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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】伸縮継手、排水システム、及び建築物
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/12 20060101AFI20240603BHJP
   F16L 59/18 20060101ALI20240603BHJP
   F16L 21/03 20060101ALI20240603BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20240603BHJP
   E03C 1/122 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F16L27/12 E
F16L59/18
F16L21/03
E03C1/12 E
E03C1/122 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023091903
(22)【出願日】2023-06-02
(62)【分割の表示】P 2018231921の分割
【原出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2023107837
(43)【公開日】2023-08-03
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018185043
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】花木 博章
(72)【発明者】
【氏名】清水 道浩
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-096116(JP,A)
【文献】特開2014-199082(JP,A)
【文献】特開2014-199081(JP,A)
【文献】特開2004-150621(JP,A)
【文献】特開2016-109194(JP,A)
【文献】特開2004-257523(JP,A)
【文献】特開2003-294179(JP,A)
【文献】特開2008-031627(JP,A)
【文献】特開2003-161384(JP,A)
【文献】特開2012-149444(JP,A)
【文献】実開昭62-204095(JP,U)
【文献】特開2001-050466(JP,A)
【文献】特開平10-267180(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0030997(KR,A)
【文献】特開2008-208653(JP,A)
【文献】特開2020-051502(JP,A)
【文献】特開2020-051607(JP,A)
【文献】特開2020-051609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
E03C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の軸線が上下方向に沿うように配置された継手本体と、
前記継手本体の両端部に設けられ、断熱層が設けられ、上下方向に延びる配管が挿入される一対の受口と、
環状に形成されて前記継手本体に同軸に配置された断熱部と、
一方の前記受口に形成され、内側に封止部材が配置される保持部と、
前記継手本体の内面に設けられた係止部と、
を備え、
前記継手本体の軸線方向において、前記断熱部と前記配管のいずれもが配置される領域を有し、
前記継手本体は、前記継手本体における上方の部分を構成する上部本体と、前記継手本体における下方の部分を構成する下部本体とを組み合わせて構成され、
前記上部本体の下方の部分が、前記下部本体の上方の部分に内挿され、
前記断熱部は前記上部本体および前記下部本体の外周面に設けられている伸縮継手。
【請求項2】
前記断熱部の端部は、前記保持部から離間して配置され、かつ、前記保持部と前記一方の受口に挿入された配管の端部との間に配置されている請求項1に記載の伸縮継手。
【請求項3】
前記継手本体の軸線方向において、前記断熱部の下端は前記係止部と同じ位置か、前記係止部の上面より前記断熱部の下端が下方に延びている、
請求項1又は2に記載の伸縮継手。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の伸縮継手と、
