(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】タイヤ、タイヤの製造方法、タイヤの設計方法及び模様構成単位の配列決定方法
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20240604BHJP
B29D 30/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60C11/03 A
B29D30/00
B60C11/03 300C
(21)【出願番号】P 2020049431
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 賢
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099132(JP,A)
【文献】特開2019-099131(JP,A)
【文献】特開平05-221206(JP,A)
【文献】特開2018-131163(JP,A)
【文献】特開2000-177320(JP,A)
【文献】特表2005-525959(JP,A)
【文献】特開平05-000608(JP,A)
【文献】特開2016-203663(JP,A)
【文献】米国特許第5371685(US,A)
【文献】米国特許第5746848(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0175565(US,A1)
【文献】特開2005-35391(JP,A)
【文献】特開2019-99131(JP,A)
【文献】特開2000-142029(JP,A)
【文献】特開2002-283811(JP,A)
【文献】特開2011-255805(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0070585(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C44/00-44/60
67/20
B29D30/00-30/72
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向の長さが異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第1模様列と、複数の第2模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第2模様列とを含むトレッドパターンが設けられ、
前記第1模様構成単位及び前記第2模様構成単位は、それぞれ、少なくとも1つの横溝を含み、
タイヤ1周での前記第1模様構成単位の総数Ntとタイヤ1周での前記第2模様構成単位の総数Nとは、1以外の最大公約数GCDを有し、
前記第1模様構成単位を、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた大きさを有する第1パルスに置換し、
前記第1模様列を、前記第1パルスを前記第1模様構成単位の配列の順に、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた間隔を空けて並べた第1パルス列に置換し、
前記第1パルス列の隣接するNt/GCD個の前記第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得したときに、
前記第2パルス列を下記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxが下記式(2)を満たす、
タイヤ。
【数1】
【数2】
ここで、
L:タイヤ周長変数(タイヤ1周の全ての第1模様構成単位の長さの比の総和)
k:1~2Nまでの自然数
X(j):第2パルス列の起点からj番目のパルス位置(起点からj番目までの第2パルスの間隔の和)
P(j):第2パルス列のj番目の第2パルスの大きさ
m:第1模様構成単位の種類数
【請求項2】
前記第2パルス列は、前記第1パルス列の隣接する2個の前記パルスを足し合わせて1個の第2パルスにしている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1パルスの大きさは、前記第1パルスに対応する前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さの、少なくとも2種類の前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さの中央値に対する比として定義される、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記比は、0.05~0.35である、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記1~k次の振幅F
kのうち、1次数の振幅F
1が、2.0以下である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記1~k次の振幅F
kのうち、1次数の振幅F
1が、1.0以下である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記1~k次の振幅F
kのうち、最大値F
maxの2/3以上の振幅F
kが、隣り合う次数で連続しない、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
タイヤ1周での前記第1模様構成単位の総数Ntは、30~90個である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
トレッド部に、タイヤ周方向の長さが異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第1模様列と、複数の第2模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第2模様列とを含むトレッドパターンが設けられたタイヤを製造するための方法であって、
前記第1模様構成単位及び前記第2模様構成単位は、それぞれ、少なくとも1つの横溝を含み、
タイヤ1周での前記第1模様構成単位の総数Ntとタイヤ1周での前記第2模様構成単位の総数Nとが、1以外の最大公約数GCDを有するときに、
前記第1模様構成単位を、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた大きさを有する第1パルスに置換する第1工程と、
