(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】血液処理材料
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240604BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20240604BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240604BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61M1/36 165
B01J20/22 C
B01J20/26 H
B01D15/00 K
(21)【出願番号】P 2020558987
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2020037573
(87)【国際公開番号】W WO2021066152
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2019183381
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 恭平
(72)【発明者】
【氏名】神田 峻吾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049962(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225764(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/049961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
B01J 20/22
B01J 20/26
B01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維形
状の水不溶性材料を含み、
レーザー顕微鏡を用いて算出された前記水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)と最小値(RaB)の差分が0.30~1.50μmであ
り、
前記水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)が最小となるレーザー顕微鏡の測定方向が、繊維長軸方向である、血液処理材料。
【請求項2】
前記差分は、0.33~1.00μmである、請求項1記載の血液処理材料。
【請求項3】
前記最大値(RaA)は、0.50μm以上である、請求項1又は2記載の血液処理材料。
【請求項4】
前記水不溶性材料の表面にアミノ基を含むリガンドが結合し、
前記アミノ基の含量は、前記水不溶性材料の乾燥重量1g当たり0.20~3.00mmolである、請求項1~3のいずれか一項記載の血液処理材料。
【請求項5】
前記水不溶性材料の形状が、海島複合繊維であり、
該海島複合繊維の海成分が、ポリスチレン、ポリスチレンの誘導体、ポリスルホン及びポリスルホンの誘導体並びにそれらの混合物からなる群から選択され、
該海島複合繊維の島成分が、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリプロピレン/ポリエチレン共重合体並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~
4のいずれか一項記載の血液処理材料。
【請求項6】
活性化白血球及び/又は炎症性サイトカインの吸着除去用である、請求項1~
5のいずれか一項記載の血液処理材料。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項記載の血液処理材料を備える、血液浄化カラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液処理材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血液から活性化白血球や炎症性サイトカイン等の血液成分を選択的に分離、吸着する目的で、種々の血液処理材料及び当該材料を充填したカラムが開発されている。
【0003】
血液処理材料の吸着性能を向上させる手段としては、対象物質、例えば炎症性サイトカイン等と相互作用の強いリガンドを材料表面に付与する方法や、材料の血液接触部分における比表面積を向上させる方法が一般的に知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリアリレート樹脂等の疎水性高分子樹脂で形成され、表面の中心線平均粗さが5~100nmであるビーズ形状、中空糸形状、中実糸形状の吸着体が、白血球及び血小板の吸着性をより向上させることができることが開示されている。
【0005】
特許文献2には、不織布基材の少なくとも片面に、面粗さ(Sa)が0.5μm以下である多孔質膜が積層された、所定の透気度や引張強さを有する多孔質膜積層体が医療用フィルターに適用できることが開示されている。
【0006】
特許文献3には、表面に荷電を有する官能基を含む化合物が結合した水不溶性担体であり、上記表面の中心線平均粗さを特定の範囲に規定することで、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去に好適であることが報告されている。
【0007】
特許文献4には、表面に窒素含有化合物が結合した水不溶性担体を含み、上記表面の算術平均粗さを所定の範囲に規定することで、免疫抑制性白血球、特にLAP陽性リンパ球又はLAP陽性単球の吸着に好適であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4473324号
【文献】特許第6284818号
【文献】国際公開2018/225764号
【文献】国際公開2019/049962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、3又は4では、中心線平均粗さや算術平均粗さに着目した技術が開示されている。ここで、中心線平均粗さとは、JIS B 0601:1994に規格されている表面の粗さを定量化する指標である。算術平均粗さとは、JIS B 0601:2001以降に用いられた用語であり、中心線平均粗さと同義である。
【0010】
特許文献1、3及び4では、表面の粗さと吸着性能との関係を開示している。ここで、特許文献1では、ほぼ真円のビーズの表面の中心線平均粗さについて実施例1~3に具体的に開示されており、中心線平均粗さを5~100nmに制御することで白血球と血小板を同時に吸着できる旨が記載されているが、過剰に血小板が吸着体に付着すると材料表面が血小板に覆われてしまい、吸着対象である白血球やサイトカインの吸着が阻害される懸念がある。また、中心線平均粗さの方向と吸着性能との関係に関する記載はない。特許文献3では、材料表面の展開長さ比又は中心線平均粗さと、活性化白血球-活性化血小板複合体の関係について記載があるものの、中心線平均粗さの方向と吸着性能との関係に関する記載はない。特許文献4では、繊維のように配向性のある場合は、算術平均粗さとしては長手方向の値を測定すると記載されているものの、その他の方向での算術平均粗さに関する記載や吸着性能との関係に関する記載はない。
【0011】
一方、特許文献2では、面粗さとろ過時の気泡の付着しやすさやろ過効率との関係を開示しているが、粗さと吸着性能との関係について記載はない。また、不織布の複数本の単糸を含む単位面積当たりの面粗さ(Sa)が記載されているのみであり、単糸当たりの粗さについての記載はない。
【0012】
上記のような担体を充填したカラムを用いて体外循環を行う場合、患者から取り出す血液量が少ないほど患者の負担が軽減できることから、より一層吸着効率の高い担体が求められている。
【0013】
そこで本発明では、活性化白血球や炎症性サイトカイン等の血液成分を高効率に吸着除去する血液処理材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、材料表面の算術平均粗さに異方性を持たせることで、活性化白血球や炎症性サイトカイン等の血液成分を高効率に吸着できることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]を包含する。
[1] 繊維形状の水不溶性材料を含み、レーザー顕微鏡を用いて算出された上記水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)と最小値(RaB)の差分が0.30~1.50μmであり、上記水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)が最小となるレーザー顕微鏡の測定方向が、繊維長軸方向である、血液処理材料。
[2] 上記差分は、0.33~1.00μmである、[1]記載の血液処理材料。
[3] 上記最大値(RaA)は、0.50μm以上である、[1]又は[2]記載の血液処理材料。
[4] 上記水不溶性材料の表面にアミノ基を含むリガンドが結合し、上記アミノ基の含量は、上記水不溶性材料の乾燥重量1g当たり0.20~3.00mmolである、[1]~[3]のいずれかに記載の血液処理材料。
[5] 上記水不溶性材料の形状が、海島複合繊維であり、該海島複合繊維の海成分が、ポリスチレン、ポリスチレンの誘導体、ポリスルホン及びポリスルホンの誘導体並びにそれらの混合物からなる群から選択され、該海島複合繊維の島成分が、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリプロピレン/ポリエチレン共重合体並びにそれらの混合物からなる群から選択される、[1]~[4]のいずれかに記載の血液処理材料。
[6] 活性化白血球及び/又は炎症性サイトカインの吸着除去用である、[1]~[5]のいずれかに記載の血液処理材料。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の血液処理材料を備える、血液浄化カラム。
【発明の効果】
【0016】
本発明の血液処理材料は、活性化白血球や炎症性サイトカインを高効率に吸着でき、体外循環用の吸着担体として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】繊維長軸方向、繊維短軸方向を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明の血液処理材料は、繊維形状又は粒子形状の水不溶性材料を含み、レーザー顕微鏡を用いて算出された上記水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)と最小値(RaB)の差分が0.30~1.50μmであることを特徴としている。
【0020】
「血液処理」とは、血液成分を適切な材料を用いて吸着除去することにより、血液に由来する疾患を持つ患者を治療することを意味する。
【0021】
「血液成分」とは、血液を構成する成分を意味し、例えば、血液中の細胞や血液中の液性因子が挙げられる。
【0022】
「血液中の細胞」とは、血液中に含まれる細胞を意味し、例えば、顆粒球、単球、好中球、好酸球等の白血球成分や、赤血球、血小板、活性化血小板、活性化白血球-活性化血小板複合体等が挙げられるが、本実施形態に係る血液処理材料を炎症性疾患の治療を目的として使用する場合は、吸着対象物質として活性化白血球が好ましい。
【0023】
「血液中の液性因子」とは、血液中に溶解している有機物を指す。具体的には、尿素、β2-ミクログロブリン、サイトカイン、IgE、IgG等のタンパク質、lipopolysaccharide(LPS)等の多糖類が挙げられる。中でも、尿素、サイトカイン等のタンパク質やLPS等の多糖類が吸着対象物質として好ましく、さらに本実施形態に係る血液処理材料を炎症性疾患の治療を目的として使用する場合は、吸着対象物質として炎症性サイトカインがより好ましい。
