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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール用加飾積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20240603BHJP
【FI】
H01L31/04 560
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023576412
(86)(22)【出願日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2023030320
【審査請求日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2022132638
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】細川 武喜
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-027266(JP,A)
【文献】特開2010-201644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護フィルム(A)、ハードコート層(B)、加飾層(C)、支持層(G)及び粘着層(F)を有する太陽電池モジュール用加飾積層フィルムであって、
前記太陽電池モジュール用加飾積層フィルムから保護フィルム(A)を剥離した状態の加飾積層フィルム(L)は、波長380nm~810nmの全光線透過率Ttが50%以上、90%以下であり、波長380~1300nmの反射率Rが5%以上、40%以下であり、太陽電池モジュールとの粘着力が1N/25mm以上、50N/25mm以下であり、
前記粘着層の屈折率Faが1.3以上、1.8以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用加飾積層フィルム。
【請求項2】
粘着層の屈折率Faと、太陽電池モジュールの表面の屈折率Fgとの差|Fa-Fg|が0以上、0.5以下である請求項1記載の太陽電池モジュール用加飾積層フィルム。
【請求項3】
太陽電池モジュールに貼合した後に、剥離可能である請求項1又は2記載の太陽電池モジュール用加飾積層フィルム。
【請求項4】
ハードコート層は、熱硬化型コーティング組成物又は活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成された層である請求項1又は2記載の太陽電池モジュール用加飾積層フィルム。
【請求項5】
保護フィルムを5.0mm/秒の速度で剥離した加飾積層フィルム(L)の表面粗さRa(C)と、前記保護フィルムの剥離側の表面粗さRa(P)とが、下記式(1)を満たす請求項1又は2記載の太陽電池モジュール用加飾積層フィルム。
50.0 ≦ 〔Ra(C)/Ra(P)〕×100≦ 210.0 (1)
【請求項6】
前記保護フィルムを剥離した状態の加飾積層フィルム(L)の表面自由エネルギーγacと、前記保護フィルムの剥離側の表面自由エネルギーγapとが、下記式(2)を満たす請求項1又は2記載の太陽電池モジュール用加飾積層フィルム。
50.0≦(γac/γap)×100≦110.0 (2)
【請求項7】
前記保護フィルムを剥離した状態の加飾積層フィルム(L)のマルテンス硬さHM(L)が、下記式(3)を満たす請求項1又は2記載の太陽電池モジュール用加飾積層フィルム。
2.0N/mm≦HM(L)≦50.0N/mm (3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用加飾積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池を建築物の壁面等に設置して太陽光発電を行う試みが検討されている。しかしながら、一般的な太陽電池モジュールは、太陽電池モジュールが外部から見えてしまう状態となることから、意匠性に乏しく、ビルの外壁に設置するのであれば、このような点を改善することが求められる。
【0003】
しかし、図1に示したように、太陽電池上に設けるフィルムの光透過性が低くなれば、太陽電池の出力が低下することが知られている。すなわち、意匠性を有する層は、一般に可視光を吸収・反射するものである。このため、加飾層を設けると、光の透過率が低下することによって、太陽電池の発電効率が低下してしまう。このため、意匠性を付与しつつ、太陽電池のエネルギー効率を低下させることがない加飾積層フィルムが要求されている。太陽電池モジュールで必要とする出力は、用途や目的によってさまざまであるが、例えば、博物館や美術館に設置される場合の、芸術性を重視したほぼ出力がゼロに近い太陽電池モジュール等を除き、実質的に、ZEH(ゼロエネルギーハウス)やZEB(ゼロエネルギービルディング)を実現するためには、実用上、加飾しない場合に比べ60%以上の出力を確保する必要がある。
【0004】
特許文献1には、特定の成分を含み、かつ活性エネルギー線の照射によって硬化する、ハードコート層の下地となる下層を形成するための下層形成用塗料、及び、上記下層形成用塗料により得られた下層とハードコート層とからなる積層体を表面に有する表面被覆太陽電池が開示されている。しかしながら、このような積層体は耐候性の向上を目的としたものであって、高い光透過率を示すものではない。さらに、顔料を配合しないものであるため、意匠性付与を考慮したものではなかった。
【0005】
特許文献2には、効果顔料を含み、太陽電池効率の損失が少ない太陽電池モジュールの加飾積層フィルムが開示されている。
また、特許文献3及び4には、光輝性顔料を含み、光透過率が50%以上である加飾層、及び、その加飾層を含む太陽電池モジュールが開示されている。
これらの加飾積層フィルムは、光透過性が高いため太陽電池の出力低下を抑え、かつ、意匠性も付与し得るものであるが、より特徴的な意匠性を付与できる加飾積層フィルムの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-119553号公報
【文献】国際公開2019/1220793号
【文献】特開2021-027364号公報
【文献】特開2021-027266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑み、優れた意匠性と高い光透過性を有し、太陽電池モジュールを保護する耐候性、耐湿熱性等の性能にも優れる太陽電池モジュール用加飾フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、保護フィルム(A)、ハードコート層(B)、加飾層(C)、支持層(G)及び粘着層(F)を有する太陽電池モジュール用加飾積層フィルムであって、
上記太陽電池モジュール用加飾積層フィルムから保護フィルム(A)を剥離した状態の加飾積層フィルム(L)は、波長380nm~810nmの全光線透過率Ttが50%以上、90%以下であり、波長380~1300nmの反射率Rが5%以上、40%以下であり、太陽電池モジュールとの粘着力が1N/25mm以上、50N/25mm以下であり、
上記粘着層の屈折率Faが1.3以上、1.8以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用加飾積層フィルムに関する。
【0009】
粘着層の屈折率Faと、太陽電池モジュールの表面の屈折率Fgとの差|Fa-Fg|が0以上、0.5以下であることが好ましい。
上記太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、太陽電池モジュールに貼合した後に、剥離可能であることが好ましい。
【0010】
上記ハードコート層は、熱硬化型コーティング組成物又は活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成された層であることが好ましい。
【0011】
上記太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、保護フィルムを5.0mm/秒の速度で剥離した加飾積層フィルム(L)の表面粗さRa(C)と、上記保護フィルムの剥離側の表面粗さRa(P)とが、下記式(1)を満たすことが好ましい。
50.0 ≦ 〔Ra(C)/Ra(P)〕×100≦ 210.0 (1)
【0012】
上記太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、上記保護フィルムを剥離した状態の加飾積層フィルム(L)の表面自由エネルギーγacと、上記保護フィルムの剥離側の表面自由エネルギーγapとが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
50.0≦(γac/γap)×100≦110.0 (2)
さらに、上記太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、上記保護フィルムを剥離した状態の加飾積層フィルム(L)のマルテンス硬さHM(L)が、下記式(3)を満たすことが好ましい。
2.0N/mm≦HM(L)≦50.0N/mm (3)
【発明の効果】
【0013】
本発明の太陽電池モジュール用加飾フィルムは、優れた意匠性を有するものでありつつ、高い光透過性を有するものである。このため、太陽電池の発電効率に悪影響を与えることなく、太陽電池の加飾を行うことができる。さらに、粘着層によって基材に粘着させたものであることから、張りかえを行う際に、容易に剥離することができるというものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】全光線透過率と太陽電池の出力との関係を示す図である。
図2】本発明における太陽電池モジュール用加飾フィルムの層構成を示す図である。
図3】本発明における太陽電池モジュール用加飾フィルムの層構成を示す図である。
図4】本発明における太陽電池モジュール用加飾フィルムの層構成を示す図である。
図5】本発明における太陽電池モジュール用加飾フィルムの層構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、保護フィルム(A)、ハードコート層(B)、加飾層(C)、支持層(G)及び粘着層(F)を有する太陽電池モジュール用加飾積層フィルムであって、上記太陽電池モジュール用加飾積層フィルムから保護フィルム(A)を剥離した状態の加飾積層フィルム(L)は、波長380nm~810nmの全光線透過率Ttが50%以上、90%以下であり、波長380~1300nmの反射率Rが5%以上、40%以下であり、上記粘着層の屈折率Faが1.3以上、1.8以下であり、上記太陽電池モジュール用加飾積層フィルムから上記保護フィルム(A)を剥離した状態の加飾積層フィルム(L)は、太陽電池モジュールとの粘着力が1N/25mm以上、50N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、粘着層によって基材上に粘着させることができるという点を一つの特徴とする。従来の太陽電池モジュールの加飾においては、ガラス上に直接塗膜を形成するものであったり、接着剤によって強固に基材上に接着するものが主流であった。
【0017】