前記第1模様列を、前記第1パルスを前記第1模様構成単位の配列の順に、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた間隔を空けて並べた第1パルス列に置換する第2工程と、
前記第1パルス列の隣接するNt/GCD個の前記第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得する第3工程と、
前記第2パルス列を下記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxが下記式(2)を満たすような前記第1模様列を形成する第4工程とを含む、
タイヤの製造方法。
【数1】
【数2】
ここで、
L:タイヤ周長変数(タイヤ1周の全ての第1模様構成単位の長さの比の総和)
k:1~2Nまでの自然数
X(j):第2パルス列の起点からj番目のパルス位置(起点からj番目までの第2パルスの間隔の和)
P(j):第2パルス列のj番目の第2パルスの大きさ
m:第1模様構成単位の種類数
【請求項10】
トレッド部に、タイヤ周方向の長さが異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第1模様列と、複数の第2模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第2模様列とを含むトレッドパターンが設けられたタイヤを設計するための方法であって、
前記第1模様構成単位及び前記第2模様構成単位は、それぞれ、少なくとも1つの横溝を含み、
タイヤ1周での前記第1模様構成単位の総数Ntとタイヤ1周での前記第2模様構成単位の総数Nとが、1以外の最大公約数GCDを有するときに、
前記第1模様構成単位を、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた大きさを有する第1パルスに置換する第1工程と、
前記第1模様列を、前記第1パルスを前記第1模様構成単位の配列の順に、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた間隔を空けて並べた第1パルス列に置換する第2工程と、
前記第1パルス列の隣接するNt/GCD個の前記第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得する第3工程と、
前記第2パルス列を下記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxが下記式(2)を満たすように前記第1模様構成単位の配列を決定する第4工程とを含む、
タイヤの設計方法。
【数1】
【数2】
ここで、
L:タイヤ周長変数(タイヤ1周の全ての第1模様構成単位の長さの比の総和)
k:1~2Nまでの自然数
X(j):第2パルス列の起点からj番目のパルス位置(起点からj番目までの第2パルスの間隔の和)
P(j):第2パルス列のj番目の第2パルスの大きさ
m:第1模様構成単位の種類数
【請求項11】
タイヤのトレッドパターンに含まれる模様列について、前記模様列を構成する模様構成単位のタイヤ周方向の配列を決定するための方法であって、
前記模様列は、タイヤ周方向の長さが異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第1模様列と、複数の第2模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第2模様列とを含み、
前記第1模様構成単位及び前記第2模様構成単位は、それぞれ、少なくとも1つの横溝を含み、
タイヤ1周での前記第1模様構成単位の総数Ntとタイヤ1周での前記第2模様構成単位の総数Nとが、1以外の最大公約数GCDを有するときに、
前記第1模様構成単位を、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた大きさを有する第1パルスに置換する第1工程と、
前記第1模様列を、前記第1パルスを前記第1模様構成単位の配列の順に、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた間隔を空けて並べた第1パルス列に置換する第2工程と、
前記第1パルス列の隣接するNt/GCD個の前記第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得する第3工程と、
前記第2パルス列を下記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxが下記式(2)を満たすように前記第1模様構成単位の配列を決定する第4工程とを含む、
模様構成単位の配列決定方法。
【数1】
【数2】
ここで、
L:タイヤ周長変数(タイヤ1周の全ての第1模様構成単位の長さの比の総和)
k:1~2Nまでの自然数
X(j):第2パルス列の起点からj番目のパルス位置(起点からj番目までの第2パルスの間隔の和)
P(j):第2パルス列のj番目の第2パルスの大きさ
m:第1模様構成単位の種類数
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部を有するタイヤ、タイヤの製造方法、タイヤの設計方法及び模様構成単位の配列決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッド部に、少なくとも2種類の模様構成単位がタイヤ周方向に配列された列を含むトレッドパターンを有するタイヤが知られている。例えば、下記特許文献1は、模様構成単位の列を、模様構成単位をパルスとしたパルス列に置換し、パルス列をフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxを所定の範囲内に限定してピッチノイズを低減したタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のタイヤは、模様構成単位の列毎にタイヤ周方向の長さが異なるトレッドパターンを考慮しておらず、トレッドパターンに合わせてピッチノイズを低減することが望まれていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、トレッドパターンに合わせてピッチノイズを低減し得るタイヤ、タイヤの製造方法、タイヤの設計方法及び模様構成単位の配列決定方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部には、タイヤ周方向の長さが異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第1模様列と、複数の第2模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第2模様列とを含むトレッドパターンが設けられ、タイヤ1周での前記第1模様構成単位の総数Ntとタイヤ1周での前記第2模様構成単位の総数Nとは、1以外の最大公約数GCDを有し、前記第1模様構成単位を、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた大きさを有する第1パルスに置換し、前記第1模様列を、前記第1パルスを前記第1模様構成単位の配列の順に、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた間隔を空けて並べた第1パルス列に置換し、前記第1パルス列の隣接するNt/GCD個の前記第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得したときに、前記第2パルス列を下記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅F
