(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】被覆付パイプの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 23/18 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
B29D23/18
(21)【出願番号】P 2021006381
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 清隆
(72)【発明者】
【氏名】福川 和宏
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0243973(US,A1)
【文献】特開昭61-112625(JP,A)
【文献】特開2007-064373(JP,A)
【文献】特開2006-283903(JP,A)
【文献】特開2020-094637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-67/08
B29C 67/24-69/02
B29C 73/00-73/34
B29D 1/00-29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
F16L 3/00-3/26
F16L 9/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通管位置に配置された直線状のコルゲート管に対して、前記コルゲート管の第1端部からパイプの端部を挿入することによって被覆付パイプを形成する被覆付パイプの製造装置において、
前記コルゲート管内に前記コルゲート管の第2端部から挿入された索状体と、
前記コルゲート管内に配置され、前記索状体と連結されるとともに前記パイプの前記端部に接続することが可能であって、前記コルゲート管内を前記コルゲート管の長手方向へと移動が可能な第1スライダと、
前記コルゲート管内に流体圧を供給することによって、前記第1スライダを前記コルゲート管内において前記第2端部から前記第1端部へと移動させる第1駆動装置と、
前記索状体の巻き取りによって、前記第1スライダを前記コルゲート管内において前記第1端部から前記第2端部へと移動させることで、前記第1スライダに接続された前記パイプを引っ張って前記コルゲート管に通管させる第2駆動装置と、
前記第1スライダよりも前記コルゲート管の前記第2端部側に配置されて前記第2端部に接続することが可能であって、かつ前記第1スライダの移動経路に沿って移動が可能な第2スライダと、
を備え、
前記第1スライダと前記第2スライダとは、前記第1スライダの移動経路上での互いの当接、及び互いの離間が可能であり、
前記第1スライダと前記第2スライダとが当接された状態において、前記第2駆動装置の駆動力が前記索状体及び前記第1スライダを介して前記第2スライダへと伝達されることで、前記第2スライダに接続された前記コルゲート管を引っ張って前記通管位置へと移動させることが可能である被覆付パイプの製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の製造装置を用いた被覆付パイプの製造方法であって、
前記通管位置へと移動する前の準備位置にある前記コルゲート管の前記第2端部に対して前記第2スライダを接続する第1工程と、
前記第1工程後の前記第2駆動装置による前記索状体の巻き取りによって、前記コルゲート管を前記準備位置から前記通管位置へと引っ張って移動させる第2工程と、
前記第2工程によって前記コルゲート管が前記通管位置に配置された状態において、前記第1駆動装置によって、前記第1スライダを前記第2スライダから離間させて前記第1スライダのみを前記コルゲート管の前記第1端部へと移動させるとともに、前記第2駆動装置から前記索状体を繰り出させる第3工程と、
前記第3工程によって前記コルゲート管の前記第1端部へと移動した前記第1スライダに前記パイプの前記端部を接続する第4工程と、
前記第4工程によって前記パイプの前記端部に接続された前記第1スライダを、前記第2駆動装置による前記索状体の巻き取りによって前記コルゲート管の前記第2端部へと移動させることで、前記パイプを引っ張って前記コルゲート管へと通管させて被覆付パイプを形成する第5工程と、
前記第5工程によって形成された前記被覆付パイプを、前記パイプに前記第1スライダが接続され、かつ前記コルゲート管に前記第2スライダが接続された状態のまま、前記通管位置から前記準備位置に向けて移動させることで、前記第2スライダを前記準備位置に来る次のコルゲート管の第2端部付近に位置するよう予め移動させておくとともに、前記第2駆動装置から前記索状体を繰り出させる第6工程と、
