(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】移動手段用無線充電装置およびそれに用いられる磁性複合体
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20240603BHJP
H01F 1/26 20060101ALI20240603BHJP
H01F 1/37 20060101ALI20240603BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240603BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240603BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F1/26
H01F1/37
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2023507841
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 KR2022004244
(87)【国際公開番号】W WO2022244967
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065654
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】102, Jeongja-ro, Jangan-gu Suwon-si Gyeonggi-do 16338 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョンハク
(72)【発明者】
【氏名】キム、テキョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スンファン
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-099137(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0249480(US,A1)
【文献】特表2013-534041(JP,A)
【文献】特開2016-219758(JP,A)
【文献】特開2019-080060(JP,A)
【文献】特開2010-251697(JP,A)
【文献】特開2015-065632(JP,A)
【文献】特開2000-319072(JP,A)
【文献】特開2015-185719(JP,A)
【文献】特開平05-226140(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0038532(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H01F 1/00- 1/44
H01F 38/14
H01F 38/18
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ワイヤを含むコイル部と、
前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、
下記式(1)で表される前記磁性部の吸湿率が0.5重量%以下であり、
前記磁性部は、磁性複合体と、前記磁性複合体の表面を取り囲む外郭層とを含み、
前記磁性部の表面は、水に対して50°以上の接触角を有する、移動手段用無線充電装置:
SR=[(B-A)/A]×100...(1)
ここで、Aは、前記磁性部が乾燥した後の質量(g)であり、
Bは、前記磁性部が常温にて24時間水に浸漬され、表面の水分が除去された後の質量(g)である。
【請求項2】
前記磁性複合体は、
マトリックス樹脂と、前記マトリックス樹脂内に配置される多数の磁性粒子とを有する、請求項1に記載の移動手段用無線充電装置。
【請求項3】
前記磁性部は、
前記磁性粒子各々の周りを取り囲む保護層をさらに含む、請求項2に記載の移動手段用無線充電装置。
【請求項4】
前記マトリックス樹脂は、
ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群より1種以上選択される、請求項2に記載の移動手段用無線充電装置。
【請求項5】
前記磁性部は、
前記磁性複合体の全重量を基準に、70重量%~95重量%で前記磁性粒子を含み、
前記磁性複合体の全体積を基準に、35体積%~65体積%で前記磁性粒子を含む、請求項2に記載の移動手段用無線充電装置。
【請求項6】
前記保護層及び前記外郭層はそれぞれ、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂の中から選択される1種以上を含む、
