(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車両運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/14 20060101AFI20240604BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20240604BHJP
B60W 30/16 20200101ALI20240604BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240604BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W40/04
B60W30/16
B60K6/48 ZHV
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020208584
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 英輝
(72)【発明者】
【氏名】石原 英明
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-061832(JP,A)
【文献】特開2013-082274(JP,A)
【文献】特開2017-056765(JP,A)
【文献】特開2013-086755(JP,A)
【文献】国際公開第2014/122761(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
B60K 6/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の加速度を自動で制御して前記自車両を自動で走行させる走行支援制御を実行する制御手段
と、前記自車両と同一の車線を走行する車両であって前記自車両の前方の所定先行車判定距離内を走行する先行車を検出する検出装置と、を備えた車両運転支援装置
であって、
前記走行支援制御は、前記自車両の車速が設定車速に維持されるように前記設定車速を含む第1車速範囲を基準として前記自車両の加速度を自動で制御する第1定速制御と、前記自車両の車速が前記設定車速に維持されるように前記設定車速を含む第2車速範囲を基準として前記自車両の加速度を自動で制御する第2定速制御と、を含んでおり、
前記第2車速範囲は、前記第1車速範囲よりも広い範囲に設定されており、
前記制御手段は、前記自車両の走行状態に応じて前記第1定速制御と前記第2定速制御との間で前記走行支援制御を切り替えるように構成されている、
車両運転支援装置
において、
前記制御手段は、
前記第2定速制御の実行が要求され且つ前記検出装置が前記先行車を検出していない場合、前記第2定速制御を実行するように構成されており、
前記第2定速制御の実行が要求され且つ前記検出装置が前記先行車を検出した場合において、
(i)前記先行車と前記自車両の間の前方車間距離が前記所定先行車判定距離よりも短い所定前方中距離よりも長い場合、前記第2定速制御として、第1加減速制御を実行し、
(ii)前記前方車間距離が前記所定前方中距離以下である場合、前記第2定速制御として、前記第1加減速制御とは異なる第2加減速制御を実行する、
ように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両運転支援装置において、
前記検出装置は、前記自車両と同一の車線を走行する車両であって前記自車両の後方の所定後続車判定距離内を走行する車両である後続車を検出する
ように構成されており、
前記制御手段は、
前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されていない場合、前記第1定速制御を実行し、
前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合、前記第2定速制御を実行する、
ように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両運転支援装置において、
前記第2定速制御は、前記自車両の車速を低下させるための減速制御と、前記自車両の車速を上昇させるための加速制御と、を含んでおり、
前記制御手段は、前記第2定速制御の実行時、前記自車両の車速が上昇して前記第2車速範囲の上限値に達した場合、前記減速制御を実行し、前記自車両の車速が低下して前記第2車速範囲の下限値に達した場合、前記加速制御を実行するように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両運転支援装置において、
前記検出装置は、前記自車両と同一の車線を走行する車両であって前記自車両の後方の所定後続車判定距離内を走行する車両である後続車を検出する
ように構成されており、
前記制御手段は、
前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されていない場合、前記第1定速制御を実行し、
前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合、前記第2定速制御を実行し、
前記先行車が存在し且つ前記後続車が存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されて
おり且つ前記前方車間距離が前記所定前方中距離よりも長い場合であって、前記自車両の車速が前記先行車の車速よりも速く且つそれら車速の差が所定前方接近車速差よりも大きい場合、前記自車両の車速を低下させるための減速制御を実行し、
前記先行車が存在し且つ前記後続車が存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されて
おり且つ前記前方車間距離が前記所定前方中距離よりも長い場合であって、前記自車両の車速が前記先行車の車速よりも遅く且つそれら車速の差が所定前方離間車速差よりも大きく且つ前記自車両の車速が前記第2車速範囲の下限値よりも遅い場合、前記自車両の車速を上昇させるための加速制御を実行する、
ように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両運転支援装置において、
前記検出装置は、前記自車両と同一の車線を走行する車両であって前記自車両の後方の所定後続車判定距離内を走行する車両である後続車を検出する
ように構成されており、
前記走行支援制御は、
前記前方車間距離が設定前方車間距離に維持されるように前記自車両の加速度を自動で制御する追従走行制御を含んでおり、
前記制御手段は、
前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されていない場合、前記第1定速制御を実行し、
前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合、前記第2定速制御を実行し、
前記先行車が存在し且つ前記後続車が存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されて
おり且つ前記前方車間距離が前記所定前方中距離よりも長い場合であって
、前記自車両の車速が前記先行車の車速よりも速く且つそれら車速の差が所定前方接近車速差よりも大きい場合、前記自車両の車速を低下させるための減速制御を実行し、
前記先行車が存在し且つ前記後続車が存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されて
おり且つ前記前方車間距離が前記所定前方中距離以下である場合であって
、前記所定前方中距離よりも短い所定前方近距離よりも長い場合、前記減速制御を実行し、
前記先行車が存在し且つ前記後続車が存在しない場合において、前記前方車間距離が前記所定前方近距離以下である場合、前記第2定速制御の実行が要求されている場合でも、前記追従走行制御を実行する、
ように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両運転支援装置において、
前記検出装置は、前記自車両と同一の車線を走行する車両であって前記自車両の後方の所定後続車判定距離内を走行する車両である後続車を検出する
ように構成されており、
前記制御手段は、
前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されていない場合、前記第1定速制御を実行し、
前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合、前記第2定速制御を実行し、
前記先行車が存在せず且つ前記後続車が存在する場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合であって、前記自車両と前記後続車との間の後方車間距離が前記所定後続車判定距離よりも短い所定後方近距離よりも長く且つ前記自車両の車速が前記後続車の車速よりも遅く且つそれら車速の差が所定後方接近車速差よりも大きい場合、前記自車両の車速を上昇させるための加速制御を実行し、
前記先行車が存在せず且つ前記後続車が存在する場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合であって、前記後方車間距離が前記所定後方近距離以下であり且つ前記自車両の車速が前記第2車速範囲の上限値よりも遅い場合、前記加速制御を実行し、
前記先行車が存在せず且つ前記後続車が存在する場合において、前記後方車間距離が前記所定後方近距離以下であり且つ前記自車両の車速が前記第2車速範囲の上限値以上である場合、前記第2定速制御の実行が要求されている場合でも、前記第1定速制御を実行する、
ように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項7】