を備えた被覆付パイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆付パイプの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の給水給湯システム等では被覆付パイプが用いられている。こうした被覆付パイプとしては、例えば特許文献1に示すものが知られている。被覆付パイプは、コルゲート管にパイプを通すことによって形成されている。こうした被覆付パイプを給水給湯システムに用いることにより、給水給湯システムを施工する際のパイプの傷つきを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被覆付パイプのコルゲート管は、施工しやすくすることを考慮して、比較的柔らかく形成されている。このため、被覆付パイプの製造時、コルゲート管に対するパイプの押し込みにより、コルゲート管にパイプを通すようにする場合、次のようなことが生じる。すなわち、押し込まれたパイプの先端が、必ずしもコルゲート管の中心に沿って移動せず、コルゲート管の内壁に接触し、パイプの押し込みに伴って同コルゲート管を蛇行させる。その結果、パイプがコルゲート管内で詰まり、コルゲート管にパイプを通すことが困難になる。従って、コルゲート管にパイプを通すためには、上述したように詰まりが発生する都度、その詰まりを解消させなければならず、手間がかかる。その結果、被覆付パイプの製造効率が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する被覆付パイプの製造装置は、通管位置に配置された直線状のコルゲート管に対して、コルゲート管の第1端部からパイプの端部を挿入することによって被覆付パイプを形成する。同装置は、次のような索状体、第1スライダ、第1駆動装置、第2駆動装置、及び第2スライダを備える。索状体は、コルゲート管の第2端部からコルゲート管内に挿入される。第1スライダは、コルゲート管内に配置され、索状体と連結されるとともにパイプの上記端部に接続することが可能であって、コルゲート管内をコルゲート管の長手方向へと移動が可能とされる。第1駆動装置は、コルゲート管内に流体圧を供給することによって、第1スライダをコルゲート管内において第2端部から第1端部へと移動させる。第2駆動装置は、索状体の巻き取りによって、第1スライダをコルゲート管内において第1端部から第2端部へと移動させることで、第1スライダに接続された上記パイプを引っ張ってコルゲート管に通管させる。第2スライダは、第1スライダよりもコルゲート管の上記第2端部側に配置されて第2端部に接続することが可能であって、かつ第1スライダの移動経路に沿って移動が可能とされる。第1スライダと第2スライダとは、第1スライダの移動経路上での互いの当接、及び互いの離間が可能とされる。上記製造装置では、第1スライダと第2スライダとが当接された状態において、第2駆動装置の駆動力が索状体及び第1スライダを介して前記第2スライダへと伝達されることで、第2スライダに接続されたコルゲート管を引っ張って通管位置へと移動させることが可能とされる。
【0006】
上記構成によれば、通管位置から離れて位置するコルゲート管の第2端部に第2スライダが接続される。このとき、コルゲート管内において、第2スライダよりもコルゲート管の第1端部側に第1スライダが配置されている。そして、第2駆動装置が索状体を巻き取ることにより、第1スライダが第2スライダに当接し、第2駆動装置の駆動力が索状体及び第1スライダを介して第2スライダへと伝達される。これにより、第2スライダに接続されたコルゲート管が上記駆動力で引っ張られて通管位置へと移動する。コルゲート管が通管位置まで移動すると、第1駆動装置がコルゲート管内に流体圧を供給することにより、第1スライダが第2スライダから離間してコルゲート管内を第2端部から第1端部へと移動する。コルゲート管の第1端部まで移動した第1スライダは、コルゲート管内を通管させるパイプの端部に接続される。この状態のもと、第2駆動装置が索状体を巻き取ることにより、第1スライダがコルゲート管内を第1端部から第2端部へと移動すると、第1スライダに接続された上記パイプがコルゲート管の第2端部まで引っ張られる。その結果、コルゲート管に上記パイプが通管されて被覆付パイプが形成される。
【0007】
コルゲート管内にパイプを通管させる際、パイプの端部に接続された第1スライダが、第2駆動装置による索状体の巻き取りにより、コルゲート管の中心線に沿って移動する。それに伴い、パイプの端部もコルゲート管の中心線に沿って移動する。このため、コルゲート管の内壁に対しパイプの先端が接触することは抑制される。更に、そうした接触によってコルゲート管が蛇行することも抑制されるため、上記蛇行に伴ってコルゲート管内でパイプが詰まることも抑制される。従って、コルゲート管にパイプを通す際、上記詰まりを解消させる手間がかかることはなく、その手間による被覆付パイプの製造効率の低下を抑制できる。
