(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】不燃性基材、不燃性基材を備える不燃性化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 27/04 20060101AFI20240604BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240604BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20240604BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B32B27/04 A
B32B27/00 E
B32B27/42 101
B32B27/18 B
(21)【出願番号】P 2020035031
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019043165
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大島 野乃花
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-335999(JP,A)
【文献】特開2016-190467(JP,A)
【文献】特開2020-116946(JP,A)
【文献】実開昭63-007200(JP,U)
【文献】特開昭57-138935(JP,A)
【文献】特開2009-001022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
E04B 1/62- 1/99
C08J 5/04- 5/10、 5/24
B29B 11/16、 15/08- 15/14
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に化粧層が積層される不燃性基材であって、
固形分を含む水溶性樹脂組成物を含浸させた
芯材を乾燥させた半硬化状態のシートを複数層重ね合わせて熱圧成形することで形成され、
前記水溶性樹脂組成物が含む固形分は、前記水溶性樹脂組成物の固形分100質量部の中に、フェノール樹
脂の固形分を3.0質量部以上7.0質量部以下の範囲内で含み、且つコロイダルシリカを固形分として5.0質量部以上で含有する無機充填剤を93.0質量部以上97.0質量部以下の範囲内で含
み、
前記芯材は、熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウムとを含有し、
前記水溶性樹脂組成物が含む固形分は、前記炭酸カルシウムを用いて前記芯材に形成した空隙部に含浸していることを特徴とする不燃性基材。
【請求項2】
前記無機充填剤は、水酸化アルミニウムをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載した不燃性基材。
【請求項3】
前記水溶性樹脂組成物が含む固形分は、前記水溶性樹脂組成物の固形分100質量部の中に、前記水酸化アルミニウムを固形分として68質量部以上72質量部以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項2に記載した不燃性基材。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムの平均粒子径(モード径)は、1μm以上3μm以下の範囲内であり、且つ最大粒子径が50μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した不燃性基材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した不燃性基材と、前記不燃性基材の少なくとも一方の面に積層されたアンカー層と、前記アンカー層に積層された前記化粧層と、を備える不燃性化粧板であって、
前記化粧層は、硬化型樹脂を用いて形成されたトップコート層を備え、
前記アンカー層及び前記化粧層の有機分質量は、150g/m
2以下であ
り、
前記アンカー層は、塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含む材料で形成されていることを特徴とする不燃性化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、システムキッチンの焜炉上等の壁面に設置されるキッチン吊り戸等に用いる不燃性基材と、不燃性基材を備える不燃性化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
不燃性化粧板としては、特許文献1に開示されている構成のものがある。特許文献1に開示されている構成は、ケイ酸カルシウム板等の無機質板の表面に着色塗料を塗装した構成や、無機質板に熱硬化型樹脂化粧シートを積層し加熱・加圧成形した構成がある。また、無機繊維からなるシート基材と水酸化アルミニウム並びにフェノール樹脂からなる複層の芯材層用成形素材上に化粧層成形層材を積層一体化した構成がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成では、硬くて脆いために耐久性が低く、加工時や施工時等のハンドリング時において損傷しやすいという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐久性を向上させることが可能な、不燃性基材と、不燃性基材を備える不燃性化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、少なくとも一方の面に化粧層が積層される不燃性基材であり、固形分を含む水溶性樹脂組成物を含浸させた含浸シートを乾燥させた半硬化状態のシートを複数層重ね合わせて熱圧成形することで形成される。また、水溶性樹脂組成物が含む固形分は、固形分100質量部の中に、フェノール樹脂又は鉱物性無機質材料の固形分を3.0質量部以上7.0質量部以下の範囲内で含む。これに加え、コロイダルシリカを固形分として5.0質量部以上で含有する無機充填剤を、93.0質量部以上97.0質量部以下の範囲内で含む。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、不燃性基材と、不燃性基材の少なくとも一方の面に積層されたアンカー層と、アンカー層に積層された化粧層と、を備える不燃性化粧板である。また、化粧層は、硬化型樹脂を用いて形成されたトップコート層を備える。さらに、アンカー層及び化粧層の有機分質量は、150[g/m2]以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、耐久性を向上させることが可能な不燃性基材と、不燃性基材を備える不燃性化粧板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態における不燃性化粧板の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0010】
