(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】耐熱フェルト材および耐熱フェルト材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/26 20060101AFI20240604BHJP
B32B 7/09 20190101ALI20240604BHJP
B32B 27/02 20060101ALI20240604BHJP
D04H 1/4326 20120101ALI20240604BHJP
【FI】
B32B5/26
B32B7/09
B32B27/02
D04H1/4326
(21)【出願番号】P 2020061011
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000180597
【氏名又は名称】イチカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168572
【氏名又は名称】後藤 仁志
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】大内 隆司
(72)【発明者】
【氏名】西本 直人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸治
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-116161(JP,A)
【文献】特開2001-048329(JP,A)
【文献】特開平7-040487(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139472(WO,A1)
【文献】米国特許第5691036(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層の基材を有する基材層と、
少なくとも一層の積層用ウェブを有する積層ウェブ層と、を備え、
前記積層ウェブ層は、前記基材層の外表面において当該基材層の隣接する層とニードリングにより絡合一体化しており、
前記基材は、芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上の繊維を含む糸を有する基布
と、前記基布の少なくともいずれか一方の面にニードリングにより絡合一体化した、芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上の繊維を含み、目付が50g/m
2
以上250g/m
2
以下の少なくとも一層の緩衝用ウェブとを含み、
前記基布の密度が0.60g/cm
3以下である、耐熱フェルト材。
【請求項2】
前記基布の密度が、0.45g/cm
3以下である、請求項1に記載の耐熱フェルト材。
【請求項3】
前記基布の密度が、0.15g/cm
3以上である、請求項1または2に記載の耐熱フェルト材。
【請求項4】
前記緩衝用ウェブは、繊維の構成割合で、50質量%以上100%質量以下の芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上の繊維を含む、請求項
1~3のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項5】
前記基布の経糸本数および緯糸本数が、それぞれ、12本/インチ以上57本/インチ以下である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項6】
前記基布の目付が、45g/m
2以上400g/m
2以下である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項7】
前記基布の厚みが、0.30mm以上0.45mm以下である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項8】
前記積層用ウェブは、繊維の構成割合で、50質量%以上100%質量以下の芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項9】
前記基布は、繊維の構成割合で、50質量%以上100%質量以下の芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項10】
前記基材層は、二層以上の前記基材を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項11】
二層以上の前記積層用ウェブを含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項12】
前記基材層の基布の合計目付が、90g/m
2~1000g/m
2である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項13】
前記耐熱フェルト材の目付が、2000g/m
2以上である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項14】
前記耐熱フェルト材の目付が、4000g/m
2以上である、請求項1~
13のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項15】
前記耐熱フェルト材の形状が、平板形状である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項16】
前記耐熱フェルト材の形状が、ベルト状である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項17】
前記耐熱フェルト材の形状が、円筒形状である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
【請求項18】
耐熱フェルト材を製造する製造方法であって、
(a)芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を有し、かつ密度が0.60g/cm
3以下の基布
と、前記基布の少なくともいずれか一方の面にニードリングにより絡合一体化した、芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上の繊維を含み、目付が50g/m
2
以上250g/m
2
以下の少なくとも一層の緩衝用ウェブとを含む少なくとも一層の基材を準備する工程、
(b)積層用ウェブを準備する工程、
(c)(a)で得られた基材の少なくとも外側表面に、(b)で得られた積層用ウェブを少なくとも一層配置し、ニードリングにより絡合一体化し、耐熱フェルト材を得る工程、を含む、耐熱フェルト材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱フェルト材および耐熱フェルト材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板等の積層構造を有する電気部品の製造においては、積層体のプレス成型または熱圧着を目的として、熱プレスが行われる。プリント基板は、例えば、樹脂製プリプレグと銅箔等を積層した後、熱盤により加圧および加熱、すなわち熱プレスすることにより、製造される。熱プレスにおいては、プリプレグは、一般に加熱により一旦粘度が下がって液体状態に戻った後、徐々に硬化が進行する。このような熱プレスにおいては、積層体に負荷される圧力および温度の分布が均一であることが求められる。
【0003】
このために、熱プレスにおいては、耐熱フェルト材として熱プレス用クッション材が一般的に用いられている。この耐熱フェルト材は、熱盤と積層体との間に配置され、熱盤から負荷される圧力および温度を面方向に分散させることにより、熱プレスにおける圧力分布および温度分布を均一化させることができる。したがって、耐熱フェルト材としての熱プレス用クッション材には、圧力分布および温度分布を均一化させるために適度の変形追従性、クッション性、熱伝導性、寸法安定性、耐久性や耐熱性等が基本的な性能として求められる。
【0004】
特許文献1には、耐熱フェルト材が熱プレス用クッション材であって、この熱プレス用クッション材の構成要素の一部として、織布層および不織布層を挙げ、織布層の織布の経糸または緯糸のうちの少なくとも一方に嵩高糸を用いた熱プレス用クッション材が開示されている。また、同文献においては、嵩高糸がガラス繊維、メタ系芳香族ポリアミド繊維、パラ系芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(以下PBOという)繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を含んでもよいこと、不織布層の不織布が、メタ系芳香族ポリアミド繊維、パラ系芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を含んでもよいことが開示されている。
【0005】
また、アルミ押出形材の製造においては、アルミ押出形材は、押出機により押出成形されると、プラーにより引っ張られ、ランアウトチューブ上を移動しながら搬送工程に入る。その後、アルミ形材は、クーリングベルト、ストレッチャーベルトにより搬送されつつ徐々に冷却されながら、ストレッチャーベルト上で両端のストレッチャーにより引き延ばされ形を整えた後、ソーテーブルベルトまで搬送される。
