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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ファイル伝送システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/62 20130101AFI20240604BHJP
   G06F 21/64 20130101ALI20240604BHJP
   G06F 16/182 20190101ALI20240604BHJP
   G06F 16/14 20190101ALI20240604BHJP
【FI】
G06F21/62 345
G06F21/62 318
G06F21/64
G06F16/182
G06F16/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020562558
(86)(22)【出願日】2019-12-29
(86)【国際出願番号】 JP2019051637
(87)【国際公開番号】W WO2020138505
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2018248803
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522225619
【氏名又は名称】株式会社ALTPLAN
(72)【発明者】
【氏名】山田 徳行
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 良太
【審査官】岸野 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-049181(JP,A)
【文献】特開2018-073064(JP,A)
【文献】特開2004-053969(JP,A)
【文献】特開2017-200031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0318759(US,A1)
【文献】特開2007-102672(JP,A)
【文献】特開2008-191917(JP,A)
【文献】特開2015-138198(JP,A)
【文献】福光 正幸 ほか,秘密分散法と匿名通信による秘匿性に優れたP2P型ストレージ技術の提案,情報処理学会 研究報告 マルチメディア通信と分散処理(DPS) [online],日本,情報処理学会,2016年02月25日,Vol. 2016-DPS-166 No.6,p.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/62
G06F 21/64
G06F 16/182
G06F 16/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバを有するネットワークを利用してクライアント間で情報伝送を行うファイル伝送システムであって、
第1クライアントに設けられた送信部において、閾値分散法により元ファイルを複数個の断片ファイルに分散し、該複数個の断片ファイルをネットワークを介して前記サーバ内に設置された記憶部に送信して保存し、第2クライアントに設けられた受信部において、前記記憶部から受信した断片ファイルのうち、二つ以上の断片ファイルから前記元ファイルを復元するように構成されており、
前記送信部が、
前記元ファイルを予め定めた三つ以上の断片ファイルに分散すると共に、前記元ファイルを復元するためのインデックスファイルを作成する分散処理部と、
前記複数個の断片ファイルのそれぞれを前記記憶部に送信すると共に、前記インデックスファイルを前記断片ファイルとは別に前記ネットワークを介して前記受信部に送信する分散処理ファイル送信部と、から構成され、
前記受信部が、
前記断片ファイルから元ファイルを復元するための前記インデックスファイルを前記記憶部に格納された前記断片ファイルとは別に前記送信部から前記ネットワークを介して受信すると共に、前記記憶部に格納された前記複数個の断片ファイルを前記ネットワークを介して前記記憶部から受信する分散処理ファイル受信部と、
前記インデックスファイルから、前記二つ以上の断片ファイルを組み合わせて、前記元ファイルを復元する復元処理部と、から構成され、
前記分散処理部は、前記各断片ファイルから第1ハッシュ値を算出し、前記インデックスファイルに追加し、
前記復元処理部は、前記元ファイルを復元する際、前記記憶部から受信した各断片ファイルから第2ハッシュ値を算出し、算出した前記第2ハッシュ値と前記送信部から送信された前記インデックスファイルに含まれる前記第1ハッシュ値とを比較し、前記第1ハッシュ値と前記第2ハッシュ値が一致した場合は、復元処理を継続し、前記第1ハッシュ値と前記第2ハッシュ値が異なる場合は、復元処理を中断することを特徴とするファイル伝送システム。
【請求項4】
前記分散処理ファイル送信部が、断片ファイル送信ユニットとE-メール送受信ユニットとからなり、
前記分散処理ファイル受信部が断片ファイル受信ユニットとE-メール送受信ユニットとからなり、
前記インデックスファイルが、分散処理ファイル送信部の前記E-メール送受信ユニットから前記ネットワークを介して前記分散処理ファイル受信部のE-メール送受信ユニットへ送信されることを特徴とする請求項1に記載のファイル伝送システム。
【請求項5】
前記受信部は記憶部を備え、
前記復元処理部は復元処理ユニットとインデックスファイル取得ユニットからなり、
前記復元処理ユニットは、元ファイルの復元及び前記記憶部への元ファイルの登録が終わった後、開封通知を作成して、前記分散処理ファイル受信部の前記E-メール送受信ユニットから前記ネットワークを介して前記送信部に対して前記開封通知を送信し、
前記分散処理ファイル送信部の前記E-メール送受信ユニットは、前記受信部から開封通知を受け取ると、当該開封通知を表示部に表示することを特徴とする請求項4に記載のファイル伝送システム。
【請求項6】
前記分散処理ファイル送信部が断片ファイル送信ユニットとインデックスファイル送受信ユニットとからなり、
前記分散処理ファイル受信部が断片ファイル受信ユニットとインデックスファイル送受信ユニットとからなり、
前記インデックスファイルが、前記インデックスファイル送受信ユニットから前記ネットワークを介して前記記憶部に格納され、
前記記憶部に格納された前記インデックスファイルが、前記インデックスファイル送受信ユニットからダウンロードされることを特徴とする請求項1又は2に記載のファイル伝送システム。
【請求項9】
前記ネットワークに接続される複数個のコンピュータを備え、
前記各コンピュータが、それぞれ動作するプログラムによって前記送信部及び/又は受信部として機能することを特徴とする請求項1に記載のファイル伝送システム。
【請求項15】
前記コンピュータを請求項9に記載のファイル伝送システムとして機能させるプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を格納したファイルをネットワークを介して秘密性を保持して伝送するためのファイル伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば種々のファイルをネットワークを介して相手方に伝送する場合、電子メール(以下、E-メールと表示する)システムが広く利用されている。しかし、E-メールシステムが秘密性に関して問題があることから、例えば伝送すべきファイル(元ファイル)を暗号化して相手方に伝送し、別途相手方にパスワードを通知することにより、相手方は、受信したファイルを、パスワードを使用して復元することにより、元ファイルを取得するようにしている。しかしながら、パスワート方式その他の暗号化技術は第三者に解読されたり盗まれたりする危険が拭えない。また、ファイルの暗号化方式は、E-メールシステムのウィルス対策の観点から利用者の責任において開封を求めるメッセージが出るため、暗号化したファイルやプログラムの実行ファイル(所謂exeファイル)を添付したE-メール自体を拒絶する組織もある。
【0003】
さらに、パスワードを利用したE-メールによるファイル伝送は、メールの誤送信によって、個人の情報漏洩や、企業の機密情報漏洩のおそれがある。メール誤送信は、殆どが人為的ミスであり、近年のE-メールソフトは、メールアドレスを入力すると入力補完機能が働いて候補のアドレスが示され、それを選んで送信できる利便性を持っており、この効率面を追求した機能が誤送信を誘発している。防止するツールもあるが送信者及び受信者の手間と費用が増大し、メール誤送信を完全に排除することは業務効率を著しく損なう。
