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特許7497648インクジェット用のインクおよび画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】インクジェット用のインクおよび画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20240604BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240604BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240604BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20240604BHJP
【FI】
C09D11/322
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41M5/00 100
B41M5/00 120
C09D11/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020139343
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035200
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 秀和
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-203818(JP,A)
【文献】特開2011-178942(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056860(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0254250(US,A1)
【文献】特開2019-119856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/322
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される顔料と、下記一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料の少なくともいずれかを含む、インクジェット用のインク。
【化1】
(式(1)中、Mは、ケイ素原子を示し、Zは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、塩素原子、炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリールオキシ基、炭素数が1~22の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基、および下記一般式(2)で表される基からなる群から選択される官能基を示す。さらに、A、A、AおよびAは、それぞれ独立に、下記一般式(3)に示す原子団を示し、上記原子団は、芳香環が電子吸引性置換基で置換されていてもよい。)
【化2】
(式(2)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数が1~22の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリール基、炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリールオキシ基、および炭素数が1~22の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基からなる群から選択される置換基を示す。)
【化3】
【化4】
(式(4)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基および複素環基からなる群から選択される原子または置換基を示す。)
【化5】
(式(5)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、および複素環基からなる群から選択される原子または置換基を示し、Rは、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、エステル基、または下記一般式(6)で表される基からなる群から選択される原子または官能基を示す。)
【化6】
(式(6)中、R、R10は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、およびアリール基からなる群から選択される原子または置換基を示す。)
【化7】
(式(7)中、R11は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基および複素環基からなる群から選択される原子または置換基を示し、M 2+は、2価の金属イオンを示す。)
【請求項2】
前記一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料の合計量は、前記インクジェット用のインクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載のインクジェット用のインク。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される顔料の含有量は、前記一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料の全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1または請求項2に記載のインクジェット用のインク。
【請求項4】
前記一般式(4)で表される顔料を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェット用のインク。
【請求項5】
活性線重合性化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット用のインク。
【請求項6】
ゲル化剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のインクジェット用のインク。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェット用のインクの液滴をインクジェットヘッドのノズルから吐出して、前記インクの液滴を記録媒体の表面に付与する工程と、
前記付与されたインクの液滴に活性線を照射する工程と、を含む、
画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用のインクおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法では、簡便かつ安価に画像を作製できるため、各種印刷、マーキング、細線形成、カラーフィルタ等の特殊印刷を含む様々な印刷分野に応用されている。インクジェット法は、版を用いずデジタル印刷が可能であるため、多様な画像を少量ずつ形成するような用途に特に好適である。特に、インクジェット法による画像形成方法は、従来のビジネス文書のコピーやプリントアウトのみならず、オンデマンド印刷の領域にまで広く用いられる様になってきており、画像の画像品質だけでなく、画像の耐久性の向上も望まれている。
【0003】
