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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】搬送システム、搬送方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/667 20240101AFI20240604BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240604BHJP
   G05D 1/639 20240101ALI20240604BHJP
   G05D 1/648 20240101ALI20240604BHJP
【FI】
G05D1/667
G05D1/43
G05D1/639
G05D1/648
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021026156
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022127917
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】石田 裕太郎
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-323478(JP,A)
【文献】特開2007-126254(JP,A)
【文献】特開2002-123316(JP,A)
【文献】特開平11-95840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
G05D 1/639
G05D 1/648
G05D 1/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物に隣接した搬送物に対して所定の制御目標の方向で接近して該搬送物の下に潜り込み昇降手段により該搬送物を持ち上げた状態で移動することで、該搬送物を搬送する搬送ロボットを備える搬送システムであって、
前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の、前記所定の制御目標の方向に対するヨー方向の振れを示す制御誤差の情報を取得する誤差取得手段と、
前記誤差取得手段により取得された制御誤差の情報に基づいて、前記搬送ロボットが前記昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で動き出す際に、前記搬送物と前記障害物が干渉するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により搬送物と障害物が干渉すると判定された場合に、前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の前記所定の制御目標の方向を、前記制御誤差を抑制するように修正する修正手段と、
を備える搬送システム。
【請求項2】
請求項1記載の搬送システムであって、
前記修正手段は、前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の前記所定の制御目標の方向が前記障害物に対して平行である場合に、前記所定の制御目標の方向を、前記制御誤差を抑制するように修正する、
搬送システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の搬送システムであって、
前記判定手段は、前記搬送ロボットが前記昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で動き出した際に、該搬送物と前記障害物とがより接近すると判定した場合に、該搬送物と該障害物が干渉すると判定する、
搬送システム。
【請求項4】
請求項1又は2記載の搬送システムであって、
前記判定手段は、前記搬送ロボットが前記昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で動き出した際に該搬送物と前記障害物とがより接近し、かつする該搬送物と該障害物との隙間が所定値以下であると判定した場合、該搬送物と該障害物が干渉すると判定する、
搬送システム。
【請求項5】
搬送ロボットが、障害物に隣接した搬送物に対して所定の制御目標の方向で接近して該搬送物の下に潜り込み昇降手段により該搬送物を持ち上げた状態で移動することで、該搬送物を搬送する搬送方法であって、
前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の、前記所定の制御目標の方向に対するヨー方向の振れを示す制御誤差の情報を取得するステップと、
