(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】積層構造体、および、固体高分子形水電解セル
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240604BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240604BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20240604BHJP
H01M 8/0271 20160101ALN20240604BHJP
H01M 8/0258 20160101ALN20240604BHJP
H01M 8/0247 20160101ALN20240604BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240604BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B13/02 302
H01M8/0271
H01M8/0258
H01M8/0247
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020202529
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】植田 忠伸
(72)【発明者】
【氏名】村田 元
(72)【発明者】
【氏名】池田 飛展
(72)【発明者】
【氏名】小澤 忠夫
(72)【発明者】
【氏名】奥田 勝治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 由美江
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-163026(JP,A)
【文献】特開2006-147258(JP,A)
【文献】特開2005-116404(JP,A)
【文献】特開2009-252470(JP,A)
【文献】特開2007-294248(JP,A)
【文献】特開2006-196426(JP,A)
【文献】特開2009-259780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造体であって、
積層される一対の部材であって、それぞれが備える主面が互いに対向するように積層され、前記主面に流体が流通するマニフォルド部が形成されている一対の部材と、
前記一対の部材の間に配置されるシール部材と、
前記一対の部材の前記主面において前記マニフォルド部を囲むように形成される溝部と、
前記一対の部材の前記マニフォルド部に形成され、前記一対の部材の積層方向に突出する複数の突起部と、を備え、
前記一対の部材の一方に形成される複数の前記突起部は、
前記積層方向において、前記一対の部材の他方に形成される前記溝部と重なる位置に前記溝部の延設方向に沿って並んで設けられ、
前記一対の部材の他方に形成される前記溝部との間に前記シール部材が配置された状態において、互いに隣接する前記突起部の間を流体が流通可能に構成されて
おり、
前記一対の部材の一方に形成される複数の前記突起部のそれぞれの頂部には、前記一対の部材の他方に形成される前記溝部の延設方向に沿った方向に延びる溝が形成されている、
積層構造体。
【請求項2】
請求項
1に記載の積層構造体であって、
前記一対の部材は、前記主面のうちの前記マニフォルド部の外側に形成され、前記溝部を有する外周部を備えており、
前記マニフォルド部は、前記主面において、前記外周部に対して凹んでおり、
前記突起部は、頂部の高さが前記外周部の高さと揃うように形成されている、
積層構造体。
【請求項3】
請求項
2に記載の積層構造体であって、
前記マニフォルド部は、前記外周部に対して凹んでいる凹部と、前記凹部に隣接する孔部と、を備えており、
前記一対の部材は、前記凹部と前記孔部との境界に沿って長尺状に形成され、前記凹部から前記孔部に向かう流体の流通方向を前記凹部に沿った方向から、前記凹部に沿った方向と交差する方向に切り替える長尺状部を備える、
積層構造体。
【請求項4】
請求項
3に記載の積層構造体であって、
前記長尺状部は、
両端部が、前記孔部において前記外周部にそれぞれ接続されており、
前記積層方向において前記外周部から突出する複数の突起が形成されている、
積層構造体。
【請求項5】
固体高分子形水電解セルであって、
請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の積層構造体を備え、
前記一対の部材の一方をアノード側スペーサとし、他方をカソード側スペーサとした、
固体高分子形水電解セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体、および、固体高分子形水電解セルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の部材が積層されて形成される積層構造体が知られている。この積層構造体が固体高分子形燃料電池や固体電解質形電池を構成するセルである場合、セルの内部に、流体が流れるマニフォルド部が形成されており、部材間にシール部材を配置することで、マニフォルド部のシール性を維持させる必要がある(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-131085号公報
【文献】特開2003-166092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術においても、積層構造体において、マニフォルド部のシール性を向上するためには、なお改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、積層構造体において、内部に形成されるマニフォルド部のシール性を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、積層構造体が提供される。この積層構造体は、積層される一対の部材であって、それぞれが備える主面が互いに対向するように積層され、前記主面に流体が流通するマニフォルド部が形成されている一対の部材と、前記一対の部材の間に配置されるシール部材と、前記一対の部材の前記主面において前記マニフォルド部を囲むように形成される溝部と、前記一対の部材の前記マニフォルド部に形成され、前記一対の部材の積層方向に突出する複数の突起部と、を備え、前記一対の部材の一方に形成される複数の前記突起部は、前記積層方向において、前記一対の部材の他方に形成される前記溝部と重なる位置に前記溝部の延設方向に沿って並んで設けられ、前記一対の部材の他方に形成される前記溝部との間に前記シール部材が配置された状態において、互いに隣接する前記突起部の間を流体が流通可能に構成されている。
【0008】
この構成によれば、一対の部材のそれぞれには、マニフォルド部を囲むように溝部が形成されている。一対の部材とシール部材とが積層されるとき、溝部の内側に向かってシール部材の表面が変形し突出することで、シール部材によるマニフォルド部のシール性が維持される。一対の部材の一方に形成されるマニフォルド部には、積層方向において、一対の部材の他方に形成される溝部と重なる位置に、一対の部材の他方の溝部の延設方向に沿って並べられる複数の突起部が設けられる。これにより、一対の部材の一方では、一対の部材の他方の溝部が重なる位置において、マニフォルド部と突起部との厚みの合計は、マニフォルド部が形成されていない部位の厚みに近い値となる。すなわち、積層構造体は、積層方向で溝部と重なる位置には隙間が少なくなるため、積層方向の構造強度を大きくすることができる。これにより、積層方向における溝部と重なる位置では、溝部の内側に向かって表面が変形しやすいように、シール部材や一対の部材に積層される部材を支持することができる。また、複数の突起部は、マニフォルド部において、流体が流通可能な隙間を、隣接する突起部の間に形成されるように構成されている。これにより、流体は、マニフォルド部における流通が複数の突起部によって妨げられにくくなっている。したがって、マニフォルド部において流体を流通させつつ、シール部材によるマニフォルド部のシール性を向上することができる。
【0009】
