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特許7497595媒体搬送装置及びこれを用いた媒体処理装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】媒体搬送装置及びこれを用いた媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240604BHJP
   B65H 23/032 20060101ALI20240604BHJP
   B65H 5/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G03G15/16 103
B65H23/032
B65H5/00 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020058625
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157103
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】松下 薫
(72)【発明者】
【氏名】金山 清俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 響
(72)【発明者】
【氏名】上山 俊彦
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-003174(JP,A)
【文献】特開2007-011107(JP,A)
【文献】特開2002-055545(JP,A)
【文献】特開平06-110338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H5/00
5/04
5/08-5/20
5/24-5/38
23/00-23/16
23/24-23/34
27/00
29/52
G03G13/02
13/14-13/16
15/02
15/14-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が保持された画像保持手段に対向して設けられ、媒体を搬送する循環移動可能な搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの一部を張架して前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間に前記媒体を挟持して搬送し且つ前記画像保持手段に保持された画像を前記媒体に転移させる第1の張架ロールと、
前記搬送ベルトのうち、前記第1の張架ロールによる張架部位から前記媒体の搬送方向下流側に位置する部位を張架する第2の張架ロールと、
前記第1の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間の接触域の長手方向に沿う接触状態を調整する接触調整手段と、
前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸間距離を一定に保ち、前記第2の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記第1の張架ロールに対する前記第2の張架ロールの姿勢を調整する姿勢調整手段と、
備え、
前記姿勢調整手段は、前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの間の両端部に設けられ、両者の回転動作を許容して両者の軸間距離を一定に保つ位置拘束機構を備え、
前記位置拘束機構は、前記第1の張架ロール及び前記第2の張架ロールの両端に同軸に設けられた規制ロールと、前記規制ロール間に介在して接触配置される間隔調整ロールと、前記規制ロール及び前記間隔調整ロールを、各軸心が直線状に配置されるように回転可能に保持する保持枠と、を備えていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
画像が保持された画像保持手段に対向して設けられ、媒体を搬送する循環移動可能な搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの一部を張架して前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間に前記媒体を挟持して搬送し且つ前記画像保持手段に保持された画像を前記媒体に転移させる第1の張架ロールと、
前記搬送ベルトのうち、前記第1の張架ロールによる張架部位から前記媒体の搬送方向下流側に位置する部位を張架する第2の張架ロールと、
前記第1の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間の接触域の長手方向に沿う接触状態を調整する接触調整手段と、
前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸間距離を一定に保ち、前記第2の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記第1の張架ロールに対する前記第2の張架ロールの姿勢を調整する姿勢調整手段と、
前記搬送ベルトよりも前記媒体の搬送方向下流側に前記媒体を除電する除電手段と、
を備え、
前記除電手段は前記第2の張架ロールの揺動に追従して移動することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
画像が保持された画像保持手段に対向して設けられ、媒体を搬送する循環移動可能な搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの一部を張架して前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間に前記媒体を挟持して搬送し且つ前記画像保持手段に保持された画像を前記媒体に転移させる第1の張架ロールと、
前記搬送ベルトのうち、前記第1の張架ロールによる張架部位から前記媒体の搬送方向下流側に位置する部位を張架する第2の張架ロールと、
前記第1の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間の接触域の長手方向に沿う接触状態を調整する接触調整手段と、
前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸間距離を一定に保ち、前記第2の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記第1の張架ロールに対する前記第2の張架ロールの姿勢を調整する姿勢調整手段と、
前記搬送ベルトよりも前記媒体の搬送方向下流側に前記媒体を案内する案内手段と、
を備え、
前記案内手段は前記第2の張架ロールの揺動に追従して移動することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
画像が保持された画像保持手段に対向して設けられ、媒体を搬送する循環移動可能な搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの一部を張架して前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間に前記媒体を挟持して搬送し且つ前記画像保持手段に保持された画像を前記媒体に転移させる第1の張架ロールと、
前記搬送ベルトのうち、前記第1の張架ロールによる張架部位から前記媒体の搬送方向下流側に位置する部位を張架する第2の張架ロールと、
前記第1の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間の接触域の長手方向に沿う接触状態を調整する接触調整手段と、
前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸間距離を一定に保ち、前記第2の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記第1の張架ロールに対する前記第2の張架ロールの姿勢を調整する姿勢調整手段と、
備え、
前記第2の張架ロールは高抵抗体を介して接地され、前記高抵抗体への接続部は前記第2の張架ロールの揺動に追従して移動することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
画像が保持された画像保持手段に対向して設けられ、媒体を搬送する循環移動可能な搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの一部を張架して前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間に前記媒体を挟持して搬送し且つ前記画像保持手段に保持された画像を前記媒体に転移させる第1の張架ロールと、
前記搬送ベルトのうち、前記第1の張架ロールによる張架部位から前記媒体の搬送方向下流側に位置する部位を張架する第2の張架ロールと、
前記第1の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間の接触域の長手方向に沿う接触状態を調整する接触調整手段と、
前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸間距離を一定に保ち、前記第2の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記第1の張架ロールに対する前記第2の張架ロールの姿勢を調整する姿勢調整手段と、
