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特許7497760被選別物の識別方法、選別方法、選別装置、および識別装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】被選別物の識別方法、選別方法、選別装置、および識別装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20240604BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240604BHJP
   G01N 21/85 20060101ALI20240604BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240604BHJP
   G06V 10/70 20220101ALI20240604BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/04
G01N21/85 A
G06T7/00 350B
G06V10/70
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022571934
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 JP2021040519
(87)【国際公開番号】W WO2022137822
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020214808
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知幸
(72)【発明者】
【氏名】原田 真也
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-312762(JP,A)
【文献】特開2005-083775(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131685(WO,A1)
【文献】特開2015-161522(JP,A)
【文献】特開2000-237696(JP,A)
【文献】特開2002-039731(JP,A)
【文献】特開2007-198394(JP,A)
【文献】特開2020-012741(JP,A)
【文献】特開2005-091159(JP,A)
【文献】特開2019-023664(JP,A)
【文献】特開2002-062113(JP,A)
【文献】特開2002-062126(JP,A)
【文献】特開2006-064662(JP,A)
【文献】特開2005-055245(JP,A)
【文献】特開平10-076233(JP,A)
【文献】特開平10-279060(JP,A)
【文献】特表2015-529154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01N 21/84-G01N 21/958
G06T 1/00-G06T 7/90
G06V 10/70
G01J 3/00-G01J 3/52
G01N 21/17
G01N 21/27
H04N 1/387
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被選別物を移送する移送工程と、
前記移送工程中における前記被選別物を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別工程とを備え、
前記撮像情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報とを含み、
推論モデルの適用、階調値と閾値との比較およびパターンマッチングの少なくとも一つの手法を用いて、前記被選別物同士が接触、または、所定の程度以上に近接している領域を特定して前記被選別物同士の隣接情報としてラベリングを行った結果に基づいて、接触、または、前記所定の程度以上に近接している少なくとも二つの被選別物が個別に識別される
被選別物の識別方法。
【請求項2】
被選別物を移送する移送工程と、
前記移送工程中における前記被選別物を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別工程とを備え、
前記撮像情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報と、前記被選別物の背景情報とを含み、
推論モデルの適用、階調値と閾値との比較およびパターンマッチングの少なくとも一つの手法を用いて、前記被選別物同士が接触、または、所定の程度以上に近接している領域を特定して前記被選別物同士の隣接情報としてラベリングするとともに、背景の領域を特定して前記被選別物の背景情報としてラベリングし、前記被選別物同士の隣接情報を前記被選別物の背景情報に置き換えることによって、接触、または、前記所定の程度以上に近接している少なくとも二つの被選別物が個別に識別される
被選別物の識別方法。
【請求項3】
被選別物の選別方法であって、
請求項1または請求項2に記載の被選別物の識別方法と、
前記識別工程にて得られた識別情報に基づき、前記被選別物を選別する選別工程とを備えた
被選別物の選別方法。
【請求項4】
被選別物を移送する移送部と、
前記移送部における移送中に前記被選別物を撮像する撮像部と、
前記撮像部にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別部とを備え、
前記撮像情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報とを含み、
推論モデルの適用、階調値と閾値との比較およびパターンマッチングの少なくとも一つの手法を用いて、前記被選別物同士が接触、または、所定の程度以上に近接している領域を特定して前記被選別物同士の隣接情報としてラベリングを行った結果に基づいて、接触、または、前記所定の程度以上に近接している少なくとも二つの被選別物を個別に識別するように構成された
識別装置。
【請求項5】
被選別物を移送する移送部と、
前記移送部における移送中に前記被選別物を撮像する撮像部と、
前記撮像部にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別部とを備え、
前記撮像情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報とを含み、
推論モデルの適用、階調値と閾値との比較およびパターンマッチングの少なくとも一つの手法を用いて、前記被選別物同士が接触、または、所定の程度以上に近接している領域を特定して前記被選別物同士の隣接情報としてラベリングするとともに、背景の領域を特定して前記被選別物の背景情報としてラベリングし、前記被選別物同士の隣接情報を前記被選別物の背景情報に置き換えることによって、接触、または、前記所定の程度以上に近接している少なくとも二つの被選別物を個別に識別するように構成された
識別装置。
【請求項6】
被選別物を移送する移送部と、
前記移送部における移送中に前記被選別物を撮像する撮像部と、
前記撮像部にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別部とを備え、
前記撮像情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報とを含み、
接触、または、所定の程度以上に近接した少なくとも二つの被選別物の切り出し処理を行うことなく、前記被選別物同士の隣接情報に基づいて前記少なくとも二つの被選別物を個別に識別するように構成された
識別装置。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載の識別装置と、
前記識別部にて得られた識別情報に基づき、前記被選別物を選別する選別部とを備える
選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被選別物を選別する際の識別方法に関するものである。また、本開示は、当該被選別物の識別方法に基づき、被選別物を選別する、選別方法および選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品や工業製品等の検査対象物に混在する異物を識別して選別するための技術や、検査対象物そのものを所定の条件に基づいて識別して選別するための技術が、種々知られている。以下、検査対象物および異物の少なくとも一方について、識別あるいは選別の少なくとも一方の対象となるものを、被選別物という。
【0003】
近年においては、被選別物を選別等するための技術として、撮像画像を用いるものが提案されている。例えば、果実などの食品中に含まれる異物や夾雑物を除去するために、被選別物に光を照射して反射光の可視光および近赤外光の吸収スペクトルを測定等することによって、適宜被選別物の選別処理を行う技術が知られている(特開2004-301690号公報)。
より具体的には、特開2004-301690号公報にかかる従来技術においては、まず、被選別物(食品と食品に含まれる異物等)に光を照射することによって得られる反射光の可視光および近赤外光の吸収スペクトルを測定する。次に、この吸収スペクトルに対して二次微分処理を行い、食品とその他の異物等との間で異なる二次微分スペクトルを示す波長帯を測定する。そして、食品について、上述した波長帯の二次微分分光画像を作成することによって、この食品に含まれる異物等を検出することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術(特開2004-301690号公報)においては、被選別物である検査対象物とそれ以外の異物等とは選別可能であるが、検査対象物同士(特開2004-301690号公報における食品同士)を所定条件に基づき識別して選別することが困難であるという問題があった。
【0005】
また、上記従来技術においては、被選別物である検査対象物そのものの状態を把握することが困難であった。具体的には、検査対象物の表面状態等に基づいて識別等が必要であったとしても、上記従来技術では、検査対象物の表面状態あるいは内部状態(不可視形状を含む欠陥品・形状異常等)を精度よく把握できないため、これらを基準として識別して選別することが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本開示は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、被選別物そのものの状態、および複数の被選別物同士の関係を適切に把握して、かかる把握した情報に基づき、被選別物を適切に識別する、被選別物の識別方法を提供することを課題とする。
