(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/134 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
F16F15/134 D
F16F15/134 A
(21)【出願番号】P 2020106384
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】片岡 直也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 勲
(72)【発明者】
【氏名】徳森 慎平
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-249007(JP,A)
【文献】特開2017-172692(JP,A)
【文献】特開2017-161036(JP,A)
【文献】特開2017-061964(JP,A)
【文献】特開2017-110715(JP,A)
【文献】特開2019-211082(JP,A)
【文献】特開2018-031454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0237955(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/134
F16F 15/123
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸周りに回転する第1回転体と、
前記第1回転体に対し前記回転軸周りに相対回転する第2回転体と、
弾性体、及び前記弾性体の両端を支持する一対のシート部材を含み、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性連結させる弾性機構部と、
を具備し、
前記シート部材は、前記第1回転体と前記第2回転体との前記相対回転に係る捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の一方と当接する第1表面部と前記第1回転体及び前記第2回転体の他方と当接する第2表面部とを径方向外端面上に有し、
前記捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の一方と前記第1表面部とが当接する第1接点における前記回転方向の第1ベクトルと前記回転方向に直交する方向の第2ベクトルとを含む第1接線と、前記第1ベクトルと、で形成される第1角度θ1が、11.5°≦θ1≦22.0°であり、
前記捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の他方と前記第2表面部とが当接する第2接点における、前記回転方向の第3ベクトルと前記回転方向に直交する方向の第4ベクトルとを含む第2接線と、前記第3ベクトルとで形成される第2角度θ2が、11.5°≦θ2≦22.0°である、
ダンパ装置。
【請求項2】
前記第1接点及び前記第2接点における摩擦係数が、0.2乃至0.4である、請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記第1表面部及び第2表面部の少なくともいずれか一方は、凹凸形状を有する、請求項1又は2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記第1回転体は、前記第1表面部に当接し所定曲率を呈する曲面部を有し、
ここで前記所定曲率は回転軸に沿った方向の曲率であり、
前記第1表面部の少なくとも一部は、前記曲面部の前記所定曲率よりも
大きい曲率を呈する曲面である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のダンパ装置。
【請求項5】
回転軸周りに回転する第1回転体と、
前記第1回転体に対し前記回転軸周りに相対回転する第2回転体と、
弾性体、及び前記弾性体の両端を支持する一対のシート部材を含み、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性連結させる弾性機構部、
を具備し、
前記シート部材は、前記第1回転体と前記第2回転体との前記相対回転に係る捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の一方と当接する第1表面部と前記第1回転体及び前記第2回転体の他方と当接する第2表面部とを径方向外端面上に有し、
前記捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の一方と前記第1表面部とが当接する第1接点における、前記回転方向の第1ベクトルと前記回転方向に直交する方向の第2ベクトルとを含む方向に延びる第1接線と、前記第1ベクトルと、の間で第1角度θ1が形成され、且つ、
前記捩れ角が0°で前記回転方向に直交する方向に遠心力Fが生じる場合に、前記第1接点における第1の摩擦係数をμ1として、前記第1接線が延びる方向とは逆向きの方向に働く摩擦力μ1Fcosθ1と、前記第1接線が延びる方向に働く前記遠心力Fの第1分力Fsinθ1との関係が、-0.1F≦μ1Fcosθ1-Fsinθ1≦0.1Fであり、
前記捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の他方と前記第2表面部とが当接する第2接点における、前記回転方向の第3ベクトルと前記回転方向に直交する方向の第4ベクトルとを含む方向に延びる第2接線と、前記第3ベクトルと、の間で第2角度θ2が形成され、且つ、