kの最大値F
maxが下記式(2)を満たすことを特徴とする。
【数1】
【数2】
ここで、
L:タイヤ周長変数(タイヤ1周の全ての第1模様構成単位の長さの比の総和)
k:1~2Nまでの自然数
X(j):第2パルス列の起点からj番目のパルス位置(起点からj番目までの第2パルスの間隔の和)
P(j):第2パルス列のj番目の第2パルスの大きさ
m:第1模様構成単位の種類数
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第2パルス列は、前記第1パルス列の隣接する2個の前記パルスを足し合わせて1個の第2パルスにしているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第1パルスの大きさは、前記第1パルスに対応する前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さの、少なくとも2種類の前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さの中央値に対する比として定義されるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記比は、0.05~0.35であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記1~k次の振幅Fkのうち、1次数の振幅F1が、2.0以下であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記1~k次の振幅Fkのうち、1次数の振幅F1が、1.0以下であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記1~k次の振幅Fkのうち、最大値Fmaxの2/3以上の振幅Fkが、隣り合う次数で連続しないのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、タイヤ1周での前記第1模様構成単位の総数Ntは、30~90個であるのが望ましい。
【0014】
本発明は、トレッド部に、タイヤ周方向の長さが異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第1模様列と、複数の第2模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第2模様列とを含むトレッドパターンが設けられたタイヤを製造するための方法であって、タイヤ1周での前記第1模様構成単位の総数Ntとタイヤ1周での前記第2模様構成単位の総数Nとが、1以外の最大公約数GCDを有するときに、前記第1模様構成単位を、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた大きさを有する第1パルスに置換する第1工程と、前記第1模様列を、前記第1パルスを前記第1模様構成単位の配列の順に、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた間隔を空けて並べた第1パルス列に置換する第2工程と、前記第1パルス列の隣接するNt/GCD個の前記第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得する第3工程と、前記第2パルス列を下記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅F
kの最大値F
maxが下記式(2)を満たすような前記第1模様列を形成する第4工程とを含むことを特徴とする。
【数1】
【数2】
ここで、
L:タイヤ周長変数(タイヤ1周の全ての第1模様構成単位の長さの比の総和)
k:1~2Nまでの自然数
X(j):第2パルス列の起点からj番目のパルス位置(起点からj番目までの第2パルスの間隔の和)
P(j):第2パルス列のj番目の第2パルスの大きさ
m:第1模様構成単位の種類数
【0015】
本発明は、トレッド部に、タイヤ周方向の長さが異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第1模様列と、複数の第2模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第2模様列とを含むトレッドパターンが設けられたタイヤを設計するための方法であって、タイヤ1周での前記第1模様構成単位の総数Ntとタイヤ1周での前記第2模様構成単位の総数Nとが、1以外の最大公約数GCDを有するときに、前記第1模様構成単位を、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた大きさを有する第1パルスに置換する第1工程と、前記第1模様列を、前記第1パルスを前記第1模様構成単位の配列の順に、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた間隔を空けて並べた第1パルス列に置換する第2工程と、前記第1パルス列の隣接するNt/GCD個の前記第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得する第3工程と、前記第2パルス列を下記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅F
kの最大値F
maxが下記式(2)を満たすように前記第1模様構成単位の配列を決定する第4工程とを含むことを特徴とする。
【数1】
【数2】
ここで、
L:タイヤ周長変数(タイヤ1周の全ての第1模様構成単位の長さの比の総和)
k:1~2Nまでの自然数
X(j):第2パルス列の起点からj番目のパルス位置(起点からj番目までの第2パルスの間隔の和)