請求項3に記載の移動手段用無線充電装置。
【請求項7】
前記磁性部の表面は、水に対して80°以上の接触角を有する、請求項1に記載の移動手段用無線充電装置。
【請求項8】
前記磁性部は下記式(2)を満足する、請求項1に記載の移動手段用無線充電装置:
6≦(100-P)/M ... (2)
ここで、Mは、常温にて24時間水に浸漬する際の吸湿率(重量%)であり、
Pは、透磁率200を100%としたとき、85kHz周波数における透磁率の百分率(%)であり、
前記式(2)において、MおよびPには単位を除いた数値のみを適用する。
【請求項9】
電力貯蔵装置と、
前記電力貯蔵装置に供給するために外部から無線電力を受信する無線充電装置とを含み、
前記無線充電装置は、
導電性ワイヤを含むコイル部と、
前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、
下記式(1)で表される前記磁性部の吸湿率が0.5重量%以下であり、
前記磁性部は、磁性複合体と、前記磁性複合体の表面を取り囲む外郭層とを含み、
前記磁性部の表面は、水に対して50°以上の接触角を有する、移動手段:
SR=[(B-A)/A]×100...(1)
ここで、Aは、前記磁性部が乾燥した後の質量(g)であり、
Bは、前記磁性部が常温にて24時間水に浸漬され、表面の水分が除去された後の質量(g)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、電気自動車(EV)のような移動手段用無線充電装置およびそれに用いられる磁性複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、情報通信分野は極めて速い速度で発展しており、電気、電子、通信、半導体などが総合的に組み合わされた多様な技術が持続的に開発される。また、電子機器のモバイル化傾向が増大するにつれ、通信分野においても無線通信および無線電力伝送技術に関する研究が盛んに行われている。特に、電子機器などに無線で電力を伝送する方案に関する研究が活発に進んでいる。
【0003】
前記無線電力伝送は、電力を供給する送信機と、電力供給を受ける受信機との間に物理的な接触なく電磁結合(inductive coupling)、容量結合(capacitive coupling)またはアンテナなどの電磁場共振構造を利用して、空間を介して電力を無線で伝送するものである。前記無線電力伝送は、大容量のバッテリーが求められる携帯用通信機器、電気自動車などに適しており、接点が露出されないため漏電などの危険がほとんどなく、有線方式の充電不良現象を防ぐことができる。
【0004】
一方、最近では、電気自動車への関心が急増するにつれ、充電インフラ構築に対する関心が増大している。既に、家庭用充電器を利用した電気自動車充電をはじめ、バッテリー交換、急速充電装置、無線充電装置などと、多様な充電方式が登場しており、新しい充電事業ビジネスモデルも登場し始めている(特許文献1参照)。また、欧州では試験運行中の電気自動車と充電所が目立ち始め、日本では自動車メーカーと電力会社が主導して電気自動車および充電所を試験的に運営している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国特許公開第2011-0042403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、モバイル機器に使用される無線充電装置は、性能を高めるための様々な改善が行われ製品に適用されているのに対し、電気自動車のような移動手段に使用するための無線充電装置は、性能を高めるための素材の特性や構造に対する様々な試みはまだ不備なのが実状である。一例として、電気自動車において無線充電装置は、主に車体の下部に設置され運転時や駐車時に雨天および湿度などの様々な外部環境にさらされ、無線充電に適用される周波数帯域も異なるため、モバイル機器の無線充電装置の構成を借用するには無理がある。
【0007】
本発明者らは、このような駆動環境を考慮した性能向上に関心を持つようになり、特に、電気自動車のように大容量の電力伝送を求める無線充電装置においては、素材に含有される水分量の小さな変化にも、磁性特性と充電効率が大きく影響を及ぼすことに注目した。そこで、本発明者らが研究した結果、無線充電装置に備えられる磁性部の吸湿率を特定の範囲に調節すると、電気自動車の無線充電に適用される周波数および高出力下において、高い磁性特性および充電効率を提供し得ることを見出した。
【0008】