【0008】
上記課題を解決する被覆付パイプの製造方法では、上述した製造装置を用いて被覆付パイプが形成される。この被覆付パイプの製造方法では、次のような第1工程、第2工程、第3工程、第4工程、第5工程、及び第6工程が行われる。第1工程では、通管位置へと移動する前の準備位置にあるコルゲート管の第2端部に対して第2スライダが接続される。第2工程では、第1工程後の第2駆動装置による索状体の巻き取りによって、上記コルゲート管を準備位置から通管位置へと引っ張って移動させる。第3工程では、第2工程によってコルゲート管が通管位置に配置された状態において、第1駆動装置によって、第1スライダを第2スライダから離間させて第1スライダのみをコルゲート管の第1端部へと移動させるとともに、第2駆動装置から索状体を繰り出させる。第4工程では、第3工程によってコルゲート管の前記第1端部へと移動した第1スライダにパイプの端部を接続する。第5工程では、第4工程によってパイプの端部に接続された第1スライダを、第2駆動装置による索状体の巻き取りによってコルゲート管の第2端部へと移動させることで、上記パイプを引っ張ってコルゲート管へと通管させて被覆付パイプを形成する。第6工程では、第5工程によって形成された被覆付パイプを、パイプに第1スライダが接続され、かつコルゲート管に第2スライダが接続された状態のまま、通管位置から準備位置に向けて移動させることで、上記第2スライダを準備位置に来る次のコルゲート管の第2端部付近に位置するよう予め移動させておくとともに、第2駆動装置から索状体を繰り出させる。
【0009】
上記方法によれば、第1~第6工程を繰り返すことにより、被覆付パイプが連続して製造される。第5工程でコルゲート管内にパイプを通管させる際、パイプの端部に接続された第1スライダが、第2駆動装置による索状体の巻き取りにより、コルゲート管の中心線に沿って移動する。それに伴い、パイプの端部もコルゲート管の中心線に沿って移動する。このため、コルゲート管の内壁に対しパイプの先端が接触することは抑制される。更に、そうした接触によってコルゲート管が蛇行することも抑制されるため、上記蛇行に伴ってコルゲート管内でパイプが詰まることも抑制される。従って、コルゲート管にパイプを通す際、上記詰まりを解消させる手間がかかることはなく、その手間による被覆付パイプの製造効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】同装置の伸び防止機構を上方から見た状態を示す略図。
【
図3】第1スライダ及び第2スライダを示す断面図。
【
図7】エア供給装置と第2スライダとの接続状態を示す断面図。
【
図8】製造装置から被覆付パイプを取り出す際の同パイプの動きを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、被覆付パイプの製造装置及び製造方法の一実施形態について、
図1~
図8を参照して説明する。
図1に示すように、被覆付パイプの製造装置は、第1ステーション1、第2ステーション2、ベルトコンベア3、ガイドレール4、及び伸び防止機構5を備えている。
【0012】
第1ステーション1は、被覆付パイプの製造装置を扱う作業者がいる場所である。作業者は、同装置による被覆付パイプの製造に必要な手作業を行う。第1ステーション1には、被覆付パイプの製造装置を動作させるための操作パネル6が設けられている。操作パネル6は、作業者によって操作される。第1ステーション1には、被覆付パイプの製造に必要なコルゲート管7及びパイプ8が搬送されてくる。第1ステーション1には、コルゲート管7内からエアを吸引するためのバキューム装置9が設けられている。
【0013】
第2ステーション2は、第1ステーション1から離れた位置にある。第2ステーション2には、コルゲート管7内にエアを供給するためのエア供給装置10が設けられている。第2ステーション2にはドラム12が設けられている。ドラム12には索状体としてのワイヤ11が接続されている。ドラム12は、ワイヤ11を巻き取ることが可能とされており、ワイヤ11の巻き取り量を検出するためのエンコーダ13を備えている。ワイヤ11は、エア供給装置10を通過しており、且つ、コルゲート管7内に延びている。また、第2ステーション2には近接センサ14が設けられている。近接センサ14は、パイプ8の端部が第2ステーション2に到達したことを検出するためのものである。
【0014】