このような手法によって加飾を行った場合、経年劣化によって加飾層の機能が低下し、外観が悪化して、加飾層を剥離して新たな加飾層を形成する必要が生じた場合、古くなった加飾層の剥離が容易ではない。本発明においては、このような場合に容易に剥離を行うことができる、という利点を有する。
【0018】
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、上記粘着層の屈折率Faを1.3以上、1.8以下に設定したものである。さらに、上記粘着層の屈折率Fa及び太陽電池モジュールの表面の屈折率Fgの差|Fa-Fg|を0以上、0.5以下に設定することが好ましい。
従来の加飾積層フィルムは、複数層の屈折率差により、光が浅い角度で入光すると全反射が起こり内部へ入る光の量が少なくなるなど、光の有効利用を妨げ、所望の発電効率が得られないおそれがあった。粘着層の屈折率の差を上述した範囲内のものとすることで、このような問題が改善される。すなわち、反射率を低減させると、太陽電池モジュールに到達する太陽光の量が増え、これによって太陽電池の出力を維持できる点で好ましい。
【0019】
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、さらに支持層を有するものである。支持層を有することで積層フィルムの強度が保持され、耐候性、施工作業性等を向上することができる。また、強度が保持されることから、太陽電池モジュールに貼合した後に破断を生じることなく剥離可能であるという利点も有する。すなわち、経時劣化した積層フィルムを剥離し、新しい積層フィルムを貼合することもできる。
【0020】
さらに、本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、保護フィルムを剥離した状態で波長380nm~810nmの全光線透過率Ttが50%以上、90%以下である。光の透過性を確保することで、さらに優れた発電効率と意匠性を有することができる。このような高い光透過性を確保するには、加飾層に光輝性顔料を配合しつつ、その光輝性顔料の加飾層における配向性を高めることが好ましい。
【0021】
光輝性顔料としては、一般に、扁平な形状を有する板状顔料が使用されている。このような光輝性顔料は、フィルム層中において、フィルム面に平行な方向に高度に配向した状態とすることで、光の乱反射が制御され、高い光透過性を維持することができる。
【0022】
更に、この光輝性顔料として、光干渉性の光輝性顔料を使用すると、光の干渉効果によって意匠性を得つつ、光の透過性を損なうことなく、意匠性を得ることができる。
このような加飾層を高い光透過率を有するものとするには、加飾層中に存在する光輝性顔料が塗膜の面方向に平行に高度に配列することが好ましい。このような高度の配向を得るためには、従来の一般的な塗装による被膜形成以外の方法によって行うことが好ましい。
このような加飾層を形成するための具体的な方法については、後述する。
【0023】
さらに、本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、保護フィルムを剥離した状態で波長380~1300nmの反射率Rが5%以上、40%以下である。上記反射率Rとは、規定の波長域において求めた分光反射率から算出され、積層フィルム表面に入射する日射に対する積層フィルムからの反射光束の比率を指す。上記反射率が上述の範囲内であると、積層フィルムに入射した光の反射光が人の目に感知されやすくなる。つまり、積層フィルムに付された色や模様が視認される一方で、太陽電池セルが視認されにくい。これにより、意匠性に優れた太陽電池モジュールが得られると推測される。
上記反射率Rは、15%以上、30%以下であることが好ましい。
【0024】
なお、本発明において、太陽電池モジュール用加飾積層フィルムの全光線透過率Tt及び反射率Rとは、保護フィルムを剥離した状態の加飾積層フィルム(L)の全光線透過率及び反射率を測定した値である。
本発明において、上記全光線透過率は、分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ)により、波長380.0nm~810.0nmの範囲で、積分球を用い全光線透過率を測定した値を意味する。測定にあたって、光源はハロゲンランプを使用した。
本発明において、上記反射率は、作成した積層フィルムに対してU-3310型分光光度計(日立社製)を用い、波長スキャンモードで380~1300nmの区間をスキャンスピード300nm/min、サンプリング間隔0.5nmの条件で、光源から照射された光線と、その光線が積層フィルムに反射する強度の割合を測定することによって求めることができる。
【0025】
以下、本発明の太陽電池加飾用積層フィルムについて詳述する。
(層構成)
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、保護フィルム(A)、ハードコート層(B)、加飾層(C)、支持層(G)及び粘着層(F)を備えるものである。これらの層は、保護フィルム(A)、ハードコート層(B)、加飾層(C)、支持層(G)、粘着層(F)の順で形成されていることが好ましい(図2参照)。当該構成を有するフィルムを基材である太陽電池上に接着することによって、層を形成する。その後、保護フィルム(A)を剥離してもよい。
【0026】
また、本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、必要に応じて密着層、印刷層等のその他の層を備えるものであってもよい。印刷層を備えることによって、印刷による良好な意匠層が形成できる点で好ましい。印刷層を備える場合は、加飾層(C)を印刷層と置き換えることで得ることができる。また印刷層は、支持層(G)と粘着層(F)の間に位置してもよい(図4参照)。
印刷層を粘着層(F)と支持層の間に備える場合、印刷の段差を埋めるために、透明目止め層(H)があってもよい(図5参照)。
以下に、本発明の太陽電池加飾用積層フィルムを構成する各層についてそれぞれ詳述する。
【0027】
(加飾層(C))
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、加飾層(C)を備えるものである。
上記加飾層(C)は、太陽電池モジュールを加飾した際に、意匠性、光透過性、耐候性、耐湿熱性等の性能を要求されるものであり、これらの性能を付与する観点から熱硬化型コーティング組成物で形成された層とすることが好ましい。上記熱硬化型コーティング組成物は、主剤および硬化剤を含み、上記主剤はポリオールと光輝性顔料の粒子とを含むことが好ましく、上記硬化剤はイソシアヌレート化合物を含むことが好ましい。上記光輝性顔料は特に限定されず、例えば、アルミニウム、クロム、金、銀、銅、真鍮、チタン、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等の金属粒子、マイカ、金属酸化物、パール顔料、金属または金属酸化物で被覆されたガラスフレーク、金属酸化物で被覆されたシリカフレーク、グラファイト、ホログラム顔料およびコレステリック液晶ポリマー等を挙げることができる。
また、上記光輝性顔料としては、Iriodin(登録商標)、Pyrisma(登録商標)、Xirallic(登録商標)、Miraval(登録商標)、Colorstream(登録商標)、RonaStar(登録商標)、Biflair(登
録商標)、およびLumina Royal(登録商標)等の市販品を使用することもできる。また、Colorstream(登録商標)、Xirallic(登録商標)、Miraval(登録商標)、およびRonastar(登録商標)等の他の市販品も使用することができる。
上記光輝性顔料としては、これらのうち1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
光輝性顔料は、鱗片状光輝性顔料であることが好ましい。より具体的には、面方向の寸法が1~300μmであり、厚みが0.1~10μmであることが好ましい。このような扁平形状を有するものを高度な配向性を有する状態で塗膜中に存在させることで、意匠性を好適に発揮することができる。
【0029】
上記鱗片状光輝性顔料の面方向の寸法及び厚みは、電顕観察により面方向の寸法を計測し、表面積を計算した。厚みについては、比重、重量、表面積から厚みを算出という方法によって測定した値である。なお、面方向の寸法は、長径を意味するものであり、電子顕微鏡写真の画像中に現れた粒子から無作為に選択した100の粒子について測定した長径の平均値をあらわす。
【0030】
上記光輝性顔料は、干渉アルミナフレーク、干渉マイカフレーク、ガラスフレーク、干渉シリカフレーク、及び/又は、干渉タルクフレークであることが好ましい。これらの光輝性顔料は、鱗片状光輝性顔料であり、かつ、光の干渉性によって意匠性を得ることができる点で好ましい。なかでも、干渉マイカフレークやガラスフレークが好ましい。
【0031】
上記光輝性顔料の配合量は、加飾層の全固形分量に対して0.1~60質量%であることが好ましい。上記配合量とすることで、意匠性と光透過性とを兼ね備えた加飾層(C)を形成することができる点で好ましい。上記配合量は、より好ましくは、1質量%~50質量%、さらに好ましくは5質量%~30質量%である。
【0032】
加飾層の膜厚としては特に限定されないが、10~100μmであることが好ましい。より好ましくは、5~70μm、さらに好ましくは10~50μmである。
【0033】
なお、本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、加飾層における光輝性顔料の配合量及び加飾層の厚みが、光透過率に大きな影響を与える。したがって、これらを調整しつつ、所定の光透過率を得ることが重要となる。
【0034】
上記加飾層(C)は、例えば、主剤及び硬化剤からなる2液型塗料組成物等により得ることができる。上記主剤に含まれる硬化成分としては特に限定されず、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選択される少なくとも1種のポリオールが好ましく、なかでもアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、及び、ポリエーテルポリオールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、上記ポリオールの水酸基価は、50mgKOH/g以上、1000mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0035】
上記硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体のイソシアヌレート化合物等を挙げることができる。
上記イソシアヌレート化合物のイソシアネート基当量と上記ポリオールの水酸基当量との比:NCO/OHは、0.5/1以上、2/1以下であることが好ましい。
【0036】
上記加飾層(C)の樹脂としては、ウレタン樹脂を用いてもよい。
【0037】
上記加飾層(C)が含むウレタン樹脂としては、特に限定されないが、ウレタン樹脂のMwが10,000~200,000であることが好ましく、30,000~150,000であることがより好ましい。Mwが10,000以上であると、意匠層の柔軟性が高まり、Mwが200,000以下であると、加飾(C)層用塗料の製造と基材フィルムへの塗工性が高まる。
