(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】血液浄化システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A61M1/16
(21)【出願番号】P 2020065023
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】金津 英次
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140068(JP,A)
【文献】特開2012-192101(JP,A)
【文献】特開2013-255677(JP,A)
【文献】特開2013-247971(JP,A)
【文献】特開2000-217907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38;60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流通するラインに配置される医療用ポート
を備える血液浄化システムであって、
前記医療用ポートは、
前記ラインを流通する液体が導入される導入口及び液体が導出される導出口が形成された内筒部と、
前記内筒部の外周との間に液体が流通可能な空間が形成されるように該内筒部を収容する筒状の内筒収容部が形成された本体部と、
前記内筒部の延びる方向に対して傾斜して延びると共に、一端側が前記内筒収容部に連通して該内筒収容部を流通する液体を導出する導出路と、
前記本体部における前記導出口が位置する側に配置されて前記内筒収容部の周囲から前記内筒部の延びる方向に前記導出口よりも突出すると共に先端部に開口が形成された外周壁部と、
前記外周壁部の前記開口に着脱可能に前記導出口から離間して取り付けられ、前記開口を開閉可能な蓋部材と、を備え、
前記導出口は、前記蓋部材の開状態において、液体を外部へ導出するための導出部材が接続される接続口であ
り、
前記蓋部材が閉状態である場合に、前記導入口から前記内筒部に導入されて前記導出口から導出された液体は、前記内筒収容部と前記内筒部との間を通って、前記導出路に流通され、
前記蓋部材の開状態を検知するセンサと、
前記蓋部材の開状態を前記センサが検知した場合に、前記導出路を介して、前記内筒収容部と前記内筒部との間に滞留した液体を吸引するように駆動されるポンプと、を備える血液浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ポート及び血液浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腎機能不全の患者に対して、その患者の血液を浄化するために、透析治療が行われている。透析治療においては、患者から取り出した血液を、半透膜からなるダイアライザによって透析(血液透析)し、血液から不純物を除去する。
【0003】
透析治療のうち、血液濾過透析(HDF:Hemodiafiltration)では、血液透析に濾過を組み合わせることで、血液の浄化効率を向上させることができる。HDFにおいては、濾過による血液の減少分を、透析前又は透析後の血液に補液する。HDFのうち、特に、ダイアライザに供給される透析液の一部を補液に用いる技術は、オンラインHDFと呼ばれる。なお、オンラインHDFでは、透析液が血液に添加されることから、透析液における細菌及びエンドトキシンの量を厳密に管理する必要がある。
【0004】
このようなオンラインHDF等を実施するために、血液浄化システムにおける透析液の流通するラインにポートを配置し、このポートを用いて透析液を採取する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。ポートを用いて分流された透析液は、血液への補液や、細菌及びエンドトキシンの量の測定等のために用いられる。
【0005】
