(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】紙積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/12 20060101AFI20240604BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240604BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240604BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B32B15/12
B32B9/00 A
B32B27/10
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2021532717
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021685
(87)【国際公開番号】W WO2021010040
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2019130300
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野一色 泰友
(72)【発明者】
【氏名】磯▲崎▼ 友史
(72)【発明者】
【氏名】鶴原 正啓
(72)【発明者】
【氏名】社本 裕太
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-204366(JP,A)
【文献】特開2002-363221(JP,A)
【文献】特開平07-223686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/12
B32B 9/00
B32B 27/10
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の少なくとも一面に、厚さ1~1000nmの金属又はセラミックからなる蒸着層を有し、当該蒸着層上に更に厚さ1μm以上15μm未満の、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂層を有し、当該ヒートシール可能な熱可塑性樹脂が、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体
及びポリ乳酸から選ばれる1種以上を含む、紙積層体。
【請求項2】
前記紙基材の坪量が20~500g/m
2である、請求項1に記載の紙積層体。
【請求項3】
前記蒸着層がアルミニウム、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムからなる、請求項1又は2に記載の紙積層体。
【請求項4】
前記紙基材と前記蒸着層との間に、クレーコート層及びアンダーコート層から選ばれる1つ以上を有する、請求項1~
3のいずれか1つに記載の紙積層体。
【請求項5】
前記紙基材と前記蒸着層との間に、クレーコート層及びアンダーコート層を有し、前記クレーコート層と前記蒸着層との間に、アンダーコート層を有する、請求項1~
4のいずれか1つに記載の紙積層体。
【請求項6】
前記クレーコート層が、カオリン、タルク及びマイカからなる群より選択される少なくとも1種のクレーを含み、当該クレーのアスペクト比が10以上である、請求項
4又は
5に記載の紙積層体。
【請求項7】
前記アンダーコート層は主にバインダーから構成され、バインダーに含まれる樹脂が、ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂から選ばれる1種以上である、請求項
4~
6のいずれか1つに記載の紙積層体。
【請求項8】
前記樹脂層が最外層である、請求項1~
7のいずれか1つに記載の紙積層体。
【請求項9】
前記紙基材が最外層である、請求項1~
8のいずれか1つに記載の紙積層体。
【請求項10】
前記樹脂層の厚さが、3~7μmである、請求項1~
9のいずれか1つに記載の紙積層体。
【請求項11】
前記ヒートシール可能な熱可塑性樹脂が、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体を含む、請求項1~
10のいずれか1つに記載の紙積層体。
【請求項12】
前記オレフィン・不飽和カルボン酸共重合体がエチレン・アクリル系共重合体であり、当該エチレン・アクリル系共重合体のアクリル酸単位の含有量(アクリル酸の共重合比率)が、1~50モル%である、請求項
11に記載の紙積層体。
【請求項13】
紙基材の少なくとも一面に厚さ1~1000nmの金属又はセラミックからなる蒸着層を有する蒸着紙に、樹脂溶液又は樹脂分散液を塗工し、乾燥して、厚さ1μm以上15μm未満の、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂層を形成する工程を有し、当該ヒートシール可能な熱可塑性樹脂が、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体
及びポリ乳酸から選ばれる1種以上を含む、紙積層体の製造方法。
【請求項14】
前記ヒートシール可能な熱可塑性樹脂が、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体を含む、請求項
13に記載の紙積層体の製造方法。
【請求項15】
前記オレフィン・不飽和カルボン酸共重合体がエチレン・アクリル系共重合体であり、当該エチレン・アクリル系共重合体のアクリル酸単位の含有量(アクリル酸の共重合比率)が、1~50モル%である、請求項
