IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-配管構造及びその製造方法 図1
  • 特許-配管構造及びその製造方法 図2
  • 特許-配管構造及びその製造方法 図3
  • 特許-配管構造及びその製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】配管構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 47/03 20060101AFI20240603BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F16L47/03
F16L11/12 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023103313
(22)【出願日】2023-06-23
(62)【分割の表示】P 2018184802の分割
【原出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2023116809
(43)【公開日】2023-08-22
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】池田 基
(72)【発明者】
【氏名】坂元 愛美子
(72)【発明者】
【氏名】森高 紘平
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0018209(US,A1)
【文献】特開平05-272689(JP,A)
【文献】特開平05-087286(JP,A)
【文献】特開平09-303660(JP,A)
【文献】特開平10-299040(JP,A)
【文献】特開昭53-104424(JP,A)
【文献】実開平04-011989(JP,U)
【文献】特開平03-005127(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102392923(CN,A)
【文献】特開平11-037374(JP,A)
【文献】特開2002-210826(JP,A)
【文献】特開昭63-067494(JP,A)
【文献】特開2009-092111(JP,A)
【文献】特開平10-141571(JP,A)
【文献】特開2001-324063(JP,A)
【文献】実開昭59-001984(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1095610(KR,B1)
【文献】特開平02-253095(JP,A)
【文献】特開2001-355785(JP,A)
【文献】特開2003-336780(JP,A)
【文献】特開2006-153163(JP,A)
【文献】特開2000-291829(JP,A)
【文献】特表2014-508906(JP,A)
【文献】特開2018-162858(JP,A)
【文献】特開2011-127751(JP,A)
【文献】特開2009-204675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 47/03
F16L 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気融着継手と、前記電気融着継手の開口部に挿入される樹脂管と、を有し、
前記電気融着継手は、本体部と、前記本体部と一体的に形成された第一の識別部とを備え、
前記樹脂管は、筒状の本体と、前記本体の外面に一体に成形された第二の識別部とを備え、
前記電気融着継手の本体部を構成する第一の樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であり、
前記樹脂管の本体を構成する第三の樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であり、
前記第三の樹脂と前記第二の識別部を構成する第四の樹脂とは、同種の樹脂であり、
前記第一の識別部と前記第二の識別部とは、同系統の色である、配管構造。
【請求項2】
前記第一の識別部は、前記本体部とのJIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における色差(ΔE)が1以上であり、
前記第二の識別部は、前記本体との前記色差(ΔE)が1以上である、請求項1に記載の配管構造。
【請求項3】
前記第一の識別部と前記第二の識別部とのJIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における色差(ΔE)は、10以下である、請求項1又は2に記載の配管構造。
【請求項4】
前記第二の識別部は、前記本体の管軸方向に延びる帯状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の配管構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の配管構造の製造方法であって、
前記第一の識別部と、前記第二の識別部と、が同系統の色であることを確認し、
次いで、前記樹脂管を前記電気融着継手の開口部に挿入し、前記電気融着継手の電熱線に通電して、前記樹脂管と前記電気融着継手とを接合する、配管構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製のガス配管や上下水道配管を接続する際に、内部に電熱線が埋め込まれた電気融着継手に通電して融着させて接続する技術が知られている。
