(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240604BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240604BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60R16/02 645Z
H02J7/00 302B
H02J1/00 304H
(21)【出願番号】P 2023021907
(22)【出願日】2023-02-15
(62)【分割の表示】P 2021096579の分割
【原出願日】2018-07-13
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2017140058
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】塩見 剛
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-032044(JP,A)
【文献】特開2013-001141(JP,A)
【文献】特表2017-507398(JP,A)
【文献】特開2014-234000(JP,A)
【文献】特許第4053447(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0288744(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0032556(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02J 7/00
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のイグニッション状態に連動して電源供給される第1の電源供給系統(19)と、
前記イグニッション状態に関わらず電源供給される第2の電源供給系統(20)と、
前記第1の電源供給系統と前記第2の電源供給系統の両方に接続される第1の機器制御部(16)の動作及び前記第1の電源供給系統に接続されないと共に前記第2の電源供給系統に接続される第2の機器制御部(17)の動作に係る演算を行う演算部(15)と、を備え、
前記第1の機器制御部は、利便性や快適性よりも安全性や安心性が要求される特性を有する安全系の車載機器(2,3)の動作を制御し、
前記第2の機器制御部は、安全性や安心性よりも利便性や快適性が要求される特性を有する非安全系の車載機器(4)の動作を制御し、
前記演算部は、
当該演算部から前記第1の機器制御部に
命令を出力させるアプリを起動する第1のオペレーティングシステム(38)及び
当該演算部から前記第2の機器制御部に
命令を出力させるアプリを起動する第2のオペレーティングシステム(39)と、第1のリソース(36)及び第2のリソース(37)とを対応付ける仮想化モジュール(43)を有し、
前記仮想化モジュール(43)は、前記第1のオペレーティングシステムが起動する場合、又は前記第2のオペレーティングシステム起動する場合の何れでも、前記第1のリソース
の処理能力と前記第2のリソース
の処理能力の両方が発揮されるように仮想化処理を行う車両用制御装置。
【請求項2】
車両のイグニッション状態に連動して電源供給される第1の電源供給系統(19)と、
前記イグニッション状態に関わらず電源供給される第2の電源供給系統(20)と、
前記第1の電源供給系統と前記第2の電源供給系統の両方に接続される第1の機器制御部(16)の動作及び前記第1の電源供給系統に接続されないと共に前記第2の電源供給系統に接続される第2の機器制御部(17)の動作に係る演算を行う演算部(15)と、を備え、
前記第1の機器制御部は、利便性や快適性よりも安全性や安心性が要求される特性を有する安全系の車載機器(2,3)の動作を制御し、
前記第2の機器制御部は、安全性や安心性よりも利便性や快適性が要求される特性を有する非安全系の車載機器(4)の動作を制御し、
前記演算部は、当該演算部から前記第1の機器制御部に命令を出力させるアプリを起動する第1のオペレーティングシステム(38)及び当該演算部から前記第2の機器制御部に命令を出力させるアプリを起動する第2のオペレーティングシステム(39)と、第1のリソース(36)及び第2のリソース(37)とを対応付ける仮想化モジュール(43)を有し、
前記仮想化モジュール(43)は、前記第1のオペレーティングシステムが
前記第1の機器制御部に対応する第1の制御アプリケーション(40)を起動する場合、
又は前記第2のオペレーティングシステムが前記第2の機器制御部に対応する第2の制御アプリケーション(41)を起動する場合の何れでも、前記第1のリソース
の処理能力と前記第2のリソース
の処理能力
の両方が発揮されるように仮想化処理を行
う車両用制御装置。
【請求項3】
前記第1のオペレーティングシステム、又は前記第2のオペレーティングシステムの何れか一方に異常が発生した場合に、異常が発生した一方のオペレーティングシステムのみを再起動し、他方のオペレーティングシステムの動作を維持する請求項1又は2に記載した車両用制御装置。
【請求項4】
前記第1の機器制御部は、前記安全系の車載機器として映像を表示する表示器を対象とし、前記表示器における車両情報の表示制御を行う表示制御部であり、
前記第2の機器制御部は、前記非安全系の車載機器としてアプリを実行するアプリ実行機器を対象とし、前記アプリ実行機器におけるアプリの機能制御を行う機能制御部である請求項1から3の何れか一項に記載した車両用制御装置。
【請求項5】
前記第1の機器制御部は、
複数の表示器を対象とする請求
項4に記載した車両用制御装置。
【請求項6】
前記第1の機器制御部と前記第2の機器制御部は、一体化されている請求項1から5の何れか一項に記載した車両用制御装置。
【請求項7】
前記第1の電源供給系統に接続される第1の電源入力部(24)と、
前記第2の電源供給系統に接続される第2の電源入力部(26)と、を備え、
前記第1の機器制御部は、
前記第1の電源入力部及び前記第2の電源入力部からダイオードOR回路(33)を介して動作電源が供給される請求項