請求項1に記載の車両運転支援装置において、
前記走行支援制御は、
前記前方車間距離が設定前方車間距離に維持されるように前記自車両の加速度を自動で制御する追従走行制御を含んでおり、
前記制御手段は、前記先行車が存在する場合において、前記第2定速制御の実行が要求されていない場合、前記追従走行制御を実行するように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の車両運転支援装置において、
前記自車両に与える駆動力を出力する駆動装置を備えており、
前記制御手段は、
前記第1定速制御の実行時、前記自車両の車速が前記設定車速に収束する速度が所定速度以上となるように前記自車両の加速及び減速を行い、
前記第2定速制御の実行時、前記駆動装置が前記駆動力を出力するときの該駆動装置のエネルギー効率が所定効率以上となるように前記自車両の加速及び減速を行う、
ように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項9】
請求項1に記載の車両運転支援装置において、
前記第1加減速制御は、前記自車両と前記先行車の相対位置関係の変化状況に応じて前記自車両の車速を上昇させるための加速制御又は前記自車両の車速を低下させるための減速制御を実行する制御であり、
前記第2加減速制御は、前記自車両と前記先行車との相対位置に応じて前記減速制御又は前記前方車間距離が設定前方車間距離に維持されるように前記自車両の加速度を自動で制御する追従走行制御を実行する制御である、
車両運転支援装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両運転支援装置において、
前記制御手段は、前記第1加減速制御において、前記自車両が前記先行車に所定前方接近車速よりも速い速度で接近しつつある場合、前記減速制御を実行し、前記自車両が前記先行車から所定前方離間車速よりも速い速度で離されつつある場合、前記加速制御を実行するように構成されている、
車両運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に与える駆動力(車両駆動力)を出力する駆動装置として、内燃機関とモータとを備えた車両が知られている。こうした車両においては、内燃機関とモータとの両方から車両駆動力を出力するHVモードと、モータのみから車両駆動力を出力するEVモードと、を任意に選択することができる。特許文献1には、車両駆動力を出力するときの駆動装置のエネルギー効率ができるだけ高くなるようにHVモードとEVモードとの何れのモードを選択するかを決定するようにした車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
車両の車速が運転者の設定した車速(設定車速)に制御されるように車両の加速度を自動で制御する定速制御を実行可能に構成された車両が知られている。この定速制御を行う場合も、車両駆動力を出力するときの駆動装置のエネルギー効率ができるだけ高くなるように車両の加速度を制御することが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、車速を設定車速に制御する定速制御をできるだけ高いエネルギー効率で行うことができる車両運転支援装置を提供することにある。
【0006】
本発明に係る車両運転支援装置は、自車両の加速度を自動で制御して前記自車両を自動で走行させる走行支援制御を実行する制御手段と、前記自車両と同一の車線を走行する車両であって前記自車両の前方の所定先行車判定距離内を走行する先行車を検出する検出装置と、を備えている。前記走行支援制御は、前記自車両の車速が設定車速に維持されるように前記設定車速を含む第1車速範囲を基準として前記自車両の加速度を自動で制御する第1定速制御と、前記自車両の車速が前記設定車速に維持されるように前記設定車速を含む第2車速範囲を基準として前記自車両の加速度を自動で制御する第2定速制御と、を含んでいる。又、前記第2車速範囲は、前記第1車速範囲よりも広い範囲に設定されている。そして、前記制御手段は、前記自車両の走行状態に応じて前記第1定速制御と前記第2定速制御との間で前記走行支援制御を切り替えるように構成されている。
更に、前記制御手段は、前記第2定速制御の実行が要求され且つ前記検出装置が前記先行車を検出していない場合、前記第2定速制御を実行するように構成されている。更に、前記制御手段は、前記第2定速制御の実行が要求され且つ前記検出装置が前記先行車を検出した場合において、(i)前記先行車と前記自車両の間の前方車間距離が前記所定先行車判定距離よりも短い所定前方中距離よりも長い場合、前記第2定速制御として、第1加減速制御を実行し、(ii)前記前方車間距離が前記所定前方中距離以下である場合、前記第2定速制御として、前記第1加減速制御とは異なる第2加減速制御を実行する、ように構成されている。
【0007】
一般に、車速を或る特定の車速に制御する場合、広い幅の車速変動を許容しつつ車速を制御するほうが車両に与える駆動力(車両駆動力)を出力させるために駆動装置の作動を制御するときの制御の自由度が増す。その結果、エネルギー効率がより高くなる制御を駆動装置に対する制御として選択することができる。本発明によれば、許容される車速変動の幅がより狭い第1車速範囲を基準とした第1定速制御と、許容される車速変動の幅がより広い第2車速範囲を基準とした第2定速制御と、が走行支援制御として用意されており、自車両の走行状態に応じて第2定速制御が実行される。このため、より高いエネルギー効率で自車両の車速を設定車速に制御しつつ自車両を走行させることができる。
【0008】
尚、本発明に係る車両運転支援装置において、前記検出装置は、前記自車両と同一の車線を走行する車両であって前記自車両の後方の所定後続車判定距離内を走行する車両である後続車を検出するように構成されてもよい。この場合、前記制御手段は、前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されていない場合、前記第1定速制御を実行し、前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合、前記第2定速制御を実行するように構成されてもよい。
【0009】
先行車も後続車も存在しない場合、比較的大きな車速変動の幅を許容しつつ自車両の車速を制御しても、自車両と先行車との間の距離や自車両と後続車との間の距離が極端に短くなってしまうような事態が生じることはない。本発明によれば、先行車も後続車も存在しないときに第2定速制御の実行が要求されている場合、第2定速制御が実行される。このため、自車両と先行車との間の距離や自車両と後続車との間の距離が極端に短くなってしまうような事態を招くことなく、第2走行制御を実行することができる。
【0010】
又、前記第2定速制御は、例えば、前記自車両の車速を低下させるための減速制御と、前記自車両の車速を上昇させるための加速制御と、を含んでいる。この場合、前記制御手段は、前記第2定速制御の実行時、前記自車両の車速が上昇して前記第2車速範囲の上限値に達した場合、前記減速制御を実行し、前記自車両の車速が低下して前記第2車速範囲の下限値に達した場合、前記加速制御を実行するように構成されてもよい。
【0011】
本発明によれば、自車両の車速が上昇して第2車速範囲の上限値に達すると、減速制御が実行されて自車両の車速が低下し、自車両の車速が第2車速範囲の下限値に達すると、加速制御が実行されて自車両の車速が上昇する。このため、少なくとも、自車両の平均車速が設定車速近傍に制御される。
【0012】
又、本発明に係る車両運転支援装置において、前記検出装置は、前記自車両と同一の車線を走行する車両であって前記自車両の後方の所定後続車判定距離内を走行する車両である後続車を検出するように構成されてもよい。この場合、前記制御手段は、前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されていない場合、前記第1定速制御を実行し、前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合、前記第2定速制御を実行するように構成されてもよい。更に、前記制御手段は、前記先行車が存在し且つ前記後続車が存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されており且つ前記前方車間距離が前記所定前方中距離よりも長い場合であって、前記自車両の車速が前記先行車の車速よりも速く且つそれら車速の差が所定前方接近車速差よりも大きい場合、前記自車両の車速を低下させるための減速制御を実行し、前記先行車が存在し且つ前記後続車が存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されており且つ前記前方車間距離が前記所定前方中距離よりも長い場合であって、前記自車両の車速が前記先行車の車速よりも遅く且つそれら車速の差が所定前方離間車速差よりも大きく且つ前記自車両の車速が前記第2車速範囲の下限値よりも遅い場合、前記自車両の車速を上昇させるための加速制御を実行するように構成されてもよい。
【0013】
自車両の車速が先行車の車速よりも速く且つそれら車速の差が大きい場合、自車両と先行車との間の距離が極端に短くなってしまう可能性がある。こうした場合、本発明によれば、減速制御が実行される。このため、自車両と先行車との間の距離が極端に短くなることを防止することができる。
【0014】
又、自車両の車速が先行車の車速よりも遅く且つそれら車速の差が大きく且つ自車両の車速が遅すぎる(自車両の車速が第2車速範囲の下限値よりも遅い)場合、自車両と先行車との間の距離が極端に長くなってしまう可能性がある。こうした場合、本発明によれば、加速制御が実行される。このため、自車両と先行車との間の距離が極端に長くなることを防止することができる。
【0015】
