(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】揮散成分吸着用担体
(51)【国際特許分類】
B01J 20/24 20060101AFI20240604BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240604BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240604BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20240604BHJP
C12J 1/00 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
B01J20/24 B
B01J20/28 Z
B01J20/30
A61L9/01 H
C12J1/00 A
(21)【出願番号】P 2021518402
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018599
(87)【国際公開番号】W WO2020226167
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2019088128
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武田 伸介
(72)【発明者】
【氏名】服部 光男
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-346522(JP,A)
【文献】特開昭57-004229(JP,A)
【文献】国際公開第2013/089025(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/120244(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/24
B01J 20/28
A01M 1/20
A01M 29/12
A23L 27/00
A23L 27/26
A61L 9/01
A61L 9/04
A23J 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A~
Eの特徴を有する、揮散成分吸着用担体。
A.植物性蛋白質を含む多孔質であること、
B.蛋白質含量が乾燥重量あたり75重量%以上、
C.NSIが50以下、
D.嵩比重が0.2g/cm
3以下、
E.吸水倍率が8重量倍以上
【請求項2】
吸油倍率が2重量倍以上である、請求項1記載の揮散成分吸着用担体。
【請求項3】
形態が不定形の顆粒状である、請求項1又は2記載の揮散成分吸着用担体。
【請求項4】
可食性である、請求項1~3の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体を構成材料とする、脱臭用製品。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体を構成材料とし、揮散成分が該担体に吸着されている、揮散成分の揮散用製品。
【請求項7】
芳香剤、害虫防除剤、害虫忌避剤または動物忌避剤である、請求項6記載の揮散成分の揮散用製品。
【請求項8】
請求項1~4の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体と、該担体に吸着された揮散成分を含む、固形風味剤。
【請求項9】
下記A~
Eの特徴を有する担体に、揮散成分を含む水性又は油性の液体含有物を接触させることを特徴とする、揮散成分の吸着方法。
A.植物性蛋白質を含む多孔質であること、
B.蛋白質含量が乾燥重量あたり75重量%以上、
C.NSIが50以下、
D.嵩比重が0.2g/cm
3以下、
E.吸水倍率が8重量倍以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮散成分を吸着するために用いられる担体、及びこれを用いた固形風味剤、脱臭剤、揮散成分の揮散用製品等に関する。
【背景技術】
【0002】
におい成分や薬効成分などの揮散成分の吸着用担体は、脱臭剤、芳香剤、害虫防除剤、粉末香料等に用いられており、非食用では活性炭、シリカゲル、酸化セリウムなど、また食用では乳酸カルシウムなどが知られている(特許文献1,2等)。これらはいずれも無機物であり、活性炭を除き生分解性が低いものがよく用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-176286号公報
