IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図1
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図2
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図3
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図4
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図5A
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図5B
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図6A
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図6B
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図7A
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図7B
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図8A
  • 特許-定着装置及び画像形成装置 図8B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
G03G15/20 530
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022551953
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2021034324
(87)【国際公開番号】W WO2022065234
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020161169
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】武内 利充
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-357975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/14
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成された記録媒体を加熱する回転可能な定着部材と、
前記定着部材に接触して前記記録媒体が挟持搬送される加圧領域を形成する加圧部材と、
前記定着部材の表面に接触可能に設けられ、定着動作中には前記定着部材の表面に接触して前記記録媒体を前記定着部材から分離する分離爪と、
前記分離爪を、前記定着部材の回転軸方向に移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は、
前記定着部材の回転に伴って上下方向に沿った支軸を中心として回転するスラストギアと、
前記スラストギアの下面に形成された突起と、
前記スラストギアの下方に配置され、前記支軸を中心として回転するスラストカムと、
前記スラストカムの上面の、前記支軸を中心とした前記突起の回転軌跡上に形成されて、前記突起が嵌合可能な孔と、
前記分離爪を前記回転軸方向に沿って前記スラストカムに押し付けるように付勢する付勢部材と、を備え、
前記定着部材の組立時には、前記スラストギアの前記突起が、前記スラストカムの上面の前記孔以外の部分に乗り、前記分離爪が前記回転軸方向において初期位置に固定され、
遅くとも前記定着動作の開始時に前記スラストギアが回転して前記突起が前記スラストカムの上面を前記回転軌跡に沿って移動して前記孔に嵌合すると、前記スラストギアと前記スラストカムとが係合して、前記スラストカムが前記支軸を中心として回転し、前記分離爪が前記回転軸方向へ移動することを特徴とする記載の定着装置。
【請求項3】
前記移動機構は、
前記定着部材を回転させるモーターの出力ギアと噛み合うウォームギアを更に備え、
前記スラストギアは前記ウォームギアと噛み合うことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記分離爪は、
前記定着動作中に前記定着部材の表面に接触する爪本体と、
前記爪本体が前記定着部材の表面に接触する姿勢と前記定着部材の表面から離間する姿勢とに回動可能に支持される軸と、
前記爪本体を前記定着部材の表面に接触する方向に付勢する付勢部材と、を備え、
前記移動機構は、
上下方向に移動可能に支持され、前記爪本体を下方に押し下げることで該爪本体を前記定着部材の表面から離間する方向に回動させる解除部材と、
前記解除部材の一端が載置される高載置面と低載置面とを有し、上下方向に沿った回転軸を中心として回転する解除ギアと、を更に備え、
前記定着部材の組立時には、前記解除部材の一端部が前記解除ギアの前記低載置面に載置されて、前記解除部材が前記爪本体を押し下げて該爪本体を前記定着部材の表面から離間させ、