前記取得された制御誤差の情報に基づいて、前記搬送ロボットが前記昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で動き出す際に、前記搬送物と前記障害物が干渉するか否かを判定するステップと、
前記搬送物と障害物が干渉すると判定された場合に、前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の前記所定の制御目標の方向を、前記制御誤差を抑制するように修正するステップと、
を含む搬送方法。
【請求項6】
搬送ロボットが、障害物に隣接した搬送物に対して所定の制御目標の方向で接近して該搬送物の下に潜り込み昇降手段により該搬送物を持ち上げた状態で移動することで、該搬送物を搬送するためのプログラムであって、
前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の、前記所定の制御目標の方向に対するヨー方向の振れを示す制御誤差の情報を取得する処理と、
前記取得された制御誤差の情報に基づいて、前記搬送ロボットが前記昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で動き出す際に、前記搬送物と前記障害物が干渉するか否かを判定する処理と、
前記搬送物と障害物が干渉すると判定された場合に、前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の前記所定の制御目標の方向を、前記制御誤差を抑制するように修正する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を搬送する搬送システム、搬送方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送物の下に潜り込み、昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で移動することで搬送物を搬送する搬送ロボットを備える搬送システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6247796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、搬送ロボットが搬送物の下に潜り込む際に、所定の制御目標の方向に対してヨー方向に振れる制御誤差が生じ得る。この制御誤差により、搬送ロボットが昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で動き出す際に、搬送物と障害物が干渉する虞がある。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、搬送ロボットの制御誤差による搬送物と障害物との干渉を抑制できる搬送システム、搬送方法及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
障害物に隣接した搬送物に対して所定の制御目標の方向で接近して該搬送物の下に潜り込み昇降手段により該搬送物を持ち上げた状態で移動することで、該搬送物を搬送する搬送ロボットを備える搬送システムであって、
前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の、前記所定の制御目標の方向に対するヨー方向の振れを示す制御誤差の情報を取得する誤差取得手段と、
前記誤差取得手段により取得された制御誤差の情報に基づいて、前記搬送ロボットが前記昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で動き出す際に、前記搬送物と前記障害物が干渉するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により搬送物と障害物が干渉すると判定された場合に、前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の前記所定の制御目標の方向を、前記制御誤差を抑制するように修正する修正手段と、
を備える搬送システム
である。
この一態様において、前記修正手段は、前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の前記所定の制御目標の方向が前記障害物に対して平行である場合に、前記所定の制御目標の方向を、前記制御誤差を抑制するように修正してもよい。
この一態様において、前記判定手段は、前記搬送ロボットが前記昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で動き出した際に、該搬送物と前記障害物とがより接近すると判定した場合に、該搬送物と該障害物が干渉すると判定してもよい。
