(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】バイオ燃料製造システム及びバイオ燃料製造方法並びにバイオ燃料製造車両
(51)【国際特許分類】
C10B 53/02 20060101AFI20240603BHJP
C10L 5/44 20060101ALI20240603BHJP
C10C 5/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C10B53/02
C10L5/44
C10C5/00
(21)【出願番号】P 2023118394
(22)【出願日】2023-07-20
【審査請求日】2023-11-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 康平
(72)【発明者】
【氏名】坂本 康一
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼▲崎▼ 慎也
(72)【発明者】
【氏名】北村 修平
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】下村 智彦
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-316170(JP,A)
【文献】特表2022-542614(JP,A)
【文献】特許第6233910(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 53/00
C10L 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス原料からバイオ燃料を製造可能なバイオ燃料製造システムであって、
燃焼室から供給される熱を用いてバイオマス原料を熱分解する熱分解炉と、
前記熱分解炉で発生した乾留ガスを燃料として前記燃焼室に供給するガス供給配管と、
前記乾留ガスの用途に応じた複数の運転モードのうちのいずれか一つを設定するためのモード設定手段と、
前記乾留ガスに含まれる成分を分析する分析手段と、
前記乾留ガスを回収するガス回収装置に前記乾留ガスを排出させるガス排出配管と、
前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を調整する
とともに、前記ガス回収装置に排出される前記乾留ガスの量を調整するための調整手段と、
設定された前記運転モードに応じて前記調整手段を制御する制御手段と
、
を備え
、
複数の前記運転モードは、前記乾留ガスを燃料として前記燃焼室で燃焼させる燃焼用モードと、前記乾留ガスから化学品原料を製造する化学品製造モードとを含み、
前記制御手段は、
前記燃焼用モードにおける前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を他の前記運転モードにおける前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量よりも増加させ、
前記化学品製造モードが設定されている場合に、前記分析手段の分析結果に基づいて、前記ガス回収装置に排出される乾留ガスに含まれる所定の成分量が所定の範囲内となるように前記調整手段を制御するバイオ燃料製造システム。
【請求項2】
前記調整手段は、前記ガス供給配管に流出させる乾留ガスの量と前記ガス排出配管に流出させる乾留ガスの量との分配を調整させるための分配調整弁である請求項1に記載のバイオ燃料製造システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記燃焼用モードが設定されている場合に、前記燃焼室における前記乾留ガスの発熱量が所定範囲内となるように前記調整手段を制御する請求項
1に記載のバイオ燃料製造システム。
【請求項4】
前記乾留ガスに含まれる硫黄酸化物を低減させるための脱硫装置を備え、
脱硫後の前記乾留ガスを前記燃焼室に供給する請求項1に記載のバイオ燃料製造システム。
【請求項5】
前記乾留ガスに含まれる成分を分析する分析手段を備え、
前記制御手段は、前記分析手段の分析結果から前記バイオ燃料の炭化度を推定し、前記炭化度に基づいて所望の炭化度に達するまでに必要な前記熱分解炉の運転時間を決定する請求項1に記載のバイオ燃料製造システム。
【請求項6】
前記熱分解炉の炉内の温度を計測する温度計測手段を備え、
前記制御手段は、計測された温度が所定の温度範囲内となるように、前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を制御する請求項1に記載のバイオ燃料製造システム。
【請求項7】
前記所定の温度範囲の上限値は、前記バイオマス原料に含まれる混入物又は夾雑物が溶融しない温度に設定されている請求項
6に記載のバイオ燃料製造システム。
【請求項8】
バイオマス原料を乾燥させる乾燥装置を備え、
前記燃焼室から排出される燃焼排ガスを前記乾燥装置に熱源として供給する排ガス配管を備える請求項1に記載のバイオ燃料製造システム。
【請求項9】
前記排ガス配管には、脱硝装置または脱硫装置が設けられている請求項
8に記載のバイオ燃料製造システム。
【請求項10】
バイオ燃料製造システムの運転情報に基づいて、前記バイオ燃料製造システムの残寿命を予測し、予測した残寿命の予測結果に基づいて、メンテナンスの管理を行うメンテナンス管理手段を備える請求項1に記載のバイオ燃料製造システム。