前記搬送ベルトのうち前記第1の張架ロールに張架されている部位に前記搬送ベルトを清掃する清掃手段と、を備え、
前記清掃手段は前記第1の張架ロールの揺動に追従して移動することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の媒体搬送装置において、
前記接触調整手段は、前記第1の張架ロールの前記軸方向他端を対向する前記画像保持手段側に向けて揺動させる変位機構を備えていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項に記載の媒体搬送装置において、
前記変位機構は、前記第1の張架ロールの前記軸方向他端を回転可能に保持する保持部材を偏心回転部材を介して直線的に進退させることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項8】
請求項に記載の媒体搬送装置において、
前記姿勢調整手段は、前記位置拘束機構と、前記第1の張架ロールの前記軸方向他端を支点として前記第2の張架ロールの前記軸方向他端を揺動させる変位機構と、を備えていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項9】
請求項に記載の媒体搬送装置において、
前記変位機構は、前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸中心を結ぶ基準線に対して略直交する方向に対して前記第2の張架ロールの軸方向他端を進退させることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項10】
請求項乃至のいずれかに記載の媒体搬送装置において、
前記搬送ベルト、第1の張架ロール及び第2の張架ロールは固定フレームに対して揺動可能な揺動フレームに搭載され、前記揺動フレームに前記第2の張架ロールの揺動に追従して移動する各要素が設けられていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項11】
請求項に記載の媒体搬送装置において、
前記清掃手段の清掃筐体は予め決められ支点を中心に前記第1の張架ロールの揺動に追従して移動することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項12】
画像を保持する画像保持手段と、
前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段に保持された画像を転移して搬送する請求項1乃至11のいずれかに記載の媒体搬送装置と、
を備えたことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の媒体処理装置において、
前記画像保持手段に対して前記媒体搬送装置を接離する接離手段を備えていることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項14】
請求項12に記載の媒体処理装置において、
前記画像保持手段は、前記媒体搬送装置の前記接触調整手段とは別に前記接触域の接触状態を調整する第2の接触調整手段を有することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項15】
請求項14に記載の媒体処理装置において、
前記媒体搬送装置は、前記画像保持手段よりも下方に配置され、媒体処理装置筐体に対して引出可能に設けられていることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項16】
請求項14に記載の媒体処理装置において、
前記接触域を挟んで対向する前記媒体搬送装置側の対向構成部材が前記画像保持手段側の対向構成部材に比べて低硬度であることを特徴とする媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置及びこれを用いた媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の媒体搬送装置としては、特許文献1乃至3に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、一対のロールに弾性を有する二次転写ベルトを張架し、一方のロールの他方のロールに対する傾斜角度を調整手段で調整し、用紙の搬送方向を調整することで画像平行度を調整可能とする画像形成装置が開示されている。
特許文献2には、弾性転写ロールの軸方向両端での食い込み量に差を付けることにより弾性転写ロールにねじれを発生させ、記録材の搬送方向に直交する幅方向に対する画像の平行度を調整する画像平行度調整機構を備えた画像形成装置が開示されている。
特許文献3には、二次転写搬送ベルトにベルトウォークが発生した場合、駆動ロールの回転軸を中心として剥離ロールのアウト側端部を揺動させることにより、二次転写ベルトにねじりによる付勢力を与え、ベルトウォークとは逆側に二次転写搬送ベルトを揺動させる画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-267704号公報(発明を実施するための最良の形態,図3
【文献】特開2006-276294号公報(発明を実施するための最良の形態,図1
【文献】特開2007-11107号公報(発明を実施するための最良の形態,図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、画像が転移される媒体を搬送ベルトで搬送する態様において、媒体上に転移する画像の平行度調整及び媒体の斜行調整を両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、画像が保持された画像保持手段に対向して設けられ、媒体を搬送する循環移動可能な搬送ベルトと、前記搬送ベルトの一部を張架して前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間に前記媒体を挟持して搬送し且つ前記画像保持手段に保持された画像を前記媒体に転移させる第1の張架ロールと、前記搬送ベルトのうち、前記第1の張架ロールによる張架部位から前記媒体の搬送方向下流側に位置する部位を張架する第2の張架ロールと、前記第1の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間の接触域の長手方向に沿う接触状態を調整する接触調整手段と、前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸間距離を一定に保ち、前記第2の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記第1の張架ロールに対する前記第2の張架ロールの姿勢を調整する姿勢調整手段と、を備え、前記姿勢調整手段は、前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの間の両端部に設けられ、両者の回転動作を許容して両者の軸間距離を一定に保つ位置拘束機構を備え、前記位置拘束機構は、前記第1の張架ロール及び前記第2の張架ロールの両端に同軸に設けられた規制ロールと、前記規制ロール間に介在して接触配置される間隔調整ロールと、前記規制ロール及び前記間隔調整ロールを、各軸心が直線状に配置されるように回転可能に保持する保持枠と、を備えていることを特徴とする媒体搬送装置である。
請求項2に係る発明は、画像が保持された画像保持手段に対向して設けられ、媒体を搬送する循環移動可能な搬送ベルトと、前記搬送ベルトの一部を張架して前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間に前記媒体を挟持して搬送し且つ前記画像保持手段に保持された画像を前記媒体に転移させる第1の張架ロールと、前記搬送ベルトのうち、前記第1の張架ロールによる張架部位から前記媒体の搬送方向下流側に位置する部位を張架する第2の張架ロールと、前記第1の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間の接触域の長手方向に沿う接触状態を調整する接触調整手段と、前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸間距離を一定に保ち、前記第2の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記第1の張架ロールに対する前記第2の張架ロールの姿勢を調整する姿勢調整手段と、前記搬送ベルトよりも前記媒体の搬送方向下流側に前記媒体を除電する除電手段と、を備え、前記除電手段は前記第2の張架ロールの揺動に追従して移動することを特徴とする媒体搬送装置である。
請求項3に係る発明は、画像が保持された画像保持手段に対向して設けられ、媒体を搬送する循環移動可能な搬送ベルトと、前記搬送ベルトの一部を張架して前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間に前記媒体を挟持して搬送し且つ前記画像保持手段に保持された画像を前記媒体に転移させる第1の張架ロールと、前記搬送ベルトのうち、前記第1の張架ロールによる張架部位から前記媒体の搬送方向下流側に位置する部位を張架する第2の張架ロールと、前記第1の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間の接触域の長手方向に沿う接触状態を調整する接触調整手段と、前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸間距離を一定に保ち、前記第2の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記第1の張架ロールに対する前記第2の張架ロールの姿勢を調整する姿勢調整手段と、前記搬送ベルトよりも前記媒体の搬送方向下流側に前記媒体を案内する案内手段と、を備え、前記案内手段は前記第2の張架ロールの揺動に追従して移動することを特徴とする媒体搬送装置である。