【文献】特開平7-322846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、揮散成分の吸着能力が高く、生分解性で環境負荷が少なく、人体にも無害である、植物ベースの新たな揮散成分吸着用担体を提供することを課題とする。また、該担体として可食性のものを提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、大豆などの植物性蛋白質をベースとする、特定の多孔質体が、揮散成分吸着用担体として機能することを見出し、本発明の技術思想を完成するに到った。
【0006】
すなわち本発明は、以下の発明を包含するものである。
(1)下記A~Fの特徴を有する、揮散成分吸着用担体、 A.植物性蛋白質を含む多孔質であること、 B.蛋白質含量が乾燥重量あたり75重量%以上、 C.NSIが50以下、
D.嵩比重が0.2g/cm3以下、 E.吸水倍率が8重量倍以上
(2)蛋白質含量が、乾燥重量あたり90重量%以上である、前記(1)記載の揮散成分吸着用担体、
(3)NSIが30以下である、前記(1)又は(2)記載の揮散成分吸着用担体、
(4)嵩比重が0.12g/cm3以下である、前記(1)~(3)の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体、
(5)吸水倍率が9重量倍以上である、前記(1)~(3)の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体、
(6)吸水倍率が9重量倍以上である、前記(4)記載の揮散成分吸着用担体、
(7)吸油倍率が2重量倍以上である、前記(1)~(6)の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体、
(8)吸油倍率が5重量倍以上である、前記(1)~(6)の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体、
(9)形態が不定形の顆粒状である、前記(1)~(8)の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体、
(10)可食性である、前記(1)~(9)の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体、
(11)該揮散成分吸着用担体は、粉末状植物性蛋白素材を製造原料とし、粉末状態で加圧加熱処理されて顆粒化されたものである、前記(1)~(10)の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体、
(12)前記(1)~(10)の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体を構成材料とする、脱臭用製品、
(13)前記(11)記載の揮散成分吸着用担体を構成材料とする、脱臭用製品、
(14)前記(1)~(10)の何れか1項記載の揮散成分吸着用担体を構成材料とし、揮散成分が該担体に吸着されている、揮散成分の揮散用製品、
(15)前記(11)記載の揮散成分吸着用担体を構成材料とし、揮散成分が該担体に吸着されている、揮散成分の揮散用製品、
(16)芳香剤、害虫防除剤、害虫忌避剤または動物忌避剤である、前記(14)又は(15)記載の揮散成分の揮散用製品、
(17)前記(10)記載の揮散成分吸着用担体と、該担体に吸着された揮散成分を含む、固形風味剤、
(18)下記A~Fの特徴を有する担体に、揮散成分を含む水性又は油性の液体含有物を接触させることを特徴とする、揮散成分の吸着方法、 A.植物性蛋白質を含む多孔質であること、 B.蛋白質含量が乾燥重量あたり75重量%以上、 C.NSIが50以下、 D.嵩比重が0.2g/cm3以下、 E.吸水倍率が8重量倍以上
【発明の効果】
【0007】
本発明により、植物ベースで蛋白質を主成分とする、生分解性の揮散成分吸着用担体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例の試験1で得られた試験品3,4およびその原料である分離大豆蛋白の粒子を顕微鏡で100倍と300倍で観察した図面代用写真である。試験品4では原料の粉末状大豆蛋白の粒子から大きく組織が変化し、不定形に粗大化し、多孔質の顆粒となっていることがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(揮散成分)
本発明の揮散成分吸着用担体に吸着させる「揮散成分」は、常温で揮散性を有する(例えば、25℃における蒸気圧が1×1-6mmHg以上)成分全般を包含する。より具体的には、あらゆる用途において関与する揮散成分や、あらゆる状況においてヒトに影響を及ぼす揮散成分などを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0010】
(におい成分)
本発明の一態様として、揮散成分は「におい成分」である。
