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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】画像形成装置、及び、画像調整方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20240604BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G03G15/00 303
B65H7/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020114769
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012728
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
(72)【発明者】
【氏名】奈良 隆志
(72)【発明者】
【氏名】伊郷 翔太
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-024675(JP,A)
【文献】特開2010-176002(JP,A)
【文献】特開2007-286281(JP,A)
【文献】特開2011-098790(JP,A)
【文献】特開2016-139026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
B65H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部と、
前記画像形成部に記録材を搬送する搬送部と、
前記搬送部において前記記録材の通過を検知する検知センサーと、
前記記録材の両面に形成する画像位置を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検知センサーから前記記録材の検知情報を取得する情報取得部と、
前記記録材の検知情報に基づいて、前記記録材の辺の長さを算出する長さ算出部と、
前記記録材の端部の位置情報に基づいて、前記記録材の頂点における角度を算出する角度算出部と、
2辺の長さと3つの頂点における角度、又は、3辺の長さと2つの頂点における角度とから前記記録材の形状を算出する形状算出部と、
前記記録材の形状に基づいて、前記記録材に形成する画像が所定の位置となるように画像形成位置の調整を行う画像調整部と、を有する
画像形成装置。
【請求項2】
前記検知センサーは、検知領域内を通過する前記記録材の面積を検知する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記検知センサーが検知した前記記録材の面積を取得し、
前記長さ算出部は、前記面積から前記記録材の辺の長さを算出し、
前記角度算出部は、前記面積から前記記録材の各頂点の角度を算出する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送部に配置される前記検知センサーとして、
前記記録材の搬送方向の前端部が前記検知領域内に含まれる位置に配置された第1の検知センサーと、
前記記録材の一方の側端部が前記検知領域に含まれる位置に配置された第2の検知センサーと、
前記記録材の他方の側端部が前記検知領域に含まれる位置に配置された第3の検知センサーと、を有する
請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送部に配置される前記検知センサーとして、
前記記録材の搬送方向の前端部が前記検知領域内に含まれる位置に配置された前記第1の検知センサー、及び、第4の検知センサーと、
前記記録材の一方の側端部が前記検知領域に含まれる位置に配置された前記第2の検知センサー、及び、第5の検知センサーと、
前記記録材の他方の側端部が前記検知領域に含まれる位置に配置された前記第3の検知センサー、及び、第6の検知センサーと、を有する
請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記検知センサーとして、前記記録材の一方の側端部を検知する片寄り検知センサーを備え、
前記画像調整部は、前記片寄り検知センサーで検知した前記記録材の位置と、前記記録材の形状とを基に、主走査方向の前記画像形成位置を調整する
請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記検知センサーとして、前記記録材の一方の側端部を検知する片寄り検知センサーを備え、
前記画像調整部は、前記片寄り検知センサーで検知した前記記録材の位置と、前記記録材の形状とを基に、前記記録材の裏面側の副走査方向の前記画像形成位置を調整する
請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、表面側に画像を形成するときの前記記録材の面積と、裏面側に画像を形成するときの前記記録材の面積との面積比を算出する面積比算出部を有し、
前記画像調整部は、前記面積比算出部が算出した面積比を基に、前記記録材に形成する画像の大きさを調整する
請求項1から7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記記録材の前端側の辺と後端側の辺との平行度を算出する平行度算出部を有し、
前記画像調整部は、前記平行度算出部が算出した平行度を基に、前記記録材に形成する画像の搬送方向に対する角度を調整する
請求項1から8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
画像形成部に記録材を搬送する搬送部と、前記搬送部において前記記録材の通過を検知する検知センサーと、前記記録材の両面に形成する画像位置を調整する制御部と、を備える画像形成装置における画像調整方法であって、
前記検知センサーから前記記録材の検知情報を取得し、
前記記録材の検知情報に基づいて、前記記録材の辺の長さと、前記記録材の頂点における角度とを算出し、
2辺の長さと3つの頂点における角度、又は、3辺の長さと2つの頂点における角度とから前記記録材の形状を算出し、
前記記録材の形状に基づいて、前記記録材に形成する画像が所定の位置となるように画像形成位置の調整を行う
画像調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及び、画像調整方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ等の画像形成装置では、記録材の搬送路において記録材の斜め方向の位置ずれを矯正することが行われている。この矯正は、例えば、画像を記録材に転写する転写部の上流の搬送路上にレジストローラーを設け、記録材の前端をレジストローラーに突き当てることにより行われる。
【0003】
両面印刷を行う画像形成装置においては、記録材の表裏をスイッチバックさせる反転部によって記録材の前後端が入れ替えられる。このため、表面側の記録材の後端を裏面側の記録材の前端とした状態で、レジストローラーに裏面側の記録材の前端が突き当てられて、記録材の曲がりが矯正される。
【0004】
また、ラインセンサを用いて記録材の形状に起因する前後端の平行度ずれを検出し、記録材の曲がり補正、画像回転補正によって画像の表裏位置を改善する画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-85215号公報
【文献】特開2016-50108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、記録材の形状にばらつきがある場合には、記録材の前端部での曲がり補正、及び、前後端の平行度ずれによる記録材の曲がり補正、画像回転補正だけでは、表面と裏面とで画像形成位置のずれが発生してしまう。
【0007】
上述した問題の解決のため、本発明においては、記録材の形状にばらつきがある場合にも表面と裏面とで画像形成位置のずれを抑制することが可能な画像形成装置、及び、画像調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、画像形成部と、画像形成部に記録材を搬送する搬送部と、搬送部において記録材の通過を検知する検知センサーと、記録材の両面に形成する画像位置を調整する制御部とを備える。制御部は、検知センサーから記録材の検知情報を取得する情報取得部と、記録材の検知情報に基づいて、記録材の辺の長さを算出する長さ算出部と、記録材の端部の位置情報に基づいて、記録材の頂点における角度を算出する角度算出部と、辺の長さと頂点における角度とから記録材の形状を算出する形状算出部と、記録材の形状に基づいて、記録材に形成する画像が所定の位置となるように画像形成位置の調整を行う画像調整部とを有する。
【0009】