P(j):第2パルス列のj番目の第2パルスの大きさ
m:第1模様構成単位の種類数
【0016】
本発明は、タイヤのトレッドパターンに含まれる模様列について、前記模様列を構成する模様構成単位のタイヤ周方向の配列を決定するための方法であって、前記模様列は、タイヤ周方向の長さが異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第1模様列と、複数の第2模様構成単位がタイヤ周方向に配列された第2模様列とを含み、タイヤ1周での前記第1模様構成単位の総数Ntとタイヤ1周での前記第2模様構成単位の総数Nとが、1以外の最大公約数GCDを有するときに、前記第1模様構成単位を、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた大きさを有する第1パルスに置換する第1工程と、前記第1模様列を、前記第1パルスを前記第1模様構成単位の配列の順に、前記第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さに応じた間隔を空けて並べた第1パルス列に置換する第2工程と、前記第1パルス列の隣接するNt/GCD個の前記第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得する第3工程と、前記第2パルス列を下記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅F
kの最大値F
maxが下記式(2)を満たすように前記第1模様構成単位の配列を決定する第4工程とを含むことを特徴とする。
【数1】
【数2】
ここで、
L:タイヤ周長変数(タイヤ1周の全ての第1模様構成単位の長さの比の総和)
k:1~2Nまでの自然数
X(j):第2パルス列の起点からj番目のパルス位置(起点からj番目までの第2パルスの間隔の和)
P(j):第2パルス列のj番目の第2パルスの大きさ
m:第1模様構成単位の種類数
【発明の効果】
【0017】
本発明のタイヤにおいて、第1パルス列の隣接するNt/GCD個の第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得したときに、前記第2パルス列をフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxが一定条件を満たしている。このようなタイヤは、第2模様構成単位のタイヤ周方向の長さが第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さと異なる場合を考慮した振幅Fkの最大値Fmaxが規定されているので、ピッチノイズをより低減することができる。
【0018】
本発明のタイヤの製造方法は、第1パルス列の隣接するNt/GCD個の第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得する第3工程と、前記第2パルス列をフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxが一定条件を満たすような模様列を形成する第4工程とを含んでいる。このようなタイヤの製造方法は、第2模様構成単位のタイヤ周方向の長さが第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さと異なる場合を考慮した振幅Fkの最大値Fmaxを規定しているので、ピッチノイズをより低減したタイヤを製造することができる。
【0019】
本発明のタイヤの設計方法は、第1パルス列の隣接するNt/GCD個の第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得する第3工程と、前記第2パルス列をフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxが一定条件を満たすように模様構成単位の配列を決定する第4工程とを含んでいる。このようなタイヤの設計方法は、第2模様構成単位のタイヤ周方向の長さが第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さと異なる場合を考慮した振幅Fkの最大値Fmaxを規定しているので、ピッチノイズをより低減したタイヤを設計することができる。
【0020】
本発明の模様構成単位の配列決定方法は、第1パルス列の隣接するNt/GCD個の第1パルスを足し合わせてN/GCD個の第2パルスにした第2パルス列を取得する第3工程と、前記第2パルス列をフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxが一定条件を満たすように模様構成単位の配列を決定する第4工程とを含んでいる。このような模様構成単位の配列決定方法は、第2模様構成単位のタイヤ周方向の長さが第1模様構成単位のタイヤ周方向の長さと異なる場合を考慮した振幅Fkの最大値Fmaxを規定しているので、ピッチノイズをより低減したタイヤの模様構成単位の配列を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】タイヤのトレッド部の一例を示す展開図である。
【
図5】振幅F
kと次数kとの関係を示すグラフである。
【
図6】模様構成単位の配列決定方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。なお、各図面は、発明の内容の理解を容易にするためのものであり、誇張された表示が含まれる場合があり、また、各図面間において、縮尺等が厳密に一致するものではない。
【0023】
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の一例を示す展開図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2には、トレッドパターン3が設けられている。
【0024】
本実施形態のトレッドパターン3は、複数の模様構成単位4がタイヤ周方向に配列された模様列5を含んで構成されている。模様列5は、少なくとも2列、本実施形態では、5列設けられている。本実施形態の模様列5は、複数の第1模様構成単位4Aがタイヤ周方向に配列された一対の第1模様列5Aと、複数の第2模様構成単位4Bがタイヤ周方向に配列された一対の第2模様列5Bとを含んでいる。
【0025】
本実施形態の模様列5は、さらに複数の第3模様構成単位4Cがタイヤ周方向に配列された1つの第3模様列5Cを含んでいる。すなわち、本実施形態の模様構成単位4は、第1模様列5Aに配列された第1模様構成単位4Aと、第2模様列5Bに配列された第2模様構成単位4Bと、第3模様列5Cに配列された第3模様構成単位4Cとを含んでいる。