【0006】
アルミ押出形材は非常に高温であるため、ランアウトチューブのロールカバー材や、クーリングベルト、ストレッチャーベルトや、ソーテーブルベルトといった搬送ベルトには耐熱フェルト材が用いられることがある。
【0007】
特許文献2には、耐熱フェルト材としてのロールカバー材がフェルト材料を含む筒状体であって、このフェルト材料を含む筒状体の構成要素の一部として、繊維基材と繊維基材に積層されるウェッブを含む筒状体が開示されている。また、同文献には、基材やウェッブに用いる繊維が、ポリエステル、アクリル酸化繊維、メタ系芳香族ポリアミド繊維、パラ系芳香族ポリアミド繊維、PBO繊維からなる群から選択される、1種又は2種以上の繊維であってもよいことが開示されている。
【0008】
さらにまた、連続溶融亜鉛めっき鋼板ライン(CGL:Continuous Galvanizing Line)における鋼板の製造においては、亜鉛ポットでめっき処理された鋼板は、CGLの亜鉛ポットの下流側にあるトップロールにより搬送される。通常、このトップロールは、トップロールへの亜鉛付着の防止や、鋼板への疵発生を防止するために、耐熱フェルト材としてロールカバー材をトップロールに被覆して使用する。
【0009】
特許文献3には、耐熱フェルト材としての製鉄用円筒状不織布ロールであって、この不織布ロールが、PBO繊維よりなる不織布を表面層とし、パラ系アラミド繊維よりなる不織布を内層とし、当該内層の内側に耐熱繊維よりなる筒状の基布が配置され、ニードルパンチにより繊維を交絡一体化した、不織布ロールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2016-10945号公報
【文献】特開2002-235270号公報
【文献】特開2000-64014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
プリント基板を製造する工程で対象製品をプレス成型や熱圧着する際に使用される耐熱フェルト材、アルミ押出形材の搬送ロールのカバーや搬送ベルトに使用される耐熱フェルト材や、CGLのロールカバーに使用される耐熱フェルト材には、使用時の高温化により従来に増して高い耐熱性が求められ、また低コストの観点から更なる耐久性が求められている。
【0012】
例えば、プリント基板を製造する工程では、近年採用されている移動通信規格5Gや先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver-Assistance Systems)など向けの高周波対応の低損失基板は、その材質により300℃~400℃以上の高温で熱プレスされるものもあり、熱プレス用クッション材としての耐熱フェルト材には、従来に増して高い耐熱性と耐久性が求められている。
【0013】
また、アルミ押出形材を製造する工程では、押出成形直後のアルミ形材温度は、約450℃~550℃の高温となっており、特にランアウトチューブのロールカバー材用の耐熱フェルト材には、従来に増して高い耐熱性と耐久性が求められている。
【0014】
さらにまた、CGLにおける溶融亜鉛めっき工程では、亜鉛の溶融温度は約420℃であり、亜鉛ポットでめっき処理された鋼板は非常に高温であるため、鋼板を搬送するロールのロールカバー材用の耐熱フェルト材には、従来に増して高い耐熱性と耐久性が求められている。
【0015】
特許文献1から特許文献3に記載される熱プレス用クッション材、ロールカバー材や搬送ベルトなどに用いられる耐熱フェルト材は、その構成要素である基材(織布、基布)や基材に積層されるウェブ(不織布)に、芳香族ポリアミド繊維やPBO繊維といった耐熱繊維を使用することによって耐熱性を向上させている。
【0016】
確かに、芳香族ポリアミド繊維やPBO繊維の分解温度(融点)は、それぞれ約400℃~550℃、約650℃と、これらの耐熱性繊維は耐熱性の観点からは優れた耐熱性を備えている。しかしながら、これらの耐熱性繊維は、引張強度や引張弾性率も高い材料であり、これらの材料を耐熱フェルト材に使用した際、製造工程において不具合が生じる。特にPBO繊維の引張強度や引張弾性率は芳香族ポリアミド繊維よりも非常に高いことから、耐熱フェルト材のPBO繊維の配合割合を高くし、また主成分として使用した場合、前記不具合はより顕在化する。
【0017】
具体的には、耐熱フェルト材は、基材にウェブを積層しニードリングにより絡合一体化し製造されるが、このニードリング時において、ニードル針が耐熱性繊維の強度に負けて、針が折れる不具合(針折れ)が生じる。ニードル針が折れた状態でニードリングを継続した場合、ニードル針が折れた部分で、基材とウェブの絡合性やウェブ同士の絡合性が悪く、基材とウェブ間での剥離やウェブからの繊維の脱落等の問題が生じ、また耐熱フェルト材の表面平滑性が損なわれてしまう。
【0018】
一方、耐熱フェルト材の耐久性の観点からは、耐熱フェルト材の目付や厚みを大きくすれば、それだけ耐久性は向上するが、目付や厚みを大きくすればするほど、上記針折れの問題が顕在化し、この結果、目付や厚みを大きくしても耐熱フェルト材の耐久性が向上しない問題があった。
【0019】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、耐熱フェルト材のニードリング時の針折れの発生を防止し、高い耐熱性と高い耐久性を兼ね備えた、新規かつ改良された耐熱フェルト材および耐熱フェルト材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、耐熱フェルト材の基材に用いられる基布の密度を規定することにより、ニードリング時の針折れが防止されることを見出し、本発明に至った。
【0021】
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 少なくとも一層の基材を有する基材層と、
少なくとも一層の積層用ウェブを有する積層ウェブ層と、を備え、
前記積層ウェブ層は、前記基材層の外表面において当該基材層の隣接する層とニードリングにより絡合一体化しており、
前記基材は芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上の繊維を含む糸を有する基布を含み、
前記基布の密度が0.60g/cm3以下である、耐熱フェルト材。
[2] 前記基布の密度が、0.45g/cm3以下である、[1]に記載の耐熱フェルト材。
[3] 前記基布の密度が、0.15g/cm3以上である、[1]または[2]に記載の耐熱フェルト材。
[4] 前記基材が、前記基布の少なくともいずれか一方の面にニードリングにより絡合一体化した、芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上の繊維を含む少なくとも一層の緩衝用ウェブを含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[5] 前記緩衝用ウェブは、繊維の構成割合で、50質量%以上100%質量以下の芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上の繊維を含む、[4]に記載の耐熱フェルト材。
[6] 前記基布の経糸本数および緯糸本数が、それぞれ、12本/インチ以上57本/インチ以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[7] 前記基布の目付が、45g/m2以上400g/m2以下である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[8] 前記基布の厚みが、0.30mm以上0.45mm以下である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[9] 前記積層用ウェブは、繊維の構成割合で、50質量%以上100%質量以下の芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む、[1]~[8]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[10] 前記基布は、繊維の構成割合で、50質量%以上100%質量以下の芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む、[1]~[9]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[11] 前記基材層は、二層以上の前記基材を含む、[1]~[10]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[12] 積層ウェブ層が二層以上の前記積層用ウェブを含む、[1]~[11]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[13] 前記基材層の基布の合計目付が、90g/m2以上1000g/m2以下である、[1]~[12]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[14] 前記耐熱フェルト材の目付が、2000g/m2以上である、[1]~[13]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[15] 前記耐熱フェルト材の目付が、4000g/m2以上である、[1]~[14]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[16] 前記耐熱フェルト材の形状が、平板形状である、[1]~[15]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[17] 前記耐熱フェルト材の形状が、ベルト状である、[1]~[15]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[18] 前記耐熱フェルト材の形状が、円筒形状である、[1]~[15]のいずれか一項に記載の耐熱フェルト材。
