(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ワーク加工方法、工作機械、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
B21D 19/08 20060101AFI20240603BHJP
B21D 28/10 20060101ALI20240603BHJP
B21D 28/24 20060101ALI20240603BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240603BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20240603BHJP
B23K 26/361 20140101ALI20240603BHJP
B21C 37/15 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B21D19/08 D
B21D28/10 Z
B21D28/24 C
B23K26/00 N
B23K26/08 Z
B23K26/361
B21C37/15 B
(21)【出願番号】P 2023579209
(86)(22)【出願日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2023024908
【審査請求日】2023-12-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】平松 寛生
(72)【発明者】
【氏名】足立 昌聡
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058174(JP,A)
【文献】特開2008-183642(JP,A)
【文献】実公平5-6007(JP,Y2)
【文献】特開2015-124862(JP,A)
【文献】特開2012-020330(JP,A)
【文献】特開2016-211633(JP,A)
【文献】特開平11-221637(JP,A)
【文献】特開平09-057388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 19/08
B21D 28/10 ー 28/24
B23K 26/00 ー 26/70
B21C 37/15
B21C 37/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材と、前記母材の少なくとも一部を覆う第1被覆層とを含む板部分を有するワークを準備する工程と、
前記板部分をバーリング加工する工程と
を具備し、
前記第1被覆層は、純亜鉛または亜鉛合金のメッキ層であり、
前記母材から
前記メッキ層に向かう方向を第1方向と定義するとき、前記板部分をバーリング加工する工程は、
回転状態のバーリング工具と前記板部分との間で生じる摩擦熱によって前記板部分の第1領域を軟化させることと、回転状態の
前記バーリング工具を前記第1方向に移動させることにより、
前記摩擦熱によって軟化された前記第1領域に、貫通穴とフランジとを形成すること
とを含み、
前記板部分をバーリング加工する工程の前に、前記板部分の前記第1領域から
前記メッキ層を除去する工程が実行される
ワーク加工方法。
【請求項2】
前記板部分をバーリング加工する工程において、前記貫通穴の形成と前記フランジの形成とが同時に行われる
請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項3】
前記メッキ層を除去する工程は、
前記メッキ層にレーザを照射することにより、前記板部分の前記第1領域から
前記メッキ層を除去することを含む
請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項4】
前記貫通穴を規定する壁面に雌ネジを形成する工程を更に具備する
請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項5】
前記メッキ層は、前記ワークの内部領域に面する
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のワーク加工方法。
【請求項6】
前記第1方向とは反対の方向を第2方向と定義するとき、前記板部分は、前記母材の前記第2方向側に配置され、前記母材の少なくとも一部を覆う第2被覆層を含み、
前記板部分をバーリング加工する工程は、回転状態の前記バーリング工具が、前記第2被覆層と前記母材とを順に横切るように、回転状態の前記バーリング工具を前記第1方向に移動させることを含む
請求項5に記載のワーク加工方法。
【請求項7】
前記板部分の前記第1領域から
前記メッキ層が除去された後、前記板部分をバーリング加工する工程の前に、前記ワークを反転させる工程を更に具備する
請求項5に記載のワーク加工方法。
【請求項8】
前記ワークは、前記第1領域が配置された第1壁と、前記第1壁に対向配置される第2壁とを有し、
前記第2壁には、前記第1領域に対向配置されたアクセス開口が形成されている
請求項5に記載のワーク加工方法。
【請求項9】
前記メッキ層が除去されることにより形成される領域を除去済み領域と定義するとき、前記アクセス開口のサイズは、前記除去済み領域のサイズよりも小さい
請求項8に記載のワーク加工方法。
【請求項10】
母材と、前記母材の少なくとも一部を覆う第1被覆層とを含む板部分を有するワークを支持するワーク支持装置と、
バーリング工具を回転軸まわりに回転可能に支持する加工ヘッドと、
前記バーリング工具を前記回転軸まわりに回転させる回転駆動装置と、
前記加工ヘッドを前記ワーク支持装置に対して相対移動させる移動装置と、
レーザヘッドを有するレーザ照射装置を含み、前記ワークから
純亜鉛または亜鉛合金のメッキ層である前記第1被覆層の一部を除去する除去装置と、
前記回転駆動装置、前記移動装置、および、前記除去装置を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、
前記レーザヘッドから射出されるレーザによって、前記板部分の第1領域から
前記メッキ層が除去されるよう、前記制御装置から前記レーザ照射装置に射出指令を送信することを含む除去モードと、
少なくとも前記回転駆動装置および前記移動装置に制御指令を送信することにより、前記板部分をバーリング加工するバーリング加工モードと
を実行可能であり、
前記母材から
前記メッキ層に向かう方向を第1方向と定義するとき、前記バーリング加工モードは、
回転状態の前記バーリング工具と前記板部分との間で生じる摩擦熱によって前記板部分の前記第1領域を軟化させ、回転状態で前記第1方向に移動する前記バーリング工具を用いて、
前記メッキ層が除去され
前記摩擦熱によって軟化された前記第1領域に、貫通穴とフランジとを形成するモードである
工作機械。
【請求項11】
前記メッキ層によって占有される領域のうち前記除去装置によって除去されることとなる部分のことを除去対象領域と定義するとき、前記制御装置は、少なくとも、前記除去対象領域と前記レーザヘッドとの間の障害物の特性データに基づいて、レーザ出力パラメータ、および、前記レーザヘッドの送り速度指令値のうちの少なくとも一方を決定する
請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記メッキ層によって占有される領域のうち前記除去装置によって除去されることとなる部分のことを除去対象領域と定義するとき、前記制御装置は、少なくともワークデータに基づいて、前記除去対象領域の位置および前記除去対象領域のサイズを導出し、
前記制御装置は、前記除去対象領域の前記位置および前記除去対象領域の前記サイズを示すデータに基づいて、前記除去装置が移動すべき第1移動経路を導出し、
前記制御装置は、前記除去装置が前記第1移動経路に沿って移動するよう、前記移動装置に第1移動指令を送信する
請求項10に記載の工作機械。
【請求項13】
前記メッキ層によって占有される領域のうち前記除去装置によって除去されることとなる部分のことを除去対象領域と定義するとき、前記除去モードは、前記レーザヘッドから射出される前記レーザが前記除去対象領域を走査するように、前記レーザヘッドを前記ワーク支持装置に対して相対移動させるための第1移動指令を前記制御装置から前記移動装置に送信することを含む
請求項10に記載の工作機械。
【請求項14】
母材と、純亜鉛または亜鉛合金のメッキ層であり、前記母材の少なくとも一部を覆う第1被覆層と、を含む板部分を有するワークがワーク支持装置によって支持された状態で、前記板部分の第1領域から前記メッキ層
を除去する工程と、
前記板部分の前記第1領域から前記メッキ層
が除去された後、前記板部分をバーリング加工する工程と
を具備するワーク加工方法を工作機械に実行させるためのプログラムであって、
前記母材から
前記メッキ層に向かう方向を第1方向と定義するとき、前記板部分をバーリング加工する工程は、
回転状態のバーリング工具と前記板部分との間で生じる摩擦熱によって前記板部分の前記第1領域を軟化させることと、回転状態の
前記バーリング工具を前記第1方向に移動させることにより、
前記摩擦熱によって軟化された前記第1領域に、貫通穴とフランジとを形成すること
とを含む
プログラム。
【請求項15】
母材と、
純亜鉛または亜鉛合金のメッキ層であり、前記母材の少なくとも一部を覆う第1被覆層と
、を含む板部分を有するワークがワーク支持装置によって支持された状態で、
前記メッキ層にレーザを照射することにより前記板部分の第1領域から
前記メッキ層を除去する工程と、
前記板部分の前記第1領域から
前記メッキ層が除去された後、前記板部分をバーリング加工する工程と
を具備するワーク加工方法を工作機械に実行させるためのプログラムであって、
前記母材から
前記メッキ層に向かう方向を第1方向と定義するとき、前記板部分をバーリング加工する工程は、
回転状態のバーリング工具と前記板部分との間で生じる摩擦熱によって前記板部分の前記第1領域を軟化させることと、回転状態の
前記バーリング工具を前記第1方向に移動させることにより、
前記摩擦熱によって軟化された前記第1領域に、貫通穴とフランジとを形成すること
とを含む
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工方法、工作機械、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
板厚が薄い板材に対して、ネジを切る際の十分なネジ山を確保したり、板厚が薄い板材にピンやパイプをはめ込むことができるようにしたりするため、貫通穴とフランジとを形成するバーリング加工が知られている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、穿孔工具が開示されている。特許文献1に記載の穿孔工具は、金属板あるいは金属管壁に、孔およびボスを形成するために使用される。より具体的には、穿孔工具は、高速回転しながら、金属板あるいは金属管壁に押し付けられる。穿孔工具と金属板あるいは金属管壁との間に作用する摩擦熱、および、穿孔工具から金属板あるいは金属管壁に作用する摩擦圧によって、金属が溶融される。この金属溶融に伴い、孔が形成されるのと同時にボスが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、例えば純亜鉛または亜鉛合金をメッキしたメッキ層のような被覆層を有する板材に、良好に貫通穴およびフランジを形成することを可能にするワーク加工方法、工作機械、および、プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態におけるワーク加工方法は、母材と、前記母材の少なくとも一部を覆う第1被覆層とを含む板部分を有するワークを準備する工程と、前記板部分をバーリング加工する工程と、を具備する。前記母材から前記第1被覆層に向かう方向を第1方向と定義するとき、前記板部分をバーリング加工する工程は、回転状態のバーリング工具を前記第1方向に移動させることにより、前記板部分の第1領域に、貫通穴とフランジとを形成することを含む。前記板部分をバーリング加工する工程の前に、前記板部分の前記第1領域から前記第1被覆層を除去する工程が実行される。
