(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車線逸脱防止装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240604BHJP
B60W 30/12 20200101ALI20240604BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240604BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20240604BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/12
B60W50/14
B60W40/08
(21)【出願番号】P 2021142467
(22)【出願日】2021-09-01
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 眞彬
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-068783(JP,A)
【文献】特開2012-252497(JP,A)
【文献】特開2004-110416(JP,A)
【文献】特開2011-070550(JP,A)
【文献】特開2010-100088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が車線から逸脱する可能性があることを前記自車両の運転者に知らせるための警報を行う警報制御と、前記車線から逸脱する可能性のある前記自車両に自動で操舵力を与えて前記自車両を前記車線に戻す自動操舵を行う自動操舵制御と、を実行する制御装置を備えた車線逸脱防止装置において、
前記制御装置は、
自動操舵許可条件が成立しているときに車線逸脱条件が成立した場合、前記自動操舵制御を実行し、
警報実行条件が成立したときに前記自動操舵制御を実行していない場合において、前記自動操舵許可条件が成立しているとの逸脱回避可能条件が成立していないときには、前記警報のレベルが所定警報レベルとなるように前記警報制御を実行し、
前記警報実行条件が成立したときに前記自動操舵制御を実行していない場合において、前記逸脱回避可能条件が成立しているときには、前記警報制御を実行しない或いは前記警報のレベルが前記所定警報レベルよりも低いレベルとなるように前記警報制御を実行する、
ように構成されている、
車線逸脱防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車線逸脱防止装置において、
前記逸脱回避可能条件は、前記自車両の運転者が該自車両に対する運転操作を行うことができる状態にあるとの条件を含んでいる、
車線逸脱防止装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車線逸脱防止装置において、
前記逸脱回避可能条件は、前記車線を区画する区画物が立体構造物ではないとの条件を含んでいる、
車線逸脱防止装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の車線逸脱防止装置において、
前記逸脱回避可能条件は、前記車線を区画する区画物の外側に前記自車両が接触する可能性のある物体が存在しないとの条件を含んでいる、
車線逸脱防止装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の車線逸脱防止装置において、
前記制御装置は、前記警報実行条件が成立したときに前記逸脱回避可能条件が成立しており、前記警報制御を実行する場合、前記警報実行条件が成立したときに前記逸脱回避可能条件が成立していない場合に比べ、前記警報制御を開始するタイミングを遅らせるように構成されている、
車線逸脱防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車線逸脱防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両が車線から逸脱することを防止するための車線逸脱防止制御として、自車両が車線から逸脱しそうになったときにそのことを自車両の運転者に知らせるための警報を行う警報制御を行ったり、自動で自車両に操舵力を与えて自車両を車線内に戻す自動操舵を行う自動操舵制御を行ったりする車線逸脱防止装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
こうした車線逸脱防止装置として、警報制御を開始するか否かを判定するために用いる判定値と、自動操舵制御を開始するか否かを判定するために用いる判定値と、を個別に設定するようになっている車線逸脱防止装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
警報制御は、車線から逸脱しそうになっている自車両を車線内に戻すための運転操作(逸脱回避操作)を運転者に促すためのものであり、一方、自動操舵制御は、運転者に逸脱回避操作を促すためのものではなく、自動で自車両に操舵力を与えて自車両を車線に戻すためのものであり、それら制御の目的とするところが異なるので、警報制御を開始するか否かを判定するために用いる判定値と、自動操舵制御を開始するか否かを判定するために用いる判定値と、を個別に設定することには、一定の利益がある。
【0006】
しかしながら、判定値を個別に設定していると、例えば、警報が行われ、その警報に気づいた運転者が自発的に逸脱回避操作を行おうとしているうちに、自動操舵制御が開始されることがある。こうした場合、結局のところ、自動操舵制御により自車両が車線に戻されるのであるから、運転者が不要な警報が行われたと感じる可能性がある。即ち、警報に対する煩わしさを運転者に感じさせてしまう可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、自車両が車線から逸脱する可能性があることを運転者に知らせるための警報に対する煩わしさを運転者に感じさせてしまうことを低減することができる車線逸脱防止装置を提供することにある。
【0008】
本発明に係る車線逸脱防止装置は、自車両が車線から逸脱する可能性があることを前記自車両の運転者に知らせるための警報を行う警報制御と、前記車線から逸脱する可能性のある前記自車両に自動で操舵力を与えて前記自車両を前記車線に戻す自動操舵を行う自動操舵制御と、を実行する制御装置を備えている。
【0009】
本発明に係る車線逸脱防止装置において、前記制御装置は、自動操舵許可条件が成立しているときに車線逸脱条件が成立した場合、前記自動操舵制御を実行するように構成されている。又、前記制御装置は、警報実行条件が成立したときに前記自動操舵制御を実行していない場合において、前記自動操舵許可条件が成立しているとの逸脱回避可能条件が成立していないときには、前記警報のレベルが所定警報レベルとなるように前記警報制御を実行するように構成されている。一方、前記制御装置は、前記警報実行条件が成立したときに前記自動操舵制御を実行していない場合において、前記逸脱回避可能条件が成立しているときには、前記警報制御を実行しない或いは前記警報のレベルが前記所定警報レベルよりも低いレベルとなるように前記警報制御を実行するように構成されている。
