(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】シームレスカプセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 2/06 20060101AFI20240603BHJP
B01J 13/06 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B01J2/06
B01J13/06
(21)【出願番号】P 2023166188
(22)【出願日】2023-09-27
【審査請求日】2023-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000191755
【氏名又は名称】森下仁丹株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】吉門 正智
(72)【発明者】
【氏名】西川 雄大
(72)【発明者】
【氏名】中野 修身
(72)【発明者】
【氏名】桑原 克昌
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-136576(JP,A)
【文献】特開2018-108958(JP,A)
【文献】特開2018-115144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00 - 2/30
B01J 13/02 - 13/22
A61J 1/00 - 19/06
A61K 9/00 - 9/72
A61K 47/00 - 47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シームレスカプセルの製造方法であって、
ノズルの先端から形成管の流路内の冷却液に液滴を滴下し、前記液滴から継ぎ目のない湿潤カプセルを形成する形成工程を含み、
前記ノズルは、その途中から前記先端に向かって前記ノズルの内側へ傾斜する傾斜部を備え、
前記傾斜部の外表面を前記先端の下方に向かって延長してなる仮想面で囲まれた空間の頂点と前記形成管の上端との距離Zは、-10mm≦Z≦
3.2mmの範囲内であり、Z<0の場合、前記頂点は前記形成管の上端よりも下方に位置し、Z>0の場合、前記頂点は前記形成管の上端よりも上方に位置する、
シームレスカプセルの製造方法。
【請求項2】
前記ノズルの中心軸を通る前記ノズルの垂直断面において、前記傾斜部の外表面の上端と下端とを結ぶ一対の直線に挟まれる角度は、20°~70°の範囲内である、
請求項1に記載のシームレスカプセルの製造方法。
【請求項3】
前記ノズルの中心軸と直交する前記ノズルの水平断面において、前記傾斜部の外形線は、円形、楕円又は多角形である、
請求項1に記載のシームレスカプセルの製造方法。
【請求項4】
前記湿潤カプセルの粒径の変動係数は、0.1以下である、
請求項1に記載のシームレスカプセルの製造方法。
【請求項5】
前記形成工程が、ノズルの先端を冷却液の液面よりも下方に位置させる工程を含む、
請求項1~4のいずれかに記載のシームレスカプセルの製造方法。
【請求項6】
前記湿潤カプセルを乾燥させて乾燥カプセルを得る乾燥工程を更に含む、
請求項1~4のいずれかに記載のシームレスカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記乾燥カプセルの粒径の変動係数は、0.1以下である、
請求項6に記載のシームレスカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シームレスカプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ノズルの先端から形成管の流路内の冷却液(硬化液)へと液滴を下向きに流出させ、充填物質を皮膜物質で被覆してなる球形状のシームレスカプセルの製造方法を開示する。ノズルは、その途中から先細りとなっている。ノズルの先端には、液滴を流出させる開口を有した先端面が設けられている。先端面は、ノズルの中心軸に直交し、水平に向けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この製造方法は、ノズルの先端面を冷却液の液面の上方に位置させた、いわゆる気中ノズル法を適用している。製造されるシームレスカプセルの外径をdとしたとき、ノズルの先端面と液面との間の距離は、0.5d~3dの範囲内に設定される。しかし、例えば皮膜に割れがないカプセルのような、高品質なシームレスカプセルを安定して製造する点に関し、シームレスカプセルの製造方法には依然として改善の余地がある。
【0005】
