記緩衝材よりも剛性が高いパネル状の外足側高剛性部材が設けられている。上記本発明に基づくソールにあっては、上記内足側高剛性部材が左右方向において上記緩衝材に対して距離をもって対向配置されるように、上記内足側高剛性部材の上側部分が上記ミッドソールに固定されるとともに、上記内足側高剛性部材の下側部分が上記アウトソールに固定され、かつ、上記外足側高剛性部材が左右方向において上記緩衝材に対して距離をもって対向配置されるように、上記外足側高剛性部材の上側部分が上記ミッドソールに固定されるとともに、上記外足側高剛性部材の下側部分が上記アウトソールに固定されることにより、上記緩衝材を取り囲むポケット状の空間が、上記対向領域に形成されている。
【0011】
本発明に基づく靴は、上述した本発明に基づくソールと、当該ソールの上方に設けられたアッパーとを備えてなるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、緩衝性、安定性、耐久性および軽量化に優れた靴およびこれに具備されるソールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】
図1に示すソールを内足側から見た模式側面図である。
【
図4】
図1に示すソールを外足側から見た模式側面図である。
【
図5】
図2中に示すV-V線に沿った模式断面図である。
【
図6】
図2中に示すVI-VI線に沿った模式断面図である。
【
図8】
図1に示すソールからミッドソールを取り除いた状態における模式平面図である。
【
図9】
図1に示す緩衝材を上面側から見た斜視図である。
【
図10】
図1に示す緩衝材を下面側から見た斜視図である。
【
図11】第1ないし第3変形例に係る緩衝材の平面図である。
【
図12】第4ないし第6変形例に係る緩衝材の平面図である。
【
図13】第7ないし第9変形例に係る緩衝材の平面図である。
【
図14】第10変形例に係る緩衝材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0015】
<実施の形態>
図1は、実施の形態に係る靴の概略斜視図であり、
図2は、
図1に示すソールの模式平面図である。
図3および
図4は、それぞれ
図1に示すソールを内足側および外足側から見た模式側面図であり、
図5および
図6は、それぞれ
図2中に示すV-V線およびVI-VI線に沿った模式断面図である。
図7は、
図1に示すソールの分解斜視図であり、
図8は、
図1に示すソールからミッドソールを取り除いた状態における模式平面図である。また、
図9および
図10は、それぞれ
図1に示す緩衝材を上面側および下面側から見た斜視図である。以下、これら
図1ないし
図10を参照して、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10について説明する。
【0016】
図1に示すように、靴100は、ソール10と、アッパー60とを備えている。ソール10は、略偏平な形状を有しており、着用者の足の足裏を支持する支持面11(
図2ないし
図4等参照)を規定する上面と、歩行時および走行時等の使用時において地面に着地する接地面12を規定する下面と、これら上面および下面を接続する内足側側面および外足側側面とを備えている。ソール10は、着用者の足の足裏を支持する部材である。アッパー60は、ソール10の上方に位置しており、挿入された着用者の足の足首よりも末端側の部分のほぼすべてを覆う形状を有している。
【0017】
図2ないし
図4に示すように、ソール10は、平面視した状態において着用者の足の足長方向に合致する方向である前後方向(
図2における図中上下方向、
図3および
図4における図中左右方向)に沿って、着用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部R1と、着用者の足の踏まず部を支持する中足部R2と、着用者の足の踵部を支持する後足部R3とに区画される。
【0018】
ここで、ソール10の前方側末端を基準とし、当該前方側末端からソール10の前後方向の寸法の40%の寸法に相当する位置を第1境界位置とし、当該前方側末端からソール10の前後方向の寸法の60%の寸法に相当する位置を第2境界位置とした場合に、前足部R1は、前後方向に沿って前方側末端と第1境界位置との間に含まれる部分に該当し、中足部R2は、前後方向に沿って第1境界位置と第2境界位置との間に含まれる部分に該当し、後足部R3は、前後方向に沿って第2境界位置と靴底の後方側末端との間に含まれる部分に該当する。
【0019】
また、
図2に示すように、ソール10は、平面視した状態において着用者の足の足幅方向に合致する方向である左右方向(図中左右方向)に沿って、足のうちの解剖学的正位における正中側(すなわち正中に近い側)である内足側の部分(図中に示すS1側の部分)と、足のうちの解剖学的正位における正中側とは反対側(すなわち正中に遠い側)である外足側の部分(図中に示すS2側の部分)とに区画される。
【0020】
ここで、内足側の部分と外足側の部分とにソール10を区画する境界線は、いわゆるシューセンターSCである。このシューセンターSCは、靴100に適合したサイズの足を有する標準的な着用者がこれを着用した場合に、当該着用者の第1足趾および第2足趾間の部分と踵骨の中心部分(いわゆる踵中心(当該踵中心を
図2等において符号HCで示している))とを結んだ直線を上下方向に沿ってソール10に投影した場合に得られる直線である。なお、上述したソール10の前方側末端および後方側末端は、このシューセンターSC上に位置したソール10の端部である。
【0021】
図1に示すように、アッパー60は、アッパー本体61と、シュータン62と、シューレース63とを有している。このうち、シュータン62およびシューレース63は、いずれもアッパー本体61に固定または取り付けられている。
【0022】
アッパー本体61の上部には、着用者の足の足首の上部と足の甲の一部とを露出させる上側開口部が設けられている。一方、アッパー本体61の下部には、一例としては、ソール10によって覆われる下側開口部が設けられており、他の例としては、当該アッパー本体61の下端が袋縫いされること等で底部が形成されている。
【0023】
シュータン62は、アッパー本体61に設けられた上側開口部のうち、着用者の足の甲の一部を露出させる部分を覆うようにアッパー本体61に縫製、溶着あるいは接着またはこれらの組み合わせ等によって固定されている。アッパー本体61およびシュータン62としては、たとえば織地や編地、不織布、合成皮革、樹脂等が用いられ、特に通気性や軽量性が求められる靴においては、ポリエステル糸を編み込んだダブルラッセル経編地が利用される。
