(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】アームレスト
(51)【国際特許分類】
B60N 2/75 20180101AFI20240604BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60N2/75
A47C7/54 B
(21)【出願番号】P 2021047029
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲摩 一樹
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-120959(JP,U)
【文献】特開2017-136983(JP,A)
【文献】特開2004-105646(JP,A)
【文献】実開昭57-094535(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/75
A47C 7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前に倒されることでシート装置の肘置きとなり、後ろに起こされることで前記シート装置の背凭れとなるアームレストであって、
前記背凭れとなる時の前面を成す背凭れ面に掛けられる荷重を弾性的に支持するアームレストパッドと、
該アームレストパッドに被せられるアームレストカバーと、
該アームレストカバーの前記背凭れ面上から突出する突出部であって、当該アームレストの前倒しにより前記シート装置のシートクッションの上面と当接する前記突出部と、
前記アームレストパッドの前記突出部と厚さ方向に重なる領域に形成される肉抜き部と、を有
し、
前記アームレストパッドが、パッド本体と、該パッド本体の前記背凭れ面側に積層状に設けられる前記パッド本体よりも軟質な積層パッドと、を有し、
前記肉抜き部が、前記積層パッドに形成されるアームレスト。
【請求項2】
前に倒されることでシート装置の肘置きとなり、後ろに起こされることで前記シート装置の背凭れとなるアームレストであって、
前記背凭れとなる時の前面を成す背凭れ面に掛けられる荷重を弾性的に支持するアームレストパッドと、
該アームレストパッドに被せられるアームレストカバーと、
該アームレストカバーの前記背凭れ面上から突出する突出部であって、当該アームレストの前倒しにより前記シート装置のシートクッションの上面と当接する前記突出部と、
前記アームレストパッドの前記突出部と厚さ方向に重なる領域に形成される肉抜き部と、を有し、
前記突出部が、当該アームレストを前倒しする際の把持部となる帯状のバンドとされるアームレスト。
【請求項3】
請求
項2に記載のアームレストであって、
当該アームレストが、前記シート装置の前倒し可能なシートバックの凹部に前から嵌り込んで前記背凭れとなり、前記シートバックの前倒しにより該シートバックと共に前に倒されて前記バンドを前記シートクッションの上面に当接させるアームレスト。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のアームレストであって、
前記バンドが、シート幅方向に延びて両端が前記アームレストカバーに固定され、前記肉抜き部と前記背凭れ面の面内方向の全域において前記厚さ方向に重なるアームレスト。
【請求項5】
請求項
2から請求項4のいずれかに記載のアームレストであって、
前記アームレストパッドが、パッド本体と、該パッド本体の前記背凭れ面側に積層状に設けられる前記パッド本体よりも軟質な積層パッドと、を有し、
前記肉抜き部が、前記積層パッドに前記厚さ方向に貫通して形成されるアームレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームレストに関する。詳しくは、前に倒されることでシート装置の肘置きとなり、後ろに起こされることでシート装置の背凭れとなるアームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のリヤシートのシートバックの中央部に、展開格納可能なアームレストが設けられた構成が知られている(特許文献1)。上記アームレストは、シートバックの中央部から前に倒されることで肘置きとなり、後ろに起こされることでシートバックの中央部に格納されてシートバックの一部を成す背凭れへと切り替えられる。上記アームレストには、その背凭れ面上に、アームレストを前に引き出す際の把持部となるバンドが突出して取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、アームレストが前に倒された際に突出部となるバンドがシートクッションの上面に当接するため、シートクッションの上面に圧痕が残るという問題がある。