本発明は、高品質のシームレスカプセルを安定して製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意に研究を重ねた結果、次の着想を得た。すなわち、ノズルが先細りであり(すなわち、ノズルが、その途中から先端に向かってノズルの内側へ傾斜する傾斜部を備える)、且つノズルの先端面が冷却液の液面よりも下方にある場合に、冷却液は、ノズルの外表面に沿って下向きに流れ、形成管の上端の開口を介して形成管内へと流入する。その過程において、冷却液は、傾斜部の外表面を前記先端の下方に向かって延長してなる仮想面で囲まれた空間の頂点に向かって流れ、当該頂点付近で渦を形成することがある。このような渦が生じると、ノズルから流出する複合ジェットの形状が不安定となり、シームレスカプセルの皮膜に割れが生じたり、シームレスカプセルの外径のばらつきが大きくなったりする。そこで、ノズルの先端面ではなく、この仮想的な頂点の位置を調整することで、形成管に流れ込んでいく冷却液の流れを制御でき、それにより高品質のシームレスカプセルを安定して製造できるのではないかと着想した。本件発明者は、このような着想を具体化し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の一態様は、シームレスカプセルの製造方法であって、ノズルの先端から形成管の流路内の冷却液に液滴を滴下し、前記液滴から継ぎ目のない湿潤カプセルを形成する形成工程を含み、前記ノズルは、その途中から前記先端に向かって前記ノズルの内側へ傾斜する傾斜部を備え、前記傾斜部の外表面を前記先端の下方に向かって延長してなる仮想面で囲まれた空間の頂点と前記形成管の上端との距離Zは、-10mm≦Z≦6mmの範囲内であり、Z<0の場合、前記頂点は前記形成管の上端よりも下方に位置し、Z>0の場合、前記頂点は前記形成管の上端よりも上方に位置する、シームレスカプセルの製造方法を提供する。
【0008】
前記ノズルの中心軸を通る前記ノズルの垂直断面において、前記傾斜部の外表面の上端と下端とを結ぶ一対の直線に挟まれる角度は、20°~70°の範囲内であってもよい。
【0009】
前記ノズルの中心軸と直交する前記ノズルの水平断面において、前記傾斜部の外形線は、円形、楕円又は多角形であってもよい。
【0010】
前記湿潤カプセルの粒径の変動係数は、0.1以下であってもよい。
【0011】
前記形成工程が、ノズルの先端を冷却液の液面よりも下方に位置させる工程を含んでもよい。
【0012】
前記湿潤カプセルを乾燥させて乾燥カプセルを得る乾燥工程を更に含んでもよい。
【0013】
前記乾燥カプセルの粒径の変動係数は、0.1以下であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高品質のシームレスカプセルを安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るシームレスカプセルの製造方法が実施される製造装置の概略図。
【
図2】
図1の製造装置のノズル及び形成管を拡大して示す図。
【
図3】
図2のIII-III線に沿って示すノズルの水平断面図。
【
図4】ノズルに設定される仮想頂点と形成管の上端との距離を説明する図。
【
図5】第1変形例に係るノズル及び形成管を拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全図を通じて同一の符号を付し、詳細な説明の重複を省略する。
【0017】
図1に示される製造装置は、本実施形態に係る製造方法を使用してシームレスカプセル50を製造する。製造装置は、ノズル1、内容液タンク2、内容液供給管2a、皮膜液タンク3、皮膜液供給管3a、冷却液リザーバ6、冷却液タンク7、冷却液供給管8、冷却装置9、形成管10、ポンプ11~13、スクリーン14、及びドライヤ15を備えている。
【0018】
ノズル1は、内容液供給管2aを介して内容液タンク2と接続され、且つ皮膜液供給管3aを介して皮膜液タンク3と接続されている。内容液タンク2は、内容液41を貯留する。内容液41は、ポンプ11により内容液タンク2から内容液供給管2aを介してノズル1に圧送される。内容液41は、充填液とも称され、シームレスカプセル50の内部に充填されると、後述の内容物51となる。皮膜液タンク3は、皮膜液42を貯留する。皮膜液42は、ポンプ12により皮膜液タンク3から皮膜液供給管3aを介してノズル1に圧送される。
【0019】
図1及び
図2を参照して、冷却液リザーバ6は、冷却液供給管8を介して冷却液タンク7と接続されている。冷却液タンク7は、冷却液49を貯留する。冷却液49は、凝固液あるいは固化液とも称される。冷却液49は、ポンプ13により冷却液タンク7から冷却液供給管8を介して冷却液リザーバ6に圧送され、その過程で冷却装置9によって冷却される。冷却液49は、冷却液リザーバ6の内部空間に受容される。冷却液リザーバ6は、底壁6a、上壁6b、及び周壁6cを有し、これらの内面が内部空間を画定する。底壁6a及び上壁6bは、略水平であり、上下方向に互いに離れている。周壁6cは、底壁6aの周縁部から上方に立設される。上壁6bの周縁部は、周壁6cの上方に位置し、上壁6bの周縁部と周壁6cの上端部との間にスペーサ6eが設けられている。スペーサ6eは、上壁6bと周壁6cとの間の距離を定める部材であり、交換可能である。冷却液リザーバ6には、冷却液49を内部空間に流入させる冷却液流入ポート6dが設けられている。冷却液供給管8の下流端は、冷却液流入ポート6dに接続される。上壁6bは、冷却液49の液面49Lの上方の空間を大気開放可能に構成されている。冷却液49は、冷却液リザーバ6から冷却液タンク7へと形成管10を介して戻される。形成管10は、両端で開口し、冷却液49を通流させる流路を形成する。
図1および