また、本発明の画像調整方法は、画像形成部に記録材を搬送する搬送部と、搬送部において記録材の通過を検知する検知センサーと、記録材の両面に形成する画像位置を調整する制御部とを備える画像形成装置における画像調整方法である。そして、検知センサーから記録材の検知情報を取得し、記録材の検知情報に基づいて、記録材の辺の長さと、記録材の頂点における角度とを算出し、辺の長さと頂点における角度とから記録材の形状を算出し、記録材の形状に基づいて、記録材に形成する画像が所定の位置となるように画像形成位置の調整を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録材の形状にばらつきがある場合にも表面と裏面とで画像形成位置のずれを抑制することが可能な画像形成装置、及び、画像調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像形成装置の構成例を示す図である。
図2】画像形成装置の制御部の機能ブロック図である。
図3】形状がばらつく記録材の一例を示す図である。
図4】形状がばらつく記録材における、表面側と裏面側の画像形成位置を示す図である。
図5】制御部が記録材の形状検出を方法を示すフローチャートである。
図6】画像形成装置の搬送路における検知センサーの配置例を示す図である。
図7】画像形成装置の搬送路における検知センサーの配置例を示す図である。
図8】記録材の前端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図9】記録材の前端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図10】記録材の前端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図11】記録材の前端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図12】記録材の側端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図13】記録材の側端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図14】記録材の側端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図15】記録材の側端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図16】記録材の側端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図17】記録材の側端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図18】記録材の前端部、側端部、及び、後端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図19】記録材の前端部、側端部、及び、後端部の傾きを検出する方法を説明するための図である。
図20】記録材の各辺のなす角度の算出方法を説明するための図である。
図21】記録材の各辺の長さの算出方法を説明するための図である。
図22】記録材の各辺の長さの算出方法を説明するための図である。
図23】制御部による画像形成位置の補正を行う方法のフローチャートである。
図24】制御部による画像形成位置の補正を行う方法のフローチャートである。
図25】片寄り目標値の設定を説明するための図である。
図26】片寄り目標値の設定を説明するための図である。
図27】画像形成領域の前端部の位置の目標値の設定を説明するための図である。
図28】記録材の表面と裏面との面積比を説明するための図である。
図29】記録材の表面と裏面との面積比を説明するための図である。
図30】記録材の前端側の辺と後端側の辺との平行度を説明するための図である。
図31】記録材の前端側の辺と後端側の辺との平行度を説明するための図である。
図32】記録材の前端側の辺と後端側の辺との平行度を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
[画像形成装置]
図1に、画像形成装置の構成例を示す。図1に示す画像形成装置1は、静電気を用いて画像の形成を行う電子写真方式を採用しており、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー画像を重ね合わせるタンデム形式のカラー画像形成装置である。
【0013】
画像形成装置1は、画像形成装置本体10、自動原稿給送装置(ADF:AutoDocumentFeeder)12を有する画像入力部11、操作表示部13、排紙トレイ14、及び、制御部100を備える。
【0014】
画像入力部11は、ADF12の原稿台上の原稿から画像を光学的に読み取り、読み取った画像をA/D変換して画像データ(スキャンデータ)を生成する。
操作表示部13は、液晶パネル等からなる表示部、及び、タッチセンサ等からなる操作部で構成される。表示部及び操作部は、例えばタッチパネルとして一体に形成される。操作表示部13は、操作部に入力されたユーザーからの操作の内容を表す操作信号を生成し、該操作信号を制御部100に供給する。例えば、ユーザーより、画像形成処理の開始を指示する操作が入力された場合には、画像形成処理を開始させる信号を生成して、制御部100に供給する。また、操作表示部13は、制御部100から供給される表示信号に基づいて、表示部に、ユーザーによる操作内容や設定情報等を表示する。なお、操作部をマウスやタブレットなどで構成し、表示部とは別体で構成することも可能である。
【0015】
画像形成装置本体10は、給紙トレイ20及び画像形成部30を備える。給紙トレイ20は、画像形成部30で画像形成が行われる記録材Sを収容する容器である。
また、画像形成装置本体10は、給紙トレイ20から給紙された記録材Sを排紙トレイ14まで搬送する搬送部200を有する。搬送部200は、搬送路21、記録材Sを搬送するための複数のローラー(搬送ローラー)、検知センサー201、及び、片寄り検知センサー220から構成される。搬送路21には、記録材Sを搬送するための複数のローラー(搬送ローラー)が設けられる。また、搬送路21は、両面印刷時に使用される両面経路22を有する。両面経路22は、後述の定着部38を通過後の記録材Sを後述の反転部42に引き込むための搬送路である第1の両面経路221と、第1の両面経路221を搬送された記録材Sの搬送方向における前後端を入れ替える(スイッチバックする)反転部42と、反転部42で表裏が反転された記録材Sを搬送する経路である第2の両面経路222とを有する。
【0016】
画像形成部30は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー画像を形成するための、4つの画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kを備える。画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kはそれぞれ、帯電部、LED書き込みユニット(レーザ光源)(いずれも不図示)、画像担持体としての感光体ドラム32Y,32M,32C,32K、及び、現像部(画像作像部の一例)を備える。なお、以下の説明において、画像形成ユニット31Y,31M,31C,31Kを個々に区別する必要がない場合には、これらのユニットを画像形成ユニット31と総称し、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kを個々に区別する必要がない場合には、これらのユニットを感光体ドラム32と総称する。
【0017】
現像部は、感光体ドラム32の表面(外周部)に潜像を形成するとともに、該潜像に不図示の現像器から供給されたワックス成分を含むトナーを付着させることにより、感光体ドラム32上にトナー画像を形成する。
【0018】
また、画像形成部30は、中間転写ベルト34(転写部の一例)、二次転写部35(二次転写ローラー:転写部の一例)を備える。中間転写ベルト34は、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kに形成された画像が一次転写されるベルトである。二次転写部35は、中間転写ベルト34上に一次転写された各色のトナー画像を、搬送路21を搬送された記録材Sに二次転写するローラーである。
【0019】
搬送路21における二次転写部35の配置位置の上流には、レジストローラー361(第1の搬送ローラーの一例)及びレジスト従動ローラー362よりなるレジスト部36が設けられる。レジストローラー361は、搬送方向(副走査方向)に対して直角な方向(主走査方向)に所定の間隔を空けて配置された複数個のローラーを有する。レジストローラー361が有する複数のローラーは、不図示のレジストローラー搬送モーターにより搬送方向に回転駆動される。また、レジストローラー361が有する複数のローラーは、不図示のレジストローラー揺動モーターによって駆動(揺動)されることにより、記主走査方向に移動する。
レジスト従動ローラー362は、レジストローラー361に対して圧着及び離間可能に配置され、レジストローラー361に圧着された状態においては、レジスト従動ローラー362はレジストローラー361の回転動作に従動して回転する。
