(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ミリ波反射建装材
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20240604BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240604BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240604BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240604BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
B32B7/025
B32B15/08 Q
B32B27/32 Z
B32B15/08 E
G01S7/03 246
(21)【出願番号】P 2022026916
(22)【出願日】2022-02-24
【審査請求日】2023-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 裕介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智彦
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-048465(JP,A)
【文献】特開平08-084107(JP,A)
【文献】特開2020-070552(JP,A)
【文献】特開2016-144164(JP,A)
【文献】特開平09-074296(JP,A)
【文献】特開2013-048344(JP,A)
【文献】特開平01-239999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/14
B32B 7/025
B32B 15/08
B32B 27/32
G01S 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状の誘電体と、
前記誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターンを有するスーパーセルと、
オレフィン系材料を主成分とし、前記スーパーセルを覆うように配置された保護層と、
前記誘電体と前記保護層との間、および前記スーパーセルと前記保護層との間に位置する接着層と、
を備え、
10GHzにおける前記保護層および前記接着層のトータルの誘電率が2.5以下であり、
平面視において、前記保護層により前記スーパーセルが視認できなくなっている、
ミリ波反射建装材。
【請求項2】
前記誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた金属層をさらに備える、
請求項1に記載のミリ波反射建装材。
【請求項3】
前記オレフィン系材料の誘電率εrが2.7以下である、
請求項1に記載のミリ波反射建装材。
【請求項4】
前記保護層が多孔質構造を有する、
請求項1に記載のミリ波反射建装材。
【請求項5】
前記保護層の表面ヘイズが90%以上である、
請求項1に記載のミリ波反射建装材。
【請求項6】
前記接着層がオレフィン系材料を主成分とする、
請求項1に記載のミリ波反射建装材。
【請求項7】
1平方メートルあたりの重量が2300g以下である、
請求項1に記載のミリ波反射建装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波帯の電波を反射するミリ波反射建装材に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波に対応した各種無線機器の実用化に際し、電波の不感地帯の発生が問題となっている。ミリ波帯の電波は普及が進んでいるVHF波、UHF波と比較して著しく減衰しやすく、直進性も高いという特徴がある。この為、ミリ波帯の電波は、回折による障害物背後への回り込みが難しい。
【0003】
ミリ波帯の電波の不感地帯を解消するものとして、ミリ波帯の電波を反射する反射板(以下、「ミリ波反射板」と称する。)が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載のマルチビームリフレクトアレイは、上記ミリ波反射板として機能し得る。このマルチビームリフレクトアレイは、面状の誘電体の一方の面に所定の角度にミリ波を反射する反射単位を多数有し、他方の面にグランドとして機能とする金属層を有する。各反射単位は、形状の異なる複数の金属パターンで構成される。
【0005】