この一態様において、前記判定手段は、前記搬送ロボットが前記昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で動き出した際に該搬送物と前記障害物とがより接近し、かつする該搬送物と該障害物との隙間が所定値以下であると判定した場合、該搬送物と該障害物が干渉すると判定してもよい。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
搬送ロボットが、障害物に隣接した搬送物に対して所定の制御目標の方向で接近して該搬送物の下に潜り込み昇降手段により該搬送物を持ち上げた状態で移動することで、該搬送物を搬送する搬送方法であって、
前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の、前記所定の制御目標の方向に対するヨー方向の振れを示す制御誤差の情報を取得するステップと、
前記取得された制御誤差の情報に基づいて、前記搬送ロボットが前記昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で動き出す際に、前記搬送物と前記障害物が干渉するか否かを判定するステップと、
前記搬送物と障害物が干渉すると判定された場合に、前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の前記所定の制御目標の方向を、前記制御誤差を抑制するように修正するステップと、
を含む搬送方法
であってもよい。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
搬送ロボットが、障害物に隣接した搬送物に対して所定の制御目標の方向で接近して該搬送物の下に潜り込み昇降手段により該搬送物を持ち上げた状態で移動することで、該搬送物を搬送するためのプログラムであって、
前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の、前記所定の制御目標の方向に対するヨー方向の振れを示す制御誤差の情報を取得する処理と、
前記取得された制御誤差の情報に基づいて、前記搬送ロボットが前記昇降手段により搬送物を持ち上げた状態で動き出す際に、前記搬送物と前記障害物が干渉するか否かを判定する処理と、
前記搬送物と障害物が干渉すると判定された場合に、前記搬送ロボットが前記搬送物の下に潜り込む際の前記所定の制御目標の方向を、前記制御誤差を抑制するように修正する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム
であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送ロボットの制御誤差による搬送物と障害物との干渉を抑制できる搬送システム、搬送方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態にかかる搬送システムの概観図である。
図2】本実施形態にかかる搬送システムのブロック図である。
図3】ロボット本体が制御目標方向で搬送物の下に潜り込む状態を示す図である。
図4】搬送ロボットが搬送物の下に潜り込む際の制御誤差を示す図である。
図5】本実施形態に係る演算処理部の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
図6】制御誤差が正方向に振れた状態を示す図である。
図7】搬送物と障害物との間に隙間がある場合を示す図である。
図8】制御目標方向を正方向に修正する状態を示す図である。
図9】本実施形態に係る搬送方法のフローを示すフローチャートである。
図10】上位管理装置を備えない搬送システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0010】
図1は、実施形態にかかる搬送システムの概観図である。図1を参照して実施形態にかかる搬送システム1について説明する。搬送システム1において、所定の領域内を自律移動する搬送ロボット200が搬送物を搬送する。
【0011】
図1に示す搬送システム1は、搬送システムの一実施態様である。搬送システム1は、例えば、病院などの施設内で、食器、薬剤、医療器具などを載せた搬送棚を予め設定された場所に搬送することができる。搬送システム1は、主な構成として、上位管理装置100、搬送ロボット200、および環境カメラ500を有している。
【0012】
上位管理装置100は、施設内の状況を環境カメラ500等を用いて把握し、搬送ロボット200を制御して、搬送物の搬送を行う。上位管理装置100は、搬送ロボット200が運用される施設内に設けられていてもよく、施設から離れた場所に設置されていてもよい。上位管理装置100は、搬送ロボット200、環境カメラ500等の施設内の設備と通信可能な通信機能を有するものとする。
【0013】
搬送ロボット200は、病院などの床面を移動する自律移動ロボットとして構成されている。搬送ロボット200は、搬送棚などの搬送物を所定の位置(出発地)から別の位置(目的地)まで搬送することができる。
【0014】