【0004】
例えば、一時預かりサーバ等のファイル共有システムを利用して、伝送すべきファイルをアップロードすると共に、受信者に当該ファイルのダウンロード先のURLを送信し、受信者がファイル共有システムから当該ファイルをダウンロードすることにより伝送することも可能である。しかし、上記ファイル共有システムを利用したファイル伝送は、コストが嵩むと共に、ダウンロードに至る手順が煩雑で、またURLの誤送信が発生した場合には個人情報等が相手方以外に受信されてしまう。
【0005】
E-メール誤送信に対しては種々の対策が提供されている。例えば、送信者が添付ファイル付きのE-メールをメールサーバに送信すると、メールサーバが添付ファイルを自動的に剥離して、この添付ファイルを所定の保存領域に保存し、メールには添付ファイルのURLを挿入して、送信先にE-メール配信を行なう。この添付ファイルを入手するために必要なIDとパスワードは、送信者がメールサーバから確認メールを受信した後、メールサーバにアクセスして、当該添付ファイルを確認し、受信者のダウンロードを承認すると、相手方に送信される。ここで、送信者は添付ファイルを確認できるので、万一誤送信の場合には、受信者がダウンロードする前に当該添付ファイルを削除できる。他方、受信者は、最初のメールに記載されたURLと、その後に受け取るID及びパスワードが揃った段階で、初めて添付ファイルのダウンロードが可能となる。即ち、受信者が添付ファイルをダウンロードすると、その旨の通知が送信者に送信される。これにより、この通知が受信者に受け取られるまでは、送信者は添付ファイルの削除を行なうことが可能である。このようにして、特に企業におけるメール誤送信による情報漏洩のリスクを回避している。
【0006】
WEBシステムの公開サーバの脆弱性を狙った攻撃も増加し、一時預かりサーバ等のファイル共有システムは公開サーバを活用したものであるが故に、脆弱性を悪用した攻撃から公開サーバを守るため、ベンダーから提供される修正パッチを適用しなければならず、ファイル共有システムを維持していくための運用コストが増加する。クラウドによるファイル共有システムは、クラウド運営事業自体がクラウドに保管しているファイルの保証は一切していない。クラウドストレージに保管したファイルに関しては利用者がセキュリティを含めた管理運用面での全責任を負い、万が一の場合、リスク自体は利用者が負う。
【0007】
上記のように、何れの公知の方式も情報漏洩等の虞が払拭できないため、暗号化方式に代えて、近年、秘密分散処理により情報を複数の部分に分散して該分散した情報を送信し、受信側はこれを復元して送受信する秘密分散方式を用いることが検討されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-42341号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】https:it.impressbm.co.jp/articles/-/15192
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、簡単に且つ低コストで、伝送すべきファイル又はフォルダ(すなわち圧縮ファイル)を確実に相手方に伝送することができ、業務効率を向上させるファイル伝送システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のファイル伝送システムは、送信部において、閾値分散法により元ファイルを複数個の断片ファイルに分散し、該複数個の断片ファイルをネットワークを介して記憶部に送信し、受信部において、前記記憶部から受信した断片ファイルのうち、二つ以上の断片ファイルから前記元ファイルを復元するようにしたファイル伝送システムであって、
前記送信部が、
前記元ファイルを予め定めた三つ以上の断片ファイルに分散すると共に、前記元ファイルを復元するためのインデックスファイルを作成する分散処理部と、
前記複数個の断片ファイルを前記記憶部に送信すると共に、前記インデックスファイルを前記ネットワークを介して前記受信部に送信する分散処理ファイル送信部と、
から構成され、
前記受信部が、
前記断片ファイルから元ファイルを復元するための前記インデックスファイルを前記送信部から前記ネットワークを介して受信すると共に、前記記憶部に格納された前記複数個の断片ファイルを前記ネットワークを介して前記記憶部から受信する分散処理ファイル受信部と、
前記インデックスファイルから、前記二つ以上の断片ファイルを組み合わせて、前記元ファイルを復元する復元処理部と、
から構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単に且つ低コストで第三者への情報漏洩や解読を完全に防止して、伝送すべきファイルを確実且つ安全に送受信できるようにした、極めて優れたファイル伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のファイル伝送システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
図2図1のファイル伝送システムにおける送信部の構成を示すブロック図である。
図3図1のファイル伝送システムにおける受信部の構成を示すブロック図である。
図4図1のファイル伝送システムにおける送信部の動作を順次に示すフローチャートである。
図5図1のファイル伝送システムにおける受信部の動作を順次に示すフローチャートである。
図6】第1実施形態の変形例の構成を示すブロック図である。
図7図6のファイル伝送システムにおける送信部の構成を示すブロック図である。
図8図6のファイル伝送システムにおける受信部の構成を示すブロック図である。
図9図7のファイル伝送システムにおける送信部の動作を順次に示すフローチャートである。
図10図8のファイル伝送システムにおける受信部の動作を順次に示すフローチャートである。
図11】情報端末の操作画面を示す図である。
図12】情報端末の操作画面の変形例を示す図である。
図13】ファイル伝送システムにおいて閲覧専用のソフトウェアを使用した場合の利用状況を説明する図である。
図14】別のファイル伝送システムにおいて閲覧専用のソフトウェアを使用した場合の利用状況を説明する図である。
図15】送信部側で復元が終了した後に断片ファイルを消去する方法を説明するフロー図である。
図16図1及び図2に示す送信部において、分割の失敗時にレジウム機能によって分散処理を再履行する工程の一態様を示すフローチャートである。
図17図1及び図2に示す送信部において、分散転送の失敗時にレジウム機能によって分散転送処理を再履行する工程の他の態様を示すフローチャートである。
図18】情報端末にファイル伝送システムのソフトウェアの保護機能として、使用者を識別するためのPINコードの設定をするためのフローチャートである。
図19】ファイル伝送システムのソフトウェアの保護機能を説明するフローチャートである。
図20】元ファイルと断片ファイルとインデックスファイルとの関係を示す図である。
図21】断片ファイルの復元方法を示すフローチャートである。
図22】元フォルダを伝送するファイル伝送システムにおける送信部の構成を示すブロック図である。
図23】元フォルダを伝送するファイル伝送システムにおける受信部の構成を示すブロック図である。
図24】元フォルダを伝送する別のファイル伝送システムにおける送信部の構成を示すブロック図である。
図25】元フォルダを伝送する別のファイル伝送システムにおける受信部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1において、ファイル伝送システム10は、送信部20と、受信部30と、記憶部としてのクラウドストレージ40と、ネットワーク50と、から構成されている。送信部20及び受信部30は、図1にはそれぞれ一つのみが示されているが、実際には、複数個の送信部20及び複数個の受信部30が配置されていてもよく、各送信部20は、同時に受信部30としても構成され得る、即ち各送信部20からそれぞれ任意の受信部30に対して相互にファイル伝送を行なうことができる。
【0015】
