(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】デガッシング装置およびデガッシング方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/618 20210101AFI20240604BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240604BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240604BHJP
H01M 10/6572 20140101ALI20240604BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240604BHJP
H01M 50/105 20210101ALN20240604BHJP
【FI】
H01M50/618
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6572
H01M10/04 Z
H01M50/105
(21)【出願番号】P 2022561082
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 KR2021005718
(87)【国際公開番号】W WO2021225398
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】10-2020-0054784
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、キュ スン
(72)【発明者】
【氏名】フー、ジュン ヒェク
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0087250(KR,A)
【文献】特開2016-162708(JP,A)
【文献】特開2013-149521(JP,A)
【文献】特表2014-502024(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021066(WO,A1)
【文献】特開2015-109223(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0709865(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/609 - 664
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/6572
H01M 10/04
H01M 50/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極組立体が搭載され電解液が注入される本体部および前記本体部から一側に延びたガスポケット部を有するパウチのデガッシング装置であって、
前記本体部の底面が上に配置される下型と、
前記下型の上に配置された前記本体部の上面を下降して加圧する上型と
、
前記下型と前記上型が前記本体部を加圧する時に、前記ガスポケット部に浸透してガスを吸気するガス吸入器とを含み、
前記下型または前記上型の少なくともいずれか一つ以上は冷却部材によって冷却され、前記本体部に当接する時に、前記本体部内に注入された前記電解液の冷却が行われ
、
前記ガス吸入器は、前記電解液の温度が予め定められた基準以上に冷却された後、ガスを吸気する、デガッシング装置。
【請求項2】
前記冷却部材は、電流が印加されると冷却が行われるペルチェ素子を含む、請求項
1に記載のデガッシング装置。
【請求項3】
前記ペルチェ素子は、前記本体部と当接する前記上型の表面または前記下型の表面を他の部分よりも迅速に冷却するように前記上型または前記下型に設置される、請求項
2に記載のデガッシング装置。
【請求項4】
前記ペルチェ素子は、前記下型に設置されるか、前記上型と前記下型の両方に設置される、請求項
3に記載のデガッシング装置。
【請求項5】
前記下型で設置された前記ペルチェ素子は、前記パウチが載置された時に、他の地点よりも前記本体部と前記ガスポケット部との境界地点でより密集して設置される、請求項
4に記載のデガッシング装置。
【請求項6】
前記冷却部材は、冷却の前に前記電解液の粘度が「X」である時に、冷却後の前記電解液の粘度が「1.5X」以上になるまで前記電解液を冷却する、請求項
1に記載のデガッシング装置。
【請求項7】
前記冷却の前に前記電解液の温度は20度~30度であり、前記冷却部材によって冷却した後の前記電解液の温度は0度~15度である、請求項
4に記載のデガッシング装置。
【請求項8】
電極組立体が搭載され電解液が注入される本体部および前記本体部から一側に延びたガスポケット部を有するパウチのデガッシング方法であって、