13又は
14に記載の紙積層体の製造方法。
【請求項16】
前記紙基材の少なくとも一面に、樹脂バインダーと、アスペクト比が10以上である、カオリン、タルク及びマイカからなる群より選択される少なくとも1種のクレーと、を含む分散液を塗工し、乾燥して、クレーコート層を形成する工程、当該クレーコート層上に、バインダーの水溶液又はバインダーの水分散液を塗工し、乾燥してアンダーコート層を形成する工程、当該アンダーコート層上に、厚さ1~1000nmの金属又はセラミックからなる蒸着層を形成する工程をこの順に有する、請求項
13~
15のいずれか1つに記載の紙積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙基材に水蒸気バリア性やガスバリア性(特に、酸素バリア性)を付与した包装材料は、食品、医療品、電子部品等の包装において、内容物の品質低下を防止するために、従来から用いられてきている。
【0003】
紙基材に水蒸気バリア性やガスバリア性を付与する方法としては、ガスバリア性に優れた合成樹脂フィルムを紙基材に積層する方法が一般的である。しかし、紙基材に合成樹脂フィルム等を積層した材料は、使用後に紙や合成樹脂等をリサイクルすることが困難であり、環境面において課題を有するものであった。
そこで、合成樹脂フィルム等を積層する必要のないバリア性材料の開発が進められてきている。例えば、特許文献1には、紙層の内側に有機物質被覆層、金属若しくは金属酸化物層及び有機物質被覆層を有する湿気と酸素に対するバリア性を有する紙包装材が開示されている。
【0004】
一方、金属蒸着紙は、その光沢感を活かし、酒、ビール、清涼飲料水などの意匠性に優れたラベル用紙、菓子類の包装用紙等に広く用いられているが、紙基材上に金属薄膜を形成する必要があるため、その接着性の改善や製造方法について検討がなされている。たとえば、特許文献2には、基紙上にアルミニウム蒸着層を設けてなり、蒸着層表面の自然分極電位値が特定の範囲となるように裏面を処理した基紙を用いるアルミニウム蒸着紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-321307号公報
【文献】特開平4-65599号公報
【発明の概要】
【0006】
特許文献1のように金属箔や金属酸化物箔を用いて紙基材のバリア性を向上させる試みはなされているものの、リサイクル性や柔軟性、紙の質感を考慮して、蒸着膜のような非常に薄い膜を形成した場合、使用時もしくは加工時の耐久性が問題となっている。すなわち、エンボス加工のような立体加工や折り曲げ加工等を行うと、金属あるいは金属酸化物の蒸着膜に亀裂等の損傷が生じるためか、バリア性能が低下するという問題がある。
そこで、本発明は、加工への耐性に優れ、高いバリア性能を有する紙積層体を提供することを課題とする。
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、紙基材に、特定厚さの金属又はセラミック蒸着層を有し、更に特定厚さの熱可塑性樹脂からなる樹脂層を有する積層体が、前記課題を解決することを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<14>に関する。
<1> 紙基材の少なくとも一面に、厚さ1~1000nmの金属又はセラミックからなる蒸着層を有し、当該蒸着層上に更に厚さ1μm以上15μm未満の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を有する、紙積層体。
<2> 前記紙基材の坪量が20~500g/m2である、<1>に記載の紙積層体。
<3> 前記蒸着層がアルミニウム、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムからなる、<1>又は<2>に記載の紙積層体。
<4> 前記樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、ヒートシール可能な樹脂である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の紙積層体。
<5> 前記熱可塑性樹脂が、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体、生分解性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、及びエチレンビニルアルコールから選ばれる1種以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の紙積層体。
<6> 前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート)から選ばれる1種以上である、<5>に記載の紙積層体。
<7> 前記紙基材と前記蒸着層との間に、クレーコート層及びアンダーコート層から選ばれる1つ以上を有する、<1>~<6>のいずれか1つに記載の紙積層体。
<8> 前記紙基材と前記蒸着層との間に、クレーコート層及びアンダーコート層を有し、前記クレーコート層と前記蒸着層との間に、アンダーコート層を有する、<1>~<7>のいずれか1つに記載の紙積層体。
<9> 前記アンダーコート層は主にバインダーから構成され、バインダーに含まれる樹脂が、ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂から選ばれる1種以上である、<7>又は<8>に記載の紙積層体。
<10> 前記樹脂層が最外層である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の紙積層体。