【請求項11】
前記バイオマス原料から液体成分を抽出する液体成分抽出手段を備える請求項1に記載のバイオ燃料製造システム。
【請求項12】
バイオマス原料からバイオ燃料を製造可能なバイオ燃料製造システムを有し、
前記バイオ燃料製造システムは、燃焼室から供給される熱を用いてバイオマス原料を熱分解する熱分解炉と、前記熱分解炉で発生した乾留ガスを燃料として前記燃焼室に供給するガス供給配管と
、前記乾留ガスに含まれる成分を分析する分析手段と、前記乾留ガスを回収するガス回収装置に前記乾留ガスを排出させるガス排出配管と、前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を調整するとともに、前記ガス回収装置に排出される前記乾留ガスの量を調整するための調整手段とを備え、
前記乾留ガスの用途に応じた複数の運転モード
のうちのいずれか一つを設定するためのモード設定工程と、
設定された前記運転モードに応じて
前記調整手段を制御する制御工程と、
を
有し、
複数の前記運転モードは、前記乾留ガスを燃料として前記燃焼室で燃焼させる燃焼用モードと、前記乾留ガスから化学品原料を製造する化学品製造モードとを含み、
前記制御工程は、
前記燃焼用モードにおける前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を他の前記運転モードにおける前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量よりも増加させ、前記化学品製造モードが設定されている場合に、前記分析手段の分析結果に基づいて、前記ガス回収装置に排出される乾留ガスに含まれる所定の成分量が所定の範囲内となるように前記調整手段を制御するバイオ燃料製造方法。
【請求項13】
請求項1から
11のいずれかに記載のバイオ燃料製造システムを搭載したバイオ燃料製造車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオ燃料製造システム及びバイオ燃料製造方法並びにバイオ燃料製造車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の枯渇化及びCO2排出による地球温暖化への対策として、従来、廃棄物として扱われていた木質バイオマスなどのバイオマスを資源化して有効利用することが提案されている。
例えば、製材所や木材市場では、バーク(木の樹皮)が大量に発生する。また、森林、公園、河川では、草刈りや剪定等により、大量の枝葉が発生する。これらを廃棄処理することなく回収してバイオ炭等のバイオ燃料を生成して資源化することで、廃棄処理のための費用を削減できるとともにCO2削減を図ることができる。
【0003】
ところで、こういった木材や枝葉などのバイオマス原料は、全国に広く点在している。したがって、このようなバイオマス原料を効率的に回収し、資源化することが望まれる。
例えば、特許文献1には、コンパクト化した炭化処理設備を車両に搭載した移動型の炭化処理設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される移動型の炭化処理設備は、車両に単に小型化した炭化装置を搭載するに留まり、炭化処理設備で発生するエネルギーの利用については考慮されていなかった。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、バイオ燃料の製造過程で発生するエネルギーを有効活用することのできるバイオ燃料製造システム及びバイオ燃料製造方法並びにバイオ燃料製造車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、バイオマス原料からバイオ燃料を製造可能なバイオ燃料製造システムであって、燃焼室から供給される熱を用いてバイオマス原料を熱分解する熱分解炉と、前記熱分解炉で発生した乾留ガスを燃料として前記燃焼室に供給するガス供給配管と、前記乾留ガスの用途に応じた複数の運転モードのうちのいずれか一つを設定するためのモード設定手段と、前記乾留ガスに含まれる成分を分析する分析手段と、前記乾留ガスを回収するガス回収装置に前記乾留ガスを排出させるガス排出配管と、前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を調整するとともに、前記ガス回収装置に排出される前記乾留ガスの量を調整するための調整手段と、設定された前記運転モードに応じて前記調整手段を制御する制御手段と、を備え、複数の前記運転モードは、前記乾留ガスを燃料として前記燃焼室で燃焼させる燃焼用モードと、前記乾留ガスから化学品原料を製造する化学品製造モードとを含み、前記制御手段は、前記燃焼用モードにおける前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を他の前記運転モードにおける前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量よりも増加させ、前記化学品製造モードが設定されている場合に、前記分析手段の分析結果に基づいて、前記ガス回収装置に排出される乾留ガスに含まれる所定の成分量が所定の範囲内となるように前記調整手段を制御するバイオ燃料製造システムである。
【0008】