前記配管と、
を備える排水システムであって、
前記一方の受口に接続される配管よりも、他方の前記受口に接続される配管の方が短い排水システム。
【請求項5】
前記他方の受口に接続された配管が、建築物の床スラブを上下方向に貫通し、
前記他方の受口に接続された配管の下端は、空調装置に接続された横管と接続されたチーズと接続されている請求項4に記載の排水システム。
【請求項6】
前記他方の受口に接続された配管が、建築物の床スラブを上下方向に貫通し、
前記床スラブの貫通孔内に配置された前記配管の外面には、熱膨張性耐火材が配置されている請求項4に記載の排水システム。
【請求項7】
前記他方の受口に接続された配管の下端は、トラップと接続されている請求項4に記載の排水システム。
【請求項8】
前記断熱部の端部と前記保持部の間に配置され、建築物の壁面と固定される支持具を有する請求項4に記載の排水システム。
【請求項9】
請求項4から7のいずれか一項に記載の排水システムを備える建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮継手、排水システム、及び建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水分野で用いられる一般的な伸縮継手では、下流側の配管構造との接続部分に差口が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-068263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の伸縮継手では、例えば、伸縮継手の下流側と上流側とに接続される配管の外径を互いに同一にするために、伸縮継手の下流側において、伸縮継手とは別の継手で あって、両端部が受口である第2継手(いわゆるソケット)を配置する必要がある。この場合、上流側の配管の端部は、伸縮継手における差口が設けられた端部とは反対側の端部に接続される。伸縮継手の差口は、第2継手の一方の受口内に配置される。第2継手の他方の受口内に、下流側の配管の端部が配置される。
【0005】
しかしながら、伸縮継手を空調機器のドレン水(凝縮水)の排水に用いる場合、ドレン水は比較的冷たいため、伸縮継手の外面が結露する虞がある。なお、配管については、断熱層が設けられた管を用いることにより、結露が抑制できる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、外面が結露するのを抑えるとともに、配管と接続する際の施工が容易な伸縮継手、及びこの伸縮継手を備える排水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の伸縮継手は、継手本体と、前記継手本体の両端部に設けられ、断熱層が設けられた配管が挿入される一対の受口と、環状に形成されて前記継手本体に同軸に配置された断熱部と、一方の前記受口に形成され、内側に封止部材が配置される保持部と、前記継手本体の内面に設けられた係止部と、を備え、前記断熱部の端部は、前記保持部から離間して配置され、かつ、前記保持部と前記一方の受口に挿入された配管の端部との間に配置されていることを特徴としている。
この発明によれば、継手本体の両端部に設けられた受口内に配管を挿入することにより、伸縮継手に配管を接続することができるため、伸縮継手と配管とを接続する際の施工を容易に行うことができる。また、継手本体に断熱部が配置されているため、伸縮継手の外面が結露するのを抑えることができる。
また、上記の伸縮継手において、前記継手本体の軸線方向において、前記断熱部の端部と前記保持部との間における前記継手本体の外面は断熱部に覆われていなくてもよい。
【0008】
また、上記の伸縮継手において、前記係止部と前記配管の内径は同程度であってもよい。
また、上記の伸縮継手において、前記継手本体の軸線方向において、前記断熱部の下端は前記係止部と同じ位置であってもよい。
【0009】
本発明の排水システムは、上記のいずれかに記載の伸縮継手と、前記配管と、を備える排水システムであって、前記一方の受口に接続される配管よりも、他方の前記受口に接続される配管の方が短いことを特徴としている。
また、上記の排水システムにおいて、前記他方の受口に接続された配管が、建築物の床スラブを上下方向に貫通し、前記他方の受口に接続された配管の下端は、空調装置に接続された横管と接続されたチーズと接続されていてもよい。
