(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】圧電振動子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20240604BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20240604BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03H3/02 B
H01L23/02 B
(21)【出願番号】P 2022515202
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2020044466
(87)【国際公開番号】W WO2021210214
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020074321
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】尾島 茂夫
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/065519(WO,A1)
【文献】特開2000-340687(JP,A)
【文献】特開2014-158157(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140449(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/76
H03H 3/007-3/10
H01L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と、
前記圧電振動素子が搭載されたベース部材と、
前記ベース部材との間に導電性材料の接合部材を挟んで接合され、前記ベース部材との間に前記圧電振動素子が配置された内部空間を形成する導電性材料の蓋部材と、
を備え、
前記ベース部材には、前記圧電振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、前記接地用電極は前記接合部材と接触しており、
前記蓋部材は、天壁部と、前記天壁部の外縁から前記ベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、前記側壁部は、前記ベース部材に対向する対向面を有し、
前記蓋部材には、前記天壁部の外縁に沿って、前記側壁部の前記対向面を覆う絶縁部材が設けられ、
前記絶縁部材の表面の少なくとも一部には金属膜が設けられ、
前記金属膜は、前記絶縁部材と前記接合部材の間に設けられるとともに前記蓋部材の前記側壁部に接触して設けられ、前記蓋部材と前記接地用電極とを電気的に接続
し、
前記接合部材は、異方性導電性接着剤である、圧電振動子。
【請求項2】
前記蓋部材の平面視において、前記金属膜は、前記給電用電極と重なる領域の外側であって前記接地用電極と重なる領域に設けられている、
請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記ベース部材には、前記給電用電極の側壁部と対向する領域を覆う絶縁性材料の保護膜が設けられている、
請求項
1又は2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記金属膜は、前記側壁部の内面及び外面のそれぞれの一部に接触している、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の圧電振動子。
【請求項5】
圧電振動素子をベース部材に搭載すること、
前記ベース部材との間に導電性材料の接合部材を挟んで蓋部材を接合し、前記ベース部材との間に前記圧電振動素子が配置された内部空間を形成すること、
を含み、
前記ベース部材には、前記圧電振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、前記接地用電極は前記接合部材と接触しており、
前記蓋部材は、天壁部と、前記天壁部の外縁から前記ベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、前記側壁部は、前記ベース部材に対向する対向面を有し、
前記蓋部材の前記天壁部の外縁に沿って、前記側壁部の前記対向面を覆う絶縁部材を形成すること、
前記絶縁部材の少なくとも一部を覆い、前記蓋部材の前記側壁部に接触する金属膜を形成すること、
をさらに含み、
前記蓋部材を接合することは、前記接地用電極と前記金属膜とを接合し、前記蓋部材と前記接地用電極とを電気的に接続することを含
み、
前記金属膜を形成することは、前記金属膜をスパッタリング法又は真空蒸着法によって形成することを含む、圧電振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
振動子は、移動通信端末、通信基地局、家電などの各種電子機器において、タイミングデバイス、センサ、発振器などの用途に用いられている。電子機器の高機能化に伴い、安価で高性能な振動素子が求められている。
【0003】
