(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】入退場管理装置、入退場管理システム、入退場管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/10 20060101AFI20240604BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20240604BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20240604BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20240604BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20240604BHJP
H04W 4/021 20180101ALI20240604BHJP
H04W 4/80 20180101ALI20240604BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20240604BHJP
【FI】
G08B25/10 A
G08B25/04 F
G01S7/02 210
G01S13/34
H04B1/59
H04W4/021
H04W4/80
H04W84/10 110
(21)【出願番号】P 2020109860
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】西沢 昇
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-127240(JP,A)
【文献】特開2014-186481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,13/00-13/95
G06K 19/00-19/18
G07C 1/00-15/00
G08B 13/00-15/02,19/00-31/00
H04B 1/00, 1/30, 1/59, 1/72,
7/24- 7/26,11/00-13/02
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実空間上に所在する各種施設に対するユーザの入退場を管理する入退場管理装置であって、
前記施設内の各出入口近傍に設置され、該当する出入口近傍の検知エリアを含む照射エリアに対してミリ波帯の検知信号を照射するとともに、当該照射された検知信号の当該照射エリア内に存在する物体による反射波を受信するミリ波センサと、
前記検知信号と前記反射波に基づき、前記ミリ波センサから当該物体までの距離と角度を少なくとも算出する算出手段と、
前記算出結果に基づき、前記検知エリアに対する前記物体の侵入を検知する検知手段と、
前記施設に対する入退場を制限されないユーザによって携行された無線タグ装置から所定形式の警報キャンセルデータを取得する取得手段と、
前記検知エリアに対する前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき、警報発報の要否を判定する判定手段と、
前記判定手段において前記警報の発報が必要と判定された場合にのみ音及び光の少なくとも一方を用いて前記施設の管理者に警報を発報するための処理を実行する警報発報手段と、
を有する、ことを特徴とする入退場管理装置。
【請求項2】
前記取得手段が、
前記警報キャンセルデータとして、前記無線タグ装置から発信される所定形式のビーコン信号を受信するとともに、
前記判定手段が、
当該ビーコン信号が受信された際の受信電界強度に応じて当該ビーコン信号の送信元の前記無線タグ装置が前記出入口近傍の有効エリア内に所在するか否かを判定し、(a)当該判定結果及び(b)前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき前記警報発報の要否を判定する、請求項1に記載の入退場管理装置。
【請求項3】
前記判定手段が、
前記警報キャンセルデータの取得タイミングから予め定められた第1時間内に前記侵入検知タイミングが到来した場合に、前記警報の発報を不要と判定する一方、前記第1時間内に前記侵入検知タイミングが到来しない場合に、前記警報の発報を必要と判定する、請求項1又は2に記載の入退場管理装置。
【請求項4】
前記判定手段が、
前記侵入検知タイミングから予め定められた第2時間内に前記警報キャンセルデータが取得された場合に、前記警報の発報を不要と判定する一方、前記第2時間内に前記警報キャンセルデータが取得されない場合に、前記警報の発報を必要と判定する、請求項1又は2に記載の入退場管理装置。
【請求項5】
前記算出手段が、
前記物体までの距離と角度を算出するとともに、当該物体の移動速度を算出し、
前記検知手段が、
前記算出結果に基づき、前記検知エリアに侵入した前記物体が前記出入口を通過しようとしているか否かを検知し、
前記判定手段が、
前記検知手段によって前記出入口を通過しようとしている前記物体が検知された場合にのみ、前記検知エリアに対する前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき、警報発報の要否を判定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の入退場管理装置。
【請求項6】
前記照射エリア内の一部に長方形又は台形の前記検知エリアを設定するための距離情報及び角度情報を含む検知エリア設定データを記憶した記憶手段をさらに有し、
前記検知手段が、
前記算出された距離が前記距離情報により規定される距離範囲内であり、且つ、前記算出された角度が前記角度情報により規定される角度範囲内である場合に、当該物体が前記検知エリア内に侵入したものと検知する、請求項1~5のいずれか1項に記載の入退場管理装置。
【請求項7】
前記ミリ波センサが、
前記施設の床部から100±10cm程度の高さに設置されるとともに、該当する前記出入口に向けて前記検知信号を照射し、
前記検知手段が、
前記算出結果と前記検知エリア設定データに基づき、前記検知エリアに対する物体の侵入を検知する、請求項6に記載の入退場管理装置。
【請求項8】
前記記憶手段には、
前記ミリ波センサの設置された高さに依存して発生する仰角エラーに応じた前記距離情報を含む前記検知エリア設定データが記憶され、
前記検知手段が、
前記仰角エラーに応じた距離情報を含む前記検知エリア設定データに基づき検知エリアを設定して、前記仰角エラーを補正しつつ前記検知エリアに対する物体の侵入を検知する、請求項6に記載の入退場管理装置。
【請求項9】
前記施設が医療機関又は介護施設であるとともに前記ユーザが当該施設に入所しているユーザであり、
前記警報発報手段が、
前記警報を発報する際に、当該施設に入所しているユーザが無断で外出しようとしている可能性があることを前記管理者に報知する、請求項1~8のいずれか1項に記載の入退場管理装置。
【請求項10】
実空間上に所在する各種施設に対するユーザの入退場を管理する入退場管理システムであって、
前記施設に対する前記ユーザの入退場を管理する入退場管理装置と、
前記施設に対する入退場を制限されないユーザによって携行され、所定形式の警報キャンセルデータを出力する無線タグ装置と、
前記施設内の各出入口近傍に設置され、該当する出入口近傍の検知エリアを含む照射エリアに対してミリ波帯の検知信号を照射するとともに、当該照射された検知信号の当該照射エリア内に存在する物体による反射波を受信するミリ波センサと、
を有し、
前記入退場管理装置が、
前記検知信号と前記反射波に基づき算出された、前記ミリ波センサから当該物体までの距離と角度の算出結果を取得する第1取得手段と、
前記取得した算出結果に基づき、当該検知エリアに対する前記物体の侵入を検知する検知手段と、
前記施設に対する入退場を制限されないユーザによって携行された無線タグ装置から所定形式の警報キャンセルデータを取得する第2取得手段と、
前記検知エリアに対する前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき、警報発報の要否を判定する判定手段と、
前記判定手段において前記警報の発報が必要と判定された場合にのみ、音及び光の少なくとも一方を用いて前記施設の管理者に警報を発報するための処理を実行する警報発報手段と、
を有する、ことを特徴とする入退場管理システム。
【請求項11】
実空間上に所在する各種施設に対するユーザの入退場を管理する入退場管理方法であって、
前記施設内の各出入口近傍に設置されたセンサによって、該当する出入口近傍の検知エリアを含む照射エリアに対してミリ波帯の検知信号を照射するとともに、当該照射された検知信号の当該照射エリア内に存在する物体による反射波を受信する第1ステップと、
前記検知信号と前記反射波に基づき、前記センサから当該物体までの距離と角度を少なくとも算出し、当該算出結果に基づき、前記検知エリアに対する前記物体の侵入を検知する第2ステップと、
前記施設に対する入退場を制限されないユーザによって携行された無線タグ装置から所定形式の警報キャンセルデータを取得する第3ステップと、
前記検知エリアに対する前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき、警報発報の要否を判定する第4ステップと、
前記第4ステップにおいて前記警報の発報が必要と判定された場合にのみ音及び光の少なくとも一方を用いて前記施設の管理者に警報を発報するための処理を実行する第5ステップと、
を有する、ことを特徴とする入退場管理方法。
【請求項12】
実空間上に所在する各種施設に対するユーザの入退場を管理する入退場管理装置として機能するコンピュータシステムを、
前記施設内の各出入口近傍に設置され、該当する出入口近傍の検知エリアを含む照射エリアに対してミリ波帯の検知信号を照射するとともに、当該照射された検知信号の当該照射エリア内に存在する物体による反射波を受信するミリ波センサから当該物体までの距離と角度を示すデータであって、前記検知信号と前記反射波に基づき算出された前記距離と角度を示すデータを取得する第1取得手段、
前記取得したデータに基づき、当該検知エリアに対する前記物体の侵入を検知する検知手段、
前記施設に対する入退場を制限されないユーザによって携行された無線タグ装置から所定形式の警報キャンセルデータを取得する第2取得手段、
前記検知エリアに対する前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき、警報発報の要否を判定する判定手段、
前記判定手段において前記警報の発報が必要と判定された場合にのみ、音及び光の少なくとも一方を用いて前記施設の管理者に警報を発報するための処理を実行する警報発報手段、
として機能させる、ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実空間上に所在する介護施設や医療機関、会議室、イベント会場等の各種施設に対する施設利用ユーザの入退場を管理する入退場管理装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが携行可能な無線タグ装置(例えば、RFID:Radio Frequency IdentifierやBLE:Bluetooth Low Energy:登録商標のビーコン発信器等)を利用して、各種施設に対するユーザの入退場を監視し、管理するためのシステムが各種提案され、実用化されている(例えば、特許文献1)。この種の入退場管理システムにおいては、施設の出入口近傍及び施設内の各所に無線タグ装置のリーダ装置又は無線タグ装置によって発信されるビーコン信号を受信する受信装置を設け、無線タグ装置を携行したユーザが、施設出入口を通過する際に、リーダ装置又は受信機が無線タグ装置から情報を読み出すことで、各ユーザの出入口の通過状況や所在地を管理する方法が一般的となっている。
【0003】
一方、近年の高齢化社会においては、早いスピードで認知症患者の数が増加しており、認知症患者における行方不明者の増加と、身元不明認知症患者の保護回数増加が社会問題化している。このため、医療機関や介護施設等の施設において、認知症患者の無断外出を未然に防止して認知症患者を保護するための方法が各種提案されている(例えば、特許文献2及び3)。
【0004】
例えば、特許文献2に記載の徘徊者通報システムにおいては、認知症患者宅や介護施設等の屋内にポーリング信号を発信する監視装置を設置するとともに、認知症患者等のユーザに携帯型の通信端末装置を携行させ、監視装置の発信するポーリング信号を受信すると通信端末装置が応答信号を監視装置に返信し、監視装置は、ポーリング信号の発信後、所定時間内に応答信号を受信しない場合に、ユーザが無断で外出したものと判定して、ブザー音等により警報を発する構成が採用されている。また、特許文献2に記載のシステムにおいては、通信端末装置にバイタルセンサを設け、バイタルセンサによってユーザの生体情報が得られない場合に、ユーザが通信端末装置を身体から取り外したか、或いは、ユーザに健康上の問題が発生した可能性があることを検知する構成になっている。そして、バイタルセンサによって生体情報が取得されなくなった場合、及び、所定時間以上ポーリング信号を受信しない場合に、通信端末装置が監視装置に対して異常通報を行い、監視装置は、ポーリング信号の発信後、所定時間内に応答信号を受信しない場合、及び、通信端末装置から異常通報を受信した場合に、音及び光の少なくとも一方を用いて施設管理者(例えば、患者家族や施設運営スタッフ等)に対して該当するユーザが無断外出する可能性があること、又は、当該ユーザの健康状態に異変が発生している可能性があることを報知して、ユーザの健康を維持管理しつつ、無断外出を防止してユーザを保護する方法が採用されている。
【0005】
しかしながら、認知症患者においては、通信端末装置等のデジタル機器の携行を好まない者も多く、ユーザが通信端末装置の携行を完全に拒否してしまうと、上記特許文献2に記載の方法では、ユーザの状況把握を行うことができず、ユーザを保護することが難しい。このため、ユーザが通信端末装置の携行を拒否するようなケースにおいても無断外出の発生を防止するため、ユーザの衣服にランドリータグ型の無線タグ装置を取り付けて、ユーザが常時無線タグ装置を携行した状態に維持する方法も提案されている(特許文献3)。このシステムにおいては、施設内の各出入口に通信端末装置(受信機)を設置するとともに、スタッフルーム等に中央制御装置を設置して、通信端末装置がユーザの携行する無線タグ装置から標識IDを含む信号を受信すると、自機の通信端末装置ID、又は、自機の設置された出入口に割り当てられた出入口IDと当該受信した標識IDを対応付けて中央制御装置に送信するようになっている。そして、中央制御装置が当該通信端末装置から受信した通信端末装置ID又は出入口IDに基づき、信号の送信元となる通信端末装置の設置された出入口を特定するとともに、標識IDに基づき無線タグ装置を携行するユーザを特定しつつ、ユーザの徘徊を検知して、徘徊が検知された場合に、中央制御装置がIoT(Internet of Things)機器と連動して、ユーザが徘徊していることを施設管理者に報知する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-77355号公報
【文献】特開2005-316735号公報
【文献】特許第6426138号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、無線タグ装置から発信される信号は所定形状の広がり(例えば
、略同心円状の球形状等)を持ちつつ、伝播する性質を有するため、特許文献3に記載のシステムでは、衣服に取り付けられた無線タグ装置によって発信される信号の受信可能範囲が施設内の通路にも及んでしまう可能性がある。この場合には、ユーザが単に通路を歩行しているだけであるにも関わらず、無線タグ装置から発信された信号が出入口に設置された通信端末装置に受信され、誤報が発生する可能性があり、施設管理者の業務負担増大につながる可能性がある。また、特許文献3に記載のシステムを実際に運用する場合には、中央制御装置において各ユーザが携行する無線タグ装置とユーザを紐付けて管理する必要があり、ユーザ情報の管理が煩雑になる。特に、例えば、施設の規模が大きくなり、施設入所ユーザの人数が多くなった場合には、ユーザ情報の管理量がそれに伴って増大するばかりでなく、通常ユーザは、衣服を複数枚所有しているため、各ユーザが所有する全ての衣服に取り付けられた全無線タグ装置を、当該衣服を所有するユーザに紐付けつつ、中央制御装置において管理しようとすると、ユーザ情報の管理が非常に煩雑になる可能性があるとともに、多数の衣服に無線タグ装置を取り付ける作業は、施設管理者の業務負担増大につながる。
【0008】