図2の例では、冷却液49は、水頭圧で形成管10の流路を流れている。本実施形態の変形例では、ポンプ13の吐出力を利用して冷却液49を形成管10の流路を流すこともできる。このような変形例において、内部空間が密閉された冷却液リザーバ6を利用すればよい。
【0020】
スペーサ6eは、上壁6bと周壁6cとを離間できればよく、スペーサ6eの材質や形状は製造時の目的に応じて任意に選択できる。スペーサ6eの材質としては、例えば、樹脂、金属、天然ゴム、または合成ゴムなどが挙げられる。スペーサ6eの形状は、上下方向で見た平面形状で、上壁6bの周縁部のうち、周壁6cと向かい合う部分の全体を覆う形状、または周壁6cと向かい合う部分の一部が途切れた形状とすることができる。
【0021】
形成管10の上端10a(一端、上流端)は、冷却液リザーバ6の内部空間で開口する。形成管10の中心軸は、形成管10の上端部では鉛直に向けられ、形成管10の上端10aは、水平に向けられている。形成管10の断面は、典型的には円形である。形成管10は、上端10aから下方へ延在し、冷却液リザーバ6の底壁6aを貫通し、一旦上方へ折り返され、再び下方へ折り返され、終端する。また、上端10aと底壁6aの内面との距離Hは変更可能で、形成管10と底壁6aとの間に冷却液49の流出を防止するシーリング6fが設けられている。形成管10の他端(下流端)の開口は、冷却液タンク7の上方に位置し、下に向けられている。冷却液49は、形成管10の他端の開口から放出され、冷却液タンク7に受容される。
【0022】
シーリング6fは、冷却液49の流出を防止できればよく、シーリング6fの材質は製造時の目的に応じて任意に選択できる。シーリング6fの材質としては、例えば、樹脂、金属、天然ゴム、または合成ゴムなどが挙げられる。
【0023】
図2を参照して、ノズル1は、全体として筒状である。ノズル1の中心軸Aは、鉛直に向けられている。ノズル1の軸方向中間部には、半径方向に突出する板状のフランジ部1bが設けられている。フランジ部1bは、冷却液リザーバ6の上壁6bの外面(上面)に支持される。ノズル1は、フランジ部1bよりも軸方向基端側において、上壁6bから上方に突出している。この基端側の部位に、内容液41をノズル1に流入させる内容液流入ポート1cと、皮膜液42をノズル1に流入させる皮膜液流入ポート1dとが設けられている。ノズル1は、フランジ部1bよりも軸方向先端側において、上壁6bを通過し、冷却液リザーバ6の内部空間へと上から進入する。
【0024】
フランジ部1bは、ノズル1に固定される部材であり、交換可能である。フランジ部1bをノズル1に固定するにあたり、ビス等の固定具を用いることができる。フランジ部1bは、上記の通り、上壁6bの上面に支持されているため、上下方向におけるフランジ部1bの厚みでノズル1の位置を調整できる。フランジ部1bの材質は製造時の目的に応じて任意に選択できる。フランジ部1bの材質としては、例えば、樹脂、金属、天然ゴム、または合成ゴムなどが挙げられる。また、フランジ部1bの形状は、フランジ部1bを介してノズル1を上壁6bに設置できればよく、特に限定されないが、例えば、上下方向で見た平面視で円形、楕円形、又は多角形であってもよい。
【0025】
冷却液リザーバ6の内部空間では、冷却液49の液面49Lが、形成管10の上端10aと、上壁6bの内面(下面)との間に位置する。ポンプ13の流量調整を通じて、液面49Lの位置をこのように制御できる。ノズル1の先端1aは、液面49Lよりも下方に位置する。すなわち、ノズル1の先端部は、冷却液リザーバ6に受容されている冷却液49に浸かっている。
【0026】
図2及び
図3を参照して、ノズル1は、中央ノズル21及び最外ノズル22を有する。中央ノズル21も最外ノズル22も、ノズル1の内部で軸方向に延在する。中央ノズル21は、中心軸Aを中心とする円形状の断面を有する。最外ノズル22は、中央ノズル21と同心状であり、中央ノズル21を外囲し、中心軸Aを中心とする円環状の断面を有する。中央ノズル21の一端(上端、上流端)は、内容液流入ポート1cに接続される。最外ノズル22の一端(上端、上流端)は、皮膜液流入ポート1dに接続される。中央ノズル21の他端(下端、下流端)及び最外ノズル22の他端(下端、下流端)は、ノズル1の先端1aで開口する。ノズル1の先端1aは、中心軸Aに直交する平坦な先端面を形成する。中央ノズル21及び最外ノズル22は、この先端面に開口する。
【0027】
ノズル1は、その途中から先端1aに向かってノズル1の内側へ傾斜する傾斜部25を備える。傾斜部25は、フランジ部1bよりも軸方向先端側の部位に設けられている。
【0028】
図2及び
図4からわかるとおり、ノズル1の中心軸Aを通るノズル1の垂直断面において、傾斜部25の外表面25aは、一対の直線25bとして表される。一対の直線25bは、傾斜部25の外表面25aの上端25cと下端25dとを結ぶ。一対の直線25bは、先端1aに向かって互いに近づくようにして傾斜している。一対の直線25bは、中心軸Aを基準として線対称である。一対の直線25bの下端はそれぞれ、中心軸Aに垂直な水平線として表される先端面に接続される。
図3からわかるとおり、本実施形態では、ノズル1の中心軸Aを通るノズル1の水平断面において、傾斜部25の外表面は、円形である。
【0029】
このように、本実施形態では、傾斜部25が円錐台状である。一対の直線25bは円錐台の母線である。