【0010】
自動操舵許可条件は成立しているが自動操舵制御が実行されていない場合には、その後、車線逸脱条件が成立すれば、自動操舵制御が開始され、その自動操舵制御により自車両が車線から逸脱することが回避される。即ち、自動操舵許可条件は成立しているが自動操舵制御が実行されていないときには、その後に開始されるであろう自動操舵制御により、車線からの自車両の逸脱(自車両の車線逸脱)が回避される可能性が高い。こうしたときに、警報実行条件が成立したからといって、警報制御を開始してしまうと、結局は、自動操舵制御により自車両の車線逸脱が回避されるにもかかわらず、警報が行われたことになり、警報に対する煩わしさを運転者に感じさせてしまう可能性がある。
【0011】
本発明によれば、逸脱回避可能条件は、自動操舵許可条件が成立しているとの条件に設定されている。従って、警報実行条件が成立した時点では自動操舵制御が実行されていないが、後に自動操舵制御が開始され、その自動操舵制御により自車両の車線逸脱が回避される可能性があるときには、警報制御が実行されないか、警報のレベルを下げた警報制御が実行される。このため、警報に対する煩わしさを運転者に感じさせてしまう可能性を低減することができる。
【0012】
本発明に係る車線逸脱防止装置において、前記逸脱回避可能条件は、前記自車両の運転者が該自車両に対する運転操作を行うことができる状態にあるとの条件を含んでいてもよい。
【0013】
運転者が自車両に対する運転操作を行うことができる状態にあれば、自車両が車線から逸脱しそうなときに警報を行わなくても、運転者による自発的な逸脱回避操作(車線からの自車両の逸脱を回避するための運転操作)が行われることが期待できるが、運転者が自車両に対する運転操作を行うことができる状態にないときに警報を行わないと、運転者による自発的な逸脱回避操作が行われることが期待できないので、こうした場合には、自車両の車線逸脱を回避できる可能性をより高くするためにも、警報を行うことが好ましい。
【0014】
本発明によれば、運転者が運転操作を行うことができる状態にあるとの条件が逸脱回避可能条件に含まれるので、警報実行条件が成立しても警報制御を実行しないとの対応又は警報実行条件が成立したときに警報のレベルを下げて警報制御を実行するとの対応は、自車両が車線から逸脱しそうになったときに運転者が運転操作を行うことができる状態にある場合に限り採られることになる。従って、警報制御を実行しなかったり警報のレベルを下げて警報制御を実行したりしても、運転者により逸脱回避操作が自発的に行われることが十分に期待できるので、自車両の車線逸脱を回避できる可能性を確保することができる。
【0015】
又、本発明に係る車線逸脱防止装置において、前記逸脱回避可能条件は、前記車線を区画する区画物が立体構造物ではないとの条件を含んでいてもよい。
【0016】
車線を区画する区画物が立体構造物である状況で自車両が車線から逸脱すると、その立体構造物に自車両が接触してしまう可能性があるので、こうした状況においては、自動操舵制御により自車両の車線逸脱を回避することにより立体構造物への自車両の接触を回避できる可能性が高いとしても、自車両の走行安全性を確保するために、警報を行って逸脱回避操作を行うことを運転者に促すことが好ましい。換言すれば、警報実行条件が成立しても警報制御を実行しないとの対応又は警報実行条件が成立したときに警報のレベルを下げて警報制御を実行するとの対応を採るにしても、そうした対応採るのは、立体構造物への自車両の接触の可能性がない場合に限定されることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、車線を区画する区画物(車線区画物)が立体構造物ではないとの条件が逸脱回避可能条件に含まれるので、警報実行条件が成立しても警報制御を実行しないとの対応又は警報実行条件が成立したときに警報のレベルを下げて警報制御を実行するとの対応は、自車両が車線から逸脱しそうになったときに車線区画物が立体構造物ではない場合に限り採られることになる。従って、警報制御を実行しなかったり警報のレベルを下げて警報制御を実行したりしても、自車両の走行安全性を確保することができる。
【0018】
又、本発明に係る車線逸脱防止装置において、前記逸脱回避可能条件は、前記車線を区画する区画物の外側に前記自車両が接触する可能性のある物体が存在しないとの条件を含んでいてもよい。
【0019】
自車両が車線から逸脱した場合に自車両が衝突する可能性のある物体が車線区画物の外側に存在するときには、自車両の走行安全性を確保するために、警報を行って逸脱回避操作を行うことを運転者に促すことが好ましい。換言すれば、警報実行条件が成立しても警報制御を実行しないとの対応又は警報実行条件が成立したときに警報のレベルを下げて警報制御を実行するとの対応を採るにしても、そういった対応を採るのは、自車両が衝突する可能性のある物体が車線区画物の外側に存在しない場合に限定されることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、車線区画物外側に自車両が接触する可能性のある物体が存在しないとの条件が逸脱回避可能条件に含まれるので、警報実行条件が成立しても警報制御を実行しないとの対応又は警報実行条件が成立したときに警報のレベルを下げて警報制御を実行するとの対応は、自車両が車線から逸脱しそうになったときに自車両が衝突する可能性のある物体が車線区画物の外側に存在しない場合に限り採られることになる。従って、警報制御を実行しなかったり警報のレベルを下げて警報制御を実行したりしても、自車両の走行安全性を確保することができる。
【0021】
又、本発明に係る車線逸脱防止装置において、前記制御装置は、前記警報実行条件が成立したときに前記逸脱回避可能条件が成立しており、前記警報制御を実行する場合、前記警報実行条件が成立したときに前記逸脱回避可能条件が成立していない場合に比べ、前記警報制御を開始するタイミングを遅らせるように構成されていてもよい。
【0022】
警報制御の開始が遅ければ、警報制御による警報のレベルが低くなると言え、又、警報制御の開始が遅ければ、その分、警報制御の実行期間が短くなるので、警報制御による警報のレベルが低くなると言える。
【0023】
本発明によれば、警報実行条件が成立したときに逸脱回避可能条件が成立している場合、警報実行条件が成立したときに逸脱回避可能条件が成立していない場合に比べ、警報制御を開始するタイミングが遅くされる。このため、自動操舵制御により自車両が車線に戻される可能性が高いときには、警報のレベルを下げた警報制御が実行される。従って、警報制御による警報に対する煩わしさを運転者に感じさせてしまう可能性を低減することができる。
