(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240603BHJP
【FI】
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2024028605
(22)【出願日】2024-02-28
【審査請求日】2024-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清田 大勝
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇之
(72)【発明者】
【氏名】木村 駿介
(72)【発明者】
【氏名】白井 良和
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 信
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特許第6568413(JP,B2)
【文献】特開2016-36253(JP,A)
【文献】特開2007-336796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家の構内において電力系統に電気的に接続され、前記電力系統から供給される電力を受電可能な分電盤と、
前記分電盤に電気的に接続され、前記分電盤を通じて供給される電力を消費する負荷装置と、
前記需要家の構内において前記分電盤に電気的に接続され、充放電が可能な蓄電池と、
前記電力系統を通じて前記分電盤に電力を供給する電力供給事業者により管理され、前記蓄電池の充放電を遠隔地から制御することが可能な制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
電力市場価格が相対的に安価な時間帯に、前記電力系統から前記分電盤を通じて供給される電力を前記蓄電池に蓄え、前記電力市場価格が相対的に高価な時間帯に、前記蓄電池の電力を前記負荷装置に供給することで前記電力系統から前記分電盤への電力量を制御し、
前記分電盤が前記電力系統から受電した時間帯に拘わらず、前記分電盤が前記電力系統から受電した電力量に応じて、前記需要家に支払いを請求する電気料金を決定する料金決定処理を行う、電力システム。
【請求項2】
前記制御装置は、容量市場により取り決められた金銭的対価を前記需要家ではなく前記電力供給事業者が受けることと引き換えに、前記容量市場により取り決められた所定期間において、前記蓄電池の電力を、前記分電盤を通じて前記電力系統に逆潮流させる逆潮流制御を行う、請求項1に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を有する電力システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、蓄電池を有する電力システムにおける蓄電池の充放電を制御する技術が開示されている。かかる特許文献1では、需要家が支払う電気料金の単価が時間帯によって異なっており、第1時間帯で蓄電池を充電し、電気料金が第1時間帯よりも高い第2時間帯で蓄電池の放電を行うように、蓄電池の充放電制御が行われる。特許文献1では、蓄電池が設置される需要家が、蓄電池の充放電制御によって金銭的メリットを得ることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、再生可能エネルギーの拡大や電力の安定化のために、各々の需要家に蓄電池が設置されることが望ましい。蓄電池を導入することを普及させるためには、例えば、電力系統を通じて需要家に電力を供給する電力供給事業者が、需要家に対して蓄電池の導入を促すことが望ましい。そのためには、蓄電池の導入を促すことを実行するためのモチベーションを電力供給事業者に与えるべく、需要家が蓄電池を導入することに関する金銭的メリットを、電力供給事業者が享受できることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、電力供給事業者が金銭的メリットを享受可能な電力システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の電力システムは、需要家の構内において電力系統に電気的に接続され、電力系統から供給される電力を受電可能な分電盤と、分電盤に電気的に接続され、分電盤を通じて供給される電力を消費する負荷装置と、需要家の構内において分電盤に電気的に接続され、充放電が可能な蓄電池と、電力系統を通じて分電盤に電力を供給する電力供給事業者により管理され、蓄電池の充放電を遠隔地から制御することが可能な制御装置と、を備え、制御装置は、電力市場価格が相対的に安価な時間帯に、電力系統から分電盤を通じて供給される電力を蓄電池に蓄え、電力市場価格が相対的に高価な時間帯に、蓄電池の電力を負荷装置に供給することで電力系統から分電盤への電力量を制御し、分電盤が前記電力系統から受電した時間帯に拘わらず、分電盤が電力系統から受電した電力量に応じて、需要家に支払いを請求する電気料金を決定する料金決定処理を行う。