【0020】
本実施形態では、上述のレジスト部36によって、記録材Sの前端部の回転方向におけるずれを矯正する「突き当て曲がり補正」が実行される。
【0021】
突き当て曲がり補正は、レジスト部36を構成するレジストローラー361及びレジスト従動ローラー362を互いに圧着した状態で、レジストローラー361の搬送(回転)を停止し、圧着により形成されるニップ部に、搬送路21上を搬送される記録材Sの前端を突き当てることにより行われる。記録材Sの前端がレジスト部36のニップ部に突き当たった状態で、レジスト部36の方向に記録材Sを送り込むことにより、記録材Sの前後端間にループ(たわみ)が形成され、記録材Sの弾性により曲がりが矯正される。
【0022】
レジスト部36の配置位置の上流には、記録材Sの端部(前端部、側端部、及び、後端部)の通過を検知する検知センサー201が配置される。検知センサー201として、記録材Sの前端部、及び、後端部を検知できる位置と、記録材Sの側端部(両側端部)を検知できる位置とに、それぞれ1つ以上配置されている。
レジスト部36の下流側には、記録材Sの片寄り検知センサー220が配置される。片寄り検知センサー220は、記録材Sの主走査方向の一方の端部の位置を検知する。
【0023】
搬送路21における二次転写部35の配置位置の下流には、定着部38が設けられる。定着部38は、二次転写部35で記録材Sに転写された画像を、記録材S上に定着させる定着処理を行う。
【0024】
定着部38は、例えば、定着部材である定着上ローラー381及び定着下ローラー382で構成される。定着上ローラー381及び定着下ローラー382は、互いに圧接した状態で配置されており、定着上ローラー381及び定着下ローラー382の圧接部として定着ニップ部が形成される。定着上ローラー381の内部には、加熱部(不図示)が設けられる。この加熱部からの輻射熱により定着上ローラー381の外周部にあるローラー部が温められる。
【0025】
定着部38の定着ニップ部の形成位置の下流側において、搬送路21が、排紙トレイ14に至る搬送路21と、両面経路22とに分岐する。両面経路22は、記録材Sを反転部42に引き込むための第1の両面経路221と、反転部42で反転された記録材をレジストローラー361の上流側で搬送路21に搬送する第2の両面経路222とを有する。
【0026】
第1の両面経路221には、反転部42としての第3のローラー対40及び第4のローラー対41が設けられる。第3のローラー対40は、ADU(AutoDuplexUnit:反転ユニット)反転ローラー401及び従動ローラー402で構成され、ADU反転ローラー401は、不図示のADU反転モーターにより回転駆動される。第4のローラー対41は、ADUループローラー411及びADUループ従動ローラー412で構成され、ADUループローラー411は、不図示のADUループモーターにより回転駆動される。
【0027】
第3のローラー対40は、第1の両面経路221を搬送される記録材SをADUループローラー411の方向に引き込むとともに、第4のローラー対41から送り出される記録材Sを、第2の両面経路222に吐き出す動作を行う。第4のローラー対41は、第3のローラー対40によって引き込まれた記録材Sを把持するとともに、把持した記録材Sを第3のローラー対40の方向に送り返す。第3のローラー対40及び第4のローラー対41によってこのような動作が行われることにより、第1の両面経路221を搬送されてきた記録材Sの表裏が反転され、表裏が反転された記録材Sが第2の両面経路222上を搬送される。
【0028】
また、第3のローラー対40及び第4のローラー対41よりなる反転部42では、必要に応じて、記録材Sに対する突き当て曲がり矯正及び/又は独立曲がり矯正が行われる。
第3のローラー対40の配置位置の上流には、表面の記録材Sの前端部を基準としたプレレジスト処理を行う表面前端プレレジスト部としての、第5のローラー対43及び第6のローラー対44が設けられる。第5のローラー対43は、表面プレレジストローラー431及び表面プレレジストローラー従動ローラー432で構成される。表面プレレジストローラー431は、不図示の表面プレレジストモーターにより回転駆動される。第6のローラー対44は、表面プレレジストループローラー441及び表面プレレジストループ従動ローラー442で構成される。表面プレレジストループローラー441は、不図示の表面プレレジストループモーターにより回転駆動される。
【0029】
第5のローラー対43及び第6のローラー対44よりなる表面前端プレレジスト部にて、前端突き当て曲がり矯正が行われることにより、表面の記録材Sの紙曲がりが矯正される。
第2の両面経路222における、ローラー対36への合流位置の上流には、裏面の記録材Sの前端部を基準としたプレレジスト処理を行う裏面前端プレレジスト部47としての、第7のローラー対45及び第8のローラー対46が設けられる。第7のローラー対45は、裏面プレレジストローラー451及び裏面プレレジストローラー従動ローラー452で構成される。第8のローラー対46は、裏面プレレジストループローラー461及び裏面プレレジストループ従動ローラー462で構成される。裏面プレレジストループローラー461は、不図示の裏面プレレジストループモーターにより回転駆動される。
【0030】
第7のローラー対45及び第8のローラー対46よりなる裏面前端プレレジスト部47にて、前端突き当て曲がり矯正が行われることにより、記録材Sがローラー対36に到達する前の段階で、裏面の記録材Sの紙曲がりが矯正される。
【0031】
画像形成装置1の制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及び、RAM(Random Access Memory)、及び、不揮発ストレージ等を有する。CPUは、ROM又は不揮発ストレージに記憶されている制御用プログラムを読み出して実行し、各種演算処理を行う。RAMは、CPUに作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。ROMは、CPUにより実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROMに代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発ストレージが用いられてもよい。これらのCPU、RAM、ROM及び不揮発ストレージを備える制御部100は、各種制御用プログラムに従って画像形成装置1を統括制御する。
【0032】
検知センサー201は、搬送部200の搬送路21において、検知領域内を通過する記録材Sを検知する。検知センサー201は、検知領域内を通過する記録材Sを面で検知する面検知センサーを用いることが好ましい。検知センサー201によって検知された記録材Sの端部の情報は、制御部100に出力される。検知センサー201の構成及び機能の詳細については後述する。
【0033】
[制御部の機能]
次に、画像形成装置1の制御部100の機能ブロック図を図2に示す。図2では、制御部100において、記録材Sの形状検出、及び、画像形成位置の補正に係わる構成を示す。このため、制御部100は、図2に示す構成以外にも、画像形成装置1を統括制御するための他の構成を有する。
【0034】
制御部100は、形状情報取得部101、長さ算出部102、角度算出部103、形状算出部104、片寄り補正目標値設定部105、面積比算出部106、平行度算出部107、片寄り量算出部108、画像前端位置目標値設定部109、及び、画像調整部110を有する。
【0035】
形状情報取得部101は、搬送部に設けられた記録材Sの検知センサー201が検出した記録材の面積に関する情報を取得する。
長さ算出部102は、形状情報取得部101が取得した記録材Sの情報から、記録材Sの4辺の長さを算出する。
角度算出部103は、形状情報取得部101が取得した記録材Sの情報から、記録材Sの頂点における各辺のなす角度(内角)を算出する。
形状算出部104は、長さ算出部102が算出した辺の長さ、及び、角度算出部103が算出した角度から、記録材Sの形状を算出する。
【0036】
片寄り補正目標値設定部105は、形状算出部104が算出した記録材Sの形状に基づいて、搬送路21上での記録材Sの位置を補正(片寄り補正)するための基準となる、主走査方向の記録材Sの位置の目標値を設定する。
面積比算出部106は、形状算出部104が算出した記録材Sの形状から、画像形成を実行する記録材Sの表面及び裏面の面積比を算出する。具体的には、記録材Sに画像形成を行う際に、先に画像形成が行われる面(表面)の面積と、後に画像形成が行われる面(裏面)の面積との比率(収縮率)を算出する。
平行度算出部107は、形状算出部104が算出した記録材Sの形状から、主走査方向に対する前端側の辺、及び、後端側の辺の角度を算出し、前端側の辺と後端側の辺の平行度を算出する。
片寄り量算出部108は、片寄り検知センサー220が検知した記録材Sの主走査方向の一方の端部の位置から、記録材Sの搬送路21上での主走査方向の片寄り量を算出する。