前記捩れ角が0°で前記回転方向に直交する方向に前記遠心力Fが生じる場合に、前記第2接点における第2の摩擦係数をμ2として、前記第2接線が延びる方向とは逆向きの方向に働く摩擦力μ2Fcosθ2と、前記第1接線が延びる方向に働く前記遠心力Fの第2分力Fsinθ2とが、-0.1F≦μ2Fcosθ2-Fsinθ2≦0.1Fである、
ダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願において開示された技術は、ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等において、エンジン等の駆動源と変速機との間のトルク伝達経路上には、当該駆動源から当該変速機に向けて伝達されるトルクの振動を吸収するダンパ装置が設けられており、ダンパ装置は例えばクラッチ装置に組み込まれている。
【0003】
ダンパ装置の一般的な構成として、例えば特許文献1及び特許文献2には、互いに相対回転可能な入力部材としてのディスクプレートと出力部材としてのハブとの間に、一対のシート部材で両端が支持されるコイルスプリングを介在させて、コイルスプリングの弾性変形を利用してトルクの変動に起因する捩り方向の振動を吸収して減衰させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-211082号公報
【文献】特開2018-31454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示されるようなダンパ装置においては、ディスクプレートとハブとがともに高回転し且つ両者が相対回転する場合、コイルスプリングを両端から支持するシート部材に遠心力が作用する。そして、この遠心力の作用によって、シート部材がディスクプレート及び/又はハブと摺動することでヒステリシストルクが発生してしまい、ダンパ装置自体の減衰特性が低下してしまうという問題がある。この問題は、ディスクプレートとハブとの正トルク側の相対回転と負トルク側の相対回転の境界付近(つまり、相対回転の捩れ角0°付近)で顕著となる。
【0006】
そこで、様々な実施形態により、ヒステリシストルクの発生を低減するダンパ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係るダンパ装置は、回転軸周りに回転する第1回転体と、前記第1回転体に対し前記回転軸周りに相対回転する第2回転体と、弾性体、及び前記弾性体の両端を支持する一対のシート部材を含み、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性連結させる弾性機構部と、を具備し、前記シート部材は、前記第1回転体と前記第2回転体との前記相対回転に係る捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の一方と当接する第1表面部と前記第1回転体及び前記第2回転体の他方と当接する第2表面部とを径方向外端面上に有し、前記捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の一方と前記第1表面部とが当接する第1接点における前記回転方向の第1ベクトルと前記回転方向に直交する方向の第2ベクトルとを含む第1接線と、前記第1ベクトルと、で形成される第1角度θ1が、11.5°≦θ1≦22.0°であり、前記捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の他方と前記第2表面部とが当接する第2接点における、前記回転方向の第3ベクトルと前記回転方向に直交する方向の第4ベクトルとを含む第2接線と、前記第3ベクトルとで形成される第2角度θ2が、11.5°≦θ2≦22.0°である。
【0008】
この構成のダンパ装置によれば、相対回転の捩れ角0°付近において、シート部材と第1回転体との摺動、及びシート部材と第2回転体との摺動に起因するヒステリシストルクの発生を低減することが可能となる。
【0009】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記第1接点及び前記第2接点における摩擦係数が、0.2乃至0.4であることが好ましい。
【0010】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置におけるヒステリシストルクの発生を効率的に低減することが可能となる。
【0011】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記第1表面部及び第2表面部の少なくともいずれか一方は、凹凸形状を有することが好ましい。
【0012】
この構成とすることによって、第1表面部と第1回転体及び第2回転体の一方との間と、第2表面部と第1回転体及び第2回転体の他方との間の少なくともいずれか一方において、工場出荷時に製造上の誤差が生じた場合であっても、第1表面部及び/又は第2表面部には凹凸形状が形成されているので、使用初期(工場出荷後からの所定期間)において、当該凹凸形状の面圧を意図的に増加させることで、当該凹凸形状の摩耗を促進させることができる。これにより、第1表面部と第1回転体及び第2回転体の一方との間と、第2表面部と第1回転体及び第2回転体の他方との間の少なくともいずれか一方に製造上の誤差が生じた場合であっても、相対回転の捩れ角0°付近におけるヒステリシストルクの発生を低減することが可能な、一態様に係る前記ダンパ装置の構成を実現することが可能となる。