また、本開示は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、被選別物そのものの状態、および複数の被選別物同士の関係を適切に把握して、かかる把握した情報に基づき、被選別物を適切に識別して選別する、被選別物の選別方法および選別装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第一態様にかかる被選別物の識別方法は、被選別物を移送する移送工程と、前記移送工程中における前記被選別物を撮像する撮像工程と、前記撮像工程にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別工程とを備え、前記撮像情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報とを含む。
【0008】
ここで、「撮像」とは、対象物(被選別物)の外部状況や内部状況等、対象物の状況を把握するために、対象物に対して電磁波を照射し、その反射信号(反射光)および透過信号(透過光)の少なくとも一方を受信(受光)して、対象物の状況(外部や内部の状況)を光学的な方法で結像させることをいう。また、「電磁波」とは、電場と磁場の変化を伝搬する波動であり、光や電波は電磁波の一種である。「撮像」を実施する撮像手段は、電磁波を照射する電磁波発生部(例えば、X線発生部)と、照射された電磁波の透過信号および反射信号の少なくとも一方を受信する電磁波検出部(例えば、X線検出部)とを用いて構成される。
また、「隣接情報」とは、隣接する被選別物間の距離(隣接距離)あるいは隣接割合(被選別物の大きさに対する被選別物間の距離の割合)に応じて付される情報であり、例えば、被選別物同士が接触している部分、被選別物間の距離が所定距離以下の部分、および被選別物間の隣接割合が所定割合以下の部分の少なくとも一つに、被選別物および背景等と異なる所定の情報(例えば、色情報)を付して構成される。
さらに、「分類情報」とは、被選別物の状態に応じて付される情報であり、例えば、被選別物の良好な部分である「良部情報」や、被選別物の欠損部や内観不良部等の不良な部分である「不良部情報」等があげられる。この「分類情報」として、例えば、「良部情報」や「不良部情報」等の複数の情報が存在する場合、それぞれの「分類情報」については、それぞれ異なる情報(例えば、色情報)を付して構成される。
【0009】
本開示の第二態様にかかる被選別物の識別方法は、被選別物を移送する移送工程と、前記移送工程中における前記被選別物を撮像する撮像工程と、前記撮像工程にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別工程とを備え、前記撮像情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報と、前記被選別物の背景情報とを含む。
【0010】
本開示の第三態様にかかる被選別物の識別方法は、被選別物を移送する移送工程と、前記移送工程中における前記被選別物を撮像する撮像工程と、前記撮像工程にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別工程とを備え、前記識別工程が、前記被選別物に関する学習情報に基づいて生成された推論モデルを用いて行われ、前記学習情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報とを含み、前記識別工程では、前記撮像情報と前記推論モデルとを用いて、前記被選別物を識別する。
ここで、「推論モデル」は、サポートベクターマシン(SVM)、単純ベイズ分類器、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、ディープラーニング、K近傍法、AdaBoost、バギング、C4.5、カーネル法、確率的勾配降下法、ラッソ回帰、リッジ回帰、Elastic Net、内挿法、および協調フィルタリングの少なくとも一つ以上を組み合わせて構成されたシステム(学習プログラム)を用いて得ることができる。具体的には、かかるシステム(学習プログラム)に所定の画像情報(学習情報、学習用画像)を学習させることによって、本開示にかかる識別工程を実施可能な「推論モデル」を得ることができる。以下においても、単に「推論モデル」と表記される場合には、同様の概念とする。
また、この第三態様にかかる被選別物の識別方法においては、前記学習情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報と、前記被選別物の背景情報とを含む構成であってもよい。
【0011】
本開示の第四態様にかかる選別方法は、被選別物を移送する移送工程と、前記移送工程中における前記被選別物を撮像する撮像工程と、前記撮像工程にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別工程と、前記識別工程にて得られた識別情報に基づき、前記被選別物を選別する選別工程とを備え、前記撮像情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報とを含む。
また、本実施態様にかかる選別方法においては、前記撮像情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報と、前記被選別物の背景情報とを含む構成であってもよい。
【0012】
本開示の第五態様にかかる選別方法は、被選別物を移送する移送工程と、前記移送工程中における前記被選別物を撮像する撮像工程と、前記撮像工程にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別工程と、前記識別工程にて得られた識別情報に基づき、前記被選別物を選別する選別工程とを備え、前記識別工程が、前記被選別物に関する学習情報に基づいて生成された推論モデルを用いて行われ、前記学習情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報とを含み、前記識別工程では、前記撮像情報と前記推論モデルとを用いて、前記被選別物を識別する。
また、この第五態様にかかる被選別物の選別方法においては、前記学習情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報と、前記被選別物の背景情報とを含む構成であってもよい。
【0013】
本開示の第六態様にかかる選別装置は、被選別物を移送する移送手段と、前記移送手段における移送中に前記被選別物を撮像する撮像手段と、前記撮像手段にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別手段と、前記識別手段にて得られた識別情報に基づき、前記被選別物を選別する選別手段とを備え、前記撮像情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報とを含む。
また、本実施態様にかかる選別装置においては、前記撮像情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報と、前記被選別物の背景情報とを含む構成であってもよい。
【0014】
本開示の第七態様にかかる選別装置は、被選別物を移送する移送手段と、前記移送手段における移送中に前記被選別物を撮像する撮像手段と、前記撮像手段にて得られた撮像情報に基づき、前記被選別物を識別する識別手段と、前記識別手段にて得られた識別情報に基づき、前記被選別物を選別する選別手段とを備え、前記識別手段が、前記被選別物に関する学習情報に基づいて生成された推論モデルを有し、前記学習情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報とを含み、前記識別手段が、前記撮像情報と前記推論モデルとを用いて、前記被選別物を識別する。
ここで、「撮像手段」は、電磁波を照射する電磁波発生部(例えば、X線発生部)と、照射された電磁波の透過情報(透過光、透過信号)および反射情報(反射光、反射信号)の少なくとも一方を検出する電磁波検出部(例えば、X線検出部)とを用いて構成される。
また、この第七態様にかかる被選別物の選別装置においては、前記学習情報が、前記被選別物同士の隣接情報と、前記被選別物の分類情報と、前記被選別物の背景情報とを含む構成であってもよい。
【0015】
本開示によれば、被選別物そのものの状態、および複数の被選別物同士の関係を適切に把握して、かかる把握した情報に基づき、被選別物を適切に識別する、被選別物の識別方法を得ることができる。
また、本開示によれば、被選別物そのものの状態、および複数の被選別物同士の関係を適切に把握して、かかる把握した情報に基づき、被選別物を適切に識別して選別する、被選別物の選別方法および選別装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施形態にかかる被選別物の選別装置の一部概略図(X線識別手段の概略側面図)を示したものである。
図2】本開示の実施形態にかかるX線選別手段(を成すX線識別手段)にて用いられる推論モデルの構築方法に関するフローチャートを示したものである。
図3A】本開示の実施形態にかかるX線選別手段(を成すX線識別手段)にて用いられる推論モデルの構築方法における撮像情報等の概略図であり、被選別物にX線を照射して取得された生画像を示したものである。
図3B】本開示の実施形態にかかるX線選別手段(を成すX線識別手段)にて用いられる推論モデルの構築方法における撮像情報等の概略図であり、学習用画像を生成するために、取得された生画像からトリミング処理が行われたトリミング画像(トリミング画像群)を示したものである。
図3C】本開示の実施形態にかかるX線選別手段(を成すX線識別手段)にて用いられる推論モデルの構築方法における撮像情報等の概略図であり、トリミング画像に基づき、良部(良部情報、分類情報)、不良部(不良部情報、分類情報)、隣接部(隣接情報)、背景部(背景情報)についてのラベリング処理が行われたラベリング画像(ラベリング画像群)を示したものである。
図4】本開示の実施形態にかかるX線選別手段(を成すX線識別手段)を用いて行われる識別工程(被選別物の識別方法)に関するフローチャートを示したものである。
図5A】本開示の実施形態にかかるX線選別手段(を成すX線識別手段)を用いて行われる識別工程時における撮像情報等の概略図であり、被選別物にX線を照射して撮像された生画像を示したものである。
図5B】本開示の実施形態にかかるX線選別手段(を成すX線識別手段)を用いて行われる識別工程時における撮像情報等の概略図であり、撮像された生画像に推論モデルを適用した際の(推論モデルによる推論を行った後の)推論結果画像を示したものである。
図5C】本開示の実施形態にかかるX線選別手段(を成すX線識別手段)を用いて行われる識別工程時における撮像情報等の概略図であり、推論結果画像にフィルタリングを行った際のフィルタ処理後画像を示したものである。
図6】本開示の第二実施形態にかかる選別装置(ベルト式選別装置)の概略構成図を示したものである。
図7】本開示の第三実施形態にかかる選別装置(シュート式選別装置)の概略構成図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本開示の実施形態にかかる被選別物の識別方法、被選別物の選別方法、および被選別物の選別装置等について説明する。