(2)上記形態の積層構造体において、前記一対の部材の一方に形成される複数の前記突起部のそれぞれの頂部には、前記一対の部材の他方に形成される前記溝部の延設方向に沿った方向に延びる溝が形成されてもよい。この構成によれば、突起部の頂部には、一対の部材の他方に形成される溝部の延設方向に沿った方向に延びる溝が形成されている。これにより、突起部の頂部に対向するシール部材の表面は、頂部に形成されている溝の内側に向かって変形し、シール部材と突起部との間のシール性を維持することができる。したがって、マニフォルド部において、流体がシール部材と突起部との間を流れることを抑制することができるため、流体は、互いに隣接する突起部の間を流れることができる。
【0010】
(3)上記形態の積層構造体において、前記一対の部材は、前記主面のうちの前記マニフォルド部の外側に形成され、前記溝部を有する外周部を備えており、前記マニフォルド部は、前記主面において、前記外周部に対して凹んでおり、前記突起部は、頂部の高さが前記外周部の高さと揃うように形成されていてもよい。この構成によれば、突起部は、頂部の高さが、溝部を有する外周部の高さと揃うように形成されている。これにより、一対の部材の一方において、マニフォルド部と突起部との厚みの合計は、マニフォルド部が形成されていない部位の厚みとほとんど同じになるため、シール部材がさらに変形しやすくなる。したがって、シール部材によるマニフォルド部のシール性をさらに向上することができる。
【0011】
(4)上記形態の積層構造体において、前記マニフォルド部は、前記外周部に対して凹んでいる凹部と、前記凹部に隣接する孔部と、を備えており、前記一対の部材は、前記凹部と前記孔部との境界に沿って長尺状に形成され、前記凹部から前記孔部に向かう流体の流通方向を前記凹部に沿った方向から、前記凹部に沿った方向と交差する方向に切り替える長尺状部を備えていてもよい。この構成によれば、一対の部材は、マニフォルド部における凹部と孔部との境界に沿って長尺状に形成され、凹部から孔部に向かう流体の流通方向を、凹部に沿った方向から、凹部に沿った方向と交差する方向に切り替える長尺状部を備える。これにより、シール部材に一対の部材のそれぞれのマニフォルド部を連通する貫通孔が形成されており、一対の部材のそれぞれにおいて、凹部をシール部材に配置する場合、一対の部材は、シール部材を凹部と長尺状部とによって押さえつつ、シール部材の貫通孔を介した一対の部材のマニフォルド部の間での流体のやり取りを容易に行うことができる。
【0012】
(5)上記形態の積層構造体において、前記長尺状部は、両端部が、前記孔部において前記外周部にそれぞれ接続されており、前記積層方向において前記外周部から突出する複数の突起が形成されてもよい。この構成によれば、長尺状部には、積層方向において外周部から突出する複数の突起が形成されている。これにより、複数の突起は、一対の部材に隣接する部材に接触することができるため、該部材の孔部への落ち込みを抑制することができる。したがって、孔部の断面積の減少を抑制することができる。
【0013】
(6)本発明の別の形態によれば、固体高分子形水電解セルが提供される。この固体高分子形水電解セルは、上記の積層構造体を備え、前記一対の部材の一方をアノード側スペーサとし、他方をカソード側スペーサとする。この構成によれば、固体高分子形水電解セルが備える積層構造体では、一対の部材の一方をアノード側スペーサとし、他方をカソード側スペーサとする。固体高分子形水電解セルでは、アノード側スペーサに水を供給することで酸素ガスと水素イオンを発生させつつ、カソード側スペーサにおいて、アノード側スペーサとカソード側スペーサとの間の膜電極接合体を介して供給される水素イオンから水素を発生させる。この固体高分子形水電解セルが上記の積層構造体を備えることで、アノード側スペーサのマニフォルド部を流れる水やカソード側スペーサのマニフォルド部を流れる水素ガスなどが外部に漏れることを抑制することができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、積層構造体を含む各種装置、積層構造体を製造する方法、積層構造体を含む装置の制御方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】複数の水電解セルを備える水電解装置の模式図である。
【
図4】アノード側スペーサをバイポーラプレート側から見た図である。
【
図5】アノード側スペーサを膜電極接合部側から見た図である。
【
図7】カソード側スペーサを膜電極接合部側から見た図である。
【
図8】カソード側スペーサをバイポーラプレート側から見た図である。
【
図9】第1実施形態の水電解セルの作用を説明する第1の模式図である。
【
図10】第1実施形態の水電解セルの透過拡大図である。
【
図12】第1実施形態の水電解セルの作用を説明する第2の模式図である。
【
図13】第1実施形態の水電解セルの第1の部分断面図である。
【
図14】第1実施形態の水電解セルの第2の部分断面図である。
【
図15】第2実施形態の水電解セルの模式図である。
【
図16】水電解セルの第1の変形例の模式図である。
【
図17】水電解セルの第2の変形例の模式図である。
【
図18】水電解セルの第3の変形例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の水電解セル1の模式図である。
図2は、複数の水電解セル1を備える水電解装置6の模式図である。
図1に示す本実施形態の水電解セル1は、固体高分子形水電解セルであり、複数個が積層されることで固体高分子形水電解槽(以下、単に「水電解槽」という)3(
図2参照)を構成する。水電解槽3は、いわゆる、水電解スタックであり、水電解槽3に直流電力を供給する電力供給部4や、貯留している水を水電解セル1に供給する水タンク5などを備えることで、
図2に示す水電解装置6を構成する。本実施形態では、水電解装置6は、固体高分子形水電解装置であり、水タンク5の水を電力供給部4の電力によって電気分解することで、酸素ガスと水素ガスを生成する。本実施形態では、水電解装置6が備える複数の水電解槽3のそれぞれは、4個の水電解セル1を積層することで形成される。しかしながら、1つの水電解槽3において積層される水電解セル1の数はこれに限定されない。なお、
図1および
図2において、水電解セル1が積層される方向をz軸方向とし、z軸に垂直な平面上において直交する2つの方向をx軸方向とy軸方向とする。また、
図1に示す水電解セル1や
図2に示す水電解槽3を構成する部材の厚みや大きさは、説明の便宜上、実際の厚みや大きさと異なっている。水電解セル1は、特許請求の範囲の「積層構造体」に相当する。
【0017】
水電解セル1は、バイポーラプレート10と、アノード側スペーサ20と、膜電極接合部40と、カソード側スペーサ50と、ガスケット31、36、61、66と、を備える。水電解セル1では、z軸方向のマイナス側から、バイポーラプレート10、ガスケット31、アノード側スペーサ20、ガスケット36、膜電極接合部40、ガスケット61、カソード側スペーサ50、ガスケット66の順に積層されている。本実施形態では、水電解セル1は、直方体形状をなしており、4個の水電解セル1と1枚のバイポーラプレート10が積層されている水電解槽3には、水電解槽3をz軸方向に貫通する貫通孔1a、1b、1c、1dのそれぞれが四隅に形成されている(水電解槽3をz軸方向から見た
図2(B)参照)。貫通孔1a、1b、1c、1dは、水電解槽3が有する複数の水電解セル1のそれぞれでの水の電気分解に関与する流体が流れる流路となる。
【0018】
バイポーラプレート10は、略長方形の平板状部材であって、隣り合う水電解セル1との間に配置されるセパレータである。バイポーラプレート10には、アノード側スペーサ20に供給される水が流れる流路11が形成されている。流路11は、バイポーラプレート10において、x軸方向のマイナス側であって、y軸方向のマイナス側の角に形成されており、貫通孔1a(
図2(B)参照)の一部となる。バイポーラプレート10のz軸方向のマイナス側の表面における流路11の開口の周囲には、流路11の開口を囲むように配置される環状の溝11a、11bが形成される。また、バイポーラプレート10のz軸方向のプラス側の表面における流路11の開口の周囲には、流路11の開口を囲むように配置される環状の溝11c、11dが形成される。バイポーラプレート10には、流路11の他に、