合成樹脂製の配管を融着によって接続する場合、樹脂の特性や管の口径や肉厚などによって、融着に最適な電圧や時間等の条件(融着条件)が異なってくる。
融着条件は、配管や継手の種類によって異なり、電気融着継手には、融着条件の情報が記録された融着管理用タグが取付けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-92111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配管や継手の本体は、種類に応じて色分けがなされている。
しかしながら、継手については、同じ用途の配管と必ずしも同じ色が付けられておらず、継手本体(本体部)の色によらず、継手の用途を容易に識別することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、継手の用途を容易に識別できる電気融着継手、配管構造及び電気融着継手の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
[1]本体部と、前記本体部と一体的に形成された識別部とを備え、前記識別部は、前記本体部との色差(ΔE)が1以上であり、前記識別部の色に基づいて継手の用途を識別できる、電気融着継手。
[2]前記本体部は、管状に形成され、前記識別部は、前記本体部の内周面を径方向の内側から覆う層状に形成されている、[1]に記載の電気融着継手。
[3]前記本体部の内周面には、電熱線が埋め込まれ、前記識別部は、前記電熱線を被覆している、[1]に記載の電気融着継手。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の電気融着継手と、筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層とを備える樹脂管と、を備える配管構造であって、前記識別部と、前記識別層との色差(ΔE)が10以下である、配管構造。
[5][2]に記載の電気融着継手の製造方法であって、樹脂成型用金型内に、前記識別部を配置する工程と、前記識別部の外周面に第一の樹脂を射出し、前記本体部を成形する工程と、を有する、電気融着継手の製造方法。
[6][3]に記載の電気融着継手の製造方法であって、コア金型に前記識別部によって被覆された前記電熱線を巻き、前記電熱線が巻かれた前記コア金型に外側から隙間を開けて樹脂成型用金型を嵌める工程と、前記樹脂成型用金型内に第一の樹脂を射出し、前記本体部を成形する工程と、を有する、電気融着継手の製造方法。
【0007】
また、本発明は、以下の態様を有する。
<1>
電気融着継手と、前記電気融着継手の開口部に挿入される樹脂管と、を有し、
前記電気融着継手は、本体部と、前記本体部と一体的に形成された第一の識別部とを備え、
前記樹脂管は、筒状の本体と、前記本体の外面に一体に成形された第二の識別部とを備え、
前記第一の識別部と前記第二の識別部とは、同系統の色である、配管構造。
<2>
前記第一の識別部は、前記本体部とのJIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における色差(ΔE)が1以上であり、
前記第二の識別部は、前記本体との前記色差(ΔE)が1以上である、<1>に記載の配管構造。
<3>
前記第一の識別部と前記第二の識別部とのJIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における色差(ΔE)は、10以下である、<1>又は<2>に記載の配管構造。
<4>
前記第二の識別部は、前記本体の管軸方向に延びる帯状である、<1>~<3>のいずれかに記載の配管構造。
<5>
電気融着継手の有する第一の識別部と、樹脂管の有する第二の識別部と、が同系統の色であることを確認し、
次いで、前記樹脂管を前記電気融着継手の開口部に挿入し、前記電気融着継手の電熱線に通電して、前記樹脂管と前記電気融着継手とを接合する、配管構造の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電気融着継手によれば、継手の用途を容易に識別できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電気融着継手を示す断面図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る電気融着継手を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る配管構造を示す部分断面図である。
図4図3の配管構造をAの方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[電気融着継手]
本発明の電気融着継手は、継手本体と、前記継手本体の外面に取り付けられた識別部材とを備える。
以下、本発明の一実施形態に係る電気融着継手について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の電気融着継手1は、管状に形成された本体部10と、本体部10と一体的に形成された識別部30とを備える。電気融着継手1は、直管状に形成されたいわゆるソケットである。