特許文献1には、ベース部材と金属製の蓋部材とを導電性接着剤又はPb含有低融点ガラスを介して接合し、この導電性接着剤によって蓋部材をベース部材の接地用電極に電気的に接続し、電磁波の出入りによるノイズを抑制した水晶振動子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の水晶振動子において、接合部材として導電性接着剤を用いる場合、導電性フィラーの添加により導電性接着剤ペーストの粘度が上昇し、導電性接着剤ペーストの流動によるリークパスの埋め戻しが行われ難いため、ベース部材と蓋部材とのギャップが大きい箇所ではリークパスが発生し易く、リーク不良が発生する場合がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ノイズの発生を抑制しつつ信頼性が向上した圧電振動子及びその製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る圧電振動子は、圧電振動素子と、圧電振動素子が搭載されたベース部材と、ベース部材との間に導電性材料の接合部材を挟んで接合され、ベース部材との間に圧電振動素子が配置された内部空間を形成する導電性材料の蓋部材と、を備え、ベース部材には、圧電振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、接地用電極は接合部材と接触しており、蓋部材は、天壁部と、天壁部の外縁からベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、側壁部は、ベース部材に対向する対向面を有し、蓋部材には、天壁部の外縁に沿って、側壁部の対向面を覆う絶縁部材が設けられ、絶縁部材の表面の少なくとも一部には金属膜が設けられ、金属膜は、絶縁部材と接合部材の間に設けられるとともに蓋部材の側壁部に接触して設けられ、蓋部材と接地用電極とを電気的に接続する。
【0008】
本発明の一態様に係る圧電振動子の製造方法は、圧電振動素子をベース部材に搭載すること、ベース部材との間に導電性材料の接合部材を挟んで蓋部材を接合し、ベース部材との間に圧電振動素子が配置された内部空間を形成すること、を含み、ベース部材には、圧電振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、接地用電極は接合部材と接触しており、蓋部材は、天壁部と、天壁部の外縁からベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、側壁部は、ベース部材に対向する対向面を有し、蓋部材の天壁部の外縁に沿って、側壁部の対向面を覆う絶縁部材を形成すること、絶縁部材の少なくとも一部を覆い、蓋部材の側壁部に接触する金属膜を形成すること、をさらに含み、蓋部材を接合することは、接地用電極と金属膜とを接合し、蓋部材と接地用電極とを電気的に接続することを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノイズの発生を抑制しつつ信頼性が向上した圧電振動子及びその製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図4】ベース部材及び水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る水晶振動子の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。各実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0012】
<第1実施形態>
図1~
図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る水晶振動子1の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す平面図である。
図3は、第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
図4は、ベース部材及び水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。なお、
図3は、
図2に示した水晶振動子1のIII-III線に沿った断面図である。
【0013】
各々の図面には、各々の図面相互の関係を明確にし、各部材の位置関係を理解する助けとするために、便宜的にX軸、Y´軸及びZ´軸からなる直交座標系を付すことがある。X軸、Y´軸及びZ´軸は各図面において互いに対応している。X軸、Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、後述の水晶片11の結晶軸(Crystallographic Axes)に対応している。X軸が水晶の電気軸(極性軸)、Y軸が水晶の機械軸、Z軸が水晶の光学軸に相当する。Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に35度15分±1分30秒回転させた軸である。
【0014】
以下の説明において、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y´軸に平行な方向を「Y´軸方向」、Z´軸に平行な方向を「Z´軸方向」という。また、X軸、Y´軸及びZ´軸の矢印の先端方向を「+(プラス)」、矢印とは反対の方向を「-(マイナス)」という。なお、便宜的に、+Y´軸方向を上方向、-Y´軸方向を下方向として説明するが、水晶振動子1の上下の向きは限定されるものではない。例えば、以下の説明において、水晶振動素子10における+Y´軸方向の側を上面11Aとし、-Y´軸方向の側を下面11Bとするが、水晶片11は、上面11Aが下面11Bの鉛直下側に位置するように配置されてもよい。
【0015】
水晶振動子1は、水晶振動素子10と、金属膜20と、ベース部材30と、蓋部材40と、接合部材50と、絶縁部材60とを備えている。水晶振動素子10は、ベース部材30と蓋部材40との間に設けられている。ベース部材30及び蓋部材40は、水晶振動素子10を収容するための保持器を構成しており、Y´軸方向に沿って重なっている。例えば、ベース部材30は平板状をなしており、蓋部材40はベース部材30側に水晶振動素子10を収容する有底の開口部を有する。水晶振動素子10は、ベース部材30に搭載されている。なお、水晶振動素子10が保持器に収容されれば、ベース部材30及び蓋部材40の形状は上記に限定されるものではない。例えば、ベース部材30が蓋部材40側に水晶振動素子10の一部を収容する有底の開口部を有してもよい。また、蓋部材40が平板状をなしてもよい。なお、以下の説明において、ベース部材30と蓋部材40とが重なる方向であるY´軸方向を、「高さ方向」とする。