【0007】
いくつかの実施形態における工作機械は、母材と、前記母材の少なくとも一部を覆う第1被覆層とを含む板部分を有するワークを支持するワーク支持装置と、バーリング工具を回転軸まわりに回転可能に支持する加工ヘッドと、前記バーリング工具を前記回転軸まわりに回転させる回転駆動装置と、前記加工ヘッドを前記ワーク支持装置に対して相対移動させる移動装置と、前記ワークから前記第1被覆層の一部を除去する除去装置と、前記回転駆動装置、前記移動装置、および、前記除去装置を制御する制御装置と、を具備する。前記制御装置は、少なくとも前記除去装置に制御指令を送信することにより、前記板部分の第1領域から前記第1被覆層を除去する除去モードと、少なくとも前記回転駆動装置および前記移動装置に制御指令を送信することにより、前記板部分をバーリング加工するバーリング加工モードと、を実行可能である。前記母材から前記第1被覆層に向かう方向を第1方向と定義するとき、前記バーリング加工モードは、回転状態で前記第1方向に移動する前記バーリング工具を用いて、前記第1被覆層が除去された前記第1領域に、貫通穴とフランジとを形成するモードである。
【0008】
いくつかの実施形態におけるプログラムは、母材と、前記母材の少なくとも一部を覆う第1被覆層とを含む板部分を有するワークがワーク支持装置によって支持された状態で、前記板部分の第1領域から前記第1被覆層を除去する工程と、前記板部分の前記第1領域から前記第1被覆層が除去された後、前記板部分をバーリング加工する工程と、を具備するワーク加工方法を工作機械に実行させるためのプログラムである。前記母材から前記第1被覆層に向かう方向を第1方向と定義するとき、前記板部分をバーリング加工する工程は、回転状態のバーリング工具を前記第1方向に移動させることにより、前記板部分の前記第1領域に、貫通穴とフランジとを形成することを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、例えば純亜鉛または亜鉛合金をメッキしたメッキ層のような被覆層を有する板材に、良好に貫通穴およびフランジを形成することを可能にするワーク加工方法、工作機械、および、プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、準備工程において準備されるワークの一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、板部分の第1領域から第1被覆層を除去する除去工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、板部分の第1領域から第1被覆層が除去された後のワークの一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、板部分の第1領域に向けて、バーリング工具が移動する様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、板部分の第1領域にバーリング加工が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、貫通穴に向けて、タップ工具が移動する様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、貫通穴の壁面に雌ネジが形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、貫通穴の壁面に雌ネジが形成された後の状態を模式的に示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、比較例において、フランジが細かく割れた状態を模式的に示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、ワークの一例を模式的に示す概略斜視図である。
【
図11】
図11は、ワークの一例を模式的に示す概略斜視図である。
【
図12】
図12は、ワークの一例を模式的に示す概略斜視図である。
【
図13】
図13は、板部分の第1領域から第1被覆層を除去する除去工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図14】
図14は、薬液を用いて除去工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図15】
図15は、第2工具を用いて除去工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図16】
図16は、バーリング工具の一例を模式的に示す概略斜視図である。
【
図17】
図17は、第1の実施形態における工作機械を模式的に示す図である。
【
図18】
図18は、レーザヘッドと板部分の第1領域との間に、障害物である第2壁が存在する様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図19】
図19は、第1の実施形態における工作機械を模式的に示す図である。
【
図20】
図20は、第1の実施形態における工作機械を模式的に示す図である。
【
図21】
図21は、工具交換装置の一例を模式的に示す図である。
【
図22】
図22は、第1の実施形態における工作機械を模式的に示す図である。
【
図23】
図23は、実施形態におけるワーク加工方法の一例を示すフローチャートである。
【
図24】
図24は、第2の実施形態における工作機械の一部分を模式的に示す図である。
【
図26】
図26は、第2の実施形態における工作機械を模式的に示す図である。
【
図27】
図27は、第2の実施形態における工作機械を模式的に示す図である。
【
図28】
図28は、第2の実施形態における工作機械の一部分を模式的に示す図である。
【
図29】
図29は、第2の実施形態における工作機械の一部分を模式的に示す図である。
【
図30】
図30は、プログラムを記録した記憶媒体の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態におけるワーク加工方法、工作機械1、および、プログラム822について説明する。なお、以下の実施形態の説明において、同一の機能を有する部位、部材については同一の符号を付し、同一の符号が付された部位、部材についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1乃至
図23を参照して、第1の実施形態におけるワーク加工方法、および、工作機械1Aについて説明する。
図1は、準備工程において準備されるワーク9の一例を模式的に示す概略断面図である。
図2は、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93を除去する除去工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図3は、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去された後のワーク9の一例を模式的に示す概略断面図である。
図4は、板部分90の第1領域RG1に向けて、バーリング工具10が移動する様子を模式的に示す概略断面図である。
図5は、板部分90の第1領域RG1にバーリング加工が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図6は、貫通穴96に向けて、タップ工具18が移動する様子を模式的に示す概略断面図である。
図7は、貫通穴96の壁面に雌ネジ96sが形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
図8は、貫通穴96の壁面に雌ネジ96sが形成された後の状態を模式的に示す概略断面図である。
図9は、比較例において、フランジ97が細かく割れた状態を模式的に示す概略断面図である。
図10は、ワーク9の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図11は、ワーク9の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図12は、ワーク9の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図13は、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93を除去する除去工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図14は、薬液Lを用いて除去工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図15は、第2工具T2を用いて除去工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図16は、バーリング工具10の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図17は、第1の実施形態における工作機械1Aを模式的に示す図である。
図18は、レーザヘッド51と板部分90の第1領域RG1との間に、障害物である第2壁99bが存在する様子を模式的に示す概略断面図である。
図19および
図20は、第1の実施形態における工作機械1Aを模式的に示す図である。
図21は、工具交換装置6の一例を模式的に示す図である。
図22は、第1の実施形態における工作機械1Aを模式的に示す図である。
図23は、実施形態におけるワーク加工方法の一例を示すフローチャートである。
【0013】
図1に例示されるように、第1ステップST1において、ワーク9が準備される。第1ステップST1は、準備工程である。準備工程において準備されるワーク9は、板部分90を有する。
図1に記載の例では、板部分90は、第1壁99aによって構成されている。ワーク9は、第1壁99aに加えて、第2壁99bを有していてもよい。
図1に記載の例では、第2壁99bは、第1壁99aに対向配置されている。ワーク9は、第1壁99aおよび第2壁99bに加えて、第3壁99cを有していてもよい。
図1に記載の例では、第3壁99cは、第1壁99aと第2壁99bとを連結している。ワーク9は、第3壁99cに対向配置される第4壁99d(必要であれば、
図10を参照。)を有していてもよい。
【0014】
図1に記載の例では、ワーク9の板部分90は、母材91と、母材91の少なくとも一部を覆う第1被覆層93とを含む。
【0015】
図2に例示されるように、第2ステップST2において、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去される。第2ステップST2は、除去工程である。
図3には、除去工程が実行された後のワーク9が示されている。
【0016】
図4に例示されるように、第3ステップST3において、バーリング工具10がワーク9の第1領域RG1に対向するように、バーリング工具10に対するワーク9の相対位置が変更される。第3ステップST3は、位置変更工程である。
【0017】
図4に例示されるように、本明細書において、母材91から第1被覆層93に向かう方向を第1方向DR1と定義し、第1方向DR1とは反対の方向を第2方向DR2と定義する。
【0018】
位置変更工程(第3ステップST3)の実行後、第1方向DR1は、バーリング工具10からワーク9の第1領域RG1に向かう方向と一致する。
【0019】
図4および
図5に例示されるように、第4ステップST4において、板部分90がバーリング加工される。第4ステップST4は、板部分90をバーリング加工する工程(以下、「バーリング工程」という。)である。なお、「バーリング加工」とは、穴の縁を円筒状に伸ばす加工を意味する。
図5に例示されるように、板部分90がバーリング加工されることにより、穴の縁が円筒状に伸ばされ、その結果、フランジ97が形成される。
【0020】
図4および