識別部30は、本体部10の内周面10aを径方向の内側から覆う層状に形成されている。識別部30の管軸方向の中心付近の内周面には、円環状のストッパー14が形成されている。ストッパー14は、接続される樹脂管を停止させる機能を有する。
電気融着継手1は、本体部10の外面に突設された端子カバー部11、11と、端子カバー部11、11の近傍に設けられた端子12、12とを備える。
本体部10の管軸方向の両端には、開口部21、22が形成されている。
【0012】
電気融着継手1は、ニクロム線等の電熱線13を備える。電熱線13は、電気融着継手1の本体部10の内周面10aに埋め込まれている。通電した際に、電熱線13が発熱して、周囲の合成樹脂を溶かすように形成されている。
【0013】
端子カバー部11、11は、内部の金属製の端子12、12を保護するために、本体部10と一体の円筒状に形成されている。
端子カバー部11、11の外径は、融着装置のコネクタ(不図示)に合わせて決められているため、接続される樹脂管の樹脂の特性や、口径や肉厚等によらず、一定の大きさとなっている。
【0014】
端子カバー部11、11に保護された端子12、12は、本体部10の内周面10aに埋め込まれた電熱線13と繋がっており、端子12、12に融着装置のコネクタを接続することで、電熱線13に通電できるように形成されている。
【0015】
識別部30には、電気融着継手1の用途に応じた色が付されている。
電気融着継手1の用途としては、例えば、上水用、下水用、ガス用、プラント用、レンタル用等が挙げられる。
電気融着継手1は、用途に応じて大きさ、形状、耐用圧力等が異なり、同一の用途に利用される樹脂管と接続されることが好ましい。
電気融着継手1の用途と樹脂管の用途とが一致することにより、電気融着継手1と樹脂管とがより確実に接合され、樹脂管の経路を通流する流体の漏洩等を抑制しやすい。
【0016】
識別部30と、本体部10との色差(ΔE)は、1以上であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。色差が上記下限値以上であると、融着作業の際に、作業者が識別部30を認識しやすい。色差の上限値は特に限定されないが、例えば、100以下とされ、実用上80以下が好ましい。
色差としては、JIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における色差が挙げられる。
色差は、分光色差計(ハンディ型分光色差計「NF333」日本電色工業(株)製)を用いて測定でき、暗室等の周囲を暗くした状況で測定することが好ましい。
ここで、色差(ΔE)は、以下の式で算出される。
ΔE=√((L-L+(a-a+(b-b)・・・(1)
なお、式(1)中、L、a、bはそれぞれ識別部30の明度L、赤色方向の色度a、黄色方向の色度bを表し、L、a、bはそれぞれ本体部10の明度L、赤色方向の色度a、黄色方向の色度bを表す。
【0017】
本体部10を構成する合成樹脂(第一の樹脂)としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタラート、塩化ビニル等が挙げられる。
第一の樹脂は、成形性、コストの観点から、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、架橋ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンがより好ましい。
これらの第一の樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
第一の樹脂の質量平均分子量は、1.0×10以上1.0×10以下が好ましく、1.5×10以上3.0×10以下がより好ましい。質量平均分子量が上記数値範囲内であると、本体部10は継手として所望する物性を得られやすい。
第一の樹脂の質量平均分子量は、JIS K 7252-1により測定される。
【0019】
第一の樹脂の含有量は、本体部10の総質量に対して、90質量%以上100質量%以下が好ましい。第一の樹脂の含有量が上記数値範囲内であると、本体部10は継手として所望する物性を得られやすい。
【0020】
本体部10は、第一の樹脂の他、酸化防止剤、紫外線吸収剤(UVA)、光安定剤、顔料等の各種添加剤を含有してもよい。
【0021】
識別部30を構成する合成樹脂(第二の樹脂)としては、第一の樹脂と同様の樹脂が挙げられる。第二の樹脂は、第一の樹脂と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0022】
識別部30は、第二の樹脂の他、本体部10と識別部30との識別性を向上する観点から、着色剤を含有することが好ましい。着色剤としては、顔料や染料が挙げられ、市販品を用いることができる。
顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物-セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。
着色剤の種類や含有量は、識別部30の色に応じて、適宜決定できる。識別部30の色は、電気融着継手1の用途に応じて適宜決定できる。
例えば、電気融着継手1の用途が上水用の場合、識別部30は黄色や赤色が好ましく、電気融着継手1の用途がガス用の場合、識別部30は青色や黒色が好ましい。