【0038】
ウレタン樹脂のTgは、-30~30℃であることが好ましい。ウレタン樹脂のTgが-30℃以上であると、塗工後および乾燥後の塗膜タック性(ブロッキング)が高まり、30℃以下であると、塗膜硬度が低減し、成形性が高まり、製品としての低温での物性も高まる。
【0039】
上記加飾層は、更に、光輝性顔料ではない他の顔料を含有するものであってもよい。他の顔料を含有することで、更に意匠性を良好なものとすることができる。なお、このような光輝性顔料ではない他の顔料を使用する場合も、太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは全光線透過率Ttが50%以上、90%以下であることが好ましい。
【0040】
上記他の顔料は、主剤に添加されてもよい。上記他の顔料としては、例えば、着色顔料および体質顔料が挙げられる。
【0041】
上記着色顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料および金属錯体顔料等の有機系着色顔料:黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラックおよび二酸化チタン等の無機系着色顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0042】
上記体質顔料として、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレーおよびタルクが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。着色顔料および体質顔料の含有量は特に限定されず、顔料の種類、目的等に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
上記加飾層は、更に、その他の成分として、コーティング分野および塗料分野において通常用いることができる添加剤を含有するものであってもよい。具体的には、溶剤、表面調整剤、粘性調整剤、酸化防止剤、消泡剤、触媒助剤、防錆剤、沈降防止剤、分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、主剤に添加されてもよいし、硬化剤に添加されてもよい。添加剤の量は特に限定されず、必要に応じて適宜設定できる。
【0044】
本発明において、加飾層の形成は、上述の塗料組成物を25℃にて50mPa・s以上、5000mPa・s以下の範囲内の粘度に調整し、剪断力を与えて塗布する方法によって形成することが好ましい。
このような方法で加飾層を形成することで、光輝性顔料を通常の塗装方法によって塗装した場合よりも、より高度な配向性を持たせることができる。これによって、加飾層(C)を、光輝性顔料を1~40重量%の範囲で含有するものとしつつ、太陽電池モジュール用加飾積層フィルムの全光線透過率Ttを50%以上に維持することができる点で好ましい。
【0045】
(保護フィルム(A))
保護フィルム(A)を形成するフィルムとしては、特に限定されず、例えば、2軸延伸ポリエステルフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム等の2軸延伸フィルム、軟質塩化ビニルフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、フッ素フィルム等の従来公知のフィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルおよび/またはポリオレフィンにより形成されるフィルムが好ましく、特に省エネ低温加工性の点からは、平面基材へ適用させるため成形性(延伸性)が要求されない場合は、2軸延伸ポリエステルフィルムがより好ましく、3次元形状物へ適用させるために成形性(延伸性)が要求される場合は無延伸ポリエステルフィルムがより好ましい。上記保護フィルム(A)の厚みは、0.01~0.5mmであることが好ましく、0.02~0.3mmであることがより好ましい。
【0046】
本発明の保護フィルム(A)としては、表面に凹凸形状を有するものを使用してもよい。このようなフィルムを使用すると、保護フィルム(A)が有する凹凸形状が、ハードコート層(A)上に転写され、これによって、凹凸感に基づくマット感のある意匠を得ることができる点で好ましい。ここでの凹凸形状は特に限定されるものではなく、視覚的に認識できて、意匠上のマット感を得ることができる程度のものであればよい。
【0047】
上記太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、保護フィルムを5.0mm/秒の速度で剥離した加飾積層フィルム(L)の表面粗さRa(C)と、上記保護フィルムの剥離側の表面粗さRa(P)とが、下記式(1)を満たすことが好ましい。
50.0 ≦ 〔Ra(C)/Ra(P)〕×100≦ 210.0 (1)
上記式(1)を満たすことで、保護フィルム(A)の凹凸形状を適切に転写することができ、所望の塗膜表面を得ることができる。
【0048】
保護フィルムは、表面、例えば、ハードコート層側の表面およびハードコート層側とは反対側の表面の一方または両方に、離型剤が塗布されていてもよい。
【0049】
(ハードコート層(B))
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、ハードコート層(B)を備えるものである。
本発明で使用するハードコート層(B)は、熱硬化型コーティング組成物又は活性エネルギー線硬化型コーティング組成物により形成されるものであることが好ましく、その具体的な組成は、加飾積層フィルムとしての物性を害するものでない限り特に限定されるものではない。
【0050】
上記ハードコート層(B)は、太陽電池モジュールを加飾した際に、最外層を形成するものであることから、耐候性、耐湿熱性等の性能を要求されるものである。このため、これらの性能において優れる熱硬化型コーティング組成物又は活性エネルギー線硬化型コーティング組成物で形成された層とすることが好ましい。
【0051】
上記熱硬化型コーティング組成物及び活性エネルギー線硬化型コーティング組成物としては特に限定されず、従来公知の組成物を用いることができる。また、水性組成物であっても溶剤系組成物であってもよく、一液型または二液型であってもよい。
【0052】
上記熱硬化型コーティング組成物としては、例えば、ポリオールを含む主剤、並びに、イソシアヌレート化合物を含む硬化剤からなる2液型コーティング組成物等を挙げることができる。主剤および硬化剤を混合することにより、ポリオールとイソシアヌレート化合物とが反応して、硬化塗膜が得られる。主剤および/または硬化剤はそれぞれ、混合前に加温および/または真空脱気されてもよい。これにより、両者を混合して得られる2液型コーティング組成物に含まれる水分量が少なくなって、得られる塗膜の外観が向上し易くなる。
【0053】
(主剤)
主剤は、ポリオールを含む。ポリオールは、塗膜形成樹脂である。ポリオールは、例えば加熱によって硬化剤と反応して、硬化塗膜を形成する。以下、2液型コーティング組成物に含まれるポリオールを含む硬化性の樹脂を、塗膜形成樹脂と総称する場合がある。主剤には、硬化触媒を含んでいてもよい。
【0054】
以下、各成分について詳述する。
〈ポリオール〉
ポリオールは、塗膜形成樹脂である。ポリオールは、例えば加熱によって硬化剤と反応して、硬化塗膜を形成する。ポリオールは、1分子あたり水酸基を2またはそれ以上有する。これにより、得られる塗膜の硬度が高くなり易い。ポリオールは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0055】
主剤は、1分子あたり3以上の水酸基を有するポリオール(A1)と、1分子あたり2つの水酸基を有するポリオール(A2)とを含むことが好ましい。ポリオール(A1)とポリオール(A2)との割合は特に限定されない。ポリオール(A2)の割合は、ポリオール(A1)およびポリオール(A2)の合計の50質量%以下であってよく、40質量%以下であってよく、30質量%以下であってよい。
【0056】
ポリオールの水酸基価は、50mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリオールの水酸基価が上記範囲内であることにより、主剤および硬化剤を混合した際、ポリオールとイソシアネート化合物との反応速度が大きくなる。
【0057】
2種以上のポリオールが含まれる場合、各ポリオールの水酸基価および質量割合に基づいて算出される、みかけの水酸基価が100mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下であればよい。すなわち、主剤は、水酸基価が100mgKOH/g未満のポリオールおよび/または水酸基価が1000mgKOH/gを超えるポリオールを含んでよい。
【0058】
ポリオールの水酸基価(みかけの水酸基価を含む。以下、同じ。)は、60mgKOH/g以上がより好ましく、100mgKOH/g以上がさらに好ましい。ポリオールの水酸基価は、800mgKOH/g以下がより好ましく、700mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0059】
ポリオールの種類は特に限定されない。ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオールおよび多価アルコールが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0060】
ポリエステルポリオールは、分岐構造を有することが好ましい。分岐構造を有するポリエステルポリオールは、例えば、3価またはそれ以上の多価アルコール化合物に、2またはそれ以上の多価カルボン酸を反応させ、必要に応じて上記反応を繰り返すことにより調製される。
【0061】
ポリエステルポリオールの市販品としては、例えば、デスモフェンVPLS2249/1(住化コベストロウレタン株式会社製)、デスモフェン800(住化コベストロウレタン株式会社製)、デスモフェンXP2488(住化コベストロウレタン株式会社製)、クラレポリオールP-510(株式会社クラレ製)およびクラレポリオールF-510(株式会社クラレ製)が挙げられる。
【0062】
ポリアクリルポリオールは、1分子中に1個以上の水酸基を有する重合性アクリルモノマーと、これに共重合可能な他のモノマーを共重合することによって得られる。1分子中に1個以上の水酸基を有する重合性アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシペンチル、グリセリンの(メタ)アクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンの(メタ)アクリル酸モノエステル、および(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル等、あるいは上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類とε-カプロラクロン、γ-バレロラクトン等のラクトン類の開環重合付加物等が挙げられる。
【0063】
