(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A61M39/10 120
(21)【出願番号】P 2020016429
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 純一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕也
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-029480(JP,A)
【文献】特開2015-146868(JP,A)
【文献】特開2009-050346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に相手側コネクタと嵌合する嵌合部を備える筒状の本体と、
相手側コネクタの備える相手側ネジと螺合するネジを有し、
当該ネジと当該相手側ネジとが螺合していない状態で前記本体の外周に軸方向を揃えて遊嵌される筒状のロック部材と、を備え、
前記本体
の外周面は、
前記本体と前記相手側コネクタを嵌合させた状態で、
前記ロック部材と前記相手側ネジの螺合を解除させるとき、前記ロック部材の
内周面の一部と
周方向に当接することで、前記相手側ネジとの螺合が解除される方向の前記ロック部材の前記本体に対する相対回動を規制する第1当接部と、
前記ロック部材と前記相手側ネジを螺合させるとき、前記ロック部材の
内周面の一部と当接することで、前記相手側ネジとの螺合が進行する方向に前記本体に対して相対回動中の前記ロック部材を、前記本体の先端側に向けて誘導する第2当接部と、を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記本体は、外周面から周方向において部分的に突出する突起を有し、
前記第1当接部および前記第2当接部は、前記突起に設けられることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコネクタにおいて、
前記本体は、前記ロック部材の一部と当接することで、前記本体の後端側に向かう方向の前記ロック部材の前記本体に対する相対移動を規制する第3当接部を有し、
前記第3当接部は、前記第1当接部よりも前記本体の後端側に配置されることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項2に記載のコネクタにおいて、
前記本体は、前記ロック部材の一部と当接することで、前記本体の後端側に向かう方向の前記ロック部材の前記本体に対する相対移動を規制する第3当接部を有し、
前記第1当接部および前記第3当接部は、前記突起の前記本体の先端側を段差状に切り欠いた切り欠き部に設けられることを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
先端側に相手側コネクタと嵌合する嵌合部を備える筒状の本体と、
相手側コネクタの備える相手側ネジと螺合するネジを有し、
当該ネジと当該相手側ネジとが螺合していない状態で前記本体の外周に軸方向を揃えて遊嵌される筒状のロック部材と、を備え、
前記ロック部材
の内周面は、
前記本体と前記相手側コネクタを嵌合させた状態で、
前記ロック部材と前記相手側ネジの螺合を解除させるとき、前記本体の
外周面の一部と
周方向に当接することで、前記相手側ネジとの螺合が解除される方向の前記ロック部材の前記本体に対する相対回動を規制する第1当接部と、
前記ロック部材と前記相手側ネジを螺合させるとき、前記本体の
外周面の一部と当接することで、前記相手側ネジとの螺合が進行する方向に前記本体に対して相対回動中の前記ロック部材を前記本体の先端側に向けて誘導する第2当接部と、を有することを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば輸液チューブ等の医療用器具の接続部に用いられるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三方活栓や輸液チューブ等の輸液ラインを構成する医療用器具において各部の接続を行うためのコネクタとして、テーパ嵌合式でロック機構を有するものが知られている。このようなコネクタは、外周面がテーパ状に形成された筒状のオスルアー(嵌合部)を備えるオスコネクタと、内周面がテーパ状に形成された筒状のメスルアー(嵌合部)を備えるメスコネクタから構成され、オスルアーをメスルアー内に挿入して嵌合させることにより接続が行われる。