【0024】
「炎症性サイトカイン」とは、感染や外傷等の刺激により、免疫担当細胞を始めとする各種の細胞から産生され細胞外に放出されて作用する一群のタンパク質を意味し、例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン1~インターロイキン15、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、ハイモビリティーグループボックス-1、エリスロポエチン又は単球走化因子が挙げられる。
【0025】
「血液処理材料」とは、該材料の少なくとも一部に水不溶性材料を含む材料を意味し、水不溶性材料単独及び適当な補強材に水不溶性材料を固定化又は混合されたものも含む。固定化又は混合の操作は、形状に加工する前に行ってもよいし、加工した後に行ってもよい。
【0026】
「水不溶性材料」とは、水に不溶性の材料である。ここで、水に不溶とは、水不溶性材料を水に入れた前後の乾燥重量変化が1%以下であることを意味する。この乾燥重量変化は水不溶性材料を乾燥重量の9倍量の37℃の水に1時間浸漬した後にピンセット等で引き上げ、残った水を50℃以下で真空乾燥させた後に残った固形分の乾燥重量の浸漬前の材料乾燥重量に対する割合である。不溶化されていない場合は、実際に使用する場合の溶出物が多くなる危険性があり、安全上好ましくない。
【0027】
「乾燥重量」とは、乾燥状態の固体の重量を意味する。ここで乾燥状態の固体とは、当該固体中に含まれる液体成分の量が1重量%以下の状態の固体を表し、固体の重量を測定した後に80℃、大気圧で24時間加熱乾燥し、残存した固体の重量減少量が乾燥前の重量の1重量%以下であるとき、当該固体は乾燥状態とみなす。
【0028】
「吸着」とは、物質が材料に付着し、容易に剥離しない状態、又は吸着平衡状態を意味する。吸着の原理に特に制限はないが、例えば、静電相互作用、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等の分子間力によって付着した状態や、細胞の接着や白血球の貪食等、物理的に付着している状態を意味する。
【0029】
水不溶性材料を構成する成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ芳香族ビニル化合物、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン及びそれらの誘導体(例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェノール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエチニレン、ポリアミドイミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(4-メチルスチレン)、ポリ(4-エチルスチレン)、ポリ(4-イソプロピルスチレン)、ポリ(2-クロロスチレン)、ポリ(4-クロロスチレン)、ポリ(3-ヒドロキシスチレン)、ポリ(4-メトキシスチレン)、ポリ(4-カルボキシスチレン)、ポリ(4-ニトロスチレン)、ポリ(4-クロロメチルスチレン)、ポリ(2,4-ジメチルスチレン)、ポリ(2,5-ジクロロスチレン)、ポリ(2,4,5-トリブロモスチレン)、ポリ(2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン)が挙げられるが、これらに特に限定されない。)、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、並びに、これらの単独重合体、共重合体、混合物からなる群から選択されるポリマーが挙げられ、リガンドを表面に結合させる場合には、単位重量当たりの芳香環の数が多く、アミノ基を固定化しやすいことから、ポリスチレン、ポリスチレンの誘導体、ポリスルホン、ポリスルホンの誘導体、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルスルホンの誘導体並びにそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーであることが好ましく、ポリスチレン、ポリスチレンの誘導体、ポリスルホン及びポリスルホンの誘導体並びにそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーであることがより好ましく、ポリスチレンがさらに好ましい。ポリスチレンの誘導体としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(4-メチルスチレン)、ポリ(4-エチルスチレン)、ポリ(4-イソプロピルスチレン)、ポリ(2-クロロスチレン)、ポリ(4-クロロスチレン)、ポリ(3-ヒドロキシスチレン)、ポリ(4-メトキシスチレン)、ポリ(4-カルボキシスチレン)、ポリ(4-ニトロスチレン)、ポリ(4-クロロメチルスチレン)、ポリ(2,4-ジメチルスチレン)、ポリ(2,5-ジクロロスチレン)が挙げられ、ポリスルホンの誘導体としては、例えば、スルホン化ポリスルホンが挙げられ、ポリエーテルスルホンの誘導体としては、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホンが挙げられる。
【0030】
水不溶性材料の形状としては、比表面積が大きく、取扱い性に優れる点で繊維形状又は粒子形状が好適である。
【0031】
水不溶性材料が繊維形状である場合、水不溶性材料の形状は、上記繊維を加工した糸束、ヤーン、ネット、編地、織物、フェルト、ネット等が好ましく、比表面積が大きく、流路抵抗の小ささを考慮すると糸束、編地、織物、フェルト、ネットがより好ましい。中でも、編地、フェルト、ネットは、繊維を原料として、公知の方法により製造することができる。フェルトの製造方法としては、例えば、湿式法、カーディング法、エアレイ法、スパンボンド法又はメルトブロー法が挙げられる。また、編地及びネットの製造方法としては、例えば、平織り法又は筒編み法が挙げられる。特に、単位体積当たりの充填重量が多く、血液浄化器に充填する観点から、筒編み法により製造される編地が好ましい。
【0032】
水不溶性材料が繊維形状である場合、単糸あたりの強度を保つ観点から、水不溶性材料の形状は海島複合繊維であることが好ましい。該海島複合繊維には、適当な補強材を固定化又は混合したものを含んでいてもよく、例えば後述の島成分は補強材と見なすことができる。特に水不溶性である島成分を用いた場合、島成分も水不溶性材料の一部とする。
【0033】
海島複合繊維の海成分としては、水に不溶で、リガンドを表面に結合させることのできる構造を有する材質が好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ芳香族ビニル化合物、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン及びそれらの誘導体(例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェノール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエチニレン、ポリアミドイミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(4-メチルスチレン)、ポリ(4-エチルスチレン)、ポリ(4-イソプロピルスチレン)、ポリ(2-クロロスチレン)、ポリ(4-クロロスチレン)、ポリ(3-ヒドロキシスチレン)、ポリ(4-メトキシスチレン)、ポリ(4-カルボキシスチレン)、ポリ(4-ニトロスチレン)、ポリ(4-クロロメチルスチレン)、ポリ(2,4-ジメチルスチレン)、ポリ(2,5-ジクロロスチレン)、ポリ(2,4,5-トリブロモスチレン)、ポリ(2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン)、ポリビニルアルコール、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーが挙げられ、リガンドを表面に結合させる場合には、単位重量当たりの芳香環の数が多く、アミノ基を固定化しやすいことから、ポリスチレン、ポリスチレンの誘導体、ポリスルホン、ポリスルホンの誘導体、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルスルホンの誘導体並びにそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーであることが好ましく、ポリスチレン、ポリスチレンの誘導体、ポリスルホン及びポリスルホンの誘導体並びにそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーであることがより好ましく、ポリスチレンがさらに好ましい。ここでいう誘導体とは、芳香環に1~2個の置換基を有する化合物を指し、ポリスチレンの誘導体としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(4-メチルスチレン)、ポリ(4-エチルスチレン)、ポリ(4-イソプロピルスチレン)、ポリ(2-クロロスチレン)、ポリ(4-クロロスチレン)、ポリ(3-ヒドロキシスチレン)、ポリ(4-メトキシスチレン)、ポリ(4-カルボキシスチレン)、ポリ(4-ニトロスチレン)、ポリ(4-クロロメチルスチレン)、ポリ(2,4-ジメチルスチレン)、ポリ(2,5-ジクロロスチレン)が挙げられ、ポリスルホンの誘導体としては、例えば、スルホン化ポリスルホンが挙げられ、ポリエーテルスルホンの誘導体としては、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホンが挙げられる。
【0034】
海島複合繊維の島成分としては、該繊維の表面(海成分)にリガンドを導入する際に、海成分の膨潤・収縮といった機械的物性変化に追従でき、薬品による化学的・機械的物性の変化が少ない芯材又は補強材の役割を担う観点から、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリプロピレン/ポリエチレン共重合体並びにそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーが挙げられ、複合紡糸において良好な断面を形成できる観点から、ポリプロピレン及びポリプロピレン/ポリエチレン共重合体並びにそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーであることがより好ましく、ポリプロピレンであることがさらに好ましい。
【0035】
海島複合繊維の海成分と島成分との組み合わせとしては、例えば、海成分が、ポリスチレン、ポリスチレンの誘導体、ポリスルホン、ポリスルホンの誘導体、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルスルホンの誘導体並びにそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーであって、島成分が、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリプロピレン/ポリエチレン共重合体並びにそれらの混合物からなる群であるポリマーであることが好ましく、海成分が、ポリスチレン、ポリスチレンの誘導体、ポリスルホン及びポリスルホンの誘導体並びにそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーであって、島成分が、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリプロピレン/ポリエチレン共重合体並びにそれらの混合物からなる群であるポリマーであることがより好ましく、海成分が、ポリスチレン、ポリスチレンの誘導体、ポリスルホン及びポリスルホンの誘導体並びにそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーであって、島成分が、ポリプロピレン及びポリプロピレン/ポリエチレン共重合体並びにそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーであることがさらに好ましく、海成分がポリスチレンであり、島成分がポリプロピレンであることがさらに好ましい。