(第1実施形態)
以下、不燃性化粧板と、不燃性化粧板が備える不燃性基材について説明する。
【0011】
(不燃性化粧板)
図1を参照して、不燃性化粧板10の構成について説明する。
不燃性化粧板10は、
図1に示すように、不燃性基材1と、第一アンカー層2と、第二アンカー層4と、プライマー層6と、化粧層8を備える。
【0012】
(不燃性基材)
不燃性基材1(原反層とも呼称する場合がある)は、半硬化状態のシート(以降の説明では、「半硬化シート」と記載する場合がある)を複数層重ね合わせて熱圧成形することで形成されている。ここで、「半硬化状態」とは、その後の工程(例えば、加熱工程や熱圧工程)によって硬化度をさらに高めることが可能な状態をいう。具体的には、その後の工程(例えば、加熱工程や熱圧工程)によって硬化度が1.1倍以上高まる状態をいう。
半硬化シートは、芯材として用いる含浸シートに、固形分を含む水溶性樹脂組成物を、含浸シートの坪量に対して固形分として500質量部以上700質量部以下の範囲内で含浸させた後、乾燥させて形成する。なお、含浸シートの詳細な構成については、後述する。また、水溶性樹脂組成物が含む固形分は、炭酸カルシウムを用いて含浸シートに形成した空隙部に含浸させる。
【0013】
含浸シートに、固形分を含む水溶性樹脂組成物を、含浸シートの坪量に対して固形分として500質量部以上700質量部以下の範囲内で含浸させる理由は、不燃性、含浸時の加工性、熱圧成形性、耐衝撃性等の強度等を得るためである。
水溶性樹脂組成物が含む固形分は、フェノール樹脂と、無機充填剤とを含む。
フェノール樹脂の固形分は、水溶性樹脂組成物が含む固形分100質量部の中に、3.0質量部以上7.0質量部以下の範囲内で含む。
【0014】
第1実施形態では、一例として、フェノール樹脂の固形分を、水溶性樹脂組成物が含む固形分100質量部の中に、3.5質量部以上5.0質量部以下の範囲内で含む場合について説明する。
フェノール樹脂としてはレゾールタイプを用いることが好適である。
フェノール樹脂の固形分を、水溶性樹脂組成物が含む固形分100質量部の中に、3.0質量部以上7.0質量部以下の範囲内で含む理由は、以下の理由である。
フェノール樹脂の固形分が3.0質量部未満である場合、凝結剤として機能するコロイダルシリカの添加量を増やしても補完することが不可能であるため、不燃性基材1としての十分な強度(曲げ強度、衝撃強度)を得ることが困難である。一方、フェノール樹脂の固形分が7.0質量部を超える場合、有機分質量が多いために、不燃性が低下する可能性がある。
【0015】
無機充填剤は、水溶性樹脂組成物が含む固形分100質量部の中に、93.0質量部以上97.0質量部以下の範囲内で含む。また、無機充填剤は、コロイダルシリカを固形分として5.0質量部以上で含有する。
無機充填剤が、コロイダルシリカを固形分として5.0質量部以上で含有する理由は、以下の理由である。
無機充填剤が、コロイダルシリカを固形分として5.0質量部未満で含有する場合、凝結剤としての機能が不十分となるために、不燃性基材1としての十分な強度(曲げ強度、衝撃強度)を得ることが困難である。
第1実施形態では、一例として、無機充填剤が、コロイダルシリカを固形分として10.0質量部以上30.0質量部以下の範囲内で含有する場合について説明する。
【0016】
(含浸シート)
含浸シートは、熱可塑性樹脂と、無機質材料とを含有している。
無機質材料の含有量は、不燃性基材1の質量に対して、15質量%以上90質量%以下の範囲内であればよく、20質量%以上80質量%以下の範囲内であればより好ましく、60質量%以上80質量%以下の範囲内であればさらに好ましい。その理由を、以下に記載する。
無機質材料の含有量が、不燃性基材1の質量に対して15質量%未満である場合、相対的に熱可塑性樹脂の割合が多くなるため、不燃性又は難燃性が得にくい傾向がある。さらに、不燃性基材1の表面を、ホフマンスクラッチテスターを用いて引っ掻いた際に、視認可能な程度の傷が付く、即ち、十分な表面硬度が得られないことがある。
【0017】
一方、無機質材料の含有量が、不燃性基材1の質量に対して90質量%を超える場合、相対的に熱可塑性樹脂の割合が少なくなる。このため、第一アンカー層2や第二アンカー層4の形成時に、不燃性基材1の表面にいわゆる「粉吹き」が発生することがある。ここで、「粉吹き」とは、不燃性基材1に含まれた無機質材料が、不燃性基材1の表面に浮き出る状態を示す。また、化粧層8の形成時に、不燃性基材1から浮き出た無機質材料によってインキが積層しにくくなり、印刷適性が低下することがある。また、第一アンカー層2、第二アンカー層4及び化粧層8のうち少なくとも一つを形成したシートを、ロール状又は枚葉で木質系基材及び無機材料系基材にラミネートする際に、ラミネートが困難となり、ラミネート適性が低下する傾向がある。また、第一アンカー層2、第二アンカー層4及び化粧層8のうち少なくとも一つを形成したシートを折り曲げて再び開いた際に、折り曲げた部分の割れや、無機質材料の落下が発生する可能性がある。また、化粧層8を形成したシートの表面にセロハンテープを圧着した後、強く引き剥がし、化粧層8又は不燃性基材1(第一アンカー層2)と化粧層8との間で剥離が生じ、インキ密着性が低下することがある。
【0018】
以上説明したように、無機質材料の含有量を、不燃性基材1の質量に対して上述した範囲内とすることで、不燃性又は難燃性を得つつ、粉吹きの発生を低減することが可能となる。これに加え、印刷適性及びラミネート適性を向上させることが可能となり、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減させることが可能となり、さらに、十分な表面硬度を得ることと、インキ密着性を向上させることが可能となる。
無機質材料は、粉末形状(粉体形状)であることが好ましく、平均粒子径(モード径)が1[μm]以上3[μm]以下の範囲内であり、且つ最大粒子径が50[μm]以下であることが好ましい。その理由を、以下に記載する。
【0019】