上記の1分子中に1個以上の水酸基を有する重合性アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、または(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、またはα-メチルスチレン、β-クロロスチレン等のスチレン誘導体類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、または(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類が挙げられる。また、アクリル酸やメタクリル酸とモノエポキシ化合物或いはエポキシ樹脂との付加反応によって得られた重合性付加物等も用いることができる。
上記アクリルポリオールは、水酸基価が2以上であることが好ましい。
【0064】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、多価ポリオールに炭酸ジメチルを反応させることによって、調製することができる。
【0065】
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、例えば、デュラノールT5650E(旭化成株式会社製)、C-590(株式会社クラレ製)およびETERNACOLL PH-50(宇部興産株式会社製)が挙げられる。
【0066】
多価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールおよびペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0067】
ポリオールの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。ポリオールのMwは、水酸基価等に応じて、適宜設定すればよい。
【0068】
主剤は、ポリオール以外の他の塗膜形成樹脂を含んでもよい。塗膜形成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびカルボジイミド樹脂が挙げられる。他の塗膜形成樹脂は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0069】
〈硬化触媒〉
上記主剤は、硬化触媒を含んでいてもよい。上記硬化触媒は、硬化反応を促進する成分である。上記硬化触媒としては特に限定されず、促進効果の観点から、例えば、Bi、Zn、Al、ZrおよびSnよりなる群から選択される金属元素を含む有機金属触媒の少なくとも1種が好ましい。なかでも、Bi、Zn、AlおよびZrよりなる群から選択される金属元素を含む有機金属触媒の少なくとも1種が好ましい。
【0070】
Biを含む有機金属触媒として、例えば、ビスマスカルボン酸およびその塩が挙げられる。Znを含む有機金属触媒として、例えば、亜鉛錯体触媒が挙げられる。Alを含む有機金属触媒として、例えば、アルミニウム錯体触媒が挙げられる。Zrを含む有機金属触媒として、例えば、ジルコニウムキレート触媒が挙げられる。Snを含む有機金属触媒として、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテートなどのジアルキルスズジカルボキシレート;ジブチルスズオキサイドなどのスズオキサイド化合物;2-エチルヘキサン酸スズなどのスズカルボン酸塩が挙げられる。
【0071】
(硬化剤)
上記熱硬化型コーティング組成物は、硬化剤を含む。硬化剤は、ポリオール等との架橋反応により、得られる塗膜の耐食性および耐久性を向上する。
【0072】
上記硬化剤は、イソシアヌレート化合物を含む。イソシアヌレート化合物は、イソシアネート化合物の三量体であって、環構造を有する。
【0073】
イソシアネート化合物は特に限定されず、2液反応型組成物の硬化剤として公知のものが用いられる。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0074】
なかでも、粘度が比較的低い点で、脂肪族ジイソシアネートが好ましく、HDIがより好ましい。これらのイソシアネートの三量体は、ポリオールとの反応性が特に高い。
【0075】
イソシアネート化合物のイソシアネート基当量とポリオールの水酸基当量との比:NCO当量/OH当量は、0.5/1以上2/1以下が好ましく、0.9/1以上1.2/1以下がより好ましい。
【0076】
硬化剤は、イソシアヌレート化合物以外の他の硬化剤を含んでいてよい。他の硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、上記イソシアネート化合物の単量体またはダイマー、上記イソシアネート化合物のビウレット体、上記イソシアネート化合物のブロック化物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0077】
硬化剤の含有量は、例えば、塗料組成物の樹脂固形分の35質量%以上90質量%以下である。硬化剤の上記含有量は、45質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。硬化剤の上記含有量は、85質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
【0078】
(溶媒)
溶媒の含有量は、30質量%以下である。本実施形態によれば、このように溶媒が少量であって粘度の高い組成物中においても、光輝性粒子の凝集は抑制される。そのため、光輝感を有する塗膜を、インモールドコーティングによって形成することができる、溶媒の含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、0%であってよい。
【0079】
溶媒は特に限定されない。溶媒は、通常、有機溶媒である。有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール、エトキシプロパノール、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコール-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メトキシブタノール、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール、プロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;スワゾール、シェルゾール、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素系溶剤;キシレン、トルエン、ソルベッソ-100(S-100)、ソルベッソ-150(S-150)などの芳香族系溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0080】
(その他)
2液型コーティング組成物は、必要に応じて他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、コーティング分野および塗料分野において通常用いることができる添加剤が挙げられる。具体的には、光安定化剤、紫外線吸収剤、各種顔料、表面調整剤、粘性調整剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤、触媒助剤、防錆剤、沈降防止剤、分散剤等が挙げられる。 これらの添加剤は、主剤に添加されてもよいし、硬化剤に添加されてもよい。添加剤の量は特に限定されず、必要に応じて適宜設定できる。
【0081】
活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、放射線により架橋し、硬化させることができるモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーである。本発明における活性エネルギー線硬化性樹脂としては、硬化後の架橋密度を高くすることができ、表面硬度の向上効果を高くすることができ、かつ透明性の向上効果を高くすることができるという観点から、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマー等の多官能(メタ)アクリレート化合物を含むことができる。なお、ここで「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを表わす。なお本明細書において、多官能(メタ)アクリレート化合物は、ウレタン構造を有さないものをいい、下記するウレタンアクリレートを含まないものとする。活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記多官能(メタ)アクリレート化合物に加えて、単官能(メタ)アクリレート化合物を含んでもよい。
【0082】
活性エネルギー線硬化型コーティング組成物に含まれ得る、活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、ウレタンアクリレートを含んでもよい。ある態様において、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、多官能(メタ)アクリレート化合物およびウレタンアクリレートを含む。
ウレタンアクリレートとして、ウレタンアクリレートモノマー、オリゴマー、ポリマーまたはこれらを少なくとも2種以上組合せたものを用いることができる。一例として、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、脂肪族ウレタンメタクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンメタクリレート等を挙げることができる。その中でも、分子量が1000~10000程度の多官能ウレタンアクリレートオリゴマーを好ましく用いることができる。
【0083】
本発明における活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、例えば、2またはそれ以上のアクリレート基およびエステル骨格を有する多官能ウレタンアクリレートを含んでもよい。この多官能ウレタンアクリレートを含むことによって、得られるコーティング層が透明高分子基材へ十分な密着性を発揮できる。また、形成するハードコート層の屈折率が上記所定の範囲であることにより、干渉縞を防ぐことができる。アクリレート基の数は、2またはそれ以上でありが、好ましくは2~4である。単官能のウレタンアクリレートであると、分子量の大きさより、反応性が低下し、密着性及び硬度が低下するおそれがある。官能基数が多すぎると、硬化収縮による密着性低下の懸念がある。
【0084】
多官能(メタ)アクリレート(化合物)は、例えば、ポリカーボネートジオール(a)(以下、成分(a)という場合がある。)と、分子中に2個の水酸基と2個のエチレン性不飽和基とを含有する(メタ)アクリレート化合物(b)(以下、成分(b)ということがある。)と、ポリイソシアネート(c)(以下、成分(c)ということがある。)を反応させることにより得られる。
【0085】
