(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】缶蓋開口用タブ、缶蓋、缶蓋開口用タブの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 17/32 20060101AFI20240604BHJP
B21D 51/44 20060101ALI20240604BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B65D17/32
B21D51/44 K
B65D25/20 Q
(21)【出願番号】P 2020064036
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】千地 早紀
(72)【発明者】
【氏名】小南 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】磯村 遼太郎
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/004066(WO,A1)
【文献】実開平5-40132(JP,U)
【文献】特開2019-104531(JP,A)
【文献】特開昭56-4551(JP,A)
【文献】特開2017-121657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 17/32
B65D 25/20
B21D 51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端側に設けられる引き上げ部と、
長手方向の他端側に設けられる押し下げ部と、
前記引き上げ部と前記押し下げ部の間に設けられ、U字状のスロットによって区画形成されて缶蓋本体に固定される固定部と、
前記押し下げ部に設けられる連結片切断痕を除く周縁に連続して形成されるカール部とを備え、
前記固定部と前記引き上げ部との間には、周囲が前記カール部で途切れなく囲まれた段差の無い無加工の撓み面が設けられ、
前記撓み面における少なくとも一面側には表示部が設けられていることを特徴とする缶蓋開口用タブ。
【請求項2】
前記表示部は、レーザーマーキング又はインクジェットプリントによる描画部であることを特徴とする請求項1記載の缶蓋開口用タブ。
【請求項3】
前記撓み面は、周縁から中央より固定部側へ寄った位置で撓み量が最大となる滑らかな撓み形状を有することを特徴とする請求項1又は2記載の缶蓋開口用タブ。
【請求項4】
前記撓み面における最大の撓み量は0.2mm以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の缶蓋開口用タブ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載された缶蓋開口用タブと、
前記固定部が固定されると共に前記押し下げ部の押し下げで破断するスコアを有する缶蓋本体とを備える缶蓋。
【請求項6】
長尺状のタブ材の少なくとも一面側に表示部を描画する表示工程と、
前記表示部から前記タブ材の長手方向に離れた位置に、前記長手方向に延びる連結片を形成するための一対の
孔を形成すると共に、前記表示部と前記連結片との間に固定部を区画形成するU字状のスロットを形成し、前記一対の孔を結んで外周縁の外側を画定するカット線を形成する工程と、
前記カット線の内側をタブの外周形状に沿って曲げ加工する工程と、
前記曲げ加工によって形成された曲げ片をカール加工して、前記連結片を除くタブの周囲にカール部を形成するカール工程とを有し、
前記カール工程では、前記曲げ片にカール成形を施す型部を有するロワーツールと、前記タブ材を前記ロワーツールに押し付けるアッパーツールとが用いられ、
前記ロワーツールは、前記表示部を無加工にするための開口部を有することを特徴とする缶蓋開口用タブの製造方法。
【請求項7】