<11> 前記紙基材が最外層である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の紙積層体。
<12> 前記樹脂層の厚さが、3~7μmである、<1>~<11>のいずれか1つに記載の紙積層体。
<13> 前記熱可塑性樹脂が、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体及びポリ乳酸から選ばれる1種以上である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の紙積層体。
<14> 紙基材の少なくとも一面に厚さ1~1000nmの金属又はセラミックからなる蒸着層を有する蒸着紙に、樹脂溶液又は樹脂分散液を塗工し、乾燥して、厚さ1μm以上15μm未満の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を形成する工程を有する、紙積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書中、「X~Y」で表される数値範囲は、X以上Y以下を意味する。
[紙積層体]
本発明の一実施形態に係る紙積層体は、紙基材の少なくとも一面に、厚さ1~1000nmの金属又はセラミックからなる蒸着層を有し、当該蒸着層上に更に厚さ1μm以上15μm未満の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を有する。当該紙積層体は、本発明の加工への耐性に優れ、高いバリア性能を有する。
本発明の一実施形態に係る紙積層体は、蒸着層を有することで高いバリア性を有し、樹脂層を有することで、加工時の紙の変形によっても蒸着層を保護してバリア性を維持できることに加え、樹脂層を構成する樹脂によっては、ヒートシール性も付与することができる。また、光沢感を有する蒸着層の損傷を防ぐことができるため、意匠性にも優れる。
【0009】
紙基材の片面に蒸着層を有していてもよく、両面に蒸着層を有していてもよいが、生産効率の点からは、片面に蒸着層を有することが好ましい。本発明においては、片面のみに蒸着層を有しても、十分なバリア性を発現することができる。片面に蒸着層を有する場合、蒸着層側のみに樹脂層を有することが好ましい。
生産効率の点から片面に蒸着層を有する場合、本発明の紙積層体において、前記紙基材が最外層であることが好ましい。
両面に蒸着層を有する場合、その片面又は両面に、熱可塑性樹脂からなる樹脂層を有し、なかでも片面に熱可塑性樹脂からなる樹脂層を有することが好ましい。
片面に熱可塑性樹脂からなる樹脂層を有することで、生産効率に優れ、本発明の積層体をヒートシールした場合、袋状物等を容易に作製することができる。
樹脂層は前記蒸着層上に直接形成されていることが好ましい。樹脂層が蒸着層上に直接形成されていることで、樹脂層が、加工時の変形に対する蒸着層の損傷を効率的に保護することができる。
【0010】
<紙基材>
本発明の紙積層体に用いられる紙基材は、植物由来のパルプを主成分とする一般的に用いられている紙であることが好ましく、木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。また、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とする紙であることが好ましい。
具体的には、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙等が挙げられ、これらのなかでも晒クラフト紙、未晒クラフト紙、上質紙、片艶紙が好ましい。
【0011】
紙基材のJIS P8121:2012に準じて測定した離解フリーネス(濾水度)は、バリア性を向上させる観点から、800ml以下とすることが好ましく、500ml以下がより好ましい。ここで、離解フリーネスとは、抄紙後の紙をJIS P8220-1に準拠して離解したパルプを、JIS P8121:2012に準拠して測定したカナダ標準濾水度(Canadian standard freeness)のことである。離解フリーネスを調整するためにパルプを叩解する方法は、公知の方法を使用することができる。
【0012】
紙基材のサイズ度は、特に限定されないが、バリア性を向上させる観点から、JIS P8122:2004に準ずるステキヒトサイズ度を1秒以上とすることが好ましい。紙基材のサイズ度は、内添サイズ剤の種類や含有量、パルプの種類、平滑化処理等によって制御することができる。
内添サイズ剤としては、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン-アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系等が挙げられる。内添サイズ剤の含有量は、紙基材のパルプ100質量部に対して3質量部以下が好ましい。
【0013】
紙基材には、内添サイズ剤以外に、公知のその他の内添剤を添加してもよい。内添剤としては、填料、紙力増強剤、歩留り向上剤、pH調整剤、濾水性向上剤、耐水化剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料・顔料等が挙げられる。
填料としては、二酸化チタン、カオリン、タルク、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0014】
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機を適宜選択して使用することができる。