無機質材料の平均粒子径が1[μm]未満であると、無機質材料同士の凝集力が高まり、熱可塑性樹脂への分散性が低下することがある。また、無機質材料の平均粒子径が3[μm]を超えると、不燃性基材1の表面の平坦性が低下し、第一アンカー層2や第二アンカー層4の厚さが不均一となる可能性や、ムラや欠けが発生したりする可能性がある。また、無機質材料の最大粒子径が50[μm]を超えると、不燃性基材1の表面の平坦性が低下し、第一アンカー層2や第二アンカー層4の厚さが不均一となる可能性や、ムラや欠けが発生したりする可能性がある。
以上説明したように、無機質材料の平均粒子径及び最大粒子径が、上述した数値範囲内であれば、熱可塑性樹脂に対する無機質材料の分散性を向上させるとともに、不燃性基材1の表面に対し、平坦性を維持することが可能である。
【0020】
無機質材料は、例えば、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩のうち、少なくとも一方を含有した粉末である。炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩のうち、少なくとも一方を含有した粉末は、粉末全体の質量に対して、炭酸カルシウム等を50質量%以上100質量%以下の範囲内で含むものが好ましい。つまり、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩のうち、少なくとも一方を含有した粉末の純度は、炭酸カルシウム等の含有量が、50質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。炭酸カルシウム等の含有量が50質量%以上の炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩のうち、少なくとも一方を含有した粉末であれば、不燃性基材1に、十分な不燃性又は十分な難燃性を付与することが可能であるとともに、十分な機械強度を付与することが可能である。
【0021】
なお、無機質材料としては、上記炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩のうち、少なくとも一方を含有した粉末以外に、例えば、シリカ(特に、中空シリカ)、アルミナ、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコン等のジルコニウム化合物を用いることが可能である。また、無機質材料としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、三酸化モリブデン、あるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムの錯体等、三酸化アンチモンとシリカの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華の錯体、ジルコニウムのケイ酸、ジルコニウム化合物と三酸化アンチモンの錯体、並びにそれらの塩等の少なくとも一種を用いることが可能である。また、無機充填剤は、例えば、石灰石の粉体、卵殻の焼結粉体、牡蠣や帆立等の焼結粉体等であってもよい。
上述した無機質材料のうち、特に、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩は、製造手法による粒径のコントロールや、熱可塑性樹脂との相溶性を制御することが容易であり、また、材料コストとしても安価であるため、不燃性化粧板10を低廉化する観点からも好適である。
【0022】
また、無機質材料は、結晶性を有する粉末材料や、いわゆる結晶粉末であってもよく、結晶性を有さない粉末材料、いわゆるアモルファスタイプの粉末材料であってもよい。この場合、無機質材料が結晶性を有する粉末材料であれば、粉末自体が均質で等方性を備えるため、粉末自体の機械強度が向上し、不燃シートの耐傷性や耐久性が向上する傾向がある。また、無機質材料がアモルファスタイプの粉末材料であれば、粉末自体の電気伝導性や熱伝導性、あるいは光透過率や光吸収率を適宜調整することが可能となるため、触感や艶等のバリエーションが豊富な意匠性を付与することが可能となる。
熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステルの少なくとも1種を含んでいれば好ましく、ポリプロピレンを含んでいればより好ましい。熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステルの少なくとも1種を使用することで、無機質材料の分散性が向上する。また、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンを使用することで、無機質材料の分散性がさらに向上する。
【0023】
また、熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量は、不燃性化粧板10の質量に対して、90質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量が、不燃性化粧板10の質量に対して90質量%未満であると、十分な不燃性又は十分な難燃性が得られないことがある。また、印刷適性やラミネート適性が低下したり、シートの折り曲げ部に割れが発生したりすることがある。
したがって、熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量が上述した数値範囲内であれば、十分な不燃性又は十分な難燃性を得つつ、印刷適性やラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減することが可能となる。
【0024】
なお、熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量が、不燃性化粧板10の質量に対して、100質量%である場合には、熱可塑性樹脂の含有量を10質量%以上85質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を15質量%以上90質量%以下の範囲内とすることが好ましい。また、熱可塑性樹脂の含有量を20質量%以上80質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を20質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂の含有量を20質量%以上40質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を60質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量が上述した数値範囲内であれば、十分な不燃性又は十分な難燃性を確実に得つつ、印刷適性やラミネート適性を確実に向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを確実に低減することが可能となる。