前記開口部には、前記表示部が形成された前記タブ材の湾曲変形に応じて降下する可動支持部材が配備されていることを特徴とする請求項6に記載された缶蓋開口用タブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶蓋開口用タブ、缶蓋開口用タブを備えた缶蓋、缶蓋開口用タブの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステイオンタブ型の開口用タブを備えた缶蓋が一般に知られている。このような缶蓋は、缶蓋本体のパネルにタブが固定されており、タブは、リベットで缶蓋本体に固定される固定部と、固定部からスリットで分離されて指によって引き上げられる引き上げ部と、固定部を支点として引き上げ部の引き上げに応じて押し下げられる押し下げ部を備えている。このようなタブを備える缶蓋は、タブの押し下げ部が缶蓋本体のパネルに形成されたスコアを破断し、スコアで区画された開口片が缶の内側に没入して缶蓋を開口する。
【0003】
このような缶蓋における開口用のタブは、固定部が支点、引き上げ部が力点、押し下げ部が作用点となるテコの原理を利用して、開口操作時に指に掛かる力の軽減を図っており、固定部から引き上げ部までの長さが固定部から押し下げ部までの長さより長くなっている。
【0004】
このような開口用タブでは、比較的長く形成されている固定部から引き上げ部までの部分に、二次元コードなどの表示情報を付することが行われている。この際、缶蓋本体に対面するタブの裏面側に表示情報を付すると、缶蓋が開口されるまでは表示情報を隠し、缶商品の購入者のみが、缶蓋の開口時にタブの引き上げ部を引き上げることで、表示情報にアクセスできるようになっている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した缶蓋開口用タブは、引き上げ部の引き上げに連動して確実に押し下げ部が押し下げられるように、長手方向に沿って剛性が確保される必要がある。そのために、タブの周囲にカール部を形成すると共に、引き上げ部と固定部の間に補強用の凹凸加工を施すことがなされている。
【0007】
この際、下向きの凸加工を行おうとすると、凸加工でタブの裏面が蓋本体の表面に近づくことになるので、タブの裏面が蓋本体の表面に接触するのを避けるために、加工の精度を緻密に調整することが必要になり、製造工程が煩雑になる問題があった。
【0008】
また、引き上げ部と固定部の間に補強用の凹凸加工を行う場合、表示情報のマーキング位置が中心位置からずれたり、カール部の内側に広く情報をマーキングしたりした場合には、表示情報の一部が凹凸加工の段差部分に係ってしまうことがあり、段差によって表示に歪みが生じて、表示情報の良好な視認性が得られなくなる問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、タブ自体の長手方向の剛性を確保しながら、緻密な加工精度が必要になる補強用の凹凸加工を不要にして、製造工程の簡易化を図ること、表示の位置ずれが生じたり、カール部の内側に広く表示を行ったりする場合であっても、良好な表示の視認性を確保できるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
長手方向の一端側に設けられる引き上げ部と、長手方向の他端側に設けられる押し下げ部と、前記引き上げ部と前記押し下げ部の間に設けられ、U字状のスロットによって区画形成されて缶蓋本体に固定される固定部と、前記押し下げ部に設けられる連結片切断痕を除く周縁に連続して形成されるカール部とを備え、前記固定部と前記引き上げ部との間には、周囲が前記カール部で途切れなく囲まれた段差の無い無加工の撓み面が設けられ、前記撓み面における少なくとも一面側には表示部が設けられていることを特徴とする缶蓋開口用タブ。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する缶蓋開口用タブによると、タブ自体の長手方向の剛性を確保しながら、緻密な加工精度の調整が必要な補強用の凹凸加工を不要にして、製造工程の簡易化を図ることができる。また、このような特徴を有する缶蓋開口用タブによると、表示の位置ずれが生じたり、カール部の内側に広く表示を行ったりする場合であっても、良好な表示の視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る缶蓋開口用タブを示した説明図((a)がA-A断面図、(b)が平面図、(c)が背面図)。
【
図2】本発明の実施形態に係る缶蓋開口用タブとそれが取り付けられる缶蓋の製造方法を示した説明図。
【