本明細書において「におい成分」とは、においに関係する成分(化合物)全般を指す。具体的には、炭化水素、酸素含有化合物、硫黄含有化合物及び窒素含有化合物などが挙げられる。炭化水素としては、例えばトルエン、スチレン及びキシレンなどの芳香族類が挙げられる。酸素含有化合物としては、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド及びi-ブチルアルデヒド等のアルデヒド類、i-ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン及びジアセチル等のケトン類、プロピオン酸、n-酪酸、n-吉草酸及びi-吉草酸等の有機カルボン酸類などが挙げられる。硫黄含有化合物としては、例えばメチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル及び二硫化メチルなどが挙げられる。窒素含有化合物としては、例えばアンモニア及びトリメチルアミンなどのアミン類が挙げられる。ただし、「におい成分」は、上記の例示のみに限定されるものではない。
「におい成分」は、嗅覚を刺激して快適な香りを感じさせる「香気成分」と、不快な臭いを感じさせる「臭気成分」(分解等の劣化により臭気成分を生成する「臭気原因成分」を含む)のいずれをも包含する。
該臭気成分を含む臭気としては、衣服、寝具、住宅や病院や老人ホーム等居住空間、工場や職場等の屋内、また日常生活において生じる、タバコ臭、動物(ペット)臭、ヒト加齢臭(体臭)、糞尿臭(トイレ)、腐敗臭(生ゴミ、排水管、グリストラップ等)、VOCガス臭(車の排気、ガソリン、エポキシ、接着剤、塗料等の揮発性有機ガス臭、建材や家具の臭い)、火災臭、カビ臭、生活臭、ヒトの腐敗臭等の悪臭が挙げられる。
また、該香気成分を含む香気としては、飲食品、化粧品、香水、芳香剤、アロマ(樹液)、香料等から生じる好ましい香りが挙げられる。
【0011】
(薬効成分)
本発明の他の一態様として、揮散成分は「薬効成分」である。例えば害虫防除活性を有する化合物や、動物忌避活性を有する化合物等が挙げられ、特に限定はされるものではない。例えば具体的な薬効成分としては、ピレトリン等のピレスロイド系殺虫成分、ジクロルボス等の有機リン系殺虫成分、プロポクスル等のカーバメート系殺虫成分、β-ナフトール、ベンゼン、酢酸エチル、ニンニク、木酢液、木タール、オオカミ尿、ヒトデサポニン等の動物忌避成分等が挙げられる。
【0012】
以下、本発明の揮散成分吸着用担体の特徴を具体的に説明する。
【0013】
A.植物性蛋白質ベースの多孔質体
本発明の揮散成分吸着用担体は、植物性蛋白質を含む多孔質の構造を有するものである。
植物性蛋白質は、植物性原料から取得された蛋白質であり、例えば大豆、エンドウ、緑豆、ヒヨコ豆、落花生、アーモンド、ルピナス、キマメ、ナタ豆、ツル豆、インゲン豆、小豆、ササゲ、レンズ豆、ソラ豆、イナゴ豆などの豆類や、ナタネ種子(特にキャノーラ品種)、ヒマワリ種子、綿実種子、ココナッツ等の種子類や、小麦、大麦、ライ麦、米、トウモロコシ等の穀類などから取得された蛋白質が挙げられる。「多孔質」とは、木炭やゼオライトのように多数の細孔を持つことをいう。
【0014】
B.蛋白質含量
本発明の揮散成分吸着用担体は、蛋白質を乾燥重量あたり50重量%以上含有することが特徴である。該蛋白質含量は、下限として乾燥重量あたり55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、特に75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、又は90重量%以上であることができる。また該含量は、乾燥重量あたり99重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下又は80重量%以下であることができる。
なお、蛋白質の含量は、ケルダール法により分析される窒素量に6.25の窒素換算係数を乗じて求めるものとする。
【0015】
C.水溶性(低水溶性)
本発明の揮散成分吸着用担体は、低水溶性を示す。その水溶性の指標としては、水溶性窒素指数(Nitrogen Solubility Index:NSI)を用いることができ、NSIが低いほど低水溶性である。低水溶性の指標として、本発明の揮散成分吸着用担体は、NSIが50以下、好ましくは45以下、40以下、好ましくは35以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下が適当である。
【0016】
なお、NSIは所定の方法に基づき、全窒素量に占める水溶性窒素(粗蛋白)の比率(重量%)で表すことができ、本発明においては以下の方法に準じて測定された値とする。
すなわち、試料3gに60mlの水を加え、37℃で1時間プロペラ攪拌した後、1400×gにて10分間遠心分離し、上澄み液(I)を採取する。次に、残った沈殿に再度水100mlを加え、再度37℃で1時間プロペラ撹拌した後、遠心分離し、上澄み液(II)を採取する。(I)液および(II)液を合わせ、その混合液に水を加えて250mlとする。これを濾紙(NO.5)にて濾過した後、濾液中の窒素含量をケルダール法にて測定する。同時に試料中の窒素量をケルダール法で測定し、濾液として回収された窒素量(水溶性窒素)の試料中の全窒素量に対する割合を重量%として表したものをNSIとする。