そのため、インクジェット法で用いられるインクには、優れたカラー再現性を有することのみならず、耐久性(耐光性、耐水性など)に優れた画像を形成することが求められている。所望する色調、耐久性を得るために、インクに含まれる顔料の選択では、顔料が有する色域(色相、彩度)、耐光性、耐水性などの特性を考慮する必要がある。しかしながら、所望する全ての特性を有する顔料を得ることは困難である。そこで、複数の顔料を用いて、特性を改善する方法が検討されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、C.I.ピグメントバイオレット32およびC.I.ピグメントバイオレット19を顔料として含むインク組成物が記載されている。特許文献1によると、上記インク組成物を用いると、高彩度かつ低明度のレッド領域の色再現性に優れた画像を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2006/004001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が検討したところ、特許文献1に記載のインク組成物では、顔料としてC.I.ピグメントバイオレット32およびC.I.ピグメントバイオレット19を所定の割合で含むことにより、高彩度かつ低明度のレッド領域の色再現性に優れた画像が得られた。一方で、上記インク組成物では所望する分散性を得られなかった。また、所望する耐光性を有する画像を得られないことがあった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高色域を有するとともに、分散性および耐光性に優れたインクジェット用のインクを提供することを第1の目的とする。また、当該インクを用いた画像形成方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインクジェット用のインクは、下記一般式(1)で表される顔料と、少なくとも下記一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料のいずれかを含む。
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、Mは、ケイ素原子(Si)、ゲルマニウム原子(Ge)、およびスズ原子(Sn)からなる群から選択される金属原子を示し、Zは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、塩素原子、炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリールオキシ基、炭素数が1~22の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基、および下記一般式(2)で表される基からなる群から選択される官能基を示す。さらに、A、A、AおよびAは、それぞれ独立に、下記一般式(3)に示す原子団を示し、上記原子団は、芳香環が電子吸引性置換基で置換されていてもよい。)
【0011】
【化2】
【0012】
(式(2)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数が1~22の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリール基、炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリールオキシ基、および炭素数が1~22の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基からなる群から選択される置換基を示す。)
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
(式(4)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基および複素環基からなる群から選択される原子または置換基を示す。)
【0016】
【化5】
【0017】
(式(5)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、および複素環基からなる群から選択される原子または置換基を示し、Rは、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、エステル基、または下記一般式(6)で表される基からなる群から選択される原子または官能基を示す。)
【0018】
【化6】
【0019】
(式(6)中、R、R10は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、およびアリール基からなる群から選択される原子または置換基を示す。)
【0020】
【化7】
【0021】
(式(7)中、R11は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基および複素環基からなる群から選択される原子または置換基を示し、M 2+は、2価の金属イオンを示す。)
【0022】
本発明の画像形成方法は、上記インクジェット用のインクの液滴をインクジェットヘッドのノズルから吐出して、前記インクの液滴を記録媒体の表面に付与する工程と、前記付与されたインクの液滴に活性線を照射する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高色域を有するとともに、分散性および耐光性に優れたインクジェット用のインクを提供することができる。また、当該インクを用いた画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
[インクジェット用のインク]
本発明の一実施の形態に係るインクジェット用のインクは、顔料を含む。
【0026】
(顔料)
上記顔料は、下記一般式(1)で表される顔料と、下記一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料の少なくともいずれかを含む。
【0027】
はじめに、下記一般式(1)で表される顔料について説明する。
【0028】
【化8】
【0029】
上記一般式(1)で表される顔料は、フタロシアニン系化合物である。上記フタロシアニン系化合物は、中心金属Mからフタロシアニン環に対して垂直方向に置換基(Z)を有する化合物である。なお、本願発明において、「垂直方向に置換基(Z)を有する」とは、置換基(Z)がフタロシアニン環と、同一平面上にないことを意味する。また、上記置換基(Z)は、上記平面に正確に90°に位置していなくてもよい。
【0030】
一般式(1)で表される顔料は、置換基(Z)が、中心金属原子Mのアキシアル位にあるので、高い耐光性を有することから、耐光性の高い画像を形成することができる。
【0031】
上記一般式(1)で表される顔料の中心金属原子Mは、ケイ素原子(Si)、ゲルマニウム原子(Ge)、またはスズ原子(Sn)のいずれかの金属原子であり、ケイ素原子(Si)であることが好ましい。上記Mが、ケイ素原子(Si)、ゲルマニウム原子(Ge)、またはスズ原子(Sn)であることにより、十分な色再現性を有し、大気中のオゾン、窒素酸化物(NOx)などの酸化性物質に対して耐性を有するので、画像の耐光性を高めることができる。とくに、ケイ素原子(Si)であると、適正な色相角を有することができ、画像の明度も十分に高くすることができる。上記置換基(Z)は、中心金属原子Mのアキシアル位にあるので、後述する一般式(5)および一般式(7)で表される顔料との相互作用が生じにくく、一般式(1)で表される顔料を介したこれらの顔料は凝集しにくくなるので分散性が向上する。その結果、一般式(5)および一般式(7)で表される顔料に分散剤を満遍なく配位させることができるので、光により生じる活性種(例えば活性酸素)が一般式(5)および一般式(7)で表される顔料に到達しにくくなる。そのため、一般式(5)および一般式(7)で表される顔料の光劣化を抑制することができ、画像の耐光性を高めることができる。
【0032】