図3】缶蓋開口用タブの形成過程を示した背面視の説明図((a)が表示部のマーキング後の状態、(b)が孔加工後の状態、(c)が周囲の打ち抜き加工後の状態)。
【
図4】缶蓋開口用タブの形成過程を示した背面視の説明図((a)が周囲の内側の加工と固定部の成形加工後の状態、(b)が周囲の曲げ加工後の状態、(c)が周囲のカール加工後の状態)。
【
図5】カール加工の加工ツールの動きを示した説明図((a)が加工前、(b)が加工後)。
【
図6】カール加工の加工ツールの他の例を示した説明図。
【
図7】実施例の説明図((a)が平面図、(b)がB-B断面図)。
【
図8】実施例の説明図(
図7(a)におけるA-A断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
図1における矢印X方向は、缶蓋開口用タブの長手方向を示し、矢印Y方向は、平面視してX方向に直交する方向(横幅方向)を示し、矢印Z方向は、缶蓋開口用タブの厚さ方向を示している。
【0014】
図1に示すように、缶蓋開口用タブ(以下、タブ)1は、長手方向(図示X方向)の一端側に引き上げ部2、長手方向(図示X方向)の他端側に押し下げ部3、引き上げ部2と押し下げ部3との間に固定部4が設けられている。
【0015】
引き上げ部2は、開口操作を行う人の指が掛けられる部位であり、図示Z方向に引き上げることで開口操作が行われる。押し下げ部3は、引き上げ部2の引き上げによって逆向きに押し下げられる部位であり、この部位が缶蓋本体のパネルに当接して押し下げられることで缶蓋本体のスコアが破断する。
【0016】
固定部4は、U字状のスロット5によって区画形成されており、また、缶蓋本体のパネルに設けられるリベットが挿入するリベット孔6を備えている。缶蓋本体のパネルに設けられるリベットをリベット孔6に挿入してかしめることで、固定部4が缶蓋本体に固定される。
【0017】
押し下げ部3の中央には、連結片切断痕7が有る。そして、連結片切断痕7を除くタブ1の外周縁には、カール部8が形成されている。カール部8は、引き上げ部2を力点、固定部4を支点、押し下げ部3を作用点とするテコ棒としてタブ1が機能するために、タブ1の長手方向に沿った屈曲剛性を高めている。
【0018】
この際、連結片切断痕7の有る位置ではカール部8に途切れが生じざるを得ないが、連結片切断痕7を押し下げ部3に設けていることで、カール部8の途切れ箇所を、開口操作時に引き上げ部2が引き上げられる際に曲げ力が加わらない位置にすることができる。
【0019】
タブ1には、固定部4の周囲にZ方向とは逆側に凸の成形部10が設けられている。そして、固定部4と引き上げ部2との間の部分であって、成形部10の外側の部分には、段差の無い無加工の撓み面20が形成されている。この撓み面20は、その部分自体には加工ツールによる凹凸加工がなされておらず、その周囲のカール部8を形成する際に、下側に凸の撓み面20が形成される。
【0020】
前述した撓み面20における缶蓋本体に面する裏面21には、表示部Pが設けられている。表示部Pが設けられる裏面21は、周囲がカール部8によって途切れなく囲まれており、カール部8の内側と成形部10の外側において、段差の無い一様な面が形成されている。このため、表示部Pは、多少マーキングの位置が中心からずれた場合であっても、凹凸の段差で視認が悪くなることがなく、また、カール部8の内側に広く表示部Pを設けた場合であって、視認性が悪くなることがない。なお、ここでは、撓み面20の裏面21に表示部Pを設ける例を示しているが、表示部Pは、撓み面20の表面側に設けても、表裏両面に設けても良い。
【0021】
また、撓み面20は、それ自体の撓みによって、タブ1の長手方向の曲げ剛性を高めている。このため、固定部4と引き上げ部2との間には、加工ツールによる凹凸加工がなされていなくても、タブ1は、引き上げ部2を力点、固定部4を支点、押し下げ部3を作用点とするテコ棒として機能するだけの十分な屈曲剛性を有している。
【0022】
タブ1の撓み面20は、
図1のX方向(長手方向)に沿った撓みでは、周縁から中央より固定部4側に寄った点で撓み量が最大になる滑らかな撓み形状を有しており、撓み面20における最大の撓み量は0.2mm以上であることが好ましい。このように撓み面20の最大撓み量の位置を固定部4寄りにした滑らかな撓み形状にすることで、断面二次モーメントが高くなり、タブ1の剛性を高めることができる。また、X方向に沿った撓みの最大撓みの位置を固定部4寄りにすることで、タブ1を缶蓋に取り付けた際に、開口時に引き上げ部2の下に指を入れる隙間を十分に確保できる。