本開示の一態様は、バイオマス原料からバイオ燃料を製造可能なバイオ燃料製造システムを有し、前記バイオ燃料製造システムは、燃焼室から供給される熱を用いてバイオマス原料を熱分解する熱分解炉と、前記熱分解炉で発生した乾留ガスを燃料として前記燃焼室に供給するガス供給配管と、前記乾留ガスに含まれる成分を分析する分析手段と、前記乾留ガスを回収するガス回収装置に前記乾留ガスを排出させるガス排出配管と、前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を調整するとともに、前記ガス回収装置に排出される前記乾留ガスの量を調整するための調整手段とを備え、前記乾留ガスの用途に応じた複数の運転モードのうちのいずれか一つを設定するためのモード設定工程と、設定された前記運転モードに応じて前記調整手段を制御する制御工程と、を有し、複数の前記運転モードは、前記乾留ガスを燃料として前記燃焼室で燃焼させる燃焼用モードと、前記乾留ガスから化学品原料を製造する化学品製造モードとを含み、前記制御工程は、前記燃焼用モードにおける前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を他の前記運転モードにおける前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量よりも増加させ、前記化学品製造モードが設定されている場合に、前記分析手段の分析結果に基づいて、前記ガス回収装置に排出される乾留ガスに含まれる所定の成分量が所定の範囲内となるように前記調整手段を制御するバイオ燃料製造方法である。
【0009】
本開示の一態様は、上記記載のバイオ燃料製造システムを搭載したバイオ燃料製造車両である。
【発明の効果】
【0010】
本開示のバイオ燃料製造システム及びバイオ燃料製造方法並びにバイオ燃料製造車両によれば、バイオ燃料の製造過程で発生するエネルギーを有効活用することができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係るバイオ燃料製造車両の概略構成を示した図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るバイオ燃料製造システムにおける熱分解炉の周辺概略構成の一例を示した図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るシステム制御装置が備える機能の一例を示した機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係るバイオ燃料製造システム及びバイオ燃料製造方法並びにバイオ燃料製造車両の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るバイオ燃料製造車両1の概略構成を示した図である。
図1に示すように、バイオ燃料製造車両1は、バイオマス原料からバイオ燃料を製造するバイオ燃料製造システム2を搭載している。
また、バイオ燃料製造車両1は、バイオ燃料製造システム2にバイオマス原料を供給する原料搬送手段として、コンベヤ3を備えていてもよい。
【0013】
また、バイオ燃料製造車両1は、クレーン4を備えていてもよい。クレーン4は、例えば、バイオ燃料製造システム2にバイオマス原料を搬入するために用いられる。また、クレーン4は、バイオ燃料製造システム2によって製造されたバイオ燃料を搬出するために用いられる。例えば、クレーン4の先端には、ワイヤを介してカゴが連結されており、カゴにバイオマス原料やバイオ燃料が収容されることにより、バイオマス原料の搬入、バイオ燃料の搬出が行われる。
【0014】
また、バイオ燃料製造車両1には、ドローン(飛行体)5の発着基地として機能するドローンポート(図示略)が設けられている。ドローンポートには、ドローン5を充電するためのドローン充電装置(図示略)が設けられている。ドローン5は、例えば、バイオマス原料の回収場所に関する情報(回収場所の位置情報、地形情報など)、炭素固定化に関する情報(バイオマス原料の集荷量情報、固定化されたバイオ炭の位置情報、バイオ炭の組成情報、バイオ炭の散布量情報など)等を取得する。例えば、ドローン5は、車両の周辺を飛行し、近隣にバイオマス原料があるかを探索するために使用される。また、ドローン5は、例えば、バイオ燃料製造システム2によって製造されたバイオ燃料(バイオ炭)を散布することで炭素固定化する場所を探索するために使用される。また、例えば、ドローン5はバイオマス原料の回収、バイオ炭の散布を行うために、これらを運搬するために使用される。
【0015】
バイオ燃料製造システム2は、例えば、乾燥装置11、粉砕機12、熱分解炉13、及び燃焼室14を備えている。
乾燥装置11は、例えば、コンベヤ3から投入されたバイオマス原料を乾燥させる。バイオマス原料は、例えば、木材からなる木質バイオマス(生物資源)であり、樹木の伐採や造材のときに発生した枝、葉などの林地残材、製材工場などから発生する樹皮(バーク)、樹皮(バーク)や鋸屑等から生成される木質ペレット、木質チップ等である。
乾燥装置11として、例えば、ベルト上に載置されたバイオマス原料に高温のガスを接触させて乾燥させるベルト乾燥機を採用することが可能である。また、乾燥装置11として、ベルト乾燥機に代えて、ロータリーキルン式乾燥機、ディスク乾燥機等を採用することが可能である。乾燥装置11の加熱方式は間接加熱、直接加熱のいずれでもよい。
【0016】
粉砕機12は、乾燥後のバイオマス原料を適切な大きさに粉砕する。また、粉砕機12は、熱分解炉13で製造されたバイオ炭等のバイオ燃料を粉砕可能な構成とされている。