反射単位が設けられた側の面に入射したミリ波は、各金属パターンと、金属層との両方で反射される。この反射波どうしが干渉することにより、ミリ波は入射時と異なる位相に反射される。
さらに、異なる金属パターンに基づく干渉波は、位相が異なるため、二次干渉を生じる。したがって、反射単位を構成する複数の金属パターンの形状を適宜設定することにより、入射したミリ波の反射方向を所望の向きに設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ミリ波反射板は、その原理上、比較的大きい面積の建装材として建造物の内面や外面に取り付けることで、不感地帯を効率よく解消することが期待できる。
しかしながら、特許文献1に記載のリフレクトアレイを建装材に適用するには、外観や反射特性等を良好にする必要がある。
【0008】
本発明は、外観および反射特性の良好なミリ波反射建装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、面状の誘電体と、誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターンを有するスーパーセルと、オレフィン系材料を主成分とし、スーパーセルを覆うように配置された保護層と、誘電体と保護層との間、およびスーパーセルと保護層との間に位置する接着層とを備えるミリ波反射建装材である。
10GHzにおける保護層および接着層のトータルの誘電率は2.5以下である。
このミリ波反射建装材の平面視においては、保護層によりスーパーセルが視認できなくなっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るミリ波反射建装材は、外観および反射特性のいずれも良好である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るミリ波反射建装材の模式断面図である。
【
図2】同ミリ波反射建装材の部分拡大平面図であり、保護層および接着層を除いて示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るミリ波反射建装材(以下、単に「建装材」と称する。)1を示す模式断面図である。
図1に示すように、建装材1は、面状の誘電体20と、誘電体20上に設けられたスーパーセル10および金属層30と、スーパーセル10を覆う接着層40および保護層50を備えている。
【0013】
図2に、接着層40および保護層50を除いた建装材1の部分拡大平面図を示す。スーパーセル10は、誘電体20の第一面20a上に複数設けられており、形状の異なる複数の金属パターンを有する。
本実施形態において、スーパーセル10は、大きさの異なる十字型の金属パターン11、12、13の三つの金属パターンを有しており、金属パターン11、12、13が一方向に並べて配置されている。金属パターンの形状や数、配置等は、
図2に示した態様に限られず適宜設定でき、環状や、特許文献1に記載されたマッシュルーム構造のような立体形状等であってもよい。
複数のスーパーセル10は、平面視四角形の建装材1において、辺に沿った二次元マトリクス状に整列して配置されている。
【0014】
誘電体20の材質は、誘電体であれば特に制限はない。誘電体20の好適な例として、ガラスクロスに合成樹脂を含浸させたものや、各種合成樹脂からなるフィルム等を挙げることができる。中でも、低損失な電気特性を有する誘電体がより好適であり、高純度ガラス(石英ガラス)、フッ素系樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリオレフィン、等が例示できる。これらは単体で使用してもよく複数種類を混合したり積層したりして使用してもよい。
【0015】
金属層30は、誘電体20において第一面20aと反対側の第二面20bに設けられ、第二面20bの概ね全体を覆っている。
誘電体20、スーパーセル10、および金属層30は、例えば、誘電体の両面に金属箔が接合された材料を用いて、金属箔をエッチング等でパターニングして複数のスーパーセルを形成することにより製造できる。
【0016】
本実施形態において、スーパーセル10および金属層30は、銅からなるが、材質は銅には限られず、金や銀、アルミニウム等も使用できる。さらに、本実施形態における金属層は、金属を主成分としていればよく、抵抗値として10-6Ω・m以下程度の導電性を保持する範囲で金属以外の物質を含んでもよい。例えば、銀混入ペースト、銅混入ペースト、ITO等の導電性金属酸化物等も用途に応じて適用可能である。
【0017】