そこで、本発明は、前倒しによりシートクッションの上面に突出部が当接しても圧痕が付きにくいアームレストを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のアームレストは次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のアームレストは、前に倒されることでシート装置の肘置きとなり、後ろに起こされることでシート装置の背凭れとなるアームレストである。このアームレストは、背凭れとなる時の前面を成す背凭れ面に掛けられる荷重を弾性的に支持するアームレストパッドと、アームレストパッドに被せられるアームレストカバーと、を有する。また、アームレストは、アームレストカバーの背凭れ面上から突出する突出部であって、アームレストの前倒しによりシート装置のシートクッションの上面と当接する突出部を有する。また、アームレストは、アームレストパッドの突出部と厚さ方向に重なる領域に形成される肉抜き部を有する。
【0007】
上記構成によれば、アームレストパッドに形成される肉抜き部により、アームレストが前倒しされて突出部がシートクッションの上面と当接した際、アームレストパッドの肉抜き部周辺が変形しやすくなる。したがって、シートクッションの上面に突出部が当接しても、シートクッションの上面に圧痕が付きにくい。
【0008】
また、本発明のアームレストは、更に次のように構成されていても良い。アームレストが、シート装置の前倒し可能なシートバックの凹部に前から嵌り込んで背凭れとなり、シートバックの前倒しによりシートバックと共に前に倒されて突出部をシートクッションの上面に当接させる。
【0009】
上記構成によれば、突出部がアームレスト及びシートバックの自重を受けてシートクッションの上面に比較的強く当てられる構成であっても、シートクッションの上面に圧痕が付きにくい。
【0010】
また、本発明のアームレストは、更に次のように構成されていても良い。突出部が、アームレストを前倒しする際の把持部となる帯状のバンドとされ、帯内部に芯材となる樹脂プレートがインサートされた構成とされる。肉抜き部が、樹脂プレートと厚さ方向に重なる領域に形成される。
【0011】
上記構成によれば、突出部が樹脂プレートを内蔵する硬質な構成であっても、肉抜き部によりシートクッションの上面への当たりが和らげられる。そのため、シートクッションの上面に圧痕が付きにくい。
【0012】
また、本発明のアームレストは、更に次のように構成されていても良い。バンドが、シート幅方向に延びて両端がアームレストカバーに固定され、肉抜き部と背凭れ面の面内方向の全域において厚さ方向に重なる。
【0013】
上記構成によれば、バンドが肉抜き部の形成領域全体を覆う構成となるため、アームレストの背凭れ面上に肉抜き部の凹みによるハイライトが形成されることを抑制することができる。また、バンドが肉抜き部によって凹みやすくなった領域に埋まりにくくなるため、乗り心地の低下も抑制することができる。
【0014】
また、本発明のアームレストは、更に次のように構成されていても良い。アームレストパッドが、パッド本体と、パッド本体の背凭れ面側に積層状に設けられるパッド本体よりも軟質な積層パッドと、を有する。肉抜き部が、積層パッドに厚さ方向に貫通して形成される。
【0015】
上記構成によれば、アームレストパッドの背凭れ面側の表面硬さを柔らかくするために積層される積層パッドに貫通孔を打ち抜く簡単な構成により、肉抜き部を適切に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係るアームレストを使用位置に倒した状態を表す斜視図である。
【
図2】アームレストを格納位置に起こした状態を表す斜視図である。
【
図3】シートバックを前に倒した状態を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
《第1の実施形態》
(アームレスト10の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るアームレスト10の構成について、
図1~