また、後述する一般式(4)で表される顔料は、平面性が高くπ-π相互作用を生じて凝集しやすい。これに対し、上記一般式(1)で表される顔料は、一般式(4)で表される顔料との親和性が高い。これにより、一般式(1)で表される顔料で表される顔料が、一般式(4)で表される顔料の近くに存在することによって、一般式(4)で表される顔料同士の凝集(πスタック)を抑制して、一般式(4)で表される顔料の分散性を向上させることができる。これにより、一般式(4)で表される顔料による本来の彩度を得られやすくする。
【0033】
上記一般式(1)の置換基(Z)は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、塩素原子、炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリールオキシ基、炭素数が1~22の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基、または下記一般式(2)で表される基である。置換基(Z)として、上記基を有することにより、上記基同士の反発により一般式(1)で表される顔料同士の相互作用を少なくして、一般式(1)で表される顔料の凝集を抑制できる。
【0034】
上記置換基(Z)の中では、炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリールオキシ基、炭素数が1~22の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基、一般式(2)で表される基であることが好ましい。一般式(1)で表される顔料が、一般式(2)で表されるような嵩高い置換基を有することで、顔料の凝集や結晶化が抑制されてインク中に均一に分散しやすくなる。そのため、広い色域を有するインクとなりうる。
【0035】
上記炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリールオキシ基の例には、フェノキシ基、p-t-ブトキシフェニル基などが含まれる。上記アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ドデシルオキシ基などが含まれる。
【0036】
上記直鎖または分岐鎖のアリールオキシ基の炭素数は、6~12であることがより好ましく、上記アルコキシ基の炭素数は、1~12であることが好ましい。
【0037】
【化9】
【0038】
また、上記一般式(2)において、R、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数が1~22の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリール基、炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリールオキシ基、または炭素数が1~22の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。これらの基は、後述する一般式(5)および一般式(7)で表される顔料と一般式(1)で表される顔料との親和性をより向上させる。これにより、一般式(1)で表される顔料が、一般式(5)および一般式(7)で表される顔料を凝集しにくくして、一般式(5)および一般式(7)で表される顔料分散性を向上させることができる。
【0039】
上記炭素数が1~22の直鎖または分岐鎖のアルキル基は、炭素数が1~10であることがより好ましく、1~5であることがさらに好ましい。上記炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリール基は、炭素数が6~12であることがより好ましい。上記炭素数が6~18の直鎖または分岐鎖のアリールオキシ基は、炭素数が6~12であることがより好ましい。上記直鎖または分岐鎖のアルコキシ基は、炭素数が1~12であることがより好ましく、1~10であることがさらに好ましい。上記基の中では、炭素数が1~5の直鎖のアルキル基であることが好ましい。R、R、Rが、1~5の直鎖のアルキル基であると、一般式(1)で表される顔料の分散性がより良好となるので、一般式(1)で表される顔料の凝集を抑制できる。これにより、一般式(1)で表される顔料による、画像の色域および彩度の向上効果がより十分に奏される。
【0040】
上記置換基(Z)の中では、一般式(2)で表される基が好ましい。一般式(1)で表される顔料が、一般式(2)で表されるような嵩高い置換基を有することで、顔料の凝集や結晶化が抑制されてインク中に均一に分散しやすくなる。そのため、広い色域を有するインクとなりうる。
【0041】
また、一般式(1)で表される顔料は、その分子内にヘテロ原子を有するため、例えば、分散剤の水素原子と水素結合を形成し得るので、分散剤との親和性が良好であり、分散性が高い。そのため、他の構造を有する顔料をマゼンタインクに添加するときと比較して、一般式(1)で表される顔料による、画像の色域および彩度の向上効果が得られやすい。
【0042】
また、上記一般式(1)のA、A、AおよびAは、それぞれ独立に、下記一般式(3)に示す原子団を有する。なお、これらの原子団は、いずれかまたは複数の芳香環が電子吸引性置換基で置換されていてもよい。下記原子団の中では、ベンゼン環を構成する原子団であることが好ましい。ベンゼン環であることにより、インクの保存安定性、および形成される画像の耐光性が向上する。また、芳香環に結合する電子吸引性置換基の例には、塩素原子、塩ハロゲン化メチル基、トリフルオロメチル基、およびニトロ基などが含まれる。
【0043】
【化10】
【0044】
次に、下記一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料について説明する。
【0045】
【化11】
【0046】
上記一般式(4)において、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン基、未置換のアルキル基であることがより好ましい。なお、上記RおよびRは、それぞれベンゼン環の任意の位置に結合することができる。また、上記一般式(4)で表される顔料は、一般に、彩度は低いものの、良好な耐光性を有する。特に、RおよびRが、水素原子、アルキル基、ハロゲン基であると、良好な耐光性を有し、色域をより広げることができる。
【0047】
【化12】
【0048】
上記一般式(5)において、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、または複素環基であることが好ましい。また、Rは水素原子、置換または未置換のアルコキシ基であることがより好ましく、Rは、アリール基、複素環基であることがより好ましい。Rは、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、エステル基、または下記一般式(6)で表される基であることが好ましく、エステル基、一般式(6)で表される基であることがより好ましい。
【0049】
【化13】
【0050】
また、上記一般式(6)において、R、R10は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、またはアリール基であることが好ましく、水素原子、アリール基であることがより好ましい。
【0051】
また、一般式(5)で表される顔料は、一般に、一般式(4)で表される顔料と、一般式(7)で表される顔料(後述)との間の耐光性および彩度を有するという特徴を有する。特に、Rが水素原子、置換または未置換のアルコキシ基であり、Rが、アリール基、複素環基であると良好な耐光性を有する。また、Rが、一般式(6)で表される基であり、一般式(6)においてR、R10が、それぞれ独立に、水素原子、アリール基であると良好な彩度を有する。
【0052】
【化14】
【0053】