又、本発明に係る車両運転支援装置において、前記検出装置は、前記自車両と同一の車線を走行する車両であって前記自車両の後方の所定後続車判定距離内を走行する車両である後続車を検出するように構成されてもよい。又、前記走行支援制御は、例えば、前記前方車間距離が設定前方車間距離に維持されるように前記自車両の加速度を自動で制御する追従走行制御を含んでいる。この場合、前記制御手段は、前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されていない場合、前記第1定速制御を実行し、前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合、前記第2定速制御を実行するように構成されてもよい。更に、前記制御手段は、前記先行車が存在し且つ前記後続車が存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されており且つ前記前方車間距離が前記所定前方中距離よりも長い場合であって、前記自車両の車速が前記先行車の車速よりも速く且つそれら車速の差が所定前方接近車速差よりも大きい場合、前記自車両の車速を低下させるための減速制御を実行し、前記先行車が存在し且つ前記後続車が存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されており且つ前記前方車間距離が前記所定前方中距離以下である場合であって、前記所定前方中距離よりも短い所定前方近距離よりも長い場合、前記減速制御を実行し、前記先行車が存在し且つ前記後続車が存在しない場合において、前記前方車間距離が前記所定前方近距離以下である場合、前記第2定速制御の実行が要求されている場合でも、前記追従走行制御を実行するように構成されてもよい。
【0016】
自車両と先行車との間の距離が比較的短い状況下(前方車間距離が所定前方中距離よりも長いが所定先行車判定距離以下である状況下)において、自車両の車速が先行車の車速よりも速く且つそれら車速の差が大きい場合、自車両が先行車に非常に接近してしまう可能性がある。こうした場合、本発明によれば、減速制御が実行される。このため、自車両が先行車に非常に接近してしまうことを防止することができる。
【0017】
又、自車両と先行車との間の距離が非常に短いとき(前方車間距離が所定前方近距離よりも長いが所定前方中距離以下であるとき)に状況の変化が生じると、その変化が小さいものでも、自車両が先行車に接近し、場合によっては、自車両が先行車に接触してしまう虞がある。こうした場合、自車両の車速が先行車の車速よりも速いか否か等を考慮する以前に、自車両の車速を低下させて自車両と先行車との接触を避けることが望ましい。本発明によれば、減速制御が実行される。このため、自車両と先行車との接触を防止することができる。
【0018】
又、自車両と先行車との間の距離が極めて短くなってしまった場合(前方車間距離が所定前方近距離以下になってしまった場合)、減速制御を実行して単に自車両の車速を低下させても、先行車の車速が急減速したりすれば、自車両が先行車に接触してしまう虞がある。こうした場合、本発明によれば、追従走行制御が実行される。これによれば、自車両と先行車との間の距離に応じて自車両が減速されるので、自車両と先行車との接触を防止することができる。
【0019】
又、本発明に係る車両運転支援装置において、前記検出装置は、前記自車両と同一の車線を走行する車両であって前記自車両の後方の所定後続車判定距離内を走行する車両である後続車を検出するように構成されてもよい。この場合、前記制御手段は、前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されていない場合、前記第1定速制御を実行し、前記先行車も前記後続車も存在しない場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合、前記第2定速制御を実行するように構成されてもよい。更に、前記制御手段は、前記先行車が存在せず且つ前記後続車が存在する場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合であって、前記自車両と前記後続車との間の後方車間距離が前記所定後続車判定距離よりも短い所定後方近距離よりも長く且つ前記自車両の車速が前記後続車の車速よりも遅く且つそれら車速の差が所定後方接近車速差よりも大きい場合、前記自車両の車速を上昇させるための加速制御を実行し、前記先行車が存在せず且つ前記後続車が存在する場合において、前記第2定速制御の実行が要求されている場合であって、前記後方車間距離が前記所定後方近距離以下であり且つ前記自車両の車速が前記第2車速範囲の上限値よりも遅い場合、前記加速制御を実行し、前記先行車が存在せず且つ前記後続車が存在する場合において、前記後方車間距離が前記所定後方近距離以下であり且つ前記自車両の車速が前記第2車速範囲の上限値以上である場合、前記第2定速制御の実行が要求されている場合でも、前記第1定速制御を実行するように構成されてもよい。
【0020】
自車両と後続車との間の距離が比較的短い状況下(後方車間距離が所定後方近距離よりも長いが所定後続車判定距離以下である状況下)において、自車両の車速が後続車の車速よりも遅く且つそれら車速の差が大きい場合、後続車が自車両に非常に接近してしまう可能性がある。こうした場合、本発明によれば、加速制御が実行される。このため、後続車が自車両に非常に接近することを防止することができる。
【0021】
又、自車両と後続車との間の距離が非常に短いとき(後方車間距離が所定後方近距離以下であるとき)に状況の変化が生じると、その変化が小さいものでも、後続車が自車両に近接し、場合によっては、後続車が自車両に接触してしまう虞がある。こうした場合、自車両の車速が許容範囲を超えて速くなければ(自車両の車速が第2車速範囲の上限値よりも遅ければ)、自車両の車速を上昇させて後続車と自車両との接触を避けることが望ましい。本発明によれば、自車両の車速が許容範囲を超えて速くない場合、加速制御が実行される。このため、後続車と自車両との接触を防止することができる。
【0022】
又、上述したように、自車両と後続車との間の距離が非常に短い場合(後方車間距離が所定後方近距離以下である場合)、後続車が自車両に接触してしまう虞があるので、そうした接触を避けるためには、加速制御を実行することが有効ではあるが、このとき、自車両の車速が第2車速範囲の上限値を超えていると、自車両の車速がその上限値を大きく超えてしまうので、自車両の平均車速が設定車速近傍に制御されなくなってしまう。従って、自車両の平均車速を設定車速近傍に制御するという観点では、加速制御を実行するのは好ましくない。一方、自車両の車速が第2車速範囲の上限値を超えているにもかかわらず自車両と後続車との間の距離が非常に短い場合(後方車間距離が所定後方近距離以下であり且つ自車両の車速が第2車速範囲の上限値以上である場合)、後続車の車速自体が速すぎる可能性があり、こうした場合に第2車速範囲の上限値や下限値を閾値として用いて自車両の車速を制御していると、自車両の車速の変動幅が大きくなるので、かえって、後続車が自車両に接触する可能性を高めてしまう可能性がある。こうした場合、本発明によれば、第1定速制御が実行される。このため、後続車が自車両に接触することを避けつつ自車両の車速を設定車速に制御することができる。
【0023】
又、本発明に係る車両運転支援装置において、前記走行支援制御は、例えば、前記先行車と前記自車両との間の前方車間距離が設定前方車間距離に維持されるように前記自車両の加速度を自動で制御する追従走行制御を含んでいる。この場合、前記制御手段は、前記先行車が存在する場合において、前記第2定速制御の実行が要求されていない場合、前記追従走行制御を実行するように構成されてもよい。
【0024】
これにより、先行車が存在するときに第2定速制御の実行が要求されていなければ、自車両を先行車に追従して走行させることができる。
【0025】
又、本発明に係る車両運転支援装置は、前記自車両に与える駆動力を出力する駆動装置を備えていてもよい。この場合、前記制御手段は、前記第1定速制御の実行時、前記自車両の車速が前記設定車速に収束する速度が所定速度以上となるように前記自車両の加速及び減速を行い、前記第2定速制御の実行時、前記駆動装置が前記駆動力を出力するときの該駆動装置のエネルギー効率が所定効率以上となるように前記自車両の加速及び減速を行うように構成されてもよい。
【0026】
これによれば、第1定速制御が実行される場合、設定車速への自車両の車速の収束速度が所定速度以上となるように自車両の加速及び減速が行われるので、第2定速制御が実行される場合よりも、自車両の車速を小さい車速変動の幅で設定車速に制御することができる。又、第2定速制御が実行される場合、駆動装置が駆動力を出力するときの駆動装置のエネルギー効率が所定効率以上となるように自車両の加速及び減速が行われるので、第1定速制御が実行される場合よりも、高いエネルギー効率で自車両の車速を設定車速に制御することができる。
又、本発明に係る車両運転支援装置において、前記第1加減速制御は、例えば、前記自車両と前記先行車の相対位置関係の変化状況に応じて前記自車両の車速を上昇させるための加速制御又は前記自車両の車速を低下させるための減速制御を実行する制御であり、前記第2加減速制御は、例えば、前記自車両と前記先行車との相対位置に応じて前記減速制御又は前記前方車間距離が設定前方車間距離に維持されるように前記自車両の加速度を自動で制御する追従走行制御を実行する制御である。
又、本発明に係る車両運転支援装置において、前記制御手段は、前記第1加減速制御において、前記自車両が前記先行車に所定前方接近車速よりも速い速度で接近しつつある場合、前記減速制御を実行し、前記自車両が前記先行車から所定前方離間車速よりも速い速度で離されつつある場合、前記加速制御を実行するように構成されてもよい。