保護層50は、オレフィン系の材料からなる。材料の具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等を例示できる。
詳細は後述するが、オレフィン系の材料は、建装材に汎用される塩化ビニル等と比べて誘電率εrが低いため、建装材1に適用することにより、良好な反射特性を実現できる。また、比重が小さいため、保護層を設けつつ、建装材1の重量を1平方メートル当たり2300g以下にすることも可能である。これにより、建装材1を施工性高く構成できるという利点もある。
【0018】
接着層40の材料は、誘電体20やスーパーセル10を構成する金属層と、保護層50とを充分な強度で接着できるものであれば特に制限はない。接合性の観点からは、保護層50と同様にオレフィン系材料が好ましく、反射特性の観点からは、誘電率εrが2.7以下のものが好ましい。
【0019】
建装材1の平面視においては、接着層40および保護層50がスーパーセル10を覆っていることによりスーパーセル10が視認できなくなっており、外観が良好に保たれている。スーパーセルを視認できなくする具体的態様については特に制限はなく、例えば以下のように例示できる。
・接着層および保護層の少なくとも一方に顔料や染料を含有させて不透明にする。
・保護層の少なくとも一方の面に不透明な印刷層を設ける。
・保護層として、多数の空孔を有する多孔質のフィルムを使用し、入射光の乱反射を生じさせる。
・保護層の少なくとも一方の面をサンドブラストや転写等により粗面化し、粗面化した面において入射光の乱反射を生じさせる。例えば表面ヘイズ90%以上とすると、充分にスーパーセルを視認できなくすることができる。
【0020】
上述した態様は適宜組み合わせてもよい。例えば、保護層として多孔質構造を有するフィルムを用い、さらに不透明な木目調の印刷層を設けることにより、建装材1を触感の柔らかい木目調の壁紙として構成できる。
また、接着層40および保護層50の着色や乱反射が、単独ではスーパーセルを完全に視認できなくするのに十分でなくても、接着層40と保護層50とを重ねた状態で視認できなくなっていれば問題ない。
【0021】
上記のように構成された本実施形態に係る建装材1の使用時の動作について説明する。
建装材1は、金属層30上に接着剤やモルタル等の接合材を層状に配置することにより、建造物の内部や外部の壁面に取り付けることができる。取り付ける面が金属で形成されている場合、この金属面が金属層として機能するため、金属層30が省略されてもよい。
【0022】
建装材1を保護層50側から見ても、多数配置されたスーパーセル10は視認できないため、見る者に違和感を与えることはない。また、スーパーセル10を構成する金属パターンが保護層50により保護されるため、損傷や劣化が抑制され、良好な状態が長期間維持される。
【0023】
保護層50側から建装材1にミリ波が入射すると、ミリ波は保護層50および接着層40を通って建装材1の内部を進む。その一部はスーパーセル10で反射され、他の一部は、誘電体20を通り金属層30で反射される。これらの反射波の位相差と、スーパーセル10における金属パターンの態様とにより、入射したミリ波は設定された反射特性に従った反射波として建装材1から出射される。
この一連の動作において、ミリ波は、入射する際と反射波として出射される際との2回、保護層および接着層を通過する。したがって、保護層および接着層の誘電率が高いと、ミリ波は保護層および接着層を通過する間に大きく減衰するため、保護層や接着層が存在しない状態に比して反射特性が大きく低下する。
【0024】
本実施形態の建装材1においては、保護層50がオレフィン系材料からなるため、他の添加剤を含んだり印刷が施されたりした場合でも、保護層50におけるオレフィン系材料が95%以上を占める。その結果、保護層50全体としては誘電率の低い層とでき、入射したミリ波の減衰を抑制できる。
このように、建装材1においては、保護層50により良好な外観と良好な反射特性とが両立されている。保護層50の主成分となるオレフィン系材料として、εrが2.5以下であるような、より誘電率の低いものを用いたり、接着層40についても誘電率の低い材料を用いたりすることにより、この効果をさらに向上させることもできる。
保護層が接着層等の他の層を介して誘電体20に接合されている場合は、保護層と当該他の層とのトータルの誘電率εrを2.5以下とすることが好ましい。
【0025】
本実施形態に係るミリ波反射建装材について、実施例を用いてさらに説明する。本発明に係る技術的思想は、実施例の具体的な内容のみによって何ら限定されない。
【0026】
(実施例1)