下型の上に本体部を載置するパウチ載置ステップと、
上型が下降して、前記下型の上に配置された前記本体部を加圧する加圧ステップと、
ガス吸入器がガスポケット部に浸透して、ガスを吸気する吸気ステップとを含み、
前記吸気ステップが開始される前に、前記本体部を冷却する冷却ステップが行われ
、
前記電解液が予め定められた温度以下に冷却された後、前記吸気ステップが開始される、デガッシング方法。
【請求項9】
前記冷却ステップは、前記パウチ載置ステップの後、前記加圧ステップの前に開始される、請求項
8に記載のデガッシング方法。
【請求項10】
前記冷却ステップと前記加圧ステップが行われる間に吸気ステップが開始される、請求項
9に記載のデガッシング方法。
【請求項11】
前記冷却ステップでは、前記本体部と前記ガスポケット部の連結地点を他の地点よりも迅速に冷却する、請求項
9または請求項
10に記載のデガッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年5月7日付けの韓国特許出願第10-2020-0054784号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、電極組立体と電解液がパウチ内に挿入された後、活性化工程を経る間に内部に発生したガスを排出させるためのデガッシング装置およびデガッシング方法に関し、より詳細には、パウチを加圧する下型と上型の少なくともいずれか一つ以上を冷却して電解液の粘性(viscosity)を高めることで、ガスの排出時に電解液がともに排出される問題を解消することができるデガッシング装置およびデガッシング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電気、電子、通信およびコンピュータ産業が急速に発展するにつれて、高性能、高安全性の電池に対するニーズが次第に増大している。特に、電子機器の小型化、薄型化および軽量化が急速に拡散するにつれて、これによる電池の小型化、薄型化のニーズが次第に増大している。このようなニーズに応えて、最近、最も大きな関心を集めているものが、エネルギー密度が高いリチウム二次電池である。
【0004】
リチウム電池は、寿命が長く容量が大きいという利点を有しており、最近、ポータブル電子機器に多く使用されており、前記リチウム電池は、電解質の種類に応じて、液体電解質を使用するリチウム金属電池とリチウムイオン電池および高分子固体電池を使用するリチウムポリマー電池などがある。
【0005】
また、リチウム二次電池は、電極組立体を密封する外装材の種類に応じて、角型缶が使用される角型電池、円筒型缶が使用される円筒型電池およびパウチが使用されるパウチ型電池に分けられる。
【0006】
また、このうち、パウチ型電池は、単位重量および体積当たりのエネルギー密度がより高く、電池の薄型化および軽量化が可能なだけでなく、外装材としての材料費があまりかからないなど、有利な点が多く、最近、その開発が活発に行われている。
【0007】
また、液体電解液を使用するパウチ型電池の製造方法は、以下のとおりである。まず、正極および負極を製造し、これらの間にセパレータを介在してから積層して電極組立体を作製する。そして、前記電極組立体をパウチの内部に電解液とともに挿入する。
【0008】
この場合、従来のデガッシング装置の概略的な様子が単純化して図示されている
図1に示されているように、前記パウチ1は、電極組立体と電解液が内蔵される本体部1aと、前記本体部1aから一側に拡張し、内部が開通してガスの出入りが可能なガスポケット部1bとを備える。前記ガスポケット部1bは、デガッシング工程時にガスを捕集する部分としてデガッシングが完了すると切断されて除去される部分であり、前記ガスポケット部1bと本体部1aの切断部位は、熱と圧力が加えられて密封が行われる。
【0009】
前記パウチ1に電極組立体が先ず内蔵された後、次に、前記パウチ1の内部に電解液を注入して電極組立体を電解液に含浸させる。前記のように電解液が注入されると、電極組立体が挿入された開口部の縁部を熱融着で接合させてパウチ1を密封する。
【0010】
また、安定化させるために、エイジング(Aging)工程を経た後、電池を活性化するための充放電工程を実施する。充放電工程中には、パウチ1の内部ではガスが発生するため、内部に発生したガスを排出させるためにデガッシング(degasing)が行われる。デガッシング工程が行われた後、前記ガスポケット部1bは切断されて廃棄され、前記ガスポケット部1bと本体部1aの切断部位はシーリングが行われて二次電池として製造される。
【0011】
一方、