上記ポリカーボネートジオール(a)は、HO-(R-O-C(=O)-O)-R’OH(式中、RおよびR’は同一または異なる炭素数2~10の直鎖または分岐鎖アルキレン基であり、炭素数はRおよびR’の合計の数である。)で表される炭素数2~10の直鎖および分岐鎖を持つジオールが挙げられる。上記式中のRまたはR’は、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、シクロヘキシレン基、ネオペンチレン基、ノニレン基、2-メチル-1,8-オクチレン基などが挙げられ、これらのうち2種以上を併用したものであってもよい。これらのなかでは、1,5-ペンタンジオールおよび/または1,6-ヘキサンジオールとから合成されたポリカーボネートジオールが好ましい。また、成分(a)としては、1種の化合物を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。などが挙げられる。これらの多官能アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
分子中に2個の水酸基と2個のエチレン性不飽和基とを含有する(メタ)アクリレート化合物(b)とは、具体的には、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、エチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物などが挙げられる。また、そのほかにも、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物などが挙げられる。これらのなかでは、プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物が好ましい。
【0087】
ポリイソシアネート(c)としては特に制限はないが、例えば、脂肪族系ジイソシアネート化合物、脂環族系ジイソシアネート化合物、芳香族系ジイソシアネート化合物などのジイソシアネート化合物が好ましく使用できる。具体的には、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4(又は2,6)-ジイソシアネート、1,3-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ハロゲン化フェニルジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、オクタデシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート重合体、ジフェニルメタンジイソシアネートの重合体、ヘキサメチレンジイソシアネートの重合体、3-フェニル-2-エチレンジイソシアネート、クメン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-エトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、5,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、ベンジジンジイゾシアネート、9,10-アンスラセンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートベンジル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン、2,6-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、1,4-アンスラセンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、2,4,6-トリレントリイソシアネート、2,4,4’-トリイソシアネートジフェニルエーテル、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)などを挙げることができる。
【0088】
多官能ウレタンアクリレートの製造例としては、上述した(a)~(c)成分を有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)に投入し、必要に応じて昇温下に反応させることにより製造できる。反応の終了は、赤外線吸収スペクトルによりイソシアネート基の存在が確認できなくなったことにより確認する。
【0089】
多官能ウレタンアクリレートは、重量平均分子量20,000~60,000を有するものが好ましく、また重量平均分子量30,000~50,000を有するものがさらに好ましい。多官能ウレタンアクリレートの重量平均分子量は、分子量が高くなり過ぎると、粘度が高くなり、平滑性が損なわれ干渉縞が悪化し、分子量が低すぎると、粘度が下がり、塗面の平滑性が保てず干渉縞が悪化する。
【0090】
また、多官能ウレタンアクリレートは、密着性の観点より、水酸基価0~20mgKOH/gを有するのが好ましく、また水酸基価0~5mgKOH/gを有するのがさらに好ましい。水酸基価を低く制御することで、湿熱試験後の密着性を良好に保つ効果が得られる。なお、多官能ウレタンアクリレートは、市販のものを使用してもよい。
【0091】
本発明においては、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物中に含まれる活性エネルギー線硬化樹脂が、多官能(メタ)アクリレート化合物および多官能ウレタンアクリレートを含むのが好ましい。この場合において、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物中に含まれる樹脂成分100質量部に対して、多官能ウレタンアクリレートは、30~90質量部、好ましくは50~85質量部含まれるのがより好ましい。多官能ウレタンアクリレートの量が30質量部より少ない場合は、密着力が低下し、多官能ウレタンアクリレートの量が90部を超える場合は、コーティング層の硬度を損なう恐れがある。
【0092】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートの合成方法としては、特に制限されないが、例えば、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートとのウレタン化反応によって得ることができる。前記反応は、1分子内に3個以上のアクリル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートを得るのに適しているという点で好ましい。
【0093】
さらに、多官能ウレタン(メタ)アクリレートの分子量、分子の柔軟性を調整する目的で、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる前に、公知汎用のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて末端イソシアネート基を有する鎖延長されたウレタンプレポリマーを製造し、この鎖延長されたウレタンプレポリマーに水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られた生成物を成分(A)として利用することもできる。前記ポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物、ポリエステルポリオール及びオキシエチレン/オキシプロピレンの共重合体等が挙げられる。
【0094】
活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートを含んでもよい。水酸基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピルアクリレート又はメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート又はメタクリレート、N-メチロールアクリルアミド又はメタクリルアミド、N-ヒドロキシアクリルアミド又はメタクリルアミド等が挙げられる。これらのラクトン付加物[例えば、ダイセル社製のPCL-FA又はPCL-FMシリーズ等]も使用することができる。
【0095】
水酸基含有(メタ)アクリレートとして市販されている製品としては、DPHA(ダイセル・サイテック社製)、PETRA(ダイセル・サイテック社製:ペンタエリスリトールトリアクリレート)、PETIA(ダイセル・サイテック社製)、アロニックスM-403(東亞合成社製:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)、アロニックスM-402(東亞合成社製:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)、アロニックスM-400(東亞合成社製:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)、SR-399(サートマー社製:ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート)、KAYARAD DPHA(日本化薬社製)、KAYARAD DPHA-2C(日本化薬社製)等が挙げられる。以上の製品は製品中に一部水酸基を含有した化合物を有している。
【0096】
また、1分子中に3個以上の(メタ)アクリル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートの市販品として、具体的な製品名を挙げると、例えば、2官能ウレタン(メタ)アクリレート(日本化薬社製の「UX-2201」あるいは「UX-8101」、共栄社化学社製の「UF-8001」、「UF-8003」、「UX-6101」、「UX-8101」、ダイセル・サイテック社製の「Ebecryl244」、「Ebecryl284」、「Ebecryl2002」、「Ebecryl4835」、「Ebecryl4883」、「Ebecryl8807」、「Ebecryl6700」)、3官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック社製の「Ebecryl254」、「Ebecryl264」、「Ebecryl265」)、4官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック社製の「Ebecryl8210」)、6官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック社製の「Ebecryl1290k」、「Ebecryl5129」、「Ebecryl220」、「KRM8200」、「Ebecryl1290N」)、9官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック社製の「KRM7804」)、10官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック社製の「KRM8452」、「KRM8509」)、15官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック社製の「KRM8655」)等を用いることができる。
【0097】
例えば、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物である、例えばアロニックスM-400、M-450、M-305、M-309、M-310、M-315、M-320、TO-1200、TO-1231、TO-595、TO-756(以上、東亞合成社製)、KAYARD D-310、D-330、DPHA、DPHA-2C(以上、日本化薬社製)、ニカラックMX-302(三和ケミカル社製)等の市販品を用いてもよい。
