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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/04 20060101AFI20240604BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20240604BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60R19/04 M
B62D25/20 C
B60R19/24 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020191012
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080058
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】向川 康介
(72)【発明者】
【氏名】木戸 啓人
(72)【発明者】
【氏名】中村 悟志
(72)【発明者】
【氏名】黒原 史博
(72)【発明者】
【氏名】岡野 智史
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-175988(JP,A)
【文献】特開2019-127056(JP,A)
【文献】特開2012-228907(JP,A)
【文献】特開2019-064362(JP,A)
【文献】特開2017-087988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00-19/56
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる左右一対のサイドフレームと、これらのサイドフレームの各前端部を車幅方向に連結するクロスメンバとを有するサスペンションサブフレームと、
このサスペンションサブフレームの車両前方で車幅方向に延びるフロントビーム部材と、
上記左右一対のサイドフレームの各前端部と上記フロントビーム部材とを車両前後方向に連結する左右一対の連結部材と、を備えた車両の前部車体構造であって、
上記サイドフレームの前端部と上記クロスメンバとの連結部には、上記サイドフレームの他の部分より剛性の高い高剛性部が形成され、
上記フロントビーム部材は、上記連結部材との連結位置よりも車幅方向外方で延びる側端部と、上記側端部から車両後方側に突出する突出部を有し、上記突出部は、上記サイドフレームの前端部と上記クロスメンバとの連結部から離間し、かつ、正面視で、上記サイドフレームの前端部と上記クロスメンバとの連結部より車幅方向外方側に設けられ、上記側端部に車両前方側からの衝突荷重が入力されたとき、上記突出部が上記高剛性部に車幅方向外方から当接するよう構成されている、ことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
上記サイドフレームの前端部と上記フロントビーム部材との連結部材は、車両前後方向に所定長さを有し、
上記フロントビーム部材の突出部は、上記側端部において、上記フロントビーム部材と上記連結部材との連結位置に対して、上記連結部材の所定長さの半分に相当する距離の位置から上記連結部材の所定長さに相当する距離の位置までの範囲内に設けられる、請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記フロントビーム部材の突出部は、上記側端部において、上記連結部材の所定長さの半分に相当する距離の位置から上記連結部材の所定長さに相当する距離の位置までの範囲の全部にわたって連続して設けられる、請求項2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
上記サスペンションサブフレームは、さらに、上記クロスメンバの車両後方側で車幅方向に延び、上記サイドフレームを車幅方向に連結するセンタクロスメンバを備え、
上記高剛性部は、上記サイドフレームの前端部と上記クロスメンバとの連結部から、上記サイドフレームと上記センタクロスメンバとの連結部まで延びるよう形成される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
上記車両は、さらに、上記クロスメンバに隣接して設けられたスタビライザと、このスタビライザを支持する支持ブラケットと、を備え、