記憶部40は、後述する複数個の断片ファイルを個別に格納できる複数の保存先を備えた一つの記憶部であるか又は複数の記憶部から構成される。記憶部40は、クラウドストレージ、VPN接続されたストレージ及びネットワーク50に接続されたストレージを含むストレージの何れか又はこれらの組合せから構成される。クラウドストレージ40は、図2に示すように、互いに異なる複数個、図示のように三個のクラウドストレージ41,42及び43から構成してもよい。三個のクラウドストレージ41~43は、後述するように互いに隔置されているか又は後述する複数個の断片ファイルを個別に格納できる複数の保存先を備えた一つのクラウドストレージであってもよい。
【0016】
ネットワーク50は公衆回線であって、後述するように、各送信部20と各受信部30と記憶部40とを相互に接続することにより、各種ファイルを相互に送受信することができる。ネットワーク50は、例えばインターネット、会社等の構内で使用されるイントラネット、携帯電話回線網、会社等の本店、支店、工場、海外拠点等をインターネットを介して接続する専用回線や仮想専用回線(VPN)、Wi-Fi(登録商標)その他の無線LAN等が挙げられ、例えばTCP/IPや携帯電話回線網のプトトコルやこれらを組合せた所定のプロトコル等で通信接続する。
【0017】
送信部20は、例えばパーソナルコンピュータやタブレットやスマートデバイスなどの情報端末から構成され、本ファイル伝送システム用のプログラムをインストールすることにより、本ファイル伝送システム10における送信部として以下のように機能する。送信部20は、図2に示すように、分散処理部21と分散処理ファイル送信部22と記憶部23とから構成される。分散処理部21は、分散処理ユニット21aとインデックスファイル生成ユニット21bとからなる。分散処理ユニット21aは、分散処理により後述する元ファイルから断片ファイルを作成し、インデックスファイル生成ユニット21bは、後述するインデックスファイルを作成する。分散処理ファイル送信部22は、分散処理部21で分散処理により作成された断片ファイル及びインデックスファイルのための送信部である。分散処理ファイル送信部22は、断片ファイルを送信する送信ユニット22aと、インデックスファイルを送信するE-メール送受信ユニット22bとからなる。
分散処理ユニット21aは、伝送するために選択された元ファイル60を記憶部23から読み出して、この元ファイル60を閾値分散法により複数個、図示の場合、三個の断片ファイル61,62及び63に分散して、分散処理ファイル送信部22に送出する。
【0018】
元ファイル60は、意味のある情報のデータを含む。元ファイル60は送信者が伝送するために選択したファイルで、送信者自身が作成したファイルや送信者が入手したコピーファイルも含む。ファイル60は、テキストファイル,CSVファイル,ワードファイルのような文章ファイル、PDFファイル,パワーポイントのような発表等に関するファイル、web用のHTMLファイル等、図に関するCADファイル、写真ファイル、楽曲ファイル、動画ファイル、プログラムの実行ファイル、コンピュータ断層撮影(CT)、核磁気共鳴撮影(MRI)、コンピュータX線撮影(CR)等で撮影した医用画像ファイル(DICOM)、フォルダ、フォルダを圧縮したファイル等、一定の「情報」を生み出すための、まとまりをもった一つ一つのデータを含む。フォルダは、複数のファイルを圧縮ファイルとしてグループ化したデータであり、本発明においてファイルはフォルダを含む概念である。「断片ファイル」(非特許文献1参照)とは、分割ファイル(特許文献1参照)とも呼ばれ、元ファイル60のデータを秘密分散方式により特殊な符号化を施して複数の断片に分割したファイルであり、個々の断片に分割したファイルだけが漏洩しても元のファイルの内容は分からない。本発明の断片ファイルは、元ファイルの情報が分散処理で作成されたファイルであり、それ自体不完全で無意味なファイルを示す。分散データは、断片ファイルと呼び、インデックス情報はインデックスファイルと呼ぶ。
【0019】
本発明で用いる閾値分散法はそれ自体公知であって、2017年10月にISO(国際標準化機構)で採択された秘密分散方式のグローバルスタンダード技術(ISO規格ISO/IEC19592-2:2017)であり、本実施形態においては、採択された5つの秘密分散方式のうち、「5.Computational additive secret sharing Scheme」を用いているが、他の方式を用いることもできる。
【0020】
本実施形態では、閾値分散法により分散された三つの断片ファイル61,62及び63は、復元の際に、三つ揃わなくても、任意の二つの断片ファイル61,62又は62,63あるいは61,63により元ファイル60の復元を行なうことができる。分割数(n、ここでnは3以上の整数)と復元に用いる断片ファイルの数(m)とは、n>m≧2の関係がある。閾値分散法により四つ以上の断片ファイルに分散することも可能ではあるが、分散数が多くなると、断片ファイルを格納する記憶容量も増大し、復元の際に断片ファイルの受信処理も煩雑になり、処理時間がかかる。通常は三つの断片ファイル61,62及び63に分散することで十分に目的を達成できる。
【0021】
本実施形態において、断片ファイル61,62及び63を保存するストレージ40は、クラウドストレージ41,クラウドストレージ42,クラウドストレージ43として説明する。クラウドストレージ41~43は、後述する保存場所が識別できればよく、クラウドストレージ41~43は、一つのクラウドストレージで保存場所が区別できるように保存してもよい。クラウドストレージ41~43は、保存場所が区別できればそれぞれ異なるクラウドストレージであってもよい。
【0022】
分散処理部21のインデックスファイル生成ユニット21bは、さらに、分散したこれらの断片ファイル61,62及び63に関して、一つのインデックスファイル64を作成する。インデックスファイル64は、元ファイルを復元するための所謂メタファイルであり、元ファイル60と断片ファイル61~63等に関する種々の情報を含むファイルである。具体的には、インデックスファイル64は、分散処理部21で作成される断片ファイル61~63に関する情報を含み、具体的には、断片ファイル61~63に関するハッシュ値64a,保存先情報64b,参照可否情報64c及び元ファイル60に関するファイル名及びハッシュ値等の情報64dを含む。
【0023】
ハッシュ値64aは、ドキュメントや数字等の文字列の羅列から一定長(固定長)の0と1を組み合わせたデータに要約するためのハッシュ関数を実行することにより生成され、ハッシュ関数は、例えばMD5等の一般的なハッシュ関数であればよい。ハッシュ値64aは、対応する断片ファイルの一部が変更されると変動するので、断片ファイルの書き換えの場合には、ハッシュ値64aが異なることとなる。
【0024】
保存先情報64bは、各断片ファイル61,62及び63の記憶部40における保存位置情報である。記憶部40は、何れの事業者の提供に係るものであってよい。分散処理部21は、図2に示すように、記憶部40として利用する、例えば三箇所のクラウドストレージ41,42及び43を前もって選択して指定しておく。三箇所のクラウドストレージ41~43は、単一事業者のクラウドストレージに三箇所の保存先を設定したものでも良いし、異なる事業者のクラウドストレージとしても良い。
【0025】
参照可否情報64cは、各断片ファイルの保存先として指定されたクラウドストレージ41,42及び43が、それぞれ参照可能か否かを表す情報である。この構成によれば、受信部30は、インデックスファイル64に含まれる各断片ファイル61~63の保存先情報に基づいて、対応する記憶部41~43から各断片ファイル61~63をネットワーク50を介して受信することが可能である。
【0026】
分散処理部21のインデックスファイル生成ユニット21bは、上述したハッシュ値64a,保存先情報64b,参照可否情報64c及び元ファイル60に関するハッシュ値等の情報64dを、インデックスファイル64に格納して、分散処理ファイル送信部22のE-メール送受信ユニット22bに送出する。
【0027】
分散情報送信部22の断片ファイル送信ユニット22aは、分散処理部21からの各分散データ61,62及び63をネットワーク50を介してクラウドストレージ40に送信する。即ち、分散処理ファイル送信部22は、一の断片ファイル61を保存先情報64bで指定されるクラウドストレージ41に、二の断片ファイル62を保存先情報64bで指定されるクラウドストレージ42に、そして三の断片ファイル63を保存先情報64bで指定されるクラウドストレージ43に、それぞれ送信して保存する。