図1に示す流路12を含む流路が長方形状の四隅のそれぞれに形成されている(
図2(B)参照)。これらの流路は、水電解セル1の貫通孔1b、1c、1dの一部となる。これらの流路においても、バイポーラプレート10のz軸方向のプラス側の表面と、マイナス側の表面とのそれぞれには、これらの流路の開口を囲むように配置される環状の溝(例えば、
図1に示す流路12における溝12a、12b、12c、12d)が二重に形成される。
【0019】
アノード側スペーサ20は、中央部に開口が形成される樹脂製の板状部材であって、バイポーラプレート10のz軸方向のプラス側に配置される。アノード側スペーサ20には、貫通孔1a、1b、1c、1dのそれぞれの一部となる流路20a、20b、20c、20dが四隅に形成されている(
図2(B)参照)。アノード側スペーサ20は、流路20aを流れる水が、アノード側スペーサ20のほぼ全面に流れるように、水電解セル1のxy平面に沿って流す。アノード側スペーサ20の構造の詳細は、後述する。アノード側スペーサ20は、特許請求の範囲の「一対の部材の一方」に該当する。
【0020】
ガスケット31は、バイポーラプレート10のz軸方向のプラス側と、アノード側スペーサ20のz軸方向のマイナス側との間に配置されるテフロン(登録商標)からなるシートである。ガスケット31は、バイポーラプレート10とアノード側スペーサ20との間をシールする。なお、ガスケット31は、EPDMであってもよい。
【0021】
膜電極接合部40は、略長方形の板状部材であって、樹脂製の枠部41と、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly、以下、「MEA」という)42と、を有する。枠部41の外形は、長方形であって、内側にMEA42が配置される開口が形成されている。MEA42は、図示しない電解質膜の両面に、図示しない触媒を含む電極が接合されている。電解質膜は、例えば、ナフィオン(登録商標)から形成されており、水素イオンや水を透過可能である。電解質膜のz軸方向のマイナス側に接合されるアノード側電極は、酸化イリジウム(Ir2O)を含むアノード側触媒層と、チタン(Ti)から形成されるメッシュであるアノード側拡散層と、を有する。アノード側電極では、電気的に接続する電力供給部4が供給する電力を用いて水を電気分解し、酸素ガスと水素イオンとを生成する。アノード側電極で生成された水素イオンと水の一部は、電解質膜を通って、電解質膜のz軸方向のプラス側に接合されるカソード側電極に移動する。カソード側電極は、白金(Pt)を含むカソード側触媒層と、カーボンペーパであるカソード側拡散層と、を有する。カソード側電極では、電気的に接続する電力供給部4が供給する電力を用いて、電解質膜を通過した水素イオンを水素ガスにする。
【0022】
ガスケット36は、アノード側スペーサ20のz軸方向のプラス側と、膜電極接合部40のz軸方向のマイナス側との間に配置されるテフロン(登録商標)からなるシートである。ガスケット36は、アノード側スペーサ20と膜電極接合部40との間をシールする。なお、ガスケット36は、EPDMであってもよい。
【0023】
カソード側スペーサ50は、内側に開口が形成されている樹脂製の板状部材であって、膜電極接合部40のz軸方向のプラス側に配置されている。本実施形態では、カソード側スペーサ50は、アノード側スペーサ20と同じ構成の部材を用いている。具体的には、カソード側スペーサ50は、水電解セル1において、アノード側スペーサ20の状態で配置されている部材を、z軸方向のプラス側とマイナス側とが入れ替わるようにひっくり返した状態で配置されている。カソード側スペーサ50には、貫通孔1a、1b、1c、1dのそれぞれの一部となる流路50a、50b、50c、50dが四隅に形成されている(
図2(B)参照)。カソード側スペーサ50の構造の詳細は、後述する。カソード側スペーサ50は、特許請求の範囲の「一対の部材の他方」に該当する。
【0024】
ガスケット61は、膜電極接合部40のz軸方向のプラス側と、カソード側スペーサ50のz軸方向のマイナス側との間に配置されているテフロン(登録商標)からなるシートである。ガスケット61は、膜電極接合部40とカソード側スペーサ50との間をシールする。なお、ガスケット61は、EPDMであってもよい。
【0025】
本実施形態では、水電解セル1において、ガスケット36と、膜電極接合部40と、ガスケット61とからなる積層体は、アノード側スペーサ20とカソード側スペーサ50とに挟み込まれている。ガスケット36と、膜電極接合部40と、ガスケット61とからなる積層体は、特許請求の範囲の「シール部材」に該当する。
【0026】
ガスケット66は、カソード側スペーサ50のz軸方向のプラス側に配置されているテフロン(登録商標)からなるシートである。ガスケット66は、水電解セル1に隣り合う別の水電解セル1が備えるバイポーラプレート(
図1に示す二点鎖線10A)と、カソード側スペーサ50との間をシールする。なお、ガスケット66は、EPDMであってもよい。
【0027】
図3は、アノード側スペーサ20の斜視図である。
図4は、水電解セル1に備えられているアノード側スペーサ20をバイポーラプレート10側から見た図である。
図5は、水電解セル1に備えられているアノード側スペーサ20を膜電極接合部40側から見た図である。
図6は、
図3のA部拡大図である。次に、アノード側スペーサ20の詳細な構造について説明する。アノード側スペーサ20は、外周部21と、マニフォルド部22と、2つのリブ23、24と、2つのガスケット押え25、26と、を備える。本実施形態では、外周部21と、マニフォルド部22と、2つのリブ23、24と、2つのガスケット押え25、26とは、一体に形成されている。リブ23、24のそれぞれは、特許請求の範囲の「突起部」に該当する。
【0028】
外周部21は、外形が長方形状の平板である。外周部21の内側には、マニフォルド部22が配置されている。外周部21には、マニフォルド部22の外側において、マニフォルド部22を囲むように、複数の溝部21a、21b、21c、21dが形成される。溝部21aと溝部21bとは、外周部21のバイポーラプレート10側(z軸方向のマイナス側)の主面において、マニフォルド部22の開口を囲むように形成されている。本実施形態では、溝部21aと溝部21bとは、
図4に示すように、平行となるように形成されている。溝部21cと溝部21dとは、外周部21の膜電極接合部40側(z軸方向のプラス側)の主面において、マニフォルド部22の開口を囲むように形成されている。本実施形態では、溝部21cと溝部21dとは、
図5に示すように、平行となるように形成されている。
【0029】
外周部21には、貫通孔1b、1cのそれぞれの一部である流路20b、20cが形成されている。流路20bについては、アノード側スペーサ20のz軸方向のマイナス側の表面における流路20bの周囲に、流路20bを囲むように配置される環状の溝部21e、21fが形成される(
図4参照)。また、アノード側スペーサ20のz軸方向のプラス側の表面における流路20bの周囲には、流路20bを囲むように配置される環状の溝部21g、21hが形成される(
図5参照)。流路20cについては、アノード側スペーサ20のz軸方向のマイナス側の表面における流路20cの周囲に、流路20cを囲むように配置される環状の溝20i、20jが形成される(
図4参照)。また、アノード側スペーサ20のz軸方向のプラス側の表面における流路20cの周囲には、流路20cを囲むように配置される環状の溝20k、20lが形成される(
図5参照)。
【0030】
マニフォルド部22は、
図4および
図5に示すように、アノード側スペーサ20の略中央部に配置される略平行四辺形形状の部位である。マニフォルド部22は、2つの凹部22a、22bと、孔部22cと、を備える。
【0031】
凹部22aは、マニフォルド部22において、x軸方向のマイナス側に配置されている。凹部22aは、z軸に垂直な断面形状が略三角形状に形成されており、外周部21に対してz軸方向のプラス側に凹んでいる。凹部22aには、凹部22aのx軸方向のプラス側であってy軸方向のマイナス側の端に、貫通孔1aの一部である流路20aが形成されている(