【0026】
本実施形態の第1模様列5Aは、タイヤ周方向の長さD1が異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位4Aを含んでいる。第1模様構成単位4Aの長さD1の種類は、例えば、タイヤ1が装着される車両や路面の条件に応じて適宜設定され得る。少なくとも2種類の第1模様構成単位4Aは、ランダムに並べられるのが望ましい。このような第1模様列5Aは、ピッチノイズを広い周波数範囲に分散させてホワイトノイズ化させる、いわゆるピッチバリエーションによるノイズ低減効果を期待することができる。
【0027】
ここで、本明細書において、特に言及されない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。「正規状態」とは、タイヤ1が空気入りタイヤの場合、タイヤ1が正規リムにリム組みされかつ正規内圧に調整された無負荷の状態である。
【0028】
「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0029】
「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0030】
第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1は、例えば、少なくとも2種類の第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1の中央値Dcに対する比D1/Dcを比較した場合、好ましくは、比D1/Dcの差の絶対値が0.05~0.35である。ここで、第1模様構成単位4Aが5種類の長さ(D1LL、D1L、D1M、D1S、D1SS)を有する場合の中央値Dcは、中央の長さD1Mに相当する。
【0031】
差の絶対値が0.05以上であることで、ピッチバリエーションのノイズ低減効果を効果的に発揮することができる。このような観点から、差の絶対値は、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.15以上である。
【0032】
差の絶対値が0.35以下であることで、模様構成単位4間の剛性差が大きくなることを抑制し、トレッド部2の偏摩耗を抑止することができる。このような観点から、差の絶対値は、好ましくは0.30以下であり、より好ましくは0.25以下である。
【0033】
第1模様列5Aは、タイヤ1周での第1模様構成単位4Aの総数Ntを適宜設定することができる。タイヤ1周での第1模様構成単位4Aの総数Ntは、好ましくは、30~90個である。
【0034】
総数Ntが30個以上であることで、ピッチバリエーションによるノイズ低減効果を十分に発揮することができる。このような観点から、総数Ntは、好ましくは40個以上であり、より好ましくは50個以上である。
【0035】
総数Ntが90個以下であることで、トレッド部2の偏摩耗を抑制することができる。このような観点から、総数Ntは、好ましくは80個以下であり、より好ましくは70個以下である。
【0036】
第1模様構成単位4Aは、例えば、1つのブロック6と、このブロック6とタイヤ周方向の一方側で隣り合う1つの横溝7とで構成されている。本実施形態の第1模様列5Aは、ブロックパターンである。ブロック6は、横溝7と、横溝7と交わる向きに延び、かつ、タイヤ周方向に連続して延びる主溝8とで区分されるのが望ましい。なお、第1模様列5Aは、ブロックパターンに限定されるわけではなく、例えば、リブパターンであってもよい。
【0037】
本実施形態の第2模様列5Bは、タイヤ周方向の長さD2が異なる少なくとも2種類の第2模様構成単位4Bを含んでいる。長さD2の異なる第2模様構成単位4Bの種類は、例えば、タイヤ1が装着される車両や路面の条件に応じて適宜設定され得る。少なくとも2種類の第2模様構成単位4Bは、ランダムに並べられるのが望ましい。このような第2模様列5Bは、ピッチノイズを広い周波数範囲に分散させてホワイトノイズ化させる、いわゆるピッチバリエーションによるノイズ低減効果を期待することができる。
【0038】
第2模様列5Bは、タイヤ1周での第2模様構成単位4Bの総数Nを適宜設定することができる。本実施形態のタイヤ1周での第2模様構成単位4Bの総数Nは、タイヤ1周での第1模様構成単位4Aの総数Ntよりも小さい。タイヤ1周での第1模様構成単位4Aの総数Ntとタイヤ1周での第2模様構成単位4Bの総数Nとは、1以外の最大公約数GCDを有するのが望ましい。
【0039】
トレッドパターン3における第2模様構成単位4Bのタイヤ周方向の長さD2は、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1のNt/N倍、本実施形態では2倍である。このようなタイヤ1は、模様列5のタイヤ軸方向に位置に応じて、最適な模様構成単位4を形成することができる。
【0040】
第2模様構成単位4Bは、例えば、1つのリブ9と、このリブ9内で少なくとも一端が終端する少なくとも1つの横溝7とで構成されている。本実施形態の第2模様列5Bは、リブパターンである。なお、第2模様列5Bは、リブパターンに限定されるわけではなく、例えば、ブロックパターンであってもよい。
【0041】
本実施形態の第3模様列5Cは、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1と同じピッチの少なくとも2種類の第3模様構成単位4Cを含んでいる。このような第3模様列5Cは、第1模様列5Aととともに、ピッチノイズを広い周波数範囲に分散させてホワイトノイズ化させる、いわゆるピッチバリエーションによるノイズ低減効果を期待することができる。
【0042】
第3模様構成単位4Cは、例えば、1つのリブ9と、このリブ9内で少なくとも一端が終端する少なくとも1つの横溝7とで構成されている。本実施形態の第3模様列5Cは、リブパターンである。なお、第3模様列5Cは、リブパターンに限定されるわけではなく、例えば、ブロックパターンであってもよい。
【0043】
図2は、振幅F
kを求めるための第1パルス列11の一例を示す線図である。
図2において、横軸は第1パルス10の間隔G、縦軸は第1パルス10の大きさBを示している。
図1及び
図2に示されるように、タイヤ1は、例えば、第1模様構成単位4Aを、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1に応じた大きさBを有する第1パルス10に置換して並べることで、ピッチノイズを把握することができる。
【0044】