【0010】
また、上記の排水システムにおいて、前記他方の受口に接続された配管が建築物の床スラブを上下方向に貫通し、前記床スラブの貫通孔内に配置された前記配管の外面には熱膨張性耐火材が配置されていてもよい。
また、上記の排水システムにおいて、前記他方の受口に接続された配管の下端は、トラップと接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の伸縮継手及び排水システムによれば、外面が結露するのを抑えるとともに、配管と接続する際の施工を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の排水システムが用いられる建築物の概要を示す図である。
図2】同排水システムの要部の縦断面図である。
図3】本発明の一実施形態の変形例の排水システムの縦断面図である。
図4】本発明の一実施形態の変形例の伸縮継手の縦断面図である。
図5】本発明の一実施形態の変形例の伸縮継手の縦断面図である。
図6】本発明の一実施形態の変形例の伸縮継手の縦断面図である。
図7】本発明の一実施形態の変形例の伸縮継手において、第1封止部材に滑材を塗布し封止部材で第1キャップの開口を塞ぐ状態を示す、一部を破断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る排水システムの一実施形態が用いられる建築物を、図1から図7を参照しながら説明する。
図1に示すように、集合住宅やオフィスビルディング等の建築物1では、各階が床スラブ6により仕切られている。床スラブ6には、上下方向Zに貫通する貫通孔6aが形成されている。床スラブ6同士は、壁5により連結されている。
床スラブ6の下部には、空調装置7が設置されている。例えば、空調装置7で発生したドレン水を排水するために、本実施形態の排水システム11が用いられている。
排水システム11は、縦管(配管)16と、横管(配管)21と、本実施形態の伸縮継手26と、ドレントラップ56と、を備えている。
【0014】
図2に示すように、縦管16は、いわゆる断熱管(ドレン管)であり、内層管17と、発泡樹脂層(断熱層)18と、スキン層19と、を備えている。内層管17は、硬質の塩化ビニル樹脂により形成されている。発泡樹脂層18は、内層管17の外周面に円筒状に設けられている。スキン層19は、発泡樹脂層18の外周面に設けられている。すなわち、縦管16には発泡樹脂層18が設けられている。
縦管16は、発泡樹脂層18内の気体により、発泡樹脂層18を備えない通常の排水管に比べて、熱伝導率が小さい。縦管16は、床スラブ6を上下方向Zに貫通している(図1参照)。
なお、縦管16の構成はこれに限定されず、例えば縦管がスキン層19を備えなくてもよい。
【0015】
横管21は、例えば縦管16と同様に構成されている。この例では、図1に示すように、横管21の外径は、縦管16の外径よりも小さい。横管21の第1端部は空調装置7に接続され、横管21の第2端部はチーズ8を介して縦管16に接続されている。チーズ8は、チーズ8のすぐ上方に位置する床スラブ6の近傍に配置されている。
横管21は、第1端部から第2端部に向かうに従い漸次、下方に向かうように傾斜している。
【0016】
図2に示すように、伸縮継手26は、継手本体27と、一対の受口28,29と、中空部30と、係止部31と、を備えている。
継手本体27は、円管状に形成されている。継手本体27は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、塩化ビニル等で形成されている。
継手本体27は、継手本体27の軸線方向が上下方向Zに沿うように配置されている。なお、継手本体27の配置はこれに限定されず、継手本体27の軸線方向が上下方向Zに対して交差するように、継手本体27を配置してもよい。
継手本体27の内径は、上下方向Zの位置によらず一定である。継手本体27の内径、及び縦管16の外径は、互いに同程度である。
【0017】
継手本体27の外周面には、継手本体27の径方向の外側に向かって突出する突起27aが複数形成されている。複数の突起27aは、上下方向Zに互いに離間して配置されている。
この複数の突起27a間は、伸縮継手26を壁面に固定するための把持部を備えた支持具(図2中に二点鎖線Dで、図1中に符号100で示す)により把持するための間隔である。支持具の把持部は突起27a間の継手本体27の外面を把持し、図示しない把持部が突起27aの側面に当接することで、縦管16の伸縮に伸縮継手26が追従しないように固定される。