【0030】
ここで、
図4を参照して、傾斜部25の外表面25aをノズル1の先端1aの下方に向かって延長してなる仮想面26を想定する。仮想面26は、ノズル1の中心軸Aを通る垂直断面において、一対の直線25bの下方への延長線として表される。仮想面26は、中心軸A上で点になる。すなわち、一対の直線25bの下方への延長線が、中心軸A上で交差する。この交点が、仮想面26で囲まれた空間の頂点27である。傾斜部25の外表面25aの断面が円形である本実施形態において、この仮想的な空間は、中央ノズル21及び最外ノズル22が開口したノズル1の先端面を底面とする円錐状である。
【0031】
頂点27と形成管10の上端10aとの距離Zは、-10mm≦Z≦6mmの範囲内である。距離Zとは、上下方向における頂点27と上端10aとの間隔であり、上下方向は、ノズル1の軸方向、ノズル1の先端面の法線方向、形成管10の軸方向、及び形成管10の上端10aの開口の直交方向と対応する。頂点27が形成管10の上端10aと一致するとき、Z=0である。Z<0の場合、頂点27が、形成管10の上端10aよりも下方、すなわち形成管10の流路内に位置する。Z>0の場合、頂点27が、形成管10の上端10aよりも上方、すなわち形成管10の外部に位置する。なお、
図4は、Z<0の場合を例示しており、更にいえば、Z<0でありつつもノズル1の先端1aそのものは形成管10の上端10aよりも上方に位置する場合を示している。ただし、これは単なる一例である。
【0032】
頂点27と形成管10の上端10aとの距離Zを設定するにあたり、本実施形態では、スペーサ6eの厚み、フランジ部1bの厚み、及び上端10aと底壁6aの内面との距離Hを変更可能としているが、この3つの変更は必須ではない。すなわち、スペーサ6eの厚み、フランジ部1bの厚み、及び上端10aと底壁6aの内面との距離Hのうち、少なくとも1つを変更するとよい。
【0033】
また、ノズル1の中心軸Aを通るノズル1の垂直断面において、傾斜部25の外表面25aの上端25cと下端25dとを結ぶ一対の直線25bに挟まれる角度θは、20°~70°の範囲内である。
【0034】
図1及び
図2を参照して、このような製造装置でシームレスカプセル50を製造するための方法には、ノズル1の先端1aから形成管10の流路内の冷却液49に液滴を滴下し、液滴から継ぎ目のない湿潤カプセル50wを形成する形成工程が含まれる。この形成工程において、ノズル1の先端1aは、冷却液49の液面49Lよりも下方に位置する。すなわち、本実施形態に係る製造装置及び方法には、いわゆる液下法が適用されている。
【0035】
ノズル1より滴下される液滴には、内容液タンク2からノズル1に供給されて中央ノズル21から吐出される内容液41と、皮膜液タンク3からノズル1に供給されて最外ノズル22から吐出される皮膜液42とが含まれる。内容液41は、先端面の中央部から下方へ吐出される。皮膜液42は、先端面の周縁部から下方へ吐出され、内容液41を外周側から覆う。このように、ノズル1は、その先端面から内容液41及び皮膜液42を含む複合ジェット59を下向きに冷却液49中で吐出する。複合ジェット59は、冷却液49中で先端面から下へ伸びる。複合ジェット59は、表面張力によりその下端から滴化していく。その液滴が所定の大きさの粒となって皮膜液42が内容液41の全体を覆うと、皮膜液42が凝固する。これにより、シームレスカプセル50が生成される。
【0036】
シームレスカプセル50は、全体として球形状であり、内容物51、及び内容物51を内包する皮膜層52を有する。皮膜層52は、皮膜液42の凝固によって生成され、継ぎ目がない。内容物51は内容液41で構成されるが、内容物51の状態は、液体であってもよく、ゲルなどの半固体であってもよく、または固体であってもよい。
【0037】
複合ジェット59は、形成管10の流路内に噴出され、シームレスカプセル50は、形成管10の流路内で生成される。生成されたシームレスカプセル50は、形成管10内の冷却液49の流れに乗り、形成管10に沿って移送される。冷却液タンク7の上開口は、スクリーン14で覆われている。スクリーン14は、形成管10の他端の開口からの放出物のうち、冷却液49を通過させる一方、シームレスカプセル50の冷却液タンク7への流入を阻止する。スクリーン14で阻止されたシームレスカプセル50は、湿潤カプセル50wとして回収される。
【0038】
回収された湿潤カプセル50wが最終製品であってもよい。製造装置は、湿潤カプセル50wを乾燥させるドライヤ15を有していてもよい。湿潤カプセル50wをドライヤ15で乾燥させる乾燥工程の実施により、乾燥カプセル50dを得ることができる。このように、湿潤カプセル50wが乾燥カプセル50dの中間製品であり、且つ乾燥カプセル50dが最終製品であってもよい。
【0039】
内容液41は、特に限定されず、親油性又は親水性の液状物、これらの液状物とこれに不溶の粉末との懸濁液、又はこれらの液状物の混合液が挙げられる。内容液41には、賦形剤、安定化剤、界面活性剤、補助剤、又は発泡剤などの配合剤が、適宜配合されてもよい。
【0040】