[19] 耐熱フェルト材を製造する製造方法であって、
(a)芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を有し、かつ密度が0.60g/cm3以下の基布を含む少なくとも一層の基材を準備する工程、
(b)積層用ウェブを準備する工程、
(c)(a)で得られた基材の少なくとも外側表面に、(b)で得られた積層用ウェブを少なくとも一層配置し、ニードリングにより絡合一体化し、耐熱フェルト材を得る工程、
を含む、耐熱フェルト材の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
以上の構成により、耐熱フェルト材のニードリング時の針折れが防止され、高い耐熱性と高い耐久性を兼ね備えた耐熱フェルト材および耐熱フェルト材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る耐熱フェルト材の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す耐熱フェルト材の部分拡大断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る耐熱フェルト材の変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る耐熱フェルト材の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施形態に係る耐熱フェルト材の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の第4実施形態に係る耐熱フェルト材の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施例の加熱摩耗試験において用いた加熱摩耗試験機の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら本発明に係る耐熱フェルト材の好適な実施の形態について説明する。
【0025】
<1.第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る耐熱フェルト材について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る耐熱フェルト材の一例を示す模式図、
図2は、
図1に示す耐熱フェルト材の部分拡大断面図、
図3は、本発明の第1実施形態に係る耐熱フェルト材の変形例を示す部分拡大断面図である。
なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、各図の部材は、説明の容易化のため、適宜強調されており、図における寸法は、実際の寸法を示すものではない。
【0026】
図1の耐熱フェルト材1は、熱プレス用クッション材であり、平板形状をなす積層体である。
図1に示すように、耐熱フェルト材1は、基材層10と基材層10の少なくとも外側表面16に配置された積層ウェブ層20、とを有する。なお、耐熱フェルト材1の要求機能には、耐熱性、耐久性に加え、耐熱フェルト材1と接触する製品(プリント基板等)を保護するために、クッション性や表面平滑性、また寸法安定性や耐熱フェルト材1を介して前記製品を加熱、冷却する熱伝導性も求められている。
【0027】
熱プレス用クッション材としての耐熱フェルト材1の密度は、特に限定されないが、例えば0.2g/cm3以上0.6g/cm3以下、好ましくは0.3g/cm3以上0.5g/cm3以下である。また、耐熱フェルト材1の厚さは、特に限定されないが、例えば1mm以上10mm以下、好ましくは2mm以上8mm以下である。更にまた、耐熱フェルト材1の寸法は特に限定されず、その用途や用いる熱盤によって適宜設定することができ、例えば、長手方向、巾方向のそれぞれの長さが、3.6×1.3mであることができる。
【0028】
こうすることで、耐熱フェルト材1の要求機能である、耐熱性、耐久性に加え、耐熱フェルト材と接触する製品(プリント基板等)を保護するための耐熱フェルト材1のクッション性や表面平滑性、また寸法安定性や耐熱フェルト材を介して前記製品を加熱、冷却する熱伝導性等が持続される。
【0029】
図2は、
図1に示すの耐熱フェルト材1の部位Aにおける断面図である。以下、
図2に基づき、耐熱フェルト材1の層構成について詳細に説明する。
【0030】
(1.1.基材層)
図2に示すように、耐熱フェルト材1の基材層10は、基材11が複数層、本実施形態では5層積層して構成されている。基材11は、基布12と基布12の少なくとも外側表面14に配置された緩衝用ウェブ13とを有する。
【0031】
基布12は、耐熱フェルト材1において、引張強度の維持、形状の安定、緩衝ウェブ13や積層用ウェブ21と基布12との絡合性に寄与する繊維補強基材である。基布12としては、例えば、織布または格子状素材により構成されることができる。また、基布12が織布の場合、織布の組織は特に限定されるものではなく、平織、綾織、朱子織またはこれらを用いた多重織のいずれも用いることができる。
【0032】
基布12の構成材料としては、例えば、メタ系芳香族ポリアミド繊維、パラ系芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維、ステンレス繊維などを1種単独でまたは2種以上組み合わせて適宜採用することができ、耐熱性、耐久性の観点から芳香族ポリアミド繊維やPBO繊維が好ましく、特にPBO繊維が好ましい。
【0033】
特に、本実施形態においては、基材12は、少なくとも、芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される選択される1種以上の繊維を含む糸を有する。これにより、基布12、ひいては耐熱フェルト材1の耐熱性が向上するとともに、物理的強度が向上する。一方で、従来芳香族ポリアミド繊維またはPBO繊維から選択される1種以上の繊維を含む糸を有する基材を用いた場合、製造時のニードリングにおいて針折れが生じやすく、基材とウェブの絡合性やウェブ同士の絡合性が悪い問題があった。この場合、基材とウェブ間での剥離やウェブからの繊維の脱落等の問題が生じ、また耐熱フェルト材の表面平滑性が損なわれてしまう。これに対し、本実施形態においては、基布12の密度を一定以下とすることにより、針折れの問題を抑制している。
【0034】
基布12におけるPBO繊維の割合は、特に限定されるものではないが、基布12は、繊維の構成割合で、好ましくは50質量%以上100%質量以下、より好ましくは75質量%以上100質量%以下の芳香族ポリアミド繊維およびポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維から選択される1種以上の繊維を含む。これにより、基布12、ひいては耐熱フェルト材1の耐熱性が向上するとともに、物理的強度が向上する。また、PBO繊維の含有量が比較的大きい場合であっても、基布12の密度を後述するように、一定以下とすることにより、針折れの問題が抑制されており、耐熱フェルト材1の耐久性は優れたものとなる。
【0035】
また、基布12の密度は、0.60g/cm3以下である。これにより、耐熱フェルト材1製造時のニードリング工程において、ニードル針が折れることを防止することができる。この結果、基材12、緩衝用ウェブ13および積層用ウェブ21の間の絡合性や緩衝用ウェブ13および積層用ウェブ21における絡合性を向上させることができ、この結果、耐熱フェルト材1の耐久性が向上する。
【0036】
基布12の密度は、0.60g/cm3以下であればよいが、耐熱フェルト材1の耐久性をより一層向上させるために、好ましくは、0.45g/cm3以下である。なお、耐熱フェルト材1の変形を防止、形状を維持させるために、基布12の密度は0.15g/cm3以上とすることが好ましい。
【0037】
また、基布12が経糸および緯糸を含む場合、基布12の経糸本数、緯糸本数は、共に、例えば12本/インチ以上57本/インチ以下、好ましくは15本/インチ以上57本/インチ以下、より好ましくは18本/インチ以上57本/インチ以下である。こうすることで、より確実に、耐熱フェルト材1の引張強度が維持され、形状が安定し、緩衝用ウェブ13や積層用ウェブ21と基布12との絡合性を向上することができる。
【0038】