ここで、「被選別物」としては、例えば、ナッツ、豆類、穀粒、樹脂、石、ガラス、木材等の粒状物があげられる。また、「穀粒」とは、穀物の粒のことであり、穀物とは、植物から得られる食材の総称の一つである。穀物としては、例えば、米、麦、粟、稗、トウモロコシ、大豆、小豆、蕎麦等があげられる。
【0018】
<第一実施形態>
図1は、本開示の実施形態にかかる被選別物の選別装置の一部概略図(一部概略側面図)を示したものである。より具体的には、図1は、選別装置の一部であるX線識別手段10の概略図(概略側面図)を示したものである。また、図2は、本実施形態にかかるX線選別手段にて用いられる推論モデルの構築方法に関するフローチャートを示したものである。さらに、図3A~3Cは、本実施形態にかかる推論モデル構築時に用いられる撮像情報等の概略図を示したものであって、図3Aは、被選別物に電磁波(X線)を照射して取得された生画像を示し、図3Bは、学習用画像(請求の範囲の「学習情報」の非限定的な一例である)を生成するために、取得された生画像からトリミング処理が行われたトリミング画像(トリミング画像群)を示し、図3Cは、トリミング画像に基づき、良部(分類情報の一例としての良部情報)、不良部(分類情報の一例としての不良部情報)、隣接部(隣接情報)、背景部(背景情報)についてのラベリング処理が行われたラベリング画像(ラベリング画像群)を示している。本開示にかかる実施形態においては、ラベリング画像が学習用画像(学習情報)として用いられる。また、図4は、本実施形態にかかるX線選別手段(を成すX線識別手段)を用いて行われる識別工程(被選別物の識別方法)に関するフローチャートを示したものである。さらに、図5A~5Cは、本実施形態にかかるX線識別手段を用いて行われる識別工程時における撮像情報等の概略図を示し、図5Aは、被選別物にX線を照射して撮像された生画像を示し、図5Bは、撮像された生画像に推論モデルを適用した際の推論結果画像を示し、図5Cは、推論結果画像にフィルタリングを行った際のフィルタ処理後画像を示したものである。
【0019】
図1に示すように、本開示にかかる選別装置を成すX線識別手段10は、搬送路91上の被選別物Sに対してX線11aを照射するX線発生部11(電磁波発生部)、およびX線発生部11から照射されたX線11aを検出するX線検出部12(電磁波検出部)等を用いて構成されている。この図1では省略しているが、本実施形態にかかるX線識別手段10は、X線発生部11およびX線検出部12の他に、X線発生部11等を覆うように設けられる隔壁や、それぞれに接続された画像処理手段等の種々の制御手段や、その他の構成要素等を用いて構成されている。
【0020】
また、本実施形態にかかるX線識別手段10は、搬送路91が駆動することによって、あるいは搬送路91が所定の傾斜角度を有することによって、X線発生部11とX線検出部12との間を被選別物Sが移動すべく構成されている。つまり、本実施形態にかかるX線識別手段10においては、被選別物Sが、X線発生部11とX線検出部12との間を所定の方向(図1における左方向または右方向)に移送可能に構成されている。このように被選別部Sが移送される工程が、請求の範囲の「移送工程」の非限定的な一例である。なお、本開示における「移送工程」は、被選別物Sがベルト等にて移送されている状態のみならず、場合によっては、被選別物Sが空中に放出して移送されている状態も含む概念である。
【0021】
本実施形態において、図1に示すX線識別手段10は、選別装置の一部を成すと共に、選別装置に搭載される推論モデルを構築する際の機械学習装置の一部としても機能してもよい。以下においては、まず、本実施形態にかかる選別装置(のX線識別手段10)に搭載される推論モデルの構築方法等について説明する。
【0022】
本実施形態にかかる推論モデルを構築する場合の機械学習装置は、X線識別手段10およびパーソナルコンピュータ(以下「PC」ともいう。)(図示省略)等を用いて構成されている。PCは、CPU(中央演算処理装置)やGPU(画像演算処理装置)等の演算処理装置(演算装置、制御装置、クロック、レジスタ等を用いて構成されている)、メモリ、入出力装置、バス(信号回路)等を用いて構成されている。
【0023】
本実施形態にかかる推論モデルを構築する際に用いられる機械学習装置は、上記のようにPC等を用いて構成されており、かかるPCには、サポートベクターマシン(SVM)、単純ベイズ分類器、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、ディープラーニング、K近傍法、AdaBoost、バギング、C4.5、カーネル法、確率的勾配降下法、ラッソ回帰、リッジ回帰、Elastic Net、内挿法、および協調フィルタリングの少なくとも一つ以上を組み合わせて構成された学習プログラムが設けられている。本実施形態においては、例えば、ディープラーニングをメインにして学習プログラムが構成されている。
【0024】
本実施形態においては、X線識別手段10を用いて得られた撮像情報(取得画像)およびこの撮像情報(取得画像)を適宜加工した画像情報の少なくとも一方を学習用画像とし、この学習用画像と学習プログラムとを用いて、推論モデルが構築される。以下、図1図3Cを用いて、推論モデルの構築方法について、説明する。上述したように、図2は、本実施形態にかかるX線選別手段にて用いられる推論モデルの構築方法に関するフローチャートを示し、図3A~3Cは、本実施形態にかかる推論モデル構築時に用いられる撮像情報(取得画像)等の概略図を示している。
【0025】
図2に示すように、本実施形態にかかる推論モデルを構築する際には、X線識別手段10を用いて、搬送路91上の被選別物Sに関する画像(X線透過画像)の取得が行われる(画像取得工程:ステップS201)。本実施形態においては、この画像取得工程S201にて、搬送路91上の複数の被選別物Sに関し、ライン状の生画像310が取得される(図3A参照)。より具体的には、ステップS201においては、X線検出部12から一定ライン数(例えば、512ライン)分の画像情報が取り込まれ、この画像情報(生画像310)については、被選別物Sが撮像されていることを所定の閾値で確認して、適宜メモリに保存される。
【0026】
次いで、本実施形態においては、画像取得工程S201にて取得された生画像310の所定部分についてトリミング処理が行われる(トリミング処理工程:ステップS203)。つまり、このステップS203にて、生画像310からトリミング画像群320(第一トリミング画像321~第六トリミング画像326)が生成される(図3B参照)。このトリミング処理工程S203においては、トリミングされたそれぞれの画像中に被選別物Sが存在した状態となるように、トリミング処理が行われる。
【0027】
本実施形態においては、このステップS203(トリミング処理工程)にて、被選別物Sの良部情報S1(分類情報)と不良部情報S2(分類情報)と背景情報S4とを有する画像(第一トリミング画像321、第二トリミング画像322)、被選別物Sの良部情報S1と隣接情報S3と背景情報S4とを有する画像(第三トリミング画像323、第四トリミング画像324)、および被選別物Sの良部情報S1と背景情報S4とを有する画像(第五トリミング画像325、第六トリミング画像326)が、切り出し抽出される。
【0028】
このトリミング処理工程S203においては、少なくとも二つ以上の情報を有する状態(例えば、良部情報S1と不良部情報S2と背景情報S4とを有する状態(第一トリミング画像321等)や、良部情報S1と隣接情報S3と背景情報S4とを有する状態(第三トリミング画像323等)や、良部情報S1と背景情報S4とを有する状態(第五トリミング画像325等)等)となるように、画像の切り出し抽出が行われる。
【0029】
本実施形態においては、被選別物Sの良好な部分(被選別物Sにおいて欠損部や内観不良部(内部の不可視形状)等の不良な部分を除いた部分)である良部情報S1や、被選別物Sの欠損部や内観不良部等の不良な部分である不良部情報S2を所定の割合で有するように、トリミング処理工程S203が行われる。この良部情報S1や不良部情報S2が、「分類情報」の非限定的な一例である。
また、本実施形態においては、被選別物S同士が接触している部分、および隣接する被選別物S間の距離(隣接距離)あるいは隣接割合(被選別物Sの大きさに対する被選別物S間の距離の割合)が所定値以下の部分を所定の割合で有するように、トリミング処理工程S203が行われる。例えば、被選別物S同士が接触している部分、被選別物S間の距離が所定距離以下の部分、および被選別物S間の隣接割合が所定割合以下の部分の少なくとも一つが、「隣接情報」の非限定的な一例である。
さらに、本実施形態においては、分類情報と隣接情報と背景情報とが所定の割合となるように、トリミング処理工程S203が行われる。
【0030】
本実施形態のトリミング処理工程(S203)におけるトリミングサイズは、被選別物Sの大きさ(物体の投影面積)や形状に応じてそのサイズが定められる。
具体的には、被選別物Sの単体の大きさと同程度の大きさでトリミング処理が行われる。この際、被選別物Sが「円」や「正方形」に近い形状である場合には、その被選別物Sの平均的な単体の大きさ(面積)と同程度あるいは少し大きいサイズ(「単体の平均値-5%程度」≦トリミングサイズ≦「単体の平均値+15%程度」)にトリミング処理が行われる。また、被選別物Sが「楕円形」や「長方形」に近い形状である場合には、その被選別物Sの平均的な単体の大きさと同程度あるいは少し小さいサイズ(「単体の平均値-15%程度」≦トリミングサイズ≦「単体の平均値+5%程度」)にトリミング処理が行われる。
例えば、本実施形態においては、被選別物Sがアーモンドであれば、40×40ピクセルのサイズ(平均的な単体の大きさと同程度あるいは少し小さいサイズ)で、トリミング処理が行われる。
【0031】
また、本実施形態においては、トリミング処理工程(S203)後、各トリミング画像に対して、正規化処理が行われる。但し、この正規化処理のタイミングはトリミング処理工程(S203)後に限定されず、例えば、画像取得工程(S201)後に、生画像310に対して正規化処理を行い、この正規化処理を行った画像にトリミング処理工程を行ってもよい。ここで、「正規化処理」としては、光量ムラや検出部の素子の感度を均一にするシェーディング補正や、画像に対して電磁波強度に応じた階調の値を一定の範囲におさめる変換等が行われる。例えば、本実施形態においては、電磁波強度に応じた階調の値の範囲が、0~1の範囲におさまるように、正規化処理が行われる。
【0032】
次いで、本実施形態においては、トリミング処理工程S203にて生成されたトリミング画像群320(正規化処理後のトリミング画像群)を用いて、ラベリング処理が行われる(ラベリング処理工程:ステップS205)。つまり、このラベリング処理工程S205にて、正規化処理後のトリミング画像群からラベリング画像群330(第一ラベリング画像331~第六ラベリング画像336)(請求の範囲の「学習情報」の非限定的な一例である)が生成される(図3C参照)。
【0033】