【0027】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置及びその車両運転支援装置が搭載された車両(自車両)を示した図である。
【
図2】
図2は、前方車間距離及び後方車間距離を示した図である。
【
図3】
図3の(A)は、通常定速制御(第1定速制御)が実行されているときの自車両の車速等を示した図であり、
図3の(B)は、エコ定速制御(第2定速制御)が実行されているときの自車両の車速等を示した図である。
【
図4】
図4の(A)は、自車両の車速が先行車の車速よりも速い状態で第1加減速制御が実行されているときの自車両の車速等を示した図であり、
図4の(B)は、自車両の車速が先行車の車速よりも遅い状態で第1加減速制御が実行されているときの自車両の車速等を示した図である。
【
図5】
図5は、第2加減速制御が実行されているときの前方車間距離等を示した図である。
【
図6】
図6の(A)は、第3加減速制御が実行されているときの自車両の車速等を示した図であり、
図6の(B)は、第4加減速制御が実行されているときの自車両の車速等を示した図である。
【
図7】
図7は、内燃機関のエネルギー効率、モータのエネルギー効率及び要求駆動力を示した図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る車両運転支援装置について説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置10が示されている。車両運転支援装置10は、自車両100に搭載される。
【0030】
<ECU>
車両運転支援装置10は、ECU90を備えている。ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称である。ECU90は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース等を含む。CPUは、ROMに格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。
【0031】
<駆動装置等>
自車両100には、駆動装置21及び制動装置22が搭載されている。
【0032】
<駆動装置>
駆動装置21は、自車両100を走行させるために自車両100に与えられる駆動力を出力する装置であり、例えば、内燃機関及びモータ等である。駆動装置21は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、駆動装置21の作動を制御することにより駆動装置21から出力される駆動力を制御することができる。
【0033】
<制動装置>
制動装置22は、自車両100を制動するために自車両100に与えられる制動力を出力する装置であり、例えば、ブレーキ装置である。制動装置22は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、制動装置22の作動を制御することにより制動装置22から出力される制動力を制御することができる。
【0034】
<前後情報検出装置等>
更に、自車両100には、アクセルペダル31、アクセルペダル操作量センサ32、ブレーキペダル33、ブレーキペダル操作量センサ34、走行支援操作器41、エコ走行操作器42、前後情報検出装置43及び車速検出装置44が搭載されている。
【0035】
<アクセルペダル操作量センサ>
アクセルペダル操作量センサ32は、ECU90に電気的に接続されている。アクセルペダル操作量センサ32は、アクセルペダル31の操作量を検出し、検出した操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてアクセルペダル31の操作量をアクセルペダル操作量APとして取得する。
【0036】
ECU90は、アクセルペダル操作量APがゼロよりも大きい場合、アクセルペダル操作量AP及び自車両100の車速Vownから要求駆動力Pd_reqを演算により取得する。要求駆動力Pd_reqは、駆動装置21に出力が要求されている駆動力である。ECU90は、要求駆動力Pd_reqが出力されるように駆動装置21の作動を制御する。
【0037】
<ブレーキペダル操作量センサ>
ブレーキペダル操作量センサ34は、ECU90に電気的に接続されている。ブレーキペダル操作量センサ34は、ブレーキペダル33の操作量を検出し、検出した操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてブレーキペダル33の操作量をブレーキペダル操作量BPとして取得する。
【0038】
ECU90は、ブレーキペダル操作量BPがゼロよりも大きい場合、ブレーキペダル操作量BPから要求制動力Pb_reqを演算により取得する。要求制動力Pb_reqは、制動装置22に出力が要求されている制動力である。ECU90は、要求制動力Pb_reqが出力されるように制動装置22の作動を制御する。
【0039】
<走行支援操作器>
走行支援操作器41は、自車両100の運転者により操作される装置である。走行支援操作器41は、スイッチやボタン等からなる装置である。これらスイッチやボタン等は、例えば、自車両100のステアリングホイールに設けられ、或いは、自車両100のステアリングコラムに取り付けられたレバーに設けられる。
【0040】
本例において、走行支援操作器41は、走行支援選択スイッチ、車速設定スイッチ、車速増加ボタン、車速減少ボタン及び車間距離設定ボタンを含んでいる。走行支援操作器41は、ECU90に電気的に接続されている。
【0041】
後述する走行支援制御が実行されていないときに走行支援選択スイッチが運転者により操作されると、走行支援操作器41からECU90に信号が送信される。ECU90は、その信号を受信した場合、走行支援制御の実行を運転者が要求していると判断する。
【0042】
一方、走行支援制御が実行されているときに走行支援選択スイッチが運転者により操作されると、走行支援操作器41からECU90に信号が送信される。ECU90は、その信号を受信した場合、走行支援制御の終了を運転者が要求していると判断する。
【0043】
又、走行支援制御が実行されているときに車速設定スイッチが運転者により操作されると、走行支援操作器41からECU90に信号が送信される。ECU90は、その信号を受信した場合、その時点の自車両100の車速Vownを走行支援制御における設定車速Vsetとして設定する。
【0044】
又、走行支援制御が実行されているときに車速増加ボタンが運転者により操作されると、走行支援操作器からECU90に信号が送信される。ECU90は、その信号を受信した場合、設定車速Vsetを大きくする。一方、走行支援制御が実行されているときに車速減少ボタンが運転者により操作されると、走行支援操作器41からECU90に信号が送信される。ECU90は、その信号を受信した場合、設定車速Vsetを小さくする。
【0045】
又、走行支援制御が実行されているときに車間距離設定ボタンが運転者により操作されると、走行支援操作器41からECU90に信号が送信される。この信号は、運転者が車間距離設定ボタンを操作することにより走行支援制御の追従走行制御における自車両100と先行車200frとの間の距離(前方車間距離Dfr)として要求している距離(要求前方車間距離Dfr_req)を表す信号(要求車間距離信号)である。
【0046】
前方車間距離Dfrは、
図2に示したように、自車両100と先行車200frとの間の距離である。又、本例において、先行車200frは、自車両100が走行している車線(自車線LN)を自車両100の前方で走行する車両であって、自車両100からの距離(前方車間距離Dfr)が所定先行車判定距離Dfr_th以下である車両である。
【0047】
又、本例において、運転者が車間距離設定ボタンを操作することにより選択可能な要求前方車間距離Dfr_reqは、長めの距離、中程度の距離及び短めの距離の3種類である。
【0048】
ECU90は、要求車間距離信号を受信した場合、そのときの自車両100の車速Vownを考慮せずに、要求前方車間距離Dfr_reqとして要求している距離を設定前方車間距離Dfr_setとして設定してもよいが、本例においては、そのときの車速Vown及び要求前方車間距離Dfr_reqに基づいて設定前方車間距離Dfr_setを設定する。
【0049】
具体的には、ECU90は、そのときの車速Vownで除して得られる時間(到達予測時間TTC)が予め定められている時間(所定到達予測時間TTCref)となる前方車間距離Dfrを設定前方車間距離Dfr_setとして設定する。即ち、ECU90は、そのときの車速Vownと所定到達予測時間TTCrefと前方車間距離Dfrとの関係が下式1の関係となる前方車間距離Dfrを設定前方車間距離Dfr_setとして設定する。
【0050】
TTCref=Dfr/Vown …(1)
【0051】
所定到達予測時間TTCrefは、要求前方車間距離Dfr_reqが長めの距離である場合、長めの時間TTClongであり、要求前方車間距離Dfr_reqが中程度の距離である場合、中程度の時間TTCmidであり、要求前方車間距離Dfr_reqが短めの距離である場合、短めの時間TTCshortである。
【0052】
尚、所定先行車判定距離Dfr_thは、設定前方車間距離Dfr_setよりも長い距離となるように定められている。
【0053】
<エコ走行操作器>
エコ走行操作器42は、自車両100の運転者により操作される装置である。エコ走行操作器42は、スイッチやボタン等からなる装置である。これらスイッチやボタン等は、例えば、自車両100のステアリングホイールに設けられ、或いは、自車両100のステアリングコラムに取り付けられたレバーに設けられる。
【0054】