【0024】
シューレース63は、アッパー本体61に設けられた着用者の足の甲の一部を露出させる上側開口部の周縁を着用者の足の足幅方向において互いに引き寄せるための紐状の部材からなり、当該上側開口部の周縁に設けられた複数の孔部に挿通されている。アッパー本体61に着用者の足が挿入された状態においてこのシューレース63を締め付けることにより、アッパー本体61を当該足に密着させることが可能になる。
【0025】
図1ないし
図7に示すように、ソール10は、ミッドソール20と、アウトソール30と、内足側高剛性部材40Aと、外足側高剛性部材40Bと、緩衝材50とを有している。ここで、
図2を除く
図1ないし
図8においては、理解を容易とするために、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bに薄い色を付し、緩衝材50に濃い色を付している(なお、
図8ないし
図10ならびに後述する
図11ないし
図14においても同様である)。
【0026】
ミッドソール20は、ソール10の上部に配置されており、アウトソール30は、ソール10の下部に配置されている。内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bは、それぞれソール10の後端寄りの内足側端部および外足側端部に配置されており、緩衝材50は、ソール10の後端寄りの所定位置に配置されている。
【0027】
図1ないし
図7に示すように、ミッドソール20は、ソール10のベースとなる部分であり、中足部R2を経由して前足部R1から後足部R3にかけて連続して位置している。ミッドソール20は、概ね偏平な略板状の形状を有しており、後述するアウトソール30よりもその厚みは相対的に厚く構成されている。
【0028】
特に
図7を参照して、ミッドソール20は、上面21と、下面22と、内足側側面23と、外足側側面24とを含んでおり、このうちの上面21が、上述したソール10の支持面11を規定している。ミッドソール20の上面21は、アッパー本体61にたとえば接着等によって接合されており、これによりソール10がアッパー60に固定されている(
図1参照)。
【0029】
ミッドソール20の上面21は、その周縁が周囲に比して盛り上がった形状を有している。これにより、ミッドソール20の上面21には、凹状の部位が設けられることになり、この凹状の部位が、アッパー60を受け入れるための部位となる。この凹状の部位の底面である上記周縁を除く部分のミッドソール20の上面21は、着用者の足の足裏にフィットするように滑らかな曲面形状を有している。
【0030】
ここで、特に
図3ないし
図5に示すように、ミッドソール20の下面22は、中足部R2の後端寄りの部分から後足部R3にかけて、ソール10の後端側に近づくにつれて上側に向かう傾斜形状を有している。また、特に
図5および
図7に示すように、ミッドソール20の下面22の後端部分には、下方に向けて突出する脚部25が設けられている。これら傾斜形状を有する部分の下面22および脚部25により、ミッドソール20の下面22の所定位置には、凹状の切り欠き部が設けられることになる。この凹状の切り欠き部が、対向領域A(
図2ないし
図5等参照)を形成することになるが、その詳細について後において詳述する。
【0031】
ミッドソール20は、これが単一の部材にて構成されていてもよいし、複数の部材に分割されて構成されていてもよい。たとえばミッドソール20を複数の部材に分割して構成した場合には、それらの間に高剛性プレートを挿入することにより、ミッドソール20の内部にこれを埋設することができる。この高剛性プレートは、後述する内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bとは異なる部材であり、特に走行時においてソールに発生する背屈を抑制することで蹴り出し時における前方に向けての推進力を増大させるものである。
【0032】
ミッドソール20は、適度な強度を有しつつも緩衝性に優れていることが好ましく、当該観点から、ミッドソール20としては、たとえば、主成分としての樹脂材料と、副成分としての発泡剤や架橋剤とを含む樹脂製のフォーム材が用いられる。また、これに代えて、主成分としてのゴム材料と、副成分としての可塑剤や発泡剤、補強剤、架橋剤とを含むゴム製のフォーム材を用いてもよい。
【0033】
上記樹脂材料としては、たとえばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリアミド系エラストマ(TPA,TPAE)、または、熱可塑性ポリエステル系エラストマ等が利用できる。上記ゴム材料としては、たとえばブタジエンゴムが好適に利用できる。
【0034】
これにより、ミッドソール20は、概してヤング率が小さくかつ軟質の部材にて構成されることになる。そのため、ミッドソール20は、圧縮荷重を受けた場合に比較的容易に弾性変形することになり、これによって緩衝性に優れたものとなる。
【0035】
図1ないし
図7に示すように、アウトソール30は、主としてミッドソール20に組付けられており、概ね偏平な略板状の形状を有している。アウトソール30は、ミッドソール20よりもその厚みが相対的に薄く構成されている。
【0036】
特に
図7を参照して、アウトソール30は、上面31と、下面32とを含んでおり、このうちの下面32が、上述したソール10の接地面12を規定している。アウトソール30の下面32には、グリップ性を向上させるために、凹凸が形成されることでトレッドパターンが形成されていてもよい。アウトソール30の上面31は、主としてミッドソール20の下面22に接着等によって接合されており、この他にもミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24や、内足側高剛性部材40A、外足側高剛性部材40Bおよび緩衝材50にたとえば接着等によって接合されている。
【0037】
アウトソール30は、これが単一の部材にて構成されていてもよいし、複数の部材に分割されて構成されていてもよい。また、アウトソール30は、たとえば中足部R2を経由して前足部R1から後足部R3にかけて連続して位置してもよいし、中足部R2を除く前足部R1および後足部R3にのみ設けられていてもよい。
【0038】
本実施の形態においては、アウトソール30が、主として前側アウトソール30Aと後側アウトソール30Bに分割されて構成されている。より具体的には、前側アウトソール30Aは、前足部R1と中足部R2の前端寄りの部分とに跨がって位置しており、後側アウトソール30Bは、中足部R2の後端寄りの部分と後足部R3とに跨がって位置している。なお、本実施の形態においては、前側アウトソール30Aが、前足部R1の中央部に位置する小型の部材と、これを取り囲むように位置する環状形状の大型の部材との2部材によって構成されている。