本実施形態においては、このステップS205(ラベリング処理工程)にて、トリミング画像群320の各トリミング画像321~326(正規化処理後の各トリミング画像)を基にして、各画像を成す全てのピクセルについて、何が写っているのかの判断(どの情報であるのかの判断)が行われ、良部ラベリング部SP1(請求の範囲の「分類情報」の非限定的な一例である)、不良部ラベリング部SP2(本発明の「分類情報」に相当)、隣接ラベリング部SP3(請求の範囲の「隣接情報」の非限定的な一例である)、背景ラベリング部SP4(請求の範囲の「背景情報」の非限定的な一例である)のいずれかのラベリングが付される。
【0034】
本実施形態における「分類情報」とは、被選別物Sの状態に応じて付される情報であり、本実施形態における良部ラベリング部SP1や不良部ラベリング部SP2が分類情報に該当する。また、隣接ラベリング部SP3が隣接情報に該当し、背景ラベリング部SP4が背景情報に該当する。
【0035】
本実施形態にかかるラベリング処理工程S205にて付与される隣接ラベリング部SP3(隣接情報)は、隣接する被選別物S間の距離(隣接距離)あるいは隣接割合(被選別物Sの大きさに対する被選別物S間の距離の割合)に応じて付される情報である。例えば、被選別物S同士が接触している部分、被選別物S間の距離が所定距離以下の部分、および被選別物S間の隣接割合が所定割合以下の部分の少なくとも一つに対して、隣接ラベリングSP3(隣接情報)が付与される。ここで、本実施形態においては、例えば、ある一定値で二値化した場合に、隣接する被選別物S同士が繋がっていると判断される部分が、隣接ラベリング部SP3(隣接情報)として定義される。
【0036】
また、本実施形態にかかるラベリング処理工程S205において、それぞれのラベリングの判断基準は、例えば、以下のように定められる。
具体的には、取得される信号の明るさがラベリングの判断基準として用いられる。
本実施形態においては、例えば、複数の明るさの基準値(第一ラベリング基準値、第二ラベリング基準値)を設け、この明るさの基準値に基づいてラベリング処理が行われる。ここでは、第一ラベリング基準値よりも第二ラベリング基準値の方が、より明るい値として定義するものとする。
上記の第一ラベリング基準値および第二ラベリング基準値を用い、本実施形態においては、例えば、第一ラベリング基準値以下の明るさを有する部分(暗い部分)について良部ラベリング部SP1が付され、第二ラベリング基準値以上の明るさを有する(明るい部分)について背景ラベリング部SP4が付される。また、第一ラベリング基準値以下の明るさを有する領域中に所定の明るさ(第一ラベリング基準値と第二ラベリング基準値との間の所定の明るさ)を有する部分、および第一ラベリング基準値以下の明るさを有する箇所と第二ラベリング基準値以上の明るさを有する箇所との間に存在する所定の明るさを有する部分について不良部ラベリング部SP2が付される。さらに、第一ラベリング基準値以下の明るさを有する領域が複数近接あるいは接触している領域であって、第二ラベリング基準値よりも暗い部分について、隣接ラベリング部SP3が付される。
【0037】
つまり、本実施形態においては、上記判断基準に基づき、図3Cに示すように、ラベリング画像群330の各ラベリング画像331~336は、それぞれの画像を構成する全てのピクセルについて、4つラベリング(ラベリング部SP1~SP4)が付されることとなる。このステップS205にて生成されたラベリング画像331~336は、適宜、所定のメモリに学習用画像(学習情報)として記憶される。
【0038】
このラベリング処理工程S205においては、例えば、被選別物Sの空洞部等が不良部(内観不良部)と認識されて不良部としてのラベリング処理がなされる(不良部ラベリング部SP2が形成される)。そして、被選別部Sの不良部以外の部分について、良部としてのラベリング処理がなされる(良部ラベリング部SP1が形成される)。
【0039】
次いで、本実施形態においては、所定の条件に基づき、ラベリング処理工程S205を完了するか否かの判断が行われる(完了判断工程:ステップS207)。
ここで、「所定の条件」とは、例えば、ラベリング処理が完了したラベリング画像の総数、ラベリング処理が完了したラベリング画像の総ピクセル数、ラベリング画像中の良部ラベリング部のピクセル数と不良部ラベリング部のピクセル数の合計やそれぞれの割合、およびラベリング画像中の分類情報のピクセル数と隣接情報のピクセル数と背景情報のピクセル数の合計やそれぞれの割合等の少なくとも一つが考えられる。この「所定の条件」は、上記条件の一つでもよいし、上記条件の複数を組み合わせてもよい。
【0040】
本実施形態にかかる完了判断工程S207においては、例えば、ラベリング処理が完了したラベリング画像が所定数以上(例えば、500枚以上)であり、そのラベリング画像数の割合が所定の割合(例えば、「(SP1+SP4)を有する画像数:(SP1+SP2+SP4)を有する画像数:(SP1+SP2+SP3)を有する画像数=(60±10%):(25±10%):(15±10%)」の割合)となったか否かに基づき、ラベリング処理工程S205を完了するか否かの判断が行われる。
【0041】
完了判断工程S207において、所定の条件に基づきラベリング処理工程S205を完了すると判断した場合(S207にて「Yes」の場合)には、次いで、ステップS209以降の処理が行われ、所定の条件に基づきラベリング処理工程S205を完了しないと判断した場合(S207にて「No」の場合)には、繰り返しステップS201以降の処理が行われる。
【0042】
本実施形態にかかる完了判断工程S207において、ラベリング処理工程S205を完了すると判断した場合(S207にて「Yes」の場合)には、次いで、ラベリング画像等を用いて、推論モデルの生成処理が行われる(推論モデル生成工程:ステップS209)。
【0043】
本実施形態にかかる推論モデル生成工程S209においては、メモリに記憶されたラベリング画像(学習用画像、学習情報)に基づきディープラーニングを行い(ラベリング画像をPCに読み込ませて学習プログラムにて機械学習を行い)、推論モデルが生成される。
この推論モデル生成時に使用されるラベリング画像(例えば、ピクセルごとにラベリング(4つのラベリングSP1~SP4のうちのいずれかのラベリング)を付された画像331~336)の数は、例えば500枚以上であり、これらのラベリング画像数の割合は、例えば、「(SP1+SP4)を有する画像数:(SP1+SP2+SP4)を有する画像数:(SP1+SP2+SP3)を有する画像数=60%:25%:15%」の割合となっている。
【0044】
次いで、本実施形態においては、推論モデル生成工程S209にて生成された推論モデルに関し、確認処理が行われる(推論モデル確認工程:ステップS211)。この推論モデル確認工程S211においては、例えば、一の方法として、推論モデル生成時に利用したラベリング画像の基となっている生画像310に対して、生成された推論モデルによる推論処理を行い、その推論結果と学習情報とを対比して、正解率が算出される。また、例えば、他の方法として、この推論モデル確認工程S211においては、推論モデル生成時に利用した学習情報とは別のテスト用画像とこのテスト用画像に基づくテスト用画像情報(テスト用画像を用いてラベリング処理が行われた画像情報)とを準備し、このテスト用画像に対して生成された推論モデルによる推論処理を行い、その推論結果とテスト用画像情報とを対比して、正解率が算出される。
本実施形態にかかる推論モデル確認工程S211においては、例えば、上述した一の方法および他の方法の少なくとも一方が実施され、いずれか一方を実施した際には、その際の正解率が所定のメモリに記憶され、両方を実施した際には、それぞれの正解率が所定のメモリに記憶される。
【0045】
次いで、本実施形態においては、推論モデル確認工程S211の結果が期待値以上であるか否かの判断が行われる(推論モデル判断工程:ステップS213)。ここで、推論モデル確認工程S211の結果が期待値以上であるか否かについては、メモリに記憶された推論モデル確認工程S211における正解率と期待値とを対比して判断される。期待値としては、例えば、学習情報との対比における正解率が95%以上、且つテスト用画像情報との対比における正解率が90%以上等であることがあげられる。
【0046】
推論モデル判断工程S213において、生成された推論モデルにおける正解率が所定の期待値以上であると判断された場合(S213にて「Yes」の場合)には、推論モデルの構築が終了し、生成された推論モデルにおける正解率が所定の期待値以上ではないと判断された場合(S213にて「No」の場合)には、ステップS215(調整工程)の処理を経て、繰り返しステップS209以降の処理が行われる。
【0047】
ステップS213の処理の後、再度ステップS209以降の処理が行われる場合には、上述したように、推論モデルを適切に生成するための調整工程S215が行われる。
本実施形態にかかる調整工程S215としては、例えば、学習に使用するパラメータである学習率、バッチサイズ、ドロップアウト率等を変更する手段があげられる。また、この調製工程S215においては、必要に応じて、学習情報とテスト用画像情報とをシャッフルしたり、それぞれの情報を増減させたりしてもよい。さらに、本実施形態においては、必要に応じて複数のモデルを生成し、それぞれについて推論モデル判断工程S213や調製工程S215等を行い、より適切な推論モデルを作成してもよい。
【0048】
なお、本実施形態においては、生成された推論モデルにおける正解率が所定の期待値以上ではないと判断された場合(S213にて「No」の場合)に、ステップS215以降の処理が行われる構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。したがって、例えば、正解率が所定の期待以上ではないと判断された場合、再度ステップS201以降の処理を行うように構成してもよい。より具体的には、例えば、調整工程S215を複数回(3回等)繰り返しても想定した期待値以上の結果を得られなかった場合には、ステップS201の処理に戻り、画像取得工程S201以降の処理を行うような構成としてもよい。
【0049】
本実施形態においては、推論モデル判断工程S213にて、生成された推論モデルが所定の期待値以上であると判断されることによって(S213にて「Yes」と判断されることによって)、本実施形態にかかる「推論モデル」が完成することとなる。
【0050】
本実施形態においては、上述のようにして生成された推論モデルを用いて、被選別物Sの識別処理が行われる。具体的には、図1のX線識別手段10に電気的に接続された制御手段(図示省略)等に推論モデルが搭載され、かかる推論モデルを用いて、被選別物Sの識別処理が行われる。
【0051】
以下、本実施形態にかかる被選別物Sの識別方法について、図1図4図5A~5C等を用いて説明する。ここで、図4は、本実施形態にかかるX線識別手段10を用いて行われる被選別物の識別方法に関するフローチャートを示したものである。また、図5A~5Cは、本実施形態にかかるX線識別手段10を用いて行われる識別方法(識別工程時)における撮像情報等の概略図を示し、図5Aは、被選別物にX線を照射して撮像された生画像を示し、図5Bは、撮像された生画像に推論モデルを適用した際の推論結果画像を示し、図5Cは、推論結果画像にフィルタリングを行った際のフィルタ処理後画像を示したものである。