図5に記載の例では、バーリング工程(第4ステップST4)は、回転状態のバーリング工具10を、第1方向DR1に移動させることにより、板部分90の第1領域RG1に、貫通穴96とフランジ97とを形成することを含む。
【0021】
図9に例示されるように、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去されることなく、バーリング工程が実行される場合を想定する。この場合、第1被覆層93の存在に起因して(例えば、亜鉛元素を含む第1被覆層93の存在に起因して)、フランジ97が良好に形成されないことがある。例えば、
図9に例示されるように、第1被覆層93の存在に起因して、フランジ97が細かく割れてしまうことがある。
【0022】
これに対し、第1の実施形態では、バーリング工程の前に、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93を除去する工程が実行される(
図2を参照。)。よって、第1被覆層93の材質に関わらず、バーリング工程時に第1被覆層93の存在に起因して、フランジ97の形成不良が生じることがない。例えば、第1被覆層93の存在に起因して、第1領域RG1における回転状態のバーリング工具10による摩擦熱の発生あるいは伝達が妨げられることがない。換言すれば、バーリング工具10と板部分90との間で生じる摩擦熱が第1領域RG1の全体に効果的に伝達され、当該第1領域RG1に、貫通穴96およびフランジ97が良好に形成される(
図5を参照。)。
【0023】
(任意付加的な構成)
続いて、
図1乃至
図23を参照して、第1の実施形態におけるワーク加工方法、および、工作機械1Aにおいて採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0024】
(第1被覆層93)
図4に例示されるように、第1被覆層93は、板部分90の第1領域RG1のうち、バーリング工具10と接触することとなる面とは反対側の面に配置された被覆層である。
【0025】
第1被覆層93は、例えば、母材91の少なくとも一部を覆うメッキ層93aである。より具体的には、第1被覆層93は、例えば、純亜鉛または亜鉛合金のメッキ層93aである(換言すれば、第1被覆層93は、母材91の少なくとも一部に純亜鉛または亜鉛合金がメッキされることにより形成されたメッキ層93aである。)。メッキ層93aは、どのような方式で形成されたメッキ層であってもよい。例えば、メッキ層93aは、電鋳によって母材91上に形成されてもよく、無電解メッキによって母材91上に形成されてもよく、溶融メッキによって母材91上に形成されてもよく、真空メッキ(例えば、真空蒸着)によって母材91上に形成されてもよい。
【0026】
代替的に、あるいは、付加的に、第1被覆層93は、カラーコーティング層、および/または、防食層であってもよい。
【0027】
従来、亜鉛元素を含む第1被覆層で覆われた母材に、摩擦熱を用いる方式のバーリング加工を行うと、フランジを良好に形成することができなかった(
図9を参照。)。これに対し、第1の実施形態では、第1領域RG1において、第1被覆層93が除去されるため、第1被覆層93の材質に関わらず、第1領域RG1に、貫通穴96およびフランジ97を良好に形成することができる。
【0028】
図10に記載の例では、第1被覆層93は、ワーク9の内部領域SP(より具体的には、ワーク9によって規定される空洞部)に面する。より具体的には、
図10に記載の例では、ワーク9は、パイプ9aであり、第1被覆層93は、パイプ9aの内部空間SP1に面する。
【0029】
代替的に、
図11に例示されるように、ワーク9の長手方向に垂直な断面は、C字形状を有していてもよい。
図11に記載の例においても、第1被覆層93は、ワーク9の内部領域SP(より具体的には、ワーク9によって規定される実質的な空洞部)に面する。
【0030】
図10および
図11に例示されるように、第1被覆層93が、母材91の内面を被覆する内面被覆層である場合、ワーク9には、第1被覆層93を除去する手段が第1領域RG1にアクセスすることを許容するアクセス開口OPが形成されることが好ましい。当該アクセス開口OPは、除去工程(第2ステップST2)の実行に先立ち予め形成されていてもよいし、除去工程(第2ステップST2)が実行されるタイミングでワーク9に形成されてもよい。当該アクセス開口OPは、
図10に例示されるように貫通穴タイプの開口OP1であってもよいし、
図11に例示されるようにスリットタイプの開口OP2であってもよい。
【0031】
図2に記載の例では、第1被覆層93を除去する手段は、レーザBを含む。
図13に例示されるように、第1被覆層93を除去する手段は、レーザBに加えて、ワーク9に向けて供給されるアシストガスGを含んでいてもよい。アシストガスGは、レーザBによって溶融された溶融物をレーザBの照射対象領域から取り除く機能等を有する。アシストガスGは、エアであってもよいし、酸素であってもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガスであってもよい。
【0032】
代替的に、あるいは、付加的に、
図14に例示されるように、第1被覆層93を除去する手段は、第1被覆層93を除去する薬液L(例えば、有機溶液)を含んでいてもよい。
図14に記載の例では、第1被覆層93に薬液Lが適用されることにより、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去される。
【0033】
代替的に、あるいは、付加的に、
図15に例示されるように、第1被覆層93を除去する手段は、第1被覆層93を除去する工具(例えば、切削工具、ヤスリ等)を含んでいてもよい。以下、第1被覆層93を除去する工具のことを第2工具T2と呼ぶ。
図15に記載の例では、第1被覆層93に第2工具T2が接触することにより、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去される。
【0034】
図10および
図11に記載の例では、ワーク9は、バーリング加工されることとなる第1領域RG1(
図10および
図11において、破線によって囲まれた領域が第1領域RG1である。)が配置された第1壁99aと、第1壁99aに対向配置される第2壁99bとを有する。また、第2壁99bに、アクセス開口OPが形成されている。
図10および
図11に記載の例では、アクセス開口OPが、第1領域RG1(より具体的には、後述の除去対象領域RT)に対向配置されている。よって、第1被覆層93を除去する手段(例えば、第1被覆層93を除去するレーザB、第1被覆層93を除去する薬液L、第1被覆層93を除去する薬液Lを塗布する器具T1、または、第1被覆層93を除去する第2工具T2)を、アクセス開口OPを介して、第1被覆層93に容易にアプローチさせることができる。
【0035】
図3に記載の例では、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去されることにより、第1領域RG1には、母材91が実質的に露出する露出面91sが形成される。
【0036】
本明細書において、第1被覆層93によって占有される領域のうち、上述の除去工程(あるいは、後述の除去装置5)によって除去されることとなる部分のことを除去対象領域RT(
図1および
図2を参照。)と定義する。上述の第1方向DR1は、母材91のうちの除去対象領域RTに接する部分から除去対象領域RTに向かう方向と一致する。
【0037】
本明細書において、第1被覆層93が除去されることにより形成される領域を除去済み領域RB(
図3を参照。)と定義する。換言すれば、除去工程(第2ステップST2)の実行により、除去対象領域RTが、除去済み領域RBとなる。上述の第1方向DR1は、露出面91sから除去済み領域RBに向かう方向と一致する。
【0038】
アクセス開口OPのサイズは、除去対象領域RTのサイズ、あるいは、バーリング工程において第1領域RG1に形成される貫通穴96のサイズに応じて設定されてもよい。例えば、除去対象領域RTのサイズ、あるいは、貫通穴96のサイズが大きいほど、アクセス開口OPのサイズが大きくされてもよい。
【0039】
図3に記載の例では、アクセス開口OPのサイズ(より具体的には、アクセス開口OPの開口面積)は、除去済み領域RBのサイズ(より具体的には、除去済み領域RBの面積)よりも小さい。アクセス開口OPのサイズが小さいことにより、アクセス開口OPの存在に起因するワーク9の強度低下が抑制される。代替的に、アクセス開口OPのサイズは、除去済み領域RBのサイズと等しいか、あるいは、除去済み領域RBのサイズより大きくてもよい。
【0040】
図6に記載の例では、アクセス開口OPの内径は、貫通穴96の内径よりも大きい。代替的に、アクセス開口OPの内径は、貫通穴96の内径以下であってもよい。
図6に記載の例では、貫通穴96は、アクセス開口OPに対向するように配置されている。
【0041】
(第2被覆層94)
図1に例示されるように、ワーク9の板部分90は、母材91の第2方向DR2側に配置され、母材91の少なくとも一部を覆う第2被覆層94を含む。
図1に記載の例では、準備工程(第1ステップST1)において準備されるワーク9は、母材91と、第1被覆層93と、第2被覆層94とを含む。また、母材91は、第1被覆層93と第2被覆層94とによって挟まれている。
【0042】
第2被覆層94の材質は、第1被覆層93の材質と同じであってもよいし、第1被覆層93の材質と異なっていてもよい。
【0043】
第2被覆層94は、例えば、母材91の少なくとも一部を覆うメッキ層94aである。メッキ層94aは、どのような方式で形成されたメッキ層であってもよい。例えば、メッキ層94aは、電鋳によって母材91上に形成されてもよく、無電解メッキによって母材91上に形成されてもよく、溶融メッキによって母材91上に形成されてもよく、真空メッキ(例えば、真空蒸着)によって母材91上に形成されてもよい。
【0044】
代替的に、あるいは、付加的に、第2被覆層94は、カラーコーティング層、および/または、防食層であってもよい。第2被覆層94は、亜鉛元素を含む被覆層であってもよい。例えば、第2被覆層94は、純亜鉛または亜鉛合金のメッキ層であってもよい。
【0045】
図10および
図11に記載の例では、第2被覆層94は、母材91の外面を被覆する外面被覆層である。
【0046】
図2および
図3に記載の例では、第2被覆層94は、除去工程(第2ステップST2)における除去の対象外である。換言すれば、第2被覆層94は、除去工程(第2ステップST2)の実行によって除去されることなく、そのまま維持される。代替的に、除去工程(第2ステップST2)の実行により、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93および第2被覆層94の両方が除去されてもよい。板部分90の第1領域RG1からの第1被覆層93および第2被覆層94の除去は、レーザ照射によって行われてもよく、薬液によって行われてもよく、切削工具等の工具(換言すれば、第2工具T2)によって行われてもよい。
【0047】
(母材91)
母材91の材質は、例えば、鉄、ステンレス鋼等の金属である。母材91は、フランジ97を形成することが可能なように十分な厚さを有する。
図1に記載の例では、母材91の厚さは、第1被覆層93の厚さよりも大きく、第2被覆層94の厚さよりも大きい。
【0048】
(ワーク9)
ワーク9は、
図10に例示されるように、パイプであってもよいし、
図12に例示されるように、アングル材であってもよい。また、ワーク9は、チャンネル材であってもよいし、平板であってもよい。ワーク9は、第1方向DR1に垂直な方向に延在する長尺ワークであってもよい。
【0049】
ワーク9は、流体が流れる流路を規定する部品であってもよいし、冷暖房機器の部品であってもよいし、家電機器の部品であってもよいし、自動車部品であってもよいし、制御盤の部品であってもよいし、建築部品であってもよいし、棚の部品であってもよいし、家具の部品であってもよいし、農機具の部品であってもよいし、厨房機器の部品であってもよいし、物流機器の部品であってもよい。
【0050】