したがって、実現例は、高い磁性特性および充電効率を有するように吸湿率が調節された磁性部を含む無線充電装置、これを含む移動手段、およびそれに用いられる磁性複合体を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実現例によると、導電性ワイヤを含むコイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、前記磁性部の吸湿率が0.5重量%以下である、移動手段用無線充電装置が提供される。
【0010】
他の実現例によると、電力貯蔵装置と、前記電力貯蔵装置に供給するために外部から無線電力を受信する前記無線充電装置を含む、移動手段が提供される。
【0011】
また他の実現例によると、マトリックス樹脂と、前記マトリックス樹脂内に配置される多数の磁性粒子とを含み、吸湿率が0.5重量%以下である、移動手段の無線充電装置に用いられる磁性複合体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
前記実現例によると、移動手段用無線充電装置に備えられる磁性部の吸湿率を特定の範囲に調節することにより、電気自動車のような移動手段の無線充電に適用される周波数および高出力下において、高い磁性特性および充電効率を提供することができる。また、前記磁性部は、マトリックス樹脂内に多数の磁性粒子が分散された磁性複合体を含むので、マトリックス樹脂の種類および含有量等に応じて吸湿率を調節することが可能である。
【0013】
したがって、前記磁性部を含む無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を求める電気自動車のような移動手段等に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実現例による磁性部の断面図を示すものである。
【
図2】
図2は、他の実現例による磁性部の断面図を示すものである。
【
図3】
図3は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図を示すものである。
【
図4】
図4は、一実現例による無線充電装置を含む移動手段を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実現例の説明において、1つの構成要素が他の構成要素の上/下に形成されるか互いに連結または結合するという記載は、これらの構成要素間に直接またはさらに他の構成要素を介して間接的に形成、連結または結合されるものを全て含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、対象を観察する方向によって変わり得るものと理解すべきである。
【0016】
本明細書において、関連する公知の構成または機能に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にすると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。また、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張または省略されることがあり、実際に適用される大きさとは異なり得る。
【0017】
本明細書において、ある構成要素を「含む」ということは、特に反する記載がない限り、その外の他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0018】
また、本明細書に記載された構成要素の特性値、寸法などを示す全ての数値範囲は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解すべきである。
【0019】
本明細書において単数表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味として解釈されるべきである。
【0020】
[無線充電装置]
一実現例による移動手段用無線充電装置は、導電性ワイヤを含むコイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、前記磁性部の吸湿率が0.5重量%以下である。
【0021】
図3は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図を示すものである。
図3を参照すると、前記無線充電装置10は、導電性ワイヤを含むコイル部200と、前記コイル部200上に配置される磁性部100とを含み、前記磁性部100上に配置されるシールド部300と、前記コイル部200を支持する支持部400とをさらに含み得る。その外にも、前記無線充電装置10は、前記シールド部300と磁性部100との間の空間を確保するためのスペーサをさらに含み得る。また、前記無線充電装置は、これらの構成要素を保護し、それらを適切に配置するハウジングをさらに含み得る。
