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特許7497631貼り替え防止用ラベルおよびその読み取り判定方法
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  • 特許-貼り替え防止用ラベルおよびその読み取り判定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】貼り替え防止用ラベルおよびその読み取り判定方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/03 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
G09F3/03 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020117862
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015180
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】西谷 果純
(72)【発明者】
【氏名】牛腸 智
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/132897(WO,A1)
【文献】特開平07-271302(JP,A)
【文献】特開2004-258089(JP,A)
【文献】国際公開第2008/143087(WO,A1)
【文献】特開2009-229574(JP,A)
【文献】特開2011-215296(JP,A)
【文献】特開2001-260533(JP,A)
【文献】特開2002-067507(JP,A)
【文献】特開2011-224817(JP,A)
【文献】国際公開第2012/009733(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0303044(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0193590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の表面に、番号印字部と、スクリーン印刷により形成された、ロイコ色素および蛍光顔料を含む感熱発色層印刷部とを有し、他方の面に、粘着層を有し
感熱発色層印刷部の感熱発色層の膜厚は15~20μmであることを特徴とする貼り替え防止ラベル。
【請求項2】
ロイコ色素の粒子径がメジアン径D50にて0.1~2.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の貼り替え防止ラベル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の貼り替え防止用ラベルの読み取り判定方法であって、番号印字部に記録された番号情報と、感熱発色層印刷部に可視光を照射したときのその表面の凹凸からの反射パターンと、紫外光を照射したときの発光パターンと、をセンサーで読み取り、あらかじめ前記番号情報に紐づけられてデータベースに記録された可視光を照射したときの反射パターンおよび紫外光を照射したときの発光パターンと照合することで、ラベルが真正であるか否かの判定を行うことを特徴とする読み取り判定方法。
【請求項4】
前記番号情報、前記反射パターンおよび前記発光パターンのうち少なくとも1つが暗号化されたものであることを特徴とする請求項3に記載の読み取り判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体に一旦貼着された粘着ラベルを不正に剥されたり、不正に再使用されたことを容易に検知することができる貼り替え防止用ラベルおよびその読み取り判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器等の被着体に貼着された粘着ラベルを不正に剥されたことを容易に検知することができるラベルとして、粘着ラベルの一部に切込を入れ、剥すとその粘着ラベルが破れるようにした粘着ラベルが知られている(例えば、特許文献1)。また、粘着基材の材質を脆質な基材にし、剥すとその粘着ラベルが破れるようにした粘着ラベル、または透明フイルム基材の裏面に部分的に透明な離型剤層を形成し、その全面にアルミニウム蒸着層を施し、さらに粘着剤層を形成し、剥すと透明フイルム基材の離型剤層が形成された部分とアルミニウム蒸着層が剥がれ、粘着剤層の一部と共に被着体に残留されるようにした粘着ラベルなどが知られている。これらの粘着ラベルは、被着体から剥されると、ラベルの一部が破けたり、アルミニウム蒸着層の一部が剥離したりして、剥されたことを一目で容易に知ることができる。
【0003】
また、会員証、パスポート、運転免許証等の各種媒体の偽造や変造の防止、そして偽造物や変造物の真偽判定の手段として、これらの媒体に例えばホログラムラベル等の一般的には容易に製造できない構造を有する特殊仕様のラベルを貼付することが行われている。これらのラベルは、貼付する媒体の用途や発行元に応じて、種々の異なる絵柄、マーク、文字等によるデザイン表示を設けることができるので、媒体の識別効果もあり、また表示内容をホログラム等で立体的に表示することで、同一表示のラベルを製造しにくくして簡単に偽造ができないようにしている。
【0004】
また、これらのラベルは、通常媒体の表面に熱転写して形成したり、またラベル裏面にあらかじめ設けた粘着層や接着層により媒体面に貼付する場合が多く、一旦媒体に貼付されたラベルを剥離して不正に再使用されるのを防止するため、ラベル自体に脆質性を持たせて、剥離するための圧力を加えられた際にラベル構造がたやすく損傷するようにした脆質構造のラベルも知られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