なお、図1に示すように、支持具100は壁5に固定される。
【0018】
図2に示すように、受口28は、継手本体27の上端部に設けられている。受口28には、受口28における他の部分よりも内径、外径がそれぞれ大きい保持部28aが形成されている。保持部28aは円筒状に形成され、継手本体27と同軸に配置されている。なお、本明細書で言う同軸とは、略同軸の意味である。例えば、一方の軸線と他方の軸線とが数mm程度ずれた状態も含む意味である。
保持部28aの外周面には、径方向の外側に向かって突出した第1係止部28bが形成されている。第1係止部28bは、保持部28aの全周にわたって形成されていることが好ましい。
保持部28aの径方向の内側には、第1封止部材34が保持されている。第1封止部材34は、円環状に形成され、保持部28aと同軸に配置されている。第1封止部材34に外力が作用しない自然状態では、第1封止部材34の内径は継手本体27の内径よりも小さい。第1封止部材34は、例えば、継手本体27よりも柔らかい樹脂等で形成されている。
【0019】
この例では、受口28に第1キャップ37が着脱自在に取付けられている。第1キャップ37は、第1環状部材38と、第1周壁部39と、を備えている。第1環状部材38は、円環状に形成され、継手本体27と同軸に配置されている。第1環状部材38の内径、及び縦管16の外径は、互いに同程度である。
第1周壁部39は、円筒状に形成され、第1環状部材38と同軸に配置されている。第1周壁部39は、第1環状部材38の外周縁から下方Z1に向かって延びている。第1周壁部39の内径は、保持部28aの外径よりも大きい。
第1周壁部39の下端部の内周面には、径方向の内側に向かって突出した第1被係止部39aが形成されている。第1被係止部39aは、第1周壁部39の全周にわたって形成されていることが好ましい。第1被係止部39aの内径、及び保持部28aの外径は、互いに同程度である。
【0020】
なお、図7に示すように、第1封止部材34の内周面等には、予め滑材A1を塗っておいてもよい。滑材A1は、第1封止部材34と縦管16との間の摩擦力を低減させる。滑材A1の塗布は、工場等において、ブラシA2等を用いて行うことができる。予め滑材A1を塗っておくことは、排水システム11の施工現場において、滑材A1の塗り忘れを防止でき、滑材A1として予期せぬ材料の使用を防止できるので好ましい。滑材A1としては、ひまし油やシリコーン等が用いられるが、シリコーンを用いることが特に好ましい。 予め滑材A1を塗布する場合には、第1キャップ37の開口部(第1環状部材38の開口)をラベル等の封止部材A3でふさいで、滑材A1等にゴミが付かないようにするのが好ましい。
なお、滑材A1等にゴミが付かないようにするために、封止部材A3に代えて、伸縮継手26全体を袋で覆ってもよい。
【0021】
以上のように構成された第1キャップ37は、PP等の発泡樹脂層を備えない樹脂で一体に形成されている。なお、第1キャップ37を、PE、ABS、塩化ビニル等の樹脂で形成してもよい。
図2に示すように、第1キャップ37は、継手本体27の受口28に嵌め合わせられている。
より具体的には、第1キャップ37の第1環状部材38が、保持部28aの上面にこの上面の上方(軸線方向の一方側)Z2から接触している。
第1キャップ37の第1周壁部39は、保持部28aを径方向の外側から覆っている。第1周壁部39の第1被係止部39aは、保持部28aの第1係止部28bに第1係止部28bの下方Z1から係止している。
こうして、第1キャップ37が、継手本体27の受口28に嵌め合わせられている。
【0022】
受口28、及び第1キャップ37の第1環状部材38の内部には、縦管16が配置されている。施工の条件により、縦管16の下端部は、後述する係止部31から上方Z2に離間している。
【0023】
受口29は、継手本体27の下端部に設けられている。受口29の外周面には、符号を省略した段部が形成されている。
【0024】
中空部30は、円環状に形成され、継手本体27に同軸に配置されている。中空部30は、第2環状部材42と、管材43と、第2キャップ44と、を備えている。
第2環状部材42は、円環状に形成されている。第2環状部材42は、上下方向Zにおいて継手本体27の外周面における段部と複数の突起27aとの間の部分に、継手本体27と同軸に配置されている。第2環状部材42の内周縁は、継手本体27の外周面に連結されている。