ベルトコンベア3及びガイドレール4は、第1ステーション1と第2ステーション2との間で、水平方向に延びるように配置されている。ベルトコンベア3は、ローラ15及びローラ16に巻き掛けられたベルト17を備えている。ベルトコンベア3は、ローラ15,16の回転方向を切り換えることにより、ベルト17の周回を正転と反転との間で切り換える。ベルトコンベア3の上方には、上記ガイドレール4がベルトコンベア3と平行になるように延びている。ベルトコンベア3及びガイドレール4は、被覆付パイプの製造時、第1ステーション1に搬送されてきたコルゲート管7を、第1ステーション1から第2ステーション2まで移動させる際に用いられる。
【0015】
コルゲート管7の上記移動により第2ステーション2にコルゲート管7が到達すると、第1ステーション1から第2ステーション2に亘ってコルゲート管7が直線状に延びた状態になる。以下、このときのコルゲート管7の位置を「通管位置」という。コルゲート管7が通管位置に配置されたとき、コルゲート管7の第1端部(
図1の右端部)が第1ステーション1に位置するとともに、コルゲート管7の第2端部(
図1の左端部)が第2ステーション2に位置する。
【0016】
被覆付パイプの製造時に第1ステーション1にコルゲート管7が搬送されてきたとき、第1ステーション1にはコルゲート管7の第2端部が位置する。以下、このときのコルゲート管7の位置を「準備位置」という。被覆付パイプの製造時、コルゲート管7は準備位置から通管位置に移動される。通管位置に配置されたコルゲート管7に対しては、第1ステーション1に搬送されてきたパイプ8が、同コルゲート管7の第1端部から挿入される。そして、このコルゲート管7に上記パイプ8を通管させることにより、被覆付パイプが形成される。
【0017】
被覆付パイプの製造装置は、第1スライダ19と第2スライダ18とを備えている。第1スライダ19はコルゲート管7内に配置されている。第1スライダ19は、コルゲート管7内を、同コルゲート管7の長手方向に移動することが可能となっている。第1スライダ19は、パイプ8の端部に接続することが可能とされている。
【0018】
第2スライダ18は、同第2スライダ18をガイドレール4に吊り下げるためのアーム20を備えている。アーム20には、ガイドレール4に沿って転がる車輪21が設けられている。ガイドレール4は、車輪21及びアーム20を介して、第2スライダ18の重量を受ける。そして、第2スライダ18は、ガイドレール4に沿って移動することが可能である。そうした第2スライダ18の移動は、コルゲート管7内での第1スライダ19の移動経路に沿ったものとなる。
【0019】
第2スライダ18は、コルゲート管7の第2端部に接続することが可能となっている。このため、第2スライダ18は、第1スライダ19よりも第2端部側に配置される。第1スライダ19には、ドラム12から延びるワイヤ11の端部が連結されている。このワイヤ11は、第2スライダ18を通過している。第1スライダ19と第2スライダ18とは、第1スライダ19の移動経路上での互いの当接、及び互いの離間が可能である。
【0020】
詳しくは、第1スライダ19と第2スライダとは、互いに接近する方向について相対移動するときには、第1スライダ19と第2スライダとが当接するよう構成されている。こうした第1スライダ19と第2スライダとの当接によって両者の上記相対移動が禁止される。一方、第1スライダ19と第2スライダとは互いに離間する方向についての相対移動が許容されるよう構成されている。このため、互いに当接した状態にあるときの第1スライダ19と第2スライダ18とは、互いに離間する方向について相対移動することが可能となっている。
【0021】
第2スライダ18を第2ステーション2まで移動させると、エア供給装置10に第2スライダ18が接続される。このときには、エア供給装置10から第2スライダ18を介してコルゲート管7内にエアを供給することが可能になる。また、第1ステーション1では、コルゲート管7の第1端部に、バキューム装置9を接続することが可能である。このバキューム装置9によりコルゲート管7内のエアを吸い出すとともに、第2スライダ18に接続されたコルゲート管7内にエア供給装置10からエアを供給すると、コルゲート管7内の第1スライダ19がコルゲート管7内のエア圧により第1端部に向けて移動する。
【0022】
エア供給装置10及びバキューム装置9は、コルゲート管7内に流体圧(この例ではエア圧)を供給することによって、第1スライダ19をコルゲート管7内において第2端部から第1端部へと移動させる第1駆動装置としての役割を担う。ドラム12は、ワイヤ11の巻き取りによって、第1スライダ19をコルゲート管7内において第1端部から第2端部へと移動させることで、第1スライダ19に接続されたパイプ8を引っ張ってコルゲート管7に通管させる第2駆動装置としての役割を担う。また、第2スライダ18に接続されたコルゲート管7は、第1スライダ19と第2スライダ18とが当接された状態のもと、ワイヤ11を巻き取る際のドラム12の駆動力がワイヤ11及び第1スライダ19を介して第2スライダ18へと伝達されることによって通管位置に向けて引っ張られる。