【0007】
また、制御装置は、容量市場により取り決められた金銭的対価を前記需要家ではなく電力供給事業者が受けることと引き換えに、容量市場により取り決められた所定期間において、蓄電池の電力を、分電盤を通じて電力系統に逆潮流させる逆潮流制御を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力供給事業者が金銭的メリットを享受可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる電力システムの構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、比較例における蓄電池の導入方法の一例を示す。
【
図3】
図3は、本実施形態における蓄電池の導入方法の一例を示す。
【
図4】
図4は、制御装置による蓄電池の充放電制御の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、電力供給事業者と需要家との間のやり取り、および、電力供給事業者と電力市場との間のやり取りを説明する図である。
【
図6】
図6は、容量の取引に関する流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態にかかる電力システム1の構成の一例を示す概略図である。電力システム1は、分電盤10、負荷装置12、蓄電池14、第1電力変換装置16、太陽電池18、第2電力変換装置20および制御装置30を備える。分電盤10、負荷装置12、蓄電池14、第1電力変換装置16、太陽電池18および第2電力変換装置20は、需要家40の構内に設置される。
【0012】
分電盤10は、電力系統42に電気的に接続され、電力系統42から供給される電力を受電可能な構成となっている。負荷装置12は、分電盤10に電気的に接続され、分電盤10を通じて供給される電力を消費する任意の電気機器である。
【0013】
蓄電池14は、第1電力変換装置16を介して分電盤10に電気的に接続される。蓄電池14は、充放電が可能な二次電池である。
【0014】
第1電力変換装置16は、分電盤10から供給される電力を変換して蓄電池14に供給することで蓄電池14を充電することができる構成となっている。また、第1電力変換装置16は、蓄電池14の電力を変換して分電盤10に供給することで、分電盤10を通じて蓄電池14の電力を負荷装置12に供給することができる構成となっている。また、第1電力変換装置16は、後述の制御装置30の制御の下、蓄電池14の電力を変換して分電盤10に供給することで、分電盤10を通じて蓄電池14の電力を電力系統42に逆潮流させることが可能な構成となっている。
【0015】
なお、第1電力変換装置16の電力変換機能が、蓄電池14自体に設けられてもよい。
【0016】
太陽電池18は、第2電力変換装置20を介して分電盤10に電気的に接続される。太陽電池18は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換して電力を生成する。第2電力変換装置20は、太陽電池18により生成された電力を変換して分電盤10に供給することができる構成となっている。
【0017】
制御装置30は、電力系統42を通じて需要家40に電力を供給する電力供給事業者50により管理される。したがって、制御装置30は、需要家40側ではなく電力供給事業者50側に設置される。電力供給事業者50は、電力系統42を通じて需要家40の分電盤10に電力を供給する契約を需要家40と締結している企業や団体などである。
【0018】
制御装置30は、例えば、インターネットや電話回線網や専用通信網などの任意の通信ネットワーク52を通じて、需要家40の第1電力変換装置16と接続される。なお、第1電力変換装置16の電力変換機能が蓄電池14自体に設けられる態様では、制御装置30は、通信ネットワーク52を通じて、需要家40の蓄電池14と接続されてもよい。
【0019】
また、制御装置30は、通信ネットワーク52を通じて、電力市場60と接続可能となっている。電力市場60は、実際の電力量を取引する卸電力取引市場、および、将来の電力の供給力を示す容量を取引する容量市場を含む。以後、説明の便宜のため、電力市場の卸電力取引市場で取引される電力の価格を、電力市場価格という場合がある。電力市場価格は、例えば、30分などの所定の単位期間ごとに、電力の需給状況に応じて変動する。
【0020】
制御装置30は、プロセッサと、プログラムを格納するメモリとを含んで構成される。制御装置30は、プロセッサがプログラムを実行することで、後述するように、需要家40の蓄電池14を制御することができる。
【0021】
制御装置30は、通信ネットワーク52を通じて、第1電力変換装置16を遠隔地から制御することで、結果として、蓄電池14の充放電を遠隔地から制御可能な構成となっている。なお、第1電力変換装置16の電力変換機能が蓄電池14自体に設けられる態様では、制御装置30は、蓄電池14自体を直接的に遠隔地から制御する構成となっていてもよい。