【0024】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車線逸脱防止装置及びそれが搭載される車両(自車両)を示した図である。
【
図2】
図2は、自車両が車線から逸脱する方向に走行している場面を示した図である。
【
図3】
図3は、予測車両位置が第1予測位置判定ラインに達した場面を示した図である。
【
図4】
図4は、自動操舵制御により自車両に操舵力が与えられて自車両が車線に戻る場面を示した図である。
【
図5】
図5は、予測車両位置が第2予測位置判定ラインに達した場面を示した図である。
【
図6】
図6は、車線の左側にガードレールが設置されている道路を示した図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る車線逸脱防止装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る車線逸脱防止装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る車線逸脱防止装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車線逸脱防止装置について説明する。
図1に示したように、本発明の実施形態に係る車線逸脱防止装置10は、自車両100に搭載されている。
【0027】
<ECU>
車線逸脱防止装置10は、制御装置としてのECU90を備えている。ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称である。ECU90は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース等を含む。CPUは、ROMに格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。
【0028】
<駆動装置等>
又、自車両100には、駆動装置21、制動装置22及び操舵装置23が搭載されている。
【0029】
<駆動装置>
駆動装置21は、自車両100を走行させるために自車両100に与えられる駆動トルク(駆動力)を出力する装置であり、例えば、内燃機関及びモータ等である。駆動装置21は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、駆動装置21の作動を制御することにより駆動装置21から出力される駆動トルクを制御することができる。
【0030】
<制動装置>
制動装置22は、自車両100を制動するために自車両100に与えられる制動トルク(制動力)を出力する装置であり、例えば、ブレーキ装置である。制動装置22は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、制動装置22の作動を制御することにより制動装置22から出力される制動トルクを制御することができる。
【0031】
<操舵装置>
操舵装置23は、自車両100を操舵するために自車両100に与えられる操舵トルク(操舵力)を出力する装置であり、例えば、パワーステアリング装置である。操舵装置23は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、操舵装置23の作動を制御することにより操舵装置23から出力される操舵トルクを制御することができる。
【0032】
<センサ等>
更に、自車両100には、アクセルペダル31、アクセルペダル操作量センサ32、ブレーキペダル33、ブレーキペダル操作量センサ34、ハンドル35、ステアリングシャフト36、操舵角センサ37、操舵トルクセンサ38、把持状態検出装置40、車両運動量検出装置50、周辺情報検出装置60、運転者姿勢取得装置70及び警報装置80が搭載されている。
【0033】
<アクセルペダル操作量センサ>
アクセルペダル操作量センサ32は、アクセルペダル31の操作量を検出するセンサである。アクセルペダル操作量センサ32は、ECU90に電気的に接続されている。アクセルペダル操作量センサ32は、検出したアクセルペダル31の操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてアクセルペダル31の操作量をアクセルペダル操作量APとして取得する。
【0034】
ECU90は、アクセルペダル操作量AP及び自車両100の走行速度(車速SPD)に基づいて要求駆動トルク(要求駆動力)を演算により取得する。要求駆動トルクは、駆動装置21に出力が要求されている駆動トルクである。ECU90は、要求駆動トルクが出力されるように駆動装置21の作動を制御する。
【0035】
<ブレーキペダル操作量センサ>
ブレーキペダル操作量センサ34は、ブレーキペダル33の操作量を検出するセンサである。ブレーキペダル操作量センサ34は、ECU90に電気的に接続されている。ブレーキペダル操作量センサ34は、検出したブレーキペダル33の操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてブレーキペダル33の操作量をブレーキペダル操作量BPとして取得する。
【0036】
ECU90は、ブレーキペダル操作量BPに基づいて要求制動トルク(要求制動力)を演算により取得する。要求制動トルクは、制動装置22に出力が要求されている制動トルクである。ECU90は、要求制動トルクが出力されるように制動装置22の作動を制御する。
【0037】
<操舵角センサ>
操舵角センサ37は、中立位置に対するステアリングシャフト36の回転角度を検出するセンサである。操舵角センサ37は、ECU90に電気的に接続されている。操舵角センサ37は、検出したステアリングシャフト36の回転角度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてステアリングシャフト36の回転角度を操舵角θとして取得する。
【0038】
<操舵トルクセンサ>
操舵トルクセンサ38は、自車両100の運転者DRがハンドル35を介してステアリングシャフト36に入力したトルクを検出するセンサである。操舵トルクセンサ38は、ECU90に電気的に接続されている。操舵トルクセンサ38は、検出したトルクの情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて運転者DRがハンドル35を介してステアリングシャフト36に入力したトルク(ドライバー入力トルク)を取得する。
【0039】
<把持状態検出装置>
把持状態検出装置40は、運転者DRによるハンドル35の把持状態を検出する装置であり、本例においては、ハンドル35に設置されたタッチセンサ41である。
【0040】
<タッチセンサ>
タッチセンサ41は、運転者DRがハンドル35に触れたことを検出するセンサである。タッチセンサ41は、ECU90に電気的に接続されている。タッチセンサ41は、運転者DRがハンドル35に触れたことを検出すると、運転者DRが触れたハンドル35の部分に係る情報(信号)をECU90に送信する。ECU90は、その情報(信号)に基づいて運転者DRが触れているハンドル35の部分を認識し、その認識したハンドル35の部分に基づいて運転者DRが自車両100に対する運転操作を行うことができる状態であるか否かを判定することができる。運転者DRが自車両100に対する運転操作を行うことができる状態とは、例えば、運転者DRが運転操作にとって適正なハンドル35の部分を両手で握っている状態である。