請求項4に係る発明は、画像が保持された画像保持手段に対向して設けられ、媒体を搬送する循環移動可能な搬送ベルトと、前記搬送ベルトの一部を張架して前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間に前記媒体を挟持して搬送し且つ前記画像保持手段に保持された画像を前記媒体に転移させる第1の張架ロールと、前記搬送ベルトのうち、前記第1の張架ロールによる張架部位から前記媒体の搬送方向下流側に位置する部位を張架する第2の張架ロールと、前記第1の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間の接触域の長手方向に沿う接触状態を調整する接触調整手段と、前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸間距離を一定に保ち、前記第2の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記第1の張架ロールに対する前記第2の張架ロールの姿勢を調整する姿勢調整手段と、を備え、前記第2の張架ロールは高抵抗体を介して接地され、前記高抵抗体への接続部は前記第2の張架ロールの揺動に追従して移動することを特徴とする媒体搬送装置である。
請求項5に係る発明は、画像が保持された画像保持手段に対向して設けられ、媒体を搬送する循環移動可能な搬送ベルトと、前記搬送ベルトの一部を張架して前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間に前記媒体を挟持して搬送し且つ前記画像保持手段に保持された画像を前記媒体に転移させる第1の張架ロールと、前記搬送ベルトのうち、前記第1の張架ロールによる張架部位から前記媒体の搬送方向下流側に位置する部位を張架する第2の張架ロールと、前記第1の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記画像保持手段と前記搬送ベルトとの間の接触域の長手方向に沿う接触状態を調整する接触調整手段と、前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸間距離を一定に保ち、前記第2の張架ロールの軸方向一端を支点として他端を揺動させ、前記第1の張架ロールに対する前記第2の張架ロールの姿勢を調整する姿勢調整手段と、前記搬送ベルトのうち前記第1の張架ロールに張架されている部位に前記搬送ベルトを清掃する清掃手段と、を備え、前記清掃手段は前記第1の張架ロールの揺動に追従して移動することを特徴とする媒体搬送装置である。
【0006】
請求項に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに係る媒体搬送装置において、前記接触調整手段は、前記第1の張架ロールの前記軸方向他端を対向する前記画像保持手段側に向けて揺動させる変位機構を備えていることを特徴とする媒体搬送装置である。
請求項に係る発明は、請求項に係る媒体搬送装置において、前記変位機構は、前記第1の張架ロールの前記軸方向他端を回転可能に保持する保持部材を偏心回転部材を介して直線的に進退させることを特徴とする媒体搬送装置である。
請求項に係る発明は、請求項1に係る媒体搬送装置において、前記姿勢調整手段は、前記位置拘束機構と、前記第1の張架ロールの前記軸方向他端を支点として前記第2の張架ロールの前記軸方向他端を揺動させる変位機構と、を備えていることを特徴とする媒体搬送装置である
請求項に係る発明は、請求項に係る媒体搬送装置において、前記変位機構は、前記第1の張架ロールと前記第2の張架ロールとの軸中心を結ぶ基準線に対して略直交する方向に対して前記第2の張架ロールの軸方向他端を進退させることを特徴とする媒体搬送装置である
請求項10に係る発明は、請求項乃至のいずれかに係る媒体搬送装置において、前記搬送ベルト、第1の張架ロール及び第2の張架ロールは固定フレームに対して揺動可能な揺動フレームに搭載され、前記揺動フレームに前記第2の張架ロールの揺動に追従して移動する各要素が設けられていることを特徴とする媒体搬送装置である
請求項11に係る発明は、請求項に係る媒体搬送装置において、前記清掃手段の清掃筐体は予め決められ支点を中心に前記第1の張架ロールの揺動に追従して移動することを特徴とする媒体搬送装置である。
【0007】
請求項12に係る発明は、画像を保持する画像保持手段と、前記画像保持手段に対向して配置され、前記画像保持手段に保持された画像を転移して搬送する請求項1乃至11のいずれかに係る媒体搬送装置と、を備えたことを特徴とする媒体処理装置である。
請求項13に係る発明は、請求項12に係る媒体処理装置において、前記画像保持手段に対して前記媒体搬送装置を接離する接離手段を備えていることを特徴とする媒体処理装置である。
請求項14に係る発明は、請求項12に係る媒体処理装置において、前記画像保持手段は、前記媒体搬送装置の前記接触調整手段とは別に前記接触域の接触状態を調整する第2の接触調整手段を有することを特徴とする媒体処理装置である。
請求項15に係る発明は、請求項14に係る媒体処理装置において、前記媒体搬送装置は、前記画像保持手段よりも下方に配置され、媒体処理装置筐体に対して引出可能に設けられていることを特徴とする媒体処理装置である。
請求項16に係る発明は、請求項14に係る媒体処理装置において、前記接触域を挟んで対向する前記媒体搬送装置側の対向構成部材が前記画像保持手段側の対向構成部材に比べて低硬度であることを特徴とする媒体処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1乃至5に係る発明によれば、いずれも画像が転移される媒体を搬送ベルトで搬送する態様において、媒体上に転移する画像の平行度調整及び媒体の斜行調整を両立することができるという基本的効果を奏する。
これに加えて、請求項1乃至5のいずれかに係る発明は以下のような特有の効果を奏する。
請求項1に係る発明によれば、姿勢調整手段の一要素である位置拘束機構を構築するに当たり、第1の張架ロール及び第2の張架ロールの一定の軸間距離、並びに、両者の回転動作性を容易に両立することができる。
請求項2に係る発明によれば、第2の張架ロールが揺動したとしても、搬送ベルトと除電手段との相対位置関係を保つことができる。
請求項3に係る発明によれば、第2の張架ロールが揺動したとしても、搬送ベルトと案内手段との相対位置関係を保つことができる。
請求項4に係る発明によれば、第2の張架ロールが揺動したとしても、第2の張架ロールと高抵抗体への接続部との相対位置関係を保つことができる。
請求項5に係る発明によれば、第1の張架ロールが揺動したとしても、搬送ベルトと清掃手段との相対位置関係を保つことができる。
請求項に係る発明によれば、接触調整手段を容易に具現化することができる。
請求項に係る発明によれば、画像保持手段と搬送ベルトとの間の接触状態を段階的に微調整することができる。
請求項に係る発明によれば、姿勢調整手段を容易に具現化することができる
請求項に係る発明によれば、姿勢調整手段の一要素である変位機構を構築するに当たり、各張架ロールの軸間距離を保ちつつ第2の張架ロールの姿勢を容易に調整することができる
請求項10に係る発明によれば、第2の張架ロールが揺動したとしても、除電手段、案内手段又は高抵抗体への接続部と第2の張架ロールとの相対位置関係を保つ構成を容易に提供することができる
請求項11に係る発明によれば、第1の張架ロールが揺動したとしても、搬送ベルトと清掃手段との相対位置関係を保つ構成を容易に提供することができる。
請求項12に係る発明によれば、画像が転移される媒体を搬送ベルトで搬送する態様において、媒体上に転移する画像の平行度調整及び媒体の斜行調整を両立することが可能な媒体搬送装置を含む媒体処理装置を構築することができる。
請求項13に係る発明によれば、画像保持手段と媒体搬送装置とを必要に応じて接離することができる。
請求項14に係る発明によれば、第2の接触調整手段を有しない態様に比べて、種類の異なる媒体を使用するに当たって、画像保持手段と媒体搬送手段との間の接触域の接触状態を大きく切り替えることができる。
請求項15に係る発明によれば、媒体搬送装置と画像保持手段との間の接触域の接触状態を調整するに当たって、画像保持手段よりも下方に位置する媒体搬送装置を引き出すことで、接触調整手段による細かい調整作業を簡単に実施することができる。
請求項16に係る発明によれば、媒体搬送装置と画像保持手段との間の接触域の接触状態を調整するに当たって、画像保持手段に比べて硬度条件の低い媒体搬送装置に対し、接触調整手段による細かい調整作業を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は本発明が適用された媒体搬送装置を含む媒体処理装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す媒体搬送装置の要部を示す説明図、(c)は接触調整手段、姿勢調整手段の設置例を示す説明図である。