本発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、施設管理者の業務負担を軽減しつつ、煩雑なユーザ情報の管理を簡略化するとともに、通信端末装置の不所持等の条件に依存することなく、誤報の発生を防止しながら各種施設に対するユーザの入退場を管理することが可能な入退場管理装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上述した課題を解決するため、本発明の入退場管理装置は、実空間上に所在する各種施設に対するユーザの入退場を管理する入退場管理装置であって、前記施設内の各出入口近傍に設置され、該当する出入口近傍の検知エリアを含む照射エリアに対してミリ波帯の検知信号を照射するとともに、当該照射された検知信号の当該照射エリア内に存在する物体による反射波を受信するミリ波センサと、前記検知信号と前記反射波に基づき、前記ミリ波センサから当該物体までの距離と角度を少なくとも算出する算出手段と、前記算出結果に基づき、前記検知エリアに対する前記物体の侵入を検知する検知手段と、前記施設に対する入退場を制限されないユーザによって携行された無線タグ装置から所定形式の警報キャンセルデータを取得する取得手段と、前記検知エリアに対する前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき、警報発報の要否を判定する判定手段と、前記判定手段において前記警報の発報が必要と判定された場合にのみ音及び光の少なくとも一方を用いて前記施設の管理者に警報を発報するための処理を実行する警報発報手段と、を有する構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明の入退場管理装置は、施設の出入口近傍に対してミリ波センサにより検知エリアを形成し、当該検知エリアにユーザが侵入すると警報を発報することができるので、無断で出入口を通過しようとするユーザが存在する場合には、当該ユーザの通信端末装置の携行の有無とは無関係に警報を発報することができ、例えば、施設入所ユーザの無断外出を未然に防止できる他、入場権限のないユーザが施設内に不正に入場することを防止することができる。
【0011】
また、本発明の入退場管理装置は、ミリ波センサによって施設出入口近傍の限られたエリアに検知エリアを含む照射エリアを絞り込みつつ、検知エリアへの侵入を検知することができるので、ユーザが単に通路を通過しているだけの場合にユーザが無断で外出しようとしているものと誤って検知され、誤報が発生することを防止できる。特に、30~300GHz程度の周波数を持つミリ波帯の電磁波は、光に近い性質を有し、高い直進性を有するので、送信用アンテナ(
図5参照)の視野角を調整することで指向性を調整し、その照射範囲を略扇状の領域に調整できる(
図2参照)。従って、本発明の構成によれば、出入口近傍の狭い照射エリアにのみ検知信号を照射して、検知エリアを出入口近傍の狭いエリアに絞り込みつつ、検知エリアに対するユーザの侵入を検知することができる。
【0012】
さらに、本発明の入退場管理装置は、例えば、施設の運営スタッフや外来客、外出を許可された施設入所ユーザ等、当該施設に対する入退場を制限されないユーザに無線タグ装置を携行させることにより、当該ユーザが検知エリアに侵入した場合であっても警報の発報をキャンセルすることができる。この結果、本発明の入退場管理装置によれば、これらユーザの侵入検知時に警報は発報されず、誤報を確実に防止できるとともに、施設利用ユーザ全員の情報を装置側にて管理する必要がないので、施設利用ユーザの数が増加することによってユーザ情報の管理が煩雑化することを防止できる。なお、本発明において、検知エリアに対する物体の侵入検知タイミングと警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき、警報発報の要否を判定する際の具体的な方法は任意であり、例えば、(1)無線タグ装置から警報キャンセルデータが取得された際に、当該取得タイミングから所定時間(例えば、1秒間等)を警報のキャンセル有効期間(以下、「警報キャンセル有効期間」という。)と予め定めて、当該警報キャンセル有効期間内に侵入検知タイミングが到来した場合(すなわち、当該警報キャンセル有効期間中に物体の侵入検知された場合)に警報の発報をキャンセルするものと判定する方法(以下、「判定方法1」という。)と、(2)物体の侵入検知タイミングから所定期間(例えば、1秒間)内に警報キャンセルデータが取得された場合に、警報の発報をキャンセルするものと判定する方法(以下、「判定方法2」という。)と、これらを組み合わせた方法等が想定されるが、この点については、後に詳述する。
【0013】
この結果、本発明の入退場管理装置は、施設管理者の業務負担を軽減しつつ、煩雑なユーザ情報の管理を簡略化するとともに、通信端末装置の不所持等の条件に依存することなく、誤報の発生を防止しながら各種施設に対するユーザの入退場を管理することが可能となる。
【0014】
(2)また、上記構成において、前記取得手段が、前記警報キャンセルデータとして、前記無線タグ装置から発信される所定形式のビーコン信号を受信するとともに、前記判定手段が、当該ビーコン信号が受信された際の受信電界強度に応じて当該ビーコン信号の送信元の前記無線タグ装置が前記出入口近傍の有効エリア内に所在するか否かを判定し、(a)当該判定結果及び(b)前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき前記警報発報の要否を判定する構成を採用してもよい。
【0015】
この構成により、無線タグ装置を例えばBLEのビーコン発信器やアクティブ型のRFIDなどの既存の装置で構成することができるので、システム構成を簡略化してシステム構築及び運用時における費用を削減できる。また、この構成により、無線タグ装置が有効エリア内に所在する場合にのみ、警報の発報をキャンセルすることもできるので、ビーコン信号の受信可能エリアが大きい場合(例えば、10m~数10m)であっても、該当する検知エリア近傍に所在する無線タグ装置によって発信されたビーコン信号を受信した場合に限り、警報の発報をキャンセルし、当該検知エリアから離れた位置に所在する無線タグ装置の発信するビーコン信号により警報の発報が誤ってキャンセルされてしまうような事態の発生を防止することもできる。
【0016】
(3)また、請求項1又は2に記載の構成において、前記判定手段が、前記警報キャンセルデータの取得タイミングから予め定められた第1時間内に前記侵入検知タイミングが到来した場合に、前記警報の発報を不要と判定する一方、前記第1時間内に前記侵入検知タイミングが到来しない場合に、前記警報の発報を必要と判定する構成を採用してもよい。
【0017】
この構成により、本発明の入退場管理装置は、無線タグ装置から警報キャンセルデータが取得された場合に当該取得タイミングから所定時間(例えば、1秒間等)を警報キャンセル有効期間(第1時間)と予め定めて、当該期間中に物体侵入検知タイミングが到来した場合に警報の発報をキャンセルするものと判定する一方、警報キャンセル有効期間外に侵入検知タイミングが到来すると警報の発報を必要と判定し、上記判定方法1を実現できる。
【0018】
(4)また、請求項1又は2に記載の構成において、前記判定手段が、前記侵入検知タイミングから予め定められた第2時間内に前記警報キャンセルデータが取得された場合に、前記警報の発報を不要と判定する一方、前記第2時間内に前記警報キャンセルデータが取得されない場合に、前記警報の発報を必要と判定する構成としてもよい。
【0019】
この構成により、本発明の入退場管理装置は、物体の侵入検知タイミングから所定期間(例えば、1秒間)を予め第2時間と定めて当該第2時間内に警報キャンセルデータが取得された場合に、警報の発報をキャンセルするものと判定する一方、当該第2時間内に警報キャンセルデータが取得されない場合に、警報の発報を必要と判定し、上記判定方法2を実現できる。
【0020】
(5)また、請求項1~4のいずれか1項に記載の構成において、前記算出手段が、前記物体までの距離と角度を算出するとともに、当該物体の移動速度を算出し、前記検知手段が、前記算出結果に基づき、前記検知エリアに侵入した前記物体が前記出入口を通過しようとしているか否かを検知し、前記判定手段が、前記検知手段によって前記出入口を通過しようとしている前記物体が検知された場合にのみ、前記検知エリアに対する前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき、警報発報の要否を判定する構成としてもよい。
【0021】
この構成により、本発明の入退場管理装置は、ユーザの行動をトラッキングしつつ、検知エリアに侵入したユーザが出入口を通過しようとしている場合にのみ警報を発報できるので、例えば、出入口を通過する意図がなく、単に出入口近傍の通路やホール等をうろついているだけのユーザが誤って検知エリアに侵入したケースや、ユーザが出入口前を横切る方向に検知エリアを通過したようなケース、検知エリア内で停滞し留まっているユーザが存在するケース等を警報発報の要否判定対象から除外して、入退場管理装置の処理負担を軽減しつつ、誤報の発生を確実に防止することができる。
【0022】
(6)また、請求項1~5のいずれか1項に記載の構成において、前記照射エリア内の一部に長方形又は台形の前記検知エリアを設定するための距離情報及び角度情報を含む検知エリア設定データを記憶した記憶手段をさらに有し、前記検知手段が、前記算出された距離が前記距離情報により規定される距離範囲内であり、且つ、前記算出された角度が前記角度情報により規定される角度範囲内である場合に、当該物体が前記検知エリア内に侵入したものと検知する構成としてもよい。
【0023】
この構成により、本発明の入退場管理装置は、距離情報及び角度情報を含む検知エリア設定データに基づき、出入口近傍の狭いエリアに長方形又は台形の検知エリアを設定しつつ、検知エリアに対するユーザの侵入を検知することができるので、簡易な構成にて誤報の発生を確実に防止することができる。
【0024】
(7)また、請求項6に記載の構成において前記ミリ波センサが、前記施設の床部から100±10cm程度の高さに設置されるとともに、該当する前記出入口に向けて前記検知信号を照射し、前記検知手段が、前記算出結果と前記検知エリア設定データに基づき、前記検知エリアに対する物体の侵入を検知する構成としてもよい。
【0025】
この構成により、本発明入退場管理装置は、ユーザの腰から背中程度の高さで検知信号を照射できる。特に、送信用アンテナにより指向性を持たせた場合であってもビームは広がり、例えば、送信用アンテナの視野角を±10°程度に設定しても、送信用アンテナから3m先では±50cm程度に広がるのでユーザの腰から背中程度の高さでレーダ波を照射することにより、検知エリアに対する物体(ユーザ)の侵入を確実に検知することができる。また、ミリ波センサの設置高さに依存して発生する仰角エラーを補正する必要も生じないので、容易に検知エリアを設定できる。
【0026】
(8)また、請求項6に記載の構成において、前記記憶手段には、前記ミリ波センサの設置された高さに依存して発生する仰角エラーに応じた前記距離情報を含む前記検知エリア設定データが記憶され、前記検知手段が、前記仰角エラーに応じた距離情報を含む前記検知エリア設定データに基づき検知エリアを設定して、前記仰角エラーを補正しつつ前記検知エリアに対する物体の侵入を検知する構成としてもよい。
【0027】
この構成により、本発明の入退場管理装置は、仰角エラーを補正しつつ、検知エリアを設定できるので、ミリ波センサを設置する高さの影響を受けることなく、意図した位置に検知エリアを設定することができる。
【0028】
(9)また、請求項1~8のいずれか1項に記載の構成において前記施設が医療機関又は介護施設であるとともに前記ユーザが当該施設に入所しているユーザであり、前記警報発報手段が、前記警報を発報する際に、当該施設に入所しているユーザが無断で外出しようとしている可能性があることを前記管理者に報知する構成としてもよい。
【0029】
この構成により、本発明の入退場管理装置は、医療機関や介護施設等の施設において、施設入所ユーザの無断外出を確実に防止して、施設入所ユーザの保護を実現できる。
【0030】
(10)また、本発明の入退場管理システムは、実空間上に所在する各種施設に対するユーザの入退場を管理する入退場管理システムであって、前記施設に対する前記ユーザの入退場を管理する入退場管理装置と、前記施設に対する入退場を制限されないユーザによって携行され、所定形式の警報キャンセルデータを出力する無線タグ装置と、前記施設内の各出入口近傍に設置され、該当する出入口近傍の検知エリアを含む照射エリアに対してミリ波帯の検知信号を照射するとともに、当該照射された検知信号の当該照射エリア内に存在する物体による反射波を受信するミリ波センサと、を有し、前記入退場管理装置が、前記検知信号と前記反射波に基づき算出された、前記ミリ波センサから当該物体までの距離と角度の算出結果を取得する第1取得手段と、前記取得した算出結果に基づき、当該検知エリアに対する前記物体の侵入を検知する検知手段と、前記施設に対する入退場を制限されないユーザによって携行された無線タグ装置から所定形式の警報キャンセルデータを取得する第2取得手段と、前記検知エリアに対する前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき、警報発報の要否を判定する判定手段と、前記判定手段において前記警報の発報が必要と判定された場合にのみ、音及び光の少なくとも一方を用いて前記施設の管理者に警報を発報するための処理を実行する警報発報手段と、を有する構成を有している。
【0031】
この構成により、本発明の入退場管理システムは、例えば、上記判定方法1及び2の少なくとも一方の判定方法による判定結果に応じて、警報を発報し、又は、警報の発報をキャンセルすることにより、施設管理者の業務負担を軽減しつつ、煩雑なユーザ情報の管理を簡略化するとともに、通信端末装置の不所持等の条件に依存することなく、誤報の発生を防止しながら各種施設に対するユーザの入退場を管理することが可能となる。
【0032】
(11)また、本発明の入退場管理方法は、実空間上に所在する各種施設に対するユーザの入退場を管理する入退場管理方法であって、前記施設内の各出入口近傍に設置されたセンサによって、該当する出入口近傍の検知エリアを含む照射エリアに対してミリ波帯の検知信号を照射するとともに、当該照射された検知信号の当該照射エリア内に存在する物体による反射波を受信する第1ステップと、前記検知信号と前記反射波に基づき、前記センサから当該物体までの距離と角度を少なくとも算出し、当該算出結果に基づき、前記検知エリアに対する前記物体の侵入を検知する第2ステップと、前記施設に対する入退場を制限されないユーザによって携行された無線タグ装置から所定形式の警報キャンセルデータを取得する第3ステップと、前記検知エリアに対する前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき、警報発報の要否を判定する第4ステップと、前記第4ステップにおいて前記警報の発報が必要と判定された場合にのみ音及び光の少なくとも一方を用いて前記施設の管理者に警報を発報するための処理を実行する第5ステップと、を有する構成を有する。
【0033】
この構成により、本発明の入退場管理方法は、例えば、上記判定方法1及び2の少なくとも一方の判定方法による判定結果に応じて、警報を発報し、又は、警報の発報をキャンセルすることにより、施設管理者の業務負担を軽減しつつ、煩雑なユーザ情報の管理を簡略化するとともに、通信端末装置の不所持等の条件に依存することなく、誤報の発生を防止しながら各種施設に対するユーザの入退場を管理することが可能となる。
【0034】
(12)また、本発明プログラムは、実空間上に所在する各種施設に対するユーザの入退場を管理する入退場管理装置として機能するコンピュータシステムを、前記施設内の各出入口近傍に設置され、該当する出入口近傍の検知エリアを含む照射エリアに対してミリ波帯の検知信号を照射するとともに、当該照射された検知信号の当該照射エリア内に存在する物体による反射波を受信するミリ波センサから当該物体までの距離と角度を示すデータであって、前記検知信号と前記反射波に基づき算出された前記距離と角度を示すデータを取得する第1取得手段、前記取得したデータに基づき、当該検知エリアに対する前記物体の侵入を検知する検知手段、前記施設に対する入退場を制限されないユーザによって携行された無線タグ装置から所定形式の警報キャンセルデータを取得する第2取得手段、前記検知エリアに対する前記物体の侵入検知タイミングと前記警報キャンセルデータの取得タイミングの時間的な関係に基づき、警報発報の要否を判定する判定手段、前記判定手段において前記警報の発報が必要と判定された場合にのみ、音及び光の少なくとも一方を用いて前記施設の管理者に警報を発報するための処理を実行する警報発報手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の入退場管理装置、入退場管理システム、入退場管理方法及びプログラムは、施設管理者の業務負担を軽減しつつ、煩雑なユーザ情報の管理を簡略化するとともに、通信端末装置の不所持等の条件に依存することなく、誤報の発生を防止しながら各種施設に対するユーザの入退場を管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係る入退場管理システムの第1実施形態における構成例を示すシステム構成図である。
【
図2】第1実施形態における入退場管理システムの出入口近傍におけるレーダ波の照射エリアと検知エリアの位置関係を示すイメージ図である。
【
図3】第1実施形態における入退場管理システムの概要動作を示すイメージ図である。
【
図4】第1実施形態の管理サーバ装置に設けられる出入口管理データベースに格納されるデータの一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態におけるミリ波センサの一構成例を示すブロック図である。
【
図6】第1実施形態のミリ波センサによって送信されるFMCW方式のレーダ波を説明するための図であり、(A)には、レーダ波として送信されるチャープ信号(TXChirp)の周波数-時間特性を示し、(B)の上側には、ミリ波センサの送信用アンテナから送信したTXChirpと、物体(ユーザ)により反射され、受信用アンテナにより受信したチャープ信号(RXChirp)の関係、(B)の下側には、TXChirp及びRXChirpとミキサから出力されるIF(中間周波数)信号との関係、(C)には、物体の移動速度算出のためにレーダ波として送信するチャープフレームの構成を示している。
【
図7】第1実施形態における入退場管理装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図8】(A)及び(B)は、第1実施形態における入退場管理装置の検知エリア設定部において検知エリアを設定する際の設定方法a及びbの原理を説明するイメージ図である。