【0013】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記第1回転体は、前記第1表面部に当接し所定曲率を呈する曲面部を有し、前記第1表面部の少なくとも一部は、前記曲面部の前記所定曲率よりも大きい曲率を呈する曲面であることが好ましい。
【0014】
この構成とすることによって、第1表面部と第1回転体及び第2回転体の一方との間に製造上の誤差が生じた場合であっても、第1表面部の少なくとも一部に第1回転体の曲面部の所定曲率より大きい曲率を呈する曲面が形成されることで、第1表面部の使用初期において、当該曲面の面圧を意図的に増加させることで、当該曲面の摩耗を促進させることができる。これにより、第1表面部と第1回転体及び第2回転体の一方との間に製造上の誤差が生じた場合であっても、相対回転の捩れ角0°付近におけるヒステリシストルクの発生を低減することが可能な、一態様に係る前記ダンパ装置の構成を実現することが可能となる。
【0015】
別の態様に係るダンパ装置は、回転軸周りに回転する第1回転体と、前記第1回転体に対し前記回転軸周りに相対回転する第2回転体と、弾性体、及び前記弾性体の両端を支持する一対のシート部材を含み、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性連結させる弾性機構部、を具備し、前記シート部材は、前記第1回転体と前記第2回転体との前記相対回転に係る捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の一方と当接する第1表面部と前記第1回転体及び前記第2回転体の他方と当接する第2表面部とを径方向外端面上に有し、前記捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の一方と前記第1表面部とが当接する第1接点における、前記回転方向の第1ベクトルと前記回転方向に直交する方向の第2ベクトルとを含む方向に延びる第1接線と、前記第1ベクトルと、の間で第1角度θ1が形成され、且つ、前記捩れ角が0°で前記回転方向に直交する方向に遠心力Fが生じる場合に、前記第1接点における第1の摩擦係数をμ1として、前記第1接線が延びる方向とは逆向きの方向に働く摩擦力μ1Fcosθ1と、前記第1接線が延びる方向に働く前記遠心力Fの第1分力Fsinθ1との関係が、-0.1F≦μ1Fcosθ1-Fsinθ1≦0.1Fであり、前記捩れ角が0°の場合に、前記第1回転体及び前記第2回転体の他方と前記第2表面部とが当接する第2接点における、前記回転方向の第3ベクトルと前記回転方向に直交する方向の第4ベクトルとを含む方向に延びる第2接線と、前記第3ベクトルと、の間で第2角度θ2が形成され、且つ、前記捩れ角が0°で前記回転方向に直交する方向に前記遠心力Fが生じる場合に、前記第2接点における第2の摩擦係数をμ2として、前記第2接線が延びる方向とは逆向きの方向に働く摩擦力μ2Fcosθ2と、前記第1接線が延びる方向に働く前記遠心力Fの第2分力Fsinθ2とが、-0.1F≦μ2Fcosθ2-Fsinθ2≦0.1Fである。
【0016】
この構成のダンパ装置によっても、相対回転の捩れ角0°付近において、シート部材と第1回転体との摺動、及びシート部材と第2回転体との摺動に起因するヒステリシストルクの発生を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
様々な実施形態によれば、ヒステリシストルクの発生を低減するダンパ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略上面図である。
【
図2】
図1に示したダンパ装置の構成をA-A線から見て模式的に示す概略断面図である。
【
図3】一実施形態に係るダンパ装置の構成を、各構成要素に分解して示す概略斜視図である。
【
図4】
図1に示したダンパ装置の構成に関し、第1回転体とシート部材との当接関係を示す概略上面図である。
【
図5】
図1に示したダンパ装置の構成に関し、第2回転体とシート部材との当接関係を示す概略上面図である。
【
図6】第1回転体とシート部材との接点、又は第2回転体とシート部材との接点における角度θ(θ1及びθ2)と、当該接点に働く遠心力をFとした時の当該接点に働く摩擦μFcosθから当該接点に働く遠心力Fの分力Fsinθを除した値(μFcosθ-Fsinθ)との関係を示す図である。
【
図7】一実施形態に係るダンパ装置が示す捩り特性を模式的に示す概略特性図である。
【
図8】第2実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略上面図である。
【
図9A】第3実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
【
図9B】
図9Aに示したダンパ装置のうち、
図9Aの点線で囲んだ領域を拡大して示す概略断面図である。
【
図10A】第4実施形態に係るダンパ装置に適用されるシート部材の一例を拡大して示す概略斜視図である。
【
図10B】第4実施形態に係るダンパ装置に適用されるシート部材の別の一例を拡大して示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の様々な実施形態を説明する。なお、図面において共通した構成要件には同一の参照符号が付されている。また、或る図面に表現された構成要素が、説明の便宜上、別の図面においては省略されていることがある点に留意されたい。さらにまた、添付した図面が必ずしも正確な縮尺で記載されている訳ではないということに注意されたい。