図4参照)。凹部22aのz軸方向のプラス側には、流路20aの周りに、溝部22dが形成されている(
図5参照)。
【0032】
凹部22bは、マニフォルド部22において、y軸方向のプラス側に配置されている。凹部22bは、z軸に垂直な断面形状が略三角形状に形成されており、外周部21に対してz軸方向のプラス側に凹んでいる。凹部22bには、凹部22bのx軸方向のプラス側であってy軸方向のプラス側の端に、貫通孔1dの一部である流路20dが形成されている(
図4参照)。凹部22bのz軸方向のプラス側には、流路20dの周りに、溝部22eが形成されている(
図5参照)。
【0033】
孔部22cは、凹部22aのx軸のプラス側の端部と凹部22bのx軸のマイナス側の端部との間に配置されている。孔部22cは、z軸に垂直な断面形状が矩形形状に形成されており、流路構造体27を収容している。流路構造体27は、白金(Pt)がコーティングされているチタン(Ti)からなる多孔質体であり、電気伝導性を有する。流路構造体27には、凹部22aと凹部22bとの間を流れる流体の流路が複数形成されている。
【0034】
リブ23は、凹部22aのz軸方向のマイナス側に配置され、凹部22aからz軸のマイナス方向に向かって突出する凸形状の部位である。リブ23は、複数の第1リブ23aと、複数の第2リブ23bと、を有する。
【0035】
第1リブ23aは、流路20aの周りに配置されている。複数の第1リブ23aのそれぞれは、頂部の高さが外周部21の高さに揃うように形成されている(
図1参照)。複数の第1リブ23aは、
図4に示すように、流路20aから放射状に延びるように配置されており、隣り合う第1リブ23aの間には、流体が流れる隙間が形成されている。複数の第1リブ23aのそれぞれの頂部には、流路20aを囲むように配置される円弧状の溝23c、23dが形成されている。
【0036】
第2リブ23bは、第1リブ23aに比べ、流路20aから離れた位置に配置されている。複数の第2リブ23bのそれぞれは、頂部の高さが外周部21の高さに揃うように形成されている(
図1参照)。複数の第2リブ23bは、
図4に示すように、流路20aから放射状に延びるように配置されており、隣り合う第2リブ23bの間には、流体が流れる隙間が形成されている。複数の第2リブ23bのそれぞれの頂部には、直線状に配置される溝23e、23fが形成されている。
【0037】
リブ24は、凹部22bのz軸方向のマイナス側に配置され、凹部22bからz軸のマイナス方向に向かって突出する凸形状の部位である。リブ24は、複数の第1リブ24aと、複数の第2リブ24bとを有する。
【0038】
第1リブ24aは、流路20dの周りに配置されている。複数の第1リブ24aは、頂部の高さが外周部21の高さに揃うように形成されている(
図1参照)。複数の第1リブ24aのそれぞれは、
図4に示すように、流路20dから放射状に延びるように配置されており、隣り合う第1リブ24aの間には、流体が流れる隙間が形成されている。複数の第1リブ24aのそれぞれの頂部には、流路20dを囲むように配置される円弧状の溝24c、24dが形成されている。
【0039】
第2リブ24bは、第1リブ24aに比べ、流路20dから離れた位置に配置されている。複数の第2リブ24bのそれぞれは、頂部の高さが外周部21の高さに揃うように形成されている(
図1参照)。複数の第2リブ24bは、
図4に示すように、流路20dから放射状に延びるように配置されており、隣り合う第2リブ24bの間には、流体が流れる隙間が形成されている。複数の第2リブ24bのそれぞれの頂部には、直線状に配置される溝24e、24fが形成されている。
【0040】
ガスケット押え25は、凹部22aと孔部22cとの境界に沿って長尺状に形成されており、両端が外周部21に接続されている。ガスケット押え25は、アノード側スペーサ20において、z軸のマイナス側に設けられている。これにより、ガスケット押え25は、バイポーラプレート10とアノード側スペーサ20との間にガスケット31が積層されるとき、ガスケット31に接触し、ガスケット31がマニフォルド部22に落ちることを抑制する。ガスケット押え25には、z軸のプラス側に、複数の突起25aが設けられている。複数の突起25aは、積層方向において、外周部21から突出するように形成されており、アノード側スペーサ20と膜電極接合部40との間にガスケット36が積層されるとき、ガスケット36に接触し、ガスケット36がマニフォルド部22に落ちることを抑制する。ガスケット押え25は、特許請求の範囲の「長尺状部」に該当する。
【0041】
ガスケット押え26は、凹部22bと孔部22cとの境界に沿って長尺状に形成されており、両端が外周部21に接続されている。ガスケット押え26は、アノード側スペーサ20において、z軸のマイナス側に設けられている。これにより、ガスケット押え26は、バイポーラプレート10とアノード側スペーサ20との間にガスケット31が積層されるとき、ガスケット31に接触し、ガスケット31がマニフォルド部22に落ちることを抑制する。ガスケット押え26には、z軸のプラス側に、複数の突起26aが設けられている。複数の突起25aは、積層方向において、外周部21から突出するように形成されており、アノード側スペーサ20と膜電極接合部40との間にガスケット36が積層されるとき、ガスケット36に接触し、ガスケット36がマニフォルド部22に落ちることを抑制する。ガスケット押え26は、特許請求の範囲の「長尺状部」に該当する。
【0042】
図7は、水電解セル1に備えられているカソード側スペーサ50を膜電極接合部40側から見た図である。
図8は、水電解セル1に備えられているカソード側スペーサ50を、水電解セル1に隣り合う別の水電解セル1が備えるバイポーラプレート10A(
図1参照)側から見た図である。次に、カソード側スペーサ50の詳細な構造について説明する。カソード側スペーサ50は、上述したように、アノード側スペーサ20と同じ構成を有しており、外周部51と、マニフォルド部52と、2つのリブ53、54と、2つのガスケット押え55、56と、を備える。本実施形態では、外周部51と、マニフォルド部52と、2つのリブ53、54と、2つのガスケット押え55、56とは、一体に形成されている。リブ53、54のそれぞれは、特許請求の範囲の「突起部」に該当する。
【0043】
外周部51は、外形が長方形状の平板である。外周部51には、外周部51の内側に配置されているマニフォルド部52の外側において、マニフォルド部52を囲むように、複数の溝部51a、51b、51c、51dが形成される。溝部51aと溝部51bとは、外周部51の膜電極接合部40側の主面において、
図7に示すように、マニフォルド部52の開口を囲むように形成されている。本実施形態では、溝部51aと溝部51bとは、平行となるように形成されている。溝部51cと溝部51dとは、
図8に示すように、外周部51のバイポーラプレート10A側の主面において、マニフォルド部52の開口を囲むように形成されている。本実施形態では、溝部51cと溝部51dとは、平行となるように形成されている。
【0044】
外周部51には、貫通孔1a、1dのそれぞれの一部である流路50a、50dが形成されている。流路50aについては、カソード側スペーサ50のz軸方向のマイナス側の表面における流路50aの周囲に、流路50aを囲むように配置される環状の溝部51e、51fが形成される(
図7参照)。また、カソード側スペーサ50のz軸方向のプラス側の表面における流路50aの周囲には、流路50aを囲むように配置される環状の溝部51g、51hが形成される(
図8参照)。流路50dについては、カソード側スペーサ50のz軸方向のマイナス側の表面における流路50dの周囲に、流路50dを囲むように配置される環状の溝50i、50jが形成される(
図7参照)。また、カソード側スペーサ50のz軸方向のプラス側の表面における流路50dの周囲には、流路50dを囲むように配置される環状の溝50k、50lが形成される(
図8参照)。
【0045】
マニフォルド部52は、
図7および
図8に示すようにカソード側スペーサ50の略中央部に配置される略平行四辺形形状の部位である。マニフォルド部52は、2つの凹部52a、52bと、孔部52cと、を備える。
【0046】
