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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20240603BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240603BHJP
   G09F 19/00 20060101ALI20240603BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240603BHJP
   H10K 59/95 20230101ALI20240603BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20240603BHJP
【FI】
G09F9/00 350Z
G09F9/00 346D
G09F9/00 351
G09F9/30 308Z
G09F9/30 365
G09F19/00 N
G09F19/00 Z
H10K59/10
H10K59/95
H10K77/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023194720
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土橋 守幸
(72)【発明者】
【氏名】藤井 一男
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-525400(JP,A)
【文献】特開2016-130853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0133019(US,A1)
【文献】特開2011-38340(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0449516(KR,B1)
【文献】実開昭59-150894(JP,U)
【文献】特開昭58-199990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
G09F 9/30
G09F 19/00
H10K 59/10
H10K 59/95
H10K 77/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLEDと、
前記OLEDを一端から巻き取る巻取体と、
前記巻取体との間に前記OLEDの巻取り空間を確保するカバーと、
前記巻取体に対して前記OLEDの巻取り力を付与する定荷重バネと、
前記巻取体に対して前記OLEDの巻取り力および巻き出し力の少なくとも一方を与えるモーターと、
前記モーターと前記巻取体との間で摩擦要素を介して回転を伝達するドラグ機構と、
前記OLEDの他端に設けられて前記定荷重バネによる前記巻取り力と吊りあう引出し力を付勢する錘と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記巻取体は筒状であって、内部には前記OLEDの表示制御部が筒軸方向に沿って設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置において、
前記摩擦要素は、前記モーターの回転軸に対して相対回転不能かつ軸方向変位可能に設けられ、ネジおよびナットによる付勢力を受けたバネが摩擦対象に対して弾性押圧している
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表示装置において、
前記定荷重バネは、
自然状態で渦巻く弾性帯と、
前記巻取体の一端に設けられ、前記弾性帯が自然状態で渦巻く方向と逆方向に巻かれた第1プーリーと、
前記第1プーリーから巻き出された前記弾性帯を自然状態の渦巻き方向に巻き取る第2プーリーと、
を有する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の表示装置において、
前記モーターおよび前記ドラグ機構と前記定荷重バネとは前記巻取体の反対側に設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取り可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には巻取り可能な表示装置が開示されている。この表示装置は据え置き型のハウジングの内部に表示部が巻取って格納されており、リンク機構を用いてモーターの作用下に表示部を昇降させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-140162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻取り可能な表示装置は面積および体積を小さく収納することができるが、特許文献1の表示装置ではリンク機構などを有していることから全体としては大型となっている。