【0003】
また、このようなコネクタでは、ロック機構として、オスコネクタは内周面に雌ネジを備える円筒状のロック部材をオスルアーの外周側に備えており、メスコネクタはこのロック部材の雌ネジと螺合する雄ネジをメスルアーの外周面に備えている。通常、ロック部材は、オスルアーの外周に遊嵌されており、オスルアーに対して相対的に回動可能となっている。従って、このようなコネクタの接続は、メスルアー内にオスルアーを挿入した後にロック部材を回動させ、ロック部材の雌ネジをメスコネクタの雄ネジに螺合させることによって行われる。
【0004】
このようなコネクタのうち、ロック部材の雌ネジとメスコネクタの雄ネジが羅合していない場合に、オスルアーの外周面に設けた突起とロック部材の内周面に設けた突起を周方向に当接させることで、使用者がロック部材を介してオスルアーを回動可能とし、これによりオスルアーとメスルアーの嵌合を容易に解除可能としたコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ロック部材はオスルアーよりも大径となるため、ロック部材を介してオスルアーをメスルアーに対して回動させることができれば、オスルアーとメスルアーの嵌合がきつい場合にも容易に嵌合を解除することが可能となる。すなわち、オスコネクタとメスコネクタの接続を容易に解除することができる。特に、オスコネクタおよびメスコネクタが共に可撓性を有する輸液チューブの端部に設けられている場合には、オスコネクタおよびメスコネクタ以外に力を加えやすい部分がないため、効果的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のコネクタでは、接続を解除する際に使用者は、ロック部材の雌ネジとメスコネクタの雄ネジの羅合を解除した後にロック部材をメスコネクタから離隔するように軸方向に移動させ、感触を頼りに探りながら回動および移動させてオスルアーの突起とロック部材の突起を位置決めした後に、初めて両者を当接させることが可能となる。このため、上記特許文献1に記載のコネクタは、操作性が悪いという問題があった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑み、操作性に優れたコネクタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコネクタは、先端側に相手側コネクタと嵌合する嵌合部を備える筒状の本体と、相手側コネクタの備える相手側ネジと螺合するネジを有し、当該ネジと当該相手側ネジとが螺合していない状態で前記本体の外周に軸方向を揃えて遊嵌される筒状のロック部材と、を備え、前記本体の外周面は、前記本体と前記相手側コネクタを嵌合させた状態で、前記ロック部材と前記相手側ネジの螺合を解除させるとき、前記ロック部材の内周面の一部と周方向に当接することで、前記相手側ネジとの螺合が解除される方向の前記ロック部材の前記本体に対する相対回動を規制する第1当接部と、前記ロック部材と前記相手側ネジを螺合させるとき、前記ロック部材の内周面の一部と当接することで、前記相手側ネジとの螺合が進行する方向に前記本体に対して相対回動中の前記ロック部材を、前記本体の先端側に向けて誘導する第2当接部と、を有することを特徴とする。
【0010】
第1当接部を本体の先端側の嵌合部に近づけて配置し、相手側コネクタとの接続解除時にロック部材のネジと相手側ネジの螺合の解除と略同時、またはその直前もしくは直後にロック部材の一部を第1当接部に当接させるようにすることで、ロック部材を介して本体を回動させて嵌合部の嵌合を解除する操作を、ロック部材のネジと相手側ネジとの螺合を解除する操作と連続的に行わせることができる。
【0011】
但し、この場合、相手側コネクタとの接続時にロック部材のネジと相手側ネジの螺合の開始の際に第1当接部が設けられた突起等がロック部材の一部と干渉することとなるため、ロック部材のネジを相手側ネジに螺合させられない、または本体がロック部材と共に回動して嵌合部の嵌合が解除されるといった不具合が生じることとなる。
【0012】