上記支持ブラケットの少なくとも一部が上記クロスメンバに固定されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部車体構造に係り、特に、サスペンションサブフレームの左右一対のサイドフレームと、これらのサイドフレームを車幅方向に連結するクロスメンバと、各サイドフレームの前端部に連結部材を介して連結された車幅方向に延びるフロントビーム部材と、を備えた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるスモールオーバラップ衝突時(車両の前面において、車幅方向のたとえば30%の範囲で障害物やバリヤ(衝突試験時)にオーバラップ衝突する衝突時)に、フロントバンパレインフォースメントの車幅方向端部側に入力される荷重の一部を、フロントサイドフレームを介してパワーユニットに伝達させることにより、車両に横力を発生させて、車両の変形を抑制するようにした前部車体構造が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、フロントバンパレインフォースメントの側方延長部に、車両後方に延びる荷重伝達部材を設け、スモールオーバラップ衝突時、この荷重伝達部材をフロントサイドフレームに当接させてフロントサイドフレームを変形させることにより衝突エネルギを吸収する前部車体構造も提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-113893号公報
【文献】特開2019-093942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、スモールオーバラップ衝突時、特許文献1のように、車両に横力を発生させて、車両の変形を抑えつつ衝突エネルギを軽減させる手段がより有効的である。
【0006】
しかしながら、特許文献1の構造によれば、スモールオーバラップ衝突時、車両に横力を発生させて衝突エネルギを軽減できるものの、荷重を有効に伝達させるには、フロントサイドフレームとパワーユニット(エンジンユニット)との間隔が比較的広い車両(たとえば、縦置きエンジンの車両、電気自動車などの非エンジン車両、広いトレッドに起因してフロントサイドフレームとパワーユニットとの間隔が広い車両など)においては、荷重をエンジンに有効に伝達させることが出来ず、車両に横力を有効に発生させることが出来ないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、いわゆるスモールオーバラップ衝突時、効果的に、車両に車幅方向の横力を発生させることができる車両の前部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、車両前後方向に延びる左右一対のサイドフレームと、これらのサイドフレームの各前端部を車幅方向に連結するクロスメンバとを有するサスペンションサブフレームと、このサスペンションサブフレームの車両前方で車幅方向に延びるフロントビーム部材と、左右一対のサイドフレームの各前端部とフロントビーム部材とを車両前後方向に連結する左右一対の連結部材と、を備えた車両の前部車体構造であって、サイドフレームの前端部とクロスメンバとの連結部には、サイドフレームの他の部分より剛性の高い高剛性部が形成され、フロントビーム部材は、連結部材との連結位置よりも車幅方向外方で延びる側端部と、側端部から車両後方側に突出する突出部を有し、突出部は、サイドフレームの前端部とクロスメンバとの連結部から離間し、かつ、正面視で、サイドフレームの前端部と上記クロスメンバとの連結部より車幅方向外方側に設けられ、側端部に車両前方側からの衝突荷重が入力されたとき、突出部が高剛性部に車幅方向外方から当接するよう構成されている、ことを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、サイドフレームの前端部とクロスメンバとの連結部には、サイドフレームの他の部分より剛性の高い高剛性部が形成され、フロントビーム部材の側端部に車両前方側からの衝突荷重が入力されたとき、フロントビーム部材の突出部が高剛性部に車幅方向外方から当接するよう構成されているので、いわゆるスモールオーバラップ衝突時、側端部が受ける車両後方に向く衝突荷重を、高剛性部を介して車幅方向に向く荷重としてクロスメンバに伝達させて、効果的に、車両に車幅方向の横力を発生させることができる。このような横力の発生により、スモールオーバラップ衝突時、車両が横移動して衝撃を軽減することが可能となる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、サイドフレームの前端部とフロントビーム部材との連結部材は、車両前後方向に所定長さを有し、フロントビーム部材の突出部は、側端部において、フロントビーム部材と連結部材との連結位置に対して、連結部材の所定長さの半分に相当する距離の位置から連結部材の所定長さに相当する距離の位置までの範囲内に設けられる。
このように構成された本発明によれば、フロントビーム部材の突出部は、側端部において、フロントビーム部材と連結部材との連結位置に対して、連結部材の所定長さの半分に相当する距離の位置から連結部材の所定長さに相当する距離の位置までの範囲内に設けられる。ここで、いわゆるスモールオーバラップ衝突時、側端部への主な荷重入力位置(側端部の車幅方向における荷重入力位置)が異なり、それにより、フロントビーム部材の側端部の変形状態が異なることが想定される。このような場合であっても、本発明によれば、突出部が側端部の所定距離の範囲内に設けられるので、より効果的に、突出部を高剛性部に当接させて、車両に車幅方向に向く横力を発生させることができる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、フロントビーム部材の突出部は、側端部において、連結部材の所定長さの半分に相当する距離の位置から連結部材の所定長さに相当する距離の位置までの範囲の全部にわたって連続して設けられる。