また、表示装置は巻取り又は巻き出しを電動で行うだけでなく手動で行うことができるとユーザにとって扱いやすい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、電動および手動の操作が可能であり小型の巻取り可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の実施態様に係る表示装置は、OLEDと、前記OLEDを一端から巻き取る巻取体と、前記巻取体との間に前記OLEDの巻取り空間を確保するカバーと、前記巻取体に対して前記OLEDの巻取り力を付与する定荷重バネと、前記巻取体に対して前記OLEDの巻取り力および巻き出し力の少なくとも一方を与えるモーターと、前記モーターと前記巻取体との間で摩擦要素を介して回転を伝達するドラグ機構と、前記OLEDの他端に設けられて前記定荷重バネによる前記巻取り力と吊りあう引出し力を付勢する錘と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、モーターと巻取体との間で摩擦要素を介して回転を伝達する簡便構成であり、しかも定荷重バネと錘とが吊りあっているため小型のモーターで足り、全体として小型化が可能である。また、摩擦要素の箇所で滑りが生じるため電動および手動の操作が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態である表示装置とその外部機器を示す模式図である。
図2図2は、表示装置の模式断面側面図である。
図3図3は、第1の実施形態にかかる表示装置の模式断面正面図である。
図4図4は、定荷重バネの模式斜視図である。
図5図5は、ドラグ機構の模式分解斜視図である。
図6図6は、第2の実施形態にかかる表示装置の模式断面正面図である。
図7図7は、表示装置の使用例を示す図であり,(a)は収納状態を示す図であり、(b)は使用準備状態を示す図であり、(c)は使用状態を示す図であり、(d)は収拾状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる表示装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態である表示装置10とその外部機器を示す模式図である。図2は、表示装置10の模式断面側面図である。
【0011】
表示装置10は表示器としてOLED(Organic Light Emitting Display)12を用いている。OLED12は薄型軽量、低消費電力、コントラストや応答性に優れる特徴がある。また、OLED12は可撓性があることから巻取りが可能であるが曲げ弾性は比較的強く、外力がなければ平面状に復帰しようとする性質がある。表示装置10として第1実施形態にかかる表示装置10Aおよび第2実施形態に係る表示装置10Bを順に説明する。本実施例でOLED12のサイズは、例えば20インチまたは30インチ程度である。
【0012】
図3は、第1実施形態にかかる表示装置の10の模式断面正面図である。表示装置10Aは、OLED12、シリンダー(巻取体)14、カバー18、定荷重バネ20、モーター22、ドラグ機構24A、引出しバー(錘)26、制御部28、及び表示制御部30を有する。シリンダー14は筒状であってその表面にOLED12を一端12aから巻き取る。表示装置10Aの説明において、シリンダー14の延在方向をX方向とする。シリンダー14は筒状であり、X方向は該シリンダー14の筒軸方向に相当する。定荷重バネ20とモーター22およびドラグ機構24Aとはシリンダー14の反対側に設けられていており、定荷重バネ20の側をX1方向、モーター22およびドラグ機構24Aの側をX2方向とする。
【0013】
シリンダー14の中空部14aには制御部28および表示制御部30が設けられている。制御部28および表示制御部30は細長い形状であり、X方向に沿って設けられている。制御部28と表示制御部30とは制御線でつながっている。
【0014】
制御部28は通常のパソコンにおけるマザーボードに相当するものであり、表示装置10Aの全体の制御を行うとともに、インターフェースケーブル31を介して外部機器とつながっている。インターフェースケーブル31は螺旋部31aを形成し、シリンダー14の回転が外部に伝わらないようになっている。制御部28はモーター22の制御も行う。制御部28は所定の操作信号に基づいてモーター22を正転および逆転させることにより、シリンダー14に対してOLED12の巻取り力および巻き出し力を与える。ただし、仕様によってはOLED12の巻取り力および巻き出し力の少なくとも一方を与えるようにしてもよい。制御部28とモーター22との間の動力伝達には動力線に螺旋部を設け、またはスリップリングを用いてもよい。
【0015】
外部機器としてはキーボード32、マウス34、通信ポート36、および外部バッテリー38などが挙げられる。これらの外部機器は必要に応じて接続されるものであり、不要時には切り離しておいてよい。制御部28は表示装置10Aの外にあってもよい。バッテリーは表示装置10Aの中にあってもよい。
【0016】
表示制御部30はOLED12の表示制御を行うものであり、例えばタイミングコントローラである。シリンダー14にはスリット14b(図2参照)が形成されており、OLED12の一端12aは該スリット14bから複数の表示制御線30aを介して表示制御部30と接続されている。表示制御部30は横方向の表示タイミングの観点からOLED12の一端12aの近傍で横方向に沿って設けられることが望ましく、中空部14a内でX方向に沿うレイアウトが好適である。
【0017】
