(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20240604BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20240604BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2020086872
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中東 大樹
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-301721(JP,A)
【文献】特開2011-148138(JP,A)
【文献】特開2018-075726(JP,A)
【文献】特開平10-166370(JP,A)
【文献】特開2004-122407(JP,A)
【文献】特開2013-022790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 35/00-35/18
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤの製造方法であって、
加硫金型の外部に置かれた生タイヤのビード開口部からブラダーを挿入し、前記ブラダーをタイヤ内腔内で初期膨張させる工程と、
前記初期膨張したブラダーと一緒に前記生タイヤを加硫金型の中にセットする工程と、
前記加硫金型を閉じた後、前記初期膨張したブラダーをさらに膨張させて前記生タイヤを前記加硫金型に押し付ける工程とを含
み、
前記タイヤ内腔内で前記初期膨張している前記ブラダーの膨張量を制御する工程を含み、
前記制御する工程は、前記ブラダーの膨張量を測定する工程を含み、
前記ブラダーの膨張量を測定する工程は、前記ブラダーにレーザを照射することで測定する、
空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記生タイヤをローダーで保持する工程を含み、
前記保持する工程は、前記初期膨張させる工程に先立ち行われる、請求項1記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記ローダーを前記生タイヤから取り外す工程を含み、
前記取り外す工程は、前記セットする工程に先立ち行われる、請求項2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記制御する工程は、前記取り外す工程に先立ち行われる、請求項
3に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記膨張量は、前記ブラダーの予め定められた複数の位置で測定される、請求項
1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記膨張量は、タイヤ回転軸上の位置を含んで測定される、請求項
1ないし5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記膨張量は、タイヤ回転軸を中心として前記生タイヤの周方向に等ピッチで測定される、請求項
1ないし6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項8】
空気入りタイヤの製造装置であって、
下型と、前記下型と離隔して位置する上型と、移動具と、制御具とを含み、
前記下型は、横向きの生タイヤを下側から保持する成形面と、前記成形面に置かれた前記生タイヤのビード開口部を通って前記生タイヤの内腔内で膨張可能なブラダーとを有し、
前記移動具は、前記下型と前記上型とが当接して前記生タイヤの加硫空間を形成するように、前記下型又は前記上型を移動させるものであり、
前記制御具は、前記移動具による前記下型又は前記上型の移動に先立ち、前記下型に置かれた前記生タイヤのタイヤ内腔内で前記ブラダーを初期膨張させ、
横向きの前記生タイヤを上側から保持するローダーをさらに含み、
前記ローダーは、前記初期膨張された前記ブラダーの膨張量を測定するために、前記ブラダーにレーザを照射する測定具を含む、
空気入りタイヤの製造装置。
【請求項9】
前記測定具は、非接触型の変位計である、請求
項8に記載の空気入りタイヤの製造装置。
【請求項10】
前記測定具は、タイヤ回転軸を中心として前記生タイヤの周方向に等ピッチで測定する変位計である、請求項