一般式(7)において、R11は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン基であることがより好ましい。また、M 2+は、2価の金属イオンである。上記2価の金属イオンの例には、Sr2+、Mn2+、Ca2+が含まれる。また、一般式(7)で表される顔料は、一般に、耐光性は低いものの、高い彩度を有するという特徴を有する。特に、M 2+が、Sr2+の顔料が最も良好な彩度を有する。
【0054】
上記一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料の中では、上記一般式(4)、一般式(7)で表される顔料を含むことがより好ましく、一般式(4)で表される顔料であることがさらに好ましい。
【0055】
また、上記一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料の合計量は、インクジェット用のインクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。上記一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料の合計量を1質量%以上とすることにより、良好な色再現性を発現することができる。また、20質量%以下とすることにより、良好な分散状態を維持することができる。
【0056】
また、上記一般式(1)で表される顔料の含有量は、上記一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料の全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。一般式(1)で表される顔料の含有量を0.1質量%以上とすることにより、十分な耐光性が得られるとともに、色域をより広げることができる。また、10質量%以下とすることにより、色相の過剰な変化を抑制できる。
【0057】
一般式(4)で表される顔料および一般式(1)で表される顔料を含むインクは、分散性を向上させることができる。これは、上述のように、一般式(4)で表される顔料は、平面性が高くπ-π相互作用を生じて凝集しやすいものの、一般式(1)で表される顔料は一般式(4)で表される顔料と親和性が高いため、一般式(1)で表される顔料で表される顔料が、一般式(4)で表される顔料の近くに存在しやすくなる。その結果、一般式(4)で表される顔料同士の凝集(πスタック)を抑制できるためであると考えられる。
【0058】
また、一般式(5)、一般式(7)で表される顔料および一般式(1)で表される顔料を含むインクは、画像の耐光性を高めることができる。これは、上述したように、一般式(1)で表される顔料の置換基(Z)が中心金属原子Mのアキシアル位にあるので、一般式(5)、一般式(7)で表される顔料との相互作用が生じにくく、分散性の低下が生じにくい。その結果、一般式(5)および一般式(7)で表される顔料に分散剤を満遍なく配位させることができるので、光(例えば紫外線)が一般式(5)および一般式(7)で表される顔料に到達しにくくなるためであると考えられる。
【0059】
(分散剤)
上記顔料は、分散剤で分散されていてもよい。上記分散剤は、上記顔料を十分に分散させることができればよい。分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテートが含まれる。
【0060】
(定着樹脂)
上記インクジェット用のインクは、塗膜の耐擦性およびブロッキング耐性をより高めるため、定着樹脂を含有してもよい。
【0061】
定着樹脂の例には、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、マレイン酸樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびアルキド樹脂が含まれる。
【0062】
上記定着樹脂の含有量は、たとえば、活性線重合性化合物の全質量に対して1.0質量%以上10.0質量%以下とすることができる。
【0063】
(界面活性剤)
上記インクジェット用のインクは、界面活性剤を含有してもよい。
【0064】
界面活性剤は、インクの表面張力を調整して、付与後のインクの基材に対する濡れ性を調整したり、隣接する液滴間の合一を抑制したりすることができる。
【0065】
界面活性剤の例には、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、およびパーフルオロアルケニル基を有するフッ素系界面活性剤などが含まれる。
【0066】
界面活性剤の含有量は、インクジェット用のインクの全質量に対して0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0067】
また、本発明の一実施の形態に係るインクジェット用のインクは、活性線重合性化合物、光重合開始剤およびゲル化剤を含むことが好ましい。
【0068】
(活性線重合性化合物)
活性線重合性化合物は、活性線の照射により架橋または重合する化合物である。活性線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線などが含まれる。上記活性線の中では、紫外線または電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。上記活性線重合性化合物の例には、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、またはそれらの混合物が含まれる。上記活性線重合性化合物の中では、ラジカル重合性化合物が好ましい。なお、上記活性線重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマーおよびこれらの混合物のいずれであってもよい。
【0069】
ラジカル重合性化合物とは、分子中にエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物である。ラジカル重合性化合物は、単官能、2官能または多官能の化合物でありうる。ラジカル重合性化合物の例には、不飽和カルボン酸エステル化合物である、(メタ)アクリレートが含まれる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0070】
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0071】
2官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの2官能の(メタ)アクリレートなどが含まれる。上記2官能の(メタ)アクリレートは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の(メタ)アクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、ならびにこれらの変性物などが含まれる。上記変性物の例には、エチレンオキサイド基を挿入したエチレンオキサイド変性(EO変性)(メタ)アクリレート、およびプロピレンオキサイドを挿入したプロピレンオキサイド変性(PO変性)(メタ)アクリレートが含まれる。上記多官能の(メタ)アクリレートは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
また、カチオン重合性化合物とは、分子中にカチオン重合性基を有する化合物である。カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物およびオキセタン化合物などが含まれる。
【0074】