熱分解炉13は、例えば、バイオマス原料を熱分解してバイオ炭等のバイオ燃料を生成する。熱分解炉13は、燃焼室14を備えている。燃焼室14は、燃料を燃焼させ、熱を発生させる。また、燃焼室14には、粉砕機12によって粉砕されたバイオマス原料の一部が燃料として投入されてもよい。熱分解炉13は、燃焼室14から供給される熱によってバイオマス原料を間接的に加熱し、熱分解やガス化反応を起こさせる。熱分解の進行により、バイオマス原料は熱分解ガスを発生しながら炭化される。生成されたバイオ燃料(例えば、バイオ炭等)は、例えば、所定の回収容器20(
図2参照)に排出され、収容される。また、バイオ炭等のバイオ燃料は、上述したように、粉砕機12によって粉砕された後に、回収容器20に収容されてもよい。
熱分解炉13の加熱方式は、間接加熱、直接加熱のいずれでもよい。熱分解炉13の一例として、間接加熱式ロータリーキルン、直接加熱式ロータリーキルン、流動床炉、スクリュー型炭化炉等が挙げられる。
【0017】
図2は、本実施形態に係るバイオ燃料製造システム2における熱分解炉13の周辺概略構成の一例を示した図である。
図2に示すように、バイオ燃料製造システム2は、熱分解炉13で発生した乾留ガスを燃料として燃焼室14に供給するガス供給配管21を備えている。ガス供給配管21には、乾留ガスから硫黄酸化物を除去するための脱硫装置22が設けられており、脱硫後の乾留ガスが燃焼室14に供給される構成としてもよい。
また、バイオ燃料製造システム2は、乾留ガスを収容するガス回収装置23と、乾留ガスをガス回収装置23に流出させるためのガス排出配管24とを備えている。本実施形態において、ガス排出配管24は、ガス供給配管21において脱硫装置22のガス流れ下流側に連結されている。ガス回収装置23に回収された乾留ガスは、一酸化炭素、水素などの化学品を製造する原料として利用される。
【0018】
ガス供給配管21において、ガス排出配管24との接続箇所には、燃焼室14への乾留ガスの供給量を調整するための調整手段が設けられている。本実施形態において、調整手段は、例えば、ガス供給配管21に流出させる乾留ガスの量と、ガス排出配管24に流出させる乾留ガスの量との分配を調整させるための分配調整弁25である。分配調整弁25として、例えば、三方弁を採用することが可能である。
【0019】
バイオ燃料製造システム2は、燃焼室14から排出される燃焼排ガスを乾燥装置11に熱源として供給する排ガス配管26を備えている。排ガス配管26には、燃焼排ガスから窒素酸化物を除去するための脱硝装置27が設けられていてもよい。また、排ガス配管26には、熱交換器28が設けられている。例えば、熱交換器28において、燃焼排ガスによって加熱された熱媒(例えば、水蒸気)が乾燥装置11に供給される。例えば、熱交換器28と乾燥装置11には、接続された伝熱管28a、11aが設けられており、熱交換器28の伝熱管28aにおいて加熱された熱媒が、乾燥装置11の伝熱管11aに供給されることにより、伝熱管11aの外周に接触するバイオマス原料を間接的に加熱・乾燥するように構成されている。なお排ガス配管26を通過する燃焼排ガスは脱硫装置22を通過することがあってもよく、これにより燃焼排ガスから硫黄酸化物を除去することが可能となる。
【0020】
また、バイオ燃料製造システム2は、熱分解炉13の炉内の温度を計測するための温度センサ29、乾留ガスに含まれる成分を分析する分析装置(
図2参照)30を備えている。
また、バイオ燃料製造システム2は、バイオマス原料から液体成分を抽出する液体成分抽出部31を備えていてもよい。これにより、例えば、バイオマス原料から木酢油、竹酢油などの液体成分を抽出することができ、バイオマス原料をより有効に利用することが可能となる。
【0021】
上述したバイオ燃料製造システム2は、システム制御装置40(
図3参照)によって制御される。システム制御装置40は、コンピュータであり、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、主記憶装置(Main Memory)、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)、外部インターフェース、通信インターフェースなどを備えている。後述する各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置などに記憶されており、このプログラムをCPU(プロセッサ)が主記憶装置に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置に予めインストールされている形態や、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例として、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどが挙げられる。
【0022】
図3は、システム制御装置40が備える機能の一例を示した機能構成図である。
図3に示すように、システム制御装置40は、モード設定部41、弁制御部42、運転制御部43などを備えている。また、システム制御装置40は、メンテナンス管理部44を更に備えていてもよい。
【0023】
システム制御装置40は、乾留ガスの用途に応じた複数の運転モードを備えている。複数の運転モードは、例えば、乾留ガスを燃料として燃焼室14で燃焼させる燃焼用モードと、乾留ガスを化学品原料として排出する化学品製造モードとを含んでいる。化学品原料は、例えば、一酸化炭素、水素等である。