しかしながら、ラベル自体を特殊仕様に製造したとしても、ラベルの粘着層や接着層の貼着部を加熱して、粘着剤や接着剤を溶かすなどしてラベルを媒体基材から剥離させ、偽造した媒体に再貼付するなどして不正行為が行われる危険性があり、ラベル自体の信用性も低下している。
【0006】
また、ラベルに対して熱を加えることで、貼付された媒体面からラベルを剥離したとしても、ラベルに感熱発色性を付与するなどして加熱した証拠が残るようにすることで、ラベルの不正な再使用を防止すると共に、もし一旦使用されたラベルを剥離して他の媒体に貼付して再使用したとしても、簡単に真偽判定を行うことができる様にしたラベルも提案されている。
【0007】
しかしこのような感熱発色性のラベルは、加熱せずに剥離することができれば再利用が可能であり、再利用できなくとも偽造品を作成することは可能であるという問題点を有しているため、より強固なセキュリティ性を有するラベルが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-356692号公報
【文献】特開平10-222071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、値札ラベル、各種の開封検知用、認証用のラベルの不正貼り替えと再使用を防止することができる不正防止性能に優れた貼り替え防止用ラベルおよびその読み取り判定方法を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一側面は、基材の一方の表面に、番号印字部と、スクリーン印刷により形成された、ロイコ色素および蛍光顔料を含む感熱発色層印刷部とを有し、他方の面に、粘着層を有し、感熱発色層印刷部の感熱発色層の膜厚は15~20μmであることを特徴とする貼り替え防止ラベルである。
【0012】
上記貼り替え防止ラベルにおいて、ロイコ色素の粒子径がメジアン径D50にて0.1~2.0μmであって良い。
【0013】
本発明の別の側面は、上記の貼り替え防止用ラベルの読み取り判定方法であって、番号印字部に記録された番号情報と、感熱発色層印刷部に可視光を照射したときのその表面の凹凸からの反射パターンと、紫外光を照射したときの発光パターンと、をセンサーで読み取り、あらかじめ前記番号情報に紐づけられてデータベースに記録された可視光を照射したときの反射パターンおよび紫外光を照射したときの発光パターンと照合することで、ラベルが真正であるか否かの判定を行うことを特徴とする。
【0014】
上記貼り替え防止用ラベルの読み取り判定方法において、前記番号情報、前記反射パターンおよび前記発光パターンのうち少なくとも1つが暗号化されたものであって良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の貼り替え防止用ラベルによれば、ラベルを加熱して不正に剥離した場合には発色して剥離されたことが分かるだけでなく、加熱されずに剥がされた場合でも印刷部分の表面の凹凸および濃淡という固有のデータを用いて画像認証による照合を行うことで真偽判定が可能となり、より不正な貼り替えや剥離がされにくいラベルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の貼り替え防止用ラベルの一実施形態を示す平面図。
図2】本発明の貼り替え防止用ラベルのX-X線における断面図。
図3】蛍光顔料を加えた感熱インキを印刷した部位の凹凸をセンサーにより読み取った画像の一例。
図4】貼り替え防止ラベル1の固有情報の読み取りと登録を行う方法を示す概略図。
図5】貼り替え防止ラベル1の真偽判定方法の一実施例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0018】
図1は、本発明の貼り替え防止用ラベルの一実施形態を示す平面図であり、図2は、図1の貼り替え防止用ラベルのX-X線における断面図である。本発明の貼り替え防止ラベル(以下、単に「ラベル」とも称する)1は、値札ラベル等としたときの不正貼り替え防止用、あるいは各種の開封検知用や真正性認証用に好適に用いられるラベルである。ラベル1の構成としては、基材2の一方の表面に、番号印字部4と感熱発色性のロイコ色素および蛍光顔料を含む感熱発色層印刷部3とを有し、他方の面に粘着層5を有している。ただしラベル1の本来の機能を損なわない限りにおいて、これ以外の層を加えても良い。
【0019】
ここで、感熱発色層印刷部3は、熱を加えて剥離し、再利用されることを防止するため、熱で発色する感熱発色層を有し、さらに蛍光顔料を含むものである。図3は、蛍光顔料を加えた感熱発色インキを印刷した部位の表面の凹凸をイメージセンサーにより読み取った画像の一例である。感熱発色層を印刷する際にランダムに生じる印刷表面10の凹凸および濃淡等の情報をラベル1の固有情報とし、番号印字部4の印字番号情報と紐づけてデータベース化し、この情報を、実際に貼られたラベルから読み取った情報と照合することで、貼り替えなどの不正が行われたものでないか判定することができ、より貼り替え防止性に優れたラベルとすることができる。
【0020】
蛍光顔料を加えた感熱発色インキを印刷した部位の表面が図3の様な凹凸および濃淡を有するのは、以下の様な要因によると考えられる。一般的に水系ロイコインキは、顔料であるロイコ色素と顕色剤を含む粒子の粒子径が大きい(メジアン径D50にて0.1~2.0μm、好ましくは0.5~1.5μm)ため、比較的粘度の高い水系インキ中での分散性が悪い。また、発色濃度を高くするために顔料濃度を高くしている(10~80%、好ましくは30~60%)ためさらに粘度が高くなる。これにより、特にスクリーン印刷法により印刷する際にはインキ内部およびスクリーン版上に気泡が生じるため、スクリーン線数120線以下の条件で印刷すると、印刷後のレベリングが悪くなり、印刷表面に図3の例と同様な凹凸が生じる。このときの膜厚は15~20μmである。レベリングが悪くなる程、凹凸の境目がはっきりするため、よりイメージセンサでの模様の認識が容易となる。