ここで、搬送ロボット200の構成について詳細に説明する。なお、図1に示す搬送ロボット200は、自律移動ロボットの態様の1つであり、他の形態であってもよい。
【0015】
本実施形態に係る搬送ロボット200は、略直方体形状のロボット本体210と、ロボット本体210前面に取り付けられた距離センサ220と、ロボット本体210上面に設けられた昇降部230と、ロボット本体210の左右側面に取り付けられた車輪213と、を有している。
【0016】
ロボット本体210内には、車輪213を駆動する車輪駆動部が設けられている。ロボット本体210の左右側面に一対の車輪213を取り付けられているがこれに限定されない。例えば、ロボット本体210の左右側面に二対の車輪を取り付けてもよく、ロボット本体210の左右側面に一対の車輪と一つの補助輪を取り付けてもよい。
【0017】
距離センサ220は、例えば、レーザセンサ、超音波センサ、カメラなどで構成されている。距離センサ220は、搬送ロボット200周囲の障害物や搬送物の距離情報を取得する。なお、複数の距離センサ220が、ロボット本体210に設けられる構成であってもよく、距離センサ220の設けられる位置も任意でよい。
【0018】
昇降部230は、昇降手段の一具体例である。昇降部230は、ロボット本体210に対して上下に昇降する構成の総称であり、搬送物が載るプレート211、プレート211を上下に昇降させる昇降機構、などで構成される。
【0019】
搬送ロボット200は、距離センサ220により取得された搬送物の距離情報と、後述のルート計画情報と、に基づいて、搬送物に対して所定の制御目標の方向(以下、制御目標方向と称す)で進行して搬送物の下に潜り込む。そして、搬送ロボット200は、搬送物の下に潜り込んだ後、昇降部230により搬送物を持ち上げ、その持ち上げた状態で移動することで搬送物を搬送する。
【0020】
次に、図2を参照して搬送システム1のシステム構成について詳細に説明する。図2は、実施形態にかかる搬送システムのブロック図である。搬送システム1は、上位管理装置100、搬送ロボット200、環境カメラ501~50nを有している。
【0021】
まず、上位管理装置100について説明する。上位管理装置100は、演算処理部110、記憶部120、通信部140を有する。記憶部120は、フロアマップ121、ロボット情報122、ロボット制御パラメータ123、ルート計画情報124が格納される。
【0022】
なお、演算処理部110は、例えば、CPU等のプログラムの実行が可能な演算装置であり、後述の処理を荷物搬送プログラムにより実現することができる。
【0023】
演算処理部110は、予め設定されたスケジュールに従って、搬送ロボット200に動作指示を与える。このとき、演算処理部110は、搬送ロボット200に対する動作指示を、通信部140を介して行う。
【0024】
演算処理部110は、動作指示を行う際に、フロアマップ121を参照して、搬送ロボット200の出発地及び目的地を把握し、ルート計画情報124を参照して、搬送ロボット200に移動手順を伝える。また、演算処理部110は、ロボット情報122及びロボット制御パラメータ123を参照して、演算処理部110の動作条件を決定し、決定した動作条件を、通信部140を介して搬送ロボット200に伝える。
【0025】
演算処理部110は、上記動作条件として、例えば、搬送ロボット200が搬送物の下に潜り込む際の、制御目標方向を設定する。演算処理部110は、設定した制御目標方向を、通信部140を介して搬送ロボット200に対して送信する。
【0026】
通信部140は、搬送ロボット200と通信可能に接続するインタフェースであり、例えばアンテナを介して送信する信号の変調または復調を行う回路等により構成される。通信部140は、演算処理部110に接続しており、無線通信により搬送ロボット200から受け取った所定の信号を演算処理部110に供給する。通信部140は、演算処理部110から受け取った所定の信号を搬送ロボット200に送信する。通信部140は、環境カメラ501~50nとも無線通信可能に構成されている。
【0027】
続いて、搬送ロボット200について説明する。搬送ロボット200は、制御処理部240、センサ群250、車輪駆動部252、記憶部260および通信部270を有している。
【0028】
制御処理部240は、CPU等の演算装置を有する情報処理装置であって、搬送ロボット200の各構成から情報を取得するとともに、各構成に対して指示を送る。制御処理部240は、車輪駆動部252及び昇降部230の動作を制御する。
【0029】
センサ群250は、搬送ロボット200が有する種々のセンサを総称したものである。センサ群250は、上述の距離センサ220、姿勢センサ、ロータリエンコーダなどを含む。センサ群250は、制御処理部240に接続し、検出した信号を制御処理部240に供給する。
【0030】