第1領域RG1における板部分90の厚さTH(
図1を参照。)は、例えば、0.5mm以上6mm以下である。
【0051】
(除去工程)
図2に記載の例では、第1被覆層93を除去する工程(除去工程:第2ステップST2)は、第1被覆層93にレーザBを照射することにより、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93を除去することを含む。
図2に記載の例では、除去工程において、第1被覆層93に向かうレーザBの進行方向は、第2方向DR2(換言すれば、母材91から第1被覆層93に向かう方向とは反対の方向)である。
【0052】
図2に例示されるように、レーザヘッド51から射出されるレーザBによって、ワーク9の第2壁99bにアクセス開口OP(より具体的には、アクセス用の貫通穴)が形成されてもよい。
図2に記載の例では、レーザヘッド51から射出されるレーザBは、ワーク9の第2壁99bに形成されたアクセス開口OPを通過する。また、当該アクセス開口OPを通過するレーザBがワーク9の第1壁99aに照射されることによって、第1壁99aの一部から第1被覆層93が除去される。
【0053】
代替的に、あるいは、付加的に、
図14に例示されるように、第1被覆層93を除去する除去工程(第2ステップST2)は、第1被覆層93に薬液Lを適用することにより、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93を除去することを含んでいてもよい。
【0054】
図14に記載の例では、薬液Lは、ワーク9の第2壁99bに形成されたアクセス開口OPを横切るように供給される。また、当該アクセス開口OPを横切るように供給される薬液Lがワーク9の第1壁99aに適用されることによって、第1壁99aの一部から第1被覆層93が除去される。
【0055】
代替的に、あるいは、付加的に、
図15に例示されるように、第1被覆層93を除去する除去工程(第2ステップST2)は、切削工具等の第2工具T2を第1被覆層93に接触させることにより、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93を除去することを含んでいてもよい。
【0056】
図15に記載の例では、切削工具等の第2工具T2は、ワーク9の第2壁99bに形成されたアクセス開口OPに挿入される。また、アクセス開口OPに挿入された第2工具T2によって、ワーク9の第1壁99aの一部から第1被覆層93が除去される。
【0057】
(位置変更工程)
図3および
図4に記載の例では、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去された後、板部分90をバーリング加工する工程(バーリング工程:第4ステップST4)の実行前に、バーリング工具10がワーク9の第1領域RG1に対向するように、バーリング工具10に対するワーク9の相対位置が変更される(以下、「位置変更工程」という。)。
図3および
図4に例示されるように、位置変更工程は、ワーク9を反転させることを含んでいてもよい。より具体的には、位置変更工程は、ワーク9の長手方向に平行な軸ATまわりに、ワーク9を180度回転させることを含んでいてもよい。
【0058】
(バーリング工程)
板部分90をバーリング加工する工程(バーリング工程:第4ステップST4)は、回転状態のバーリング工具10と板部分90との間で生じる摩擦熱を板部分90の第1領域RG1に伝達させることと、回転状態のバーリング工具10によって板部分90の第1領域RG1を第1方向DR1に押圧することと、を含む。
【0059】
回転状態のバーリング工具10と板部分90との間で生じる摩擦熱が板部分90の第1領域RG1に伝達されることにより、第1領域RG1が摩擦熱によって軟化される(より具体的には、可塑化される。)。第1の実施形態では、板部分90をバーリング加工する工程(バーリング工程:第4ステップST4)の実行前に、第1領域RG1から母材91の第1方向DR1側の表面を覆っていた第1被覆層93が除去される(
図2および
図3を参照。)。よって、バーリング工程の実行時に、第1領域RG1の全体に摩擦熱が良好に伝達され、第1被覆層93の存在によって摩擦熱の伝達が阻害されることがない。
【0060】
図5に例示されるように、板部分90をバーリング加工する工程(バーリング工程:第4ステップST4)では、摩擦熱によって軟化された第1領域RG1が、バーリング工具10によって、第1方向DR1に押圧される。また、摩擦熱によって軟化された第1領域RG1が、バーリング工具10によって、第1方向DR1に押圧されることにより、第1領域RG1に貫通穴96が形成されるとともに、貫通穴96の縁が第1方向DR1に向かって円筒状に引き伸ばされる。こうして、第1領域RG1に、フランジ97が形成される。
図5に記載の例では、板部分90をバーリング加工する工程において、貫通穴96の形成とフランジ97の形成とが同時に行われる。
【0061】
なお、本明細書において、第1領域RG1に貫通穴96を形成することには、下穴が設けられていない第1領域RG1に、バーリング工具10が通過する貫通穴96を形成することが包含される(
図4および
図5を参照。)。また、本明細書において、第1領域RG1に貫通穴96を形成することには、第1領域RG1に予め形成された下穴を拡張することにより、第1領域RG1にバーリング工具10が通過する貫通穴96を形成することが包含される。換言すれば、板部分90をバーリング加工する工程(バーリング工程:第4ステップST4)の実行前に、第1領域RG1には、下穴が設けられていてもよいし、下穴が設けられていなくてもよい。
【0062】
図4および
図5に例示されるように、板部分90をバーリング加工する工程(バーリング工程:第4ステップST4)は、回転状態のバーリング工具10が、第2被覆層94と母材91とをこの順に横切るように、回転状態のバーリング工具10を第1方向DR1に移動させることを含んでいてもよい。
図4および
図5に記載の例では、バーリング工程の実行前に、第1領域RG1から第2被覆層94が除去されず、第2被覆層94がそのまま維持されている。第1領域RG1から第2被覆層94を除去する工程が省略されることにより、ワークの加工に要する総時間が短縮される。
【0063】
(バーリング工具10)
図4に記載の例では、バーリング工具10は、先細り形状を有する先端部11と、先端部11に連なる柱部13とを有する。バーリング工具10は、先細り形状を有する先端部11と、先端部11に連なる柱部13と、柱部13に連なる肩部15とを有していてもよい。換言すれば、バーリング工具10は、先細り形状を有する先端部11、肩部15、および、先端部11と肩部15との間に配置された柱部13を有していてもよい。
【0064】
先端部11および柱部13は、板部分90の第1領域RG1に貫通穴96およびフランジ97を形成する機能を有する。より具体的には、回転状態の先端部11が、板部分90の第1領域RG1を第1方向DR1に押圧することにより、第1領域RG1に形成された穴が拡張される。その結果、第1領域RG1に貫通穴96が形成される。また、回転状態の柱部13が、第1領域RG1に形成された貫通穴96に挿入されることにより、貫通穴96の形状およびフランジ97の形状が整えられる。バーリング工具10の中心軸に垂直な断面を横断面と定義するとき、柱部13の横断面のサイズおよび形状は、バーリング工具10の中心軸に沿って略一定であってもよい。
【0065】
バーリング工具10の先端部11の横断面の形状は、円形状であってもよいし、
図16に例示されるように角丸多角形形状(例えば、角丸四角形形状)であってもよいし、他の形状であってもよい。バーリング工具10の柱部13の横断面の形状は、円形状であってもよいし、
図16に例示されるように角丸多角形形状(例えば、角丸四角形形状)であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0066】
図5に例示されるように、肩部15は、ワーク9の板部分90の第2方向DR2側の面の形状を整える機能を有する。より具体的には、回転状態の肩部15が、板部分90の第2方向DR2側の面を押圧することにより、当該面の形状が整えられる。
【0067】
(工具交換工程)
第1の実施形態におけるワーク加工方法は、加工ヘッド30に保持されたバーリング工具10を、タップ工具18(
図6を参照。)に交換する工程(以下、「工具交換工程」という。)を備えていてもよい。工具交換工程は、例えば、工具交換装置を用いて実行される。代替的に、工具交換工程は、手動で実行されてもよい。また、第1の実施形態における工作機械が、バーリング工具10を保持する加工ヘッド30に加えて、タップ工具18を保持する第2加工ヘッドを備える場合には、工具交換工程は省略されてもよい。
【0068】
(タップ工程)
図6および
図7に例示されるように、第1の実施形態におけるワーク加工方法は、貫通穴96を規定する壁面96wに雌ネジを形成する工程(以下、「タップ工程」という。)を備えていてもよい。タップ工程は、第4ステップST4(バーリング工程)の実行後に、第5ステップST5として実行される。
【0069】
図6および
図7に記載の例では、タップ工程(第5ステップST5)は、回転状態のタップ工具18を、第1方向DR1に移動させることにより、貫通穴96を規定する壁面96wに雌ネジ96sを形成することを含む。
図8には、タップ工程が実行された後の様子が示されている。
【0070】
第1の実施形態では、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去されているため、バーリング工程において、フランジ97が良好に形成される。また、フランジ97が良好に形成されるため、タップ工程の実行により、フランジ97の内周面に、雌ネジ96sを容易に形成することができる。
【0071】
(工作機械1A)
図17に例示されるように、第1の実施形態における工作機械1Aは、ワーク支持装置2と、加工ヘッド30と、回転駆動装置36(例えば、モータ36m)と、移動装置4と、除去装置5と、制御装置8とを備える。
【0072】
ワーク支持装置2は、ワーク9を支持する。ワーク支持装置2は、ワーク9の第1部分を支持する第1チャック21と、ワーク9の第2部分を支持する第2チャック23とを有していてもよい。
【0073】
加工ヘッド30は、バーリング工具10を回転軸AXまわりに回転可能に支持する。
図4に記載の例では、加工ヘッド30は、回転体31と、回転体31を回転可能に支持するフレーム33とを有する。
図4に記載の例では、回転体31は、第1工具ホルダHD1を介してバーリング工具10を支持する。
【0074】
回転駆動装置36は、バーリング工具10を、バーリング工具10の中心軸に一致する回転軸AXまわりに回転させる。より具体的には、回転駆動装置36は、回転体31を第1軸AX1まわりに回転させることにより、バーリング工具10を回転軸AXまわりに回転させる。
図4に記載の例では、回転体31の回転軸である第1軸AX1と、バーリング工具10の回転軸AXとが同軸である。
【0075】
図17に記載の例において、移動装置4は、加工ヘッド30をワーク支持装置2に対して相対移動させる。また、移動装置4は、レーザヘッド51をワーク支持装置2に対して相対移動させる。
【0076】
除去装置5は、ワーク9から第1被覆層93の一部を除去する。
図17に記載の例では、除去装置5は、レーザヘッド51を有するレーザ照射装置50aを含む。代替的に、あるいは、付加的に、除去装置5は、薬液適用装置50b(
図14を参照。)、および/または、切削加工装置50c(
図15を参照。)を含んでいてもよい。なお、
図15に例示されるように、加工ヘッド30に、切削工具等の第2工具T2が取り付けられる場合には、加工ヘッド30および第2工具T2が、除去装置5として機能する。
【0077】
制御装置8は、回転駆動装置36、移動装置4、および、除去装置5を制御する。付加的に、制御装置8は、ワーク支持装置2を制御してもよい。
【0078】