管材43は、円管状に形成されている。管材43は、継手本体27と同軸に配置され、継手本体27の下方Z1の部分を径方向の外側から覆っている。管材43は、継手本体27から径方向の外側に離間している。管材43は、第2環状部材42の径方向の外側の端部から下方Z1に向かって延びている。
管材43の下端部の外周面には、径方向の外側に向かって突出した第2係止部43aが形成されている。第2係止部43aは、管材43の全周にわたって形成されていることが好ましい。
【0025】
以上のように構成された継手本体27、受口28,29、第2環状部材42、及び管材43(以下、本体部45と言う)は、塩化ビニル系樹脂等を発泡させずに一体に形成されている。この場合、本体部45の色は、有色の灰色や、黒色等である。
【0026】
第2キャップ44は、第3環状部材47と、第2周壁部48と、を備えている。
第3環状部材47は、円環状に形成され、継手本体27と同軸に配置されている。第3環状部材47は、第2環状部材42に対して下方Z1に離間している。第3環状部材47の内径、及び継手本体27の外径は、互いに同程度である。
第2周壁部48は、第3環状部材47の外周縁から上方Z2に向かって延びている。第2周壁部48の内径は、管材43の外径よりも大きい。
第2周壁部48の上端部の内周面には、径方向の内側に向かって突出した第2被係止部48aが形成されている。第2被係止部48aは、第2周壁部48の全周にわたって形成されていることが好ましい。第2被係止部48aの内径、及び管材43の外径は、互いに同程度である。
第2キャップ44は、第1キャップ37が継手本体27の受口28に嵌め合わせられているのと同様に、管材43に嵌め合わされている。第2キャップ44の第3環状部材47の内周縁は、継手本体27の段部に係合している。
【0027】
本体部45及び第2キャップ44により、継手本体27を径方向の外側から覆う断熱部S1が形成される。断熱部S1内には、例えば空気が収容されていて、断熱部S1は空気層として機能する。断熱部S1は、継手本体27の全周にわたって円環状に形成され、継手本体27に同軸に配置されている。断熱部S1は、継手本体27の下方Z1の部分を覆っている。
断熱部S1の熱抵抗値は、継手本体27の熱抵抗値よりも大きい。断熱部S1の熱抵抗値は、0.075m・K/W以上1.1m・K/W以下とされ、0.083m・K/W以上0.70m・K/W以下が好ましい。熱抵抗値が上記下限値以上とされることで、管材43の外面に結露が発生しにくくなり、上記上限値以下とされることで高価な断熱材を使用せずに必要十分な断熱性能を備えた継手とすることができる。
断熱部S1の厚さ(断熱部S1の外径と内径との差の半分の値)L1は、2mm以上20mm以下である。
【0028】
係止部31は、円環状に形成されている。係止部31の内径、及び縦管16の内径は、互いに同程度である。係止部31は、継手本体27内に継手本体27と同軸に配置されている。係止部31は、継手本体27の内周面(内面)に設けられている。すなわち、係止部31の外周縁は、継手本体27の内周面に固定されている。
係止部31の下面は、平坦に形成され、水平面に沿うように配置されている。一方で、係止部31の上面は、継手本体27の軸線に近づくに従い漸次、下方Z1に向かうように傾斜している。
係止部31は、縦管16を上下方向Zに係止する。前述の断熱部S1は、係止部31の上端から上方Z2に7.8mm以上39mm以下である長さL2延びている。断熱部S1は、上下方向Zにおいて後述する第2封止部材50の下面と同等の位置か、第2封止部材50の下面よりも下方Z1まで延びている。
なお、断熱部S1の下端は、係止部31の上面と面一でもよいし、係止部31の上面よりも下方Z1に延びていてもよい。
【0029】
継手本体27内における係止部31よりも下方Z1には、円環状の第2封止部材50が配置されている。第2封止部材50の内径、外径は、縦管16の内径、外径とそれぞれ同程度である。第2封止部材50は、第1封止部材34と同様の材料で形成されている。第2封止部材50は、係止部31の下方Z1から係止部31の下面に接触している。
【0030】
継手本体27の受口29には、接続管(配管)52の上端部が配置されている。接続管は、縦管16と同一の横断面形状、及び外径を有している。接続管52は、発泡樹脂層(断熱層)52aを備えている。接続管52は、第2封止部材50の下面に第2封止部材50の下方Z1から接触している。
なお、接続管52の発泡樹脂層52aが気泡として独立気泡を多く含み、端面から発泡樹脂層52aにドレン水が侵入する恐れが無いときには、第2封止部材50は設けなくてもよい。