【0036】
水不溶性材料を構成する繊維(例:海島複合繊維)の単糸径(以下、繊維径とも称する。)は、いずれの太さであってもよいが、吸着対象物質との接触面積の向上と材料の強度維持の観点から、3~200μmが好ましく、5~50μmがより好ましく、10~40μmがさらに好ましい。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
【0037】
「単糸径」とは、繊維の小片サンプル10個をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡を用いて1000~3000倍の写真をそれぞれ撮影し、各写真辺り10カ所(計100箇所)の繊維の直径を測定した値の平均値を意味する。
【0038】
水不溶性材料を構成する海島複合繊維の単糸径は、紡糸時のポリマー吐出量の減少、巻取り速度高速化により細くすることができる。また、リガンドを導入する場合はリガンド導入時の溶媒含浸によって膨潤させることで海島複合繊維の単糸径を太くすることができるため、条件を適時調整することで海島複合繊維の単糸径を目的の範囲に制御することができる。
【0039】
水不溶性材料が粒子形状である場合、対象物質を吸着させるための十分な比表面積を確保する観点から、粒子の直径は、1~500μmであることが好ましい。
【0040】
「算術平均粗さ(Ra)」とは、JIS B 0601:2001に規格されている表面の平滑性を定量化する指標であり、本明細書においては、水不溶性材料の血液接触面の凹凸状態のことを指す。具体的には、レーザー共焦点光学系であり、二次元走査が可能で、線粗さ解析機能(例:形状解析アプリケーションVK-H1A1/VK-H2A1、キーエンス社製)を備えたレーザー顕微鏡(例:超深度3D形状測定顕微鏡VK-9710、キーエンス社製)を用いて、対物レンズ50倍の倍率で、予め乾燥させた材料表面の画像を取り込み、得られた当該画像から線分を抜き取り、抜き取った基準長lから算術平均粗さ(Ra)を算出することができる。
図1は、抜き取った基準長l(エル(μm))と輪郭曲線、平均線を示しており、この抜き取り部分の平均線から輪郭曲線までの偏差の絶対値(μm)を合計して平均した値が算術平均粗さであり、その算出方法は下記式1のとおりである。ここで、Raとは算術平均粗さのことであり、f(x)はレーザー顕微鏡画像における任意の位置xにおける表面凹凸形状を表す関数である。
【0041】
【0042】
測定対象となる材料は、表面の水和による形状の変化、水分の蒸発における湿潤状態の変化を考慮して、予め乾燥させておく必要がある。
【0043】
「平均線」とは、JIS B 0601:2001で規定されている通り、輪郭曲線を最小二乗法により直線におきかえた線を指す。
【0044】
「輪郭曲線」とは、
図1に示すように、レーザー顕微鏡を用いて測定対象となる材料表面の画像を取り込んだ際の、材料表面の輪郭をなぞった曲線のことであり、測定断面曲線とも言う。
【0045】
「算術平均粗さ(Ra)の最大値」とは、上記の方法により求めた水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)のうち、算術平均粗さ(Ra)が最大となる値を意味する。具体的には、上記の「算術平均粗さ(Ra)」の算出方法に従い、得られた画像からそれぞれが平行の位置関係にならないよう10箇所の線分をランダムに抜き取る。この操作を異なる3視野の画像でそれぞれ行い、3視野の画像から抜き取った合計30箇所の線分から算出したそれぞれの算術平均粗さ(Ra)のうち、最大値となる算術平均粗さ(Ra)をRaAとする。「算術平均粗さ(Ra)の最小値」についても上記と同様の方法により求めることができる。すなわち、上記の抜き取った合計30箇所の線分から算出した算術平均粗さ(Ra)のうち、最小値となる算術平均粗さ(Ra)をRaBとする。ここで、水不溶性材料が繊維形状である場合、少なくとも繊維長軸方向及び繊維短軸方向の線分を抜き取る。
【0046】
上記水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は、表面に十分な凹凸を形成することで血液中の細胞が材料を認識しやすく、かつ十分な比表面積を有することで血液中の液性因子を高効率に吸着除去できることから、0.50μm以上にすることが好ましく、0.60μm以上がより好ましく、0.63μm以上がさらに好ましい。また、微粒子の発生の懸念から、算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は、3.0μm以下であることが好ましい。例えば、上記水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は、0.50μm以上3.0μm以下、0.50μm以上2.0μm以下、0.50μm以上1.6μm以下、0.60μm以上1.6μm以下、0.63μm以上1.6μm以下である。
【0047】
上記水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)の最小値(RaB)は、最大値(RaA)の値にもよるが、例えば、0.10μm以上0.50μm未満である。
【0048】
「最大値(RaA)と最小値(RaB)の差分」とは、上記の方法により算出した最大値(RaA)及び最小値(RaB)を用いて、最大値(RaA)から最小値(RaB)を差し引くことにより算出される。最大値(RaA)と最小値(RaB)の差分を0.30~1.50μmの範囲にすることで、活性化白血球や炎症性サイトカイン等の血液成分の吸着率を向上させることができる。これは、材料表面の凹凸に方向性が生じるためと考えられる。一方、最大値(RaA)と最小値(RaB)の差分が1.50μmを超えると、表面の凹凸がより顕著になることから、表面の物理的要因からくる劣化により微粒子が発生する懸念があるため好ましくないと考えられる。よって、最大値(RaA)と最小値(RaB)の差分は、0.30~1.50μmである必要があり、好ましくは0.33~1.30μmであり、より好ましくは0.33~1.00μmであり、さらに好ましくは0.35~1.00μmであり、さらに好ましくは0.40~1.00μmである。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
【0049】
水不溶性材料が繊維である場合、該水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)が最小となるレーザー顕微鏡の測定方向としては、例えば、繊維長軸方向が挙げられる。繊維短軸方向に対して、繊維長軸方向の方が、より算術平均粗さ(Ra)の値が小さくなることで、微粒子の発生を抑制しつつ、貪食能を有する白血球成分が繊維をより認識し、吸着性能が向上させることができる。
【0050】
ここで、測定方向とは、取り込んだ対象の画像を線粗さ解析機能で上記算術平均粗さを算出する際に、画像上で抜き取る線分の方向を指す。
【0051】
「繊維長軸方向」とは、
図2に示すように、繊維が紡糸により吐出される際の進行方向(吐出方法)を指す。また、「繊維短軸方向」とは、
図2に示すように、吐出される際の進行方向とは直交する方向を指す。
【0052】
水不溶性材料が粒子である場合、該水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)が最小となるレーザー顕微鏡の測定方向としては、例えば、最大値(RaA)となる測定方向に対して直交する方向が挙げられる。
【0053】
材料表面の形状(算術平均粗さ)は、例えば、水不溶性材料の製造工程、アミド基やアミノ基を含むリガンド等を導入する際の基質濃度や反応時間、反応温度で適宜調整することが可能となる。導入するリガンド等は特に限定されないが、例えば、クロロアセトアミドメチル基が挙げられる。クロロアセトアミドメチル基を水不溶性材料の表面に導入する際、反応が進むにつれて、算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は高くなる傾向にある。なお、基質濃度を高くするほど、算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)の値が高くなる傾向があるが、算術平均粗さ(Ra)の最小値(RaB)の値も高くなる傾向があり、結果として、最大値(RaA)と最小値(RaB)の差分は小さくなる傾向がある。
【0054】
一実施形態では、水不溶性材料の表面にアニオン性の電荷を有する官能基又はカチオン性の電荷を有する官能基を含むリガンドが結合していてもよい。好ましい実施形態では、水不溶性材料の表面にアミノ基を含むリガンドが結合していてもよい。
【0055】
「リガンド」とは、水不溶性材料の表面に結合する化合物を意味し、アニオン性の電荷を有する官能基又はカチオン性の電荷を有する官能基を有していればその化学構造は特に制限されるものではなく、例えば、アニオン性官能基であるスルホン酸基若しくはカルボキシル基を含む化合物又はカチオン性官能基であるアミノ基を含む化合物が挙げられる。一実施形態において、リガンドとしては、カチオン性官能基を含む化合物、特にアミノ基を含む化合物が好ましい。なお、上記官能基は、同一又は異なる官能基を複数組み合わせていてもよい。なお、リガンドは、上記アニオン性官能基又はカチオン性官能基を有していれば、さらに中性官能基を有していてもよく、該中性官能基としては、例えば、メチル基若しくはエチル基等のアルキル基又はフェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基(例えば、パラ(p)-メチルフェニル基、メタ(m)-メチルフェニル基、オルト(o)-メチルフェニル基、パラ(p)-エチルフェニル基、メタ(m)-エチルフェニル基又はオルト(o)-エチルフェニル基等)若しくはハロゲン原子で置換されたフェニル基(例えば、パラ(p)-フルオロフェニル基、メタ(m)-フルオロフェニル基、オルト(o)-フルオロフェニル基、パラ(p)-クロロフェニル基、メタ(m)-クロロフェニル基又はオルト(o)-クロロフェニル基等)等のアリ-ル基が、アニオン性官能基又はカチオン性官能基を含む化合物に結合した化合物(例:パラ(p)-クロロフェニル基が結合したテトラエチレンペンタミン)は、リガンドに含まれる。その際、中性官能基とリガンドは、直接結合していても、スペーサーを介して結合していてもよい(当該結合に関与するスペーサーをスペーサー1とも称する。)。当該スペーサー1としては、例えば、尿素結合、アミド結合、ウレタン結合が挙げられる。
【0056】