【0017】
D.嵩比重
本発明の揮散成分吸着用担体は、嵩比重が小さいことが特徴であり、具体的には0.2g/cm3以下であり、好ましくは0.15g/cm3以下、より好ましくは0.12g/cm3以下、さらに好ましくは0.1g/cm3以下、最も好ましくは0.1g/cm3未満である。
【0018】
E.吸水倍率
本発明の揮散成分吸着用担体は、吸水性が従来の二軸エクストルーダーで製造される組織状大豆蛋白のような多孔質体と比較して高いことが特徴である。吸水性が高いことは、吸水させる液体中に含まれる揮散成分をより多く吸着できることを意味する。吸水性の高さを表す指標として、吸水倍率を用いることができる。本発明の揮散成分吸着用担体は、吸水倍率が7.5重量倍以上であり、特に8重量倍以上が好ましく、8.5重量倍以上又は9重量倍以上であることもできる。これに対して従来の市販の組織状大豆蛋白では約3.3~7.4重量倍程度である。なお、吸水倍率は以下の方法により測定する。
【0019】
・吸水倍率の測定条件
試料10gに80℃の水100gを加える。20分間吸水後、30meshのザルで水を切り、吸水後の試料の重量(Xg)を測定する。そして次の式により吸水倍率(Y)を求める。
Y=(X-10)/10
【0020】
F.吸油倍率
本発明の揮散成分吸着用担体は、ある態様では、吸油性が従来の二軸エクストルーダーで製造される組織状大豆蛋白のような多孔質体と比較して高いことも特徴となり得り得る。吸油性の高さを表す指標として、吸油倍率を用いることができる。本発明の揮散成分吸着用担体は、吸油倍率が2重量倍以上であり、特に3重量倍以上が好ましく、4重量倍以上、5重量倍以上又は6重量倍以上であることもできる。これに対して従来の市販の組織状大豆蛋白では約0.8~1.7重量倍程度で、あまり吸油性は高くなかった。すなわち、本発明の揮散成分吸着用担体は、従来の組織状大豆蛋白よりも3倍以上の吸油倍率を示しうる。なお、吸油倍率は以下の方法により測定する。
【0021】
・吸油倍率の測定条件
試料10gに80℃のパーム油100gを加える。20分間吸油後、30meshのザルで油を切り、吸油後の試料の重量(Xg)を測定する。そして次の式により吸油倍率(Z)を求める。
Z=(X-10)/10
【0022】
G.形態(顆粒状、不定形、粒子径)
本発明の揮散成分吸着用担体の形態は、典型的には顆粒状である。本発明において「顆粒」とは粉末よりも粒径の大きい粒を意味する。
顆粒の大きさは特に限定されないが、国際規格「ISO 3301-1」に準拠した篩いにより、全顆粒重量の90重量%以上が、42メッシュにオンするものであることが適当である。ただし、本発明の揮散成分吸着用担体は適宜粉砕して用いることもでき、その場合はより細かい顆粒状ないし粉末状となる。また、該担体は各顆粒どうしを結着させて用いることもでき、その場合は顆粒よりも大きな塊状となり得る。
【0023】
本発明の揮散成分吸着用担体は、原料粉体の加圧加熱処理により、粉体同士が集合、結着し、粗大化した粒子となるためか、典型的には特定の決まった形状を有さない、いわゆる不定形の顆粒である。一方、定形の顆粒としては、二軸エクストルーダーで製造される組織状蛋白素材や、押出し造粒された顆粒などがある。組織状蛋白素材は、装置内で原料と水を混練しつつ形成させた生地を加圧加熱処理して膨化させつつ、装置の先端に取り付けられた定形のダイから常圧下に押し出し、その出口において一定間隔で定形的に切断成形して得られる。そのため、本発明の揮散成分吸着用担体は二軸エクストルーダーで製造されるような多孔質体とは形状において区別される。
【0024】
(揮散成分吸着用担体の製造)
以下、本発明の揮散成分吸着用担体の製造態様について、具体的に説明する。
【0025】
○製造原料
本発明のような蛋白質含量が乾燥重量あたり75重量%以上の揮散成分吸着用担体を得るためには、より高蛋白質の原料を用いる必要があり、典型的には「粉末状植物性蛋白素材」を該担体の製造原料に用いることができる。これは、原料である植物性原料から、蛋白質以外の成分、すなわち脂質、可溶性糖質、澱粉、不溶性繊維、ミネラルなどの一部又は全部を除去し、蛋白質の含量がより濃縮されたものを粉末化した蛋白素材をいう。その蛋白質含量は固形分中75重量%以上、80重量%以上又は90重量%以上のものを用いることができる。
【0026】
粉末状植物性蛋白素材は、単一の種類を用いるだけでなく、複数の種類を所望の比率で粉混合し、該担体の製造原料として供してもよい。この場合、上述した粉末状植物性蛋白素材の固形分中の蛋白質含量は、該混合物の値を意味する。また例えば粉末状植物性蛋白素材と必要により粉末状動物性蛋白素材を用いたりすることができる。より具体的には粉末状大豆蛋白素材と粉末状乳蛋白素材を1:10~10:1の比率で混合し、これを原料として供することもできる。