【0098】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能ウレタンアクリレートなどを含む放射線硬化性樹脂を用いることによって、耐光性に優れ、長期の使用による光劣化などを伴わない、成形加飾用積層フィルムを得ることができる利点がある。
【0099】
(光重合開始剤)
本発明にかかる活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、光重合開始剤を含むのが好ましい。光重合開始剤が存在することによって、紫外線などの活性エネルギー線照射により樹脂成分が良好に重合することとなる。光重合開始剤の例として、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤などが挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤として、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系光重合開始剤として、例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0100】
上記光重合開始剤のうち、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンなどがより好ましく用いられる。
【0101】
光重合開始剤の好ましい量は、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物の樹脂成分100質量部に対して、0.01~20質量部であり、より好ましくは1~10質量部である。また、光重合開始剤を単独で用いても、2種以上の光重合開始剤を組合せて用いてもよい。
【0102】
(その他の成分)
上記活性エネルギー線硬化型コーティング組成物には、通常、塗料材料として添加される化合物が、その他の成分として含まれていてもよい。その他の成分としては、紫外線吸収剤(UVA)、光安定剤(HALS)、バインダー用樹脂や架橋剤、顔料、表面調整剤、消泡剤、導電性充填剤、溶剤等を挙げることができる。
【0103】
さらに、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物に含まれる各成分の混合や粘度調整のために溶剤を用いてもよい。該溶剤としては、例えば、エステル系、エーテル系、アルコール系、アミド系、ケトン系、脂肪族炭化水素系、脂環族炭化水素系、芳香族炭化水素系等、塗料に用いられる従来公知の有機溶媒を、1種又は2種以上を組み合わせて用いればよい。なお、上記溶剤を用いる場合、積層フィルムに揮発性物質が残存すると、基材への加飾に際して、揮発性物質が揮散して、ピンホールや膨れが生じることがある。そのため、積層フィルムに含まれる揮発性物質を十分に低減することが好ましい。
【0104】
更に、上記活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、更に、平均1次粒子径が100nm以下の無機・有機フィラーを0.5~60重量部含有することが好ましい。これによって、耐ブロッキング性、高い耐擦傷性,表面硬度を改善することができる。上記配合量の下限は、1重量%であることがより好ましく、上限は50重量%であることがより好ましい。
【0105】
上記無機フィラーとしては、シリカ、微粉末ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、セピオライト(マグネシウム珪酸塩)、タルク(珪酸マグネシウム)、マイカ(珪酸アルミ)、ゾノトライト(珪酸カルシウム)、硼酸アルミニウム、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト(珪酸カルシウム)、チタン酸カリウム、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、イットリア、セリア、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、あるいはこれらの共融混合物、または成型、焼成などを経て得られる非金属無機材料いわゆるセラミックスフィラーが挙げられる。その中で価格と効果の面からシリカ、アルミナ、ジルコニア、あるいはこれらの共融混合物が好ましい。
【0106】
上記有機フィラーとしては、アクリル、スチレン、シリコーン、ポリウレタン、アクリルウレタン、ベンゾグアナミン、ポリエチレンの各樹脂のビーズが挙げられる。
また、市販のものとして、オルガノシリカゾルMIBK-ST, MEK-ST-UP、MEK-ST-L,MEK-AC-2140Z (日産化学工業製)、SIRMIBK15ET%-H24、 SIRMIBK15ET%-H83、ALMIBK30WT%-H06(CIKナノテック)等を使用することができる。
【0107】
上記活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を0.5~20重量%(塗料中の固形分比)含有するものであってもよい。ポリイソシアネート化合物を配合することによって、成形性(延伸性)と耐擦傷性を付与できる点で好ましい。上記配合量の下限は、2重量%であることがより好ましく、上限は18重量%であることがより好ましい。
【0108】
ハードコート層(B)の膜厚としては特に限定されないが、表面硬度や耐擦り傷性などの性能を維持するためには5~100μmであることが好ましい。より好ましくは、7~70μm、さらに好ましくは10~50μmである。
塗料粘度は、塗膜を形成する工法にもよるが、50mPa・s~5000mPa・sが好ましく、100mPa・s~3000mPa・sがより好ましい。粘度がこれより低いと膜厚を確保することが困難となり、また作業性が劣ることとなる。粘度がこれより高いと、空気が残存することとなるため、成形時に膨れなどの不具合が発生する。
【0109】
(印刷層(D))
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、印刷によって形成された印刷層を有するものであってもよい。このような層を設けることによって、印刷層による特異的な外観が得られる点で好ましい。印刷の方法は特に限定されず、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷又はフレキソ印刷等の公知の方法によって形成することができる。特に、インクジェット印刷を使用することで、安価に種々の印刷層を形成することができる点で好ましい。また、印刷に際しては、活性エネルギー線硬化型のインクを使用した印刷を行うものであってもよい。
【0110】
上記印刷層に含まれる硬化成分としては特に限定されず、例えば、上記加飾層(C)で挙げたポリオール類やウレタン樹脂を使用することができる。
【0111】
上記印刷層は、インキの顔料として光輝性顔料を含むことが好ましい。上記光輝性顔料としては、例えば、加飾層(C)で挙げたものを使用することができる。上記光輝性顔料を含むことで、より特異的な外観を得ることができるため好ましい。上記光輝性顔料の配合量は、印刷層の全固形分量に対して0.1~60質量%であることが好ましい。上記配合量とすることで、意匠性と光透過性とを兼ね備えた印刷層を形成することができる点で好ましい。上記配合量は、より好ましくは1質量%~50質量%、さらに好ましくは5質量%~30質量%である。
【0112】
上記印刷層は、更に、光輝性顔料ではない他の顔料を含有するものであってもよい。他の顔料を含有することで、更に意匠性を良好なものとすることができる。他の顔料としては、例えば、加飾層(C)で挙げたものを使用することができる。なお、このような光輝性顔料ではない他の顔料を使用する場合も、太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは全光線透過率Ttが50%以上、90%以下であることが好ましい。
【0113】
(透明目止め層(H))
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、特に印刷層を支持層と粘着層の間に設ける場合、印刷層に隣接する形で透明目止め層を形成したものであることが好ましい。
すなわち、印刷による凹凸を埋めることで平滑にし、隣接する粘着層の密着と平滑性を確保するための層である。印刷層の凹凸の上に粘着層を設ける際、印刷層の凹凸形状が粘着層の平滑性を損ねてしまい、被塗物に接着させた際の接触面積の低下を引き起こし、粘着不良が生じる場合がある。上記透明目止め層に含まれる主剤としては特に限定されず、例えば、上記加飾層(C)で挙げたポリオール類を使用することができる。
【0114】
(粘着層(F))
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、粘着層を有するものである。上記粘着層は、基材を積層フィルムにて加飾する際に、積層フィルムを基材表面に接着させるために用いられる。通常の加飾積層フィルムに備えられた接着層は、基材と積層フィルムとの永久接着を目的としたものである。一方、本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは剥離可能な積層フィルムであるため、上記粘着層は適度な粘着力を有することが好ましい。
【0115】
上記粘着層の適度な粘着力は、太陽電池モジュール用加飾積層フィルムから保護フィルム(A)を剥離した状態の加飾積層フィルム(L)を、太陽電池モジュールから剥離した際の粘着力が1N/25mm以上、50N/25mm以下の範囲と表すことができる。
粘着力が50N/25mmを超えると、一般的な接着層と同等の粘着力を有するため、被着体と完全に密着し、再剥離が困難となる。一方、粘着力が1N/25mm未満であると、粘着力が不足し浮きが発生しやすくなる。粘着力がこのような範囲内であることにより、施工に不具合なく、容易に貼り付け作業性を行うことができる
上記粘着力は、AGC(株)製カーボグラスポリッシュ(クリア(t=2.00mm)を用いて、実施例に記載した条件で測定した値である。
【0116】
上記粘着層の乾燥膜厚は、1~50μmであることが好ましい。適度な粘着性を得るためには、膜厚が厚すぎても薄すぎても好ましくない。上記下限は、3μmであることがより好ましく、5μmであることが更に好ましい。上記上限は、40μmであることがより好ましく、30μmであることが更に好ましい。
【0117】
一実施形態では、粘着層は、樹脂基材とは反対側の面に剥離フィルムを有し、剥離フィルムの粘着層側の面の表面粗さが、20~100nmである。
【0118】
粘着層に含まれる粘着剤としては、従来公知の粘着剤であれば特に限定されないが、例えば、バイロンUR-3200(東洋紡社製)、UR-1361ET(東亜合成製)、SKダイン1811L(綜研化学製)等を挙げることができる。
上記粘着剤は、上記粘着剤を塗布・乾燥することにより形成したものであっても、粘着剤シートをラミネートして形成したものであってもよい。粘着層には、公知の材料が種々使用可能であるが、樹脂としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が好ましく、イソシアネートで架橋させるのが好ましい。
【0119】