遅くとも前記定着動作の開始時には、前記解除ギアの回転によって前記解除部材の一端部が前記解除ギアの前記低載置面から前記高載置面に相対的に移動し、該解除部材が上方に移動して前記爪本体から離間し、前記爪本体が前記付勢部材で付勢されて前記定着部材の表面に接触することを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項8】
前記スラストカムと係合して該スラストカムの回転を規制する規制部を備え、
前記スラストカムが前記規制部と係合して前記スラストカムの回転を規制する力は、前記スラストカムが前記スラストギアと係合して前記スラストギアが前記スラストカムを回転させる力よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項9】
記録媒体にトナー像を形成する画像形成部と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する請求項1に記載の定着装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にトナー像を定着させる定着装置及びこの定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター、複合機等の電子写真方式の画像形成装置は、用紙等の記録媒体にトナー像を定着させる定着装置を備えている。定着装置は、ハロゲンヒーター等の加熱源によって加熱された定着ローラーと、定着ローラーに接触して加圧領域を形成する加圧ローラーとを備える。トナー像が形成された記録媒体が加圧領域に搬送されると、トナー像が加熱されて溶融し記録媒体に定着される。また、定着ローラーには、記録媒体を分離するための分離爪が一定の荷重で接触している。
【0003】
定着ローラーは、金属製の薄肉管で形成されている。薄肉管の外周面には、樹脂層やコーティング層が形成されて、トナーの付着を防止して離形性を高めたり帯電の抑制を行ったりしている。
【0004】
近年では、省エネを考慮して低融点のポリエステルトナーが使用される場合がある。この場合、初期の段階では、定着ローラーは良好なトナー離形性を維持しているが、耐久使用されると、トナーに含まれるワックスや紙粉が定着ローラーの表面に付着し、トナー離形性が劣化する。この現象は、定着温度が高い場合により顕著に発生する。また、間欠印字の際等、加圧ローラーの温度が上昇した場合は、低い温度でもトナー離形性が劣化する。
【0005】
定着ローラーの離形性を向上させるために、樹脂層に含まれる耐摩耗剤の量が減らされる場合がある。しかし、この場合、耐久性が低下するため、繰り返し使用時にはコーティング層が分離爪で摩耗し、摩耗した箇所にトナーが付着して画像不良が生じることがある。
【0006】
そこで、下記の特許文献に記載されているように、分離爪を定着部材の回転軸方向に移動(スラスト動作)させて、分離爪によるコーティング層の摩耗を抑制している。例えば、特許文献1には、カムを使用して、分離部材(分離爪)を定着ローラーの軸方向に移動させる定着装置が記載されている。定着ローラーの回転数が所定回数以上になった場合に、カムが駆動されるようになっている。また、特許文献2には、定着ローラーの駆動力を利用して剥離部材(分離爪)を定着ローラーの軸方向に移動させる定着装置が記載されている。また、特許文献3には、処理枚数に応じて剥離爪(分離爪)の位置を変化させる定着装置が記載されている。さらに、特許文献4には、累積駆動時間又は印字枚数が所定の値に達すると、分離爪を移動させる定着装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平5-8574号公報
【文献】特開2002-357975号公報
【文献】特開2006-339618号公報
【文献】特開2018-124505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
分離爪の先端に傷があったり金属等の異物が付着していたりした場合、分離爪の組立直後に、定着ローラーの表面に微小な傷が発生することがある。上記特許文献に記載されているように分離爪をスラスト動作させる定着装置において、例えば、定着装置の組立直後から分離爪がスラスト動作する場合には、分離爪の傷や付着した異物が、スラスト動作の範囲に亘って定着部材の表面に微小な傷を発生させてしまう。このように定着ローラーの表面の広い範囲に傷が発生した場合、記録媒体上に定着される画像のベタ領域やハーフトーン領域が光の干渉で白く見えるような現象(画像白筋)が発生してしまう。
【0009】
一方で、特許文献1、3、4に記載されているように、定着ローラーの回転数が所定回数以上になった場合等、定着動作を開始してからある程度時間が経過した後で分離爪がスラスト動作する場合は、定着ローラーと分離爪との接触位置がある程度の時間変化しないため、印字動作が繰り返されることで、傷の深さが深くなる。すると、定着ローラーの離形層が剥がれて離形性が低下し、トナーが付着してしまう。