【0025】
また、不燃性基材1の厚さは、50[μm]以上250[μm]以下の範囲内であることが好ましく、70[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることがより好ましい。不燃性基材1の厚さが50[μm]未満であると、ラミネート適性が低下する傾向がある。また、不燃性基材1の厚さが250[μm]を超えると、シートの折り曲げ部に割れが発生することがある。
したがって、不燃性基材1の厚さが上述した数値範囲内であれば、ラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減することが可能となる。
【0026】
また、不燃性基材1は、1軸延伸または2軸延伸の原反層であることが好ましい。不燃性基材1が1軸延伸または2軸延伸の原反層であれば、不燃性化粧板10の汎用性を高めることが可能となる。
なお、不燃性基材1には、第一アンカー層2や第二アンカー層4を形成する前に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい。不燃性基材1にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことで、第一アンカー層2や第二アンカー層4と不燃性基材1との接着性(密着性)を、向上させることが可能となる。
また、第一アンカー層2や第二アンカー層4を形成する前に不燃性基材1をブラッシングすることで、粉吹きした無機質材料(例えば、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩)を事前に落とすようにしてもよい。
【0027】
(第一アンカー層)
第一アンカー層2は、不燃性基材1に積層されている。具体的に、第一アンカー層2は、
図1において、不燃性基材1の上側の面(表面)に積層されており、不燃性基材1の表面全体を覆うように形成されている。これにより、第一アンカー層2は、不燃性基材1に含まれる無機質材料の粉落ちを防止する。印刷時や樹脂塗工時に不燃性基材1に含まれる無機質材料が印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちすると、印刷系内を汚染することがある。また、不燃性基材1に含まれる無機質材料が粉落ちすると、インキ抜け等の不具合が発生する可能性がある。ここで、「インキ抜け」とは、インキが部分的に印刷されないことをいう。
また、第一アンカー層2は、不燃性基材1と、後述する絵柄模様層8aを形成するインキとの密着性を向上させるための機能も備えている。第一アンカー層2を備えない構成では、絵柄模様層8aを形成するインキが、不燃性基材1に密着せずに剥離してしまうことがある。
【0028】
第一アンカー層2を形成する材料としては、例えば、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、又は塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有している材料を用いることが可能である。ここで、「塩酢ビ」とは、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を意味する。また、「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」とは、塩酢ビとウレタン系樹脂とを含んだ組成物である。
塩酢ビの含有量とウレタン系樹脂の含有量との比(塩酢ビの含有量(質量)/ウレタン系樹脂の含有量(質量))は、80/20以上1/99以下の範囲内であればよい。また、塩酢ビの含有量とウレタン系樹脂の含有量との比は、50/50以上5/95以下の範囲内であれば好ましく、20/80以上10/90以下の範囲内であればさらに好ましい。
また、第一アンカー層2は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、インクジェット印刷法等の任意の印刷方法を用いて形成されている。好適には、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、スプレーコート法、リップコート法、ダイコート法等、任意のコーティング方法を用いることが可能である。
【0029】
(第二アンカー層)
第二アンカー層4は、不燃性基材1に積層されている。具体的に、第二アンカー層4は、
図1において、不燃性基材1の下側の面(裏面)に積層されており、不燃性基材1の裏面全体を覆うように形成されている。これにより、第二アンカー層4は、不燃性基材1に含まれる無機質材料の粉落ちを防止する。印刷時や樹脂塗工時に不燃性基材1に含まれる無機質材料が印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちすると、印刷系内を汚染することがある。また、不燃性基材1に含まれる無機質材料が粉落ちすると、インキ抜け等の不具合が発生する可能性がある。
また、第二アンカー層4は、不燃性基材1と、プライマー層6との密着性を向上させるための機能も備えている。第二アンカー層4を備えない場合には、プライマー層6を形成する塗液が、不燃性基材1に密着せずに剥離してしまうことがある。
また、第二アンカー層4は、例えば、第一アンカー層2と同様に形成する。
【0030】
(プライマー層)
プライマー層6は、第二アンカー層4に積層されており、第二アンカー層4を間に挟んで、不燃性基材1の裏面と対向している。
プライマー層6の材料としては、例えば、バインダーとしての硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定して用いることが可能である。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプなど特にその形態を問わない。また、硬化方法についても、単独で硬化する1液タイプ、主剤と合わせて硬化剤を使用する2液タイプ、紫外線や電子線等の照射により硬化させるタイプなどから適宜選択して用いることが可能である。一般的な硬化方法としては、ウレタン系の主剤に対して、イソシアネート系の硬化剤を合わせることによって硬化させる2液タイプが用いられており、この方法は作業性、価格、樹脂自体の凝集力の観点から好適である。上述したバインダー以外には、顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤などが添加されている。
【0031】
特に、プライマー層6は、不燃性化粧板10の最背面に位置するため、不燃性化粧板10を連続的なプラスチックフィルム(ウエブ状)として巻き取りを行うことを考慮すると、フィルム同士が密着して滑りにくくなることや、剥がれなくなるなどのブロッキングが生じることを避けるとともに、接着剤との密着を高めるために、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウムなどの無機充填剤を添加してもよい。また、プライマー層6の厚さは、例えば、0.1[μm]以上3.0[μm]以下の範囲内とすることが好ましい。
【0032】
(化粧層)
化粧層8は、第一アンカー層2に積層されており、第一アンカー層2を間に挟んで、不燃性基材1の表面と対向している。
また、化粧層8は、絵柄模様層8aと、トップコート層8bを備える。
【0033】
(絵柄模様層)
絵柄模様層8aは、第一アンカー層2に積層されている。具体的には、絵柄模様層8aは、
図1において、第一アンカー層2の上側の面に積層されている。
絵柄模様層8aの材料としては、加工適性に優れ、燃焼時に有害なガスを発生しないこと等から、例えば、飽和ポリエステル、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、エチレンαオレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、あるいは、これらの混合物等からなるフィルム系基材を用いることが可能である。これらの材料は、未延伸の状態であっても、1軸又は2軸方向に延伸した状態のいずれの状態であってもよく、厚さとしては、25[μm]以上125[μm]以下の範囲内が適当である。また、絵柄模様層8aの材料としては、例えば、建材用プリント用紙(建材用薄葉紙)、純白紙、あるいは、合成樹脂を混抄させて層間強度を強化した薄葉紙、酸化チタン等の不透明顔料を混抄したチタン紙等の紙質系基材を用いることも可能である。
【0034】
絵柄模様層8aの坪量としては、例えば、23[g/m2]以上100[g/m2]以下の範囲内とする。これらのフィルム系基材又は紙質系基材は、必要に応じて必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の適宜の易接着処理を施してもよいものである。
また、絵柄模様層8aには、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄等の絵柄を、グラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法等、周知の印刷法でインキを用いて形成する。インキとしては、ビヒクルとして塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールを含むポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂等を1種又は2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることが可能であるが、環境問題を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールを含むポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等の1種又は2種以上混合した非塩素系のビヒクルが適当であり、より好ましくは、ポリエステル、イソシアネートとポリオールを含むポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種又は2種以上混合したものを用いる。
【0035】
(トップコート層)
トップコート層8bは、絵柄模様層8aに積層されている。具体的には、トップコート層8bは、
図1において、絵柄模様層8aの上側の面に積層されている。
また、トップコート層8bは、絵柄模様層8aの保護、不燃性化粧板10に要求される耐汚染性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性等の表面物性を付与するために設けられるものである。
トップコート層8bを形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当であるが、より好ましくは、表面硬度が硬く、酸化した植物性や動物性の油が付着しても簡単に拭き取ることが可能であると共に、生産性においても優れる等の理由から、電離放射線硬化型樹脂である。
第1実施形態では、一例として、トップコート層8bを、電離放射線硬化型樹脂を用いて形成した場合について説明する。
【0036】
電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線は、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等がある。通常は、紫外線や電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源を用いることが可能である。紫外線の波長としては、190[nm]以上380[nm]以下の範囲内の波長域を使用することが可能である。また、電子線源としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることが可能である。用いる電子線としては、100[keV]以上1000[keV]以下の範囲内、好ましくは100[keV]以上300[keV]以下の範囲内のものが使用される。電子線の照射量は、通常は2[Mrad]以上15[Mrad]以下の範囲内程度である。
【0037】
電離放射線硬化型樹脂は、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、又はエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマー又はポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する)を含む。これらの単量体、プレポリマー、及びポリマーは、単体で用いるか、あるいは、複数種混合して用いる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートの意味で用いる。