車輪駆動部252は、車輪213のモータを駆動するためのモータドライバなどを含む。昇降部230は、昇降機構のモータを駆動するためのモータドライバなどを含む。車輪駆動部252及び昇降部230は、制御処理部240に接続され、制御処理部240からの指示を受けて駆動する。
【0031】
記憶部260は、不揮発性メモリを含み、フロアマップおよび動作パラメータを記憶する。フロアマップは、搬送ロボット200が自律移動するために必要なデータベースであって、上位管理装置100の記憶部120が記憶するフロアマップの少なくとも一部と同じ情報が含まれる。フロアマップは、障害物や搬送物の位置情報を含んでいてもよい。動作パラメータは、上位管理装置100の演算処理部110から送信される制御目標方向を含む。
【0032】
搬送ロボット200は、例えば、障害物に隣接した搬送物を搬送する。なお、障害物に隣接した搬送物は、障害物に接触した搬送物だけでなく、障害物に接触していない障害物近傍の搬送物を含む。障害物に隣接した搬送物とは、例えば、壁際に置かれた搬送棚などの搬送物である。
【0033】
制御処理部240は、距離センサ220により検出された障害物の距離情報と、障害物に隣接した搬送物の距離情報と、に基づいて、搬送ロボット200が搬送物の下に潜り込むように、車輪駆動部252を制御する。
【0034】
制御処理部240は、フロアマップ121の障害物及び搬送物の位置情報に基づいて、搬送ロボット200が搬送物の下に潜り込むように、車輪駆動部252を制御してもよい。さらに、制御処理部240は、環境カメラ500により撮影された障害物及び搬送物の画像情報に基づいて、ロボット本体210が搬送物の下に潜り込むように、車輪駆動部252を制御してもよい。
【0035】
図3の(1)に示す如く、制御処理部240は、ルート計画情報124と、距離センサ220により取得された障害物Yに隣接した搬送物Xの距離情報と、に基づいて、搬送ロボット200が搬送物Xに対して制御目標方向で接近して搬送物Xの下に潜り込むように、車輪駆動部252を制御する。制御目標方向は、例えば、搬送物Xが上方から見て矩形状である場合、その一辺に対して垂直方向である。
【0036】
制御処理部240は、距離センサ220により検出された搬送物Xの距離情報に基づいて、搬送ロボット200が障害物Yに隣接した搬送物Xの下に潜り込んだと判断した場合、昇降部230を制御して、搬送物Xを持ち上げる。その後、図3の(2)に示す如く、制御処理部240は、昇降部230により搬送物Xを持ち上げた状態でP方向に移動し、搬送物Xを目的地に搬送するように車輪駆動部252を制御する。
【0037】
ところで、搬送ロボットが搬送物の下に潜り込む際に、制御目標方向に対してヨー方向に振れる制御誤差が生じ得る。従来、この制御誤差により、搬送ロボットが昇降部により搬送物を持ち上げた状態で動き出す際に、搬送物と障害物が干渉する虞があった。
【0038】
例えば、図4に示す如く、搬送ロボット200が搬送物Xの下に潜り込む際に制御目標方向に対して反時計方向に振れる制御誤差αが発生し得る。以下、制御目標方向に対して時計方向に振れている場合を正方向とし、反時計方向に振れている場合を負方向とする。
【0039】
この場合、搬送ロボット200が、昇降部230により搬送物を持ち上げた状態で矢印の方向Pへ動き出す場合、搬送ロボット200が、搬送物Xと障害物Yとをより接近させる方向に移動することになるため、搬送物Xと障害物Yとが干渉することとなる。なお、図4において、制御誤差αの振れ角度は、分かり易くするために実際より大きく表現されている。
【0040】
また、図4に示す如く、搬送ロボット200が搬送物Xの下に潜り込む際の制御目標方向が障害物Yに対して平行である場合に、上述の如く、制御誤差αにより、搬送ロボット200が動き出す際に、搬送物Xと障害物Yの干渉が発生する。
【0041】
これに対し、本実施形態に係る搬送システム1は、搬送物Xと障害物Yが干渉すると判定した場合に、搬送ロボット200が搬送物Xの下に潜り込む際の制御目標方向を、制御誤差αを抑制するように修正する。このように、制御目標方向を、制御誤差αを抑制するように修正することで、制御誤差αによる搬送物Xと障害物Yとの干渉を抑制できる。
【0042】
図5は、本実施形態に係る演算処理部の概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施形態に係る演算処理部110は、搬送ロボット200の制御誤差αを取得する誤差取得部111と、搬送物Xと障害物Yが干渉するか否かを判定する判定部112と、制御目標方向を修正する修正部113と、を有している。
【0043】
誤差取得部111は、誤差取得手段の一具体例である。誤差取得部111は、搬送ロボット200が搬送物Xの下に潜り込む際の、制御目標方向に対する制御誤差αの情報を取得する。
【0044】