画像前端位置目標値設定部109は、形状算出部104が算出した記録材Sの形状に基づいて、記録材Sの搬送方向前端部から、画像形成位置の前端部までの距離の目標値を設定する。
【0037】
画像調整部110は、形状算出部104が算出した記録材Sの形状、及び、搬送路21上での記録材Sの主走査方向の片寄り量に基づいて、画像形成位置の補正を行う。また、画像調整部110は、面積比算出部106が算出した記録材Sの表面と裏面との面積比に基づいて、裏面側に形成する画像の位置を補正する。
【0038】
[記録材の形状検出]
制御部100は、画像形成装置1の画像形成部30に搬送される記録材Sの形状を検出する。制御部100は、記録材Sの形状検出により、記録材Sが定型から外れる場合や、形状がばらつく場合においても、画像形成位置を精度よく取得する。これにより、制御部100は、表面に形成する画像と裏面側に形成する画像との位置を補正し、表面と裏面との画像形成位置を一致させる。
【0039】
例えば、制御部100は、図3に示すような4辺がいずれも平行でない4角形の記録材Sの形状を検出する。制御部100は、例えば、4辺の長さや、各辺のなす角度を取得することによって、記録材Sの形状を検出する。
【0040】
記録材の形状を検出せずに画像形成を行う場合には、図4に示すように、表面の画像形成位置51と、裏面の画像形成位置52とが一致しない場合がある。一般的に、画像形成装置1では、記録材Sの搬送方向前端の基準位置に基づいて、画像形成が行われる。例えば、図4に示すように、記録材Sの表面側では、基準点53からの距離に基づいて、表面の画像形成位置51が決められる。また、記録材Sの裏面側では、前後端が入れ替わり基準点54からの距離に基づいて画像形成位置52が決められる。定型の記録材Sでは、基準点53を基に決められる表面の画像形成位置51と、基準点54を基に決められる裏面の画像形成位置52とが一致する。しかし、非定型の記録材Sでは、基準点53及び基準点54を基に画像形成位置を決めると、図4に示すように、表面の画像形成位置51と裏面の画像形成位置52とが一致しない。
【0041】
このため、画像形成装置1において、記録材Sの表面と裏面との画像形成位置のずれを解消するためには、制御部100は、記録材Sの形状を表面と裏面とで検出する必要がある。そして、制御部100は、検出した記録材Sの表面と裏面の形状に合わせて表面の画像形成位置51と、裏面の画像形成位置52とが一致するように、少なくともいずれかの面の画像形成位置を調整する。
【0042】
(形状検出のフローチャート)
次に、制御部100において記録材Sの形状検出を行う方法について説明する。図5に、制御部100が記録材Sの形状検出を行う際のフローチャートを示す。画像形成装置1の搬送部200に、記録材Sの形状を検出するための複数の検知センサー201を備える場合について説明する。なお、検知センサー201の配置や検知する情報等の詳細については後述する。
【0043】
まず、制御部100は、画像形成装置1において記録材Sへの印刷を開始する(ステップS10)。次に、制御部100は、搬送部200に配置されたいずれかの検知センサー201に、記録材Sが到達したかどうかを判定する(ステップS11)。検知センサー201に記録材Sが到達していない場合(ステップS11のNO)、いずれかの検知センサー201に記録材Sが到達するまで、ステップS10の判定を繰り返す。
【0044】
いずれかの検知センサー201に記録材Sが到達した場合(ステップS11のYES)には、記録材Sが到達した検知センサー201の検知データを、制御部100の形状情報取得部101が取得する(ステップS12)。
【0045】
次に、制御部100は、搬送部200に配置された全ての検知センサー201に、記録材Sが到達したかどうかを判定する(ステップS13)。全ての検知センサー201に記録材Sが到達していない場合(ステップS13のNO)、全ての検知センサー201に記録材Sが到達するまで、ステップS11及びステップS12の処理を繰り返すことで、形状情報取得部101が各検知センサー201からの検知データの取得を繰り返す。
【0046】
全ての検知センサー201に記録材Sが到達した場合(ステップS13のYES)には、制御部100は、記録材Sの後端が全ての検知センサー201を通過したかどうかを判定する(ステップS14)。この判定は、例えば、最も下流側に配置された検知センサー201を記録材Sが通過したかどうかで判定することができる。記録材Sが全ての検知センサー201を通過していない場合(ステップS14のNO)、記録材Sが全ての検知センサー201を通過するまで、ステップS14の処理を繰り返す。
【0047】
記録材Sが全ての検知センサー201を通過した場合(ステップS14のYES)、制御部100は、各検知センサー201から取得した情報を基に、記録材Sの4辺、及び、4辺のなす角度を算出し、記録材Sの形状を算出する(ステップS15)。
【0048】
制御部100による記録材Sの形状算出後、本フローチャートによる処理を終了する。以下、上述のフローチャートに示す各種処理における、画像形成装置1における検知センサー201の配置、検知センサー201からの情報に基づく制御部100による記録材Sの形状算出の詳細について説明する。
【0049】
(検知センサーの配置)
制御部100は、搬送路21に配置された検知センサー201(図1)が読み取った情報を基に記録材Sの形状を検出する。
画像形成装置1は、例えば、図6に示すように、少なくとも3つの検知センサー202,203,204を備えることが好ましい。検知センサー202は、検知領域内を記録材Sの搬送方向(副走査方向)の端部(前端部)が通過する位置に配置される。検知センサー203,204は、検知領域内を記録材Sの搬送方向と直交する方向(主走査方向)の端部(側端部)が通過する位置に配置される。また、検知センサー203と検知センサー204とは、互いに異なる側端部を検出するように、搬送路21の両側端にそれぞれ配置される。
【0050】
また、画像形成装置1は、記録材Sの各端部を検知する位置に、それぞれ複数の検知センサーを備えることが好ましい。例えば、画像形成装置1は、図7に示すように、記録材Sの前端部を検知する位置に、主走査方向に並んだ2つの検知センサー205,206を備えることが好ましい。さらに、画像形成装置1は、側端部を検知する位置に、副走査方向に並んだ2つの検知センサー207,208、及び、検知センサー209,210を備えることが好ましい。検知センサー207,208と、検知センサー209,210とは、互いに異なる側端部を検出するように、搬送路21の両側端にそれぞれ配置される。
【0051】
記録材Sの各端部を2以上の検知センサーで検知することにより、より詳細な形状検出が可能となる。また、2以上の検知センサーからの情報を用いることにより、より精度よく、且つ、簡便な方法で記録材Sの形状を算出することができる。なお、図6及び図7において、記録材Sは矢印の方向に搬送される。
【0052】
(形状算出;前端部の傾き検出)
制御部100における記録材Sの各辺のなす角度の検出について説明する。まず、記録材Sの前端部の傾きを検出する方法を説明する。図8から図11を用いて、記録材Sの前端部の傾きを検出する方法を説明する。
【0053】
図8は、記録材Sの前端部が通過する位置に、検知センサー202を備える構成(図6参照)である。図8に示すように、制御部100は、記録材Sの前端側の辺の方向と、搬送方向(矢印方向)に直交する方向との角度差を算出することにより、記録材Sの前端部の傾き(角度θ°)を算出する。なお、記録材Sの後端側の辺の方向(角度)も、前端側の辺と同様に検出することができる。
【0054】
制御部100は、検知センサー202が検知する記録材Sの面積(以下、検知面積ともいう)から角度を算出する。図9に、検知センサー202が検知する記録材Sの面積Sと、時間(搬送時間)との関係のグラフを示す。図9では、縦軸に、検知センサー202が検知する記録材Sの面積S[m]を示し、横軸に時間t[s]を示している。
【0055】
図9に示すように、検知センサー202で検知する記録材Sの面積は、時間とともに増加する。そして、記録材Sの面積が一定になった後、減少する。
図9に示す検知面積の変化を示すグラフは、記録材Sの検知開始から時間t1までは、二次曲線となる領域(二次曲線領域)。また、時間t1以降は、検知面積の増加量のグラフが線形となる領域(線形領域)である。このように、制御部100は、変化量の境界時間であるt1における検知面積S1から、記録材Sの前端部の傾き(角度)を算出する。
【0056】
図9に示すグラフの境界時間t1について説明する。
まず、図10に示すように、搬送される記録材Sは、検知センサー202の検知領域に前端部が到達する。この記録材Sが到達した時点が、図9における時間[t0]であり、このときの検知面積が0である。そして、図11に示すように、記録材Sの前端側の辺が検知センサー202の検知領域の全体を進行する位置まで搬送される。この図11に示す時点が、図9における時間[t1]であり、このときの検知面積が[S1]である。
【0057】