【0041】
<車両運動量検出装置>
車両運動量検出装置50は、自車両100の運動量を検出する装置であり、本例においては、車速検出装置51、縦加速度センサ52、横加速度センサ53及びヨーレートセンサ54を備えている。
【0042】
<車速検出装置>
車速検出装置51は、自車両100の走行速度(車速)を検出する装置であり、例えば、車輪速センサである。車速検出装置51は、ECU90に電気的に接続されている。車速検出装置51は、検出した自車両100の車速の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100の車速SPDを取得する。
【0043】
ECU90は、取得した操舵角θ、ドライバー入力トルク及び車速SPDに基づいて要求操舵トルクを演算により取得する。要求操舵トルクは、操舵装置23に出力が要求されている操舵トルクである。ECU90は、後述する自動操舵制御を実行する場合を除き、要求操舵トルクが操舵装置23から出力されるように操舵装置23の作動を制御する。
【0044】
<縦加速度センサ>
縦加速度センサ52は、自車両100の前後方向の加速度を検出するセンサである。縦加速度センサ52は、ECU90に電気的に接続されている。縦加速度センサ52は、検出した加速度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100の前後方向の加速度を縦加速度GXとして取得する。
【0045】
<横加速度センサ>
横加速度センサ53は、自車両100の横方向(幅方向)の加速度を検出するセンサである。横加速度センサ53は、ECU90に電気的に接続されている。横加速度センサ53は、検出した加速度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100の横方向の加速度を横加速度GYとして取得する。
【0046】
<ヨーレートセンサ>
ヨーレートセンサ54は、自車両100のヨーレートYRを検出するセンサである。ヨーレートセンサ54は、ECU90に電気的に接続されている。ヨーレートセンサ54は、検出したヨーレートYRの情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100のヨーレートYRを取得する。ヨーレートYRは、例えば、後述する自動操舵制御により自車両100に自動で操舵力を与えて自車両100を旋回させるときに自車両100に与える操舵力の決定にヨーレートYRに利用される。
【0047】
<周辺情報検出装置>
周辺情報検出装置60は、自車両100の周辺の情報を検出する装置であり、本例においては、画像センサ61及び電波センサ62を備えている。画像センサ61は、例えば、カメラである。電波センサ62は、例えば、レーダセンサ(ミリ波レーダ等)である。尚、周辺情報検出装置60は、超音波センサ(クリアランスソナー)等の音波センサやレーザーレーダ(LiDAR)等の光センサを備えていてもよい。
【0048】
<画像センサ>
画像センサ61は、ECU90に電気的に接続されている。画像センサ61は、自車両100の周辺を撮像し、撮像した画像に係る情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報(画像情報)に基づいて自車両100の周辺に関する情報(周辺検出情報INF_D)を取得することができる。
【0049】
<電波センサ>
電波センサ62は、ECU90に電気的に接続されている。電波センサ62は、電波を発信するとともに、物体で反射した電波(反射波)を受信する。電波センサ62は、発信した電波及び受信した電波(反射波)に係る情報(検知結果)をECU90に送信する。別の言い方をすると、電波センサ62は、自車両100の周辺に存在する物体を検知し、その検知した物体に係る情報(検知結果)をECU90に送信する。ECU90は、その情報(電波情報)に基づいて自車両100の周辺に存在する物体に係る情報(周辺検出情報INF_D)を取得することができる。
【0050】
<運転者姿勢取得装置>
運転者姿勢取得装置70は、運転者DRの意識状態を検出する装置であり、本例においては、ドライバーモニターカメラ71である。ドライバーモニターカメラ71は、運転者DRの顔を撮像することができるように運転者DRに向けて自車両100の室内に設けられている。
【0051】
<ドライバーモニターカメラ>
ドライバーモニターカメラ71は、運転者DRの顔を撮像するカメラである。ドライバーモニターカメラ71は、ECU90に電気的に接続されている。ドライバーモニターカメラ71は、撮像した運転者DRの顔の画像に係る情報(画像データ)をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて運転者DRが自車両100に対する運転操作を行うことができる状態であるか否かを判定することができる。運転者DRが自車両100に対する運転操作を行うことができる状態とは、例えば、運転者DRがハンドル35に対して正対している状態であり且つ運転者DRの目が開いている状態(即ち、運転者DRが覚醒している状態)である。
【0052】
<警報装置>
警報装置80は、自車両100が車線LNから逸脱する可能性があることを運転者DRに知らせるための装置であり、本例においては、表示装置81、音響装置82及び振動装置83を備えている。
【0053】
<表示装置>
表示装置81は、画像を表示する装置であり、例えば、コンビネーションメータやヘッドアップディスプレイ(HUD)等のヒューマンマシーンインターフェース(HMI)である。表示装置81は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、表示装置81に各種画像を表示させることができる。
【0054】
<音響装置>
音響装置82は、アナウンス等の音声やブザー音等の電子音を出力する装置であり、例えば、スピーカーやブザーである。音響装置82は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、音響装置82から各種音声又は各種電子音を出力させることができる。
【0055】
<振動装置>
振動装置83は、運転者DRに対して振動を与える装置であり、例えば、ハンドル35や運転席の座席に内蔵されたバイブレータである。振動装置83は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、振動装置83を作動させることにより運転者DRに振動を与えることができる。
【0056】
<車線逸脱防止装置の作動の概要>
次に、車線逸脱防止装置10の作動の概要について説明する。例えば、