図1に図示されているように、前記デガッシング工程は、下型2の上にパウチ1の本体部1aを載置した後、前記本体部1aの上を上型3が下降して加圧し、前記ガスポケット部1bにはガス吸入器4の端部が浸透した後、負圧(negative pressure)を加えてガスを吸気する。この場合、本体部1aに存在するガスは、上型3から加えられる圧力によってガスポケット部1bに後退し、前記ガスポケット部1bからガス吸入器4を介して移動したガスを外部に排出する。
【0012】
しかし、上記のようなデガッシング方法は、初期に注液した電解液の量と粘度、上型3の下降圧力および下降速度およびガス吸入器4の吸入力などによって前記ガスとともに電解液の一部がともに排出される問題があった。
【0013】
また、ガスの排出時に電解液の排出量が増加して、本体部1aの内部の電解液の量が所定水準以下に減少すると、二次電池の寿命が低下する問題があり、ガスの排出量が過剰に少ない場合には、本体部1aに残ったガスがスウェリング(swelling)を引き起こし得る問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は、デガッシング過程中に電解液の吐出を遮断または最小化することができるデガッシング装置およびデガッシング方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述のような目的を達成するための本発明は、デガッシング方法と前記デガッシング方法を行うことができるデガッシング装置を提供する。
【0016】
本発明によるデガッシング方法は、電極組立体が搭載され電解液が注入される本体部および前記本体部から一側に延びたガスポケット部を有するパウチのデガッシング方法であって、下型の上に本体部を載置するパウチ載置ステップ(S10)と、上型が下降して、前記下型の上に配置された本体部を加圧する加圧ステップ(S30)と、ガス吸入器がガスポケット部に浸透して、ガスを吸気する吸気ステップ(S40)とを含み、前記吸気ステップ(S40)が開始される前に、前記本体部を冷却する冷却ステップ(S20)が行われることを特徴とする。
【0017】
前記冷却ステップ(S20)は、パウチ載置ステップ(S10)の後、加圧ステップ(S30)の前に開始され、冷却ステップ(S20)の終了は、冷却速度および電解液の粘度の変化に応じて調節されることができる。
【0018】
前記冷却ステップ(S20)と加圧ステップ(S30)が行われると同時に吸気ステップ(S40)が開始されることができる。前記吸気ステップ(S40)で作用する負圧も電解液の粘度の変化に応じて調節されることができる。
【0019】
したがって、前記電解液が予め定められた温度以下に冷却された後、吸気ステップ(S40)が開始されることができる。
【0020】
また、前記冷却ステップ(S20)では、本体部とガスポケット部の連結地点を他の地点よりも迅速に冷却することができる。この場合、前記冷却ステップ(S20)において、前記電解液は、物性の変化が発生しない温度範囲内で冷却が行われることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、上記のようなデガッシング方法を行うことができるデガッシング装置を提供する。本発明によるデガッシング装置は、電極組立体が搭載され電解液が注入される本体部および前記本体部から一側に延びたガスポケット部を有するパウチのデガッシング装置であって、前記本体部の底面が上に配置される下型と、前記下型の上に配置された本体部の上面を下降して加圧する上型とを含み、前記下型または上型の少なくともいずれか一つ以上は、冷却部材によって冷却され、前記本体部に当接する時に、前記本体部内に注入された電解液の冷却が行われることを特徴とする。
【0022】
前記下型と上型が本体部を加圧する時に、前記ガスポケット部に浸透してガスを吸気するガス吸入器をさらに含む。
【0023】
前記冷却部材は、電流が印加されると、冷却が行われるペルチェ素子を含むことができる。
【0024】
前記ペルチェ素子は、本体部と当接する上型の表面または下型の表面を他の部分よりも迅速に冷却するように上型または下型に設置されることができる。
【0025】
前記ペルチェ素子は、下型に設置されるか、上型と下型の両方に設置されることができる。
【0026】
前記下型で設置されたペルチェ素子は、パウチが載置された時に、他の地点よりも本体部とガスポケット部との境界地点でより密集して設置されることができる。
【0027】
前記冷却部材は、冷却の前に電解液の粘度が「X」である時に、冷却後の電解液の粘度が「1.5X」以上になるまで電解液を冷却する。例えば、前記冷却の前に電解液の温度が20度~30度である時に、前記冷却部材によって冷却した後、電解液の温度は0度~15度に冷却されることができる。例えば、冷却の前に電解液の温度25℃で、粘度が4.37Pa・sである時に、粘度が6.56Pa・s以上になる時の温度まで冷却が行われる。
【0028】
前記ガス吸入器は、電解液の温度が予め定められた基準以上に冷却された後、ガスを吸気する。
【発明の効果】