エコ走行操作器42は、それがオフ位置に操作された状態にあるときに操作されるとオン位置となる。エコ走行操作器42は、オン位置に操作されると、特定の信号をECU90に送信する。ECU90は、その信号を受信した場合、後述するエコ定速制御(第2定速制御)の実行を運転者が要求していると判断する。ECU90は、エコ定速制御(第2定速制御)の実行を運転者が要求していると判断した場合、エコ走行条件Cecoが成立していると判断する。
【0055】
一方、エコ走行操作器42は、それがオン位置に操作されている状態にあるときに操作されるとオフ位置となる。エコ走行操作器42は、オフ位置に操作されると、特定の信号をECU90に送信する。ECU90は、その信号を受信した場合、エコ定速制御(第2定速制御)の実行を運転者が要求していないと判断する。ECU90は、エコ定速制御(第2定速制御)の実行を運転者が要求していないと判断した場合、エコ走行条件Cecoが成立していないと判断する。
【0056】
<前後情報検出装置>
前後情報検出装置43は、自車両100の前方及び後方の情報を検出する装置である。前後情報検出装置43は、例えば、カメラ、レーダセンサ(ミリ波レーダ等)、超音波センサ(クリアランスソナー)及びレーザーレーダ(LiDAR)等の装置である。
【0057】
前後情報検出装置43は、ECU90に電気的に接続されている。前後情報検出装置43は、自車両100の前方の情報(前方情報)及び自車両100の後方の情報(後方情報)をECU90に送信する。ECU90は、前方情報から先行車200frと自車両100との間の距離(前方車間距離Dfr)、及び、先行車200frの車速Vfr等を取得する。又、ECU90は、後方情報から後続車200rrと自車両100との間の距離(後方車間距離Drr)、及び、後続車200rrの車速Vrr等を取得する。
【0058】
後方車間距離Drrは、
図2に示したように、自車両100と後続車200rrとの間の距離である。又、本例において、後続車200rrは、自車両100が走行している車線(自車線LN)を自車両100の後方で走行する車両であって、自車両100からの距離(後方車間距離Drr)が所定後続車判定距離Drr_th以下である車両である。
【0059】
<車速検出装置>
車速検出装置44は、自車両100の車速Vownを検出する装置であり、例えば、車輪速センサである。車速検出装置44は、ECU90に電気的に接続されている。車速検出装置44は、自車両100の車速Vownを検出し、その車速Vownの情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて車速Vownを取得する。
【0060】
<車両運転支援装置の作動の概要>
次に、車両運転支援装置10の作動の概要について説明する。車両運転支援装置10は、走行支援制御の実行が要求されている場合、走行支援制御を実行する。走行支援制御は、通常走行支援制御及びエコ走行支援制御を含んでいる。通常走行支援制御は、追従走行制御及び通常定速制御(第1定速制御)を含んでおり、エコ走行支援制御は、エコ定速制御(第2定速制御)、第1加減速制御、第2加減速制御、第3加減速制御及び第4加減速制御を含んでいる。
【0061】
<通常走行支援制御>
車両運転支援装置10は、走行支援実行条件Caccが成立したときにエコ走行条件Cecoが成立していない場合、通常走行支援制御を実行する。
【0062】
車両運転支援装置10は、走行支援制御の実行を運転者が要求したと判断した場合、アクセルペダル31又はブレーキペダル33が運転者により操作されているか否かを問わず、走行支援実行条件Caccが成立したと判断するように構成されてもよいが、本例においては、走行支援制御の実行を運転者が要求したと判断したときにアクセルペダル31もブレーキペダル33も運転者により操作されていない場合、走行支援実行条件Caccが成立したと判断する。
【0063】
又、車両運転支援装置10は、走行支援制御を実行しているときに走行支援制御の終了を運転者が要求していると判断した場合、走行支援実行条件Caccが不成立となった、即ち、走行支援制御を終了する条件(走行支援制御終了条件Cend)が成立したと判断する。又、車両運転支援装置10は、走行支援制御を実行しているときにアクセルペダル31又はブレーキペダル33が運転者により操作された場合も、走行支援実行条件Caccが不成立となったと判断する。
【0064】
車両運転支援装置10は、先行車200frが存在するときには、通常走行支援制御として追従走行制御を実行する。尚、車両運転支援装置10は、自車線LNを自車両100の前方で走行する車両であって、前方車間距離Dfrが所定先行車判定距離Dfr_th以下である車両が存在する場合、先行車200frが存在すると判断する。
【0065】
一方、車両運転支援装置10は、先行車200frが存在しないときには、通常走行支援制御として通常定速制御(第1定速制御)を実行する。
【0066】
尚、車両運転支援装置10は、前方車間距離Dfrが所定先行車判定距離Dfr_th以下である場合、先行車200frが存在すると判断する。
【0067】
<追従走行制御>
車両運転支援装置10は、追従走行制御を実行する場合、前方車間距離Dfrが設定前方車間距離Dfr_setに維持されるように、言い換えれば、到達予測時間TTCが所定到達予測時間TTCrefに維持されるように自車両100を加速したり減速したりする。
【0068】
本例において、車両運転支援装置10は、追従走行制御の実行時、到達予測時間TTCを所定到達予測時間TTCrefに制御するために必要な自車両100の加速度Gを要求加速度Greqとして算出する。このとき、車両運転支援装置10は、到達予測時間TTCが所定到達予測時間TTCrefに収束する速度(収束速度)が所定速度以上となるように要求加速度Greqを算出する。
【0069】
そして、車両運転支援装置10は、その要求加速度Greqを達成するための要求駆動力Pd_req又は要求制動力Pb_reqを算出し、その要求駆動力Pd_req又は要求制動力Pb_reqが出力されるように駆動装置21及び/又は制動装置22の作動を制御することにより自車両100を加速したり減速したりする。従って、上述したように、車両運転支援装置10は、到達予測時間TTCが所定到達予測時間TTCrefに収束する速度が所定速度以上となるように要求加速度Greqを算出するので、結果的に、到達予測時間TTCが所定到達予測時間TTCrefに収束する速度が所定速度以上となるように加速及び減速を行うことになる。
【0070】
<通常定速制御(第1定速制御)>
又、車両運転支援装置10は、通常定速制御(第1定速制御)を実行する場合、自車両100の車速Vownが設定車速Vsetに維持されるように自車両100を加速したり減速したりする。具体的には、
図3の(A)に示したように、車両運転支援装置10は、車速Vownが低下して設定車速Vsetを下回った場合、自車両100を加速して車速Vownを上昇させ、車速Vownが上昇して設定車速Vsetを上回った場合、自車両100を減速して車速Vownを低下させる。
【0071】
本例において、車両運転支援装置10は、通常定速制御の実行時、自車両100の車速Vownを設定車速Vsetに制御するために必要な自車両100の加速度Gを要求加速度Greqとして算出する。このとき、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが設定車速Vsetに収束する速度(収束速度)が所定速度以上となるように要求加速度Greqを算出する。
【0072】
そして、車両運転支援装置10は、その要求加速度Greqを達成するための要求駆動力Pd_req又は要求制動力Pb_reqを算出し、その要求駆動力Pd_req又は要求制動力Pb_reqが出力されるように駆動装置21及び/又は制動装置22の作動を制御することにより自車両100を加速したり減速したりする。従って、上述したように、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが設定車速Vsetに収束する速度が所定速度以上となるように要求加速度Greqを算出するので、結果的に、自車両100の車速Vownが設定車速Vsetに収束する速度が所定速度以上となるように加速及び減速を行うことになる。
【0073】
尚、本例において、車両運転支援装置10は、通常定速制御(第1定速制御)の実行時、設定車速Vsetを基準として自車両100を加速したり減速したりしているが、例えば、自車両100を加速するか減速するかを判断する基準として設定車速Vsetを含む車速範囲(第1車速範囲R1)を設定車速Vsetに応じて決定し、車速Vownが低下して第1車速範囲R1の下限値Vlow1を下回った場合、自車両100を加速して車速Vownを上昇させ、車速Vownが上昇して第1車速範囲R1の上限値Vup1を上回った場合、自車両100を減速して車速Vownを低下させるように構成されてもよい。これによれば、自車両100の平均車速Vave(車速Vownの平均値)が設定車速Vset近傍に制御される。
【0074】
<エコ走行支援制御>
一方、車両運転支援装置10は、走行支援実行条件Caccが成立したときにエコ走行条件Cecoが成立している場合、エコ走行支援制御を実行する。このとき、車両運転支援装置10は、先行車200frの有無及び後続車200rrの有無等に応じたエコ走行支援制御を実行する。
【0075】
<エコ定速制御(第2定速制御)>
車両運転支援装置10は、エコ走行支援制御を実行するときに先行車200frも後続車200rrも存在しない場合、エコ走行支援制御としてエコ定速制御(第2定速制御)を実行する。
【0076】
車両運転支援装置10は、エコ定速制御(第2定速制御)の実行時、自車両100を加速するか減速するかを判断する基準として設定車速Vsetを含む車速範囲(第2車速範囲R2)を設定車速Vsetに応じて決定する。
【0077】
そして、車両運転支援装置10は、