このように構成された本発明によれば、より効果的に、突出部を高剛性部に当接させることができる。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、サスペンションサブフレームは、さらに、クロスメンバの車両後方側で車幅方向に延び、サイドフレームを車幅方向に連結するセンタクロスメンバを備え、高剛性部は、サイドフレームの前端部とクロスメンバとの連結部から、サイドフレームとセンタクロスメンバとの連結部まで延びるよう形成される。
このように構成された本発明によれば、高剛性部は、サイドフレームの前端部とクロスメンバとの連結部から、サイドフレームとセンタクロスメンバとの連結部まで延びるよう形成されるので、高剛性部に車幅方向外方から入力される荷重をセンタクロスメンバにも伝達させて、より効果的に、車両に車幅方向に向く横力を発生させることができる。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、車両は、さらに、クロスメンバに隣接して設けられたスタビライザと、このスタビライザを支持する支持ブラケットと、を備え、支持ブラケットの少なくとも一部がクロスメンバに固定されている。
このように構成された本発明によれば、スタビライザの支持ブラケットの少なくとも一部がクロスメンバに固定されているので、突出部により車幅方向外方から入力される荷重をスタビライザにも伝達させて、より効果的に、車両に車幅方向に向く横力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両の前部車体構造によれば、いわゆるスモールオーバラップ衝突時、効果的に、車両に車幅方向の横力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による車両の前部車体構造が適用された車両前部のサスペンションサブフレームおよびその前方側の荷重受け部材を主に示す、車両上方側から見た平面図である。
図2図1に示す車両前部の左側の構造をバンパ等と共に示す、車両上方側から見た平面図である。
図3】本実施形態によるサスペンションサブフレームの前端部における、クロスメンバの固定構造およびトーションバーの取付構造を示す、車両上方側から見た平面図である。
図4】本実施形態によるフロントビーム部材の側端部を拡大して示す斜視図である。
図5】本実施形態による車両の左前方部分における、サイドフレームと、連結部材と、フロントビーム部材の側端部に設けた突出部との配置関係を説明するための平面図である。
図6】本実施形態による車両の前部車体構造における衝突前の変形していない状態を示す車両の左前方部分の平面図である。
図7】本実施形態による車両の前部車体構造における衝突後の変形状態の一例を示す車両の左前方部分の平面図である。
図8】本実施形態による車両の前部車体構造における衝突後の変形状態の他の例を示す車両の左前方部分の平面図である。
図9】本実施形態による車両の前部車体構造における衝突時の荷重伝達の概念を説明するための車両の左前方部分を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両の前部車体構造を説明する。
【0017】
まず、図1および図2により、本発明の実施形態による車両の前部車体構造の概略構成を説明する。図1は、本発明の実施形態による車両の前部車体構造が適用された車両前部のサスペンションサブフレームおよびその前方側の荷重受け部材を主に示す、車両上方側から見た平面図であり、図2は、図1に示す車両前部の左側の構造をバンパ等と共に示す、車両上方側から見た平面図である。図1では、車両前部に設けられるフロントサイドフレーム、クラッシュカン、バンパーレインフォースメント、エンジンユニットなどの図示を省略している。
【0018】
まず、図1に示すように、本発明の実施形態による車両の前部車体構造が適用された車両1の前部には、サスペンションサブフレーム2と、その前方で車幅方向に延びるフロントビーム部材4と、サスペンションサブフレーム2の前方部分とフロントビーム部材4とを連結する左右一対の連結部材6と、が設けられている。
【0019】
サスペンションサブフレーム2は、主に、左右一対のサイドフレーム(サスサイドフレーム)8と、これらのサイドフレーム8の各前端部8aを車幅方向に連結するように延びるフロントクロスメンバ(フロントサスクロスメンバ)10と、その車両後方側でサイドフレーム8を車幅方向に連結するように延びるセンタクロスメンバ(センタサスクロスメンバ)12と、補強部材14と、を備える。
【0020】
センタクロスメンバ12は、サスペンション16を支持するサスペンションクロスメンバ12として機能する。アッパサスペンションアーム16aは、サイドフレーム8に設けたサスペンション支持部材13で揺動支持され、ロワサスペンションアーム16bは、サイドフレーム8に設けられたサスペンション支持部材15で揺動支持される。サスクロスメンバ12は、これらのサスペンション支持部材13、15に入力されるサスペンション16からの荷重を有効に受け止めるよう、図1に示すように、サイドフレーム8に固定される両端縁部12aが車両前後方向の所定長さにわたって延びる。各サスペンション支持部材13、15に入力されるサスペンション16からの荷重は、フロントクロスメンバ10によっても受け止められる。