【0029】
上記のような構成を有する本発明は、ガスの吸気が行われる前に冷却液は十分に冷却されて粘性(viscosity)が高くなることから、ガスポケット部への移動を最大限に抑制して、電解液の無駄な吐出を防止することができる。
【0030】
本発明において、電解液の冷却は、冷却速度および電解液の粘度の変化に応じて調節されるため、様々な規格の二次電池が適用されることができる。
【0031】
また、本発明では、特定の地点(特に、ガスポケット部との境界に近い地点)をより急速に冷却して、特定の地点での電解液の粘性をより高めることができ、これにより、ガスポケット部に移動する電解液の量と速度を減少させることができる。
【0032】
なお、本発明によるデガッシング装置は、電流が印加されると冷却が行われるペルチェ素子を含むことで、電流の制御により、比較的簡単かつ迅速に電解液の冷却が行われることができ、電解液の粘度によって冷却をより効率的に制御することができる。
【0033】
特に、本発明は、ペルチェ素子を冷却部材として使用し、特定の部分の温度をより迅速に下げることができるため、ガスと電解液の流動時に通路になる部分で電解液の移動をより迅速かつ効率的に遅延させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】従来のデガッシング装置の概略的な様子が単純化して図示されている図である。
【
図2】本発明によるデガッシング方法のフローチャートである。
【
図3】本発明のデガッシング装置の概略的な様子が単純化して図示されている図である。
【
図4】本発明のデガッシング装置に含まれるペルチェ素子の内部の様子が図示されている斜視図である。
【
図5】パウチ内に電極組立体が挿入された様子が図示されている断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付の図面に基づいて、本発明について、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されてもよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0036】
本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、明細書の全体にわたり同一または類似する構成要素については同一の参照符号を付ける。
【0037】
また、本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0038】
本発明は、パウチ内でガスを除去するデガッシング装置と前記デガッシング装置を用いてデガッシングを行うことができるデガッシング方法をそれぞれの実施形態として提供し、以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【0039】
第1実施形態
本発明は、パウチからガスを除去するデガッシング方法を第1実施形態として提供する。
【0040】
本発明によるデガッシング方法のフローチャートが図示されている
図2を参照すると、本発明によるデガッシング方法は、電極組立体が搭載され電解液が注入される本体部10aおよび前記本体部10aから一側に延びたガスポケット部10bを有するパウチ10のデガッシング方法であって、パウチ載置ステップ(S10)と、冷却ステップ(S20)と、加圧ステップ(S30)と、吸気ステップ(S40)とを含む。
【0041】
前記パウチ載置ステップ(S10)は、下型20の上に本体部10aを載置するステップである。前記パウチ10a内に電極組立体11が挿入された様子が図示されている
図5に示されているように、前記下型20に載置されるパウチ10は、本体部10aに電解液と電極組立体11が内蔵された後、エイジング工程および活性化工程が完了してから載置が行われる。
【0042】
前記パウチ載置ステップ(S10)の後に加圧ステップ(S30)が行われ、且つ前記加圧ステップ(S30)の前または加圧ステップ(S30)の間に冷却ステップ(S20)が実施される。すなわち、冷却装置である冷却部材50が下型20または上型30のいずれかに設置されているかに応じて、冷却ステップ(S20)の開始時点が相違し得る。
【0043】
前記冷却ステップ(S20)では、下型20と上型30の少なくともいずれか一つまたは両方に設置された(または熱交換が行われるように連結された)冷却部材50がパウチ10の本体部10aを冷却するように構成され、前記加圧ステップ(S30)では、上型30が下降して前記下型20の上に配置された本体部10aを一定の圧力で押圧すように構成される。
【0044】