これに対し、本発明によれば、第2当接部を適宜に配置することにより、ロック部材のネジと相手側ネジの螺合の開始時に、回動するロック部材を第1当接部が設けられた突起等を避けるように誘導することができる。すなわち、本発明によれば、相手側コネクタとの接続時に不具合を生じさせることなく、接続解除時に嵌合部の嵌合を解除する操作を、相手側ネジとの螺合を解除する操作と連続的に行わせることが可能となるため、操作性に優れたコネクタを実現することができる。
【0013】
また、本発明のコネクタにおいて、前記本体は、外周面から周方向において部分的に突出する突起を有し、前記第1当接部および前記第2当接部は、前記突起に設けられることが好ましい。
【0014】
これによれば、第1当接部および第2当接部が設けられた突起が周方向において部分的に設けられているため、ロック部材をこの突起と干渉しないように軸方向に移動させて本体から離隔させることができる。これにより、例えば本体または本体に繋がれた輸液チューブをテープ等によって人体の皮膚表面に固定する場合等、大径のロック部材が邪魔になるような場合に、ロック部材を輸液チューブに沿って移動させて邪魔にならない位置に配置することができる。さらに、本体から一時的に離隔させたロック部材を容易に元の位置に戻すことも可能であるため、コネクタの操作性をさらに向上させることができる。
【0015】
また、本発明のコネクタにおいて、前記本体は、前記ロック部材の一部と当接することで、前記本体の後端側に向かう方向の前記ロック部材の前記本体に対する相対移動を規制する第3当接部を有し、前記第3当接部は、前記第1当接部よりも前記本体の後端側に配置されることが好ましい。
【0016】
これによれば、使用者は、ロック部材を介して本体を回動させて嵌合部の嵌合を解除した後に、ロック部材をつまんだまま本体を軸方向に移動させて相手側コネクタから離脱させることが可能となるため、コネクタの操作性をさらに向上させることができる。
【0017】
また、本発明のコネクタにおいて、前記本体は、前記ロック部材の一部と当接することで、前記本体の後端側に向かう方向の前記ロック部材の前記本体に対する相対移動を規制する第3当接部を有し、前記第1当接部および前記第3当接部は、前記突起の前記本体の先端側を段差状に切り欠いた切り欠き部に設けられることが好ましい。
【0018】
これによれば、ロック部材を軸方向に移動させて本体から離隔させることが可能となるだけでなく、ロック部材の一部が第1当接部に当接した状態で、そのままロック部材を軸方向に移動させるだけで第3当接部に当接させることが可能となるため、コネクタの操作性をさらに向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係るコネクタは、先端側に相手側コネクタと嵌合する嵌合部を備える筒状の本体と、相手側コネクタの備える相手側ネジと螺合するネジを有し、当該ネジと当該相手側ネジとが螺合していない状態で前記本体の外周に軸方向を揃えて遊嵌される筒状のロック部材と、を備え、
前記ロック部材の内周面は、前記本体と前記相手側コネクタを嵌合させた状態で、
前記ロック部材と前記相手側ネジの螺合を解除させるとき、前記本体の外周面の一部と周方向に当接することで、前記相手側ネジとの螺合が解除される方向の前記ロック部材の前記本体に対する相対回動を規制する第1当接部と、
前記ロック部材と前記相手側ネジを螺合させるとき、前記本体の外周面の一部と当接することで、前記相手側ネジとの螺合が進行する方向に前記本体に対して相対回動中の前記ロック部材を前記本体の先端側に向けて誘導する第2当接部と、を有することを特徴とするものであってもよい。
【0020】
この場合にも、相手側コネクタとの接続時に不具合を生じさせることなく、接続解除時に嵌合部の嵌合を解除する操作を、相手側ネジとの螺合を解除する操作と連続的に行わせることが可能となるため、操作性に優れたコネクタを実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るコネクタによれば、操作性に優れたコネクタを実現可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】Aは本発明の一実施形態に係るコネクタの正面図であり、Bは
図1AにおけるI-I線断面図であり、Cは
図1BにおけるII-II線断面図である。
【
図2】Aは本体の正面図であり、Bは本体の平面図であり、Cは本体の左側面図である。