また、粉末状植物性蛋白素材以外の他の可食性素材、又は非可食性素材を適宜混合することもでき、これらは粉末であることが好ましいが、粉体加圧加熱の操作において影響がない範囲であれば液状で混合してもよい。可食性素材としては、例えば、澱粉、水溶性食物繊維、糖類、塩類、調味料、酸味料、甘味料、苦味料、油脂、乳化剤、抗酸化剤、ビタミン類、微量栄養素、色素等が挙げられる。
【0027】
ここでは大豆を例として粉末状大豆蛋白素材の典型的かつ非限定的な製造例を以下に挙げる。他の植物性原料を用いても下記の製造例に準じて粉末状植物性蛋白素材を製造することができる。
I)抽出工程
大豆原料として脱脂大豆を使用し、これに加水し攪拌等して懸濁液(スラリー)とし、蛋白質を水で抽出する。水は中性~アルカリ性のpHとすることができ、塩化カルシウム等の塩を含むこともできる。これを遠心分離等の固液分離手段でオカラを分離し、蛋白質抽出液(いわゆる豆乳)を得る。この段階で加熱殺菌し、噴霧乾燥したものが、いわゆる脱脂豆乳粉末であり、これを粉末状植物性蛋白素材として用いることもできる。
II)酸沈殿工程
次に蛋白質抽出液に塩酸やクエン酸等の酸を添加し、該抽出液のpHを大豆蛋白質の等電点であるpH4~5に調整し、蛋白質を不溶化させて酸沈殿させる。次に遠心分離等の固液分離手段により酸可溶性成分である糖質や灰分を含む上清(いわゆるホエー)を除去して、酸不溶性成分を含む「酸沈殿カード」を回収する。この段階で噴霧乾燥したものが、いわゆるカードパウダーであり、これを粉末状植物性蛋白素材として用いることもできる。
III)中和工程
次に酸沈殿カードに再度加水し、必要により該カードを水で洗浄後、「カードスラリー」を得る。そして該スラリーに水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリを加えて中和し、「中和スラリー」を得る。
IV)殺菌・粉末化工程
次に中和スラリーを加熱殺菌し、スプレードライヤー等により噴霧乾燥し、必要により流動層造粒を経て、いわゆる分離大豆蛋白を得る。
ただし、粉末状大豆蛋白素材は、上記製造例にて製造されるものには限定されるものではない。大豆原料としては脱脂大豆の代わりに全脂大豆や部分脱脂大豆などの種々の大豆原料を用いることもできる。抽出手段も種々の抽出条件や装置を適用できる。蛋白質抽出液からホエーを除去する方法として酸沈殿を行う代わりに限外濾過膜等による膜濃縮を行うこともでき、その場合は中和工程は必ずしも必要ではない。さらに、大豆原料から予め酸性水やアルコールにより洗浄してホエーを除去した後に、中性ないしアルカリ性の水で蛋白質を抽出する方法を適用して製造することもできる。また、上記の何れかの段階にて蛋白質の溶液にプロテアーゼを作用させ、蛋白質を部分加水分解することもできる。
【0028】
本発明の原料に用いる粉末状植物性蛋白素材は、高水溶性であるものを用いることができる。高水溶性の指標として、NSI(Nitrogen Solubility Index:窒素溶解指数)は少なくとも60以上であり、65以上、70以上、75以上、80以上、82以上、85以上、90以上、92以上、94以上又は96以上の場合もあり、より高いNSIの方が好ましい。
【0029】
○粉末状態での加圧加熱処理による顆粒化
本発明の揮散成分吸着用担体を得るための、少なくとも一つの加工方法は、上記の粉末状植物性蛋白素材を、水系下ではなく、粉末状態で水蒸気による直接加熱方式で加圧加熱処理する方法である。かかる加工工程により、粉末状植物性蛋白素材が顆粒化され、本発明の揮散成分吸着用担体を製造することができる。
【0030】
該加圧加熱処理における圧力は、揮散成分吸着用担体が所望の品質となるように適宜設定することができるが、好ましくは0.3MPa以上又は0.4MPa以上とすることができ、また該加熱圧力は0.9MPa以下、0.8MPa以以下、0.7MPa以下、0.6MPa以下、0.5MPa以下又は0.4MPa以下とすることができる。さらに一つの好ましい態様として、0.3~0.7MPaの範囲を選択できる。
【0031】
該加圧加熱処理における温度は、圧力に応じて変化するものであり、加圧状態であるため100℃を超える温度、態様によっては120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上又は170℃以上となり得る。温度の上限は設定されないが、通常は250℃以下である。
【0032】
該加圧加熱処理の加熱時間は、揮散成分吸着用担体が所望の品質となるように、加熱温度との組合せを考慮して適宜設定することができるが、短時間の方が好ましく、1分以下、30秒以下、20秒以下、10秒以下、5秒以下、2秒以下、1秒以下、特に0.5秒以下又は0.3秒以下とすることができる。また該加熱時間は0.00001秒以上、0001秒以上又は0.001秒以上とすることができる。さらに一つの好ましい態様として、0.00001~2秒や0.0001~1秒、0.001~0.5秒の範囲を選択できる。