【0024】
モード設定部41は、複数の運転モードのうちのいずれか一つを設定するために用いられる。運転モードは、ユーザによって選択可能とされている。例えば、ユーザは、ユーザインターフェースとして設けられている入力部32を操作することにより、所望の運転モードを選択する。入力部32は、ユーザが運転モードを設定できる機能を有していればよく、例えば、タッチパネル式入力部、ボタン式入力部、ダイアル式入力部等が挙げられる。ユーザによって選択された運転モードの情報は、入力部32からシステム制御装置40に出力される。モード設定部41は、ユーザによって燃焼用モードが選択された場合には、燃焼用モードを設定し、ユーザによって化学品製造モードが選択された場合には、化学品製造モードを設定する。
【0025】
弁制御部42は、設定された運転モードに応じて分配調整弁25を制御する。例えば、弁制御部42は、燃焼用モードにおける燃焼室14への乾留ガスの供給量を他の運転モードにおける燃焼室14への乾留ガスの供給量よりも増加させるように、分配調整弁25を制御する。換言すると、燃焼用モードが設定されている場合には、ガス供給配管21から燃焼室14に供給される乾留ガスが、ガス排出配管24に排出される乾留ガスよりも多くなるように、分配調整弁25を制御する。他方、化学品製造モードが設定されている場合には、ガス排出配管24に排出される乾留ガスが、ガス供給配管21から燃焼室14に供給される乾留ガスよりも多くなるように、分配調整弁25を制御する。
これにより、燃焼用モードが設定されている場合には、乾留ガスが主として燃焼室14に供給され、化学品製造モードが設定されている場合には、乾留ガスが主としてガス排出配管24を通じてガス回収装置23に供給される。
【0026】
更に、弁制御部42は、燃焼用モードが設定されている場合に、例えば、燃焼室14における乾留ガスの燃焼による発生熱量が所定範囲内となるように分配調整弁25を調整する。具体的には、燃焼室14における発生熱量が略一定となるように分配調整弁25を調整する。これにより、燃焼室14において安定した燃焼状態を維持することが可能となる。
【0027】
また、弁制御部42は、化学品製造モードが設定されている場合に、乾留ガスに含まれる所定の成分の生成量が所定の範囲内となるように分配調整弁25を制御する。例えば、弁制御部42は、分析装置30による分析結果から特定の成分の生成量の情報を取得し、取得した特定の成分(例えば、水素)がガス回収装置23に一定量供給されるように、分配調整弁25を調整する。この結果、例えば、単位体積当たりの水素の生成量が増加した場合には、ガス回収装置23に供給される乾留ガスの量を減少させるように分配調整弁25が制御され、単位体積当たりの水素の生成量が減少した場合には、ガス回収装置23に供給される乾留ガスの量を増加させるように分配調整弁25が制御される。これにより、乾留ガスに含まれる特定の成分を、所望量生成して回収することができる。
【0028】
また、運転制御部43は、温度センサ29の検出結果及び分析装置30の分析結果に基づいて熱分解炉13を制御する。例えば、運転制御部43は、分析装置30の分析結果からバイオ燃料(例えば、バイオ炭)の炭化度を推定し、推定した炭化度に基づいて熱分解炉13の運転時間を決定し、決定した運転時間に基づいて熱分解炉13の運転を制御する。より具体的には、運転制御部43は、乾留ガスに含まれる各成分(例えば、水素、ハイドロカーボン、水蒸気)の割合からバイオ燃料(例えば、バイオ炭)の炭化度を推定する。運転制御部43は、例えば、バイオ燃料の炭化度と運転時間とが関連付けられた情報(例えば、関数やテーブル等)を有しており、この情報を用いて、現在のバイオ燃料の炭化度から所望の炭化度に達するまでに必要な運転時間を取得すればよい。
このような制御を行うことにより、例えば、安定した品質(炭化度)のバイオ炭を製造することが可能となる。
【0029】
また、運転制御部43は、温度センサ29の検出温度が所定の温度範囲内となるように、燃焼室14に供給する燃料の供給量を調整する。例えば、運転制御部43は、弁制御部42と連携し、温度センサ29によって検出された温度が所定の温度範囲内となるように、燃焼室14に供給される乾留ガスの供給量を制御することとしてもよい。
所定の温度範囲の上限値は、例えば、バイオマス原料に含まれる混入物又は夾雑物が溶融しない温度に設定されている。また、下限値は、例えば、炭化を行うことのできる最低温度に設定されている。
このように、熱分解炉13の運転温度が所定の温度範囲内となるように制御するので、混入物や夾雑物を固体の状態で熱分解炉13から排出することが可能となる。これにより、例えば、バイオマス原料に含まれる混入物・夾雑物が溶融して炉内等に固着することを防止することが可能となる。
【0030】
メンテナンス管理部44は、バイオ燃料製造システム2の運転情報に基づいて、バイオ燃料製造システム2の残寿命を予測し、予測した残寿命の予測結果に基づいて、メンテナンスの管理を行う。このように、メンテナンス管理部44を備えることにより、適切な時期にバイオ燃料製造システム2のメンテナンス(バイオ燃料製造システムを構成する各種構成要素の交換も含む)を実施することが可能となる。また、メンテナンスの時期だけでなく、メンテナンスの内容についてもユーザに提案することとしてもよい。また、車両の走行距離などから車両のメンテナンスについても管理することとしてもよい。