【
図3】Aはロック部材の
図1AにおけるI-I線断面図であり、Bはロック部材の
図1BにおけるII-II線断面図であり、Cはロック部材の左側面図である。
【
図4】AおよびBはコネクタの作動を示した部分断面図である。
【
図5】AおよびBはコネクタの作動を示した部分断面図である。
【
図6】AおよびBはコネクタの作動を示した部分断面図である。
【
図7】AおよびBはコネクタの作動を示した部分断面図である。
【
図8】A~Cはコネクタの変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1Aは本発明の一実施形態に係るコネクタ1の正面図であり、
図1Bは
図1AにおけるI-I線断面図であり、
図1Cは
図1BにおけるII-II線断面図である。
【0024】
本実施形態のコネクタ1は、所定の規格に準じたオスコネクタであり、輸液チューブ100の端部に設けられ、輸液チューブ100を例えば三方活栓や他の輸液チューブ等に接続するためのものである。
図1A~Cに示されるように、コネクタ1は、略円筒状の本体10と、本体10の外周に軸方向を揃えて遊嵌された略円筒筒状のロック部材20と、を備えている。
【0025】
図2Aは本体10の正面図であり、
図2Bは本体10の平面図であり、
図2Cは本体10の左側面図である。これらの図に示されるように、本体10は、軸方向(図の左右方向)に貫通する通路11と、先端側(図の右側)に設けられた嵌合部12と、後端側(図の左側)に設けられたチューブ接続部13と、嵌合部12とチューブ接続部13の間の胴部14と、胴部14に設けられた突起15と、を備えている。
【0026】
通路11は、薬液等を流通させるためのものであり、嵌合部12とチューブ接続部13を繋ぐように設けられている。嵌合部12は、相手側コネクタ200(
図4~7参照)内に挿入されて嵌合するオスルアーである。嵌合部12の外周面は、所定の規格に準じて先端側に向けて漸次縮径するテーパ状に構成されている。チューブ接続部13は、可撓性の材料から構成された輸液チューブ100が接続される部分である。本実施形態では、チューブ接続部13は、外筒13aおよび内筒13bから構成されている。輸液チューブ100は、外筒13aと内筒13bの間に挿入され、接着剤等によってチューブ接続部13に固定される。
【0027】
胴部14は、ロック部材20が外周に遊嵌される部分である。胴部14は、チューブ接続部13の外筒13aと同径で軸方向に略一定の外径を有する後端側の等径部14aと、等径部14aの先端側において先端側に向けて漸次拡径するテーパ部14bと、テーパ部14bの先端側においてテーパ部14bの最大外径よりも大径の大径部14cとから構成されている。
【0028】
等径部14aおよびテーパ部14bは、ロック部材20が遊嵌される部分である。等径部14aとロック部材20の間の嵌め合いは隙間嵌めであるが、テーパ部14bとロック部材20の間の嵌め合いは締まり嵌めとなっている。大径部14cは、ロック部材20と軸方向に当接することで、ロック部材20の先端側への移動を規制するものである。
【0029】
突起15は、主にコネクタ1の接続解除時にロック部材20と周方向に当接することで、本体10に対するロック部材20の相対的な軸心C周りの回動を規制し、これにより使用者がロック部材20を介して本体10を軸心C周りに回動させることを可能にするためものである。
【0030】
突起15は、等径部14aの外周面の正面側および背面側の2箇所(相反位置)において、それぞれ手前側および奥側に(互いに相反する方向に)向けて突出するように設けられている。突起15の突出方向と直交する断面形状は、平面視において後端側に軸心Cと直交する辺を有する上下対称な七角形の先端側の一部を段差状に切り欠いた形状となっている。また、2つの突起15は、互いに軸心Cに対して軸対称に構成されている。
【0031】
より具体的には、突起15の先端側には、周方向の一側(左側面視で時計回り側)に面する側面15aと、先端側に面する側面15bと、から構成される段差状の切り欠き部16が設けられている。本実施形態では、側面15aを周方向に対して直交する平面から構成し、側面15bを軸方向に対して直交する平面から構成している。
【0032】