以下、前記無線充電装置の各構成要素別に具体的に説明する。
【0022】
[コイル部]
前記コイル部は、導電性ワイヤを含み、前記導電性ワイヤは、導電性物質、例えば、導電性金属を含み得る。具体的に、前記導電性ワイヤは、銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、および錫からなる群より選択される1種以上の金属を含み得る。
【0023】
また、前記導電性ワイヤは、絶縁性外皮を備え得る。例えば、前記絶縁性外皮は、絶縁性高分子樹脂を含み得る。具体的に、前記絶縁性外皮は、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、テフロン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂などを含み得る。
【0024】
前記導電性ワイヤの直径は、例えば、1mm~10mm範囲、1mm~5mm範囲、または1mm~3mm範囲であり得る。
【0025】
前記導電性ワイヤは、平面コイル状で巻き付けられたものであり得る。具体的に、前記平面コイルは、平面螺旋コイル(planar spiral coil)を含み得る。ここで、前記平面コイルの形状は、楕円形、多角形、または角の丸い多角形の形状であり得るが、特に限定されない。
【0026】
前記平面コイルの外径は、5cm~100cm、10cm~50cm、10cm~30cm、20cm~80cm、または50cm~100cmであり得る。具体的な一例として、前記平面コイルは、10cm~50cmの外径を有し得る。
【0027】
また、前記平面コイルの内径は、0.5cm~30cm、1cm~20cm、または2cm~15cmであり得る。
【0028】
前記平面コイルの巻き回数は、5回~50回、10回~30回、5回~30回、15回~50回、または20回~50回であり得る。具体的な一例として、前記平面コイルは、前記導電性ワイヤを10回~30回巻きつけて形成されたものであり得る
【0029】
また、前記平面コイルの形状内において、前記導電性ワイヤ間の間隔は、0.1cm~1cm、0.1cm~0.5cm、または0.5cm~1cmであり得る。
【0030】
前記のような好ましい平面コイル寸法および規格範囲内であるとき、電気自動車のような大容量電力伝送を求める分野に、より好適であり得る。
【0031】
前記無線充電装置は、前記コイル部を支持する支持部をさらに含み得る。前記支持部の材質および構造は、無線充電装置に使用される通常の支持部の材質および構造を採用し得る。前記支持部は、平板構造またはコイルを固定し得るよう、コイル形状に沿って溝が掘られた構造を有し得る。
【0032】
[磁性部]
前記磁性部は、前記コイル部上に配置される。
前記磁性部は、前記コイル部と一定間隔離隔して配置され得る。例えば、前記磁性部と前記コイル部との離隔距離は、0.2mm以上、0.5mm以上、0.2mm~3mm、または0.5mm~1.5mmであり得る。
【0033】
図1は、一実現例による磁性部の断面図を示すものであり、
図2は、他の実現例による磁性部の断面図を示すものである。
【0034】
図1を参照すると、一実現例による磁性部100は、マトリックス樹脂111と、前記マトリックス樹脂111内に配置される多数の磁性粒子120とを有する磁性複合体を含む。
【0035】
図2を参照すると、他の実現例による磁性部100'は、前記磁性複合体の表面を取り囲む外郭層112をさらに含み得る。
【0036】
一実現例によると、前記磁性部の吸湿率は0.5重量%以下である。例えば、前記磁性部の吸湿率は、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、または0.05重量%以下であり得る。
【0037】
前記磁性部の吸湿率は、常温にて24時間水に浸漬して測定したものであり得る。具体的に、前記磁性部の吸湿率(SR)は、下記式(1)で表され得る。
SR=[(B-A)/A]×100 ... (1)
ここで、Aは、前記磁性部が乾燥した後の質量(g)であり、Bは、前記磁性部が常温にて24時間水に浸漬され、表面の水分が除去された後の質量(g)である。
【0038】
前記実現例によると、移動手段の無線充電装置に備えられる磁性部の吸湿率を特定の範囲に調節することにより、移動手段の無線充電に適用される周波数および高出力下において、高い磁性特性および充電効率を提供し得る。このように、前記実現例は、電気自動車の無線充電性能を改善するための効果的な手段として、磁性部の吸湿率が調節された無線充電装置を提供するという点で意義がある。また、前記実現例による磁性部は、マトリックス樹脂に多数の磁性粒子が分散した組成を有するので、マトリックス樹脂の種類および含有量、または追加のコーティング等により吸湿率の調節が可能である。