分散処理ファイル送信部22のE-メール送受信ユニット22bは、上述したインデックスファイル情報64をメタファイルとして、ネットワーク50を介して受信部30に対して直接にメール送信する。分散処理ファイル送信部22のE-メール送受信ユニット22bは、受信部30から開封通知(後述)を受け取ると、その旨の表示を図示しない表示部に表示する。
【0028】
受信部30は、例えばパーソナルコンピュータやタブレット、スマートデバイス等の情報端末から構成され、本ファイル伝送システム用のプログラムをインストールすることにより、本ファイル伝送システム10における受信部として以下の通り機能する。
【0029】
受信部30は図3に示すように、分散処理ファイル受信部31と復元処理部32と記憶部33とから構成される。分散処理ファイル受信部31は、インデックスファイル64を受信するE-メール送受信ユニット31aと断片ファイル受信ユニット31bとからなる。復元処理部32は、インデックスファイル取得ユニット32aと復元処理ユニット32bとからなる。
分散処理ファイル受信部31のE-メール送受信ユニット31aは、送信部20からネットワーク50を介してインデックスファイル64を受信すると、このインデックスファイル64の保存先情報64bに基づいて、断片ファイルの保存先のクラウドストレージ41,42及び43から、分散処理ファイル受信部31の断片ファイル受信ユニット31bを介してそれぞれ断片ファイル61,62及び63を受信して、復元処理部32の復元処理ユニット32bに送出する。
【0030】
復元処理部32は、断片ファイル受信ユニット31bからの断片ファイル61,62及び63から、それぞれ図3に示すハッシュ値64eを算出し、インデックスファイル64に含まれるハッシュ値64aと比較する。即ち、復元処理部32の復元処理ユニット32bは、一つ目の断片ファイル61に関して、ハッシュ値64eとハッシュ値64aとを比較して、これらが異なる場合には、受信した断片ファイル61が正常ではないと判断して、当該断片ファイル61の処理を中断する。これに対して、ハッシュ値64eとハッシュ値64aが一致した場合には、復元処理部32の復元処理ユニット32bは、受信した断片ファイル61が正常であると判断して、二つ目の断片ファイル62に関して、ハッシュ値64eとハッシュ値64aを比較し、これらが異なる場合には、受信した断片ファイル62が正常ではないと判断して、当該断片ファイル62の処理を中断する。
ここで、ハッシュ値64eとハッシュ値64aが一致した場合には、復元処理部32は、受信した断片ファイル62が正常であると判断して、三つ目の分散ファイル63に関して、ハッシュ値64eとハッシュ値64aを比較し、これらが異なる場合には、受信した断片ファイル63が正常ではないと判断して、当該断片ファイル63の処理を中断する。ハッシュ値64eとハッシュ値64aが一致した場合には、復元処理部32は、受信した断片ファイル63が正常であると判断して、次の処理に進む。
【0031】
復元処理部32の復元処理ユニット32bがすべての断片ファイル61,62及び63についてハッシュ値の比較を行なった結果、正常であると判断された断片ファイル61,62又は63のうち、任意の二つの断片ファイル61,62又は63を選択し、選択した断片ファイル61,62又は63に基づいて、インデックスファイル64の元ファイル60に関する情報64dを参照して元ファイル60を復元し、記憶部33に登録する。復元処理ユニット32bで復元したファイルは、送信部20側の元ファイル60とは、区別するために復元ファイルとも呼ぶ。
最後に、復元処理ユニット32bは、元ファイル60の復元及び記憶部33への登録が終わった後、開封通知32cを作成して、分散処理ファイル受信部31のE-メール送受信ユニット31aからネットワーク50を介して送信部20に対して送信する。
【0032】
本発明によるファイル伝送システム10は以上のように構成されており、図4及び図5のフローチャートに示すように動作する。
まず図4のフローチャートに従って、送信部20の処理について説明する。分散処理部21は、ステップST1にて、記憶部23から伝送すべき元ファイル60を選択して読み出し、ST2にて、元ファイル60を分散処理して断片ファイル61,62及び63を作成し、分散処理ファイル送信部22に送出する。続いて、分散処理部21のインデックス情報生成部21bは、ST3にて、これらの断片ファイル61~63に関するインデックスファイル64を作成し、分散処理ファイル信部22の断片ファイル送信ユニット22aに送出する。これにより、分散処理ファイル送信部22は、ST4にて、各断片ファイル61~63を、それぞれ指定された保存先であるクラウドストレージ41~43に対してネットワーク50を介して送信し保存する。
【0033】
その後、分散処理ファイル送信部22のE-メール送受信ユニット22bは、ST5にて、各断片ファイル61~63の保存先の参照可否情報64cをインデックスファイル64に追加し、ST6にて、各断片ファイル61~63のハッシュ値64aを算出してインデックスファイル64に追加し、ST7にて、各断片ファイル61~63の保存先情報64bをインデックスファイル64に追加すると共に、ST8にて、元ファイル60に関するファイル名及びハッシュ値等の情報64dをインデックスファイル64に追加し、ST9にて、これらの情報64a,64b,64c及び64dを含むインデックスファイル64をメタファイル化し、ST10にて、このメタファイル化したインデックスファイル64を、E-メール送受信ユニット22bからネットワーク50を介して受信部30にメール送信する。このように、メタファイル化したインデックスファイル64は、各断片ファイル61~63のハッシュ値64aと、各断片ファイル61~63の保存先情報64bと、各クラウドストレージ41~43の保存先の参照可否情報64cと、元ファイル60に関するファイル名及びハッシュ値等の情報64dを含むファイルである。以上で、送信部20のファイル伝送の作業が完了する。
【0034】
受信部30にて断片ファイル61~63の受信及び元ファイル60の復元が完了したとき、送信部20には開封通知32cがネットワーク50を介して送られてくる。これにより、送信部20では、開封通知32cが例えば表示部の画面上に表示され、元ファイル60のファイル伝送が完了したことを認識できる。
【0035】
次に、図5のフローチャートに従って、受信部30の処理について説明する。分散処理ファイル受信部31のE-メール送受信ユニット31aは、ステップST11にて、送信部20から送られてくるメタファイル化したインデックスファイル64を受信して、ST12にて、このインデックスファイル64により復元処理を開始する。分散処理ファイル受信部31は、ST13にて、メタファイル化したインデックスファイル64から、ハッシュ値64a,保存先情報64b,参照可否情報64c,元ファイル60に関するハッシュ値等の情報64dを取り出すと共に、保存先情報64bに基づいて、クラウドストレージ41~43から各断片ファイル61~63を受信して、インデックスファイル64と共に復元処理部32に送出する。
【0036】
これを受けて、復元処理部32は、ST14にて、受信した一つ目の断片ファイル61のハッシュ値64eを算出し、ST15にて、当該断片ファイル61に関するハッシュ値64aと比較する。ここで、ハッシュ値64eがハッシュ値64aと異なる場合には、受信部30の復元処理部32は、受信した断片ファイル61が正常ではないと判断して、当該分散ファイル61の処理を中断する。ハッシュ値64eがハッシュ値64aと一致する場合には、受信部30の復元処理部32は、当該断片ファイル61が正常であると判断して、ST16にて、受信した二つ目の断片ファイル62のハッシュ値64eを算出して、ST17にて当該断片ファイル62に関するハッシュ値64aと比較する。
【0037】