また、突起15の先端側の切り欠き部16に対して周方向の他側(左側面視で反時計回り側)には、周方向の一側に向けて漸次先端側に位置するように傾斜した側面15cが設けられている。本実施形態では、側面15aが本発明の第1当接部17を構成し、側面15cが本発明の第2当接部18を構成し、側面15bが本発明の第3当接部19を構成している。
【0033】
また、本実施形態では、第1当接部17(側面15a)の後端15a1、第2当接部18(側面15c)の後端15c1、および第3当接部19(側面15b)の軸方向における位置を略一致させるようしている。従って、第3当接部19は、第1当接部17および第2当接部18よりも後端側に位置している。
【0034】
突起15にはまた、側面15bおよび側面15cの後端側に軸方向と平行な側面15dおよび側面15eが設けられており、側面15bと側面15dの間の角部には、他の角部よりも大きい丸みが設けられている。また、側面15dおよび側面15eの後端側には、後端側に向けて互いに漸次近接するように傾斜した側面15fおよび側面15gが設けられている。そして、側面15fおよび側面15gの後端側には、軸方向に対して直交する側面15hが設けられている。
【0035】
突起15の頂面15iは、側面15a~eに対応する領域が等径部14aの外周面と略平行な曲面に構成されており、側面15f~hに対応する領域が後端側に向けて漸次突出量が減少する傾斜曲面に構成されている。突起15は、等径部14aから周方向において部分的に突出するものであるが、本実施形態では、突起15の周方向に占める範囲を、側面15bおよび側面15cに対応する部分において約100°の範囲とし、比較的広めに設定している。
【0036】
このように、突起15の頂面15iを傾斜した部分を有する曲面に構成すると共に、突起15を周方向において比較的幅広に構成することで、人体の皮膚に接触した場合に生じ得る痛みや不快感を低減することができる。本実施形態では、さらに突起15の突出量を大径部14cの外径と略等しく設定することで、接触時の痛みや不快感をより低減するようにしている。
【0037】
図1A~Cに戻って、ロック部材20は、相手側コネクタ200の備える雄ネジ210と螺合して接続をロックするためのものである。ロック部材20は、先端側が後端側よりも大径に構成されると共に、使用者が指でつまんで回動させやすいように、軸方向に連続する複数のリブ20aを備えている。
【0038】
図3Aはロック部材20の
図1AにおけるI-I線断面図であり、
図3Bはロック部材20の
図1BにおけるII-II線断面図であり、
図3Cはロック部材20の左側面図である。これらの図に示されるように、ロック部材20は、先端側の螺合部21と、後端側の遊嵌部22と、遊嵌部22の内側に設けられた2つの突出部23と、から構成されている。
【0039】
螺合部21は、相手側コネクタ200の雄ネジ210と螺合する部分であり、内外径が共に遊嵌部22よりも大径に構成されている。螺合部21の内周面には、所定の規格に準じた雌ネジ21aが設けられている。本実施形態では、雌ネジ21aは、2条の台形ネジであり、ピッチを大きめに設定することで相手側コネクタ200の雄ネジ210との螺合に所定の遊びが設定されている。また、雌ネジ21aは右ネジであるため、左側面視で時計回りが螺合の進行方向(ネジを締め込む方向)であり、左側面視で反時計回りが螺合の解除方向(ネジを緩める方向)である。
【0040】
遊嵌部22は、後端側の外径が軸方向において略一定であり、先端側の外径が螺合部21の外径に応じて先端側に向けて漸次拡大するように構成されている。また、遊嵌部22の内周面は、後端側の後端部22aと、後端部22aの先端側の中間部22bと、中間部22bの先端側の先端部22cと、から構成されている。
【0041】
後端部22aは、後端側に向けて内径が漸次拡大するように構成されている。中間部22bは、後端部22aの最小外径と同径で軸方向において一定の内径に構成されている。また、先端部22cは、中間部22bよりもやや大径の内径から螺合部21の内径まで内径が先端側に向けて漸次拡大するように構成されている。中間部22bの内径は、本体10の突起15の最大外径よりもやや大きい径に設定されており、2つの突出部23は、中間部22bを周方向において部分的に軸心Cに向けて突出させるようにして設けられている。
【0042】
突出部23は、本体10の大径部14cおよび突起15と当接する部分である。突出部23は、