9に記載の空気入りタイヤの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、生タイヤを加硫するためのタイヤ加硫機、及び、このタイヤ加硫機を用いた生タイヤの加硫方法が記載されている。前記タイヤ加硫機は、タイヤ加硫位置に配された上金型、ブラダーを備えた下金型、前記下金型をタイヤ供給位置とタイヤ加硫位置との間で移動させるための移動装置、及び、前記下金型に前記生タイヤを供給させるためのタイヤ供給装置を含んでいる。そして、前記加硫方法としては、先ず、前記タイヤ供給装置に保持された前記生タイヤを、前記タイヤ供給位置に配された前記下金型に装着する。次に、前記タイヤ供給装置を前記生タイヤから取り外す。そして、前記移動装置によって、前記生タイヤと前記下金型とを前記タイヤ加硫位置に移動させて、前記上金型にセットする。最後に、前記下金型の前記ブラダーが膨張されて生タイヤが加硫される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤを精度良く加硫成形するためには、ブラダーを適切に膨張させることが必要である。しかしながら、ブラダーと生タイヤとの位置ずれや、ブラダーが折りたたまれたときにシワが完全にのびないまま膨張すること等により、予期しないブラダーの膨張が生じることがある。このような場合、加硫成形されたタイヤは、ブラダーのシワがタイヤの内腔面に形成されたり、ビードトウ部からゴムがはみ出し(L/TO)たりするほか、ユニフォミティが悪化するおそれがあり、タイヤの品質が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、タイヤ品質を向上し得る空気入りタイヤの製造方法及びその製造装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法であって、加硫金型の外部に置かれた生タイヤのビード開口部からブラダーを挿入し、前記ブラダーをタイヤ内腔内で初期膨張させる工程と、前記初期膨張したブラダーと一緒に前記生タイヤを加硫金型の中にセットする工程と、前記加硫金型を閉じた後、前記初期膨張したブラダーをさらに膨張させて前記生タイヤを前記加硫金型に押し付ける工程とを含む。
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、前記生タイヤをローダーで保持する工程を含み、前記保持する工程は、前記初期膨張させる工程に先立ち行われる、のが望ましい。
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、前記ローダーを前記生タイヤから取り外す工程を含み、前記取り外す工程は、前記セットする工程に先立ち行われる、のが望ましい。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、前記タイヤ内腔内で前記初期膨張している前記ブラダーの膨張量を制御する工程を含み、前記制御する工程は、前記取り外す工程に先立ち行われる、のが望ましい。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、前記制御する工程が、前記ブラダーの膨張量を測定する工程を含む、のが望ましい。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、前記制御する工程が、前記ブラダーの膨張状態を調整する工程を含む、のが望ましい。
【0012】
本発明は、空気入りタイヤの製造装置であって、下型と、前記下型と離隔して位置する上型と、移動具と、制御具とを含み、前記下型は、横向きの生タイヤを下側から保持する成形面と、前記成形面に置かれた前記生タイヤのビード開口部を通って前記生タイヤの内腔内で膨張可能なブラダーとを有し、前記移動具は、前記下型と前記上型とが当接して前記生タイヤの加硫空間を形成するように、前記下型又は前記上型を移動させるものであり、前記制御具は、前記移動具による前記下型又は前記上型の移動に先立ち、前記下型に置かれた前記生タイヤのタイヤ内腔内で前記ブラダーを初期膨張させる。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤの製造装置は、横向きの前記生タイヤを上側から保持するローダーをさらに含む、のが望ましい。
【0014】
本発明に係る空気入りタイヤの製造装置は、前記ローダーが、前記初期膨張された前記生タイヤの膨張量を測定するための測定具を含む、のが望ましい。
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤの製造装置は、前記測定具が、非接触型の変位計である、のが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の空気入りタイヤの製造方法及びその製造装置は、上記の構成を採用したことによって、タイヤ品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの製造方法に使用される製造装置を模式的に示す断面図である。
【
図2】(a)は、本実施形態のフローチャート、(b)は、(a)の保持工程のフローチャート、(c)は、(a)の制御工程のフローチャートある。
【
図3】本実施形態の第2保持工程を模式的に示す製造装置の断面図である。
【
図4】本実施形態の初期膨張工程を模式的に示す製造装置の断面図である。
【
図5】本実施形態の取り外し工程を模式的に示す加硫装置の断面図である。
【
図6】本実施形態のセット工程及び押し付け工程を模式的に示す製造装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本発明の空気入りタイヤの製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある)は、生タイヤT(