【0010】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、分離爪の組立直後の定着ローラー表面の傷の拡がりを抑えて画像不良を防止すると共に、定着部材の耐久性及び良好な画像品質を維持する定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の定着装置は、トナー像が形成された記録媒体を加熱する回転可能な定着部材と、前記定着部材に接触して前記記録媒体が挟持搬送される加圧領域を形成する加圧部材と、前記定着部材の表面に接触可能に設けられ、定着動作時には前記定着部材の表面に接触して前記記録媒体を前記定着部材から分離する分離爪と、前記分離爪を、前記定着部材の回転軸方向に移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記定着部材の組立時には、前記分離爪を前記回転軸方向において初期位置に固定し、遅くとも前記定着動作の開始時には、前記分離爪を前記回転軸方向へ移動させることを特徴とする。
【0012】
本発明の画像形成装置は、記録媒体にトナー像を形成する画像形成部と、前記トナー像を前記記録媒体に定着する前記定着装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、定着部材の使用開始直後の表面の傷の拡がりを抑えて画像不良を防止すると共に、定着部材の耐久性及び良好な画像品質を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構成を模式的に示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る定着装置の分離爪と移動機構とを示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る定着装置において、移動機構のスラストギアとスラストカムとを示す斜視図である。
図5A】本発明の一実施形態に係る定着装置の移動機構において、係合前のスラストギアとスラストカムとを示す図である。
図5B】本発明の一実施形態に係る定着装置の移動機構において、係合時のスラストギアとスラストカムとを示す図である。
図6A】本発明の他の実施形態に係る定着装置において、分離爪が定着ローラーから離間した状態での移動機構を模式的に示す平面図である。
図6B】本発明の他の実施形態に係る定着装置において、分離爪が定着ローラーから離間した状態での移動機構を模式的に示す側面図である。
図7A】本発明の他の実施形態に係る定着装置において、分離爪が定着ローラーに接触した状態での移動機構を模式的に示す平面図である。
図7B】本発明の他の実施形態に係る定着装置において、分離爪が定着ローラーに接触した状態での移動機構を模式的に示す平面図である。
図8A】本発明の他の実施形態に係る定着装置において、定着ローラーの表面から離間する方向に回動した爪本体を示す図である。
図8B】本発明の他の実施形態に係る定着装置において、定着ローラーの表面に接触する方向に回動した爪本体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る定着装置及び画像形成装置について説明する。
【0016】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る画像形成装置1について説明する。図1は、画像形成装置1の内部構成を模式的に示す正面図である。以降の説明において、図1の紙面手前側を画像形成装置1の前側とする。各図に記されるFr、Rr、L、Rは、画像形成装置1の前側、後側、左側、右側をそれぞれ示す。
【0017】
画像形成装置1は、中空部を有する箱型形状の筐体2を備える。筐体2の中空部には、記録媒体としての用紙が収容される給紙カセット3と、給紙カセット3から用紙を給紙する給紙装置5と、用紙にトナー像を形成する画像形成部7と、トナー像を用紙に定着する定着装置9と、トナーが定着された用紙を排出する排出装置11と、が収容されている。また、筐体2の上面には、用紙の排出口13と、排出口13から排出された用紙が積載される排紙トレイ15と、が形成されている。
【0018】
給紙カセット3は、中空部の下部に、前後方向に沿って着脱可能に収容されている。給紙装置5は、給紙カセット3の右上方に配置されている。画像形成部7は、中空部の中央部に設けられて、回転可能な感光体ドラム19と、感光体ドラム19の周囲に、感光体ドラム19の回転方向に沿って配置された、帯電器21と、現像装置23と、転写ローラー25と、クリーニング装置27と、を備えている。さらに、画像形成部7は、露光装置29と、現像装置23に接続するトナーコンテナ31と、を備えている。定着装置9は、画像形成部7の左側に配置されている。排出装置11は、定着装置9の上方において、排出口13の内側に配置されている。
【0019】
さらに、筐体2の中空部には、用紙の搬送路33が形成されている。搬送路33は、給紙装置5から、感光体ドラム19と転写ローラー25との間の転写ニップと、定着装置9と、排出装置11と、を通って排出口13まで形成されている。以降の説明において、上流側及び下流側は、搬送路33に沿う用紙の搬送方向における上流側及び下流側を示す。搬送路33には、給紙装置5の下流側に中間搬送ローラー対35が配置され、中間搬送ローラー対35と転写ニップとの間にレジストローラー対37が配置されている。
【0020】