【0023】
表示部Pは、例えば、レーザーマーキング又はインクジェットプリントなどによる描画部であり、2次元コード、ロゴ、絵、文字、番号等が描画されている。表示部Pの描画後には、表示部Pに加工ツールが当たることがないので、タブ1の成形によって表示部Pの視認性が乱れることはない。なお、レーザーマーキングによって表示部Pを形成する場合には、タブ1の表面には着色された塗装面が形成されている。
【0024】
タブ1とそれが取り付けられる缶蓋は、
図2に示すように製造される。すなわち、コイルCから巻き戻されたタブ材Tが、先ず、描画装置(例えば、レーザーマーカ)30に通され、タブ材Tの裏面にレーザーマーキングなどで描画された表示部Pが形成される。次に、表示部Pが形成されたタブ材Tは、タブ成形機31に通され、タブ1が形成される。
【0025】
図3及び
図4は、タブ材Tが描画装置30とタブ成形機31を通過する間のタブ形成過程を示している。
図3(a)には、長尺のタブ材Tの一面側(裏面側)に表示部Pを描画した状態を示している。
図2に示した描画装置30内で表示部Pが形成される。
図3(b)は、タブ材Tにタブ成形機31内で孔加工を施した状態を示している。ここでは、表示部Pからタブ材Tの長手方向に離れた位置に、長手方向に延びる連結片(キャリーポイント)T3を形成するための一対の孔T1,T2を形成すると共に、表示部Pと連結片T3との間に固定部4を区画形成するU字状のスロット5とリベット孔6を形成している。
図3(c)では、一対の孔T1,T2を結んでタブの外周縁の更に外側を画定するカット線T4を打ち抜き加工で形成している。
【0026】
図4(a)は、カット線T4の内側を加工し、リベット孔6とスロット5の近くに成形部10を形成した状態を示しており、
図4(b)は、カット線T4の内側をタブ1の外周形状に沿って曲げ加工した後の状態を示している。
図4(c)は、曲げ加工によって形成された曲げ片T5をカール加工してカール部8を形成した状態を示している。
【0027】
曲げ加工によって形成された曲げ片T5をカール加工して、連結片T3を除くタブの周囲にカール部8を形成するカール工程では、
図5に示すように、曲げ片T5にカール成形を施す型部12Aを有するロワーツール12と、タブ材Tをロワーツール12に押し付けるアッパーツール11とが用いられる。
図5(a)に示すように、アッパーツール11とロワーツール12の間に、曲げ加工が施されたタブ材Tが配置され、
図5(b)に示すように、アッパーツール11とロワーツール12とを近接させることで、タブ材Tの曲げ片T5がロワーツール12の型部12Aに押し付けられ、カール部8が形成される。
【0028】
この際、ロワーツール12は、表示部Pを無加工にするための開口部12Bを有している。開口部12Bは、型部12Aの内側に設けられており、表示部Pが開口部12B内に位置することで、表示部Pが形成されている部分には加工ツール(アッパーツール11とロワーツール12)が当たらない。そして、この開口部12Bがロワーツール12に設けられていることで、カール部8を形成する際に、表示部Pが設けられている部分に下側に凸状の撓み面20が形成される。
【0029】
開口部12Bは、
図5に示すように、開口した状態にしてもよいが、
図6に示すように、可動支持部材12Cを設けても良い。可動支持部材12Cは、開口部12Bにおいて撓み面20が形成される際に、表示部Pが形成されたタブ材Tの湾曲変形に応じて降下する。可動支持部材12Cは、撓み面20を裏面側から支持することで、撓み面20の変形が過剰になされないように制限している。
【0030】
可動支持部材12Cは、例えばスプリングで支持されていて、撓み面20の形成と共に可動するので、この可動支持部材12Cに表示部Pが当たっても表示が潰れるようなことは無い。また、可動支持部材12Cは、ゴムや樹脂のような弾性部材で構成しても良い。
【0031】
タブ成形機31を通過したタブ材Tは、
図4(c)に示すように、タブ1が連結片T3でタブ材Tに連結された状態で、