【0016】
まず、水晶振動素子10について説明する。
水晶振動素子10は、圧電効果により水晶を振動させ、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する素子である。水晶振動素子10は、薄片状の水晶片11と、一対の励振電極を構成する第1励振電極14a及び第2励振電極14bと、一対の引出電極を構成する第1引出電極15a及び第2引出電極15bと、一対の接続電極を構成する第1接続電極16a及び第2接続電極16bとを備えている。
【0017】
水晶片11は、互いに対向する上面11A及び下面11Bを有している。上面11Aは、ベース部材30に対向する側とは反対側、すなわち後述する蓋部材40の天壁部41に対向する側に位置している。下面11Bは、ベース部材30に対向する側に位置している。
【0018】
水晶片11は、例えば、ATカット型の水晶片である。ATカット型の水晶片11は、互いに交差するX軸、Y´軸、及びZ´軸からなる直交座標系において、X軸及びZ´軸によって特定される面と平行な面(以下、「XZ´面」と呼ぶ。他の軸によって特定される面についても同様である。)が主面となり、Y´軸と平行な方向が厚さとなるように形成される。例えば、ATカット型の水晶片11は、人工水晶(Synthetic Quartz Crystal)の結晶体を切断及び研磨加工して得られる水晶基板(例えば、水晶ウェハ)をエッチング加工することで形成される。
【0019】
ATカット型の水晶片11を用いた水晶振動素子10は、広い温度範囲で高い周波数安定性を有する。ATカット型の水晶振動素子10では、厚みすべり振動モード(Thickness Shear Vibration Mode)が主要振動として用いられる。なお、ATカット型の水晶片11におけるY´軸及びZ´軸の回転角度は、35度15分から-5度以上15度以下の範囲で傾いてもよい。水晶片11のカット角度は、ATカット以外の異なるカットを適用してもよい。例えばBTカット、GTカット、SCカットなどを適用してよい。また、水晶振動素子は、Z板と呼ばれるカット角の水晶片を用いた音叉型水晶振動素子であってもよい。
【0020】
ATカット型の水晶片11は、X軸方向に平行な長辺が延在する長辺方向と、Z´軸方向に平行な短辺が延在する短辺方向と、Y´軸方向に平行な厚さが延在する厚さ方向を有する板状である。水晶片11の上面11Aを平面視したとき、水晶片11の平面形状は矩形状をなしている。
【0021】
なお、上面11Aを平面視したときの水晶片11の平面形状は矩形状に限定されるものではない。水晶片11の平面形状は、多角形状、円形状、楕円形状又はこれらの組合せであってもよい。水晶片11の平面形状は音叉形状であってもよい。言い換えると、水晶片11が、基部と、基部から並行に延出する振動腕部とを有してもよい。水晶片11には、振動漏れや応力伝搬を抑制する目的でスリットが形成されてもよい。
【0022】
水晶片11は、平板状に限定されるものではなく、メサ型構造や逆メサ型構造であってもよい。この場合、水晶片11は、厚みが連続的に変化するテーパ形状、厚みの変化が不連続に変化する階段形状、厚みの変化量が連続的に変化するコンベックス形状、又は厚みの変化量が不連続に変化するベベル形状であってもよい。
【0023】
第1励振電極14aは水晶片11の上面11A側に設けられ、第2励振電極14bは水晶片11の下面11B側に設けられている。言い換えると、第1励振電極14aは水晶片11の蓋部材40側の主面に設けられ、第2励振電極14bは水晶片11のベース部材30側の主面に設けられている。第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、水晶片11を挟んで互いに対向している。水晶片11の上面11Aを平面視したとき、第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、それぞれ矩形状をなしており、互いの略全体が重なり合うように配置されている。
【0024】
なお、水晶片11の上面11Aを平面視したときの第1励振電極14a及び第2励振電極14bの平面形状は矩形状に限定されるものではない。第1励振電極14a及び第2励振電極14bの平面形状は、多角形状、円形状、楕円形状又はこれらの組合せであってもよい。
【0025】
第1引出電極15aは水晶片11の上面11A側に設けられ、第2引出電極15bは水晶片11の下面11B側に設けられている。第1引出電極15aは、第1励振電極14aと第1接続電極16aとを電気的に接続している。第2引出電極15bは、第2励振電極14bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。浮遊容量の低減を目的として、第1引出電極15a及び第2引出電極15bは、水晶片11の上面11Aを平面視したときに互いに離れていることが望ましい。例えば、第1引出電極15aは、第2引出電極15bから視て+Z´軸方向に設けられている。
【0026】
第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、それぞれ、第1励振電極14a及び第2励振電極14bをベース部材30に電気的に接続するための電極であり、水晶片11の下面11B側に設けられている。第1接続電極16aは、水晶片11の-X軸方向側の端部と+Z´軸方向側の端部とによって形成される角部に設けられ、第2接続電極16bは、水晶片11の-X軸方向側の端部と-Z´軸方向側の端部とによって形成される角部に設けられている。
【0027】