時間t0からt1までは、検知センサー202で検知される記録材Sの面積は、前端部の傾斜によって、検知領域内に存在する記録材Sの形状が三角形となる。このため、t1までの時間経過では、検知領域内の記録材Sの形状において、三角形の高さと底辺の長さとが共に増加する。従って、検知面積の増加は、二次曲線となる。
【0058】
一方、図11に示すt1以降では、検知領域内に存在する記録材Sの形状が台形状となる。このため、t1以降の時間経過では、検知領域内の記録材Sの形状において、高さが一定である。従って、検知面積の増加は、線形となる。
【0059】
上述のように、境界時間t1時点での検知面積S1によって、記録材Sの前端側の辺の方向の傾き(角度)を算出することができる。検知面積S1が大きいほど、記録材Sの前端部の傾き(角度)が大きくなる。また、検知面積S1が小さいほど、記録材Sの前端部の傾き(角度)が小さい、即ち、記録材Sの前端側の辺の方向と主走査方向との差が小さくなる。
【0060】
また、制御部100は、検知面積Sが減少する様子から、記録材Sの後端側の辺の傾き(角度)を算出することができる。例えば、図9に示す検知面積の変化を示すグラフにおいて検知面積の減少は、記録材Sの検知面積が減少を開始する時間t4からt5までは、検知面積の増加量のグラフが二次曲線領域である。また、t5からt6までは検知面積の増加量のグラフが線形領域であり、t6からt7までは二次曲線領域である。
【0061】
後端側の辺の傾き(角度)は上述の前端側の辺の傾きと同様に、二次曲線領域から線形領域に変異する境界時間、及び、線形領域から二次曲線領域に変異する境界時間から求めることができる。すなわち、二次曲線領域から線形領域に変異する境界時間t5での検知面積S5によって、後端側の辺の傾き(角度)を算出することができる。また、線形領域から二次曲線領域に変異する境界時間t6での検知面積によって、後端側の辺の傾き(角度)を算出することができる。
【0062】
(形状算出;側端部の傾き検出)
次に、記録材Sの側端部の傾きを検出する方法を説明する。図12から図17を用いて、記録材Sの側端部の傾きを検出する方法を説明する。
【0063】
図12は、記録材Sの側端部が通過する位置に、検知センサー203を備える構成(図6参照)である。図12に示すように、制御部100は、記録材Sの側端側の辺の方向と、搬送方向(矢印方向)との角度差を算出することにより、記録材Sの側端部の傾き(角度θ°)を算出する。なお、記録材Sの他方の側端側の辺の方向(角度)も、同様に検出することができる。
【0064】
制御部100は、検知センサー203が検知する記録材Sの面積(以下、検知面積ともいう)から角度を算出する。図13に、検知センサー203が検知する記録材Sの面積Sと、時間(搬送時間)との関係のグラフを示す。図13では、縦軸に、検知センサー203が検知する記録材Sの面積S[m]を示し、横軸に時間t[s]を示している。
制御部100は、記録材Sの他方の側端側の辺の方向(角度)を、図13に示す時間t1における検知面積S1と、時間t3における検知面積S3とから算出する。
【0065】
図13に示すグラフの境界時間t1~t5について説明する。
まず、搬送される記録材Sは、図12に示すように、検知センサー203の検知領域に前端部が到達する。この記録材Sが到達した時点が、図13における時間[t0]であり、このときの検知面積が0である。
【0066】
次に、図14に示すように、記録材Sは、前端側の辺が全て検知センサー203の検知領域内となる位置まで搬送される。この図14に示す時点が、図13における時間[t1]であり、このときの検知面積がS1である。t0からt1までは、検知センサー203で検知される記録材Sの面積は、前端部の傾斜によって、検知領域内に存在する記録材Sの形状が三角形となる。このため、t1までの時間経過では、検知領域内の記録材Sの形状において、三角形の高さと底辺の長さとが共に増加する。従って、t0からt1までの検知面積の増加は、二次曲線となる。
【0067】
次に、図15に示すように、記録材Sは、側端側の辺が全て検知センサー203の検知領域内となる位置まで搬送される。この図15に示す時点が、図13における時間[t2]であり、このときの検知面積がS2である。t1からt2までは、検知センサー203で検知される記録材Sの面積Sは、面積S1と側端部を脚とする台形の面積との合計の面積となる。そして、この台形は、側端部の傾斜によって、高さと底辺(搬送方向上流側の辺)との長さが共に増加する。従って、t1からt2までの検知面積の増加は、二次曲線となる。
【0068】
次に、図16に示すように、記録材Sは、前端側の辺が全て検知センサー203の検知領域外となる位置まで搬送される。この図16に示す時点が、図13における時間[t3]であり、このときの検知面積がS3である。t2からt3までは、検知センサー203で検知される記録材Sの面積Sは、S1の三角形状の面積の減少と、新たに追加される台形状の面積との合計部だけ増加する。増加する台形状の面積はS1の三角形状の面積の減少よりも大きいため、t2からt3まで検知面積Sは増加する。ただし、S1の三角形状の面積の減少が二次曲線となるため、t2からt3まで検知面積Sのグラフは曲線となる。
【0069】
次に、図17に示すように、記録材Sは、側端部の後端が検知センサー203の検知領域内となる位置まで搬送される。この図17に示す時点が、図13における時間[t4]であり、このときの検知面積がS4である。t3からt4までは、検知センサー203で検知される記録材Sは、側端部を脚とする台形の面積となる。そして、この台形は、高さが一定であるが、側端部の傾斜によって上底及び下底の長さがともに増加する。従って、t3からt4までの検知面積の増加は線形となる。
【0070】
ここで、制御部100は、記録材Sの検知面積において境界時間t1での検知面積S1、t2での検知面積S2、t3での検知面積S3、及び、検知面積の変化を基に導出される算出値により、記録材Sの側端側の辺の方向の傾き(角度)を算出することができる。また、制御部100は、他方の側端部についても同様に、検知センサー204(図6参照)で検知するt1~t3の記録材Sの面積S1~S3から、辺の方向の傾き(角度)を算出することができる。
【0071】
(形状算出;複数の検知センサーによる傾き検出)
次に、各端部を検知する位置に2つの検知センサーを用いて、記録材Sの前端部、側端部、及び、後端部の傾きを検出する方法を説明する。2つの検知センサーを用いて傾きを検出する例として、図18及び図19を用いて、前端部の傾きを検出する方法を説明する。側端部、及び、後端部についても、様に傾きを検出することができる。
【0072】
図18は、記録材Sの前端部が通過する位置に、検知センサー205,206を備える構成(図7参照)である。図18に示すように、制御部100は、記録材Sの前端側の辺の方向と、搬送方向(矢印方向)に直交する方向との角度差a(°)を算出することにより、記録材Sの前端部の傾き(角度)を算出する。なお、記録材Sの側端部、及び、後端側の辺の方向(角度)も、前端側の辺と同様に検出することができる。
【0073】
図18に示すように、検知センサー205及び検知センサー206は、主走査方向の長さXの検知領域を有し、検知センサー205と検知センサー206との間隔Dで配置されている。また、図18において、記録材Sは、前端側の辺が検知センサー205及び検知センサー206の両方に検知領域内を通する状態である。このときの検知センサー206が検知する記録材Sの面積Sa、検知センサー205が検知する記録材Sの面積Sbとする。記録材Sの前端部は主走査方向に対して傾き(傾きa°)を有しているため、面積Saと面積Sbとには、面積差ΔSが存在する。
【0074】
制御部100は、検知センサー205と検知センサー206とが検知する記録材Sの面積差ΔSと、検知センサー205と検知センサー206の主走査方向の長さX及び間隔Dとから、前端部の角度(傾きa°)を算出する。
【0075】
図19に、面積差ΔSから角度(a°)を算出するための説明図を示す。図19に示すように、面積差ΔSは、主走査方向の長さが検知センサー205の長さXであり、副走査方向の長さを(X+D)tanaで表すことができる。このため、面積差ΔSは、[ΔS=X(X+D)tana]で表すことができる。
また、検知センサー206で検出した面積Saと、検知センサー205で検出した面積Sbとから面積差ΔSを算出することができる。このため、検知センサー205,206を用いて検出した面積差ΔSと、上記式[ΔS=X(X+D)tana]とから、記録材Sの各辺の角度(傾きa°)を算出することができる。
【0076】
(形状算出;記録材の角度の算出)
記録材Sの各端部を構成する辺のなす角度は、制御部100の角度算出部103が算出する。図20に、記録材Sの各辺のなす角度の算出方法を示す。図20は、頂点Aにおける内角(角度A)を算出する場合を示している。
【0077】
まず、検知センサー201(図2参照)は、記録材Sの面積情報を取得する。形状情報取得部101は、検知センサー201から記録材Sの面積情報を取得する。角度算出部103は、形状情報取得部101が取得した各検知センサーにおける記録材の面積を基に、記録材Sの各端部を構成する辺の主走査方向、又は、副走査方向からのからの傾き(角度)を算出する。例えば、図20に示す頂点Aにおける内角(角度A)を算出する場合には、主走査方向と前端部を構成する辺との角度a(°)と、副走査方向と側端部を構成する辺との角度b(°)と、主走査方向と副走査方向とがなす角度90°とから、[角度A=a+b+90]として算出する。