皮膜液42は、天然高分子、及び水を含む。天然高分子は、皮膜液42を凝固させる成分であり、水溶性であるものが多い。天然高分子は、例えば、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、ペクチンまたはその誘導体、アルギン酸またはその塩、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ファーセレラン、キトサン、カードラン、デンプン、変性デンプン、プルラン、マンナンからなる群から選択される少なくとも1種である。天然高分子は、皮膜層52を形成できる成分であれば、上記に限らず、任意の成分を適用できる。
【0041】
皮膜液42は、可塑剤を更に含んでもよい。可塑剤は、皮膜層52に柔軟性を付与する成分である。可塑剤は、特に、乾燥カプセル50dにおいて、皮膜層52の乾燥物に対し、十分な柔軟性を保つとともにヒビ割れを生じにくくできる。可塑剤の例として、グリセリン、ソルビトール等を挙げることができる。可塑剤は、皮膜層52に柔軟性を付与できればよく、上記に限らず、任意の成分を適用できる。
【0042】
皮膜液42は、シームレスカプセル50の目的に応じて、色素、呈味成分、防腐剤、又は香料などの添加物を更に含んでもよい。
【0043】
皮膜液42の粘度は、60℃で30~350mPa・sであることが好ましく、50~300mPa・sであることがより好ましく、50~250mPa・sであることが更に好ましい。皮膜液42の粘度が上記範囲であることにより、適下法によるシームレスカプセル調製を良好に行うことができる。
【0044】
冷却液49は、典型的には20℃以下であり、好ましくは1~18℃である。なお、ノズル1から吐出される各液の温度は、特に限定されず、典型的には15~70℃、好ましくは20~65℃である。
【0045】
冷却液49には、油性成分、例えば中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、植物油脂(ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ゴマ油、ナタネ油、グレープ種子油、及びこれらの混合物など)、流動パラフィン、及びこれらの混合物を使用できる。
【0046】
図2を参照して、冷却液49は、冷却液リザーバ6内において、液面49Lから形成管10の上端10aの開口に向けて流れる。ノズル1の傾斜部25はこの開口の付近に配置されており、冷却液49は、傾斜部25の外表面に沿って形成管10の開口に向かっていく。外表面に沿った流れは、ノズル1の先端1aから更に下方の形成管10の内部へと向かうに従って、ノズル1の半径方向内側へ向かっていく。換言すれば、冷却液49は、傾斜部25の外表面を下方に向かって延長してなる仮想面26に沿って流れ、当該仮想面26で囲まれた空間の頂点27に向かっていく。この頂点27付近で、冷却液49の渦が形成される場合がある。
【0047】
頂点27が上端10aから上方に離れすぎると、頂点27とは別に形成管10の開口付近において冷却液49の流れに乱れが生じるおそれがある。複合ジェット59がこの乱れの影響を受け、皮膜層52の安定形成が阻害され、しかも湿潤カプセル50wの粒径のバラツキが大きくなりやすい。頂点27が形成管10の中に入り込み過ぎると、形成管10とノズル1とで囲まれた狭隘な空間を冷却液49が通過することになり、冷却液49の流速の制御が困難となる。このため、冷却液49が形成管10の流路を流れる際、冷却液49の流れで生じるせん断力が不安定となり、湿潤カプセル50wの粒径のバラツキが大きくなりやすい。これに対し、本実施形態では、頂点27と形成管10の上端10aとの距離Zが、-10mm≦Z≦6mmの範囲内である。形成管10に流れ込む冷却液49の流れを傾斜部25によって制御しやすく、皮膜層52が安定的に形成され、しかも湿潤カプセル50wの粒径のバラツキを小さくできる。このため、皮膜割れを抑えた高品質のシームレスカプセル50を製造できる。
【0048】
傾斜部25の外表面25aの上端25cと下端25dとを結ぶ一対の直線25bで挟まれた角度θが小さいと、頂点27の位置が先端面から下方に離れる。すると、冷却液49の流れが複合ジェット59の下端付近で乱れやすく、生成されるシームレスカプセル50の粒径のバラツキが大きくなりやすい。一方、角度θが大きいと、頂点27の位置が先端面から近くなる。すると、複合ジェット59は、吐出された直後に冷却液49の渦の影響を受けやすい。複合ジェット59の形状が不安定となり、生成されるシームレスカプセル50の粒径が安定しない。本実施形態では、角度θが20°~70°の範囲内である。これにより、シームレスカプセル50の粒径が安定し、粒径のバラツキを抑えることができる。角度θの下限は30°以上であることが好ましい。また、角度θの上限は60°以下であることが好ましい。
【0049】
上記により、湿潤カプセル50wの粒径の変動係数は、0.1以下となる。このような湿潤カプセル50wから乾燥カプセル50dを得た場合、乾燥カプセル50dの粒径の変動係数は、0.1以下となる。このように、高品質のシームレスカプセル50を安定して製造することが可能となる。なお、変動係数とは、複数のサンプルのある指標値に関する標準偏差をその平均値で除算して得られる無次元の統計学的数値である。
【0050】
これまで実施形態について説明したが、上記構成は、単なる一例であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更可能である。