【0021】
サスペンション16には、左右のサスペンション16を互いに連結するスタビライザバー(スタビライザ)18が取り付けられ、このスタビライザバー18は、後述する支持ブラケット40、42により、サイドフレーム8で揺動可能に支持される。
【0022】
なお、本発明の実施形態において、車両の前部車体構造は、基本的に、車両の車幅方向に左右対称に形成されており、以下では、主に、車両の車幅方向の左側部分を説明する。
ここで、図2に示す符号20は、エンジンユニットのフロントデファレンシャル、符号22はフロントアクスル、符号24は前輪、符号26、28はステアリング機構およびタイロッド、符号30はサスペンションタワーをそれぞれ示す。
【0023】
また、図2に仮想線で示すように、符号32はバルクヘッドから車両前方に向けて車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを示し、図2には図示しないが、これらのフロントサイドフレーム32の各前端には、クラッシュカンがそれぞれ接続され、これらのクラッシュカンには、車幅方向に延びるバンパーレインフォースメントが接続されている。
【0024】
本実施形態の車両1の前部車体構造が有するサスペンションサブフレーム2、連結部材6、フロントビーム部材4などは、これらのフロントサイドフレーム32等の車両下方側に設けられる。
本実施形態による車両1は、障害物への前方衝突時、特に、たとえば車両1と比較して小型の車両や低い高さの障害物などへの前方衝突時に、フロントバンパ34(図2参照)から伝達される衝撃荷重を、車両上方側のバンパーレインフォースメントやクラッシュカンに加え、車両下方側のフロントビーム部材4で受け止めるようになっている。
図2に示す符号36は障害物であり、この図2では、衝突実験で用いられるバリヤを示す。
【0025】
次に、図3により、本実施形態の車両の前部車体構造における、サイドフレームに形成された高剛性部を説明する。図3は、本実施形態によるサスペンションサブフレームの前端部における、クロスメンバの固定構造およびトーションバーの取付構造を示す、車両上方側から見た平面図である。
図3に示すように、サイドフレーム8の前端部8aには、連結部材6が取り付けられると共に、フロントクロスメンバ10の両端部が固定される。フロントクロスメンバ10の両端部は断面コの字状に形成され、このコの字状断面とサイドフレーム8とで閉断面の取付部8bが形成される。この取付部8bでは、フロントクロスメンバ10がサイドフレーム8にスポット溶接やボルト締結などにより取り付けられる。
【0026】
また、図3に示すように、このフロントクロスメンバ10の取付部8bには、スタビライザバー18を支持する支持ブラケット40の一部が固定されている。この支持ブラケット40には、スタビライザバー18を揺動可能に支持する支持部材42が、ボルト締めにより固定されている。
支持ブラケット40は、断面コの字状の部材であり、スポット溶接などによりフロントサイドフレーム10(取付部8b)およびサイドフレーム8に取り付けられて閉断面の取付部8cが形成される。
【0027】
この取付部8cの車両後方側では、取付部8dにより、センタクロスメンバ12が、スポット溶接やボルト締結などによりサイドフレーム8に取り付けられている。
【0028】
本実施形態では、まず、取付部8cでの、スタビライザ支持ブラケット40のサイドフレーム8への取付け自体によって、サイドフレーム8に高剛性部が形成される。特に、取付部8cが閉断面であるので、剛性が高められる。
また、取付部8bでの、フロントクロスメンバ10のサイドフレーム8への取付け自体によって、サイドフレーム8に高剛性部が形成される。特に、取付部8bが閉断面であるので、剛性が高められる。
さらに、サイドフレーム8は、それ自体が閉断面を有し、その閉断面の内方に補強部材などにより剛性が高められている。また、サイドフレーム8は、サイドフレーム8の前端部8aと、センタクロスメンバ12の取付部8dとの間で、その車幅方向の寸法が車両上下方向の寸法より大きい幅広の断面を形成することにより、車幅方向の剛性が高められている。
さらに、取付部8dでの、センタクロスメンバ12のサイドフレーム8への取付によって、サイドフレーム8に高剛性部が形成される。
【0029】
本実施形態では、取付部8b、8c、8dおよびサイドフレーム自体の剛性によって、サイドフレーム8の前端部8aからセンタクロスメンバ12の連結部8dまで延びる高剛性部8eが形成されている。より詳細には、サイドフレーム8には、フロントクロスメンバ10の取付部8bから、センタクロスメンバ12の取付部8dまでにわたって、高剛性部8eが形成されている。本実施形態では、特に、スタビライザ支持ブラケット40(取付部8c)によって、高剛性部8eの剛性を確保するようにしている。
【0030】