【0039】
アウトソール30は、耐摩耗性やグリップ性に優れていることが好ましく、当該観点から、アウトソール30としては、たとえば、主成分としてのゴム材料と、副成分としての可塑剤や補強剤、架橋剤とを含む材料からなる部材が用いられる。当該ゴム材料としては、たとえばブタジエンゴムが好適に利用できる。
【0040】
これにより、アウトソール30は、概してヤング率が大きくかつ硬質の部材にて構成されることになる。そのため、アウトソール30は、耐摩耗性等の耐久性に優れたものとなる。
【0041】
図1ないし
図7に示すように、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bは、いずれも主としてミッドソール20に組付けられており、パネル状の部材にて構成されている。内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bは、主として、ソール10の剛性を局所的に高めることにより、着地時の安定性を高めるためにソール10に設けられたものである。
【0042】
特に
図7を参照して、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bの各々は、概ね偏平な略板状の底壁部41と、湾曲した衝立状の側壁部42とを含んでおり、断面略L字状の形状を有している。このように内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bは、いずれも基本的な構造は同じであるが、図示するように細部の形状や大きさ等は異なっている。
【0043】
より具体的には、
図2ないし
図8に示すように、内足側高剛性部材40Aは、前後方向および左右方向に沿って概ね延在しかつソール10の内足側端部に沿うように延びる底壁部41(第1底壁部に相当)と、当該底壁部41の内足側の縁部から立設されるとともに、前後方向および上下方向に沿って概ね延在しかつソール10の内足側端部に沿うように延びる側壁部42(第1側壁部に相当)とを含んでいる。内足側高剛性部材40Aは、中足部R2の前端寄りの部分から後足部R3の後端にまで跨がって位置している。
【0044】
一方、外足側高剛性部材40Bは、前後方向および左右方向に沿って概ね延在しかつソール10の外足側端部に沿うように延びる底壁部41(第2底壁部に相当)と、当該底壁部41の外足側の縁部から立設されるとともに、前後方向および上下方向に沿って概ね延在しかつソール10の外足側端部に沿うように延びる側壁部42(第2側壁部に相当)とを含んでいる。外足側高剛性部材40Bは、中足部R2の前後方向の略中央部分から後足部R3の後端にまで跨がって位置している。
【0045】
ここで、上述したように、ミッドソール20の下面22には、傾斜形状を有する部分の下面22と脚部25とによって凹状の切り欠き部が設けられている。特に
図3ないし6を参照して、この凹状の切り欠き部が設けられた部分である、後足部R3の後端を除いた部分と中足部R2の後端寄りの部分とにおいては、ミッドソール20とアウトソール30とが上下方向に距離をもって対向配置された対向領域Aが形成されている。この対向領域Aは、接地面12の法線方向に沿って見た場合におけるソール10の踵中心HCを含むように位置している。
【0046】
上述した内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bが設けられた位置は、この対向領域Aに対応した位置であり、より具体的には、当該対向領域Aが形成された部分のソール10の内足側端部および外足側端部である。すなわち、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bは、対向領域Aの左右方向の一対の端部に配置されている。これにより、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bは、対向領域Aの左右方向の一対の端部においてミッドソール20とアウトソール30との間に介在している。
【0047】
より詳細には、内足側高剛性部材40Aは、その下側部分に相当する底壁部41の下面41bが後側アウトソール30Bの上面31にたとえば接着等によって接合されている。また、内足側高剛性部材40Aは、その上側部分に相当する側壁部42の外足側の壁面42aがミッドソール20の内足側側面23にたとえば接着等によって接合されている。これにより、内足側高剛性部材40Aは、主として後足部R3の内足側端部においてミッドソール20と後側アウトソール30Bとの間に介在している。
【0048】
一方、外足側高剛性部材40Bは、その下側部分に相当する底壁部41の下面41bが後側アウトソール30Bの上面31にたとえば接着等によって接合されている。また、外足側高剛性部材40Bは、その上側部分に相当する側壁部42の内足側の壁面42aがミッドソール20の外足側側面24にたとえば接着等によって接合されている。これにより、外足側高剛性部材40Bは、主として後足部R3の外足側端部においてミッドソール20と後側アウトソール30Bとの間に介在している。
【0049】
したがって、後側アウトソール30Bは、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bの各々の底壁部41の下面41b、さらにはミッドソール20の脚部25の下面に跨がってこれらすべての下面を覆いかつこれらすべての下面に接合されることにより、ミッドソール20に対して内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bを介して間接的に、またミッドソール20の脚部25に直接的に組付けられることになる。
【0050】
このように構成することにより、
図3ないし
図6に示すように、ソール10の内部の所定位置には、ミッドソール20、後側アウトソール30B、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bによって規定されたポケット状の空間が形成されることになる。より詳細には、このポケット状の空間は、ソール10のうちの、後足部R3の後端を除いた部分と中足部R2の後端寄りの部分とに跨がって位置することになる。
【0051】