【0021】
粒子径の大きい顔料として、ロイコ色素および顕色剤を含む粒子の他にパール顔料があり、パール顔料を顔料として添加しても良い。スクリーン印刷の際のスクリーン線数およびスクリーンを通過できる粒子径の関係を表1に示す。ただし表1に示す関係は上記のインキ粘度及び顔料濃度の場合の関係性の例を示すものであり、これに限定されるものではない。例えば粘度および顔料濃度が高くなると疑集が起こりやすくなるので通過可能な粒子径は小さくなり、一方、粘度および顔料濃度が低くなるとより大きい粒子径でも通過可能となるのである。
【0022】
【表1】
【0023】
<ラベルの構成>
図2に示すような構成の貼り替え防止ラベル1における、より具体的な構成例を以下に示すが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
(1)基材2:例えば、紙、プラスチック、木のような材料を使用することができ、要求される強度、重量、接着性、加工適性等によって選択するのが好ましい。また、その厚みは自由に設定でき、目的に応じて使用することができるが、通常10~300μmの範囲にすればよく、好ましくは20~200μmの範囲である。
(2)感熱発色層印刷部3:インキの組成は、ロイコ染料(TG-11,日本化薬(株)製)の40重量部と、顕色剤(TG-SA,日本化薬(株)製)の20重量部と、蛍光顔料(NKW-A-300,株式会社デー・シー製)5重量部とポリウレタン樹脂(ハイド
ランAP-40,DIC社製)の35質量部とを、配合してインキ化したものである。このインキを例えばスクリーン印刷(スクリーン線数120線以下)により印刷する。
(3)番号印字部4:インク転写式プリンタやインクジェットプリンタ等により印字する。
(4)粘着層5:アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系等の粘着材単独、もしくはアルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリル等に代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等の添加剤を適宜添加可能である。粘着層5の厚みは、特に限定されるものではないが、通常10~100μmの範囲にすればよく、好ましくは10~50μmの範囲である。厚み10μm以下であると粘着力が低下するため好ましくない。
【0024】
<情報の紐づけ>
感熱発色層印刷部3を上記(2)に示した条件で印刷した場合、印刷表面に図3の例と同様の細かな凹凸が生じ、まだら模様となる。この模様はランダムであり、ラベルごとに異なるため、ラベルの固有情報として扱うことができる。この固有情報を登録するには、例えば図4に示す様に、ラベル1の表面に光源7から可視光を照射し、感熱発色層印刷部3の表面の凹凸からの反射パターンをイメージセンサ6により画像情報70として取り込む。また紫外線光源8から紫外光を照射し、蛍光顔料の発光パターンを同様にイメージセンサ6により画像情報80として取り込む。さらにイメージセンサ6により番号印字部4の情報を読み取り文字情報40とし、画像情報70および画像情報80との紐づけを行い、ラベル1の固有情報としてコード化してデータベースに登録する。固有情報はさらに暗号化して登録されても良い。イメージセンサ6はそれぞれの情報ごとに複数設けて使用しても良い。
【0025】
<判定方法>
発行されて各種の製品等に貼着されたラベルが真正のものであり、また不正に貼り替えられたり、剥がされたりしたものではないことを判定する方法を、図5を用いて説明する。ラベル1に記録されている感熱発色層印刷部3、番号印字部4の情報を読み取る方法自体は基本的に前述の情報の紐づけの際と同様の方法で行える、すなわち、光源7、紫外線光源8とイメージセンサ6を用いて、文字情報40、反射パターンの画像情報70、発光パターンの画像情報80を取り込む。
【0026】
取り込んだ各情報を紐づけの時と同様にコード化、もしくは暗号化し、あらかじめデータベースに登録された当該ラベルの情報と照合され、真偽判定が行われる。真偽判定はデータ処理部で行い、一致した場合は真正なものと判定して次の処理に進み、一致しない場合は何らかの不正が行われたものと判定して排除を行う。仮に偽造されり貼り替えられたラベルが貼られている場合、容易に視認可能な文字情報を偽造できたとしても、感熱発色層印刷部3の表面の凹凸や蛍光顔料の発光パターンは不規則で再現が困難であり、偽造の際に正確に再現することは困難であるため、真正なラベルと偽造されたり貼り替えられたりしたラベルを容易に判別できる。
【0027】
またラベル1は感熱発色層を有するため、加熱によりラベルを剥がされたときには感熱発色層が発色することから、加熱して剥がされたことが明らかになり、より容易に不正が行われたことを視認でき、他の製品等に貼付して再使用したとしても、簡単に真偽判定を行うことができる。
【0028】
以上のように、本発明の貼り替え防止ラベルによれば、加熱されて剥がされた場合でも、加熱されずに剥がされた場合でも、印刷部分の表面の凹凸および濃淡という固有のデータを用いて画像認証による照合を行うことで真偽判定が可能なラベルが得られる。
【符号の説明】
【0029】
1・・・貼り替え防止ラベル
2・・・基材
3・・・感熱発色層印刷部
4・・・番号印字部
5・・・粘着層
6・・・イメージセンサ
7・・・光源
8・・・紫外線光源
10・・・印刷表面
40・・・文字情報
70・・・反射パターンの画像情報
80・・・発光パターンの画像情報
図1
図2
図3
図4
図5