「アミノ基」とは、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン若しくはドデシルアミン等の1級アミン由来のアミノ基、メチルヘキシルアミン、ジフェニルメチルアミン、ジメチルアミン等の2級アミン由来のアミノ基、アリルアミン等の不飽和アルキル鎖を持つアミン由来のアミノ基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、フェニルジメチルアミン、ジメチルヘキシルアミン等の3級アミン由来のアミノ基、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、ピリジン-2-アミン、3-スルホアニリン等の芳香環を有するアミン由来のアミノ基、又はトリス(2-アミノエチル)アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、オクタエチレンノナミン、ジプロピレントリアミン、ポリエチレンイミン、N-メチル-2,2’-ジアミノジエチルアミン、N-アセチルエチレンジアミン、1,2-ビス(2-アミノエトキシエタン)等の、アルキル鎖、芳香族化合物、複素環式化合物や単素環式化合物等でアミノ基を2個以上結合させた化合物(以下、「ポリアミン」)由来のアミノ基が挙げられる。ポリアミン構造内のアミノ基は、1級アミン又は2級アミン由来のアミノ基であることがより好ましい。上記ポリアミンは直鎖状、分岐状、環状でもよい。また、上記ポリアミンは以下に挙げられる構造を塩基性窒素原子上の置換基として含んでいてもよい。その構造の例としては、炭素数1~10のアルキル基、ビニル基若しくはアリル基等の不飽和アルキル鎖、フェニル基、ナフチル基若しくはアントラシル基等の芳香族置換基又はイミダゾリル基、ピリジル基若しくはピペリジル基等の複素環式置換基等が挙げられる。
【0057】
一実施形態では、水不溶性材料と、アミノ基(例えば、ポリアミン由来のアミノ基)を含むリガンドとは、直接結合してもよいし、上記水不溶性材料と上記リガンドとの間に反応性官能基由来のスペーサーを介してもよい(当該結合に関与するスペーサーをスペーサー2とも称する。)。当該スペーサー2としては、尿素結合、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合等の電気的に中性の化学結合を有しているものであればよく、アミド結合又は尿素結合を有しているものが好ましい。
【0058】
上記水不溶性材料と上記リガンドとの結合を媒介する反応性官能基としては、例えば、ハロアルキル基(例えば、ハロメチル基やハロエチル基)、ハロアシル基(例えば、ハロアセチル基やハロプロピオニル基)若しくはハロアセトアミドアルキル基(例えばハロアセトアミドメチル基やハロアセトアミドエチル基)等の活性ハロゲン基、エポキサイド基、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基又は酸無水物基が挙げられるが、適度な反応性を有する観点から、活性ハロゲン基が好ましく、ハロアセトアミドアルキル基、特にハロアセトアミドメチル基がより好ましい。反応性官能基を導入した水不溶性材料の具体的な例としては、表面にクロロアセトアミドメチル基を導入したポリスチレンや表面にクロロアセトアミドメチル基を導入したポリスルホンが挙げられる。
【0059】
反応性官能基は、予め、水不溶性材料と適当な試薬を反応させることで水不溶性材料に結合させることができる。例えば、水不溶性材料を構成する海島複合繊維の海成分がポリスチレンで、反応性官能基がクロロアセトアミドメチル基の場合は、ポリスチレンとN-ヒドロキシメチル-2-クロロアセトアミドを反応させることでクロロアセトアミドメチル基が結合したポリスチレンを得ることができる。クロロアセトアミドメチル基が結合したポリスチレンに対し、例えば、アミノ基を有するテトラエチレンペンタミンを反応させることで、テトラエチレンペンタミンがアセトアミドメチル基を介して結合したポリスチレンが得られる。この場合、アセトアミドメチル基はスペーサー2に相当し、テトラエチレンペンタミンは、リガンドに相当する。水不溶性材料の海成分及び島成分の材質、スペーサー(スペーサー1及びスペーサー2)、リガンドは、任意に組み合わせることができる。リガンドが結合した水不溶性材料の構成成分の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミン等のポリアミンを含むリガンドがアセトアミドメチル基を介して結合したポリスチレンやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミン等のポリアミンを含むリガンドがアセトアミドメチル基を介して結合したポリスルホンが挙げられる。
【0060】
水不溶性材料において、アミノ基の含量に特に制限はないが、血液成分等の電荷を有する有機物に対する吸着性能の観点から、水不溶性材料の乾燥重量1g当たり0.20mmol以上が好ましく、血液のpHへの影響を考慮すると、水不溶性材料の乾燥重量1g当たり3.00mmol以下が好ましい。つまり、アミノ基の含量は、水不溶性材料の乾燥重量1g当たり0.20~3.00mmolであることが好ましく、0.50~2.00mmolであることがより好ましく、0.70~1.50mmolであることがさらに好ましい。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
【0061】
アミノ基の含量は、塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いた酸塩基滴定法により測定できる。
【0062】
本実施形態に係る血液処理材料は、例えば、以下の方法により製造することができるが、この方法に限られるものではない。
【0063】
ハロゲン化アルキル基及びメチロール基を有するアミド化合物(例えば、N-メチロール-α-クロロアセトアミド)と、架橋剤としてアルデヒド化合物(例えば、パラホルムアルデヒド)、架橋反応用の触媒を溶解させた溶液に海島複合繊維を添加し、攪拌することでアミドメチル基結合海島複合繊維を作製する。その後、当該繊維を取り出し、続けてアミノ基を含む化合物(例えば、テトラエチレンペンタミン)を溶解させたジメチルスルホキシド(以下、DMSO)溶液に上記のアミドメチル基結合海島複合繊維、触媒(例えば、トリエチルアミン)を添加・反応させ、取り出した後、繊維を水で洗浄したものが、アミノ基を含むリガンドが表面に結合した海島複合繊維である。ここで、アミノ基を含むリガンドは、アミノ基を含む化合物(例えば、テトラエチレンペンタミン)に相当する。
【0064】
アミドメチル基結合海島複合繊維を作製する際に用いる溶媒としては、例えば、海成分がポリスチレンの場合、ニトロベンゼン、ニトロプロパン、クロロベンゼン、トルエン又はキシレンが挙げられ、ニトロベンゼン又はニトロプロパンが好ましい。
【0065】
アミドメチル基結合海島複合繊維を作製する際に用いる架橋剤としては、例えば、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド又はベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物が挙げられる。
【0066】
アミドメチル基結合海島複合繊維を作製する際に用いる架橋反応用の触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸又はハロゲン化アルミニウム(III)(例えば、塩化アルミニウム(III))若しくはハロゲン化鉄(III)(例えば、塩化鉄(III))等のルイス酸が挙げられ、硫酸又は塩化鉄(III)が混合されていることが好ましい。
【0067】
アミドメチル基結合海島複合繊維を作製する際の混合液中の触媒の濃度は、5~80wt%が好ましく、30~70wt%がより好ましい。
【0068】
アミドメチル基結合海島複合繊維を作製する際の含浸温度は、0~90℃が好ましく、5~40℃がより好ましい。
【0069】
アミドメチル基結合海島複合繊維を作製する際の含浸時間は、1分~120時間が好ましく、5分~24時間がより好ましい。
【0070】
アミノ基を含むリガンドが表面に結合した海島複合繊維を作製する際に用いる溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジメチルスルホキシドが挙げられるが、ジメチルスルホキシドが好ましい。
【0071】
アミノ基を含むリガンドが表面に結合した海島複合繊維を作製する際に用いる触媒としては、例えば、トリエチルアミン若しくは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機塩基又は水酸化ナトリウム等の無機塩基が挙げられるが、トリエチルアミン等の有機塩基が好ましい。
【0072】
アミノ基を含むリガンドが表面に結合した海島複合繊維を作製する際の混合液中の触媒の濃度は、50~1000mMが好ましく、300~700mMがより好ましい。
【0073】
アミノ基を含むリガンドが表面に結合した海島複合繊維を作製する際の含浸温度は、15~80℃が好ましく、40~60℃がより好ましい。
【0074】
アミノ基を含むリガンドが表面に結合した海島複合繊維を作製する際の含浸時間は、30分~24時間が好ましく、1時間~8時間が好ましい。
【0075】
本実施形態に係る血液処理材料は、血液浄化カラムに充填する担体として好ましく用いられ、特に、炎症性疾患の治療を目的として体外循環を行う場合は、活性化白血球及び/又は炎症性サイトカインの吸着除去用の担体として好適に用いられる。血液処理材料を用いた血液浄化カラムを体外循環用カラムとして血液浄化療法に用いる場合には、体外に導出した血液を直接カラムに通してもよいし、血漿分離膜等と組み合わせて使用してもよい。
【0076】
「炎症性疾患」とは、体内で炎症反応が惹起される疾患全体を表し、例えば、全身性エリテマトーデス、悪性関節リウマチ、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、薬剤性肝炎、アルコール性肝炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎若しくはE型肝炎、敗血症(例えば、グラム陰性菌由来の敗血症、グラム陽性菌由来の敗血症、培養陰性敗血症、真菌性敗血症)、インフルエンザ、急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS、急性呼吸促迫症候群、急性呼吸促進症候群とも表記される。)、急性肺傷害(acute lung injury;ALI)、膵炎、特発性間質性肺炎(Idiopathic Pulmonary Fibrosis;IPF)、炎症性腸炎(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病)、血液製剤の輸血、臓器移植、臓器移植後の再灌流障害、胆嚢炎、胆管炎又は新生児血液型不適合等が挙げられる。炎症性疾患の中でも、血液中に原因物質が放出され、血液浄化による治療効果が特に期待できる、薬剤性肝炎、アルコール性肝炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎若しくはE型肝炎、敗血症(例えば、グラム陰性菌由来の敗血症、グラム陽性菌由来の敗血症、培養陰性敗血症、真菌性敗血症)、インフルエンザ、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、膵炎、特発性間質性肺炎、が挙げられる。本実施形態の血液浄化カラムの用途としては、例えば、上記の炎症性疾患の治療用途が好ましく、中でも薬剤のみでは治療が困難であり、活性化白血球と炎症性サイトカインの両方が関与している疾患と考えられる、敗血症(例えば、グラム陰性菌由来の敗血症、グラム陽性菌由来の敗血症、培養陰性敗血症、真菌性敗血症)、インフルエンザ、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、特発性間質性肺炎の治療用途がより好ましい。
【0077】
血液処理材料の血液浄化性能の評価方法としては、例えば、インターロイキン8(以下、IL-8)吸着率を測定する方法が挙げられる。IL-8は血液成分中に含まれる炎症性サイトカインの一種であり、炎症性疾患患者において、特に細気管支炎やウイルス感染により発症した疾患の血液成分に顕著に高値となることが知られていることから、血液浄化性能評価用の血液成分として好適である。IL-8の吸着率が高いほど、血液処理材料の血液浄化性能が高いと判断できる。
【0078】