【0020】
1.ダンパ装置の構成
一実施形態に係るダンパ装置の全体構成の概要について、
図1乃至
図7を参照しつつ説明する。
図1は、一実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す、概略上面図である。
図2は、
図1に示したダンパ装置1の構成をA-A線から見て模式的に示す概略断面図である。
図3は、一実施形態に係るダンパ装置1の構成を、各構成要素に分解して示す概略斜視図である。
図4は、
図1に示したダンパ装置1の構成に関し、第1回転体100とシート部材350との当接関係を示す概略上面図である。
図5は、
図1に示したダンパ装置1の構成に関し、第2回転体200とシート部材350との当接関係を示す概略上面図である。
図6は、第1回転体100とシート部材350との接点、又は第2回転体200とシート部材350との接点(P1及びP2)における角度θ(θ1及びθ2)と、当該接点に働く遠心力をFとした時の当該接点に働く摩擦μFcosθから当該接点に働く遠心力Fの分力Fsinθを除した値(μFcosθ-Fsinθ)との関係を示す図である。
図7は、一実施形態に係るダンパ装置1が示す捩り特性を模式的に示す概略特性図である。
【0021】
一実施形態に係るダンパ装置1は、例えば、フライホイール(図示せず)とプレッシャープレート(図示せず)との間で挟圧されることにより、エンジンやモータ等の駆動源(図示せず)からの駆動力を変速機に伝達するものである。フライホイールとプレッシャープレートとの間でダンパ装置1を挟圧するための構造については、公知であるので、その詳細な説明を省略する。
【0022】
ダンパ装置1は、トルク振動を吸収して減衰させるものである。このダンパ装置1は、
図1乃至
図4に示すように、主に、第1回転体としてのディスクプレート100と、第2回転体としてのハブ200と、弾性体310及び弾性体310を両端から支持する一対のシート部材350とを含む弾性機構部300と、を含む。
【0023】
1-1.ディスクプレート100
ダンパ装置1において、第1回転体としてのディスクプレート100は、駆動源からの動力がフライホイールや、カバープレート10及びプレッシャープレート20等を介して伝達(入力)される。ディスクプレート100は、例えば、金属材料により形成され、
図1乃至
図3に示すように、第2回転体としてハブ200を挟んで、ハブ200と回転軸Oの周りにおいて回転可能に設けられている。
【0024】
ディスクプレート100は、ハブ200の軸方向両側に設けられる一対の板部材としての第1ディスクプレート100A及び第2ディスクプレート100Bを含む。第1ディスクプレート100A及び第2ディスクプレート100Bは、軸方向において相互対称の形状を有しており、両者の軸方向における位置は、適宜調整可能なスペーサ101を間に介在させて、それらの外周付近において、貫通孔105を介して複数のリベットR等により結合されている。これにより、第1ディスクプレート100Aと第2ディスクプレート100Bとは、回転軸O周りを一体に回転することができる。
【0025】
図1及び
図3に示すように、第1ディスクプレート100A及び第2ディスクプレート100Bは、相互に協働して、領域I乃至IVのそれぞれに対応付けて、弾性機構部300を収容する収容領域(
図1に示す例では、4つの収容領域)を形成するように、軸方向に膨らんだ所定曲率を有する曲面部150を有する。曲面部150は、弾性機構部300におけるシート部材350の径方向外端面355における第1表面部356と当接可能に設けられる。曲面部150と第1表面部356とが当接する状態の詳細については後述する。
【0026】
各収容領域は、ディスクプレート100の周方向に沿って延びる弾性体310と、該弾性体310を両端から支持する一対のシート部材350(350A及び350B)を収容するために、ディスクプレート100の周方向に沿って略直線状又は略円弧状に延びている。なお、領域I乃至IVとは、ダンパ装置1を上面からみて、
図1に示すように、各々が略90度の扇形を有する4つの各領域を指すものとする。
【0027】
図1及び
図3を参照して具体的に説明すると、第1ディスクプレート100A及び第2ディスクプレート100Bは、領域I乃至IVに対応付けて、それぞれ、周方向に沿って延びる第1収容領域103a、第2収容領域103b、第3収容領域103c、及び第4収容領域103dを形成している。なお、後述するハブ200には、これら第1収容領域103a、第2収容領域103b、第3収容領域103c、及び第4収容領域103dに対応するように窓孔206a、206b、206c、及び206dが設けられている。
【0028】
領域Iに着目すると、
図1及び
図3に示すように、第1ディスクプレート100A及びディスクプレート100Bは、第1収容領域103aを囲む側壁として、一端面(第1の一端面)104a
1とこれに対向する他端面(第1の他端面)104a
2とを含む。
【0029】
同様に、領域IIに着目すると、第1ディスクプレート100A及び第2ディスクプレート100Bは、第2収容領域103bを囲む側壁として、一端面(第2の一端面)104b1とこれに対向する他端面(第2の他端面)104b2とを含み、領域IIIに着目すると、第1ディスクプレート100A及び第2ディスクプレート100Bは、第3収容領域103cを囲む側壁として、一端面(第3の一端面)104c1とこれに対向する他端面(第3の他端面)104c2とを含み、領域IVに着目すると、第1ディスクプレート100A及び第2ディスクプレート100Bは、第4収容領域103dを囲む側壁として、一端面(第4の一端面)104d1とこれに対向する他端面(第4の他端面)104d2とを含む。