図3の(B)に示したように、車速Vownが低下して第2車速範囲R2の下限値Vlow2を下回った場合、自車両100を加速して車速Vownを上昇させ、車速Vownが上昇して第2車速範囲R2の上限値Vup2を上回った場合、自車両100を減速して車速Vownを低下させる。これによれば、自車両100の平均車速Vave(車速Vownの平均値)が設定車速Vset近傍に制御される。
【0078】
本例において、第2車速範囲R2は、第1車速範囲R1よりも広い範囲に設定される。又、設定車速Vsetが同じ値である場合、第2車速範囲R2の上限値Vup2は、第1車速範囲R1の上限値Vup1よりも大きい値に設定され、第2車速範囲R2の下限値Vlow2は、第1車速範囲R1の下限値Vlow1よりも小さい値に設定される。
【0079】
又、本例において、車両運転支援装置10は、エコ定速制御(第2定速制御)の実行時、自車両100を加速させる場合、そのときの自車両100の車速Vownを考慮したときに駆動装置21が駆動力Pdを出力するときの当該駆動装置21のエネルギー効率が所定効率以上となる自車両100の加速度Gを要求加速度Greqとして算出する。
【0080】
そして、車両運転支援装置10は、その要求加速度Greqを達成するための要求駆動力Pd_reqを算出し、その要求駆動力Pd_reqが出力されるように駆動装置21の作動を制御することにより自車両100を加速する。従って、上述したように、車両運転支援装置10は、駆動装置21が駆動力Pdを出力するときの当該駆動装置21のエネルギー効率が所定効率以上となるように要求加速度Greqを算出するので、結果的に、駆動装置21が駆動力Pdを出力するときの当該駆動装置21のエネルギー効率が所定効率以上となるように自車両100の加速を行うことになる。
【0081】
一方、車両運転支援装置10は、本例のエコ定速制御(第2定速制御)の実行時、自車両100を減速させる場合、要求駆動力Pd_reqがゼロとなる加速度Gを要求加速度Greqとして算出する。
【0082】
そして、車両運転支援装置10は、その要求加速度Greqを達成するための要求駆動力Pd_reqを算出し、その要求駆動力Pd_reqが駆動装置21から出力されるよう(即ち、駆動装置21から出力される駆動力Pdがゼロとなるよう)に駆動装置21の作動を制御することにより自車両100を減速する。言い換えれば、車両運転支援装置10は、自車両100を惰行させる。
【0083】
尚、駆動装置21がモータを含んでいる場合、車両運転支援装置10は、本例のエコ定速制御(第2定速制御)の実行時、自車両100を減速させる場合、自車両100の走行エネルギーによりモータを回転させて電力を回生することにより自車両100を減速させるように構成されてもよい。
【0084】
<その他のエコ走行支援制御>
一方、車両運転支援装置10は、エコ走行支援制御を実行するときに先行車200frは存在するが後続車200rrは存在しない場合、前方車間距離Dfrが所定前方中距離Dfr_midよりも長いか否かを判断する。所定前方中距離Dfr_midは、所定先行車判定距離Dfr_thよりも短い距離に設定されている。
【0085】
<第1加減速制御>
車両運転支援装置10は、前方車間距離Dfrが所定前方中距離Dfr_midよりも長いと判断した場合、以下に述べる第1加減速制御を実行する。
【0086】
即ち、車両運転支援装置10は、第1加減速制御の実行時、まず、自車両100が先行車200frに比較的速い速度で接近しつつあるか否かを判断する。具体的には、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが先行車200frの車速Vfrよりも速く且つそれら車速の差ΔVfrが所定前方接近車速差ΔVfr_aよりも大きいか否かを判断する。
【0087】
図4の(A)に示したように、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが先行車200frの車速Vfrよりも速く且つそれら車速の差ΔVfrが所定前方接近車速差ΔVfr_aよりも大きいと判断した場合(
図4の(A)の時刻t40)、自車両100を減速させて自車両100の車速Vownを低下させる。
【0088】
このとき、車両運転支援装置10は、先に述べたように、自車両100が惰行するように駆動装置21の作動を制御することにより自車両100を減速させる。
【0089】
一方、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが先行車200frの車速Vfrよりも速く且つそれら車速の差ΔVfrが所定前方接近車速差ΔVfr_aよりも大きいとは判断しなかった場合、自車両100の車速Vownが非常に遅く、自車両100が先行車200frから比較的速い速度で離されつつあるか否かを判断する。具体的には、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の下限値Vlow2よりも低く且つ自車両100の車速Vownが先行車200frの車速Vfrよりも遅く且つそれら車速の差ΔVfrが所定前方離間車速差ΔVfr_bよりも大きいか否かを判断する。
【0090】
所定前方離間車速差ΔVfr_bは、所定前方接近車速差ΔVfr_aと同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
【0091】
図4の(B)に示したように、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の下限値Vlow2よりも低く且つ自車両100の車速Vownが先行車200frの車速Vfrよりも遅く且つそれら車速の差ΔVfrが所定前方離間車速差ΔVfr_bよりも大きいと判断した場合(
図4の(B)の時刻t41)、自車両100を加速させて自車両100の車速Vownを上昇させる。
【0092】
このときも、車両運転支援装置10は、先に述べたように、そのときの自車両100の車速Vownを考慮したときに駆動装置21が駆動力Pdを出力するときの当該駆動装置21のエネルギー効率が所定効率以上となる自車両100の加速度Gを要求加速度Greqとして算出する。
【0093】
そして、車両運転支援装置10は、その要求加速度Greqを達成するための要求駆動力Pd_reqを算出し、その要求駆動力Pd_reqが出力されるように駆動装置21の作動を制御することにより自車両100を加速する。
【0094】
一方、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の下限値Vlow2よりも低く且つ自車両100の車速Vownが先行車200frの車速Vfrよりも遅く且つそれら車速の差ΔVfrが所定前方離間車速差ΔVfr_bよりも大きいとは判断しなかった場合、自車両100を加速しているときには自車両100の加速を継続し、自車両100を減速しているときには自車両100の減速を継続する。
【0095】
<第2加減速制御>
又、車両運転支援装置10は、前方車間距離Dfrが所定前方中距離Dfr_mid以下であると判断した場合、以下に述べる第2加減速制御を実行する。
【0096】
車両運転支援装置10は、第2加減速制御の実行時、まず、前方車間距離Dfrが所定前方近距離Dfr_shortよりも長いか否かを判断する。所定前方近距離Dfr_shortは、所定前方中距離Dfr_midよりも短い距離に設定されている。
【0097】
図5に示したように、車両運転支援装置10は、前方車間距離Dfrが所定前方近距離Dfr_shortよりも長いと判断した場合(
図5の時刻t50以前)、自車両100を減速させて自車両100の車速Vownを低下させる。
【0098】
このとき、車両運転支援装置10は、先に述べたように、自車両100が惰行するように駆動装置21の作動を制御することにより自車両100を減速させる。
【0099】
一方、車両運転支援装置10は、前方車間距離Dfrが所定前方近距離Dfr_short以下であると判断した場合(
図5の時刻t50)、通常走行支援制御を実行する。このとき、先行車200frが存在するので、車両運転支援装置10は、通常走行支援制御として追従走行制御を実行する。
【0100】
<後続車のみ存在する場合>
又、車両運転支援装置10は、エコ走行支援制御を実行するときに先行車200frは存在しないが後続車200rrは存在する場合、後方車間距離Drrが所定後方近距離Drr_shortよりも長いか否かを判断する。所定後方近距離Drr_shortは、所定後続車判定距離Drr_thよりも短い距離に設定されている。
【0101】
<第3加減速制御>
車両運転支援装置10は、後方車間距離Drrが所定後方近距離Drr_shortよりも長いと判断した場合、以下に述べる第3加減速制御を実行する。
【0102】
即ち、車両運転支援装置10は、第3加減速制御の実行時、まず、後続車200rrが自車両100に比較的速い速度で接近しつつあり且つ自車両100の車速Vownの上昇が許容される状況にあるか否かを判断する。具体的には、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが後続車200rrの車速Vrrよりも遅く且つそれら車速の差ΔVrrが所定後方接近車速差ΔVrr_aよりも大きく且つ自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の上限値Vup2よりも低いか否かを判断する。
【0103】
図6の(A)に示したように、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが後続車200rrの車速Vrrよりも遅く且つそれら車速の差ΔVrrが所定後方接近車速差ΔVrr_aよりも大きく且つ自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の上限値Vup2よりも低いと判断した場合(
図6の(A)の時刻t60)、自車両100を加速して自車両100の車速Vownを上昇させる。
【0104】