図2に示したように、自車両100が左側の区画線201(左側区画線201L)に向かって走行し始めた後、運転者DRが適切な運転操作を行わないと、自車両100が車線LNから逸脱してしまう。
【0057】
そこで、車線逸脱防止装置10は、自車両100が車線LNから逸脱する可能性があると判断した場合、自車両100が車線LNから逸脱することを防止するための車線逸脱防止制御を実行するようになっている。本例において、車線逸脱防止制御は、自動操舵制御及び警報制御を含んでいる。
【0058】
自動操舵制御は、車線LNから逸脱しようとしている自車両100に自動で操舵力を与えて自車両100を車線LNに戻す制御である。警報制御は、自車両100が車線LNから逸脱する可能性があることを運転者DRに知らせるための警報を行う制御である。以下、これら自動操舵制御及び警報制御について説明する。
【0059】
尚、本例において、警報制御による警報は、自車両100が車線LNから逸脱する可能性があることを表す画像の表示装置81での表示及び/又はランプの表示装置81での点灯、自車両100が車線LNから逸脱する可能性があることを表す音声の音響装置82からの出力及び/又はブザー音の音響装置82からの出力、並びに、振動装置83によるハンドル35及び/又は運転席の座席の振動の少なくとも1つによりなされる。
【0060】
<自動操舵制御>
車線逸脱防止装置10は、自動操舵実行条件C_LDPが成立した場合、自動操舵制御を実行する。本例において、自動操舵実行条件C_LDPは、自動操舵許可条件C_ASが成立しており且つ車線逸脱条件(第1逸脱条件C_D1)が成立している場合、成立する。
【0061】
自動操舵許可条件C_ASは、自動操舵制御を適切な形で実行するために必要な要件が満たされているか否かを判定するための条件であり、本例においては、車線逸脱防止装置10が車線区画物200を検知できており且つ現在車速SPD_N(自車両100の現在の車速SPD)が所定車速範囲R_TH内の車速であり且つ運転者DRがオーバーライド操作を行っていない場合、成立する。
【0062】
車線区画物200は、車線LNを区画するものであって、本例においては、車線LNの左側の区画線201(左側区画線201L)、車線LNの右側の区画線201(右側区画線201R)、車線LNの左側の草むらや土等の道路端(左側道路端)、車線LNの右側の草むらや土等の道路端(右側道路端)、車線LNの左側のガードレール(左側ガードレール)及び車線LNの右側のガードレール(右側ガードレール)である。
【0063】
車線逸脱防止装置10は、周辺検出情報INF_Dに基づいて左側区画線201L、右側区画線201R、左側道路端、右側道路端、左側ガードレール及び右側ガードレールを検出することができる。
【0064】
又、オーバーライド操作は、例えば、自車両100が車線LNから逸脱すること(自車両100の車線逸脱)を回避するためのハンドル35に対する操作である。
【0065】
一方、第1逸脱条件C_D1は、
図3に示したように、所定時間T後における自車両100の位置(予測車両位置POS_P)が第1予測位置判定ラインLIN1_Pに達した場合、成立する。本例において、所定時間Tは、車線逸脱防止制御の開始タイミングの判定にとって適切な時間として予め定められる時間である。
【0066】
第1予測位置判定ラインLIN1_Pは、車線区画物200(
図3に示した例においては、左側区画線201L)に沿って延びるラインである。車線逸脱防止装置10は、予測車両位置POS_Pが第1予測位置判定ラインLIN1_Pに達したときに自動操舵制御を開始すれば、自車両100の走行安全性を確保しつつ自動操舵制御により自車両100の車線逸脱を回避することができるように第1予測位置判定ラインLIN1_Pを設定する。
【0067】
車線逸脱防止装置10は、第1予測位置判定ラインLIN1_Pを設定するにあたり、車線区画物200と自車両100の現在の位置(現在車両位置POS_N)との間の距離(区画物距離DIS_200)、現在の車速SPD(現在車速SPD_N)、操舵装置23の操舵性能、許容される自車両100の横加速度及び車線区画物200の種類(車線区画物200が区画線201や道路端等の平坦物であるのか、ガードレールのような立体構造物であるのか)等を考慮して、第1予測位置判定ラインLIN1_Pを設定する。
【0068】
又、車線逸脱防止装置10は、現在車両位置POS_N(自車両100の現在の位置)、現在車速SPD_N(現在の車速SPD)、現在横加速度GY_N(自車両100の現在の横加速度GY)及び所定時間Tに基づいて予測車両位置POS_Pを取得する。具体的には、車線逸脱防止装置10は、現在車両位置POS_N、現在車速SPD_N、現在横加速度GY_N及び所定時間Tに基づく下式1に従った演算により予測車両位置POS_Pを取得する。
【0069】
POS_P=POS_N+SPD_N×T+1/2×GY_N×T2 …(1)
【0070】
尚、本例において、車線逸脱防止装置10は、周辺検出情報INF_Dに基づいて車線区画物200の位置を基準として現在車両位置POS_Nを取得する。
【0071】
車線逸脱防止装置10は、自動操舵制御を開始すると、自車両100が車線LNに戻るように操舵装置23の作動を制御して自車両100に操舵力を与える。これにより、
図4に示したように、自車両100が車線LNに戻される。
【0072】
尚、上述したように、車線逸脱防止装置10は、第1逸脱条件C_D1が成立するか否かを予測車両位置POS_Pが第1予測位置判定ラインLIN1_Pに達したか否かにより判定しているが、第1予測位置判定ラインLIN1_Pとは別の判定ライン(第1現在位置判定ラインLIN1_N)を設定し、現在車両位置POS_Nがその第1現在位置判定ラインLIN1_Nに達したか否かにより、第1逸脱条件C_D1が成立するか否かを判定するように構成されてもよい。
【0073】
この場合、車線逸脱防止装置10は、例えば、上述したように第1予測位置判定ラインLIN1_Pを設定し、これと並行して、現時点から所定時間Tが経過するまでの間に自車両100が横方向に移動する距離(予測横移動距離DIS_P)を取得し、第1予測位置判定ラインLIN1_Pを予測横移動距離DIS_Pだけ車線LN側に移動させたラインを第1現在位置判定ラインLIN1_Nとして設定する。
【0074】
尚、車線逸脱防止装置10は、現在車速SPD_N、現在横加速度GY_N及び所定時間Tに基づく下式2に従った演算により予測横移動距離DIS_Pを取得する。
【0075】
DIS_P=SPD_N×T+1/2×GY_N×T2 …(2)
【0076】
<警報制御>
又、車線逸脱防止装置10は、警報実行条件C_LDAが成立したときに自動操舵制御を実行していない場合において、逸脱回避可能条件C_DPが成立していないときには、警報制御を実行する。
【0077】
一方、車線逸脱防止装置10は、警報実行条件C_LDAが成立したときに自動操舵制御を実行していない場合において、逸脱回避可能条件C_DPが成立しているときには、警報制御を実行しない。
【0078】