図2】実施の形態1に係る媒体処理装置の一例である画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
図3】実施の形態1に係る二次転写装置周りの構成要素を模式的に示す説明図である。
図4】実施の形態1に係る二次転写装置周りの構成を示す説明図である。
図5】実施の形態1で用いられるニップ圧切替機構の詳細を示す説明図である。
図6】実施の形態1で用いられる二次転写装置のベルト転写モジュールの構成例を示す斜視説明図である。
図7図6に示すベルト転写モジュールの揺動パーツを示す斜視説明図である。
図8図6に示すベルト転写モジュールの固定パーツを示す斜視説明図である。
図9図7に示す揺動パーツのうち転写ベルトユニットとクリーニングユニットとの関係を示す斜視説明図である。
図10図7に示す揺動パーツのうち転写ベルトユニットの構成例を示す説明図である。
図11】(a)は転写ベルトユニットの位置拘束機構の一例を示す説明図、(b)は転写ベルトユニットの位置拘束機構による拘束状態を模式的に示す説明図、(c)は転写ベルトユニットの第2の張架ロールである剥離ロールの挙動を示す説明図である。
図12】実施の形態1で用いられるリトラクト機構の動作例(1)を示す説明図である。
図13】同リトラクト機構の動作例(2)を示す説明図である。
図14】実施の形態1で用いられるニップ圧調整機構及び姿勢調整機構の動作例(1)を示す説明図である。
図15】同ニップ圧調整機構及び姿勢調整機構の動作例(2)を示す説明図である。
図16】実施の形態1に係る二次転写装置がセット位置に位置するとき、転写ベルトユニットと周辺部品との相対位置関係を示す説明図である。
図17】同二次転写装置がリトラクト位置に退避したとき、転写ベルトユニットと周辺部品との相対位置関係を示す説明図である。
図18】同二次転写装置がセット位置に位置するとき、転写ベルトユニットの周辺部品の挙動を示す説明図である。
図19】同二次転写装置がリトラクト位置に退避したとき、転写ベルトユニットの周辺部品の挙動を示す説明図である。
図20】(a)は媒体がエンボス紙等の特殊媒体である条件での二次転写域のニップ圧の選定状態を示す説明図、(b)は媒体が通常媒体である条件での二次転写域のニップの切替状態を示す説明図である。
図21】(a)はニップ圧調整機構の動作例を模試的に示す説明図、(b)はニップ圧調整機構によるニップ圧の調整手法を示す説明図である。
図22】(a)は転写ベルトユニットの構成例を模式的に示す説明図、(b)は姿勢調整機構による姿勢調整時の挙動を示す説明図、(c)は比較の形態1に係る二次転写装置で用いられるベルト転写ユニットの姿勢調整時の挙動を示す説明図、(d)は比較の形態1に係るベルト転写ユニットによる姿勢調整時の転写ベルトの張架状態を示す説明図である。
図23】比較の形態2に係る二次転写域でのニップ圧調整機構の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明か適用された媒体処理装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
同図において、媒体処理装置は、画像Gを保持する画像保持手段10と、画像保持手段10に対向して配置され、画像保持手段10に保持された画像Gを転移して搬送する媒体搬送装置1と、を備えたものである。
ここで、媒体搬送装置1は、図1(a)~(c)に示すように、画像Gが保持された画像保持手段10に対向して設けられ、媒体Sを搬送する弾性を有する循環移動可能な搬送ベルト2と、搬送ベルト2の一部を張架して画像保持手段10に対向して配置され、画像保持手段10と搬送ベルト2との間に媒体Sを挟持して搬送し且つ画像保持手段10に保持された画像を媒体Sに転移させる第1の張架ロール3と、搬送ベルト2のうち、第1の張架ロール3による張架部位から媒体Sの搬送方向下流側に位置する部位を張架する第2の張架ロール4と、第1の張架ロール3の軸方向一端を支点として他端を揺動させ、画像保持手段10と搬送ベルト2との間の接触域CNの長手方向に沿う接触状態を調整する接触調整手段5と、第1の張架ロール3と第2の張架ロール4との軸間距離Lを一定に保ち、第2の張架ロール4の軸方向一端を支点として他端を揺動させ、第1の張架ロール3に対する第2の張架ロール4の姿勢を調整する姿勢調整手段6と、を備えたものである。
【0011】
このような技術的手段において、媒体搬送装置1は、画像保持手段10に保持された画像Gを転移して搬送するものを広く含む。
そして、画像Gの転移方式については、静電転写に限らず、媒体と接触して転移する方式を広く含むものとする。また、画像保持手段10は、媒体Sに転移する前の画像を保持するものであれば、感光体、誘電体、中間転写体に限らず、広く含む。
更に、搬送ベルト2は、接触調整手段5や姿勢調整手段6による張架ロール3,4の揺動に追従変形する上で主として弾性を有するベルト部材が好ましいが、搬送ベルト2は弾性を有さずに、第1の張架ロール3、第2の張架ロール4に弾性を具備させるようにする態様も含む。
更にまた、搬送ベルト2は第1の張架ロール3、第2の張架ロール4のみで張架する態様に限らず、別の張架ロールを用いた態様も含む。
また、第1の張架ロール3は通常駆動ロールとして用いられることが多いが、これに限らず、他の張架ロールを駆動ロールとしてもよい。
また、第1の張架ロール3は画像保持手段10との間で媒体Sを挟持して搬送するほか、画像保持手段10に保持される画像Gを転移させる機能(例えば転写電界形成用の電極機能)を備えていることを要する。
更に、第2の張架ロール4は搬送ベルト2から媒体Sを剥離し易くするという観点からは第1の張架ロール3よりも小径のロールを用いることが好ましい。
また、接触調整手段5は画像保持手段10と搬送ベルト2との間の接触域CNの長手方向に沿う接触状態、具体的には搬送ベルト2の食込量を調整し、例えば接触域CNにおける接触圧に片寄りが生じないように略均等に調整するようにすればよい。
更に、姿勢調整手段6は、接触調整手段5による調整と生かした状態で、搬送ベルトの斜行を調整することが可能である。
【0012】
次に、本実施の形態に係る媒体搬送装置の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、接触調整手段5の代表的態様としては、図1(b)に示すように、第1の張架ロール3の軸方向他端を対向する画像保持手段10側に向けて揺動させる変位機構5aを備えている態様が挙げられる。
本例において、接触調整手段5の好ましい態様としては、変位機構5aは、第1の張架ロール3の軸方向他端を回転可能に保持する保持部材を偏心回転部材を介して直線的に進退させる態様が挙げられる。本例は、変位機構5aとして偏心回転部材(カム部材)を利用した態様であり、偏心回転部材の偏心量を連続的あるいは段階的に変化させることで、第1の張架ロール3の軸方向他端の位置を連続的あるいは段階的に変位させることが可能である。
【0013】
また、姿勢調整手段6の代表的態様としては、第1の張架ロール3と第2の張架ロール4との間の両端部に設けられ、両者の回転動作を許容して両者の軸間距離Lを一定に保つ位置拘束機構6aと、第1の張架ロール3の軸方向他端を支点として第2の張架ロール4の軸方向他端を揺動させる変位機構6bと、を備えている態様が挙げられる。
ここで、姿勢調整手段6の好ましい態様としては、位置拘束機構6aが、第1の張架ロール3及び第2の張架ロール4の両端に同軸に設けられた図示外の規制ロールと、規制ロール間に介在して接触配置される図示外の間隔調整ロールと、規制ロール及び間隔調整ロールを、各軸心が直線状に配置されるように回転可能に保持する図示外の保持枠と、を備えた態様である、あるいは、変位機構6bが、第1の張架ロール3と第2の張架ロール4との軸中心を結ぶ基準線に対して略直交する方向に対して第2の張架ロール4の軸方向他端を進退させる態様であるものが挙げられる。
【0014】
また、媒体搬送装置1が周辺部品を含む場合には、周辺部品との相対位置関係を保つことが好ましい。
例えば除電手段11を含む場合の好ましい態様としては、搬送ベルト2よりも媒体Sの搬送方向下流側に媒体Sを除電する除電手段11を備え、除電手段11は第2の張架ロール4の揺動に追従して移動するようにすればよい。本例は、第2の張架ロール4の揺動に除電手段11を追従移動させる態様である。
また、案内手段12を含む場合の好ましい態様としては、搬送ベルト2よりも媒体Sの搬送方向下流側に媒体Sを案内する案内手段12を備え、案内手段12は第2の張架ロール4の揺動に追従して移動するようにすればよい。本例は、第2の張架ロール4の揺動に案内手段12を追従移動させる態様である。
【0015】
更に、高抵抗体接地方式を採用する場合の好ましい態様としては、第2の張架ロール4は高抵抗体13を介して接地され、高抵抗体13への接続部は第2の張架ロール4の揺動に追従して移動するようにすればよい。本例は、第2の張架ロール4の揺動に高抵抗体13への接続部を追従移動させる態様である。
ここで、除電手段11、案内手段12及び高抵抗体接地方式を採用する場合の構成例としては、搬送ベルト2、第1の張架ロール3及び第2の張架ロール4は図示外の固定フレームに対して揺動可能な図示外の揺動フレームに搭載され、揺動フレームに除電手段11、案内手段12又は高抵抗体13への接続部が設けられている態様が挙げられる。
【0016】
また、清掃手段14を含む場合の好ましい態様としては、搬送ベルト2のうち第1の張架ロール3に張架されている部位に搬送ベルト2を清掃する清掃手段14を備え、清掃手段14は第1の張架ロール3の揺動に追従して移動するようにすればよい。本例では、清掃手段14の清掃筐体14aは予め決められ支点を中心に第1の張架ロール3の揺動に追従して移動するものが挙げられる。