【0051】
図5は第1変形例を示す。
図5に示すように、3層構造のシームレスカプセル50が製造されてもよい。この場合、ノズル1は、半径方向において中央ノズル21及び最外ノズル22との間に形成された中間ノズル23を更に有する。中間ノズル23は、中央ノズル21及び最外ノズル22と同心状であり、円環状の断面を有し、軸方向に延在する。中間ノズル23の上端は、中間液タンク(図示せず)から供給される中間液43が流入する中間液流入ポート1eと接続されている。中間ノズル23の下端は、先端面で開口する。複合ジェット59は、内容液41及び皮膜液42のほか、これらの間に介在する中間液43も含む。複合ジェット59の液滴化によって、内容物51、中間層53、及び皮膜層52を含むシームレスカプセル50が形成管10内で生成される。
【0052】
図6Aは第2変形例を示し、
図6Bは第3変形例を示す。ノズル1の傾斜部25の外表面の水平断面は、円形状に限定されない。
図6Aに示すように、水平断面は楕円であってもよい。
図6Bに示すように、水平断面は多角形でもよい。
図6Bでは、単なる一例として、多角形が正方形であるが、多角形は、正方形以外の四角形でもよい。また、多角形の角又は辺の数は、4に限定されない。
【0053】
図7は第4変形例を示す。ノズル1が、筒状のノズル本体31と、ノズル本体31の先端(破線部を参照)を覆うキャップ32とで構成されてもよい。キャップ32は、傾斜部25及び先端1aを形成し、ノズル本体31に対して着脱可能に装着される。1つのノズル本体31に対し、角度θが異なる複数のキャップ32を準備し、複数のキャップ32の中から選択された1つのキャップ32がノズル本体31に装着されてもよい。これにより、内容液や皮膜液に応じて適切な仕様のキャップ32を選択することが可能になる。
【0054】
図8Aは第5変形例を示し、
図8Bは第6変形例を示す。ノズル1の中心軸Aを通るノズル1の垂直断面において、
図2及び
図7に示す例では、傾斜部25の外表面25bの外形線は1本の直線であるが、外形線は1本の直線に限定されない。
図8Aの第5変形例では、外表面25bの外形線は波線又はそれに似た線であってもよい。外表面25bの外形線が波線等である場合、一対の直線25bの下方への延長線が中心軸A上で交差する交点と、仮想面26で囲まれた空間の頂点27とが一致しなくてもよい。
【0055】
図8Bの第6変形例では、外表面25bの外形線は、折れ曲がり線又は湾曲線であってもよい。外表面25bの外形線が湾曲線等である場合、傾斜部25のうち、冷却液の流れの制御に大きく関わる部分を傾斜部25の本体とし、その本体の外表面の上端と下端とを結ぶ直線を直線25bとし、傾斜部25の外表面を下方に向かって延長してなる仮想面を仮想面26とする。
【0056】
詳細図示を省略するが、第2変形例又は第3変形例が、第1変形例に適用されてもよく、第4変形例が、第1変形例に適用されてもよい。第2変形例又は第3変形例と、第4変形例とが、上記実施形態又は第1変形例に同時に適用されてもよい。第2変形例又は第3変形例と、第5変形例又は第6変形例とが、上記実施形態又は第1変形例に同時に適用されてもよい。
【0057】
以下、実施例及び比較例(実験分類1~28)により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下の説明において、「部」及び「%」は、特段断らない限り、質量基準である。
【0058】
(実験分類1)
MCT(花王製)80部の内容液を調製した。ゼラチン(PB Leiner Argentina製)16部、ソルビトール(Roquette China Co. Ltd.製)4部、及び精製水300部の皮膜液を調製した。ゼラチンのブルーム値は240であり、皮膜液の粘度は、60℃で50mPa・sであった。MCT(花王製)100%の冷却液を調製した。これら液の調製に関し、他の実験分類2~28にも同様である。
【0059】
図1に例示されるような構造を有するシームレスカプセル製造機(森下仁丹製)を使用して、中央ノズルから内容液を、最外ノズルから皮膜液を同時に冷却液中に吐出し、2層構造のシームレスカプセルを生成した。次いで、生成されたシームレスカプセルを通気乾燥させ、皮膜層中に含まれる水分を蒸発させ、乾燥カプセルを得た。乾燥カプセルの総質量に対する皮膜層の質量は、30%であった。ここに説明する乾燥カプセルの製法、及び皮膜層の質量比に関し、他の実験分類2~28においても同様である。
【0060】
表1に示すとおり、中央ノズル及び最外ノズルを有するノズルとして、傾斜部を備える第1のノズル(1-60)を使用した。当該第1のノズル(1-60)は、生成されるべき乾燥カプセルの粒径が1mm前後となるように期待されたサイズに形成され、また、その傾斜部の外形線に挟まれる角度(以下、単に「角度θ」)が60°である。なお、所要の粒径を得るべく、内容液の流量、皮膜液の流量、及び冷却液流量を形成管の流路断面積で除算した値は、表1に示すとおりに調整された。
【0061】
傾斜部の外表面を延長してなる仮想面で囲まれた空間の頂点と形成管の上端との距離(以下、単に「距離Z」)が-10.1mmとなるように、ノズルの形成管に対する位置が調整された。ノズルの先端は冷却液の液面よりも下方に位置付けられ、複合ジェットは冷却液中に吐出された。