ここで、ハッシュ値64eがハッシュ値64aと異なる場合には、受信部30の復元処理部32は、受信した断片ファイル62が正常ではないと判断して、当該断片ファイル62の処理を中断する。これに対して、ハッシュ値64eがハッシュ値64aと一致する場合には、受信部30の復元処理部32は、当該断片ファイル62が正常であると判断し、ST18にて、受信した三つ目の断片ファイル63のハッシュ値64eを算出し、ST19にて、当該断片ファイル63に関するハッシュ値64aと比較する。ハッシュ値64eがハッシュ値64aと異なる場合には、受信部30の復元処理部32は、受信した断片ファイル63が正常ではないと判断して、当該断片ファイル63の処理を中断する。ハッシュ値64eがハッシュ値64aと一致する場合には、受信部30の復元処理部32は、当該断片ファイル63が正常であると判断して、ST20にて、各断片ファイル61~63から元ファイル60を復元して、ST21にて、復元した元ファイル60を記憶部33に登録し保存する。その後、復元処理部32は、元ファイル60の復元を確認するため、開封通知32cを生成して、E-メール送受信ユニット31aからネットワーク50を介して送信部20に対して送信する。このようにして、送信部20から受信部30への元ファイル60の伝送が完了する。
【0038】
上述した実施形態では、受信部30は、断片ファイル61~63及びインデックスファイル64を受信した後、直ちに元ファイル60の復元処理を行なうが、誤送信防止対策として、次のように復号許可を行なってもよい。受信部30が、インデックスファイル64を受信した時点で、復元許可申請情報をネットワーク50を介して送信部20に送信する。これに対して、送信部20は、送信者が当該復元許可申請情報を承認すると、復元承認情報をネットワーク50を介して受信部30に送信する。これを受けて、受信部30は復元承認情報を受信した後、断片ファイル61~63の復元処理を開始する。
【0039】
本発明のファイル伝送システム10は、元ファイル60が閾値分散法により分割されることで、各断片ファイル61~63がそれ自体不完全で無意味なファイルになるから、一つ又は複数個の断片ファイルを組み合わせても、元ファイル60を復元させることは不可能である。各断片ファイル61~63がウィルスに感染したとしても、アプリケーションを実行させる形式ではないので発症しない。各断片ファイルを組み合わせて元ファイル60を復元するために必要なインデックスファイル64は、各断片ファイル61~63とは別に、送信部20からネットワーク50を介して受信部30に対して直接に通知されるので、第三者が各断片ファイル61~63を不正に取得したとしても、これらに基づいて元ファイル60を復元することは不可能である。送信部20が各断片ファイル61~63をそれぞれ対応する記憶部23に送信した後に誤送信が発覚した場合は、例えばクラウドの記憶部40に送信した各断片ファイル61~63を削除することにより、情報漏洩や窃取は回避できる。
受信部30に対してインデックスファイル64を送信してしまった場合でも、受信部30は、各断片ファイル61~63を取得できず、あるいは各断片ファイル61~63を取得したとしても、記憶部40の情報が得られず、元ファイル60に復元することができないので、ファイルの誤送信は全く生じない。
受信部30が記憶部40から受信した各断片ファイル61~63に関して、当該断片ファイルが何らかの理由により一部欠損したり、書き換えられたりした場合はハッシュ値64aが一致しないので、当該断片ファイルが正常ではないと判断され、元ファイル60の復元には利用されない。これにより、元ファイル60の復元には、正常な断片ファイルのみを組み合わせることのみによって、元ファイル60が完全に復元される。
【0040】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。上記実施形態では、送信部20の分散処理部21は、元ファイル60を三つの断片ファイル61~63に分散したが、四つ以上の断片ファイルに分散するようにしてもよい。
【0041】
上述した実施形態においては、断片ファイル61~63を一時保管するための記憶部として、クラウドストレージ40を使用するがこれに限らない。インターネットを介して接続された専用回線やVPNに接続されたストレージ機能を備えた記憶部を利用することも可能である。ネットワークに接続された、ハードディスクドライブ(HDDと呼ぶ)やNAND型のフラッシュメモリ等の不揮発メモリを用いたソリッドステートドライブ(SSD)を用いたストレージを記憶部として利用することも可能である。ネットワークに接続されたHDDは、NASとも呼ばれている。この発明によれば、世界各地に分散して設けられているクラウドストレージ40又はネットワーク50に接続されたストレージを利用することにより、容易に且つ低コストで、複数個の記憶部40を構成できる。
上述した実施形態においては、送信部20は、インデックスファイル64を、ネットワーク50を介して受信部30に対してメール送信するようになっているが、これに限らず、送信部20は、他の手段により受信部30に対してインデックスファイル64を送信するようにしてもよい。その一例を以下で詳細に説明する。
【0042】
(第1の実施形態の変形例)
図6図8は、本発明の第1の実施形態の変形例10Aを示す。ファイル伝送システム10Aは、送信部20Aと受信部30Aと記憶部40Aとネットワーク50Aとから構成されているが、前記記憶部40とは異なり、この記憶部40Aは、断片ファイル61~63を格納する記憶部41,42,43と、インデックスファイル64を格納する記憶部44とから構成される。記憶部40Aは、例えばクラウドストレージやネットワーク50Aに接続されたストレージ(NAS)である。
【0043】
図7に示すように、送信部20Aは、上記した送信部20のE-メール送受信部ユニット22bの代わりにインデックス情報送受信部ユニット22cを備えている。他の構成は、図2に示す送信部20の構成と同じである。送信部20Aでは、元ファイル60が分散処理部21で分散データ61~63及びインデックスファイル64に変換され、これらのファイル61~63及び64が分散処理ファイル送信部22Aにより、ネッワーク50Aを介して記憶部40Aに送信される。具体的には、断片ファイル送信ユニット22aは、ファイル伝送システム10と同様に、分散処理部21からの各断片ファイル61~63を、ネットワーク50Aを介してクラウドストレージ41~43に送信する。ファイル伝送システム10と異なるのは、インデックスファイル64はメタファイルとしてネットワーク50Aを介してクラウドストレージ44に送信して格納される。クラウドストレージ44は、インデックスファイル64の記憶部である。
【0044】
図8に示すように、受信部30Aは、図3に示す受信部20のE-メール送受信ユニット22bの代わりにインデックスファイル送受信ユニット31cを備える。他の構成は、図2に示す受信部30の構成と同じである。インデックスファイル送受信ユニット31cは、送信部20Aからネットワーク50Aを介してアップロードされたインデックスファイル64をダウンロードして復元処理部32のインデックスファイル取得ユニット32aに送出することがファイル伝送システム10と異なる。
【0045】
本発明によるファイル伝送システム10Aは図9及び図10のフローチャートに示すように動作する。
図9の送信部20Aのフローチャートにおいて、図4に示すファイル伝送システム10と異なるのはステップST10Aであり、他のステップST1~ST9はファイル伝送システム10と同様、元ファイル60が分散処理されて断片ファイル61~63とインデックスファイル64とからなるメタファイルが生成される。ST10Aにおいて、インデックスファイル64は、クラウドストレージ44にネットワーク50Aを介して送信されて格納される。インデックスファイル64をE-メールで送る場合には、必要に応じて、ステップST10に示すように、インデックスファイル64を受信者にネットワーク50Aを介して送信してもよい。
【0046】
次に、図10のフローチャートに従って、受信部30Aの処理について説明する。受信部30Aのインデックスファイル送受信ユニット31bは、ST11Aにてメタファイルとされたインデックスファイル64をネットワーク50Aを介してクラウドストレージ44からダウンロードする。これ以外の他のST12~ST21は、ファイル伝送システム10と同様に受信部30Aにおいて復元処理が実行されて、元ファイル60が復元される。受信部30Aにて元ファイル60の復元が完了したとき、送信部20Aには開封通知32cがネットワーク50Aを介して送られてくる。これにより、送信部20Aでは、開封通知32cが送信者の表示部に表示されるので、元ファイル60のファイル伝送が正しく完了したことを認識できる。
【0047】
上述した実施形態においては、送信部20,20A及び受信部30,30Aは、それぞれ送信専用及び受信専用として構成してもよいが、情報端末に本ファイル伝送システム10,10A用のソフトウェアをインストールすることにより、送信部20,20Aの機能と受信部30,30Aの機能を併せ持つようにしてもよい。