更に、媒体処理装置の好ましい態様としては、画像保持手段10に対して媒体搬送装置1を接離する接離手段(図1では図示せず)を備える態様が挙げられる。接離手段は、例えば画像保持手段10と媒体搬送装置1との間で媒体詰まり(ジャム)が生じた場合に、両者を離間してジャム処理を可能とする。
【0017】
また、媒体処理装置の別の好ましい態様としては、画像保持手段10は、媒体搬送装置1の接触調整手段5による調整量よりも粗い調整量で接触域の接触状態を調整する第2の接触調整手段(図1では図示せず)を有する態様が挙げられる。
本例は、画像保持手段10と媒体搬送装置1との接触域CNの接触状態(例えばニップ圧)を調整するに当たって、画像保持手段10側の第2の接触調整手段で粗く調整し、媒体搬送装置1側で細かく調整することが可能である。
本態様においては、特に、媒体搬送装置1は、画像保持手段10よりも下方に配置され、媒体処理装置筐体(図示せず)に対して引出可能に設けられている態様が好ましい。本例では、媒体搬送装置1を引き出すことにより、媒体搬送装置1側に設けられた接触調整手段5に対して操作者が容易に操作することができ、接触域CNの接触状態を細かく調整することが可能である。
更に、本態様では、接触域CNを挟んで対向する媒体搬送装置1側の対向構成部材が画像保持手段10側の対向構成部材に比べて低硬度である態様が好ましい。ここで、媒体搬送装置1側の対向構成部材とは搬送ベルト2と第1の張架ロール3との組合せを指し、また、画像保持手段10側の対向構成部材としては例えば中間転写方式の画像保持手段10を例に挙げると、ベルト状の中間転写体と対向ロールとの組合せを指す。そして、夫々の対向構成部材の硬度とは各部材の硬度に依存するものではあるが、両方の部材の硬度が異なる場合には両方の部材の組合せを全体としてみたときの硬度を意味し、この場合には、低硬度の部材の硬度が主として寄与するものと推測される。
本例は、媒体搬送装置1側の対向構成部材の硬度が画像保持手段10側の硬度に比べて低いことから、媒体搬送装置1と画像保持手段10との間の接触域CNでの接触状態は媒体搬送装置1側の方が狂い易い傾向がある。このため、媒体搬送装置1側での接触調整手段5としては、細かい調整量で接触域CNの接触状態を微調整することが可能になる。
更に、媒体搬送装置1の低硬度の対向構成部材にあっては、経時変化や成形時の公差によっても硬度がばらつくことから、これらに対しても、接触調整手段5による微調整が有効である。
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は実施の形態1に係る媒体処理装置の一例としての画像形成装置の全体構成を示す。
-画像形成装置の全体構成-
同図において、画像形成装置20は、装置筐体21内に、複数の色成分(本実施の形態ではイエロ、マゼンタ、シアン、ブラック)画像を形成する画像形成部22(具体的には22a~22d)と、各画像形成部22にて形成された各色成分画像を順次転写(一次転写)保持するベルト状の中間転写体30と、中間転写体30上に転写された各色成分画像を媒体(例えば用紙)に二次転写(一括転写)する二次転写装置(一括転写装置)50と、二次転写された画像を媒体上に定着させる定着装置70と、二次転写域に媒体を搬送する媒体搬送系80と、を備えている。
【0019】
-画像形成部-
本実施の形態において、各画像形成部22(22a~22d)は、夫々ドラム状の感光体23を有し、各感光体23の周囲には、感光体23が帯電されるコロトロンや転写ロール等の帯電装置24、帯電された感光体23上に静電潜像が書き込まれるLED書込ヘッドなどの潜像書込み装置25、感光体23上に書き込まれた静電潜像が各色成分トナーにて現像される現像装置26、感光体23上のトナー画像が中間転写体30に転写される転写ロール等の一次転写装置27及び感光体23上の残留トナーが除去される感光体清掃装置28を夫々配設したものである。
【0020】
-中間転写体-
また、中間転写体30は、複数(本実施の形態では三つ)の張架ロール31~33に掛け渡されており、例えば張架ロール31が図示外の駆動原にて駆動される駆動ロールとして用いられ、当該駆動ロールにて循環移動するようになっている。更に、張架ロール31,33間には二次転写後の中間転写体30上の残留トナーを除去するための中間転写体清掃装置35が設けられている。
本例において、中間転写体30としては、適宜選定して差し支えないが、例えばポリイミド、ポリアミドイミド等の合成樹脂製のベルド材が用いられ、張架ロール31~33としてはウレタンゴム等の弾性材料が用いられている。
尚、中間転写体30及び張架ロール31~33は、図4に示すように、中間転写フレームに保持され、中間転写モジュールとして一体化されている。
【0021】
-二次転写装置(一括転写装置)-
更に、二次転写装置(一括転写装置)50は、媒体搬送装置としても機能するものであり、図2及び図3に示すように、複数(例えば2つ)の張架ロール52,53に転写搬送ベルト54が張架された転写ベルトユニット51を中間転写体30の表面に接触するように配置したものである。特に、本例では、転写ベルトユニット51は後述するリトラクト機構110(図6図7参照)にて退避可能に支持されており、中間転写体30に対して接離可能になっている。
ここで、転写搬送ベルト54は、ウレタンゴム等の弾性材料を用いた体積抵抗8.5~10.0logΩの半導電性の弾性ベルトであり、第1の張架ロール52を転写ロール55として構成し、この転写ロール55を転写搬送ベルト54を介して中間転写体30に二次転写域(一括転写域)TRにて圧接配置すると共に、中間転写体30の張架ロール33を転写ロールの対向電極をなす対向ロール56として使用し、第1の張架ロール52位置から第2の張架ロール53位置に向けて媒体Sの搬送経路を形成し、第2の張架ロール53を剥離ロールとして機能させるものである。
【0022】
また、本例では、第1の張架ロール52(転写ロール55として使用)は金属製シャフトの周囲に発泡ウレタンゴム等の発泡素材にカーボンブラック等が配合された弾性層を被覆した構成になっており、一方、第2の張架ロール53は例えば金属製ロールからなっている。そして、本例では、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52は直接接地されており、第2の張架ロール53は例えば500MΩの高抵抗体58(例えば500MΩ程度)を介して接地されており、転写搬送ベルト54への帯電を防止するようになっている。
特に、本例では、二次転写域TRを挟んだ対向構成部材として、転写搬送ベルト54は中間転写体30よりも低硬度、また、第1の張架ロール52(転写ロール55)は対向ロール56(張架ロール33)よりも低硬度のものが選定されている。このため、本例では、二次転写域TRを挟んだ転写ベルトユニット51側の対向構成部材(本例では、転写搬送ベルト54+第1の張架ロール52)は、中間転写モジュール側の対向構成部材(本例では、中間転写体30+対向ロール56)よりも低硬度である。
尚、本例では、第1の張架ロール52、第2の張架ロール53は同程度の径寸法のものを使用しているが、転写搬送ベルト54の下流端での媒体Sの剥離性を考慮すると、第2の張架ロール53を第1の張架ロール52よりも小径とした剥離ロールとして機能させるようにしてもよい。
更に、対向ロール56(本例では張架ロール33を兼用)には導電性の給電ロール57を介して転写電源60からの転写電圧VTRが印加されており、転写ロール55及び対向ロール56間に所定の転写電界が形成されるようになっている。
【0023】
-定着装置-
定着装置70は、図2に示すように、媒体の画像保持面側に接触して配置される駆動回転可能な加熱定着ロール71と、当該加熱定着ロール71に対向して圧接配置され、加熱定着ロール71に追従して回転する加圧定着ロール72とを有し、両定着ロール71,72間の転写領域に用紙S上に保持された画像を通過させ、当該画像を加熱加圧定着するものである。
【0024】
-媒体搬送系-
更に、媒体搬送系80は、図2及び図3に示すように、複数段(本例では二段)の媒体供給容器81,82を有し、媒体供給容器81,82のいずれかから供給される媒体Sを略鉛直方向に延びる鉛直搬送路83から略水平方向に延びる水平搬送路84を経て二次転写域TRへと至り、その後、転写された画像が保持された媒体Sを、搬送ベルト85を経由して定着装置70による定着部位に至り、装置筐体21の側方に設けられた媒体排出受け86に排出するものである。
そして更に、媒体搬送系80は、水平搬送路84のうち定着装置70の媒体搬送方向下流側に位置する部分から下方に向かって分岐する反転可能な分岐搬送路87を有し、当該分岐搬送路87で反転された媒体Sを戻し搬送路88を経て再び鉛直搬送路83から水平搬送路84へと戻し、二次転写域TRにて媒体Sの裏面に画像を転写し、定着装置70を経て媒体排出受け86へ排出するようになっている。
また、媒体搬送系80には媒体Sの位置を整合して二次転写域TRに供給する位置整合ロール90のほか、各搬送路83,84,87,88には適宜数の搬送ロール91が設けられている。
更にまた、装置筐体21の媒体排出受け86の反対側には水平搬送路84に向かって手差し媒体が供給可能な手差し媒体供給器95が設けられている。
【0025】
-転写ベルトユニット周りの構成例-
<ベルト転写モジュール>
本例において、転写ベルトユニット51には、図6図7及び図9に示すように、転写搬送ベルト54のうち第1の張架ロール52(転写ロール55)に対応した箇所に清掃ユニット170が設けられている。