識別部30が着色剤を含有することで、識別部30を電気融着継手1の用途に応じた色にできる。加えて、本体部10の色によらず、識別部30の色で電気融着継手1の用途を識別できる。
【0023】
次に、電気融着継手1の製造方法について説明する。
電気融着継手1の製造方法は、樹脂成型用金型(不図示)内に、識別部30 を配置する工程と、識別部30の外周面に第一の樹脂を射出し、本体部10を成形する工程と、を有する。
まず、予備成形物として電気融着継手1の形状に応じた識別部30を成形する(予備成形工程)。本実施形態においては、識別部30は直管状の形状とすることが好ましい。
次いで、予備成形物である識別部30を、樹脂成型用金型内に配置する(配置工程)。識別部30の外周面に電熱線13を螺旋状に巻き付ける(巻付工程)。
次いで、電熱線13を螺旋状に巻き付けた識別部30の外周面に第一の樹脂を射出し、本体部10を成形する(本体部成形工程)。
以上の工程により、本体部10の内周面10aを径方向の内側から覆う層状に一体的に形成された識別部30を備える電気融着継手1を得る。
なお、配置工程の前に巻付工程を行ってもよい。
【0024】
電気融着継手1は、本体部10との色差が1以上の識別部30を備える。識別部30には、電気融着継手1の用途を示す色が付されており、このため、本体部10の色によらず、継手の用途を容易に識別することができる。
加えて、識別部30と本体部10との色差が1以上であるため、容易に識別部30を視認でき、より容易に継手の用途を識別することができる。
さらに、電気融着継手1を開口部21又は開口部22から見たときに、識別部30が開口端に露出しているため、電気融着継手1と樹脂管とを接続した後にも識別部30の色を容易に視認できる。
また、電気融着継手1は、識別部30が本体部10と一体的に形成されているため、特許文献1の融着管理用タグに比べて、識別部30が本体部10から脱離するおそれがない。
【0025】
次に、本発明の他の実施形態に係る電気融着継手について説明する。
なお、図2に示す電気融着継手2の構成要素において、電気融着継手1の構成要素と同様のものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0026】
図2に示すように、電気融着継手2は、管状に形成された本体部10と、本体部10の内周面10aに埋め込まれた電熱線13とを備える。電熱線13は、識別部32によって被覆されている。識別部32の一部は、本体部10の内周面10aに露出している。なお、識別部32が本体部10から露出していなくてもよく、この場合、識別部32が、本体部10の内周面を透過して視認可能であってもよい。この場合における透過とは、完全な透過に限られない。すなわち、識別部32と本体部10の色とが混合しつつも、識別部32の色が本体部10を通して視認可能な状態(いわゆる、半透過)であってもよい。
【0027】
識別部32の色は、上述した識別部30の色と同様である。
すなわち、識別部32と、本体部10との色差(ΔE)は、1以上である。
識別部32は、上述した第二の樹脂で構成されていてもよく、その他の材料で構成されていてもよい。その他の材料としては、樹脂塗料等が挙げられる。
【0028】
次に、電気融着継手2の製造方法について説明する。
電気融着継手2の製造方法は、コア金型(不図示)に識別部32によって被覆された電熱線13を巻き、電熱線13が巻かれたコア金型に外側から隙間を開けて樹脂成型用金型(不図示)を嵌める工程と、樹脂成型用金型内に第一の樹脂を射出し、本体部10を成形する工程と、を有する。
まず、電熱線13を識別部32によって被覆する(被覆工程)。被覆工程は、識別部32を構成する材料を電熱線13に吹き付けることによって行ってもよく、識別部32を構成する材料に電熱線13を浸漬することによって行ってもよい。
次に、識別部32で被覆された電熱線13をコア金型に螺旋状に巻き付ける(巻付工程)。
次に、電熱線13が巻かれたコア金型に、第一の樹脂を注入するためのゲートが形成された樹脂成型用金型を外側から隙間をあけて嵌める(嵌め込み工程)。
次に、樹脂成型用金型の内側に第一の樹脂を射出し、本体部10を成形する(本体部成形工程)。
次に、射出成形完了後に樹脂成型用金型を外す。
次に、コア金型を軸線方向に沿って互いに離間させることで、射出成形体からコア金型を外す(コア金型脱離工程)。
最後に、ゲートに射出された第一の樹脂を射出成形体から切除し、電気融着継手2を得る。
以上の工程により、本体部10の内周面10aに識別部32で被覆された電熱線13が埋め込まれ、本体部10と識別部32とが一体的に形成された電気融着継手2を得る。
【0029】
電気融着継手2は、本体部10との色差が1以上の識別部32を備える。識別部32には、電気融着継手2の用途を示す色が付されており、このため、本体部10の色によらず、継手の用途を容易に識別することができる。
加えて、識別部32と本体部10との色差が1以上であるため、容易に識別部32を視認でき、より容易に継手の用途を識別することができる。
さらに、識別部32は、上述した識別部30に比べて、少量の材料で形成できるため、コストを削減できる。
【0030】
[配管構造]
図3に示すように、本実施形態の配管構造Sは、電気融着継手1と、電気融着継手1の開口部22に挿入される樹脂管40とを備える。
なお、図3では、開口部21に挿入される樹脂管は図示を省略している。
【0031】
樹脂管40は、筒状の本体41と、本体41の外面に一体に形成され、本体41の管軸方向に延びる1以上の識別層42とを備える。