次に、このような構成を備えた画像形成装置1の画像形成動作について説明する。画像形成装置1に、外部のコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、先ず、画像形成部7において、感光体ドラム19の表面が、帯電器21によって帯電された後、露光装置29によって画像データに基づいて露光され、感光体ドラム19の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置23によってトナーによりトナー像に現像される。
【0021】
一方、給紙カセット3に収納された用紙は、給紙装置5によって搬送路33に給紙され、中間搬送ローラー対35によって搬送路33に沿って搬送される。さらに、用紙は、レジストローラー対37によって所定のタイミングで転写ニップへと搬送され、転写ニップにおいて感光体ドラム19上のトナー像が用紙に転写される。トナー像を転写された用紙は、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、排出装置11から排出口13を通って排紙トレイ15に排出される。なお、画像形成部7において、感光体ドラム19上に残留したトナーは、クリーニング装置27によって回収される。
【0022】
次に、図2を参照して、定着装置9について説明する。図2は定着装置9を模式的に示す断面図である。
【0023】
定着装置9は、回転可能な定着部材としての定着ローラー41と、定着ローラー41に接触して用紙が挟持搬送される加圧領域Nを形成する加圧部材としての加圧ローラー43と、定着ローラー41を加熱する熱源45と、定着ローラー41の表面に接触して用紙を定着ローラー41から分離する分離爪47と、分離爪47を定着ローラー41の回転軸方向に移動させる移動機構49(図3参照)と、これらが収容されるハウジング51と、を備えている。
【0024】
ハウジング51は、前後方向に長い略直方体状の中空部を有する箱状に形成されている。ハウジング51の右側壁には、用紙の入口51aが形成され、ハウジング51の左側壁には、用紙の出口51bが形成されている。入口51aと出口51bとの間に用紙の搬送路33が形成されている。
【0025】
定着ローラー41は、円筒状に形成され、例えば、円筒状の芯金と、芯金を被覆する離型層と、を有している。芯金は、例えば、アルミニウムや鉄等の金属製の外径30mmの薄肉管で形成される。離型層は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂で形成されている。離型層は、例えば、耐久性を向上させるために、耐摩耗材(例えば、炭化ケイ素)を混入したフッ素樹脂で形成されている。なお、離形層は、離型性を向上させるために、耐摩耗材を減らしたりなくしたりしてよい。また、芯金と離型層との間に弾性層を積層してもよい。定着ローラー41は、用紙の皺を抑えるために、両端から中央へと外径が小さくなる逆クラウン形状に形成される。
【0026】
定着ローラー41は、ハウジング51の中空部の搬送路33よりも上方に配置されている。定着ローラー41の両端部は、ハウジング51の前後の側壁に回転可能に支持されている。定着ローラー41の外周面の後端部には、周方向に沿って駆動ギア(図示省略)が形成されている。駆動ギアは、モーター(図示省略)の出力ギアに噛み合っている。モーターが駆動されて出力ギアが回転することでと、定着ローラー41が、前後方向に沿った回転軸を中心として回転する。
【0027】
また、ハウジング51には、定着ローラー41の温度を計測する接触型サーミスタ53及び非接触型サーミスタ55が備えられている。非接触サーミスタ55は、定着ローラー41の回転軸方向の中央部の温度を計測し、接触型サーミスタ53は、最大幅の用紙の通紙領域の回転軸方向の外側の非通紙領域の温度を計測する。
【0028】
加圧ローラー43は、円柱状に形成され、例えば、円柱状の芯金と、芯金の周囲に設けられる弾性層と、弾性層を被覆する離型層と、を有している。芯金は、例えば、ステンレスや鉄等の金属によって形成され、外径は例えば12mmである。弾性層は、例えば、シリコーンゴムやシリコーンスポンジによって形成され、厚さは例えば9mmである。離型層は、例えばPFA等のフッ素系樹脂によって形成される。
【0029】
加圧ローラー43は、ハウジング51の中空部の搬送路33よりも下方に、定着ローラー41と平行に配置されている。加圧ローラー43の両端部は、ハウジング51の前後の側壁に回転可能に支持される。加圧ローラー43は定着ローラー41に接触して、両者間に加圧領域Nを形成している。定着ローラー41が回転することで、加圧ローラー43が定着ローラー41に従動して、定着ローラー41とは反対の方向に回転する。
【0030】
熱源45は、第1ハロゲンヒーター57と、第2ハロゲンヒーター59と、を有している。第1及び第2ハロゲンヒーター57、59は、通電されることで発熱する。第1ハロゲンヒーター57は、出力が600Wで、搬送方向と直交する用紙幅方向の中央を加熱する。第2ハロゲンヒーター59は、出力が400Wで、用紙幅方向の両端部を加熱する。両ハロゲンヒーター57、59は、定着ローラー41の中空部に配置されて、ハウジング51に支持されている。第1ハロゲンヒーター57は第2ハロゲンヒーター59よりも上流側に配置されている。第1、第2ハロゲンヒーター57、59は、接触型サーミスタ53及び非接触型サーミスタ55で計測された温度に基づいて駆動され、定着ローラー41を適宜な温度に加熱する。