【0052】
図1および図4に示すように、本実施形態にかかる識別方法においては、X線発生部11およびX線検出部12を用いて移送工程中の被選別物Sに関する撮像処理が行われる(請求の範囲の「撮像工程」の非限定的な一例である:ステップS401)。本実施形態においては、このステップS401(撮像工程)にて、搬送路91上の複数の被選別物Sに関し、ライン状の生画像510が取得される(図5A参照)。より具体的には、ステップS401においては、被選別物SSに対してX線発生部11からX線が照射され、X線検出部12にて一定ライン数(例えば、512ライン)分の画像情報が取り込まれ、この画像情報(生画像510)については、適宜メモリに保存される。また、本実施形態においては、この生画像510に対して、適宜正規化処理が行われる。
【0053】
次いで、本実施形態においては、撮像工程にて得られた画像(正規化処理後の生画像510)を入力データ(請求の範囲の「撮像情報」の非限定的な一例である)として、推論モデル実施工程S403が行われる。つまり、撮像工程S401にて撮像された生画像510(正規化処理後の生画像)に推論モデルが適用され(ステップS403)、その推論結果(推論結果画像520)を得ることができる(ステップS405)。
ここで、図5Bは、撮像された生画像510に推論モデルを適用した際の推論結果画像520を示したものである。図5Bに示すように、推論モデルが適用されることによって、推論結果画像520の全てのピクセルについては、良部ラベリング部SSP1(分類情報)、不良部ラベリング部SSP2(分類情報)、隣接ラベリング部SSP3(隣接情報)、および背景ラベリング部SSP4(背景情報)のいずれかのラベリング(4つのうちのいずれかのラベリング)が付されることとなる。
【0054】
次いで、本実施形態においては、推論モデル実施工程S403にて得られた推論結果画像520に対して、フィルタリング処理工程(ステップS407)が行われる。
ここで、フィルタリング処理としては、例えば、所定の画像サイズ中に不良部(不良部ラベリング部SSP2)が何ピクセル含まれているかを確認し、規定値よりもピクセル数が多い場合に不良部として処理し、規定値よりもピクセル数が少ない場合に良部として処理する手段があげられる。また、他のフィルタリング処理としては、例えば、平滑化、エッジ抽出、鮮鋭化、モルフォロジー変換等の処理があげられる。
【0055】
このフィルタリング処理S407を行うことによって、例えば、推論結果画像520中の不良部ラベリング部SSP2は縮小されたり(例えば、20%~50%縮小されたり)、所定値以下のピクセル数を有する不良部ラベリング部SSP2や隣接ラベリング部SSP3は削除されて他のラベリング部に置換されたりする。
具体的には、フィルタリング処理S407の結果、一例として、推論結果画像520中の不良部ラベリング部SSP2の大きさは小さく表示される。また、フィルタリング処理S407の結果の他例として、推論結果画像520中の所定値以下のピクセル数を有する不良部ラベリング部SSP2については、良部ラベリング部(後述する分類特定時の「良部」)や背景ラベリング部(後述する分類特定時の「背景部」)に置き換えられて表示される。さらに、隣接ラベリング部SSP3については、背景ラベリング部(後述する分類特定時の「背景部」)に置き換えられて表示される。これらのフィルタリング処理S407を経た後の画像が、フィルタ処理後画像530(図5C参照)である。
【0056】
本実施形態においては、上述したように、推論結果S405にて得られた推論結果画像520(図5B参照)に対して、フィルタリング処理S407が行われる。そして、このフィルタリング処理S407を行うことによって、図5Cに示すフィルタ処理後画像530が形成され、このフィルタ処理後画像530に基づいて、分類の特定処理(分類の特定に基づく識別処理、識別工程)が行われる(ステップS409)。
【0057】
図5Bおよび図5Cに示すように、推論結果画像520にフィルタリング処理工程S407を施して得られるフィルタ処理後画像530においては、フィルタリングの結果、推論結果画像520中の二か所の不良部ラベリング部SSP2(図5B)が約30%縮小されて、不良部C2(図5C)が特定される。また、推論結果画像520中の隣接ラベリング部SSP3(図5B)は、フィルタリングの結果、背景部C4(図5C)として特定される。さらに、図5Bの良部ラベリング部SSP1および背景ラベリング部SSP4は、フィルタリングの結果、図5Cの良部C1および背景部C4として特定される。
つまり、本実施形態においては、フィルタ処理後画像530に基づいて、「良部」「不良部」および「背景部」の特定が行われる。本実施形態においては、被選別物同士が隣接している隣接ラベリング部については、「背景部」としての特定処理が行われる。
【0058】
本実施形態においては、ピクセル単位に種々の情報が付され、例えば、推論結果画像520は、各ピクセルについて、良部ラベリング部SSP1(分類情報)、不良部ラベリング部SSP2(分類情報)、隣接ラベリング部SSP3(隣接情報)、および背景ラベリング部SSP4(背景情報)のいずれかのラベリング(4つのうちのいずれかのラベリング)が付されることとなる。そして、本実施形態においては、推論結果画像520にフィルタリング処理S407を行って得られたフィルタ処理後画像530における各ピクセルについて、分類の特定処理(識別処理、識別工程)S409が行われ、各ピクセルが、「良部」「不良部」および「背景部」のいずれかに特定される。
【0059】
本実施形態においては、分類特定処理S409の結果として、図5Cに示すように、背景部C4と、複数の被選別物とが特定され、より具体的には、不良部C2を有する個体(被選別物CA,CB)が二つ特定され(識別され)、その他の被選別物は良部C1のみを有する個体(被選別物)として特定される(識別される)。
【0060】
次いで、本実施形態においては、分類特定処理S409の後、被選別物の識別処理を終了するか否かの判断がなされる(ステップS411)。ここで、識別処理を終了すると判断した場合(S411にて「Yes」の場合)には、X線識別手段10を用いて行われる識別処理(被選別物の識別工程)が終了し、識別処理を終了しないと判断した場合(S411にて「No」の場合)には、繰り返しステップS401以降の処理が行われる。
具体的には、特別な指示がない限り、搬送路91上にて搬送される被選別物Sが存在し、X線発生部11およびX線検出部12等を用いて撮像工程が実施されている場合には、識別処理は継続して行われる。
【0061】
本実施形態においては、上述したように、X線識別手段10と推論モデル等とを用いて、撮像処理工程、推論モデル実施工程(推論結果)、フィルタリング処理工程、および分類特定工程等が行われて、被選別物Sの識別が行われることとなる。
【0062】
本実施形態にかかる被選別物の選別装置を成す識別装置(識別手段)は、図1図5Cを用いて説明したように構成され機能するため、以下のような作用効果を有する。以下、本実施形態にかかる識別装置を用いて行われる識別方法の構成と作用効果について説明する。
【0063】
本実施形態にかかる被選別物の識別方法は、被選別物を移送する移送工程と、移送工程中における被選別物を撮像する撮像工程と、撮像工程にて得られた撮像情報(生画像510)に基づき、被選別物を識別する識別工程とを備え、識別工程が、被選別物に関する学習情報(ラベリング画像群330,ラベリング画像331~336)に基づいて生成された推論モデルを用いて行われ、学習情報(ラベリング画像群330、ラベリング画像331~336)が、被選別物同士の隣接情報(隣接ラベリング部SP3)と、被選別物の分類情報(良部ラベリング部SP1,不良部ラベリング部SP2)とを含み、識別工程では、撮像情報と推論モデルとを用いて、被選別物を識別する。
【0064】
本実施形態にかかる被選別物の識別方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
本実施形態にかかる識別方法によれば、推論結果と撮像情報との比較を容易に実施可能であるため、識別時の演算処理の効率を高めことができる。また、本実施形態にかかる識別方法によれば、隣接情報(隣接ラベリング部SP3)を用いるため、隣接部を不良部と誤認識せず、識別精度を高めることができる。さらに、本実施形態にかかる識別方法によれば、隣接情報を用いることによって、接触した状態の被選別物を別離した状態として認識可能であるため、より高精度に各被選別物を識別することができる。また、本実施形態にかかる識別方法によれば、図5A~5Cに示すように、物体の切り出し処理を必要としないため、識別処理の処理速度を高めることができる。さらに、本実施形態によれば、推論結果を画像に変換することによって、不良部の特定を容易に実施することができる。また、本実施形態によれば、ピクセル単位で結果が出るため、各ピクセルデータを各種処理(後処理等)に簡単に利用できることとなる。さらに、本実施形態によれば、推論結果を画像として取り扱うことで、画像処理技術を適用することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態にかかる被選別物の識別方法は、被選別物を移送する移送工程と、移送工程中における被選別物を撮像する撮像工程と、撮像工程にて得られた撮像情報(生画像510)に基づき、被選別物を識別する識別工程とを備え、識別工程が、被選別物に関する学習情報(ラベリング画像群330,ラベリング画像331~336)に基づいて生成された推論モデルを用いて行われ、学習情報(ラベリング画像群330、ラベリング画像331~336)が、被選別物同士の隣接情報(隣接ラベリング部SP3)と、被選別物の分類情報(良部ラベリング部SP1,不良部ラベリング部SP2)と、被選別物の背景情報(背景ラベリング部SP4)とを含み、識別工程では、撮像情報と推論モデルとを用いて、被選別物を識別すべく構成してもよい。
【0066】
このような構成によれば、上述した種々の作用効果に加えて、以下のような作用効果を得ることができる。
本実施形態にかかる識別方法によれば、学習情報に被選別物の背景情報を含むため、各被選別物を明確に識別可能となる。また、本実施形態にかかる識別方法によれば、隣接情報(隣接ラベリング部SP3)を特定後、この隣接情報を背景情報に変換するため、より明確に各被選別物の識別処理を実施することができる。
【0067】
本実施形態においては、図1図5Cに示したように、「推論モデル」が生成され、このようにして生成された「推論モデル」が選別装置を成す識別装置(識別手段)に搭載され、これらを用いて識別方法が実施される。
以下、図面等を用いて、上述した推論モデルが搭載された識別装置を備えた選別装置について説明する。
【0068】
<第二実施形態>
図6は、本開示の第二実施形態にかかる選別装置(ベルト式選別装置)の概略構成図を示したものである。具体的には、この図6は、図1図5Cにて説明した識別装置(識別手段)を搭載したベルト式選別装置101の概略構成図を示したものである。
【0069】