また、血液処理材料の血液浄化性能の別の評価方法としては、活性化白血球の除去率を評価する方法が挙げられる。活性化白血球の除去率の算出方法としては、例えば、入口及び出口を有する容器に血液浄化用の材料を充填し、活性化白血球を含む液体を通液させて、入口及び出口でのそれらの濃度の変化からそれらの除去率をそれぞれ算出する方法が挙げられる。
【0079】
活性化白血球は細胞であり除去率の測定ばらつきを含むという観点から、活性化白血球の除去率が6%以上であれば、有意に除去されていると判定できる。しかし、水不溶性材料が繊維であった場合、繊維間隙に活性化白血球が過剰に吸着すると目詰まりを起こし、循環圧力上昇の懸念があることから、活性化白血球の除去率は80%以下が好ましい。
【0080】
本実施形態に係る血液処理材料を用いた吸着処理中、血液処理材料の強度が不十分だと液体との摩擦で繊維表面が脆性破壊で微粒子として剥離、通液した溶液中に混入する恐れがあり、特に、血液処理材料を体外循環に用いる場合は、発生した微粒子が体内に混入する恐れがあるため、安全性を確保するために別途フィルターを設置する必要があり、管理が複雑となる。したがって、血液処理材料は循環中にできるだけ脆性破壊しないことが望ましい。脆性破壊が起こっているかどうかは血液処理材料からの微粒子発生数を測定することで評価できる。
【0081】
血液処理材料から発生する微粒子数の測定方法としては、第十五改正日本薬局方収載(2006年3月31日厚生労働省告示第285号)の一般試験法6.07注射剤の不溶性微粒子試験法(第1法:光遮蔽粒子計数法;pp.1-2)を参考にして実施することができる。具体的には、血液処理材料を一定面積切り出してセルに充填し、セル中の水を撹拌して微粒子を抽出し、抽出により得られた微粒子数を測定する方法が挙げられる。
【0082】
また、本発明の血液浄化カラムは、上記の血液処理材料を備えることを特徴としている。
【0083】
「血液浄化カラム」とは、少なくとも液体入口部、ケース部、液体出口部を有しており、ケース部には血液処理材料が充填されているものを意味する。カラムとしては、例えば、ラジアルフロー型のカラムが挙げられる。
【0084】
本実施形態に係る血液浄化カラムは、液体を通過させることで当該液中から血液成分等を吸着することができることから、血液成分等を含んだ液体から目的とする血液成分を精製又は除去する用途として用いることができ、例えば、特定の血液成分の分離等に用いることができる。そして、本実施形態に係る血液浄化カラムは、血液成分の中でも、特に血液中の液性因子、血液中の細胞の吸着除去用途として好適に用いられ、中でも炎症性サイトカイン、活性化白血球の吸着除去用の血液浄化カラムとして特に好適に用いられる。
【0085】
血液浄化カラムの容器形状としては、血液成分等を含む液体(以下、液体)の入口部及び出口部、ケース部を有する容器で、当該ケース部内に血液処理材料を充填できる形状であればよい。一つの実施形態としては、血液処理材料をパイプに巻きつけ、円筒状にしたもの(以下、円筒)を内部に充填できる容器で、液体が円筒の外周より入り円筒の内側へと流れた後に当該液体が容器外に出る容器又は液体が円筒の内側より入り円筒の外側へと流れた後に当該液体が容器外に出る容器が挙げられる。製造効率や処理液のショートパス抑制の観点からは、側面に孔を持つパイプに対して血液処理材料が巻きつけられている構造が好ましく、具体的には、供給された液体を流出するために設けられた孔を長手方向の側面に備える中心パイプと、上記中心パイプの周りに充填され、上記液体に含まれる標的物質を吸着させる血液処理材料と、流入してきた上記液体が上記中心パイプの中を通るように上記中心パイプの上流端に連通され、上記液体が上記中心パイプを通過せずに上記血液処理材料と接触するのを防ぐように配置されたプレートと、上記中心パイプの下流端を封鎖し、上記水不溶性材料を上記中心パイプの周りの空間に固定するように配置されたプレートと、を備えるラジアルフロー型の容器が挙げられ、また、容器の形状は、円柱状又は三角柱状、四角柱状、六角柱状若しくは八角柱状等の角柱状容器が挙げられるが、この構造に限定されるものではない。また別の実施形態としては、血液処理材料を円形に切り取ったものを充填可能な円筒状の空間を内部に有した容器で、液体導入口及び液体排出口を有した容器が考えられる。具体的には、供給された液体を流出するために設けられた液体導入口を備えるプレートと、供給された液体を排出するために設けられた液体排出口を備えるプレートと、血液処理材料を円形に切り取ったものが充填された円筒状のケース部を内部に有し、液体導入口及び液体排出口を有した容器が挙げられる。なお、この場合、血液処理材料の形は円形に限らず、血液浄化カラムの容器形状に合わせて楕円形、三角形や四角形等の多角形、台形等任意の形状に適宜変更することができる。
【0086】
血液浄化カラムの容器としては、ガラス製、プラスチック・樹脂製、ステンレス製等のものが挙げられ、容器のサイズは使用目的に応じて適宜選択される。血液浄化カラムの容器の大きさ等に特に制限はないが、臨床現場や測定場所での操作性・廃棄の容易さを考慮すると、材質としてはプラスチック・樹脂製が好ましく、大きさは手に握りやすい大きさが好ましく、血液浄化カラム全体の高さは1cm以上30cm以下、外径は1cm以上10cm以下、内容積は200cm3以下であることが好ましい。なお、後述する実施例においては、測定の簡便さから、内容積0.94cm3(内径1.0cm×高さ1.2cm)、外径2.0cmの血液浄化カラムを使用しているが、この限りではない。
【0087】
血液処理材料は、血液浄化カラム内に積層されて充填されていることが好ましい。ここで、積層とは、血液処理材料を2枚以上密着させて重ねることを意味し、積層されて充填する方法としては、例えば、アキシャルフローカラムのようにシート形態に加工した血液処理材料を複数枚重ねていく方法や、ラジアルフローカラムのように孔を持つパイプにシート形態に加工した血液処理材料を巻きつけていく方法が挙げられる。
【0088】
血液浄化カラム内に充填するものは、血液処理材料単独でもよく、他の水不溶性材料、各種スペーサーを組み合わせて充填してもよい。スペーサーとしては、例えば、編地、織物、不織布等シート形状にした繊維や、膜、ビーズ、ハイドロゲル等が挙げられる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の血液処理材料について実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0090】
(繊維Aの作製)
海成分として、メルトフローレート(単位:g/10min、以下MFR)が18g/10minのポリスチレン(重量平均分子量18万、PSジャパン株式会社製)、島成分として、MFRが12g/10minのポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製)を用いて別々に溶融計量し、1つの吐出孔当たり700の島成分用分配孔が穿設された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。島比率を50wt%に制御し、単繊度3.0dtex、繊維径20μm、島数700個、フィラメント数36本である、海島複合繊維A(以下、繊維A)を得た。
【0091】
(繊維Bの作製)
海成分として、MFRが2g/10minのポリスチレン(重量平均分子量26万、PSジャパン株式会社製)、島成分として、MFRが12g/10minのポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製)を用いて別々に溶融計量し、1つの吐出孔当たり700の島成分用分配孔が穿設された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。島比率を50wt%に制御し、単繊度3.0dtex、繊維径20μm、島数700個、フィラメント数36本である、海島複合繊維B(以下、繊維B)を得た。
【0092】
(繊維Cの作製)
海成分として、MFRが18g/10minのポリスチレン(重量平均分子量18万、PSジャパン株式会社製)90質量%及びMFRが12g/10minのポリプロピレン(株式会社プライムポリマ―製)10質量%の混合物、島成分として、MFRが12g/10minのポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製)を用いて別々に溶融計量し、1つの吐出孔当たり700の島成分用分配孔が穿設された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。島比率を50wt%に制御し、単繊度3.0dtex、繊維径20μm、島数700個、フィラメント数36本である、海島複合繊維C(以下、繊維C)を得た。
【0093】
(繊維Dの作製)
島成分が、芯成分と鞘成分とからなり、上記芯成分として、MFRが12g/10minのポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製)、上記鞘成分として、MFRが18g/10minのポリスチレン(重量平均分子量18万、PSジャパン株式会社製)、海成分として、5-ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%および数平均分子量1000のポリエチレングリコール10wt%が共重合したポリエチレンテレフタレート(共重合PET1 溶融粘度:45Pa・s)を用いて別々に溶融計量し、各ポリマー成分を計量する複数の計量孔を有する計量プレート、計量孔からの吐出ポリマーを合流する合流溝に複数の分配孔が穿設されている分配プレートで構成されており、島成分中の鞘成分がスリット形状になるよう加工された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。芯/鞘比率を50/50(v/v)、海/島比率を30/70(v/v)に制御し、単繊度5.0dtex、繊維径30μm、フィラメント数24本である、海島複合繊維を得た。続いて、得られた海島複合繊維1gを、室温でクロロホルム50cm3に浸漬させ、一晩静置して海島複合繊維の海成分を溶解させた後、メタノール、イオン交換水の順で洗浄することで、海島複合繊維の芯鞘成分として、スリット数16本、スリット間隙2μmである、芯鞘複合スリット繊維D(以下、繊維D)を得た。
【0094】
(編地Aの作製)
繊維Aを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)の度目調整目盛りを調整し、目付けが56g/m2、嵩密度が0.20g/cm3の筒編み編地A(以下、編地A)を作製した。
【0095】
(編地Bの作製)
繊維Bを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)の度目調整目盛りを調整し、目付けが55g/m2、嵩密度が0.20g/cm3の筒編み編地B(以下、編地B)を作製した。
【0096】
(編地Cの作製)
繊維Cを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)の度目調整目盛りを調整し、目付けが54g/m2、嵩密度が0.19g/cm3の筒編み編地C(以下、編地C)を作製した。
【0097】
(編地Dの作製)
繊維Dを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)の度目調整目盛りを調整し、目付けが70g/m2、嵩密度が0.22g/cm3の筒編み編地D(以下、編地D)を作製した。
【0098】
(血液処理材料1の作製)
N-ヒドロキシメチル-2-クロロアセトアミド(以下、NMCA)3.3gをニトロベンゼン26cm3と98重量%硫酸17cm3混合液に添加後、NMCAが溶解するまで10℃で攪拌して、NMCA溶液を調製した。次に、ニトロベンゼン2cm3、98重量%硫酸1.3cm3の混合液にパラホルムアルデヒド(以下、PFA)0.2gを添加し、PFAが溶解するまで20℃で攪拌し、PFA溶液を調製した。該PFA溶液3.3cm3を5℃に冷却後、上記NMCA溶液43cm3に混合した。該混合液を5分間攪拌したのちに、編地A1gを添加して2時間含浸させた。含浸後の編地Aを10℃のニトロベンゼン43cm3中に浸して反応を停止させた後、該編地Aに付着しているニトロベンゼンをメタノールで洗浄した。