【0048】
ファイル伝送システム10,10Aを機能させるプログラムは、当該プログラムを記憶したコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に格納されている。記憶媒体としては、CD-ROM、フラッシュメモリを用いたUSBメモリその他の記録媒体を用い得る。又、プログラムは、ネッワーク50,50Aを介してコンピュータの記憶媒体に読み込まれてもよい。コンピュータの記憶媒体としては、RAM、DRAM、フラッシュメモリ等を用いることができる。情報端末機器として、例えばデスクトップやノート型のパーソナルコンピュータ(PC)、タブレット等の情報端末を用いてファイル伝送システム10,10A用プログラムをインストールすれば、送信部及び/又は受信部が容易に且つ低コストになる。情報端末のOSとしては、Windws(登録商標)、Mac(登録商標)、リナックス(登録商標)等のPCやサーバに適用ができる。
【0049】
(ファイル伝送システム10の操作画面)
PCやタブレットに本ファイル伝送システム10用のソフトウェアがインストールされたときにディスプレイに表示される操作画面の一例を説明する。図11にファイル伝送システム10がインストールされた情報端末の操作画面を示す。図では、便宜上、左側に送信側を右側に受信側を表示している。操作画面には送信ボックス及び受信ボックス等のGUI画面71が表示されている。送信者は、記憶部23に保存した元ファイル73をデスクトップ画面72に貼り付け、元ファイル73をポインティングデバイスにより送信ボックス71aにドラッグアンドドロップする。この操作により、断片ファイル61,62,63がクラウドストレージ41,42,43に送信されると共に、インデックスファイル64が作成されて記憶部23に保存されて、デスクトップ画面72に表示される。送信者は、このインデックスファイル64をE-メールに添付して受信者に送信する。
【0050】
図11に示すように、E-メールに添付されたインデックスファイル64を受信した受信者は、当該インデックスファイル64を記憶部33を介してデスクトップ画面72に貼り付けて受信ボックス71bにドラッグアンドドロップする。すると、復元された元ファイル78が、記憶部33を介してデスクトップ画面72に貼り付けられる。
【0051】
(ファイル伝送システム10Aの操作画面)
図12に示すように、本ファイル伝送システム10Aにおいて、元ファイル73を、送信ボックス71aにドラッグアンドドロップすると、送信ボックス71aには元ファイルのアイコン74Aが表示されるが、インデックスファイル64がデスクトップ画面72に表示されない点がファイル伝送システム10とは異なる。一方、受信者は、受信ボックス71bのアイコン74Aをポインティングデバイスによりクリック又はダブルクリックすることにより、復元された元ファイル78がデスクトップ画面72に張り付けられる。これにより、受信者84はアイコン64Aをクリックするだけで、直ちに元ファイル60を復元して閲覧することができるので、利便性が著しく向上する。
【0052】
(ファイル伝送システム10の閲覧専用のソフトウェア)
図13は、ファイル伝送システム10において閲覧専用のソフトウェアを使用する例を示す。複数の受信者80の情報端末のそれぞれに閲覧専用のソフトウェアをインストールしている場合、情報の提供者は、送信部20から断片ファイル61,62,63を、ネットワーク50を介してクラウドストレージ40にアップロードし、各受信者80にインデックスファイル64をE-メールで送信する。これにより、各受信者80は、インデックスファイル64により元ファイルを復元して閲覧することができる。
【0053】
(ファイル伝送システム10Aの閲覧専用ソフトウェア)
図14に示すファイル伝送システム10Aの場合は、送信者85が元ファイル60を送信ボックス71aにドラッグアンドドロップすると、次に各受信者80の受信ボックス71bにインデックスファイルのアイコン64Aが表示される。従って、各受信者80は、アイコン64Aをクリックするだけで、直ちに元ファイル60を復元して閲覧することができるので、利便性が著しく向上する。
【0054】
(断片ファイルの消去)
上述した実施形態において、復元が終了した断片ファイル61~63を送信部20,20A側で消去する場合、まず、図15に示すように、ST23にて、受信部30,3Aから開封通知32cを受領する。次に、ST24にて、送信者85は開封通知32cを受領した元ファイルを削除するために、送信ボックス71bに表示されているアイコンを消去する。これにより、送信部20は一つ目~三つ目の断片ファイル61~63を消去する指令をネットワーク50を介してクラウドストレージ41~43に送信することで、断片ファイル61~63が消去される。次に、ST25にてクラウドストレージ41~43からネットワーク50を介して送信部20に、断片ファイル61~63を消去したことを送信する。最後に、ST26にて、送信部20側で断片ファイル61~63が消去された旨を表示する。以上で、送信部20,20A側で断片ファイルを消去する作業が完了する。
【0055】
ファイル伝送システム10においては、送信者にはE-メールを介して受信者から開封通知32cが通知されるので、送信者が送信ボックス71bに表示されているアイコンを消去することで断片ファイル61~63を消去できる。これにより、セキュリティや情報伝達の完全性を確保することができ、かつクラウドストレージ41~43から断片ファイル61~63を消去できるので、クラウドストレージ41~43の利用量に対して課金される経費を削減することができる。
【0056】
ファイル伝送システム10Aにおいては、複数の受信者にインデックスファイル64を送信した後、各受信者から開封通知32cが通知される。この開封通知32cの数をカウントして、全員から開封通知32cを受信した時点で断片ファイル61~63を消去してもよい。これにより、ファイル伝送システム10Aでは、受信者の全員が元ファイル60を復元した後で自動的に断片ファイル61~63を消去できる。
【0057】
(分散の失敗時の再履行方法)
図16は、図1及び図2に示す送信部20において、分散の失敗時にレジウム機能によって分散処理を再履行する工程を示す。図17は、送信した断片ファイル61~63の分散転送に失敗した時にレジウム機能によって分散転送処理を再履行する工程を示す。
レジウム機能は、分散処理失敗時に自動的に再分散処理を行う機能であり、さらに、クラウドストレージ40に登録保管できない場合も同様に自動的に再分散(転送)処理を行う。通信経路の障害やその他の要因により、クラウドストレージ40に登録保管されないことが考えられる。登録保管できない場合には、断片ファイル61~63を、クラウドストレージ40に保管されるまで転送を繰り返して分散転送処理を行う。すなわち、元ファイル60を分散してクラウドストレージ40に保管する迄が一つの処理であり、その処理が完結しなければ、完結するまで繰り返し実行する。
図16において、ST31にて各分散保存先の参照可否状況をチェックし、ST32にて参照可能な分散保存先の数を求める。ST32にて参照可能な分散保存先の数が三つ未満の場合には、ST33にて分散処理を中断してST31に戻る。ST32にて参照可能な分散保存先の数が三つ以上の場合にはST34にて分散処理を実行し、ST35にて参照可能な分散保存先へ断片ファイルを保存できるか否かを調べ分散処理が失敗した時にはST36にて分散処理を再実行して後述するST37~ST40に進む。これに対して、ST35にて参照可能な分散保存先へ断片ファイルを保存できる場合には、ST37にて各分散保存先の参照可否情報をインデックスファイルに記憶する。ST38にて各断片ファイルのハッシュ値を算出しインデックスファイルに記憶する。ST39にて各分散保存先情報をインデックスファイルに記憶する。ST40に元ファイルに関する情報をインデックスファイルに記憶して終了する。
【0058】
図17に示すように、レジウム機能の工程の他の態様では、ステップST31にて各分散保存先の参照可否状況をチェックし、ST32にて参照可能な分散保存先の数が三つ以上の場合にはST34にて分散処理を実行し、ST41にて各記憶部41,42,43に転送試行を開始する。ST42にて転送に成功した記憶部が2箇所以上であるか否かを調べ、2箇所以上でない場合(NO)には、ST43にて転送試行を中断してST41に戻る。ST42にて転送に成功した記憶部が2箇所以上の場合(YES)には、ST44にて各分散保存先、つまり記憶部に関する転送結果をインデックスファイルに記憶し、かつ各断片ファイルのハッシュ値を算出して、インデックスファイルに記憶して終了する。