【0078】
(形状算出;辺の長さの算出)
制御部100における記録材Sの各辺の長さの算出方法について、図21図22を用いて説明する。なお、図22に示すグラフは、上述の図13に示すグラフと同様である。
【0079】
図21、及び、図22は、記録材Sの側端側の辺の長さを検出する方法を示す図である。図21に示すように、記録材Sの一方の側端側の辺が検知センサー203に搬送されるとき、図22に示すように、時間(搬送時間)tと検知面積Sとの関係をグラフで示すことができる。また、記録材Sの一方の側端側の辺が検知センサー204に搬送されるときも、図22と同じように、時間(搬送時間)tと検知面積Sとの関係をグラフで示すことができる。
【0080】
制御部100の長さ算出部102(図2)は、図22に示す、記録材Sの検知面積Sにおいて境界時間t1での検知面積S1、t2での検知面積S2、t3での検知面積S3、t4での検知面積S4、及び、検知面積の変化を基に導出される算出値と、このときの記録材Sの搬送速度とから、一方の側端側の辺の長さを算出することができる。
また、検知センサー204が検知した面積を用いることにより、他方の側端側の辺の長さを算出することができる。
【0081】
また、記録材Sの前端部及び後端側の辺の長さについても、図22に示す検知センサー203で検知する面積と時間の関係、及び、同様に求められる検知センサー204で検知する、時間(搬送時間)tと検知面積Sとの関係から算出することができる。
【0082】
例えば、図21に示すように、記録材Sの前端部の辺の長さをW、記録材の搬送速度をv、前端部の辺の傾きをθα、検知センサー203と検知センサー204との距離をdとする。また、記録材Sの前端部の辺の長さWのうち、検知センサー204の検知領域内の辺の長さをW、検知センサー203の検知領域内の辺の長さをW、検知センサー203,204の領域外の辺の長さをWとする。
このとき、W、W、及び、Wは、搬送速度v、境界時間t1(図21)、角度θa、及び、検知センサー間距離dとから算出することができる。そして、W、W、及び、Wを合計することにより、記録材Sの前端部の辺の長さをWを算出することができる。また、記録材Sの後端側の辺の長さについても同様に、検知センサー203,204で検知する面積と時間の関係、搬送速度v、境界時間t6(図21)、角度θa、及び、検知センサー間距離dとから算出することができる。
【0083】
また、記録材Sの前端部及び後端側の辺の長さは、側端側の辺の長さと、各辺のなす角度とから算出することができる。例えば、図21に示すように、記録材Sの頂点A、B、C、Dにおいて各辺のなす内角(角度A、角度B、角度C、角度D)は、上述の図8から図20に示す方法によって算出することができる。また、記録材Sの側端側の辺BC、及び、辺ADは、上述の図21及び図22に示す方法によって算出することができる。
このため、制御部100の長さ算出部102(図2)は、記録材Sの前端側の辺AB、及び、後端側の辺CDを、角度A、角度B、角度C、及び、角度D、並びに、辺BC、及び、辺ADから、算出することができる。
【0084】
(記録材の形状算出)
制御部100の形状算出部104は、長さ算出部102が算出した記録材Sの各辺の長さ、及び、角度算出部103が算出した記録材Sの各辺のなす角度から、記録材Sの形状を算出する。形状算出部104は、算出された各辺の長さ、及び、各辺のなす角度を任意に組み合わせることにより、記録材Sの形状を算出することができる。記録材Sの形状を算出することができれば、使用する各辺の長さ、及び、各辺のなす角度は、限定されない。
【0085】
例えば、形状算出部104は、長さ算出部102が算出した任意の2辺の長さと、3つの頂点における角度とから、記録材Sの形状を算出することができる。また、形状算出部104は、長さ算出部102が算出した4辺の長さと、いずれか1つの頂点における角度とから記録材Sの形状を算出することができる。また、形状算出部104は、長さ算出部102が算出した任意の3辺の長さ(例えば、前端部又は後端部の辺の長さ、及び、両側端部の辺の長さ)と、2つの頂点における角度とから、記録材Sの形状を算出することができる。
さらに、形状算出部104は、上述の長さ算出部102、及び、角度算出部103において、4辺の長さと4つの頂点の角度とが算出されるため、これらをすべて用いて、記録材Sの形状を算出することができる。
【0086】
[画像形成位置の補正]
(記録材S形状検出フロー)
制御部100は、上述の方法で算出した記録材Sの形状を基に、記録材Sの表面と裏面との画像形成位置の補正を行う。制御部100は、記録材Sの形状を算出することにより、記録材Sの形状が定型から外れてばらつく場合においても、表面と裏面との画像形成位置を補正することで、表面と裏面との画像形成位置を一致させる。制御部100において、記録材Sの表面及び裏面に形成する画像の位置補正を行う方法について説明する。図23及び図24に、制御部100による画像形成位置の補正を行う際のフローチャートを示す。
【0087】
まず、制御部100は、画像形成装置1において記録材Sへの印刷を開始する(ステップS100)。次に、制御部100は、上述の形状算出部104等による記録材Sの形状を算出することにより、記録材Sの形状を検出する(ステップS101)。
【0088】
次に、制御部100は、ステップS101において形状検出を行った面が、記録材Sの表面かどうかを判定する(ステップS102)。ステップS101において記録材Sの表面の形状を検出した場合(ステップS102のYES)、制御部100の片寄り補正目標値設定部105は、形状算出部104が算出した記録材Sの形状を基に、搬送路21上での記録材Sの主走査方向の片寄り補正目標値を設定する(ステップS103)。
【0089】
次に、制御部100は、記録材Sの画像形成を行う面が表面かどうかを判定する(ステップS104)。画像形成を行う面が裏面の場合(ステップS104のNO)、片寄り補正目標値設定部105は、記録材Sの裏面側の画像前端位置の目標値を設定する(ステップS105)。
【0090】
画像形成を行う面が表面の場合(ステップS104のYES)、又は、ステップS105において画像前端位置の目標値を設定した後、制御部100は、記録材Sを搬送することにより、レジスト部36において記録材Sの曲がり矯正を行う(ステップS106)。
【0091】
次に、制御部100の片寄り量算出部108は、片寄り検知センサー220が検知した記録材Sの主走査方向の一方の端部の位置から、記録材Sの搬送路21上での主走査方向の片寄り量を算出する(ステップS107)。
【0092】
次に、制御部100の画像調整部110は、片寄り量算出部108が算出した記録材Sの主走査方向の片寄り量から、片寄り補正目標値設定部105が設定した片寄り補正目標値に、記録材Sが位置しているかどうかを判定する(ステップS108)。
【0093】
片寄り補正目標値設定部105が設定した片寄り補正目標値に記録材Sが位置していない場合(ステップS108のNO)、画像調整部110は、片寄り量算出部108が算出した記録材Sの主走査方向の片寄り量を基に、画像形成位置を補正する。あるいは、画像調整部110は、レジスト部36(レジストローラー361)を揺動することにより、記録材Sを片寄り補正目標値に移動させ、記録材Sの主走査方向の位置を補正する(ステップS109)。
【0094】
記録材Sが片寄り補正目標値設定部105が設定した片寄り補正目標値にいる場合(ステップS108のYES)、又は、ステップS109において画像形成位置や記録材位置を補正した後、制御部100は、レジスト部36を駆動して記録材Sを画像形成部30に搬送する(ステップS110)。これにより、画像形成部30が、記録材Sに画像を印刷する(ステップS111)。さらに、印刷後の記録材Sを定着部38に搬送し、定着部38において印刷した画像を定着する(ステップS112)。
【0095】
次に、制御部100は、ステップS111で画像を印刷した記録材Sの面が、記録材Sの裏面であるかどうかを判定する(ステップS113)。
画像を印刷した記録材Sの面が表面である場合(ステップS113のNO)、制御部100は、記録材Sを搬送部200の反転部42に搬送して、記録材Sの表裏を反転させる(ステップS114)。そして、記録材Sの裏面側に対し、形状検出を行う(ステップS101)。さらに、ステップS101において形状検出を行った面が、記録材Sの表面であるかどうかを判定する(ステップS102)。
【0096】
形状検出を行った面が記録材Sの裏面側である場合(ステップS102のNO)、形状算出部104が算出した記録材Sの形状を基に、面積比算出部106が記録材Sの表面と裏面との面積比を算出する(ステップS115)。そして、記録材Sの表面と裏面とで面積が同じかどうか判定する(ステップS116)。
【0097】