【0031】
また、ハウジング51には、用紙検知センサー61が備えられている。用紙検知センサー61は、加圧領域Nの下流側に配置されて、加圧領域Nを通過した用紙を検知する。センサー61が適宜なタイミングでオン及びオフされることで、用紙が適切に加圧領域Nを通過したことが判定される。
【0032】
次に、図2と、図3及び図4を参照して、分離爪47と移動機構49とについて説明する。図3は分離爪47と移動機構49とを示す側面図、図4はスラストギア81とスラストカム83とを示す斜視図である。なお、図3は分離爪47と移動機構49との位置関係が模式的に示されている。
【0033】
図3に示されるように、分離爪47は、軸71と、軸71に支持される複数個(この例では4個)の爪本体73と、を有している。軸71には、所定の間隔を開けて4個のホルダー部75が設けられている。各ホルダー部75には、軸71と平行な揺動軸75aが備えられている。
【0034】
各爪本体73は、軸71の軸方向に沿った所定の幅を有する、軸71と交差する方向に長い板片である。爪本体73は、一端側の基部73aと、他端側の先端部73bと、を有し、軸71の軸方向から見た形状は、基部73aから先端部73bに向かって先細の三角形状である。爪本体73は、例えば、ポリイミド樹脂やPEK(ポリエーテルケトン)等の樹脂材料からなり、PFA等のフッ素樹脂からなるコート層で被覆されている。コート層を備えることでトナーの付着防止を実現している。
【0035】
4個の爪本体73は、それぞれホルダー部75に支持されている。すなわち、爪本体73は、基部73aと先端部73bとの間の部分で、ホルダー部75の揺動軸75aに揺動可能に支持されている。さらに、揺動軸75aにはねじりコイルバネ75bが支持されている。揺動軸75aは、ねじりコイルバネ75bのコイル部に挿通され、ねじりコイルバネ75bの一方のアーム部がホルダー部75に固定され、他方のアーム部が爪本体73に固定されている。
【0036】
分離爪47は、図2に示されるように、ハウジング51の中空部の加圧領域Nよりも下流側に配置されている。軸71の軸方向は、定着ローラー41の回転軸方向と平行である。各爪本体73は、それぞれねじりコイルバネ75bで付勢されて、定着ローラー41の回転方向とは反対の方向から、定着ローラー41の表面に所定の圧力で接触している。
【0037】
図3及び図4に示されるように、移動機構49は、分離爪47の後方に配置されたスラストギア81と、スラストギア81の下方に配置されたスラストカム83と、分離爪47の前方に配置されて、分離爪47をスラストカム83に向けて付勢する付勢部材85と、を備えている。
【0038】
スラストギア81は、上下方向に沿った支軸87の周囲に回転可能、かつ、支軸87の軸方向(上下方向)に移動可能に支持されている。スラストギア81は、ウォームギア89に噛み合っている。ウォームギア89は、定着ローラー41を駆動させるモーターの出力ギアと、ギア列(図示省略)を介して噛み合っている。ウォームギア89が回転することで、スラストギア81は支軸87を中心として回転する。図4に示されるように、スラストギア81の下面には、下方に突出する突起としてのピン91が立設されている。
【0039】
スラストカム83は、スラストギア81の下方に配置されて、支軸87の周囲に回転可能、かつ、支軸87の軸方向には移動不能に支持されている。すなわち、スラストカム83は、スラストギア81と同じ支軸87の周囲を回転する。図4に示されるように、スラストカム83の上面には、支軸87を中心とするピン91の回動軌跡T上に、ピン91が嵌合可能な孔93が形成されている。
【0040】
付勢部材85は、軸71の前端面とハウジング51の前側の側壁との間に配置されている。付勢部材85は、軸71、すなわち、分離爪47を軸方向に沿って後方に付勢して、軸71の後端面をスラストカム83のカム面に突き当てている。
【0041】
上記構成を有する定着装置9の組立時の状態について、図5A及び図5Bを参照して説明する。図5A及び図5Bは、スラストギア81とスラストカム83とを示す図である。各図の左側の図は、スラストギア81とスラストカム83を示す平面図、各図の右側の図は、スラストギア81とスラストカム83を示す側面図である。
【0042】
工場での定着装置9の組立時、図5Aに示されるように、移動機構49において、スラストギア81のピン91は、スラストカム83の上面に乗っている。つまり、スラストギア81のピン91は、スラストカム83の孔93に嵌合しておらず、スラストギア81とスラストカム83とは係合していない。また、分離爪47の爪本体73(図3参照)は、それぞれねじりコイルバネ75bで付勢されて、定着ローラー41の表面の初期位置に所定の圧力で接触している。ねじりコイルバネ75bは、爪本体73を定着ローラー41の表面に接触する方向に付勢する付勢部材の一例である。
【0043】
その後、工場で初期調整が行われる際、定着ローラー41がモーターで駆動されて回転する。このようにモーターが駆動されると、すなわち、定着ローラー41が回転すると、移動機構49のウォームギア89がギア列を介して回転する。すると、ウォームギア89に噛み合っているスラストギア81が、支軸87を中心として回転する。一方で、スラストギア81のピン91は、スラストカム83の孔93に嵌合していないので、スラストカム83は回転しない。スラストギア81のピン91は、スラストカム83の上面を、回転軌跡Tに沿って移動する。