このようなポートにおいては、液体を採取するためのチューブの接続口が形成され、その接続口は容易に開閉できることが求められる。そのために、特許文献1には、開口部の内部側に接続口を配置して、開口部に蓋部材を密着させることで、接続口を塞ぐ技術が記載されている。ポートの液体を採取するためのチューブの接続口は、清潔に保たれる必要がある。そのため、特許文献1に記載のポートにおいては、液体を採取するためのチューブの接続口を清潔に保つために、開口部に蓋部材を密着させた状態で接続口を洗浄できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のポートにおいては、洗浄液を接続口側に導入する導入流路と、洗浄液を接続口側から導出する導出流路とが、途中で交差している。そのため、導入流路から導入された洗浄水が接続口側に流通されずに導出流路に流れ込んだり、接続口側に向かう洗浄液と接続口側から戻る洗浄液とが衝突して、洗浄水が接続口側に十分に流通されない可能性がある。よって、接続口を十分に洗浄できるように、洗浄水の流路を確保することが望まれる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、液体を採取するための接続口を清潔に保つために、接続口を十分に洗浄できる医療用ポート及び血液浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、液体が流通するラインに配置される医療用ポートであって、前記ラインを流通する液体が導入される導入口及び液体が導出される導出口が形成された内筒部と、前記内筒部の外周との間に液体が流通可能な空間が形成されるように該内筒部を収容する筒状の内筒収容部が形成された本体部と、前記内筒部の延びる方向に対して傾斜して延びると共に、一端側が前記内筒収容部に連通して該内筒収容部を流通する液体を導出する導出路と、前記本体部における前記導出口が位置する側に配置されて前記内筒収容部の周囲から前記内筒部の延びる方向に前記導出口よりも突出すると共に先端部に開口が形成された外周壁部と、前記外周壁部の前記開口に着脱可能に前記導出口から離間して取り付けられ、前記開口を開閉可能な蓋部材と、を備え、前記導出口は、前記蓋部材の開状態において、液体を外部へ導出するための導出部材が接続される接続口である医療用ポートに関する。
【0010】
また、本発明は、前記医療用ポートと、前記蓋部材の開状態を検知するセンサと、前記蓋部材の開状態を前記センサが検知した場合に、前記導出路を介して、前記内筒収容部に滞留した液体を吸引するように駆動されるポンプと、を備える血液浄化システムに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体を採取するための接続口を清潔に保つために、接続口を十分に洗浄できる医療用ポート及び血液浄化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態における血液浄化システムに用いられるコンソールを示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態における血液浄化システムを示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るポートの斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るポートの断面図であり、
図3のA-A線断面図である。
【
図5】本実施形態に係るポートの断面図であり、
図3のB-B線断面図である。
【
図6】本実施形態に係るポートの開口を開放した状態を示す断面図である。
【
図7】本実施形態に係るポートの導出口に分岐ラインを接続した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態における血液浄化システム100に用いられるコンソール500を示す斜視図である。
図2は、本実施形態における血液浄化システム100を示す模式図である。
【0014】
血液浄化システム100は、オンラインHDFを実施することが可能なシステムである。血液浄化システム100は、
図1に示すコンソール500を備える。コンソール500のコンソール本体501の前面板502には、医療用ポートとしてのポート1が取り付けられる。本実施形態においては、
図1に示すように、コンソール500のコンソール本体501の前面板502は、水平方向に対して角度α傾いて形成される。ポート1は、水平方向に対して角度α傾いた状態で、前面板502に取り付けられる。
【0015】
血液浄化システム100は、
図2に示すように、ダイアライザ200と、動脈側血液ラインL3と、静脈側血液ラインL4と、第1薬液ラインL61と、第2薬液ラインL62と、血液浄化装置10と、コンソール500と、を備える。コンソール500には、
図1及び
図2に示すように、操作パネル510、クランプユニット520、動脈側血液ラインL3の一部、静脈側血液ラインL4の一部、第1薬液ポンプ531、第2薬液ポンプ532、接続カプラ560(動脈側カプラ561、静脈側カプラ562)、血液ポンプ540及び制御装置550が配置されている。