図1に示す)を形成する工程と、形成された生タイヤTを加硫する加硫工程とを含んでいる。生タイヤTを形成する工程(以下、単に「生タイヤ形成工程」という場合がある。)は、周知の方法が採用されるので、その詳細な説明が省略される。
【0019】
図1は、本実施形態の加硫工程で使用される空気入りタイヤの製造装置(以下、単に「製造装置」ということがある)1の一実施形態を概念的に説明する断面図である。本実施形態の製造装置1は、加硫金型2と移動具3と制御具4とを含んでいる。また、製造装置1は、例えば、ローダー5を含んでいてもよい。
【0020】
生タイヤTは、本実施形態では、横向きで製造装置1内を移動するとともに、加硫金型2の中にセットされる。前記「横向き」とは、本明細書では、生タイヤTのタイヤ軸方向が鉛直となる向きをいう。これにより、
図1に示されるように、横向きの生タイヤTは、第1部分T1と、第2部分T2と、第3部分T3とに区分される。第1部分T1は、例えば、加硫後のタイヤの最大幅位置(図示省略)よりもタイヤ半径方向外側の部分である。第2部分T2は、例えば、第1部分T1よりもタイヤ半径方向内側で上方に配された部分である。第3部分T3は、例えば、第1部分T1よりもタイヤ半径方向内側で第2部分T2よりも下方に配された部分である。また、生タイヤTは、第2部分T2のタイヤ半径方向の内側に形成される上ビード開口部T4と、第3部分T3のタイヤ半径方向の内側に形成される下ビード開口部T5とを含んでいる。上ビード開口部T4及び下ビード開口部T5は、生タイヤTのタイヤ回転軸Tcを含んでいる。図には、鉛直となる向きが矢印Zで示される。
【0021】
本実施形態の加硫金型2は、下型7と、下型7と離隔して位置する上型8とを含んでいる。下型7と上型8とは、本実施形態では、当接する(
図6に示す)。下型7と上型8とが当接して生タイヤTを加硫するための加硫空間Kが形成される。前記「当接」とは、本明細書では、離隔可能な2つの物体が当たって接することをいう。
【0022】
下型7は、本実施形態では、横向きの生タイヤTを下側から保持する成形面(以下、「下成形面」という場合がある)9と、成形面9におかれた生タイヤTのタイヤ内腔内(以下、単に「内腔内」という場合がある)で膨張可能なブラダー10とを有している。ブラダー10は、例えば、ゴムなどの周知の弾性材料で形成されている。
【0023】
また、下型7は、例えば、ブラダー10を収容するための周知構造のバグウェル11を有している。本実施形態のバグウェル11は、例えば、蒸気や不活性ガスなどの周知の高圧流体からなる加圧媒体を供給するための供給ライン(図示省略)が接続されている。前記加圧媒体がバグウェル11に供給されることによって、ブラダー10が膨張される。
【0024】
下型7は、例えば、下成形面9を形成する下セグメント12と、下セグメント12の下方に配される下プレート13とを含んでいる。下セグメント12は、例えば、生タイヤTの第3部分T3を加硫するための図示しない加熱具を含んでいる。下セグメント12及び下プレート13は、例えば、バグウェル11を保持するための開口部を有している。下プレート13は、本実施形態では、下ベース盤14に固定されている。このように、本実施形態の下型7は、周知の構造で構成されている。
【0025】
本実施形態の上型8は、下型7よりも上方に配されている。上型8は、例えば、横向きの生タイヤTを上側及び側方から覆う成形面(以下、「上成形面」という場合がある)16を含んでいる。上型8は、例えば、上成形面16を形成する分離可能な上セグメント17と、上セグメント17の上方に配される上プレート18とを含んでいる。上セグメント17は、例えば、生タイヤTの第1部分T1と第2部分T2とを加熱するための図示しない加熱具を含んでいる。上プレート18は、例えば、後述する第1移動具20に昇降移動可能に保持されている。このように、本実施形態の上型8は、周知の構造で構成されている。
【0026】
本実施形態の移動具3は、生タイヤTの加硫空間Kを形成するように、下型7または上型8を移動させるためのものである。本実施形態の移動具3は、上型8を移動させるための第1移動具20と、下型7を移動させるための第2移動具21とを含んでいる。なお、移動具3は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、第1移動具20のみで構成されてもよい。
【0027】
本実施形態の第1移動具20は、上型8を上下(鉛直)に昇降移動させる。第1移動具20は、本実施形態では、上プレート18を保持して昇降移動させる支持軸20aを含んでいる。このような第1移動具20は、例えば、ボールねじや伸縮シリンダー構造等の周知構造で形成されている。
【0028】
本実施形態の第2移動具21は、下型7を水平方向に移動させる。第2移動具21は、例えば、下ベース盤14を上型8の下方の位置(以下、「加硫位置A」という場合がある。)に向かって直線的に移動させる。このような第2移動具21は、例えば、ボールねじや伸縮シリンダー構造等の周知構造で形成されている。