1から6の何れか一項に記載した車両用制御装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記第1の電源供給系統及び前記第2の電源供給系統から昇降圧回路(30)を介して動作電源が供給され、
前記第2の機器制御部は、前記第2の電源供給系統から降圧回路(34)を介して動作電源が供給される請求項1から7の何れか一項に記載した車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、様々な車載機器の動作を制御する様々な車両用制御装置が搭載されている。制御対象となる車載機器に求められる要件及び特性が異なる事情から、バッテリから車載機器への電源供給系統として複数の系統が設けられている。具体的には、バッテリの出力電源がイグニッション状態に連動するスイッチを介して供給されるイグニッション系統と、バッテリの出力電源が上記したスイッチを介さずに直接供給されるバッテリ系統とが設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
例えばメータ装置等の利便性や快適性よりも安全性や安心性が求められる安全系の車載機器では、イグニッションのオンだけでなくオフでも所定の動作を行うことが求められている。そのため、安全系の車載機器では、イグニッション系統とバッテリ系統の両方からの電源供給を受けるように接続され、イグニッションのオンによりイグニッション系統とバッテリ系統の両方が通電状態である場合と、イグニッションのオフによりバッテリ系統のみが通電状態である場合とで、その動作状態を切替可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、部品点数の削減や複数の車載機器間の連携強化等を目的とし、その制御機能の統合が検討されている。そのため、例えば従来は表示装置と共にメータモジュール内に搭載されていたメータ装置の表示制御機能を、同様に表示制御機能を有するカーナビゲーション装置に統合することも考えられる。
【0006】
ところで、車載機器は、前述した安全系の車載機器と、安全性や安心性よりも利便性や快適性が求められる例えばカーナビゲーション装置等の非安全系の車載機器とに大別される。しかしながら、前述したように安全系の車載機器の多くがイグニッション系統とバッテリ系統の両方からの電源供給を受けるように接続されるのに対し、非安全系の車載機器の多くは、イグニッションのオフで動作することを想定していないので、バッテリ系統からの電源供給を受けるが、イグニッション系統からの電源供給を受けないように接続される。そのため、例えばメータ装置の表示制御機能を、従前のカーナビゲーション装置に統合しようとすると、従前のメータ装置に求められていた動作を実現不能となることが懸念される。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安全系の車載機器に求められる動作を維持したまま、その安全系の車載機器の制御機能を非安全系の車載機器に適切に統合することができる車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、車両のイグニッション状態に連動して電源供給される第1の電源供給系統(19)と、前記イグニッション状態に関わらず電源供給される第2の電源供給系統(20)と、前記第1の電源供給系統と前記第2の電源供給系統の両方に接続される第1の機器制御部(16)の動作及び前記第1の電源供給系統に接続されないと共に前記第2の電源供給系統に接続される第2の機器制御部(17)の動作に係る演算を行う演算部(15)と、を備える。前記第1の機器制御部は、利便性や快適性よりも安全性や安心性が要求される特性を有する安全系の車載機器(2,3)の動作を制御する。前記第2の機器制御部は、安全性や安心性よりも利便性や快適性が要求される特性を有する非安全系の車載機器(4)の動作を制御する。前記演算部は、当該演算部から前記第1の機器制御部に命令を出力させるアプリを起動する第1のオペレーティングシステム(38)及び当該演算部から前記第2の機器制御部に命令を出力させるアプリを起動する対応する第2のオペレーティングシステム(39)と、第1のリソース(36)及び第2のリソース(37)とを対応付ける仮想化モジュール(43)を有する。前記仮想化モジュール(43)は、前記第1のオペレーティングシステムが前記第1の機器制御部に対応する第1の制御アプリケーション(40)を起動する場合、又は前記第2のオペレーティングシステムが前記第2の機器制御部に対応する第2の制御アプリケーション(41)を起動する場合の何れでも、前記第1のリソースの処理能力と前記第2のリソースの処理能力の両方が発揮されるように仮想化処理を行う。
【0009】
仮想化モジュールにより、第1のオペレーティングシステムが第1の機器制御部に対応する第1の制御アプリケーションを起動する場合、又は第2のオペレーティングシステムが第2の機器制御部に対応する第2の制御アプリケーションを起動する場合の何れでも、第1のリソースと第2のリソースのそれぞれの処理能力を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態を示し、車両用制御装置及び周辺構成を示す図
【
図2】車両用制御装置の内部構成及び電源供給系統を示す機能ブロック図
【
図4】インフォテイメント制御部が有する機能を示す図
【
図5】表示制御部及びインフォテイメント制御部の要件及び特性を示す図
【
図6】メータ装置の動作を制御する車両用制御装置の機能ブロック図
【
図7】インフォテイメント装置の動作を制御する車両用制御装置の機能ブロック図
【
図9】第2の実施形態を示し、車両用制御装置の内部構成及び電源供給系統を示す機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について
図1から
図8を参照して説明する。
車両用制御装置1は、安全系の車載機器の動作を制御する機能と、非安全系の車載機器の動作を制御する機能とを統合し、HMI(Human Machine Interface)を制御する装置である。
【0012】