抄紙機としては、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等が挙げられる。
抄紙機によって形成された紙層は、たとえば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
【0015】
また、前記のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚さやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
【0016】
紙基材の坪量は、20~500g/m2であることが好ましく、20~400g/m2がより好ましく、20~200g/m2が更に好ましく、30~100g/m2がより更に好ましい。
紙基材は、成形加工性の観点から、密度が0.5~1.2g/cm3であることが好ましく、0.6~1.0g/cm3がより好ましい。
紙基材は、均一な蒸着層を得る観点から、少なくとも蒸着層を設ける側の面の王研式平滑度が、5秒以上であることが好ましく、10~1000秒がより好ましい。また、印刷適性の観点から、紙基材は、75°光沢度が5%以上であることが好ましく、10~70%がより好ましい。
【0017】
<蒸着層>
本発明の紙積層体に用いられる蒸着層は、厚さ1~1000nmの金属又はセラミックからなる。
蒸着層の厚さは、1~1000nmであり、2~500nmが好ましく、3~100nmがより好ましい。バリア性の点からは10~80nmが更に好ましく、25~70nmがより更に好ましい。また、他層との密着性やコストの点からは4~100nmが好ましく、4~70nmがより好ましく、4~50nmが更に好ましく、5~50nmが更により好ましく、例えば5~30nmであってもよい。
【0018】
蒸着層は金属又はセラミックからなり、金属が好ましい。
蒸着層が金属である場合、その具体例としては、アルミニウム、チタンが挙げられ、アルミニウムが好ましい。
蒸着層がセラミックである場合、その具体例としては、酸化ケイ素、酸化チタンあるいは酸化アルミニウムが挙げられ、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムが好ましい。
すなわち、蒸着層は、アルミニウム、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムからなることがより好ましく、なかでもアルミニウムが更に好ましい。
【0019】
<樹脂層>
本発明の紙積層体は、厚さ1μm以上15μm未満の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を有する。
樹脂層の厚さは、1μm以上15μm未満であり、2~10μmが好ましく、3~7μmがより好ましい。
樹脂層の厚さが1μm以上15μm未満であると、蒸着層に対する優れた保護性を維持しつつ、リサイクル時の紙の離解性に優れ、リサイクル性にも優れる。また、本樹脂層の厚さが1μm以上15μm未満であると、紙積層体は優れたヒートシール性も有する。
また、本発明の紙積層体において、前記樹脂層は最外層であることが好ましい。樹脂層が最外層であることによって、樹脂層にヒートシール性を付与させ、容器を形成することができる。更に他の層の影響を受けないため、変形による外力から蒸着層を保護しやすい。そのうえ、光沢感を有する蒸着層の意匠性を阻害しない。
【0020】
樹脂層を構成する樹脂は、樹脂層の形成を容易にし、蒸着層の保護を優れたものとし、ヒートシール性を付与する観点から、熱可塑性樹脂である。
前記熱可塑性樹脂は、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体、生分解性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、及びエチレンビニルアルコールから選ばれる1種以上であることが好ましく、なかでも、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体、生分解性樹脂、及びアクリル樹脂から選ばれる1種以上であることがより好ましく、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体及び生分解性樹脂から選ばれる1種以上であることが更に好ましく、より具体的には、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体及びポリ乳酸から選ばれる1種以上であることがより更に好ましい。蒸着層の保護性の観点からは、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体がより更に好ましく、リサイクル性、環境負荷の低減の観点からは、生分解性樹脂がより更に好ましい。
【0021】
オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体としては、エチレン・アクリル系共重合体が好ましい。エチレン・アクリル系共重合体は入手性に優れ、水性分散液として合成することができるため、塗工及び乾燥することにより、蒸着層上に容易に樹脂層を形成することができ、好ましい。
オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体を、水性分散液として用いる場合には、前記不飽和カルボン酸あるいはアクリル系単量体成分が、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン等で一部あるいは全部中和されている塩であることが好ましい。
【0022】
オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体を用いる場合、樹脂層におけるオレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体の含有量は、樹脂層の全固形分中20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上がより更に好ましく、80質量%以上がより更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が最も好ましい。上限は、特に限定されないが、100質量%以下が好ましい。
【0023】
エチレン・アクリル系共重合体を構成するアクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸、イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル及びマレイン酸モノブチルエステルなどの、少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステル、アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩等の不飽和スルホン酸単量体又はその塩が挙げられ、不飽和カルボン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましく、アクリル酸がさらにより好ましい。
エチレン・アクリル系共重合体を構成するアクリル系単量体は、1種類であってもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
エチレン・アクリル系共重合体は、エチレンと前記アクリル系単量体とを乳化重合することによって得ることが好ましい。エチレン・アクリル系共重合体としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体が好ましい。本発明の効果を損なわない程度であれば、共重合体には、エチレン及びアクリル系単量体と共重合可能なその他の化合物からなる単量体が共重合されていてもよい。
【0025】
エチレン・アクリル系共重合体におけるアクリル系単量体単位の含有量(アクリル系単量体の共重合比率)は、1~50モル%が好ましく、10~30モル%がより好ましい。エチレン・アクリル系共重合体がアクリル系単量体単位としてアクリル酸単位を含有する場合、アクリル酸単位の含有量(アクリル酸の共重合比率)は、1~50モル%が好ましく、10~30モル%がより好ましい。アクリル系単量体単位の含有量が、1~50モル%であれば、溶融温度が60~120℃となり、良好なヒートシール性を発現する優れたエチレン・アクリル系共重合体となる。
【0026】
エチレン・アクリル系共重合体の重量平均分子量は、塗工液粘度や塗工膜の強度の観点から、1万~1000万が好ましく、10万~500万がより好ましい。
【0027】
エチレン・アクリル系共重合体の具体例としては、ザイクセン(登録商標)AC(エチレン・アクリル酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液、アクリル酸の共重合比率20モル%、住友精化株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
生分解性樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)から選ばれる1種以上であることが好ましく、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから選ばれる1種以上であることがより好ましく、ポリ乳酸であることがさらにより好ましい。紙基材を用いた包装材料等は、樹脂フィルムからなる包装材料等と比べて環境負荷の低減という利点を有しているが、本発明の樹脂層として生分解性樹脂を用いることによって、より一層環境負荷を低減させることができる。
【0029】
生分解性樹脂は、塗工を容易にし、環境への負荷を低減させる観点から、水性分散液を用いることが好ましく、更に入手性の観点から、ポリ乳酸の水性分散液を用いることがより好ましい。
ポリ乳酸の具体例としては、たとえばランディPL-1000、ランディPL-3000(ポリ乳酸の水性分散液、ミヨシ油脂株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
本発明の紙積層体を構成する樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂は、ヒートシール可能なものであることが好ましい。したがって、樹脂層を構成する樹脂が融点を有する場合、その融点は、60~120℃が好ましく、70~110℃がより好ましく、80~100℃が更に好ましい。
樹脂層がヒートシール可能であることにより、本発明の紙積層体のみからなる包装袋等を容易に得ることができる。また、他のシート、フィルム、容器等に融着させることで、紙積層体を包装容器本体、包装容器の蓋等として用いることができる。このようにして得られる包装袋及び包装容器はバリア性に優れるものとなる。
【0031】
また、前記熱可塑性樹脂の引張強度は、5~30MPaが好ましく、10~20MPaがより好ましい。引張強度は、JIS K7161に準拠して測定される。
前記熱可塑性樹脂の破断点伸びは、200~600%が好ましく、300~500%がより好ましい。破断点伸びは、JIS K7161に準拠して測定される。
【0032】
本発明の紙積層体を構成する樹脂層は、熱可塑性樹脂からなるものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂や添加剤を含むことができる。