第1パルス10の大きさBは、第1パルス10に対応する第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1の、少なくとも2種類の第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1の中央値Dcに対する比D1/Dcとして定義されるのが望ましい。
【0045】
比D1/Dcとして定義された少なくとも2種類の第1パルス10の大きさBは、好ましくは、その差の絶対値が0.05~0.35である。
【0046】
差の絶対値が0.05以上であることで、ピッチバリエーションのノイズ低減効果を効果的に発揮することができる。このような観点から、差の絶対値は、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.15以上である。
【0047】
差の絶対値が0.35以下であることで、模様構成単位4間の剛性差が大きくなることを抑制し、トレッド部2の偏摩耗を抑止することができる。このような観点から、差の絶対値は、好ましくは0.30以下であり、より好ましくは0.25以下である。
【0048】
本実施形態の第1パルス列11は、第1模様列5Aを、第1パルス10を第1模様構成単位4Aの配列の順に、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1に応じた間隔Gを空けて並べたものである。第1パルス列11は、第1模様列5Aの一周分の第1パルス10が並べられるのが望ましい。このため、第1パルス10の総数は、タイヤ1周での第1模様構成単位4Aの総数Ntである。なお、第1パルス列11は、例えば、第3模様列5Cから置換されてもよい。
【0049】
第1パルス10の間隔Gは、第1パルス10に対応する第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1の、少なくとも2種類の第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1の中央値Dcに対する比D1/Dcとして定義されるのが望ましい。
【0050】
なお、第1パルス10の間隔Gは、間隔Gを構成する一対の第1パルス10のうち、一方の第1パルス10に対応する第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1に応じて定義されるのが望ましい。第1パルス10の間隔Gは、例えば、間隔Gを構成する一対の第1パルス10に対応する2つの第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1の平均値に応じて定義されてもよい。
【0051】
比D1/Dcとして定義された少なくとも2種類の第1パルス10の間隔Gは、好ましくは、その差の絶対値が0.05~0.35である。
【0052】
差の絶対値が0.05以上であることで、ピッチバリエーションのノイズ低減効果を効果的に発揮することができる。このような観点から、差の絶対値は、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.15以上である。
【0053】
差の絶対値が0.35以下であることで、模様構成単位4間の剛性差が大きくなることを抑制し、トレッド部2の偏摩耗を抑止することができる。このような観点から、差の絶対値は、好ましくは0.30以下であり、より好ましくは0.25以下である。
【0054】
図3は、振幅F
kを求めるための第2パルス12の一例を示す線図であり、
図4は、第2パルス列13の一例を示す線図である。
図3及び
図4において、横軸及び縦軸は、
図2に準ずるものである。
図2ないし
図4に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、第1パルス列11から第2パルス列13を取得している。
【0055】
第2パルス列13は、例えば、第1パルス列11の隣接するNt/GCD個の第1パルス10を足し合わせてN/GCD個の第2パルス12にしたものである。 本実施形態の第2パルス列13は、第1パルス列11の隣接する2個の第1パルス10を足し合わせて1個の第2パルス12にしたものが例示されている。このような第2パルス列13は、第2模様列5Bの影響を考慮した第1模様列5Aのピッチノイズを把握することができる。
【0056】
第2パルス12の大きさは、例えば、足し合わされる第1パルス10の大きさの和である。第2パルス12の大きさは、足し合わされるNt/GCD個の第1パルス10の大きさの和をN/GCD個に分散したものであるのが望ましい。
【0057】
第2パルス12の間隔は、例えば、第2模様構成単位4Bのタイヤ周方向の長さD2に応じて適宜決定され得る。このため、本実施形態の第2パルス12の総数は、タイヤ1周での第2模様構成単位4Bの総数Nと同数である。なお、第2パルス12が2個の第1パルス10を足し合わせたものである場合の第2パルス12の位置は、例えば、足し合わされる第1パルス10の中間位置であってもよい。
【0058】
図4に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、第2パルス列13を下記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅F
kのうち、振幅F
kの最大値F
maxが下記式(2)を満たすように構成されている。
【数1】
【数2】
ここで、
L:タイヤ周長変数(タイヤ1周の全ての第1模様構成単位4Aの長さD1の比D1/Dcの総和)
k:1~2Nまでの自然数
X(j):第2パルス列13の起点からj番目のパルス位置(起点からj番目までの第2パルス12の間隔の和)
P(j):第2パルス列13のj番目の第2パルス12の大きさ
m:第1模様構成単位4Aの種類数
【0059】
上記式(1)のタイヤ周長変数Lは、
図1に示されたタイヤ1周にわたって配置されている全ての第1模様構成単位4Aについて、長さD1の中央値Dcに対する比D1/Dcを総和したものとして定義される。
【0060】
上記式(1)のパルス位置X(j)(jは、1~Nまでの自然数)は、第2パルス列13の任意の起点sからj番目の第2パルス12までの位置によって定義される。すなわち、パルス位置X(j)は、以下のように、第2パルス列13の起点sからj番目までの第2パルス12の間隔PL(j)の和として定義される。
X(1)=PL(1)
X(2)=PL(1)+PL(2)
・
・
・
X(j)=PL(1)+PL(2)+ … +PL(j)
【0061】
起点sは、第2パルス列13の任意の位置が選択可能であって、例えば、第2パルス12と重なる位置が選択されてもよい。起点sが第2パルス12と重なる場合の1番目の第2パルス12は、重なった第2パルス12の次の第2パルス12である。また、起点sが第2パルス12と重ならない場合の起点sから1番目の第2パルス12までの間隔PL(1)は、起点sから1番目の第2パルス12までの長さに相当する。