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムにおいて、上記粘着層は屈折率Faが1.3以上、1.8以下であり、1.4以上、1.6以下が好ましい。さらに、被塗物である太陽電池モジュールの表面の屈折率Fgとの差|Fa-Fg|が0以上、0.5以下であることが好ましく、0以上、0.1以下がより好ましい。
【0120】
上記粘着層の屈折率Faは、粘着層のみからなるフィルムを作製し、測定した値である。また、太陽電池モジュールの表面の屈折率Fgは、使用基材の材質から決定した値であり、d線波長、室温(23℃)条件下で測定した値である。
上記Faは、粘着層の厚み、粘着層の組成等を適宜変更することで、上記範囲内に調節することができる。
なお、本発明において、屈折率はJIS K0062に準拠した方法により、アッベ屈折計によって測定したものである。
【0121】
上記粘着層は、屈折率を上述の範囲に調整するために、低屈折率粒子または高屈折率粒子を含んでもよい。
(低屈折率粒子)
低屈折率粒子としては、例えば、中空状シリカ微粒子が挙げられる。中空状シリカ微粒子としては、例えば、スルーリア4320(日揮触媒化成株式会社製)が挙げられる。低屈折質粒子として、中空状アクリル微粒子を用いてもよい。
中空状シリカ粒子の含有量は、粘着層の固形分100質量部に対して、5質量部以上90質量部が好ましい。より好ましくは10質量部~70質量部、さらに好ましくは15~50質量部である。
【0122】
(高屈折率粒子)
高屈折率粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム粒子が挙げられる。酸化ジルコニウム粒子としては、例えば、NANON ZR-010(株式会社ソーラー製)が挙げられる。高屈折率粒子としては、二酸化チタン粒子を用いてもよい。
高屈折率粒子の含有量は、粘着層の固形分100質量部に対して、例えば、5質量部以上90質量部以下である。より好ましくは10質量部~70質量部、さらに好ましくは15~50質量部である。
【0123】
(支持層(G))
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、支持層(G)を有するものである。上述のように、支持層(G)を備えたものであるため、積層フィルムの強度が保持され、太陽電池モジュールに貼合した後に破断を生じることなく剥離可能であるという利点を有する。また、加飾積層フィルムを貼り付けする際の施工性も向上する。例えば、柔軟なフィルムを伸ばしながら、力を加えながら手作業で貼り付けることも可能である。
【0124】
支持層の厚みは、適宜調整すればよく、例えば、25~200μmが好ましい。
【0125】
上記支持層(G)は、上述の他の成分を含有するものであってもよい。例えば、紫外線吸収剤(UVA)を含む場合、耐候性を向上することができるため好ましい。紫外線吸収剤としては、分子量400以上のベンゾトリアゾール系又は分子量400以上のトリアジン系のものが好ましく、前者の具体例としては、BASFジャパン(株)のチヌビン234、(株)ADEKAのアデカスタブLA-31RG、後者の具体例としては、BASFジャパン(株)のチヌビン1577が挙げられる。
【0126】
上記支持層(G)としては熱可塑性ポリウレタン(TPU)、2軸延伸ポリエステルフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム等の2軸延伸フィルム、軟質塩化ビニルフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、フッ素フィルム等の従来公知のフィルムを使用することができる。なかでも、高い追従性、柔軟性、延伸性等を有するため、平面以外の曲面にも適用可能な熱可塑性ポリウレタン(TPU)及び軟質塩化ビニルフィルムが好ましい。
【0127】
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、上記保護フィルムを剥離した状態の加飾積層フィルム(L)の表面自由エネルギーγacと、上記保護フィルムの剥離側の表面自由エネルギーγapとが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
50.0≦(γac/γap)×100≦110.0 (2)
上記式(2)の下限は、70.0であることがより好ましく、90.0がさらに好ましい。また、上限は105.0であることがより好ましく、100.0がさらに好ましい。
【0128】
上記表面自由エネルギーは、水とヨウ化メチレンの塗膜表面での接触角を求め、Owens and Wendtの式から算出した値である。
【0129】
さらに、本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、上記保護フィルムを剥離後の加飾積層フィルム(L)のマルテンス硬さHM(L)が下記式(3)を満たすことが好ましい。
2.0N/mm≦HM(L)≦50.0N/mm (3)
上記マルテンス硬さHM(L)は、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬度試験機(型番HM2000)を用いて測定され得る。この微小硬度試験機は、押し込み深さと荷重のチャートから計算されたマルテンス硬度のデータを提供する。
上記式(3)の下限は、5.0N/mm2であることがより好ましく、10.0N/mm2がさらに好ましい。
また、上限30.0N/mm2であることがより好ましく、20.0N/mm2がさらに好ましい。
【0130】
太陽電池モジュール用加飾積層フィルムの、保護フィルムを5.0mm/秒の速度で剥離した際、加飾積層フィルム(L)の表面粗さRaを形成し、保持する必要な、評価尺度となる。式1、2の範囲外は、適切な積層フィルムの表面粗さが形成できず、意匠性、光透過性が低下する。また式3の範囲外では、耐熱性試験などの信頼性において試験後の表面光沢が低下する。
【0131】
(加飾積層フィルムの製造方法)
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムを構成する保護フィルム(A)、支持層(G)以外の各層は、各層を構成する成分を溶剤に溶解した塗料組成物を調製し、これを支持層(G)上に塗布・乾燥し、このようにして形成された積層体上に保護フィルム(A)を積層させることによって積層構造を得ることができる。その後、熱硬化又はエネルギー線硬化を行うことによって、本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムとすることができる。
【0132】
上記太陽電池モジュール用加飾積層フィルムにおいては、加飾層(C)が高い光透過率を有することが重要である。このような加飾層(C)を形成するためには、剪断力を与えて上記着色塗料を塗布することによって加飾層(C)が形成されることが好ましい。「剪断力を与えて塗装する」とは、間隙を通るフィルムとともに塗料をある速度でその間隙を通すことで、塗料にせん断がかかり、塗料に含まれる鱗片状光輝性顔料が再配置され配向がよくなることを言う。
【0133】
上記各層を形成するための塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、アプリケーターや、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマコーター等を用いて塗布すればよい。上記塗布方法にて、塗料溶液を塗布した後、該塗料溶液中の溶剤を除去するために、加温乾燥を行って、形成することができる。
【0134】
上記各層を硬化させるための加熱及び/又は活性エネルギー線照射は、層を形成した後、各層ごとに逐次行うものであってもよいし、積層構造をすべて形成した後で加熱及び/又はエネルギー線照射を行っても、いずれであってもよい。
【0135】
また、上述したように、粘着層(F)に関しては、塗布・乾燥という方法ではなく、ラミネート法によって接着するものであってもよい。すなわち、粘着層(F)によって形成されたフィルムを調製し、これをフィルムにラミネートによって接着させる方法で形成してもよい。
【0136】
(加飾積層フィルムの使用方法)
本発明の太陽電池モジュール用加飾フィルムは、太陽電池モジュールに貼り付けて使用することができる。この場合、保護フィルム(A)をはがして使用するものである。
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、太陽電池モジュールの受光面に貼り付けるものであっても、背面に貼り付けるものであってもよい。背面に貼り付ける場合は、加飾層(C)をセルと同色にするのが、意匠を良くするという点で好ましい。
【0137】
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムを適用することができる太陽電池セルとしては特に限定されず、例えば、光電変換層に多結晶シリコンセル、単結晶シリコンセル、アモルファスシリコンセル、微結晶シリコンセル、CIGSなどの化合物太陽電池セル、有機薄膜太陽電池セル、色素増感型太陽電池セルなどの太陽電池セルを使用するものとすることができる。
【0138】
本発明の太陽電池モジュール用加飾フィルムは、ガラス基材やポリカーボネート基材上に貼り付けることができる。ガラス基材は、平板状の形状を有するものである。この上に本発明の太陽電池モジュール用加飾フィルムを貼り付ける場合は、手作業や熱ラミネート等によって行うことができる。また、加飾積層フィルムの製造の際にエネルギー線硬化を行うものであってもよいし、貼り付けた後で活性エネルギー線硬化を行うものであってもよい。
【0139】
ポリカーボネート基材は、平板、湾曲状、立体形状物等の形状のものである。これらのうち、平板状のものの上に貼り付ける場合は、上記ガラス基材と同様の手法で行うことができる。
【0140】
湾曲状であったり、立体形状物であったりするポリカーボネート基材上に本発明の太陽電池モジュール用加飾フィルムを貼り付ける場合、太陽電池モジュール用加飾フィルムを変形させながら貼り付ける必要が生じる。このため、ある程度の延伸性がある太陽電池モジュール用加飾フィルムとすることが好ましい。
【0141】
具体的には、例えば、平板状の基材には容易に適用できるポリエステル二軸延伸フィルムやポリプロピレン二軸延伸フィルム等は、変形させながら貼り付けることが必要な基材においては支持層(G)としては使用しないことが好ましく、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を使用することが好ましい。
【0142】
上記太陽電池モジュール用加飾フィルムを曲面に貼り付ける方法としては、真空成型等の機械を使用する方法も挙げられるが、手作業による方法であってもよい。例えば、加飾フィルムの一部分を基材に貼り付けた後、片手で加飾フィルムを引き伸ばしながら段差や三次元曲面に沿わせ、反対の手に持ったスキージによって基材とフィルムを密着させる等の方法が挙げられる
【0143】
また、変形させながら貼り付けることが必要な三次元形状の基材等に対して、活性エネルギー線による硬化は、加飾積層フィルム作成時ではなく、基材に貼付した後で行うことが好ましい。例えば、保護フィルム(A)上に上述の各層を塗布・乾燥した後、粘着層(F)を三次元形状を有する基材に圧着させて加飾してから、活性エネルギー線照射を行う方法が好ましい。このような方法により、未硬化の状態の加飾積層フィルムを基材の形状に変形させた後で、エネルギー線照射によって樹脂を完全に硬化させることができ、容易に基材の形状に変形させることができる。