図6に示すように、本実施形態にかかる選別装置101は、被選別物S0を供給する被選別物供給部120、被選別物S0を搬送する搬送部130、被選別物S0を光学検出する光学検出部150、被選別物S0の選別処理を行う選別部160、およびX線識別装置10等を用いて構成されている。
【0070】
本実施形態にかかる選別装置101においては、被選別物供給部120に貯留された被選別物S0が搬送部130の一方端部に供給され、供給された被選別物S0には、搬送部130による搬送中に(移送工程中に)X線識別装置10による撮像処理(に基づく識別処理)が行われる。次いで、搬送部130によって搬送される被選別物S0は、搬送部130の他方端部から落下軌跡Lに沿うように放出され、放出された被選別物S0の周囲には、光学検出部150および選別部160が設けられている。本実施形態にかかる選別装置101は、X線識別装置10および光学検出部150の少なくとも一方から得られる識別信号に基づき、選別部160が駆動すべく構成されており、被選別物S0は、選別部160によって、良品収容部181あるいは不良品排出部182のいずれかに選別処理される。
【0071】
本実施形態にかかる選別装置101を成す被選別物供給部120は、被選別物S0を貯留する貯留部や振動フィーダ等を用いて構成されている。この被選別物供給部120は、必要に応じて、被選別物供給部120から搬送部130の一方端部に、被選別物S0を供給すべく構成されている。
【0072】
本実施形態にかかる選別装置101を成す搬送部130は、搬送ベルト131、搬送ローラ132,133、および駆動モータ134等を用いて構成されている。搬送ベルト131は、並行に設けられたローラ132,133間に無端状に巻回されている。一方のローラ133には、ベルト等を介して駆動モータ134が連結されている。搬送ベルト131は、この駆動モータ134を回転させることによって、一定速度で回転駆動すべく構成されている。この搬送部130を成す搬送ベルト131は、第一実施形態における搬送路91に相当する。
【0073】
本実施形態にかかる搬送部130の搬送方向の略中央部には、第一実施形態にて説明したX線識別装置10が設けられている。より具体的には、図6に示すように、搬送ベルト131(第一実施形態における搬送路91)上の被選別物S0の上方位置にX線発生部11が設けられ、被選別物S0の下方位置(図6においては搬送ベルト131の間)にX線検出部12が設けられている。このX線識別装置10にて得られた撮像情報は、後述するX線画像処理手段173に送信される。また、本実施形態においては、X線の漏洩を防止するために、適宜隔壁が設けられている。
【0074】
本実施形態にかかる選別装置101を成す光学検出部150は、被選別物供給部120から搬送部130(を成す搬送ベルト131)の一方端部に供給された被選別物S0が、搬送部130(搬送ベルト131)の他方端部から放出された際の落下軌跡Lの周囲に設けられている。具体的には、受光部151(第一受光部151A,第二受光部151B)、複数の発光部153、各受光部151A,151Bに対応した背景部155等を用いて構成されている。本実施形態においては、図6に示すように、二つの受光部151A,151Bが落下軌跡Lを中心にして略対称の位置に設けられている。この受光部151は、固体撮像素子(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等)等を用いて構成されている。発光部153は、落下軌跡L上の光学検出位置Pに対して複数の角度から所定波長の光を照射すべく構成されている。受光部151は、落下軌跡L上の光学検出位置Pに到達した被選別物S0を撮像し、それぞれの被選別物S0に関する撮像情報(受光信号)が、後述する画像処理手段174に送信される。
【0075】
本実施形態にかかる選別装置101を成す選別部160は、ノズル部161および電磁弁162等を用いて構成されている。ノズル部161は、落下軌跡L上の被選別物S0に対して流体(例えば、空気)を噴射すべく構成されている。電磁弁162は、流体供給部(例えば、空気圧縮機等、図示省略)とノズル部161との間に設けられており、後述する判別結果結合機構175からの信号に基づき、ノズル部161への流体供給を制御すべく構成されている。
【0076】
また、図6に示すように、本実施形態にかかる選別装置101は、装置を使用する際の種々の信号等を入力可能なタッチパネル171を有しており、このタッチパネル171は選別装置101のCPU172に電気的に接続されている。また、このCPU172は、X線画像処理手段173および画像処理手段174に電気的に接続されている。さらに、X線画像処理手段173および画像処理手段174は、判別結果結合機構175に電気的に接続されている。
【0077】
X線画像処理手段173には、X線検出器11からの撮像情報が送信可能に構成され、画像処理手段174には、二つの受光部151A,151Bからの撮像情報が送信可能に構成されている。そして、判別結果結合機構175と電磁弁162とが電気的に接続されており、この判別結果結合機構175からの識別信号に基づき、電磁弁162を介してノズル部161からの流体の噴出状態(噴出時間、噴出タイミング等)が制御される。
【0078】
本実施形態にかかる選別装置101は、以上のように構成され、以下のように機能する。
【0079】
本実施形態においては、被選別物供給部120から供給された被選別物S0が、搬送部130にて搬送(移送)され、搬送中(移送工程中)の被選別物S0に対してX線識別装置10による撮像処理(撮像工程)が行われる。次いで、本実施形態においては、搬送部130から放出された被選別物S0に対して光学検出部150による撮像処理(撮像工程)が行われる。次いで、本実施形態においては、X線識別装置10および光学検出部150の少なくとも一方の撮像情報に起因する識別信号に基づき、選別部160を用いた選別処理(選別工程)が行われる。つまり、識別信号に基づき電磁弁162を介してノズル部161から噴出される流体の噴出タイミングおよび噴出時間等が制御され、ノズル部161から噴出される流体によって、被選別物S0が良品収容部181あるいは不良品排出部182のいずれかに選別される。
【0080】
本実施形態にかかる選別装置101を使用する際、まずは、装置に設けられたCPU172に対して、所定の信号を入力可能なタッチパネル171を用いて、被選別物S0に関する種々の情報や選別条件(識別条件)等の作動条件情報を入力する。この作動条件情報は、CPU172を介して、X線画像処理手段173および画像処理手段174に送信される。この作動条件情報の内容に応じて、例えば、X線画像処理手段173においては、複数の推論モデルの中から一つの推論モデルの選択や所定の閾値の設定等が行われる。また、画像処理手段174においても、所定の閾値の設定等が行われる。本実施形態においては、CPU172(あるいはX線画像処理手段173および画像処理手段174の少なくとも一方)に、複数の推論モデルや複数の閾値(識別に用いる複数の閾値)等が実装可能に構成されている。
【0081】
本実施形態においては、タッチパネル171を用いて作動条件情報を入力した後、選別装置101を駆動させ、被選別物S0に関するX線検出器12からの撮像情報がX線画像処理手段173に送信され、被選別物S0に関する受光部151A,151Bからの撮像情報が画像処理手段174に送信される。X線画像処理手段173および画像処理手段174に送信された撮像情報は、適宜所定の演算処理を経て(あるいはそのままの撮像情報として)、判別結果結合機構175に送信される。判別結果結合機構175においては、被選別物S0の搬送速度等を考慮し、同一の被選別物S0に対するX線画像検出手段173からの撮像情報と画像処理手段174からの撮像情報とに基づく演算処理が行われ、その結合された判別結果に基づく識別信号(電磁弁制御信号)が電磁弁162に送信される。この電磁弁162を介してノズル部161からの流体の噴出状態が制御され、この噴出される流体によって、被選別物S0の選別処理が行われる。
【0082】
本実施形態においては、上述したように、第一実施形態にて説明したX線選別装置10(X線識別手段)と推論モデル等とを用いて選別装置101が構成され、この選別装置101において、撮像処理工程、推論モデル実施工程(推論結果)、フィルタリング処理工程、および分類特定工程等が行われて、被選別物S0の識別(識別処理)および選別(選別処理)が行われることとなる。
【0083】
本実施形態にかかる選別装置101は、図6等(X線識別装置10については図1図5C)を用いて説明したように構成され機能するため、以下のような作用効果を有する。以下、本実施形態にかかる選別装置(選別方法)の構成と作用効果について説明する。
【0084】
本実施形態にかかる選別方法は、被選別物S0を移送する移送工程と、移送工程中における被選別物S0を撮像する撮像工程と、撮像工程にて得られた撮像情報に基づき、被選別物S0を識別する識別工程と、識別工程にて得られた識別情報に基づき、被選別物S0を選別する選別工程とを備え、識別工程が、被選別物S0に関する学習情報に基づいて生成された推論モデルを用いて行われ、学習情報が、被選別物同士の隣接情報と、被選別物の分類情報とを含み、識別工程では、撮像情報と推論モデルとを用いて、被選別物S0を識別する。
【0085】
また、本実施形態にかかる選別装置は、被選別物S0を移送する搬送部130(移送手段)と、搬送部130における移送中に被選別物S0を撮像するX線識別装置10(撮像手段)と、X線識別装置10にて得られた撮像情報に基づき、被選別物S0を識別する識別手段(X線画像処理手段173および判別結果結合機構175の少なくとも一方から構成される識別手段)と、識別手段にて得られた識別信号(識別情報)に基づき、被選別物S0を選別する選別部160(選別手段)とを備え、識別手段が、被選別物に関する学習情報に基づいて生成された推論モデルを有し、学習情報が、被選別物同士の隣接情報と、被選別物の分類情報とを含み、識別手段が、撮像情報と推論モデルとを用いて、被選別物S0を識別する。
【0086】
本実施形態にかかる選別装置(選別方法)は、以上のように構成され機能するため、次のような効果を得ることができる。
本実施形態にかかる選別装置(選別方法)によれば、推論結果と撮像情報との比較を容易に行うことによって識別手段における識別信号生成時の演算処理の効率を高めることが可能となり、このようにして得られた識別信号に基づいて選別部の制御が実施される。したがって、本実施形態にかかる選別装置によれば、被選別物S0を選別する際の演算処理の効率化を図ることができる。
また、本実施形態にかかる選別装置(選別方法)によれば、識別信号生成時において隣接情報(隣接ラベリング部SP3)を用いるため、隣接部を不良部と誤認識せず、識別信号の識別精度を高めることができる。したがって、本実施形態にかかる選別装置によれば、この識別精度の高い識別信号を用いて高精度の選別処理を実施することができる。
さらに、本実施形態にかかる選別装置(選別方法)によれば、隣接情報を用いることによって、接触した状態の被選別物を別離した状態として認識可能であるため、より高精度に各被選別物を識別および選別することができる。