本例では、転写ベルトユニット51及び清掃ユニット170は、固定パーツ202に対して揺動可能な揺動パーツ201として機能するもので、揺動パーツ201及び固定パーツ202の両者を含めてベルト転写モジュール200と称することとする。
そして、本例では、ベルト転写モジュール200は、装置筐体21に対してフロント側から引出可能に搭載され、例えばメンテナンス時には装置筐体21から引出してメンテナンスなどを行うようになっている。
ここで、図6にベルト転写モジュール200の全体構成を示し、図7に揺動パーツ201を、図8に固定パーツ202の外観を夫々示す。
【0026】
<揺動パーツ>
本例において、揺動パーツ201である転写ベルトユニット51は、図7図9及び図10に示すように、転写搬送ベルト54等の要素部品を一体的に保持するベルトユニット筐体510を有し、このベルトユニット筐体510は固定パーツ202に対して揺動可能に支持されている。
具体的は、第1の張架ロール52を駆動ロールとして用いられ、第2の張架ロール53が従動ロールとして用いられている。そして、第2の張架ロール53は第1の張架ロール52の回転軸52aを揺動支点として揺動可能に支持されている。
【0027】
また、揺動パーツ201である清掃ユニット170は、図7図9及び図10並びに図16乃至図19に示すように、転写搬送ベルト54上の残留物を収容する清掃ユニット筐体171を有し、清掃ユニット筐体171には、支持ブラケット172を介して清掃ブレード173が設けられ、清掃ブレード173の先端部が転写搬送ベルト54の移動方向に交差する幅方向に沿って接触して配置されている。
ここで、図16図17はベルト転写モジュール200の幅方向手前側にて清掃ユニット170を切断した断面を示し、図16はリトラクト機構110によるリトラクト時、また、図17はリトラクト機構110によるリトラクト解除時(コンタクト時)を示す。更に、図18図19はベルト転写モジュール200を幅方向の略中央部分で切断した断面を示し、図18はリトラクト機構110によるリトラクト時、また、図19はリトラクト機構110によるリトラクト解除時(コンタクト時)を示す。
更に、清掃ユニット筐体171は、固定パーツ202の固定筐体210に対して転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52の軸方向と平行に延びるように固定された固定軸175を揺動中心として揺動可能に支持されており、また、清掃ユニット筐体171の一部は転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52の両端回転軸52aに対して回転可能に保持されている。
更にまた、清掃ユニット筐体171の支持ブラケット172と固定パーツ202の固定筐体210との間には付勢スプリング176が設けられ、付勢スプリング176の付勢力によって清掃ブレード173が転写搬送ベルト54との接触状態を保つようになっている。
また、符号177は清掃ユニット筐体171の長手方向略中央に設けられ、固定軸175が貫通する貫通孔を有して固定軸175を支えるサポートホルダである。このため、清掃ユニット筐体171は、図9に示すように、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52の両端回転軸52a位置と、サポートホルダ177と固定軸175との接触部との三点で位置拘束されるようになっている。
【0028】
また、揺動パーツ201に搭載される周辺部品としては以下のものがある。
揺動パーツ201は、図6及び図7に示すように、転写ベルトユニット51の転写搬送ベルト54の搬送方向下流側には除電手段としての除電部材(例えば除電針)180や、媒体を案内搬送する案内手段としての板状の案内シュート185が設けられ、転写ベルトユニット51のベルトユニット筐体510(図10参照)に対して除電部材180、案内シュート185が一体的に取り付けられている。
また、本例では、第2の張架ロール53は、図6及び図14に示すように、ベルトユニット筐体510に対して回転可能に支持されているが、高抵抗体58を介した接地方式を採用しているため、ベルトユニット筐体510には高抵抗体58との接続部として金属製板材からなる接点190が設けられ、この接点190には第2の張架ロール53の回転軸53aが接触して配置されている。
【0029】
<固定パーツ>
また、固定パーツ202は、図6及び図8に示すように、揺動パーツ201を搭載可能とする収容受部211が確保された固定筐体210を有し、更に、清掃ユニット170を予め決められた揺動支点を中心に揺動可能にするために、清掃ユニット170が搭載される領域には固定筐体210の両側壁を横切るように固定軸175が設けられている。
また、固定筐体210の両側壁上部には、中間転写フレーム34の位置決め孔(図示せず)に対して位置決めする複数の位置決めピン214が設けられている。
【0030】
-二次転写装置周りに設置される各種機構-
本実施の形態において、二次転写装置50周りには、図3に示すように、二次転写装置50を二次転写域TRからリトラクトするリトラクト機構110と、二次転写装置50の二次転写域TRのニップ圧(接触圧)Npを媒体Sの種類によって切り替えるニップ圧切替機構120と、二次転写域TRのニップ圧Npを微調整するニップ圧調整機構130と、転写ベルトユニット51の姿勢を調整する姿勢調整機構150とが設けられている。
また、符号101は媒体Sの種類を判別する媒体判別器であり、ユーザが指定した媒体を判別するようにする、あるいは、媒体供給容器81,82に収容されている媒体や搬送中の媒体を図示外の検出器で検出することで、その検出信号に基づいて媒体Sの種類を判別するものがある。
更に、制御装置100は、媒体判別器101からの判別信号を受け、例えばニップ圧切替機構120に制御信号を送出するようになっている。
また、制御装置100は、二次転写域TRでの媒体詰まり(ジャム)を検出した場合には、リトラクト機構110によるリトラクト動作が可能になるように制御信号を送出する。
尚、本例では、ニップ圧調整機構130及び姿勢調整機構150は、後述するように、ユーザが手動若しくは治具を用いて調整するため、制御装置100による制御は行われない。
【0031】
-リトラクト機構-
本例において、リトラクト機構110は、図6乃至図8に示すように、ベルト転写モジュール200の固定パーツ202の固定筐体210の両側壁外側に夫々設けられている。
本例において、リトラクト機構110は、三方向に延びる腕部112~114を有するリンクアーム111を清掃ユニット170の固定軸175を揺動支点Oaとして揺動可能に夫々支持し、リンクアーム111の三つの腕部112~114のうち、固定筐体210の外側から見て下方側に延びる第1の腕部112に付勢スプリング115を引っ掛けることでリンクアーム111を反時計回り方向(又は時計回り方向)に付勢するものである。そして、付勢スプリング115の付勢方向に抗した方向に向かって延びる第2の腕部113には例えば回転コロからなるカムフォロワ117が設けられ、このカムフォロワ117の下側には回転偏心部材であるリトラクトカム116のカム面116aが押し当てられ、更に、リンクアーム111のうちリトラクトカム116とは揺動支点Oaを挟んだ反対側に延びる第3の腕部114には転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52(転写ロール55)の回転軸52aが回転可能に支持されている。
尚、本例において、リトラクトカム116のカム軸116bは、ベルト転写モジュール200のリア側まで延びており、カム軸116bのリア側にはリア側のリトラクトカム116が設けられると共に、駆動伝達機構の一例としてのリトラクトギア118(図12参照)が設けられ、このリトラクトギア118には図示外の駆動源からの駆動力が伝達されるようになっている。
このように、本例では、リトラクト機構110は、ベルト転写ユニット51の第1の張架ロール52の両端回転軸52aをリトラクト可能に支持するものである。
【0032】
-ニップ圧切替機構-
本実施の形態では、ニップ圧切替機構120は、図4及び図5に示すように、二次転写装置50の対向ロール56(張架ロール33に相当)の回転軸56a位置を変位させるようになっている。
特に、本例では、ニップ圧切替機構120は、後述するニップ圧調整機構130に比べて二次転写域TRのニップ圧(接触圧)Npを粗く調整する第2のニップ圧調整機構(第2の接触調整手段に相当)として機能するものである。
本例において、対向ロール56の軸方向両端及び上方を覆うようにロールホルダ560が設けられており、対向ロール56の両端回転軸56aがロールホルダ560の軸方向両側壁に軸受部材561を介して回転可能に支持され、また、軸受部材561はロールホルダ560に転写ベルトユニット51に対して接離可能に保持されている。そして、ロールホルダ560と軸受部材561との間には付勢スプリング562が設けられ、この付勢スプリング562が対向ロール56を転写ベルトユニット51側に付勢するようになっている。
【0033】
本例において、ニップ圧切替機構120は、対向ロール56の両端回転軸56aと同軸の位置に夫々偏心回転部材としての切替カム121を支持し、各切替カム121には周方向に沿って外径が変化するカム面122を形成したものである。本例では、カム面122としては小径部122aと、小径部122aに対して180度回転した位置に形成された大径部122bとを有し、小径部122aから大径部122bにかけて滑らかに連なっている。