内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bは、いずれもミッドソール20、および、後において詳述する緩衝材50よりも剛性の高い部材にて構成されており、より好ましくはアウトソール30よりも剛性の高い部材にて構成される。すなわち、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bは、いずれもミッドソール20および緩衝材50よりもヤング率が大きくかつ硬質である。
【0052】
内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bを構成する材料としては、特にこれが制限されるものではないが、たとえば、ウレタン系熱可塑性エラストマ(TPU)、アミド系熱可塑性エラストマ(TPA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリマー樹脂からなる非繊維強化樹脂や、強化繊維としてカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ダイニーマ繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維等を用いた繊維強化樹脂等が好適に利用できる。
【0053】
なお、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bの各々の側壁部42は、側面視略菱形状の形状を有している。このような形状とすれば、側面視した場合に踵中心HCに重なる部分の内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bの上下方向の寸法を、当該踵中心HCに重ならない部分の内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bの上下方向の寸法よりも大きくすることができる。
【0054】
したがって、このように構成することにより、着地時においてより荷重を受ける部分である踵中心HC近傍におけるソール10の剛性を、当該踵中心HCから離れた部分におけるソール10の剛性よりも大きくすることができ、全体として着地時の緩衝性および安定性に優れたバランスのよい構成とすることができる。
【0055】
また、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bの各々の側壁部42には、左右方向に沿って貫通する貫通孔43が設けられている。当該貫通孔43を設けることにより、これを設けない場合に比べて側壁部42が変形し易くなるため、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bの剛性を高めつつも、その変形性も相応に確保することができる。
【0056】
図1ないし
図7に示すように、緩衝材50は、主としてミッドソール20に組付けられており、単一のブロック状の部材にて構成されている。緩衝材50は、主として、圧縮荷重を受けた場合に比較的容易に弾性変形するものであり、ソール10の緩衝性を局所的に高めるために設けられたものである。緩衝材50は、上述したミッドソール20、後側アウトソール30B、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bによって規定されたポケット状の空間に収容されている。
【0057】
特に
図7ないし
図10を参照して、緩衝材50は、上面51と、下面52と、これら上面51および下面52を接続する周面とを含んでいる。緩衝材50は、上下方向に沿って荷重を受けた場合の変形性が高められることとなるように、その形状が種々調整されて設計されたものであり、その詳細な形状については後述することとする。
【0058】
図2、
図5、
図6および
図8に示すように、緩衝材50は、ソール10の踵中心HCに重なるようにまたは取り巻くように配置されるものであり、本実施の形態においては、後述するように緩衝材50が環状形状を有しているため、緩衝材50は、上述したポケット状の空間の内部に配置されるように、ソール10の踵中心HCを取り巻いて位置している。
【0059】
具体的には、緩衝材50は、その上面51がミッドソール20の下面22にたとえば接着等によって接合されており、その下面52がアウトソール30の上面31ならびに内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bの各々の底壁部41の上面41aにたとえば接着等によって接合されている。すなわち、緩衝材50は、主としてミッドソール20およびアウトソール30によって上下方向に挟み込まれた状態でソール10に組付けられている。
【0060】
ここで、緩衝材50は、左右方向において内足側高剛性部材40Aの側壁部42に対して距離をもって対向配置されているとともに、左右方向において外足側高剛性部材40Bの側壁部42に対して距離をもって対向配置されている。加えて、緩衝材50は、前後方向においてミッドソール20の脚部25、ならびに、傾斜形状を有する部分の下面22のうちの当該緩衝材50が接合されていない部分に対して距離をもって対向配置されている。
【0061】
これにより、ソール10においては、上下方向と交差する方向において緩衝材50が上述したポケット状の空間によって取り囲まれた状態となっており、これに伴って緩衝材50は、その周面が周囲の部材に接触しておらず、開放された状態とされている。このポケット状の空間は、緩衝材50が変形する際の変形しろとして機能するものである。
【0062】
緩衝材50は、適度な強度を有しつつも緩衝性に優れていることが好ましく、当該観点から、緩衝材50としては、固体状の粘弾性体にて構成される。固体状の粘弾性体としては、たとえば軟質エラストマが利用できる。緩衝材50を樹脂製とする場合には、たとえばポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ(TPA、TPAE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)とすることができる。一方、緩衝材50をゴム製とする場合には、たとえばブタジエンゴムとすることができる。
【0063】
緩衝材50は、ポリマー組成物にて構成することもできる。その場合にポリマー組成物に含有させるポリマーとしては、たとえばオレフィン系エラストマやオレフィン系樹脂等のオレフィン系ポリマーが挙げられる。オレフィン系ポリマーとしては、たとえばポリエチレン(たとえば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、プロピレン-酢酸ビニル共重合体のポリオレフィン等が挙げられる。
【0064】