カバー18は、表示装置10Aの全体を覆う筒状の筐体であり両端が蓋18a,18bで塞がれている。蓋18a,18bには電源スイッチ、OLED12の明るさ調整スイッチ、OLED12の昇降スイッチなどが設けられていてもよい。カバー18のX1方向には、定荷重バネ20を収納するための膨出部18dが形成されている。カバー18はシリンダー14よりもある程度大径であって、該シリンダー14との間にOLED12の巻取り空間16を確保している。カバー18の径は本実施例で30mm程度である。
【0018】
カバー18にはOLED12が巻き出されるスリット18c(図2参照)が形成されている。OLED12の他端12bは該スリット18cの外に出ている。他端12には全長に亘って引出しバー26が設けられている。引出しバー26は、OLED12を巻き出す際の把持用で、例えばステンレス材で構成されており、把持しやすい程度の径を有している。引出しバー26は表示装置10Aが水平になっているとき自重によってOLED12を下向きに巻き出す力Fd(図2参照)を作用させる。
【0019】
図4は、定荷重バネ20の模式斜視図である。図4では一部を仮想線で示している。図3図4を参照して定荷重バネ20の説明をする。定荷重バネ20はカバー18におけるX1方向の端部に設けられている。定荷重バネ20は弾性帯40、第1プーリー42、第2プーリー44を有する。第1プーリー42、第2プーリー44は、バネ支持部材46の第1軸46a、第2軸46bによって支持されている。バネ支持部材46は蓋18aに固定されている。第1プーリー42と第1軸46aとの間には回転角度を検出するセンサを設け、制御部28によりOLED12の巻出し量を把握できるようにしてもよい。
【0020】
第1プーリー42のX2側端部のシリンダー支持部42aはX方向に適度に広く、ラバーリング48を介してシリンダー14の内壁と固定されている。第1プーリー42は第2プーリー44より大径になっている。第1プーリー42はX方向幅が第2プーリー44より大きく、第1軸46aとの間でベアリング構造になっている。このベアリング構造は例えば2列型であり、シリンダー14は安定的に支持されスムーズな回転が可能となっている。第1軸46aは中空構造であり、内部をインターフェースケーブル31が通っている。インターフェースケーブル31は第1軸46aの中空部でグロメット47により留められている。第1プーリー42はカバー18と同軸であり、第2プーリー44は膨出部18dにある。定荷重バネ20は一部が膨出部18dに配置されるが、ほとんどはカバー18の筒部内部に収まり十分小さく軽量である。
【0021】
弾性帯40は自然状態で渦巻くような曲げ弾性を有する金属のバネ材であり、いわゆるゼンマイバネのようなものである。弾性帯40は引っ張り方向にはほとんど伸びることがない。第1プーリー42は、シリンダー14のX1側端部に設けられ、弾性帯40が自然状態で渦巻く方向と逆方向に巻かれている。第2プーリー44は、第1プーリー42から巻き出された弾性帯40を自然状態の渦巻き方向に巻き取る。
【0022】
このような定荷重バネ20は、弾性帯40の巻き出し量にかかわらず常に一定の弾性力を発揮して第1プーリー42に回転力を与える。この回転力はシリンダー14に対してOLED12を巻取る力Fu(図2参照)を与える。巻取る力Fuと上記の巻き出す力Fdとは等しく設定されている。力Fu,FdはOLED12のサイズなどにもよるが、例えば800gf程度である。
【0023】
図5は、ドラグ機構24Aの模式分解斜視図である。図3図5を参照してモーター22およびドラグ機構24Aの説明をする。モーター22は、例えば減速機内蔵型のDCモーターであり、ドラグ機構24Aを介してシリンダー14に対してOLED12の巻取り力および巻き出し力を与える。上記のとおりモーター22はカバー18におけるX2方向端部に設けられている。モーター22およびその回転軸50はブラケット52を介してカバー18の内壁に支持されている。回転軸50とブラケット52との間にはベアリングが設けられていてもよい。
【0024】
ドラグ機構24Aはモーター22とシリンダー14との間に設けられており、調整ナット54、コイルバネ56、摩擦ディスク58、ベアリング60、固定ナット62を有し、さらにモーター22の回転軸50が構成要素として含まれる。モーター22およびドラグ機構24Aはカバー18の内部に収まり、小型軽量である。
【0025】
回転軸50は、X2側で比較的大径の基端ネジ部50aと、X1側で比較的小径の先端ネジ部50bと、基端ネジ部50aと先端ネジ部50bとの間で中程度の径の中間部50cとを有する。基端ネジ部50aと中間部50cとの境には段差50dがあり、中間部50cと先端ネジ部50bとの境には段差50eがある。先端ネジ部50bは平行な2つの平面50baが形成された2面Dカット形状である。中間部50cは平行な2つの平面50caが形成された2面Dカット形状である。
【0026】
ベアリング60は外輪60a、内輪60b、摩擦板60cを有する。内輪60bの中心には先端ネジ部50bが相対回転不能に嵌合する2面Dカットの孔60dが形成されている。内輪60bは孔60dに基端ネジ部50aが嵌合した状態でX2側面が段差50eに当接し、X1側面は基端ネジ部50aに螺合する固定ナット62によって回転軸50に対して固定されている。
【0027】