凹部52aは、マニフォルド部52において、x軸方向のマイナス側に配置されている。凹部52aは、z軸に垂直な断面形状が略三角形状に形成されており、z軸方向のマイナス側が外周部51に対して凹んでいる。凹部52aには、凹部52aのx軸方向のマイナス側であってy軸方向のプラス側の端に、貫通孔1bの一部である流路50bが形成されている(
図8参照)。凹部52aのz軸方向のマイナス側には、流路50aの周りに、溝部52dが形成されている(
図7参照)。
【0047】
凹部52bは、マニフォルド部52において、x軸方向のプラス側に配置されている。凹部52bは、z軸に垂直な断面形状が略三角形状に形成されており、z軸方向のプラス側が外周部51に対して凹んでいる。凹部52bには、凹部52bのx軸方向のプラス側であってy軸方向のマイナス側の端に、貫通孔1cの一部である流路50cが形成されている(
図8参照)。凹部52bのz軸方向のマイナス側には、流路50cの周りに、溝部52eが形成されている(
図7参照)。
【0048】
孔部52cは、凹部52aのx軸のプラス側の端部と凹部52bのx軸のマイナス側の端部との間に配置されている。孔部52cは、z軸に垂直な断面形状が矩形形状に形成されており、流路構造体57を収容している。流路構造体57は、白金(Pt)がコーティングされているチタン(Ti)からなる多孔質体であり、電気伝導性を有する。流路構造体57には、凹部52aと凹部52bとの間を流れる流体の流路が複数形成されている。
【0049】
リブ53は、凹部52aのz軸方向のプラス側に配置され、凹部52aからz軸のプラス方向に向かって突出する凸形状の部位である。リブ53は、複数の第1リブ53aと、複数の第2リブ53bと、を有する。
【0050】
第1リブ53aは、流路50aの周りに配置されている。複数の第1リブ53aのそれぞれは、頂部の高さが外周部51の高さに揃うように形成されている(
図1参照)。複数の第1リブ53aは、
図8に示すように、流路50bから放射状に延びるように配置されており、隣り合う第1リブ53aの間には、流体が流れる隙間が形成されている。複数の第1リブ53aのそれぞれの頂部には、流路50bを囲むように配置される円弧状の溝53c、53dが形成されている。
【0051】
第2リブ53bは、第1リブ53aに比べ、流路50aから離れた位置に配置されている。複数の第2リブ53bのそれぞれは、頂部の高さが外周部51の高さに揃うように形成されている(
図1参照)。複数の第2リブ53bは、
図8に示すように、流路50aから放射状に延びるように配置されており、隣り合う第2リブ53bの間には、流体が流れる隙間が形成されている。複数の第2リブ53bのそれぞれの頂部には、直線状に配置される溝53e、53fが形成されている。
【0052】
リブ54は、凹部52bのz軸方向のプラス側に配置され、凹部52bからz軸のプラス方向に向かって突出する凸形状の部位である。リブ54は、複数の第1リブ54aと、複数の第2リブ54bと、を有する。
【0053】
第1リブ54aは、流路50cの周りに配置されている。複数の第1リブ54aは、頂部の高さが外周部51の高さに揃うように形成されている(
図1参照)。複数の第1リブ54aのそれぞれは、
図8に示すように、流路50cから放射状に延びるように配置されており、隣り合う第1リブ54aの間には、流体が流れる隙間が形成されている。複数の第1リブ54aのそれぞれの頂部には、流路50cを囲むように配置される円弧状の溝54c、54dが形成されている。
【0054】
第2リブ54bは、第1リブ54aに比べ、流路50cから離れた位置に配置されている。複数の第2リブ54bのそれぞれは、頂部の高さが外周部51の高さに揃うように形成されている(
図1参照)。複数の第2リブ54bは、
図8に示すように、流路50cから放射状に延びるように配置されており、隣り合う第2リブ54bの間には、流体が流れる隙間が形成されている。複数の第2リブ54bのそれぞれの頂部には、直線状に配置される溝54e、54fが形成されている。
【0055】
ガスケット押え55は、凹部52aと孔部52cとの境界に沿って長尺状に形成されており、両端が外周部51に接続されている。ガスケット押え55は、カソード側スペーサ50において、z軸のプラス側に設けられている。これにより、ガスケット押え55は、バイポーラプレート10Aとカソード側スペーサ50との間にガスケット66が積層されるとき、ガスケット66に接触し、ガスケット66がマニフォルド部52に落ちることを抑制する。ガスケット押え55には、z軸のマイナス側に、複数の突起55aが設けられている。複数の突起55aは、積層方向において、外周部51から突出するように形成されており、カソード側スペーサ50と膜電極接合部40との間にガスケット61が積層されるとき、ガスケット61に接触し、ガスケット61がマニフォルド部52に落ちることを抑制する。ガスケット押え55は、特許請求の範囲の「長尺状部」に該当する。
【0056】
ガスケット押え56は、凹部52bと孔部52cとの境界に沿って長尺状に形成されており、両端が外周部51に接続されている。ガスケット押え56は、カソード側スペーサ50において、z軸のプラス側に設けられている。これにより、ガスケット押え56は、バイポーラプレート10Aとカソード側スペーサ50との間にガスケット66が積層されるとき、ガスケット66に接触し、ガスケット66がマニフォルド部52に落ちることを抑制する。ガスケット押え56には、z軸のマイナス側に、複数の突起56aが設けられている。複数の突起56aは、積層方向において、外周部51から突出するように形成されており、カソード側スペーサ50と膜電極接合部40との間にガスケット61が積層されるとき、ガスケット61に接触し、ガスケット61がマニフォルド部52に落ちることを抑制する。ガスケット押え56は、特許請求の範囲の「長尺状部」に該当する。
【0057】
次に、本実施形態の水電解セル1の第1の特徴について説明する。水電解セル1では、バイポーラプレート10と、アノード側スペーサ20と、カソード側スペーサ50のそれぞれに、アノード側スペーサ20やカソード側スペーサ50に形成されている流路や開口を囲むように、複数の溝が形成されている。
【0058】
図9は、水電解セル1の第1の特徴による作用を説明する模式図である。
図9には、アノード側スペーサ20とカソード側スペーサ50とによって、膜電極接合部40を介してガスケット36とガスケット61とを挟み込むときのガスケット36とガスケット61の変形を模式的に示している。
図9(A)には、アノード側スペーサ20とカソード側スペーサ50とを締結する前の状態を示しており、
図9(B)には、アノード側スペーサ20とカソード側スペーサ50とが締結された後の状態を示している。
【0059】
図9に示すように、ガスケット36とガスケット61とが間に配置されているアノード側スペーサ20とカソード側スペーサ50とを締結すると、ガスケット36の表面36aの一部が変形し、溝部21c、21dの内側に突出する(
図9(B)に示す突出部37)。これより、アノード側スペーサ20とガスケット36との間にラビリンスシールが形成されるため、アノード側スペーサ20とガスケット36との間からのガスの漏れが抑制される。また、アノード側スペーサ20とカソード側スペーサ50とを締結すると、ガスケット61の表面61bの一部が変形し、溝部51a、51bの内側に突出する(
図9(B)に示す突出部63)。これより、カソード側スペーサ50とガスケット61との間にラビリンスシールが形成されるため、カソード側スペーサ50とガスケット61との間からのガスの漏れが抑制される。この状態において、アノード側スペーサ20のマニフォルド部22と、カソード側スペーサ50のマニフォルド部52とは、上述したラビリンスシールによってシール性が維持される。
【0060】
本実施形態の水電解セル1では、バイポーラプレート10のガスケット31側には、ガスケット31の表面の一部を突出させる溝11c、11d、12c、12dが形成されている(
図1参照)。アノード側スペーサ20のガスケット31側には、ガスケット31の表面の一部を突出させる21a、21b、21e、21f、21i、21jが形成されている(
図4参照)。アノード側スペーサ20の膜電極接合部40側には、ガスケット36の表面の一部を突出させる21c、21d、21g、21h、21k、21lが形成されている(