誘電体の両面に銅箔が設けられた400mm×300mmの銅張積層板(中興化成工業社製CGP-500)を準備した。誘電体はフッ素樹脂含浸ガラスクロス(厚さ764μm)であり、銅箔の厚さはいずれも18μm、総厚は0.8mmである。
【0027】
銅張積層板の一方の面にエッチングを施し、二次元マトリクス状に配列されたスーパーセルを複数形成した。スーパーセルは、十字型の3つの金属パターンで構成される。小パターンは、幅1.1mm、縦横寸法1.4mmである。中パターンは、幅1.4mm、縦横寸法3.0mmである。大パターンは、幅1.4mm、縦横寸法3.7mmである。3つのパターンを小、中、大の順に等ピッチで5mm×15mmの区画内に配置し、これをスーパーセルの単位とした。このスーパーセルは、垂直に入射した28GHz帯のミリ波を、小パターンから大パターンに向かう方向に45°傾けて反射するよう設計されている。
上記構成のスーパーセルを、80行20列の二次元マトリクス状に形成した。
【0028】
ポリオレフィンを主材とする厚さ400μmの多孔質フィルム(ユポ・コーポレーション社製 アルファユポQJJ400)を準備した。この多孔質フィルムは、不透明の白色を呈しており、比重は0.99、10GHzにおける誘電率εrは2.30(誘電正接0.0005)である。誘電率、誘電正接はベクトルネットワークアナライザ(N5224B;キーサイトテクノロジー製)および、スプリットシリンダ共振器(CR710;EMラボ製)を用いて行った。
【0029】
離型フィルム上にポリオレフィン系接着剤(クラレ社製 セプトン2007 ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ブロックポリスチレン)をトルエンで25wt%となるよう溶解した。これを離形フィルム上にナイフコーターで塗工し、乾燥して、厚さ25μmの透明な接着層を形成した。
接着層の比重は0.91、10GHzにおける誘電率εrは2.20(誘電正接0.0013)である。
【0030】
スーパーセルを覆うように接着層のついた離型フィルムを誘電体に貼り合わせ、離型フィルムのみを除去して接着層を配置した。その後、多孔質フィルムを接着層に貼り合わせ、200℃、1MPaの条件で10秒間加熱および加圧を行った。
以上により、実施例1に係る建装材を得た。この建装材の1平方メートルあたりの重量は、2285gであった。
実施例1に係る建装材において、多孔質フィルムと接着層を合わせたトータルの比重は0.99、10GHzにおけるトータルの誘電率εrは2.3(誘電正接0.0005)であった。
【0031】
(実施例2)
シクロオレフィンポリマーを主材とする厚さ100μmの樹脂フィルム(日本ゼオン社製 ゼオノアZF16)を準備した。この樹脂フィルムは、透明であり、比重は1.1、10GHzにおける誘電率εrは2.33(誘電正接0.00039)である。
実施例1と同一のスーパーセル付き誘電体に接着層を配置し、樹脂フィルムを貼り合わせた後、さらに接着層および樹脂フィルムの積層を2度行ってから実施例1と同様の加熱および加圧を行った。さらに、最上層の樹脂フィルムの上面に、長辺長さ30μmの不定形シリカ粉を用いたサンドブラストを施し、処理後に表層の水洗浄と温風乾燥を行った。
以上により、実施例2に係る建装材を得た。この建装材の1平方メートルあたりの重量は、2239gであった。
実施例2に係る建装材は、保護層及び接着層を複数有し、表面ヘイズは92%である。
実施例2に係る建装材において、樹脂フィルムと接着層を合わせたトータルの比重は1.1、10GHzにおけるトータルの誘電率εrは2.3(誘電正接0.0006)であった。
【0032】
(比較例1)
塩化ビニルを主材とする厚さ400μmの樹脂フィルムを準備した。この樹脂フィルムは、白色であり、比重は1.8、10GHzにおける誘電率εrは3.00(誘電正接0.020)である。
離型フィルム上に塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体接着剤(日信化学工業社製 ソルバインCN)をメチルエチルケトンとトルエンとを質量比1対1で混合した混合溶媒で25wt%となるよう溶解した。これを離形フィルム上にナイフコーターで塗工し、乾燥して、厚さ25μmの透明な接着層を形成した。
比較例に係る接着層の比重は1.32、10GHzにおける誘電率εrは3.29(誘電正接0.025)である。
これらを用いて、実施例1と同様の手順により、比較例1に係る建装材を得た。この建装材の1平方メートルあたりの重量は、2633gであった。
比較例1に係る建装材において、樹脂フィルムと接着層を合わせたトータルの比重は1.7、10GHzにおけるトータルの誘電率εrは3.0(誘電正接0.0206)であった。
【0033】
(比較例2)