更に基布12の目付は、特に限定されないが、例えば45g/m2以上400g/m2以下、好ましくは75g/m2以上400g/m2以下、より好ましくは75g/m2以上265g/m2以下である。こうすることで、より確実に、耐熱フェルト材1の引張強度が維持され、形状が安定し、緩衝用ウェブ13や積層用ウェブ21と基布12との絡合性を向上することができる。
【0039】
更にまた基布12の厚みは、例えば0.30mm以上0.70mm以下、好ましくは0.30mm以上0.45mm以下、より好ましくは0.32mm以上0.45mm以下である。こうすることで、より確実に、耐熱フェルト材1の引張強度が維持され、形状が安定し、緩衝用ウェブ13や積層用ウェブ21と基布12との絡合性を向上することができる。
【0040】
緩衝用ウェブ13は、例えば、短繊維としてのバット繊維からなる繊維ウェブを基布12の外側表面14上に配置し、ニードルパンチングにより互いに絡合させるとともに、基布12に絡合させることにより形成される。
【0041】
緩衝用ウェブ13の材料としては、特に限定されないが、耐熱性を有する樹脂材料、例えば、メタ系芳香族ポリアミド繊維、パラ系芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維等の芳香族アミド繊維、PBO繊維などを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて適宜採用することができる。
【0042】
具体的には、バット繊維として、上記の材料で構成されるステープルファイバーを用いることができる。すなわち、緩衝用ウェブ13は、耐熱性、耐久性の観点から、芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上の繊維を含むことが好ましい。より具体的には、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどを主体とするメタ系芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(商品名/帝人製)やノーメックス(商品名/デュポン製))、ポリパラフェニレンテレフタルアミドなどを主体とするパラ系芳香族ポリアミド繊維(ケブラー(商品名/東レ・デュポン製)やトワロン(商品名/帝人製))、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタルアミドのテクノーラ(商品名/帝人製))、PPS繊維(トルコン(商品名/東レ製))、PBO繊維(ザイロン(商品名/東洋紡製)等を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。特に耐熱性、耐久性の観点からPBO繊維が好ましい。
【0043】
また、緩衝用ウェブ13は、繊維の構成割合で、好ましくは50質量%以上100%質量以下、より好ましくは75質量%以上100%質量以下の芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上の繊維を含む。これにより、耐熱フェルト材1の耐熱性および耐久性がより一層向上する。
【0044】
緩衝用ウェブ13を構成する短繊維の繊維長は、特に限定されないが、例えば38mm以上130mm以下とすることができる。また、緩衝用ウェブ13を構成する短繊維の繊度は、特に限定されないが、例えば0.8dtex以上11dtex以下とすることができる。
【0045】
また、緩衝用ウェブ13の目付量は、特に限定されないが、耐熱フェルト材の用途に応じて選択でき、50g/m2以上250g/m2以下、好ましくは100g/m2以上200g/m2以下である。
【0046】
なお、
図2に示す耐熱フェルト材1の基材層10は、基布12と基布12の外側表面14に配置された緩衝用ウェブ13を基材11とし、この基材11を5層積層した構成であるが、緩衝用ウェブ13は、基布12の内側表面15に配置することも可能であり、また、緩衝用ウェブ13を複数層の基材11の外側表面14または内側表面15の一部の層のみに配置することも可能であり、緩衝用ウェブ13を省略して基材層10を基布12のみの積層体とすることも可能である。この点については、目的とする設計に応じて適宜設定することができる。
【0047】
また、
図2に示す態様では、基材層10が5層の基材11を含むものとして説明したが、本発明は図示の態様に限定されるものではなく、基材層が1層の基材により構成されていてもよいし、2層以上の基材により構成されていてもよい。基材層が2層以上の基材により構成される場合、耐熱フェルト材の耐久性が優れたものとなる。なお、複数のPBO繊維を含む基布を採用した耐熱フェルト材の耐久性は、上述したような所定以下の密度を有する基布を含む基材層を採用することにより初めて向上させることができる。基材層中における基材の数は、好ましくは2層以上、より好ましくは3層以上6層以下である。
【0048】
また、基材層10を構成する複数の基布12の合計目付は、用途に応じて適宜選択可能であり、特に限定されないが、例えば、90g/m2以上1000g/m2以下、好ましくは300g/m2以上800g/m2以下である。これにより、耐熱フェルト材1の耐熱性および耐久性がより一層向上する。
【0049】
(1.2.積層ウェブ層)
積層ウェブ層20は、少なくとも基材層10の外側表面16に配置される。積層ウェブ層20は、短繊維同士を絡合させることにより形成された繊維集合体層であり、耐熱フェルト材1において、熱伝導性、クッション性等のクッション材としての性能を発揮する。
【0050】
積層ウェブ層20は、短繊維としてのバット繊維からなる複数の積層用ウェブ21を一層または複数積層することにより形成されている。具体的には、積層ウェブ層20の積層用ウェブ21は、例えば、短繊維としてのバット繊維からなる繊維ウェブを基材層10上に配置し、ニードルパンチングにより互いに絡合させるとともに、基材11に絡合させることにより形成される。
【0051】
積層ウェブ層20を構成する積層用ウェブ21の材料としては、特に限定されないが、耐熱性を有する樹脂材料、例えば、メタ系芳香族ポリアミド繊維、パラ系芳香族ポリアミド繊維等の芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維などを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて適宜採用することができ、特に耐熱性、耐久性の観点から芳香族ポリアミド繊維またはPBO繊維が好ましい。具体的には、バット繊維として、上記の材料で構成されるステープルファイバーを用いることができる。
【0052】
すなわち積層ウェブ層20を構成する積層用ウェブ21は、芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含むことが好ましい。より具体的には、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどを主体とするメタ系芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(商品名/帝人製)やノーメックス(商品名/デュポン製))、ポリパラフェニレンテレフタルアミドなどを主体とするパラ系芳香族ポリアミド繊維(ケブラー(商品名/東レ・デュポン製)やトワロン(商品名/帝人製))、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタルアミドのテクノーラ(商品名/帝人製))、PPS繊維(トルコン(商品名/東レ製))、PBO繊維(ザイロン(商品名/東洋紡製))等を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0053】
このように、積層用ウェブ21は、好ましくは芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む。すなわち、好ましくは、積層ウェブ層20を構成する積層用ウェブ21のうち少なくともいずれか一層が、芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む。これにより、積層ウェブ層20の耐熱性が向上し、ひいては耐熱フェルト材1の耐熱性が向上する。さらに、芳香族ポリアミド繊維やPBO繊維は、引張強度や引張弾性率等の物理的強度に優れており、積層ウェブ層20ひいては耐熱フェルト材1の形状安定性に寄与し、耐熱フェルト材1の耐久性がより一層向上する。
【0054】
積層ウェブ層20は、構成する積層用ウェブ21のうち少なくともいずれか一層が芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含むものであればよいが、好ましくは構成する積層用ウェブ21の全てが芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む。これにより、耐熱フェルト材1の耐熱性および耐久性がより一層向上する。
【0055】
また、積層ウェブ層20を構成する各積層用ウェブ21は、繊維の構成割合で、好ましくは50質量%以上100%質量以下、より好ましくは75質量%以上100%質量以下の芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む。これにより耐熱フェルト材1の耐熱性および耐久性がより一層向上する。
【0056】