【0022】
制御装置30は、より詳細には、制御指令生成部70、制御実行部72、料金決定部74および逆潮流制御部76として機能する。
【0023】
制御指令生成部70は、蓄電池14の制御内容を示す制御指令を生成する。例えば、制御指令生成部70は、蓄電池14を充電する充電指令および蓄電池14を放電する放電指令のいずれかを生成する。
【0024】
制御実行部72は、制御指令生成部70により生成された制御指令に基づいて、蓄電池14を実際に制御する処理を行う。すなわち、充電指令が生成された場合、制御実行部72は、第1電力変換装置16を制御し、分電盤10から第1電力変換装置16に供給される交流電力を直流電力に変換して、変換後の電力が蓄電池14に供給されるようにする。こうして、蓄電池14の充電を実行する。また、放電指令が生成された場合、制御実行部72は、第1電力変換装置16を制御し、蓄電池14の直流電力を交流電力に変換して、変換後の電力が分電盤10に供給されるようにする。こうして、蓄電池14の放電を実行する。
【0025】
なお、ここでは、制御指令生成部70と制御実行部72とが、共通の制御装置30によって実現される構成を説明した。しかし、制御指令生成部70と制御実行部72とが、別々の装置によって実現されてもよい。その場合、制御指令生成部70の機能を有する装置が、電力供給事業者50により管理され、制御実行部72の機能を有する装置が、蓄電池14の制御業務を電力供給事業者50の代わりに実行する特定の第三者(例えば、特定の委託会社)により管理されてもよい。
【0026】
図2は、比較例における蓄電池14の導入方法の一例を示す。
図2に示すように、比較例では、需要家40が蓄電池14を導入する際、需要家40は、例えば、蓄電池14の導入費として約200万円の支出が必要となる。
【0027】
一方、蓄電池14を導入した場合、需要家40は、太陽電池18により生成された電力を蓄電池14に充電して利用することが可能となることから、例えば、約39万円の光熱費メリットを得ることができる。また、需要家40は、蓄電池14の導入時に、例えば、約120万円の自治体(例えば、東京都)の補助金を得ることができる。つまり、需要家40は、蓄電池14を導入することで、光熱費メリットと自治体の補助金とを合計した収入(例えば、約159万円)を得ることができる。
【0028】
しかし、この比較例では、
図2の両矢印で示すように、蓄電池14を導入することによる支出が、収入よりも大きくなることがあり、蓄電池14を導入することについて、需要家40が躊躇するおそれがある。これを踏まえ、本実施形態では、以下の
図3で例示する導入方法を検討する。
【0029】
図3は、本実施形態における蓄電池14の導入方法の一例を示す。
図3で示すように、本実施形態では、需要家40が蓄電池14を導入する際、電力供給事業者50が、需要家40に対して蓄電池14を割引販売してもよいものとする。それにより、需要家40が蓄電池14を導入する際、需要家40は、例えば、約200万円から約170万円などに、支出を下げることができる。
【0030】
蓄電池14の販売価格が所定の販売価格以下となると、
図3で示すように、需要家40は、自治体の補助金に加え、例えば、約30万円の国の補助金も受けることが可能となる。つまり、需要家40は、光熱費メリットと自治体の補助金と国の補助金とを合計した収入(例えば、約189万円)を得ることができる。そうすると、需要家40は、
図3の両矢印で示すように、蓄電池14の導入に際して、支出以上の収入を得ることが可能となる。その結果、需要家40は、蓄電池14の導入による金銭的な導入メリットが大きくなり、蓄電池14を導入することを容易にすることが可能となる。
【0031】
しかし、単に、電力供給事業者50が蓄電池14を割引販売するだけだと、電力供給事業者50の負担が大きくなり、電力供給事業者50としては、需要家40に蓄電池14の導入を促すモチベーションに繋がりにくい。
【0032】
そこで、本実施形態では、電力供給事業者50の制御装置30が需要家40の蓄電池14の充放電を遠隔制御することで、需要家40の蓄電池14の制御を電力供給事業者50側が行うようにする。それによって、本実施形態では、電力供給事業者50が利益を創出できるようにする。つまり、
図3で示すように、電力供給事業者50は、需要家40から受け取る電気料金に加え、需要家40の蓄電池14を制御することによる制御益を得ることができる。
【0033】
なお、蓄電池14の販売については、電力供給事業者50自体が行う態様に限らず、例えば、電力供給事業者50と関係を有する特定の販売店が行うようにしてもよい。その場合、電力供給事業者50が蓄電池14の遠隔制御により取得した利益の一部を、当該販売店に手数料として支払うようにしてもよい。そうすることで、当該販売店は、蓄電池14の割引販売による利益の減少分を、電力供給事業者50からの手数料により補填することができる。つまり、当該販売店は、当該手数料により一定の利益を得つつ、需要家40に蓄電池14を比較的低価格で販売することが可能となる。