図5参照)。カソード側スペーサ50の膜電極接合部40側には、ガスケット61の表面の一部を突出させる溝部51a、51b、51e、51f、51i、51jが形成されている(
図7参照)。カソード側スペーサ50のバイポーラプレート10A側には、ガスケット66の表面の一部を突出させる溝部51c、51d、51g、51h、51k、51lが形成されている(
図8参照)。水電解セル1が備えるガスケットの表面の一部は、隣り合うバイポーラプレートやスペーサの溝部に突出することで、内部からの流体の漏れを抑制することができる。
【0061】
次に、本実施形態の水電解セル1の第2の特徴について説明する。本実施形態の水電解セル1では、アノード側スペーサ20のリブ23、24のそれぞれは、積層方向において、カソード側スペーサ50に形成される溝部と重なる位置に、該溝部の延設方向に沿って並んで設けられている。また、カソード側スペーサ50のリブ53、54のそれぞれは、積層方向において、アノード側スペーサ20に形成される溝部と重なる位置に、該溝部の延設方向に沿って並んで設けられている。
【0062】
図10は、第1実施形態の水電解セル1の透過拡大図である。
図11は、比較例の水電解セルの透過拡大図である。比較例の水電解セル9には、水電解セル1においてアノード側スペーサ20のマニフォルド部22に設けられるリブ23、24と、カソード側スペーサ50のマニフォルド部52に設けられるリブ53、54とが設けられていない。また、比較例の水電解セル9は、
図11に示すように、水電解セル1が備えるガスケット押え25、26、55、56を備えていない。
【0063】
比較例の水電解セル9は、
図11に示すように、カソード側スペーサ50の溝部の一部が、積層方向(z軸方向)において、アノード側スペーサ20のマニフォルド部22に重なる。具体的には、
図11において、ドットによるハッチングで示す、溝部51e、51f、51h、51gの一部と、溝部51a、51b、51c、51dの一部とが、アノード側スペーサ20のマニフォルド部22に重なる。なお、アノード側スペーサ20のマニフォルド部22には、アノード側スペーサ20の溝部21c、22dの一部も重なる。
【0064】
また、比較例の水電解セル9は、
図11に示すように、アノード側スペーサ20の溝部の一部が、積層方向において、カソード側スペーサ50のマニフォルド部52に重なる。具体的には、
図11において、ドットのハッチングで示す、溝部21e、21f、21g、21hの一部と、溝部21a、21b、21c、21dの一部とが、カソード側スペーサ50のマニフォルド部52に重なる。なお、カソード側スペーサ50のマニフォルド部52には、カソード側スペーサ50の溝部51c、51dの一部も重なる。
【0065】
比較例の水電解セル1では、上述したように、積層方向において、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50の一方の溝部の一部が、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50の他方のマニフォルド部に重なっている。このため、ガスケットのうち、マニフォルド部に面している表面は、スペーサによって支持されていないため、ガスケットが溝部の内側に向かって変形しにくくなり、ガスケットによるシール性を維持しにくくなる。
【0066】
一方、本実施形態の水電解セル1では、積層方向において、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50の一方のマニフォルド部には、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50の他方の溝部が重なる位置にリブが設けられている(
図10参照)。具体的には、アノード側スペーサ20のマニフォルド部22には、溝部51e、51f、51h、51gの一部の延設方向に沿って並べられている第1リブ23aが設けられており、溝部51a、51b、51c、51dの一部の延設方向に沿って並べられている第2リブ23bが設けられている。また、カソード側スペーサ50のマニフォルド部52には、溝部21e、21f、21g、21hの一部の延設方向に沿って並べられている第1リブ53aが設けられており、溝部21a、21b、21c、21dの一部の延設方向に沿って並べられている第2リブ53bが設けられている。これにより、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50の一方では、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50の他方の溝部が重なる位置において、マニフォルド部とリブとの厚みの合計は、マニフォルド部が形成されていない部位、例えば、外周部の厚みに近い値となる。したがって、マニフォルド部においてもガスケットを支持することができるため、アノード側スペーサ20およびカソード側スペーサ50に形成される溝部のエッジへの応力集中によってガスケットが変形しやすくなる。ガスケットが変形しやすくなると、溝部の内側への突出によってラビリンスシールが形成されやすくなるたため、ガスケットによるマニフォルド部のシール性を向上することができる。
【0067】
本実施形態の水電解セル1は、
図10で示した端部とは反対側の端部、すなわち、アノード側スペーサ20の凹部22bと、カソード側スペーサ50の凹部52bのそれぞれについても、同様の構成を備えている。具体的には、アノード側スペーサ20の凹部22bには、溝部51i、51j、51k、51lの一部の延設方向に沿って並べられている第1リブ24aが設けられており、溝部51a、51b、51c、51dの一部の延設方向に沿って並べられている第2リブ24bが設けられている。また、カソード側スペーサ50の凹部52bには、溝部21i、21j、21k、21lの一部の延設方向に沿って並べられている第1リブ54aが設けられており、溝部21a、21b、21c、21dの一部の延設方向に沿って並べられている第2リブ54bが設けられている。これにより、アノード側スペーサ20のリブ24と、カソード側スペーサ50のリブ54についても、上述したリブ23、53と同様の効果を奏する。
【0068】
図12は、水電解セル1の作用を説明する図である。次に、水電解セル1の作用について説明する。水タンク5によって供給される水(
図12の二点鎖線矢印F11)がバイポーラプレート10の流路11を経由してアノード側スペーサ20の流路20aを流れる。流路20aを流れる水の一部は、マニフォルド部22の凹部22aを通って、流路構造体27に流入する(
図12の二点鎖線矢印F12)。また、流路20aを流れる水のうち、凹部22aに流入しなかった残りの水は、流路20aを通って、水電解セル1に隣接する別の水電解セル1に供給される(
図12の二点鎖線矢印F13)。
【0069】
図13は、水電解セル1の第1の部分断面図であって、流路20aから凹部22aを通って孔部22cに向かう水の流れを説明するアノード側スペーサ20の断面斜視図である。
図14は、水電解セル1の第2の部分断面図であって、
図13に示した水の流れを示す水電解セル1の拡大断面図である。
図13に示すように、流路20aから凹部22aに流入する水は、アノード側スペーサ20におけるバイポーラプレート10側(z軸のマイナス側)を流れる。凹部22aに流入する水は、第1リブ23aにおける隣り合うリブの間と、第2リブ23bにおける隣り合うリブの間と、を流れる。凹部22aを流れた水は、孔部22cに流入する前に、バイポーラプレート10側に配置されているガスケット押え25によって、バイポーラプレート10側から膜電極接合部40側に移動する(
図14参照)。膜電極接合部40側に移動した水は、ガスケット押え25が有する複数の突起25aの間を通って、孔部22cに収容されている流路構造体27に流入する(
図14参照)。
【0070】
図12に戻り、流路構造体27に流入した水は、孔部22cの全面に広がる(
図12の二点鎖線矢印F14)。流路構造体27の全面に広がった水は、ほとんどが膜電極接合部40のアノード側拡散層を通り、アノード側触媒層に到達する。アノード側触媒層は、電力供給部4によって供給されている電力を用いて、アノード側触媒層に到達した水から電気分解されて酸素ガスと水素イオンとを生成する。生成された酸素ガスは、電気分解されなかった水とともに、アノード側スペーサ20の凹部22bを通って、貫通孔1dを流れ、水電解セル1の外部に排出される(