上記エポキシ化合物の例には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-メタ-ジオキサンおよびビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種類または2種類以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなど)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどを含む脂肪族エポキシ化合物、ならびに、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などを含む芳香族エポキシ化合物などが含まれる。
【0075】
上記ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、およびオクタデシルビニルエーテルなどを含むモノビニルエーテル化合物、ならびにエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリビニルエーテルなどを含むジまたはトリビニルエーテル化合物などが含まれる。
【0076】
上記オキセタン化合物の例には、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、1,4ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよびジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどが含まれる。
【0077】
上記ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物の中では、ラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。
【0078】
また、上記活性線重合性化合物の含有量は、例えば、インクジェット用インクの全質量に対して1質量%以上97質量%以下であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下とすることがより好ましい。
【0079】
(光重合開始剤)
上記光重合開始剤は、活性線の照射により、上記活性線重合性化合物の重合を開始できるものであればよい。たとえば、上記インクがラジカル重合性化合物を有するときは、光重合開始剤は光ラジカル開始剤とすることができ、上記インクジェット用のインクがカチオン重合性化合物を有するときは、光重合開始剤は光カチオン開始剤(光酸発生剤)とすることができる。
【0080】
ラジカル重合開始剤には、分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤と分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤とが含まれる。
【0081】
分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテルなどを含むベンゾイン類、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ならびに、ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。
【0082】
分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンなどを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンなどが含まれる。
【0083】
カチオン系の光重合開始剤の例には、光酸発生剤が含まれる。光酸発生剤の例には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、およびホスホニウムなどを含む芳香族オニウム化合物のB(C 、PF 、AsF 、SbF 、CFSO 塩など、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、ならびに鉄アレン錯体などが含まれる。
【0084】
(ゲル化剤)
ゲル化剤は、常温では固体であるが、加熱すると液体となることにより、上記インクジェット用のインクを温度変化に応じてゾルゲル相変移させることができる有機物である。
【0085】
また、上記ゲル化剤は、インクのゲル化温度以下の温度で、インク中で結晶化することが好ましい。ここで、ゲル化温度とは、加熱によりゾル化または液体化したインクを冷却していったときに、インクがゾルからゲルに相転移し、インクの粘度が急変する温度をいう。具体的には、ゾル化または液体化したインクを、例えば、レオメータMCR300(Anton Paar社製)で粘度を測定しながら冷却していき、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。
【0086】
上記ゲル化剤がインク中で結晶化すると、板状に結晶化した上記ゲル化剤およびワックスによって形成された三次元空間に活性線重合性化合物が内包される構造が形成されることがある(このような構造を、以下「カードハウス構造」という)。カードハウス構造が形成されると、液体の活性線重合性化合物が上記空間内に保持されるため、インクが付着して形成されたドットがより濡れ広がりにくくなり、インクのピニング性がより高まる。インクのピニング性が高まると、インクが記録媒体に付着して形成されたドット同士が合一しにくくなる。
【0087】
ゲル化剤の例には、ジペンタデシルケトン、ジヘプタデシルケトン、ジリグノセリルケトン、ジベヘニルケトン、ジステアリルケトン、ジエイコシルケトン、ジパルミチルケトン、ジミリスチルケトン、ラウリルミリスチルケトン、ラウリルパルミチルケトン、ミリスチルパルミチルケトン、ミリスチルステアリルケトン、ミリスチルベヘニルケトン、パルミチルステアリルケトン、バルミチルベヘニルケトンおよびステアリルベヘニルケトン等の脂肪族ケトンワックス、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、イコサン酸イコシル、ステアリン酸ベヘニル、ステアリン酸パルミチル、ステアリン酸ラウリル、パルミチン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸ステアリル、エルカ酸ステアリル、リノール酸ステアリル、オレイン酸ベヘニルおよびリノール酸アラキジル等の脂肪族エステルワックス、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、N-(2-エチルヘキサノイル)-L-グルタミン酸ジブチルアミド等のアミド化合物、1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトール等のジベンジリデンソルビトール類;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、およびホホバエステル等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウ等の動物系ワックス、モンタンワックス、および水素化ワックス等の鉱物系ワックス、硬化ヒマシ油または硬化ヒマシ油誘導体、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体またはポリエチレンワックス誘導体等の変性ワックス、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸,ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸等の高級脂肪酸、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸誘導体、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等のN-置換脂肪酸アミド、N,N’-エチレンビスステアリルアミド、N,N’-エチレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、およびN,N’-キシリレンビスステアリルアミド等の特殊脂肪酸アミド、ドデシルアミン、テトラデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの高級アミン、ステアリルステアリン酸、オレイルパルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル化合物、ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸等のショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレンワックス、α-オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックス等の合成ワックス、重合性ワックス、ダイマー酸、ダイマージオール等が含まれる。これらのワックスは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0088】