【0038】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量が10000を超えると硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性が不足する。アクリレートとメタアクリレートは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速いため、高速度、短時間で能率よく硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
【0039】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーを用いることが可能である。
【0040】
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等を用いることが可能である。
【0041】
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェ-ト等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有する単量体は、カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることが可能である。
【0042】
上述した電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル-N,N-ジメチルアミノベンゾエート等を単独又は混合して用いることができる。又、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独又は混合物として用いることができる。なお、これら光重合開始剤の添加量は一般に、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下の範囲内程度である。
【0043】
また、電離放射線硬化型樹脂でトップコート層8bを形成する方法としては、例えば、この電離放射線硬化型樹脂を塗布可能な粘度に調節し、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布することにより形成することが可能である。塗布量としては、固形分として概ね3[g/m2]以上15[g/m2]以下の範囲内が適当である。
また、絵柄模様層8aとトップコート層8bとの間には、インキ用のプライマー層やトップコート層用のプライマー層を設け、層間の接着強度を向上させることが可能である。これらのプライマー層の形成は、第一アンカー層2に用いるポリオール成分とイソシアネート成分を含む2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、グラビア印刷法、ロールコート法等の周知の塗布方法で形成すればよいものである。インキ用のプライマー層やトップコート層用のプライマー層の、乾燥後の塗布量としては、0.1[g/m2]以上5.0[g/m2]以下の範囲内であり、好ましくは0.5[g/m2]以上1.0[g/m2]以下の範囲内である。
【0044】
なお、トップコート層8bには、不燃性化粧板10の耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤及び光安定化剤を適宜添加してもよい。また、各種機能を付与するために、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を添加してもよい。さらに、表面の意匠性から艶の調整のため、あるいはさらに耐摩耗性を付与するために、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等の添加を添加してもよい。
【0045】
(不燃性化粧板10の製造方法)
以下、
図1を参照して、第1実施形態の不燃性化粧板10の製造方法を説明する。
まず、不燃性基材1の表面に、第一アンカー層2を形成するためのインキを塗工して、第一アンカー層2を形成する。
次に、第一アンカー層2の不燃性基材1と対向する面と反対側の面に、絵柄模様層8aを形成するためのインキを塗工して、絵柄模様層8aを形成する。
次に、絵柄模様層8aの第一アンカー層2と対向する面と反対側の面に、トップコート層8bを形成するためのインキを塗工して、トップコート層8bを形成する。
次に、不燃性基材1の裏面に、第二アンカー層4を形成するためのインキを塗工して、第二アンカー層4を形成する。
【0046】
最後に、第二アンカー層4の不燃性基材1と対向する面と反対側の面に、プライマー層6を形成するためのインキを塗工して、プライマー層6を形成することで、不燃性化粧板10を製造する。
なお、第二アンカー層4は、第一アンカー層2と同時に形成してもよい。
また、プライマー層6は、絵柄模様層8a及びトップコート層8bを形成する前に形成してもよい。この場合、第二アンカー層4は、第一アンカー層2よりも先に形成してもよい。
なお、上述した第1実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第1実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第1実施形態の効果)
【0047】
第1実施形態の不燃性基材1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)固形分を含む水溶性樹脂組成物を含浸させた含浸シートを乾燥させた半硬化シートを複数層重ね合わせて熱圧成形することで形成する。また、水溶性樹脂組成物が含む固形分は、水溶性樹脂組成物の固形分100質量部の中に、フェノール樹脂の固形分を3.0質量部以上7.0質量部以下の範囲内で含む。これに加え、水溶性樹脂組成物が含む固形分は、水溶性樹脂組成物の固形分100質量部の中に、コロイダルシリカを固形分として5.0質量部以上で含有する無機充填剤を93.0質量部以上97.0質量部以下の範囲内で含む。
その結果、無機充填剤としてコロイダルシリカを用いることにより、フェノール樹脂の使用量を少なくしてもコロイダルシリカが凝結剤として機能することとなり、耐久性を向上させることが可能な不燃性基材1を提供することが可能となる。
【0048】
(2)含浸シートは、熱可塑性樹脂と、無機質材料とを含有し、無機質材料の含有量は、不燃性基材1の質量に対して、15質量%以上90質量%以下の範囲内である。