記録材Sの表面と裏面とで面積が同じではない場合(ステップS116のNO)、画像調整部110は、記録材Sの表面と裏面との面積比に応じて、記録材Sの裏面側に形成する画像の大きさ(倍率)を変更する補正を行う(ステップS117)。そして、画像調整部110は、大きさ(倍率)を変更した画像を、画像を形成する基準位置に対してフィードバック(FB)する(ステップS118)。
【0098】
記録材Sの表面と裏面とで面積が同じ場合(ステップS116のYES)、又は、ステップS118で画像形成位置のフィードバック後、平行度算出部107は、記録材Sの前端側の辺と後端側の辺とが平行かどうかを判定する(ステップS119)。
【0099】
記録材Sの前端側の辺と後端側の辺とが平行でない場合(ステップS119のNO)、画像調整部110は、平行度算出部107が算出した前端側の辺と後端側の辺との平行度に応じて、記録材Sの画像形成位置の回転補正を行う(ステップS120)。
記録材Sの前端側の辺と後端側の辺とが平行な場合(ステップS119のYES)、又は、ステップS120で画像調整部110が画像形成位置の回転補正を行った後、上述のステップS103からステップS113までの処理を行う。そして、画像を印刷した記録材Sの面が裏面である場合(ステップS113のYES)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0100】
上述の処理によって画像を補正することにより、記録材Sの形状にばらつきがある場合にも、記録材Sの表面と裏面とに形成する画像の位置ずれを抑制することができる。以下、上述の処理における片寄り補正(ステップS109)、画像前端位置補正(ステップS105)、画像倍率補正(ステップS117)、及び、画像回転補正(ステップS120)の処理の詳細について説明する。
【0101】
(片寄り補正:片寄り補正目標値の設定)
片寄り補正目標値設定部105による、搬送路21での記録材Sの主走査方向の位置の基準とするための片寄り目標値の設定、及び、画像調整部110による片寄り補正目標値に基づく画像の形成位置の補正について説明する。図25及び図26に、片寄り目標値の設定を説明するための図を示す。図25は、搬送路21を搬送される記録材S全体を示す図である。図26は、図25における記録材Sの前端側の一方の側端部の拡大図である。
【0102】
片寄り補正は、記録材Sの主走査方向の中心位置を、搬送路21の搬送センター21Cと一致させることにより、記録材Sの中心位置を基準として画像を形成するための補正である。片寄り補正では、片寄り検知センサー220で記録材Sの一方の側端部の位置を検知することで、画像調整部110が制御部100が記録材Sの主走査方向の中心を検出する。そして、画像調整部110は、検出した記録材Sの主走査方向の中心が、搬送路21の搬送センター21Cと一致するようにレジスト部36を揺動させて、記録材Sを主走査方向に移動させる。
【0103】
記録材Sの側端側の辺が搬送センター21Cと平行の場合には、片寄り検知センサー220で記録材Sの一方の側端部を検知することで、記録材Sの中心を検出することができる。しかし、図25に示すように、記録材Sの側端側の辺が搬送センター21Cに対して傾いていると、片寄り検知センサー220が検知した位置(副走査方向)によって、側端部から記録材Sの主走査方向の中心までの距離が異なる。このため、従来の片寄り検知センサー220で記録材Sの側端部の検知だけでは、記録材Sの側端側の辺の傾き量によって片寄り補正を正確の行うことができない。
【0104】
本形態の片寄り補正では、片寄り検知センサー220が検知する記録材Sの側端部の位置と、形状算出部104で算出した記録材Sの形状情報とを組み合わせて用いて、記録材Sの側端部から、記録材Sの主走査方向の中心部までの距離を算出するための片寄り補正目標値を設定する。これにより、記録材Sの側端側の辺の傾き分を含めて計算し、片寄り検知センサー220で検知した記録材Sの側端部の位置から、記録材Sの主走査方向の中心を正確に検出することができる。
【0105】
また、図25に示すように、記録材Sの前端側の辺の長さをWとすると、前端部上における側端部から記録材Sの主走査方向の中心までの距離αは、W/2となる。すなわち、検知センサー220が記録材Sの前端部上において記録材Sの側端部を検知した場合、画像調整部110は、側端部からW/2の位置に、記録材Sの主走査方向の中心を検出することができる。
【0106】
しかし、片寄り検知センサー220は、必ずしも記録材Sの前端部上で側端部を検知するとは限らない。例えば、図26に示すように、記録材Sの前端部から副走査方向の距離L[m]の位置で片寄り検知センサー220が、記録材Sの側端部を検知する。この場合、記録材Sの側端側の辺が搬送センター21Cと平行ではないため、片寄り検知センサー220が側端部を検知した位置での記録材Sの側端部から中心位置までの距離は、上記W/2に、側端部の傾きによるずれ量を加えた値となる。このW/2に側端部の傾きによるずれ量を加えた値が、片寄り検知センサー220で検知した記録材Sの側端部の位置を基に、記録材Sの中心位置と搬送センター21Cとを一致させる片寄り補正の目標値、すなわち、片寄り補正目標値である。
【0107】
特に、記録材Sの側端部の両辺が平行でない場合には、それぞれ表面と裏面とで画像形成を行うための側端部から中心部までの距離が異なる。このため、表面と裏面とでそれぞれ片寄り補正目標値を設定する。そして、表面と裏面とに画像形成を行う際に、片寄り補正目標値用いて、片寄り検知センサー220が検知する記録材Sの側端部の位置から記録材Sの主走査方向の中心を正確に検出する。これにより、表面と裏面とにおいて、主走査方向の画像形成位置のずれを抑制することができる。
【0108】
図25に示すように、片寄り検知センサー220を通過する記録材Sは、レジスト部36によって、記録材Sの前端側の辺が搬送方向に対して直角な状態で搬送されると仮定する。このとき、記録材Sの側端部の傾きによって、搬送方向と記録材Sの側端側の辺との間にθa、θbの角度差が発生する。片寄り補正目標値設定部105は、この角度θa、θbを算出する。
【0109】
また、図26に示すように、記録材Sの前端部上での側端部から中心位置までの距離αがW/2であるのに対し、前端部から距離Lずれた位置では、記録材Sの側端側の辺が搬送方向に対してθaだけ傾いていることにより、Ltanθa[m]の長さだけ、前端部上よりも側端部の位置が主走査方向にずれている。
【0110】
即ち、片寄り検知センサー220が側端部を検知した位置での側端部から中心位置までの距離は、[W/2+Ltanθa]となる。この[W/2+Ltanθa]が、記録材Sの中心位置と搬送センター21Cとを一致させるための片寄り補正目標値となる。
この片寄り補正目標値[W/2+Ltanθa]は、予め画像形成装置1において、前端部から検知位置までの距離Lを設定しておき、さらに、形状算出部104が算出した記録材Sの形状から角度θaを算出しておくことによって求めることができる。
【0111】
また、記録材Sの裏面側の片寄り補正目標値は、上記の角度θaを、角度θbに置き換えることによって片寄り補正目標値[W/2+Ltanθb]を設定することができる。図25に示す形状の記録材Sでは、裏面側に画像を形成する際には、記録材Sの前端と後端とが入れ替わる。このため、片寄り検知センサー220が検知する側端側の辺と搬送方向との角度は、角度θaに対して逆の符号となる。すなわち、角度θaをプラスの値とすると、角度θbはマイナスの値となる。このため、片寄り補正目標値は[W/2-Ltanθb]として求めることもできる。
【0112】
また、後述するように、記録材Sの裏面側に画像を形成する際に、表面側の画像形成の定着等によって記録材Sの面積が変化している場合には、上記の裏面側の片寄り補正目標値[W/2+Ltanθb]に対しても、面積比率に応じた値に修正する。例えば、表面の定着等によって記録材Sがβ倍だけ収縮すると、裏面側に形成する画像のサイズもβ倍だけ収縮する。このため、上記の片寄り補正目標値[W/2+Ltanθb]もβ倍し、[β(W/2+Ltanθb)]として設定する。
【0113】
(画像前端位置補正:前端位置目標値の設定)
画像前端位置目標値設定部109による、記録材Sの裏面に画像を形成する際の画像形成領域の前端部の位置の目標値の設定、及び、画像調整部110による画像前端位置目標値に基づく画像の形成位置の補正について説明する。図27に、画像形成領域の前端部の位置の目標値の設定を説明するための図を示す。
【0114】
図27において、記録材Sの表面における記録材Sの主走査方向の中心位置をQ、画像形成領域SAの主走査方向(後端側の辺と平行な方向)の中心位置をM1とする。また、記録材Sの裏面における中心位置をM2、画像形成領域SAの前端側(裏面)の中心位置をM3とする。
さらに、片寄り検知センサー220が検知する記録材Sの側端部から、記録材Sの中心位置Qまでの距離を[W/2+Ltanθc]とする。なお、ここではL=0(図26参照)としているため、[W/2+Ltanθc]=[W/2]、即ち、前端部上での側端部から中心位置までの距離α=[W/2]である。
【0115】