【
図9】ミリ波センサの設置位置に応じて発生する仰角エラーを説明するための図であり、(A)には、h1の高さにミリ波センサを設置した場合に、h2の高さにて発生する仰角エラーを示し、(B)には、対象物の上側(施設天井側)と下側(施設床側)において発生する仰角エラーの違いを示している。
【
図10】第1実施形態の入退場管理装置において実行されるメイン処理を示すフローチャートである。
【
図11】第1実施形態の入退場管理装置において実行されるキャンセルサブ処理を示すフローチャートである。
【
図12】第2実施形態の入退場管理システムにおける概要動作を示すタイミングチャートである。
【
図13】第2実施形の入退場管理装置において実行されるメイン処理を示すフローチャートである。
【
図14】第2実施形態の入退場管理装置において実行されるキャンセルサブ処理を示すフローチャートである。
【
図15】1×12SIMO(Single Input Multi Output)方式を採用した変形例5のミリ波センサの構成を示す図である。
【
図16】3×4MIMO(Multi-Input Multi-Output)方式を採用した変形例5のミリ波センサの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、実空間上に存在する介護施設において、施設入所ユーザの無断外出を防止する機能を実現するためのシステムに対し、本発明に係る入退場管理装置、入退場管理システム及び入退場管理方法を適用した場合の実施形態である。但し、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0038】
[A]第1実施形態
[A-1]入退場管理システム1の構成及び概要
まず、
図1~4を用いて、本発明の第1実施形態における入退場管理システム1の構成及び概要について説明する。なお、
図1は、本実施形態の入退場管理システム1の一構成例を示すシステム構成図、
図2は、本実施形態の入退場管理システム1において施設Fの出入口EEの近傍におけるレーダ波RWの照射エリアIAと検知エリアDAの位置関係を示すイメージ図、
図3は、本実施形態の入退場管理システム1の概要動作を示すイメージ図、
図4は、本実施形態の管理サーバ装置40に設けられる出入口管理DB412に格納されるデータの一例を示す図である。また、
図1~3においては、図面が煩雑になることを防止するため、一部のユーザ(例えば、施設入所ユーザや施設運営スタッフ等)、無線タグ装置30、通信端末装置50及び出入口EEのみを表示している。すなわち、入退場管理システム1には、図示するよりも多くのユーザ、無線タグ装置30及び通信端末装置50が存在するとともに、実際の施設Fには、図示するよりも多くの出入口EEが設けられ、各出入口EEの近傍には、各々、入退場管理装置10とミリ波センサ20が設けられている。なお、各出入口EEに設けるミリ波センサ20の台数については任意であり、各々異なる角度から検知エリアDAに対してレーダ波RWを照射する複数台のミリ波センサ20を設置するようにしてもよいが、本実施形態においては、発明の理解を容易にするため、各出入口EEに1台のミリ波センサ20が設けられているものとして説明を行う。また、本実施形態のレーダ波RWは、例えば、本発明の「検知信号」に相当する。
【0039】
図1~3に示すように本実施形態の入退場管理システム1は、(a)施設Fの各出入口EEの近傍に設置された複数のミリ波センサ20と、(b)各々対応するミリ波センサ20に接続され、ミリ波センサ20による検出結果に応じて自機の設置された各出入口EEを利用したユーザの入退場を管理する複数の入退場管理装置10と、(c)施設Fへの入退場を制限されないユーザ(例えば、施設管理者や外来者、外出許可を得ている施設入所ユーザ等)によって携行され、例えば、自機に対応するタグID等のデータを含む、所定形式のビーコン信号を発信する複数の無線タグ装置30と、(d)各出入口EEに設置された入退場管理装置10に通信接続され、入退場管理システム1の各部を統合管理する管理サーバ装置40と、(e)施設Fの管理者(例えば、運営スタッフ等)によって携行される複数の通信端末装置50と、を有し、ミリ波センサ20によって出入口EE近傍の検知エリアDAを含む照射エリアIA(
図2等においてチェック模様の網掛けにて表示)に対してミリ波帯(30~300GHz程度の周波数帯)のレーダ波RWを照射(発射、送信)することによって、検知エリアDA(
図2等において斜線模様の網掛けにて表示)に対する物体(ユーザ)の侵入を検知し(
図3ステップ[1])、検知エリアDAに対する物体の侵入が検知された際に、入退場管理装置10が通信端末装置50に警報信号を送信して(
図3ステップ[3])、施設入所ユーザが無断で外出する可能性があることを音及び光の少なくとも一方を用いつつ、通信端末装置50にて管理者に報知(すなわち、警報の発報)するためのものである。なお、入退場管理装置10が検知エリアDAに対する物体の侵入を検知する際の具体的な方法及び原理に関しては、後に詳述する。また、警報信号の形式及び通信端末装置50における警報の具体的な発報方法に関しては任意であるが、本実施形態においては、説明を具体化するため、検知エリアDAに対する物体の侵入検知時に入退場管理装置10が、自機の設置された出入口EE(すなわち、物体の侵入が検知された出入口EE)の出入口名又は当該出入口EEの施設F内における位置情報(後述する)を含む警報信号を通信端末装置50に送信し、通信端末装置50は、入退場管理装置10から受信した警報情報に基づき物体の侵入が検知された出入口EEの出入口名等を表示させつつ、音及び光の少なくも一方を用いてどの出入口EEで無断外出が発生する可能性があるのかを管理者に報知する構成が採用されているものとして説明を行う。
【0040】
但し、施設Fに対する入退場を制限されないユーザが検知エリアDA内に侵入した場合にまで入退場管理装置10が通信端末装置50に警報信号を送信してしまうと、無断外出が発生する可能性がないにも関わらず、通信端末装置50にて警報が発報され、管理者に無駄な負担がかかる可能性がある。そこで、本実施形態の入退場管理システム1においては、施設Fに対する入退場を制限されないユーザに対しては、予め無線タグ装置30を配布して携行させ(以下、無線タグ装置30を携行するユーザを「携行ユーザ」という。)、検知エリアDAに対するユーザの侵入検知後、予め定められた警報のキャンセル設定時間(例えば、1秒間等、以下、「設定時間」という。)以内に入退場管理装置10が無線タグ装置30によって発信されたビーコン信号を受信すると(
図3ステップ[2])、通信端末装置50に対する警報信号の送信をキャンセルする構成を採用することとした。すなわち、本実施形態においては、上記判定方法2に対応する警報発報の要否判定が実現される。なお、本実施形態の「設定時間」は、例えば、本発明の「第2時間」に相当するとともに、「ビーコン信号」は、例えば、本発明の「警報キャンセルデータ」に相当する。
【0041】
ここで、無線タグ装置30によって送信されるビーコン信号の受信可能エリアは、BLEなどの通信方式においては、約10m程度に設定されることから、検知エリアDAへの侵入検知後、設定時間内にビーコン信号を受信した全てのケースで警報の発報をキャンセルしてしまうと、当該検知エリアDAの近傍に所在しない無線タグ装置30の発信したビーコン信号により、誤って警報の発報がキャンセルされてしまう可能性を排除できない。
【0042】
そこで、本実施形態の入退場管理システム1においては、入退場管理装置10が、ビーコン信号受信時の受信電界強度に基づき、当該ビーコン信号の送信元無線タグ装置30が検知エリアDA近傍の有効エリアEA内に所在するか否かを判定して(
図3参照)、当該無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在するものと判定された場合にのみ、警報の発報をキャンセルする構成を採用することとした。なお、ビーコン信号の受信可能エリアは、例えば、受信電力が-90dbm(デシベルミリワット)で10m程度となるのに対して、有効エリアEAは、これよりも小さく、且つ、検知エリアDAよりも大きい5m程度となるように、受信電力を-80dbm程度に設定することが望ましい(
図3参照)。
【0043】
この構成により、本実施形態の入退場管理装置10は、ユーザの侵入が検知された検知エリアDA近傍に所在する無線タグ装置30によって発信されたビーコン信号が受信された場合にのみ、警報信号の送信をキャンセルできるので、当該出入口EEの近傍に所在しない無線タグ装置30(例えば、違う出入口EEや施設F内の違う場所に所在する無線タグ装置30等)によって送信されたビーコン信号によって警報の発報がキャンセルされることを確実に防止できる。また、有効エリアEAを5m程度に設定した場合には、管理者等が対応する出入口EE近傍に所在することとなるので、所謂共連れによって施設入所ユーザが出入口EEを通過しようとしても、目視にて確認して、無断外出の発生を防止することができる。
【0044】
以上説明した構成により本実施形態の入退場管理システム1は、無線タグ装置30を未携行のユーザ(すなわち、外出許可を得ていない施設入所ユーザ等)が検知エリアDAに侵入すると警報が発報される一方、携行ユーザが検知エリアDA内に侵入した場合には、警報の発報をキャンセルできるので、誤報の発生を防止しつつ、施設入所ユーザの無断外出を確実に防止できる。また、本実施形態の入退場管理システム1は、ミリ波センサ20によって検知エリアDAを出入口EE近傍の限られたエリアに設定できるので、施設入所ユーザが単に施設F内の通路を歩行しているだけで警報が発報されることを防止できる。
【0045】
特に、30~300GHz程度の周波数を有するミリ波帯の電磁波(すなわち、レーダ波RW)は、高い直進性有し、後述する送信用アンテナTXA(
図5参照)の視野角を調整することにより、レーダ波RWの照射角を絞り込むことができるので、
図2のように略扇形状の照射エリアIAにのみレーダ波RWを照射して、出入口EE近傍に適切なサイズの検知エリアDAを設定することができる。
【0046】
係る機能を実現するため、本実施形態の入退場管理システム1においては、
図1~3に例示するように、レーダ波RWが出入口EEのドアEED(すなわち、開口部)に向けて照射される位置にミリ波センサ20が設置されており、このミリ波センサ20が、検知エリアDAを含む出入口EE近傍の照射エリアIAに対してレーダ波RWを照射しつつ、照射エリアIA内に存在する物体(ユーザ)によって反射されたレーダ波RWの反射波を受信して、検知エリアDAに対するユーザの侵入を検知する。なお、ミリ波センサ20の具体的な設置位置に関しては後に詳述する。
【0047】
特に、本実施形態に特徴的な事項としてミリ波センサ20は、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave:周波数変調連続波)方式の信号(所謂、チャープ信号)をレーダ波RWとして照射するとともに、照射したレーダ波RWと反射波に基づきミリ波センサ20から当該物体までの距離、当該物体の移動速度及び当該物体までの角度を算出する構成になっている。そして、入退場管理装置10は、当該算出した距離と角度に基づき、照射エリアIA内に設定された検知エリアDAにユーザが侵入したか否かを判定する。なお、照射エリアIA内に検知エリアDAを設定する具体的な方法に関しては後に詳述する。また、距離、速度及び角度の算出は、ミリ波センサ20が入退場管理装置10と連動して算出するようにしてもよいが、本実施形態においては、装置構成を簡略化して理解を容易にするため、ミリ波センサ20単体で距離、速度及び角度を算出し、当該算出した距離等に関するデータを入退場管理装置10に供給するものとして説明を行い、入退場管理装置10側において距離等を算出する構成に関しては変形例3にて詳述する。
【0048】
[A-2]入退場管理システム1の概略構成
ミリ波センサ20は、所謂、SIMO(Single Input Multi Output)方式のミリ波センサであり、レーダ波RWを送信するための1つの送信用アンテナTXAと、照射エリアIA内に所在する物体によるレーダ波RWの反射波を受信するための2つの受信用アンテナRXA1、RXA2(以下、各受信用アンテナを特に特定する必要がない場合、「受信用アンテナRXA」という。)及び各受信用アンテナRXAに対応する第1及び第2受信部24-1及び24-2等を有し、自機の設置された出入口EE近傍の照射エリアIAに対して1本の送信用アンテナTXAによりレーダ波RWを照射(送信)するとともに、検知エリアDA内に所在する物体によって反射されたレーダ波RWの反射波を2本の受信用アンテナRXAにより受信し、送信信号(すなわち、レーダ波RW)と反射波に基づき、自機から物体までの距離、当該物体の移動速度及び自機から物体までの角度を算出する。なお、ミリ波センサ20において距離、速度及び角度を算出する方法に関しては後に詳述する。また、照射エリアIA内に物体が存在しない場合、レーダ波RWは、出入口ドアEEDや施設F内の壁等の反射物によって反射され、受信用アンテナRXAにより受信されるが、これらの反射物は検知エリアDAの外側に存在するため、検知エリアDAにユーザが侵入したものと判定されることはなくなっている。また、後述のようにミリ波センサ20における角度検出時の角度分解能θRes(すなわち、同距離に存在する2つの物体を分離検出可能な最小角度)は、受信用アンテナRXAの数に応じて変化し、アンテナ数が多いほど、高い角度分解能θResを実現できる。従って、高い角度分解能θResを実現するためには、例えば1×12のSIMO方式や3×4のMIMO方式を採用することが望ましいが、これらの方式を採用する場合には、装置構成が複雑化するため、本実施形態においては、ミリ波センサ20として1×2のSIMO方式を採用するミリ波センサ20を利用するものとして説明を行い、1×12SIMOの方式及び3×4のMIMO方式のミリ波センサ20を採用する場合については、変形例5にて詳述する。
【0049】
入退場管理装置10は、自機に接続されたミリ波センサ20から供給されるデータに基づき、検知エリアDAに対する物体の侵入を検知する。
【0050】
また、入退場管理装置10は、ビーコン信号の受信機能を有するとともに、警報信号を通信端末装置50に送信する機能を有している。そして、入退場管理装置10は、検知エリアDAに対する物体の侵入検知タイミングから設定時間内に無線タグ装置30からビーコン信号を受信しない場合に、警報信号を送信する一方、設定時間内にビーコン信号を受信した場合には、当該ビーコン信号の受信電界強度に基づき、当該ビーコン信号の送信元無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在するか否かを特定し、該当する無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在するものと特定した場合に警報信号の送信をキャンセルする。
【0051】
さらに、入退場管理装置10は、直接又は図示せぬネットワークを介して管理サーバ装置40に通信接続され、検知エリアDAに対する物体の侵入を検知すると、自機に割り当てられた入退場管理装置IDを付加した、侵入検知情報を管理サーバ装置40に送信し、自機の設置された出入口名及び当該出入口EEの施設内位置情報の少なくとも一方を含む侵入検知出入口情報を管理サーバ装置40から取得する。そして、入退場管理装置10は、管理サーバ装置40から取得した侵入検知出入口情報を含む警報信号を生成して、通信端末装置50に送信する。
【0052】
この結果、通信端末装置50においては、警報信号に含まれる侵入検知出入口情報に基づき、物体の侵入が検知された出入口EEの名称や施設F内における位置等の情報とともに、例えば「正面玄関から入所者が無断外出しようとしている可能性がありますので、ご注意下さい。」等の文字列が表示され、これとともに音及び光の少なくとも一方を用いて警報が発報されることとなる。なお、この場合には、文字列の表示に換えて、音声で「正面玄関から無断外出の可能性があります。ご注意下さい。」等の内容を報知するようにしてもよい。また、入退場管理装置10が警報信号を送信する場合には、入退場管理システム1内の一部の通信端末装置50にのみ警報信号を送信するようにしても良く、全ての通信端末装置50に同報送信するようにしてもよい。
【0053】
無線タグ装置30は、例えば、UHF周波数帯のアクティブRFIDやBLEビーコンの発信器等の装置であり、自機に割り当てられたタグIDを記憶しており、自機のタグIDを含むビーコン信号を所定の周期(例えば、1秒周期)にて送信する。なお、本実施形態においては、無線タグ装置30が警報キャンセルデータとしてのビーコン信号を周期的に発信する構成を採用するものとして説明を行うが、警報キャンセルデータは、必ずしも無線タグ装置30から能動的に発信する必要はなく、後述のように入退場管理装置10からの信号に基づき、無線タグ装置30が受動的に送信する構成としてもよい。また、警報キャンセルデータの形式はタグIDを含むビーコン信号である必要はなく、例えば、BLEパケットを含むビーコン信号や所定形式のパイロット信号であってもよく、さらには、所定のインパルス信号など、その形式は如何なるものであってもよい。
【0054】
管理サーバ装置40は、入退場管理システム1内の各装置を統合管理するコンピュータシステムであり、(1)施設F内の各出入口EEに設置された入退場管理装置10にて検知された物体(ユーザ)の侵入履歴を管理するための侵入検知履歴情報に対応するデータが記憶される検知履歴管理DB411と、(2)施設F内の各出入口EEと当該出入口EEに設置された入退場管理装置10を紐付けて管理するためのデータが記憶される出入口管理DB412と、を有している。そして、この出入口管理DB412には、