すなわち、樹脂層が「熱可塑性樹脂からなる」とは、樹脂層の主成分が熱可塑性樹脂であることを意味し、樹脂層中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上であり、より更に好ましくは99質量%以上である。
添加剤としては、界面活性剤、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、染料、可塑剤、潤滑剤、離型剤等を含むことができる。前記樹脂を水性分散液として用いる場合には、樹脂を水性媒体に分散させ、均一な樹脂層の膜を得るために、分散剤を用いることが好ましい。
【0033】
<任意の層>
本発明の紙積層体は、紙基材、蒸着層、樹脂層に加えて、任意の層を含んでもよい。任意の層としては、クレーコート層及びアンダーコート層が挙げられる。本発明の紙積層体は、前記紙基材と前記蒸着層との間に、クレーコート層及びアンダーコート層から選ばれる1つ以上を有することが好ましい。
すなわち、本発明の紙積層体は、紙基材の少なくとも一面に、クレーコート層、蒸着層、樹脂層の順で各層が積層されているか、紙基材の少なくとも一面に、アンダーコート層、蒸着層、樹脂層の順で各層が積層されていることが好ましい。
更に本発明の紙積層体は、前記紙基材と前記蒸着層との間に、クレーコート層及びアンダーコート層の両方を有していることがより好ましく、その場合、前記クレーコート層と前記蒸着層との間に、アンダーコート層を有することが更に好ましい。
すなわち、本発明の紙積層体は、紙基材の少なくとも一面に、クレーコート層、アンダーコート層、蒸着層、樹脂層の順で各層が積層されていることが更に好ましい。
【0034】
(クレーコート層)
前記クレーコート層は、紙基材を目止めし、平滑化させる観点から、紙積層体中に設けることが好ましく、前記のとおり、本発明の紙積層体は、クレーコート層を、前記紙基材と前記蒸着層との間に有することが好ましく、前記紙基材と前記アンダーコート層との間に有することがより好ましい。
【0035】
前記クレーコート層は、主にクレー及びバインダーから構成される。なお、「クレーコート層が主にクレー及びバインダーから構成される」とは、アンダーコート層中のクレーおよびバインダーの合計含有量が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であることを意味する。上限は、特に限定されないが、100質量%以下が好ましい。なお、クレーコート層は、クレーおよびバインダー以外に、任意の成分をさらに含んでいてもよい。
クレーコート層に含まれるクレーとしては、特に限定されないが、カオリン、タルク、マイカ等が挙げられる。クレーのアスペクト比は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。上限は、特に限定されないが、10000以下が好ましい。アスペクト比は、電子顕微鏡による観察やX線回折測定によって測定することができる。クレーコート層中のクレー含有量は、好ましくは50~98質量%であり、より好ましくは60~90質量%であり、さらに好ましくは70~85質量%である。
クレーコート層に含まれるバインダーとしては、特に限定されないが、アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、スチレン-アクリル共重合体、エチレン-アクリル共重合体等が挙げられ、アクリル系樹脂およびスチレン-アクリル共重合体が好ましい。クレーコート層中のバインダーの含有量は、好ましくは2~50質量%であり、より好ましくは10~40質量%であり、さらに好ましくは15~30質量%である。
クレーコート層の塗工量は、特に限定されないが、固形分で、好ましくは5~30g/m2であり、より好ましくは7~20g/m2である。
クレーコート層の形成方法は、特に限定されないが、クレー及び樹脂バインダーを含む分散液を紙基材上に塗工し、乾燥することで形成する方法が好ましい。
クレー及び樹脂バインダーを含む分散液としては、水分散液が好ましい。
【0036】
(アンダーコート層)
前記アンダーコート層は、紙基材と蒸着層の接着性を高める観点から、紙積層体中に設けることが好ましく、前記のとおり、本発明の紙積層体は、アンダーコート層を、前記紙基材と前記蒸着層との間に有することが好ましく、前記クレーコート層と前記蒸着層との間に有することがより好ましい。
【0037】
前記アンダーコート層は、主にバインダーから構成される。なお、「アンダーコート層が主にバインダーから構成される」とは、アンダーコート層中のバインダー含有量が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であることを意味する(上限100質量%)。なお、アンダーコート層は、バインダー以外に、任意の成分をさらに含んでいてもよい。
アンダーコート層に含まれるバインダーとしては、特に限定されないが、アルキッド樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン変性ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びポリエステル樹脂から選ばれる1種以上であることがより好ましく、ポリビニルアルコール樹脂及びウレタン系樹脂から選ばれる1種以上であることが更に好ましく、酸素バリア性の観点から、ポリビニルアルコール樹脂がより更に好ましい。
アンダーコート層の塗工量は、特に限定されないが、固形分で、好ましくは1~10g/m2であり、より好ましくは1~5g/m2である。