第1励振電極14a、第1引出電極15a及び第1接続電極16aからなる一方の電極群は、互いに連続的に形成されており、例えば互いに一体的に形成されている。第2励振電極14b、第2引出電極15b及び第2接続電極16bからなる他方の電極群も同様に、互いに連続的に形成されており、例えば互いに一体的に形成されている。このように、水晶振動素子10には一対の電極群が設けられている。水晶振動素子10の一対の電極群は、例えば多層構造であり、下地層と最表層とをこの順に積層して設けられている。下地層は、水晶片11に接触する層であり、水晶片11との密着性が良好な材料で設けられる。最表層は、一対の電極群の最表面に位置する層であり、化学的安定性が良好な材料で設けられる。これによれば、一対の電極群の剥離や酸化が抑制でき、信頼性の高い水晶振動素子10が提供できる。下地層は例えばクロム(Cr)を含有し、最表層は例えば金(Au)を含有する。
【0028】
水晶振動素子10の一対の電極群を構成する材料はCr及びAuに限定されるものではなく、例えばチタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)、錫(Sn)、鉄(Fe)などの金属材料を含有してもよい。一対の電極群は、導電性セラミック、導電性樹脂、半導体などを含有してもよい。
【0029】
次に、ベース部材30について説明する。
ベース部材30は、水晶振動素子10を励振可能に保持するものである。ベース部材30は、平板状の基体31と、一対の電極パッドを構成する第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bと、上面電極33cと、第1側面電極34a,第2側面電極34b,第3側面電極34c,第4側面電極34dと、第1外部電極35a,第2外部電極35b,第3外部電極35c,第4外部電極35dと、保護膜39を備えている。
【0030】
基体31は、互いに対向する上面31A及び下面31Bを有している。上面31A及び下面31Bは、基体31の一対の主面に相当する。上面31Aがベース部材30の第1面に相当し、下面31Bがベース部材30の第2面に相当する。上面31Aは、水晶振動素子10及び蓋部材40に対向する側に位置し、水晶振動素子10が搭載される搭載面に相当する。下面31Bは、例えば、水晶振動子1を外部の回路基板に実装する際に、当該回路基板に対向する側に位置し、当該回路基板が接続される実装面に相当する。基体31は、例えば絶縁性セラミック(アルミナ)などの焼結材であるが、絶縁性材料であればこれに限定されるものではない。熱応力の発生を抑制する観点から、基体31は耐熱性材料から構成されることが好ましい。熱履歴によって水晶振動素子10にかかる応力を抑制する観点から、基体31は、水晶片11に近い熱膨張率を有する材料によって設けられてもよく、例えば水晶によって設けられてもよい。また、熱応力による基体31の損傷を抑制する観点から、基体31は、蓋部材40に近い熱膨張率を有する材料によって設けられてもよい。
【0031】
上面31Aを平面視したとき、基体31は、X軸方向に延びてZ´軸方向において対向する一対の長辺と、Z´軸方向に延びてX軸方向において対向する一対の短辺とを有している。基体31の4つの角部には扇状の凹部が設けられている。この凹部は、上面31Aから下面31Bに亘って基体31を貫通する貫通孔を分割したものである。
【0032】
第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、基体31の上面31Aに設けられている。第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、ベース部材30に水晶振動素子10を電気的に接続するための端子である。酸化による信頼性の低下を抑制する観点から、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bのそれぞれの最表面は金を含有するのが望ましく、ほぼ金のみからなるのがさらに望ましい。例えば、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、基体31との密着性を向上させる下地層と、金を含み酸化を抑制する最表面とを有する積層構造であってもよい。
【0033】
上面電極33cは、蓋部材40と電気的に接続される電極である。上面電極33cは、ベース部材30の+X軸方向側且つ-Z´軸方向側の角部に設けられ、ベース部材30の蓋部材40側の最表面に位置している。
【0034】
第1側面電極34a~第4側面電極34dは、ベース部材30の側面部に設けられている。具体的には、基体31の角部に設けられた凹部の上面31Aから下面31Bとの間の領域に亘って延在している。言い換えると、第1側面電極34a~第4側面電極34dは、側面部の上面31A側の端部から下面31B側の端部に亘って設けられ、基体31の凹部を覆っている。第1側面電極34a~第4側面電極34dのそれぞれは、キャスタレーション電極に相当する。第1側面電極34aは、ベース部材30の-X軸方向側且つ+Z´軸方向側の角部に設けられた凹部に設けられている。第2側面電極34bは、第1側面電極43aの対角、すなわちベース部材30の+X軸方向側且つ-Z´軸方向側の角部に設けられた凹部に設けられている。第3側面電極34cは、ベース部材30の+X軸方向側且つ+Z´軸方向側の角部に設けられた凹部に設けられている。第4側面電極34dは、第3側面電極34cの対角、すなわちベース部材30の-X軸方向側且つ-Z´軸方向側の角部に設けられた凹部に設けられている。
【0035】
第1側面電極34aは、上面31Aに設けられた配線電極を介して第1電極パッド33aに電気的に接続され、第2側面電極34bは、上面31Aに設けられた配線電極を介して第2電極パッド33bに電気的に接続されてる。第3側面電極34cは、上面電極33cから連続的に設けられており、上面電極33cと電気的に接続されている。第1側面電極34a、第1電極パッド33a及びこれらを接続する配線電極は、水晶振動素子10が接続される給電用電極に相当する。第2側面電極34b、第2電極パッド33b及びこれらを接続する配線電極も同様に給電用電極に相当する。第3側面電極34c及び上面電極33cは、蓋部材40の接地に用いられる接地用電極に相当する。