記録材Sの表面側の画像形成において、記録材Sの表面における中心位置Qから、画像領域SAの前端部の中心位置M1までの距離は、予め設定した値を使用することができる。例えば、図27では、記録材Sの中心位置Qから画像領域SAの中心位置M1までの距離を、A[m]と設定している。この場合には、記録材Sの中心位置Qから搬送方向と平行な方向で距離A[m]の位置を、画像領域SAの前端部の中心位置M1として画像形成を実行することができる。
【0116】
一方、記録材Sの裏面側の画像形成においては、記録材Sの前端側の辺と後端側の辺とが平行でないため、予め設定した値を用いるだけでは、表面の画像形成領域を位置がずれる場合がある。このため、記録材Sの形状に応じて画像前端位置目標値設定部109が設定する、画像前端位置目標値を用いて画像形成領域SAの位置を補正する必要がある。
【0117】
記録材Sの裏面における中心位置をM2と、画像形成領域SAの中心位置をM3とを結ぶ直線MLを仮定する。このとき、M2とM3との距離B[m]が画像前端位置目標値となる。この距離B[m]は、形状算出部104が算出した記録材Sの形状、特に、4辺の傾き、表面における記録材Sの中心位置Qから画像領域SAの中心位置M1までの距離A[m]、及び、直線ML上での画像形成領域SAの長さから求めることができる。
【0118】
画像前端位置目標値設定部109は、上記の距離B[m]を画像前端位置目標値として設定する。そして、画像調整部110は、記録材Sの裏面側の中心位置M2から搬送方向と平行な方向で画像前端位置目標値B[m]の位置が、裏面側の画像領域SAの前端部の中心位置M3となるように、画像形成領域SAの前端部の位置を補正する。
【0119】
(画像倍率補正:記録材の面積算出)
面積比算出部106による、記録材Sの表面と裏面との面積比の算出、及び、画像調整部110による面積比に基づく画像形成領域の補正について説明する。図28及び図29に、記録材Sの表面と裏面との面積比を説明するための図を示す。
【0120】
画像形成装置1では、記録材Sの表面にトナー像を転写した後、記録材Sにトナー像を固着させるために定着部38で熱加圧する。このとき、図28に示すように、記録材Sが熱と圧力により収縮して記録材Sxとなる場合がある。この場合、記録材Sの収縮に合わせて、記録材Sの表面に形成された画像も画像形成領域SAから画像形成領域SBに収縮する。このように記録材Sと表面の画像とが収縮した状態で裏面側に画像を形成する際、表面と同条件で画像形成を行うと、収縮した表面側の画像と、収縮していない裏面側の画像との大きさ、及び、画像形成位置がずれる。このため、面積比算出部106によって収縮による表面と裏面との面積比の算出し、画像調整部110が算出した面積比に応じて裏面側の画像の大きさを補正する。
【0121】
図29には、収縮前の記録材S、収縮後の記録材Sx、収縮前の画像形成領域SA、及び、収縮後の画像形成領域SBを示している。面積比算出部106は、形状算出部104が算出した記録材Sの形状から、収縮前の記録材Sの面積と、収縮後の記録材Sxの面積とを比較し、面積比[Sx/S]として収縮率βを算出する。そして、面積比算出部106は収縮前の画像形成領域SAの面積に面積比[S/Sx]を掛けることにより、収縮した記録材Sxにおける裏面側の画像形成領域SBの面積を[領域SBの面積=領域SAの面積×(Sx/S)]、即ち[SB=SA×β]によって求める。
【0122】
画像調整部110は、記録材Sの裏面側に画像を形成する際に、面積比算出部106によって算出された収縮した画像形成領域SBの面積となるように、裏面側の画像形成領域を補正する。また、記録材Sの収縮によって、片寄り補正、及び、画像前端位置補正の際の目標値に修正が必要となる。このため、画像調整部110は、裏面側の画像形成の際に、上記の面積比[Sx/S](=収縮率β)を基に、片寄り補正目標値、及び、画像前端位置目標値を修正して、画像形成位置を補正する。
【0123】
(画像回転補正:記録材の平行度算出)
平行度算出部107による、記録材Sの前端側の辺と後端側の辺との平行度の算出、及び、画像調整部110による平行度に基づく画像の回転補正について説明する。図30から図32に、記録材Sの前端側の辺と後端側の辺との平行度を説明するための図を示す。
【0124】
図30に示すように、記録材Sは前端側の辺と後端側の辺とが平行ではない。ここで、記録材Sの位置を、側端側の辺(片寄り検知センサー220が検知する端側の辺)が搬送方向と平行な位置に仮定する。このとき、記録材Sの前端側の辺は、搬送方向と直交する方向に対してθ1の角度を有する。また、記録材Sの後端側の辺は、搬送方向と直交する方向に対してθ2の角度を有する。
【0125】
記録材Sの表面側に画像を形成する場合には、図31に示すように、記録材Sの前端部がレジスト部36に突き当てられて、記録材Sの前端側の辺が、搬送方向と直交する方向に平行になる。この状態で記録材Sの表面側に画像形成が実行されると、画像形成領域SAに画像が形成される。
【0126】
また、記録材Sの前端部がレジスト部36に突き当てられた状態では、記録材Sの後端側の辺は、搬送方向と直交する方向に対して[θ1+θ2]の角度となる。すなわち、記録材Sの前端側の辺と後端部との辺とに、[θ1+θ2]の角度が発生する。平行度算出部107は、この角度[θ1+θ2]を算出する記録材Sの前端側の辺と後端側の辺との平行度として算出する。
【0127】
一方、記録材Sの裏面側に画像を形成する場合には、図32に示すように、記録材Sの前端部がレジスト部36に突き当てられて、記録材Sの前端側の辺が、搬送方向と直交する方向と平行になる。ここでの前端側の辺は、上記の表面側に画像を形成する際の前端側の辺に該当する。このとき、記録材Sの後端側の辺は、搬送方向と直交する方向に対して、上述の平行度[θ1+θ2]の角度差が発生する。
【0128】
また、図32に示すように、記録材Sの表面側の画像形成領域SAは、搬送方向と直交する方向に対して、平行度[θ1+θ2]の分だけ回転した位置になる。このため、記録材Sの前端側の辺を基準として裏面側の画像形成領域SBを設定すると、表面側の画像形成領域SAと位置がずれる。このため、画像調整部110は、裏面側の画像形成領域SBの位置が表面側の画像形成領域SAと一致するように、この平行度[θ1+θ2]の角度の分だけ、画像形成領域SBの位置を補正する。
【0129】
画像調整部110は、上記の回転補正を表面側の画像形成領域SAに適用してもよい。例えば、表面側に画像を形成する際に平行度算出部107によって平行度[θ1+θ2]が算出されていれば、画像調整部110は、表面側の画像形成領域SAの位置を平行度[θ1+θ2]の分だけ回転させる補正を行う。また、画像調整部110は、表面側の画像形成領域SAの位置と、裏面側の画像形成領域SBの位置とが一致するように、平行度[θ1+θ2]の分だけ画像形成領域SAの位置と画像形成領域SBの位置との両方を回転させる補正を行ってもよい。
【0130】
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明の構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0131】
1 画像形成装置、10 画像形成装置本体、11 画像入力部、12 自動原稿給送装置、13 操作表示部、14 排紙トレイ、20 給紙トレイ、21 搬送路、21C 搬送センター、22 両面経路、30 画像形成部、31,31Y,31M,31C,31K 画像形成ユニット、32,32Y,32M,32C,32K 感光体ドラム、34 中間転写ベルト、35 二次転写部、36 レジスト部、38 定着部、40 第3のローラー対、41 第4のローラー対、42 反転部、43 第5のローラー対、44 第6のローラー対、45 第7のローラー対、46 第8のローラー対、47 裏面前端プレレジスト部、51,52 画像形成位置、53,54 基準点、100 制御部、101 形状情報取得部、102 算出部、103 角度算出部、104 形状算出部、105 片寄り補正目標値設定部、106 面積比算出部、107 平行度算出部、108 片寄り量算出部、109 画像前端位置目標値設定部、110 画像調整部、200 搬送部、201,202,203,204,205,206,207,208,209,210 検知センサー、220 片寄り検知センサー、221 第1の両面経路、222 第2の両面経路、361 レジストローラー、362 レジスト従動ローラー、381 定着上ローラー、382 定着下ローラー、401 反転ローラー、402 従動ローラー、411 ADUループローラー、412 ADUループ従動ローラー、431 表面プレレジストローラー、432 表面プレレジストローラー従動ローラー、441 表面プレレジストループローラー、442 表面プレレジストループ従動ローラー、451 裏面プレレジストローラー、452 裏面プレレジストローラー従動ローラー、461 裏面プレレジストループローラー、462 裏面プレレジストループ従動ローラー、M1,M2,M3 中心位置
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