【0062】
(実験分類2~4)
表1に示すとおり、実験分類2~4では、距離Zが実験分類1から変更された点を除いては、実験分類1と同様にして、第1のノズルを使用してシームレスカプセルを生成した。
【0063】
実験分類2では、距離Zが-1.8mmに調整された。実験分類3では、距離Zが3.2mmに調整された。実験分類4では、距離Zが13.2mmに調整された。
【0064】
(実験分類5~8)
表1に示すとおり、実験分類5~8では、中央ノズル及び最外ノズルを有するノズルとして、傾斜部を備える第2のノズル(1-30)を使用した。当該第2のノズル(1-30)は、第1のノズル(1-60)と同様にして、生成されるべき乾燥カプセルの粒径が1mm前後となるように期待されたサイズに形成される一方、角度θが30°である。内容液の流量、皮膜液の流量、及び冷却液流量を形成管の流路断面積で除算した値は、表1に示すとおりに調整された。
【0065】
実験分類5では、距離Zが-14.9mmに調整された。実験分類6では、距離Zが-4.5mmに調整された。実験分類7では、距離Zが0.5mmに調整された。実験分類8では、距離Zが10.6mmに調整された。
【0066】
(実験分類9~12)
表2に示すとおり、実験分類9~12では、中央ノズル及び最外ノズルを有するノズルとして、傾斜部を備える第3のノズル(5-60)を使用した。当該第3のノズル(5-60)は、生成されるべき乾燥カプセルの粒径が5mm前後となるように期待されたサイズに形成され、また、角度θが60°である。内容液の流量、皮膜液の流量、及び冷却液流量を形成管の流路断面積で除算した値は、表2に示すとおりに調整された。
【0067】
実験分類9では、距離Zが-19mmに調整された。実験分類10では、距離Zが-5.7mmに調整された。実験分類11では、距離Zが-0.7mmに調整された。実験分類12では、距離Zが9.3mmに調整された。
【0068】
(実験分類13~16)
表2に示すとおり、実験分類13~16では、中央ノズル及び最外ノズルを有するノズルとして、傾斜部を備える第4のノズル(5-40)を使用した。当該第4のノズル(5-40)は、第3のノズル(5-60)と同様にして、生成されるべき乾燥カプセルの粒径が5mm前後となるように期待されたサイズに形成される一方、角度θが40°である。内容液の流量、皮膜液の流量、及び冷却液流量を形成管の流路断面積で除算した値は、表2に示すとおりに調整された。
【0069】
実験分類13では、距離Zが-30mmに調整された。実験分類14では、距離Zが-5.8mmに調整された。実験分類15では、距離Zが-0.8mmに調整された。実験分類16では、距離Zが9.2mmに調整された。
【0070】
(実験分類17~20)
表2に示すとおり、実験分類17~20では、中央ノズル及び最外ノズルを有するノズルとして、傾斜部を備える第5のノズル(5-30)を使用した。当該第5のノズル(5-30)は、第3のノズル(5-60)と同様にして、生成されるべき乾燥カプセルの粒径が5mm前後となるように期待されたサイズに形成される一方、角度θが30°である。内容液の流量、皮膜液の流量、及び冷却液流量を形成管の流路断面積で除算した値は、表2に示すとおりに調整された。
【0071】
実験分類17では、距離Zが-36.2mmに調整された。実験分類18では、距離Zが-6mmに調整された。実験分類19では、距離Zが-1mmに調整された。実験分類20では、距離Zが9mmに調整された。
【0072】
(実験分類21~24)
表3に示すとおり、実験分類21~24では、中央ノズル及び最外ノズルを有するノズルとして、傾斜部を備える第6のノズル(8-60)を使用した。当該第6のノズル(8-60)は、生成されるべき乾燥カプセルの粒径が8mm前後となるように期待されたサイズに形成され、また、角度θが60°である。内容液の流量、皮膜液の流量、及び冷却液流量を形成管の流路断面積で除算した値は、表3に示すとおりに調整された。
【0073】
実験分類21では、距離Zが-26mmに調整された。実験分類22では、距離Zが-9.5mmに調整された。実験分類23では、距離Zが-4.5mmに調整された。実験分類24では、距離Zが6.1mmに調整された。
【0074】
(実験分類25~28)
表3に示すとおり、実験分類25~28では、中央ノズル及び最外ノズルを有するノズルとして、傾斜部を備える第7のノズル(8-30)を使用した。当該第7のノズル(8-30)は、第6のノズル(8-60)と同様にして、生成されるべき乾燥カプセルの粒径が8mm前後となるように期待されたサイズに形成される一方、角度θが30°である。内容液の流量、皮膜液の流量、及び冷却液流量を形成管の流路断面積で除算した値は、表3に示すとおりに調整された。
【0075】
実験分類25では、距離Zが-51mmに調整された。実験分類26では、距離Zが-9.7mmに調整された。実験分類27では、距離Zが-4.7mmに調整された。実験分類28では、距離Zが5.3mmに調整された。
【0076】
(実施例/比較例)
実験分類2、3、6、7、10、11、14、15、18、19、22、23、26、及び27は、距離Zが-10.0mm≦Z≦6.0mmの範囲内にある実施例である。その他の実験分類1、4、5、8、9、12、13、16、17、20、21、24、25、及び28は、距離Zが当該範囲外にある比較例である。