この場合、本体部10aが所定の温度まで冷却される前であり、前記上型30にも冷却部材50が搭載または連結された場合であれば、加圧ステップ(S30)では、本体部10aに圧力が伝わらず冷却のための熱交換だけが行われるように、ガスの移動を引き起こす実質的な加圧なしに当接した状態が一定時間維持される接触ステップが選択的に含まれてもよい。また、本体部10aが所定の温度で冷却されると、前記接触ステップは解除され、本体部10a内のガスの移動を引き起こすように適正な圧力が加えられるように構成されることができる。
【0045】
前記加圧ステップ(S30)の後には吸気ステップ(S40)が行われ、前記本体部10aを冷却して電解液の粘性を高める冷却ステップ(S20)は、前記吸気ステップ(S40)の前に、加圧ステップ(S30)の前または後に行われることができる。
【0046】
前記吸気ステップ(S40)では、ガス吸入器40の端部がパウチ10のガスポケット部10bの内部に浸透して所定の負圧を加えてガスを吸気する。この場合、本体部10aに存在していたガスは、前記加圧ステップ(S30)によりガスポケット部10bに移動した状態であり、冷却ステップ(S20)によって粘性が増加した電解液は、加圧ステップ(S30)で移動が抑制されてガス吸入器40に移動する量は最小化する。したがって、前記吸気ステップ(S40)は、電解液の粘性が十分に高くなるように冷却が行われた後、開始される。
【0047】
一方、前記冷却ステップ(S20)は、上述のように、吸気ステップ(S40)の前であれば、加圧ステップ(S30)の後にも可能であるが、冷却部材50が下型20に配置された構成であれば、工程速度の向上のために、前記冷却ステップ(S20)は、パウチ載置ステップ(S10)の後、加圧ステップ(S30)の前に開始されることが好ましい。
【0048】
また、工程の速度を高めるために、電解液の温度が十分に低い場合であれば、または冷却部材50の性能によって瞬間的な冷却が可能な場合であれば、前記冷却ステップ(S20)と加圧ステップ(S30)が行われると同時に吸気ステップ(S40)が開始されることもできる。
【0049】
また、冷却ステップ(S20)の終了は、冷却速度および電解液の粘度の変化に応じて調節されることができ、前記吸気ステップ(S40)で作用する負圧は、電解液の粘度の変化に応じて調節されることができる。ただし、この実施形態では、前記電解液が予め定められた温度以下に冷却された後、吸気ステップ(S40)が開始されることができ、この際、前記冷却ステップ(S20)で、前記電解液は、物性の変化が発生しない温度範囲内で冷却が行われることが好ましい。
【0050】
また、前記冷却ステップ(S20)では、本体部10aとガスポケット部10bの連結地点を他の地点よりも迅速に冷却することができる。すなわち、
図5に示されているように、パウチ10の本体部10aとガスポケット部10bとの境界が位置した地点Bの温度を瞬間的により下げてその地点に位置した電解液の粘性を相対的により高めることで、ガスポケット部10bに移動する電解液の量をより効率的に減少させることができる。
【0051】
第2実施形態
本発明は、パウチからガスを除去するデガッシング装置を第2実施形態として提供する。
【0052】
本発明のデガッシング装置の概略的な様子が単純化して図示されている
図3と、本発明のデガッシング装置に含まれるペルチェ素子51の内部の様子が図示されている
図4を参照すると、本発明によるデガッシング装置は、従来の装置に比べて冷却部材をさらに含む。
【0053】
すなわち、本実施形態のデガッシング装置は、電極組立体11が搭載され電解液が注入される本体部10aおよび前記本体部10aから一側に延びたガスポケット部10bを有するパウチ10のデガッシング装置であって、前記本体部10aの底面が上に配置される下型20および前記下型20の上に配置された本体部10aの上面を下降して加圧する上型30を含み、前記下型20または上型30の少なくともいずれか一つ以上は、
図3に示されているように、冷却部材50と熱交換が行われるように連結または結合されるか、前記冷却部材が直接装着されることで、前記冷却部材50によって冷却が行われる。
【0054】
したがって、前記上型30または下型20の少なくともいずれか一つまたは両方は、前記本体部10aに当接する時に前記本体部10aを冷却することで、前記本体部10a内に注入された電解液を冷却し、冷却した電解液は、温度の低下に比例して粘性が上がる。
【0055】
なお、本実施形態のデガッシング装置では、前記下型20と上型30が本体部10aを加圧する時に、前記ガスポケット部10bにその端部が浸透してガスを吸気するガス吸入器40をさらに含む。
【0056】
一方、前記冷却部材50は、迅速な冷却が行われることができる装置であれば特に限定されないが、本発明では、電流量の調節により冷却の制御が相対的に容易であり、冷却性能に優れ、特に瞬間的な冷却が行われることができるペルチェ素子51を含むことができる。
【0057】