又、車線逸脱防止装置10は、警報実行条件C_LDAが成立したときに自動操舵制御を実行している場合には、警報制御を実行しない。
【0079】
ここで、警報実行条件C_LDAは、車線逸脱条件(第2逸脱条件C_D2)が成立した場合、成立する。第2逸脱条件C_D2は、
図5に示したように、予測車両位置POS_Pが第2予測位置判定ラインLIN2_Pに達した場合、成立する。
【0080】
第2予測位置判定ラインLIN2_Pは、車線区画物200(
図5に示した例においては、左側区画線201L)に沿って延びるラインであって、当該ラインに予測車両位置POS_Pが達したときに警報制御を開始すれば、その警報制御による警報に運転者DRが気づき、運転者DRがハンドル35を操作することにより自車両100の車線逸脱を十分に回避することができるラインである。
【0081】
従って、車線逸脱防止装置10は、予測車両位置POS_Pが第2予測位置判定ラインLIN2_Pに達したときに警報制御を開始すれば、自車両100の走行安全性を確保しつつ運転者DRによる逸脱回避操作(自車両100が車線LNから逸脱することを回避するための運転操作)により自車両100の車線逸脱を回避することができるように第2予測位置判定ラインLIN2_Pを設定する。
【0082】
車線逸脱防止装置10は、第2予測位置判定ラインLIN2_Pを設定するにあたり、区画物距離DIS_200(車線区画物200と現在車両位置POS_Nとの間の距離)、現在車速SPD_N、運転者DRの運転操作能力(特に、運転者DRのハンドル操作能力)及び車線区画物200の種類(車線区画物200が区画線や道路端等の平坦物であるのか、ガードレールのような立体構造物であるのか)等を考慮して、第2予測位置判定ラインLIN2_Pを設定する。
【0083】
先に述べたように、車線逸脱防止装置10は、現在車両位置POS_N、現在車速SPD_N、現在横加速度GY_N及び所定時間Tに基づいて予測車両位置POS_Pを取得する。具体的には、車線逸脱防止装置10は、現在車両位置POS_N、現在車速SPD_N、現在横加速度GY_N及び所定時間Tに基づく上式1に従った演算により予測車両位置POS_Pを取得する。
【0084】
又、本例においては、逸脱回避可能条件C_DPは、自動操舵許可条件C_ASが成立している場合、成立する。
【0085】
尚、上述したように、車線逸脱防止装置10は、第2逸脱条件C_D2が成立するか否かを予測車両位置POS_Pが第2予測位置判定ラインLIN2_Pに達したか否かにより判定しているが、第2予測位置判定ラインLIN2_Pとは別の判定ライン(第2現在位置判定ラインLIN2_N)を設定し、現在車両位置POS_Nがその第2現在位置判定ラインLIN2_Nに達したか否かにより、第2逸脱条件C_D2が成立するか否かを判定するように構成されてもよい。
【0086】
この場合、車線逸脱防止装置10は、例えば、上述したように第2予測位置判定ラインLIN2_Pを設定し、これと並行して、予測横移動距離DIS_Pを取得し、第2予測位置判定ラインLIN2_Pを予測横移動距離DIS_Pだけ車線LN側に移動させたラインを第2現在位置判定ラインLIN2_Nとして設定する。
【0087】
尚、先に述べたように、車線逸脱防止装置10は、現在車速SPD_N、現在横加速度GY_N及び所定時間Tに基づく上式2に従った演算により予測横移動距離DIS_Pを取得することができる。
【0088】
<効果>
車線逸脱防止装置10によれば、第1予測位置判定ラインLIN1_Pと第2予測位置判定ラインLIN2_Pは、それぞれ異なる要素を考慮して設定される。従って、予測車両位置POS_Pが第1予測位置判定ラインLIN1_Pに先に達することも、第2予測位置判定ラインLIN2_Pに先に達することもある。従って、予測車両位置POS_Pが第2予測位置判定ラインLIN2_Pに先に達した場合、予測車両位置POS_Pが第1予測位置判定ラインLIN1_Pに達していないので、予測車両位置POS_Pが第2予測位置判定ラインLIN2_Pに達した時点では、第1逸脱条件C_D1が成立しておらず、従って、自動操舵制御は実行されていない。
【0089】
しかしながら、このとき、逸脱回避可能条件C_DPが成立している場合、第1逸脱条件C_D1が成立すれば、自動操舵制御が実行され、自車両100の車線逸脱が自動操舵制御により回避される。従って、警報制御を実行して運転者DRに自車両100の車線逸脱を回避するための運転操作(逸脱回避操作)を行うことを促さなくても、いずれ、第1逸脱条件C_D1が成立して自動操舵制御が開始され、自車両100の車線逸脱が回避されるので、こうした場合に警報制御を実行すると、その警報制御による警報に対する煩わしさを運転者DRに感じさせてしまう可能性がある。
【0090】
車線逸脱防止装置10によれば、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立している場合、警報制御を実行しない。即ち、逸脱回避可能条件C_DPが成立しており、従って、いずれ、第1逸脱条件C_D1が成立し、自動操舵制御が開始され、それにより、自車両100の車線逸脱が回避される場合、警報制御を実行しない。従って、警報制御による警報に対する煩わしさを運転者DRに感じさせてしまう可能性を低減することができる。
【0091】
一方、逸脱回避可能条件C_DPが成立していない場合、第1逸脱条件C_D1が成立しても、自動操舵制御が実行されないので、自車両100の車線逸脱が自動操舵制御により回避される見込みがない。車線逸脱防止装置10によれば、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立していない場合、警報制御が実行される。これにより、自車両100の車線逸脱を回避するための運転操作を行うことが運転者DRに促される。このため、自動操舵制御が実行されなくても、警報制御による警報に気づいた運転者DRが自発的に自車両100の車線逸脱を回避するための運転操作を行うことにより、自車両100の車線逸脱を防止することができる。
【0092】
尚、車線逸脱防止装置10は、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立している場合、警報制御を実行しないのではなく、警報のレベル(警報のレベルLV)が所定警報レベルLV_THよりも低いレベルとなるように警報制御を実行するように構成されてもよい。
【0093】
例えば、車線逸脱防止装置10は、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立している場合、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立していない場合に比べ、警報制御を開始するタイミングを遅らせるように構成されてもよい。
【0094】