このときも、車両運転支援装置10は、先に述べたように、そのときの自車両100の車速Vownを考慮したときに駆動装置21が駆動力Pdを出力するときの当該駆動装置21のエネルギー効率が所定効率以上となる自車両100の加速度Gを要求加速度Greqとして算出する。
【0105】
そして、車両運転支援装置10は、その要求加速度Greqを達成するための要求駆動力Pd_reqを算出し、その要求駆動力Pd_reqが出力されるように駆動装置21の作動を制御することにより自車両100を加速する。
【0106】
一方、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが後続車200rrの車速Vrrよりも遅く且つそれら車速の差ΔVrrが所定後方接近車速差ΔVrr_aよりも大きく且つ自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の上限値Vup2よりも低いとは判断しなかった場合、自車両100を加速しているときには自車両100の加速を継続し、自車両100を減速しているときには自車両100の減速を継続する。
【0107】
<第4加減速制御>
又、車両運転支援装置10は、後方車間距離Drrが所定後方近距離Drr_short以下であると判断した場合、以下に述べる第4加減速制御を実行する。
【0108】
即ち、車両運転支援装置10は、第4加減速制御の実行時、まず、自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の上限値Vup2よりも遅いか否かを判断する。
【0109】
図6の(B)に示したように、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の上限値Vup2よりも遅いと判断した場合(
図6の(B)の時刻t61以前)、自車両100を加速して自車両100の車速Vownを上昇させる。
【0110】
このときも、車両運転支援装置10は、先に述べたように、そのときの自車両100の車速Vownを考慮したときに駆動装置21が駆動力Pdを出力するときの当該駆動装置21のエネルギー効率が所定効率以上となる自車両100の加速度Gを要求加速度Greqとして算出する。
【0111】
そして、車両運転支援装置10は、その要求加速度Greqを達成するための要求駆動力Pd_reqを算出し、その要求駆動力Pd_reqが出力されるように駆動装置21の作動を制御することにより自車両100を加速する。
【0112】
一方、車両運転支援装置10は、自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の上限値Vup2以上であると判断した場合(
図6の(B)の時刻t61)、通常走行支援制御を実行する。このとき、先行車200frが存在しないので、車両運転支援装置10は、通常走行支援制御として通常定速制御(第1定速制御)を実行する。
【0113】
<先行車及び後続車が存在する場合>
又、車両運転支援装置10は、走行支援実行条件Caccが成立したときにエコ走行条件Cecoが成立していても、先行車200fr及び後続車200rrが存在する場合、通常走行支援制御を実行する。このとき、先行車200frが存在するので、車両運転支援装置10は、追従走行制御を実行する。
【0114】
<効果>
駆動装置21が駆動力を出力するときのエネルギー効率Eには、駆動装置21が出力する駆動力Pdが特定の値であるときに最も高くなる(ピークとなる)特性がある。例えば、駆動装置21が内燃機関及びモータを含んでいる場合、
図7に示したように、内燃機関が駆動力を出力するときのエネルギー効率Eeng(特に、燃費)は、内燃機関が出力する駆動力Pd_engが或る値Pd_aであるときに最も高くなり、モータが駆動力を出力するときのエネルギー効率Emotor(特に、電費)は、モータが出力する駆動力Pd_motorが上記値Pd_aよりも小さい値Pd_bであるときに最も高くなる。
【0115】
従って、駆動装置21から駆動力を出力させるために駆動装置21の作動が制御されるが、その駆動装置21に対する制御の自由度が大きいほど、よりエネルギー効率が高い状態で駆動装置21を作動させることができる。
【0116】
一般に、車速を或る特定の車速に制御する場合、広い幅の車速変動を許容しつつ車速を制御するほうが車両に与える駆動力(車両駆動力)を出力させるために駆動装置の作動を制御するときの制御の自由度が増す。その結果、エネルギー効率がより高くなる制御を駆動装置に対する制御として選択することができる。車両運転支援装置10によれば、許容される車速変動の幅がより狭い設定車速Vsetを基準とした通常定速制御(第1定速制御)と、許容される車速変動の幅がより広い第2車速範囲R2を基準としたエコ定速制御(第2定速制御)と、が走行支援制御として用意されており、自車両100の走行状態に応じてエコ定速制御が実行される。このため、より高いエネルギー効率で自車両100の車速Vownを設定車速Vset近傍に制御しつつ自車両100を走行させることができる。
【0117】
<車両運転支援装置の具体的な作動>
次に、車両運転支援装置10の具体的な作動について説明する。車両運転支援装置10のECU90のCPUは、
図8に示したルーチンを所定演算時間の経過毎に実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図8のステップ800から処理を開始し、その処理をステップ805に進め、走行支援実行条件Caccが成立しているか否かを判定する。
【0118】
CPUは、ステップ805にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ810に進め、エコ走行条件Cecoが成立しているか否かを判定する。
【0119】
CPUは、ステップ810にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ815に進め、後方車間距離Drrが所定後続車判定距離Drr_thよりも長いか否かを判定する。
【0120】
CPUは、ステップ815にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ820に進め、
図9に示したルーチンを実行する。従って、CPUは、処理をステップ820に進めると、
図9のステップ900から処理を開始し、その処理をステップ905に進め、前方車間距離Dfrが所定先行車判定距離Dfr_thよりも長いか否かを判定する。
【0121】
CPUは、ステップ905にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ910に進め、
図10に示したルーチンを実行することによりエコ定速制御(第2定速制御)を実行する。従って、CPUは、処理をステップ910に進めると、
図10のステップ1000から処理を開始し、その処理をステップ1005に進め、自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の上限値Vup2よりも速いか否かを判定する。
【0122】
CPUは、ステップ1005にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1010に進め、減速制御を実行して自車両100を減速する。
【0123】
本例において、ステップ1010及び後述するステップにて実行される減速制御は、自車両100が惰行するように駆動装置21の作動を制御することにより自車両100を減速させる制御である。従って、減速制御は、惰行制御であるとも言える。
【0124】
その後、CPUは、処理をステップ1095及び
図9のステップ995を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0125】
一方、CPUは、ステップ1005にて「No」と判定した場合、処理をステップ1015に進め、自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の下限値Vlow2よりも遅いか否かを判定する。
【0126】
CPUは、ステップ1015にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1020に進め、加速制御を実行して自車両100を加速する。
【0127】
本例において、ステップ1020及び後述するステップにて実行される加速制御は、そのときの自車両100の車速Vownを考慮したときに駆動装置21が駆動力Pdを出力するときの当該駆動装置21のエネルギー効率が所定効率以上となる自車両100の加速度Gを要求加速度Greqとして算出する。そして、車両運転支援装置10は、その要求加速度Greqを達成するための要求駆動力Pd_reqを算出し、その要求駆動力Pd_reqが出力されるように駆動装置21の作動を制御することにより自車両100を加速する制御である。
【0128】
その後、CPUは、処理をステップ1095及び
図9のステップ995を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0129】
一方、CPUは、ステップ1015にて「No」と判定した場合、処理をステップ1095及び
図9のステップ995を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0130】
又、CPUは、
図9のステップ905にて「No」と判定した場合、処理をステップ915に進め、前方車間距離Dfrが所定前方中距離Dfr_midよりも長いか否かを判定する。
【0131】
CPUは、ステップ915にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ920に進め、
図11に示したルーチンを実行することにより第1加減速制御を実行する。従って、CPUは、処理をステップ920に進めると、