接着層および保護層を取り付けない点を除き、実施例1と同様の手順で、比較例2に係る建装材を得た。この建装材の1平方メートルあたりの重量は、1868gであった。
【0034】
各例に係るミリ波反射建装材に対して、以下の評価を行った。
(外観評価)
各例の建装材を、アクリル系接着剤を用いてスチール製のパーティションに貼り付けた。10人の試験員が各例の建装材を目視し、化粧シートあるいは壁材として違和感を覚えるか否か評価した。違和感なしと評価した試験員が6名以上の場合を合格とし、5名以下の場合を不合格とした。
【0035】
(スーパーセルの保護性能評価)
各例の建装材を65℃、65%RH(相対湿度)の環境に100時間静置した。静置後に保護層および接着層を剥離し、スーパーセルの各金属パターンに錆や変色を生じているか否かを目視により評価した。
【0036】
(反射特性評価)
各例の建装材を、金属層30が接するように平坦な木の板に取り付け、電波暗室環境内に固定した。
ホーンアンテナからの送信波を曲面形状の反射鏡で反射して28GHzの平面波を生成し、建装材に対して垂直に照射した。
建装材に対して遠方界となる位置に設置した受信アンテナで、建装材からの反射波を計測した。この受信アンテナは、ロボット上に設置され、建装材から一定の遠方界距離を保ったまま周回できるよう構成されており、広い角度範囲で反射波を計測できる。この評価では、設計内容である、法線に対して45°方向のRCS(レーダー反射断面積)を評価値とした。
【0037】
外観評価においては、実施例1、2、および比較例1は、いずれも白色の外観を有する保護層によりスーパーセルが視認できなくなっており、合格であった。比較例2では、スーパーセルがむき出しであったため、違和感を覚える試験員が多く、不合格であった。
【0038】
スーパーセルの保護性能評価について、実施例1、2、および比較例1では、いずれもスーパーセルに変色や錆等を認めず、良好に保護されていた。比較例2では、金属パターンに錆が生じており、劣化が認められた。
【0039】
反射特性評価の結果は、以下の通りであった。
実施例1 -0.29dBsm(デシベル・スクエアメーター) 反射率82%
実施例2 -1.07dBsm 反射率78%
比較例1 -1.87dBsm 反射率65%
比較例2 -0.27dBsm 反射率94%
実施例1および2では、スーパーセルが保護層で覆われているにもかかわらず、良好な反射特性を示した。一方、保護層が塩化ビニル製である比較例1では、反射の損失が見られた。
比較例2の上記測定値は、製造直後のものである。比較例2の建装材をスーパーセルの保護性能評価後に測定したところ、ミリ波反射能を失っており測定不能であった。
【0040】
以上より、実施例に係る建装材では、外観および反射特性のいずれも良好であることが確認できた。また、保護層により、良好な反射特性が長期間持続することも期待できる。
【0041】
以上、本発明について、実施形態および実施例を用いて説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更は自由に組み合わせることができる。
【0042】
・本発明に係るミリ波反射板において、金属層は、必ずしも第二面上に隙間なく設けられなくてもよい。たとえば、小さな開口を有するメッシュ状であったり、スーパーセルの区画に対応した線状の欠損部位などを有したりしてもよい。ただし、金属層のない部分においては、入射したミリ波が反射されずに透過するため、金属層のない部分が多すぎると反射性能に影響する可能性があるため、金属層のない部分の最大連続長を、反射対象周波数の1/4λ未満とすることが好ましい。メッシュ状とする場合は、開口の寸法を調節することで、所定波長の電波を反射せずに透過させることも可能である。
【0043】
・金属層上に接着層およびセパレータを設け、セパレータを剥がすことによりそのまま壁面等に貼り付けられるように建装材を構成してもよい。
【0044】
・誘電体上におけるスーパーセルの配置態様は、上述した内容に限定されず、適宜設定できる。
【0045】
・本発明において、接着層は必須ではない。例えばビス止め等により保護層を誘電体に固定したり、高周波、超音波、レーザー等により誘電体や保護層の一部を融解して接合したりしてもよい。接着層を設ける場合も、通常の接着剤には限られず、ホットメルト接着剤やヒートシール層を用いた熱融着等も適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 ミリ波反射建装材
10 スーパーセル
11、12、13 金属パターン
20 誘電体
20a 第一面
20b 第二面
30 金属層
40 接着層
50 保護層