【0016】
ダイアライザ200は、血液と透析液との間で透析を行うことで血液を浄化する。
動脈側血液ラインL3は、患者Hから採取した血液が流通する。動脈側血液ラインL3は、上流側が患者Hの動脈に接続され下流側がダイアライザ200に接続される。動脈側血液ラインL3を流通した血液は、ダイアライザ200に供給される。動脈側血液ラインL3には、動脈側エアトラップチャンバ301が配置される。
【0017】
動脈側血液ラインL3の途中には、コンソール500が配置される。コンソール500において、動脈側血液ラインL3が通る部分には、クランプユニット520及び血液ポンプ540が配置される。
【0018】
クランプユニット520は、
図1に示すように、ユニット化されて構成されており、コンソール本体501の前面板502に取り付けられる。クランプユニット520は、
図2に示すように、動脈側血液ラインL3を構成するチューブ、及び静脈側血液ラインL4(後述)を構成するチューブをクランプして保持する。
【0019】
血液ポンプ540は、
図1に示すように、コンソール本体501の前面板502に取り付けられる。血液ポンプ540は、
図2に示すように、動脈側血液ラインL3におけるクランプユニット520よりも下流側に配置される。血液ポンプ540は、動脈側血液ラインL3を構成するチューブをローラでしごくことにより、動脈側血液ラインL3の内部の血液やプライミング液等の液体を送り出す。
【0020】
第1薬液ラインL61は、血液透析中に必要な薬液を動脈側血液ラインL3に供給する。第1薬液ラインL61は、一端側(基端側)が薬液を送り出す第1薬液ポンプ531に接続され、他端側(先端側)が動脈側血液ラインL3における血液ポンプ540とダイアライザ200との間に接続される。
【0021】
第2薬液ラインL62は、血液透析中に必要な薬液を動脈側血液ラインL3に供給する。第2薬液ラインL62は、一端側(基端側)が薬液を送り出す第2薬液ポンプ532に接続され、他端側(先端側)が動脈側血液ラインL3における第1薬液ラインL61との接続部とダイアライザ200との間に接続される。
【0022】
静脈側血液ラインL4は、上流側がダイアライザ200に接続され下流側が患者Hの静脈に接続される。ダイアライザ200から排出された血液は、患者Hに戻される。静脈側血液ラインL4には、静脈側エアトラップチャンバ401が配置される。静脈側血液ラインL4の途中には、静脈側エアトラップチャンバ401及びコンソール500が配置される。コンソール500において、静脈側血液ラインL4が通る部分には、クランプユニット520が配置される。
【0023】
また、
図2に示すように、血液浄化装置10は、透析液容器110と、透析液供給ラインL1と、医療用ポートとしてのポート1と、透析液回収ラインL2と、透析液回収容器120と、を備える。透析液容器110、透析液供給ラインL1、ポート1、透析液回収ラインL2及び透析液回収容器120は、コンソール500に配置される。
【0024】
透析液容器110は、透析液を収容する。
透析液供給ラインL1は、上流側が透析液容器110に接続され、下流側がダイアライザ200に接続される。透析液供給ラインL1には、ダイアライザ200に供給される透析液が流通する。透析液供給ラインL1は、第1透析液供給ラインL11と、第2透析液供給ラインL12と、を有する。第1透析液供給ラインL11は、上流側が透析液容器110に接続され、下流側が静脈側カプラ562を介してダイアライザ200に接続される。第2透析液供給ラインL12は、上流側が透析液容器110に接続され、下流側が第1透析液供給ラインL11に合流する。
【0025】
ポート1は、
図2に示すように、コンソール500において、透析液供給ラインL1(第2透析液供給ラインL12)に配置される。ポート1は、ポート1に接続される分岐ラインL5を通じて、動脈側エアトラップチャンバ301等、又は静脈側エアトラップチャンバ401等に透析液を供給する。ポート1については、後段で詳述する。
【0026】
透析液回収ラインL2は、上流側が動脈側カプラ561を介してダイアライザ200に接続され、ダイアライザ200から排出される透析液が流通する。
透析液回収容器120は、透析液回収ラインL2の下流側に接続され、透析液回収ラインL2を流通して回収された透析液を貯留する。
血液浄化システム100に含まれる各ラインには、必要に応じてポンプ、バルブ等が配置される。
【0027】