これらのうち、インクのピニング性をより高める観点からは、脂肪族ケトンワックス、脂肪族エステルワックス、高級脂肪酸、高級アルコールおよび脂肪酸アミドが好ましく、ケト基またはエステル基を挟んで両側に配置された炭素鎖の炭素数がいずれも9以上25以下である脂肪族ケトンワックスまたは脂肪族エステルワックスがより好ましい。
【0089】
上記ゲル化剤の含有量は、インクジェット用のインクの全質量に対して0.5質量%以上10.0質量%未満であることが好ましく、インクジェット用のインクの全質量に対して1.0質量%以上10.0質量%未満であることがより好ましく、インクジェット用のインクの全質量に対して2.0質量%以上7.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0090】
(重合禁止剤)
本発明の一実施の形態に係るインクジェット用のインクは、重合禁止剤を含むことができる。
【0091】
上記重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシムが含まれる。
【0092】
上記重合禁止剤の含有量は、インクの全質量に対して0.05質量%以上0.2質量%以下とすることができる。
【0093】
(その他の成分)
上記インクジェット用のインクは、上記成分以外に、必要に応じて、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防黴剤、防錆剤などを含んでもよい。
【0094】
これまで、インクジェット用のインクとして活性線硬化型インクについて説明してきたが、本発明はこれに限定されない。
【0095】
本発明の一実施の形態に係る、上記一般式(1)で表される顔料、および上記一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料は、水、水溶性有機溶剤などを含む水性インクの顔料として用いてもよい。
【0096】
上記水溶性有機溶剤の例には、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、オクタノール、イソオクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert-ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコール、1-メトキシ-1-プロパノール、3-メトキシ-1-ブタノール、シクロヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、3-フェニルプロパノールなどのアルコール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびソルビトールを含む多官能グリコールメタノールなどの多価アルコール類などが含まれる。
【0097】
また、上記水性インクには、上述のゲル化剤を含んでもよい。
【0098】
また、必要に応じて、上述のその他の成分を含んでもよい。
【0099】
(インクジェット用のインクの物性)
上記インクジェット用のインクの粘度は、インクジェットヘッドからの射出性をより高める観点からは、上記インクがゲル化剤を含まないとき、上記インクの40℃における粘度は、3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。また、上記インクがゲル化剤を含むインクであるとき、上記インクジェット用のインクの80℃における粘度は3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。80℃における粘度が3mPa・s以上20mPa・s以下であると、インクジェットヘッドからの上記インクジェット用のインクの射出時にインクジェット用のインクがゲル化しにくいため、より安定して上記インクジェット用のインクを射出することができる。また、インクジェット用のインクがゲル化剤を含有している場合には、着弾して常温に降温した際にインクを十分にゲル化させる観点から、上記インクジェット用のインクの25℃における粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。25℃における粘度は1000mPa・s以上であると、前処理層を有する記録媒体に付与されたインク液滴が広がり難く、液滴同士が合一し難い。
【0100】
上記インクジェット用のインクの40℃および80℃における粘度は、レオメータにより、インクジェット用のインクを100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータ「Physica MCR301」(Anton Paar社製)によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で40℃までインクを冷却して得られた粘度の温度変化曲線において40℃および80℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求める。
【0101】
(インクジェット用のインクの調製方法)
上記インクジェット用のインクは、前述の顔料、活性線重合性化合物、光重合開始剤と、任意のその他の成分とを、加熱下において混合することにより調製することができる。この際、得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。なお、顔料を含有するインクを調製する際は、顔料、活性線重合性化合物を含む顔料分散液を調製し、その後、顔料分散液と他の成分とを混合することが好ましい。顔料分散液は、分散剤をさらに含んでもよい。
【0102】
上記顔料分散液は、活性線重合性化合物に顔料を分散して調製することができる。顔料の分散は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカーなどを用いて行えばよい。このとき、分散剤を添加してもよい。
【0103】
[画像形成方法]
本発明の一実施の形態に係る画像形成方法は、(1)上述のインクジェット用のインクの液滴をインクジェットヘッドのノズルから吐出して、記録媒体または中間転写体の表面に着弾させる工程と、(2)上記記録媒体の表面に着弾したインクの液滴に活性線を照射する工程と、を含む。
【0104】
ここでは、上記インクジェット用のインクを記録媒体上に着弾させ、上記記録媒体に付与されたインクに活性線を照射して画像を形成する方法を説明する。
【0105】
[インクを記録媒体の表面に着弾させる工程]
インクを記録媒体の表面に着弾させる工程では、上記インクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の、形成すべき画像に応じた位置に着弾させる。
【0106】
インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式およびコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドの例には、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型を含む電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(バブルジェットはキヤノン株式会社の登録商標)型を含む電気-熱変換方式等が含まれる。
【0107】
また、インクジェットヘッドは、スキャン式およびライン式のいずれのインクジェットヘッドでもよい。
【0108】
このとき、インク液滴の吐出性を高めるために、インクジェットヘッド内の活性線硬化型インクを40~120℃に加熱して、上記加熱された活性線硬化型インクを吐出する。吐出安定性の観点から、インクジェットヘッド内の温度において、活性線硬化型インクの粘度は3mPa・s以上20mPa・s未満であることが好ましい。
【0109】
また、上記インクジェット用のインクがゲル化剤を含むときは、インクジェットヘッド内のインクジェット用のインクの温度を、インクジェット用のインクに含まれるゲル化剤のゲル化温度より10℃以上40℃未満高い温度に設定することが好ましい。インクジェットヘッド内のインクジェット用のインクの温度をゲル化温度+10℃以上にすることで、インクジェットヘッド内もしくはノズル表面でインクジェット用のインクがゲル化することがなく、インクジェット用のインクを良好に射出することができる。また、インクジェットヘッド内のインクジェット用のインクの温度をインクジェット用のインクのゲル化温度+40℃未満とすることで、インクジェットヘッドの熱的負荷を小さくすることができる。特に、ピエゾ素子を用いたインクジェットヘッドでは、熱的負荷による性能低下が生じやすいため、インクジェット用のインクの温度を上記範囲内とすることが特に好ましい。
【0110】
上記インクジェット用のインクがゲル化剤を含むときは、記録媒体の表面に着弾した上記インクは、ゲル化剤が結晶化してピニングされる。これにより、インクが着弾して形成されたドットがより濡れ広がりにくくなり、インクが記録媒体に着弾して形成されたドット同士が合一するのを抑制する。
【0111】
このとき、インクのピニング性を高めるために、記録媒体の表面温度をゲル化剤のゲル化温度の付近またはそれ以下としてもよい。
【0112】
(記録媒体)
本発明の一実施の形態に係る記録媒体は、インクジェット法で画像を形成できる媒体であれば、特に制限されない。上記記録媒体の例には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙およびキャスト紙を含む塗工紙ならびに非塗工紙を含む吸収性の媒体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブタジエンテレフタレートを含むプラスチックで構成される非吸収性の記録媒体、中間転写体ならびに金属類およびガラス等の非吸収性の無機記録媒体が含まれる。
【0113】
[インクに活性線を照射する工程]
インクに活性線を照射する工程では、上記インクが着弾した記録媒体の表面に活性線を照射して、インクの硬化膜からなる画像を形成する。上記活性線の例には、紫外線、電子線、エックス線、α線およびγ線などが含まれる。これらのうち、取り扱いの容易さおよび人体への影響の少なさの観点から、紫外線を照射することが好ましく、活性線硬化型インクを硬化させやすくする観点からは、電子線を照射することが好ましい。光源の輻射熱によって活性線硬化型インクが溶けることによる活性線硬化型インクの硬化不良の発生を抑制する観点から、紫外線の光源は発光ダイオード(LED)であることが好ましい。インクを硬化させるための活性線を照射することができるLED光源の例には、395nm、水冷LED、PhoseonTechnology社製、Heraeus社製、京セラ株式会社製、HOYA株式会社製、およびIntegrationTechnology社製が含まれる。
【0114】
照射される活性線のエネルギーは、200mJ/cm以上1000mJ/cmであることが好ましい。上記エネルギーが200mJ/cm以上だと、活性線重合性化合物を十分に重合および架橋させることができる。上記エネルギーが1000mJ/cm以下だと、照射される活性線の熱によるワックスの再溶解によるピニング性の低下が生じにくくなる。上記観点からは、照射される活性線のエネルギーは300mJ/cm以上800mJ/cm以下であることがより好ましく、350mJ/cm以上500mJ/cm以下であることがさらに好ましい。
【0115】
なお、本発明のインクジェット用のインクは、上記インクジェット用のインクを中間転写体の表面に着弾させ、上記中間転写体上に付与された上記インクジェット用のインクを記録媒体に転写し、上記記録媒体上に転写された上記インクジェット用のインクに活性線を照射して画像を形成する方法に用いてもよい。なお、中間転写体は、インクジェット法による画像形成に用いられる公知の中間転写体であればよい。
【実施例
【0116】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0117】
[インクジェット用のインクの調製]
インクジェット用の活性線硬化型インクおよび水性インクを以下の手順で調製した。なお、下記インクジェット用の活性線硬化型インクおよび水性インクに用いる顔料(A:一般式(1)で表される顔料、B:一般式(4)、(5)、(7)で表される顔料)を表1および表2に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
[活性線硬化型インクの調製]
(顔料分散液P-A-1の調製)
20質量部の顔料(A-1)と、6.5質量部の顔料分散剤「BYKJET-9151」(BYK社製、「BYKJET」は同社の登録商標)と、73.2質量部のポリエチレングリコール#400ジアクリレートと、0.3質量部の重合禁止剤「IrgastabUV10」(BASF社製、「Irgastab」は同社の登録商標)と、0.3mmのジルコニアビーズ「YTZボール」(株式会社ニッカトー社製)と、を100mLのポリ容器に入れ、ペイントシェーカーにて3時間分散処理した。分散液からジルコニアビーズを除去して、顔料分散液P-A-1を得た。
【0121】
また、顔料をA-1からA-2~A-8に変更した以外は、顔料分散液P-A-1と同様にして、顔料分散液P-A-2~P-A-8を調製した。
【0122】
(顔料分散液P-B-1の調製)
20質量部の顔料(B-1)と、8質量部の顔料分散剤と、71.7質量部のポリエチレングリコール#400ジアクリレートと、0.3質量部の重合禁止剤と、0.3mmのジルコニアビーズと、を100mLのポリ容器に入れ、ペイントシェーカーにて3時間分散処理した。分散液からジルコニアビーズを除去して、顔料分散液P-B-1を得た。なお、顔料分散剤、重合禁止剤、ジルコニアビーズの種類は、上記P-A-1に用いたものと同様である。
【0123】
また、顔料をB-1からB-2~B-10に変更した以外は、顔料分散液P-B-1と同様にして、顔料分散液P-B-2~P-B-10を調製した。
【0124】
(インクジェット用の活性線硬化型インク1の調製)
1質量%の顔料分散液(P-A-1)と、20質量%の顔料分散液(P-B-1)と、32.9質量%のポリエチレングリコール#400ジアクリレートと、20質量%の4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートと、15質量%の3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレートと、6質量%の光重合開始剤「IRGACURE819」(BASF社製、「Irgacure」は同社の登録商標)と、5質量%のゲル化剤「ルナックBA」(ベヘニン酸、花王株式会社製、「ルナック」は同社の登録商標)と、0.1質量%の重合禁止剤と、をステンレスビーカーに入れ、105℃で45分間攪拌した後、ADVATEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過することによりインクジェット用のインク1を得た。なお、重合禁止剤の種類は、上記P-A-1に用いたものと同様である。