識別層42は、帯状である。識別層42は、図4に示すように、本体41の管軸を中心に、90°間隔で4本、環状に位置している。
樹脂管40の外径は、電気融着継手1の開口部22の内径と略同一に形成されている。樹脂管40は、樹脂管40の端部が、電気融着継手1のストッパー14と接触するように嵌め合わされて融着して接続される。
【0032】
樹脂管40は、合成樹脂によって円筒状に形成されている。樹脂管40を構成する合成樹脂(第三の樹脂)としては、上述した本体部10を構成する合成樹脂(第一の樹脂)と同様の樹脂が挙げられる。
第三の樹脂は、成形性、コストの観点から、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、架橋ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンがより好ましい。
これらの第三の樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
第三の樹脂の質量平均分子量は、1.0×10以上1.0×10以下が好ましく、1.5×10以上3.0×10以下がより好ましい。質量平均分子量が上記数値範囲内であると、本体41は配管として所望する物性を得られやすい。
第三の樹脂の質量平均分子量は、第一の樹脂の質量平均分子量と同様の方法により測定される。
【0034】
第三の樹脂の含有量は、本体41の総質量に対して、90質量%以上100質量%以下が好ましい。第三の樹脂の含有量が上記数値範囲内であると、本体41は樹脂管として所望する物性を得られやすい。
【0035】
本体41は、第三の樹脂の他、酸化防止剤、紫外線吸収剤(UVA)、光安定剤、顔料等の各種添加剤を含有してもよい。
【0036】
本体41と、識別層42とのJIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における色差(ΔE)は、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。色差が上記下限値以上であると、本体41と識別層42とを識別しやすい。色差の上限値は特に限定されないが、例えば、100以下とされ、実用上80以下が好ましい。
樹脂管40における色差は、上述した識別部30と、本体部10との色差(ΔE)と同様の方法で測定できる。
樹脂管40における色差は、上述した式(1)で算出される。
なお、樹脂管40において、式(1)中、L、a、bはそれぞれ本体41の明度L、赤色方向の色度a、黄色方向の色度bを表し、L、a、bはそれぞれ識別層42の明度L、赤色方向の色度a、黄色方向の色度bを表す。
【0037】
本体41又は識別層42のJIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における明度(L*)は、20以上が好ましい。本体41又は識別層42の明度(L*)が20以上であると、樹脂管40が設置されるパイプスペース等の暗所でも、本体41又は識別層42を視認しやすい。
【0038】
識別層42を構成する樹脂(第四の樹脂)は、第一の樹脂と同種の樹脂でもよく、異なる種類の樹脂でもよい。また、第四の樹脂は、第二の樹脂と同種の樹脂でもよく、異なる種類の樹脂でもよい。また、第四の樹脂は、第三の樹脂と同種の樹脂でもよく、異なる種類の樹脂でもよい。本体41の外面からの識別層42の剥がれにくさの観点から、第四の樹脂は、第三の樹脂と同種の樹脂が好ましい。
第四の樹脂としては、第三の樹脂と同様の樹脂が挙げられ、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、架橋ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンがより好ましい。
第四の樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
第四の樹脂の質量平均分子量は、第三の樹脂の質量平均分子量と同様である。
【0040】
第四の樹脂の含有量は、識別層42の総質量に対して、1.0×10-5質量%以上10質量%以下が好ましい。第四の樹脂の含有量が上記数値範囲内であると、識別層42は樹脂管として所望する物性を得られやすい。
【0041】
識別層42は、耐候性を向上する観点から、酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0042】
酸化防止剤の含有量は、識別層42の総質量に対して、10ppm(ppmは質量基準。以下同様とする。)以上5000ppm以下が好ましく、100ppm以上2000ppm以下がより好ましく、300ppm以上1500ppm以下がさらに好ましい。酸化防止剤の含有量が上記下限値以上であると、識別層42の耐候性を向上しやすい。酸化防止剤の含有量が上記上限値以下であると、他の添加剤の含有量とのバランスに優れ、識別層42の物性を良好にしやすい。
酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