【0030】
前述した第1の一端面104a
1、第1の他端面104a
2、第2の一端面104b
1、第2の他端面104b
2、第3の一端面104c
1、第3の他端面104c
2、第4の一端面104d
1、及び第4の他端面104d
2は、各収容領域I乃至IVに収容される弾性機構部300におけるシート部材350(シート部材350A又は350B)に形成される第1受入溝360(
図10A及び
図10B参照)に係合されている。
【0031】
また、スペーサ101には、後述するハブ200が侵入することができるように、つまり、ハブ200が周方向に移動(ディスクプレート100に対して相対回転)することができるように、切欠き110が設けられている。また、当該切欠き110の外縁部は、所定捩り角以上のハブ200の相対回転を規制する規制部111として機能している。なお、スペーサ101に設けられる切欠き110は、第1ディスクプレート100A及び第2ディスクプレート100Bに設けられていてもよい。
【0032】
1-2.ハブ200
第2回転体としてのハブ200は、ダンパ装置1における動力の出力部材として機能し、例えば、金属材料により形成される。ハブ200は、全体として断面略円状の形状を有し、第1ディスクプレート100A及び第2ディスクプレート100Bに挟まれて、回転軸Oの周りにディスクプレート100(第1ディスクプレート100A及び第2ディスクプレート100B)に対して相対回転可能に設けられる。また、
図2に示すように、ハブ200は、略円筒状の円筒部202に形成される貫通孔203に、変速機(図示せず)の入力軸500を挿通させてスプライン結合することができる。また、ハブ200には、円筒部202から径方向外側に向かって外径を有する円板部205が設けられている。
【0033】
円板部205には、前述のとおり、第1収容領域103a、第2収容領域103b、第3収容領域103c、及び第4収容領域103dに対応する窓孔206a、206b、206c、及び206dが設けられている。ハブ200に設けられるこれらの窓孔206a、206b、206c、及び206dは、後述する弾性機構部300の構成、より詳細には、弾性体310の数に対応して設けられる。つまり、各窓孔206a、206b、206c、及び206dには、後述する弾性機構部300が収容される。
【0034】
ここで、窓孔206aに着目すると、円板部205は、窓孔206aを囲む(確定させる)側壁として、一端側の側壁(第1の一端側側壁)207a
1とこれに対向する他端側の側壁(第1の他端側側壁)207a
2とを含む(
図5参照)。さらに、円板部205は、窓孔206aを周方向に囲む(径方向外側及び径方向内側を画定させる)第1周壁208と第2周壁209とを含む。
【0035】
同様に、窓孔206bに着目すると、円板部205は、窓孔206bを囲む(確定させる)側壁として、一端側の側壁(第2の一端側側壁)207b
1とこれに対向する他端側の側壁(第2の他端側側壁)207b
2とを含む(
図3及び
図5参照)。さらに、円板部205は、窓孔206bを周方向に囲む(径方向外側及び径方向内側を画定させる)第1周壁208と第2周壁209とを含む。
【0036】
また、窓孔206cに着目すると、円板部205は、窓孔206cを囲む(確定させる)側壁として、一端側の側壁(第3の一端側側壁)207c
1とこれに対向する他端側の側壁(第3の他端側側壁)207c
2とを含む(
図5参照)。さらに、円板部205は、窓孔206cを周方向に囲む(径方向外側及び径方向内側を画定させる)第1周壁208と第2周壁209とを含む。
【0037】
さらにまた、窓孔206dに着目すると、円板部205は、窓孔206dを囲む(確定させる)側壁として、一端側の側壁(第4の一端側側壁)207d
1とこれに対向する他端側の側壁(第4の他端側側壁)207d
2とを含む(
図5参照)。さらに、円板部205は、窓孔206dを周方向に囲む(径方向外側及び径方向内側を画定させる)第1周壁208と第2周壁209とを含む。
【0038】
前述した第1の一端側側壁207a
1、第1の他端側側壁207a
2、第2の一端側側壁207b
1、第2の他端側側壁207b
2、第3の一端側側壁207c
1、第3の他端側側壁207c
2、第4の一端側側壁207d
1、及び第4の他端側側壁207d
2は、各収容領域I乃至IVに収容される弾性機構部300におけるシート部材350A又は350Bに形成される第2受入溝370(
図10A及び
図10B参照)に係合されている。
【0039】
前述した第1周壁208は、弾性機構部300におけるシート部材350の径方向外端面355における第2表面部357と当接可能に設けられる。曲面部150と第1表面部356とが当接する状態の詳細については後述する。
【0040】
また、円板部205の径方向端部には、領域I乃至IVに対応付けて、突起部210a、210b、210c、及び210dが設けられている。突起部210a、210b、210c、及び210dは、ハブ200がディスクプレート100に対して相対回転することができるよう、スペーサ101に設けられる切欠き110内に収容される。また、突起部210a、210b、210c、及び210dは、ハブ200が所定捩り角相対回転すると、当該切欠き110の外縁部でもある規制部111に当接して、ハブ200の当該捩り角以上の相対回転を規制する機能を有している。
【0041】