【0034】
上述のように、本実施形態の電力システム1では、電力供給事業者50の制御装置30が需要家40の蓄電池14の充放電を制御する。具体的には、制御装置30は、電力市場価格が相対的に安価な時間帯に、電力系統42から需要家40の分電盤10を通じて供給される電力を蓄電池14に蓄えるように、第1電力変換装置16(あるいは、蓄電池14自体)を遠隔制御する。制御装置30は、電力市場価格が相対的に高価な時間帯に、蓄電池14の電力を負荷装置12に供給するように、第1電力変換装置16(あるいは、蓄電池14自体)を遠隔制御する。蓄電池14の電力が負荷装置12に供給されると、電力系統42から分電盤10を通じて負荷装置12に供給される電力量が結果的に減少し、電力系統42から分電盤10への電力の供給を実質的に抑制(制限)することができる。
【0035】
図4は、制御装置30による蓄電池14の充放電制御の流れを説明するフローチャートである。制御装置30は、
図4の一連の処理を定期的に繰り返し実行する。
【0036】
まず、制御装置30の制御指令生成部70は、電力市場60と通信し、現時点の電力市場価格を取得する(S10)。次に、制御指令生成部70は、取得した現時点の電力市場価格が所定値以下であるか否かを判定する(S11)。所定値は、固定値として設定されてもよいし、例えば、過去の電力市場価格の推移や季節性などを考慮した変動値として設定されてもよい。
【0037】
電力市場価格が所定値以下であると判定された場合(S11におけるYES)、制御指令生成部70は、蓄電池14を充電するように動作させる指令である充電指令を生成する(S12)。
【0038】
そして、制御実行部72は、制御指令生成部70により生成された充電指令に従って蓄電池14の充電を実行し(S13)、一連の処理を終了する。より詳細には、制御実行部72は、電力系統42から需要家40の分電盤10を通じて供給される電力を蓄電池14に蓄えるように、第1電力変換装置16を遠隔制御する。
【0039】
一方、電力市場価格が所定値より高いと判定された場合(S11におけるNO)、制御指令生成部70は、蓄電池14を放電するように動作させる指令である放電指令を生成する(S14)。
【0040】
そして、制御実行部72は、制御指令生成部70により生成された放電指令に従って蓄電池14の放電を実行し(S15)、一連の処理を終了する。より詳細には、制御実行部72は、蓄電池14の電力を負荷装置12に供給することで電力系統42から分電盤10への電力の供給を制限するように、第1電力変換装置16を遠隔制御する。
【0041】
このようにして、電力市場価格が相対的に安価な時間帯に、蓄電池の充電が行われ、電力市場価格が相対的に高価な時間帯に、蓄電池の放電が行われる。
【0042】
図5は、電力供給事業者50と需要家40との間のやり取り、および、電力供給事業者50と電力市場60との間のやり取りを説明する図である。
【0043】
図5で示すように、電力供給事業者50は、電力市場60において卸電力の取引を行い、(1)電力市場価格に従った調達コストを電力市場60に支払って、(2)電力市場から電力を調達する。また、電力供給事業者50は、(3)電力市場60から調達した電力を需要家40に供給することの対価として、(4)需要家40から電気料金を受け取る。
【0044】
ここで、本実施形態では、電力供給事業者50と需要家40との間で、所定の電力プランの電気料金が締結されているとする。所定の電力プランは、需要家40の分電盤10が電力系統42から受電した時間帯に拘わらず、分電盤10が電力系統42から受電した電力量に応じて電気料金が決定されるようになっている。
【0045】
つまり、受電した時間帯だけに着目すれば、どの時間帯に受電したとしても、需要家40が電力供給事業者50に支払う電気料金は変わらない。例えば、需要家40からすれば、電力需要が繁忙する時間帯に所定量の電力を受電したとしても、電力需要が繁忙しない時間帯に当該所定量の電力を受電した場合と比べて、料金が高くなることはない。ただし、受電した電力量が多くなれば、その分だけ電気料金は高くなる。
【0046】
図1で示すように、制御装置30は、料金決定部74としても機能する。料金決定部74は、分電盤10が電力系統42から受電した時間帯に拘わらず、分電盤10が電力系統42から受電した電力量に応じて、需要家40に支払いを請求する電気料金を決定する料金決定処理を行う。以後、需要家40の分電盤10が電力系統42から受電した電力量、つまり、電力供給事業者50が需要家40に供給した電力量を、説明の便宜のため、供給電力量という場合がある。
【0047】
料金決定部74は、例えば、単位期間(例えば、1か月)ごとに料金決定処理を行う。料金決定部74は、例えば、需要家40が契約している電力プランを参照し、当該電力プランにおける単価に単位期間中の供給電力量を乗算して電気料金を決定する。