識別層42は、耐候性を向上する観点から、紫外線吸収剤(UVA)を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サルマレート系紫外線吸収剤、ベンゾコート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、クエンチャー等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ポリエチレン又はポリプロピレンに対しては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Sumisorb200、住化ケムテックス(株)製)、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(Tinuvin326、BASF社製)、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(Tinuvin327、BASF社製)、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin328、BASF社製)等が挙げられる。
【0044】
紫外線吸収剤の含有量は、識別層42の総質量に対して、10ppm以上1000ppm以下が好ましく、50ppm以上800ppm以下がより好ましく、80ppm以上400ppm以下がさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記下限値以上であると、識別層42の耐候性を向上しやすい。紫外線吸収剤の含有量が上記上限値以下であると、他の添加剤の含有量とのバランスに優れ、識別層42の物性を良好にしやすい。
紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
識別層42は、耐候性を向上する観点から、光安定剤を含有することが好ましい。光安定剤としては、例えば、サリチル酸エステル系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、シアノアクリレート系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等が挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート((株)ADEKA製、商品名「アデカスタブLA-52」)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート((株)ADEKA製、商品名「アデカスタブLA-87」)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート((株)ADEKA製、商品名「アデカスタブLA-77Y」、商品名「アデカスタブLA-77G」)等が挙げられる。
【0046】
光安定剤の含有量は、識別層42の総質量に対して、10ppm以上1000ppm以下が好ましく、50ppm以上800ppm以下がより好ましく、80ppm以上400ppm以下がさらに好ましい。光安定剤の含有量が上記下限値以上であると、識別層42の耐候性を向上しやすい。光安定剤の含有量が上記上限値以下であると、他の添加剤の含有量とのバランスに優れ、識別層42の物性を良好にしやすい。
光安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
識別層42は、耐候性を向上する観点及び樹脂管40の視認性を向上する観点から、カーボンブラックを含有していてもよい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等が挙げられる。
カーボンブラックの含有量は、識別層42の総質量に対して、1000ppm以上5.0×10ppm以下が好ましく、2000ppm以上3.0×10ppm以下がより好ましく、20000ppm以上1.0×10ppm以下がさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が上記下限値以上であると、識別層42の耐候性を向上し、かつ、本体41と識別層42との識別性を向上しやすい。カーボンブラックの含有量が上記上限値以下であると、他の添加剤の含有量とのバランスに優れ、識別層42の物性を良好にしやすい。
カーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
識別層42は、本体41と識別層42との識別性を向上する観点から、着色剤を含有することが好ましい。着色剤としては、上述した識別部30に用いられる着色剤と同様のものが挙げられる。
着色剤の種類や含有量は、識別層42の色に応じて、適宜決定できる。識別層42の色は、電気融着継手1の用途に応じて適宜決定できる。
例えば、電気融着継手1の用途が上水用の場合、識別層42は黄色や赤色が好ましく、電気融着継手1の用途がガス用の場合、識別層42は青色や黒色が好ましい。
識別層42が着色剤を含有することで、識別層42を電気融着継手1の用途に応じた色にできる。加えて、本体部10の色によらず、識別層42の色で電気融着継手1の用途を識別できる。
【0049】
着色剤の含有量は、識別層42の総質量に対して、1ppm以上25000ppm以下が好ましい。着色剤の含有量が上記下限値以上であると、本体41と識別層42との識別性を向上しやすい。着色剤の含有量が上記上限値以下であると、他の添加剤の含有量とのバランスに優れ、識別層42の物性を良好にしやすい。
着色剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