制御装置550は、情報処理装置(コンピュータ)により構成されており、制御プログラムを実行することにより、血液浄化システム100の動作を制御する。制御装置550は、以下に説明する各工程の制御プログラムを実行することにより、血液浄化システム100の動作を制御して運転する。具体的には、制御装置550は、動脈側血液ラインL3、静脈側血液ラインL4及び血液浄化装置10に配置された各種のポンプやクランプ等の動作を制御して、血液浄化システム100により行われる各種工程(プライミング工程、脱血工程、透析工程、補液工程、返血工程等)を実行する。
【0028】
ポート1について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係るポート1の斜視図である。
図4は、本実施形態に係るポート1の断面図であり、
図3のA-A線断面図である。
図5は、本実施形態に係るポート1の断面図であり、
図3のB-B線断面図である。
図6は、本実施形態に係るポート1の開口を開放した状態を示す断面図である。
図7は、本実施形態に係るポート1の導出口32に分岐ラインL5を接続した状態を示す断面図である。
【0029】
図3及び
図4に示すように、ポート1は、コンソール500のコンソール本体501の前面板502(
図1参照)に取り付けられる。ポート1は、コンソール本体501の前面板502が水平方向に対して角度α傾いて形成されるため、水平方向に対して角度α傾いた状態で、前面板502に取り付けられる。
図3~
図5に示すように、ポート1は、内筒部3と、本体部4と、導出路としての傾斜筒部5と、蓋部材7と、軸部材としてのシャフト8と、付勢部材としてのバネ9と、センサ11と、を備える。
【0030】
本体部4は、
図3及び
図4に示すように、厚みを有して形成される。本体部4は、コンソール500のコンソール本体501の前面板502の裏面側に配置され、本体部4の上面4aは、コンソール本体501の前面板502に沿って配置される。本体部4には、
図4及び
図5に示すように、内筒部3が配置される内筒収容部41、傾斜筒部5が収容される傾斜筒収容部43、及び外周壁部6が形成される。内筒収容部41は、コンソール本体501の前面板502と直交する方向に延びる貫通穴として形成される。傾斜筒収容部43は、一端側が内筒収容部41に連通し、コンソール本体501の前面板502と直交する方向に対して傾斜した方向に延びる穴として形成される。
【0031】
内筒部3は、円筒状に形成される。内筒部3は、
図4及び
図5に示すように、内筒収容部41に収容される。内筒部3は、コンソール500のコンソール本体501の前面板502の裏面側において、コンソール500のコンソール本体501の前面板502と直交する方向に延びる。本実施形態においては、コンソール本体501の前面板502は、水平方向に対して角度α傾いて配置されており、内筒部3は、コンソール本体501の前面板502に直交する方向に延びている。つまり、内筒部3は、垂直方向に対して角度α傾いて配置される。
【0032】
内筒部3の外周と内筒収容部41の内壁との間には、内筒部3の傾斜方向の一端側(
図4及び
図5に示す上端側)から中央部に亘って、透析液が流通可能な空間が形成される。つまり、内筒収容部41は、傾斜方向の一端側から中央部に亘って、その内径が内筒部3の外径よりも大きく形成される。内筒部3の傾斜方向の中央部から他端側の部分においては、内筒部3の外径と内筒収容部41の内径は略同一に形成される。これにより、傾斜方向の中央部から他端側の部分においては、内筒収容部41は密閉されている。
【0033】
図4及び
図5に示すように、内筒部3には、上記の透析液供給ラインL1(第2透析液供給ラインL12)を流通する透析液が導入される導入口31及び透析液が導出される導出口32が形成される。内筒部3は、導入口31と導出口32との間に形成される導入路33を備える。内筒部3の導出口32側の外周には、ネジ山36が設けられる。内筒部3は、板状の押さえ部材35を介して、締結部材34によって本体部4に固定される。
【0034】
傾斜筒部5は、円筒状に形成される。傾斜筒部5は、
図4及び
図5に示すように、一端側が傾斜筒収容部43に収容される。傾斜筒部5は、コンソール本体501の前面板502の裏面側において、内筒部3が延びる方向に対して傾斜して延びて配置される。傾斜筒部5は、一端側が内筒収容部41における内筒部3の外周と内筒収容部41の内壁との間に空間が形成される部分に連通し、他端側が透析液供給ラインに連結される導出路51を形成する。傾斜筒部5は、内筒収容部41を流通する透析液を透析液供給ラインL1に導出する。傾斜筒部5は、板状の押さえ部材53を介して、締結部材52によって本体部4に固定される。