図3Cに示されるように、左側面視および右側面視が略円弧状となるように構成され、頂面23aが本体10の等径部14aの外径よりもやや大径の円周に沿うように設けられている。また、2つの突出部23の間のスペースは、本体10の突起15が軸方向に通過可能な大きさに設定されている。
【0043】
具体的には、突出部23の周方向の一側の端面23bおよび他側の端面23cは、それぞれ突起15の側面15dまたは側面15eと略平行に構成されると共に、一方の突出部23の端面23bと他方の突出部23の端面23cの間の直線距離は、突起15の側面15dと側面15eの間の直線距離よりもやや大きく設定されている。
【0044】
なお、突出部23の頂面23aの後端側は、後端側に向けて漸次突出量が減少する傾斜曲面に構成されている。後端部22aおよび傾斜面23a1は、本体10に対するロック部材20の傾きを所定の範囲で許容するために設けられている。また、中間部22bにおける2つの突出部23の間の中間位置には、突起15の頂面15iと当接する細い内側リブ22dが、軸方向に連続するように設けられている。この内側リブ22dは、突起15の頂面15iと嵌合することで、ロック部材20が意図せず軸方向に移動するのを防止するためのものである。
【0045】
次に、コネクタ1の作動について説明する。
図4AおよびB、
図5AおよびB、
図6AおよびB、ならびに
図7AおよびBは、コネクタ1の作動を示した部分断面図である。なお、これらの図では、ロック部材20および相手側コネクタ200を断面で示すと共に、本体10よりも手前側の突出部23を二点鎖線で示している。また、以下の説明におけるロック部材20の回動および移動は、特に記載のある場合を除いて本体10または相手側コネクタ200に対する相対的なものである。
【0046】
これらの図に示されるように、本実施形態の相手側コネクタ200は、所定の規格に準じたメスコネクタである。相手側コネクタ200は、円筒状の部材であり、嵌合部12が挿入されて嵌合する相手側嵌合部201を内周面に備えている。また、ロック部材20の雌ネジ21aと螺合する雄ネジ210を外周面に備えている。
【0047】
コネクタ1を相手側コネクタ200に接続する場合、使用者は、まず嵌合部12を相手側コネクタ200内に挿入し、嵌合部12と相手側嵌合部201を嵌合させる。次に使用者は、ロック部材20を相手側コネクタ200側(本体10の先端側)に向けて軽く押しながら、軸心C周りに左側面視で時計回り(すなわち、螺合が進行する方向)に回動させて雌ネジ21aを雄ネジ210に螺合させる。
【0048】
このとき、ロック部材20は、突出部23が突起15の間に配置され、突起15と干渉することなく軸方向に移動可能な状態となっている。なお、突出部23が突起15よりも後端側に位置している場合にも、傾斜した側面15fまたは側面15gによって突出部23が突起15の間に誘導されるため、使用者はスムーズにロック部材20を先端側に移動させることができる。
【0049】
図4Aは、雌ネジ21aと雄ネジ210の螺合が開始される直前の状態の一例を示している。本実施形態では、嵌合部12と相手側嵌合部201を嵌合させた状態で、雌ネジ21aおよび雄ネジ210の先端同士(相手側端同士)を軸方向に当接させた場合に、突出部23が第1当接部17(側面15a)の後端15a1、第2当接部18(側面15c)の後端15c1、および第3当接部19(側面15b)よりも本体10の先端側に位置するように突起15を配置している。
【0050】
従って、この例では、雌ネジ21aと雄ネジ210の螺合の開始と略同時に、突出部23の端面23b側が第2当接部18と当接することとなる。従って、使用者がロック部材20を左側面視で時計回りに回動させることで、ロック部材20は傾斜面である第2当接部18によって誘導され、相手側コネクタ200側に向けて軸方向に移動することとなる。
【0051】
本来、ロック部材20は、螺合の開始後は雄ネジ210によって誘導されて相手側コネクタ200側に向けて軸方向に移動しながら回動するものである。また、雌ネジ21aと雄ネジ210の間には適宜の遊びが設けられているため、突出部23が第2当接部18に当接した状態でも、使用者は、大きな抵抗の増加や引っ掛かり等を感じることなくロック部材20をスムーズに回動させることができる。
【0052】
この例では、螺合の開始後にロック部材20が約50°回動した後は、