【0031】
ドレントラップ56の構成は、ドレン水の逆流を防止可能なものであれば特に限定されない。例えば、ドレントラップ56は、トラップ本体57と、蓋部58と、トラップ部59と、縮径部60と、上部受け口61と、を備えている。なお、蓋部58、トラップ部59、及び後述する連結部材64で、トラップユニット62を構成する。
上部受け口61、縮径部60、及びトラップ本体57は、上方Z2から下方Z1に向かって、上部受け口61、縮径部60、及びトラップ本体57の順で配置されている。
【0032】
トラップ本体57は、上下方向Zに沿って延びる円筒状に形成されている。トラップ本体57の側面には、トラップ本体57を径方向に貫通する開口57aが形成されている。 蓋部58は、有底の円筒状に形成されている。蓋部58は、底壁部が径方向の内側を向くように配置され、トラップ本体57の開口57aに嵌め合っている。
蓋部58は、トラップ本体57の開口57aに着脱可能に取付けられて、トラップ本体57の開口57aを封止している。
トラップ部59は、トラップ本体57内に、トラップ本体57の内周面から離間した状態で配置されている。トラップ部59は、シリコーンゴム等の柔軟な材料で形成された漏斗状の受け容器である。
【0033】
トラップ部59は、蓋部58とは連結部材64を介して接続されている。連結部材64は、トラップ本体57の開口57aを通過可能である。
縮径部60は、トラップ本体57の上端部に設けられている。例えば、縮径部60は、上下方向Zに沿って延びる円筒状に形成されている。縮径部60の外径及び内径は、上方Z2に向かうに従い漸次、それぞれ大きくなる。
上部受け口61は、縮径部60の上端部に設けられている。上部受け口61は円筒状に形成され、縮径部60の外縁部から上方Z2に向かって延びている。上部受け口61の内径、及び接続管52の外径は、互いに同等である。上部受け口61内には、接続管52の下端部が配置されている。
【0034】
トラップ本体57の下端部には、下部受け口65が設けられている。下部受け口65の内径、及び縦管16の外径は、互いに同程度である。下部受け口65内には、第3封止部材66を介して他の縦管16の上端部が配置されている。
ドレントラップ56は、発泡樹脂層を備えることなく構成されている。この例では、上下方向Zにおいて、ドレントラップ56の上部受け口61、及び接続管52が重なる領域は、接続管52の発泡樹脂層52aにより断熱している。
このように構成されたドレントラップ56では、トラップ本体57に対してトラップユニット62が着脱可能である。ドレントラップ56は、伸縮継手26に接続管52を介して接続されている。
【0035】
以上のように構成された排水システム11は、建築物1に施工される。
接続管52を介して伸縮継手26に接続されているドレントラップ56では、図1に示すように、例えばドレントラップ56と縦管16との接続部分の外周面に、公知の熱膨張性耐火材で形成された耐火シート101が巻かれている。耐火シート101の少なくとも一部は、床スラブ6の貫通孔6a内に配置されている。床スラブ6のうち貫通孔6aの開口周縁部と耐火シート101との間には、モルタル102が充填されている。伸縮継手26及びドレントラップ56は、伸縮継手26及びドレントラップ56のすぐ下方Z1に位置する床スラブ6の近傍に配置されている。
一方で、ドレントラップ56に接続されていない伸縮継手26では、例えば伸縮継手26と縦管16との接続部分の外周面に耐火シート101が巻かれている。耐火シート101の少なくとも一部は、床スラブ6の貫通孔6a内に配置されている。伸縮継手26は、伸縮継手26のすぐ下方Z1に位置する床スラブ6の近傍に配置されている。
なお、ドレントラップ56、伸縮継手26の一部が床スラブ6の貫通孔6a内に配置されない場合には、耐火シート101を外周面に巻かなくてよい。
【0036】
ここで、縦管16の線膨張係数は、例えば6.5×10-5であり、縦管16の長さは、例えば4m、10mである。なお、縦管16の長さが4mの場合は、建築物1において1階毎に伸縮継手により縦管を伸縮することを想定している。
継手本体27の受口28,29内に縦管16、接続管52を挿入することにより、他の部品用いることなく伸縮継手26に縦管16、接続管52を接続できるため、排水システム11の施工は容易である。
【0037】