【実施例
【0144】
以下、本発明を実施例により説明する。実施例中、配合割合において%とあるのは特に言及が無い限り重量%を意味する。本発明は以下に示した実施例により限定されるものではない。
【0145】
各層の組成は、表1~3に以下の通りである。
【0146】
【表1】
主剤:東レ・ファインケミカル社製の商品名「コータックスA-200」、ポリアクリルポリオール樹脂
硬化剤:日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製の商品名「H2550」、イソシアネート化合物
顔料:MERCK社製の商品名「Xirallic(登録商標) T60-23 SW Galaxy Blue」
顔料:東洋アルミ社製の商品名「アルペースト93-0467」
顔料:シャニンブルーG314 山陽色素(株)製
【0147】
【表2】
三菱レーヨン社製の商品名「LR2731」、アクリルポリオール樹脂
旭化成社製の商品名「Duranol T5650E」、ポリカーボネートジオール
KRM-8452:ダイセル オルネクス社製、多官能ウレタンアクリレートオリゴマー Mw3,884、アクリル当量120g/eq
KRM-9322:ダイセル オルネクス社製、ポリウレタンアクリレート
硬化剤:日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製の商品名「H2550」、イソシアネート化合物
Omnirad 127:IGM RESINS社製、α-ヒドロキシアセトフェノン
UVA1:ベンゾトリアゾール系化合物
UVA2:トリアジン系化合物
HALS:ヒンダードアミン系化合物
【0148】
【表3】
綜研化学社製の商品名「SKダイン1811L」
信越化学工業株式会社製の商品名「KR-3704、KR3700」
株式会社ソーラー製の商品名「NANON ZR-010」、酸化ジルコニウム
日揮触媒化成株式会社製「スルーリア4320」
綜研化学社製の商品名「TD-75」、キシリレンジイソシアネートトリメチロールプロパン付加体
【0149】
<加飾フィルムの作製>
(1)加飾層の形成
ベーカー式アプリケーターを用い、支持層(基材フィルム)上に加飾層を乾燥膜厚が所定の厚みとなるように塗料溶液を塗布し、100℃×5分乾燥することで加飾層を得た。
なお、使用した支持層は、日本マタイ製熱可塑性ポリウレタンフィルム「エスマーURS PX98」である。
(2)2液硬化型のハードコート層の形成
上記と同様の方法にて、(1)で作製した加飾層上にハードコート層を乾燥膜厚が所定の厚みとなるように2液硬化型の塗料溶液を塗布し、100℃×5分乾燥させた。その後ラミネート機などを用い、保護フィルムをハードコート層と貼り合わせた後、50℃環境下で7日間養生することでハードコート層を得た。
(3)活性エネルギー線硬化型のハードコート層の形成
バーコーターを用い、(1)で作製した加飾層上にハードコート層を乾燥膜厚が所定の厚みとなるように活性エネルギー線硬化型の塗料溶液を塗布し、80℃×1分乾燥させた。その後ラミネート機などを用い、保護フィルムをハードコート層と貼り合わせた後、積算光量2000mJ/cmの活性エネルギー線を照射することでハードコート層を得た。
(4)粘着層の形成
加飾層及びハードコート層が積層された面と異なる基材面に粘着層をベーカー式アプリケーターを用い、乾燥膜厚が3~60μmとなるように塗料溶液を塗布し、100℃×5分乾燥することで粘着層を塗工した。その後ラミネート機などを用い、セパレーターを粘着層と貼り合わせた後、50℃環境下で4日間養生することで、粘着層を持った加飾フィルムを得た。
使用した保護フィルムは、トレファン#40-2500(東レ社製)及びKBフィルムN30(株式会社きもと製)である。
【0150】
<モジュールの作製>
ガラスの単結晶シリコンセルを用い、上記製造法で作製した加飾積層フィルムをスキージを用いて室温環境下でを手作業にて貼り付けた。
【0151】
得られた太陽電池モジュール用加飾積層フィルムについて、以下の項目を評価した。
(全光線透過率Tt)
分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ)により、波長380.0nm~810.0nmの範囲で、積分球を用い全光線透過率を測定した。
【0152】
(反射率R)
U-3310型分光光度計(日立社製)を用い、波長スキャンモードで380~1300nmの区間をスキャンスピード300nm/min、サンプリング間隔0.5nmの条件で測定した。
【0153】
(屈折率Fa、Fg)
株式会社アタゴ製アッベ屈折率計を用いて屈折率を測定した。
【0154】
(意匠性(反射色))
黒ゲルポリシートの上に加飾積層フィルムを貼布し、保護フィルムを剥離した後の色調を目視で確認した。
○:色調を目視で認識できる
×:色調を目視で認識できない(色が薄い)
【0155】
(出力)
太陽電池モジュールに対して、ソーラーシミュレーター(1kW/m、JIS C8912 クラスAのスペクトル合致度を満足するように設定)により光を照射し、IVカーブトレーサMP-160(英弘精機製)で出力(W)を計測、加飾層がない場合を100とした時の比率を出力比とし、以下のように評価した。
〇:50%以上
×:50%未満
【0156】
(粘着力)
加飾積層フィルムを25mm×200mmの短冊に切り出した後に、AGC(株)製カーボグラスポリッシュ(クリア)(t=2.0mm)に貼布した。保護フィルムを剥離した後、加飾積層フィルムを180°方向へ200.0mm/秒の速さで剥離した際の剥離強度を測定した。
【0157】
(剥離性)
上記粘着力の評価において、問題なく加飾積層フィルムを剥離できるか評価した。
〇:剥離することができる。
×:粘着力が高すぎて剥離できない、または、粘着力が低すぎて容易にはがれてしまう。
【0158】
(Ra(C)/Ra(P))
保護フィルムを5.0mm/秒の速度で剥離した加飾積層フィルムの表面粗さRa(C)と、上記保護フィルムの剥離側の表面粗さRa(P)より、
〔Ra(C)/Ra(P)〕×100の値を計算した。
70未満であると、保護フィルムが貼れず、形状付与が困難であった。
140を超えると、保護フィルムがはがれにくく、表面状態が不良であった。
【0159】
(凹凸転写性)
保護フィルムを剥離した加飾積層フィルムの最表面であるハードコート層の表面を目視により観察した。
〇:転写性良好
×:転写不良
【0160】
(施工性)
加飾積層フィルムをガラスの単結晶シリコンセルに手作業で貼り付ける際の、その貼り付け作業性を評価した。
〇:不具合なく施工可
×:粘着力低く施工不可、または、粘着力高く位置調整等困難
【0161】
(信頼性(耐湿熱性))
加飾積層フィルムを50mm×50mmに切り出し、ガラス板上へ貼り合わせ、保護フィルムを剥離した後、温度85℃×湿度85%の環境に投入し、1500時間処理後に再表層であるハードコート層の表面外観を目視により観察した。
○:不具合なし
×:クラックなどの外観不具合あり
【0162】
(耐候性)
サンシャインウェザーメーターS80(サンシャインカーボンアーク式促進耐候試験機、スガ試験機社製)を用いて、JIS B 7753に準拠して、1200時間の促進耐候性試験を行った。ハードコート層面に紫外線を照射し、試験前の色相と、試験開始から1200時間後における色相について、下式(4)で求められる色差を算出し、以下の基準で評価した。
色差=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2 (4)
式中の記号は、以下の意味を示す。
ΔL*は、試験前のL*値と、試験後のL*値の差の絶対値である。
Δa*は、試験前のa*値と、試験後のa*値の差の絶対値である。
Δb*は、試験前のb*値と、試験後のb*値の差の絶対値である。
<評価基準>
○:式(1)で求められる色差が3.0未満である。
×:式(1)で求められる色差が3.0以上である。
【0163】
(保護フィルム剥離性)
保護フィルムをハードコート層と貼り合わせた後、50℃環境下で7日間養生することで得られた積層フィルムから、保護フィルムを手で剥離する際の剥離性を評価した。
○:塗膜を傷つけることなく剥離することができる
×:剥離の際に、塗膜が凝集破壊してしまう。または、保護フィルムがハードコート
表面に貼り合わされておらず、自然に剥がれてしまう。
【0164】
(乾燥膜厚)
塗料溶液を支持層に塗布、乾燥させた後のフィルムを株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器を用いて厚みを測定した。
【0165】
(表面自由エネルギーγac及びγap)
加飾積層フィルムを50mm×50mmに切り出し、保護フィルムを5.0mm/秒の速度で剥離した加飾積層フィルムの保護フィルム側および剥離した保護フィルムの加飾積層フィルム側の表面を、自動接触角計(協和界面科学社製、Dmo-701)を用いて、20℃以上23℃以下の環境下にて、液滴の大きさを1μL、液滴滴下1秒後の条件でDIW(イオン交換水)およびヨウ化メチレンの接触角を測定し、Owens and Wendtの式から、それぞれの表面自由エネルギーを算出し、保護フィルムを5.0mm/秒の速度で剥離した加飾積層フィルムの保護フィルム側の表面自由エネルギーγacを得た。保護フィルムを5.0mm/秒の速度で剥離した保護フィルムの加飾積層フィルム側の表面自由エネルギーγapについても同様の手順で得た。
得られたそれぞれの表面自由エネルギーの値から、γac/γap×100を計算した。
【0166】
(マルテンス硬さHM)
試験サンプルを50mm×50mmに切り出し、ガラス板上へ貼り合わせ、保護フィルムを剥離した後、フィッシャー社製のHM2000微小硬度試験機を用いて、ビッカースダイヤモンド圧子、荷重速度5mmN/20s、クリープ5sの条件にて、最大荷重での押し込み深さから、加飾積層フィルムのマルテンス硬さHM(L)を計算した。
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】
【0169】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の太陽電池モジュール用加飾積層フィルムは、太陽電池の加飾に使用することができる。
【符号の説明】
【0171】
(A) 保護フィルム
(B) ハードコート層
(C) 加飾層
(D) 印刷層
(F) 粘着層
(G) 支持層
(H) 透明目止め層
【要約】
優れた意匠性と高い光透過性を有し、太陽電池モジュールを保護する耐候性、耐湿熱性等の性能にも優れる太陽電池モジュール用加飾フィルムを提供する。
保護フィルム(A)、ハードコート層(B)、加飾層(C)、支持層(G)及び粘着層(F)を有する太陽電池モジュール用加飾積層フィルムであって、
上記太陽電池モジュール用加飾積層フィルムから保護フィルム(A)を剥離した状態の加飾積層フィルム(L)は、波長380nm~810nmの全光線透過率Ttが50%以上、90%以下であり、波長380~1300nmの反射率Rが5%以上、40%以下であり、
上記粘着層の屈折率Faが1.3以上、1.8以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用加飾積層フィルム。
図1
図2
図3
図4
図5