また、本実施形態にかかる選別装置(選別方法)によれば、先に説明した図5A~5Cに示すように、被選別物S0の識別時において物体の切り出し処理を必要としないため、識別処理の処理速度を高め、ひいては選別処理の速度も高めることができる。
【0087】
さらに、本実施形態にかかる選別装置は、被選別物S0を移送する搬送部130(移送手段)と、搬送部130における移送中に被選別物S0を撮像するX線識別装置10(撮像手段)と、X線識別装置10にて得られた撮像情報に基づき、被選別物S0を識別する識別手段(X線画像処理手段173および判別結果結合機構175の少なくとも一方から構成される識別手段)と、識別手段にて得られた識別信号(識別情報)に基づき、被選別物S0を選別する選別部160(選別手段)とを備え、識別手段が、被選別物に関する学習情報に基づいて生成された推論モデルを有し、学習情報が、被選別物同士の隣接情報と、被選別物の分類情報と、被選別物の背景情報とを含み、識別手段が、撮像情報と推論モデルとを用いて、被選別物S0を識別する。
【0088】
このような構成によれば、上述した種々の作用効果に加えて、以下のような作用効果を得ることができる。
本実施形態にかかる選別装置によれば、学習情報に被選別物の背景情報を含むため、識別信号生成時において、各被選別物を明確に識別し、高精度の識別信号を得ることができる。よって、かかる高精度の識別信号を用いて、高精度の選別処理を実現することができる。
また、本実施形態にかかる選別装置によれば、隣接情報を特定後、この隣接情報を背景情報に変換するため、より明確に各被選別物の識別処理を実施し、高精度の識別信号を得ることができる。よって、本実施形態にかかる選別装置によれば、高精度の選別処理を実現することができる。
【0089】
<第三実施形態>
図7は、本開示の第三実施形態にかかる選別装置(シュート式選別装置)の概略構成図を示したものである。具体的には、この図7は、図1図5Cにて説明した識別装置(識別手段)を搭載したシュート式選別装置201の概略構成図を示したものである。
【0090】
図7に示すように、本実施形態にかかる選別装置201は、被選別物S0を供給する被選別物供給部220、被選別物S0を移送するシュート230(搬送部、移送手段)、被選別物S0を光学検出する光学検出部250、被選別物S0の選別処理を行う選別部260、およびX線識別装置10等を用いて構成されている。
【0091】
本実施形態にかかる選別装置201においては、被選別物供給部220に貯留された被選別物S0がシュート230を成す傾斜板部231の一方端部に供給され、供給されて傾斜板部231上を自然落下中(流下中)の(移送工程中の)被選別物S0については、X線識別装置10による撮像処理(に基づく識別処理)が行われる。次いで、シュート230を落下する被選別物S0は、傾斜板部231の他方端部から落下軌跡Lに沿うように放出され、放出された被選別物S0の周囲には、光学検出部250および選別部260が設けられている。本実施形態にかかる選別装置201は、X線識別装置10および光学検出部250の少なくとも一方から得られる識別信号に基づき、選別部260が駆動すべく構成されており、被選別物S0は、選別部260によって、良品収容部281あるいは不良品排出部282のいずれかに選別処理される。
【0092】
本実施形態にかかる選別装置201を成す被選別物供給部220は、被選別物S0を貯留する貯留部や振動フィーダ等を用いて構成されている。この被選別物供給部220は、必要に応じて、被選別物供給部220からシュート230を成す傾斜板部231の一方端部に、被選別物S0を供給すべく構成されている。
【0093】
本実施形態にかかる選別装置101を成すシュート230は、傾斜板部231を用いて構成されている。傾斜板部231は、装置内の設置領域および自然落下する被選別物S0の落下速度(流下速度)等を考慮して、例えば、接地面(水平面)に対して30°~70°程度傾斜すべく設けられている。また、この傾斜板部231の傾斜角度は、被選別物の安息角よりも高角度で、且つ傾斜板部231上を流下する被選別物が跳ねないような角度に設定されてもよい。本実施形態において、シュート230を成す傾斜板部231は、接地面に対して約60度傾斜すべく構成されている。シュート230を成す傾斜板部231は、第一実施形態における搬送路91に相当する。
【0094】
本実施形態にかかるシュート230の略中央部には、第一実施形態にて説明したX線識別装置10が設けられている。より具体的には、図7に示すように、傾斜板部231(第一実施形態における搬送路91)上を自然落下する被選別物S0の上方位置にX線発生部11が設けられ、被選別物S0の下方位置(図7においては傾斜板部231の下方位置)にX線検出部12が設けられている。このX線識別装置10にて得られた撮像情報は、後述するX線画像処理手段273に送信される。また、本実施形態においては、X線の漏洩を防止するために、適宜隔壁が設けられている。
【0095】
本実施形態にかかる選別装置201を成す光学検出部250は、被選別物供給部220からシュート230(を成す傾斜板部231)の一方端部に供給された被選別物S0が、シュート230(傾斜板部231)の他方端部から放出された際の落下軌跡Lの周囲に設けられている。具体的には、受光部251(第一受光部251A,第二受光部251B)、複数の発光部253、各受光部251A,251Bに対応した背景部255等を用いて構成されている。本実施形態においては、図7に示すように、二つの受光部251A,251Bが落下軌跡Lを中心にして略対称の位置に設けられている。この受光部251は、固体撮像素子(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等)等を用いて構成されている。発光部253は、落下軌跡L上の光学検出位置Pに対して複数の角度から所定波長の光を照射すべく構成されている。受光部251は、落下軌跡L上の光学検出位置Pに到達した被選別物S0を撮像し、それぞれの被選別物S0に関する撮像情報(受光信号)が、後述する画像処理手段274に送信される。
【0096】
本実施形態にかかる選別装置201を成す選別部260は、ノズル部261および電磁弁262等を用いて構成されている。ノズル部261は、落下軌跡L上の被選別物S0に対して流体(例えば、空気)を噴射すべく構成されている。電磁弁262は、流体供給部(例えば、空気圧縮機等、図示省略)とノズル部261との間に設けられており、後述する判別結果結合機構275からの信号に基づき、ノズル部261への流体供給を制御すべく構成されている。
【0097】
また、図7に示すように、本実施形態にかかる選別装置201は、装置を使用する際の種々の信号等を入力可能なタッチパネル271を有しており、このタッチパネル271は選別装置201のCPU272に電気的に接続されている。また、このCPU272は、X線画像処理手段273および画像処理手段274に電気的に接続されている。さらに、X線画像処理手段273および画像処理手段274は、判別結果結合機構275に電気的に接続されている。
【0098】
X線画像処理手段273には、X線検出器11からの撮像情報が送信可能に構成され、画像処理手段274には、二つの受光部251A,251Bからの撮像情報が送信可能に構成されている。そして、判別結果結合機構275と電磁弁262とが電気的に接続されており、この判別結果結合機構275からの識別信号に基づき、電磁弁262を介してノズル部261からの流体の噴出状態(噴出時間、噴出タイミング等)が制御される。
【0099】
本実施形態にかかる選別装置201は、以上のように構成され、以下のように機能する。
【0100】
本実施形態においては、被選別物供給部220から供給された被選別物S0が、シュート230にて搬送(移送)され、搬送中(移送工程中)の被選別物S0に対してX線識別装置10による撮像処理(撮像工程)が行われる。次いで、本実施形態においては、搬送部230から放出された被選別物S0に対して光学検出部250による撮像処理(撮像工程)が行われる。次いで、本実施形態においては、X線識別装置10および光学検出部250の少なくとも一方の撮像情報に起因する識別信号に基づき、選別部260を用いた選別処理(選別工程)が行われる。つまり、識別信号に基づき電磁弁262を介してノズル部261から噴出される流体の噴出タイミングおよび噴出時間等が制御され、ノズル部261から噴出される流体によって、被選別物S0が良品収容部281あるいは不良品排出部282のいずれかに選別される。
【0101】
本実施形態にかかる選別装置201を使用する際、まずは、装置に設けられたCPU272に対して、所定の信号を入力可能なタッチパネル271を用いて、被選別物S0に関する種々の情報や選別条件(識別条件)等の作動条件情報を入力する。この作動条件情報は、CPU272を介して、X線画像処理手段273および画像処理手段274に送信される。この作動条件情報の内容に応じて、例えば、X線画像処理手段273においては、複数の推論モデルの中から一つの推論モデルの選択や所定の閾値の設定等が行われる。また、画像処理手段274においても、所定の閾値の設定等が行われる。本実施形態においては、CPU272(あるいはX線画像処理手段273および画像処理手段274の少なくとも一方)に、複数の推論モデルや複数の閾値(識別に用いる複数の閾値)等が実装可能に構成されている。
【0102】
本実施形態においては、タッチパネル271を用いて作動条件情報を入力した後、選別装置201を駆動させ、被選別物S0に関するX線検出器12からの撮像情報がX線画像処理手段273に送信され、被選別物S0に関する受光部251A,251Bからの撮像情報が画像処理手段274に送信される。X線画像処理手段273および画像処理手段274に送信された撮像情報は、適宜所定の演算処理を経て(あるいはそのままの撮像情報として)、判別結果結合機構275に送信される。判別結果結合機構275においては、被選別物S0の搬送速度等を考慮し、同一の被選別物S0に対するX線画像検出手段273からの撮像情報と画像処理手段274からの撮像情報とに基づく演算処理が行われ、その結合された判別結果に基づく識別信号(電磁弁制御信号)が電磁弁262に送信される。この電磁弁262を介してノズル部261からの流体の噴出状態が制御され、この噴出される流体によって、被選別物S0の選別処理が行われる。
【0103】
本実施形態においては、上述したように、第一実施形態にて説明したX線選別装置10(X線識別手段)と推論モデル等とを用いて選別装置201が構成され、この選別装置201において、撮像処理工程、推論モデル実施工程(推論結果)、フィルタリング処理工程、および分類特定工程等が行われて、被選別物S0の識別(識別処理)および選別(選別処理)が行われることとなる。
【0104】
本実施形態にかかる選別装置201は、図7等(X線識別装置10については図1図5C)を用いて説明したように構成され機能する。
この第三実施形態にかかる選別装置201と、先に説明した第二実施形態にかかる選別装置101とは、部分的な構成(例えば、搬送部の構成)は異なるが、識別手段および選別手段については同様の構成を有している。したがって、この第三実施形態にかかる選別装置201においても、第二実施形態にて説明した選別装置101と略同様の作用効果を有する。よって、ここでは、作用効果の詳細は割愛する。