【0039】
したがって、前記磁性部を含む無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を求める電気自動車などに適用され得る。
【0040】
また、前記磁性部の表面の水に対する特性が調節され得る。一例として、前記磁性部の表面は、水に対して80°以上の接触角を有し得る。前記範囲内であるとき、電気自動車のような移動手段の無線充電に適用される周波数および出力条件において、高い磁性特性および充電効率を提供するのに、より有利である。例えば、前記磁性部の表面の水に対する接触角は、85°以上、90°以上、または95°以上であり、150°以下、140°以下、130°以下、または120°以下であり、具体的には、95°~130°の範囲であり得る。
【0041】
以下、前記実現例による磁性部の各構成要素および特性を具体的に説明する。
【0042】
[マトリックス樹脂]
前記マトリックス樹脂は、磁性粒子のバインダーとして作用しながら磁性部の吸湿率を調節する。
【0043】
前記マトリックス樹脂の種類は、例えば、自動車用部品の製造に用いられる一般的なエンジニアリングプラスチック(例:ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等)や、高耐熱エンジニアリングプラスチック(例:ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリイミド樹脂、テフロン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等)、またはその他汎用樹脂(例:アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、スチレン-アクリロニトリル(SAN)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等)であり得る。
【0044】
具体的な例として、前記マトリックス樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0045】
一例として、前記マトリックス樹脂は、熱可塑性高分子樹脂であり得る。より具体的に、前記マトリックス樹脂は、熱可塑性ポリアミド樹脂および熱可塑性ポリイミド樹脂の中から選択される1種以上を含むものが、耐熱性、防湿性、防錆性、および/または耐食性の面から、より有利であり得る。
【0046】
前記マトリックス樹脂の含有量は、前記磁性複合体の全重量を基準に、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、または20重量%以上であり、また、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、または15重量%以下であり得る。具体的な例として、前記マトリックス樹脂の含有量は、前記磁性複合体の全重量を基準に、5重量%~40重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、または7重量%~15重量%であり得る。
【0047】
[磁性粒子]
前記磁性粒子は、前記磁性部が無線充電装置において求められる磁性特性を有するようにする。
【0048】
前記磁性粒子は、金属系の磁性粒子であって良く、その種類に特に限定されない。例えば、前記磁性粒子は、フェライト系、Fe系、ナノ結晶質(nanocrystal)系、Fe系非晶質(amorphous)系物質を含み得る。
【0049】
具体的に、前記磁性粒子は、フェライト(Ni-Zn系、Mg-Zn系、Mn-Zn系フェライト等)のような酸化物磁性粒子;パーマロイ(permalloy)、センダスト(sendust)、Fe-Si-Cr合金、およびFe-Si-ナノクリスタルのような金属磁性粒子;または、これらの混合粒子であり得る。より具体的に、前記磁性粒子は、Fe-Si-Al合金組成を有するセンダスト粒子であり得る。
【0050】
一例として、前記磁性粒子は、下記化学式1の組成を有し得る。
[化1]
Fe1-a-b-cSiaXbYc
前記式において、XはAl、Cr、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせであり、YはMn、B、Co、Mo、またはこれらの組み合わせであり、0.01≦a≦0.2、0.01≦b≦0.1、および0≦c≦0.05である。
【0051】