また、上記ポリマーは、たとえばアミド系エラストマやアミド系樹脂等のアミド系ポリマーであってもよい。アミド系ポリマーとしては、たとえばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610等が挙げられる。
【0065】
また、上記ポリマーは、たとえばエステル系エラストマやエステル系樹脂等のエステル系ポリマーであってもよい。エステル系ポリマーとしては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0066】
また、上記ポリマーは、たとえばウレタン系エラストマやウレタン系樹脂等のウレタン系ポリマーであってもよい。ウレタン系ポリマーとしては、たとえばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0067】
また、上記ポリマーは、たとえばスチレン系エラストマやスチレン系樹脂等のスチレン系ポリマーであってもよい。スチレン系エラストマとしては、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS))、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS))、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン-スチレン(SBSBS)等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、たとえばポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)等が挙げられる。
【0068】
また、上記ポリマーは、たとえばポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系ポリマー、ウレタン系アクリルポリマー、ポリエステル系アクリルポリマー、ポリエーテル系アクリルポリマー、ポリカーボネート系アクリルポリマー、エポキシ系アクリルポリマー、共役ジエン重合体系アクリルポリマーならびにその水素添加物、ウレタン系メタクリルポリマー、ポリエステル系メタクリルポリマー、ポリエーテル系メタクリルポリマー、ポリカーボネート系メタクリルポリマー、エポキシ系メタクリルポリマー、共役ジエン重合体系メタクリルポリマーならびにその水素添加物、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン系エラストマ、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等であってもよい。
【0069】
以上において説明したように、本実施の形態に係るソール10およびこれを備えた靴100にあっては、ミッドソール20、後側アウトソール30B、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bによって規定されたポケット状の空間に緩衝材50が配置されるとともに、当該緩衝材50が上下方向においてミッドソール20とアウトソール30とによって主として挟み込まれ、また緩衝材50の周囲がポケット状の空間に取り囲まれることで緩衝材50の周面が開放されている。
【0070】
このように構成することにより、緩衝材50を踵中心HCに重なるようにまたはこれを取り巻くように配置することができることになり、緩衝性を高めつつ耐久性および軽量化に優れたソールおよび靴とすることができる。
【0071】
これは、フォーム材は、概して変形性に優れかつ軽量である反面、繰り返し高荷重を受けることでいわゆるへたりと呼ばれる劣化が生じてしまい、この点において必ずしも耐久性が優れているとまでは言い難いのに対し、固体状の粘弾性体は、フォーム材に比べ、概して耐久性に優れ、しかもフォーム材に近い変形性を有しつつも、重量が重い点が問題であるところ、本実施の形態に係るソール10およびこれを備えた靴100にあっては、上記のように、後足部R3のうちの踵中心HCに重なるようにまたはこれを取り巻くように、十分に高い緩衝性を有する固体状の粘弾性体からなる緩衝材50を局所的に配置することにより、ソール10のうちの特に高荷重を受ける部分のフォーム材の使用量を減らし、これによりフォーム材にへたりが発生することによる耐久性の低下を抑制しつつ、しかも当該緩衝材の周囲をポケット状の空間にて取り囲むことで軽量化が図られているためである。なお、後足部R3のうちの踵中心HCに重なる部分のフォーム材を完全に無くしていない理由は、固体状の粘弾性体に比較して概してフォーム材の方が足当たりがよく、快適な装着感が得られるためである。
【0072】
加えて、フォーム材は、概してポアソン比が小さく、荷重が印加される方向と交差する方向において外部から拘束を受けている場合にも、相応に高い変形性が確保できるものであるところ、固体状の粘弾性体は、概してポアソン比が大きく、当該方向において外部から拘束を受けている場合には、著しく変形性が劣ってしまうことになる。この点、本実施の形態に係るソール10およびこれを備えた靴100にあっては、上記のように緩衝材50の周囲がポケット状の空間に取り囲まれることで緩衝材50の周面が開放されているため、このポケット状の空間が緩衝材50の変形しろとなり、上述したような外部からの拘束を一切受けないため、その変形性が低下するおそれもない。したがって、本実施の形態に係るソール10およびこれを備えた靴100にあっては、この点においても、高い緩衝性を発揮するものとなる。
【0073】
一方、本実施の形態に係るソール10およびこれを備えた靴100にあっては、上述したように、ポケット状の空間に対応する部分のソール10の内足側端部および外足側端部にそれぞれ内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bが配置されている。これら内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bが当該部分に配置されなかった場合には、着地時の安定性が大きく劣ってしまうことになるところ、このように内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bを配置することにより、緩衝材50が配置されたポケット状の空間の左右方向の端部の剛性を局所的に高めることができ、結果として着地時の安定性も十分に確保できることになる。
【0074】
したがって、以上において説明した本実施の形態に係るソール10およびこれを備えた靴100とすることにより、緩衝性、安定性、耐久性および軽量化に優れた靴およびこれに具備されるソールとすることができ、しかもこれら緩衝性、安定性、耐久性および軽量化を従来にない高い次元で実現することが可能になる。そのため、従来にない高性能のソールおよびこれを備えた靴とすることができる。