前記ペルチェ素子51は、電流が印加されると冷却が行われるように構成されることができる。すなわち、ペルチェ素子51は、電位差が発生した時に両側で発熱、吸熱の形成が同時に起こり温度差を発生させるペルチェ効果を用いる素子であり、電子が電位差が発生する二つの金属間を移動するために、一側の金属からエネルギーを奪うことで冷却効果を有するように構成される。本発明のペルチェ素子51は、2枚のプレート54、55の間にp型半導体56と、n型半導体57が配置され、前記p型半導体56とn型半導体57にケーブルを介して52、53電流を印加すると、一側のプレート54がエネルギーを奪われて冷却が行われる。
【0058】
このようなペルチェ素子51は、複数個が前記下型20または上型30に直接付着されて冷却が行われることができ、冷媒などを介して下型20または上型30と熱交換する方式で冷却が行われることができる。
【0059】
ただし、冷却効率を増大させるために、前記ペルチェ素子51のうち冷却が行われるプレート54が上型30または下型20に直接付着される方式がより好ましい。
【0060】
なお、本実施形態によるデガッシング装置は、本体部10aの特定の部位の冷却がより迅速に行われるように構成されることができる。すなわち、前記ペルチェ素子51は、本体部10aと当接する上型30の表面または下型20の表面で所定の間隔を置いて複数個が配置され、この際、本体部10aの特定の部分を他の部分よりも迅速に冷却するように、特定の部分Bで出力がより大きいペルチェ素子を配置するか、特定の部分でペルチェ素子51がより密集して配置されることで、本体部10aの特定の部分(例えば
図5の「B」部分)をより迅速に冷却することができる。
【0061】
前記ペルチェ素子51は、下型20または上型30のいずれか一つのみに設置されることができるが、迅速な冷却のためには、上型30と下型20の両方に設置されることが好ましい。また、一つのみに設置されなければならない場合には、本体部10aとの接触時間が相対的により長い下型20に設置されることが、上型30に設置されることより好ましい。
【0062】
一方、本実施形態において、前記冷却部材50は、冷却の前に電解液の粘度が「X」である時に、冷却後電解液の粘度が「1.5X」以上になるまで電解液を冷却するように構成されることができる。
【0063】
例えば、前記冷却の前に電解液の温度が20度~30度である時に、前記冷却部材50により冷却した後、電解液の温度は0度~15度に冷却されることができる。例えば、冷却の前に電解液の温度25℃で粘度が4.37Pa・sである時に、粘度が6.56Pa・s以上になる時の特定の温度まで冷却が行われることができる。
【0064】
参考までに、前記電解液は、10℃の時に粘度が6.80Pa・sになることができる。すなわち、電解液が(20℃から15℃に)15℃に冷却されると、粘度は、略56%程度の粘度の上昇が行われる。粘度が上昇した電解液は、加圧が行われる時に、相対的に温度が高い場合の時よりも移動が低下するため、パウチ10のガスポケット部10bに移動することを防止することができる。
【0065】
本発明において、前記ガス吸入器40は、電解液の温度が予め定められた基準以上に冷却された後、ガスを吸気し、この際、前記ガス吸入器40の端部は、電解液の冷却前にガスポケット部10bに浸透することもあるが、できるだけ電解液の冷却が行われた後に浸透するように構成されることが好ましい。
【0066】
前記のような構成を有する本発明は、ガスの吸気が行われる前に。冷却液は十分に冷却されて粘性(viscosity)が高くなるため、ガスポケット部10bへの移動を最大限に抑制して、電解液の無駄な吐出を防止することができる。
【0067】
本発明で電解液の冷却は、冷却速度および電解液の粘度の変化に応じて調節されることから、様々な規格の二次電池が適用されることができる。
【0068】
また、本発明では、特定の地点(特に、ガスポケット部との境界に近い地点)をより急速に冷却して、特定の地点での電解液の粘性をより高めることができ、これにより、ガスポケット部10bに移動する電解液の量と速度を減少させることができる。
【0069】
なお、本発明によるデガッシング装置は、電流が印加されると冷却が行われるペルチェ素子51を含むことで、電流の制御により比較的簡単かつ迅速に電解液の冷却が行われることができ、電解液の粘度によって冷却をより効率的に制御することができる。
【0070】
以上、本発明は、限定された実施形態と図面によって説明されているが、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者により、本発明の技術思想と以下に記載する特許請求の範囲の均等範囲内で様々な実施が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 パウチ
10a 本体部
10b ガスポケット部
20 下型
30 上型
40 ガス吸入器
50 冷却部材(冷却装置)