【0059】
分散先が三つ未満の場合は、例えば、Wifi等の無線LAN環境において、ファイルを転送している最中に通信が途絶えてしまうことがある。上記レジウム機能によれば、送信部20が元ファイル60から断片ファイル61~63の作成に失敗したときには、分散処理部21において、元ファイル60の再度の分散処理を実行して、新たに作成した断片ファイル61~63を記憶部40に保存すると共に、新たなインデックスファイル64を作成することができる。
【0060】
(ファイル伝送システムのソフトウェアの保護機能)
本ファイル伝送システム10,10A用のソフトウェアをインストールしている情報端末を紛失した時にファイル伝送システム用のソフトウェアの保護をする機能について説明する。
図18は、情報端末にソフトウェアの保護機能として、使用者を識別するためのPINコードの設定をするためのフローチャートである。先ずST46にて、システム設定から無操作時にファイル伝送システム10のソフトウェアをロックするか否かを質問されるので、「ロックする」を選択する。ST47にてロックするまでの任意の時間(秒や分)を入力する。ST48にて任意の4桁の数字からなるPINコードを入力する。ST49にてロックするまでの時間とPINコードを登録して終了する。これによりファイル伝送システム10用のソフトウェアの保護機能が情報端末に設定される。
【0061】
次に、ファイル伝送システム10,10A用のソフトウェアの保護機能について説明する。図19に示すように、情報端末において本ファイル伝送システム10,10Aのソフトウェアを使用している最中に、ST51にて登録した時間を経過すると画面をロックする。ST52にてロック解除のためのPINコードの入力を要求する。ST53にて、入力されたPINコードが、ST53で入力した情報端末の使用者で登録したPINコード(図17のステップ43参照)か否か判定され、使用者である場合(YES)には、ST54にてロックが解除される。これにより、情報端末が本ソフトウェアの使用者である場合には、ソフトウェアがロックされても、ロック解除のためのPINコードが要求された場合にPINコードを入力して、ソフトウェアの使用を再開することができる。
これに対して、ST53にて情報端末の使用者が登録したPINコードでない場合(NO)には、ST55にてロック解除のためのPINコードの入力を要求する。ST56にて、入力されたPINコードがステップ13で入力した情報端末の使用者で登録したPINコード(図17のステップ43参照)か否か判定され、使用者である場合(YES)には、ステップ57にて、ロックが解除される。これにより真正の使用者は、ソフトウェアがロックされても、ロック解除のためのPINコードが要求された場合にPINコードを入力して、ソフトウェアの使用を再開することができる。
ST56にて情報端末の使用者が登録したPINコードでない場合(NO)には、ST58にて再度ロック解除のためのPINコードの入力を要求する。次に、ST59にて、入力されたPINコードが、ST13で入力した情報端末の使用者で登録したPINコード(図17のステップ43参照)か否か判定され、適正な使用者である場合(YES)には、ST60にてロックが解除される。これにより適正な使用者は、使用者が登録したPINコードを誤って入力してソフトウェアがロックされても、ST59にて、登録したPINコードを入力してソフトウェアの使用を再開することができる。ST59にて、不適正な場合(NO)には、ST61にて情報端末の使用者以外の第三者であると判断して、本ソフトウェアの設定を消去する。次に、ST62にて、クラウドストレージ40における保存先情報64bも消去して終了する。
上記ST61においては、本ソフトウェアのインストール時にソフトウェア自体の正誤性の確認の認証のために入力したシリアルキーの情報も消去される。このため、上記ST61及びST62により、情報端末からファイル伝送システム10用のソフトウェアに関係する全ての設定及び付帯情報が消去される。これにより、第三者によりファイル伝送システム10,10A用のソフトウェアが不正利用されるのを防止することができる。
【0062】
上記説明において、ST53、ST56、ST59の3回のステップにおいてPINコードの入力が要求されており、この3回の全てのPINコードの入力が正しくない場合(NO)に、ステップ61及びステップ62において、ソフトウェアが不正利用されるのを防止したが、PINコードの入力の要求回数は、必要に応じて任意に設定してもよい。
【0063】
(断片ファイルの復元方法)
断片ファイル61~63が何らかの理由で正しくない状態、つまり不正なファイルとなった場合の復元方法について説明する。ここで、不正なファイルとは、何らかの事情により壊れたファイル、ウィルスに感染したファイル、ネットワークに接続されたストレージであるNAS、ファイルサーバ等においてはWindows(登録商標)等のオペレーティングシステム(OS)のアップデートで壊れたファイルを意味している。
図20は、元ファイル60と断片ファイル61~63とインデックスファイル64との関係を示し、図21は断片ファイル61~63の復元方法を示すフローチャートである。元ファイル60が分散処理部21により断片ファイル61~63に分散されると、断片ファイル61~63に関する情報であるハッシュ値と、元ファイル60のハッシュ値とが、インデックスファイルとして取得される。元ファイル60のハッシュ値は、復元時の元ファイル60との整合性の確認と分散処理部21が正しく分散処理をしたことの確認とのために取得される。断片ファイルのハッシュ値は、クラウドストレージのような記憶部40、40Aからネットワーク50、50Aを介してダウンンロードして取得した断片ファイル61~63との整合の確認と、断片ファイル61~63が正しくダウンロードされたことを保証するために取得される。
【0064】
次に、図21に示す断片ファイル61~63の復元方法について説明する。
ST(ステップ)71にてインデックスファイル64から断片ファイル61のハッシュ値(D1)を取得する。ST72にて、分散保存先の接続情報から記憶部41の断片ファイルを取得する。ST73にて記憶部41の断片ファイル61のハッシュ値(D2)を算出する。ST74にてインデックスファイル64から取得したD1のハッシュ値とD2で算出したハッシュ値との一致を確認する。ST75にてインデックスファイル64のハッシュ値と一致するか否かを判定する。ST75にてD1のハッシュ値とD2の算出したハッシュ値とが異なる場合(NO)には、ST76にて不正な断片ファイルのファイルが抽出されたのでST77に進む。
これに対して、ST75にて、D1のハッシュ値とD2の算出したハッシュ値とが一致した場合(YES)には、不正な断片ファイルのファイルはない、つまり0としてST77に進む。
【0065】
次にST77にてインデックスファイル64から断片ファイル62のハッシュ値(D3)を取得する。ST78にて分散保存先の接続情報から記憶部42の断片ファイルを取得する。ST79にて記憶部42の断片ファイル62のハッシュ値(D4)を算出する。ST80にてインデックスファイル64から取得したD3のハッシュ値とD4で算出したハッシュ値との一致を確認する。
次に、ST81にて、インデックスファイル64から取得したD3のハッシュ値とD4で算出したハッシュ値と一致しているか否かの判定をして、一致していない場合(NO)には、ST82にて不正な断片ファイルのファイルが抽出されたとしてST53に進む。ST83にて不正な断片ファイルのファイル数が1であるとして、ST84~ステップ93に進む。
【0066】
ST84にてインデックスファイル64から断片ファイル63のハッシュ値(D5)を取得する。ST85にて分散保存先の接続情報から記憶部43の断片ファイルを取得する。ST86にて上記断片ファイル63のハッシュ値(D6)を算出する。ST87にてインデックスファイル64から取得したD5のハッシュ値とD6で算出したハッシュ値との一致を確認し、ST88にて復元処理を実行する。ST89にて正常な断片ファイル2つを用いて元ファイルを復元する。ST90にて復元した元ファイルのハッシュ値(D7)を算出する。ST91にて、インデックスファイル64に書き込んだ元ファイルのハッシュ値とD7で算出したハッシュ値との一致を確認する。ST92にて参照可能な記憶部41,42,43へ元ファイルを再分散し、保存されている情報に対し上書き保存する。