また、積層ウェブ層20は、繊維の構成割合で、好ましくは50質量%以上100%質量以下、より好ましくは75質量%以上100%質量以下の芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む。これにより耐熱フェルト材1の耐熱性および耐久性がより一層向上する。
【0057】
積層ウェブ層20を構成する短繊維の繊維長は、特に限定されないが、例えば38mm以上130mm以下とすることができる。また、積層ウェブ層20を構成する短繊維の繊度は、特に限定されないが、例えば0.8dtex以上11dtex以下とすることができる。
【0058】
また、積層ウェブ層20の積層用ウェブ21の目付量は、特に限定されないが、耐熱フェルト材の用途に応じて選択でき、50g/m2以上250g/m2以下、好ましくは100g/m2以上200g/m2以下である。
【0059】
また、積層ウェブ層20は、積層用ウェブ21を1層以上含めばよいが、耐熱フェルト材の用途に応じて選択でき、例えば、熱プレス用クッション材としての耐熱フェルト材1の場合、好ましくは2層以上、より好ましくは3層以上15層以下含む。これにより、耐熱フェルト材1の耐久性がより一層向上する。
【0060】
また、積層ウェブ層20の全体の目付量についても、特に限定されないが、耐熱フェルト材の用途に応じて選択でき、例えば、熱プレス用クッション材としての耐熱フェルト材1の場合、好ましくは200g/m2以上3000g/m2以下、より好ましくは300g/m2以上2500g/m2以下である。これにより、熱プレスクッション材としての耐熱フェルト材1の適度な熱伝導性およびクッション性を得ることができる。
【0061】
以上、本実施形態によれば、基材層10の基布12が芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含むことにより、耐熱フェルト材1は耐熱性に優れる。さらに、基布12の密度は、0.60g/cm3以下である。これにより、耐熱フェルト材1製造時のニードリング工程において、ニードル針が折れることを防止することができる。この結果、基材12、緩衝用ウェブ13および積層用ウェブ21の間の絡合性や緩衝用ウェブ13および積層用ウェブ21における絡合性を向上させることができ、得られる耐熱フェルト材1の引張強度の維持、形状安定性が向上する。この結果、耐熱フェルト材1の耐久性が向上する。
【0062】
そして、この耐熱フェルト材1の製造時の針折れ防止、引張強度の維持、形状安定、緩衝ウェブ13や積層用ウェブ21と基布12との絡合性の向上といった効果は、耐熱フェルト材1の構成要素である基材11や積層ウェブ層20に用いる材料に芳香族ポリアミド繊維、PBO繊維を使用した場合、芳香族ポリアミド繊維、PBO繊維の引張強度や引張弾性率といった強度が他の材料よりも高いことから、より有効に発現する。
以上、本実施形態に係る耐熱フェルト材1は、耐熱性と耐久性の双方に優れている。
【0063】
特に、本実施形態に係る耐熱フェルト材1は、基材12に芳香族ポリアミド繊維および/またはPBO繊維を用い、かつ目付を比較的大きくした場合であっても、耐熱フェルト材1の製造時におけるニードル針の折れを抑制することができる。したがって、基材12、緩衝用ウェブ13および積層用ウェブ21の間の絡合性や緩衝用ウェブ13および積層用ウェブ21における絡合性が向上し、この結果、得られる耐熱フェルト材1の引張強度の維持、形状安定性が向上する。したがって、従来のように基材に芳香族ポリアミド繊維またはPBO繊維を用いた際に、耐熱フェルト材の目付を大きくすることができず、耐熱フェルト材の耐久性を向上させることが困難な問題を、本実施形態においては解消することができる。
【0064】
耐久性および耐熱性の観点からは、耐熱フェルト材1の目付は、好ましくは2000g/m2以上、より好ましくは4000g/m2以上である。
【0065】
なお、上述した
図1、
図2に示す耐熱フェルト材1においては、基材層10の外側表面16に積層ウェブ層20が1層配置されたが、本発明は、図示の態様に限定されない。例えば、
図3に示す耐熱フェルト材1Aにおいては、基材層10の外側表面16と内側表面17に積層ウェブ層20、20Aが配置されており、基材層10が耐熱フェルト材1Aの深さ方向の略中間の位置に配置されている。このように、耐熱フェルト材1Aの深さ方向の断面構造が対称であることにより、耐熱フェルト材1Aの曲がり、反りが抑制される。積層ウェブ層20Aは、積層ウェブ層20と同様の構成とすることができる。しかしながら、積層ウェブ層20Aは、積層ウェブ層20と同一であっても異なってもよい。また、積層ウェブ層20Aは、芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維を含まなくてもよい。
【0066】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る耐熱フェルト材について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る耐熱フェルト材の一例を示す模式図である。以下、上述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。
【0067】
図4に示す耐熱フェルト材1Bは、アルミ押出形材製造時に用いられる搬送ロールカバー材である。耐熱フェルト材1Bは、その全体形状が円筒形状をなしている。
図4に示すように、耐熱フェルト材1Bは、基材層10Aと基材層10Aの外側表面16Aに配置された積層ウェブ層20Bとを有する。
【0068】
基材層10Aは、円筒形状をなしている。また、積層ウェブ層20Bも、基材層10Aの外側表面16A、すなわち外周を覆うようにして、円筒形状をなしている。基材層10Aの構成は、上述した第1実施形態の基材層10と同様とすることができ、また、積層ウェブ層20Bの構成も上述した第1実施形態の積層ウェブ層20と同様とすることができる。これにより、耐熱フェルト材1Bは、耐熱性と耐久性とを同時に優れたものとすることができる。
【0069】
また、積層ウェブ層20Bの目付も、第1実施形態に係る耐熱フェルト材1と同様とすることができるが、アルミ押出形材製造時に用いられる搬送ロールカバーとしての耐熱フェルト材1Bの場合、積層ウェブ層20Bの目付は、好ましくは1500g/m2以上5000g/m2以下、より好ましくは2000g/m2以上4500g/m2以下である。これにより、耐熱フェルト材1Bにおいて、搬送ロールカバーとしての適度な熱伝導性およびクッション性を得ることができる。
【0070】
アルミ押出形材製造時に用いられる搬送ロールカバー材としての耐熱フェルト材1Bの密度は、特に限定されないが、例えば0.3g/cm3以上0.7g/cm3以下、好ましくは0.4g/cm3以上0.6g/cm3以下である。また、耐熱フェルト材1Bの厚さは、特に限定されないが、例えば3mm以上17mm以下、好ましくは4mm以上15mm以下である。更にまた、耐熱フェルト材1Bの寸法は特に限定されず、その用途や用いるロールによって適宜設定することができ、例えば、内径を30mm以上150mm以下、好ましくは40mm以上130mm以下、面長(巾方向の長さ)を50mm以上1400mm以下、好ましくは100mm以上1200mm以下とすることができる。
【0071】
なお、上述した説明においては、耐熱フェルト材1Bは、基材層10Aの外側表面16Aにのみ配置された積層ウェブ層20Bを有するものとして説明したが、上記の態様に限定されず、上述した
図3に示す層構成と同様に、耐熱フェルト材1Bは、基材層10Aの内側表面17Aに配置された積層ウェブ層(図示せず)を有していてもよい。この場合も、基材層10Aの内側表面17Aに配置された積層ウェブ層の構成は、上述した第1実施形態における積層ウェブ層20Aと同様とすることができる。
【0072】
しかしながら、使用時にロールと接触する面(耐熱フェルト材1Bの内側表面19A)の耐久性を向上させること、ロール掛け入れ時に、ロールと接触する面(耐熱フェルト材1Bの内側表面19A)で繊維の脱落や寸法変化を防止するために、基材層10Aの内側表面17Aには、積層ウェブ層が配置されていないことが好ましい。
【0073】
<3.第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る耐熱フェルト材について説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る耐熱フェルト材の一例を示す模式図である。以下、上述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。
【0074】
図5の耐熱フェルト材1Cは、アルミ押出形材製造時に用いられる搬送ベルトである。耐熱フェルト材1Cは、環状をなす帯である。すなわち、耐熱フェルト材1Cは、その全体形状がベルト状をなす。
図5に示すように、耐熱フェルト材1Cは、基材層10Bと基材層10Bの外側表面16Bに配置された積層ウェブ層20Cとを有する。
【0075】
基材層10Bは、ベルト状をなしている。また、積層ウェブ層20Cも、基材層10Bの外側表面16B、すなわち外周を覆うようにして、ベルト状をなしている。基材層10Bの構成は、上述した第1実施形態の基材層10と同様とすることができ、また、積層ウェブ層20Cの構成も上述した第1実施形態の積層ウェブ層20と同様とすることができる。これにより、耐熱フェルト材1Cは、耐熱性と耐久性とを同時に優れたものとすることができる。