図4Bに示されるように、突出部23が第2当接部18から外れることとなる。突出部23が第2当接部18から外れた後は、使用者は従来のコネクタと同様に雌ネジ21aと雄ネジ210の螺合を進行させることができる。
【0053】
その後、螺合の進行に伴ってロック部材20は相手側コネクタ200側に移動し、
図5Aに示されるように、突出部23の頂面23aがテーパ部14bと接触するようになる。突出部23がテーパ部14bと接触すると、本体10およびロック部材20が弾性変形し、この弾性変形の復元力により生じる摩擦力によって、雌ネジ21aと雄ネジ210の螺合に対する緩み止め作用が発生する。
【0054】
そして、
図5Bに示されるように、突出部23が大径部14cに当接することで、ロック部材20の軸方向の移動が規制される。これにより、ロック部材20をさらに回動させた場合に相手側コネクタ200が本体10に引き寄せられることとなり、嵌合部12と相手側嵌合部201の嵌合がさらに強められる。また、コネクタ1と相手側コネクタ200の間にネジ締結の軸力が発生し、これにより、コネクタ1と相手側コネクタ200の接続が容易に分離不能にロックされる。
【0055】
なお、嵌合部12と相手側嵌合部201の嵌合状態、および本体10と相手側コネクタ200の周方向の相対的な位置関係によっては、雌ネジ21aと雄ネジ210の螺合の開始前、または螺合の開始後に突出部23が第2当接部18と当接する場合があるが、いずれの場合においてもロック部材20は、螺合の進行に伴う軸方向の移動と同じ方向に誘導されるため、使用者は特に違和感を持つことなく操作を行うことができる。
【0056】
また、突起15の切り欠き部16によって、螺合開始前のロック部材20に逆方向の回動の自由度を持たせているため、使用者は適宜にロック部材20の周方向の位置を調整して雌ネジ21aと雄ネジ210を螺合させることが可能となっている。
【0057】
コネクタ1と相手側コネクタ200の接続を解除する場合、使用者は、
図5Bに示す状態からロック部材20を、軸心C周りに左側面視で反時計回り(すなわち、螺合が解除される方向)に回動させて雌ネジ21aと雄ネジ210の螺合を解除させる。螺合の解除に伴ってロック部材20は相手側コネクタ200の反対側に向けて軸方向に移動することとなる。
【0058】
図6Aは、雌ネジ21aと雄ネジ210の螺合が完全に解除された(雌ネジ21aが雄ネジ210から外れた)直後の状態の一例を示している。
図4Aに示す状態から螺合を開始した場合、螺合が完全に解除された直後は
図4Aと略同じ状態となる。従って、この例では、使用者がロック部材20を継続して左側面視で反時計回りに約50°回動させることで、
図6Bに示されるように、突出部23の端面23c側が第1当接部17に当接することとなる。
【0059】
突出部23が第1当接部17に当接した後は、ロック部材20の本体10に対する相対的な軸心C周りの回動が規制されるため、本体10はロック部材20と共に軸心C周りに回動することとなる。従って、使用者がロック部材20の回動を継続することで、本体10は相手側コネクタ200に対して相対的に軸心C周りに回動することとなり、嵌合部12と相手側嵌合部201の嵌合が容易に解除される。
【0060】
嵌合部12と相手側嵌合部201の嵌合が解除されたならば、使用者はロック部材20をつまんだまま相手側コネクタ200から離隔させるように軸方向に移動させることで、コネクタ1を相手側コネクタ200から離脱させることができる。具体的には、第3当接部19は第1当接部17よりも後端側に位置していることから、
図7Aに示されるように、突出部23が第3当接部19に当接し、これによりロック部材20と共に本体10を相手側コネクタから離隔する方向に移動させることができる。
【0061】
使用者はまた、ロック部材20を回動させて突出部23と突起15が当接しない状態にしてロック部材20を本体10の後端側に向けて軸方向に移動させることで、
図7Bに示されるように、ロック部材20を輸液チューブ100側に退避させることができる。特に本実施形態では、第3当接部19の周方向の一側の端部に比較的大きめの丸みを設けているため、使用者はロック部材20を本体10の後端側に向けて軽く押しながら周方向の一側に回動させるだけで、容易にロック部材20を輸液チューブ100側に退避させることができる。