図4に例示するように、(a)各出入口EEに予め割り当てられた出入口IDと、(b)当該出入口EEの出入口名と、(c)当該出入口EEに設置された入退場管理装置10に対応する入退場管理装置IDと、(d)当該出入口EEの施設F内における位置を示す施設内位置情報と、が対応付けて記憶されている。
【0055】
例えば、
図4に例示する場合には、出入口ID「EE001」に対応する「第1出入口(正面玄関)」に入退場管理装置ID「MD001」に対応する入退場管理装置10が設置され、当該出入口EEの施設内位置情報として「MAP001」なるデータが記憶される場合のデータ格納例が示されている。なお、施設内位置情報の形式に関しては任意であり、例えば、施設Fのフロアマップ上に該当する出入口EEの位置を示した形式のものであってもよい。
【0056】
そして、管理サーバ装置40は、入退場管理装置10から侵入検知情報が送信されてくると、当該情報に付加された入退場管理装置IDに基づき、出入口管理DB412を検索して、当該情報の送信元入退場管理装置10が設置された出入口EEを特定しつつ、当該特定した出入口EEの出入口名及び施設内位置情報の少なくとも一方を出入口管理DB412から読み出し、侵入検知出入口情報として対応する入退場管理装置10に配信する。また、このとき管理サーバ装置40は、出入口EEの特定後、侵入検知履歴情報を生成して検知履歴管理DB411に記憶させる。なお、検知履歴管理DB411に記憶する侵入検知履歴情報のフォーマットに関しては任意であり、例えば、侵入検知情報の受信日時(すなわち、侵入検知日時)と、侵入検知出入口情報と、を対応付けたフォーマットを採用して、どの出入口EEで、何時物体の侵入が検知されたのかを管理者が後に確認可能な構成を採用するようにしてもよい。この構成により、本実施形態の入退場管理システム1は、施設入所ユーザが見当たらないときに、管理者が侵入検知履歴情報を確認することにより、当該ユーザを早期に発見することができる。また、本実施形態においては、施設F内における出入口EE及び各出入口EEに設置された入退場管理装置10を管理サーバ装置40にて一元管理するとともに、入退場管理装置10の構成を簡略化するため、管理サーバ装置40に出入口管理DB412を設け、入退場管理装置10から侵入検知情報が送信された場合に、当該侵入検知情報の送信元入退場管理装置10に侵入検知出入口情報として出入口名及び施設内位置情報の少なくとも一方を送信する構成を採用するが、入退場管理装置10に自機の設置されている出入口名や施設内位置情報を記憶させ、当該情報を含む警報信号を送信する構成を採用してもよい。
【0057】
通信端末装置50は、例えば、スマートフォンやタブレット型情報通信端末装置、携帯電話機等、管理者によって携行される携帯型の通信端末装置であり、図示せぬ表示部やスピーカ、LED(Light Emitting Diode)ライト等を有し、警報信号を受信すると当該受信した警報信号に含まれる侵入検知出入口情報に基づき、物体の侵入が検知された出入口EEの名称や施設F内における位置等の情報とともに、例えば「正面玄関から入所者が無断外出しようとしている可能性がありますので、ご注意下さい。」等の文字列を表示する。また、このとき、通信端末装置50は、LEDライトを点滅させ、これとともにブザー音等の警報音を出力する。
【0058】
さらに、通信端末装置50は、HTML(Hyper Text Markup Language)やXML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語によって記述されたデータをユーザが閲覧可能な形式にて表示するためのWebブラウザを含む各種のアプリケーションプログラムを搭載し、管理サーバ装置40にアクセスすることにより、管理サーバ装置40から侵入検知履歴情報を取得して、当該取得した侵入検知履歴情報を管理者が閲覧可能に表示して、どの出入口EEで何時無断外出の可能性が生じたのかを管理者が閲覧可能な構成を有している。
【0059】
[A-3]ミリ波センサ20の構成
次いで、
図5及び6を用いて、本実施形態のミリ波センサ20の構成について説明する。なお、
図5は、本実施形態のミリ波センサ20の構成例を示すブロック図であり、
図6は、ミリ波センサ20によって送信されるレーダ波RWを説明するための図である。また、
図6において(A)には、レーダ波RWとして送信するチャープ信号(以下、「TXChirp」という。)の周波数-時間特性を示し、(B)の上側には、ミリ波センサ20の送信用アンテナTXAから送信したTXChirpと、物体により反射され、受信用アンテナRXAにより受信したチャープ信号(以下、「RXChirp」という。)の関係を示すとともに、(B)の下側には、TXChirp及びRXChirpと、ミキサ25-1及び25-2から出力されるIF(中間周波数)信号と、の関係を示し、(C)には、物体の移動速度算出のために送信するTXChirpのチャープフレームの構成を示している。
【0060】
図5に示すように本実施形態のミリ波センサ20は、(1)入退場管理装置10に通信接続され、デジタル信号処理部27の生成したデータを入退場管理装置10に供給するI/Oインターフェース部21と、(2)TXChirpを生成するチャープシンセサイザ22と、(3)チャープシンセサイザ22の生成したTXChirpを増幅した後、送信用アンテナTXAから送信する送信部23と、(4)各受信用アンテナRXAにより受信されたRXChirpを増幅して、各々対応するミキサ25-1及び25-2に出力する第1受信部24-1及び第2受信部24-2と、(5)各受信用アンテナRXAに対応するミキサ25-1及び25-2(以下、各ミキサを特に特定する必要がない場合には、「ミキサ25」という。)と、を有し、各ミキサ25-1及び25-2には、各々対応する受信用アンテナRXAにて受信されたRXChirpが入力されるとともに、チャープシンセサイザ22の生成したTXChirpが入力される構成になっている。そして、ミキサ25は、自回路に対応する受信部24から供給されるRXChirpとTXChirpを混合してIF信号を生成する。
【0061】
また、本実施形態のミリ波センサ20は、(6)各ミキサ25からの出力信号(すなわち、IF信号)にA/D(アナログ/デジタル)変換を施す、ADC(A/D Converter)26-1及び26-2(以下、各ADCを特に特定する必要がない場合には「ADC26」という。)と、(7)ADC26から出力される信号に対して信号処理を施すデジタル信号処理部27と、を有している。
【0062】
I/Oインターフェース部21は、例えば、USB(Universal Serial Bus)等の有線インターフェースであり、入退場管理装置10と接続され、デジタル信号処理部27の生成した距離データ、速度データ及び角度データを入退場管理装置10に供給する。
【0063】
チャープシンセサイザ22は、
図6(A)に示すように周波数を時間連続で直線的に変化させる変調方式(すなわち、FMCW方式)にてTXChirpを生成し、当該生成したTXChirpを送信部23及び各ミキサ25-1及び25-2に出力する。例えば、
図6(A)には、開始周波数f
c=60GHzから64GHzまで、チャープ帯域幅B=4GHz、持続時間T
c=100μ秒、チャープスロープ(傾き)S=40MHz/μ秒でアップチャープしてTXChirpを生成する場合の例を示している。なお、チャープシンセサイザ22は、I/Oインターフェース部21を介して入退場管理装置10から供給される制御コマンドに従ってTXChirpの生成を開始し、又は、TXChirpの生成を終了する構成としてもよく、ミリ波センサ20の電源がONとなったタイミングでTXChirpの生成を開始し、電源がOFFとなった時点で生成を終了するようにしてもよい。また、ミリ波センサ20の電源は、設置位置付近のコンセント等から供給して、入退場管理装置10による制御に応じて、電源をONにし、又は、OFFにする構成としてもよいが、本実施形態においては、説明を具体化するため、I/Oインターフェース部21を介して入退場管理装置10からミリ波センサ20に電力を供給する構成を採用し、チャープシンセサイザ22は入退場管理装置10の電源ONに合わせてTXChirpの生成を開始して、入退場管理装置10の電源がOFFにされるか、又は、入退場管理装置10に所定の入力操作(例えば、入退場監視の一時停止又は監視終了操作等)が行われ、入退場管理装置10からの電力供給が停止するまで、TXChirpの生成を継続するものとして説明を行う。この構成により、本実施形態の入退場管理システム1においては、入退場管理装置10の電源ONにされた後、入退場管理装置10の電源がOFFにされるか、入退場管理装置10に所定の入力操作がなされるまで、継続して照射エリアIAに対するレーダ波RWの照射状態が維持されることとなる。
【0064】
送信部23は、図示せぬパワーアンプ等の回路を有し、チャープシンセサイザ22から供給されるTXChirpを増幅して送信用アンテナTXAに供給することにより、送信用アンテナTXAからレーダ波RWを送信する。また、送信用アンテナTXAは、照射エリアIAが出入口ドアEED近傍の略扇状の範囲に絞り込まれるように、視野角の調整されたアンテナにより構成される。なお、送信用アンテナTXAの具体的な構成に関しては任意であり、例えば、パッチアレイアンテナ等の指向性を制御可能なアンテナを利用してもよい。
【0065】
このようにして、送信用アンテナTXAからレーダ波RWとして発射されたTXChirpは、略扇状の照射エリアIAに照射されるとともに(
図2参照)、各受信用アンテナRXAが照射エリアIA内に存在する物体による反射波(すなわち、RXChirp)を受信して受信部24に供給する。
【0066】
2つの受信用アンテナRXAは、アンテナ中心間の間隔が「l」となるように位置を調整してミリ波センサ20に設けられており、各々がRXChirpを受信して対応する受信部24に供給する。
【0067】
受信部24は、ローノイズアンプ等の回路を有し、対応する受信用アンテナRXAが受信したRXChirpを増幅しつつ、ミキサ25に供給する。
【0068】
ミキサ25は、自回路に対応する受信部24から供給されるRXChirpとチャープシンセサイザ22から供給されるTXChirpを混合することにより、自回路に対応する受信用アンテナRXAにて受信されたRXChirpに対応するIF信号を生成して、ADC26に供給する。
【0069】
デジタル信号処理部27は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central Processing Unit)等の演算装置により構成され、ADC26から供給される信号(すなわち、IF信号をA/D変換した信号)に基づき自機から対象物までの距離、対象物の移動速度及び自機から対象物までの角度を算出する。このとき、デジタル信号処理部27は、フィルタリング処理や後述するFFT(Fast Fourier Transform)の前処理としてのウィンドウ処理、FFTの後処理としてのピーク検出、検知した点群のクラスリング(グループ化)、トラッキング(追跡)を含む処理を実行しつつ、自機から対象物までの距離、対象物の移動速度及び自機から対象物までの角度を算出して、当該算出結果に対応する距離データ、速度データ及び角度データを生成し、I/Oインターフェース部21を介して入退場管理装置10に供給する。なお、デジタル信号処理部27は、図示せぬRAM(Random Access Memory)を有し、このRAMをワークエリアとして用いつつ、距離等の算出処理を実行する構成になっている。
【0070】
[A-3-1]TXChirpとRXChirp及びIF信号の関係性について
次いで、
図6(B)を用いて、TXChirpとRXChirp及びIF信号の関係性について説明する。
【0071】
まず、タイミングt
0において送信用アンテナTXAからTXChirpの照射が開始され、タイミングt
0から時間T
c後のタイミングt
2まで
図6(B)上側のようにTXChirpの照射状態が継続されると、タイミングt
0から遅延時間τ経過後のタイミングt
1において各受信用アンテナRXAによるRXChirpの受信が開始され、タイミングt
2までRXChirpの受信状態が継続する。このとき、遅延時間τは、ミリ波センサ20から対象物までの距離dの往復の距離2dを電波の速度(光速c=3×10
8m/秒)で除算した時間を示し、τ=2d/c・・・(式1)に相当する。またこのとき、ミリ波センサ20から物体までの距離dが変化しない場合(すなわち、対象物が移動しない場合)、遅延時間τは変化しない。このため、
図6(B)上側のTXChirpの照射とRXChirpの受信が重なっているタイミングt
1からt
2までの期間中(すなわち、T
c-τの時間中)、ミキサ25で変換されるIF信号は、
図6(B)下側に示すように周波数がSτで一定の正弦波(トーン)となる。本実施形態においてデジタル信号処理部27は、このIF信号をADC26によりA/D変換したデジタル信号に基づき自機から対象物までの距離を算出する。
【0072】
[A-3-2]デジタル信号処理部27による距離、速度及び角度の算出原理
次いで、
図6を参照しつつ本実施形態のデジタル信号処理部27においてミリ波センサ20から物体までの距離、物体の移動速度及びミリ波センサ20から物体までの角度を算出する際の原理について詳述する。
【0073】
(1)距離の算出方法
まず、上記のようにタイミングt1からt2までの期間中にミキサ25から出力されるIF信号は、周波数がSτで一定の正弦波となることから、IF信号は一般的な正弦波の式である式2によって表現できる。f(t)=Asin(2πf0t+φ0)・・・(式2)
【0074】
ここで、式2において「A」は、IF信号の振幅、「φ
0」は、IF信号の出力開始タイミング(すなわち、タイミングt
1)におけるTXChirpとRXChirpの位相差を示し、φ
0=2πf
cτにより定義される。また、上記式1とf
c=c/λの関係からφ
0は、φ
0=4πd/λ・・・(式3)によって表現することができる。なお、これらの式において「λ」は、チャープ信号の波長を示している。さらに、IF信号の周波数「f
0」は、
図6(B)に示すようにf
0=Sτで示され、タイミングt
0からタイミングt
1までの期間(すなわち、遅延時間τの期間)におけるTXChirpの周波数変化量と等しくなる。また遅延時間τは式1で表されることからf
0=Sτ=2Sd/cと表現できる。このように、ミリ波センサ20から物体までの距離dは、IF信号の周波数f
0の値に比例し、f
0に基づき、d=cf
0/2S・・・(式4)の関係式で算出することが可能となる。
【0075】
本実施形態のデジタル信号処理部27は、以上の関係に基づき、ADC26から供給されるA/D変換後のIF信号に対して、距離算出用のFFT(Fast Fourier Transform)(以下、「距離FFT」ともいう。)処理を施すことにより周波数スペクトル解析を行ってIF信号のピーク周波数(すなわち、f0)を算出し、当該算出したf0を式4に代入してミリ波センサ20から物体までの距離dを算出する。なお、これらの式においては、対象物の速度に対するIF信号の周波数の依存性を無視しているが、人間が歩く程度の低速の移動は、高速FMCWセンサであるミリ波センサ20の算出結果に及ぼす影響が小さいので無視できる。なお、距離FFT処理に関しては従来と同様であるため、詳細を省略する。
【0076】
ここで、照射エリアIA内に複数の物体が存在する場合、各物体によって発生するRXChirpは、各々、当該物体からミリ波センサ20までの距離に比例する時間の分だけ遅延する。例えば、照射エリアIA内に3つの物体(abc)が存在する場合、各物体によって生じるRXChirpは、各々、TXChirpの送信開始タイミングt0からτa、τb、τcだけ遅延したタイミングにて受信が開始され、TXChirpの送信が終了するタイミングt2まで受信状態が継続する。このとき、ミリ波センサ20においては各RXChirp毎に周波数の異なる3つのIFトーンが生成され、各IFトーンの周波数fa、fb、fcは、各々、Sτa、Sτb、Sτcと等しくなる。
【0077】
また、このとき最終的に生成されるIF信号は、各RXChirpに対応するIFトーンの合成波となるため、当該合成波に対して距離FFTを施すと、fa,fb,fcの各周波数にピークが生じ、ピーク位置から各RXChirpに対応するIFトーンの周波数fa、fb、fcを検出できる。本実施形態においてデジタル信号処理部27は、このようにして検出した各物体に対応するIFトーンの周波数を式4に代入することにより各物体までの距離dを個別に算出し、各物体毎に距離データを生成する構成になっている。
【0078】
ここで、ミリ波センサ20における距離分解能(すなわち、2つ物体を分離して検知できる距離の限界値)は、チャープ帯域幅Bに依存し、d
Res=c/2Bと定義されるが、
図6(A)に示す例のようにB=4GHzとした場合、距離分解能は3.75cmとなり、出入口ドアEED近傍に数10cm程度の大きさの検知エリアDAを問題なく設定することが可能である。なお、3.75cmの距離分解能は、S=40MHz/μ秒のチャープ信号を用いた場合、周波数差S×2×0.0375/c=10kHzとなるが、これは距離FFT処理におけるBIN間隔と同等で分解能周波数となる。またこのとき、距離FFTにおける距離分解能の位相差 2π以内における微小な変位Δdは、上記式3から導出されるΔd=φ
0λ/4πにより規定されることとなる。
【0079】
(2)物体の移動速度の算出方法
物体の移動速度は、少なくとも2以上のTXChirpを1単位とするチャープフレーム(
図6(C)参照)を送信することで実現する。例えば、ミリ波センサ20がT
c間隔で2回TXChirpを送信し、2つのTXChirpで1つのチャープフレームを構成することを想定すると、時間T
cの間に物体が移動する距離Δd
Tcは、式3からΔd
Tc=Δφλ/4πにより示されるとともに、物体の移動速度をVとすると、Δd