【0076】
また、積層ウェブ層20Cの目付も、第1実施形態に係る耐熱フェルト材1と同様とすることができるが、アルミ押出形材製造時に用いられる搬送ベルトとしての耐熱フェルト材1Cの場合、積層ウェブ層20Cの目付は、好ましくは1500g/m2以上5000g/m2以下、より好ましくは2000g/m2以上4500g/m2以下である。耐熱フェルト材1Cにおいて、搬送ベルトとしての適度な熱伝導性およびクッション性を得ることができる。
【0077】
アルミ押出形材製造時に用いられる搬送ベルトとしての耐熱フェルト材1Cの密度は、特に限定されないが、例えば0.3g/cm3以上0.7g/cm3以下、好ましくは0.4g/cm3以上0.6g/cm3以下である。また、耐熱フェルト材1Cの厚さは、特に限定されないが、例えば3mm以上16mm以下、好ましくは4mm以上14mm以下である。更にまた、耐熱フェルト材1Cの寸法は特に限定されず、その用途、例えば配置位置によって適宜設定することができ、例えば、ベルト長を0.5m以上12m以下、好ましくは1m以上10m以下、幅寸法を40mm以上1400mm以下、好ましくは60mm以上1200mm以下とすることができる。
【0078】
なお、上述した説明においては、耐熱フェルト材1Cは、基材層10Bの外側表面16Bにのみ配置された積層ウェブ層20Cを有するものとして説明したが、上記の態様に限定されず、上述した
図3に示す層構成と同様に、耐熱フェルト材1Cは、基材層10Bの内側表面17Bに配置された積層ウェブ層(図示せず)を有していてもよい。この場合も、基材層10Bの内側表面17Bに配置された積層ウェブ層の構成は、上述した第1実施形態における積層ウェブ層20Aと同様とすることができる。
【0079】
しかしながら、使用時にロールと接触する面(耐熱フェルト材1Cの内側表面19B)の耐久性を向上させること、ロール掛け入れ時に、ロールと接触する面(耐熱フェルト材1Cの内側表面19B)で繊維の脱落や寸法変化を防止するために、基材層10Bの内側表面17Bには、積層ウェブ層が配置されていないことが好ましい。
【0080】
<4.第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る耐熱フェルト材について説明する。
図6は、本発明の第4実施形態に係る耐熱フェルト材の一例を示す模式図である。以下、上述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。
【0081】
図6に示す耐熱フェルト材1Dは、連続溶融亜鉛メッキ鋼板ライン(CGL)のロールカバー材である。耐熱フェルト材1Dは、その全体形状が円筒形状をなしている。
図6に示すように、耐熱フェルト材1Dは、基材層10Cと基材層10Cの外側表面16Cに配置された積層ウェブ層20Dと、タブ30とを有する。
【0082】
基材層10Cは、円筒形状をなしている。また、積層ウェブ層20Dも、基材層10Cの外側表面16C、すなわち外周を覆うようにして、円筒形状をなしている。さらに基材層10Cは、その周方向に垂直な方向(すなわち軸方向)の端部が積層ウェブ層20Dから突出して延長されており、タブ30を形成している。タブ30において、耐熱フェルト材1Dがロールに結び付けられて固定される。
【0083】
基材層10Cの構成は、上述した第1実施形態の基材層10と同様とすることができ、また、積層ウェブ層20Dの構成も上述した第1実施形態の積層ウェブ層20と同様とすることができる。これにより、耐熱フェルト材1Dは、耐熱性と耐久性とを同時に優れたものとすることができる。
【0084】
また、積層ウェブ層20Dの目付も、第1実施形態に係る耐熱フェルト材1と同様とすることができるが、CGLのロールカバー材としての耐熱フェルト材1Dの場合、積層ウェブ層20Dの目付は、好ましくは3000g/m2以上6500g/m2以下、より好ましくは3500g/m2以上6000g/m2以下である。これにより、耐熱フェルト材1Dにおいて、CGLのロールカバー材としての適度な熱伝導性およびクッション性を得ることができる。
【0085】
CGLのロールカバー材としての耐熱フェルト材1Dの密度は、特に限定されないが、例えば0.3g/cm3以上0.7g/cm3以下、好ましくは0.4g/cm3以上0.6g/cm3以下である。また、耐熱フェルト材1Dの厚さは、特に限定されないが、例えば4mm以上16以下mm、好ましくは5mm以上15mm以下である。更にまた、耐熱フェルト材1Dの寸法は特に限定されず、その用途や用いるロールによって適宜設定することができ、例えば、内径を90mm以上2500mm以下、好ましくは500mm以上2000mm以下、面長(巾方向の長さ)を1000mm以上3000mm以下、好ましくは1500mm以上2500mm以下とすることができる。
【0086】
なお、上述した説明においては、耐熱フェルト材1Dは、基材層10Cの外側表面16Cにのみ配置された積層ウェブ層20Dを有するものとして説明したが、上記の態様に限定されず、上述した
図3に示す層構成と同様に、耐熱フェルト材1Dは、基材層10Cの内側表面17Cに配置された積層ウェブ層(図示せず)を有していてもよい。この場合も、基材層10Cの内側表面17Cに配置された積層ウェブ層の構成は、上述した第1実施形態における積層ウェブ層20Aと同様とすることができる。
【0087】
しかしながら、使用時にロールと接触する面(耐熱フェルト材1Dの内側表面19C)の耐久性を向上させること、ロール掛け入れ時に、ロールと接触する面(耐熱フェルト材1Dの内側表面19C)で繊維の脱落や寸法変化を防止するために、基材層10Aの内側表面17Cには、積層ウェブ層が配置されていないことが好ましい。
【0088】
<5.耐熱フェルト材の製造方法>
次に、本発明の好適な実施形態に係る耐熱フェルト材の製造方法を、上述した耐熱フェルト材1の製造方法を一例として説明する。
本発明に係る耐熱フェルト材の製造方法は、(a):芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む糸を有し、密度が0.60g/cm3以下の基布を含む少なくとも一層の基材を有する基材層を準備する工程と、(b):積層用ウェブを準備する工程と、(c):(a)で得られた基材層の少なくとも外側表面に、(b)で得られた積層用ウェブを少なくとも一層配置し、ニードリングにより絡合一体化し、耐熱フェルト材を得る工程と、を有する。
【0089】
(5.1. 工程(a))
本実施形態においては、まず、上記の耐熱フェルト材を得る工程に先立ち、基材11を準備する。基材11は、上述した基布12を少なくとも一層準備し、必要に応じて基布12を複数層積層し、ニードルパンチによりこれらを絡合一体化することで、基材層10を準備する。この時、基材層10を構成する基材11の一部または全部の、外側表面14または内側表面15のいずれかに、緩衝用ウェブ13を配置することができる。また、基材10は、緩衝用ウェブ13を省略し、少なくとも一層の基布12のみとすることもできる。最後に、準備した基材11を積層し、基材層10とする。
【0090】
(5.2. 工程(b))
次の工程においては、基材層10の少なくとも外側表面16に積層ウェブ層20を構成する上述した積層用ウェブ21を準備する。ここで、積層用ウェブ21は、好ましくは芳香族ポリアミド繊維およびPBO繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む。これらの繊維は、耐熱性および物理的強度に優れ、本来、得られる耐熱フェルト材1の耐熱性および耐久性の向上に寄与する。一方で、これらの繊維は、その物理的強度のため、従来ニードリングにより基材層に絡合させた場合、針折れを生じさせやすかった。この結果、従来の方法では、基材層と積層ウェブ層とが十分に一体化できず、これらの繊維の物理的強度が十分に耐熱フェルト材の耐久性の向上に寄与することは困難であった。しかしながら、本実施形態においては、上述した基材11を採用することにより、針折れを抑制し、基材層10と積層ウェブ層20とを十分に絡合一体化させることができる。したがって、これらの繊維の物理的強度が効果的に、耐熱フェルト材1の耐久性の向上に寄与することができる。
【0091】
(5.3. 工程(c))
更に次の工程においては、基材層10の少なくとも外側表面14に、少なくとも一層の積層用ウェブ13を配置し、必要に応じて積層用ウェブ13を複数層積層し、ニードルパンチによりこれらを絡合一体化する。
【0092】
なお、ニードルパンチにおいては、緩衝用ウェブと13と基布12を絡合一体化した基材11と積層用ウェブ21を一層または複数層重ねたシートをバッチ式にニードルパンチすることで、耐熱フェルト材1を平板形状、ベルト状、円筒形状とすることができる。また、基材11および積層用ウェブ21を長尺の巻物で準備し、所定の丈寸法となるように複数層連続的に巻き込んでニードルパンチすることで、耐熱フェルト材1を継ぎ目のないベルト状、円筒形状とすることもできる。
【0093】
また、ニードル針貫通用の穴を開けた所定の径のロールに、基材11を一層または複数層巻きつけながらニードルパンチし、更にその上に積層用ウェブ21を一層または複数層巻きつけながらニードルパンチすることで、耐熱フェルト材1を継ぎ目のない円筒形状とすることもできる。