【0031】
次に、本実施形態に係るバイオ燃料製造車両1の使用方法について説明する。
バイオ燃料製造車両1は、バイオマス原料の発生地を巡回し、バイオマス原料を回収する。回収されたバイオマス原料は、コンベヤ3によってバイオ燃料製造システム2、具体的には、乾燥装置11に投入される。
【0032】
また、所定のタイミングで、熱分解炉13の燃焼室14に点火し燃焼させる。これにより、燃焼室14の熱が熱分解炉13に供給される。また、この熱は、乾燥装置11に伝達されることにより、乾燥装置11の乾燥を補助してもよい。乾燥装置11への熱の供給は、燃焼室14で発生した燃焼ガスを乾燥装置11に直接導いてもよく、水や蒸気などの熱媒体を用いてもよい。なお、燃焼室14で燃焼させる燃料(バイオマス原料の一部もしくは熱分解炉13で発生する可燃性ガス)が供給されるまでは、起動用の燃料(例えば、液化バイオ燃料や容器に充填されたバイオガス)を用いてもよい。
【0033】
乾燥装置11によって乾燥されたバイオマス原料は、粉砕機12に投入される。粉砕機12は、バイオマス原料を粉砕する。粉砕機12によって粉砕されたバイオマス原料は、バイオ燃料製造用として熱分解炉13に供給される。このとき、バイオマス原料の一部を燃料として燃焼室14に供給することとしてもよい。
【0034】
熱分解炉13では、バイオマス原料を熱分解してバイオ炭等のバイオ燃料が生成されるとともに、可燃性ガスである乾留ガスが発生する。乾留ガスは、ガス供給配管21に排出され、脱硫装置22において硫黄酸化物が除去される。そして、設定されている運転モードに応じて分配調整弁25が弁制御部42によって制御されることにより、乾留ガスの流量比率が調整される。具体的には、燃焼用モードが設定されている場合には、乾留ガスの大部分が燃焼室14に供給され(燃焼室14への乾留ガスの供給量を他の運転モードにおける燃焼室14への乾留ガスの供給量よりも増加させる)、化学品製造モードが設定されている場合には、乾留ガスの大部分がガス排出配管24を通じてガス回収装置23に供給され(ガス排出配管24に排出される乾留ガスが、ガス供給配管21から燃焼室14に供給される乾留ガスよりも多くなるように供給される)、化学品原料の製造に利用される。
【0035】
また、燃焼室14において燃料を燃焼させることによって発生した燃焼排ガスは、排ガス配管26を通じて熱分解炉13から排出される。燃焼排ガスは、脱硝装置27または脱硫装置22によってNOx、SOx等の環境影響因子が所定のレベルまで低減された後、熱交換器28に送られ、乾燥装置11の熱源として用いられる。熱交換後の燃焼排ガス(ドレンを含む)は、外部に放出される。
【0036】
また、熱分解炉13において、液体成分抽出部31によってバイオマス原料から液体成分が抽出され、回収される。また、熱分解炉13の運転は、温度センサ29による検出温度及び分析装置30の分析結果に基づいて、運転制御部43によって制御される。これにより、安定した品質のバイオ燃料(例えば、バイオ炭など)を製造することが可能となる。バイオ燃料製造システム2によって製造されたバイオ炭等のバイオ燃料は、所定の回収容器20に回収される。
また、運転制御部43によるバイオ燃料製造システム2の運転情報は、メンテナンス管理部44に蓄積され、これらの運転情報に基づいてメンテナンス時期やメンテナンス内容が管理されることとなる。
【0037】
以上説明してきたように、本実施形態に係るバイオ燃料製造システム2及びバイオ燃料製造方法並びにバイオ燃料製造車両1によれば、燃焼室14から供給される熱を用いてバイオマス原料を熱分解する熱分解炉13と、熱分解炉13で発生した乾留ガスを燃料として燃焼室14に供給するガス供給配管21と、乾留ガスの用途に応じた複数の運転モードのうちのいずれか一つを設定するためのモード設定部41と、燃焼室14への乾留ガスの供給量を調整するための分配調整弁25と、設定された運転モードに応じて分配調整弁25を制御する弁制御部42とを備えている。
【0038】
これにより、乾留ガスを複数の用途に用いることが可能となる。この結果、乾留ガスを有効利用することが可能となり、例えば、外部から可能な限りエネルギー供与を受けずにバイオ燃料製造システム2を稼働させ、バイオ燃料を製造することが可能となる。
【0039】
以上、本開示のバイオ燃料製造システム2及びバイオ燃料製造方法並びにバイオ燃料製造車両1について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。開示の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、ガス供給配管21にガス排出配管24を連結させるとともに、ガス供給配管21とガス排出配管24との連結点に分配調整弁25を設け、この分配調整弁25を制御することにより、燃焼室14に供給される乾留ガスの量、ガス回収装置23に供給される乾留ガスの量、換言すると、分配率を調整していたが、これに限られない。例えば、燃焼室14に乾留ガスを供給するガス供給配管21と、乾留ガスをガス回収装置23に供給するガス排出配管24とを個別に設け、ガス供給配管21及びガス排出配管24に流量を調整する流量調節弁をそれぞれ設けることとしてもよい。そして、設定されている運転モードに応じて、各流量調節弁の弁開度を制御するような構成としてもよい。
【0041】