その結果、不燃性又は難燃性を得つつ、粉吹きの発生を低減することが可能となる。これに加え、印刷適性及びラミネート適性を向上させることが可能となり、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減させることが可能となり、さらに、十分な表面硬度を得ることと、インキ密着性を向上させることが可能となる。
【0049】
(3)水溶性樹脂組成物が含む固形分は、水溶性樹脂組成物の固形分100質量部の中に、フェノール樹脂の固形分を3.5質量部以上5.0質量部以下の範囲内で含む。これに加え、コロイダルシリカを固形分として10.0質量部以上30.0質量部以下の範囲内で含有する無機充填剤を含む。
その結果、不燃性基材1としての十分な強度(曲げ強度、衝撃強度)を得ることが容易となり、また、不燃性の低下を抑制することが可能となる。
【0050】
(4)水溶性樹脂組成物を、含浸シートの坪量に対して固形分として500質量部以上700質量部以下の範囲内で含浸させる。
その結果、不燃性、含浸時の加工性、熱圧成形性、耐衝撃性等の強度等を得ることが可能な、不燃性基材を提供することが可能となる。
また、第1実施形態の不燃性化粧板10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
【0051】
(5)不燃性基材1と、不燃性基材1の少なくとも一方の面に積層されたアンカー層(第一アンカー層2、第二アンカー層4)と、アンカー層(第一アンカー層2)に積層された化粧層8を備える。これに加え、化粧層8が、硬化型樹脂を用いて形成されたトップコート層8bを備え、アンカー層及び化粧層8の有機分質量が、150[g/m2]以下である。
その結果、不燃性基材1にアンカー層を介して化粧層8を積層しているために、不燃性化粧板10を、表面平滑性を有する意匠性に優れた構成とすることが可能となる。さらに、化粧層8が硬化型樹脂を用いて形成されたトップコート層8bを備えているために、することが可能となる。耐汚染性や耐擦傷性に優れた性能を有する構成とすることが可能となる。これに加え、アンカー層及び化粧層8の有機分質量が、150[g/m2]以下とすることにより、不燃材料としての防火性能を有するため、内装制限を受ける用途に適合する不燃性化粧板10を提供することが可能となる。
以上により、耐久性を向上させることが可能な不燃性化粧板10を提供することが可能となる。
【0052】
(変形例)
(1)第1実施形態では、水溶性樹脂組成物が含む固形分が、フェノール樹脂と、無機充填剤とを含む構成としたが、これに限定するものではなく、水溶性樹脂組成物が含む固形分が、鉱物性無機質材料と、無機充填剤とを含む構成としてもよい。
鉱物性無機質材料としては、例えば、石英、長石、雲母、結晶質石灰岩(大理石)等の鉱物の単一の鉱物を用いてもよく、また、複数の結晶が集合して形成されているものを用いてもよい。また、方解石の結晶により構成され、単一の結晶ではなく複数の方解石結晶が集合して形成されている岩石を用いてもよい。
(2)第1実施形態では、不燃性基材1の表面に第一アンカー層2を形成し、不燃性基材1の裏面に第二アンカー層4を形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、不燃性基材1の表面のみに第一アンカー層2を形成してもよい。
【0053】
(3)第1実施形態では、不燃性化粧板10の構成を、第一アンカー層2に化粧層8を積層する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、不燃性化粧板10の構成を、第一アンカー層2と化粧層8との間に、第一アンカー層2と化粧層8との接着性(密着性)を向上させるための接着剤層を形成した構成としてもよい。
同様に、不燃性化粧板10の構成を、第二アンカー層4にプライマー層6を積層する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、不燃性化粧板10の構成を、第二アンカー層4とプライマー層6との間に、第二アンカー層4とプライマー層6との接着性(密着性)を向上させるための接着剤層を形成した構成としてもよい。
接着剤層の材料としては、一例として、加熱時に粘着性を示す材料、例えば、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、アイオノマー系樹脂等を主成分とする材料を用いることが可能である。
【実施例】
【0054】
第1実施形態を参照しつつ、以下、実施例の不燃性化粧板と、比較例の不燃性化粧板について説明する。
<化粧層の作製>
厚さが50[μm]の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」と記載する場合がある)の一方の面に、乾燥後の質量が0.5[g/m2]となるように2液硬化型ポリウレタン系接着剤をグラビア印刷法で塗布してインキ用プライマー層を形成する。そして、インキ用プライマー層の表面にアクリル系インキを用いてグラビア印刷法で木目模様の絵柄模様層を形成した後、PETフィルムの他方の面に、乾燥後の質量が0.5[g/m2]となるように2液硬化型ポリウレタン系接着剤をグラビア印刷法で塗布して表面保護層用プライマー層を形成する。さらに、表面保護層用プライマー層面に、電離放射線硬化型樹脂をロールコート法にて塗布した後に、電子線(175[KeV]、5[Mrad])を照射して、質量が10[g/m2]のトップコート層8bを備える化粧層8を作製した。
【0055】
(半硬化シートAの作製)
フェノール樹脂(レゾール型)、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウムを固形分として、それぞれ、4質量部、25質量部、71質量部を添加した水溶性樹脂組成物を調整する。そして、水溶性樹脂組成物中に坪量が100[g/m2]の含浸シートをディッピングした後に、スクイズロールにて絞ると共に乾燥させて、固形分としての含浸量が600[g/m2](総質量が700[g/m2])の半硬化シートAを作製した。
(半硬化シートBの作製)
フェノール樹脂を固形分として3質量部を添加し、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウムを固形分として、それぞれ、25質量部、72質量部を添加した水溶性樹脂組成物を用いた以外は、半硬化シートAと同様にして、半硬化状態の半硬化シートBを作製した。
【0056】
(半硬化シートCの作製)
フェノール樹脂を固形分として7質量部を添加し、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウムを固形分として、それぞれ、25質量部、68質量部を添加した水溶性樹脂組成物を用いた以外は、半硬化シートAと同様にして、半硬化状態の半硬化シートCを作製した。