【0048】
これにより、電力供給事業者50は、需要家40に電力を供給した時間帯に拘わらず、換言すると、電力市場価格に拘わらず、供給電力量に従った金額の電気料金を需要家40から受け取ることができる。
【0049】
図5で示すように、電力供給事業者50の制御装置30は、電力市場価格が相対的に安価な時間帯に、(5)蓄電池14を充電する制御を行う。すなわち、電力供給事業者50は、電力市場価格が相対的に安価な時間帯に、需要家40の分電盤10に比較的多くの電力を供給する。
【0050】
これにより、電力供給事業者50は、電力市場価格に拘わらず供給電力量に従った電気料金を受け取ることができるとともに、電力市場60から電力を調達して需要家40の蓄電池14に供給する際には電力市場価格が安価な時間帯に行うことで、受け取る電気料金に対する調達コストを抑制することができる。
【0051】
また、電力供給事業者50の制御装置30は、電力市場価格が相対的に高価な時間帯に、(5)蓄電池14を放電する制御を行う。蓄電池14から放電された電力が負荷装置12で消費されることで、電力系統42から負荷装置12に供給される電力が抑制される。すなわち、電力供給事業者50は、電力市場価格が相対的に高価な時間帯に、需要家40の分電盤10へ供給する電力量を少なくする。
【0052】
これにより、電力供給事業者50は、電力市場価格に拘わらず供給電力量に従った電気料金を受け取ることができるとともに、電力市場価格が高価な時間帯に電力系統42から分電盤10への電力の供給を制限することで、電力市場60からの高価な電力の調達が抑制され、受け取る電気料金に対する調達コストを抑制することができる。
【0053】
このように、本実施形態の電力システム1では、電力供給事業者50の制御装置30が需要家40の蓄電池14を制御することで、電力供給事業者50が電力市場60から調達する電力の調達コストを実質的に抑制することができる。その結果、本実施形態の電力システム1では、電力供給事業者50が金銭的なメリットを得ることができる。
【0054】
すなわち、本実施形態の電力システム1では、仮に、電力供給事業者50が需要家40に対して蓄電池14を割引販売したとしても、電力供給事業者50としては、蓄電池14を割引販売することによる金銭的デメリットを、蓄電池14を制御することにより創出可能な金銭的メリットにより相殺することができる。
【0055】
さらに、本実施形態の電力供給事業者50は、電力市場60の容量市場において、当該電力供給事業者50が電力を供給する需要家40の蓄電池14の容量を取引するようにしてもよい。容量市場において取引が成立すると、取り決められた所定期間において、取り決められた容量分の電力を電力系統42に供給する義務が発生する。そして、当該容量分の電力の供給が実行されると、容量市場から金銭的対価が支払われることとなる。以後、需要家40側から電力系統42に電力を供給することを、逆潮流という場合がある。
【0056】
図1で示すように、制御装置30は、逆潮流制御部76としても機能する。逆潮流制御部76は、容量市場により取り決められた金銭的対価を需要家40ではなく電力供給事業者50が受け取ることと引き換えに、容量市場により取り決められた所定期間において、需要家40の蓄電池14に蓄えられた電力を、分電盤10を通じて電力系統42に逆潮流させる逆潮流制御を行う。
【0057】
図6は、容量の取引に関する流れを説明するフローチャートである。
【0058】
電力供給事業者50は、需要家40の蓄電池14の容量に関して、容量市場のオークションに応札する(S20)。例えば、電力供給事業者50は、複数の需要家40の蓄電池14を取り纏めて、それら複数の蓄電池14を、所謂、発動指令電源として容量市場のオークションに応札してもよい。
【0059】
需要家40の蓄電池14の容量に関する取引が成立しなかった場合(S21におけるNO)、今回の容量に関する取引は終了となる。
【0060】
需要家40の蓄電池14の容量に関する取引が成立(約定)した場合(S21におけるYES)、逆潮流制御部76は、容量市場により取り決められた所定期間となるまでは、容量市場に基づく逆潮流の制御を行わない。そして、容量市場により取り決められた所定期間となり、電力系統42の需給が逼迫すると、送配電網を管理する一般送配電事業者は、容量市場での取引が成立した事業者に対して、特定期間に逆潮流を行うことを指示する発動指令を送信する。そうすると、逆潮流制御部76は、一般送配電事業者から当該発動指令を取得する(S22)。
【0061】
逆潮流制御部76は、発動指令により特定される特定期間に容量市場により取り決められた電力の逆潮流を行う予定を示す逆潮流スケジュールを生成する(S23)。
【0062】
逆潮流制御部76は、発動指令により特定される特定期間になると、逆潮流を実行する(S24)。例えば、逆潮流制御部76は、逆潮流スケジュールを参照して、蓄電池14の電力を電力系統42に供給するように第1電力変換装置16(あるいは、蓄電池14自体)を遠隔制御する。