1-3.弾性機構部300
第1弾性機構部300は、
図1乃至
図5に示すように、各領域I乃至IVにおいて、コイルスプリングが主に用いられる弾性体310、及び弾性体の両端を支持する一対のシート部材350(第1シート部材350A並びに第2シート部材350B)から主に構成される。シート部材350は、例えば、繊維強化されたナイロン樹脂やエンジニアリングプラスチック等を材料として形成される。なお、
図1乃至
図5においては、各領域において1つのコイルスプリングが用いられる一例が示されているが、これに限定されず、例えば、2つのコイルスプリングを直列に配置してもよい。
【0042】
そして、
図1乃至
図5に示す一実施形態に係るダンパ装置1においては、一例として、ディスクプレート100には、4つの収容領域、すなわち、第1収容領域103a、第2収容領域103b、第3収容領域103c、及び第4収容領域103d(これらに対応して、ハブ200にも前述のとおり窓孔206a、206b、206c、及び206dが設けられている)が形成されるので、これら4つの収容領域の各々に、つまり各領域I乃至IVに対応付けて、1つの弾性体310が収容される。また、各領域I乃至IVにおいて、弾性体410は、各収容領域において、その両端を一対のシート部材350(第1シート部材350A及び第2シート部材350B)に支持される。
【0043】
ここで、領域Iに着目すると、弾性体310を支持するシート部材350の一方(第1シート部材350A)は、ディスクプレート100に設けられる第1の一端面104a
1を第1受入溝360(
図10A及び
図10B参照)に収容することで、ディスクプレート100と係合している。また、第1シート部材350Aは、ハブ200に設けられる第1の一端側側壁207a
1を第2受入溝370((
図10A及び
図10B参照)に収容することで、ハブ200とも係合している。
【0044】
さらに、弾性体310を支持するシート部材350の他方(第2シート部材350B)は、ディスクプレート100に設けられる第1の他端面104a
2を第1受入溝360(
図10A及び
図10B参照)に収容することで、ディスクプレート100と係合している。また、第2シート部材350Bは、ハブ200に設けられる第1の他端側側壁207a
2を第2受入溝370((
図10A及び
図10B参照)に収容することで、ハブ200とも係合している。なお、領域Iについて説明したシート部材350の上記構成は、領域II乃至IVにおいても同様である。
【0045】
以上の構成により、弾性体310は、シート部材350を介して、ディスクプレート100とハブ200とを、回転方向に弾性連結させることが可能となっている。つまり、エンジンやモータ等の駆動源からの動力が、ディスクプレート100、第1シート部材350A、弾性体310、第2シート部材350B、及びハブ200の順に伝達された上で(時計回りに正側の動力が伝達される場合を前提とする)、ディスクプレート100とハブ200とが互いに相対回転すると、弾性体310が圧縮変形させられることでトルク変動を吸収する。
【0046】
さらに、シート部材350(第1シート部材350A及び第2シート部材350B)は、その径方向外側端面355において、ディスクプレート100の曲面部150と当接する第1表面部356(
図4参照)と、ハブ200の第1周壁208と当接する第2表面部357(
図5参照)と、を含む。
【0047】
ここで、ディスクプレート100の曲面部150とシート部材350の第1表面部356との当接関係について、
図4を参照しつつ説明する。なお、
図4は、
図2におけるB-B線において矢印で示される方向から見た図である。
【0048】
領域Iに着目すると、
図4に示すように、シート部材350(第1シート部材350A)の第1表面部356は、ディスクプレート100とハブ200とが相対回転していない場合(捩れ角が0°の場合)に、ディスクプレート100の曲面部150と当接する。この時、ディスクプレート100の曲面部150と第1表面部356との接点P1(第1接点P1)における接線L1は、点線で示される方向に延在する。この接線L1は、接点P1における回転方向の第1ベクトル(
図4においては、X方向のベクトル)と、回転方向に直交する方向の第2ベクトル(
図4においては、Y方向のベクトル)とを含む。つまり、接線L1と回転方向の第1ベクトルとの間には意図的にθ1の角度が形成されるように、曲面部150及び第1表面部356は設計されている。
【0049】
このように、曲面部150及び第1表面部356が設計されることにより、接点P1において回転方向に直交する方向(第2ベクトル)に遠心力Fが働いている場合、接線L1が延びる方向には、遠心力Fの分力Fsinθ1の力が働く。また、接線L1が延びる方向と反対の方向には、摩擦力μ1Fcosθ1の力が働く。ここで、μ1は、曲面部150と第1表面部356との間の摩擦係数であり、接点P1における摩擦力は、接線L1に直交する方向(
図4においてはL2の方向)に働く垂直抗力Fcosθ1と摩擦係数μ1との積により求められる。
【0050】
ここで、摩擦力μ1Fcosθ1と遠心力Fの分力Fsinθ1との関係が、-0.1F≦μ1Fcosθ1-Fsinθ1≦0.1Fとなるように設計される。上記関係式が満たされるということは、接点P1に働く摩擦力が、遠心力Fの分力Fsinθ1によってキャンセル(相殺)されることを意味する。これにより、曲面部150と第1表面部356との間の摺動抵抗(ヒステリシストルク)が低減されて、シート部材350は回転方向にスムーズに移動することが可能となる。