気温差等により、縦管16等が伸縮する場合がある。伸縮継手26の受口28内の縦管16が係止部31から上方Z2に離間している場合には、縦管16の伸縮により受口28内の縦管16の端部が上下方向Zに移動する。
この場合であっても、伸縮継手26は、伸縮継手26のすぐ下方Z1に位置する床スラブ6の近傍に配置されているため、伸縮継手26と、この伸縮継手26のすぐ下方Z1に位置する耐火シート101との距離、及び伸縮継手26と、この伸縮継手26のすぐ下方Z1に位置するチーズ8との距離が、それぞれ短く抑えられる。このため、耐火シート101が床スラブ6の貫通孔6a内から上下方向Zに移動して貫通孔6a内から抜けにくい。さらに、チーズ8が上下方向Zに移動して、横管21に応力が作用するのを抑えることができる。
【0038】
排水システム11における伸縮継手26の位置としては、床スラブ6の上面であって、この伸縮継手26と同一階に配置されたチーズ8よりもこの伸縮継手26よりも下階に配置されたチーズ8の方がこの伸縮継手26に近いことが好ましく、床スラブ6の上面から1.5m以下に位置することがより好ましい。言い換えると、伸縮継手26の上側の受口28に接続される縦管16よりも、伸縮継手26の下側の受口29に接続される縦管16の方が短いことが好ましい。
【0039】
ここで、縦管16の具体的な伸縮長さを試算する。
冬期と夏期とでは、例えば気温差が30℃あるとする。縦管16の長さが4mの場合、(1)式から、縦管16は7.8mm伸縮する。
6.5×10-5×30×4=7.8mm ・・(1)
前述の長さL2が7.8mmであれば、長さが4mの縦管16を、夏期に係止部31の上面に接触するように施工する。この場合、冬期になって縦管16が7.8mm縮んでも、縦管16の下端は、上下方向Zにおいて断熱部S1の上端と同等の位置に配置される。このため、上下方向Zにおいて縦管16の発泡樹脂層18及び伸縮継手26の断熱部S1のいずれも配置されない領域が生じず、伸縮継手26の外面が結露するのが抑えられる。
【0040】
一方で、長さが4mの縦管16を、冬期に縦管16の下端が係止部31の上面から上方Z2に7.8mm離間するように施工する。この場合、夏期になって縦管16が7.8mm伸びても、縦管16の下端は、上下方向Zにおいて係止部31の上面と同等の位置に配置される。このため、縦管16が係止部31に強く当たり、縦管16や係止部31が損傷するのが抑えられる。
4mの長さの縦管16を夏期に施工して冬期に7.8mm縮むことと、4mの長さの縦管16を冬期に施工して夏期に7.8mm伸びること、の両方を考慮すると、前述の長さL2を、7.8mmの2倍の15.6mmとすることがより好ましい。
【0041】
縦管16の長さが10mの場合、(2)式から、縦管16は19.5mm伸縮する。 6.5×10-5×30×10=19.5mm ・・(2)
縦管16の長さが4mの場合と同様に考えると、前述の長さL2を、19.5の2倍の39mmとすれば、縦管16の長さが10mの場合でも対応できるので、さらに好ましい。
【0042】
また、前述の長さL2が26mmであるとし、長さが10mの縦管16を、縦管16の下端が係止部31の上面から上方Z2に19.5mm離間するように施工する。
施工の時期が冬期であるとして、夏期に気温が30℃上昇し、縦管16が19.5mm伸びても、縦管16が係止部31に強く当るのが抑えられる。
施工の時期が夏期であるとして、秋期に気温が10℃下降しても、(3)式から縦管16は6.5mm縮むが、(26-19.5)の値が6.5であるため、伸縮継手26の外面が結露するのが抑えられる。
6.5×10-5×10×10=6.5mm ・・(3)
夏期に施工した後で、気温が10℃を超えて低下したら、空調装置7は冷房運転や除霜運転はしないと想定すれば、気温がこのように低下した時に空調装置7はドレン水を排水しない。このため、気温が10℃を超えて低下した時期に、上下方向Zにおいて縦管16の発泡樹脂層18及び伸縮継手26の断熱部S1のいずれも配置されない領域が生じても、伸縮継手26の外面はドレン水により結露することはない。
【0043】
例えば、断熱部S1の厚さL1が2mmのとき、断熱部S1を空気層とすることにより、熱抵抗値が0.083m・K/Wとされている。また、断熱部S1の厚さL1が20mmのとき、グラスウールとして最も熱伝導率の高いもの(0.05W/m・K)を用いた場合でも0.40m・K/Wとされている。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の伸縮継手26によれば、継手本体27の両端部に設けられた受口28,29内に縦管16、接続管52を挿入することにより、伸縮継手26に縦管16、接続管52を接続することができるため、伸縮継手26と縦管16、接続管52とを接続する際の施工を容易に行うことができる。また、継手本体27に断熱部S1が配置されているため、伸縮継手26の外面が結露するのを抑えることができる。