また、各切替カム121には図示外の駆動原からの駆動力が駆動伝達機構124を介して伝達され、各切替カム121が所定量同期して回転するようになっている。
本例では、図示外の駆動原は装置筐体21のリア側(奥側)に設置されており、また、駆動伝達機構124は、ロールホルダ560の両側壁にはリア側(奥側)からフロント側(手前側)に向かって延びる伝達シャフト125を回転可能に支持し、この伝達シャフト125のリア側(奥側)には被駆動ギア126を固着し、この伝達シャフト125のフロント側(手前側)には複数の伝達ギア列127(本例では三つの伝達ギアを使用)を介して切替カム121を回転駆動させるようにしたものである。ここでいう伝達ギア列127は、伝達シャフト125と同軸に設けられる伝達ギア127aと、切替カム121と同軸に設けられる最終段の伝達ギア127cと、伝達ギア127a,127c間に介在される中間伝達ギア127bとを有している。尚、駆動伝達機構124としては、リア側(奥側)に設けられた切替カム121に対し被駆動ギア126からの駆動力を図示外の伝達ギア列を介して伝達するようにすればよい。
【0034】
-ニップ圧調整機構-
本例において、ニップ圧調整機構130は、図4乃至図6並びに図14図15に示すように、ベルト転写モジュール200のフロント側及びリア側の両方に夫々設けられている。
ここでは、ベルト転写モジュール200のフロント側に設けられたニップ圧調整機構130について説明し、リア側のニップ圧調整機構130についてはフロント側のものと同様であるため、その説明は省略する。
本例において、ニップ圧調整機構130は、図4図6図7図14及び図15に示すように、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52(転写ロール55)のフロント側の回転軸52aと同軸に微調整カム131が設けられ、本例では、リトラクト機構110のリンクアーム111の外側面に露呈するように配置されている。
尚、図14及び図15は、リトラクト機構110によりベルト転写モジュール200の揺動パーツ201が中間転写体30からリトラクトした位置に配置されている状態を示す。
本例において、微調整カム131は周方向に沿って外径が最小径部から最大径部に徐々に変化するカム面132を有しており、当該カム面132がニップ圧切替機構120の切替カム121のカム面122に接触して配置されている。
また、微調整カム131の手前側には角度位置規制用の位置規制リング133が設けられている。本例において、位置規制リング133は円環状のリング本体134の周方向に沿って予め決められた間隔を開けて複数の凹部135が形成されている。ここで、凹部135の数は適宜選定して差し支えないが、例えば凹部135が12個であれば、凹部134を30°の角度間隔で形成するようにすればよい。また、微調整カム131のカム面132の外径の変化量については適宜選定して差し支えないが、凹部135の1個分周方向に進むにつれて外径変化分Δd(例えば50μmから100μm)ずつ外径が大きくなるようにすればよい。
【0035】
また、本例では、リトラクト機構110のリンクアーム111の外側面のうち、位置規制リング133の下方には停止手段としてのストッパロッド136が設けられている。ストッパロッド136は先端部に半球状の凸部136aを有しており、また、位置規制リング133の凹部135に向けて凸部136aを押し付けるように押圧バネ137で押圧されている。本例においては、半球状の凸部136aは凹部135の入口部分を塞ぐように押し付けられており、例えばユーザが位置規制リング133を手動若しくは治具を用いて適宜回転させると、位置規制リング133の凹部135の移動に伴ってストッパロッド136が押圧バネ137の押圧を受けた状態で出没動作を繰り返し、凹部135の間隔毎にカチカチというクリック感を持って位置規制リング133を回転させることが可能である。
つまり、位置規制リング133を所定角度、言い換えれば所定数の凹部135の数nだけ移動させることで、微調整カム131のカム面132の外径変化分としてn×Δdを微調整することが可能である。
尚、リア側に設けられたニップ圧調整機構130についても、フロント側のものと略同様に構成されている。
【0036】
-姿勢調整機構-
本例において、姿勢調整機構150は、図4乃至図6図10図11並びに図14図15に示すように、ベルト転写モジュール200のフロント側にて調整可能に設けられる。
つまり、姿勢調整機構150は、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52と第2の張架ロール53との間の両端部に設けられ、両者の回転動作を許容して両者の軸間距離を一定に保つ位置拘束機構151と、第1の張架ロール52の軸方向他端(本例ではフロント側回転軸52a)を支点として第2の張架ロール53の軸方向他端(フロント側回転軸53a)を揺動させる変位機構160と、を備えたものである。
ここで、位置拘束機構151は、図9乃至図11(a)に示すように、第1の張架ロール52及び第2の張架ロール53の両端に同軸に設けられた規制ロール152,153と、規制ロール152,153間に介在して接触配置される間隔調整ロール154と、規制ロール152,153及び間隔調整ロール154を、各軸心が直線状に配置されるように回転可能に保持する保持枠155と、を備えている。
このとき、図11(a)(b)に示すように、第1の張架ロール52及び第2の張架ロール53の軸間距離はフロント側(手前側)、リア側(奥側)ともに一定の寸法Lcである。
【0037】
また、変位機構160は、図6図8図14及び図15に示すように、第2の張架ロール53の回転軸方向のフロント側(手前側)に設けられている。
本例では、変位機構160は、ベルト転写モジュール200の固定パーツ202の固定筐体210の手前側側壁の外側に設けられ、第1の張架ロール52と第2の張架ロール53との軸中心を結ぶ基準線sに対して略直交する方向wに対して第2の張架ロール53の軸方向他端を進退させるように構成されている。
具体的には、図14に示すように、変位機構160は、基準線sに対して略直交する方向wに沿って延びる長尺な変位調整板161を有する。この変位調整板161には第2の張架ロール53の回転軸53aが回転可能に支持され、変位調整板161の上下両端部には略U状又は逆U字状の案内溝162,163が形成されている。一方、固定筐体210の側壁外側には案内溝162,163に対応して案内突起164,165が突出して形成され、案内溝162,163に沿って摺動可能に係わり配置されている。
【0038】
また、変位調整板161の長手方向には複数(本例では二つ)の固定孔166が形成されている。この固定孔166は変位調整板161の移動方向に沿って長孔状に形成され、固定孔166にはネジ等の止め具167が差し込まれ、固定筐体210に固着されている。従って、止め具167が締められると、止め具167の頭が変位調整板161に接触し、変位調整板161を移動不能な状態で固定され、止め具167が緩められると、変位調整板161が案内溝162,163に沿って移動可能な状態になる。
更に、変位調整板161のうち下側の案内溝163の上方にはカムフォロワ孔168が形成され、このカムフォロワ孔168は変位調整板161の長手方向に交差する短手方向に延びる長孔状に形成され、このカムフォロワ孔168内には変位調整カム169が収容されている。この変位調整カム169は回転軸169aに対して略楕円状の外形を有する偏心カムとして構成されている。この変位調整カム169は、止め具164,165による固定状態を解除した状態で、利用者が手動若しくは治具を用いて回転軸169aを回転させることで回転し、カムフォロワ孔168を上方又は下方に移動させるようになっている。
このため、本例では、変位調整板161がw方向に適宜移動することから、図11(c)に示すように、この変位調整板161に保持されている第2の張架ロール53のフロント側の回転軸53aの位置がw方向に上方(U)又は下方(D)に変位するようになっている。
尚、図15では、変位調整板161は、図14に示す基準位置に対して矢印で示すように下方側に移動した状態を示す。
【0039】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動について説明する。
-リトラクト機構によるリトラクト動作-
本実施の形態において、リトラクト機構110はベルト転写モジュール200の両側に設けられ、夫々同期して動作する。このとき、ベルト転写モジュール200をリトラクトさせる場合には、図12及び図13に示すように、リトラクトカム116を予め決められた方向に回転させればよく、リトラクトカム116のカム面の外径が増加する方向に回転し、リトラクト位置に相当する最大外径に至ると、リンクアーム111の第2の腕部113が上方に押され、これに伴って、第3の腕部114が下方側に移動し、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52(転写ロール55)の軸受部の位置が二次転写域TRから退避して予め決められたリトラクト位置に至る(図12参照)。
また、リトラクト機構110によるリトラクト動作を解除する場合には、リトラクトカム116のカム面116aの外径を最小位置まで回すと、リンクアーム111は付勢スプリング115の付勢力に付勢され、第2の腕部113が下方側に移動し、これに伴って、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52(転写ロール55)の軸受部の位置が二次転写域TRに接触する接触位置(コンタクト位置)に至る(図13参照)。