【0035】
外周壁部6は、本体部4における導出口32が位置する側に配置される。外周壁部6は、内筒収容部41の周囲から内筒部3の延びる方向に内筒部3の導出口32よりも突出し、コンソール本体501の前面板502に形成された孔503を貫通する。外周壁部6の先端側には、開口61が形成される。開口61の内部側には、内筒部3の導出口32が配置される。導出口32は、蓋部材7の開状態において、液体を外部へ導出するための分岐ラインL5(導出部材)が接続される接続口である(
図7参照)。導出口32の上端部は、開口61の上端部から開口61の内部側に入った位置において、分岐ラインL5に接続可能に配置される。外周壁部6の内周面は、開口61側に向かって開口61の径が大きくなるように傾斜したテーパ面62を含む。
【0036】
蓋部材7は、
図3に示すように、平面視において所定方向に延びて形成される。蓋部材7は、開口61に着脱可能に、内筒部3の導出口32の上端部から離間して取り付けられる。蓋部材7は、外周壁部6の開口61を開閉可能に構成される。血液浄化システム100は、蓋部材7の閉状態において、透析液を内筒部3から傾斜筒部5に流通させることで透析動作を実行し、又は、洗浄液を内筒部3から傾斜筒部5に流通させることで洗浄動作を実行する。
【0037】
蓋部材7は、
図2及び
図3に示すように、コンソール本体501の前面板502の表面側に配置される。蓋部材7は、外周壁部6に着脱可能に取り付けられる。蓋部材7は、
図5に示すように、基端側が上下方向に延びるシャフト8の上端に取り付けられ、先端側がコンソール本体501の前面板502の表面方向に突出して形成される。蓋部材7は、開口61よりも大径の蓋本体71と、蓋本体71に着脱可能に取り付けられるスライド部材72と、を備える。
【0038】
蓋本体71は、
図3に示すように、長手方向に延びて形成される。蓋本体71は、蓋部材7が操作される際に、使用者により把持される。蓋本体71は、シャフト8(
図6参照)を引き上げた状態でコンソール本体501の前面板502の表面方向に沿って回動可能に構成される。
【0039】
スライド部材72は、
図4及び
図5に示すように、蓋本体71に取り付けられ、保持部分73と、保持部分73に着脱可能に保持される密閉用部分76と、を有する。
【0040】
保持部分73は、スライド筐体74と、連結部材75と、を有する。スライド筐体74は、蓋本体71の長手方向の先端側においてスライド移動により着脱可能に取り付けられる。スライド筐体74は、下方に突出する円筒状の筒状内壁部741を有する。筒状内壁部741は、開口61が閉鎖されている状態において、密閉用部分76及び外周壁部6の外周を囲うように配置される。
【0041】
密閉用部分76は、樹脂又はゴムからなる弾性部材によって構成され、突出方向側の周縁がテーパ面62に当接して開口61を密閉する。つまり、密閉用部分76は、その外径が、外周壁部6の内径よりも大きく、かつ、外周壁部6の外径よりも小さくなるように構成される。密閉用部分76は、保持部分73に保持されて支持される。密閉用部分76がテーパ面62に当接した状態において、密閉用部分76と内筒部3の導出口32の上端部との間には、透析液又は洗浄液が通過するための隙間が形成される。
【0042】
シャフト8は、
図5に示すように、コンソール本体501の前面板502と直交する方向に延びる。シャフト8は、本体部4に形成された孔42に挿通され、コンソール本体501の前面板502に形成された孔504を貫通する。シャフト8は、コンソール本体501の前面板502の表面側において蓋本体71の基端側に接続される。シャフト8は、本体部4に対して軸方向に摺動可能である。シャフト8は、蓋部材7と本体部4との間の距離を変更可能、かつ、蓋部材7を本体部4に対して回転可能に蓋本体71と本体部4とを連結する。また、シャフト8は、コンソール本体501の前面板502の裏面側の端部において外周方向に延出したバネ受け81を有する。
【0043】
バネ9は、
図5に示すように、シャフト8の、本体部4とバネ受け81との間に巻回される。バネ9は、圧縮された状態で、本体部4とバネ受け81との間に配置され、蓋部材7を本体部4側に付勢する。バネ9は、
図5に示すように、蓋部材7を本体部4側に付勢することで、密閉用部分76をテーパ面62に密着させる。開口61を開放する際には、
図6に示すように、バネ9による付勢力に抗して蓋本体71をシャフト8の軸方向に移動させることで、蓋部材7と本体部4との間の距離を広げる。
【0044】
また、内筒部3の導出口32に分岐ラインL5を接続する場合には、