Tc=VT
cとなるので、V=Δφλ/4πT
cに…(式5)よって物体の移動速度を算出できる。
【0080】
このとき、Tc間隔で送信された2つのTXChirp(すなわち、1つのチャープフレーム)を使用して測定できる最大検知速度VMaxは、一般にVMax=λ/4Tc・・・(式6)と定義されるので、TXChirpの送信間隔Tcをできるだけ短くすることより、高いVMaxを実現することができる。
【0081】
但し、この方法を採用する場合には、測定時に例えば2つの物体(aとb)が異なる速度で移動し、移動前後の位置がそれぞれミリ波センサ20から見て同距離に存在するケースが発生すると、チャープフレームを構成する2つのTXChirpにより生成される物体a及びbの各々に対応する2つのIF信号に距離FFTを施した場合に、同じ位置にピークが現れることになり、距離で物体を個別に検知することができなくなる。このとき、距離FFT後に得られるデータには、位相情報がベクトルとして含まれているので、本実施形態においては、この位相情報を用いて各物体の速度を検出する方法を採用する。具体的には、
図6(C)に示すようにT
c間隔で送信されるN個のTXChirp(C
1~C
N)で構成されるチャープフレームからなるレーダ波RWを送信し、当該チャープフレームを用いて移動速度を算出する。
【0082】
この場合、1つのチャープフレームを送信する期間Tf(すなわち、N×Tc)中に移動した物体から得られるIF信号は、移動に伴う距離の変化に応じてN回位相変化を繰り返し、この間の位相変化の累積より、角周波数ωを算出することができる。距離FFT後のデータには、各物体に対応する位相情報が合成ベクトルとして含まれているので、N個のTXChirpC1~CNで構成されるチャープフレームを用い、TXChirpをN回送信しつつ、距離FFTを施すことにより、各物体の位相情報に対応する合成ベクトルをN個取得することができる。そして、本実施形態においてデジタル信号処理部27は、このN個のベクトルに対して速度FFTと呼ばれる2つ目のFFTを施すことにより、各物体に対応する角周波数ω1及びω2の2つのピークを得て、そこから、各物体の速度を求めて2つの物体を分離する。具体的には、角周波数ω1とω2は、各物体にて反射された各TXChirpC1~CNに対応するRXChirp間の位相差に対応するため、式5のΔφにω1及びω2を代入して、v1=ω1λ/4πTc及びv2=ω2λ/4πTcを得て、分離すべき2つの物体の速度を個別に算出することができる。本実施形態のデジタル信号処理部27は、以上の関係に基づき、各物体を分離しつつ、物体毎の移動速度を算出して、物体毎に速度データを生成する。なお、速度FFT処理に関しては従来と同様であるため、詳細を省略する。
【0083】
ここで、ミリ波センサ20にて算出可能な速度の分解能VRes(すなわち、2つ物体を分離して検知できる速度差の限界値)は、一般にVRes=λ/2Tfと定義される。また、このとき検出可能な物体の最大移動速度は、一般にVMax=λ/4Tcと定義される。λ=5mm(60GHz)、Tc=100μ秒、 N=256の場合を想定すると、速度分解能はVRes=9.76cm/秒となり、ゆっくり歩く際の程度の速度は計測できることとなる。また、この場合に検出可能な最大移動速度はVMax=12.5m/秒となり、各種施設への入退場管理には十分な速度分解能と最大検出可能速度を確保できる。
【0084】
(3)角度の算出方法
本実施形態において角度の算出は、物体との間の距離に関する小さい変化が、距離FFTまたは速度FFTのピークでベクトルの変化をもたらすという観測に基づいて行われる。具体的には、本実施形態のミリ波センサ20においては、受信用アンテナRXA1及び受信用アンテナRXA2の各受信系統毎にFFT処理されるため、受信処理毎のFFT処理結果に対して、更に角度FFTと呼ばれる3つ目のFFT処理を実施することで、角度を算出する。なお、角度FFT処理に関しては従来と同様であるため、詳細を省略する。
【0085】
例えば、
図5のように受信用アンテナRXA1と受信用アンテナRXA2を間隔「l」で配置し、対象物から角度θでRXChirp(反射波)が到来した場合を想定する。この場合、対象物から各受信用アンテナRXAまでの距離は、受信用アンテナRXA1側でdとすると、受信用アンテナRXA2側では距離差Δdを加えた距離d+Δdとなる。なお、θが0°の場合、Δdはゼロとなり、θが90°の場合、Δd=lとなる。また、受信用アンテナRXA間の間隔「l」は、ミリメートル単位であるのに対して、距離dはメートル単位となり、アンテナ間隔「l」が距離dと比較して十分小さくなるため、対象物からの反射波は共に角度θで平行して到来すると考えてよい。
【0086】
このとき、距離差Δdは、
図5に示すようにΔd=lsinθで示されるとともに、受信用アンテナRXA1と受信用アンテナRXA2で受信するRXChirpに対応するIF信号の位相差Δφに相当する。ここで、距離差Δdに基づく位相差Δφは、数学的にΔφ=2πΔd/λ・・・(式7)と定義されることから、角度θ=sin
-1(λΔφ/2πl)となり、速度計測と同様に位相情報より角度を算出できる。
【0087】
ここで、ミリ波センサ20により検出可能な最大角度は一般的に、θ
Max=±sin
-1(λ/2l)・・・(式8)で定義される。アンテナの間隔「l」をλ/2とした場合、θ
Max=±90°となる一方、角度分解能θ
Resは、受信用アンテナRXAの数を増やすと向上する。具体的には、受信用アンテナRXAの数を増やすと、角度FFTのピークがよりシャープになるため、角度の推定精度が向上し、角度分解能θ
Resが向上することとなる。このとき、角度分解能は、θ
Res=(λ/lMcosθ)×(180°/π)・・・(式8)にて表される。なお、式8において「M」は、受信用アンテナRXAの数を示している。ここで、アンテナ間の間隔「l」をλ/2(60GHzの時、2.5mm)、θ=0°(
図8参照)とした場合、角度分解能はθ
Res=(2/M)×(180°/π)により示される。例えば、送信用アンテナTXAを1本とし、12本の受信用アンテナRXAを間隔「l」で等間隔に並べた1×12SIMOの方式を採用した場合には、θ
Res =9.55°となり、10°程度の分解能を確保することが可能となる。なお、本実施形態において、デジタル信号処理部27は、ADC26からの出力信号に基づき、距離FFT、速度FFT、角度FFTの順でFFT処理を施し、距離、速度及び角度を算出するようになっている。
【0088】
[A-4]入退場管理装置10の構成
次に、
図7を参照しつつ、本実施形態の入退場管理装置10の構成について説明する。なお、
図7は、本実施形態の入退場管理装置10の構成例を示すブロック図である。
【0089】
図7に示すように本実施形態の入退場管理装置10は、無線タグ装置30から送信されるビーコン信号を受信するためのビーコン信号受信用アンテナ111を有するビーコン信号受信部110と、通信端末装置50に警報信号を送信する警報信号送信部120と、現在日時を特定するためのタイマ130と、ミリ波センサ20に通信接続されるI/Oインターフェース部140と、各種のデータが記憶される記憶部150と、入退場管理装置10の各部を統合制御する装置管理制御部160と、管理サーバ装置40と通信接続される通信制御部170と、記憶部150に記憶されたアプリケーションプログラムを実行することにより、各種の処理を実行するデータ処理部180と、を有し、各部はバスBを介して相互に接続されて、各要素間においてデータの授受を行うことが可能な構成を有している。
【0090】
ビーコン信号受信用アンテナ111は、例えば、UHF周波数帯の信号を受信するアンテナや、BLEビーコンの受信用アンテナ等、無線タグ装置30がビーコン信号を送信する際の通信方式と同一の方式にてビーコン信号を受信する構成を有している。ビーコン信号受信部110は、ビーコン信号受信用アンテナ111において受信されたビーコン信号を復調する復調回路やビーコン信号に含まれるタグIDを復号する復号回路等を有し、ビーコン信号受信用アンテナ111によって受信されたビーコン信号に含まれるタグIDを復号してバスBに供給する。なお、例えば、本実施形態のビーコン信号受信部110は、データ処理部180と連動して、本発明の「取得手段」及び「第2取得手段」を構成する。
【0091】
警報信号送信部120は、警報信号送信用アンテナ121を有し、データ処理部180による制御の下、例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a、g、n、acやBluetooth(登録商標)等の通信プロトコルに従って、通信端末装置50に警報信号を送信するための処理を実行する。
【0092】
I/Oインターフェース部140は、ミリ波センサ20と通信接続されたUSB等の有線インターフェースであり、ミリ波センサ20に駆動用の電力を供給するとともに、ミリ波センサ20から距離データ、速度データ及び角度データを取得し、バスBを介してデータ処理部180に供給する。なお、ミリ波センサ20がコンセント等から独自に電力供給を受ける場合には、I/Oインターフェース部140が電力を供給することは必要とならない。
【0093】
記憶部150は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリと、ワークエリアとして用いられるRAM153により構成され、その記憶領域内にプログラム記憶部151と、設定データ記憶部152が設けられている。
【0094】
プログラム記憶部151には、例えば、BIOS(Basic Input Output System)やOS(Operating System)等、入退場管理装置10を駆動するためのプログラムの他、ミリ波センサ20から取得した距離データ、速度データ及び角度データに基づき、照射エリアIA内に検知エリアDAを形成するとともに、検知エリアDAに対する物体の侵入を検知するための侵入検知プログラムや通信端末装置50に警報信号を送信するための処理を実行する警報信号送信プログラム等の各種プログラムが記憶される。
【0095】
設定データ記憶部152には、(a)自機に対応する入退場管理装置IDと、(b)検知エリア設定部181が照射エリアIA内の一部に
図2に例示するような検知エリアDAを設定するために用いられる検知エリア設定データと、(c)入退場管理装置10がミリ波センサ20と連動して、検知エリアDAに対する物体の侵入を検知するために必要なデータが記憶される。なお、例えば、本実施形態の「設定データ記憶部152」は、本発明の「記憶手段」を構成する。
【0096】
装置管理制御部160は、主にCPUによって構成され、OS(Operation System)やBIOS(Basic Input/Output system)等のプログラムを実行することによって、入退場管理装置10の各部を統合制御する。
【0097】
データ処理部180は、装置管理制御部160を実現するCPUと同一のCPUを用いて構成され、又は、装置管理制御部160と独立したCPUによって構成される。そして、データ処理部180は、装置管理制御部160による制御の下、プログラム記憶部151に記憶されたプログラムを実行することにより、検知エリア設定部181と、キャンセル判定部182と、警報信号送信処理部183と、を実現する。
【0098】
検知エリア設定部181は、設定データ記憶部152に記憶された検知エリア設定データに基づいて、次述する方法により照射エリアIA内の一部に検知エリアDAを設定しつつ、ミリ波センサ20から供給される距離データと角度データに基づき、当該設定した検知エリアDAに対する物体の侵入を検知する機能を実現する。なお、例えば、本実施形態の検知エリア設定部181は、本発明の「検知手段」を構成するとともに、ミリ波センサ20と連動しつつ、「第1取得手段」を構成する。また、施設Fに入退場管理システム1を敷設する際における検知エリアDAの具体的な設定方法については任意であるが、例えば、出入口EEに入退場管理装置10及びミリ波センサ20を敷設する際に、I/Oインターフェース部140に専用の保守ツールを接続して設定を行うようにしてもよい。
【0099】
[A-4-2]検知エリアDAの設定原理
次いで、本実施形態の検知エリア設定部181が照射エリアIA内の一部に検知エリアDAを設定する際に適用可能な2通りの設定方法a及びbについて
図8及び9を用いて説明する。なお、
図8は、検知エリアDAの設定原理を説明する図であり、(A)には設定方法aの原理を示し、(B)には設定方法bの原理を示している。また、
図8においてはミリ波センサ20の設置位置に対する検知エリアDAの位置関係を施設Fの天井側から見た状態として示している。さらに、
図9は、ミリ波センサ20の設置位置に応じて発生する仰角エラーを説明するための図であり、(A)には、h1の高さにミリ波センサ20を設置した場合に、h2の高さにて発生する仰角エラーを示し、(B)には、対象物の上側(施設Fの天井側)と下側(床側)において発生する仰角エラーの違いを示している。
【0100】
(a)設定方法a
まず、
図8(A)を用いて、出入口ドアEEDの近傍に長方形の検知エリアDAを設定する設定方法aについて説明する。この場合にミリ波センサ20は、例えば、出入口ドアEEDから概ね5m以内の位置に設置する。このとき、
図8(A)のようにミリ波センサ20からL1=3mの距離で短辺側の長さb=50cm、長辺側の長さa=100cmとする長方形の検知エリアDAを設定する場合、L2=2.5mとなるともに、図面右側の方位角度θ
a1は、
図8(A)に示すように、ミリ波センサ20方向(すなわち、出入口ドアEEDの法線とミリ波センサ20が一致する方向)を0°とした場合、図面右上側の頂点で約11.3°、図面右下側の頂点で約9.5°となる。一方、図面左側の方位角度θ
a2は、図面左上側の頂点で約-11.3°、図面左下側の頂点で約-9.5°になる。なお、ミリ波センサ20から見た各頂点までの角度は、tan
-1θ=0.5/2.5=11.3°及びtan
-1θ=0.5/3=9.46°から算出される。従って、
図8(A)に示す長方形の検知エリアDAは、ミリ波センサ20から見た4つの頂点までの距離(L1及びL2)と角度(±9.5°及び±11.3°)によって規定することができる。具体的には、長方形の検知エリアDAの右上の頂点は、ミリ波センサ20からの距離がL2、方位角度θ
a1=11.3°、右下の頂点は、距離がL1、方位角度θ
a1=9.5°となるとともに、左下の頂点は、距離がL1、方位角度θ
a2=-9.5°、左上の頂点は、距離がL2、方位角度θ
a2=-11.3°により規定することができる。なお、
図8においては、ミリ波センサ20の最大検出可能距離に基づき、ミリ波センサ20を出入口ドアEEDから概ね5m以内に設置する例を示したが、最大検出可能距離はミリ波センサ20において利用する送信パワー、チャープ信号、アンテナ設計等、ミリ波センサ20の構成に依存するものであり、10m程度の範囲にて設定可能であるが、医療介護施設内にて利用すること想定すると、5m程度に設定することにより送信パワーを制限し、低消費電力化を実現できるとともに、ミリ波センサ20の低コスト化を実現することができる。また、上記のようにa=100cm、b=50cmの検知エリアDAを設定する場合、0°のラインから見た場合に図面左右方向に50cm×50cmの正方形形状で左右対称な検知エリアDAを設定できるので、方位角度に関してはθ
a1=θ
a2として、正負を考慮せず、9.5°及び11.3°として設定することも可能である。さらに、
図8(A)においては100cm×50cmのサイズで検知エリアDAを設定する場合について例示したが、検知エリアDAのサイズに関しては任意である。
【0101】
以上の関係に基づき、本設定方法においては、上記長方形の検知エリアDAの各頂点までの距離と角度を距離情報及び角度情報として含む検知エリア設定データを予め設定データ記憶部152に記憶しておく方法を採用する。そして、本設定方法において検知エリア設定部181は、当該検知エリア設定データに基づき、長方形の検知エリアDAを設定しつつ、ミリ波センサ20から取得した距離データ及び角度データにより示される距離d及び角度θが、各頂点により規定される長方形の検知エリアDAに対応する距離及び方位角度の範囲内となった場合に検知エリアDA内にユーザが侵入したものと検出する。また、照射エリアIA内に複数の物体が存在し、ミリ波センサ20において物体毎に距離データ、速度データ及び角度データが生成された場合に、検知エリア設定部181は、当該データと検知エリア設定データに基づき、物体毎に当該物体が検知エリアDA内に侵入したか否かを判定する。なお、例えば、本設定方法における各頂点までの距離L1及びL2は、本発明の「距離情報」に相当するとともに、検知対象方位角度θa1、θa2を示す情報は、本発明の「角度情報」に相当する。
【0102】
(b)設定方法b
次いで、
図8(B)を参照しつつ、出入口ドアEED近傍に出入口ドアEEDに近い辺が長くミリ波センサ20に近い辺が短い台形形状の検知エリアDAを設定する設定方法bについて説明する。このような台形形状の検知エリアDAは、
図8(B)に示すように、ミリ波センサ20から図面左右方向に対して各々、方位角度θ
bの範囲内であり、且つ、ミリ波センサ20からの距離dが、L2~L1となるエリアに一致するので、検知対象距離の範囲をL2~L1、検知対象方位角度の範囲として±θ
bを設定することにより簡単に台形形状の検知エリアDAを設定できる。この場合においても、ミリ波センサ20は、最大検出可能距離に応じて、例えば出入口ドアEEDから5m以内の位置に設置する。また、この場合に、設定データ記憶部152には、検知対象距離の範囲としてL2~L1、検知対象方位角度の範囲として-θ
b~θ
bの値を検知エリア設定データとして記憶する。なお、本設定方法におけるL1及びL2、θ