また、バイオ燃料製造システム2の構成は一例であり、これに限られない。例えば、粉砕機12を省略したような構成としてもよい。また、粉砕機12に代えて断裁機を用いることとしてもよい。また、バイオ燃料製造システム2の運転制御については、公知の技術と適宜組み合わせることとしてもよい。例えば、上述したバイオ燃料製造システム2の各種運転条件(例えば、乾燥温度、乾燥時間、粉砕の粒度、熱分解処理の温度、時間、酸素濃度等)については、公知の技術を適宜採用することが可能である。
【0042】
以上説明した一実施形態に記載のバイオ燃料製造システム及びバイオ燃料製造方法並びにバイオ燃料製造車両は、例えば以下のように把握される。
【0043】
本開示の第1態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、バイオマス原料からバイオ燃料を製造可能なバイオ燃料製造システム(2)であって、燃焼室(14)から供給される熱を用いてバイオマス原料を熱分解する熱分解炉(13)と、前記熱分解炉で発生した乾留ガスを燃料として前記燃焼室に供給するガス供給配管(21)と、前記乾留ガスの用途に応じた複数の運転モードのうちのいずれか一つを設定するためのモード設定手段(41)と、前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を調整するための調整手段(25)と、設定された前記運転モードに応じて前記調整手段を制御する制御手段(42)とを備える。
【0044】
上記態様によれば、乾留ガスを複数の用途に用いることができる。この結果、乾留ガスを有効利用することが可能となり、例えば、外部から可能な限りエネルギー供与を受けずにバイオ燃料製造システム2を稼働させ、バイオ燃料を製造することが可能となる。
【0045】
本開示の第2態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、第1態様において、複数の前記運転モードは、前記乾留ガスを燃料として前記燃焼室で燃焼させる燃焼用モードと、前記乾留ガスから化学品原料を製造する化学品製造モードとを含み、前記制御手段(42)は、前記燃焼用モードにおける前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を他の前記運転モードにおける前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量よりも増加させる。
【0046】
上記態様によれば、状況に応じて乾留ガスを燃焼用の燃料として使用したり、乾留ガスから化学品原料を製造したりすることが可能となる。また、運転モードに応じて乾留ガスの分配率を適切に調整することができる。
【0047】
本開示の第3態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、第2態様において、前記制御手段(42)は、前記燃焼用モードが設定されている場合に、前記燃焼室における前記乾留ガスの発熱量が所定範囲内となるように前記調整手段(25)を制御する。
【0048】
上記態様によれば、燃焼用モードにおいては、燃焼室に供給する乾留ガスの発熱量を所定範囲内に維持することが可能となる。これにより、安定した燃焼状態を維持することが可能となる。また、燃焼室に供給されない乾留ガスについては、化学品を製造する用途として利用することができる。
【0049】
本開示の第4態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、第1から第3態様のいずれかにおいて、前記乾留ガスに含まれる硫黄酸化物を低減させるための脱硫装置(22)を備え、脱硫後の前記乾留ガスを前記燃焼室に供給する。
【0050】
上記態様によれば、有害成分である硫黄酸化物の含有レベルが低減された乾留ガスを燃焼室に供給することが可能となる。
【0051】
本開示の第5態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、第2から第4態様のいずれかにおいて、前記乾留ガスに含まれる成分を分析する分析手段(30)と、前記乾留ガスを回収するガス回収装置に前記乾留ガスを排出させるガス排出配管(24)とを備え、前記制御手段(42)は、前記化学品製造モードが設定されている場合に、前記ガス回収装置に排出される乾留ガスに含まれる所定の成分量が所定の範囲内となるように前記調整手段(25)を制御する。
【0052】
上記態様によれば、乾留ガスから製造される化学品原料の品質を安定させることが可能となる。また、ガス回収装置に供給されなかった乾留ガスについては、燃焼室に燃料として供給することが可能となる。これにより、乾留ガスを有効に利用することができる。
【0053】
本開示の第6態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、第1から第5態様のいずれかにおいて、前記乾留ガスに含まれる成分を分析する分析手段(30)を備え、前記制御手段(43)は、前記分析手段(30)の分析結果から前記バイオ燃料の炭化度を推定し、前記炭化度に基づいて所望の炭化度に達するまでに必要な前記熱分解炉の運転時間を決定する。
【0054】
上記態様によれば、バイオ燃料の炭化度を推定し、炭化度に基づいて所望の炭化度に達するまでに必要な熱分解炉の運転時間を決定するので、安定した品質のバイオ燃料を製造することが可能となる。
【0055】