【0125】
[水性インクの調製]
(顔料分散液P-C-1の調製)
20質量部の顔料(A-1)と、8質量部の顔料分散剤(水酸化ナトリウムで中和されたカルボキシ基を有するアクリル系分散剤(BASF社製「ジョンクリル819」、酸価75mgKOH/g、固形分20質量%)と、18質量部のエチレングリコールと、54質量部のイオン交換水とを加えた混合液を0.3mmのジルコニアビーズ「YTZボール」と、を100mLのポリ容器に入れ、ペイントシェーカーにて3時間分散処理した。分散液からジルコニアビーズを除去して、顔料分散液P-C-1を得た。
【0126】
(顔料分散液P-D-1の調製)
20質量部の顔料(B-1)と、8質量部の顔料分散剤と、18質量部のエチレングリコールと、54質量部のイオン交換水とを加えた混合液を0.3mmのジルコニアビーズと、を100mLのポリ容器に入れ、ペイントシェーカーにて3時間分散処理した。なお、顔料分散剤、ジルコニアビーズの種類は、上記P-C-1に用いたものと同様である。
【0127】
(インクジェット用の水性インクの調製)
1質量%の顔料分散液(P-C-1)と、20質量%の顔料分散液(P-D-1)との混合液を撹拌しながら、12質量部のエチレングリコールと、10質量部のプロピレングリコールと、0.2質量部のシリコーン系界面活性剤(KF-351A、信越化学工業株式会社製)と、56.8質量部のイオン交換水とを順次添加し、0.8μmのフィルターで濾過して水性インク21を得た。
【0128】
(インクジェット用のインク2~28の調製)
表3に示すように、顔料種および含有量を変更した以外は、活性線硬化型インク1と同様にして、活性線硬化型インク2~20、22~27を調製し、水性インク21と同様にして、水性インク28を調製した。
【0129】
【表3】
【0130】
[評価]
調製したインク1~28の分散粘度、色域および耐光性の評価を下記条件で行った。
【0131】
[分散粘度評価]
(評価方法)
80℃における、インク1~28の粘度をストレス制御型レオメータ「Physica MCR301」(Anton Paar社製)によって測定した。
【0132】
(評価基準)
◎:10mPas未満
○:10mPas以上30mPas未満
△:30mPas以上
×:固形化して測定不可能
【0133】
[色域評価]
上述の顔料分散液P-B-1~P-B-10を用いて、色域評価用のインクB-1を以下の手順で調製した。
【0134】
(色域評価用の活性線硬化型インクの調製)
20質量%の顔料分散液(P-B-1)と、33.9質量%のポリエチレングリコール#400ジアクリレートと、20質量%の4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートと、15質量%の3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレートと、6質量%の光重合開始剤と、5質量部のゲル化剤と、0.1質量%の重合禁止剤とを加え、105℃で45分撹拌した後、3μmメンブランフィルターで濾過して、色域評価用のインクB-1を得た。インクB-2~B-10も同様に作製した。なお、光重合開始剤、重合禁止剤、ゲル化剤の種類は、上記P-A-1に用いたものと同様である。
【0135】
上述の顔料分散液P-D-1を用いて、色域評価用の水性インクを以下の手順で調製した。
【0136】
(色域評価用の水性インクの調製)
20質量%の顔料分散液(P-D-1)と、12質量部のエチレングリコールと、10質量部のプロピレングリコールと、0.2質量部のシリコーン系界面活性剤(KF-351A)と、57.8質量部のイオン交換水とを順次添加し、0.8μmのフィルターで濾過して色域評価用の水性インクを得た。
【0137】
(評価方法)
上記調製した色域評価用の活性線硬化型インクB-1~B-10、色域評価用の水性インクを、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有するインクジェット記録装置より射出し、記録媒体に5cm×5cmのベタ画像を形成したのち450nmの活性線(紫外線)を積算光量が350mJ/cmとなるように照射した。得られた画像のa 、b を、蛍光分光光度濃度計「FD-7」(コニカミノルタ株式会社製)を用いて測色した。
【0138】
次いで、インク1~28を用いて、上述にようにベタ画像を形成し、得られた画像のa、bを測色した。
【0139】
色域評価用の活性線硬化型インクB-1~B-10、色域評価用の水性インクを用いて形成したベタ画像と、インク1~28を用いて形成したベタ画像との彩度差(ΔC)を下記数式(1)にて算出した。なお、記録媒体は、印刷用コート紙A(OKトップコート、米坪量128g/m、王子製紙株式会社製)を用いた。
ΔC=〔(a -a+(b -b1/2 (1)
【0140】
(評価基準)
◎:0.7<ΔC
○:0.3<ΔC<0.7
△:0.1<ΔC<0.3
×:ΔC<0.1
nd:測定不可能
【0141】
[耐光性評価]
(評価方法)
ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有するインクジェット記録装置より、インク1を射出し、記録媒体に5cm×5cmのベタ画像を形成し、上記ベタ画像に対して、450nmの活性線(紫外線)を積算光量が350mJ/cmとなるように照射して画像を得た。得られた画像のL 、a 、b を測色したのち、キセノンウェザーメーター「SX-75」(スガ試験機株式会社製)を用いて、60W/m(300~400nm)の放射照度、25℃、55%RHの条件で200時間静置後、再びL、a、bを測色し、下記数式(2)よりΔEを算出した。なお、記録媒体は、印刷用コート紙A(OKトップコート、米坪量128g/m、王子製紙株式会社製)を用いた。
ΔE=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2 (2)
ΔL:L -L
Δa:a -a
Δb:b -b
【0142】
(評価基準)
◎:ΔE<1
○:1<ΔE<4
△:4<ΔE<10
×:10<ΔE
nd:測定不可能
【0143】
上記評価結果を表4に示す。
【0144】
【表4】
【0145】
一般式(4)で表される顔料および一般式(1)で表される顔料を含むインクは、分散性が向上することがわかった。これは、一般式(4)で表される顔料は、平面性が高くπ-π相互作用を生じて凝集しやすいものの、一般式(1)で表される顔料は一般式(4)で表される顔料と親和性を有するため、一般式(1)で表される顔料で表される顔料が、一般式(4)で表される顔料の近くに存在しやすくなる。その結果、一般式(4)で表される顔料同士の凝集(πスタック)を抑制できるためであると考えられる。
【0146】
また、一般式(5)、一般式(7)で表される顔料および一般式(1)で表される顔料を含むインクは、画像の耐光性を高めることができることがわかった。これは、一般式(1)で表される顔料の置換基(Z)が中心金属原子Mのアキシアル位にあるので、一般式(5)、一般式(7)で表される顔料との相互作用が生じにくく、分散性の低下が生じにくい。その結果、一般式(5)および一般式(7)で表される顔料に分散剤を満遍なく配位させることができるので、光(例えば紫外線)が一般式(5)および一般式(7)で表される顔料に到達しにくくなるためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明のインクジェット用にインクによれば、インクジェット法による印刷の適用の幅を広げ、同分野の技術の進展および普及に貢献することが期待される。