前記磁性粒子の平均粒径は特に限定されないが、例えば、3nm~1mm、1μm~300μm、1μm~50μm、または1μm~10μmであり得る。
【0052】
前記磁性粒子の含有量は、前記磁性複合体(または磁性部)の全重量を基準に、50重量%以上、または70重量%以上であり得る。例えば、前記磁性粒子の含有量は、前記磁性複合体の全重量を基準に、50重量%~95重量%、70重量%~95重量%、70重量%~90重量%、75重量%~90重量%、75重量%~95重量%、80重量%~95重量%、または80重量%~90重量%であり得る。
【0053】
また、前記磁性粒子の含有量は、前記磁性複合体(または磁性部)の全体積を基準に、20体積%以上、または35体積%以上であり得る。例えば、前記磁性粒子の含有量は、前記磁性複合体の全体積を基準に、20体積%~70体積%、35体積%~65体積%、35体積%~60体積%、40体積%~60体積%、40体積%~70体積%、45体積%~70体積%、または45体積%~60体積%であり得る。
【0054】
具体的な例として、前記磁性部は、前記磁性複合体の全重量を基準に、70重量%~95重量%で前記磁性粒子を含み、前記磁性複合体の全体積を基準に、35体積%~65体積%で前記磁性粒子を含み得る。前記含有量の範囲内であるとき、耐熱性、防湿性、防錆性、および/または耐食性の面から、より有利であり得る。
【0055】
[磁性複合体の製造]
前記磁性複合体は、前記磁性粒子をマトリックス樹脂に分散させた成形用組成物を用いて製造され得る。
【0056】
前記磁性粒子は、水分などから保護するための高分子樹脂でコーティングされた後、マトリックス樹脂に分散され得る。これにより前記磁性部は、前記磁性粒子それぞれの周りを取り囲む保護層をさらに含み得る。前記保護層は、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂などを含み得る。具体的に、前記保護層は、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂の中から選択される1種以上を含み得る。
【0057】
また、前記成形用組成物には、防錆剤、酸化防止剤などの成分が、それぞれ0.01重量%~1重量%の含有量でさらに添加され得る。
【0058】
前記磁性複合体は、例えば、前記成形用組成物をシート状に押出するか、またはモルドに射出して、所望の形状に成形し得る。
【0059】
一例として、前記磁性複合体はシート状に形成されて良く、具体的には、磁性粒子およびマトリックス樹脂を混合してシート状に押出および乾燥する段階を含む方法により製造され得る。この際、前記磁性粒子および前記マトリックス樹脂は、前記で例示したような種類および含有量で使用され得る。このように製造されたシートの厚さは、10μm~500μm、50μm~250μm、100μm~200μm、または約150μmであり、前記シートを10枚以上、20枚以上、または50枚以上積層して、厚さ1mmまたはそれ以上のブロック状の磁性複合体を製造することもできる。
【0060】
他の例として、前記磁性複合体は、モルドを用いる成形工程によって、一定の厚さを有する大面積のブロックに製造され得る。前記成形は、射出成形によって磁性複合体の原料をモルドに注入して行われ得る。具体的に、前記磁性複合体は、成形用組成物を射出成形機によりモルドに注入して製造され得る。この場合、モルドの内部形状を立体構造に設計して、磁性複合体の立体構造を容易に実現することもできる。このような工程は、既存の焼結フェライトシートを磁性部として用いる場合には不可能なことである。
【0061】
[外郭層]
前記磁性部は、前記磁性複合体の表面を取り囲む外郭層をさらに含み得る。例えば、前記外郭層は、高分子樹脂を溶媒と混合して調製された組成物を用いて形成され得る。
【0062】
具体的に、前記溶媒として、トルエン、エタノール、アセトン等を前記高分子樹脂100重量部に対して10重量部~200重量部で混合し得る。
【0063】
前記外郭層は、コーティングまたはその他の周知の方法により形成され、例えば、スピンコート(spin coating)、浸漬(dipping)、スプレー(spraying)、ドロップキャスト(drop casting)、ドクターブレード(doctor blade)、バーコート(bar coating)、スロットダイコート(slot die coating)、マイクログラビアコート(micro gravure coating)、コマコート(coma coating)、またはプリント(printing)によって形成され得る。
【0064】
前記外郭層は、0.01μm~10μmの厚さに形成されることが、防湿性、防錆性、耐食性、および耐熱性の面から、より有利であり得る。より具体的に、前記コーティング厚さは1μm~5μmであり得る。