【0036】
第1外部電極35a~第4外部電極35dは、半田等によって水晶振動子1を外部の回路基板に実装するための電極である。第1外部電極35a~第4外部電極35dは、基体31の下面31Bに設けられている。第1外部電極35aは、ベース部材30の-X軸方向側且つ+Z´軸方向側の角部に設けられ、第1側面電極34aに電気的に接続されている。第1外部電極35aは、ベース部材30の+X軸方向側且つ-Z´軸方向側の角部に設けられ、第2側面電極34bに電気的に接続されている。第3外部電極35cは、ベース部材30の+X軸方向側且つ+Z´軸方向側の角部に設けられ、第3側面電極34cに電気的に接続されている。第4外部電極35dは、ベース部材30の-X軸方向側且つ-Z´軸方向側の角部に設けられ、第4側面電極34dに電気的に接続されている。第1外部電極35a及び第2外部電極35bは、一対の給電用電極に電気信号を供給するために用いられる。第3外部電極35cは、接地用電極を接地するために用いられる。第4外部電極35dは、電気信号等が入出力されないダミー電極である。第4外部電極35dは、第3外部電極35cとともに蓋部材40を接地するために用いられてもよく、省略されてもよい。
【0037】
保護膜39は、ベース部材30の蓋部材40と対向する側であって、接合部材50に接触する領域に設けられている。保護膜39は、給電用電極の側壁部42と対向する領域を覆い、給電用電極と蓋部材40とを電気的に絶縁している。具体的には、保護膜39は、第1側面電極34aと第1電極パッド33aとを接続する配線電極を覆い、第2側面電極34bと第2電極パッド33bとを接続する配線電極を覆っている。また、保護膜39は、ベース部材30の蓋部材と対向する側の表面の凹凸を小さくし、接合部材50の局所的な厚みの増大による封止性の低下を抑制している。保護膜39は、上面電極33cの外側の領域に設けられており、上面電極33cは保護膜39から露出している。
【0038】
ベース部材30は、一対の導電性保持部材を構成する第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bを備えている。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、ベース部材30及び蓋部材40から間隔を空けて水晶振動素子10を保持している。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、水晶振動素子10とベース部材30とを電気的に接続する。具体的には、第1導電性保持部材36aが第1電極パッド33aと第1接続電極16aとを電気的に接続し、第2導電性保持部材36bが第2電極パッド33bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。
【0039】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等を含む導電性接着剤の硬化物であり、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分は、例えばシリコーン樹脂である。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは導電性粒子を含んでおり、当該導電性粒子としては例えば銀(Ag)を含む金属粒子が用いられる。第1導電性保持部材36aは第1電極パッド33aと第1接続電極16aとを接合し、第2導電性保持部材36bは第2電極パッド33bと第2接続電極16bとを接合している。
【0040】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分は、硬化性樹脂であればシリコーン樹脂に限定されるものではなく、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などであってもよい。また、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bへの導電性の付与は、銀粒子によるものに限定されるものではなく、その他の金属、導電性セラミック、導電性有機材料などによるものでもよい。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分が導電性高分子であってもよい。
【0041】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの樹脂組成物は、任意の添加剤を含有してもよい。添加剤は、例えば、導電性接着剤の作業性や保存性の向上などを目的とする粘着付与剤、充填剤、増粘剤、増感剤、老化防止剤、消泡剤などである。また、硬化物の強度を増加させる目的、あるいはベース部材30と水晶振動素子10との間隔を保つ目的のフィラーが添加されてもよい。
【0042】
次に、蓋部材40について説明する。
蓋部材40は、ベース部材30に接合されている。蓋部材40は、ベース部材30との間に水晶振動素子10を収容する内部空間を形成する。蓋部材40はベース部材30の側に開口する凹部49を有しており、本実施形態における内部空間は、凹部49の内側の空間に相当する。凹部49は、液密封止されている。蓋部材40の材質は、望ましくは導電材料であり、さらに望ましくは気密性の高い金属材料である。蓋部材40が導電材料で構成されることによって、内部空間への電磁波の出入りを低減する電磁シールド機能が蓋部材40に付与される。熱応力の発生を抑制する観点から、蓋部材40の材質は、基体31に近い熱膨張率を有する材料であることが望ましく、例えば常温付近での熱膨張率がガラスやセラミックと広い温度範囲で一致するFe-Ni-Co系合金である。蓋部材40の弾性率は、望ましくは基体31の弾性率よりも小さい。これによれば、外部からの衝撃を蓋部材40が吸収する。具体的には、蓋部材40へ小さな外部応力が作用したときは蓋部材40が弾変形し、蓋部材40へ比較的大きな外部応力が作用したときは、蓋部材40が塑性変形する。このように蓋部材40が変形することによって、外部応力に起因したベース部材30の損傷が抑制される。