【0033】
該加圧加熱処理の加熱方式には、大きな分類として直接加熱方式と間接加熱方式があるが、本発明の揮散成分吸着用担体を得るための好ましい態様は、水蒸気による直接加熱方式を採用することである。かかる加圧加熱処理を行うことができる粉体加熱処理装置としては、気流式粉体殺菌装置である、「KPU」((株)大川原製作所)、「SKS-50」((株)セイシン企業)、「Sonic Stera」((株)フジワラテクノアート製)やこれらの改良タイプ等などが挙げられる。このように、過熱水蒸気等の水蒸気による直接加熱方式によって、粉末状植物性蛋白素材の粉末を直接水蒸気に曝露させて加圧加熱処理することにより、粉末状植物性蛋白素材が集合して顆粒化させることができる。
【0034】
さらに、本発明では、直接加熱方式の加圧加熱処理の中で、粉末状植物性蛋白素材を粉末状態で垂直方向に落下させつつ、水蒸気による直接加熱方式で加圧加熱処理することが好ましい。このような加熱方式を実施するための加熱加圧装置は、装置内に導入された粉体が垂直方向に落下できる閉鎖系の加熱空間が備えられており、その空間内を粉体が落下する間に加圧状態で水蒸気を接触させる機構を有する装置が好ましい。本発明においては、このような加圧加熱装置を「縦型タイプ」と称する。縦型タイプの態様として、国際公開WO2009/145198号に開示されるような粉粒体の殺菌装置を加圧加熱装置に応用することができ、具体的には市販の「Sonic Stera」((株)フジワラテクノアート製)を用いることができる。
これにより、より吸水性が高く、揮散成分の吸着性に優れた揮散成分吸着用担体の製造を可能とする。
【0035】
一方、水蒸気により加圧加熱される閉鎖系の加熱空間が水平方向に配置されている、いわゆる「横型タイプ」の加圧加熱装置を用いて、水溶性の高い植物性蛋白素材を原料として粉体加熱をすると、装置内部に粉体が張り付いてしまう場合があり、製造効率が非効率となる。また、横型タイプの加圧加熱装置は縦型タイプのように極短時間での加圧加熱ができにくいためか、メカニズムは不明であるが、特許文献4によると、得られる顆粒の吸水倍率が2~3倍程度と記載されており、吸水性が十分ではない。
【0036】
また、従来の組織状蛋白素材の製造に用いられていた二軸エクストルーダーは、粉体殺菌装置としても用いられているが、間接加熱方式の加圧加熱処理であり、水蒸気が直接粉体に曝露される加熱方式ではないため、本発明の加圧加熱処理とは方式が全く異なる方法である。
【0037】
以上により製造された顆粒は、そのまま揮散成分吸着用担体として製品とすることができる。また必要により該顆粒をさらに加工することができ、例えば適当な粒度に粉砕又は解砕することができる。また分級機に供して所望の粒度範囲の顆粒に分画して整粒した揮散成分吸着用担体を得ることができる。また一方で、該顆粒を結着させて特定の大きさの塊状に成形することもできる。ある態様では、本発明の揮散成分吸着用担体は、可食性であることができる。
【0038】
(揮散成分吸着用担体の用途・使用方法)
本発明の揮散成分吸着用担体は、吸水性及び吸油性のいずれにも優れているため、におい成分もしくはその発生源を含む、あるいは薬効成分を含む、水性又は油性の液体含有物を接触させてより多くの液体を吸収することができる。そしてこの際、該液体含有物中のにおい成分あるいは薬効成分を吸着し、保持することができる。したがって、本発明の揮散成分吸着用担体の被吸着対象は、水性又は油性の液体含有物であるのが好ましい。使用方法としては、水性又は油性の液体含有物中に本担体を添加する、本担体に水性又は油性の液体含有物を添加もしくは噴霧する、などの態様が挙げられる。
本発明の揮散成分吸着用担体は、植物性蛋白質を主体とする植物ベースの蛋白質性の担体であるので、生分解性であり、使用後に土壌に廃棄しても環境負荷が少ないものである。
【0039】
(脱臭用製品)
本発明の脱臭用製品は、本発明の揮散成分吸着用担体を構成材料とするものであり、該脱臭用製品の形態は特に限定されない。好ましくは、該脱臭用製品の使用時に、臭気成分が含まれる水性又は油性の液体含有物である被脱臭対象が、該担体に吸臭されることにより、脱臭される態様が適当である。
本発明に係る脱臭用製品は、食品、飲料、上水、下水、汚泥、飼育水、養殖水、糞尿、池水、河川水、湖水、海水、生活排水、工場廃水、産業廃水、廃油、廃溶剤、食品や飲料の廃棄物、その他のあらゆる被脱臭対象に使用できる。例えば食品の場合、生肉や鮮魚に接触させることにより、臭気成分を吸臭することができるが、例えば揮散成分吸着用担体をシート状に加工したものを接触させることができる。また糞尿の場合、オムツの吸水部材として揮散成分吸着用担体を用いることができる。
【0040】
(揮散成分の揮散用製品)