【0051】
なお、曲面部150と第1表面部356との間の上記設計は、第1シート部材350Aだけでなく第2シート部材350Bにおいても同様に適用される。また、領域Iについて説明した曲面部150と第1表面部356との間の上記構成は、領域II乃至IVにおいても同様である。
【0052】
次に、ディスクプレート100の曲面部150とシート部材350の第2表面部357との当接関係について、
図5を参照しつつ説明する。なお、
図5は、
図2におけるC-C線において矢印で示される方向から見た図である。
【0053】
曲面部150と第2表面部357との当接関係も、曲面部150と第1表面部356との間の前述の関係と同じである。
【0054】
つまり、領域Iに着目すると、
図5に示すように、シート部材350(第1シート部材350A)の第2表面部357は、ディスクプレート100とハブ200とが相対回転していない場合(捩れ角が0°の場合)に、ディスクプレート100の曲面部150と当接する。この時、ディスクプレート100の曲面部150と第2表面部357との接点P2(第2接点P2)における接線M1は、点線で示される方向に延在する。この接線M1は、接点P2における回転方向の第3ベクトル(
図5においては、X方向のベクトル)と、回転方向に直交する方向の第4ベクトル(
図5においては、Y方向のベクトル)とを含む。つまり、接線M1と回転方向の第1ベクトルとの間には意図的にθ2の角度が形成されるように、曲面部150及び第2表面部357は設計されている。
【0055】
このように、曲面部150及び第2表面部357が設計されることにより、接点P2において回転方向に直交する方向(第4ベクトル)に遠心力Fが働いている場合、接線M1が延びる方向には、遠心力Fの分力Fsinθ2の力が働く。また、接線M1が延びる方向と反対の方向には、摩擦力μ2Fcosθ2の力が働く。ここで、μ2は、曲面部150と第2表面部357との間の摩擦係数であり、接点P2における摩擦力は、接線M1に直交する方向に働く垂直抗力Fcosθ2と摩擦係数μ2との積により求められる。
【0056】
ここで、摩擦力μ2Fcosθ2と遠心力Fの分力Fsinθ2との関係が、-0.1F≦μ2Fcosθ2-Fsinθ2≦0.1Fとなるように設計される。上記関係式が満たされるということは、接点P2に働く摩擦力(の少なくとも一部)が、遠心力Fの分力Fsinθ2によってキャンセル(相殺)されることを意味する。これにより、曲面部150と第2表面部357との間の摺動抵抗(ヒステリシストルク)が低減されて、シート部材350は回転方向にスムーズに移動することが可能となる。
【0057】
なお、前述の「μ1Fcosθ1-Fsinθ1」、及び「μ2Fcosθ2-Fsinθ2」は、限りなく0となるように、曲面部150、第1表面部356、及び第2表面部357を設計することが最も好ましい。
【0058】
曲面部150と第1表面部356との当接関係において、-0.1F≦μ1Fcosθ1-Fsinθ1≦0.1Fを満たすためには、
図6に示されるように、11.5°≦θ1≦22.0°(摩擦係数μ1が0.3の場合)となるように曲面部150と第1表面部356の形状を具体的に設計すればよい。また、「μ1Fcosθ1-Fsinθ1」を限りなく0となるようにするためには、14.0°≦θ1≦20.0°(摩擦係数μ1が0.3の場合)とすることが好ましい。
【0059】
同様に、曲面部150と第2表面部357との当接関係において、-0.1F≦μ2Fcosθ2-Fsinθ2≦0.1Fを満たすためには、
図6に示されるように、11.5°≦θ2≦22.0°(摩擦係数μ2が0.3の場合)となるように曲面部150と第2表面部357の形状を具体的に設計すればよい。また、「μ2Fcosθ2-Fsinθ2」を限りなく0となるようにするためには、14.0°≦θ2≦20.0°(摩擦係数μ1が0.3の場合)とすることが好ましい。
【0060】
曲面部150と第1表面部356との間の摩擦係数μ1、及び曲面部150と第2表面部357との間の摩擦係数μ2が、0.3でない場合には、
図6に示される特性図を参照して、実際の摩擦係数に応じて、θ1及びθ2を各々適宜調整すればよい。
【0061】
なお、弾性機構部300の姿勢安定性の観点から、第2表面部357とハブ200の第1周壁との接点(接点P2)は、
図5に示すとおり、弾性体310よりも径方向外側となるように設計されることが好ましい。
【0062】
1-4.ダンパ装置1の特性
以上の構成を有するダンパ装置1は、
図7に示される捩り特性を有することができる。具体的には、ディスクプレート100とハブ200との相対回転に伴う捩れ角が0°前後の領域において、従来に比してヒステリシストルクの発生を効率的に低減することができる。
【0063】
2.変形例
次に、別の実施形態に係るダンパ装置1の構成について、
図8乃至
図10Bを参照しつ説明する。
図8は、第2実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略上面図である。
図9Aは、第3実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。
図9Bは、
図9Aに示したダンパ装置1のうち、
図9Aの点線で囲んだ領域を拡大して示す概略断面図である。
図10Aは、第4実施形態に係るダンパ装置1に適用されるシート部材350の一例を拡大して示す概略斜視図である。
図10Bは、第4実施形態に係るダンパ装置1に適用されるシート部材350の別の一例を拡大して示す概略斜視図である。
【0064】
2-1.第2実施形態