【0094】
以上の工程により、耐熱フェルト材1を得ることができる。なお、得られた耐熱フェルト材1については、用途に応じて適宜裁断しても良い。
他の耐熱フェルト材1B~1Dについても同様である。また、熱プレス用クッション材である耐熱フェルト材1については、その外側表面18や内側表面19に離型材を配置、接着したり、熱プレス加工したりすることも可能である。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0096】
<1.耐熱フェルト材の製造>
(1)基材層の準備
各実施例、比較例の基材層については、以下のものを用いた。
[実施例1、7、13]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:2/20S(20番手スパン糸の2本撚り)、糸密度:18本/インチ(経糸)・15本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:75g/m2、基布密度:0.234g/cm3)を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを6回繰り返して6層の基材からなる基材層(基材層目付量:1170g/m2)を準備した。
【0097】
[実施例19]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:2/20S(20番手スパン糸の2本撚り)、糸密度:18本/インチ(経糸)・15本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:75g/m2、基布密度:0.234g/cm3)を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを3回繰り返して3層の基材からなる基材層(基材層目付量:585g/m2)を準備した。
【0098】
[実施例2、8、14]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:2/20S(20番手スパン糸の2本撚り)、糸密度:24本/インチ(経糸)・21本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:100g/m2、基布密度:0.294g/cm3)を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを5回繰り返して5層の基材からなる基材層(基材層目付量:1100g/m2)を準備した。
【0099】
[実施例20]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:2/20S(20番手スパン糸の2本撚り)、糸密度:24本/インチ(経糸)・21本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:100g/m2、基布密度:0.294g/cm3)を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを2回繰り返して2層の基材からなる基材層(基材層目付量:440g/m2)を準備した。
【0100】
[実施例3、9、15]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:2/20S(20番手スパン糸の2本撚り)、糸密度:35本/インチ(経糸)・30本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:155g/m2、基布密度:0.408g/cm3)を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを4回繰り返して4層の基材からなる基材層(基材層目付量:1100g/m2)を準備した。
【0101】
[実施例21]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:2/20S(20番手スパン糸の2本撚り)、糸密度:35本/インチ(経糸)・30本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:155g/m2、基布密度:0.408g/cm3)を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを2回繰り返して2層の基材からなる基材層(基材層目付量:550g/m2)を準備した。
【0102】
[実施例4、10、16]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:2/20S(20番手スパン糸の2本撚り)、糸密度:46本/インチ(経糸)・40本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:210g/m2、基布密度:0.500g/cm3)を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを3回繰り返して3層の基材からなる基材層(基材層目付量:990g/m2)を準備した。
【0103】
[実施例22]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:2/20S(20番手スパン糸の2本撚り)、糸密度:46本/インチ(経糸)・40本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:210g/m2、基布密度:0.500g/cm3)を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを2回繰り返して2層の基材からなる基材層(基材層目付量:660g/m2)を準備した。
【0104】
[実施例5、11、17、23]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:2/20S(20番手スパン糸の2本撚り)、糸密度:57本/インチ(経糸)・50本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:265g/m2、基布密度:0.589g/cm3)を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを2回繰り返して2層の基材からなる基材層(基材層目付量:770g/m2)を準備した。
【0105】
[実施例6、12、18]
経糸および緯糸がパラ系芳香族ポリアミド繊維からなる織布(糸繊度:1670dtexのマルチフィラメント(1.7dtexのモノフィラメント単糸を1000本束ねたもの)、糸密度:36本/インチ(経糸)・36本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:400g/m2、基布密度:0.597g/cm3)を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを2回繰り返して2層の基材からなる基材層(基材層目付量:1040g/m2)を準備した。
【0106】
[実施例24]
経糸および緯糸がパラ系芳香族ポリアミド繊維からなる織布(糸繊度:1670dtexのマルチフィラメント(1.7dtexのモノフィラメントを1000本束ねたもの)、糸密度:18本/インチ(経糸)・12本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:400g/m2、基布密度:0.597g/cm3)を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、この1層の基材からなる基材層(基材層目付量:520g/m2)を準備した。
【0107】
[比較例1、3、5]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:2/20S(20番手スパン糸の2本撚り)、糸密度:68本/インチ(経糸)・60本/インチ(緯糸)、組織:綾織、目付量:320g/m2、基布密度:0.667g/cm3、商品型番:DA4220W(東洋紡製))を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを2回繰り返して2層の基材からなる基材層(基材層目付量:880g/m2)を準備した。
【0108】
[比較例7]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:2/20S(20番手スパン糸の2本撚り)、糸密度:68本/インチ(経糸)・60本/インチ(緯糸)、組織:綾織、目付量:320g/m2、基布密度:0.667g/cm3、商品型番:DA4220W(東洋紡製))を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、この1層の基材からなる基材層(基材層目付量:440g/m2)を準備した。
【0109】