【0077】
(評価)
各実験分類によって得られたシームレスカプセルを使用して、以下の評価を行った。
【0078】
<粒径の平均値及び変動係数>
各実験分類1~28において、得られた湿潤カプセルから20粒を無作為に抽出し、湿潤カプセルの粒径(外径)を1粒ずつノギスで計測した。20個の粒径データに基づいて、湿潤カプセルの粒径の平均値と標準偏差を算出した。更に、得られた標準偏差を平均値で除算して、湿潤カプセルの粒径の変動係数を算出した。乾燥カプセルについても同様にして、乾燥カプセルの粒径の平均値、標準偏差、及び変動係数を算出した。
【0079】
実施例では、乾燥カプセルの粒径の平均値が、期待される粒径どおり又はこれに近い値となった。また、実施例では、湿潤カプセル及び乾燥カプセルの両方において、変動係数が0.1以下となり、粒径のバラツキが抑制された。
【0080】
<湿潤カプセルの歩留率>
各実験分類1~28において、ノズルから吐出された複合ジェットからなり、かつ形成管内を流下する100個の物体(湿潤カプセルとほぼ同じ大きさ)を目視確認し、そのうち、皮膜が割れて球形でないデブリの数をカウントした。そして、物体の数とデブリの数とを下記の式(1)に当てはめて歩留率を算出した。
歩留率(%)=1-(デブリの数)/(物体の数)×100 ・・・式(1)
【0081】
実施例では、最低でも97%の歩留率が達成されたのに対し、比較例では、最高でも実験分類24の82%であり、実施例のような高い歩留率を得ることはできなかった。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
本開示は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
シームレスカプセルの製造方法であって、
ノズルの先端から形成管の流路内の冷却液に液滴を滴下し、前記液滴から継ぎ目のない湿潤カプセルを形成する形成工程を含み、
前記ノズルは、その途中から前記先端に向かって前記ノズルの内側へ傾斜する傾斜部を備え、
前記傾斜部の外表面を前記先端の下方に向かって延長してなる仮想面で囲まれた空間の頂点と前記形成管の上端との距離Zは、-10mm≦Z≦6mmの範囲内であり、Z<0の場合、前記頂点は前記形成管の上端よりも下方に位置し、Z>0の場合、前記頂点は前記形成管の上端よりも上方に位置する、
シームレスカプセルの製造方法。
(態様2)
前記ノズルの中心軸を通る前記ノズルの垂直断面において、前記傾斜部の外表面の上端と下端とを結ぶ一対の直線に挟まれる角度は、20°~70°の範囲内である、
態様1に記載のシームレスカプセルの製造方法。
(態様3)
前記ノズルの中心軸と直交する前記ノズルの水平断面において、前記傾斜部の前記害表面は、円形、楕円又は多角形である、
態様1又は2に記載のシームレスカプセルの製造方法。
(態様4)
前記湿潤カプセルの粒径の変動係数は、0.1以下である、
態様1から3のいずれかに記載のシームレスカプセルの製造方法。
(態様5)
前記形成工程が、ノズルの先端を冷却液の液面よりも下方に位置させる工程を含む、
態様1~4のいずれかに記載のシームレスカプセルの製造方法。
(態様6)
前記湿潤カプセルを乾燥させて乾燥カプセルを得る乾燥工程を更に含む、
態様1~5のいずれかに記載のシームレスカプセルの製造方法。
(態様7)
前記乾燥カプセルの粒径の変動係数は、0.1以下である、
態様6に記載のシームレスカプセルの製造方法。
【符号の説明】
【0086】
1 ノズル
1a 先端
1b フランジ部
1c 内容液流入ポート
1d 皮膜液流入ポート
1e 中間液流入ポート
2 内容液タンク
2a 内容液供給管
3 皮膜液タンク
3a 皮膜液供給管
6 冷却液リザーバ
6a 底壁
6b 上壁
6c 周壁
6d 冷却液流入ポート
6e スペーサ
6f シーリング
7 冷却液タンク
8 冷却液供給管
9 冷却装置
10 形成管
10a 上端
11~13 ポンプ
14 スクリーン
15 ドライヤ
21 中央ノズル
22 最外ノズル
23 中間ノズル
25 傾斜部
25a 外表面
25b 直線
25c 上端
25d 下端
26 仮想面
27 頂点
31 ノズル本体
32 キャップ
41 内容液
42 皮膜液
43 中間液
49 冷却液
49L 液面
50 シームレスカプセル
50w 湿潤カプセル
50d 乾燥カプセル
51 内容物
52 皮膜層
53 中間層
59 複合ジェット
A 中心軸
Z 距離
H 距離
θ 角度
【要約】
【課題】高品質のシームレスカプセルを安定して製造する。
【解決手段】シームレスカプセル50の製造方法が、ノズル1の先端1aから形成管10の流路内の冷却液49に液滴を滴下し、液滴から継ぎ目のない湿潤カプセル50wを形成する形成工程を含む。ノズル1は、その途中から先端1aに向かってノズル1の内側へ傾斜する傾斜部25を備える。傾斜部25の外表面25aを先端1aの下方に向かって延長してなる仮想面26で囲まれた空間の頂点27と形成管10の上端10aとの距離Zが、-10mm≦Z≦6mmの範囲内である。Z<0の場合、頂点27は形成管10の上端10aよりも下方に位置する。Z>0の場合、頂点27は形成管10の上端10aよりも上方に位置する。
【選択図】
図4