本開示の第7態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、第1から第6態様のいずれかにおいて、前記熱分解炉の炉内の温度を計測する温度計測手段(29)を備え、前記制御手段(42)は、計測された温度が所定の温度範囲内となるように、前記燃焼室(14)への前記乾留ガスの供給量を制御する。
【0056】
上記態様によれば、熱分解炉の炉内の温度を適切な温度範囲に制御することが可能となる。
【0057】
本開示の第8態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、第7態様において、前記所定の温度範囲の上限値は、前記バイオマス原料に含まれる混入物又は夾雑物が溶融しない温度に設定されている。
【0058】
上記態様によれば、バイオマス原料に含まれる混入物又は夾雑物が溶融することを回避することが可能となる。これにより、混入物又は夾雑物を個体の状態で熱分解炉から排出させることができる。この結果、混入物又は夾雑物が溶融して熱分解炉内に固着し、装置を劣化させたりすることを回避することが可能となる。
【0059】
本開示の第9態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、第1から第8態様のいずれかにおいて、バイオマス原料を乾燥させる乾燥装置(11)を備え、前記燃焼室(14)から排出される燃焼排ガスを前記乾燥装置(11)に熱源として供給する排ガス配管(26)を備える。
【0060】
上記態様によれば、燃焼室において燃料を燃焼させることによって発生した燃焼排ガスの熱を乾燥装置に熱源として供給することが可能となる。これにより、バイオ燃料の製造過程で発生するエネルギーを有効活用することができる。この結果、外部から可能な限りエネルギー供与を受けずにバイオ燃料製造システムを稼働させることが可能となる。
【0061】
本開示の第10態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、第9態様において、前記排ガス配管(26)には、脱硝装置(27)または脱硫装置(22)が設けられている。
【0062】
上記態様によれば、燃焼排ガスに含まれる環境影響因子(例えば、NOx)を低減することが可能となる。
【0063】
本開示の第11態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、第1から第10態様のいずれかにおいて、バイオ燃料製造システム(2)の運転情報に基づいて、前記バイオ燃料製造システム(2)の残寿命を予測し、予測した残寿命の予測結果に基づいて、メンテナンスの管理を行うメンテナンス管理手段(44)を備える。
【0064】
上記態様によれば、適切な時期にバイオ燃料製造システムのメンテナンスを行うことが可能となる。
【0065】
本開示の第12態様に係るバイオ燃料製造システム(2)は、第1から第11態様のいずれかにおいて、前記バイオマス原料から液体成分を抽出する液体成分抽出手段(31)を備える。
【0066】
上記態様によれば、例えば、バイオマス原料から木酢油・竹酢油などの液体成分を抽出することが可能となる。これにより、バイオマス原料を有効に利用することが可能となる。
【0067】
本開示の第13態様に係るバイオ燃料製造方法は、バイオマス原料からバイオ燃料を製造可能なバイオ燃料製造システム(2)を有し、前記バイオ燃料製造システムは、燃焼室(14)から供給される熱を用いてバイオマス原料を熱分解する熱分解炉(13)と、前記熱分解炉で発生した乾留ガスを燃料として前記燃焼室に供給するガス供給配管(21)とを備え、乾留ガスの用途に応じた複数の運転モードを有し、複数の前記運転モードのうちのいずれか一つが設定された場合に、設定された前記運転モードに応じて前記燃焼室への前記乾留ガスの供給量を調整する。
【0068】
本開示の第14態様に係るバイオ燃料製造車両(1)は、第1から第12態様のいずれかに記載のバイオ燃料製造システム(2)を搭載した車両である。
【符号の説明】
【0069】
1 :バイオ燃料製造車両
2 :バイオ燃料製造システム
3 :コンベヤ
4 :クレーン
5 :ドローン
11 :乾燥装置
12 :粉砕機
13 :熱分解炉
14 :燃焼室
20 :回収容器
21 :ガス供給配管
22 :脱硫装置
23 :ガス回収装置
24 :ガス排出配管
25 :分配調整弁(調整手段)
26 :排ガス配管
27 :脱硝装置
28 :熱交換器
29 :温度センサ(温度計測手段)
30 :分析装置(分析手段)
31 :液体成分抽出部(液体成分抽出手段)
32 :入力部
40 :システム制御装置
41 :モード設定部(モード設定手段)
42 :弁制御部(制御手段)
43 :運転制御部(制御手段)
44 :メンテナンス管理部(メンテナンス管理手段)
【要約】
【課題】バイオ燃料の製造過程で発生するエネルギーを有効活用すること。
【解決手段】バイオ燃料製造システム2は、バイオマス原料からバイオ燃料を製造可能なシステムであり、燃焼室から供給される熱を用いてバイオマス原料を熱分解する熱分解炉13と、熱分解炉13で発生した乾留ガスを燃料として燃焼室に供給するガス供給配管21と、乾留ガスの用途に応じた複数の運転モードのうちのいずれか一つを設定するためのモード設定部と、燃焼室への乾留ガスの供給量を調整するための分配調整弁25と、設定された運転モードに応じて分配調整弁25を制御する弁制御部とを備える。
【選択図】
図2