【0043】
蓋部材40は、平板状の天壁部41と、天壁部41の外縁に接続されており且つ高さ方向に沿って延在する側壁部42とを有している。蓋部材40の凹部49は、天壁部41と側壁部42とによって形成されている。具体的には、天壁部41は、基体31の上面31Aに沿って延在し、高さ方向において水晶振動素子10を挟んでベース部材30と対向している。また、側壁部42は、天壁部41からベース部材30に向かって延在しており、基体31の上面31Aと平行な方向において水晶振動素子10を囲んでいる。蓋部材40はさらに、側壁部42のベース部材30側の先端部に接続されており且つ基体31の上面31Aに沿って外側に延在するフランジ部を有してもよい。
【0044】
蓋部材40は、凹部49の側に位置する内面と、凹部49とは反対側であって外部に露出する外面とを有している。内面は、天壁部41及び側壁部42の水晶振動素子10に対向する側であり、外面は、天壁部41及び側壁部42の水晶振動素子10に対向する側とは反対側である。蓋部材40はさらに、ベース部材30に対向する対向面を有している。対向面は、ベース部材30の側壁部42の先端においてベース部材30の上面31Aと平行に延在する面であり、フランジ部を設けることによって拡張可能である。
【0045】
主面の法線方向から平面視したときの蓋部材40の平面形状は、例えば略矩形状である。蓋部材40の平面形状は上記に限定されるものではなく、多角形状、円形状、楕円形状及びこれらの組合せでもよい。
【0046】
次に、絶縁部材60について説明する。
蓋部材40の側壁部42の先端に沿って枠状に設けられている。具体的には、側壁部42の対向面を覆い、内面及び外面の一部を覆っている。絶縁部材60は、接合部材50との接触面積を増大させて接合強度を向上させる。また、絶縁部材60は、蓋部材40のうねりに起因した側壁部42の対向面の位置変動によるベース部材30と蓋部材40とのギャップの変動を抑制し、接合部材50との接触面を同一平面に近づけることで、部分的な接合強度の低下や封止性の低下を抑制する。ベース部材30と蓋部材40の側壁部42の対向面とのギャップが全体的に小さくなるので、導電性フィラーを含んだことで封止性が低下した導電性接着剤を接合部材50として用いたとしても、充分な封止性が得られる。なお、絶縁部材60は、保護膜39と蓋部材40との間に設けられており、給電用電極と側壁部42との間、及び接地用電極と側壁部42との間に設けれている。
【0047】
次に、接合部材50について説明する。
接合部材50は、ベース部材30及び蓋部材40のそれぞれの外縁部の全周に亘って設けられ、矩形の枠状をなしている。ベース部材30の上面31Aを平面視したとき、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、接合部材50の内側に配置されており、接合部材50は水晶振動素子10を囲むように設けられている。接合部材50は、ベース部材30と蓋部材40とを接合し、内部空間に相当する凹部49を封止している。具体的には、接合部材50は、保護膜39と絶縁部材60とを接合し、上面電極33cと絶縁部材60とを接合している。水晶振動素子10の周波数特性の変動を抑制する観点から、接合部材50の材質は、透湿性が低いことが望ましく、ガス透過性が低いことがさらに望ましい。
【0048】
接合部材50は、導電性接着剤であり、接地用電極と蓋部材40とを電気的に接続する。接合部材50は、上面電極33cと金属膜20とに接触している。水晶振動素子10と蓋部材40との短絡を抑制する観点から、接合部材50は、異方性導電性接着剤であってもよい。すなわち、接合部材50は、Y´軸方向に沿った導電性を有し、XZ´面に沿った絶縁性を有してもよい。接合部材50は、例えば、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂を含む樹脂系接着剤である。接合部材50は、エポキシ系、ビニル系、アクリル系、ウレタン系、イミド系又はシリコーン系の熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を含む樹脂系接着剤であってもよい。
【0049】
次に、金属膜20について説明する。
金属膜20は、絶縁部材60と接合部材50の間に設けられるとともに蓋部材40の側壁部42に接触して設けられ、蓋部材40と接地用電極とを電気的に接続している。蓋部材40の平面視において、金属膜20は、給電用電極と重なる領域の外側であって接地用電極と重なる領域に設けられている。蓋部材40の平面視において、上面電極33cに重なるように、蓋部材40の角部に設けられた絶縁部材60を覆っている。また、金属膜20は、水晶振動素子10と重なる領域の外側に設けられている。金属膜20は、側壁部42の内面及び外面のそれぞれの一部に接触している。金属膜20は、例えば、CrとAuの積層構造を成している。金属膜20の厚みは、例えば0.5~10μm程度である。
【0050】
次に、
図5を参照しつつ、水晶振動子1の製造方法について説明する。
図5は、第1実施形態に係る水晶振動子の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【0051】
まず、金属板を凹状に加工する(S11)。
Fe-Ni-Co系合金からなる金属板を準備する。その金属板をプレス工法によって変形させる絞り加工によって、蓋部材の天壁部及び側壁部を形成する。
【0052】
次に、側壁部の先端に絶縁部材を形成する(S13)。
側壁部に樹脂系接着剤を塗布し、乾燥させる。このとき、天壁部との接続部分から先端までの高さに応じて樹脂系接着剤の塗布量を変化させる。高さの小さい側壁部の先端には、高さの大きい側壁部の先端よりも大量の樹脂系接着剤を塗布し、絶縁部材によって設けられる接合部材との接触面を同一平面に近づける。