本発明の揮散成分の揮散用製品は、本発明の揮散成分吸着用担体を構成材料とし、揮散成分が該担体に吸着されている。該揮散成分の揮散用製品の形態は、特に限定されない。好ましくは、香気成分や薬効成分等の揮散成分を含む水性又は油性の液体含有物を、予め本発明の揮散成分吸着用担体に吸収させておき、必要により該液体含有物を乾燥させて、これを任意の形態で製品化した態様が適当である。
本発明に係る揮散成分の揮散用製品としては、その用途に適した揮散成分を含む芳香剤、消臭剤、化粧品、害虫防除剤、害虫忌避剤、動物忌避剤等が挙げられる。
【0041】
(固形風味剤)
本発明の固形風味剤は、本発明の可食性である揮散成分吸着用担体と、該担体に吸着された可食性の揮散成分を含むものである。固形風味剤の形態は、例えば粉末香料や粉末調味料、粉末スープ等が挙げられるが、特に限定されない。可食性の揮散成分としては、各種飲食品用の香料や、果汁やビーフエキス等の食品原料中に含まれる、香り成分等が挙げられる。本固形風味剤を各種飲食品に加えることにより、香り成分が揮散しにくく、長期間好ましい芳香を飲食品中に保持させることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明の実施態様をより具体的に説明する。なお、実施例中の「%」と「部」は特記しない限り「重量%」と「重量部」を示す。
【0043】
(試験1)
以下の通り、粉末状植物性蛋白を粉末状態で、水蒸気による直接加熱方式の加圧加熱処理を行い、揮散成分吸着用担体を製造した。
粉末状植物性蛋白素材のサンプルとして、市販の粉末状大豆蛋白「フジプロF」(不二製油(株)製)を用いた。本サンプルは、蛋白質含量が91.2%であり、NSIは98.6の高水溶性タイプであった。
加圧加熱装置としては、市販の「Sonic Stera」((株)フジワラテクノアート製)を用いた。本装置は、加熱空間内において粉体を垂直方向に落下させつつ水蒸気による直接加熱方式で加圧加熱処理ができる、縦型タイプの装置である。
表1の加熱処理条件により粉末状大豆蛋白に対して粉体加圧加熱処理を行い、得られた処理物の水分、NSI、嵩比重を測定し、表1にまとめた(試験品1~4)。品質比較のため、上記粉末状大豆蛋白と、市販の組織状大豆蛋白A~D(不二製油(株)製、二軸エクストルーダーで製造)についての各種データを掲載した。
【0044】
【0045】
試験品1~3の加熱処理条件では、粉末状ないし細かい顆粒が混じった状態で、NSIが60以上あり、嵩比重も分離大豆蛋白や組織状大豆蛋白と変わらないものであった。しかし、本発明品である試験品4の加熱処理条件になると、形状は「不定形」の顆粒状に変化し、NSIは40以下に低下し、嵩比重は0.2g/cm3以下の小さいものになり、性状が試験品1~3とは大きく異なるものとなった。
これに対して組織状大豆蛋白は二軸エクストルーダーの出口で一定の間隔でカッティングして成形されるため、形状が「略定形」の顆粒であり、嵩比重が試験品4よりも大きい傾向であった。
【0046】
(試験2) 顕微鏡観察
試験品3,4および原料の粉末状大豆蛋白について、卓上顕微鏡「Miniscope TM-1000」((株)日立ハイテクノロジーズ製)で観察を行った。
図1に各サンプルを100倍と300倍で観察した粒子の写真を示した。写真でも明らかな通り、粉末状大豆蛋白と試験品3はほとんど変わらない粒子形状であったが、試験品4は粒子集まって不定形に粗大化し、多孔質の構造となっていた。
【0047】
(試験3) 吸水性・吸油性の比較
試験1で得られた試験品3,4、粉末状大豆蛋白、組織状大豆蛋白A~Dと、パン粉の吸水性と吸油性を調べた。結果を表2に示した。
【0048】
【0049】
試験品4は試験品3に比べて吸水倍率と吸油倍率が共に高かった。特に吸油倍率が2倍以上高くなっていた。また試験品4は粉末状大豆蛋白とは全く異なる吸水性と吸油性を持つものに性状が変わっており、市販の組織状大豆蛋白A~Dと比較しても、吸水倍率と吸油倍率が共に高くなっていた。組織状大豆蛋白Dは比較的吸水性と吸油性が高いものであったが、試験品4はそれを上回る吸水性と吸油性を有しており、特に吸油倍率は3倍以上高くなっていた。そして、試験品4の吸水性と吸油性はパン粉のそれと比較しても大幅に高いものであった。
【0050】
(試験5) 分級試験
試験品4を試験篩い(ISO 3310-1規格準拠)を用いて分級し、粒度分布を測定した。また、各分級品についての吸水倍率と吸油倍率を測定した。結果を表3に示した。
【0051】
【0052】
試験品4の全顆粒重量に占める42mesh(目開き0.355mm)にオンする顆粒重量の割合は、92.4%であり、90%以上であった。吸水倍率は粒子が細かいほど高く、20meshパスの分級品が最も高くなった。一方、吸油倍率は10meshパス/20meshオンの分級品が特に高くなった。
【0053】
(試験6)原料のNSIが顆粒化に及ぼす影響
以下の通り、試験1とはNSIが異なる他の粉末状植物性蛋白素材を用い、試験1と同様の方法により粉末状態での水蒸気による直接加熱方式の加圧加熱処理を行った。