【0075】
ここで、本実施の形態に係るソール10および靴100においては、上述した点以外にも、特に緩衝性を高める観点等から緩衝材50等に種々の工夫が施されている。以下、これらの点について順に説明する。
【0076】
特に
図8ないし
図10に示すように、本実施の形態に係るソール10にあっては、これに具備された緩衝材50が、全体として見た場合に、下面52側から上面51側に向かうにつれて外形が小さくなる概ね錐台形状を有している。ここで、本実施の形態においては、緩衝材50は、全体として見た場合に、概ね六角錐台形状を有している。
【0077】
このように緩衝材50を下面52側から上面51側に向かうにつれて外形が小さくなる形状とすることにより、着地時において着用者の足から緩衝材50に対して印加された荷重を、接地面12を介して地面等に対し、分散して伝搬させることが可能になるため、着地時に着用者の足がぐらつくことが抑制でき、安定性を高めることが可能になる。なお、緩衝材50の形状としては、六角錐台形状以外にも、四角錐台形状、八角錐台形状等に代表されるような他の多角錐台形状や、円錐台形状、楕円錐台形状のような種々の形状に変更することができる。
【0078】
また、本実施の形態に係るソール10にあっては、緩衝材50が、中空部53が設けられることで環状形状を有するように構成されているとともに、さらに周方向の所定位置に切れ目54を有することで略C字状の形状を有するように構成されている。
【0079】
このように、緩衝材50に中空部53を設けることにより、当該中空部53もまた緩衝材50の変形しろとして機能することになるため、緩衝材50の緩衝性を飛躍的に高めることができる。加えて、周方向の所定位置に切れ目54を有することとすれば、緩衝材50の変形の自由度が高められることになり、これによっても緩衝材50の緩衝性を飛躍的に高めることができる。
【0080】
ここで、
図8に示すように、上記切れ目54は、ソール10の後方末端側の位置に配置されていることが好ましい。これは、切れ目54が設けられた部分の緩衝材50の変形性が顕著に高くなることから、着地時において最も早く着地することで特に高い荷重が印加されるソール10の後方末端側の位置にこれを配置することにより、より高い緩衝性が発揮されることになるためである。
【0081】
また、特に
図8ないし
図10に示すように、本実施の形態に係るソール10にあっては、緩衝材50の上面51の内周縁に、凹形状の環状段差部55が設けられている。当該凹形状の環状段差部55は、中空部53に面するように設けられている。
【0082】
このように環状段差部55を設けることにより、ミッドソール20を介して着用者の足から印加される荷重に対する緩衝材50の受圧面を凹形状にすることができるため、ミッドソール20の沈み込みを誘発することができることになり、上述した荷重の分散効果が高められることとなって高い緩衝性が実現できるばかりでなく、着地時の安定性も増すことになる。
【0083】
また、本実施の形態に係るソール10にあっては、緩衝材50の上面51に、当該上面51の内周縁から外周縁に達する複数の上面側溝部56が設けられている。本実施の形態においては、当該上面側溝部56が、概ね左右方向に沿って延在するように内足側および外足側に一対設けられている。
【0084】
このように上面側溝部56を設けることにより、当該上面側溝部56もまた緩衝材50の変形しろとして機能することになるため、緩衝材50の緩衝性をさらに高めることができる。なお、当該上面側溝部56の数や配置位置等は、種々変更が可能である。
【0085】
また、特に
図3ないし
図5に示すように、本実施の形態に係るソール10にあっては、緩衝材50の上面51が、前方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面にて構成されている。
【0086】
このように上面51を前方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面にて構成することにより、着地時において着用者の足から緩衝材50に対して印加された荷重が前方に向けて伝搬し易くなるため、この荷重の伝搬方向を、後足部R3から中足部R2を経由して前足部R1の順で着地する着地動作の際の力の流れる方向に合致させることが可能になり、歩行時および走行時のエネルギーロスを抑制することができる。
【0087】
加えて、特に
図8ないし
図10に示すように、本実施の形態に係るソール10にあっては、緩衝材50の下面52に、前後方向に沿って延在する下面側溝部57が設けられている。本実施の形態においては、当該下面側溝部57が、左右方向における略中央部に1つ設けられている。
【0088】
このように下面52に前後方向に沿って延在する下面側溝部57を設けることにより、着地時において着用者の足から緩衝材50に対して印加された荷重が前方に向けて伝搬し易くなるため、この荷重の伝搬方向を、後足部R3から中足部R2を経由して前足部R1の順で着地する着地動作の際の力の流れる方向に合致させることが可能になり、歩行時および走行時のエネルギーロスを抑制することができる。なお、当該下面側溝部57の数や配置位置等は、種々変更が可能である。
【0089】
一方、本実施の形態に係る靴100においては、
図1に示すように、外足側高剛性部材40Bの側壁部42が、ミッドソール20の外足側側面24を越えてアッパー本体61の外足側側面の下端部を覆うとともに、アッパー本体61の当該部分にたとえば接着等によって接合されており、また、
図1には現われていないものの、内足側高剛性部材40Aについても、その側壁部42が、ミッドソール20の内足側側面23を越えてアッパー本体61の内足側側面の下端部を覆うとともに、アッパー本体61の当該部分にたとえば接着等によって接合されている(
図5において、ミッドソール20よりも上方に突き出た部分の側壁部42が、アッパー本体61に接合される部分である)。
【0090】
このように構成した場合には、内足側高剛性部材40Aの上端部分および外足側高剛性部材40Bの上端部分が、それぞれ着用者の足の踵部の内足側側面および外足側側面に対向して位置することになる。そのため、いわゆるオーバープロネーションおよびアンダープロネーションと呼ばれるような着地時において着用者の踵部が過度に左右に倒れ込む現象が発生した場合に、内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bが当該倒れ込んだ踵部をサポートすることになるため、それ以上着用者の踵部が倒れ込んでしまうことを効果的に抑制することができる。