【0044】
このようにスラストカム83は回転しないので、スラストカム83に押し当てられている分離爪47は移動しない。すなわち、分離爪47は定着ローラー41の回転軸方向(スラスト方向)には移動しない。
【0045】
スラストギア81がさらに回転して、ピン91がスラストカム83の孔93に達すると、図5Bに示されるように、スラストギア81は支軸87に沿って自重で下降し、ピン91が孔93に嵌合する。これにより、スラストギア81がスラストカム83と係合する。すると、スラストカム83は、スラストギア81と共に支軸87を中心として回転する。スラストカム83が回転すると、分離爪47の軸71の後端面がスラストカム83のカム面に押し付けられる位置が、定着ローラー41の回転軸方向(前後方向)に移動する。すなわち、分離爪47の軸71の後端面が、スラストカム83のカム半径が最も大きいカム面に接触すると、図3の実線で示されるように、分離爪47は最も前方に移動する。また、分離爪47の軸71の後端面が、スラストカム83のカム半径が最も小さいカム面に接触すると、図3の二点鎖線で示されるように、分離爪47は最も後方に移動する。このように、分離爪47が回転軸方向に往復移動する。
【0046】
このように、スラストギア81が少なくとも1回転する間に、スラストギア81とスラストカム83とが係合する。
【0047】
分離爪47の爪本体73の先端部73bに傷があったり先端部73bと定着ローラー41の表面との間に微細な異物が挟まれたりした場合、定着ローラー41の表面に傷が生じる。工場での組立時には、分離爪47は初期位置に固定されているので、回転軸方向に沿った傷の幅はごく狭く、画像上に欠陥は生じない。しかし、分離爪47が初期位置に固定されたままの場合、すなわち、分離爪47が定着ローラー41の回転軸方向に移動しない場合は、定着ローラー41と分離爪47との接触位置が変化しないため、印字動作が繰り返されることで、傷の深さが深くなる。すると、定着ローラー41の離形層が剥がれて離形性が低下し、トナーが付着してしまう。
【0048】
一方で、組立直後から分離爪47が回転軸方向に移動すると、定着ローラー41の表面に、回転軸方向に沿った幅の筋が発生する。このように幅の広い傷が発生した場合、前述のように、用紙に定着される画像のベタ領域やハーフトーン領域が光の干渉で白く見えるような現象(画像白筋)が発生してしまう。
【0049】
上記説明したように、本発明の定着装置9によれば、工場での組立時には、分離爪47は初期位置に固定され、スラストギア81が少なくとも1回転する間に、分離爪47は回転軸方向に移動可能となる。
【0050】
つまり、分離爪47は、工場での組立時には初期位置に固定されているので、分離爪47の爪本体73の先端部73bに傷があったり先端部73bと定着ローラー41の表面との間に微細な異物が挟まれたりした場合、定着ローラー41の表面に傷が生じる。しかし、スラストギア81が少なくとも1回転する間に、分離爪47は回転軸方向に移動可能となる。すなわち、分離爪47が初期位置に固定されている時間はごく短いので、生じた傷の深さは浅く、回転軸方向に沿った傷の幅はごく狭いままである。
【0051】
そして、スラストギア81が少なくとも1回転する間に、分離爪47は回転軸方向に移動する。すなわち、画像形成装置1が使用者に提供されて初期稼働する時には、分離爪47は回転軸方向へ移動するようになっている。そして印字動作が繰り返されて分離爪47が移動すると、定着ローラー41の表面が分離爪47で削られたり用紙と摩擦したりすることで初期の傷は解消される。また、爪本体73の先端部73bの傷や付着した異物は、印字動作を繰り返し用紙が通過することで剥離する。
【0052】
このように、分離爪47の爪本体73の先端部73bに傷があったり先端部73bと定着ローラー41の表面との間に微細な異物が挟まれたりした場合の画像不良を防ぐことができる。また、分離爪47が回転軸方向に移動することで、定着ローラー41の離形層の摩耗を防いで定着ローラー41の耐久性を向上できる。
【0053】
次に、定着装置9の他の実施形態について、図6A及び図6B図7A及び図7B図8A及び図8Bを参照して説明する。図6A及び図6Bは分離爪47が定着ローラー41から離間した状態の移動機構49を模式的に示す図であり、図7A及び図7Bは分離爪47が定着ローラー41に接触した状態の移動機構49を模式的に示す図である。図6A及び図7Aには、解除部材101と保持プレート131とが図示省略されている。図8Aは定着ローラー41の表面から離間する方向に回動した爪本体73を示す図であり、図8Bは定着ローラー41の表面に接触する方向に回動した爪本体73を示す図である。
【0054】
他の実施形態において、図6A図7Bに示されるように、移動機構49は、更に、上下方向に移動可能にハウジング51に支持された解除部材101(図6B図7B参照、図6A図7Aには図示省略)と、解除部材101を上下方向に移動させる解除ギア103と、を備えている。
【0055】