【0099】
テトラエチレンペンタミン(以下、TEPA)0.2cm3とトリエチルアミン2.9cm3をDMSO40cm3に溶解させた混合液に、上記のメタノールで洗浄した後の編地Aをそのまま添加し、40℃で3時間含浸させた。ガラスフィルターを用いて該編地Aをろ別し、40cm3のDMSOで洗浄した。
【0100】
活性モレキュラーシーブス3Aで脱水乾燥したDMSO25cm3に、窒素雰囲気下でパラクロロフェニルイソシアネート0.1gを添加して30℃に加温し、上記洗浄後の編地Aを全量添加して1時間含浸させた。ガラスフィルターを用いて該編地Aをろ別し、血液処理材料1を得た。血液処理材料1は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料1に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料1に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料1を分析することで算出した。
【0101】
血液処理材料1に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1に含まれるアミノ基の含量は、該血液処理材料1に含まれるアミノ基の含量を、酸塩基逆滴定することより決定した。200cm3ナスフラスコに血液処理材料1を1.5g、乾燥機にて常圧下、80℃で48時間静置することで乾燥処理をした血液処理材料1を得た。次に、ポリプロピレン製容器に、上記血液処理材料1を1.0g、6M水酸化ナトリウム水溶液50cm3を添加して30分攪拌し、濾紙を用いて血液処理材料1をろ別した。次にイオン交換水50cm3に上記血液処理材料1を添加して30分間攪拌し、濾紙を用いてろ別した。上記血液処理材料1をイオン交換水に添加、洗浄及びろ別操作を、添加したイオン交換水のろ別後の洗浄液のpHが7になるまで繰り返すことで脱塩後の血液処理材料1を得た。該脱塩後の血液処理材料1を30℃に設定した真空乾燥機で真空条件下、8時間静置した。続いて、ポリプロピレン製容器に、上記血液処理材料1を1.0gと0.1M塩酸を30cm3添加し、10分間攪拌した。攪拌後、溶液のみを5cm3抜き取って、ポリプロピレン製容器に移した。次に、抜き取った溶液に対して、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を0.1cm3滴下した。滴下後10分間攪拌し、溶液のpHを測定した。0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液の滴下後10分間の攪拌、pHの測定操作を同様に100回繰り返した。溶液のpHが8.5を越えた際の0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液滴下量を1g当たりの滴定量とした。1g当たりの滴定量と以下の式2を用いて、血液処理材料1の1g当たりのアミノ基の含量を算出した。結果を表1に示す。
【0102】
血液処理材料1の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量(mmol/g)={添加した0.1M塩酸の液量(30cm3)/抜き取った塩酸の液量(5cm3)}×1g当たりの滴定量(cm3/g)×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.1mol/L) ・・・式2
【0103】
血液処理材料1の表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1を1枚、2cm×2cmの大きさに切り出し、25℃、16時間真空乾燥した。乾燥させた該血液処理材料1を、レーザー顕微鏡(キーエンス社製;超深度3D形状測定顕微鏡VK-9710)を用いて、対物レンズ50倍の倍率で画像を撮影し、得られた画像の単糸の輪郭曲線から基準長lを20μmとして、10箇所の線分をそれぞれが平行の位置関係にならないようランダムに抜き取り、VK9710搭載の解析ソフトを用いて線粗さモードにより解析することで、10箇所それぞれの表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した(JIS B 0601:2001準拠)。この操作を異なる3視野の画像でそれぞれ行い、3視野の画像から抜き取った合計30箇所の線分についてRaをそれぞれ算出し、これら30箇所のRaから、最大値(RaA)と、最小値(RaB)を得た。ここで、上記RaAは繊維短軸方向の解析により得られ、上記RaBは繊維長軸方向の解析により得られた。また、得られたRaAとRaBの差分を以下の式3を用いて算出した。結果を表1に示す。なお表1中、RaAとRaBの値は、それぞれ小数第3位を四捨五入した値であり、RaA-RaBの値は、RaAとRaBの差分をとった後に小数第3位を四捨五入した値である。
【0104】
血液処理材料1表面における最大値(RaA)と最小値(RaB)の差分=血液処理材料1表面の算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)-血液処理材料1表面の算術平均粗さ(Ra)の最小値(RaB) ・・・式3
【0105】
(血液処理材料2の作製)
NMCAの添加量を3.8gに変更した以外は、血液処理材料1の作製方法と同様の操作を行うことで、血液処理材料2を得た。血液処理材料2は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料2に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料2に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料2を分析することで算出した。
【0106】
血液処理材料2に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料2に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0107】
血液処理材料2表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料2表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0108】
(血液処理材料3の作製)
NMCAの添加量を4.2gに変更した以外は、血液処理材料1の作製方法と同様の操作を行うことで、血液処理材料3を得た。血液処理材料3は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料3に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料3に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料3を分析することで算出した。
【0109】
血液処理材料3に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料3に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0110】
血液処理材料3表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料3表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0111】
(血液処理材料4の作製)
編地Aを編地Bに変更し、NMCAの添加量を4.7gに変更した以外は、血液処理材料1の作製方法と同様の操作を行うことで、血液処理材料4を得た。血液処理材料4は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料4に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料4に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料4を分析することで算出した。
【0112】
血液処理材料4に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料4に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0113】
血液処理材料4表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料4表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0114】
(血液処理材料5の作製)
編地Aを編地Cに変更した以外は、血液処理材料1の作製方法と同様の操作を行うことで、血液処理材料5を得た。血液処理材料5は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料5に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料5に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料5を分析することで算出した。
【0115】
血液処理材料5に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料5に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0116】
血液処理材料5表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料5表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0117】
(血液処理材料6の作製)
NMCAの添加量を2.8gに変更した以外は、血液処理材料1の作製方法と同様の操作を行うことで、血液処理材料6を得た。血液処理材料6は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料6に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料6に含まれる水不溶性材料表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料6を分析することで算出した。
【0118】
血液処理材料6に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料6に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0119】
血液処理材料6表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料6表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0120】
(血液処理材料7の作製)
NMCAの添加量を4.7gに変更した以外は、血液処理材料1の作製方法と同様の操作を行うことで、血液処理材料7を得た。血液処理材料7は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料7に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料7に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料7を分析することで算出した。なお、血液処理材料7は、特許文献3に記載の実施例1用のテトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地の作製方法と同じ条件で作製した。