制御装置8は、除去モードM1を実行可能である。除去モードM1は、制御装置8から少なくとも除去装置5に制御指令を送信することにより、少なくとも除去装置5を用いて、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93を除去するモードである。より具体的には、
図17に例示されるように、除去モードM1は、レーザヘッド51から射出されるレーザBによって、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去されるよう、制御装置8からレーザ照射装置50aに射出指令E1を送信することを含む。
【0079】
例えば、
図17に例示されるように、除去モードM1を実行する制御装置8は、レーザヘッド51をワーク支持装置2に対して相対移動させるための第1移動指令S1を移動装置4に送信する。第1移動指令S1を受信する移動装置4は、レーザヘッド51のレーザ射出軸上に板部分90の第1領域RG1が位置するようにレーザヘッド51をワーク支持装置2に対して相対移動させる。また、除去モードM1を実行する制御装置8は、レーザ照射装置50aに射出指令E1を送信する。射出指令E1を受信するレーザ照射装置50aは、レーザヘッド51から板部分90の第1領域RG1に向かう方向にレーザを射出する。また、第1移動指令S1を受信する移動装置4は、レーザヘッド51から射出されるレーザが除去対象領域RTを走査するように、レーザヘッド51をワーク支持装置2に対して相対移動させる(
図2における破線矢印を参照。)。こうして、レーザヘッド51から射出されるレーザBによって、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去される。なお、第1領域RG1に照射されるレーザBのスポット径が除去対象領域RTのサイズと等しい場合には、レーザBの走査は不要である。
【0080】
図18に例示されるように、レーザヘッド51のレーザ射出口52と板部分90の第1領域RG1との間に、ワーク9の第2壁99bが存在する場合には、制御装置8によって除去モードM1が実行されると、レーザヘッド51から射出されるレーザBによって、ワーク9の第2壁99bにアクセス開口OP(
図2を参照。)が形成され、且つ、レーザヘッド51から射出されるレーザBによって、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去される。
【0081】
制御装置8は、ワーク9を反転させる反転モードM2を実行可能であってもよい。反転モードM2は、制御装置8からワーク支持装置2に制御指令を送信することにより、ワーク支持装置2を用いて、ワーク9を反転させるモードである。
【0082】
例えば、
図19に例示されるように、反転モードM2を実行する制御装置8は、ワーク9を反転させるための反転指令RWをワーク支持装置2に送信する。反転指令RWを受信するワーク支持装置2は、ワーク9を反転させる。より具体的には、反転指令RWを受信するワーク支持装置2は、ワーク9の長手方向に平行な軸ATまわりに、ワーク9を180度回転させる。
図19に記載の例では、ワーク9の反転は、反転指令RWを受信するワーク支持装置2が、ワーク9を支持する第1チャック21および第2チャック23を、ワーク9の長手方向に平行な軸ATまわりに、180度回転させることにより実行される。
図19には、ワーク9が反転された後の状態が示されている。
【0083】
制御装置8は、バーリング加工モードM3を実行可能である。バーリング加工モードM3は、制御装置8から少なくとも回転駆動装置36および移動装置4に制御指令を送信することにより、板部分90をバーリング加工するモードである。また、バーリング加工モードM3は、回転状態で第1方向DR1に移動するバーリング工具10を用いて、第1被覆層93が除去された第1領域RG1に、貫通穴96とフランジ97とを形成するモードである。
【0084】
例えば、
図20に例示されるように、バーリング加工モードM3を実行する制御装置8は、バーリング工具10をワーク支持装置2に対して相対移動させるための第2移動指令S2を移動装置4に送信する。第2移動指令S2を受信する移動装置4は、バーリング工具10の回転軸AX上に板部分90の第1領域RG1が位置するようにバーリング工具10をワーク支持装置2に対して相対移動させる。また、バーリング加工モードM3を実行する制御装置8は、回転駆動装置36に第1回転指令R1を送信する。第1回転指令R1を受信する回転駆動装置36は、バーリング工具10を回転軸AXまわりに回転させる。更に、第2移動指令S2を受信する移動装置4は、回転状態のバーリング工具10が板部分90の第1領域RG1を横切るように、回転状態のバーリング工具10を第1方向DR1に移動させる(
図4または
図20における矢印AR1を参照。)。こうして、板部分90の第1領域RG1に、貫通穴96およびフランジ97が形成される。
図5に記載の例では、バーリング加工モードM3が実行されることにより、板部分90の第1領域RG1に、貫通穴96とフランジ97とが同時に形成される。
【0085】
制御装置8は、工具交換モードM4を実行可能であってもよい。工具交換モードM4は、制御装置8から少なくとも移動装置4および工具交換装置6(
図21を参照。)に制御指令を送信することにより、少なくとも移動装置4および工具交換装置6を用いて、加工ヘッド30に取り付けられたバーリング工具10を、タップ工具18に交換するモードである。
【0086】
例えば、
図21に例示されるように、工具交換モードM4を実行する制御装置8は、移動装置4に移動指令S4を送信する。移動指令S4を受信する移動装置4は、加工ヘッド30を、工具交換位置P1(
図21を参照。)に移動させる。また、工具交換モードM4を実行する制御装置8は、工具交換装置6に工具交換指令C1を送信する。工具交換指令C1を受信する工具交換装置6は、加工ヘッド30に保持されたバーリング工具10を、タップ工具18に交換する。
【0087】
制御装置8は、タップ加工モードM5を実行可能であってもよい。タップ加工モードM5は、制御装置8から少なくとも回転駆動装置36および移動装置4に制御指令を送信することにより、少なくとも回転駆動装置36および移動装置4を用いて、貫通穴96を規定する壁面96wに雌ネジ96sを形成するモードである。
【0088】
例えば、
図22に例示されるように、タップ加工モードM5を実行する制御装置8は、タップ工具18をワーク支持装置2に対して相対移動させるための第3移動指令S3を移動装置4に送信する。第3移動指令S3を受信する移動装置4は、タップ工具18の回転軸AX上に貫通穴96の中心軸が位置するようにタップ工具18をワーク支持装置2に対して相対移動させる。また、タップ加工モードM5を実行する制御装置8は、回転駆動装置36に第2回転指令R2を送信する。第2回転指令R2を受信する回転駆動装置36は、タップ工具18を回転軸AXまわりに回転させる。更に、第3移動指令S3を受信する移動装置4は、貫通穴96を規定する壁面96wに雌ネジ96sが形成されるように、回転状態のタップ工具18を第1方向DR1に移動させる。こうして、貫通穴96を規定する壁面96wに雌ネジ96sが形成される。
【0089】
(第2の実施形態)
図1乃至
図30を参照して、第2の実施形態におけるワーク加工方法、工作機械1B、および、プログラム822について説明する。
図24は、第2の実施形態における工作機械1Bの一部分を模式的に示す図である。
図25は、
図24の一部分を拡大して示す図である。
図26および
図27は、第2の実施形態における工作機械1Bを模式的に示す図である。
図28および
図29は、第2の実施形態における工作機械1Bの一部分を模式的に示す図である。
図30は、プログラム822を記録した記憶媒体82Mの一例を模式的に示す図である。
【0090】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第2の実施形態では、第1の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第2の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態において説明済みの事項を第2の実施形態に適用できることは言うまでもない。逆に、第2の実施形態で説明される全ての事項は、第1の実施形態に適用可能である。
【0091】
図24に例示されるように、第2の実施形態における工作機械1Bは、ワーク支持装置2と、加工ヘッド30と、回転駆動装置36と、移動装置4と、除去装置5(例えば、レーザ照射装置50a)と、制御装置8と、を備える。
【0092】
ワーク支持装置2、加工ヘッド30、回転駆動装置36、移動装置4、除去装置5(例えば、レーザ照射装置50a)、および、制御装置8については、第1の実施形態において説明済みであるため、これらの構成についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0093】
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0094】
第2の実施形態におけるワーク加工方法は、準備工程(第1ステップST1)と、除去工程(第2ステップST2)と、バーリング工程(第4ステップST4)とを備える。付加的に、第2の実施形態におけるワーク加工方法は、位置変更工程(第3ステップST3)、および/または、タップ工程(第5ステップST5)を備えていてもよい。
【0095】
準備工程、除去工程、位置変更工程、バーリング工程、および、タップ工程については、第1の実施形態において説明済みであるため、これらの工程についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0096】
(任意付加的な構成)
続いて、
図1乃至
図30を参照して、第2の実施形態(あるいは、上述の第1の実施形態)において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0097】
(ワーク9)
図25に例示されるように、ワーク9は、板部分90を有し、板部分90は、母材91と、母材91の少なくとも一部を覆う第1被覆層93とを含む。ワーク9については、第1の実施形態において説明済みであるため、ワーク9についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0098】
(ワーク支持装置2)
図26に記載の例では、ワーク支持装置2は、ワーク9の第1部分を支持する第1チャック21と、ワーク9の第2部分を支持する第2チャック23とを有する。
【0099】
第1チャック21は、ワーク9を把持可能な把持部材211を有していてもよい。第1チャック21は、ワーク9とともにX軸に平行な方向に移動可能であってもよい。なお、
図26に記載の例において、X軸は、第1チャック21によって把持されたワーク9の延在方向に平行な軸である。
【0100】
第2チャック23は、ワーク9を挟む複数のガイドローラ231を有していてもよい。複数のガイドローラ231は、X軸に平行な方向へのワーク9(より具体的には、長尺ワーク)の移動をガイドする。
【0101】
図26に記載の例では、ワーク支持装置2は、ワーク9を、ワークの長手方向に平行な軸ATまわりに回転させる第2回転駆動装置25を有する。第2回転駆動装置25は、第1チャック21を支持する第2回転体22を上述の軸ATまわりに回転させる第1モータ25aと、第2チャック23を支持する第3回転体24を上述の軸ATまわりに回転させる第2モータ25bとを含んでいてもよい。
【0102】
(移動装置4)
図24に記載の例において、移動装置4は、加工ヘッド30をワーク支持装置2に対して相対移動させる。また、移動装置4は、レーザヘッド51をワーク支持装置2に対して相対移動させる。
【0103】
図24に記載の例では、移動装置4は、加工ヘッド30を移動させる第1移動装置40を含む。
図26に例示されるように、移動装置4は、ワーク9を移動させる第2移動装置46(より具体的には、サーボモータ等のモータ46m)を含んでいてもよい。
図26に記載の例では、第2移動装置46は、第1チャック21を、X軸に平行な方向に移動させることにより、第1チャック21に把持されたワーク9をX軸に平行な方向に移動させる。