【0029】
本実施形態のローダー5は、前記生タイヤ形成工程で形成された生タイヤTを移動して、下型7に装着する機能を有する。ローダー5は、例えば、水平面状の基板24と、基板24から下方に突出する複数本のアーム部25とで構成されている。基板24は、本実施形態では、図示しない周知構造の移動具で3次元に移動可能に保持されている。アーム部25は、例えば、第2部分T2を保持する周知構造のビード保持具25aを有している。アーム部25は、本実施形態では、上ビード開口部T4から第2部分T2を保持する。このように本実施形態のローダー5は、生タイヤTを吊り下げて移動させ得る。なお、ローダー5は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、生タイヤTを下型7の成形面9に保持させるための周知構造の保持具(図示省略)を有していてもよい。
【0030】
また、ローダー5は、本実施形態では、タイヤ内腔内で膨張するブラダー10の膨張量(本実施形態では、後述する初期膨張量)を測定する測定具27を有している。測定具27は、例えば、基板24に固定されている。測定具27は、本実施形態では、非接触型の変位計であるのが望ましい。測定具27は、例えば、測定対象物にレーザを照射することで距離を測定するレーザ変位計がより望ましい。このような測定具27は、例えば、測定対象物までの距離に関する測定データdを電気信号として出力することができる。
【0031】
制御具4は、例えば、コンピュータとして構成されている。制御具4は、例えば、測定データd等を記憶するメモリ、各種の演算処理や情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)、磁気ディスクなどの記憶装置、処理結果等を表示するための表示部、及び、測定具27を操作するための操作部等を有している。前記記憶装置には、例えば、プログラム等が予め記憶されている。前記プログラムは、本実施形態では、移動具3による下型7または上型8の移動に先立ち、下型7に置かれた生タイヤTのタイヤ内腔内でブラダー10を初期膨張させる機能を有している。前記プログラムは、例えば、ブラダー10の膨張量を制御する機能や、加硫金型2の加熱量を制御する機能を有していてもよい。なお、ブラダー10の膨張量を制御する機能は、例えば、測定具27が有していてもよい。
【0032】
次に、このような製造装置1を用いた製造方法の加硫工程が説明される。
図2(a)は、加硫工程のフローチャートである。
図2(a)に示されるように、本実施形態の加硫工程は、初期膨張工程S2と、セット工程S5と、押し付け工程S6とを含んでいる。また、加硫工程は、例えば、保持工程S1と、制御工程S3と、取り外し工程S4とを含んでいる。
【0033】
図2(b)は、保持工程S1のフローチャートである。
図2(b)に示されるように、本実施形態の保持工程S1は、生タイヤTをローダー5で保持する第1保持工程S1aと、ローダー5で保持された生タイヤTをさらに下型7で保持する第2保持工程S1bとを含んでいる。
図1は、第1保持工程S1aを示している。
【0034】
図1に示されるように、第1保持工程S1aは、本実施形態では、ローダー5のビード保持具25aによって、生タイヤTの第2部分T2が保持される。これにより、生タイヤTは、ローダー5に吊り下げ状態で保持されて3次元に移動可能とされる。
【0035】
次に、第2保持工程S1bが行われる。
図3は、第2保持工程S1bを説明する断面図である。
図3に示されるように、本実施形態の第2保持工程S1bでは、下型7は、上型8と水平方向で離隔された位置(以下、「生タイヤ受取位置B」という場合がある。)に、第2移動具21によって移動されている。そして、第2保持工程S1bでは、ローダー5に保持された生タイヤTが、生タイヤ受取位置Bに移動される。そして、例えば、ローダー5が下降して、生タイヤTの第3部分T3が下成形面9に保持される。これにより、生タイヤTは、本実施形態では、ローダー5と下型7とに保持された状態となる。
【0036】
次に、初期膨張工程S2が行われる。
図4は、初期膨張工程S2を説明する断面図である。
図4に示されるように、初期膨張工程S2は、先ず、図示しない前記供給ラインから加圧媒体がバグウェル11内に供給され、下ビード開口部T5からブラダー10が挿入されてタイヤ内腔内で膨張する。初期膨張工程S2では、生タイヤTが目視可能である。このため、ブラダー10の膨張によって、例えば、生タイヤTが位置ずれした場合でも、容易に適正な位置に配置し直すことができる。また、このような予期膨張によって、ブラダー10のバグウェル11への収容によるシワ等を解消することができる。これにより、例えば、加硫金型2の中で生じる、予期しないブラダー10の膨張を抑制することができるしたがって、本実施形態の製造方法では、タイヤ品質を向上することができる。このような初期膨張工程S2での加圧媒体の圧力P1は、例えば、30KPa以下であるのが望ましい。
【0037】
次に、制御工程S3が行われる。
図2(c)は、制御工程S3のフローチャートである。