粉末状植物性蛋白素材のサンプルとして、市販の濃縮大豆蛋白1「Wilcon SJ」(ウィルマー社製、高NSIタイプ、蛋白質含量70.3%)、市販の濃縮大豆蛋白2「Wilcon F」(ウィルマー社製、低NSIタイプ、蛋白質含量70.2%)を用い、それぞれの処理物を試験品5,6とした。なお、加熱処理条件は試験1の試験品4と同じ条件(加熱圧力0.6Mpa、加熱時間0.2秒)とした。
得られた処理物の水分、NSI、嵩比重を測定し、表4にまとめた。品質比較のため、本試験の濃縮大豆蛋白、試験1の粉末状大豆蛋白と、試験品4についての各種データを掲載した。
【0054】
【0055】
試験品5,6の結果の通り、NSIが60よりも低い、低水溶性の粉末状植物性蛋白素材を用いて試験品4と同じ粉体加圧加熱処理を行っても、形状は粉末状のままであり、嵩比重も変わらず、試験品4のような多孔質の顆粒は得られなかった。
【0056】
(試験7)
以下の通り、粉末状植物性蛋白素材を粉末状態で、間接加熱方式の加圧加熱処理を行った。
粉末状植物性蛋白素材のサンプルは試験1と同じ粉末状大豆蛋白を用いた。加熱装置としては、二軸エクストルーダーを用いた。
二軸エクストルーダーの処理条件は、バレル温度:入口30℃、中央100℃、出口150℃、流量:20kg/時、スクリュー回転数:200rpmとし、得られた処理物をドライオーブンで熱風乾燥した後、水分、嵩比重、色調を測定し、表5にまとめた(試験品7)。品質比較のため、粉末状大豆蛋白と、試験品4についての各種データを掲載した。
【0057】
【0058】
試験品7の結果の通り、高水溶性の粉末状植物性蛋白素材を用いて間接加熱方式の粉体加圧加熱処理を行うと、形状は顆粒状のものが得られたが、試験品4のような不定形状ではなく定形状であった。また試験品7の吸水倍率と吸油倍率は5.7倍と1.5倍であり、また試験品4に比べて色調は明度が暗く褐色度と黄色度が高い傾向となり、試験品4の揮散成分吸着用担体とは形状、吸水性と吸油性、色調が何れも異なるものであった。
【0059】
(試験8) 食酢の処理
試飲用カップ(容量100ml)に食酢30gを入れ、該食酢に対して試験品4の揮散成分吸着用担体を0%、1%、3%、10%および20%の割合でそれぞれ添加し、10分放置して食酢を該担体に吸着させ、測定サンプルを得た。ポータブル型においセンサー「COSMOS XP-329m」(新コスモス電機(株)製)を用いて測定サンプルのにおいを静置状態で測定し、食酢の揮散成分についての該担体の吸着効果を調べた。該担体の各添加量におけるサンプルの測定値と、0%の測定値を100としたときのにおい低減率を表6に示した。
【0060】
【0061】
試験品4の揮散成分吸着用担体を食酢に加えることにより、処理後の食酢のにおいが低減されること、該担体の添加量を増やすとさらに低減率が大きくなることが示唆された。すなわち、試験品4の揮散成分吸着用担体が、食酢中の揮散性のにおい成分を有効に脱臭したことが示された。
【0062】
(試験9) 魚油の処理
試飲用カップ(容量100ml)に魚油10gを入れ、該魚油に対して試験品4の揮散成分吸着用担体を0%、20%および50%の割合でそれぞれ添加し、10分放置して魚油を該担体に吸着させ、測定サンプルを得た。ポータブル型においセンサー「COSMOS XP-329m」(新コスモス電機(株)製)を用いて測定サンプルのにおいを静置状態で測定し、魚油の揮散成分についての該担体の吸着効果を調べた。該担体の各添加量におけるサンプルの測定値と、0%の測定値を100としたときのにおい低減率を表7に示した。
【0063】
【0064】
試験品4の揮散成分吸着用担体を魚油に加えることにより、処理後の魚油のにおいが低減されること、該担体の添加量を増やすとさらに低減率が大きくなることが示唆された。すなわち、試験品4の揮散成分吸着用担体が、魚油中の揮散性のにおい成分を有効に脱臭したことが示された。
【0065】
(試験10)香料の吸着
試飲用カップ(容量100ml)に試験品4の揮散成分吸着用担体を0.1g入れておき、そこに香料としてピーチフレーバー((株)サンアロマ製、食品用)20μLを添加したものを添加区とした。また、試飲用カップに該ピーチフレーバーのみを20μLを添加したものを無添加区とした。これら添加区と無添加区の各測定サンプルのにおいを、ポータブル型においセンサー「COSMOS XP-329m」(新コスモス電機(株)製)を用いて静置状態で測定し、測定サンプルから発せられる香料の経時的なにおいレベルの変化を測定した。結果を表8に示した。
【0066】
【0067】
試験品4の揮散成分吸着用担体に香料を吸着させると、初期では添加区の方が無添加区に比べてにおいレベルが低くなっているが、徐々に添加区の方がにおいレベルが高くなった。すなわち、添加区では長期に渡りにおいを保持できる効果が示され、芳香剤や害虫防除剤、あるいは固形風味剤のような製品に利用できることが示唆された。