【0023】
被覆付パイプの製造装置における第1ステーション1と第2ステーション2との間には、ベルトコンベア3及びガイドレール4に沿って、上記伸び防止機構5が所定の間隔をおいて複数設けられている。
【0024】
図2は、伸び防止機構5を
図1の上方から見た状態を示している。伸び防止機構5はベース部材22とクランプ23とを備えている。ベース部材22は、エアシリンダ等のアクチュエータにより、ベルトコンベア3の延びる方向に移動することが可能となっている。クランプ23は、ベース部材22に支持されており、ベース部材22と一体移動することが可能である。クランプ23は、ベルトコンベア3における幅方向(
図2の上下方向)の両側に位置している。
【0025】
クランプ23は、ベルト17上のコルゲート管7に対し、接近したり離間したりすることが可能となっている。クランプ23をコルゲート管7に接近させることにより、そのコルゲート管7がクランプ23によって挟まれる。この状態でベース部材22をベルトコンベア3の延びる方向に移動させることにより、コルゲート管7をベルトコンベア3の延びる方向に引っ張ることができる。また、クランプ23をコルゲート管7から離間させることにより、クランプ23によって挟まれていたコルゲート管7が開放される。
【0026】
次に、第2スライダ18及び第1スライダ19について詳しく説明する。
図3に示すように、第2スライダ18は、水平方向に延びる取付孔24を有するとともに、その取付孔24の内径を小さくするための小径部25を有している。取付孔24の一方の端部からはコルゲート管7の端部が挿入されている。この取付孔24の内部には、コルゲート管7の第2端部を固定することが可能となっている。取付孔24におけるコルゲート管7の固定位置とは反対側の端部は、エア供給装置10に接続可能なエア供給口26となっている。
【0027】
第2スライダ18に固定されたコルゲート管7の内部には、第1スライダ19が配置されている。
図3の第1スライダ19は、コルゲート管7の第2端部に位置し、且つ、小径部25に隣接している。第1スライダ19にはワイヤ11が連結されている。ワイヤ11は、エア供給口26の内部を通過するとともに、小径部25の内側を通過している。第1スライダ19におけるワイヤ11が連結される面と反対の面には、雄ねじを有するねじ部19aが設けられている。
【0028】
第2スライダ18に対する第1スライダ19の
図3の左方への相対移動は、小径部25に対する第1スライダ19の当接によって禁止される。一方、第2スライダ18に対する第1スライダ19の
図3の右方への相対移動は、小径部25からの第1スライダ19の離間によって許容される。こうした第1スライダ19の移動は、コルゲート管7の内部を通ることによって行われる。
【0029】
図4~6は、第1スライダ19の移動の仕方を示している。
図4に示すように、第2スライダ18のエア供給口26が第2ステーション2のエア供給装置10に接続されているとき、第1スライダ19は次のように移動される。すなわち、エア供給装置10からのエアの供給とバキューム装置9(
図5)によるエアの吸い出しにより、第1スライダ19がワイヤ11をドラム12(
図1)から繰り出させる方向(
図4の右方向)に移動する。
【0030】
コルゲート管7内のエア圧による上述した第1スライダ19の移動により、
図5に示すように第1スライダ19が第1ステーション1に位置するコルゲート管7の第1端部に到達する。バキューム装置9は、コルゲート管7の第1端部から取り外すことが可能である。このようにバキューム装置9をコルゲート管7の第1端部から取り外した状態では、コルゲート管7の第1端部から第1スライダ19を取り出すことが可能になる。
【0031】
第1スライダ19は、
図6に示すようにパイプ8の端部に接続することが可能である。詳しくは、パイプ8の端部に連結治具27を固定し、その連結治具27に対し第1スライダ19のねじ部19aをねじ止めすることにより、第1スライダ19がパイプ8の端部に接続される。この状態のもと、ドラム12(
図1)でワイヤ11を巻き取ることにより、第1スライダ19が連結治具27及びパイプ8と共に
図6の左方に移動される。
【0032】
次に、被覆付パイプの製造方法について説明する。
この製造方法では、上述した被覆付パイプの製造装置を用いた各工程、すなわち第1工程、第2工程、第3工程、第4工程、第5工程、及び第6工程を順に行うことにより、被覆付パイプが形成される。以下、上記製造方法の第1~第6工程について個別に詳しく述べる。
【0033】
[第1工程]
この工程では、被覆付パイプの製造に必要なコルゲート管7及びパイプ8が第1ステーション1(