第2実施形態に係るダンパ装置1は、前述した一実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成であるが、一実施形態に係るダンパ装置1のハブ200を、2つのハブ200A及び200Bに分割して動力を出力するものであり、公知のいわゆる分割ハブタイプのダンパ装置1である。
【0065】
第2実施形態に係るダンパ装置1は、ハブ200A(径方向外側)内歯とハブ200B(径方向内側)の外歯が噛合しつつ、動力伝達経路上の両者の間には第2弾性機構部600が配されている。この第2弾性機構部600により、ダンパ装置1は、一実施形態に係るダンパ装置1よりも幅広いトルク振動を吸収して減衰することが可能となる。
【0066】
第2弾性機構部600には、前述の弾性機構部300と同様に、コイルスプリングが主に用いられる第2弾性体610、及び第2弾性体610の両端を支持する一対の内側シート部材650(内側第1シート部材650A並びに内側第2シート部材650B)から主に構成される。内側シート部材650は、ハブ200Aの内壁220と当接するように構成されている。したがって、この内側シート部材650の径方向外側端面655とハブ200Aの内壁220との当接関係は、前述の曲面部150と第1表面部356(又は第2表面部357)と同様に構成してもよい。
【0067】
2-2.第3実施形態
第3実施形態に係るダンパ装置1は、前述した一実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成であるが、
図9A及び
図9Bに示すように、第1表面部356(の少なくとも一部)が、ディスクプレート100の曲面部150の所定曲率よりも
大きい曲率となるよう曲面が形成されている点で、一実施形態とは異なる。
【0068】
第3実施形態においては第1表面部356とディスクプレート100との一方との間に製造上の誤差が生じた場合であっても、第1表面部356の少なくとも一部に曲面部150の所定曲率より大きい曲率を呈する曲面が形成されることで、第1表面部356の使用初期(工場出荷後からの所定期間)において、当該曲面の面圧(曲面部150から受圧する圧力)を意図的に増加させることで、当該曲面の摩耗を促進させることができる。これにより、第1表面部356とディスクプレート100との間に製造上の誤差が生じた場合であっても、一定期間後には一実施形態に係るダンパ装置1の曲面部150と第1表面部356との当接関係を実現することができる。
【0069】
2-3.第4実施形態
第4実施形態に係るダンパ装置1は、前述した一実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成であるが、
図10A及び
図10Bに示すように、シート部材350の径方向外端面355における第1表面部356及び/又は第2表面部357の少なくとも一部に、凹凸形状が形成されている点で、一実施形態とは異なる。
【0070】
第4実施形態に係るダンパ装置1に適用されるシート部材350の一例としては、
図10Aに示されるように、第2表面部357には凹凸形状が施される。この凹凸形状は、例えば、
図10Bに示すように、所定間隔の溝が形成されてもよいし、網目状に溝が形成されてもよい。
【0071】
第4実施形態に係るダンパ装置1に適用されるシート部材350の別の一例としては、
図10Bに示されるように、第1表面部356及び第2表面部357の両方に凹凸形状が施される。
【0072】
第4実施形態においては第1表面部356とディスクプレート100との間、及び/又は第2表面部357とハブ200との間に製造上の誤差が生じた場合であっても、第1表面部356及び/又は第2表面部357には凹凸形状が形成されているので、使用初期(工場出荷後からの所定期間)において、当該凹凸形状の面圧(曲面部150及び/又は第1周壁208から受圧する圧力)を意図的に増加させることで、当該凹凸形状の摩耗を促進させることができる。これにより、第1表面部356とディスクプレート100との間、及び/又は第2表面部357とハブ200との間に製造上の誤差が生じた場合であっても、一定期間後には一実施形態に係るダンパ装置1に係る構成を実現することができる。
【0073】
以上、前述の通り、様々な実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数等は適宜変更して実施することができる。
【0074】
なお、前述のとおり説明した様々な実施形態においては、シート部材350における第1表面部356にはディスクプレート100の曲面部150が当接し、シート部材350における第2表面部357にはハブ200の第1周壁208が当接することを前提に説明したが、これに限定されない。つまり、ダンパ装置1の構成次第では、第1表面部356にはハブ200の第1周壁208が当接し、第2表面部357にはディスクプレート100の曲面部150が当接してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 ダンパ装置
100 ディスクプレート
100A 第1ディスクプレート
100B 第2ディスクプレート
150 曲面部
200 ハブ
208 第1周壁
300 弾性機構部
310 弾性体
350 シート部材
350A 第1シート部材
350B 第2シート部材
355 径方向外端面
356 第1表面部
357 第2表面部
L1 接線(第1接線)
M1 接線(第2接線)
O 回転軸
P1 接点(第1接点)
P2 接点(第2接点)
X 回転方向
Y 回転方向に直交する方向