図6を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」等、各方向に「シート」を付して示す場合には、後述するシート装置1の向きを基準とした方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図6のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係るアームレスト10は、自動車のリヤシートを構成するシート装置1の中央部に設けられるセンタアームレストとして構成される。上記リヤシートは、同列に3人掛け可能なベンチシートとして構成される。シート装置1は、そのうちの右席部分SRと中央席部分SCとを構成する。右席部分SRと中央席部分SCと図示しない左席部分とのシート幅方向の分割比率は、4:2:4となっている。
【0020】
上記シート装置1は、着座者の背凭れ部を成すシートバック2と、着座部を成すシートクッション3と、頭凭れ部を成すヘッドレスト4と、を有する。シートバック2は、右席部分SRと中央席部分SCとで個別に前倒しすることができるように分割された構成とされる。
【0021】
詳しくは、シートバック2は、その右席部分SRと中央席部分SCの各下端部の左右両サイドが、シートクッション3の対応する各後端部箇所にそれぞれ不図示のリクライナを介して連結された構成とされる。それにより、シートバック2は、その右席部分SRと中央席部分SCとを、それぞれ、下端側のリクライニングヒンジセンタC1のまわりに個別に前に倒して、シートクッション3の上面3Aに重ねるように折り畳むことができるようになっている(
図3参照)。
【0022】
図1~
図2に示すように、シートクッション3は、右席部分SRと中央席部分SCとが互いに一体を成す形に繋がれた構成とされる。アームレスト10は、シートバック2の中央席部分SCに形成された縦長状の格納凹部2A内に展開格納可能なように設けられている。ここで、格納凹部2Aが、本発明の「凹部」に相当する。
【0023】
具体的には、アームレスト10は、その基端部の左右両サイドが、シートバック2の格納凹部2Aの左右両サイドの壁部にそれぞれ不図示のピンを介して連結された構成とされる。それにより、アームレスト10は、その基端側の回転中心C2のまわりにシートバック2から前に倒して肘置きとして展開したり、後ろに起こして格納凹部2A内に格納したりすることができるようになっている。
【0024】
上記アームレスト10は、
図1に示すように、シートバック2から前に倒されることで、シートクッション3の上方に略水平状を成す位置まで倒伏される。それにより、アームレスト10は、その上面にシート装置1の右席部分SRや左席部分(図示省略)に座る着座者が肘を置くことが可能な肘置きとして展開される。
【0025】
また、アームレスト10は、
図2に示すように、上記展開状態から後ろに起こされることで、シートバック2の格納凹部2A内に背凭れ面と面一状を成す状態に嵌め込まれる。それにより、アームレスト10は、その背凭れ面と面一状を成す前面に中央席部分SCに座る着座者が凭れ掛かることが可能な背凭れとして格納される。
【0026】
上記アームレスト10は、上記格納状態からユーザがその背凭れ面側に取り付けられたバンド15を手で掴んで前に引き出すように操作することで、
図1で前述した肘置きとなる位置まで前に倒される。また、アームレスト10は、上記展開状態からユーザがアームレスト10を後ろに起こすように操作することで、
図2で前述した背凭れとなる位置まで後ろに起こされる。
【0027】
上記アームレスト10は、
図3に示すように、シートバック2の中央席部分SCがリクライニングヒンジセンタC1のまわりに前に倒されることにより、シートバック2と共にシートクッション3の上面3Aに重なるように折り畳まれる。それにより、
図4に示すように、アームレスト10は、その背凭れ面側に取り付けられて突出するバンド15が、シートクッション3の上面3Aに押し付けられる。
【0028】
上記押し付けにより、シートクッション3の上面3Aには、上記バンド15から、アームレスト10及びシートバック2の自重に伴う押圧力が掛けられる。しかし、上記アームレスト10には、上記バンド15からシートクッション3の上面3Aに押圧力が掛けられても、シートクッション3の上面3Aに圧痕を付けにくくすることができる貫通孔12B1が内部に形成されている(
図4~
図5参照)。ここで、バンド15が、本発明の「突出部」に相当する。また、貫通孔12B1が、本発明の「肉抜き部」に相当する。
【0029】
(アームレスト10の各部構成について)
以下、アームレスト10の各部の具体的な構成について、詳しく説明する。
図6に示すように、アームレスト10は、その内部骨格を成す金属製のアームレストフレーム11を有する。また、アームレスト10は、アームレストフレーム11に被せられる形にセットされて着座者から受ける荷重を弾性的に支持する発泡ウレタン製のアームレストパッド12を有する。