制御誤差αは、搬送ロボット200の各部の機構やセンサの特性などによって決まる値で、予め実験的に求めることができる。制御誤差αの情報は、制御目標方向に対するヨー方向の振れ角度及び正負方向を含む。
【0045】
搬送ロボット200の制御誤差αの情報は、例えば、記憶部120のロボット情報に予め設定されていてもよい。誤差取得部111は、記憶部120のロボット情報122から、制御目標方向に対する制御誤差αの情報を取得する。制御誤差αの情報は、搬送ロボット200の記憶部260の動作パラメータに設定されていてもよい。この場合、誤差取得部111は、制御誤差αの情報を搬送ロボット200の記憶部260から取得してもよい。誤差取得部111は、取得した制御誤差αの情報を判定部112に出力する。
【0046】
判定部112は、判定手段の一具体例である。判定部112は、記憶部120に記憶されたフロアマップ121及びルート計画情報124と、誤差取得部111により取得された制御誤差αの情報と、に基づいて、搬送ロボット200が昇降部230により搬送物Xを持ち上げた状態で動き出す際に、搬送物Xと障害物Yが干渉するか否かを判定する。
【0047】
例えば、判定部112は、搬送ロボット200が昇降部230により搬送物Xを持ち上げた状態でP方向に動き出した際に、図4に示す如く、制御誤差αが負方向に振れており、搬送物Xと障害物Yとがより接近すると判定した場合、搬送物Xと障害物Yとが干渉すると判定する。
【0048】
一方で、判定部112は、搬送ロボット200が昇降部230により搬送物Xを持ち上げた状態でP方向に動き出した際に、図6に示す如く、制御誤差αが正方向に振れており、搬送物Xと障害物Yとがより離間すると判定した場合、搬送物Xと障害物Yとが干渉しないと判定する。
【0049】
なお、例えば、図7に示す如く、搬送物Xと障害物Yとの間に隙間dがある場合、判定部112は、上述の如く、動き出し時に搬送物Xと障害物Yとがより接近するという判定だけでなく、搬送物Xと障害物Yとの隙間dの大きさを考慮して、搬送物Xと障害物Yとの間の干渉を判定してもよい。
【0050】
これは、搬送物Xと障害物Yとの隙間dが一定以上の大きさであれば、搬送ロボット200の動き出しで搬送物Xと障害物Yとがより接近しても、その隙間dにより、搬送物Xと障害物Yとの干渉を回避する動作が可能となるからである。
【0051】
具体的には、判定部112は、搬送ロボット200が昇降部230により搬送物Xを持ち上げた状態で動き出した際に、搬送物Xと障害物Yとがより接近すると判定し、かつ、搬送物Xと障害物Yとの隙間dが所定値以下であると判定した場合、搬送物Xと障害物Yとが干渉すると判定する。これにより、搬送物Xと障害物Yとの隙間dの大きさに応じた、より高精度な干渉判定を行うことができる。
【0052】
予め実験的に求められた最適値が上記所定値として判定部112に設定されていてもよい。また、判定部112は、搬送物Xと障害物Yとの隙間dを、記憶部260に記憶されたフロアマップの位置情報、あるいは、距離センサ220により取得された搬送物X及び障害物Yの距離情報に基づいて算出することができる。
【0053】
判定部112は、上述の如く、搬送物Xと障害物Yとが干渉すると判定した場合、その旨を示す干渉信号を修正部113に出力する。
【0054】
修正部113は、修正手段の一具体例である。修正部113は、判定部112により搬送物Xと障害物Yが干渉すると判定された場合に、搬送ロボット200が搬送物Xの下に潜り込む際の制御目標方向を、制御誤差αを抑制するように修正する。このように、制御目標方向を、制御誤差αを抑制するように修正することで、制御誤差αによる搬送物Xと障害物Yとの干渉を抑制できる。
【0055】
例えば、修正部113は、誤差取得部111により取得された制御誤差αの情報に基づいて、図4に示す如く、制御誤差αが負方向に振れていると判断した場合、制御目標方向を正方向に修正することで、その制御誤差αを抑制する。
【0056】
上記制御目標方向の修正量は、例えば、制御誤差αの振れを完全に打ち消す量であるがこれに限定されず、それよりも大きい、或いは小さいものであってもよい。また、上記制御目標方向の修正量として、実験的に求めた最適値が修正部113に予め設定されていてもよい。
【0057】
演算処理部110の修正部113は、上述如く、修正した制御目標方向(以下、修正制御目標方向と称す)を通信部140を介して搬送ロボット200に対して送信する。搬送ロボット200は、搬送物Xに対して、修正部113から送信された修正制御目標方向で進行して搬送物Xの下に潜り込む。
【0058】
従来であれば、例えば、図4に示す如く、搬送ロボット200が搬送物Xの下に潜り込む際に制御目標方向に対して負方向に振れる制御誤差αが発生し得る。これに対し、本実施形態においては、修正部113が制御目標方向を正方向に修正することで、その制御誤差αを抑制する。この場合、搬送ロボット200は、例えば、図8に示す如く、修正制御目標方向で搬送物Xの下に潜り込む。したがって、搬送ロボット200は、搬送物の下に潜り込んだ後、昇降部230により搬送物を持ち上げ、その持ち上げた状態でP方向へ移動する。このとき、搬送物Xと障害物Yとが離間し、搬送物Xと障害物Yとが干渉しない。