【0121】
血液処理材料7に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料7に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0122】
血液処理材料7表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料7表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0123】
(血液処理材料8の作製)
NMCAの添加量を5.6gに変更した以外は、血液処理材料1の作製方法と同様の操作を行うことで、血液処理材料8を得た。血液処理材料8は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料8に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料8に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料8を分析することで算出した。
【0124】
血液処理材料8に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料8に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0125】
血液処理材料8表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料8表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0126】
(血液処理材料9の作製)
編地Aを編地Dに変更した以外は、血液処理材料1の作製方法と同様の操作を行うことで、血液処理材料9を得た。血液処理材料9は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料9に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料9に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料9を分析することで算出した。
【0127】
血液処理材料9に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料9に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0128】
血液処理材料9表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料9表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0129】
(血液処理材料10の作製)
SepXiris(登録商標:バクスター株式会社、医療機器承認番号:22500BZX00401000)をパイプカッターにより解体し、取り出した中空糸を血液処理材料10とした。血液処理材料10は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料10に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料10に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料10を分析することで算出した。
【0130】
血液処理材料10に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料10に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0131】
血液処理材料10表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料10を5cmの長さに1本切り出した後、血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料10表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0132】
(血液処理材料11の作製)
Cytosorb(登録商標:CytoSorbents Corporation)をパイプカッターにより解体し、取り出したビーズを血液処理材料11とした。血液処理材料11は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料11に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料11に含まれる水不溶性材料表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料11を分析することで算出した。
【0133】
血液処理材料11に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料11に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0134】
血液処理材料11表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料11を1粒取り出し、血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料11表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の解析により得られた最大値(RaA)と最小値(RaB)、該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0135】
(血液処理材料12の作製)
アダカラム(登録商標:株式会社JIMRO、承認番号:21100BZZ00687000)をパイプカッターにより解体、取り出したビーズを血液処理材料12とした。血液処理材料12は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料12に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料12に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料12を分析することで算出した。
【0136】
血液処理材料12に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料12に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0137】
血液処理材料12表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料12を1粒取り出し、血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料12表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の解析により得られた最大値(RaA)と最小値(RaB)、該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0138】
(血液処理材料13の作製)
NMCAの添加量を4.7gに変更し、編地AをNMCA溶液及びPFA溶液の混合液に含浸させる時間を90分に変更した以外は、血液処理材料1の作製方法と同様の操作を行うことで、血液処理材料13を得た。血液処理材料13は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料13に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料13に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料13を分析することで算出した。
【0139】
血液処理材料13に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料13に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0140】
血液処理材料13表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料13表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0141】
(血液処理材料14の作製)
NMCAの添加量を5.6gに変更した以外は、血液処理材料9の作製方法と同様の操作を行うことで、血液処理材料14を得た。血液処理材料14は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料14に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料14に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料14を分析することで算出した。
【0142】
血液処理材料14に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料14に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0143】
血液処理材料14表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料14表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0144】
(血液処理材料15の作製)
NMCA4.7gをニトロベンゼン26cm3と98重量%硫酸17cm3混合液に添加後、NMCAが溶解するまで10℃で攪拌して、NMCA溶液を調製した。次に、ニトロベンゼン2cm3、98重量%硫酸1.3cm3の混合液にPFA0.2gを添加し、PFAが溶解するまで20℃で攪拌し、PFA溶液を調製した。該PFA溶液3.3cm3を5℃に冷却後、上記NMCA溶液43cm3に混合した。該混合液を5分間攪拌したのちに、編地A1gを添加して2時間含浸させた。含浸後の編地Aを10℃のニトロベンゼン43cm3中に浸して反応を停止させた後、該編地Aに付着しているニトロベンゼンをメタノールで洗浄した。
【0145】
TEPA0.2cm3とトリエチルアミン2.9cm3をDMSO40cm3に溶解させた混合液に、上記のメタノールで洗浄した後の編地Aをそのまま添加し、40℃で3時間含浸させた。ガラスフィルターを用いて該編地Aをろ別し、40cm3のDMSOで洗浄した。ガラスフィルターを用いて該編地Aをろ別し、血液処理材料15を得た。血液処理材料15は水不溶性材料で構成されているため、血液処理材料15に含まれる水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量や血液処理材料15に含まれる水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)は、血液処理材料15を分析することで算出した。なお、血液処理材料15は、特許文献4に記載の実施例2用のテトラエチレンペンタミン化編地の作製方法と同じ条件で作製した。
【0146】
血液処理材料15に含まれるアミノ基の含量測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料15に含まれるアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0147】