安全系の車載機器は、利便性や快適性よりも安全性や安心性が要求される特性を有する車載機器であり、正常に動作することで高い安全性や安心性を運転者に対して提供する車載機器である。安全系の車載機器としては、例えば車両の走行状態を表示するメータ装置、車両の走行状態を含む車両状態を表示するセンターディスプレイ装置やHUD(Head-Up Display)、従前のミラーに代わってカメラを用いて撮影した車両周辺映像を表示する電子ミラー等が挙げられる。
【0013】
非安全系の車載機器は、安全性や安心性よりも利便性や快適性が要求される特性を有する車載機器であり、正常に動作することで高い利便性や快適性を運転者に対して提供する車載機器である。非安全系の車載機器としては、例えば経路案内等を行うカーナビゲーション装置、楽曲やラジオ放送等を音声出力するオーディオ装置、それらが一体化したインフォテイメント装置等が挙げられる。
【0014】
以下、本実施形態では、安全系の車載機器としてメータ装置及びセンターディスプレイ装置を例示し、非安全系の車載機器としてインフォテイメント装置を例示して説明する。尚、安全系と非安全系の両方の特性を有する車載機器を対象とし、その車載機器の動作を制御する構成としても良い。例えばセンターディスプレイ装置が安全系の機能ブロックと非安全系の機能ブロックを有する車載機器あれば、安全系の機能ブロックについては安全系の車載機器として動作を制御し、非安全系の機能ブロックについては非安全系の車載機器として動作を制御しても良い。
【0015】
図1に示すように、車両用制御装置1には、各種映像を表示するメータ装置2(第1の車載機器、安全系の車載機器、表示器に相当する)と、各種映像を表示するセンターディスプレイ装置3(第1の車載機器、安全系の車載機器、表示器に相当する)と、各種アプリを実行するインフォテイメント装置4(第2の車載機器、非安全系の車載機器、アプリ実行機器に相当する)とが接続されている。車両用制御装置1とメータ装置2は、映像信号線5を介して接続されている。車両用制御装置1から送信された制御信号や映像信号は、映像信号線5を介してメータ装置2に伝送される。映像信号線5は例えば同軸ケーブルである。車両用制御装置1とセンターディスプレイ装置3は、映像信号線6を介して接続されている。車両用制御装置1から送信された制御信号や映像信号は、映像信号線6を介してセンターディスプレイ装置3に伝送される。映像信号線6は例えば同軸ケーブルやシールドツイストペアケーブルである。
【0016】
インフォテイメント装置4は、AUX7、デッキ8及びアンプ9を有する。車両用制御装置1とAUX7は、音声信号線10を介して接続されている。車両用制御装置1から送信された音声信号は、音声信号線10を介してAUX7に伝送される。車両用制御装置1とデッキ8は、音声信号線11を介して接続されている。車両用制御装置1から送信された制御信号や音声信号は、音声信号線11を介してデッキ8に伝送される。音声信号線11は例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブルである。車両用制御装置1とアンプ9は、CAN(Controller Area Network)(登録商標)12及び音声信号線13を介して接続されている。車両用制御装置1から送信された制御信号は、CAN12を介してアンプ9に伝送され、車両用制御装置1から送信された音声信号は、音声信号線13を介してアンプ9に伝送される。
【0017】
車両用制御装置1は、車両ネットワークを構成するCAN14を介して車両に搭載されている各種センサや各種ECU(Engine Control Unit)等と接続されている。車両用制御装置1から送信された各種信号は、CAN14を介して各種センサや各種ECUに伝送され、各種センサや各種ECUから送信された各種信号は、CAN14を介して車両用制御装置1に伝送される。
【0018】
図2に示すように、車両用制御装置1は、マイコン15(演算部に相当する)と、表示制御部16(第1の機器制御部に相当する)と、インフォテイメント制御部17(第2の機器制御部、機能制御部に相当する)とを有する。表示制御部16とインフォテイメント制御部17は、車両用制御装置1の筐体内に配置されており、車両用制御装置1の筐体内において一体化されている。ここでいう一体化とは、表示制御部16を構成するハードウェアとインフォテイメント制御部17を構成するハードウェアが同一基板に配置されていることだけでなく、それらのハードウェアが別々の基板に配置されていることも含み、それらのハードウェアが筐体内に共存していることを意味する。
【0019】
表示制御部16は、各種車両情報の表示制御を行う機能ブロックであり、その表示制御に必要な各種電子部品を搭載している。即ち、表示制御部16は、
図3に示すように、各種車両情報の表示制御として、例えば速度の表示制御、エンジン回転数の表示制御、走行距離の表示制御、ギア情報の表示制御、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)状態の表示制御等を行う。表示制御部16は、マイコン15から入力される命令にしたがい、各種車両情報を含む映像の生成、映像の表示タイミングの判定、映像の消去タイミングの判定等を行い、制御信号や映像信号をメータ装置2のディスプレイ2aやセンターディスプレイ装置3に送信し、各種車両情報の表示制御を行う。メータ装置2のディスプレイ2aやセンターディスプレイ装置3は、表示制御部16から制御信号や映像信号を受信すると、その受信した制御信号や映像信号にしたがって各種車両情報を表示する。尚、表示制御の対象となる車両情報は
図3に例示した車両情報に限らない。
【0020】
インフォテイメント制御部17は、各種アプリの機能制御を行う機能ブロックであり、その機能制御に必要な各種電子部品を搭載している。即ち、インフォテイメント制御部17は、
図4に示すように、各種アプリの機能制御として、例えばオーディオの機能制御、ナビゲーションの機能制御、電話/WiFi(登録商標)の機能制御、OTA(Over The Air)の機能制御、テレマティックスの機能制御、音声認識の機能制御、スマートフォン連携の機能制御等を行う。インフォテイメント制御部17は、マイコン15から入力される命令にしたがい、各種アプリの起動タイミングの判定、機能の停止タイミングの判定等を行い、制御信号をインフォテイメント装置4に送信し、各種アプリの機能制御を行う。インフォテイメント装置4は、インフォテイメント制御部17から制御信号を受信すると、その受信した制御信号にしたがって経路案内を行ったり楽曲やラジオ放送を音声出力したりする等の動作を行う。尚、機能制御の対象となるアプリは