図6に示すように、蓋本体71を、外周壁部6と筒状内壁部741とがシャフト8の軸方向において重複しない位置まで引いた状態で、
図7に示すように、蓋部材7が開口61を覆わない位置までシャフト8を中心に本体部4に対して回転させる。これにより、開口61の内部側に配置された内筒部3の導出口32に分岐ラインL5を接続できる。
【0045】
センサ11は、
図4に示すように、バネ受け81の下方に配置される。センサ11は、蓋部材7の開状態を検知する。センサ11は、センサ本体11aと、センサスイッチ11bと、を有する。センサスイッチ11bは、シャフト8が軸方向に摺動することで、バネ受け81により押圧される押圧状態、又は、バネ受け81により押圧されない非押圧状態となる。センサスイッチ11bは、蓋部材7がシャフト8を引き下げた状態において押圧状態で下方側(
図4参照)に位置する。センサスイッチ11bは、蓋部材7がシャフト8を引き上げた状態において非押圧状態で上方側(
図6参照)に位置する。そして、センサ本体11aは、センサスイッチ11bが上方側に位置した場合に、蓋部材7が開状態にあることを検知し、センサスイッチ11bが下方側に位置した場合に、蓋部材7が閉状態にあることを検知する。
【0046】
制御装置550は、蓋部材7の開状態をセンサ11が検知した場合に、導出路51を介して、内筒収容部41に滞留した液体を吸引するようにポンプ(図示せず)を駆動する。ポンプ(図示せず)は、導出路51の下流側に配置される。このように構成されることで、蓋部材7の開状態の場合には、ポンプ(図示せず)が内筒収容部41に滞留した液体を吸引するため、内筒収容部41には、液体が滞留されない。よって、内筒部3の導出口32に分岐ラインL5を接続しても、液体が内筒収容部41から溢れることが抑制される。
【0047】
続いて、ポート1の使用方法(動作)について説明する。
まず、開口61が閉鎖されている状態においては、
図4に示すように、バネ9の復元力によって、蓋部材7が本体部4側に付勢される。蓋部材7が本体部4側に付勢されることで、密閉用部分76がテーパ面62に密着し、開口61が密閉される。この際に、透析液は、透析液供給ラインL1を流通した後、導入口31から導入路33を流通する。その後、導出口32から導出された透析液は、密閉用部分76と内筒部3の導出口32の上端部との間の隙間、内筒部3の外周と内筒収容部41の内壁との間の空間を流通し導出路51を通じて再び透析液供給ラインL1に導出される。
【0048】
次に、蓋部材7を回転させることで開口61を開放して、導出口32に分岐ラインL5を接続する場合について説明する。開口61を開放する際には、
図6に示すように、血液浄化システム100の第2透析液供給ラインL12における透析液の流通を停止した後に、バネ9による付勢力に抗して蓋本体71をシャフト8の軸方向に移動させることで、蓋部材7と本体部4との間の距離を広げる。続いて、蓋本体71を、外周壁部6と筒状内壁部741とがシャフト8の軸方向において重複しない位置まで引いた状態で、
図7に示すように、蓋部材7が開口61を覆わない位置までシャフト8を中心に本体部4に対して回転させる。これにより、開口61が開放され、開口61の内部側に配置される導出口32は、分岐ラインL5に接続可能に、外部に露出される。
【0049】
ここで、蓋本体71をシャフト8の軸方向に移動させることで、センサスイッチ11bは、上方側に上昇する。これにより、センサスイッチ11bが上方側に位置することにより蓋部材7が開状態にあることがセンサ11により検知される。制御装置550は、センサ11により蓋部材7が開状態にあることが検知されることで、内筒収容部41に滞留した液体を吸引するように、ポンプ(図示せず)を駆動する。これにより、蓋部材7が開状態にある場合には、内筒収容部41には、液体が滞留されない。
【0050】
続いて、
図7に示すように、分岐ラインL5を、内筒部3の導出口32に接続する。導出口32は、蓋部材7の開状態において、外周壁部6の開口61の内部側に配置され、液体を外部へ導出するための分岐ラインL5が接続される接続口である。分岐ラインL5の端部には、内側にネジ山36に対応する溝の形成された筒状の接続部材37が配置され、その接続部材37が内筒部3の導出口32に螺合される。
【0051】
ここで、蓋部材7が開状態にある場合には、前述の通り、センサ11により蓋部材7が開状態にあることを検知されることで、ポンプ(図示せず)により、内筒収容部41に滞留した液体を吸引するように駆動されて、内筒収容部41には、液体が滞留されない。これにより、内筒部3の導出口32に分岐ラインL5を接続しても、液体が内筒収容部41から溢れることが抑制される。