図12の二点鎖線矢印F15)。
【0071】
アノード側触媒層において生成される水素イオンは、水の一部(随伴水)とともに電解質膜を通り(
図12の二点鎖線矢印F16)、カソード側電極に到達する。カソード側電極は、電力供給部4によって供給される電力を用いて、水素イオンから水素ガスを生成する。生成された水素ガスと随伴水は、流路構造体57を経由して(
図12の二点鎖線矢印F17)、ガスケット押え55の複数の突起55aの間を通る。複数の突起55aの間を通った水素ガスは、
図12に示すように、膜電極接合部40側からバイポーラプレート10A側に移動し、第2リブ53bにおける隣り合うリブの間と、第1リブ53aにおける隣り合うリブの間とを流れ、流路50bを通って、水電解セル1の外部に排出される(
図12の二点鎖線矢印F18)。
【0072】
以上説明した、本実施形態の水電解セル1によれば、水電解セル1では、アノード側スペーサ20には、マニフォルド部22を囲むように、溝部21a、21b、21c、21dなどが形成されている。また、カソード側スペーサ50には、マニフォルド部52を囲むように、溝部51a、51b、51c、51dなどが形成されている。アノード側スペーサ20とカソード側スペーサ50とが積層されるとき、これらの溝部の内側に向かってガスケット36、61の表面を変形し突出させることで、ガスケット36、61および膜電極接合部40と、アノード側スペーサ20と、カソード側スペーサ50との間のシール性を維持することができる。さらに、アノード側スペーサ20のマニフォルド部22には、積層方向において、カソード側スペーサ50の溝部の延設方向に沿って並べられているリブ23、24が設けられる。また、カソード側スペーサ50のマニフォルド部52には、積層方向において、アノード側スペーサ20の溝部の延設方向に沿って並べられているリブ53、54が設けられる。これにより、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50の一方では、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50の他方の溝部が重なる位置において、マニフォルド部と突起部との厚みの合計は、外周部の厚みに近い値となる。すなわち、水電解セル1は、積層方向で溝部と重なる位置には隙間が少なくなるため、積層方向の構造強度を大きくすることができる。これにより、積層方向における溝部と重なる位置では、溝部の内側に向かって表面が変形しやすいように、ガスケット31、36、61、66を支持することができる。また、リブ23、24は、マニフォルド部22において、流体が流通可能な隙間を、隣接するリブの間に形成している。リブ53、54は、マニフォルド部52において、流体が流通可能な隙間を、隣接するリブの間に形成している。このように、リブ23、24、53、54は、マニフォルド部22、52において、流体が流通可能な隙間を、隣接するリブの間に形成するため、マニフォルド部22、52における流体の流通を妨げにくくなっている。したがって、マニフォルド部22、52において流体を流通させつつ、ガスケット31、36、61、66によるマニフォルド部22、52のシール性を向上することができる。
【0073】
また、本実施形態の水電解セル1において、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50のそれぞれにおいて、マニフォルド部とリブとの厚みの合計は、外周部の厚みに近い値となる。これにより、2つのバイポーラプレート10、10Aの間に積層されている部材どうしの物理的な接触状態が把握しやすくなるため、2つのバイポーラプレート10、10Aの間における電気抵抗を比較的容易に管理することができる。
【0074】
また、本実施形態の水電解セル1において、アノード側スペーサ20では、マニフォルド部22とリブ23、24とは一体に形成されており、カソード側スペーサ50では、マニフォルド部52とリブ53、54とは一体に形成されている。これにより、リブをマニフォルド部とは別部品とする場合に比べ、構造強度を維持しつつ、隣り合うリブの間の断面積を大きくすることができる。
【0075】
また、本実施形態の水電解セル1において、アノード側スペーサ20において、第1リブ23aの頂部には、カソード側スペーサ50の溝部51eなどの延設方向に沿った方向に延びる溝23c、23dが形成されている。また、第2リブ23bの頂部には、カソード側スペーサ50の溝部51aなどの延設方向に沿った方向に延びる溝23e、23fが形成されている。第1リブ24aの頂部には、カソード側スペーサ50の溝部51iなどの延設方向に沿った方向に延びる溝24c、24dが形成されている。第2リブ24bの頂部には、カソード側スペーサ50の溝部51aなどの延設方向に沿った方向に延びる溝24e、24fが形成されている。カソード側スペーサ50において、第1リブ53aの頂部には、アノード側スペーサ20の溝部21eなどの延設方向に沿った方向に延びる溝53c、53dが形成されている。また、第2リブ53bの頂部には、アノード側スペーサ20の溝部21aなどの延設方向に沿った方向に延びる溝53e、53fが形成されている。第1リブ54aの頂部には、アノード側スペーサ20の溝部21iなどの延設方向に沿った方向に延びる溝54c、54dが形成されている。第2リブ54bの頂部には、アノード側スペーサ20の溝部21aなどの延設方向に沿った方向に延びる溝54e、54fが形成されている。これにより、例えば、リブ23の頂部に対向するガスケット31の表面は、頂部に形成されている溝23c、23d、23e、23fの内側に向かって変形し、ガスケット31とリブ23との間のシール性を維持することができる。したがって、マニフォルド部22、52において、流体がガスケットとリブとの間を流れることを抑制することができるため、流体は、互いに隣接するリブの間を流れることができる。
【0076】
また、本実施形態の水電解セル1において、アノード側スペーサ20のリブ23、24は、頂部の高さが、外周部21の高さと揃うように形成されている。カソード側スペーサ50のリブ53、54は、頂部の高さが、外周部51の高さと揃うように形成されている。これにより、アノード側スペーサ20とカソード側スペーサ50とのそれぞれにおいて、マニフォルド部とリブとの積層方向における厚みの合計は、外周部の厚みとほとんど同じなるため、ガスケットがさらに変形しやすくなる。したがって、ガスケットによるマニフォルド部のシール性をさらに向上することができる。
【0077】
また、本実施形態の水電解セル1において、アノード側スペーサ20は、凹部22aから孔部22cに向かう水の流通方向を、凹部22aに沿った方向から、凹部22aに沿った方向と交差する方向に切り替えるガスケット押え25を備える。また、アノード側スペーサ20は、マニフォルド部22における凹部22bと孔部22cとの境界に沿って長尺状に形成されているガスケット押え26を備える。これにより、アノード側スペーサ20では、ガスケット36を凹部22a、22bによって押さえるとともに、ガスケット31をガスケット押え25、26によって押さえることができる。さらに、凹部22aから孔部22cに向かう水の流通方向を切り替えることによって、MEA42を介したカソード側スペーサ50のマニフォルド部52への水素イオンや随伴水の供給を容易に行うことができる。
【0078】