図11のステップ1100から処理を開始し、その処理をステップ1105に進め、自車両100の車速Vownが先行車200frの車速Vfrよりも速く且つそれら車速の差ΔVfrが所定前方接近車速差ΔVfr_aよりも大きいか否かを判定する。
【0132】
CPUは、ステップ1105にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1110に進め、減速制御を実行して自車両100を減速する。
【0133】
その後、CPUは、処理をステップ1195及び
図9のステップ995を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0134】
一方、CPUは、ステップ1105にて「No」と判定した場合、処理をステップ1115に進め、自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の下限値Vlow2よりも遅く且つ自車両100の車速Vownが先行車200frの車速Vfrよりも遅く且つそれら車速の差ΔVfrが所定前方離間車速差ΔVfr_bよりも大きいか否かを判定する。
【0135】
CPUは、ステップ1115にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1120に進め、加速制御を実行して自車両100を加速する。
【0136】
その後、CPUは、処理をステップ1195及び
図9のステップ995を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0137】
一方、CPUは、ステップ1115にて「No」と判定した場合、処理をステップ1195及び
図9のステップ995を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0138】
又、CPUは、
図9のステップ915にて「No」と判定した場合、処理をステップ925に進め、
図12に示したルーチンを実行することにより第2加減速制御を実行する。従って、CPUは、処理をステップ925に進めると、
図12のステップ1200から処理を開始し、その処理をステップ1205に進め、前方車間距離Dfrが所定前方近距離Dfr_shortよりも長いか否かを判定する。
【0139】
CPUは、ステップ1205にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1210に進め、減速制御を実行して自車両100を減速する。
【0140】
その後、CPUは、ステップ1295及び
図9のステップ995を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0141】
一方、CPUは、ステップ1205にて「No」と判定した場合、処理をステップ1215に進め、追従走行制御を実行する。
【0142】
その後、CPUは、処理をステップ1295及び
図9のステップ995を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0143】
又、CPUは、
図8のステップ815にて「No」と判定した場合、処理をステップ825に進め、前方車間距離Dfrが所定先行車判定距離Dfr_thよりも長いか否かを判定する。
【0144】
CPUは、ステップ825にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ830に進め、
図13に示したルーチンを実行することによりエコ走行支援制御を実行する。従って、CPUは、処理をステップ830に進めると、
図13のステップ1300から処理を開始し、その処理をステップ1305に進め、後方車間距離Drrが所定後方近距離Drr_shortよりも長いか否かを判定する。
【0145】
CPUは、ステップ1305にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1310に進め、
図14に示したルーチンを実行することにより第3加減速制御を実行する。従って、CPUは、処理をステップ1310に進めると、
図14のステップ1400から処理を開始し、その処理をステップ1405に進め、自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の上限値Vup2よりも低く且つ自車両100の車速Vownが後続車200rrの車速Vrrよりも遅く且つそれら車速の差ΔVrrが所定後方接近車速差ΔVrr_aよりも大きいか否かを判定する。
【0146】
CPUは、ステップ1405にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1410に進め、加速制御を実行して自車両100を加速する。
【0147】
その後、CPUは、処理をステップ1495及び
図13のステップ1395を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0148】
一方、CPUは、ステップ1405にて「No」と判定した場合、処理をステップ1495及び
図13のステップ1395を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0149】
又、CPUは、ステップ1305にて「No」と判定した場合、処理をステップ1315に進め、
図15に示したルーチンを実行することにより第4加減速制御を実行する。従って、CPUは、処理をステップ1315に進めると、
図15のステップ1500から処理を開始し、その処理をステップ1505に進め、自車両100の車速Vownが第2車速範囲R2の上限値Vup2よりも低いか否かを判定する。
【0150】
CPUは、ステップ1505にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1510に進め、加速制御を実行して自車両100を加速する。
【0151】
その後、CPUは、処理をステップ1595及び
図13のステップ1395を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0152】
一方、CPUは、ステップ1505にて「No」と判定した場合、処理をステップ1515に進め、通常定速制御(第1定速制御)を実行する。
【0153】
その後、CPUは、処理をステップ1595及び
図13のステップ1395を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0154】
又、CPUは、
図8のステップ825にて「No」と判定した場合、処理をステップ835に進め、追従走行制御を実行する。
【0155】
その後、CPUは、処理をステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0156】
又、CPUは、ステップ810にて「No」と判定した場合、処理をステップ840に進め、
図16に示したルーチンを実行することにより通常走行支援制御を実行する。従って、CPU、処理をステップ840に進めると、
図16のステップ1600から処理を開始し、その処理をステップ1605に進め、前方車間距離Dfrが所定先行車判定距離Dfr_thよりも長いか否かを判定する。
【0157】
CPUは、ステップ1605にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1610に進め、追従走行制御を実行する。
【0158】
その後、CPUは、処理をステップ1695を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0159】
一方、CPUは、ステップ1605にて「No」と判定した場合、処理をステップ1615に進め、通常定速制御(第1定速制御)を実行する。
【0160】
その後、CPUは、処理をステップ1695を経由して
図8のステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0161】
又、CPUは、
図8のステップ805にて「No」と判定した場合、処理をステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0162】
以上が、車両運転支援装置10の具体的な作動である。
【0163】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0164】
例えば、車両運転支援装置10は、エコ走行支援制御を実行するときに先行車200frは存在するが後続車200rrは存在しない場合、前方車間距離Dfrが所定前方中距離Dfr_midよりも長いか否かに応じて第1加減速制御又は第2加減速制御を実行するが、エコ走行支援制御を実行するときに先行車200frは存在するが後続車200rrは存在しない場合、前方車間距離Dfrが所定前方中距離Dfr_midよりも長いか否かを問わず、第1加減速制御又は第2加減速制御を実行するように構成されてもよい。
【0165】
又、車両運転支援装置10は、エコ走行支援制御を実行するときに先行車200frは存在しないが後続車200rrは存在する場合、後方車間距離Drrが所定後方近距離Drr_shortよりも長いか否かに応じて第3加減速制御又は第4加減速制御を実行するが、エコ走行支援制御を実行するときに先行車200frは存在しないが後続車200rrは存在する場合、後方車間距離Drrが所定後方近距離Drr_shortよりも長いか否かを問わず、第3加減速制御又は第4加減速制御を実行するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0166】
10…車両運転支援装置、21…駆動装置、22…制動装置、41…走行支援操作器、42…エコ走行操作器、43…前後情報検出装置、44…車速検出装置、90…自車両、100…自車両、200fr…先行車、200rr…後続車