図6B及び図7Bに示されるように、解除部材101は、分離爪47の軸71(図3参照)と平行な軸111と、分離爪47の各爪本体73に対応して軸111に固定された押し下げ片113と、を有している。軸111の一端部111aは、上向きに屈曲している。図8A及び図8Bに示されるように、解除部材101は分離爪47の上方に配置されて、各押し下げ片113が、各爪本体73の基部73aの上方に位置している。図8Aに示されるように、解除部材101が下方に移動すると、各押し下げ片113が各爪本体73の基部73aを押し下げる。すると、各爪本体73が軸71を中心として回動して、爪本体73の先端部73bが定着ローラー41の表面から離間する。一方で、図8Bに示されるように、解除部材101が上方に移動すると、各押し下げ片113が各爪本体73の基部73aから離間して、各爪本体73はねじりコイルバネ75b(図3参照)で付勢されて、先端部73bが定着ローラー41の表面に接触する。
【0056】
解除ギア103は、上下方向に沿った回転軸121を中心として回転可能に設けられている。解除ギア103は、解除部材101の軸111の一端部111aが載置される載置部123と、載置部123の上面に設けられて、載置部123よりも小径のギア部125と、を有している。載置部123の上面には、平らな低載置面123aと、低載置面123aよりも高い平らな高載置面123bと、両載置面間の傾斜面123cが、それぞれ週方向に沿って形成されている。この例では、低載置面123aは、上面の約半周に沿って形成され、高載置面123bは、上面の約1/4周に沿って形成されている。低載置面123aと高載置面123bとの高低差は、分離爪47の爪本体73を、先端部73bが定着ローラー41の表面に接触する姿勢(図8A参照)と、先端部73bが定着ローラー41の表面から離間する姿勢(図8B参照)とに回動させるために必要な解除部材101の上下方向に沿った移動量と等しい。
【0057】
ギア部125には、周方向の一部(一例で、約半周)に沿ってギア125aが形成されている。周方向に沿ったギア125aの長さは、スラストギア81のピン91(図4図5A図5B参照)がスラストカム83の孔93に嵌合するまでのピン91の回転軌跡の長さよりも短い。ギア125aは、アイドルギア127、129を介してスラストギア81と噛み合っている。
【0058】
図6B及び図7Bに示されるように、解除ギア103の回転軸121の上端部は、ハウジング51に固定された保持プレート131にはめ込まれている。保持プレート131の下面には、円柱状の突起133が形成されている。突起133は、解除ギア103のギア部125の側面に接触して、ギア125aの端面に当接可能となっている。さらに、保持プレート131の下面にはコイルバネ135が支持されている。コイルバネ135は、載置部123の上面に載置された解除部材101の軸111の一端部111aを載置部123の上面に押し付けている。
【0059】
他の実施形態における定着装置9の組立時の状態について、図5A及び図5Bも参照して説明する。
【0060】
工場での定着装置9の組立時、図5Aに示されるように、移動機構49において、スラストギア81のピン91は、スラストカム83の上面に乗っており、スラストギア81とスラストカム83とは係合していない。また、図6Bに示されるように、解除部材101の軸111の一端部111aは、解除ギア103の低載置面123aに載置されている。これにより、図8Aに示されるように、解除部材101の各押し下げ片113が、分離爪47の各爪本体73の基部73aを押し下げ、各爪本体73の先端部73bを定着ローラー41の表面から離間させている。
【0061】
その後、工場で初期調整が行われる際、定着ローラー41がモーターで駆動されて回転する。このようにモーターが駆動されると、すなわち、定着ローラー41が回転すると、移動機構49のウォームギア89がギア列を介して回転する。すると、ウォームギア89に噛み合っているスラストギア81が、支軸87を中心として回転する。一方で、スラストギア81のピン91は、スラストカム83の孔93に嵌合していないので、スラストカム83は回転しない。スラストギア81のピン91は、スラストカム83の上面を、回転軌跡Tに沿って移動する。
【0062】
また、スラストギア81が回転すると、図7A及び図7Bに示されるように、アイドルギア127、129を介して解除ギア103が回転軸121を中心として回転する。すると、図7Bに示されるように、解除部材101の軸111の一端部111aは、傾斜面123cを通って低載置面123aから高載置面123bに乗り上げる。この際、軸111の一端部111aはコイルバネ135で載置部123の上面に押し付けられているので、一端部111aは、低載置面123aから傾斜面123cを通って高載置面123bに相対的に円滑に移動する。これにより、解除部材101が上方に移動し、図8Bに示されるように、解除部材101の各押し下げ片113が、分離爪47の各爪本体73の基部73aから離間し、各爪本体73はねじりコイルバネ75bで付勢されて、先端部73bが定着ローラー41の表面に接触する。
【0063】