【0052】
分岐ラインL5が内筒部3に接続された状態においては、透析液供給ラインL1から導入路33に導入された透析液は、導出口32から分岐ラインL5に導出される。
【0053】
また、導出口32は、外周壁部6の開口61の内部側に配置され、分岐ラインL5に接続される。導出口32は、清潔に保たれる必要がある。そのため、本実施形態においては、液体を採取するための導出口32を清潔に保つために、開口61が閉鎖されている状態で、導出口32を洗浄できるように構成されている。
【0054】
導出口32を洗浄する場合には、透析液を導入口31から導出口32に導出する場合と同様の構成で、透析液に代えて洗浄液を導入口31から導入する。具体的には、
図4に示すように、蓋部材7を閉状態にした状態で、洗浄液を導入口31から導入する。これにより、前述の透析液が流通する場合と同様に、洗浄液は、透析液供給ラインL1を流通した後、導入口31から導入路33を流通する。その後、導出口32から導出された洗浄液は、密閉用部分76と内筒部3の導出口32の上端部との間の隙間、内筒部3の外周と内筒収容部41の内壁との間の空間を流通し導出路51を通じて再び透析液供給ラインL1に導出される。よって、洗浄液を内筒部3の導入口31から導出口32に流通させて導出路51に導出させることで、導出口32を洗浄液で洗浄できる。これにより、蓋部材7の閉状態において、分岐ラインL5が接続される接続口である導出口32を十分かつ容易に洗浄することができる。従って、導出口32を清潔に保つことができる。
【0055】
上記実施形態に係るポート1によれば、以下の効果が奏される。
上記実施形態では、ポート1が、透析液供給ラインL1(第2透析液供給ラインL12)を流通する透析液が導入される導入口31及び透析液が導出される導出口32が形成された内筒部3と、内筒部3の外周との間に液体が流通可能な空間が形成されるように内筒部3を収容する筒状の内筒収容部41が形成された本体部4と、内筒部3の延びる方向に対して傾斜して延びると共に、一端側が内筒収容部41に連通して内筒収容部41を流通する液体を導出する導出路51と、内筒収容部41の周囲から内筒部3の延びる方向に導出口32よりも突出すると共に先端部に開口61が形成された外周壁部6と、外周壁部6の開口61に着脱可能に導出口32から離間して取り付けられ、開口61を開閉可能な蓋部材7と、を含んで構成し、導出口32は、蓋部材7の開状態において、液体を外部へ導出するための分岐ラインL5が接続される接続口であるように構成した。
【0056】
そのため、洗浄液を内筒部3の導入口31から導出口32に流通させて導出路51に導出させることで、導出口32を洗浄液で洗浄できる。これにより、蓋部材7の閉状態において、洗浄水の流路が確保されて、分岐ラインL5が接続される接続口である導出口32を十分かつ容易に洗浄することができる。よって、導出口32を清潔に保つことができる。
【0057】
また、上記実施形態では、血液浄化システム100を、医療用ポート1と、蓋部材7の開状態を検知するセンサ11と、蓋部材7の開状態をセンサ11が検知した場合に、導出路51を介して、内筒収容部41に滞留した液体を吸引するように駆動されるポンプと、を備えて構成した。これにより、蓋部材7が開状態にある場合には、内筒収容部41には、液体が滞留されない。よって、蓋部材7が開状態にある場合に、内筒収容部41には液体が滞留されないため、内筒部3の導出口32に分岐ラインL5を接続しても、液体が内筒収容部41から溢れることが抑制される。
【0058】
なお、内筒部3の導出口32の開口下端部の位置を、外周壁部6の開口61の開口下端部の位置よりも低くすることで、液体が内筒収容部41からより溢れにくくなる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
上記実施形態においては、オンラインHDFを実施する血液浄化システム100にポート1を用いたが、本発明に係る医療用ポートの用途はこれに限定されない。また、本発明に係る医療用ポートは、透析液以外の液体が流通するラインに配置してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 ポート(医療用ポート)
3 内筒部
4 本体部
6 外周壁部
7 蓋部材
11 センサ
31 導入口
32 導出口(接続口)
41 内筒収容部
51 導出路
61 開口
L5 分岐ライン(導出部材)
100 血液浄化システム