図1)に搬送されてくる。このときの第1ステーション1では、通管位置に移動する前のコルゲート管7が準備位置に配置された状態となる。第1ステーション1にいる作業者は、
図3に示すように第2スライダ18をコルゲート管7の第2端部に接続する。詳しくは、第2端部からコルゲート管7内に第1スライダ19が挿入される。更に、その第2端部が第2スライダ18の取付孔24に固定される。言い換えれば、準備位置にあるコルゲート管7の第2端部に対して第2スライダ18が接続される。
【0034】
[第2工程]
この工程では、作業者が
図1に示す操作パネル6を操作することにより、ドラム12及びベルトコンベア3を駆動させる。これにより、ドラム12がワイヤ11を巻き取るとともに、ベルトコンベア3のベルト17が正転方向(
図1の左回転方向)に周回する。上記ドラム12によるワイヤ11の巻き取りによって、ドラム12の駆動力がワイヤ11及び第1スライダ19を介して第2スライダ18に伝達される。これにより、第2スライダ18に接続された上記コルゲート管7が準備位置から通管位置に向けて引っ張られる。こうして上記コルゲート管7が、通管位置に至るまで、第2スライダ18及び第1スライダ19と共に一体的に移動する。
【0035】
上述したコルゲート管7の通管位置への移動は、ベルト17の正転方向への周回によって補助される。このときのベルト17の周回速度は、第2スライダ18及び第1スライダ19の移動速度よりも少し速くすることが考えられる。なお、必ずしも、そのようにベルト17の周回速度を設定する必要はなく、例えば上記ベルト17の周回速度を第2スライダ18及び第1スライダ19の移動速度と等しくしてもよい。上述したようにベルト17を正転方向に周回させることにより、コルゲート管7とベルト17との摩擦が低減するため、その摩擦によってコルゲート管7が移動方向と逆方向に引っ張られることを抑制できる。
【0036】
上記コルゲート管7の移動中における第2スライダ18及び第1スライダ19の位置は、ドラム12におけるワイヤ11の巻き取り量に応じて変化する。このため、エンコーダ13によって検出されるワイヤ11の巻き取り量に基づき、第2スライダ18及び第1スライダ19の位置を把握することができる。そして、
図4に示すように、第2スライダ18及び第1スライダ19が第2ステーション2に到達すると、第2スライダ18のエア供給口26が第2ステーション2のエア供給装置10に接続される。第2スライダ18及び第1スライダ19は、上記エア供給口26がエア供給装置10に接続されたときの位置で停止される。すなわち、ドラム12の駆動及びベルトコンベア3の駆動が停止される。
【0037】
[第3工程]
上述したように、第2スライダ18がエア供給装置10に接続された状態で停止したとき、すなわちコルゲート管7が通管位置まで移動したときには、コルゲート管7が第1ステーション1から第2ステーション2まで延びた状態となる。
【0038】
この工程では、第1ステーション1(
図1)にいる作業者が、上記コルゲート管7の第1端部にバキューム装置9を接続し、操作パネル6を操作してバキューム装置9及びエア供給装置10を駆動させる。これにより、バキューム装置9でコルゲート管7内のエアが吸い出されるとともに、
図4に示すように第2スライダ18に接続されたコルゲート管7内にエア供給装置10からのエアが供給される。その結果、第1スライダ19がコルゲート管7内のエア圧により、コルゲート管7の第2端部から第1端部まで移動する。言い換えれば、第1スライダ19は、ドラム12からワイヤ11を繰り出させる方向(
図4の右方向)に移動する。このとき、第1スライダ19は、第2スライダ18に対し離れる方向に相対移動する。
【0039】
図5に示すように、第1スライダ19が第1ステーション1に位置するコルゲート管7の第1端部に到達すると、作業者は操作パネル6(
図1)を操作してバキューム装置9及びエア供給装置10を停止させる。その後、作業者は、コルゲート管7の第1端部からバキューム装置9を取り外し、第1スライダ19を露出させる。
【0040】
[第4工程]
この工程において、作業者は、上記コルゲート管7の第1端部で、
図6に示すように第1スライダ19をパイプ8の端部に接続する。詳しくは、パイプ8の端部に連結治具27を固定し、その連結治具27に対し第1スライダ19のねじ部19aをねじ止めすることにより、第1スライダ19をパイプ8の端部に接続する。
【0041】
[第5工程]
この工程では、作業者は、操作パネル6(
図1)を操作してドラム12を駆動させる。これにより、ワイヤ11がドラム12に巻き取られる。その結果、第1スライダ19が、コルゲート管7の第2端部(第2スライダ18)に向けて