【0040】
-ニップ圧切替機構によるニップ圧の切替-
本実施の形態においては、使用する媒体Sの種類が多岐にわたると、例えばエンボス紙のように表面に粗い凹凸を有する媒体Saを使用する場合には、図20(a)に示すように、例えば普通紙のような媒体Sbと同様な二次転写条件(ニップ圧)を使用すると、媒体Saの表面にある凹部300に画像部が転写し難くなる懸念がある。
このため、本実施の形態では、エンボス紙のような表面の粗い媒体Saを使用する場合には、制御装置100は媒体判別器101からの判別信号に基づいて媒体Saを認識し、ニップ圧切替機構120に所定の制御信号を送出する。
すると、ニップ圧切替機構120は、切替カム121を適宜回転させ、例えば切替カム121のカム面122として小径部122aをニップ圧調整機構130の微調整カム131のカム面132に接触させるようにすればよい。
【0041】
この状態において、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52(転写ロール55)と対向ロール56との間のニップ圧Np1が高くなり、媒体Saに適した二次転写条件が得られる。この結果、媒体Saの凹部300にも画像が二次転写されることになり、画像品質を良好に保つことが可能である。
一方、普通紙のような媒体Sbを使用する場合には、図20(b)に示すように、制御装置100によって切替121のカム面122として大径部122bをニップ圧調整機構130の微調整カム131のカム面132に接触させるようにすればよい。
この状態において、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52(転写ロール55)と対向ロール56との間のニップ圧Np2が低く設定されることになり、媒体Sbに適した二次転写条件が得られる。
【0042】
-ニップ圧調整機構による微調整-
次に、ニップ圧調整機構130によるニップ圧の微調整について説明する。
本例においては、フロント側に位置するニップ圧調整機構130は、図21(a)に示すように、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52の回転軸52aのフロント側の位置を微調整することができる。
このとき、第1の張架ロール52についてはリア側の回転軸52aを支点としてフロンド側の回転軸52aを揺動させることになるため、図21(b)に示すように、例えば二次転写域TRでのニップ圧が点線で示すように、フロント側がリア側に比べて高すぎたり、あるいは、二点鎖線で示すように、フロント側がリア側に比べて低くなる場合には、第1の張架ロール52のフロント側の回転軸52aを適宜変位させることで、二次転写域TRのニップ圧を実線で示すように、略均一に調整することが可能である。
尚、リア側に位置するニップ圧調整機構130は、フロント側と略同様に働き、第1の張架ロール52についてはフロント側の回転軸52aを支点としてリア側の回転軸52aを揺動させ、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52の回転軸52aのリア側の位置を微調整することができる。
特に、本実施の形態では、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52(転写ロール55として機能)のみならず、転写搬送ベルト54も弾性材料にて構成されていることから、中間転写体30及び対向ロール56に比べて低硬度になっており、その分、二次転写域TRに対向する転写ベルトユニット51のニップ圧Npに対する変形量は大きくなる。このため、本例では、転写ベルトユニット51側にニップ圧調整機構130を付加することで、ニップ圧Npを微調整するようになっている。
【0043】
-姿勢調整機構による姿勢調整-
本実施の形態では、姿勢調整機構150は、図22(a)(b)に示すように、転写ベルトユニット51の第1の張架ロール52と第2の張架ロール53との間の軸間距離は軸方向両端でいずれも一定のLcを維持し、この状態で、第2の張架ロール53のフロント側の回転軸53a位置を変位させ、第2の張架ロール53の姿勢を調整する。
このとき、転写搬送ベルト54の幅方向両端の速度は一定であり、また、第2の張架ロール53の姿勢を調整することで、転写搬送ベルト54のウォークを調整することが可能である。
◎比較の形態1
この点、図22(c)に示す比較の形態1に係る姿勢調整機構150’にあっては、実施の形態1の位置拘束機構151を用いないで例えば変位機構160のみを仕様した態様になるため、図22(c)(d)に示すように、転写ベルトユニット51’の転写搬送ベルト54’について検討してみると、第1の張架ロール52’と第2の張架ロール53’との間の軸間距離がリア側が寸法Lcであっても、フロント側が寸法Lc’(≠Lc)であることから、転写搬送ベルト54’の幅方向両端部の周速度がv1≠v2となり、異なってしまう。このため、転写搬送ベルト51’が蛇行し易いという懸念がある。
【0044】
-二次転写装置と周辺部品との位置関係-
本実施の形態では、図6及び図7に示すように、転写ベルトユニット51の転写搬送ベルト54の搬送方向下流側には除電部材(例えば除電針)180や、媒体を案内搬送する案内手段としての板状の案内シュート185が設けられているが、転写ベルトユニット51の位置が変化したとしても、除電部材180や案内部材185と転写ベルトユニット51との相対的関係は変わらないので、除電部材による除電作用な案内シュート185による媒体の案内性能は良好に保たれる。
また、第2の張架ロール53は高抵抗退58との接続部である接点190に接触して配置されているが、転写ベルトユニット51の位置が変化したとしても、第2の転写ロール53と接点190との相対位置関係は良好に保たれる。
更に、転写ベルトユニット51には清掃ユニット170が付設されているが、ベルト転写ユニット51の位置が変化したとしても、清掃ユニット170は転写ベルトユニット51に追従して移動することから、両者の相対的位置関係は良好に保たれる。
【0045】
◎比較の形態2
図23は比較の形態2に係る画像形成装置の一例を示す。
同図において、二次転写装置50’は、第1の張架ロール52’と第2の張架ロール53’との間に転写搬送ベルト54’を掛け渡した態様の転写ベルトユニット51’を備えているが、本例では、中間転写体40の対向ロール56’を転写ベルトユニット51’側に押圧するニップ圧調整機構310と、対向ロール56’の平行度をニップ圧調整方向と交差する横方向から調整する平行度調整機構320とを備えている。
本例においては、転写ベルトユニット51’側についてはニップ圧調整などを行わず、対向ロール56’について、ニップ圧と平行度とを調整するようにしたものである。
本例にあっては、対向ロール56’についてニップ圧と平行度とを両立させることが難しく、また、対向ロール56’の平行度調整が不十分になると、転写ベルトユニット51’の転写搬送ベルト54’が斜行し易い懸念も生じてしまう。
このように、本実施の形態に比べて、比較の形態2に係る画像形成装置のニップ圧、平行度調整が不十分になり易いことが理解される。
【0046】
◎変形の形態
本実施の形態では、ニップ圧切替機構120及びニップ圧調整機構130を備えた態様が開示されているが、例えば使用する媒体の種類が予め決まっている媒体処理装置についてはニップ圧切替機構120を用いずに、ニップ圧調整機構130のみを用いるようにしてもよいことは勿論である。
また、本実施の形態では、リトラクト機構110、ニップ圧切替機構120、ニップ圧調整機構130及び姿勢調整機構150については、いずれも回転偏心部材(カム部材)を利用する態様になっているが、これに限定されるものではなく、回転偏心部材に代えて、進退曲線移動可能な進退部材やアクチュエータを利用して変位させるようにしてもよい。
【0047】
更に、本実施の形態では、ニップ圧調整機構130はベルト転写モジュール200のフロント側及びリア側の両方に夫々設けられているが、調整の操作性を考慮し、ベルト転写モジュール200のフロント側(手前側)にのみに設けるようにしてもよい。また、姿勢調整機構150は、調整の操作性を考慮し、ベルト転写モジュール200のフロント側(手前側)にのみ設ける態様が開示されているが、装置筐体21内にベルト転写モジュール200を搭載する前に予め調整可能にしたいという場合には、ベルト転写モジュール200のリア側(奥側)にも姿勢調整機構150を付加するようにしてもよいことは勿論である。
また、本例では、ニップ圧調整機構130及び姿勢調整機構150についてはユーザが手動若しくは治具を用いて調整する態様であるが、ニップ圧調整機構130の微調整カム131や、姿勢調整機構150の変位調整カム169を駆動源やアクチュエータを用いて駆動する方式を採用すれば、制御装置100によりニップ圧状態や搬送ベルトのウォーク状態の適否をチェックし、自動的に調整する方式を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…媒体搬送装置,2…搬送ベルト,3…第1の張架ロール,4…第2の張架ロール,5…接触調整手段,5a…変位機構,6…姿勢調整手段,6a…位置拘束機構,6b…変位機構,10…画像保持手段,11…除電手段,12…案内手段,13…高抵抗体,14…清掃手段,14a…清掃筐体,S…媒体,G…画像,CN…接触域,L…軸間距離
図1
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