bの値に関しては任意であり、設定する検知エリアDAのサイズ及び位置に応じて現場にて自由に設定することが可能である。そして、本設定方法において検知エリア設定部181は、ミリ波センサ20から取得した距離データにより示される距離dがL2~L1(例えば、2.5m~3m)の範囲内であり、且つ、角度データにより示される角度θが±θ
bの範囲内に収まる場合に検知エリアDA内にユーザが侵入したものと検出する。なお、本設定方法においてもθ
bは、正負を考慮せず、方位角度=θ
bとして、図面左右方向に対する方位角度を設定するようにしてもよい。また、本設定方法においても照射エリアIA内に複数の物体が存在する場合に、検知エリア設定部181は、各物体毎に当該物体が検知エリアDA内に侵入したか否かを判定する。本設定方法を採用することにより、ミリ波センサ20からの方位角度設定を一つ(すなわち、θ
b)にして、簡易な設定を実現できる。また、出入口ドアEEDに近い面の検知範囲を広くし、室内方向(すなわち、ミリ波センサ20側)は狭くすることにより室内で出入口ドアEEDの近傍をうろつくだけのユーザを検知しづらくするメリットを実現することもできる。なお、例えば、本設定方法における検知対象距離の範囲L2~L1及び検知対象角度の範囲±θ
bを示す情報は、本発明の「距離情報」及び「角度情報」に相当する。
【0103】
(c)検知エリアDAの設定に与えるミリ波センサ20の設置位置の影響について
ここで、ミリ波センサ20によって測定される距離dの測定誤差を小さくするためには、
図9(A)に示すように、ミリ波センサ20が水平方向を直視する高さh2が、対象物(ユーザ)の腰から背中の高さに合わせて100±10cm程度となるようにミリ波センサ20を設置することが望ましい。この構成を採用する場合には、次述する仰角エラーを考慮する必要がないので、上記設定方法a及びbをそのまま適用して、容易に検知エリアDAを設定することができる。
【0104】
一方、出入口EE近傍における施設Fの構造によっては、床から100±10cm程度の高さにミリ波センサ20を設置することが困難になるケースも発生しうる。例えば、正面玄関のような広いホールに設けられた出入口EEの場合、当該ホールにおいて出入口ドアEEDから5m程度の位置にミリ波センサ20を高さ100±10cm程度の高さで設置しようとすると、何らかの工夫(例えば、ホール内に立てたポールにミリ波センサ20を固定する等の工夫)を施す必要性が生じるが、設置方法によっては、ユーザの通行を邪魔する可能性があるため、
図9(A)のように天井付近(すなわち、
図9の高さh1)にミリ波センサ20を設置して、出入口ドアEEDに向かってレーダ波RWを照射することが望ましい。
【0105】
この場合、ミリ波センサ20によって算出される距離dは、ミリ波センサ20から対象物を見た際の仰角βに比例する仰角エラーが生じるため、この仰角エラーを考慮して検知エリアDAを設定する必要性が生じる。具体的には、ミリ波センサ20を高さh1に設置した場合にミリ波センサ20にて検出される対象物までの距離dは、
図9(A)に示すようにd=L/cosβ・・・(式9)となり、ミリ波センサ20を高さh2に設置した場合における距離Lとは異なる値が得られることとなる。また、対象物の高さ方向の位置に応じて仰角は変化し、対象物の上側(例えば、ユーザの頭部側)と下側(例えば、ユーザの足底側)では、
図9(B)に示すように仰角の値がβ1、β2と変化する。このとき、ミリ波センサ20から対象物上側までの距離x
1と下側までの距離x
2は、各々、式9からx
1=L/cosβ1、x
2=L/cosβ2となり、ミリ波センサ20で算出される距離dの値が対象物の高さ方向の位置に応じてx
1~x
2まで変化する。
【0106】
従って、本実施形態の入退場管理装置10において、上記設定方法a及びbにより検知エリアDAを設定する場合には、この仰角エラーを考慮して、検知対象距離L1及びL2の値を補正する必要が生じる。具体的には、実際に設定する検知対象距離L1及びL2の値に[(L/cosβ)-L]程度の値を加算した値を検知対象距離として設定し、当該検知対象距離に対応する検知エリア設定データを設定データ記憶部152に記憶させるようにする。そして、検知エリア設定部181は、距離データにより示される距離dが当該補正後のL1~L2の範囲内となり、且つ、角度データにより示される角度θが検知エリア設定データにより示される方位角度の範囲内となった場合に、ユーザが検知エリアDA内に侵入したものと判定する構成を採用する。なお、この場合における仰角βの値は、β1~β2の間で任意に設定可能であるが、対象物の下側における仰角に合わせて検知対象距離を設定した場合には、ペットセラピー用の動物や掃除用ロボットが検知エリアDA内に侵入した際に、これらの侵入が検知され、警報が発報されてしまう可能性がある。従って、この種の誤報を防止するためには、ユーザの腰から背中程度の高さ(すなわち、上記高さh2と同様に100±10cm程度の高さ)を基準とした場合における仰角βの値を予め測定し、当該測定結果に応じて、検知対象距離L1及びL2の値を補正することが望ましい。この構成により、この種の誤報の発生を確実に防止することができる。
【0107】
次いで、キャンセル判定部182は、タイマ130及びビーコン信号受信部110と連動しつつ、検知エリア設定部181によって検知エリアDAに対する物体の侵入検知タイミングから上記設定時間内に無線タグ装置30によって発信されたビーコン信号を受信したか否かを判定する。そして、設定時間内にビーコン信号が受信された場合には、ビーコン信号受信部110と連動して、当該受信されたビーコン信号の受信電界強度を測定し、当該測定した受信電界強度に基づき、当該無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在するか否かを判定する。
【0108】
そして、キャンセル判定部182は、検知エリア設定部181による物体の侵入検知タイミングから設定時間内にビーコン信号が受信され、且つ、当該ビーコン信号の送信元無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在する場合にのみ警報信号の送信をキャンセルするものと判定し、設定時間内にビーコン信号が受信されない場合、及び、設定時間内にビーコン信号が受信された場合であっても、当該無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在しない場合には、警報信号の送信が必要であるものと判定する。なお、本実施形態のキャンセル判定部182は、例えは、本発明の「判定手段」を構成する。
【0109】
警報信号送信処理部183は、キャンセル判定部182により警報信号の送信が必要と判定された場合に、警報信号を送信するための警報信号送信処理を実行する。具体的には、警報信号送信処理部183は、検知エリア設定部181により検知エリアDAに対する物体の侵入が検知された時点で、設定データ記憶部152から自機の入退場管理装置IDを読み出すとともに、通信制御部170と連動しつつ、管理サーバ装置40に侵入検知情報を送信し、自機の設置された出入口EEに対応する侵入検知出入口情報を取得する。そして、警報信号送信部120は、当該取得した侵入検知出入口情報を含む警報信号を生成しつつ、警報信号送信部120に供給して、通信端末装置50に送信させる。なお、本実施形態の警報信号送信処理部183は、警報信号送信部120、管理サーバ装置40及び通信端末装置50と連動して、例えば、本発明の「警報発報手段」を構成する。
【0110】
[A-5]入退場管理装置10の動作
次いで、
図10及び11を用いつつ、本実施形態の入退場管理装置10の動作について説明する。なお、
図11及び12は、各々本実施形態のデータ処理部180において実行されるメイン処理及びキャンセルサブ処理を示すフローチャートである。
【0111】
本処理に先立ち、設定データ記憶部152には、
図10及び11に記載の処理を実行するために必要な各種のデータが記憶済の状態になっているものとする。
【0112】
また、
図10に示すメイン処理は、入退場管理装置10の電源をONにした時点でデータ処理部180と装置管理制御部160が共同しつつ処理を開始し、入退場管理装置10の電源をOFFにするか、又は、入退場管理装置10の図示せぬ操作部に対して、所定の操作(例えば、警報の一時解除入力等)が行われるまで継続して実行される処理であるのに対して、
図11に示すキャンセルサブ処理は、検知エリアDAに対する物体の侵入検知時に、キャンセル判定部182が実行する処理となっている。
【0113】
まず、本実施形態の入退場管理装置10は、電源がONになると、これに伴い、ミリ波センサ20に対する電力供給を開始する。なお、ミリ波センサ20が、コンセント等から電力供給を受け、入退場管理装置10からの制御に応じて電源がONとなる構成を採用する場合には、入退場管理装置10の電源がONにされた後、所定の入力操作(例えば、監視開始操作等)が行われると、入退場管理装置10からミリ波センサ20に制御コマンドを出力するようにする。この結果、ミリ波センサ20においては、チャープシンセサイザ22がTXChirpの生成を開始して、当該TXChirpがレーダ波RWとして照射エリアIAに照射される状態となる。このとき、照射エリアIA内に物体が存在しない状態においては、出入口ドアEED等の反射物によって反射されたレーダ波RW(すなわち、RXChirp)が、受信用アンテナRXAによって受信され、デジタル信号処理部27は、TXChirpとRXChirpに基づき、上記方法により反射物までの距離、反射物の移動速度及び当該反射物までの角度を算出して、距離データ、速度データ及び角度データを生成する。なお、照射エリアIA内にユーザが侵入していない場合、反射物となる出入口ドアEED等までの距離、当該反射物の移動速度(例えば、出入口ドアEEDが自動ドアの場合のドアの移動速度等)及び当該反射物までの角度が算出される。またこのとき、照射エリアIA内に複数の物体が存在する場合、ミリ波センサ20は、各物体毎に当該物体までの距離、当該物体の移動速度及び当該物体までの角度を算出し、距離データ、速度データ及び角度データを物体毎に生成する。そして、検知エリア設定部181は、このようにしてミリ波センサ20において生成された物体毎の距離データと角度データを少なくともミリ波センサ20から取得する(ステップSa1)。なお、ステップSa1においては、距離データ及び角度データと合わせて、速度データを取得するようにしてもよいが、この点に関しては変形例の項にて詳述する。
【0114】
次いで、検知エリア設定部181は、ステップSa1において取得された距離データにより示される距離d及び角度データにより示される角度θと、設定データ記憶部152に記憶された検知エリア設定データを比較して、検知エリアDAに物体が侵入したか否かを判定する(ステップSa2)。このとき、検知エリア設定部181は、物体毎に距離データ及び角度データを検知エリア設定データと比較して、検知エリアDAへの侵入の有無を物体毎に判定する。具体的には、各物体に対応する距離データ及び角度データの示す距離d及び角度θが検知エリア設定データにより規定される検知対象距離L2~L1の範囲内であり、且つ、検知対象方位角度の範囲内に収まっている場合に、該当する物体が検知エリアDA内に物体が侵入したものと判定するようになっている。なお、検知エリアDA内に物体が存在しない場合、距離データ及び角度データにより示される距離d及び角度θは、出入口ドアEED等の反射物までの距離及び角度となるため、検知エリア設定データにより示される検知対象距離及び検知対象方位角度の範囲外となり、検知エリアDA内に物体が侵入したものと判定されることはない。
【0115】
そして、このステップSa2の判定において、物体が侵入していないものと判定すると、検知エリア設定部181は、ステップSa3~6の処理を実行することなく、処理をステップSa1にリターンさせ、検知エリアDAに対する物体の侵入を監視する状態を維持する。
【0116】
一方、ステップSa2における判定の結果、検知エリアDAに対する物体の侵入が検知された場合に、キャンセル判定部182は、キャンセルサブ処理を実行する(ステップSa3)。
【0117】
[A-5-1]キャンセルサブ処理
次いで、ステップSa3において実行されるキャンセルサブ処理について、
図11を用いて説明する。
【0118】
本処理においてキャンセル判定部182は、まず、ビーコン信号受信部110及びタイマ130と連動しつつ、検知エリアDAに対する物体の侵入検知タイミングから設定時間内にビーコン信号を受信したか否かを判定し(ステップSb1)、設定時間内にビーコン信号が受信されない場合には、警報信号を送信する必要があるものとして、非キャンセル判定を行い(ステップSb5)、処理を終了する。
【0119】
これに対して、侵入検知タイミングから設定時間内にビーコン信号を受信した場合に、キャンセル判定部182は、ビーコン信号受信部110と連動して、ビーコン信号受信時の受信電界強度を測定し(ステップSb2)、当該測定した受信電界強度に基づき、受信されたビーコン信号の送信元無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在するか否かを判定する(ステップSb3)。
【0120】
そして、無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在するものと判定すると、キャンセル判定部182は、警報信号の送信が不要であるものとしてキャンセル判定を行い(ステップSb4)、処理を終了する。
【0121】
これに対して、当該無線タグ装置30が、有効エリアEA内に所在しないものと判定すると、キャンセル判定部182は、非キャンセル判定を行って(ステップSb5)、処理を終了する。
【0122】
このようにして、キャンセルサブ処理(ステップSa3)が完了すると、キャンセル判定部182は、キャンセルサブ処理の結果に応じて、警報信号の送信をキャンセルするか否かを判定し(ステップSa4)、キャンセルするものと判定すると、通信端末装置50に対する警報信号の送信をキャンセルした後(ステップSa5)、処理をステップSa1にリターンさせる。
【0123】
一方、ステップSa4において、警報信号の送信をキャンセルしないものと判定すると、警報信号送信処理部183は、警報信号送信処理を実行した後(ステップSa6)、処理をステップSa1にリターンさせる。この結果、データ処理部180は、電源がOFFにされるか所定の入力操作が行われるまでステップSa1~6の処理を所定周期(例えば、1000Hz等)で繰り返し、電源ONのタイミングから電源OFF又は入退場管理装置10に所定の入力操作が行われるまで検知エリアDAに対する物体の侵入の監視状態を維持しつつ、その都度、警報発報の要否が決定されることとなる。なお、入退場管理装置10の電源がOFFにされ、又は、入退場管理装置10にて所定の入力操作が行われた場合には、ミリ波センサ20の電源もOFFとなって、ミリ波センサ20によるレーダ波RWの照射も終了する。
【0124】
以上説明したように本実施形態の入退場管理システム1においては、施設Fの出入口EEの近傍にミリ波センサ20と入退場管理装置10を設置し、ミリ波センサ20から出入口EE近傍の検知エリアDAを含む照射エリアIAにレーダ波RWとしてのTXChirpを照射するとともに、照射エリアIA内の一部に検知エリアDAを設定して、当該検知エリアDAに対する物体の侵入検知時に入退場管理装置10から通信端末装置50に警報信号を送信して、通信端末装置50にて警報を発報させる構成になっている。
【0125】
この構成により、本実施形態の入退場管理システム1は、ユーザによる装置携行等の条件に依存することなく、未携行ユーザが出入口EEを通過して外出する可能性があることを施設Fの管理者に報知でき、施設入所ユーザの無断外出を有効に防止できる。また、検知エリアDAは出入口EE近傍の限られた領域に絞り込むことができるので、施設入所ユーザが単に施設F内の通路を歩行しているだけの状態で警報が発生するなどの誤報の発生を確実に防止することができる。
【0126】
さらに、本実施形態の入退場管理システム1においては、施設Fへの入退場が制限されない施設Fの管理者や外来者及び外出許可を得ている施設入所ユーザに関しては、無線タグ装置30を配布して、検知エリアDAに対する物体の侵入検知後、設定時間内に無線タグ装置30により送信されたビーコン信号を受信し、且つ、当該無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在する場合に入退場管理装置10が通信端末装置50に対する警報信号の送信をキャンセルする構成になっている。
【0127】
この構成により、本実施形態の入退場管理システム1は、施設Fへの入退場が制限されないユーザが検知エリアDA内に侵入したとしても警報が発報されることがなく、システム運用時における実用性を向上させることができる。施設Fの管理者や外来者、外出許可を受けている施設入所ユーザ等、無線タグ装置30の配布を受ける携行ユーザは、他の施設入所ユーザと異なり、徘徊などの行動を起こす可能性が低く、無線タグ装置30の携行を拒否する可能性も低いので、確実に無線タグ装置30を携行させることができ、携行ユーザと未携行ユーザを確実に判別しつつ、未携行ユーザが検知エリアDAに侵入した場合にのみ警報を発報することで、誤報の発生を防止して、管理者の業務負担を軽減できる。また、施設入所ユーザ全員分の無線タグ装置30を準備する必要性もないので、システム導入時及び運用時のコストを削減できる。さらに、本実施形態の入退場管理システム1においては、施設入所ユーザを個別に管理する必要がないので、煩雑なユーザ情報の管理を簡略化できる。なお、本実施形態においては有効エリアEA内に所在する無線タグ装置30により送信されたビーコン信号を受信した場合にのみ警報の発報をキャンセルする構成を採用したが、警報に厳密さを求めない場合には、有効エリアEA外の無線タグ装置30からビーコン信号を受信した際に警報をキャンセルする構成を採用することも可能である。
【0128】