【0105】
<その他の実施形態>
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0106】
上記実施形態においては、被選別物がナッツ、豆類、穀粒等である場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、被選別物は、野菜、菓子、加工食品等であってもよい。
【0107】
また、上記実施形態においては、電磁波がX線である場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、電磁波は、紫外線、可視光線、近赤外線、赤外線、マイクロ波等であってもよい。
【0108】
さらに、上記実施形態においては、識別方法、選別方法、および選別装置を構成する「推論モデル」が、ディープラーニングを用いて得られた推論モデルである場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、「推論モデル」は、サポートベクターマシン(SVM)、単純ベイズ分類器、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、ディープラーニング、K近傍法、AdaBoost、バギング、C4.5、カーネル法、確率的勾配降下法、ラッソ回帰、リッジ回帰、Elastic Net、内挿法、および協調フィルタリングの少なくとも一つ以上を組み合わせた学習プログラムを用いて構成されてもよい。
【0109】
また、上記実施形態においては、選別装置の一部を成すX線識別手段を用いて推論モデルを構築する場合(X線識別手段を含めた選別装置の一部が機械学習装置として機能する場合)について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、選別装置外に設けられたX線識別手段等を用いて機械学習装置を構成し、この選別装置外の機械学習装置を用いて推論モデルを構築し、構築された推論モデルを選別装置に搭載すべく構成してもよい。
【0110】
さらに、上記実施形態においては、選別装置の一部を成すX線識別手段とPCとを用いて推論モデルを構築する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、選別装置を成すX線識別手段あるいは外部に設けられた同等の装置を用いて必要な撮像情報を収集し、収集された撮像情報等と選別装置内部の機能とを用いて推論モデルを構築してもよい。つまり、必要に応じて、選別装置自身あるいはその一部にて機械学習装置を構成し、選別装置内にて、推論モデルの構築や更新等を行い、適宜必要な推論モデルを選別装置(を成す識別手段)に搭載すべく構成してもよい。
【0111】
また、上記実施形態においては、推論モデルを構築し、構築された推論モデルを用いて、被選別物の識別処理および選別処理を行う場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、本発明は、推論モデルを構築することなく、識別処理および選別処理を行う際において、撮像情報である「被選別物同士の隣接情報」と「被選別物の分類情報」とを用いてもよい。つまり、これらの「被選別物同士の隣接情報」と「被選別物の分類情報」とに関して所定の閾値情報を設定し、この閾値情報と、被選別物に関する「被選別物同士の隣接情報」および「被選別物の分類情報」との対比を行うことにより、適宜、被選別物について良品あるいは不良品の識別処理および選別処理を行う構成であってもよい。
さらに、本発明は、推論モデルを構築することなく、識別処理および選別処理を行う際において、撮像情報である「被選別物同士の隣接情報」と「被選別物の分類情報」と「被選別物の背景情報」とを用いてもよい。つまり、上述した「被選別物同士の隣接情報」および「被選別物の分類情報」に加え、「被選別物の背景情報」についても所定の閾値情報を設定し、これらの閾値情報と、被選別物に関する「被選別物同士の隣接情報」「被選別物の分類情報」および「被選別物の背景情報」との対比を行うことにより、適宜、被選別物について良品あるいは不良品の識別処理および選別処理を行う構成であってもよい。
【0112】
また、上記実施形態においては、学習用画像(学習情報)を生成する際のトリミング処理工程にて、40×40ピクセルのサイズで、トリミング処理が行われる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。このトリミング処理工程時のトリミングのサイズは、先にも説明したように、被選別物の単体の大きさと同程度の大きさであって、被選別物の形状によって適宜定められる。したがって、例えば、被選別物の単体の大きさや形状に応じて、32×32ピクセル、64×64ピクセル等のサイズにて、トリミング処理工程を行ってもよい。
【0113】
また、上記実施形態においては、分類情報が良部情報と不良部情報とである場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、分類情報として、良部や不良部以外の種々の情報を適用可能である。したがって、例えば、分類情報として、所定の被選別物の品質の程度毎の分類や、被選別物の種類に関する分類等を用いることも可能である。
【0114】
また、CPU172、X線画像処理手段173、画像処理手段174、判別結果結合機構175の機能の少なくとも一部は、選別機10の動作の少なくとも一部を制御するコントローラによって実現されてもよい。この点は、CPU272、X線画像処理手段273、画像処理手段274、判別結果結合機構275の機能の少なくとも一部についても同様である。この場合、コントローラの各機能は、所定のプログラムをCPUが実行することによって実現されてもよいし、専用回路によって実現されてもよいし、これらの組み合わせによって実現されてもよい。また、単一のコントローラが使用されてもよい。あるいは、複数の機能を分散化するために複数のコントローラが使用され、複数のコントローラの全体によって、必要な複数の機能が実現されてもよい。
【0115】
また、推論モデルを構築することなく、識別処理および選別処理を行う場合には、例えば、「被選別物同士の隣接情報」決定用と「被選別物の分類情報」決定用のそれぞれのテンプレートを複数用意しておいてもよい。そのようなテンプレートは、図3Cに示した第一ラベリング画像331~第六ラベリング画像336と同一または類似であってもよい。テンプレートを使用する場合、画像処理でテンプレートマッチングを行い、「被選別物同士の隣接情報」と「被選別物の分類情報」のそれぞれに関して、各テンプレートと、生画像510(または、生画像510に対して正規化処理が行われた画像)と、の相関係数を求め、当該相関係数から「被選別物同士の隣接情報」および「被選別物の分類情報」を決定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本開示は、被選別物そのものの状態、および複数の被選別物同士の関係を適切に把握して、かかる把握した情報に基づき、被選別物を適切に識別する、被選別物の識別方法を提供すると共に、かかる識別情報に基づき、被選別物を適切に識別して選別する、被選別物の選別方法および選別装置を提供することを目的としてなされたものである。
【0117】
従来から、検査対象内部の形状検査等を行うためにX線等を利用した装置は知られているが、基本的に、色情報のないグレースケール画像の濃淡を二値化することにより、内部形状異常部等を抽出していた。しかしながら、このような従来装置においては、検査対象自身の異常部と検査対象の周辺部分(検査対象同士の隣接状態等)とを明確に認識することは困難であった。
【0118】
このような問題点を解決すべく、例えば、本開示にかかる識別方法は、次のように構成される。
本実施形態にかかる被選別物の識別方法は、被選別物を移送する移送工程と、移送工程中における被選別物を撮像する撮像工程と、撮像工程にて得られた撮像情報に基づき、被選別物を識別する識別工程とを備え、識別工程が、被選別物に関する学習情報に基づいて生成された推論モデルを用いて行われ、学習情報が、被選別物同士の隣接情報と、被選別物の分類情報と、被選別物の背景情報(背景ラベリング部SP4)とを含み、識別工程では、撮像情報と推論モデルとを用いて、被選別物を識別すべく構成されている。
そして、上記識別方法を用いて、本開示にかかる選別方法および選別装置が構成される。
【0119】
以上のとおり、本開示にかかる識別方法、選別方法、および選別装置は、既存の装置(従来技術)の問題点を適切に解決しているため、産業上の利用可能性は高いと考えられる。
【符号の説明】
【0120】
10…X線識別手段(X線識別装置、識別装置、撮像手段)
11…X線発生部(撮像手段を成すX線発生部)
11a…X線
12…X線検出部(撮像手段を成すX線検出部)
91…搬送路(移送手段、移送手段を成す搬送路)
101…選別装置(ベルト式選別装置)
120…被選別物供給部
130…搬送部(移送手段)
131…搬送ベルト(移送手段、移送手段を成す搬送ベルト、搬送路)
132、133…ローラ
134…駆動モータ
150…光学検出部
151…受光部
151A…第一受光部
151B…第二受光部
153…発光部
155…背景部
160…選別部(選別手段)
161…ノズル部
162…電磁弁
171…タッチパネル
172…CPU(中央演算処理装置)
173…X線画像処理手段
174…画像処理手段
175…判別結果結合機構
181…良品収容部
182…不良品排出部
201…選別装置(シュート式選別装置)
220…被選別物供給部
230…シュート(搬送部、移送手段)
231…傾斜板部(移送手段、移送手段を成す傾斜板部、搬送路)
250…光学検出部
251…受光部
251A…第一受光部
251B…第二受光部
253…発光部
255…背景部
260…選別部(選別手段)
261…ノズル部
262…電磁弁
271…タッチパネル
272…CPU(中央演算処理装置)
273…X線画像処理手段
274…画像処理手段
275…判別結果結合機構
281…良品収容部
282…不良品排出部
310…生画像
320…トリミング画像群
321~326…第一トリミング画像~第六トリミング画像(トリミング画像)
330…ラベリング画像群(学習用画像、学習情報)
331~336…第一ラベリング画像~第六ラベリング画像(ラベリング画像)(学習用画像、学習情報)
510…生画像(撮像情報)
520…推論結果画像
530…フィルタ処理後画像
S、SS、S0…被選別物
S1…良部情報(分類情報)
S2…不良部情報(欠陥情報)(分類情報)
S3…隣接情報
S4…背景情報
SP1、SSP1…良部ラベリング部(分類情報)
SP2、SSP2…不良部ラベリング部(分類情報)
SP3、SSP3…隣接ラベリング部(隣接情報)
SP4、SSP4…背景ラベリング部(背景情報)
C1…良部(良部ラベリング部、分類情報)
C2…不良部(不良部ラベリング部、分類情報)
C4…背景部(背景ラベリング部、背景情報)
CA、CB…被選別物
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7