【0053】
次に、金属膜を形成する(S15)。
金属膜は、例えば、スパッタリング工法又は真空蒸着法によって、絶縁部材及び蓋部材に設けられる。最初に蓋部材との電気的接続性が良好なCrを成膜し、次に、化学的安定性が良好なAuを成膜する。金属膜の成膜方法は上記に限定されるものではなく、PVD(Physical Vapor Deposition)やCVD(Chemical Vapor Depositon)などのドライプロセスから好適に選択できる。また、金属膜は、例えば、各種の印刷法(スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷など)、各種の塗布法(キャスト、ディスペンスなど)及び各種の湿式メッキ法(無電解メッキ、溶融メッキ、電気メッキなど)などのウェットプロセスによって形成されてもよい。
【0054】
次に、基体に電極を設ける(S21)。
アルミナのグリーンシートに金属膜をパターニングし、グリーンシートとともに金属膜を焼結する。これにより、グリーンシートから基体を形成し、金属膜から給電用電極、接地用電極及び外部電極を形成する。基体は、インゴットから切り出したウェハによって形成されてもよい。ベース部材の電極の少なくとも一部は、グリーンシートの焼結後に形成されてもよい。
【0055】
次に、電極の一部を保護膜で覆う(S23)。
保護膜は、例えばソルダーレジストによって形成される。保護膜は、好適な熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂によって形成されてもよい。
【0056】
次に、水晶振動素子を搭載する(S25)。
ベース部材の電極パッド上に、熱硬化性樹脂の組成物を含む導電性接着剤ペーストを塗布する。次に、導電性接着剤ペーストの上に水晶振動素子10を載置し、導電性接着剤ペーストを加熱して硬化させる。
【0057】
次に、ベース部材と蓋部材とを接合する(S31)。
内面が露出するように蓋部材をトレイに収納し、蓋部材の側壁部の先端に熱硬化性樹脂の組成物を含む接着剤ペーストを塗布する。次に、ベース部材をトレイに収納し、蓋部材に重ねる。次に、接着剤ペーストを加熱して硬化させ、水晶振動素子を収容した内部空間を封止する。
【0058】
なお、蓋部材の形成から金属膜の形成までの工程S11~S15と、ベース部材の準備から水晶振動素子の搭載までの工程S21~S25との順番は、上記に限定されるものではない。工程S21~S25の後に工程S11~S15を実施してもよい。
【0059】
以上のように、本実施形態において、水晶振動子1は、蓋部材40の側壁部42の対向面を覆う絶縁部材60と、絶縁部材60の一部を覆うとともに蓋部材40の側壁部42に接触する金属膜20と、水晶振動素子10を収容する内部空間を封止するとともに蓋部材40を接地用電極に電気的に接続する接合部材50と、を備えている。
これによれば、絶縁部材60が蓋部材40のうねりに起因した側壁部42の対向面の位置の変動によるベース部材30と蓋部材40とのギャップの変動を抑制し、接合部材50との接触面を同一平面に近づけることで、部分的な接合強度の低下や封止性の低下が抑制できる。また、ベース部材30と蓋部材40の側壁部42の対向面とのギャップが全体的に小さくなるので、導電性フィラーを含んだことで封止性が低下した導電性接着剤を接合部材50として用いたとしても、充分な封止性が得られる。また、絶縁部材60が接合部材50との接触面積を増大さるので、接合強度が向上する。
【0060】
蓋部材40の平面視において、金属膜20は、給電用電極と重なる領域の外側であって接地用電極と重なる領域に設けられている。
蓋部材40は導電性材料であるため、金属膜20は蓋部材40の一部に接触すれば蓋部材40の全体が接地できる。このため、蓋部材40及び絶縁部材60の金属膜20に覆われる領域を限定すれば、金属膜20の使用量を低減できる。
【0061】
接合部材50は、異方性導電性接着剤である。
異方性導電性接着剤である接合部材50は、例えば、ベース部材の主面と交差する方向では導電性を有し、ベース部材30の主面と平行な方向では絶縁性を有する。これによれば、保護膜39に欠陥があって接合部材50が給電用電極に接触した場合や、接合部材50の硬化前の接着剤ペーストが濡れ広がって接合部材50が給電用電極に接触した場合であっても、水晶振動素子10と蓋部材40との短絡を抑制できる。
【0062】
ベース部材30には、給電用電極の側壁部42と対向する領域を覆う絶縁性材料の保護膜39が設けられている。
これによれば、水晶振動素子10と蓋部材40との短絡を抑制できる。また、保護膜39は、ベース部材30の蓋部材と対向する側の表面の凹凸を小さくし、接合部材50の局所的な厚みの増大による封止性の低下を抑制している。
【0063】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記し、その効果について記載する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0064】
本発明の一態様によれば、水晶振動素子と、水晶振動素子が搭載されたベース部材と、ベース部材との間に導電性材料の接合部材を挟んで接合され、ベース部材との間に水晶振動素子が配置された内部空間を形成する導電性材料の蓋部材と、を備え、ベース部材には、水晶振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、接地用電極は接合部材と接触しており、蓋部材は、天壁部と、天壁部の外縁からベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、側壁部は、ベース部材に対向する対向面を有し、蓋部材には、天壁部の外縁に沿って、側壁部の対向面を覆う絶縁部材が設けられ、絶縁部材の表面の少なくとも一部には金属膜が設けられ、金属膜は、絶縁部材と接合部材の間に設けられるとともに蓋部材の側壁部に接触して設けられ、蓋部材と接地用電極とを電気的に接続する、水晶振動子が提供される。