図2に示すコンバージョンプレス32に送られる。コンバージョンプレス32では、缶蓋本体の成形が行われると共に、缶蓋本体のリベット位置に対してタブ1のリベット孔6を位置決めした後、連結片T3を切断してタブ1をタブ材Tから分離し、リベットをリベット孔6に挿入してかしめ、タブ1を缶蓋本体に取り付ける。これによって、タブ1と、タブ1の固定部4が固定されると共に押し下げ部3の押し下げで破断するスコアを有する缶蓋本体とを備える缶蓋Wを得る。
【0032】
このように、本発明の実施形態に係るタブ1は、缶蓋本体に面する裏面21に表示部Pを形成することで、缶蓋が開口されるまでは表示情報を隠し、缶商品の購入者のみが、缶蓋の開口時にタブ1の引き上げ部2を引き上げることで、表示情報にアクセスできるようになっている。これにより、表示部Pを懸賞やくじなどとして用いることができる。そして、その際に、表示部Pの周囲に途切れの無いカール部8を形成すると共に、表示部Pを無加工の撓み面20の裏面21に設けることで、タブ1の長手方向に沿った十分な曲げ剛性を確保している。
【0033】
そして、表示部Pが形成される撓み面20の裏面21を無加工にすることで、緻密な加工精度の調整を不要にして、製造工程の簡易化を図ることができる。また、表示部Pが形成される撓み面20には凹凸加工の段差が無いので、表示の位置ずれが生じたり、カール部8の内側に広く表示を行ったりする場合であっても、良好な表示の視認性を確保することができる。
【0034】
[実施例]
図7に示すように、X方向幅m=10mm、Y方向幅n=14.4mmの撓み面20を有するタブ1(サンプル1~5)に対して、X方向幅mの中央から固定部4よりの位置、すなわち、(mt/m)>1/2となる位置の断面(B-B断面)において、周縁に対する撓み量を、Y方向に沿って
図7(b)の(1)~(7)の7点の部位で測定した。(1)~(7)は、(1),(7)が周縁上の点であり、(2)~(6)は、Y方向幅nを等間隔に区切った点である。(4)の部位が撓み面20のY方向における中央近傍になる。
【0035】
また、Y方向幅nの中央の断面(A-A断面)において、X方向に沿って
図8の(8),(9),(10),(4),(11),(12)((4)は
図7(b)における位置と同じ)の各点で、周縁に対する撓み量を測定した。
【0036】
各サンプルにおける各部位の撓み量測定値と、各サンプルにおけるタブ折れ強度(N),タブ折れ角度(deg)の測定値、タブ折れ強度評価、タブ折れ角度評価、視認性評価、総合評価を表1に示す。
【0037】
ここでのタブ折れ強度は、タブ1をスコアの無い蓋に取り付け、タブ1を引き上げて、タブ1が折れる直前に引き上げ部2に掛かった力を指す。タブ折れ角度は、タブ1をスコアの無い蓋に取り付け、タブ1を引き上げて、タブ折れが発生した時のタブ1と蓋とがなす角度を指す。各サンプルは、同様に成形された5つの個体からなり、表の数値は、5つの個体に対する測定値の平均値である。
【0038】
【0039】
ここで、タブ折れ強度の評価は、30N以上を〇、31N以上を◎とし、タブ折れ角度の評価は、70°未満を×、70°以上を〇、80°以上を◎としている。
【0040】
また、視認性評価としては、タブ1の撓み面20上の絵柄(又はコード)のゆがみ発生の有無を評価しており、ゆがみ発生が無いものを◎、ゆがみ発生が殆ど無いものを〇としている。
【0041】
上記実施例において、タブ1における撓み面20の最大の撓み量(測定部位(4)の撓み量)を0.2mm以上にすることで、タブ折れ強度とタブ折れ角度の両面で良好な評価が得られ、視認性評価を考慮すると、最大の撓み量が0.4mmより大きい場合(0.67mm)でも視認性は確保できるが、最大の撓み量を0.4mm(0.31mm)以下にすれば視認性は更に良くなる。したがって、総合評価では、サンプル2が特に良く、視認性を重視すると、サンプル2,3,4が特に良いことが確認できた。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:缶蓋開口用タブ(タブ),
2:引き上げ部,3:押し下げ部,4:固定部,5:スロット,
6:リベット孔,7:連結片切断痕,8:カール部,10:成形部,
11:アッパーツール,12:ロワーツール,
20:撓み面,21:裏面,
30:描画装置,31:タブ成形機,32:コンバージョンプレス,
T:タブ材,P:表示部,T1,T2:孔,T3:連結片,T4:カット線,
T5:曲げ片,W:缶蓋