【0030】
また、アームレスト10は、アームレストパッド12の表面全体に被せられてアームレスト10の意匠面を成すファブリック製のアームレストカバー13を有する。また、アームレスト10は、その先端部に飲物容器を保持することが可能な樹脂製のカップホルダ14を有する。また、アームレスト10は、そのアームレストカバー13の背凭れ面側の領域上に取り付けられたファブリック製のバンド15を有する。
【0031】
アームレストフレーム11は、略U字形状に組まれた構成とされる。アームレストフレーム11は、そのU字の両端に前述した不図示のピンがシート幅方向にそれぞれ差し込まれて結合された構成とされる。アームレストフレーム11は、これら不図示のピンを介して回転中心C2のまわりにシート前後方向に回転可能なように支持された構成とされる。
【0032】
アームレストパッド12は、アームレスト10の基本形状を成す形に成形されたチップウレタン製のパッド本体12Aと、パッド本体12Aの背凭れ面側に積層状に設けられる、チップウレタンよりも軟質なスラブウレタン製の平板状の積層パッド12Bと、から成る2層構造とされる。積層パッド12Bは、パッド本体12Aの背凭れ面側の面中央部に形成された窪みの内部に嵌め込まれて、パッド本体12Aと面一状の背凭れ面を成す形にセットされる。
【0033】
上記のようにパッド本体12Aの背凭れ面側の面中央部に軟質の積層パッド12Bが積層状に設けられることで、アームレスト10が背凭れとして使用される時の背凭れ面側のクッション性が適切に高められている。すなわち、アームレストパッド12は、上記のような2層構造とされていることで、各層の硬さを個別に調節して、アームレスト10が背凭れとして使用される時のクッション感を適切に調節することができる構成とされる。
【0034】
上記アームレストパッド12の積層パッド12Bには、厚さ方向に貫通する横長な方形状の貫通孔12B1が形成されている。上記貫通孔12B1は、前述したアームレストカバー13に取り付けられるバンド15と厚さ方向に重なる領域に沿ってシート幅方向に長尺状に延びる孔形状に形成されている。
【0035】
詳しくは、上記貫通孔12B1は、
図5に示すように、バンド15と厚さ方向に重なる領域内にのみ形成されている。より詳しくは、貫通孔12B1は、バンド15よりもひとまわり小さなシート高さ方向及びシート幅方向の孔寸法を持つ方形の孔形状とされて、バンド15の周縁を残す中間部分と厚さ方向に重なるように配置されている。
【0036】
上記貫通孔12B1は、
図6に示すように、積層パッド12Bのシート幅方向の両端を残す中間領域に形成されている。上記貫通孔12B1は、
図4に示すように、アームレスト10の長さ方向(図示前後方向)の中央よりも先端側(図示前端側)寄りの位置に形成されている。しかし、貫通孔12B1は、パッド本体12Aの肘置き面側(図示上面側)の先端部に組み込まれるカップホルダ14との厚さ方向の重なりを避けるように、カップホルダ14よりもアームレスト10の基端側(図示後側)にずれた位置に配置されている。
【0037】
上記配置により、貫通孔12B1は、パッド本体12Aのカップホルダ14が組み込まれる肉薄な部分との重なりを避けて、パッド本体12Aの肉厚な部分と重なる配置とされている。それにより、アームレストパッド12は、バンド15による圧痕を付けにくくする貫通孔12B1が形成された構成であっても、アームレスト10が背凭れとして使用される時のクッション感が損なわれにくい構成とされている。
【0038】
アームレストカバー13は、アームレストフレーム11に被せられたアームレストパッド12に対し、アームレスト10の基端側から先端側に向かって被せられる袋形状に形成されている。アームレストカバー13は、アームレストパッド12に被せられた先の端末部が、アームレストフレーム11のカップホルダ14が組み付けられる先端部に形成された不図示の止着部に引掛けられて止着されている。
【0039】
それにより、アームレストカバー13は、その張設されたテンションにより、アームレストパッド12をアームレストフレーム11に押さえ付けた状態に保持する。アームレストカバー13は、アームレストパッド12の表面全体に亘って広く浮きや皺を生じないように密着した状態に張設されている。
【0040】
カップホルダ14は、開閉可能なリッドを備え、飲物容器を左右2箇所にセットすることが可能な容器形状に形成されている。上記カップホルダ14は、アームレストフレーム11にアームレストパッド12とアームレストカバー13とを組み付けた後、アームレストカバー13の端末部を外部に対して覆い隠すようにアームレストフレーム11の先端部にスナップフィット嵌合されて組み付けられている。