[比較例2、4、6]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:555dtexマルチフィラメント(1.7dtexのモノフィラメント単糸を332本束ねたもの)、糸密度:35本/インチ(経糸)・35本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:160g/m2、基布密度:0.696g/cm3、商品型番:LZY0535W(東洋紡製))を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを4回繰り返して4層の基材からなる基材層(基材層目付量:1120g/m2)を準備した。
【0110】
[比較例8]
経糸および緯糸がPBO繊維からなる織布(糸繊度:555dtexマルチフィラメント(1.7dtexのモノフィラメント単糸を332本束ねたもの)、糸密度:35本/インチ(経糸)・35本/インチ(緯糸)、組織:1/1平織、目付量:160g/m2、基布密度:0.696g/cm3、商品型番:LZY0535W(東洋紡製))を準備した。そして、PBO繊維からなる緩衝用ウェブ(糸繊度:1.7dtex、繊維長:44mm、目付量:120g/m2)を準備し、基布の表側表面に配置し、ニードリングにより基布と一体化し、基材を準備し、これを2回繰り返して2層の基材からなる基材層(基材層目付量:560g/m2)を準備した。
【0111】
(2)積層ウェブ層の形成
[実施例1~5、比較例1、2]
積層ウェブ層の積層用ウェブのバット繊維として、PBOの短繊維(繊度:1.7dtex、繊維長:44mm)を準備し、1層当り目付量120g/m2の積層用ウェブを得た。各実施例、比較例において、それぞれの最終製品の目付量が、約6800g/m2となるように、積層用ウェブの積層数を表1の通り調整して、繰り返しニードリングを行い、基材層の表側表面に積層ウェブ層を形成した。
【0112】
[実施例6]
積層ウェブ層の積層用ウェブのバット繊維として、パラ系芳香族ポリアミドの短繊維(繊度:2.5dtex、繊維長:51mm)を準備し、1層当り目付量120g/m2の積層用ウェブを得た。各実施例、比較例において、それぞれの最終製品の目付量が、約6800g/m2となるように、積層用ウェブの積層数を表1の通り調整して、繰り返しニードリングを行い、基材層の表側表面に積層ウェブ層を形成した。
【0113】
[実施例7~11、比較例3、4]
積層ウェブ層の積層用ウェブのバット繊維として、PBOの短繊維(繊度:1.7dtex、繊維長:44mm)を準備し、1層当り目付量120g/m2の積層用ウェブを得た。各実施例、比較例において、それぞれの最終製品の目付量が、約4000g/m2となるように、積層用ウェブの積層数を表2の通り調整して、繰り返しニードリングを行い、基材層の表側表面に積層ウェブ層を形成した。
【0114】
[実施例12]
積層ウェブ層の積層用ウェブのバット繊維として、パラ系芳香族ポリアミドの短繊維(繊度:2.5dtex、繊維長:51mm)を準備し、1層当り目付量120g/m2の積層用ウェブを得た。各実施例、比較例において、それぞれの最終製品の目付量が、約4000g/m2となるように、積層用ウェブの積層数を表2の通り調整して、繰り返しニードリングを行い、基材層の表側表面に積層ウェブ層を形成した。
【0115】
[実施例13~17、比較例5、6]
積層ウェブ層の積層用ウェブのバット繊維として、PBOの短繊維(繊度:1.7dtex、繊維長:44mm)を準備し、1層当り目付量120g/m2の積層用ウェブを得た。各実施例、比較例において、それぞれの最終製品の目付量が、約2000g/m2となるように、積層用ウェブの積層数を表3の通り調整して、繰り返しニードリングを行い、基材層の表側表面に積層ウェブ層を形成した。
【0116】
[実施例18]
積層ウェブ層の積層用ウェブのバット繊維として、パラ系芳香族ポリアミドの短繊維(繊度:2.5dtex、繊維長:51mm)を準備し、1層当り目付量120g/m2の積層用ウェブを得た。各実施例、比較例において、それぞれの最終製品の目付量が、約2000g/m2となるように、積層用ウェブの積層数を表3の通り調整して、繰り返しニードリングを行い、基材層の表側表面に積層ウェブ層を形成した。
【0117】
[実施例19~23、比較例7、8]
積層ウェブ層の積層用ウェブのバット繊維として、PBOの短繊維(繊度:1.7dtex、繊維長:44mm)を準備し、1層当り目付量120g/m2の積層用ウェブを得た。各実施例、比較例において、それぞれの最終製品の目付量が、約1000g/m2となるように、積層用ウェブの積層数を表3の通り調整して、繰り返しニードリングを行い、基材層の表側表面に積層ウェブ層を形成した。
【0118】
[実施例24]
積層ウェブ層の積層用ウェブのバット繊維として、パラ系芳香族ポリアミドの短繊維(繊度:2.5dtex、繊維長:51mm)を準備し、1層当り目付量120g/m2の積層用ウェブを得た。各実施例、比較例において、それぞれの最終製品の目付量が、約1000g/m2となるように、積層用ウェブの積層数を表4の通り調整して、繰り返しニードリングを行い、基材層の表側表面に積層ウェブ層を形成した。
【0119】
<2.評価>
(1)針折れ
各実施例および各比較例について、製作時のニードリングにおけるニードル針の針折れ状況について確認した。結果を表1~表4に示す。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
表1~4に示すように、実施例1~24に係る耐熱フェルト材は、耐熱フェルト製造時のニードリングでの針折れの発生がなく、または発生しても比較例に対し、顕著に防止されている。よって、耐熱フェルト材の要求機能である、耐熱性を維持しつつ、針折れが発生せずに製造可能となることから、耐久性についても向上することが可能となった。また、製品目付を比較的大きくしても、このような針折れの発生は十分に抑制されていた。なお、針折れが発生した箇所は、耐熱フェルト材表面にニードリング方向に沿った筋状のうっすらとした線が入る。
【0125】
(2)加熱摩耗試験(厚み保持率)
針折れが発生した実施例4~6、比較例1、2について、
図7に示す加熱摩擦試験機により、加熱摩耗試験を実施し、非針折れ部と針折れ部の試験片の厚み保持率について評価した。
【0126】
図7に示す加熱摩擦試験機100は、試料台110の上面に摩擦子120が固定されている。摩擦子120は、試料台110内に備えられたヒータ111により任意の温度に加熱可能に構成されている。このような加熱可能な摩擦子120に対し、試験片としての耐熱フェルト材1が積層ウェブ層20側にある表側表面18が摩擦子120と接触するように、支持部130により、支持される。さらに、耐熱フェルト材1は、摩擦子120と反対側において重り140が配置され、これにより、表側表面18と摩擦子120との間に所定の荷重(応力)が生じる。この状態で、耐熱フェルト材1を摩擦子120に対し、表側表面18の面方向、すなわち図中矢印の方向に摺動させ、耐熱フェルト材1の表側表面18を摩耗させた。試験条件は以下の通りである。
【0127】
[試験条件]
摩耗子温度:450℃(ヒータにより加熱)
試験片往復回数:3000往復(50往復/分)
試験片摺動距離:100mm
荷重:1720g
試験片サイズ:50mm(ニードリング方向に垂直な方向)×300mm(ニードリング方向)。各実施例、比較例の試験片は、ニードリング時に発生した針折れ部が、試験片の一方の端部(ニードリング方向)から15mmの位置にとなるようにサンプリングし、この部位を針折れ部の厚み保持率の評価部位とし、かつ試験片の他方の端部(ニードリング方向)から15mmの位置(一方の端部から35mmの位置)には、針折れ部が存在しないようにサンプリングし、この部位を非針折れ部の厚み保持率の評価部位とした。
【0128】
結果を表5に示す。なお、表中の厚み保持率については、以下の式に基づき求めた。
厚み保持率=100-[(摩耗前厚み)-(摩耗後厚み)]/(摩耗前厚み)×100
【0129】
【0130】
表5に示す通り、実施例4~6の針折れ部の厚み保持率は比較例1、2の針折れ部の厚み保持率よりも大きく、耐久性が向上していることがわかる。
また、実施例の針折れ部は、比較例の針折れ部同様に針が折れているにも拘らず、比較例の針折れ部よりも厚みの低下が小さい。このことは、比較例の針折れは、ニードリング初期にも発生しやすいことに対し、実施例の針折れは、ニードリングの終盤(高目付品)に発生しており、ニードリングの終盤まで針折れが抑制されていることにより、基材層と積層ウェブ層との絡合一体化がより進行しているものと考えられる。すなわち、実施例の製品は、たとえ針折れが発生しても、ニードリングの終盤(高目付品)までのニードリング効果は得られていることになる。
【0131】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0132】
1、1A 耐熱フェルト材(熱プレス用クッション材)
1B 耐熱フェルト材(アルミ押出形材用搬送ロールカバー)
1C 耐熱フェルト材(アルミ押出形材用搬送ベルト)
1D 耐熱フェルト材(CGLのロールカバー)
10、10A、10B、10C 基材層
11 基材
12 基布
13 緩衝用ウェブ
14 基材の表側表面
15 基材の裏側表面
16、16A、16B、16C 基材層の表側表面
17、17A、17B、17C 基材層の裏側表面
18 耐熱フェルト材の表側表面
19、19A、19B、19C 耐熱フェルト材の裏側表面
20、20A、20B、20C、20D 積層ウェブ層
21 積層用ウェブ
30 タブ