図4に例示したアプリに限らない。
【0021】
車両用制御装置1には、図示しないコネクタが設けられており、車両に搭載されているバッテリ18の出力電源が当該コネクタを介して供給される。バッテリ18から車両用制御装置1への電源供給系統としては、バッテリ18の出力電源がイグニッション状態に連動するスイッチを介して供給されるイグニッション系統19(第1の電源供給系統に相当する)と、バッテリ18の出力電源が上記したスイッチを介さずに直接供給されるバッテリ系統20(第2の電源供給系統に相当する)との2本の電源供給系統19,20が設けられている。尚、ここで言うイグニッションとは、内燃機関を有する車両に限定されるものではなく、例えば電気自動車(EV:Electric Vehicle)やハイブリッド車(HV:Hybrid Vehicle)の発進準備完了状態を示すレディオンやパワーオンを含むものであり、本実施形態では、これらの状態に連動して電源供給される電源供給系統をイグニッション系統と総称する。
【0022】
バッテリ18の正端子は、着脱可能なヒューズ21を介して2本の電源供給系統19,20に接続されており、バッテリ18の負端子は接地されている。イグニッション系統19は、ユーザが操作可能なキースイッチに連動するスイッチ22と着脱可能なヒューズ23(第1の通電部材に相当する)を有し、車両用制御装置1のイグニッション電源入力端子24(第1の電源入力部に相当する)とメータ装置2とセンターディスプレイ装置3に接続されている。キースイッチは、オフ、アクセサリ、オン、スタートのそれぞれの操作状態にユーザが切替可能なスイッチであり、ユーザがオン又はスタートの操作状態に切替えると、オンして通電状態に切替わる。キースイッチがオンして通電状態に切替わることで、バッテリ18の出力電源がスイッチ22及びヒューズ23を介して車両用制御装置1のイグニッション電源入力端子24とメータ装置2とセンターディスプレイ装置3にイグニッション電源IGとして供給される。即ち、ヒューズ21,23が正常に装着されて通電状態であることと、ユーザがキースイッチをオン又はスタートの操作状態に切替えたこととを条件とし、イグニッション電源IGの電圧が車両用制御装置1のイグニッション電源入力端子24とメータ装置2とセンターディスプレイ装置3に印加される。
【0023】
バッテリ系統20は、着脱可能なヒューズ25(第2の通電部材に相当する)を有し、車両用制御装置1のバッテリ電源入力端子26(第2の電源入力部に相当する)とメータ装置2とセンターディスプレイ装置3とインフォテイメント装置4に接続されている。キースイッチの状態に拘らず、バッテリ18の出力電源がヒューズ25を介して車両用制御装置1のバッテリ電源入力端子26とメータ装置2とセンターディスプレイ装置3とインフォテイメント装置4にバッテリ電源+Bとして供給される。即ち、ユーザがキースイッチを何れの操作状態に切替えたか否かに拘らず、ヒューズ21,25が正常に装着されて通電状態であることのみを条件とし、バッテリ電源+Bの電圧が車両用制御装置1のバッテリ電源入力端子26とメータ装置2とセンターディスプレイ装置3とインフォテイメント装置4に印加される。
【0024】
例えば車両を船舶に積載して輸送する際には、車載機器に流れる暗電流に起因するバッテリ上がりを防ぐ目的で、バッテリ系統20のヒューズ25を取り外すことがある。しかしながら、船舶に対する車両の積み下ろし時に車両が自走するためには、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3が動作することが必須である。即ち、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3は、輸送中に動作することが必須であるので、バッテリ系統20だけではなくイグニッション系統19からも電源供給を受けるように接続されている。一方、インフォテイメント装置4は、輸送中に動作することが必須でないので、イグニッション系統19からの電源供給が必須でなく、バッテリ系統20のみから電源供給を受けるように接続されている。即ち、本実施形態では、バッテリ系統20のヒューズ25が取り外されることで、バッテリ18から車載機器への電源の供給経路を遮断し、暗電流に起因するバッテリ上がりを防ぎつつ、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3の動作電源を確保し、車両の自走時においてメータ装置2やセンターディスプレイ装置3の動作を可能としている。
【0025】
本実施形態では、前述したように安全系の車載機器としてメータ装置2及びセンターディスプレイ装置3を例示しているので、車両を積み下ろす際の車両の自走時においてメータ装置2とセンターディスプレイ装置3の両方の動作が必須である構成を説明している。これに対し、例えばメータ装置2が速度等の安全系の情報の表示に特化し、センターディスプレイ装置3がインフォテイメント装置4と連携して非安全系の情報の表示に特化する構成であれば、車両を積み下ろす際の車両の自走時においてメータ装置2だけの動作が必須であれば良い。即ち、車両を積み下ろす際の車両の自走時においてメータ装置2とセンターディスプレイ装置3の両方の動作が必須である構成に限らず、メータ装置2だけの動作が必須である構成でも良い。
【0026】
又、前述した[背景技術]で説明したように、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3では、イグニッション系統19がオンである場合とオフである場合とで動作状態を切替えることが求められている。例えばイグニッション系統19がオンである場合には、速度等の車両状態を示す表示を行い、イグニッション系統19がオフである場合には、車両のドアが開けられたときに車両ロゴ等を表示する等の所謂ウェルカム表示を行うことが求められている。
【0027】