【0059】
続いて、本実施形態に係る搬送方法について説明する。図9は、本実施形態に係る搬送方法のフローを示すフローチャートである。
【0060】
演算処理部110の誤差取得部111は、搬送ロボット200が搬送物Xの下に潜り込む際の、制御目標方向に対する制御誤差αの情報を取得し、取得した制御誤差αの情報を判定部112に出力する(ステップS101)。
【0061】
判定部112は、誤差取得部111からの制御誤差αの情報に基づいて、搬送ロボット200が昇降部230により搬送物Xを持ち上げた状態で動き出す際に、搬送物Xと障害物Yが干渉するか否かを判定する(ステップS102)。
【0062】
修正部113は、判定部112により搬送物Xと障害物Yが干渉すると判定された場合(ステップS102のYES)、搬送ロボット200が搬送物Xの下に潜り込む際の制御目標方向を、制御誤差αを抑制するための修正制御目標方向に修正する(ステップS103)。一方で、修正部113は、判定部112により搬送物Xと障害物Yが干渉しないと判定された場合(ステップS102のNO)、本処理を終了する。
【0063】
演算処理部110の修正部113は、修正制御目標方向を、通信部140を介して搬送ロボット200に対して送信する(ステップS104)。搬送ロボット200は、修正部113から送信された修正制御目標方向で進行して搬送物Xの下に潜り込む(ステップS105)。
【0064】
搬送ロボット200は、搬送物Xの下に潜り込んだ後、昇降部230により搬送物Xを持ち上げ、その持ち上げた状態で移動することで搬送物Xを搬送する(ステップS106)。
【0065】
以上、本実施形態に係る搬送システム1は、搬送ロボット200が搬送物の下に潜り込む際の、制御目標方向に対するヨー方向の振れを示す制御誤差の情報を取得する誤差取得部111と、誤差取得部111により取得された制御誤差の情報に基づいて、搬送ロボット200が昇降部230により搬送物を持ち上げた状態で動き出す際に、搬送物と障害物が干渉するか否かを判定する判定部112と、判定部112により搬送物と障害物が干渉すると判定された場合に、搬送ロボット200が搬送物の下に潜り込む際の制御目標方向を、制御誤差を抑制するように修正する修正部113と、を備える。
【0066】
本実施形態によれば、制御目標方向を、制御誤差を抑制するように修正することで、制御誤差による搬送物と障害物との干渉を抑制できる。
【0067】
なお、本実施形態に係る搬送システム1では、上位管理装置100、及び、搬送ロボット200に設けられる機能については、使用に応じていずれの装置側に配置されてもよい。上位管理装置100の演算処理部110や記憶部120などの機能は、搬送ロボット200側に配置されてもよい。
【0068】
例えば、図10に示す如く、搬送システム10は、上位管理装置100を備えない構成であってもよい。搬送ロボット300は、上記実施形態1の構成に加えて、演算処理部110を更に備えている。さらに、搬送システム10は、環境カメラ500を備えることなく、搬送ロボット300単体の構成であってもよい。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0070】
本発明は、例えば、図9に示す処理を、プロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0071】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0072】
プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0073】
上述した実施形態に係る搬送システム1の演算処理部110を構成する各部は、プログラムにより実現するだけでなく、その一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアにより実現することもできる。
【符号の説明】
【0074】
1 搬送システム、10 搬送システム、100 上位管理装置、110 演算処理部、111 誤差取得部、112 判定部、113 修正部、120 記憶部、121 フロアマップ、122 ロボット情報、123 ロボット制御パラメータ、124 ルート計画情報、140 通信部、200 搬送ロボット、210 ロボット本体、211 プレート、213 車輪、220 距離センサ、230 昇降部、240 制御処理部、250 センサ群、252 車輪駆動部、260 記憶部、270 通信部、500 環境カメラ
図1
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図10