この場合、例えば、車線逸脱防止装置10は、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立していない場合には、警報実行条件C_LDAが成立した時点で警報制御を開始するが、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立している場合には、警報実行条件C_LDAが成立してから所定の時間(所定遅延時間T_DLY)だけ経過した時点で警報制御を開始するように構成される。即ち、車線逸脱防止装置10は、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立しており、警報制御を実行する場合、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立していない場合に比べ、警報制御を開始するタイミングを遅らせるように構成される。
【0095】
これによれば、警報制御の開始が遅くなり、その結果、警報制御の実行期間が短くなるので、警報制御による警報のレベルが低下することになる。従って、自動操舵制御により自車両100の車線逸脱が回避されることが見込まれるときに、警報制御による警報に対する煩わしさを運転者DRに感じさせてしまう可能性を低減することができる。
【0096】
或いは、車線逸脱防止装置10は、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立していない場合、警報表示及び警報音の出力を行い、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立している場合、警報表示及び警報振動を行うように構成されてもよい。
【0097】
これによれば、警報実行条件C_LDAが成立したときに逸脱回避可能条件C_DPが成立している場合、警報表示及び警報振動が行われる。一般に、警報としてのレベルは、警報音よりも警報振動のほうが低い。自動操舵制御により自車両100の車線逸脱が回避されることが見込まれるときに、警報制御による警報に対する煩わしさを運転者DRに感じさせてしまう可能性を低減することができる。
【0098】
又、逸脱回避可能条件C_DPに、その時点で自動操舵制御が開始されたと仮定した場合の自車両100の横加速度GY(予測横加速度GY_P)、現在車速SPD_N、現在車両位置POS_N及び所定時間Tに基づいて予測車両位置POS_Pを取得し、その予測車両位置POS_Pにおいて自車両100が車線区画物200から逸脱している距離(最大逸脱距離DIS_MAX)が所定の距離(最大逸脱距離閾値DIS_TH)よりも短いとの条件を含めてもよい。この場合、車線逸脱防止装置10は、例えば、現在車両位置POS_N、現在車速SPD_N、予測横加速度GY_P及び所定時間Tに基づく下式3に従った演算により予測車両位置POS_Pを取得する。
【0099】
POS_P=POS_N+SPD_N×T+1/2×GY_P×T2 …(3)
【0100】
これによれば、警報実行条件C_LDAが成立したときに最大逸脱距離DIS_MAXが最大逸脱距離閾値DIS_THよりも短い場合に限り、警報制御を実行しないとの対応又は警報のレベルを下げて警報制御を実行するとの対応が採られる。
【0101】
一般に、自車両100が車線区画物200を大きく越えてしまうのであれば、警報を実施して運転者DRに逸脱回避操作を行うことを促すことが望ましいが、自車両100が車線区画物200をさほど越えてしまうわけではなければ、警報を実施してまで運転者DRに逸脱回避操作を促す必要性に乏しい。即ち、最大逸脱距離DIS_MAXが最大逸脱距離閾値DIS_THよりも短い場合、警報を実施してまで運転者DRに逸脱回避操作を促す必要性に乏しい。従って、警報実行条件C_LDAが成立したときに最大逸脱距離DIS_MAXが最大逸脱距離閾値DIS_THよりも短い場合に限り、警報制御を実行しないとの対応又は警報のレベルを下げて警報制御を実行するとの対応を採ることにより、警報制御による警報に対する煩わしさを運転者DRに感じさせてしまう可能性を低減することができる。
【0102】
又、逸脱回避可能条件C_DPに、運転者DRが自車両100に対する運転操作を行うことができる状態にあるとの条件を含めてもよい。ここでの運転者DRが自車両100に対する運転操作を行うことができる状態にあるとは、運転者DRが運転操作にとって適正なハンドル35の部分を両手で握っている状態であり且つ運転者DRがハンドル35に対して正対している状態であり且つ運転者DRの目が開いている状態(即ち、運転者DRが覚醒している状態)である。
【0103】
これによれば、運転者DRが運転操作を行うことができる状態にあるとの条件が逸脱回避可能条件C_DPに含まれるので、先に述べた警報実行条件C_LDAが成立しても警報制御を実行しないとの対応又は警報実行条件C_LDAが成立したときに警報のレベルを下げて警報制御を実行するとの対応は、自車両100が車線LNから逸脱しそうになったときに運転者DRが運転操作を行うことができる状態にある場合に限り採られることになる。従って、警報制御を実行しなかったり警報のレベルを下げて警報制御を実行したりしても、運転者DRにより逸脱回避操作が行われることが十分に期待できるので、自車両100の車線逸脱を回避できる可能性を確保することができる。
【0104】
又、逸脱回避可能条件C_DPに、車線区画物200が立体構造物202ではないとの条件を含めてもよい。ここで、立体構造物202は、例えば、
図6に示したように、ガードレールである。車線逸脱防止装置10は、周辺検出情報INF_Dに基づいて立体構造物202を検出することができる。
【0105】
これによれば、車線区画物200が立体構造物ではないとの条件が逸脱回避可能条件C_DPに含まれるので、先に述べた警報実行条件C_LDAが成立しても警報制御を実行しないとの対応又は警報実行条件C_LDAが成立したときに警報のレベルを下げて警報制御を実行するとの対応は、自車両100が車線LNから逸脱しそうになったときに車線区画物200が立体構造物ではない場合に限り採られることになる。従って、警報制御を実行しなかったり警報のレベルを下げて警報制御を実行したりしても、自車両100の走行安全性を確保することができる。
【0106】
又、逸脱回避可能条件C_DPに、車線区画物200の外側に自車両100が接触する可能性のある物体300が存在しないとの条件を含めてもよい。ここで、物体300は、
図2に示したように、歩行者301や他車両302等である。車線逸脱防止装置10は、周辺検出情報INF_Dに基づいて物体300を検出することができる。車線逸脱防止装置10は、物体300を検出した場合、例えば、その物体300が自車両100の進行方向前方の所定の範囲内に存在する場合、車線区画物200の外側に自車両100が接触する可能性のある物体300が存在すると判定する。
【0107】
これによれば、車線区画物200の外側に自車両100が接触する可能性のある物体300が存在しないとの条件が逸脱回避可能条件C_DPに含まれるので、先に述べた警報実行条件C_LDAが成立しても警報制御を実行しないとの対応又は警報実行条件C_LDAが成立したときに警報のレベルを下げて警報制御を実行するとの対応は、自車両100が車線LNから逸脱しそうになったときに自車両100が衝突する可能性のある物体300が車線区画物200の外側に存在しない場合に限り採られることになる。従って、警報制御を実行しなかったり警報のレベルを下げて警報制御を実行したりしても、自車両100の走行安全性を確保することができる。