【0045】
断熱部S1は、係止部31の上端から上方Z2に7.8mm以上39mm以下である長さL2延びている。このように構成することにより、4mや10mの長さの縦管16が温度変化により伸縮しても、その縦管16が係止部31に強く当たったり、係止部31の伸縮により、上下方向Zにおいて縦管16の発泡樹脂層18及び伸縮継手26の断熱部S1のいずれも配置されない領域が生じて、伸縮継手26の外面が結露するのをより確実に抑えることができる。また、長さL2を39mm以下にすることにより、断熱部S1が上下方向Zに長くなり過ぎるのを抑制することができる。
【0046】
断熱部S1の厚さL1は、2mm以上20mm以下である。従って、継手本体27内と外部とを、空気層を備える従来の伸縮継手と同等に確実に断熱することができる。厚さL1を20mm以下にすることにより、断熱部S1の外径が大きくなり過ぎるのを抑制することができる。
また、本実施形態の排水システム11によれば、外面が結露するのを抑えるとともに、縦管16、接続管52と接続する際の施工を容易にした伸縮継手26を用いて排水システムを構成することができる。
【0047】
本実施形態の伸縮継手及び排水システムは、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図3に示す排水システム11Aのように、本実施形態の第2封止部材50、ドレントラップ56、接続管52に代えて、ドレントラップ71、接続管72を備えてもよい。
ドレントラップ71は、ドレントラップ56の上部受け口61に代えて、発泡樹脂層74aを備える上部受け口74を備えている。上部受け口74の内径、及び上部受け口61の内径は、互いに同程度である。
接続管72は、発泡樹脂層を備えない樹脂製の排水管である。
この例では、上下方向Zにおいて、ドレントラップ71の上部受け口74、及び接続管72が重なる領域は、上部受け口74の発泡樹脂層74aにより断熱している。
このように構成された排水システム11Aによっても、本実施形態の排水システム11と同様の効果を奏することができる。
【0048】
図4に示す伸縮継手81のように、継手本体82内に発泡樹脂層である断熱部82aが形成されてもよい。この変形例では、断熱部82aは係止部31よりも上方Z2に配置されている。
図5に示す伸縮継手86のように、継手本体87の径方向の外側に断熱部88が設けられてもよい。この変形例では、継手本体87は、上部本体87aと、下部本体87bと、を組み合わせて構成されている。断熱部88は、例えばグラスウールでシート状に形成されている。継手本体87が施工された後で、断熱部88は、継手本体87の外周面における係止部31よりも上方Z2の位置に巻き付けられて固定される。
図6に示す伸縮継手91のように、継手本体27の径方向の内側であって係止部31よりも上方Z2の位置に断熱部92が設けられてもよい。断熱部92は、例えば発泡ポリエチレン、発泡ゴム等の発泡材で円環状に形成されている。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、断熱部S1が係止部31よりも上方Z2に延びる長さL2は、7.8mm未満でもよいし、39mmを超えてもよい。断熱部S1の厚さL1は、2mm未満でもよいし、20mmを超えてもよい。
伸縮継手は、係止部31を備えなくてもよい。縦管16及び接続管52における断熱層は、発泡樹脂層であるとしたが、断熱層は空気のみの層等であってもよい。
継手本体は円管状に形成されているとしたが、継手本体の形状はこれに限定されず、角管状等に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
11,11A 排水システム
16 縦管(配管)
18,52a 発泡樹脂層(断熱層)
26,81,86,91 伸縮継手
27,82,87 継手本体
28,29 受口
31 係止部
52 接続管(配管)
82a,88,S1 断熱部
L1 厚さ
Z 上下方向(軸線方向)
Z2 上方(軸線方向の一方側)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7