外輪60aは上記のシリンダー支持部42aと同径であって、ラバーリング48を介してシリンダー14の内壁と固定されている。摩擦板60cは径方向幅が適度に広い円環状であって、外輪60aにおけるX2側面の周縁に沿って設けられている。設計条件により摩擦板60cは省略してもよい。
【0028】
摩擦ディスク58は円形板58a、摩擦板58bを有する。円形板58aは金属材であって、中心には中間部50cが回転不能に嵌合する2面Dカットの孔58cが形成されている。円形板58aは孔58cdに中間部50cが嵌合することにより、回転軸50に対して相対回転不能かつ軸方向変位可能に設けられる。
【0029】
円形板58aは外輪60aと同径である。摩擦板58bは摩擦板60cと同じものであり、円形板58aにおけるX1側面の周縁に沿って設けられている。つまり、摩擦板58bと摩擦板60cとは対面するようになっている。摩擦板(摩擦要素)58b,60cは発生する摩擦力が比較的小さく、かつ経年変化が少ないものが望ましく、例えばポリアセタール材、コルク材、フェルト材などで構成される。図3図5では摩擦板58b,60cをドット地で示している。また摩擦板58b,60cは乾式とすることで油膜の影響を受けずに安定する。
【0030】
調整ナット54は基端ネジ部50aに螺合するようになっており、カバー18に設けられた扉18eを開いて人手または工具により螺合位置が調整可能である。調整ナット54は2つ設けてダブルナット式により位置を固定するようにしてもよい。コイルバネ56は調整ナット54と摩擦ディスク58との間に設けられ、調整ナット54によって圧縮量が調整されるようになっている。換言すれば、摩擦板58bを含む摩擦ディスク58は基端ネジ部50aおよび調整ナット54による付勢力を受けたコイルバネ56が摩擦対象である外輪60aおよび摩擦板60cに対して弾性押圧している。コイルバネ56の圧縮量により摩擦板58bと摩擦板60cとの面圧が調整され両者間で発生する摩擦力を調整することができる。摩擦板58bと摩擦板60cと間で生じる摩擦力は小さく、本実施例ではOLED12の巻出しおよび巻取りの力に換算して100~200gf程度である。
【0031】
このように構成される表示装置10Aは筒状のカバー18の内部にOLED12、定荷重バネ20、モーター22およびドラグ機構24Aが収まっており小型軽量、廉価であり、可搬性に優れる。表示装置10Aは特許文献1に示されるようなリンク機構が不要であるとともに、構成が簡便で軽量になり、該リンク機構を駆動させる大きな動力が不要であることからモーター22は小型で足りる。
【0032】
OLED12は平面状に復帰しようとする性質があるが常に定荷重バネ20によって付勢されているためシリンダー14に対して適切な巻回状態に維持され、空間16の内部で外径方向に広がってカバー18の内壁に当接することがない。そのため該カバー18との間で摺動し損傷し、または不要な摩擦力を受けることがない。
【0033】
表示装置10Aの手動操作では、引出しバー26を把持して下方に引くことによりOLED12を巻き出すことができる。このとき、シリンダー14、第1プーリー42および外輪60aが一体的に回転し、回転軸50、摩擦ディスク58および内輪60bは回転しない。なお、摩擦ディスク58は摩擦板58bから回転力を受けるがモーター22の内蔵減速機の作用を受けるため停止している。引出しバー26の引き下げに10gfの力が必要として、減速比1:120を使うと、10×120=1200gfになり、摩擦ディスク58が受ける摩擦力が相当大きくとも回転軸50は回転せずに、停止したままに維持される。実際上、回転軸50はペンチなどを用いても手の力では回転しない。摩擦板58bと摩擦板60cとの間では滑りを生じるが両者間の摩擦力は十分小さく設定されており、OLED12の巻き出しにはほとんど影響がない。
【0034】
巻取る力Fuと巻き出す力Fdとは基本的に等しく設定されているため、OLED12はカバー18からの巻き出し量に拘わらずユーザは非常に軽い力で引出しが可能になり、しかも任意の位置で止めるフリーストップ機能を実現することができる。
【0035】
力Fuと力Fdとは完全に一致していることが望ましいが、実際上の公差等の要因により完全にバランスさせることは困難となることもある。しかしながら、両者に多少の差があっても、上記のとおり摩擦板58bと摩擦板60cとの間の100~200gf程度の摩擦力が軽いブレーキ作用を奏するためフリーストップが可能である。OLED12をカバー18内に収納する際には、引出しバー26を軽く押し上げることにより定荷重バネ20の巻取り作用によってシリンダー14に巻き取ることができる。巻取りの途中でもフリーストップが可能である。
【0036】
表示装置10Aの電動操作ではモーター22を正転または反転させる。このとき、モーター22は回転軸50、摩擦ディスク58および内輪60bを回転させる。そして、摩擦ディスク58の回転は摩擦板58b,60cを介して外輪60aに伝達される。外輪60aはシリンダー14と一体的になっているため該シリンダー14が回転してOLED12を巻き出しまたは巻き取ることができる。OLED12の他端12bには錘を兼ねる引出しバー26が設けられているが、この場合も引出しバー26による巻き出す力Fdは定荷重バネ20によって相殺されており、モーター22は十分に小さい出力でOLED12の巻き出しおよび巻取りが可能である。電動操作の場合においても任意の位置での停止が可能である。
【0037】