【0041】
バンド15は、断面筒状の帯形状に縫製され、内部に芯材となる平板状の樹脂プレート15Aがインサートされた構成とされる。上記バンド15は、アームレストカバー13の背凭れ面側の領域上をシート幅方向に横切るように設けられ、両端部がアームレストカバー13の左右両サイドの側面ピースに掛けられて縫合されている。
【0042】
上記バンド15は、その内部の芯材が、背凭れ面側の領域上をシート幅方向に延びる部分にのみ設けられ、アームレストカバー13の左右両サイドの側面ピースに掛かる部分には設けられない構成とされる。上記バンド15は、その自由状態では、その背凭れ面側の領域上をシート幅方向に延びる部分が、アームレストカバー13の背凭れ面上に重なるように密着した状態に設けられる。
【0043】
しかし、バンド15は、その厚さにより、アームレストカバー13から突出した状態として設けられる構成とされる。また、バンド15は、その内部にインサートされた芯材の剛性により、アームレストカバー13よりも硬質な構成とされる。
【0044】
上記バンド15は、ユーザにより掴まれて前に引き出されるように力が加えられることで、内部の芯材を撓ませながらアームレスト10にその力を伝え、アームレスト10に前倒し方向の力を掛ける。上記バンド15は、アームレスト10の長さ方向(図示上下方向)の中央よりも先端側(図示上端側)寄りの位置、すなわちアームレスト10の回転中心C2から大きく離れた位置に形成されている。それにより、バンド15は、ユーザから掛けられる引張りの力を、アームレスト10を前に引き出す大きな力のモーメントとして掛けられるようになっている。
【0045】
上記アームレストパッド12の積層パッド12Bに形成された貫通孔12B1は、バンド15の内部にインサートされた樹脂プレート15Aと厚さ方向に重なる領域に形成される。したがって、
図4に示すように、シートバック2の前倒しによってバンド15がシートクッション3の上面3Aに押し付けられた際、樹脂プレート15Aを内蔵する硬質なバンド15がシートクッション3の上面3Aに強く押し付けられることを貫通孔12B1によって適切に緩和することができる。
【0046】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るアームレスト10は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0047】
すなわち、アームレスト(10)は、前に倒されることでシート装置(1)の肘置きとなり、後ろに起こされることでシート装置(1)の背凭れとなるアームレスト(10)である。このアームレスト(10)は、背凭れとなる時の前面を成す背凭れ面に掛けられる荷重を弾性的に支持するアームレストパッド(12)と、アームレストパッド(12)に被せられるアームレストカバー(13)と、を有する。
【0048】
また、アームレスト(10)は、アームレストカバー(13)の背凭れ面上から突出する突出部(15)であって、アームレスト(10)の前倒しによりシート装置(1)のシートクッション(3)の上面と当接する突出部(15)を有する。また、アームレスト(10)は、アームレストパッド(12)の突出部(15)と厚さ方向に重なる領域に形成される肉抜き部(12B1)を有する。
【0049】
上記構成によれば、アームレストパッド(12)に形成される肉抜き部(12B1)により、アームレスト(10)が前倒しされて突出部(15)がシートクッション(3)の上面と当接した際、アームレストパッド(12)の肉抜き部(12B1)周辺が変形しやすくなる。したがって、シートクッション(3)の上面に突出部(15)が当接しても、シートクッション(3)の上面に圧痕が付きにくい。
【0050】
また、アームレスト(10)が、シート装置(1)の前倒し可能なシートバック(2)の凹部(2A)に前から嵌り込んで背凭れとなり、シートバック(2)の前倒しによりシートバック(2)と共に前に倒されて突出部(15)をシートクッション(3)の上面に当接させる。上記構成によれば、突出部(15)がアームレスト(10)及びシートバック(2)の自重を受けてシートクッション(3)の上面に比較的強く当てられる構成であっても、シートクッション(3)の上面に圧痕が付きにくい。
【0051】
また、突出部(15)が、アームレスト(10)を前倒しする際の把持部となる帯状のバンド(15)とされ、帯内部に芯材となる樹脂プレート(15A)がインサートされた構成とされる。肉抜き部(12B1)が、樹脂プレート(15A)と厚さ方向に重なる領域に形成される。上記構成によれば、突出部(15)が樹脂プレート(15A)を内蔵する硬質な構成であっても、肉抜き部(12B1)によりシートクッション(3)の上面への当たりが和らげられる。そのため、シートクッション(3)の上面に圧痕が付きにくい。