図2(c)に示されるように、本実施形態の制御工程S3は、ブラダー10の膨張量を測定する工程S3aと、ブラダー10の膨張状態を調整する工程S3bとを含んでいる。
【0038】
図4に示されるように、測定工程S3aは、本実施形態では、生タイヤT内で初期膨張しているブラダー10の膨張量Xが測定される。本実施形態の測定工程S3aは、膨張量Xが測定具27で測定される。膨張量Xは、例えば、基板24と、上ビード開口部T4から露出するブラダー10との間の上下方向の距離として測定される。測定具27として、レーザ変位計が採用される場合、例えば、測定された膨張量Xに関する測定データdが電気信号に変換されて制御具4に出力される。
【0039】
膨張量Xは、例えば、ブラダー10の予め定められた複数の位置で測定されるのが望ましい。膨張量Xは、例えば、タイヤ回転軸Tc上の位置を含んで測定されるのが望ましい。膨張量Xは、例えば、タイヤ回転軸Tcを中心として生タイヤTの周方向に等ピッチで測定されてもよい。
【0040】
調整工程S3bは、例えば、測定された膨張量Xに基づいて、ブラダー10の膨張状態を調整する。調整工程S3bは、本実施形態では、制御具4が、前記供給ラインに設けられた図示しない開閉バルブ等で加圧媒体の供給量を制御して、膨張量Xが予め定められた範囲となるように、ブラダー10の膨張量を調整する。これにより、ブラダー10を生タイヤTの内腔内に均等に初期膨張させることができる。また、生タイヤTを成形面9に対して、適正な位置とすることができる。
【0041】
次に、取り外し工程S4が行われる。
図5は、取り外し工程S4を説明する断面図である。
図5に示されるように、本実施形態の取り外し工程S4では、生タイヤTからローダー5が取り外される。この取り外し工程S4では、下型7が生タイヤTを保持した状態が維持されるとともに、ブラダー10の前記初期膨張が維持されている。取り外し工程S4では、ローダー5は、例えば、前記生タイヤ形成工程で形成された新たな生タイヤ(図示省略)を受け取るために、生タイヤ受取位置Bから離隔される。取り外し工程S4は、例えば、第2移動具21を駆動して、下型7及び生タイヤTを生タイヤ受取位置Bから加硫位置Aに移動させる。このとき、生タイヤTは、初期膨張したブラダー10に保持されているので、この移動による下型7からの位置ずれが抑制される。
【0042】
次にセット工程S5が行われる。
図6は、セット工程S5及び押し付け工程S6を説明する断面図である。
図6に示されるように、本実施形態のセット工程S5では、前記初期膨張したブラダー10と一緒に生タイヤTが加硫金型2の中にセットされる。セット工程S5は、例えば、第1移動具20によって、上型8が降下されて、上型8と下型7との加硫空間Kに生タイヤTがセットされる。本実施形態のセット工程S5では、下セグメント12と上セグメント17とが当接して、密閉された加硫空間Kが形成される。
【0043】
次に、押し付け工程S6が行われる。本実施形態の押し付け工程S6は、初期膨張したブラダー10をさらに膨張させて生タイヤTを加硫金型2に押し付けする。そして、図示しない前記加熱具によって、加硫金型2が加熱されて生タイヤTが加硫される。押し付け工程S6での加圧媒体の圧力P2は、例えば、加圧媒体がスチームの場合、1.0MPa以上が望ましく、2.0MPa以下が望ましく、加圧媒体が窒素ガスの場合、1.5MPa以上が望ましく、2.5MPa以下が望ましい。
【0044】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0045】
図1の基本構造を有する製造装置を用いて生タイヤが加硫され、加硫後のタイヤ(以下、「加硫タイヤ」という)についてタイヤ品質のテストが行われた。タイヤ品質は、外観テスト、ユニフォミティテスト及び動的バランステストによって確認された。比較例では、本実施形態の初期膨張工程及び制御工程が行われていない他は、実施例と同じように生タイヤが加硫された。実施例及び比較例ともに、5000本の生タイヤが用いられ、各テストにおいて平均値が算出された。
【0046】
<外観テスト>
加硫タイヤの内腔面に付着したブラダーによるシワの発生状況が、テスターの目視によって確認された。結果は、シワが発生したタイヤの本数の比率で示される。数値の小さい方が良好である。
【0047】
<ユニフォミティテスト>
JASO C607(自動車用タイヤのユニフォミティ試験方法)に準拠し、ユニフォミティ試験機を用いて、RFV(ラジアルフォースバリエーション)及びLFV(ラテラルフォースバリエーション)が測定された。結果は、比較例を100とする指数で示される。数値の小さい方が良好である。
【0048】
<動的バランステスト>
ダイナミックバランス試験機を用いて、動的バランスが測定された。結果は、比較例を100とする指数で示される。数値の小さい方が良好である。テストの結果が表1に示される。
【0049】
【0050】
実施例の加硫方法は、比較例の加硫方法よりもタイヤ品質が優れていることが理解できる。
【符号の説明】
【0051】
2 加硫金型
10 ブラダー
S2 初期膨張工程
S5 セット工程
S6 押し付け工程
T 生タイヤ