[B]第2実施形態
[B-1]第2実施形態の概要
次いで、本発明に係る入退場管理システムの第2実施形態の概要について、
図12を用いて説明する。なお、
図12は、本実施形態の入退場管理システムにおける概要動作を示すタイミングチャートである。また、本実施形態の入退場システムは、
図1~7と同様の構成により実現されるものであるため、以下においては、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に言及しない構成要素に関しては、第1実施形態と同様の機能を有するものとして説明を行う。
【0129】
上記第1実施形態の入退場管理装置10においては、キャンセル判定部182が検知エリアDAに対する物体の侵入検知後、設定時間内に有効エリアEA内に所在する無線タグ装置30からビーコン信号を受信した場合に、警報信号の送信をキャンセルするものと判定することで、上記判定方法2による警報信号送信の要否判定を行う構成を採用していた。これに対して、本実施形態においては、キャンセル判定部182が、以下の方法により警報信号の送信の要否を判定して、上記判定方法1を実現する構成になっている。
(a)まず、本実施形態において、キャンセル判定部182は、ビーコン信号受信部110と連動しつつ、無線タグ装置30から所定周期(例えば、1秒間隔)にて発信されるビーコン信号の受信状態を常時監視する(
図12参照)。
(b)そして、キャンセル判定部182は、ビーコン信号が受信された場合には、当該ビーコン信号受信時の受信電界強度に基づき、ビーコン信号の送信元無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在するか否かを特定し、有効エリアEA内に無線タグ装置30が所在するものと判定された場合に、当該ビーコン信号の受信タイミングから所定の期間(例えば、1秒間)を警報キャンセル有効期間として設定しつつ、当該警報キャンセル有効期間内に検知エリアDAに対する物体の侵入が検知されると(すなわち、警報キャンセル有効期間内に物体侵入検知タイミングが到来すると)、警報信号の送信をキャンセルするものと判定する一方、警報キャンセル有効期間外に検知エリアDAに対する物体の侵入が検知されると、警報信号を送信するものと判定する。なお、本実施形態の警報キャンセル有効期間は、例えば、本発明の「第1時間」を構成する。
【0130】
例えば、
図12には、無線タグ装置30からタイミングt
01、t
03、t
04、t
06、t
07及びt
08においてビーコン信号が発信された状態を示している。このとき、(1)タイミングt
01で発信されたビーコン信号BS1はビーコン信号受信部110によって受信されず、(2)タイミングt
03で発信されたビーコン信号BS2は、ビーコン信号受信部110によって受信されるものの、受信電界強度に基づき当該無線タグ装置30が有効エリアEA外に所在するものと特定され、(3)タイミングt
04で発信されたビーコン信号BS3は、ビーコン信号受信部110によって受信され、且つ、当該無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在するものと判定され、(4)タイミングt
06で発信されたビーコン信号BS4は、ビーコン信号受信部110によって受信されるものの、当該無線タグ装置30が有効エリアEA外に所在するものと特定され、その後、(5)タイミングt
07及びt
08で発信されたビーコン信号BS5及びBS6は、各々、ビーコン信号受信部110によって受信されない状態が例示されている。
【0131】
このとき、キャンセル判定部182はタイミングt
04よりも前の期間中、及び、タイミングt
06以降の期間中に検知エリアDAに対する物体の侵入が検知されても警報信号の送信をキャンセルすることなく、通信端末装置50に対して警報信号を送信するものと判定する。例えば、
図12に例示する場合にタイミングt
02で検知エリアDAへの物体の侵入が検知された場合には、警報信号の送信が必要であるものと判定して、警報信号送信処理部183と連動しつつ、通信端末装置50に警報信号を送信する。なお、警報信号送信時の処理は、第1実施形態と同様である。
【0132】
一方、タイミングt
04において、有効エリアEA内の無線タグ装置30からビーコン信号BS3を受信すると、キャンセル判定部182は、タイミングt
04から所定の時間(例えば、
図12に示す場合には、タイミングt
04からt
06までの1秒間)を警報キャンセル有効期間に設定する。そして、この警報キャンセル有効期間中に検知エリアDAに対する物体の侵入検知タイミング(
図12に示す場合にはタイミングt
05)が到来した場合、キャンセル判定部182は、警報信号の送信を不要と判定して、警報信号の送信をキャンセルする。
【0133】
この構成により、本実施形態においてキャンセル判定部182は、有効エリアEA内に所在する無線タグ装置30からビーコン信号を受信した場合にのみ、警報キャンセル有効期間を設定しつつ、警報キャンセル有効期間内に検知エリアDAに対する物体の侵入検知タイミングが到来すると、警報の発報をキャンセルするものと判定する一方、警報キャンセル有効期間以外のタイミングにて検知エリアDAに対する物体の侵入が検知された場合に警報信号を送信するものと判定して、上記判定方法1を実現することができる。
【0134】
ここで、本実施形態の構成を採用する場合であっても、警報キャンセル有効期間以外のタイミングにて携行ユーザが検知エリアDAに侵入し、当該侵入タイミングから設定時間内に当該携行ユーザの携行する無線タグ装置30から発信されるビーコン信号がビーコン信号受信部110により受信されるケースも発生し得る。この場合に、通信端末装置50に警報信号を送信することは、管理者に無用な業務負担を強いることになりシステム運用上も望ましくない。例えば、
図12に例示する場合には、ビーコン信号BS2の発信及び受信がなされるタイミングt
03からビーコン信号BS3の発信及び受信がなされるタイミングt
04までの1秒間は、警報キャンセル有効期間に設定されていないので、この間に携行ユーザが検知エリアDAに侵入すると、警報が発報される可能性がある。特に、携行ユーザには、管理者や外来者が含まれるため、これらのユーザが軽い駆け足や早足で移動すると、ビーコン信号の発信間隔であるタイミングt
03~t
04の1秒間に携行ユーザが検知エリアDA内に侵入するケースが発生し得る。
【0135】
しかしながら、このタイミングt03~t04の間に携行ユーザの侵入が検知された場合には、タイミングt04において有効エリア内に所在する無線タグ装置30からビーコン信号を受信することになるので、警報の発報をキャンセルすることが妥当であるものと考えられる。そこで、本実施形態においても、キャンセル判定部182は、警報キャンセル有効期間外に検知エリアDAに対する物体の侵入が検知された場合であっても、侵入検知タイミングから所定時間(設定時間)内に有効エリアEA内に所在する無線タグ装置30によって発信されたビーコン信号を受信すると、警報信号の送信をキャンセルする構成を採用することとした。なお、この場合における動作等については、第1実施形態と同様である。この構成により、本実施形態の入退場管理装置10は、ユーザの移動速度やビーコン信号の発信間隔に大きな影響を受けず、確実に無駄な警報をキャンセルすることができる。なお、上記のようにミリ波センサ20による最大検知速度VMaxは12.5m/秒であるため、ユーザが早足や軽い駆け足で移動する程度の速度であれば問題なくユーザの移動速度を算出することが可能である。
【0136】
[B-2]入退場管理装置10の動作
次いで、
図13及び14を用いつつ、本実施形態の入退場管理装置10の動作について説明する。なお、
図13及び14は、各々、本実施形態のデータ処理部180において実行されるメイン処理及びキャンセルサブ処理を示すフローチャートである。
【0137】
本処理に先立ち、設定データ記憶部152には、
図13及び14に記載の処理を実行するために必要な各種のデータが記憶済の状態になっているものとする。
【0138】
また、
図13及び14に示す各処理は、入退場管理装置10の電源をONにした時点でデータ処理部180及び装置管理制御部160がビーコン信号受信部110と連動しつつ、略同時に開始され、入退場管理装置10の電源をOFFにするか、又は、入退場管理装置10の図示せぬ操作部に対して上記所定の操作が行われるまで同時並行的に継続して実行される処理である。
【0139】
[B-2-1]メイン処理
まず、
図13を参照しつつ、本実施形態のキャンセル判定部182において実行されるメイン処理について説明する。本実施形態においても入退場管理装置10の電源がONになると、ミリ波センサ20に対する電力供給が開始され、送信用アンテナTXAからレーダ波RWとしてTXChirpの送信が開始される。なお、ミリ波センサ20が、コンセント等から電力供給を受け、入退場管理装置10からの制御に応じて電源がONとなる構成を採用する場合には、入退場管理装置10の電源がONにされた後、所定の入力操作(例えば、監視開始操作)が行われると、入退場管理装置10からミリ波センサ20に制御コマンドを出力するようにする。この結果、レーダ波RWが照射エリアIAに照射されるとともに、照射エリアIA内に存在する物体によって生じたRXChirpが受信用アンテナRXAにより受信される。このとき、デジタル信号処理部27は、第1実施形態と同様の方法によりTXChirpとRXChirpに基づき、照射エリアIA内に存在する各物体までの距離、当該物体の移動速度及び当該物体までの角度を個別に算出しつつ、算出結果に対応する距離データ等を生成する。検知エリア設定部181は、このようにしてミリ波センサ20において生成された物体毎の距離データと角度データを少なくともミリ波センサ20から取得する(ステップSc1)。なお、ステップSc1においては、距離データ及び角度データと合わせて、速度データを取得するようにしてもよいが、この点に関しては変形例の項にて詳述する。
【0140】
次いで、検知エリア設定部181は、ステップSc1において取得された距離データにより示される距離d及び角度データにより示される角度θと、設定データ記憶部152に記憶された検知エリア設定データを比較して、検知エリアDAに物体が侵入したか否かを判定する(ステップSc2)。なお、ステップSc1及び2における処理は、
図10のステップSa1及びSa2と同様である。
【0141】
そして、このステップSc2の判定において、ユーザが侵入していないものと判定すると、検知エリア設定部181は、ステップSc3~5の処理を実行することなく、処理をステップSc1にリターンさせる。
【0142】
一方、ステップSc2における判定の結果、検知エリアDAに対するユーザの侵入が検知された場合に、キャンセル判定部182は、タイマ130と連動しつつ、当該侵入検知タイミングを特定し、当該検知タイミングが、警報キャンセル有効期間内であるか否かを判定する(ステップSc3)。なお、本実施形態において警報キャンセル有効期間は、次述するキャンセルサブ処理において設定される構成になっているため、ステップSc3においてキャンセル判定部182は、次述するキャンセルサブ処理において設定される警報キャンセル有効期間と、検知エリアDAに対する物体の侵入検知タイミングを比較することによって、当該侵入検知タイミングが警報キャンセル有効期間内であるか否かを判定する。
【0143】
そして、キャンセル判定部182は、当該侵入検知タイミングが警報キャンセル有効期間内であるものと判定すると、警報の発報が不要であるものとして警報信号の送信をキャンセルし(ステップSc5)、処理をステップSc1にリターンさせる。
【0144】
これに対して、当該侵入検知タイミングが警報キャンセル有効期間外であるものと判定すると、キャンセル判定部182は、ビーコン信号受信部110及びタイマ130と連動して、設定時間内に有効エリアEA内に所在する無線タグ装置30からビーコン信号を受信したか否かを判定する(ステップSc4)。
【0145】
そして、このステップSc4において設定時間内に有効エリアEA内に所在する無線タグ装置30からビーコン信号を受信したものと判定すると(ステップSc4「Yes」)、警報信号の送信をキャンセルして(ステップSc5)、処理をステップSc1にリターンさせる。この構成により本実施形態の入退場管理装置10は、例えば、
図13のタイミングt
03~t
04の間に携行ユーザが検知エリアDA内に侵入し、タイミングt
04において有効エリアEA内に所在する無線タグ装置30からビーコン信号BS3を受信したような場合には警報信号の送信をキャンセルでき、警報の無駄な発報を確実に防止することができる。
【0146】
これに対して、ステップSc4において設定時間内に有効エリアEA内に所在する無線タグ装置30からビーコン信号を受信しなかったものと判定した場合に(ステップSc4「No」)、キャンセル判定部182は、警報信号送信処理部183と連動しつつ警報信号送信処理を実行し(ステップSc6)、警報信号を送信した後、処理をステップSc1にリターンさせる。この結果、データ処理部180においては、入退場管理装置10の電源がOFFにされるか、所定の入力操作が行われるまでステップSc1~6の処理が所定周期(例えば、1000Hz等)で繰り返され、電源ONのタイミングから電源OFF又は入退場管理装置10に所定の入力操作が行われるまで検知エリアDAに対するユーザの侵入の監視状態を維持しつつ、必要に応じて警報発報の要否が決定されることとなる。
【0147】
[B-2-1]キャンセルサブ処理
次いで、
図14を用いて、本実施形態のキャンセル判定部182がビーコン信号受信部110及びタイマ130と連動しつつ、実行するキャンセルサブ処理について説明する。
【0148】
まず、入退場管理装置10の電源がONにされると、キャンセル判定部182は、ビーコン信号受信部110と連動しつつ、ビーコン信号の受信監視処理を実行して、ビーコン信号受信部110におけるビーコン信号の受信状態を監視する(ステップSd1)。
【0149】
そして、ビーコン信号受信部110によりビーコン信号が受信されると(例えば、
図12のタイミングt
03、t
04、t
06)、キャンセル判定部182は、当該ビーコン信号の受信電界強度に基づき、当該ビーコン信号の送信元無線タグ装置30が、有効エリアEA内に所在するか否かを判定し(ステップSd2)、有効エリアEA外と判定すると(例えば、
図12タイミングt
03、及びt
06)、警報キャンセル有効期間を設定することなく処理をステップSd1にリターンさせる。一方、無線タグ装置30が有効エリアEA内にあると判定すると(例えば、
図12のタイミングt
04)、当該ビーコン信号の受信タイミングから所定の時間を警報キャンセル有効期間に設定した後(ステップSd3)、処理をステップSd1にリターンさせる。
【0150】
本実施形態においてキャンセル判定部182は、入退場管理装置10の電源がOFFにされるか、所定の入力操作が行われるまでステップSd1~3の処理を繰り返すことにより、無線タグ装置30から発信されるビーコン信号の受信状態を常時監視し、有効エリアEA内に所在する無線タグ装置30によって発信されたビーコン信号を受信すると、当該受信タイミングから所定期間を警報キャンセル有効期間に設定する。この結果、上記メイン処理(
図13)のステップSc3において、物体の侵入検知タイミングが警報キャンセル有効期間内であると判定された場合に警報信号の送信がキャンセルされることとなり、上記判定方法1による警報発報の要否判定が実現される。なお、本実施形態においては、有効エリアEA内に所在する無線タグ装置30により送信されたビーコン信号を受信した場合にのみ警報キャンセル有効期間を設定して(ステップSd3)、当該期間中におけるユーザの検知エリアDA侵入時に警報の発報をキャンセルする構成を採用したが、警報に厳密さを求めない場合には、有効エリアEA外の無線タグ装置30からビーコン信号を受信した際にも警報キャンセル有効期間を設定して、当該期間中におけるユーザの侵入検知時に警報の発報をキャンセルする構成を採用することも可能である。
【0151】
[C]変形例
[C-1]変形例1
上記各実施形態においては、入退場管理システム1に通信端末装置50を設ける構成を採用したが、入退場管理装置10にブザーや警報ランプを内蔵して、検知エリアDAに対する物体の侵入が検知された際に、上記判定方法1及び2の少なくとも一方の方法により、警報発報の要否判定を行って、警報の発報が必要と判定された場合に、入退場管理装置10に内蔵したブザーや警報ランプによって入所ユーザが無断外出する可能性があることを報知する構成にしてもよい。この場合には、入退場管理装置10に内蔵された警報ランプを出入口EEの上部や横に設置し、無断外出が発生する可能性のある出入口EEを管理者が視認可能にする構成を採用することが望ましい。
【0152】
また、施設Fの規模が比較的小さい場合には、出入口EEの数も限られ、施設入所ユーザ数も少なくなることから上記各DB411及び412に格納すべきデータ数も限られたものとなる。このような場合には、これらのDB411及び412を入退場管理装置10に設け、管理サーバ装置40を省略することもできる。なお、この場合には、出入口EEの各々に入退場管理装置10が設けられることになるため、入退場管理装置10に出入口管理DB412を設けることは必要とならない。また、この場合には、入退場管理装置10に自機の設置された出入口EEの名称及び当該出入口EEの施設内位置情報の少なくとも一方を記憶させるようにして、当該記憶された出入口名や施設内位置情報を含む警報信号を送信する構成とすればよい。さらに、上記各実施形態においては、ミリ波センサ20と、入退場管理装置10を別体で設ける構成を採用したが、入退場管理装置10にミリ波センサ20を内蔵して、入退場管理装置10からレーダ波RWを照射しつつ検知エリアDAを形成する構成を採用してもよい。また、ブザーや警報ランプ、電光掲示板等の表示部等を有する通信端末装置50を施設F内のスタッフルームに設け、スタッフルーム内の管理者全員に施設入所ユーザが無断外出する可能性があることを報知する構成を採用してもよい。