【0065】
前記外郭層は、前記磁性複合体の外郭にコーティングされ表面を保護し磁性部の吸湿率を調節し得る。
【0066】
前記実現例によると、前記外郭層の水に対する特性が調節されることが好ましい。前記外郭層は、水に対して50°以上の接触角を有し得る。または、前記外郭層は、水に対して70°以上の接触角を有し得る。具体的に、前記外郭層は、水に対して80°~130°の接触角を有し得る。
【0067】
前記外郭層は、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂などを含み得る。具体的に、前記外郭層は、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂の中から選択される1種以上を含み得る。
【0068】
[磁性部の特性]
前記磁性部は、電気自動車の無線充電標準周波数付近で一定レベルの磁性特性を有し得る。前記電気自動車の無線充電標準周波数は100kHz未満であり、具体的に79kHz~90kHz、より具体的に約85kHzであり得る。これは、携帯電話のようなモバイル電子機器に適用する周波数と区別される帯域である。
【0069】
前記磁性部は、無線充電周波数帯域で透磁率が高い反面、透磁損失が低いため、充電効率に優れる。
【0070】
例えば、前記磁性部の透磁率は、79kHz~90kHzの周波数帯域で、10以上、50以上、100以上、または150以上であり得る。具体的に、前記磁性部は、79kHz~90kHzの周波数帯域で200以上の透磁率を有し得る。
【0071】
より具体的に、前記磁性部の透磁率は、79kHz~90kHzの周波数帯域で10~500、50~300、または100~250であり得る。
【0072】
また、前記磁性部の透磁損失は、79kHz~90kHzの周波数帯域で100以下、50以下、20以下、または10以下であり得る。具体的に、前記磁性部の透磁損失は、79kHz~90kHzの周波数帯域で1~100、1~50、1~20、または1~15であり得る。
【0073】
また、前記磁性部の透磁率/透磁損失率は、79kHz~90kHzの周波数帯域で5以上、10以上、または15以上であり得る。具体的に、前記磁性部の透磁率/透磁損失率は、79kHz~90kHzの周波数帯域で10以上であり得る。より具体的に、前記磁性部の透磁率/透磁損失率は、79kHz~90kHzの周波数帯域で5~50、10~40、10~30、または10~20であり得る。
【0074】
また、前記実現例による磁性部は、電気自動車の無線充電標準周波数における透磁率と吸湿率との間に特定の関連性を有し得る。
【0075】
一例として、前記磁性部は、下記式(2)を満足し得る。
6≦(100-P)/M ... (2)
前記式において、Mは常温にて24時間水に浸漬する際の吸湿率(重量%)であり、Pは透磁率200を100%としたとき、85kHz周波数における透磁率の百分率(%)であり、前記式(2)において、MおよびPには単位を除いた数値のみを適用する。また、前記式(2)において、Mは前記式(1)により計算され得る。
【0076】
このように、前記実現例による磁性部は、前記式(2)において(100-P)/Mの値が6以上であるため、吸湿率を調節することにより透磁率を効果的に改善し得る。前記式(2)において、(100-P)/Mの値が6以上、8以上、または10以上であり、具体的には6~15、6~12、または8~12であり得る。
【0077】
前記で例示した磁性部の特性は、これを構成するマトリックス樹脂および磁性粒子の磁性複合体に一次的に起因するものと考えられる。したがって、前記磁性複合体の透磁率、吸湿率、接触角などの特性は、前記で例示した磁性部の特性と同じレベルで示され得る。
【0078】
[シールド部]
前記シールド部は、前記磁性部上に配置される。
前記シールド部は、電磁波遮蔽により外部に電磁波が漏れて発生し得る電磁干渉(electromagnetic interference、EMI)を抑制する。
【0079】
前記シールド部は、前記磁性部と一定間隔で離隔され配置され得る。例えば、前記シールド部と前記磁性部との離隔距離は、3mm以上、5mm以上、3mm~10mm、または4mm~7mmであり得る。
【0080】
また、前記シールド部と前記コイル部との離隔距離は、10mm以上または15mm以上であり、具体的に10mm~30mm、または10mm~20mmであり得る。
【0081】
前記シールド部の素材は、例えば金属であって良く、これにより、前記シールド部は金属板であり得るが、特に限定されない。具体的な一例として、前記シールド部の素材はアルミニウムであって良く、その外、電磁波遮蔽能を有する金属または合金素材が使用され得る。
【0082】