【0104】
図24に記載の例では、第1移動装置40は、加工ヘッド30を支持する移動体(41a;43a)と、移動体(41a;43a)を移動させる駆動装置(41b;43b)と、を有する。
【0105】
第1移動装置40は、第1移動体41aと、第1移動体41aをZ軸に平行な方向に移動させる第1駆動装置41bとを有していてもよい。
図24に記載の例では、第1移動体41aは、加工ヘッド30を直接的または間接的に支持し、加工ヘッド30とともにZ軸に平行な方向に移動可能である。第1移動体41aは、レーザヘッド51を直接的または間接的に支持してもよい。また、第1移動体41aは、レーザヘッド51とともにZ軸に平行な方向に移動可能であってもよい。なお、Z軸は、X軸に垂直な軸である。
図24に記載の例では、Z軸は、鉛直方向に平行な軸である。
【0106】
第1移動装置40は、第2移動体43aと、第2移動体43aをY軸に平行な方向に移動させる第2駆動装置43bとを有していてもよい。
図24に記載の例では、第2移動体43aは、加工ヘッド30を直接的または間接的に支持し、加工ヘッド30とともにY軸に平行な方向に移動可能である。第2移動体43aは、レーザヘッド51を直接的または間接的に支持してもよい。また、第2移動体43aは、レーザヘッド51とともにY軸に平行な方向に移動可能であってもよい。なお、Y軸は、X軸およびZ軸の両方に垂直な軸である。
図24に記載の例では、Y軸は、水平面に平行な軸である。
【0107】
第1移動装置40は、加工ヘッド30をレーザヘッド51に対して相対移動させる第3駆動装置45bを有していてもよい。
図24に記載の例では、第3駆動装置45bは、加工ヘッド30を、レーザヘッド51に対して、Z軸に平行な方向に相対移動させる。
【0108】
(レーザ照射装置50a)
図24に例示されるように、レーザ照射装置50aは、レーザヘッド51と、レーザ光源53と、レーザ光源53からレーザヘッド51にレーザを伝達する光学部品55(例えば、光ファイバ等)と、を有する。レーザヘッド51は、レーザを射出するレーザ射出口52を有する。
【0109】
(加工ヘッド30)
加工ヘッド30は、バーリング工具10を回転軸AXまわりに回転可能に支持する。加工ヘッド30は、回転体31と、回転体31を回転可能に支持するフレーム33とを有する。
図24に記載の例では、回転体31は、第1工具ホルダHD1を介してバーリング工具10を支持する。
【0110】
回転駆動装置36は、回転体31を第1軸AX1まわりに回転させることにより、バーリング工具10を回転軸AXまわりに回転させる。
図24に記載の例では、回転体31の回転軸である第1軸AX1と、バーリング工具10の回転軸AXとが同軸である。
【0111】
図28および
図29に記載の例では、加工ヘッド30は、バーリング工具10を保持する第1工具ホルダHD1(
図28を参照。)と、タップ工具18を保持する第2工具ホルダHD2(
図29を参照。)と、を選択的に保持可能である。
【0112】
(工具交換装置6)
工作機械1は、工具交換装置6を備えていてもよい。
図21に例示されるように、工具交換装置6は、加工ヘッド30(より具体的には、加工ヘッド30の回転体31)に保持される第1工具ホルダHD1を、タップ工具18を保持する第2工具ホルダHD2に交換可能である。また、工具交換装置6は、加工ヘッド30(より具体的には、加工ヘッド30の回転体31)に保持される第2工具ホルダHD2を、バーリング工具10を保持する第1工具ホルダHD1に交換可能である。
【0113】
工具交換装置6は、工具交換アーム61と、工具交換アーム61を回転させるアーム回転装置63と、工具交換アーム61を直線的に移動させるアーム移動装置65とを有していてもよい。アーム回転装置63は、工具交換アーム61を、第2軸AX2まわりに回転させる。また、アーム移動装置65は、工具交換アーム61を第2軸AX2に平行な方向に移動させる。
【0114】
(制御装置8)
制御装置8は、回転駆動装置36、移動装置4(例えば、第1駆動装置41b、第2駆動装置43b、第3駆動装置45b、ワーク9を移動させるモータ46m等)、および、除去装置5(例えば、レーザ照射装置50a)を制御する。付加的に、制御装置8は、第2回転駆動装置25、および/または、工具交換装置6を制御してもよい。
【0115】
例えば、
図24に記載の例において、制御装置8は、レーザ照射装置50aに射出指令E1を送信することにより、レーザヘッド51からレーザBを射出させる。より具体的には、制御装置8は、レーザ照射装置50aに射出指令E1を送信し、射出指令E1を受信するレーザ照射装置50aは、レーザヘッド51(より具体的には、レーザヘッド51のレーザ射出口52)からレーザBを射出する。
【0116】
例えば、
図28あるいは
図29に記載の例において、制御装置8は、回転駆動装置36(例えば、モータ36m)に回転指令Rを送信することにより、バーリング工具10あるいはタップ工具18を回転させる。より具体的には、制御装置8は、回転駆動装置36に回転指令Rを送信し、回転指令Rを受信する回転駆動装置36は、バーリング工具10あるいはタップ工具18を、回転軸AXまわりに回転させる。
【0117】
例えば、
図24あるいは
図28に記載の例において、制御装置8は、移動装置4に移動指令Sを送信することにより、加工ヘッド30あるいはレーザヘッド51をワーク支持装置2に対して相対移動させる。より具体的には、制御装置8は、移動装置4に移動指令Sを送信し、移動指令Sを受信する移動装置4は、加工ヘッド30あるいはレーザヘッド51をワーク支持装置2に対して相対移動させる。
【0118】
図24に例示されるように、制御装置8は、ハードウェアプロセッサ80(以下、単に、「プロセッサ80」という。)と、メモリ82と、通信回路84と、入力装置86(例えば、タッチパネル付きディスプレイ862)と、を備える。プロセッサ80と、メモリ82と、通信回路84と、入力装置86とは、バス88を介して互いに接続されている。
【0119】
メモリ82は、データ826、および、プログラム822を記憶する。メモリ82に記憶されるプログラム822は、上述の除去モードM1を実施するための第1プログラム822aを含んでいてもよく、上述のバーリング加工モードM3を実施するための第3プログラム822cを含んでいてもよい。プログラム822は、上述の反転モードM2を実施するための第2プログラム822bを含んでいてもよく、上述の工具交換モードM4を実施するための第4プログラム822dを含んでいてもよい。また、プログラム822は、上述のタップ加工モードM5を実施するための第5プログラム822eを含んでいてもよい。
【0120】
メモリ82は、制御装置8のプロセッサ80によって読み取り可能な記憶媒体である。メモリ82は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性または揮発性の半導体メモリであってもよいし、磁気ディスクであってもよいし、その他の形式のメモリであってもよい。
【0121】
第1被覆層93の除去に必要なデータは、入力装置86を介して制御装置8に入力されてもよいし、他のコンピュータから通信回路84を介して制御装置8に入力されてもよいし、制御装置8によって算出または導出されてもよい。第1被覆層93の除去に必要なデータ(例えば、第1被覆層93の厚みを示すデータ等を含むワークデータ826a、除去対象領域RTの位置およびサイズを示すデータ826b、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間の障害物の特性データ826c、レーザ出力パラメータ826d、レーザヘッド51の送り速度指令値826e、レーザヘッド51等の除去装置5が移動すべき第1移動経路を規定する第1経路データ826f等)は、メモリ82に記憶される。
【0122】
バーリング加工に必要なデータは、入力装置86を介して制御装置8に入力されてもよいし、他のコンピュータから通信回路84を介して制御装置8に入力されてもよいし、制御装置8によって算出または導出されてもよい。バーリング加工に必要なデータ(例えば、ワークデータ826a、バーリング工具10が移動すべき第2移動経路を規定する第2経路データ826g等)は、メモリ82に記憶される。
【0123】
タップ加工に必要なデータは、入力装置86を介して制御装置8に入力されてもよいし、他のコンピュータから通信回路84を介して制御装置8に入力されてもよいし、制御装置8によって算出または導出されてもよい。タップ加工に必要なデータ(例えば、ワークデータ826a、タップ工具18が移動すべき第3移動経路を規定する第3経路データ826h等)は、メモリ82に記憶される。なお、メモリ82に、貫通穴96の中心軸に沿う方向におけるフランジ97の長さを特定するデータが記憶されている場合には、制御装置8は、当該データに基づいて、第3経路データ826h(例えば、第1壁99aに対するタップ工具18の挿入深さを規定する第3経路データ826h)を導出してもよい。また、メモリ82に、バーリング工具10の工具径を特定するデータが記憶されている場合には、制御装置8は、当該データに基づいて、貫通穴96の中心軸に沿う方向におけるフランジ97の長さを導出してもよい。
【0124】
入力装置86は、タッチパネル付きディスプレイ862に限定されない。例えば、制御装置8は、ボタン、スイッチ、レバー、ポインティングデバイス、キーボード等の入力装置86と、当該入力装置86に入力されたデータ、あるいは、その他の情報を表示するディスプレイと、を備えていてもよい。また、複数のコンピュータが協働して、制御装置8として機能してもよい。また、メモリ82は、複数箇所に分散配置されていてもよい。例えば、メモリ82の一部は、クラウドストレージに含まれていてもよい。
【0125】
制御装置8のプロセッサ80がメモリ82に記憶されたプログラム822を実行することにより、制御装置8は制御指令を生成する。また、通信回路84は、当該制御指令を、制御対象機器(より具体的には、回転駆動装置36、移動装置4、レーザ照射装置50a等の除去装置5、第2回転駆動装置25、工具交換装置6等)に送信する。こうして、プロセッサ80がプログラム822を実行することにより、制御装置8は、回転駆動装置36、移動装置4、レーザ照射装置50a等の除去装置5、第2回転駆動装置25、工具交換装置6等を制御することができる。
【0126】
図24に記載の例では、メモリ82に、ワークデータ826aが記憶されている。ワークデータ826aは、例えば、ワーク9の形状データ、バーリング加工によって形成されることとなる貫通穴96の位置を特定するデータ、および、バーリング加工によって形成されることとなる貫通穴96のサイズを特定するデータ(例えば、貫通穴96の内径を特定するデータ)を含む。また、ワークデータ826aは、バーリング加工によって形成されることとなるフランジの長さを特定するデータ含んでいてもよい。
【0127】
制御装置8は、少なくともワークデータ826aに基づいて(より具体的には、ワーク9の形状データ、バーリング加工によって形成されることとなる貫通穴96の位置を特定するデータ、および、バーリング加工によって形成されることとなる貫通穴96のサイズを特定するデータに基づいて)、除去対象領域RTの位置および除去対象領域RTのサイズを導出し、導出された除去対象領域RTの位置および除去対象領域RTのサイズを示すデータ826bをメモリ82に記憶してもよい。
【0128】
また、制御装置8は、除去対象領域RTの位置および除去対象領域RTのサイズを示すデータ826bに基づいて、レーザヘッド51等の除去装置5が移動すべき第1移動経路を導出し、導出された第1移動経路を示す第1経路データ826fをメモリ82に記憶してもよい。
【0129】
更に、制御装置8は、第1経路データ826fに基づいて、第1移動指令S1を生成し、レーザヘッド51等の除去装置5が第1移動経路に沿って移動するよう、移動装置4に第1移動指令S1を送信してもよい。第1移動指令S1を受信する移動装置4は、レーザヘッド51等の除去装置5を第1移動経路に沿って移動させる。こうして、除去対象領域RTにおいて、第1被覆層93が除去される。