【0052】
また、バンド(15)が、シート幅方向に延びて両端がアームレストカバー(13)に固定され、肉抜き部(12B1)と背凭れ面の面内方向の全域において厚さ方向に重なる。上記構成によれば、バンド(15)が肉抜き部(12B1)の形成領域全体を覆う構成となるため、アームレスト(10)の背凭れ面上に肉抜き部(12B1)の凹みによるハイライトが形成されることを抑制することができる。また、バンド(15)が肉抜き部(12B1)によって凹みやすくなった領域に埋まりにくくなるため、乗り心地の低下も抑制することができる。
【0053】
また、アームレストパッド(12)が、パッド本体(12A)と、パッド本体(12A)の背凭れ面側に積層状に設けられるパッド本体(12A)よりも軟質な積層パッド(12B)と、を有する。肉抜き部(12B1)が、積層パッド(12B)に厚さ方向に貫通して形成される。上記構成によれば、アームレストパッド(12)の背凭れ面側の表面硬さを柔らかくするために積層される積層パッド(12B)に貫通孔(12B1)を打ち抜く簡単な構成により、肉抜き部(12B1)を適切に形成することができる。
【0054】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0055】
1.本発明のアームレストは、自動車のシート装置の他、鉄道等の自動車以外の車両に適用されるシート装置や、航空機、船舶等の車両以外の乗物に適用されるシート装置に適用されるものであっても良い。また、アームレストは、乗物の他、スポーツ施設や、劇場、コンサート会場、イベント会場等の様々な施設に設置される観覧席や、マッサージシート等の非乗物用のシート装置に適用されるものであっても良い。
【0056】
2.アームレストパッドは、1層のみの発泡ウレタンから成る構成であっても良い。また、アームレストパッドがパッド本体とパッド本体よりも軟質な積層パッドとの2層構造から成る場合において、パッド本体と積層パッドとがどちらもモールドウレタンやチップウレタンから成るものであっても良い。
【0057】
3.アームレストは、シートバックの前倒しにより突出部がシートクッションの上面に当接するものの他、シートバックを倒すことなくアームレスト単体を肘置きとして使用するために前に倒すことで突出部がシートクッションの上面に当接する構成であっても良い。アームレストは、シートバックの凹部に前から嵌り込んでシートバックの一部を構成するものの他、アームレストそのものがシートバックの中央席部分全体を構成するものであっても良い。
【0058】
4.アームレストカバーは、ファブリックの他、皮革材から成るものであっても良い。バンドも、ファブリックの他、皮革材から成るものであっても良い。バンドは、帯内部に樹脂プレート等の芯材を備えない構成であっても良い。
【0059】
5.突出部は、バンドの他、ストラップやフック、つまみ等のアームレストカバーの背凭れ面上から突出してアームレストを引出す際の把持部として機能するように設けられるものであっても良い。また、突出部は、アームレストを引出す際の把持部として設けられるものの他、アームレストの意匠性向上や何らかの部材をアームレストに取り付けるための取付部としてアームレストカバーの背凭れ面上から突出して設けられるものであっても良い。
【0060】
6.アームレストパッドに形成される肉抜き部は、アームレストパッドを背凭れ面側から部分的に肉抜きする凹部や内部を部分的に肉抜きする空洞や厚さ方向の全域を肉抜きする貫通孔から成るものであっても良い。また、肉抜き部は、バンド等の突出部と厚さ方向に重なる領域を越えて突出部よりもひとまわり大きな形に形成される構成であっても良い。また、肉抜き部は、バンド等の突出部と面内方向の一部又は全域において厚さ方向に重なる構成であっても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 シート装置
2 シートバック
2A 格納凹部(凹部)
3 シートクッション
3A 上面
4 ヘッドレスト
10 アームレスト
11 アームレストフレーム
12 アームレストパッド
12A パッド本体
12B 積層パッド
12B1 貫通孔(肉抜き部)
13 アームレストカバー
14 カップホルダ
15 バンド(突出部)
15A 樹脂プレート
C1 リクライニングヒンジセンタ
C2 回転中心
SR 右席部分
SC 中央席部分