これによれば、絶縁部材が蓋部材のうねりに起因した側壁部の対向面の位置の変動によるベース部材と蓋部材とのギャップの変動を抑制し、接合部材との接触面を同一平面に近づけることで、部分的な接合強度の低下や封止性の低下が抑制できる。また、ベース部材と蓋部材の側壁部の対向面とのギャップが全体的に小さくなるので、導電性フィラーを含んだことで封止性が低下した導電性接着剤を接合部材として用いたとしても、充分な封止性が得られる。また、絶縁部材が接合部材との接触面積を増大さるので、接合強度が向上する。
【0065】
一態様として、蓋部材の平面視において、金属膜は、給電用電極と重なる領域の外側であって接地用電極と重なる領域に設けられている。
蓋部材は導電性材料であるため、金属膜は蓋部材の一部に接触すれば蓋部材の全体が接地できる。このため、蓋部材及び絶縁部材の金属膜に覆われる領域を限定すれば、金属膜の使用量を低減できる。
【0066】
一態様として、接合部材は、異方性導電性接着剤である。
異方性導電性接着剤である接合部材は、例えば、ベース部材の主面と交差する方向では導電性を有し、ベース部材の主面と平行な方向では絶縁性を有する。これによれば、保護膜に欠陥があって接合部材が給電用電極に接触した場合や、接合部材の硬化前の接着剤ペーストが濡れ広がって接合部材が給電用電極に接触した場合であっても、水晶振動素子と蓋部材との短絡を抑制できる。
【0067】
一態様として、ベース部材には、給電用電極の側壁部と対向する領域を覆う絶縁性材料の保護膜が設けられている。
これによれば、水晶振動素子と蓋部材との短絡を抑制できる。また、保護膜がベース部材の蓋部材と対向する側の表面の凹凸を小さくし、接合部材の局所的な厚みの増大による封止性の低下を抑制できる。
【0068】
一態様として、金属膜は、側壁部の内面及び外面のそれぞれの一部に接触している。
【0069】
本発明の他の一態様によれば、水晶振動素子をベース部材に搭載すること、ベース部材との間に導電性材料の接合部材を挟んで蓋部材を接合し、ベース部材との間に水晶振動素子が配置された内部空間を形成すること、を含み、ベース部材には、圧電振動素子が接続される給電用電極と、接地に用いられる接地用電極とが設けられ、接地用電極は接合部材と接触しており、蓋部材は、天壁部と、天壁部の外縁からベース部材に向かって延びる側壁部とを有し、側壁部は、ベース部材に対向する対向面を有し、蓋部材の天壁部の外縁に沿って、側壁部の対向面を覆う絶縁部材を形成すること、絶縁部材の少なくとも一部を覆い、蓋部材の側壁部に接触する金属膜を形成すること、をさらに含み、蓋部材を接合することは、接地用電極と金属膜とを接合し、蓋部材と接地用電極とを電気的に接続することを含む、水晶振動子の製造方法が提供できる。
一態様として、金属膜を形成することは、金属膜をスパッタリング法又は真空蒸着法によって形成することを含む。
【0070】
本発明に係る実施形態は、水晶振動子に限定されるものではなく、圧電振動子にも適用可能である。圧電振動子(Piezoelectric Resonator Unit)の一例が、水晶振動素子(Quartz Crystal Resonator)を備えた水晶振動子(Quartz Crystal Resonator Unit)である。水晶振動素子は、圧電効果によって励振される圧電片として、水晶片(Quartz Crystal Element)を利用するが、圧電片は、圧電単結晶、圧電セラミック、圧電薄膜、又は、圧電高分子膜などの任意の圧電材料によって形成されてもよい。一例として、圧電単結晶は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)を挙げることができる。同様に、圧電セラミックは、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(ZrxTi1-x)O3;PZT)、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、メタニオブ酸リチウム(LiNb2O6)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、又は、五酸化タンタル(Ta2O5)などを挙げることができる。圧電薄膜は、石英、又は、サファイアなどの基板上に上記の圧電セラミックをスパッタリング工法などによって成膜したものを挙げることができる。圧電高分子膜は、ポリ乳酸(PLA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又は、フッ化ビニリデン/三フッ化エチレン(VDF/TrFE)共重合体などを挙げることができる。上記の各種圧電材料は、互いに積層して用いられてもよく、他の部材に積層されてもよい。
【0071】
本発明に係る実施形態は、タイミングデバイス、発音器、発振器、荷重センサなど、圧電効果により電気機械エネルギー変換を行うデバイスであれば、特に限定されることなく適宜適用可能である。
【0072】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、ノイズの発生を抑制しつつ信頼性が向上した圧電振動子及びその製造方法が提供できる。
【0073】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。例えば、本発明の振動素子および振動子は、タイミングデバイスまたは荷重センサに用いることができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0074】
1…水晶振動子、
10…水晶振動素子、
20…金属膜、
30…ベース部材、
31…基体、
33a,33b…電極パッド、
34a~34d…側面電極、
35a~35d…外部電極、
40…蓋部材、
41…天壁部、
42…側壁部、
50…接合部材、
60…絶縁部材、