【0130】
上述の例では、ワークデータ826aに基づいて、除去対象領域RTの位置、除去対象領域RTのサイズ、および、上述の第1移動経路が、制御装置8によって、自動的に導出されるため、オペレータは、これらのデータを制御装置8に入力する必要がない。よって、オペレータの作業負担が低減され、オペレータの入力ミスに起因する不良ワークの発生が回避される。
【0131】
図24に記載の例では、メモリ82に、ワークデータ826aが記憶されている。ワークデータ826aは、例えば、ワーク9の形状データ、バーリング加工によって形成されることとなる貫通穴96の位置を特定するデータ、母材91の材質データ、母材91の板厚データ、第1被覆層93の材質データ、第1被覆層93の厚さデータ等を含む。
【0132】
制御装置8は、少なくともワークデータ826aに基づいて、レーザ出力パラメータ826dを決定し、決定されたレーザ出力パラメータ826dをメモリ82に記憶してもよい。なお、レーザ出力パラメータ826dは、例えば、パワー、パルス周波数、デューティー比、焦点距離等を含む。また、制御装置8は、少なくともワークデータ826aに基づいて、レーザヘッド51の送り速度指令値を決定し、決定された送り速度指令値826eをメモリ82に記憶してもよい。
【0133】
制御装置8は、少なくとも、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間の障害物(例えば、上述の第2壁99b)の特性データ826cに基づいて、レーザ出力パラメータを決定し、決定されたレーザ出力パラメータ826dをメモリ82に記憶してもよい。また、制御装置8は、少なくとも、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間の障害物(例えば、上述の第2壁99b)の特性データ826cに基づいて、レーザヘッド51の送り速度指令値を決定し、決定された送り速度指令値826eをメモリ82に記憶してもよい。なお、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間の障害物の特性データ826cは、例えば、障害物の有無、障害物の厚さ、および、障害物の材質のうちの少なくとも1つを含む。
【0134】
例えば、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間に障害物(例えば、上述の第2壁99b)が存在する場合、当該障害物はレーザによって除去される必要がある。よって、この場合、レーザ出力を相対的に大きくするか、レーザヘッド51の送り速度を相対的に小さくすることが好ましい。
【0135】
例えば、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間の障害物の厚さが大きくなる程、レーザ出力を相対的に大きくするか、レーザヘッド51の送り速度を相対的に小さくしてもよい。
【0136】
例えば、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間の障害物の材質がレーザによって溶融され易い材質である場合(例えば、レーザ吸収特性が高い材質、または、融点が低い材質である場合)、レーザ出力を相対的に小さくするか、レーザヘッド51の送り速度を相対的に大きくしてもよい。
【0137】
制御装置8は、少なくとも、上述のワークデータ826a、および、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間の障害物(例えば、上述の第2壁99b)の特性データ826cの両方に基づいて、レーザ出力パラメータを決定し、決定されたレーザ出力パラメータ826dをメモリ82に記憶してもよい。また、制御装置8は、少なくとも、上述のワークデータ826a、および、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間の障害物(例えば、上述の第2壁99b)の特性データ826cの両方に基づいて、レーザヘッド51の送り速度指令値を決定し、決定された送り速度指令値826eをメモリ82に記憶してもよい。
【0138】
上述の例では、ワークデータ826a、および、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間の障害物(例えば、上述の第2壁99b)の特性データ826cのうちの少なくとも一方に基づいて、レーザ出力パラメータ826d、および、レーザヘッド51の送り速度指令値826eのうちの少なくとも一方が、制御装置8によって、自動的に導出される。よって、オペレータの作業負担が低減される。
【0139】
(除去モードM1)
制御装置8は、除去装置5(より具体的には、レーザ照射装置50a)、および、移動装置4を制御することにより、除去モードM1を実行可能である。除去モードM1は、
図2、
図12乃至
図15に例示されるように、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去されるように、レーザB、薬液L、第2工具T2等の除去手段を第1被覆層93に適用するモードである。以下、レーザBを、第1被覆層93に適用する例について説明する。
【0140】
例えば、
図17または
図26に記載の例において、プログラム822(より具体的には、第1プログラム822a)を実行する制御装置8は、レーザ照射装置50aに、上述のレーザ出力パラメータ826dおよび射出指令E1を送信する。また、プログラム822(より具体的には、第1プログラム822a)を実行する制御装置8は、メモリ82に記憶されたレーザヘッド51の送り速度指令値826e、および、第1経路データ826fに基づいて、移動装置4に第1移動指令S1を送信する。
【0141】
レーザ出力パラメータ826dおよび射出指令E1を受信するレーザ照射装置50aは、当該レーザ出力パラメータ826dに対応する出力のレーザを、除去対象領域RTに向けて射出する。第1移動指令S1を受信する移動装置4は、レーザヘッド51を第1移動経路に沿って移動させる。こうして、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去される。なお、レーザヘッド51のレーザ射出軸上に障害物(例えば、第2壁99b)が存在する場合、除去対象領域RTに向けて射出されるレーザによって、当該障害物は除去される。
【0142】
(反転モードM2)
制御装置8は、ワーク支持装置2(より具体的には、第2回転駆動装置25)を制御することにより、反転モードM2を実行可能であってもよい。
【0143】
例えば、
図19または
図27に記載の例において、プログラム822(より具体的には、第2プログラム822b)を実行する制御装置8は、第2回転駆動装置25に、反転指令RWを送信する。反転指令RWを受信する第2回転駆動装置25は、ワーク9を反転させる。より具体的には、反転指令RWを受信する第2回転駆動装置25は、ワーク9の長手方向に平行な軸ATまわりに、第1チャック21および第2チャック23を180度回転させることにより、ワーク9を反転させる。
【0144】
(バーリング加工モードM3)
制御装置8は、回転駆動装置36、および、移動装置4を制御することにより、バーリング加工モードM3を実行可能である。
【0145】
例えば、
図20または
図28に記載の例において、プログラム822(より具体的には、第3プログラム822c)を実行する制御装置8は、回転駆動装置36に、第1回転指令R1を送信する。また、プログラム822(より具体的には、第3プログラム822c)を実行する制御装置8は、メモリ82に記憶された第2経路データ826gに基づいて、移動装置4に第2移動指令S2を送信する。
【0146】
第1回転指令R1を受信する回転駆動装置36は、バーリング工具10を、バーリング工具10の長手方向中心軸まわりに回転させる。より具体的には、第1回転指令R1を受信する回転駆動装置36は、加工ヘッド30の回転体31を第1軸AX1まわりに回転させることにより、バーリング工具10を回転軸AXまわりに回転させる。また、第2移動指令S2を受信する移動装置4は、バーリング工具10を第2移動経路に沿って移動させる。より具体的には、第2移動指令S2を受信する第1駆動装置41bは加工ヘッド30をZ軸方向に沿って移動させることにより、バーリング工具10を第2移動経路に沿って移動させる。こうして、回転状態のバーリング工具10によって、板部分90の第1領域RG1がバーリング加工される。換言すれば、回転状態のバーリング工具10によって、板部分90の第1領域RG1に、貫通穴96およびフランジ97が形成される。
【0147】
(工具交換モードM4)
制御装置8は、加工ヘッド30に保持されたバーリング工具10を、タップ工具18に交換する工具交換モードM4を実行可能であってもよい。制御装置8は、移動装置4、および、工具交換装置6を制御することにより、工具交換モードM4を実行する。
【0148】
例えば、
図21に記載の例において、プログラム822(より具体的には、第4プログラム822d)を実行する制御装置8は、移動装置4に移動指令S4を送信する。また、プログラム822(より具体的には、第4プログラム822d)を実行する制御装置8は、工具交換装置6に工具交換指令C1を送信する。移動指令S4を受信する移動装置4は、加工ヘッド30を、工具交換位置P1に移動させる。また、工具交換指令C1を受信する工具交換装置6は、加工ヘッド30に保持されたバーリング工具10を、タップ工具18に交換する。
【0149】
(タップ加工モードM5)
制御装置8は、回転駆動装置36、および、移動装置4を制御することにより、タップ加工モードM5を実行可能である。
【0150】
例えば、
図22または
図29に記載の例において、プログラム822(より具体的には、第5プログラム822e)を実行する制御装置8は、回転駆動装置36に、第2回転指令R2を送信する。また、プログラム822(より具体的には、第5プログラム822e)を実行する制御装置8は、メモリ82に記憶された第3経路データ826hに基づいて、移動装置4に第3移動指令S3を送信する。
【0151】
第2回転指令R2を受信する回転駆動装置36は、タップ工具18を、タップ工具18の長手方向中心軸まわりに回転させる。より具体的には、第2回転指令R2を受信する回転駆動装置36は、加工ヘッド30の回転体31を第1軸AX1まわりに回転させることにより、タップ工具18を回転軸AXまわりに回転させる。また、第3移動指令S3を受信する移動装置4は、タップ工具18を第3移動経路に沿って移動させる。より具体的には、第3移動指令S3を受信する第1駆動装置41bは加工ヘッド30をZ軸方向に沿って移動させることにより、タップ工具18を第3移動経路に沿って移動させる。こうして、回転状態のタップ工具18によって、貫通穴96を規定する壁面96wに雌ネジ96sが形成される。
【0152】
(ワーク加工方法)
実施形態におけるワーク加工方法は、上述の除去工程(第2ステップST2)の実行前に、制御装置8が、メモリ82に記憶された上述のワークデータ826a、および/または、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間の障害物(例えば、上述の第2壁99b)の特性データ826cに基づいて、レーザ出力パラメータ826d、および、レーザヘッド51の送り速度指令値826eのうちの少なくとも一方を決定する工程を備えていてもよい。また、実施形態におけるワーク加工方法は、決定されたレーザ出力パラメータ826d、および/または、レーザヘッド51の送り速度指令値826eをメモリ82に記憶する工程を備えていてもよい。
【0153】
上述の除去工程(第2ステップST2)は、制御装置8が、少なくとも、メモリ82に記憶された上述の第1経路データ826fに基づいて、上述の第1移動指令S1を生成することを含んでいてもよい。上述の除去工程(第2ステップST2)は、制御装置8が、少なくとも、メモリ82に記憶された上述の第1経路データ826f、および、上述のレーザヘッド51の送り速度指令値826eに基づいて、上述の第1移動指令S1を生成することを含んでいてもよい。