ギア部125のギア125aは周方向に沿った一部にのみ形成されているので、解除部材101の軸111の一端部111aが高載置面123bに移動するまで解除ギア103が回転した後、ギア部125のギア125aが保持プレート131の突起133に当接して解除ギア103の回転は停止する。すなわち、解除部材101は上方に移動した状態に保持される。前述のように、周方向に沿ったギア125aの長さは、スラストギア81のピン91がスラストカム83の孔93に嵌合するまでのピン91の回転軌跡の長さよりも短いので、スラストギア81のピン91は、スラストカム83の孔93には係合していない。すなわち、分離爪47は回転軸方向において初期位置に保持されている。
【0064】
スラストギア81がさらに回転して、ピン91がスラストカム83の孔93に達すると、図5Bに示されるように、スラストギア81は支軸87に沿って自重で下降し、ピン91が孔93に嵌合する。これにより、前述のように、スラストカム83が、スラストギア81と共に支軸87を中心として回転する。スラストカム83の回転により、分離爪47が回転軸方向に往復移動する。この際、前述のように、解除ギア103のギア部125のギア125aが保持プレート131の突起133に当接しているので、スラストカム83の回転によりアイドルギア127が回転しても、解除ギア103は連れ回りせず回転しない。これにより、分離爪47の移動中も図7A図7B図8Bの状態を維持することができる。
【0065】
このように、移動機構49は、定着ローラー41の組立時には、分離爪47を定着ローラー41の表面から離間させ、定着ローラー41の回転軸方向において初期位置において固定する。そして、遅くとも定着動作の開始時には、分離爪47を定着ローラー41の表面に接触させた後で回転軸方向へ移動させる。この実施形態では、組立時に分離爪47が定着ローラー41の表面から離間しているので、分離爪47と定着ローラー41の表面との間に異物が挟まれない。したがって、定着ローラー41の表面の傷の発生を防止し、定着ローラー41の離形層の摩耗を防いで定着ローラー41の耐久性をより向上できる。
【0066】
この実施形態では、分離爪47を回転軸方向に移動させるスラストギア81の回転に伴って解除ギア103が回転するので、解除ギア103を回転させる機構を別に設ける必要がない。ただし、解除ギア103を回転させる機構を、スラストギア81とは別に設けてもよい。
【0067】
本実施形態の変形例について説明する。変形例の定着装置9において、スラストカム83は、支軸87に沿って移動可能に支持されて、所定の高さにおいてハウジング51に設けられた支持プレート51c(図5A参照)に支持されている。支持プレート51cの上面には、規制部としての凸部97が形成されている。凸部97は、滑らかに隆起する、ピン91の高さよりも低い高さの山型形状を有している。一方で、スラストカム83の下面には、凸部97と係合可能な凹部83aが形成されている。凸部97と凹部83aが係合することで、支軸87を中心としたスラストカム83の回転が規制される。ただし、凸部97は、前述のようにピン91の高さよりも低い高さの山型形状を有しているので、凸部97と凹部83aとの係合によるスラストカム83の回転を規制する力は、スラストギア81のピン91とスラストカム83の孔93との嵌合によってスラストギア81がスラストカム83を回転させる力よりも小さい。
【0068】
変形例においては、組立初期では、スラストカム83の凹部83aが凸部97と係合している。これにより、スラストカム83の回転が規制されている。スラストギア81が回転し、スラストギア81がスラストカム83と係合してスラストカム83が回転すると、前述のように凹部83aが凸部97と係合してスラストカム83の回転を規制する力は、スラストカム83とスラストギア81のピン91とが係合してスラストカム83を回転させる力よりも小さいので、凹部83aと凸部97との係合は解除され、スラストカム83がスラストギア81とともに回転する。凹部83aと凸部97との係合が解除される際、スラストカム83はスラストギア81と共に支軸87に沿ってやや上昇する。
【0069】
この変形例によれば、組立初期において、スラストカム83の回転が規制されて、スラストカム83の不用意な回転、すなわち、分離爪47の不用意な移動が規制されている。このように、組立初期において、分離爪47の移動を確実に規制することができる。したがって、分離爪47の爪本体73の先端部73bに傷があったり先端部73bと定着ローラー41の表面との間に微細な異物が挟まれたりした場合の、組立初期の傷の拡がりを確実に防止できる。
【0070】
なお、組立初期において、スラストカム83の回転を規制する方法は、前記例に限らない。例えば、組立初期において、スラストカム83とハウジング51(支持プレート51c等)とを、一面に接着面を有するテープで一時的に固定して、スラストカム83の回転を規制してもよい。この場合も、テープによってスラストカム83とハウジング51とを固定する力は、スラストギア81のピン91とスラストカム83の孔93との嵌合によってスラストギア81がスラストカム83を回転させる力よりも小さい。また、テープには、スラストカム83とハウジング51との境界に沿ってミシン目が形成されている。
【0071】
スラストギア81がスラストカム83と係合してスラストカム83が回転すると、テープがミシン目で切断され、スラストカム83がスラストギア81とともに回転する。
【0072】
なお、上記実施形態の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B