次に、図1および図4により、本実施形態の車両の前部車体構造における、フロントビーム部材の構成を説明する。図4は、本実施形態によるフロントビーム部材の側端部を拡大して示す斜視図である。
図4に示すように、フロントビーム部材4は、連結部材6との連結部4aを有する。フロントビーム部材4は、この連結部4aから車幅方向外方に延びる側端部/延出部4bを有し、この側端部4bには、側端部4bから車両後方側に突出するように突出部材44が設けられている。突出部材44は、本実施形態では、アルミニウム合金製の剛性が高められた部材であり、軽量化のために、剛性を保てる程度に中空部分が形成されている。図4に示す実施形態では、突出部材44は、側端部44bの端部44cの開口にはめ込まれている。
【0031】
次に、図5により、本実施形態の車両の前部車体構造における、サイドフレームと、連結部材と、フロントビーム部材の側端部に設けた突出部との配置関係を説明する。図5は、本実施形態による車両の左前方部分における、サイドフレームと、連結部材と、フロントビーム部材の側端部に設けた突出部との配置関係を説明するための平面図である。
図5に示すように、連結部材6は、図中Lで示すような、車両前後方向の長さLを有し、フロントビーム部材4の側端部4bは、少なくとも、その連結部材6の長さLを有するように車幅方向に延びている。側端部4bの長さは、長さL以上であればよく、図5に示す例では、側端部4bは連結部材6と同等の長さLを有し、後述する図8では、それ以上の長さを有している。
【0032】
図5に示すように、突出部材44は、フロントビーム部材4の側端部4bにおいて、連結部材6との連結部4aから端部4cまでの長さのうち、連結部材6の長さLの半分に相当する距離の位置(2/L)から、長さLに相当する距離の位置まで延びるよう設けられている。図5に示す例では、突出部材44は、端部4cまで延びる連続体として設けられている。なお、突出部材44は、衝突時に高剛性部8eに当接すれば、分割して複数設けられても良い。
【0033】
また、後述する図8に示すように、側端部4bの長さが連結部材6の長さより大きい場合、突出部材44は、連結部材6との連結部4aから、上述した長さ2/L~Lの範囲に設けられている。図5に示す、サイドフレーム8の接触部8fは、計算上、フロントビーム部材4の側端部4bが、Aで示す位置を中心に、矢印Bで示す方向に単純に折れ曲がるだけの変形をした場合の突出部材44の当接位置/接触位置を示している。
【0034】
次に、図6乃至図9により、本実施形態による車両の前部車体構造のスモールオーバラップ衝突時の作用を説明する。図6は、本実施形態による車両の前部車体構造における衝突前の変形していない状態を示す車両の左前方部分の平面図であり、図7は、本実施形態による車両の前部車体構造における衝突後の変形状態の一例を示す車両の左前方部分の平面図であり、図8は、本実施形態による車両の前部車体構造における衝突後の変形状態の他の例を示す車両の左前方部分の平面図であり、図9は、本実施形態による車両の前部車体構造における衝突時の荷重伝達の概念を説明するための車両の左前方部分を示す平面図である。
【0035】
まず、スモールオーバラップ衝突時、フロントバンパ34に衝突した障害物(図2の符号36参照)からフロントビーム部材4に荷重が伝達される。
たとえば、その衝突荷重のフロントビーム部材4の側端部4bへの入力位置(車幅方向の入力位置)が、連結部材6との連結部4aより離れた位置である場合には、主にフロントビーム部材4が車両後方に折れ曲がるように変形し、図6に示す状態から図7に示す状態に変形する。このような変形により、図7に示すように、突出部材44が高剛性部8eに当接する。このようなスモールオーバラップ衝突時においては、連結部材6に荷重が伝達して車両後方に変形する際の変形量にバラつきが生じるものの、連結部材6の変形に伴い突出部材44を高剛性部に当接させることができる。
【0036】
また、衝突荷重の側端部4bへの車幅方向の入力位置が、連結部材6との連結部4aに近い位置であるような場合には、図8に示すように、主に、連結部材6がつぶれるように変形すると共に、フロントビーム部材4が車両後方に移動するように変形する。このような変形により、図8に示すように、突出部材44が高剛性部8eに当接する。
特に、本実施形態では、突出部材44を、連結部材6との連結部4aに対し、距離2/Lの比較的近い位置には少なくとも設けるようにしているので、このように連結部材6自体がつぶれるように変形しても、突出部材44を高剛性部8eに確実に当接するようにしている。
【0037】
次に、図9により、スモールオーバラップ衝突時、突出部材44が高剛性部8eに当接したときの各部材への荷重の伝達について説明する。
図9に示すように、スモールオーバラップ衝突時、フロントビーム部材4および連結部材6の変形により、突出部材44が高剛性部8eに当接すると、障害物36からフロントビーム部材4に矢印F1で示すような荷重が入力され、この入力荷重は、突出部材44からサイドフレーム8の高剛性部8eに、矢印F2で示すような荷重として伝達される。このような荷重F2の一部は、上述したサイドフレーム8の高剛性部8e、取付部8b、8cを介して、矢印F3で示すようにフロントクロスメンバ10に伝達されると共に、矢印F4で示すようにスタビライザバー18に伝達される。