【0154】
また、上述の除去工程(第2ステップST2)は、制御装置8から上述の第1移動指令S1を受信する移動装置4が、レーザヘッド51を、送り速度指令値826eに対応する送り速度で、第1移動経路に沿って移動させることと、制御装置8から上述のレーザ出力パラメータ826dおよび射出指令E1を受信するレーザ照射装置50aが、当該レーザ出力パラメータ826dに対応する出力のレーザを、除去対象領域RTに向けて射出することとを含んでいてもよい。こうして、除去対象領域RTにおいて、第1被覆層93が除去される。
【0155】
上述のバーリング工程(第4ステップST4)は、制御装置8が、少なくとも、メモリ82に記憶された上述の第2経路データ826gに基づいて、上述の第2移動指令S2を生成することを含んでいてもよい。
【0156】
また、上述のバーリング工程(第4ステップST4)は、制御装置8から第1回転指令R1を受信する回転駆動装置36がバーリング工具10を回転軸AXまわりに回転させることと、上述の第2移動指令S2を受信する移動装置4が、バーリング工具10を第2移動経路に沿って移動させることとを含んでいてもよい。こうして、第1被覆層93が除去された状態の第1領域RG1を横切るように回転状態のバーリング工具10が移動する。その結果、当該回転状態のバーリング工具10によって、第1領域RG1に、貫通穴96およびフランジ97が形成される。
【0157】
上述のタップ工程(第5ステップST5)は、制御装置8が、少なくとも、メモリ82に記憶された上述の第3経路データ826hに基づいて、上述の第3移動指令S3を生成することを含んでいてもよい。
【0158】
また、上述のタップ工程(第5ステップST5)は、制御装置8から第2回転指令R2を受信する回転駆動装置36がタップ工具18を回転軸AXまわりに回転させることと、上述の第3移動指令S3を受信する移動装置4が、バーリング工具10を第3移動経路に沿って移動させることとを含んでいてもよい。こうして、貫通穴96を横切るように回転状態のタップ工具18が移動する。その結果、当該回転状態のタップ工具18によって、貫通穴96を規定する壁面96wに雌ネジ96sが形成される。
【0159】
(プログラム822)
実施形態におけるプログラム822は、上述のワーク加工方法のうち、少なくとも、除去工程(第2ステップST2)、および、バーリング工程(第5ステップST5)を、工作機械1(より具体的には、工作機械1の制御装置8)に実行させるためのプログラムである。
【0160】
より具体的には、実施形態におけるプログラム822は、(1)母材91と、母材91の少なくとも一部を覆う第1被覆層93とを含む板部分90を有するワーク9がワーク支持装置2によって支持された状態で、板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93を除去する工程(除去工程:第2ステップST2)と、(2)板部分90の第1領域RG1から第1被覆層93が除去された後、板部分90をバーリング加工する工程(バーリング工程:第4ステップST4)と、を具備するワーク加工方法を工作機械1(より具体的には、工作機械1の制御装置8)に実行させるためのプログラムである。
【0161】
図5に例示されるように、板部分90をバーリング加工する工程(第4ステップST4)は、回転状態のバーリング工具10を上述の第1方向DR1に移動させることにより、板部分90の第1領域RG1に、貫通穴96とフランジ97とを形成することを含む。
【0162】
除去工程(第2ステップST2)、および、バーリング工程(第4ステップST4)の詳細については、上述の第1の実施形態あるいは上述の第2の実施形態において説明済みであるため、これらの工程の詳細についての説明は省略する。
【0163】
実施形態におけるプログラム822は、(1)上述の除去工程(第2ステップST2)と、(2)ワーク9を反転させる工程(より具体的には、ワーク9の長手方向に平行な軸ATまわりに、ワーク9を180度回転させる工程)と、(3)上述のバーリング工程(第4ステップST4)と、を具備するワーク加工方法を工作機械1(より具体的には、工作機械1の制御装置8)に実行させるためのプログラムであってもよい。なお、ワーク9を反転させる工程は、上述の除去工程(第2ステップST2)と上述のバーリング工程(第4ステップST4)との間に実行される。
【0164】
ワーク9を反転させる工程の詳細については、上述の第1の実施形態あるいは上述の第2の実施形態において説明済みであるため、当該工程の詳細についての説明は省略する。
【0165】
実施形態におけるプログラム822は、(1)上述の除去工程(第2ステップST2)と、(2)上述のバーリング工程(第4ステップST4)と、(3)貫通穴96を規定する壁面96wに雌ネジ96sを形成する工程(タップ工程:第5ステップST5)と、を具備するワーク加工方法を工作機械1(より具体的には、工作機械1の制御装置8)に実行させるためのプログラムであってもよい。
【0166】
なお、上述のバーリング工程(第4ステップST4)と、上述のタップ工程(第5ステップST5)との間で、加工ヘッド30に保持されたバーリング工具10をタップ工具18に交換する工程が実行されてもよい。
【0167】
加工ヘッド30に保持されたバーリング工具10をタップ工具18に交換する工程、および、タップ工程(第5ステップST5)の詳細については、上述の第1の実施形態あるいは上述の第2の実施形態において説明済みであるため、これらの工程の詳細についての説明は省略する。
【0168】
実施形態におけるプログラム822は、(1)上述の除去工程(第2ステップST2)と、(2)ワーク9を反転させる工程(より具体的には、ワーク9の長手方向に平行な軸ATまわりに、ワーク9を180度回転させる工程)と、(3)上述のバーリング工程(第4ステップST4)と、(4)加工ヘッド30に保持されたバーリング工具10をタップ工具18に交換する工程と、(5)上述のタップ工程(第5ステップST5)と、を具備するワーク加工方法を工作機械1(より具体的には、工作機械1の制御装置8)に実行させるためのプログラムであってもよい。
【0169】
付加的に、実施形態におけるプログラム822は、工作機械1の制御装置8に、(1)少なくともワークデータ826aに基づいて(より具体的には、ワーク9の形状データ、バーリング加工によって形成されることとなる貫通穴96の位置を特定するデータ、および、バーリング加工によって形成されることとなる貫通穴96のサイズを特定するデータに基づいて)、除去対象領域RTの位置および除去対象領域RTのサイズを導出する工程と、(2)除去対象領域RTの位置および除去対象領域RTのサイズを示すデータ826bに基づいて、レーザヘッド51等の除去装置5が移動すべき第1移動経路を導出する工程と、(3)レーザヘッド51等の除去装置5が当該第1移動経路に沿って移動するよう、移動装置4に第1移動指令S1を送信する工程と、を実行させるためのサブプログラムを含んでいてもよい。
【0170】
付加的に、実施形態におけるプログラム822は、工作機械1の制御装置8に、(1)少なくともワークデータ826aに基づいて、レーザ出力パラメータ826dを決定する工程と、(2)当該レーザ出力パラメータ826dに対応する出力のレーザが除去対象領域RTに向けて射出されるよう、レーザ照射装置50aに射出指令E1および当該レーザ出力パラメータ826dを送信する工程と、を実行させるためのサブプログラムを含んでいてもよい。
【0171】
付加的に、実施形態におけるプログラム822は、工作機械1の制御装置8に、(1)少なくとも、除去対象領域RTとレーザヘッド51との間の障害物(例えば、上述の第2壁99b)の特性データ826cに基づいて、レーザ出力パラメータ826dを決定する工程と、(2)当該レーザ出力パラメータ826dに対応する出力のレーザが除去対象領域RTに向けて射出されるよう、レーザ照射装置50aに射出指令E1および当該レーザ出力パラメータ826dを送信する工程と、を実行させるためのサブプログラムを含んでいてもよい。
【0172】
実施形態におけるメモリ82は、上述のプログラム822を記録した不揮発性記憶媒体であってもよい。上述のプログラム822を記録した不揮発性記憶媒体は、
図30に例示されるように、可搬式の記憶媒体82Mであってもよい。
【0173】
本発明は上記各実施形態または各変形例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態または各変形例は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態または各変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態または他の変形例にも適用可能である。さらに、各実施形態または各変形例における任意付加的な構成は、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0174】
1、1A、1B…工作機械、2…ワーク支持装置、4…移動装置、5…除去装置、6…工具交換装置、8…制御装置、9…ワーク、9a…パイプ、10…バーリング工具、11…先端部、13…柱部、15…肩部、18…タップ工具、21…第1チャック、22…第2回転体、23…第2チャック、24…第3回転体、25…第2回転駆動装置、25a…第1モータ、25b…第2モータ、30…加工ヘッド、31…回転体、33…フレーム、36…回転駆動装置、36m…モータ、40…第1移動装置、41a…第1移動体、41b…第1駆動装置、43a…第2移動体、43b…第2駆動装置、45b…第3駆動装置、46…第2移動装置、46m…モータ、50a…レーザ照射装置、50b…薬液適用装置、50c…切削加工装置、51…レーザヘッド、52…レーザ射出口、53…レーザ光源、55…光学部品、61…工具交換アーム、63…アーム回転装置、65…アーム移動装置、80…ハードウェアプロセッサ、82…メモリ、82M…記憶媒体、84…通信回路、86…入力装置、88…バス、90…板部分、91…母材、91s…露出面、93…第1被覆層、93a…メッキ層、94…第2被覆層、94a…メッキ層、96…貫通穴、96s…雌ネジ、96w…壁面、97…フランジ、99a…第1壁、99b…第2壁、99c…第3壁、99d…第4壁、211…把持部材、231…ガイドローラ、822…プログラム、822a…第1プログラム、822b…第2プログラム、822c…第3プログラム、822d…第4プログラム、822e…第5プログラム、826…データ、826a…ワークデータ、826b…除去対象領域の位置およびサイズを示すデータ、826c…障害物の特性データ、826d…レーザ出力パラメータ、826e…送り速度指令値、826f…第1経路データ、826g…第2経路データ、826h…第3経路データ、862…タッチパネル付きディスプレイ、AT…ワークの長手方向に平行な軸、AX…回転軸、AX1…第1軸、AX2…第2軸、B…レーザ、C1…工具交換指令、E1…射出指令、G…アシストガス、HD1…第1工具ホルダ、HD2…第2工具ホルダ、L…薬液、M1…除去モード、M2…反転モード、M3…バーリング加工モード、M4…工具交換モード、M5…タップ加工モード、OP…アクセス開口、OP1…貫通穴タイプの開口、OP2…スリットタイプの開口、P1…工具交換位置、R…回転指令、R1…第1回転指令、R2…第2回転指令、RB…除去済み領域、RG1…第1領域、RT…除去対象領域、RW…反転指令、S…移動指令、S1…第1移動指令、S2…第2移動指令、S3…第3移動指令、S4…移動指令、SP…内部領域、SP1…内部空間、T1…薬液を塗布する器具、T2…第2工具
【要約】
ワーク加工方法は、母材と、母材の少なくとも一部を覆う第1被覆層とを含む板部分を有するワークを準備する工程と、板部分をバーリング加工する工程と、を具備する。母材から第1被覆層に向かう方向を第1方向と定義するとき、板部分をバーリング加工する工程は、回転状態のバーリング工具を第1方向に移動させることにより、板部分の第1領域に、貫通穴とフランジとを形成することを含む。板部分をバーリング加工する工程の前に、板部分の第1領域から第1被覆層を除去する工程が実行される。