【0062】
このように、コネクタ1によれば、ロック部材20の雌ネジ21aと相手側コネクタ200の雄ネジ210の螺合を解除する操作、本体10の嵌合部12と相手側コネクタ200の相手側嵌合部201の嵌合を解除する操作、およびコネクタ1を相手側コネクタ200から離脱させる操作を、連続的且つ容易に行うことができる。また、このような操作を可能としながらも、コネクタ1の相手側コネクタ200への接続時に不具合が生じないようになっている。すなわち、コネクタ1は、操作性に優れたものとなっている。
【0063】
なお、第2当接部18の傾斜角度(軸心Cに直交する平面に対する角度)は、特に限定されるものではないが、雌ネジ21aのリード角の1倍~3倍の角度であることが好ましく、本実施形態では雌ネジ21aのリード角の約2倍の角度に設定している。
【0064】
次に、コネクタ1の変形例について説明する。
図8A~Cは、コネクタ1の変形例を示した図である。なお、
図8AおよびBは変形例における本体10の正面図であり、
図8Cは変形例の部分断面図である。
【0065】
図8Aは、第3当接部19を省略した場合の一例を示している。このように、突起15に第1当接部17および第2当接部18のみを設けるようにしてもよく、この場合、ロック部材20の輸液チューブ100側への退避を容易にすることができる。また、
図8Aに二点鎖線で示すように、突起15とは別の突起150を設け、この突起150に第3当接部19を設けるようにしてもよい。
【0066】
図8Bは、第1当接部17と第2当接部18の間に軸心Cに直交する側面15jを設けた場合の一例を示している。この場合、第1当接部17と第2当接部18の間の角部の摩耗を低減することができる。このように、第1当接部17および第2当接部18は、角部を介して隣接する側面に限定されるものではなく、互いに離隔して設けられるものであってもよい。なお、側面15jは、平面であってもよいし、曲面であってもよい。また、図示は省略するが、第1当接部17および第2当接部18はそれぞれ別の突起に設けられるものであってもよい。
【0067】
図8Cは、第1当接部17、第2当接部18および第3当接部19をロック部材20の突出部23に設けた場合の一例を示している。なお、
図8Cでは、ロック部材20の断面を示すと共に、本体10よりも手前側の突出部23を二点鎖線で示している。また、この例では、第1当接部17、第2当接部18および第3当接部19に当接する突起15の先端側を矩形状に構成している。このように、第1当接部17、第2当接部18および第3当接部19は、本体10およびロック部材20のいずれに設けられるものであってもよい。
【0068】
その他、図示は省略するが、突起15の形状は特に限定されるものではなく、適宜の形状を採用することができる。例えば、第2当接部18の後端15c1が第3当接部19よりも先端側または後端側にずらした形状に突起15を構成するようにしてもよい。また、第1当接部17、第2当接部18および第3当接部19は、曲面から構成されるものであってもよいし、適宜の凹凸形状を備えるものであってもよい。また、第2当接部18は、傾斜角度が変化するものであってもよい。また、第1当接部17および第3当接部19は、周方向または軸方向に対して傾斜した面であってもよい。
【0069】
また、本体10の嵌合部12は、メスルアーであってもよい。また、ロック部材20は、雄ネジを備えるものであってもよい。また、チューブ接続部13は、外筒13aおよび内筒13bのいずれか一方のみから構成されるものであってもよい。また、コネクタ1の各部の形状および配置は、本実施形態の形状および配置に限定されるものではなく、適宜の形状および配置を採用可能であることは言うまでもない。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のコネクタは、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0071】
また、上述の実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1 コネクタ
10 本体
12 嵌合部
15 突起
16 切り欠き部
17 第1当接部
18 第2当接部
19 第3当接部
20 ロック部材
21a 雌ネジ(ネジ)
200 相手側コネクタ
210 雄ネジ(相手側ネジ)