また、モーター22によってシリンダー14を駆動する動力は十分小さくて足りるため、摩擦板58bと摩擦板60cとの間も摩擦力は小さくて足り、摩擦板58b,60cの劣化が少ない。また、摩擦板58b,60cの損耗により摩擦力が低減した場合には、調整ナット54を再調整することで摩擦力を適正に回復させることができる。
【0038】
モーター22によってシリンダー14を回転させるための必要動力は十分小さいためそれを伝達させる摩擦板58b,60cの摩擦力は力Fu,Fdの800gfと比較して十分に小さく、上記のとおり100~200gf程度で足りることが確認されている。力Fu,Fdを基準とすれば1/8~1/4程度で十分である。
【0039】
上記のように、表示装置10Aでは電動および手動によるOLED12の巻き出しおよび巻取りの操作が可能となっている。表示装置10Aでは、定荷重バネ20とモーター22およびドラグ機構24Aとは反対側に設けられていることから重量バランスがよい。また、蓋18a,18bを取るとドラグ機構24AはX1側から、モーター22およびドラグ機構24AはX2側に露呈されメンテナンス性がよい。
【0040】
図6は、第2実施形態にかかる表示装置10Bの模式断面正面図である。表示装置10Bでは上記のドラグ機構24Aに代えてドラグ機構24Bが用いられている。ドラグ機構24Bにおいてドラグ機構24Aと同様の構成要素には同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
ドラグ機構24Bは回転軸70、摩擦ディスク70a、環状スペーサ72が設けられている。回転軸70、摩擦ディスク70aは上記の回転軸50、摩擦ディスク58に相当する。摩擦ディスク70aは回転軸70と一体構成となっている。摩擦ディスク70aのX1側面には摩擦板70cが設けられている。摩擦板70cは上記の摩擦板58bと同じである。環状スペーサ72は摩擦ディスク70aと内輪60bとの間に設けられている。回転軸70の先端ネジ部70bは内輪60bの中心孔からX1側に突出している。内輪60bは環状スペーサ72と先端ネジ部70bに螺合する固定ナット62に挟持されて固定されている。内輪60bと先端ネジ部70bとはDカット面などにより相対回転不能にするとよい。ドラグ機構24Bはドラグ機構24Aと比較して構造が簡便である。
【0042】
図7は、表示装置10の使用例を示す図であり、(a)は保管状態を示す図であり、(b)は使用準備状態を示す図であり、(c)は使用状態を示す図であり、(d)は収納状態を示す図である。
【0043】
表示装置10は小型軽量であることから、図7に示すように照明用デスクスタンドSに取り付けて任意の位置に移動させて用いることができる。図7(a)に示すように、保管状態では縦向きとしておくと占有スペースを抑制することができる。
【0044】
図7(b)に示すように、使用時には表示装置10を任意の位置および高さで水平に設定すればよい。この状態から図7(c)に示すようにOLED12を下向きに引き出して使用することができる。OLED12の引き出し量は任意に設定可能であることは上記の通りである。
【0045】
図7(d)に示すように、収納する時に再び縦向きとすると、OLED12に対して引出しバー26が下向きに作用していた巻き出しの力Fdはなくなる。そうすると、OLED12に対しては定荷重バネ20による巻取りの力Fuだけが作用することになり、電力を用いることなく自動的な巻取りが可能になる。もちろん、この前段階で手動または電動によって巻き取りを行なってもよい。表示装置10は水平のまま保管してもよい。表示装置10は小型軽量であることから壁掛け式、または磁石取付式として用いることも可能である。
【0046】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
10,10A,10B 表示装置
12 OLED
12a 一端
12b 他端
14 シリンダー(巻取体)
14b スリット
16 空間
18 カバー
18c スリット
20 定荷重バネ
22 モーター
24A,24B ドラグ機構
26 引出しバー(錘)
28 制御部
30 表示制御部
40 弾性帯
42 第1プーリー
44 第2プーリー
46 バネ支持部材
50 回転軸
50a 基端ネジ部
50b 先端ネジ部
50c 中間部
54 調整ナット
56 コイルバネ
58 摩擦ディスク
58b,60c 摩擦板
60a 外輪
60b 内輪
62 固定ナット
70c 摩擦板
72 環状スペーサ
【要約】
【課題】電動および手動の操作が可能であり小型の巻取り可能な表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置10Aは、OLED12と、OLED12を一端から巻き取るシリンダー14と、シリンダー14との間にOLED12の巻取り空間を確保するカバー18と、シリンダー14に対してOLED12の巻取り力を付与する定荷重バネ20と、シリンダー14に対してOLED12の巻取り力および巻き出し力の少なくとも一方を与えるモーター22と、モーター22とシリンダー14との間で摩擦ディスク58を介して回転を伝達するドラグ機構24と、OLED12の他端に設けられて定荷重バネ20による巻取り力と吊りあう引出し力を付勢する引出しバー26とを有する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7