アンダーコート層の形成方法は、特に限定されないが、バインダーの水溶液、又は水分散液を塗工し、乾燥して形成することが好ましい。
【0038】
[紙積層体の製造方法]
本発明の紙積層体を製造する方法に制限はないが、紙基材の少なくとも一面に厚さ1~1000nmの金属又はセラミックからなる蒸着層を有する蒸着紙に、樹脂溶液又は樹脂分散液を塗工し、乾燥して、厚さ1μm以上15μm未満の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を形成する工程を有することが好ましい。
【0039】
本発明の製造方法に用いられる蒸着紙は、前記紙基材に金属又はセラミックを蒸着して得ることが好ましい。
紙基材の表面には、前記のとおりクレーコート層を設けてもよい。クレーコート層に用いられるクレーとしては、特に限定されないが、カオリン等が挙げられる。バインダーとしては、特に限定されないが、アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系重合体及びスチレン-アクリル共重合体等が挙げられる。クレーコート層を設ける場合、前記の通り、クレー及びバインダーを含む分散液を紙基材上に塗工し、乾燥することで形成することが好ましい。
【0040】
また、紙基材の表面には、前記のとおりアンダーコート層を設けてもよい。アンダーコート層としては、アルキッド樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂等のバインダーからなることが好ましく、なかでも、バインダーとして、ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂がより好ましい。アンダーコート層を設ける場合、バインダーの水溶液、又は水分散液を塗工し、乾燥して形成することが好ましい。
【0041】
紙基材上に金属又はセラミックを蒸着する方法としては、紙基材あるいはアンダーコート層の表面に直接金属又はセラミックを真空蒸着する方法が好ましい。
ここで用いられる金属又はセラミックとしては、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムが挙げられ、コストと外観の点から、アルミニウムが好ましい。
【0042】
次に、前記蒸着紙に、厚さ1μm以上15μm未満の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を形成する。
樹脂層は前記蒸着紙の蒸着層に直接形成することが、蒸着層を効率的に保護し、バリア性を高める観点から好ましい。
樹脂層を形成する方法としては、樹脂溶液あるいは樹脂分散液を塗工し、乾燥して得ることが好ましい。
樹脂溶液又は樹脂分散液を塗工して、樹脂層を形成する方法を用いることによって、15μm未満の比較的薄い膜の樹脂層を形成することができる。このような比較的薄い樹脂層を形成することによって、得られる紙積層体に優れた離解性を付与することができ、リサイクル性に優れる積層体を得ることができる。
【0043】
ここで用いられる樹脂としては、前記の樹脂層に好適に用いられる樹脂であることが好ましく、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体、生分解性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、及びエチレンビニルアルコールから選ばれる1種以上であることが好ましく、なかでも、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体、生分解性樹脂、及びアクリル樹脂から選ばれる1種以上であることがより好ましく、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体及び生分解性樹脂から選ばれる1種以上であることが更に好ましい。
【0044】
これら樹脂は、樹脂溶液又は樹脂分散液として、蒸着紙上に塗工する。
ここで用いられる樹脂溶液又は樹脂分散液は、樹脂を溶解する有機溶媒を用いた溶液、樹脂を分散する有機溶媒を用いた分散液、水性媒体を用いた分散液等が挙げられ、塗工性や環境負荷の点から、水性媒体を用いた分散液が好ましい。なかでも、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体、生分解性樹脂、アクリル樹脂の水性分散液を用いることがより好ましい。
【0045】
樹脂溶液あるいは樹脂分散液を塗工する方法としては、バーコート法、ブレードコート法、スクイズコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、トランスファーコート法等が挙げられ、ファウンテンコーターやスリットダイコーターのような塗工機を用いてもよい。
塗工された塗工蒸着紙は、乾燥して有機溶媒又は水性媒体を除去し、蒸着層上に熱可塑性樹脂からなる樹脂層を有する紙積層体を得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0047】
[実施例1]
[紙積層体(1)の製造]
エチレン・アクリル酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液(有効分29.2質量%、ザイクセンAC、アクリル酸の共重合比率20モル%、住友精化株式会社製)を有効分が20質量%となるように水で希釈し、樹脂層の塗料とした。
メイヤーバー(No.16)を用いて、アルミニウム蒸着紙(原紙(紙基材)坪量60g/m2、アルミニウム蒸着層20nm、王子エフテックス株式会社製)に前記樹脂層の塗料を塗工し、120℃で1分間乾燥し、紙積層体(1)を得た。樹脂層の厚さは5μmであった。なお、上記のアルミニウム蒸着紙は、原紙(紙基材)上に、クレーコート層、アンダーコート層、蒸着層がこの順に積層したものである。