図6に示すように、コルゲート管7の中心線に沿って移動する。このように移動する第1スライダ19は、パイプ8を引っ張ってコルゲート管7へと通管させる。このときの第1スライダ19の位置については、エンコーダ13によって検出されるワイヤ11の巻き取り量に基づき、把握することができる。
【0042】
第1スライダ19がコルゲート管7内を通過するとき、両者の間の摩擦等によってコルゲート管7が第1スライダ19の移動方向に引っ張られる。その結果、コルゲート管7の位置が第2ステーション2寄り(
図1の左寄り)にずれる。こうしたコルゲート管7の位置を元の位置に戻すため、
図2に示す伸び防止機構5が駆動される。
【0043】
詳しくは、コルゲート管7内の第1スライダ19が、伸び防止機構5のクランプ23(実線)に対応する位置を通過するとき、クランプ23を二点鎖線で示すようにコルゲート管7に対し接近させることにより、コルゲート管7がクランプ23によって挟まれる。更に、この状態でベース部材22を第1ステーション1に向かう方向(
図2の右方向)に移動させることにより、第1スライダ19の通過に伴って位置のずれたコルゲート管7が元の位置に戻される。
【0044】
図7に示すように、第1スライダ19が第2ステーション2に位置する第2スライダ18の小径部25に接触するまで移動すると、パイプ8の端部に固定された連結治具27を第2ステーション2の近接センサ14(
図1)が検出する。この検出に基づきドラム12の駆動が停止される。こうしてコルゲート管7内にパイプ8が通管され、被覆付パイプが形成される。
【0045】
[第6工程]
この工程では、第1ステーション1にいる作業者が、操作パネル6(
図1)を操作することにより、製造装置から被覆付パイプを取り出すための図示しない搬送装置を駆動させるとともに、ベルトコンベア3を駆動させる。このときにはベルト17が反転方向(
図1の右回転方向)に周回する。上記搬送装置の駆動により、
図8に示すように、被覆付パイプが通管位置から準備位置に向けて移動する。このときの被覆付パイプの移動は、上記ベルト17の反転方向の周回によって補助される。これにより、コルゲート管7とベルト17との間の摩擦を低減することができ、その摩擦によってコルゲート管7が移動方向と逆方向に引っ張られることを抑制できる。
【0046】
上記被覆付パイプの通管位置から準備位置に向けた移動は、パイプ8に第1スライダ19が接続され、かつコルゲート管7の第2端部に第2スライダ18が接続された状態のままで行われる。これにより、ドラム12からワイヤ11が繰り出されるとともに、上記第2スライダ18が第1ステーション1に移動する。第1ステーション1の準備位置には、次のコルゲート管7が搬送されてくる。このため、上述したように上記第2スライダ18を第1ステーション1に移動することにより、その第2スライダ18が上記準備位置に搬送されてくる次のコルゲート管7の第2端部付近に位置するよう予め移動されることになる。
【0047】
上述したように被覆付パイプが通管位置から準備位置に向けて移動するときには、
図2に示す伸び防止機構5のクランプ23がコルゲート管7から離間させられ、クランプ23によって挟まれていたコルゲート管7が開放される。更に、伸び防止機構5のベース部材22が
図2の二点鎖線で示す位置から実線で示す位置に移動する。そして、第2スライダ18及び第1スライダ19が第1ステーション1(
図1)に到達すると、搬送装置及びドラム12が停止される。
【0048】
その後、第1ステーション1にいる作業者は、コルゲート管7の第2端部から第2スライダ18を外すとともに、パイプ8の端部から第1スライダ19を外す。これにより、形成された被覆付パイプを製造装置から取り外すことが可能になる。そして、上述した第1工程、第2工程、第3工程、第4工程、第5工程、及び第6工程を繰り返すことにより、被覆付パイプが連続して製造される。
【0049】
次に、本実施形態における被覆付パイプの製造装置及び製造方法の作用効果について説明する。
(1)コルゲート管7内にパイプを通管させる際、パイプ8の端部に接続された第1スライダ19が、ドラム12によるワイヤ11の巻き取りにより、コルゲート管7内をその中心線に沿って移動する。それに伴い、パイプ8の端部もコルゲート管7内をその中心線に沿って移動する。このため、コルゲート管7の内壁に対しパイプ8の先端が接触することは抑制される。更に、そうした接触によってコルゲート管7が蛇行することも抑制されるため、上記蛇行に伴ってコルゲート管7内でパイプ8が詰まることも抑制される。従って、コルゲート管7にパイプ8を通す際、上記詰まりを解消させる手間がかかることはなく、その手間による被覆付パイプの製造効率の低下を抑制できる。
【0050】
(2)被覆付パイプを製造する作業者は、第1ステーション1で被覆付パイプを製造するための手作業を行いつつ、第1ステーション1の操作パネル6を操作して製造装置を動作させるだけで、被覆付パイプを製造することができる。このため、被覆付パイプを製造するために必要な作業者の人数を少なく抑えることができる。