このようにメータ装置2及びセンターディスプレイ装置3とインフォテイメント装置4とでは、それぞれに求められる要件及び特性が異なるので、メータ装置2及びセンターディスプレイ装置3の動作を制御する表示制御部16とインフォテイメント装置4の動作を制御するインフォテイメント制御部17とでも、それぞれに求められる要件及び特性が異なる。表示制御部16及びインフォテイメント制御部17のそれぞれに求められる要件及び特性を
図5に示している。
【0028】
表示制御部16は、その制御対象であるメータ装置2及びセンターディスプレイ装置3が上記したようにイグニッション系統19とバッテリ系統20の両方から電源供給可能に接続されているので、メータ装置2及びセンターディスプレイ装置3と同様にしてイグニッション系統19とバッテリ系統20の両方から電源供給可能であることが要件とされている。又、表示制御部16は、動作電圧として4ボルト以上、動作電流として2アンペア以下であることが要件とされている。一般的にエンジンのクランキング時には、スタータモータの駆動に伴う突入電流により車両内の各電源供給系統に供給される電圧が低下することが知られている。しかしながら、メータ装置2及びセンターディスプレイ装置3ではクランキング動作と並行して速やかに表示を行うことが必須であるので、表示制御部16の動作電圧の下限値は後述するインフォテイメント制御部17の動作電圧よりも低い値に設定されている。又、メータ装置2及びセンターディスプレイ装置3が民生技術対応及び時代進化対応よりも品質が優先されているので、表示制御部16では品質が高いことが望まれる。
【0029】
一方、インフォテイメント制御部17は、その制御対象であるインフォテイメント装置4が上記したようにバッテリ系統20のみから電源供給可能に接続されているので、インフォテイメント装置4と同様にしてバッテリ系統20のみから電源供給可能であることが要件とされている。又、インフォテイメント制御部17は、動作電圧として10ボルト以上、動作電流として15アンペア以下であることが要件とされている。又、インフォテイメント装置4が品質よりも民生技術対応及び時代進化対応が優先されているので、インフォテイメント制御部17では民生技術対応及び時代進化対応が容易であることが望まれる。
【0030】
イグニッション電源入力端子24は、車両用制御装置1の内部においてダイオード27のアノード端子に接続されている。ダイオード27のカソード端子は、共通接続点28,29を介して昇降圧回路30の入力側と降圧回路31の入力側に接続されている。バッテリ電源入力端子26は、車両用制御装置1の内部においてダイオード32のアノード端子に接続されていると共に、降圧回路34の入力側に接続されている。ダイオード32のカソード端子は、共通接続点28,29を介して昇降圧回路30の入力側と降圧回路31の入力側に接続されている。ダイオード27,32によりダイオードOR回路33が構成されており、ダイオード27の出力電圧とダイオード32の出力電圧が昇降圧回路30及び降圧回路31に選択的に印加される。又、バッテリ電源+Bの電圧が降圧回路34に直接印加される。尚、バッテリ18から車両用制御装置1への電源供給系統を含む部分により電源供給回路35が構成されている。
【0031】
マイコン15は、その電源入力端子が昇降圧回路30の出力側に接続されており、昇降圧回路30からの昇圧後の出力電源を動作電源として動作する。表示制御部16は、その電源入力端子が降圧回路31の出力側に接続されており、降圧回路31からの降圧後の出力電源を動作電源として動作する。インフォテイメント制御部17は、その電源入力端子が降圧回路34の出力側に接続されており、降圧回路34の降圧後の出力電源を動作電源として動作する。
【0032】
マイコン15は、ハードウェアの構成として、2つのコア36,37(リソースに相当する)を有する。マイコン15は、ソフトウェアの構成として、コア36,37で実行されるリアルタイムオペレーティングシステム(以下、RTOSと称する)38(安全系のOSに相当する)と、汎用オペレーティングシステム(以下、汎用OSと称する)39(非安全系のOSに相当する)と、RTOS38が起動するメータアプリ40(安全系のアプリに相当する)と、汎用OS39が起動するインフォテイメントアプリ41(非安全系のアプリに相当する)と、メータアプリ40とインフォテイメントアプリ41とに共通するHMI42とを有する。汎用OS39は例えばLinux(登録商標)等である。インフォテイメントアプリ41は、カーナビゲーションアプリやオーディオアプリを含むアプリである。
【0033】
マイコン15において、RTOS38及び汎用OS39と2つのコア36,37は仮想化モジュール43により対応付けられる。仮想化モジュール43は、RTOS38がメータアプリ40を起動する際にはコア36,37が動作し、汎用OS39がインフォテイメントアプリ41を起動する際にはコア36,37が動作するようにRTOS38及び汎用OS39とコア36,37とを対応付ける。即ち、仮想化モジュール43は、メータアプリ40及びインフォテイメントアプリ41の何れが起動するときでもコア36の処理能力とコア37の処理能力の両方が発揮されるように仮想化処理を行う。RTOS38がメータアプリ40を起動することで、上記したようにマイコン15から表示制御部16に命令が出力され、表示制御部16からメータ装置2及びセンターディスプレイ装置3に制御信号や映像信号が送信される。又、汎用OS39がインフォテイメントアプリ41を起動することで、上記したようにマイコン15からインフォテイメント制御部17に命令が出力され、インフォテイメント制御部17からインフォテイメント装置4に制御信号が送信される。
【0034】
マイコン15のコア36、RTOS38、メータアプリ40、HMI42、仮想化モジュール43と、表示制御部16と、昇降圧回路30と、降圧回路31とを構成要素として含むドメイン(
図2中で二点鎖線A1にて示す範囲)は、安全系のドメインである。一方、マイコン15のコア37、汎用OS39、インフォテイメントアプリ41、HMI42、仮想化モジュール43と、インフォテイメント制御部17と、降圧回路34とを構成要素として含むドメイン(