また、荷重F2の一部は、矢印F5で示すように、サイドフレーム8の高剛性部8eを介して車両後方に伝達され、矢印F6に示すように、取付部8dを介してセンタクロスメンバ12に伝達される。
【0038】
このような荷重伝達により、いわゆるスモールオーバラップ衝突時には、側端部4bが受ける車両後方に向く衝突荷重が、サイドフレーム8の高剛性部8eを介して、各部材10、18、12に、車幅方向に向く荷重として伝達される。特に、本実施形態では、取付部8cの剛性を高めているので、荷重は主に、フロントクロスメンバ10に伝達される。したがって、本実施形態によれば、効果的に、車両に車幅方向の横力を発生させることができる。このような横力の発生により、スモールオーバラップ衝突時、車両が横移動して衝撃を軽減することが可能となる。
【0039】
次に、本発明の実施形態による車両の前部車体構造の作用効果を説明する。
まず、本発明の実施形態によれば、サイドフレーム8の前端部8aとクロスメンバ10との連結部(取付部8b)には、サイドフレーム8の他の部分より剛性の高い高剛性部8eが形成されており、フロントビーム部材4は、その連結部材6との連結位置4aよりも車幅方向外方で延びる側端部4bと、側端部4bから車両後方側に突出する突出部材44を有し、側端部4bに車両前方側からの衝突荷重が入力されたとき、突出部材44が高剛性部8eに車幅方向外方から当接するよう構成されている。したがって、本実施形態によれば、いわゆるスモールオーバラップ衝突時に、側端部4bが受ける車両後方に向く衝突荷重を、高剛性部8eを介して車幅方向に向く荷重としてクロスメンバ10に伝達させて、効果的に、車両1に車幅方向の横力を発生させることができる。このような横力の発生により、スモールオーバラップ衝突時、車両1が横移動して衝撃を軽減することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態によれば、フロントビーム部材4の突出部材44は、側端部4bにおいて、フロントビーム部材4と連結部材6との連結位置4aに対して、連結部材6の所定長さLの半分に相当する距離(L/2)の位置から連結部材6の所定長さLに相当する距離(L)の位置までの範囲内に設けられる。ここで、いわゆるスモールオーバラップ衝突時、側端部4bへの主な荷重入力位置(側端部4bの車幅方向における荷重入力位置)が異なり、それにより、フロントビーム部材4の側端部4bの変形状態が異なることが想定される。このような場合であっても、本実施形態によれば、突出部材44が側端部4bの所定距離の範囲内(2/L~L)に設けられるので、より効果的に、突出部材44を高剛性部8eに当接させて、車両1に車幅方向に向く横力を発生させることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、フロントビーム部材4の突出部材44は、側端部4bにおいて、連結部材6の所定長さの半分に相当する距離(2/L)の位置から連結部材6の所定長さに相当する距離(L)の位置までの範囲の全部にわたって連続して設けられるので、より効果的に、突出部材44を高剛性部8eに当接させることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、高剛性部8eは、サイドフレーム8の前端部8aとクロスメンバ10との連結部(取付部8b)から、サイドフレーム8とセンタクロスメンバ12との連結部(取付部8d)まで延びるよう形成されているので、高剛性部8eに車幅方向外方から入力される荷重をセンタクロスメンバ12にも伝達させて、より効果的に、車両1に車幅方向に向く横力を発生させることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、車両1は、クロスメンバ10に隣接して設けられたスタビライザ18を支持する支持ブラケット40を備え、支持ブラケット40の少なくとも一部がクロスメンバ10に固定されているので、突出部材44により車幅方向外方から入力される荷重をスタビライザ18にも伝達させて、より効果的に、車両1に車幅方向に向く横力を発生させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
2 サスペンションサブフレーム
4 フロントビーム部材
4a 連結部材との連結部
4b 側端部
4c 端部
6 連結部材
8 サイドフレーム/サスサイドフレーム
8a サイドフレームの前端部
8b フロントクロスメンバの取付部
8c 支持ブラケットの取付部
8d センタクロスメンバの取付部
8e 高剛性部
8f 当接想定位置
10 フロントクロスメンバ/フロントサスクロスメンバ
12 センタクロスメンバ/センタサスクロスメンバ
13、15 サスペンション支持部材
16 サスペンション
18 スタビライザバー、スタビライザ
34 フロントバンパ
36 障害物/バリヤ
40 スタビライザバーの支持ブラケット
42 支持部材
44 突出部材(突出部)
F1~F6 荷重
図1
図2
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図9