(半硬化シートDの作製)
コロイダルシリカを添加しない水溶性樹脂組成物を用いた以外は、半硬化シートAと同様にして、半硬化シートDを作製した。
【0057】
(不燃性基材Aの作製)
半硬化シートAを5枚重ね合わせ、ホットプレス機にて熱圧成形(プレス圧力:80[kgf/cm2]、プレス温度と時間:40℃(45分)→180℃(30分)→40℃(45分))して硬化一体化させた不燃性基材Aを作製した。
(不燃性基材Bの作製)
半硬化シートBを5枚重ね合わせ、ホットプレス機にて熱圧成形(プレス圧力:80[kgf/cm2]、プレス温度と時間:40℃(45分)→180℃(30分)→40℃(45分))して硬化一体化させた不燃性基材Bを作製した。
【0058】
(不燃性基材Cの作製)
半硬化シートCを5枚重ね合わせ、ホットプレス機にて熱圧成形(プレス圧力:80[kgf/cm2]、プレス温度と時間:40℃(45分)→180℃(30分)→40℃(45分))して硬化一体化させた不燃性基材Cを作製した。
(不燃性基材Dの作製)
半硬化シートDを5枚重ね合わせ、ホットプレス機にて熱圧成形(プレス圧力:80[kgf/cm2]、プレス温度と時間:40℃(45分)→180℃(30分)→40℃(45分))して硬化一体化させた不燃性基材Dを作製した。
【0059】
(実施例1)
不燃性基材Aの一方の面に、塗布量が50[g/m2]の湿気硬化型ホットメルト接着剤(日立化成ポリマー(株)製:ハイボンシリーズ(商品名))を、ロールコート法で塗布すると共に、ホットメルト接着剤の表面に絵柄模様層が位置するように化粧層を積層して、実施例1の不燃性化粧板を作製した。
(実施例2)
不燃性基材Aに代えて不燃性基材Bを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の不燃性化粧板を作製した。
(実施例3)
不燃性基材Aに代えて不燃性基材Cを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の不燃性化粧板を作製した。
【0060】
(比較例1)
不燃性基材Aに代えて不燃性基材Dを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の不燃性化粧板を作製した。
(比較例2)
不燃性基材Aに代えて厚さが12.5[mm]の石膏ボード(吉野石膏(株)製:タイガーボード(商品名))を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の不燃性化粧板を作製した。
(比較例3)
不燃性基材Aに代えて厚さが5.0[mm]のケイ酸カルシウム板((株)エー・アンド・エーマテリアル製:ハイラック(商品名))を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の不燃性化粧板を作製した。
【0061】
(比較例4)
厚さが5.0[mm]のケイ酸カルシウム板((株)エー・アンド・エーマテリアル製:ハイラック(商品名))の一方の面に、固形分として塗布量が40[g/m2]の2液硬化型ウレタンシーラー(中国塗料(株)製:EPコート(商品名))を塗布・乾燥した。その後、塗布面を#320サンディングペーパーにて研磨仕上げし、研磨面に固形分として塗布量が40[g/m2]のUV(紫外線)硬化型接着剤(中国塗料(株)製:オーレックス(商品名))を塗布した。さらに、塗布面に転写フィルム(厚さが25[μm]のPETフィルムに、剥離層と石目模様の絵柄層とを順に設けたもの)を貼合し、転写フィルム側からUV照射(条件:120[W/cm2]、2PASS、5[m/分])した後にPETフィルムを剥がして絵柄層を転写した。その後、絵柄層面に、塗布量が20[g/m2]のUV硬化型樹脂(ザ・インクテック(株)製:UV硬化型TOP樹脂(商品名))を塗布すると共に、UV照射(条件:120[W/cm2]、2PASS、5[m/分])して硬化させた比較例4の不燃性化粧板を作製した。
【0062】
(比較例5)
質量が60[g/m2]のチタン紙に対し、一方の面にアクリル系インキを用いて石目模様の絵柄層を形成し、絵柄層を形成したチタン紙に、質量が60[g/m2]のメラミン樹脂を固形分として含浸させたメラミン含浸紙を、半硬化シートBを5枚重ね合わせた上下に配置して、ホットプレス機にて熱圧成形(プレス圧力:80[kgf/cm2]、プレス温度と時間:40℃(45分)→180℃(30分)→40℃(45分))して硬化一体化させ、比較例5の不燃性化粧板を作製した。
【0063】
(性能評価、評価結果)
実施例1から3の不燃性化粧板と、比較例1から5の不燃性化粧板に対し、それぞれ、不燃性試験、曲げ強度試験、衝撃強度試験、耐候性試験、汚染性試験を行った。
【0064】
<不燃性試験>
ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、下記の要件1~3を満たしているか否かを評価した。
1.総発熱量が、8MJ/m2以下である。
2.最高発熱速度が、10秒以上継続して200kW/m2を超えない。
3.防炎上有害な、裏面まで貫通する亀裂及び穴が生じない。
なお、不燃性基材としては、石膏ボードを用いた。
【0065】
<曲げ強度試験>
ISO178に準拠した曲げ強度試験において、損傷が生じたか否かを評価した。
<衝撃強度試験>
ISO291に準拠した衝撃強度試験において、損傷が生じたか否かを評価した。
<耐候性試験>
JIS-K-5701-1に準拠した耐候性試験において、劣化が生じたか否かを評価した。
<汚染性試験>
JIS-A-1454に準拠した汚染性試験において、汚染が生じたか否かを評価した。
【0066】
(評価基準)
◎:各項目に対し、シート作製時・シート加工時に何ら不具合を生じない。
〇:各項目に対し、シート作製時・シート加工時に著しい不具合を生じない。
△:各項目に対し、条件によってはシート作製又はシート加工に不具合を生じるが、使用する上での問題は無い。
×:各項目に対し、不具合を生じる。
なお、「×」の評価があるシートは、シート全体として不合格とした。
【0067】
【0068】
表1に示すように、実施例1から3の不燃性化粧板は、いずれの評価試験においても優れた性能を示したが、比較例1から5の不燃性化粧板は、いずれの評価試験においても、実施例1から3の不燃性化粧板と比較して性能が劣る結果となった。
【符号の説明】
【0069】
1…不燃性基材、2…第一アンカー層、4…第二アンカー層、6…プライマー層、8…化粧層、8a…絵柄模様層、8b…トップコート層、10…不燃性化粧板