図2中で二点鎖線A2にて示す範囲)は、非安全系のドメインである。このようにマイコン15の内部でコア36,37とRTOS38、汎用OS39とを対応付ける仮想化する技術を用い、高い品質が要求されるメータアプリ40を実行するRTOS38と、民生技術対応及び時代進化対応の容易さが要求されるインフォテイメントアプリ41を実行する汎用OS39とを1つのマイコン15上に共存させ、それぞれのドメイン間の依存関係を必要最低限としながら高度なHMI連携を実現している。
【0035】
ここで、メータ装置2及びセンターディスプレイ装置3の動作を制御する車両用制御装置とインフォテイメント装置4の動作を制御する車両用制御装置とを単純に統合した構成を比較対象とし、
図2に示した本実施形態の構成と比較対象の構成との相違について説明する。
【0036】
図6に示すように、メータ装置2及びセンターディスプレイ装置3の動作を制御する車両用制御装置51は、マイコン52と、表示制御部16とを有する。マイコン52は、前述したマイコン15とは異なり、ハードウェアの構成として、コア53を有し、ソフトウェアの構成として、コア53で実行されるRTOS54と、RTOS54が起動するメータアプリ55と、メータ制御に特化したHMI56とを有する。
【0037】
バッテリ18から車両用制御装置51への電源供給系統としては、前述した車両用制御装置1と同様であり、イグニッション系統19とバッテリ系統20との2本の電源供給系統19,20が設けられている。イグニッション系統19は、車両用制御装置51のイグニッション電源入力端子57とメータ装置2とセンターディスプレイ装置3に接続されている。イグニッション電源入力端子57は、ダイオード58、共通接続点59,60を介して昇降圧回路61及び降圧回路62に接続されている。バッテリ系統20は、車両用制御装置51のバッテリ電源入力端子63とメータ装置2とセンターディスプレイ装置3に接続されている。バッテリ電源入力端子63は、ダイオード64、共通接続点59,60を介して昇降圧回路61及び降圧回路62に接続されている。このような構成でも、イグニッション系統19とバッテリ系統20との2本の電源供給系統に対応する必要があるので、ダイオード58,64によりダイオードOR回路65が構成されている。又、表示制御部16の動作電圧が低いので、昇圧可能な昇降圧回路61が一般的に使われる。マイコン52及び表示制御部16の動作に必要な電力は12Vのバッテリ電圧換算で2アンペア以下であるので、ダイオード58,64の順方向電圧のばらつきによる電流集中が発生しても、車両側のヒューズ23,25の切断は発生しない。
【0038】
図7に示すように、インフォテイメント装置4の動作を制御する車両用制御装置71は、マイコン72と、インフォテイメント制御部17とを有する。マイコン72は、前述したマイコン15とは異なり、ハードウェアの構成として、コア73を有し、ソフトウェアの構成として、コア73で実行される汎用OS74と、汎用OS74が起動するインフォテイメントアプリ75と、インフォテイメント制御に特化したHMI76とを有する。
【0039】
バッテリ18から車両用制御装置71への電源供給系統としては、前述した車両用制御装置1,51とは異なり、バッテリ系統20のみが設けられている。バッテリ系統20は、車両用制御装置71のバッテリ電源入力端子77とインフォテイメント装置4に接続されている。バッテリ電源入力端子77は、降圧回路78,79に接続されている。このような構成では、バッテリ系統20の1本の電源供給系統に対応すれば良いので、
図2及び
図6に示したようなダイオードOR回路を必要としない。又、インフォテイメント制御部17の動作電圧が高いので、昇圧回路が不要である。
【0040】
図6に示した車両用制御装置61と
図7に示した車両用制御装置71とを単純に統合した場合に想定される構成を
図8に示す。車両用制御装置81は、マイコン82と、表示制御部16と、インフォテイメント制御部17とを有する。マイコン82は、前述したマイコン15とは異なり、ハードウェアの構成として、コア83を有し、ソフトウェアの構成として、コア83で実行されるRTOS又は汎用OSからなるOS84と、OS84が起動するメータアプリ85及びインフォテイメントアプリ86と、メータ制御とインフォテイメント制御との両方に特化したHMI87とを有する。
【0041】
バッテリ18から車両用制御装置81への電源供給系統としては、前述した車両用制御装置1,51と同様であり、イグニッション系統19とバッテリ系統20との2本の電源供給系統19,20が設けられる。イグニッション系統19は、車両用制御装置81のイグニッション電源入力端子88とメータ装置2とセンターディスプレイ装置3に接続される。イグニッション電源入力端子88は、ダイオード89、共通接続点90,91を介して昇降圧回路92、降圧回路93及び昇降圧回路94に接続される。バッテリ系統20は、車両用制御装置81のバッテリ電源入力端子95とメータ装置2とセンターディスプレイ装置3とインフォテイメント装置4に接続される。バッテリ電源入力端子95は、ダイオード96、共通接続点90,91を介して昇降圧回路92、降圧回路93及び昇降圧回路94に接続される。ダイオード89,96によりダイオードOR回路97が構成される。
【0042】
図8に示す構成では以下の(ア)~(オ)に示す様々な不具合がある。
(ア)ダイオード89,96の順方向電圧降下のばらつきによる電流集中が発生すると、ダイオードOR回路97の出力側に2アンペア以上(最大で15アンペア)の電流が流れるので、車両側のヒューズ23が切断して遮断状態が発生する虞がある。
(イ)ダイオード96として15アンペア定格が必要となるので、コスト及びサイズが増大する。
【0043】
(ウ)ダイオード89,96の順方向電圧降下により電圧低下が発生するので、インフォテイメント制御部17の入力側に大電流に対応した昇圧可能な昇降圧回路94が必要となり、コスト及びサイズが増大する。
【0044】
(エ)表示制御部16への電源供給系統とインフォテイメント制御部17への電源供給系統とが共通するので、インフォテイメント制御部17で不具合が発生すると、その不具合が表示制御部16に派生し、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3の動作不良を招く虞がある。具体的には、例えばインフォテイメント制御部17が過電流により破損すると、イグニッション系統19のヒューズ23とバッテリ系統20のヒューズ25が共に切断されて遮断状態になり、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3の動作停止を招く虞がある。