【0062】
上記式(1)の第2パルス12の大きさP(j)は、第2パルス列13の起点sからj番目の第2パルス12の大きさとして定義される。本実施形態の第2パルス12の大きさP(j)は、足し合わされるNt/GCD個の第1パルス10の大きさの和をN/GCD個に分散したものとして定義されている。
【0063】
図5は、振幅F
kと次数kとの関係を示すグラフである。
図5において、横軸は次数k、縦軸は振幅F
kを示している。
図5に示されるように、本実施形態の振幅F
kは、走行時のタイヤ1のピッチノイズを周波数分析したときのノイズエネルギーの大きさに相関がある。
【0064】
本実施形態のタイヤ1は、振幅Fkの最大値Fmaxが、第1模様構成単位4Aの種類数mと第1模様構成単位4Aの1周での総数Ntとに応じて、規定されている。すなわち、第1模様構成単位4Aが2種類の場合の振幅Fkの最大値Fmaxは、13.5-0.105Nt未満である。また、第1模様構成単位4Aが3種類の場合の振幅Fkの最大値Fmaxは、10.5-0.055Nt未満である。また、第1模様構成単位4Aが5種類の場合の振幅Fkの最大値Fmaxは、10.5-0.065Nt未満である。
【0065】
このようなタイヤ1は、トレッドパターン3を考慮した振幅Fkの最大値Fmaxが第1模様構成単位4Aの種類数mと総数Ntとに応じて規定されているので、ピッチノイズをより低減することができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、トレッドパターン3において、第2模様構成単位4Bのタイヤ周方向の長さD2が、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1と異なる場合であっても、ピッチノイズをより低減することができる。
【0066】
1~k次の振幅Fkのうち、1次数の振幅F1は、タイヤ1周で1回変動するノイズエネルギーに影響する。このような1次数の振幅F1は、例えば、走行時のうなり音を発生させるとともに、走行時の車内振動を発生させる要因となり得る。
【0067】
1~k次の振幅Fkのうち、1次数の振幅F1は、好ましくは、2.0以下、より好ましくは、1.0以下である。このようなタイヤ1は、走行時のうなり音を抑制することができ、走行時の車内振動を効果的に抑制することができる。
【0068】
1~k次の振幅Fkのうち、最大値Fmaxの2/3以上の振幅Fkが、隣り合う次数kで連続しないのが望ましい。このようなタイヤ1は、隣接する周波数の大きな音が互いに干渉することを抑止することができ、走行時のうなり音をより抑制することができる。
【0069】
次に、
図1ないし
図5を参酌しつつ、本実施形態の模様構成単位4の配列決定方法が説明される。
図6は、本実施形態の模様構成単位4の配列決定方法のフローチャートである。
図6に示されるように、本実施形態の模様構成単位4の配列決定方法は、タイヤ1のトレッドパターン3に含まれる模様列5について、模様列5を構成する模様構成単位4のタイヤ周方向の配列を決定するための方法である。
【0070】
本実施形態の模様列5は、タイヤ周方向の長さD1が異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位4Aがタイヤ周方向に配列された第1模様列5Aと、複数の第2模様構成単位4Bがタイヤ周方向に配列された第2模様列5Bとを含んでいる。本実施形態では、タイヤ1周での第1模様構成単位4Aの総数Ntとタイヤ1周での第2模様構成単位4Bの総数Nとが、1以外の最大公約数GCDを有している。本実施形態の模様構成単位4の配列決定方法は、このような模様列5を含むトレッドパターン3を対象としている。
【0071】
本実施形態の模様構成単位4の配列決定方法は、まず、第1模様構成単位4Aを、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1に応じた大きさBを有する第1パルス10に置換する第1工程S1が行われる。このような第1工程S1は、ピッチノイズを把握するのに役立つ。
【0072】
本実施形態の模様構成単位4の配列決定方法は、第1工程S1の次に、第1模様列5Aを、第1パルス列11に置換する第2工程S2が行われる。第2工程S2では、第1パルス10を第1模様構成単位4Aの配列の順に、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1に応じた間隔Gを空けて並べた第1パルス列11に置換するのが望ましい。
【0073】
本実施形態の模様構成単位4の配列決定方法は、第2工程S2の次に、第2パルス列13を取得する第3工程S3が行われる。第3工程S3では、第1パルス列11の隣接するNt/GCD個の第1パルス10を足し合わせてN/GCD個の第2パルス12にした第2パルス列13を取得するのが望ましい。このような第3工程S3は、第2模様構成単位4Bのタイヤ周方向の長さD2が、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1と異なる場合を考慮したピッチノイズを把握することができる。
【0074】
本実施形態の模様構成単位4の配列決定方法は、第3工程S3の次に、第1模様構成単位4Aの配列を決定する第4工程S4が行われる。第4工程S4では、第2パルス列13を上記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxが上記式(2)を満たすように第1模様構成単位4Aの配列を決定するのが望ましい。
【0075】
このような第4工程S4は、トレッドパターン3を考慮した振幅Fkの最大値Fmaxを上記式(2)のように規定しているので、ピッチノイズをより低減したタイヤ1の模様構成単位4の配列を決定することができる。
【0076】
次に、
図1ないし
図7を参酌しつつ、本実施形態のタイヤ1の設計方法が説明される。
本実施形態のタイヤ1の設計方法は、トレッド部2に、第1模様列5Aと第2模様列5Bとを含むトレッドパターン3が設けられたタイヤ1を設計するための方法である。本実施形態の第1模様列5Aは、タイヤ周方向の長さD1が異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位4Aがタイヤ周方向に配列されている。第2模様列5Bは、複数の第2模様構成単位4Bがタイヤ周方向に配列されている。
【0077】