また、本実施形態の水電解セル1において、膜電極接合部40には、ナフィオンから形成される電解質膜が配置されており、ガスケット36は、テフロン(登録商標)から形成されている。この場合、凹部22a、22bは、ガスケット36を押さえているため、ガスケット36と電解質膜との間に水が浸入することを抑制することができる。これにより、水との接触によって水電解質膜の膨潤を抑制することができるため、ナフィオン膜の膨潤によるガスケットの押出を起因とするマニフォルド部22の断面積の低下を抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態の水電解セル1において、ガスケット押え25、26のそれぞれには、積層方向において外周部21から突出する複数の突起25a、26aが形成されている。これにより、複数の突起25a、26aは、ガスケット36に接触し、ガスケット36の孔部22cへの落ち込みを抑制することができるため、孔部22cの流路断面積の減少を抑制することができる。また、ガスケット押え55、56のそれぞれには、積層方向において外周部51から突出する複数の突起55a、56aが形成されている。これにより、複数の突起55a、56aは、ガスケット61に接触し、ガスケット61の孔部52cへの落ち込みを抑制することができるため、孔部52cの流路断面積の減少を抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態の水電解セル1において、アノード側スペーサ20に水を供給することで酸素ガスと水素イオンを発生させつつ、カソード側スペーサ50において、アノード側スペーサ20とカソード側スペーサ50との間の膜電極接合部40を介して供給される水素イオンから水素ガスを発生させる。この固体高分子形の水電解セル1が上述したような構成となることで、アノード側スペーサ20のマニフォルド部22を流れる水やカソード側スペーサ50のマニフォルド部52を流れる水素ガスなどが外部に漏れることを抑制することができる。
【0081】
<第2実施形態>
図15は、第2実施形態の水電解セル2の作用を説明する第1の図である。第2実施形態の水電解セル2は、第1実施形態の水電解セル1(
図1)と比較すると、積層方向に対するスペーサの配置の向きと、スペーサの形状とが異なる。
【0082】
本実施形態の水電解セル2は、バイポーラプレート10と、アノード側スペーサ70と、膜電極接合部40と、カソード側スペーサ80と、ガスケット31、36、61、66と、を備える。アノード側スペーサ70は、中央部に開口が形成される樹脂製の板状部材であって、バイポーラプレート10のz軸方向のプラス側に配置される。カソード側スペーサ80は、内側に開口が形成されている樹脂製の板状部材であって、膜電極接合部40のz軸方向のプラス側に配置されている。
【0083】
アノード側スペーサ70は、外周部21と、マニフォルド部22と、2つのリブ23、24と、を備えている。アノード側スペーサ70は、第1実施形態のアノード側スペーサ20と比較すると、2つのガスケット押えを備えていないことと、
図15に示すように、2つのリブ23、24が膜電極接合部40側に配置されていることとが異なる。
【0084】
カソード側スペーサ80は、外周部51と、マニフォルド部52と、2つのリブ53、54と、を備えている。カソード側スペーサ80は、第1実施形態のカソード側スペーサ80と比較すると、2つのガスケット押えを備えていないことと、
図15に示すように、2つのリブ53、54が膜電極接合部40側に配置されていることとが異なる。
【0085】
以上説明した、本実施形態の水電解セル2によれば、アノード側スペーサ70のマニフォルド部22には、積層方向において、カソード側スペーサ80の溝部の延設方向に沿って並べられているリブ23、24が設けられる。また、カソード側スペーサ80のマニフォルド部52には、積層方向において、アノード側スペーサ70の溝部の延設方向に沿って並べられているリブ53、54が設けられる。これにより、アノード側スペーサ70またはカソード側スペーサ80の一方では、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50の他方の溝部が重なる位置においても、ガスケット36、61のマニフォルド部22、52への落ち込みを抑制し、ガスケット31、36、61、66を支持することができる。また、リブ23、24、53、54は、マニフォルド部22、52において、流体が流通可能な隙間を、隣接するリブの間に形成するため、マニフォルド部22、52における流体の流通を妨げにくくなっている。したがって、マニフォルド部22、52において流体を流通させつつ、ガスケット31、36、61、66によるマニフォルド部22、52のシール性を向上することができる。
【0086】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0087】
[変形例1]
上述の実施形態では、積層構造体としての水電解セルは、固体高分子形水電解槽に適用されるとした。しかしながら、積層構造体が適用される分野はこれに限定されない。水素と酸素との化学反応によって発電する固体高分子形燃料電池が備えるセルに適用されてもよい。
【0088】
[変形例2]
上述の実施形態では、リブは、頂部の高さが、外周部の高さと揃うように形成されるとした。しかしながら、リブの頂部の高さと、外周部の高さとの関係は、これに限定されない。リブの頂部の高さと、外周部の高さとが揃うことによって、ガスケットがさらに変形しやすくなるため、ガスケットによるマニフォルド部のシール性をさらに向上することができる。
【0089】
[変形例3]
上述の実施形態では、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50の一方のリブの頂部には、アノード側スペーサ20またはカソード側スペーサ50の他方に形成される溝部の延設方向に沿った方向に延びる溝が形成されるとした。しかしながら、リブの頂部には、溝はなくてもよい。
【0090】
[変形例4]
第1実施形態では、アノード側スペーサ20とカソード側スペーサ50とのそれぞれは、ガスケット押え25、26、55、56を有するとした。しかしながら、ガスケット押えはなくてもよい。
【0091】
図16は、水電解セルの第1の変形例の模式図である。
図16に示す水電解セル1のように、ガスケット押えがなくても、リブによって、マニフォルド部においてもガスケットを支持することができるため、ガスケットが変形しやすくなり、ガスケットによるマニフォルド部のシール性を向上することができる。また、アノード側スペーサ20とカソード側スペーサ50とのいずれか一方に、ガスケット押えがあってもよい。
【0092】
[変形例5]
第2実施形態では、アノード側スペーサ70とカソード側スペーサ80とのそれぞれは、ガスケット押えを有しないとした。しかしながら、ガスケット押えを有していてもよい。
【0093】
図17は、水電解セルの第2の変形例の模式図である。
図17に示す水電解セル2は、アノード側スペーサ70がガスケット押え25、26を備えており、カソード側スペーサ80がガスケット押え55、56を備えている。これにより、ガスケット押え25、26によってガスケット31を押さえることができるとともに、ガスケット押え55、56によってガスケット66を押さえることができる。したがって、ガスケット31の孔部22cへの落ち込みと、ガスケット66の孔部52cの落ち込みとを抑制することができる。
【0094】
[変形例6]
上述の実施形態では、マニフォルド部22、52のそれぞれに収容される流路構造体27、57は、複数の流路を有する多孔質体であるとした。しかしながら、流路構造体の構成はこれに限定されない。
【0095】
図18は、水電解セルの第3の変形例の模式図である。
図18に示す水電解セル1では、マニフォルド部22、52に収容される流路構造体28、58は、MEA42側に流路28a、58aを有する。凹部22aを流れる水は、流路28aを流れることで酸素ガスと水素イオンを発生させる。発生した水素イオンは、MEA42を通って、流路58aに送られる。流路58aでは、水素イオンから水素ガスを発生させる。スペーサの流路構造体がこのような構成であっても、リブとガスケット押えによってガスケットを支持することができるため、ガスケットが変形しやすくなる。これにより、ガスケットによるマニフォルド部のシール性を向上することができる。
【0096】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0097】
1,2…水電解セル
3…水電解槽
6…水電解装置
10,10A…バイポーラプレート
20,70…アノード側スペーサ
21…外周部
21c,21d,51a,51b…溝部
22,52…マニフォルド部
22a,22b,52a,52b…凹部
22c,52c…孔部
23,24,53,54…リブ
23c,23d,23e,23f,24c,24d,24e,24f,53c,53d,53e,53f,54c,54d,54e,54f…溝
25a,26a,55a,56a…突起
31,36,61,66…ガスケット
50,80…カソード側スペーサ
52a…凹部
52a…マニフォルド部