【0108】
<車線逸脱防止装置の具体的な作動>
次に、車線逸脱防止装置10の具体的な作動について説明する。車線逸脱防止装置10のECU90のCPUは、
図7に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図7に示したルーチンのステップ700から処理を開始し、その処理をステップ705に進め、予測車両位置POS_Pを取得する。次いで、CPUは、処理をステップ710に進め、第1予測位置判定ラインLIN1_Pを設定する。次いで、CPUは、処理をステップ715に進め、第1逸脱条件C_D1が成立しているか否かを判定する。
【0109】
CPUは、ステップ715にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ720に進め、自動操舵許可条件C_ASが成立しているか否かを判定する。
【0110】
CPUは、ステップ720にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ725に進め、自動操舵制御を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ795に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0111】
一方、CPUは、ステップ715又はステップ720にて「No」と判定した場合、処理をステップ795に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0112】
更に、CPUは、
図8に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図8に示したルーチンのステップ800から処理を開始し、その処理をステップ805に進め、予測車両位置POS_Pを取得する。次いで、CPUは、処理をステップ810に進め、第2予測位置判定ラインLIN2_Pを設定する。次いで、CPUは、処理をステップ815に進め、警報実行条件C_LDAが成立しているか否かを判定する。
【0113】
CPUは、ステップ815にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ820に進め、自動操舵制御を実行しているか否かを判定する。
【0114】
CPUは、ステップ820にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ895に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。この場合、警報制御は、実行されない。
【0115】
一方、CPUは、ステップ820にて「No」と判定した場合、処理をステップ825に進め、自動操舵許可条件C_ASが成立しているか否かを判定する。
【0116】
CPUは、ステップ825にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ895に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。この場合、警報制御は実行されない。
【0117】
一方、CPUは、ステップ825にて「No」と判定した場合、処理をステップ830に進め、警報制御を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0118】
又、CPUは、ステップ815にて「No」と判定した場合、処理をステップ895に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0119】
或いは、CPUは、
図8に示したルーチンに代えて、
図9に示したルーチンを実行するように構成されてもよい。この場合、所定のタイミングになると、CPUは、
図9に示したルーチンのステップ900から処理を開始し、その処理をステップ905に進め、予測車両位置POS_Pを取得する。次いで、CPUは、処理をステップ910に進め、第2予測位置判定ラインLIN2_Pを設定する。次いで、CPUは、処理をステップ915に進め、警報実行条件C_LDAが成立しているか否かを判定する。
【0120】
CPUは、ステップ915にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ920に進め、自動操舵制御を実行しているか否かを判定する。
【0121】
CPUは、ステップ920にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ995に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。この場合、警報制御は、実行されない。
【0122】
一方、CPUは、ステップ920にて「No」と判定した場合、処理をステップ925に進め、自動操舵許可条件C_ASが成立しているか否かを判定する。
【0123】
CPUは、ステップ925にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ930に進め、警報のレベルLVを所定警報レベルLV_THよりも低いレベルとした警報制御を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ995に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。この場合、警報制御は実行されない。
【0124】
一方、CPUは、ステップ925にて「No」と判定した場合、処理をステップ935に進め、警報のレベルLVを所定警報レベルLV_THとした警報制御を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ995に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0125】
又、CPUは、ステップ915にて「No」と判定した場合、処理をステップ995に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0126】
以上が車線逸脱防止装置10の具体的な作動である。
【0127】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0128】
10…車線逸脱防止装置、90…ECU、23…操舵装置、50車両運動量検出装置、51…車速検出装置、53…横加速度センサ、60…周囲情報検出装置、61…画像センサ、62…電波センサ、80…警報装置、81…表示装置、82…音響装置、83…振動装置、100…自車両、200…車線区画物、201…区画線、202…立体構造物、300…物体