本実施形態では、タイヤ1周での第1模様構成単位4Aの総数Ntとタイヤ1周での第2模様構成単位4Bの総数Nとが、1以外の最大公約数GCDを有している。本実施形態の模様構成単位4の配列決定方法は、このような模様列5を含むトレッドパターン3を対象としている。
【0078】
本実施形態のタイヤ1の設計方法は、まず、第1模様構成単位4Aを、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1に応じた大きさBを有する第1パルス10に置換する第1工程S1が行われる。このような第1工程S1は、ピッチノイズを把握するのに役立つ。
【0079】
本実施形態のタイヤ1の設計方法は、第1工程S1の次に、第1模様列5Aを、第1パルス列11に置換する第2工程S2が行われる。第2工程S2では、第1パルス10を第1模様構成単位4Aの配列の順に、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1に応じた間隔Gを空けて並べた第1パルス列11に置換するのが望ましい。
【0080】
本実施形態のタイヤ1の設計方法は、第2工程S2の次に、第2パルス列13を取得する第3工程S3が行われる。第3工程S3では、第1パルス列11の隣接するNt/GCD個の第1パルス10を足し合わせてN/GCD個の第2パルス12にした第2パルス列13を取得するのが望ましい。このような第3工程S3は、第2模様構成単位4Bのタイヤ周方向の長さD2が、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1と異なる場合を考慮したピッチノイズを把握することができる。
【0081】
本実施形態のタイヤ1の設計方法は、第3工程S3の次に、第2パルス列13を上記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxが上記式(2)を満たすように第1模様構成単位4Aの配列を決定する第4工程S4が行われる。
【0082】
このような第4工程S4は、トレッドパターン3を考慮した振幅Fkの最大値Fmaxを上記式(2)のように規定しているので、ピッチノイズをより低減したタイヤ1を設計することができる。
【0083】
次に、
図1ないし
図7を参酌しつつ、本実施形態のタイヤ1の製造方法が説明される。
本実施形態のタイヤ1の製造方法は、トレッド部2に、第1模様列5Aと第2模様列5Bとを含むトレッドパターン3が設けられたタイヤ1を製造するための方法である。本実施形態の第1模様列5Aは、タイヤ周方向の長さD1が異なる少なくとも2種類の第1模様構成単位4Aがタイヤ周方向に配列されている。第2模様列5Bは、複数の第2模様構成単位4Bがタイヤ周方向に配列されている。
【0084】
本実施形態では、タイヤ1周での第1模様構成単位4Aの総数Ntとタイヤ1周での第2模様構成単位4Bの総数Nとが、1以外の最大公約数GCDを有している。本実施形態の模様構成単位4の配列決定方法は、このような模様列5を含むトレッドパターン3を対象としている。
【0085】
本実施形態のタイヤ1の製造方法は、まず、第1模様構成単位4Aを、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1に応じた大きさBを有する第1パルス10に置換する第1工程S1が行われる。このような第1工程S1は、ピッチノイズを把握するのに役立つ。
【0086】
本実施形態のタイヤ1の製造方法は、第1工程S1の次に、第1模様列5Aを、第1パルス列11に置換する第2工程S2が行われる。第2工程S2では、第1パルス10を第1模様構成単位4Aの配列の順に、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1に応じた間隔Gを空けて並べた第1パルス列11に置換するのが望ましい。
【0087】
本実施形態のタイヤ1の製造方法は、第2工程S2の次に、第2パルス列13を取得する第3工程S3が行われる。第3工程S3では、第1パルス列11の隣接するNt/GCD個の第1パルス10を足し合わせてN/GCD個の第2パルス12にした第2パルス列13を取得するのが望ましい。このような第3工程S3は、第2模様構成単位4Bのタイヤ周方向の長さD2が、第1模様構成単位4Aのタイヤ周方向の長さD1と異なる場合を考慮したピッチノイズを把握することができる。
【0088】
本実施形態のタイヤ1の製造方法は、第3工程S3の次に、第2パルス列13を上記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkの最大値Fmaxが上記式(2)を満たすような第1模様列5Aを形成する第4工程S4が行われる。
【0089】
このような第4工程S4は、トレッドパターン3を考慮した振幅Fkの最大値Fmaxを上記式(2)のように規定しているので、ピッチノイズをより低減したタイヤ1を製造することができる。
【0090】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例】
【0091】
図1に示された模様構成単位の配列を有するタイヤが表1及び表2の仕様に基づき試作された。
【表1】
【0092】
試作されたタイヤを実車の全輪に装着して、車内騒音試験が音圧試験及び官能試験として実施された。試作タイヤの共通仕様と試験方法は、以下のとおりである。
【0093】
<共通仕様>
タイヤサイズ:215/60R16 95T
リムサイズ:16×6.5J
空気圧:230kPa
第1模様構成単位の総数Nt:72
第1模様構成単位の種類数m:5種類
【0094】
<音圧試験>
試作タイヤが全輪に装着された国産大型乗用車を用いて、ロードノイズ計測用のテストコースを時速45km、時速60km及び時速120kmで走行したときの車内音の音圧が測定された。結果は、比較例を100とする指数であり、数値が小さいほど音圧が小さく、騒音性能に優れていることを示す。
【0095】
<官能試験>
試作タイヤが全輪に装着された国産大型乗用車を用いて、ロードノイズ計測用のテストコースを時速45km、時速60km及び時速120kmで走行したときの車内音が、テストドライバーの官能により評価された。結果は、10点法で評価され、数値が大きいほど、車内騒音が小さく、騒音性能に優れていることを示す。
【0096】
【0097】
試験の結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに対して、騒音性能に優れており、ピッチノイズを低減していることが確認された。
【符号の説明】
【0098】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 トレッドパターン
4 模様構成単位
5 模様列
10 パルス
11 第1パルス列
12 第2パルス列
13 第3パルス列