ST93にてインデックスファイル64を更新して、復元した元ファイルを再分散し、インデックスファイル64を更新する分散処理を終了する。これにより、断片ファイル61~63に不正なファイルを抽出した場合に、復元した元ファイルを再分散しインデックスファイル64を更新する分散処理を実行することができる。
【0067】
これに対して、ST83にてD3のハッシュ値とD4で算出したハッシュ値とが一致した場合(YES)には、不正な断片ファイルのファイルはない、つまり0としてST100~ステップ105に進む。
先ずST100にて復元処理を開始する。101にて正常な断片ファイル2つを用いて元ファイルを復元する。ST102にて復元した元ファイルのハッシュ値(D8)を算出する。ST103にて、インデックスファイル64に書き込んだ元ファイルのハッシュ値とD8で算出したハッシュ値との一致を確認する。ST104にて、参照可能な記憶部41,42,43へ元ファイルを再分散し、保存されている情報に対し上書き保存する。ST105にてインデックスファイル64を更新して、復元した元ファイルを再分散し、インデックスファイル64を更新する分散処理を終了する。これにより、断片ファイル61~63に不正なファイルを抽出した場合に、復元した元ファイル60を再分散しインデックスファイル64を更新する分散処理を実行することができる。
【0068】
(第3の実施形態)
本発明によるファイル伝送システムの第3の実施形態は、ファイルのみならずフォルダの伝送も可能である。フォルダは、複数のファイルをグループ化したデータである。
図22は元フォルダを伝送するファイル伝送システム10における送信部20Bの構成を示すブロック図であり、図23は元フォルダを伝送するファイル伝送システム10における受信部30Bの構成を示すブロック図である。
図2に示す送信部20と異なり、図22に示す送信部20Bは、分散処理部21の前段にさらに圧縮部25を備えている。元フォルダ90は、圧縮部25で圧縮ファイル92に変換されて、分散処理部21に出力される。他の構成は、図2に示す送信部20の構成と同じであるので説明は省略する。送信部20Bにおいては、元フォルダ90が圧縮ファイル92に変換されて分散処理部21に出力され、図2に示す送信部20と同様に、断片ファイル61,62,63がクラウドストレージ41,42,43に送信され、インデックスファイル64がE-メール送受信ユニット31aにより受信部30Bに送信される。
【0069】
図3に示す受信部30と異なり、図23に示す受信部30Bはさらに、復元処理部32に接続される伸長部35を備えている。復元処理部32で復元された圧縮ファイル92は、伸長部35で元フォルダ90に変換される。その他は、図3に示す受信部30の構成と同じである。受信部30Bにおいては、図3に示す受信部30と同様に、断片ファイル61,62,63及びインデックスファイル64により圧縮ファイル92が復元され、復元された圧縮ファイル92が伸長部35で元フォルダ90に変換される。
【0070】
(第3の実施形態の変形例)
図24及び図25に示すように、本発明によるファイル伝送システムの第3の実施形態の変形例は、ファイル伝送システム10Aにも適用できる。
送信部20Cは、図7に示す送信部20Aにおいて、分散処理部21の前段に、さらに圧縮部25を備えている。元フォルダ90は、圧縮部25で圧縮ファイル92に変換されて、分散処理部21に出力される。他の構成は、図7に示す送信部20Aの構成と同じである。送信部20Cにおいては、元フォルダ90が圧縮ファイル92に変換されて分散処理部21に出力され、図7に示す送信部20Aと同様に、断片ファイル61,62,63がクラウドストレージ41,42,43に送信され、インデックスファイル64がクラウドストレージ44に送信される。
【0071】
図8に示す受信部30Aと異なり、図25に示す受信部30Cはさらに、復元処理部32に接続される伸長部35を備えている。復元処理部32で復元された圧縮ファイル92は、伸長部35で元フォルダ90に変換される。他の構成は図8に示す受信部30Aの構成と同じである。受信部30Cにおいては、図8に示す受信部30Aと同様に、断片ファイル61,62,63及びインデックスファイル64により圧縮ファイル92が復元され、復元された圧縮ファイル92が伸長部35で元フォルダ90に変換される。
【0072】
本発明の第3の実施形態のファイル伝送システム10,10Aによれば、送信部20B,20Cに圧縮部25を備え、受信部30B,30Cに伸長部35を備えることにより、元フォルダ90の伝送が可能となる。この構成によれば、分散すべきデータが元フォルダ90であっても圧縮部25により圧縮ファイル92にしてから分散し、受信部30B,30Cで復元した圧縮ファイル92を伸長部35で元フォルダ90に変換するので、元フォルダ90の伝送が可能となる。
【0073】
伝達方式でも最もよく利用されているE-メールにはフォルダを添付することができないため、従来はZIP等の圧縮形式にてカプセル化処理を施していた。しかし、近年、サイバー攻撃の激化により、ZIPファイルを添付できない仕様に変更されるケースが増えている。本発明の第3の実施形態のファイル伝送システム10,10Aは、ZIPファイルを使用しないで、元フォルダ90の伝送が可能となる。よって、多数のファイルを伝送する場合にそれぞれのファイルにパスワードを付けて送付する場合に対し、パスワードの代わりにインデックスファイルだけをE-メールで送付するか又はプログラムによりインデックスファイル64の保存先であるクラウドストレージ44にアップロードするだけでよいので、業務効率を著しく向上させることが可能となる。
なお、上述した第3の実施形態においても、第1及び第2の実施形態で説明した閲覧専用のソフトウェア、操作画面、分割の失敗時の再履行方法、ソフトウェアの保護機能及び断片ファイルの復元方法を利用することも可能であることは明らかである。
【0074】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。例えば、元ファイル60に用いる送信部20及び受信部30と、元フォルダ90に用いる送信部20A及び受信部30Aとを、元ファイル60及び元フォルダ90の何れも処理できるようにファイル伝送システムを構成してもよい。送信に際し、分散すべきデータが元フォルダ90である場合には、圧縮部25で圧縮ファイル92に変換した後で分散処理部21により分散処理を行い、伸長部35で元フォルダ90に変換すればよい。
【0075】
インデックスファイル64及び開封通知32cのファイルをE-メールにより送受信することなく、Web上のソーシャルネットワーク(SNS)を利用することも可能である。このようなSNSとしては、LINE(登録商標)、Facebook(登録商標)、Twitter(登録商標)等が挙げられる。
【符号の説明】
【0076】
10…ファイル伝送システム; 20,20A,20B,20C…送信部; 21d…分散処理部; 21a…分散処理ユニット; 21b…インデックスファイル生成ユニット; 22,22A…分散処理ファイル送信部; 22a…断片ファイル送信ユニット; 22b…E-メール送受信ユニット;22c…インデックスファイル送受信ユニット;
23…記憶部; 25…圧縮部; 30,30A,30B,30C…受信部; 31…分散処理ファイル受信部; 31a…E-メール送受信ユニット; 31b…断片ファイル受信ユニット; 31c…インデックスファイル送受信ユニット; 32…復元処理部; 32a…インデックスファイル取得ユニット; 32b…復元処理ユニット; 32c…開封通知; 33…記憶部; 35…伸長部; 40,40A,41,42,43,44…クラウドストレージ(記憶部); 50,50A…ネットワーク; 60,73…元ファイル; 61~63…断片ファイル; 64…インデックスファイル; 64A…インデックスファイルのアイコン; 64a…ハッシュ値; 64b…保存先情報; 64c…参照可能可否情報; 64d…元ファイルに関するハッシュ値等の情報; 64e…受信した断片ファイルのハッシュ値; 71…GUI画面; 71a…送信ボックス; 71b…受信ボックス; 72…デスクトップ画面; 74A…元ファイルのアイコン; 78…復元された元ファイル; 80…受信者; 85…送信者; 90…元フォルダ; 92…圧縮ファイル
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