得られた紙積層体(1)の評価結果を表1に示す。
【0048】
[実施例2]
[紙積層体(2)の製造]
ポリ乳酸樹脂の水性分散液(有効分40質量%、ランディPL-3000、ミヨシ油脂株式会社製)を有効分が20質量%となるように水で希釈し、樹脂層の塗料とした。
メイヤーバー(No.16)を用いて、アルミニウム蒸着紙(原紙(紙基材)坪量60g/m2、アルミニウム蒸着層20nm、王子エフテックス株式会社製)に前記樹脂層の塗料を塗工し、120℃で1分間乾燥し、紙積層体(2)を得た。樹脂層の厚さは6μmであった。
得られた紙積層体(2)の評価結果を表1に示す。
【0049】
[比較例1]
実施例1及び2に用いたアルミニウム蒸着紙(原紙(紙基材)坪量60g/m2、アルミニウム蒸着層20nm、王子エフテックス株式会社製)をそのまま用い、実施例1及び2と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0050】
[実施例3]
[紙積層体(3)の製造]
カオリン(イメリス社製Contour Xtreme、アスペクト比33)80質量部と、スチレン-アクリル共重合体バインダー(BASF社製JONCRYL HSL-9012)20質量部(固形分)と、を混合し、クレーコート層用塗布液を調製した。片艶紙(王子マテリア株式会社製、坪量65g/m2、厚さ62μm、密度0.76g/m3、一方の面の王研式平滑度427秒、他方の面の王研式平滑度17秒)の王研式平滑度17秒である面上に、上記クレーコート層用塗布液をメイヤーバー塗工し、120℃で1分乾燥して、クレーコート層(10g/m2)を形成した。次に、上記クレーコート層上に、ウレタン系樹脂バインダー(三井化学製タケラックWPB-341)をメイヤーバー塗工し、120℃で1分乾燥して、アンダーコート層(2g/m2)を形成した。次に、上記アンダーコート層上に、アルミニウム蒸着層(厚さ50nm)を形成し、アルミニウム蒸着紙を得た。
メイヤーバー(No.16)を用いて、上記アルミニウム蒸着紙に、実施例1で製造した樹脂層の塗料を塗工し、120℃で1分間乾燥し、紙積層体(3)を得た。樹脂層の厚さは5μmであった。
得られた紙積層体(3)の評価結果を表2に示す。
【0051】
[実施例4]
[紙積層体(4)の製造]
カオリン(イメリス社製Contour Xtreme、アスペクト比33)80質量部と、スチレン-アクリル共重合体バインダー(BASF社製JONCRYL HSL-9012)20質量部(固形分)と、を混合し、クレーコート層用塗布液を調製した。片艶紙(王子マテリア株式会社製、坪量65g/m2、厚さ62μm、密度0.76g/m3、一方の面の王研式平滑度427秒、他方の面の王研式平滑度17秒)の王研式平滑度17秒である面上に、上記クレーコート層用塗布液をメイヤーバー塗工し、120℃で1分乾燥して、クレーコート層(12g/m2)を形成した。次に、上記クレーコート層上に、ポリビニルアルコール樹脂バインダー(クラレ製EXCEVAL AQ-4104)をメイヤーバー塗工し、120℃で1分乾燥して、アンダーコート層(3g/m2)を形成した。次に、上記アンダーコート層上に、アルミニウム蒸着層(厚さ50nm)を形成し、アルミニウム蒸着紙を得た。
メイヤーバー(No.16)を用いて、上記アルミニウム蒸着紙に、実施例1で製造した樹脂層の塗料を塗工し、120℃で1分間乾燥し、紙積層体(4)を得た。樹脂層の厚さは5μmであった。
得られた紙積層体(4)の評価結果を表2に示す。
【0052】
[評価]
[酸素透過度]
酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/20)を使用し、温度23℃、相対湿度50%の条件(低湿度条件)にて、紙積層体及び蒸着紙の酸素透過度を測定した。酸素透過度の値は低いほど酸素バリア性に優れる。
また、加工耐性の評価として、折り曲げ後の酸素透過度も測定した。折り曲げ方法は、紙積層体又は蒸着紙を一度折り曲げた後(折り目の角度180°)に開き、折れ線と垂直になる線で再度折り曲げた後(折り目の角度180°)に開き、前記酸素透過率測定装置の測定部の中央に、折れ線の交点が来るようにして酸素透過度を測定した。
【0053】
[水蒸気透過度]
JIS Z0208(カップ法)B法(温度40℃±0.5℃、相対湿度90%±2%)に準拠して、紙積層体及び蒸着紙の樹脂層が内側(低湿度側)に来るように配置して、水蒸気透過性を測定した。水蒸気透過度の値は低いほど水蒸気バリア性に優れる。
また、加工耐性の評価として、折り曲げ後の水蒸気透過度も測定した。折り曲げ方法は、紙積層体又は蒸着紙を一度折り曲げた後(折り目の角度180°)に開き、折れ線と垂直になる線で再度折り曲げた後(折り目の角度180°)に開き、測定部の中央に、折れ線の交点が来るようにして水蒸気透過度を測定した。
【0054】
[ヒートシール性]
2枚の各実施例の積層体あるいは2枚の比較例の蒸着紙を、樹脂層あるいは蒸着層が向き合うように重ね、ヒートシールテスタ(TP-701-B、テスター産業製)を用いて130℃、0.5MPa、30秒の条件でヒートシールし、ヒートシール性を評価した。融着し、ヒートシールされたものを〇とし、ヒートシールされなかったものを×とした。
【0055】
【0056】
【0057】
実施例の紙積層体では、比較例の蒸着紙に比べ、折り曲げ後も酸素透過度、水蒸気透過度ともに低い値を維持しており、包装袋や包装容器に用いる際の折り曲げ加工等を行ったとしても、高いバリア性を維持できることがわかる。