【0051】
(3)第1スライダ19がコルゲート管7内を通過するとき、両者の間の摩擦等によってコルゲート管7が第1スライダ19の移動方向に引っ張られ、コルゲート管7の位置が第2ステーション2寄りにずれる。こうしたコルゲート管7の位置ずれは、伸び防止機構5によって解消することができる。すなわち、第1スライダ19の通過に伴って位置のずれたコルゲート管7を、伸び防止機構5の動作によって元の位置に戻すことができる。
【0052】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第1駆動装置としてのエア供給装置10とバキューム装置9とのうち、バキューム装置9を省略してもよい。
【0053】
・第1スライダ19を移動させる流体圧としてエア圧を例示したが、それ以外の流体圧を用いてもよい。
・第1駆動装置として第1スライダ19をエア圧によって移動させるエア供給装置10及びバキューム装置9を例示したが、これに代えて第1スライダ19を磁力等によって移動させる第1駆動装置を用いてもよい。
【0054】
・索状体としてワイヤ11を用いたが、それ以外のものを用いてもよい。
・コルゲート管の製造装置から送り出されるコルゲート管7を、搬送装置等を用いることなく直接的に通管位置まで移動させるようにしてもよい。この場合、第1スライダ19と第2スライダ18とのうち、第2スライダ18を省略し、第1スライダ19のみをスライダとして用いることが考えられる。
【0055】
この構成では、上述したように通管位置に配置されたコルゲート管7の第2端部から上記スライダ(第1スライダ19)が挿入される。このスライダは、エア圧によってコルゲート管7の第2端部から第1端部に移動され、準備位置にあるパイプ8の端部に接続される。その後、ドラム12によるワイヤ11の巻き取りにより、上記スライダをコルゲート管7内において第1端部から第2端部へと移動させることで、上記スライダに接続されたパイプ8を引っ張ってコルゲート管7に通管させる。
【0056】
このようにコルゲート管7にパイプ8を通管させることによって被覆付パイプが形成される。形成後の被覆付パイプは、パイプ8から上記スライダを取り外した状態で、製造装置の外に搬送される。上述した手順を繰り返すことにより、被覆付パイプが連続して製造される。
【0057】
次に、上記実施形態から把握できる技術思想について記載する。
通管位置に配置された直線状のコルゲート管に対して、前記コルゲート管の第1端部からパイプの端部を挿入することによって被覆付パイプを形成する被覆付パイプの製造装置において、
前記コルゲート管内に前記コルゲート管の第2端部から挿入された索状体と、
前記コルゲート管内に配置され、前記索状体と連結されるとともに前記パイプの前記端部に接続することが可能であって、前記コルゲート管内を前記コルゲート管の長手方向へと移動が可能なスライダと、
前記コルゲート管内に流体圧を供給することによって、前記スライダを前記コルゲート管内において前記第2端部から前記第1端部へと移動させる第1駆動装置と、
前記索状体の巻き取りによって、前記スライダを前記コルゲート管内において前記第1端部から前記第2端部へと移動させることで、前記スライダに接続された前記パイプを引っ張って前記コルゲート管に通管させる第2駆動装置と、
を備えた被覆付パイプの製造装置。
【0058】
この構成によれば、コルゲート管内にパイプを通管させる際、パイプの端部に接続されたスライダが、第2駆動装置による索状体の巻き取りにより、コルゲート管の中心線に沿って移動する。それに伴い、パイプの端部もコルゲート管の中心線に沿って移動する。このため、コルゲート管の内壁に対しパイプの先端が接触することは抑制される。更に、そうした接触によってコルゲート管が蛇行することも抑制されるため、上記蛇行に伴ってコルゲート管内でパイプが詰まることも抑制される。従って、コルゲート管にパイプを通す際、上記詰まりを解消させる手間がかかることはなく、その手間による被覆付パイプの製造効率の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0059】
1…第1ステーション、2…第2ステーション、3…ベルトコンベア、4…ガイドレール、5…伸び防止機構、6…操作パネル、7…コルゲート管、8…パイプ、9…バキューム装置、10…エア供給装置、11…ワイヤ、12…ドラム、13…エンコーダ、14…近接センサ、15…ローラ、16…ローラ、17…ベルト、18…第2スライダ、19…第1スライダ、19a…ねじ部、20…アーム、21…車輪、22…ベース部材、23…クランプ、24…取付孔、25…小径部、26…エア供給口、27…連結治具。