【0063】
逆潮流の実行が完了すると、電力供給事業者50は、容量市場から金銭的対価を受け取る(S25)。この際、容量市場での取引が成立した事業者である電力供給事業者50が、容量市場での取引による逆潮流を履行したときの金銭的対価の受取先となる。
【0064】
このようにして、蓄電池14の電力を電力系統42に逆潮流することで、電力供給事業者50は、需要家40の蓄電池14の容量に基づく金銭的対価を、容量市場を通じて得ることができる。
【0065】
このため、本実施形態の電力システム1では、需要家40の蓄電池14の容量を容量市場で取引することで、電力供給事業者50が、金銭的なメリットを得ることが可能となる。
【0066】
すなわち、本実施形態の電力システム1では、仮に、電力供給事業者50が需要家40に対して蓄電池14を割引販売したとしても、電力供給事業者50としては、蓄電池14を割引販売することによる金銭的デメリットを、蓄電池14の容量を容量市場で取引することにより創出可能な金銭的メリットにより相殺することができる。
【0067】
なお、蓄電池14の容量を容量市場で取引することについては、省略されてもよい。その場合、制御装置30において、逆潮流制御部76が省略されてもよい。
【0068】
以上のように、本実施形態の電力システム1は、電力系統42を通じて需要家40の分電盤10に電力を供給する電力供給事業者50により管理され、蓄電池14の充放電を遠隔地から制御することが可能な制御装置30を含む。制御装置30は、電力市場価格が相対的に安価な時間帯に、電力系統42から分電盤10を通じて供給される電力を蓄電池14に蓄え、電力市場価格が相対的に高価な時間帯に、蓄電池14の電力を負荷装置12に供給することで電力系統42から分電盤への電力の供給を制限するように制御する。制御装置30は、分電盤10が電力系統42から受電した時間帯に拘わらず、分電盤10が電力系統42から受電した電力量に応じて、需要家40に支払いを請求する電気料金を決定する料金決定処理を行う。
【0069】
これにより、本実施形態の電力システム1では、電力供給事業者50が電力市場価格に拘わらず供給電力量に従った電気料金を受け取ることができるとともに、電力供給事業者50の制御装置30が需要家40の蓄電池14を制御することで、電力供給事業者50が電力市場60から調達する電力の調達コストを実質的に抑制することができる。
【0070】
したがって、本実施形態の電力システム1によれば、電力供給事業者50が金銭的なメリットを享受することができる。
【0071】
本実施形態の電力システム1では、仮に、電力供給事業者50が需要家40に対して蓄電池14を割引販売したとしても、電力供給事業者50が金銭的なメリットを享受できるため、電力供給事業者50の金銭的な負担を軽減することができる。その結果、本実施形態の電力システム1では、電力供給事業者50としては、蓄電池14の導入を促すことを実行するためのモチベーションが上がり、需要家40に対して蓄電池14を導入することを積極的に促すことができる。また、本実施形態の電力システム1では、需要家としては、蓄電池14の導入費用が下がることで、蓄電池14の導入が容易となる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0073】
例えば、上記実施形態では、需要家40の構内に太陽電池18および第2電力変換装置20が設けられていた。しかし、太陽電池18および第2電力変換装置20は、省略されてもよい。この態様においても、電力供給事業者50の制御装置30が需要家40の蓄電池14を制御することについては変わらない。
【0074】
また、コンピュータを、制御装置として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0075】
なお、本明細書に示した各処理は、必ずしもフローチャートに記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 電力システム
10 分電盤
12 負荷装置
14 蓄電池
30 制御装置
40 需要家
42 電力系統
50 電力供給事業者
【要約】
【課題】電力供給事業者が金銭的メリットを享受できるようにする。
【解決手段】電力システム1は、分電盤10と、負荷装置12と、蓄電池14と、電力系統42を通じて分電盤10に電力を供給する電力供給事業者50により管理され、蓄電池14の充放電を遠隔地から制御することが可能な制御装置30と、を備え、制御装置30は、電力市場価格が相対的に安価な時間帯に、電力系統42から分電盤10を通じて供給される電力を蓄電池14に蓄え、電力市場価格が相対的に高価な時間帯に、蓄電池14の電力を負荷装置12に供給することで電力系統42から分電盤10への電力量を制御し、
分電盤10が電力系統42から受電した時間帯に拘わらず、分電盤10が電力系統42から受電した電力量に応じて、需要家40に支払いを請求する電気料金を決定する料金決定処理を行う。
【選択図】
図1