【0045】
(オ)メータ装置2及びセンターディスプレイ装置3が民生技術対応及び時代進化対応よりも品質が優先されているので、表示制御部16では品質が高いことが望まれる。一方、インフォテイメント装置4が品質よりも民生技術対応及び時代進化対応が優先されているので、インフォテイメント制御部17では民生技術対応及び時代進化対応が容易であることが望まれる。しかしながら、マイコン82に実装されるOS84がRTOS又は汎用OSになるので、高い品質と民生技術対応及び時代進化対応の容易さと両立することができない。
【0046】
本実施形態の車両用制御装置1は、
図2に示した内部構成とすることで、上記した(ア)~(オ)に示した様々な不具合を解消している。即ち、車両用制御装置1の内部において、安全系のドメインと非安全系のドメインとに物理的に分離し、イグニッション系統19による電源供給が必須である機能ブロックを安全系のドメインに配置した。これにより、ダイオードOR回路33の出力側に流れる電流を低減すると共に、15アンペア定格のダイオードを不要とし、(ア)、(イ)の不具合を解消している。
【0047】
又、イグニッション系統19による電源供給が必須でない機能ブロックを非安全系のドメインに配置した。これにより、インフォテイメント制御部17の入力側に大電流に対応した昇降圧回路を不要とし、(ウ)の不具合を解消している。
【0048】
又、イグニッション系統19及びバッテリ系統20から表示制御部16への動作電源の供給態様とインフォテイメント制御部17への動作電源の供給態様を異ならせ、イグニッション系統19とバッテリ系統20の両方から表示制御部16に電源供給し、バッテリ系統20のみからインフォテイメント制御部17に電源供給するようにした。これにより、インフォテイメント制御部17で不具合が発生しても、その不具合が表示制御部16に派生する事態の発生を未然に回避し、(エ)の不具合を解消している。
【0049】
更に、マイコン15の内部で仮想化技術を用い、高い品質を実現するRTOS38と民生技術対応及び時代進化対応を容易に実現する汎用OS39をマイコン15に共存した。これにより、安全系のドメインと非安全系のドメインとの間の依存関係を必要最低限としながら高度なHMI連携を可能とし、(オ)の不具合を解消している。
【0050】
以上に説明したように第1の実施形態によれば、次に示す効果を得ることができる。
車両用制御装置1において、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3の動作を制御する表示制御部16とインフォテイメント装置4の動作を制御するインフォテイメント制御部17を統合した構成としながら、イグニッション電源入力端子24とバッテリ電源入力端子26の両方から表示制御部16に動作電源が供給されるようにした。メータ装置2やセンターディスプレイ装置3に求められる動作を維持したまま、そのメータ装置2やセンターディスプレイ装置3の制御機能をインフォテイメント装置4に適切に統合することができる。
【0051】
又、車両用制御装置1において、表示制御部16とインフォテイメント制御部17を統合した。メータ装置2やセンターディスプレイ装置3に対するHMI機能とインフォテイメント装置4に対するHMI機能を統合することができ、表示制御部16とインフォテイメント制御部17が別々の構成よりも高度なHMI機能を実現することができる。
【0052】
又、車両用制御装置1において、イグニッション系統19とバッテリ系統20の両方からメータ装置2やセンターディスプレイ装置3への動作電源の供給態様と表示制御部16への動作電源の供給態様とを同じにした。例えばメータ装置2やセンターディスプレイ装置3への動作電源が供給状態のときに表示制御部16への動作電源が非供給状態となる事態の発生を未然に回避することができ、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3の動作を適切に保証することができる。
【0053】
又、車両用制御装置1において、イグニッション系統19及びバッテリ系統20からメータ装置2やセンターディスプレイ装置3への動作電源の供給態様とインフォテイメント装置4への動作電源の供給態様とが異なることに応じて、イグニッション系統19及びバッテリ系統20から表示制御部16への動作電源の供給態様とインフォテイメント制御部17への動作電源の供給態様とを異ならせた。動作電源の供給態様を同系の車載機器と機器制御部とで整合させることができる。
【0054】
又、車両用制御装置1において、マイコン15の内部においてRTOS38及び汎用OS39と2つのコア36,37とを仮想化モジュール43により対応付け、高い品質を実現するRTOS38と、民生技術対応及び時代進化対応の容易さを実現する汎用OS39とをマイコン15に共存した。安全系のドメインと非安全系のドメインとの間の依存関係を必要最低限としながら高度なHMI連携を実現することができる。即ち、安全系のドメインと非安全系のドメインとでは前述したように求められる要件及び特性が異なるので、一方のドメインで不具合が発生したとしても、その不具合が他方のドメインに派生する事態を回避する必要があり、依存関係を必要最低限とする必要がある。この点に関し、高い信頼性が要求されるRTOS38と、民生技術対応及び時代進化対応の容易さが要求される汎用OS39とを共存し、仮想化モジュール43を設けたことで、例えば汎用OS39に異常が発生した場合であれば、汎用OS39のみをシャットダウンして再起動することで、汎用OS39の異常に関係なくRTOS38の動作を維持することができる。又、バッテリ18の出力電圧が低下すると、インフォテイメント装置4が動作を停止するが、そのインフォテイメント装置4が動作を停止したことで汎用OS39のみがバックアップ処理を行えば良く、RTOS38がバックアップ処理を行う事態を回避することができる。
【0055】