【0153】
この場合には、入退場管理装置10にて上記各実施形態と同様の方法により、警報信号を送信するか否かを判定して、警報信号の送信が必要と判定された場合にのみ入退場管理装置10からスタッフルーム内の通信端末装置50に警報信号を送信する。また、このときスタッフルーム内の通信端末装置50においては、例えば、表示部に「正面玄関から無断外出の可能性があります。ご注意下さい」等の文字列を表示させつつ、警報ブザーを発報させ、同時に警報ランプを点滅させるようにしてもよい。この場合には、文字列の表示に換えて音声で「正面玄関から無断外出の可能性があります。ご注意下さい。」等の内容を報知するようにしてもよい。
【0154】
[C-2]変形例2
上記各実施形態においては、施設F内の各出入口EEの近傍にミリ波センサ20と入退場管理装置10を設置する構成を採用したが、各出入口EEの近傍にミリ波センサ20と、ビーコン信号の受信機のみを設置して、これらの装置を直接又はネットワークを介して入退場管理装置10に接続し、全ての出入口EEにおける入退場を1台の入退場管理装置10で一元管理する構成としてもよい。この場合には、入退場管理装置10に上記各DB411及び412を設けるようにして、入退場管理装置10単体にて上記各実施形態における入退場管理装置10及び管理サーバ装置40と同様の機能を実現するようにすればよい。そして、検知エリアDAに対するユーザの侵入が検知された場合に、上記判定方法1及び2の少なくとも一方の方法に従い警報信号の送信の要否を判定し、警報信号の送信が必要と判定した場合に、物体の侵入が検知された出入口EEを特定しつつ、警報信号の送信処理を実行して、通信端末装置50に警報信号を送信し、侵入の検知された出入口EEにて無断外出が発生する可能性があることを管理者に報知するようにすればよい。
【0155】
[C-3]変形例3
上記各実施形態及び変形例においては、ミリ波センサ20のデジタル信号処理部27が距離、速度及び角度を算出し、算出結果に対応するデータを入退場管理装置10に供給する構成を採用したが、距離、速度及び角度の算出は、入退場管理装置10側で行う構成を採用してもよい。この場合には、ADC26から出力されるA/D変換後のIF信号を、I/Oインターフェース部21を介して入退場管理装置10に供給するようにして、上記ステップSa1及びSc1において検知エリア設定部181が、距離、速度及び角度を算出しつつ、距離、速度及び角度の各データを取得する構成を採用すればよい。なお、この場合における距離、速度及び角度の算出方法は上記各実施形態と同様である。
【0156】
[C-4]変形例4
上記各実施形態及び変形例においては、検知エリア設定データに基づき、照射エリアIA内に検知エリアDAを設定するとともに、距離データ及び角度データに基づき、検知エリアDAに対するユーザの侵入が検知された場合に、キャンセル判定部182が物体の侵入検知タイミングとビーコン信号の受信タイミングの時間的な関係に基づき、上記判定方法1及び2の少なくとも一方の方法に従って警報信号の送信の要否判定を行う構成を採用した。これに対して、本変形例においては、ミリ波センサ20にて算出された距離、速度及び角度に基づき、検知エリア設定部181が、照射エリアIA内に存在する各ユーザの移動状況を含む行動をトラッキングして、検知エリアDA内に侵入したユーザが出入口EEを通過して施設Fから退出しようとしているものと検知された場合にのみ、キャンセル判定部182が、上記判定方法1及び2の少なくとも一方の方法に従って警報信号送信の要否を判定する構成を採用する。なお、検知エリアDAに侵入した各ユーザが出入口EEから退出しようとしているか否かを検知エリア設定部181において判定する具体的な手法に関しては任意であり、例えば、検知エリアDAに侵入した各ユーザの位置及び速度に基づき、各ユーザを識別するとともに、当該ユーザが検知エリアDAにおいてミリ波センサ20に近い側から出入口ドアEEDに向かって移動していることが検出された場合にのみ、当該ユーザが出入口EEから退出しようとしているものと検知する構成としてもよい。この場合には、検知エリア設定部181がステップSa1及びSc1において距離データ及び角度データに加えて、速度データをミリ波センサ20から取得して、当該取得した距離、速度及び角度の各データに基づき、検知エリア設定部181が、検知エリアDAに侵入した各ユーザを識別しつつ、各ユーザの行動をトラッキングして当該ユーザが出入口EEを通過しようとしているか否かを判定する構成とする。またこの場合に、検知エリア設定部181は、ステップSa2及びSc2において、検知エリアDA内に所在し、且つ、出入口EEから退出しようとしているユーザが存在する場合に、「Yes」と判定し、ステップSa3~Sa6又はSc3~Sc6の処理を実行する構成とすればよい。この構成により、例えば、出入口EEを通過する意図がなく単に出入口EE近傍の通路やホール等をうろついているだけのユーザが誤って検知エリアDAに侵入したようなケースや、ユーザが出入口EE前を横切る方向に検知エリアDAを通過したようなケース、検知エリアDA内でユーザが停滞し留まっているようなケース等を警報発報の要否判定対象から除外して、入退場管理装置10の処理負担を軽減しつつ、誤報の発生を防止することができる。
【0157】
[C-5]変形例5
上記各実施形態においては、説明の理解を容易にするため、1×2のSIMO方式のミリ波センサ20を利用する場合(
図5)を例に説明したが、高い角度分解能θ
Resを実現するためには、
図15及び16に示すように受信用アンテナRXAの数を増やすことが望ましい。
(1)受信用アンテナRXAの数を増やしたSIMO方式を採用する場合の構成例について
例えば、1×12SIMO方式のミリ波センサ20を採用する場合、ミリ波センサ20には、
図15に例示するように1本の送信用アンテナTXAと、間隔「l」で等間隔に12本の受信用アンテナRXA1~12を設ける構成を採用する。また、この場合には、送信用アンテナTXAを図示せぬ送信部23に接続し、チャープシンセサイザ22(図示しない)によって生成されたTXChirpを送信部23によって増幅しつつ、レーダ波RWとして送信用アンテナTXAから送信する構成を採用する。さらに、この場合、各受信用アンテナRXA1~12には、各々対応する受信部24-1~24-12と、ミキサ25-1~25-12と、ADC26-1~12と(図示しない)を設け、各ミキサ25に対して対応する受信用アンテナRXAによって受信されたRXChirpとTXChirpを入力する。そして、ミキサ25において各受信用アンテナRXAに対応するRXChirpとTXChirpを混合することにより、各RXChirpに対応するIF信号を生成し、ADC26にてIF信号をA/D変換した後、デジタル信号処理部27に入力する構成とする。なお、この場合における各部の構成及び機能は上記
図5と同様であるため、詳細を省略する。
【0158】
このとき、各受信用アンテナRXAによって受信されるRXChirpは、
図5と同様、隣接する受信用アンテナRXA間で各々、距離差Δd=lsinθに相当する位相差φが生じる。この結果、
図15に示すように、各受信用アンテナRXA1~RXA12にて受信されるRXChirpは、各々、φずつ位相差が生じ、受信用アンテナRXA1において受信されるRXChirpの位相を0とすると、受信用アンテナRXA1と受信用アンテナRXA12の間では計11φの位相差が生じる。このとき、デジタル信号処理部27は、受信用アンテナRXA1~12の各々に対応する受信系統毎にFFT処理を施し、受信処理毎のFFT処理結果に対して、更に角度FFTを実施することにより、ミリ波センサ20から物体までの角度を算出する。この構成により、約9.55°程度の角度分解能θ
Resを確保して、上記設定方法a及びbによる検知エリア設定を確実に実現可能となる。
【0159】
(2)MIMO方式を採用する場合の構成例について
図15に例示するようにSIMO方式により受信用アンテナRXA数を増加させて、角度分解能θ
Resを向上させる方法を採用する場合、ミリ波センサ20のシステム及びアプリケーションが肥大化して設計上の効率化を実現することが難しくなる。このため、
図16に示すようにMIMO方式のミリ波センサ20を用いることが望ましい。例えば、
図16に示すように送信用アンテナTXAがTXA1~3の3本、受信用アンテナRXAがRXA1~4の4本の3×4のMIMO方式を採用することにより、受信用アンテナRXAの本数を仮想的に増加させ、7本のアンテナで1×12SIMO方式を採用した場合と同程度の角度分解能θ
Resを実現することができる。
【0160】
この場合、例えば、
図16に例示するように間隔を「4l」としつつ3本の送信用アンテナTXA1~3を設けるとともに、間隔を「l」としつつ4本の受信用アンテナRXA1~4を設けるようにする。また、この場合、各送信用アンテナTXAには各々図示せぬ送信部23を設け、チャープシンセサイザ22の生成したTXChirpを増幅しつつ対応する送信用アンテナTXAからレーダ波RWとして送信する。さらに、この場合、各受信用アンテナRXAには図示せぬ受信部24と、ミキサ25と、ADC26と、を設ける構成とする。そして、各受信用アンテナRXAにより受信されたRXChirpに対応するIF信号をADC26によりA/D変換した後、デジタル信号処理部27にて信号処理を施すことによりミリ波センサ20から照射エリアIA内に存在する各物体までの距離、当該物体の移動速度及びミリ波センサ20から当該物体までの角度を算出する。なお、この場合における、各部の構成及び機能は上記
図5と同様である。また、この場合、レーダ波RWは、例えばTDM(Time Division Multiplexing)-MIMO方式にて送受信するようにしてもよく、BPM(Binary Phase Modulation)-MIMO方式にて送受信するようにしてもよい。なお、TDM-MIMO方式とは、M個の送信用アンテナTXA(
図16に例示する構成の場合には3個)から一つのアンテナを順次選択してチャープ信号をM回送信し、N個の受信用アンテナRXA(
図16に例示する構成の場合には、4個)で同時に受信することによりM×N素子(
図16の例の場合12)の仮想アレーアンテナで受信するレーダ装置とみなすことができることを利用して、角度分解能θ
Resを向上させつつ角度測定を行う方式であるが、TDM―MIMO方式に関しては従来と同様であるため、詳細を省略する。
【0161】
このとき、送信用アンテナTXA1~3によって送信されるTXChirpと各受信用アンテナRXAにより受信されるRXChirpは、
図16に示すように以下のような関係性を有することとなる。
(1)送信用アンテナTXA1から送信されるTXChirpと各受信用アンテナRXAにより受信されるRXChirpの関係性
送信用アンテナTXA1から送信されるTXChirpに関しては、
図15の例と同様に受信用アンテナRXA1によって受信したRXChirpの位相を0とした場合、他の受信用アンテナRXA2~4によって受信されるRXChirpは、受信用アンテナRXAが1本ずれるごとにφずつ位相差が生じ、受信用アンテナRXA4において3φの位相差が生じることとなる。
(2)送信用アンテナTXA2から送信されるTXChirpと各受信用アンテナRXAにより受信されるRXChirpの関係性
送信用アンテナTXA2から送信されるTXChirpは、送信用アンテナTXA1から送信されるTXChirpと比較して4lsinθの距離差Δd
1を持って対象物に照射され、RXChirpとして、各受信用アンテナRXAにより受信される。この場合における4lsinθの距離差Δd
1は、4φ分の位相差に相当するので、送信用アンテナTXA2によって送信されたTXChirpは、各々4φ分の位相差を持って受信用アンテナRXA1~4により受信され、
図16に示すように受信用アンテナRXA1において、4φ、受信用アンテナRXA4において7φの位相差を持って受信される。
(3)送信用アンテナTXA3から送信されるTXChirpと各受信用アンテナRXAにより受信されるRXChirpの関係性
送信用アンテナTXA3から送信されるTXChirpは、送信用アンテナTXA1から送信されるTXChirpと比較して8lsinθの距離差Δd
2を持って対象物に照射され、RXChirpとして、各受信用アンテナRXAにより受信される。このときにおける8lsinθの距離差Δd
2は、8φ分の位相差に対応するので、送信用アンテナTXA3によって送信されたTXChirpは、各々8φ分の位相差を持って受信用アンテナRXA1~4により受信され、
図16に示すように受信用アンテナRXA1において8φ、受信用アンテナRXA4において11φの位相差を持って受信される。この結果、3×4MIMO方式により0~11φまでの位相差を得ることができ、3×4MIMO方式で1×12SIMOと同等の角度分解能(9.55°程度)を実現することができる。
【0162】
[C-6]変形例6
上記各実施形態及び変形例においては、介護施設などの施設Fにおける無断外出を防止する構成を採用したが、本発明の入退場管理装置等は、イベント会場に対する不正入場の防止にも応用することができる。この場合には、イベント会場の入場口近傍にミリ波センサ20と、入退場管理装置10と、を設置するとともに、イベントチケット購入者にチケットの代わりに無線タグ装置30を配布して、無線タグ装置30を携行しない人物が入場しようとした際に、イベント運営者の所持する通信端末装置50に警報信号を送信して、不正入場が発生する可能性があることを運営者に報知する構成を採用すればよい。なお、この場合においても、警報発報の要否判定には、上記判定方法1及び2の少なくとも一方の方法を採用すればよい。また、この場合においても変形例2と同様に距離、速度及び角度に基づき、人物の行動をトラッキングして、無線タグ装置30を携行しない人物が入場口から入場しようとしているもの検知された場合にのみ、上記判定方法1及び2の少なくとも一方により、警報発報の要否を判定して、警報の発報が必要と判定された場合にのみ不正入場が発生する可能性があることを運営者に報知する構成としてもよい。さらに、本発明の入退場管理装置等は、営業秘密等の保管された保管室やサーバルーム、金庫室等、一部のユーザにのみ入場権限が与えられる各種エリアに対する不法侵入の防止にも応用することができる。この場合には、保管室やサーバルーム等入場が制限されるエリアの出入口近傍にミリ波センサ20と入退場管理装置10を設け、当該エリアへの入場が制限されないユーザにのみ無線タグ装置30を配布するようにする。そして、無線タグ装置30を携行しないユーザが当該エリアに侵入しようとした際に、当該エリアの管理者が保有する通信端末装置50に警報信号を送信して不法侵入の可能性があることを管理者に報知する構成を採用すればよい。この場合には、当該エリアの出入口に設置されたドアに鍵を設け、無線タグ装置30を携行するユーザが検知エリアDA内に侵入した場合に当該ドアの鍵を解錠する構成を採用してもよい。
【0163】
[C-7]変形例7
上記各実施形態及び変形例においては、通信端末装置50と別の装置として無線タグ装置30を用意する構成を採用したが、通信端末装置50に無線タグ装置30としての機能を持たせて、管理者に関しては、無線タグ装置30を配布しない構成を採用してもよい。この構成により、入退場管理システム1を導入し、運用する際のコストを低減することができる。
【0164】
[C-8]変形例8
上記各実施形態及び変形例においては、無線タグ装置30としてBLEビーコンの発信器やアクティブ型のRFIDを用いる構成を採用したが、無線タグ装置30としてセミアクティブ型のRFIDやパッシブ型のRFIDを用いる構成を採用してもよい。
【0165】
この場合には、入退場管理装置10にトリガー信号の送信機能を設け、自機の設置された出入口EE近傍のエリアにトリガー信号を送信するようにする。そして、無線タグ装置30は、当該トリガー信号を受信した際にアクティブ化して、警報キャンセルデータとしてのビーコン信号を送信し、又は、トリガー信号に基づいて起電力を発生させつつ、ビーコン信号を入退場管理装置10に送信する構成を採用すればよい。他の構成に関しては、上記各実施形態及び変形例と同様である。
【0166】
[C-9]変形例9
上記各実施形態及び変形例においては、ビーコン信号受信時の受信電界強度に基づき、当該ビーコン信号の送信元無線タグ装置30が有効エリアEA内に所在するか否かを判定して、有効エリアEA内に所在する無線タグ装置30からビーコン信号を受信した場合にのみ、警報信号の送信をキャンセルする構成を採用したが、例えば、ビーコン信号の受信可能エリアが有効エリアEAと同程度の大きさになるように無線タグ装置30からビーコン信号を発信する際の信号送信電力を調整する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0167】
1…入退場管理システム、10…入退場管理装置、110…ビーコン信号受信部、111…ビーコン信号受信用アンテナ、120…警報信号送信部、121・・・警報信号送信用アンテナ、130…タイマ、140…I/Oインターフェース部、150…記憶部、151…プログラム記憶部、152…設定データ記憶部、153…RAM、160…装置管理制御部、170…通信制御部、180…データ処理部、181…検知エリア設定部、182…キャンセル判定部、183…警報信号送信処理部、20…ミリ波センサ、21…I/Oインターフェース部、22…チャープシンセサイザ、23…送信部、24…受信部、25…ミキサ、26…ADC、27…デジタル信号処理部、30…無線タグ装置、40…管理サーバ装置、411…検知履歴管理DB、412…出入口管理DB、TXA1~3…送信用アンテナ、RXA1~12…受信用アンテナ、DA…検知エリア、IA…照射エリア、RW…レーダ波、EA…有効エリア、EED…出入口ドア