配管構造Sにおいて、本体部10と一体的に形成された識別部30と、樹脂管40に形成された識別層42との色差は、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。色差が上記上限値未満であると、電気融着継手1と樹脂管40との用途が同じであることを認識しやすい。その結果、電気融着継手1と樹脂管40との誤接続を抑制しやすく、電気融着継手1と樹脂管40との接続不良を軽減しやすい。
また、識別部30と識別層42とは、配管構造Sの用途に応じた同系統の色が付されていることが好ましい。識別部30と識別層42とに同系統の色が付されていることにより、電気融着継手1と樹脂管40との用途が同じであることを認識しやすく、上述した効果が得られやすい。
【0051】
配管構造Sは、電気融着継手1の開口部22に、樹脂管40を挿入し、電気融着継手1の電熱線13に通電して発熱させ、電熱線13の周囲の合成樹脂を溶かすことにより、識別部30と樹脂管40とが接合することにより得られる。
電気融着継手1の融着条件は、電気融着継手1の大きさ、種類、用途等に応じて適宜決定できる。
【0052】
樹脂管40の製造方法は、共押出成形で本体41と識別層42とを成形する工程を含む。
樹脂管40の製造装置としては、例えば、押出成形機と、サイジングダイと、冷却槽と、切断機とを備える製造装置を例示できる。押出成形機は、共押出可能な成形機である。押出成形機は、少なくとも2つの供給口を備える。サイジングダイは、下流に向かうに従い縮径する筒状の部材である。冷却槽は、縮径された樹脂管を冷却し、樹脂を硬化する装置である。冷却槽としては、例えば、水冷式の冷却槽が挙げられる。
【0053】
上記製造装置を用いた樹脂管40の製造方法の一例を示す。
押出成形機の一の供給口から第三の樹脂と必要に応じて添加剤(第三の樹脂と添加剤とを併せて第三の樹脂組成物ということがある)を投入する。押出成形機の他の供給口から第四の樹脂と添加剤(第四の樹脂と添加剤とを併せて第四の樹脂組成物ということがある)を投入する。第三の樹脂組成物を第三の樹脂の融点以上に加熱し、混練する。第四の樹脂組成物を第四の樹脂の融点以上に加熱し、混練する。次いで、第三の樹脂組成物と第四の樹脂組成物とを押出成形機で筒状に押し出す。第三の樹脂組成物と第四の樹脂組成物とは、別の流路を通流し、次いで合流し、第四の樹脂組成物が識別層42を形成する。
これにより、本体41の外面に識別層42が一体に形成された筒状成形体を得る。
【0054】
次に、筒状成形体をサイジングダイに挿入する。筒状成形体は、サイジングダイ内を通過するに従い、所望の太さとなる。所望の太さに調整された筒状成形体を冷却槽に挿入する。冷却槽は、筒状成形体を冷却し、樹脂を硬化する。硬化した筒状成形体を所望の長さに切断し、樹脂管40とする。
【0055】
押出成形機における第三の樹脂組成物への加熱温度は、例えば、170℃以上250℃以下が好ましく、180℃以上220℃以下がより好ましい。加熱温度が上記数値範囲内であると、第三の樹脂の熱分解を抑えつつ、良好な流動性を得られる。
押出成形機における第四の樹脂組成物への加熱温度は、第三の樹脂組成物への加熱温度と同様である。
【0056】
冷却槽における冷却水の温度は、例えば、20℃以上30℃以下が好ましい。冷却水の温度が上記範囲内であれば、筒状成形体を十分に硬化できる。
【0057】
樹脂管40の本体41の内径、本体41の厚さ、識別層42の厚さ、識別層42の幅、識別層42の数は、押出成形機の金型やサイジングダイの大きさ、形状により調整できる。
【0058】
以上、説明してきたように、本実施形態の配管構造Sは、識別部30と識別層42とに同系統の色が付されていることにより、電気融着継手1と樹脂管40との用途が同じであることを認識しやすく、電気融着継手1と樹脂管40との誤接続を抑制しやすく、電気融着継手1と樹脂管40との接続不良を軽減しやすい。
配管構造Sにおいて、識別層42と本体部10と識別部30との色の組合せとしては、例えば、識別層42の色が赤、本体部10の色が黒、識別部30の色が赤;識別層42の色が緑、本体部10の色が白、識別部30の色が緑;識別層42の色が灰色、本体部10の色が黒、識別部30の色が灰色等の組合せが挙げられる。
【0059】
本実施形態の配管構造Sは、電気融着継手1と樹脂管40とが接続されたものである。しかし、配管構造としては、本実施形態に限られず、電気融着継手1に代えて電気融着継手2を採用してもよい。
【0060】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
上述の実施形態では、電気融着継手1及び2の形状がソケットである。本発明はこれに限定されず、電気融着継手の形状は、エルボでもよく、チーズでもよい。
上述の実施形態では、樹脂管40には識別層42が形成されている。本発明はこれに限定されず、樹脂管は、識別層を有していなくてもよい。この場合、識別部と樹脂管の本体とは、同系統の色が付されていることが好ましい。
上述の実施形態では、識別部30は、本体部10の内周面10aの全面に亘って形成されている。本発明はこれに限定されず、識別部は、本体部の内周面の一部に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1、2 電気融着継手
10 本体部
10a 本体部の内周面
11 端子カバー部
12 端子
13 電熱線
14 ストッパー
21、22 開口部
30、32 識別部
40 樹脂管
41 本体
42 識別層
S 配管構造
図1
図2
図3
図4