前記シールド部の厚さは、0.2mm~10mm、0.5mm~5mm、または1mm~3mmであり得る。また、前記シールド部の面積は、200cm2以上、400cm2以上、または600cm2以上であり得る。
【0083】
(移動手段)
一実現例による移動手段は、電力貯蔵装置と、前記電力貯蔵装置に供給するために外部から無線電力を受信する無線充電装置とを含む。
【0084】
図4は、無線充電装置が適用された移動手段1、具体的に、電気自動車を示すものである。前記電気自動車は、電気自動車用無線充電システムが設けられた駐車区域において、無線により充電され得る。前記移動手段は、受信機として無線充電装置を含む。例えば、前記無線充電装置は、移動手段1の無線充電の受信機21として機能し、無線充電の送信機22から電力が供給され得る。
【0085】
前記移動手段に含まれる無線充電装置の各構成要素の構成および特徴は、前述の実現例において説明した通りである。
【0086】
前記無線充電装置は、移動手段の下部に備えられ得る。前記移動手段は、電力貯蔵装置、例えば、バッテリーを含む。前記無線充電装置は、無線で電力を受信して前記電力貯蔵装置に供給し、前記電力貯蔵装置は、前記移動手段の駆動系に電力を供給し得る。前記電力貯蔵装置は、前記無線充電装置またはその他追加の有線充電装置から伝送される電力によって充電され得る。
【0087】
また、前記移動手段は、充電に関する情報を無線充電システムの送信機に伝達する信号伝送機をさらに含み得る。このような充電に関する情報は、充電速度のような充電効率、充電状態などであり得る。
【0088】
(実施例)
前記内容を下記の様々な実施例によりさらに詳細に説明するが、下記に記載の範囲により実施例が限定されるものではない。
【0089】
(実施例1:磁性部の製造(磁性複合体))
マトリックス樹脂としてポリアミド樹脂(L1724k、Daicel-Evonik社)と、磁性粒子として平均粒径35μmのセンダスト粉末(C1F-02A、Crystallite Technology社)とを混合して、成形用組成物を調製した。前記成形用組成物を用いて、約260℃の温度にて射出成形装置によりパッド状の磁性部を製造した。この際、各成分別配合率を調節して、様々な吸湿率を有する磁性部を得た。
【0090】
(実施例2:磁性部の製造(磁性複合体の外郭層コーティング))
シリコーン樹脂(SEALTECH社)を溶媒である塩化メチレンと混合して、固形分含有量約1.0重量%の組成物を調製した。前記組成物を、前記実施例1で製造した磁性部の表面に噴霧コーティング装置により約75℃のコーティング条件で、厚さ1μmの外郭層を形成した。
【0091】
(試験例1:吸湿率)
磁性部サンプルを50℃の熱風オーブンにて24時間以上乾燥した後、電源を切り、常温にて冷却した。精密天秤でサンプルの初期重量(A)(単位:g)を測定し、サンプルを常温にて24時間水に浸漬した後、表面の水気を除去して、重量(B)(単位:g)を測定した。これを基に、下記式に従って吸湿率(SR)(単位:重量%)を算出した。
SR=[(B-A)/A]×100
【0092】
(試験例2:透磁率)
インピーダンス分析装置により、様々な吸湿率を有する磁性部に対する85kHzにおける透磁率を測定した。この際、吸湿率が0.01重量%の磁性部サンプルの透磁率(約200)を100%としたときの相対的な百分率として下記表に示した。
【0093】
(試験例3:充電効率)
充電効率は、SAE J2954 WPT2 Z2クラススタンダードテスト法により測定した。具体的に、SAE J2954 WPT2 Z2クラススタンダードテスト規格のコイル部およびフレームを適用し、磁性部、スペーサ、およびアルミニウムプレートを積層して受信パッド(35cm×35cm)および送信パッド(75cm×60cm)を製造し、85kHz周波数にて出力電力6.6kWの同じ条件で充電効率を評価した。
その結果を下記表にまとめた。
【0094】
【0095】
前記表から分かるように、磁性部の吸湿率により、電気自動車の無線充電装置に適用される周波数における透磁率および高出力における充電効率が有意な変化を示した。
【0096】
特に、吸湿率が0.5重量%以内の磁性部は、透磁率および充電効率が概ね優れており、電気自動車の無線充電装置に適用するに無理がないのに対し、吸湿率が0.5重量%を超える磁性部は、透磁率および充電効率が急激に低下して、電気自動車の無線充電装置に適用するには不適であった。
【符号の説明】
【0097】
1:電気自動車
10:無線充電装置
21:受信機
22:送信機
100:一実現例による磁性部
100':他の実現例による磁性部
111:マトリックス樹脂
112:外郭層
120:磁性粒子
200:コイル部
300:シールド部
400:支持部