又、車両用制御装置1において、ヒューズ25が取り外されることで、バッテリ系統20による電源の供給経路を遮断し、暗電流に起因するバッテリ上がりを防ぎつつ、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3の動作電源を適切に確保することができる。
【0056】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について
図9を参照して説明する。尚、前述した第1の実施形態と同一部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態に記載したバッテリ系統20に加えて、別のバッテリ系統を備える構成である。
【0057】
バッテリ18から車両用制御装置101への電源供給系統としては、イグニッション系統19及びバッテリ系統20に加え、バッテリ系統102が設けられている。バッテリ系統20は、車両用制御装置101のバッテリ電源入力端子26とメータ装置2とセンターディスプレイ装置3に接続されている。バッテリ系統102は、着脱可能なヒューズ103(第3の通電部材に相当する)を有し、車両用制御装置101のバッテリ電源入力端子104(第3の電源入力部に相当する)とインフォテイメント装置4に接続されている。この構成では、バッテリ系統20は、分岐系統であり、一方の第2の電源供給系統であり、バッテリ系統102は、分岐系統であり、他方の第2の電源供給系統である。
【0058】
バッテリ電源入力端子104は、車両用制御装置101の内部において降圧回路34に接続されている。即ち、ユーザがキースイッチを何れの操作状態に切替えたか否かに拘らず、ヒューズ21,103が正常に装着されて通電状態であることのみを条件とし、バッテリ電源+B2の電圧が車両用制御装置101のバッテリ電源入力端子104とインフォテイメント装置4に印加される。第1の実施形態は、メータ装置2及びセンターディスプレイ装置3へのバッテリ系統20とインフォテイメント装置4へのバッテリ系統20とが共通して設けられているが、第2の実施形態は、メータ装置2及びセンターディスプレイ装置3へのバッテリ系統20とインフォテイメント装置4へのバッテリ系統102とが別々に設けられている。即ち、本実施形態でも、バッテリ系統20のヒューズ25が取り外されることで、バッテリ18から車載機器への電源の供給経路を遮断し、暗電流に起因するバッテリ上がりを防ぎつつ、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3の動作電源を確保し、車両の自走時においてメータ装置2やセンターディスプレイ装置3の動作を可能としている。又、本実施形態では、バッテリ系統20のヒューズ25が取り外されたときでも、バッテリ系統102のヒューズ103の装着が維持されることで、インフォテイメント装置4の動作電源を確保することができる。
【0059】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。又、例えば第1の実施形態で説明した船舶による車両の輸送時にはヒューズ103を装着したままでヒューズ25のみを取り外すことができる。即ち、輸送中の暗電流を低減しつつ、バッテリ系統102に接続されたインフォテイメント装置4への電力供給を維持することができる。これにより、例えば車両の輸送時でも動作することが求められる他の車載機器が、インフォテイメント装置4が備える音声出力等の制御機能を利用することができる。
【0060】
(その他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0061】
安全系の車載機器は、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3に限らず、利便性や快適性よりも安全性や安心性が要求される条件を満たす機器であれば良い。又、安全系の機器制御部は、メータ装置2やセンターディスプレイ装置3の動作を制御する表示制御部16に限らず、上記した条件を満たす機器の動作を制御する制御部であれば良い。非安全系の車載機器は、インフォテイメント装置4に限らず、安全性や安心性よりも利便性や快適性が要求される条件を満たす機器であれば良く、例えばナビゲーション機器でも良い。又、非安全系の機器制御部は、インフォテイメント装置4の動作を制御するインフォテイメント制御部17に限らず、上記した条件を満たす機器の動作を制御する制御部であれば良く、例えばカーナビゲーション装置やオーディオ装置の動作を制御する制御部であれば良い。
【0062】
1つの安全系の機器制御部と1つの非安全系の機器制御部とを統合した構成を例示したが、1つ以上の安全系の機器制御部と1つ以上の非安全系の機器制御部とを統合した構成でも良い。
【0063】
通電部材は、ヒューズ23,25,103に限らず、ヒューズと同等の機能を有する部材であれば良く、装着時において電源の供給経路を接続し、非装着時において電源の供給経路を遮断する構成の部材であれば良い。
【符号の説明】
【0064】
図面中、1,101は車両用制御装置、2はメータ装置(第1の車載機器、安全系の車載機器、表示器)、3はセンターディスプレイ(第1の車載機器、安全系の車載機器、表示器)、4はインフォテイメント装置(第2の車載機器、非安全系の車載機器、アプリ実行機器)、15はマイコン(演算部)、16は表示制御部(第1の機器制御部)、17はインフォテイメント制御部(第2の機器制御部、機能制御部)、19はイグニッション系統(第1の電源供給系統)、20,102はバッテリ系統(第2の電源供給系統、分岐系統)、23はヒューズ(第1の通電部材)、24はイグニッション電源入力端子(第1の電源入力部)、25はヒューズ(第2の通電部材)、26はバッテリ電源入力端子(第2の電源入力部)、30は昇降圧回路(昇圧回路)、33はダイオードOR回路、34は降圧回路、35は電源供給回路、36,37はコア(リソース)、38はRTOS(安全系のOS)、39は汎用OS(非安全系のOS)、40はメータアプリ(安全系のアプリ)、41はインフォテイメントアプリ(非安全系のアプリ)、43は仮想化モジュール、103はヒューズ(第3の通電部材)、104はバッテリ電源入力端子(第3の電源入力部)である。