【0091】
また、本実施の形態に係る靴100においては、
図2および
図8に示すように、内足側高剛性部材40Aの前端が、外足側高剛性部材40Bの前端よりも前方側に位置している。このように構成した場合には、特にソール10全体として見た場合に外足側に比べて内足側の剛性が高まることになるため、着地時において着用者の踵部が内足側に向けて過度に倒れ込むオーバープロネーションの発生を抑制することが可能になる。
【0092】
<第1ないし第10変形例>
図11(A)ないし
図11(C)は、それぞれ第1ないし第3変形例に係る緩衝材の平面図であり、
図12(A)ないし
図12(C)は、それぞれ第4ないし第6変形例に係る緩衝材の平面図である。また、
図13(A)ないし
図13(C)は、それぞれ第7ないし第9変形例に係る緩衝材の平面図であり、
図14は、第10変形例に係る緩衝材の平面図である。以下、これら
図11ないし
図14を参照して、上述した実施の形態に基づいた第1ないし第10変形例に係る緩衝材50A~50Jについて説明する。なお、これら第1ないし第10変形例に係る緩衝材50A~50Jは、上述した実施の形態に係るソール10および靴100に具備された緩衝材50に代えて、これらソール10および靴100に具備されるものである。
【0093】
図11(A)に示すように、第1変形例に係る緩衝材50Aは、上述した実施の形態に係る緩衝材50に比較して、下面側溝部57(
図10等参照)を具備していない点のみが相違している。
【0094】
図11(B)に示すように、第2変形例に係る緩衝材50Bは、上述した実施の形態に係る緩衝材50に比較して、下面側溝部57(
図10等参照)および上面側溝部56(
図9等参照)を具備していない点のみが相違している。
【0095】
図11(C)に示すように、第3変形例に係る緩衝材50Cは、上述した実施の形態に係る緩衝材50に比較して、下面側溝部57(
図10等参照)、上面側溝部56および環状段差部55(
図9等参照)を具備していない点のみが相違している。
【0096】
図12(A)に示すように、第4変形例に係る緩衝材50Dは、上述した実施の形態に係る緩衝材50に比較して、下面側溝部57(
図10等参照)、上面側溝部56、環状段差部55、中空部53および切れ目54(
図9等参照)を具備していない点のみが相違している。
【0097】
このように、上述した実施の形態に係る緩衝材50が具備していた下面側溝部57、上面側溝部56、環状段差部55、中空部53および切れ目54のいずれか1つまたは2つ以上を具備していない場合にも、相応の緩衝性が発揮されることになるため、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果を得ることができる。
【0098】
図12(B)に示すように、第5変形例に係る緩衝材50Eは、上述した第4変形例に係る緩衝材50Dに比較して、上面51に平面視略菱形状の凹部58が設けられている点のみが相違している。
【0099】
図12(C)に示すように、第6変形例に係る緩衝材50Fは、上述した第4変形例に係る緩衝材50Dに比較して、上面51に平面視六角形状の凹部58が設けられている点のみが相違している。
【0100】
図13(A)に示すように、第7変形例に係る緩衝材50Gは、上述した第4変形例に係る緩衝材50Dに比較して、上面51に平面視十字形状の凹部58が設けられている点のみが相違している。
【0101】
図13(B)に示すように、第8変形例に係る緩衝材50Hは、上述した第4変形例に係る緩衝材50Dに比較して、上面51に平面視略菱形状の凹部58が設けられているとともに、上面51に内側から外側に向かう複数の上面側溝部56が設けられている点のみが相違している。
【0102】
図13(C)に示すように、第9変形例に係る緩衝材50Iは、上述した第4変形例に係る緩衝材50Dに比較して、周面に複数の周面側溝部59が設けられている点のみが相違している。
【0103】
図14に示すように、第10変形例に係る緩衝材50Jは、上述した第4変形例に係る緩衝材50Dに比較して、上面51および下面52の各々に達するように平面視六角形状の中空部53が設けられている点のみが相違している。
【0104】
このように、上述した実施の形態に係る緩衝材50が具備していた下面側溝部57、上面側溝部56、環状段差部55、中空部53および切れ目54に代えて、様々な形状の凹部や溝部、中空部等(すなわち各種の欠除部)を設けた場合にも、相応の緩衝性が発揮されることになるため、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果を得ることができる。
【0105】
なお、上述した第4ないし第9変形例に係る緩衝材50D~50Iをソール10および靴100に具備させることとした場合には、これら緩衝材50D~50Iが環状形状を有していないため、緩衝材50D~50Iは、ソール10の踵中心HCに重なるように配置されることになる。
【0106】
<実施の形態等における開示内容の要約>
上述した実施の形態ならびにその変形例等において開示した特徴点を要約すると、以下のとおりとなる。
【0107】
[付記1]
着用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部と、着用者の足の踏まず部を支持する中足部と、着用者の足の踵部を支持する後足部とが、前後方向に沿って連なって設けられたソールであって、
着用者の足の足裏を支持する支持面である上記ソールの上面を規定するミッドソールと、
接地面である上記ソールの下面を規定するアウトソールとを備え、
上記ミッドソールは、フォーム材からなり、
上記後足部は、上記ミッドソールおよび上記アウトソールが上下方向に距離をもって対向配置された対向領域を、上記ソールの下面の法線方向に沿って見た場合における上記ソールの踵中心を含む部分に有し、
上記対向領域には、上記ミッドソールおよび上記アウトソールによって上下方向において挟み込まれた固体状の粘弾性体からなる緩衝材が設けられ、
上記緩衝材は、上記踵中心に重なるようにまたは上記踵中心を取り巻くように位置し、
上記後足部のうちの上記対向領域に対応する部分の内足側端部には、上記緩衝材よりも剛性が高いパネル状の内足側高剛性部材が設けられ、
上記後足部のうちの上記対向領域に対応する部分の外足側端部には、上記緩衝材よりも剛性が高いパネル状の外足側高剛性部材が設けられ、