血液処理材料15表面の算術平均粗さ(Ra)の測定:
血液処理材料1と同様の操作を行うことで、血液処理材料15表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は繊維短軸方向の解析により得られ、最小値(RaB)は繊維長軸方向の解析により得られた。最大値(RaA)、最小値(RaB)及び該最大値(RaA)と該最小値(RaB)の差分を表1に示す。
【0148】
(実施例1)
血液処理材料1の微粒子発生数測定:
血液処理材料1を直径26mmの円形に切り出し、孔サイズ0.3μmのHEPAフィルターを通過させたイオン交換水(フィルター水)50mLとともに清浄な容器に入れて10回転倒混和してから液を排出し、編地端面から生じた繊維屑を洗浄した。この洗浄操作をさらにもう1回繰り返した。洗浄した該血液処理材料1を攪拌型ウルトラホルダーUHP-25K(ADVANTEC社製)付属のベースプレートに載せてO-リングを重ねたのち直径18mmの円筒状容器(セル)の間に挟みこみ、ベース取付金具により固定した。ベースプレートの液出口をシリコーンチューブで塞ぎ、該血液処理材料1を底面側にして10mLのフィルター水を加え、水漏れがないことを確認した。ここにUHP-25K付属の攪拌セットを取りつけ、マグネティックスターラーRCN-7(東京理化器械社製)上で、攪拌セットが該血液処理材料1に接触しない状態で回転数600rpmにて5分間攪拌を行った。この液を採取し、光遮蔽型自動微粒子測定装置KL-04(リオン社製)で3mL測定し、1mL当たりの5μm以上の微粒子数、1mL当たりの10μm以上の微粒子数を測定し、微粒子発生数(単位:個/mL)とした。結果を表2に示す。
【0149】
血液処理材料1の活性化白血球除去率測定:
上下に溶液の出入り口のある円筒状カラム(内径1cm×高さ1.2cm、外径2cm、ポリプロピレン製)に、直径1cmの円板状に切り抜いた血液処理材料1を積層して充填することで、血液処理材料1充填カラムを作製した。LPSを70EU/mLになるよう添加した健常ヒトボランティア血液を37℃、30分間、65rpmで振とうして活性化させた血液を、当該カラムに流量0.63mL/minで通液し、カラム入口及び出口で血液のサンプル採取を行った。カラム出口のサンプルはカラム内に血液が流入した時点を0分とし、6.5分間通液したものを採取した。採取したサンプルを多項目自動血球分析装置で測定し、以下の式4を用いて、血液処理材料1の活性化白血球除去率を測定した。結果を表2に示す。
【0150】
活性化白血球除去率(%)=(血液通液試験後の血液中の活性化白血球濃度(102cells/μL))/(血液通液試験前の血液中の活性化白血球濃度(102cells/μL)) ・・・式4
【0151】
血液処理材料1のIL-8吸着率測定:
血液処理材料1のIL-8吸着性能を確認するため、IL-8を含む液体に血液処理材料1を所定時間含浸後に取り出し、含浸前後の液体中のIL-8量の差分からIL-8吸着率を測定した。以下に測定方法を示す。
【0152】
血液処理材料1を直径6mmの円板状に切り抜いた後、これを4枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、IL-8の濃度が2000pg/mLなるように調製した牛胎児血清(Fetal Bovine Serum、以下、FBS)を、1cm3の血液処理材料1に対して88mLとなるように添加し、37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和した後、酵素結合免疫吸着(ELISA)法にてFBS中のIL-8濃度を測定した。転倒混和前および転倒混和後のIL-8濃度から以下の式5によりIL-8吸着率を算出した。結果を表2に示す。
【0153】
血液処理材料1のIL-8吸着率(%)={転倒混和前のIL-8濃度(pg/mL)―転倒混和後のIL-8濃度(pg/mL)}/転倒混和前のIL-8濃度(pg/mL)×100 ・・・式5
【0154】
(実施例2)
血液処理材料2を用いて、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数、活性化白血球除去率、IL-8吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0155】
(実施例3)
血液処理材料3を用いて、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数、活性化白血球除去率、IL-8吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0156】
(実施例4)
血液処理材料4を用いて、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数、活性化白血球除去率、IL-8吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0157】
(実施例5)
血液処理材料5を用いて、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数、活性化白血球除去率、IL-8吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0158】
(実施例6)
血液処理材料13を用いて、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数、活性化白血球除去率、IL-8吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0159】
(比較例1)
血液処理材料6を用いて、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数、活性化白血球除去率、IL-8吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0160】
(比較例2)
血液処理材料7を用いて、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数、活性化白血球除去率、IL-8吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0161】
(比較例3)
血液処理材料8を用いて、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数、活性化白血球除去率、IL-8吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0162】
(比較例4)
血液処理材料9を用いて、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数、活性化白血球除去率、IL-8吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0163】
(比較例5)
血液処理材料10の微粒子発生数測定:
血液処理材料10を10cm×39本切り出した後、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数を測定した。結果を表2に示す。
【0164】
血液処理材料10の活性化白血球除去率測定:
血液処理材料10を10cm×157本切り出した後、円筒状カラム(内径0.5cm×高さ10cm、内容積1.9cm3、ポリカーボネート製)に変更した以外は、実施例1と同様の測定を行うことで活性化白血球除去率を測定した。結果を表2に示す。
【0165】
血液処理材料10のIL-8吸着率測定:
血液処理材料10を50cm分取り出した後、実施例1と同様の測定を行うことでIL-8除去率を測定した。結果を表2に示す。
【0166】
(比較例6)
血液処理材料11の微粒子発生数測定:
血液処理材料11を0.28mL取り出した後、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数を測定した。結果を表2に示す。
【0167】
血液処理材料11の活性化白血球除去率測定:
血液処理材料11を1.13mL取り出した後、実施例1と同様の測定を行うことで活性化白血球除去率を測定した。結果を表2に示す。
【0168】
血液処理材料11のIL-8吸着率測定:
血液処理材料11を50μL取り出した後、実施例1と同様の測定を行うことでIL-8除去率を測定した。結果を表2に示す。
【0169】
(比較例7)
血液処理材料12の微粒子発生数測定:
血液処理材料12を0.40gに変更した以外は、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数を測定した。結果を表2に示す。
【0170】
血液処理材料12の活性化白血球除去率測定:
血液処理材料12を1.63g取り出した後、実施例1と同様の測定を行うことで活性化白血球除去率を測定した。結果を表2に示す。
【0171】
血液処理材料12のIL-8吸着率測定:
血液処理材料12を75mgに変更した以外は、実施例1と同様の測定を行うことでIL-8除去率を測定した。結果を表2に示す。
【0172】
(比較例8)
血液処理材料14を用いて、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数、活性化白血球除去率、IL-8吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0173】
(比較例9)
血液処理材料15を用いて、実施例1と同様の測定を行うことで微粒子発生数、活性化白血球除去率、IL-8吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0174】
【0175】
表1中、算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)は、水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)を示し、算術平均粗さ(Ra)の最小値(RaB)は、水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)の最小値(RaB)を示し、RaAとRaBの差分(RaA-RaB)は、水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)と最小値(RaB)の差分を示す。
【0176】
【0177】
表2中、粒子径5μm以上の微粒子発生数は、血液処理材料から発生した粒子径が5μm以上の大きさを有する微粒子の、単位体積当たりの個数を示し、粒子径10μm以上の微粒子発生数は、血液処理材料から発生した粒子径が10μm以上の大きさを有する微粒子の、単位体積当たりの個数を示し、活性化白血球除去率は、血液処理材料が吸着除去した活性化白血球の除去率を示し、IL-8吸着率は、血液処理材料が吸着除去した炎症性サイトカインの一種であるIL-8の吸着率を示す。
【0178】
以上の結果より、本願の血液処理材料は、水不溶性材料の表面の算術平均粗さ(Ra)の最大値(RaA)と最小値(RaB)の差分が0.30μm未満あるいは1.50μmを超える血液処理材料と比較して、より高効率に活性化白血球やIL-8等の血液成分を吸着除去できることが明らかとなった。そして、微粒子の発生数も抑制できることが明らかとなり、高い安全性を有することも明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明の血液処理材料は、高効率に活性化白血球や炎症性サイトカイン等の血液成分を吸着除去できるため、体外循環用の吸着担体として利用できる。
【符号の説明】
【0180】
1.単糸
2.単糸径(繊維径)