上記内足側高剛性部材が左右方向において上記緩衝材に対して距離をもって対向配置されるように、上記内足側高剛性部材の上側部分が上記ミッドソールに固定されるとともに、上記内足側高剛性部材の下側部分が上記アウトソールに固定され、かつ、上記外足側高剛性部材が左右方向において上記緩衝材に対して距離をもって対向配置されるように、上記外足側高剛性部材の上側部分が上記ミッドソールに固定されるとともに、上記外足側高剛性部材の下側部分が上記アウトソールに固定されることにより、上記緩衝材を取り囲むポケット状の空間が、上記対向領域に形成されている、ソール。
【0108】
[付記2]
上記緩衝材が、上記踵中心を取り巻くように配置された、周方向に切れ目を有する環状形状を有し、
上記切れ目が、上記ソールの後方末端側の位置に配置されている、付記1に記載のソール。
【0109】
[付記3]
上記緩衝材の上面の内周縁に、凹形状の環状段差部が設けられている、付記2に記載のソール。
【0110】
[付記4]
上記緩衝材の上面に、当該上面の内周縁から外周縁に達する溝部が設けられている、付記2または3に記載のソール。
【0111】
[付記5]
上記緩衝材の上面が、前方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面にて構成されている、付記1から4のいずれかに記載のソール。
【0112】
[付記6]
上記緩衝材が、下面側から上面側に向かうにつれて外形が小さくなる錐台形状を概ね有している、付記1から5のいずれかに記載のソール。
【0113】
[付記7]
上記内足側高剛性部材に左右方向に沿って貫通する貫通孔が設けられ、
上記外足側高剛性部材に左右方向に沿って貫通する貫通孔が設けられている、付記1から6のいずれかに記載のソール。
【0114】
[付記8]
上記内足側高剛性部材が、前後方向および左右方向に沿って概ね延在する板形状の第1底壁部と、当該第1底壁部の内足側の縁部から立設されるとともに前後方向および上下方向に沿って概ね延在する板形状の第1側壁部とを含み、
上記第1底壁部の下面が、上記アウトソールの上面に接合され、
上記第1側壁部の外足側の壁面が、上記ミッドソールの内足側側面に接合され、
上記外足側高剛性部材が、前後方向および左右方向に沿って概ね延在する板形状の第2底壁部と、当該第2底壁部の外足側の縁部から立設されるとともに前後方向および上下方向に沿って概ね延在する板形状の第2側壁部とを含み、
上記第2底壁部の下面が、上記アウトソールの上面に接合され、
上記第2側壁部の内足側の壁面が、上記ミッドソールの外足側側面に接合されている、付記1から7のいずれかに記載のソール。
【0115】
[付記9]
上記内足側高剛性部材の前端が、上記外足側高剛性部材の前端よりも前方側に位置している、付記1から8のいずれかに記載のソール。
【0116】
[付記10]
付記1から9のいずれかに記載のソールと、
上記ソールの上方に設けられたアッパーとを備えた、靴。
【0117】
[付記11]
上記内足側高剛性部材が、上記ミッドソールの内足側側面を越えて上記アッパーの内足側側面の一部を覆うとともに当該アッパーの内足側側面の上記一部に接合され、
上記外足側高剛性部材が、上記ミッドソールの外足側側面を越えて上記アッパーの外足側側面の一部を覆うとともに当該アッパーの外足側側面の上記一部に接合されている、付記10に記載の靴。
【0118】
<その他の形態等>
上述した実施の形態ならびにその変形例においては、踵中心に重なるようにまたは取り巻くように単一の部材からなる緩衝材が配置されてなる場合を例示して説明を行なったが、当該位置に配置される緩衝材を複数に分割して配置することとしてもよい。また、緩衝材が設けられる位置は、当該位置のみである必要はなく、他の位置に別の緩衝材が配置されてもよい。
【0119】
また、上述した実施の形態ならびにその変形例においては、内足側高剛性部材および外足側高剛性部材の底壁部の上面に緩衝材の下面の一部を接合するように構成した場合を例示して説明を行なったが、たとえば緩衝材の下面は、アウトソールの上面のみに接合されていてもよい。
【0120】
また、上述した実施の形態ならびにその変形例においては、内足側高剛性部材および外足側高剛性部材の各々の側壁部が側面視菱形状の形状を有し、かつ、当該側壁部に貫通孔が設けられた場合を例示して説明を行なったが、内足側高剛性部材および外足側高剛性部材の各々の側壁部の形状や貫通孔の有無は特に制限されるものではなく、種々変更が可能である。
【0121】
このように、ソールを構成するミッドソール、アウトソール、内足側高剛性部材、外足側高剛性部材および緩衝材の形状や大きさ、配設位置、数等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能であり、また、これに加えて、アッパーについてもその構成や形状等は種々変更が可能である。
【0122】
さらには、上述した実施の形態ならびにその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて相互に組み合わせることができる。
【0123】
このように、今回開示した上記実施の形態ならびにその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0124】
10 ソール、11 支持面、12 接地面、20 ミッドソール、21 上面、22 下面、23 内足側側面、24 外足側側面、25 脚部、30 アウトソール、30A 前側アウトソール、30B 後側アウトソール、31 上面、32 下面、40A 内足側高剛性部材、40B 外足側高剛性部材、41 底壁部、41a 上面、41b 下面、42 側壁部、42a 壁面、43 貫通孔、50,50A~50J 緩衝材、51 上面、52 下面、53 中空部、54 切れ目、55 環状段差部、56 上面側溝部、57 下面側溝部、58 凹部、59 周面側溝部、60 アッパー、61 アッパー本体、62 シュータン、63 シューレース、100 靴、A 対向領域、HC 踵中心、R1 前足部、R2 中足部、R3 後足部、SC シューセンター。
【要約】
【課題】緩衝性、安定性、耐久性および軽量化に優れたソールを提供する。
【解決手段】ソール10は、ミッドソール20と、アウトソール30Bとを備える。後足部の踵中心HCを含む部分には、ミッドソール20およびアウトソール30Bが上下方向に距離をもって対向配置された対向領域が設けられ、当該対向領域には、緩衝材50が設けられる。ミッドソール20は、フォーム材からなる。緩衝材50は、固体状の粘弾性体からなり、踵中心HCに重なるようにまたは踵中心HCを取り巻くように配置される。後足部のうちの対向領域に対応する部分の内足側端部および外足側端部には、それぞれ内足側高剛性部材40Aおよび外足側高剛性部材40Bが配置され、これにより対向領域には、緩衝材50を取り囲むポケット状の空間が形成される。
【選択図】
図6